Comments
Description
Transcript
PDF③(ポスター)
宮城県石巻市津波被災地域における環境リスク および仮設住宅居住者の現状 伊下一人・蒔田浩平・ 茅野大志・渡辺洋子・萩原克郎・浅川満彦・小川健太・能田淳・佐々木均・中谷暢丈 樋口豪紀・岩野英知・田村豊 酪農学園大学 目的: 宮城県石巻市の東日本大震災での津波による被災地域の環境リスクを実施することにより、被災者に対する支援を考える一助とすること。 方法: (1) 層化無作為抽出により津波被害を受けた海岸線より内陸2km、東西11kmの地域から町内会を標本単位として20区域を抽出(旧北上川を境 とした東西2層、抽出割合24.4%)。 (2) 2011年7・8月に土壌・ヘドロ・水の微生物学・生化学・無機化学的調査、昆虫・野生動物調査を実施。2012年11月に野生動物再調査を実施。 (3) 仮設住宅における社会学的・精神医学的調査:市街地2団地[開成第3団地(50/74世帯で実施)、渡波第一団地(50/95世帯で実施)]、村落部 1団地[相川運動公園団地(41全世帯)]における質問票調査(精神医学的調査項目:表1)。 仮設相川運動公園団地 アカネズミ(1匹) 運河沿いのみで捕獲 2011年7月 イエバエ デンプンを好み、飼料工場周辺 に大発生 2011年6月~8月ごろ クロキンバエ タンパクを好み、水産加工工場周 辺の広い地域で大発生 2011年6月~8月ごろ 仮設開成第三団地 仮設渡波第一団地 環境リスク調査 (対照区) 図2.調査地全景(宮城県石巻市) 結果2:社会学的調査 (1) 仮設住宅を出た後の居住地に関する希望 渡波第一団地、開成第三団地 相川運動公園団地 ハツカネズミ(31匹) 運河沿い、海岸沿い 2012年11月調査 調査地:石巻市 20区域 枠内 図1.環境リスク調査結果の地理的関係 結果1:環境リスク調査のまとめ 細菌:環境中にサルモネラ、コレラ菌等高病原性の細菌は未検 出。 ウイルス:ノロウィルス、E型肝炎ウイルスについて、環境中に 人に危険を及ぼすレベルのウイルス量は未検出。 重金属:環境中の水銀、鉛、ヒ素濃度は基準値以下。 放射能:石巻市の報告では、調査区域の放射線量は基準値以 下。 ハエ:2011年の津波後夏にかけてハエが大量発生。その後、散 乱した腐敗魚の海洋投棄、津波被災地域の瓦礫撤去および清 掃、駆除により、ハエは激減。いずれの種類のハエからもサル モネラ等の高病原性病原体は未検出。 ネズミ:津波被災地域で津波により一時ほぼ全滅。2011年夏季 には旧北上運河付近でアカネズミを確認。2012年には、ネズミ の生息に適した草地の調査でハツカネズミの生息を確認(図1)。 捕獲アカネズミからは公衆衛生学上問題となる病原体は未検 出。ハツカネズミについては調査中。 結果3:精神医学的調査結果のまとめ 回答率34% 回答率38% (2) (1)で挙げた場所に居住できる見込み 相川運動公園団地 渡波第一団地、開成第三団地 回答率17% 表1.精神医学的調査項目 性別、年齢、出身地 同居人数、年齢 疾病罹患状況 社交 仕事の有無 生活環境の衛生状態 K6(不安とうつの指標) 回答率26% 表2.K6リスク因子 (p値はGLM(Poisson)による多変量解析による) 項目 自分および同居人 の病気 団地内の友人 相談相手 属性 回答数 K6平均値 p値 26 9.9 0.003 あり 24 3.0 なし 42 5.0 0.011 いる 16 10.6 いない 29 3.3 0.003 いる 22 10.9 いない K6有病率(カットオフ値13):市街地の仮設住宅12.5%(5/40, 回答率44%)、村落部の仮設住宅22.2% (2/9, 回答率39%)。2群間に有意差なし(p=0.6, Fisher)。 リスク因子:仮設住宅に暮らす方々の不安・うつなど強い精神的ストレス症状のリスク因子として、2つ挙げられた: (1)自分および同居人の健康状態 (p=0.003)、(2)人との関わりの希薄さ(団地内の友人の不在(p=0.011)・相談相手の不在(p=0.003))。 考察:①:人体に直ちに影響を与える環境リスクは確認されなかった。しかし、人が住まなくなった被災地域でげっ歯類が繁殖しており、今後人獣共通感 染症のリスクは高まる可能性がある。 ②:村落部と市街地の住民の間には住まいに関する希望に差があり、配慮された対策が求められる。 ③:強い精神的ストレスの要因として家族内の病気の存在と人との関係性の希薄さが挙げられたため、ストレスを緩和させるような対策が必要。 謝辞: 調査した仮設住宅住民の皆様、石巻市役所、NPOあがらいん(現地調査協力)、三井物産環境基金および酪農学園大学 学内共同研究(研究費助成)、渡路子先生(国立精神神経医療研究センター、K6測定方法の助言)に深謝いたします。