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シニア起業家の開業 ~2012年度「新規開業実態
2012 年 12 月 25 日 日本政策金融公庫 総 合 研 究 所 シニア起業家の開業 ~2012年度「新規開業実態調査」から~ Ⅰ 調査目的 Ⅱ 実施要領 Ⅲ アンケート回答企業の概要 Ⅳ 調査結果 1 2 3 4 5 6 Ⅴ 事業の概要 キャリアと家計の状況 開業動機と収入に対する考え方 開業準備 開業後の状況 事業に対する意識 まとめ <問い合わせ先> 日本政策金融公庫 総合研究所 小企業研究第1グループ TEL 03-3270-1687 担当 野中、鈴木 Ⅰ 調査目的 総合研究所では、新規開業企業の実態を把握するために、1991年から毎年「新規開業実態調査」を実施し、開業時の年齢や開業費用 など時系列で比較可能なデータを蓄積すると同時に、様々なテーマで分析を行ってきた。 今年度は、高齢化が進展するなか開業の担い手として注目を集めているシニア起業家(開業時の年齢が55歳以上)に着目し、他の年齢 層の起業家と比較するという手法を用いて、そのキャリアや開業動機などの特徴を分析した。 (参考) 当公庫の「女性、若者/シニア起業家資金」では55歳以上を「シニア起業家」としている。 Ⅱ 実施要領 ① 調査時点 2012年8月 ② 調査対象 日本政策金融公庫国民生活事業が2011年4月から同年9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年 以内の企業3,054社 ③ 調査方法 調査票の送付・回収ともに郵送、アンケートは無記名 ④ 回 収 数 782件(回収率25.6%) ⑤ 経営形態 個人企業63.8% 法人企業36.2%(開業時) Ⅲ アンケート回答企業の概要 性 別 開業からの経過月数(調査時点) 25カ月以上 開業時の年齢 (単位:%) (単位:%) 0~6カ月 55歳以上 女 性 1.7 19~24カ月 13.8 34歳以下 12.1 15.7 4.7 27.7 31.5 7~12カ月 平均14.8カ月 (n=782) 13~18カ月 (単位:%) 48.3 (n=782) 平均40.4歳 (n=782) 84.3 男 性 60.1 34~54歳 資料:日本政策金融公庫総合研究所「2012年度新規開業実態調査」(以下同じ) (注)構成比は小数第2位を四捨五入して表記しているため、その合計が100%にならない場合がある(以下同じ)。 1 Ⅳ 調査結果 1 事業の概要~事業所向けが多い ○ シニア起業家の開業業種をみると、医療・福祉が22.1%と最も多く、次いでサービス業(17.9%)、飲食店・宿泊業(14.7%)と なっている(表)。 ○ 主な販売先は「一般消費者」が66.3%となっており、「事業所」(33.7%)を上回る(図-1)。ただし、他の年齢層と比べると 「事業所」の割合が高い。 表 開業業種 図-1 主な販売先 (単位:%) (単位:%) 業種 全 体 (n=782) 34 歳以下 35~54 歳 (n=217) (n=470) 55 歳以上 7.2 6.9 7.4 6.3 製造業 3.2 1.8 3.6 4.2 情報通信業 2.7 1.8 3.2 2.1 運輸業 2.2 0.0 2.8 4.2 卸売業 7.2 3.2 8.5 9.5 小売業 14.6 13.4 16.2 9.5 4.2 2.8 4.7 5.3 飲食店、宿泊業 12.9 17.1 10.6 14.7 医療、福祉 19.8 23.0 17.9 22.1 2.6 1.8 3.2 1.1 22.0 26.7 20.6 17.9 1.5 1.4 1.3 3.2 100.0 100.0 100.0 100.0 教育、学習支援業 サービス業 その他 合計 事業所 (企業・官公庁など) (n=95) 建設業 不動産業 一般消費者 全 体 (n=778) 75.3 34歳以下 (n=217) 35~54歳 (n=466) 55歳以上 (n=95) 2 24.7 87.1 71.7 66.3 12.9 28.3 33.7 2 キャリアと家計の状況 (1)開業直前の職業~マネジメントに携わっていた人の割合が高い ○ シニア起業家の開業直前の職業は「正社員・職員(管理職)」が46.7%と最も多い(図-2)。これに「会社や団体の常勤役員」 (23.3%)を合わせると70.0%となる。開業直前にマネジメントに携わっていたシニア起業家は多い。 ○ 開業直前の勤務先での勤務年数をみると、シニア起業家では「21年以上」が44.2%と、ほぼ半数に達する(図-3)。これに対し て「5年以下」は24.7%にとどまる。多くのシニア起業家は、開業直前の勤務先に長く勤め続けていたといえる。 図-2 開業直前の職業 図-3 開業直前の勤務先での勤務年数 (単位:%) (単位:%) (単位:%) 16~20年 会社や団体 の常勤役員 全 体 (n=764) 正社員・職員 (管理職) 正社員・職員 (管理職以外) 41.2 31.0 10.7 5年以下 非正社員 その他 9.4 全 体 (n=690) 7.6 6~10年 42.0 26.4 11~15年 12.2 21年以上 7.3 平 均 9.7年 中央値 7.0年 12.2 51.9 34歳以下 (n=212) 6.1 32.1 38.2 14.2 34歳以下 (n=188) 9.5 58.0 平 均 5.2年 中央値 0.0 5.0年 8.0 0.5 33.5 38.2 35~54歳 (n=462) 10.4 44.4 31.6 8.0 35~54歳 (n=425) 5.6 38.1 25.7 14.1 10.4 11.8 54.8 55歳以上 (n=90) 23.3 46.7 11.1 5.5 55歳以上 (n=77) 13.2 70.0 (注)「非正社員」は「パート・アルバイト」「派遣社員・契約社員」である。 24.7 13.0 11.7 6.5 44.2 平 均 10.0年 中央値 8.0年 平 均 18.3年 中央値 16.0年 (注) 図-2の「会社や団体の常勤役員」「正社員・職員(管理職)」「正社員・職員 (管理職以外)」「非正社員」について集計した(図-4、5も同じ)。 3 (2)開業直前の勤務先規模と離職理由~規模が大きな企業に勤務していた人の割合が高い ○ 開業直前の勤務先の規模をみるとシニア起業家では「19人以下」が31.6%と最も多い(図-4)。しかし他の年齢層と比べると、 「19人以下」の割合は低く、規模の大きな企業に勤務していた人の割合が高い。 ○ シニア起業家が開業直前の勤務先を離職した理由は、「自らの意思による退職」(57.1%)が最も多く、次いで「定年による退 職」(19.5%)となっている(図-5)。一方、勤務先都合による離職も18.2%となっている。 図-4 開業直前の勤務先の従業者規模 図-5 開業直前の勤務先の離職理由 (単位:%) (単位:%) 1,000人以上 19人以下 全 体 (n=691) 20~49人 49.4 15.9 勤務先の倒産・廃業 解雇 事業部門の縮小・撤退に伴う退職 自らの意思による退職 50~299人 300~999人 19.8 6.8 全 体 (n=697) 8.1 その他 2.2 73.7 6.2 3.7 7.2 7.0 勤務先都合17.1 34歳以下 (n=187) 58.8 14.4 16.6 3.7 34歳以下 (n=189) 6.4 0.0 3.2 85.7 2.1 6.9 2.1 勤務先都合7.4 35~54歳 (n=428) 48.4 15.9 19.9 7.5 35~54歳 (n=431) 8.4 0.0 71.5 8.8 7.9 7.4 4.4 勤務先都合23.4 55歳以上 (n=76) 31.6 19.7 27.6 10.5 55歳以上 (n=77) 10.5 57.1 19.5 6.5 7.8 5.2 3.9 定年による退職 勤務先都合18.2 (注)1 「その他」は「退職していない」を含む。 2 「勤務先都合」とは「事業部門の縮小・撤退に伴う退職」「勤務先の倒産・ 廃業」「解雇」の合計である。 (注)「1,000人以上」は公務員を含む。 4 (3)斯業経験と最終学歴~長い経験を生かした開業がある一方、未経験分野での開業もみられる ○ 斯業経験年数(現在の事業に関連する仕事の経験年数)の平均は、シニア起業家では17.8年と他の年齢層よりも長く、分布をみて も「30年以上」が32.3%となっている(図-6)。半面、「経験なし」の割合は22.6%と、他の年齢層よりも高い。長い経験を生か した開業がある一方、未経験分野での開業もみられる。 ○ シニア起業家の最終学歴は大学が47.3%と最も多い(図-7)。 図-6 斯業経験 図-7 最終学歴 (単位:%) (単位:%) 大学院 経験なし 1~4年 全 体 (n=774) 34歳以下 (n=212) 35~54歳 (n=469) 55歳以上 (n=93) 14.5 9.0 8.4 5~9年 19.3 14.1 15.4 22.6 10~19年 33.9 34.0 6.4 14.9 5.4 7.5 20~29年 30年以上 42.4 33.3 17.2 17.2 25.2 15.0 32.3 中学 平 均 12.2年 中央値 10.0年 全 体 3.5 (n=770) 平 均 0.5 7.8年 中央値 0.0 8.0年 34歳以下 3.3 (n=212) 6.9 4.9 平 均 13.1年 中央値 13.0年 35~54歳 3.0 (n=465) 平 均 17.8年 中央値 15.0年 55歳以上 (n=93) 6.5 高校 専修・各種学校 31.3 24.3 5 32.7 40.6 24.1 33.3 20.9 37.6 4.3 (注)「その他」には高専、短大を含む。 (注) 「経験なし」の斯業経験は0年として平均、中央値を算出した。 大学 24.5 33.5 47.3 その他 3.5 4.7 3.3 4.2 4.3 4.9 0.0 4.3 (4)家計の状況~事業以外からの収入ありが過半数 ○ 自宅の所有状況をみると、シニア起業家では「所有しているが、住宅ローンはない」が54.7%と最も多く、他の年齢層を大きく上 回る(図-8)。 ○ 事業以外からの収入があるシニア起業家の割合は52.7%となっており、他の年齢層を大きく上回る(図-9)。内訳をみると「年 金・恩給」(38.5%)が最も多い。 図-8 自宅の所有状況 図-9 事業以外からの収入 (単位:%) 所有しており、 住宅ローンがある 所有しているが、 住宅ローンはない 全 体 (n=770) 22.5 0 借用している 41.9 年金・恩給 35.6 17.1 28.9 54.0 不動産収入 35~54歳 (n=464) 55歳以上 (n=95) 40 60 0.0 0.6 80 100 (%) 38.5 他企業からの給与 34歳以下 (n=211) 20 18.3 49.4 32.3 その他 54.7 34.7 6.1 7.6 11.0 1.9 4.5 6.6 34歳以下(n=212) 35~54歳(n=462) 55歳以上(n=91) 事業以外からの収入あり 34歳以下 9.0% 35~54歳 15.8% 55歳以上 52.7% 2.4 4.1 2.2 91.0 84.2 事業以外からの収入なし 10.5 47.3 (注) 事業以外からの収入がある割合は、「年金・恩給」から「その他」までの 少なくとも一つを回答した開業者の割合である。 6 3 開業動機と収入に対する考え方~「できるだけ多くの収入を得たい」は少ない ○ シニア起業家の開業動機をみると「仕事の経験・知識や資格を生かしたかったから」が51.1%と最も多く、「社会の役に立つ仕事 がしたかった」「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」がともに36.2%で続く(図-10)。「仕事の経験・知識や資格を生かし たかったから」は34歳以下と比べて、「社会の役に立つ仕事がしたかった」と「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」は他の二 つの年齢層と比べて高い。 ○ シニア起業家の収入に対する考え方をみると、他の年齢層と比べて「家計を維持できるだけの収入があれば十分だ」(64.9%)が 多く、「できるだけ多くの収入を得たい」(26.6%)が少ない(図-11)。 図-10 開業動機(三つまでの複数回答) 0 10 20 図-11 収入に対する考え方 30 35.3 仕事の経験・知識や資格を 生かしたかった 17.2 社会の役に立つ 仕事がしたかった 年齢や性別に関係なく 仕事がしたかった 3.7 22.6 36.2 12.6 22.3 事業経営という仕事に 興味があった その他 20.2 5.1 11.1 70 (単位:%) (%) 49.8 51.1 34歳以下(n=215) 35~54歳(n=468) 55歳以上(n=94) 28.0 できるだけ多くの 収入を得たい 全 体 (n=770) 家計の補助に なればよい 家計を維持できるだけの 収入があれば十分だ 53.4 44.4 2.2 58.6 54.3 45.3 24.5 自分の技術やアイデアを 事業化したかった 趣味や特技を生かしたかった 60 35.1 収入を増やしたかった 時間や気持ちに ゆとりが欲しかった 50 36.2 自由に仕事がしたかった 適当な勤め先がなかった 40 51.2 34歳以下 (n=215) 62.8 36.3 0.9 35.3 35.0 47.4 35~54歳 (n=461) 54.4 44.0 1.5 18.1 18.1 12.4 10.6 10.2 7.9 8.5 7.9 7.7 13.8 55歳以上 (n=94) (参考)34歳以下の開業動機は「自由に仕事がしたかった」(58.6%)、「収入を増やしたかった」(51.2%)、 「事業経営という仕事に興味があった」(47.4%)の順で多く、シニアとは異なる結果となっている。 7 26.6 64.9 8.5 4 開業準備 (1)開業準備期間と販売先・顧客の確保~準備期間3ヵ月以下が半数 ○ シニア起業家の開業準備期間の平均は6.1ヵ月となっており、他の年齢層と比べてやや短い(図-12)。分布をみても「3ヵ月以 下」の割合が50.0%と高い。 ○ 開業時に販売先・顧客を確保していたシニア起業家の割合は58.5%となっている(図-13)。この割合は他の年齢層と大きく変わ らない。 図-12 開業準備期間 図-13 開業時における販売先・顧客の確保状況 (単位:%) (単位:%) 3ヵ月以下 全 体 (n=754) 34歳以下 (n=209) 35~54歳 (n=453) 55歳以上 (n=92) 40.5 36.8 4~6ヵ月 26.0 29.2 40.2 50.0 26.7 15.2 7~12ヵ月 確保していた 13ヵ月以上 20.8 12.7 平 均 7.0ヵ月 中央値 5.0ヵ月 22.0 12.0 平 均 6.7ヵ月 中央値 5.0ヵ月 19.9 13.2 平 均 7.4ヵ月 中央値 4.0ヵ月 22.8 12.0 平 均 6.1ヵ月 中央値 3.5ヵ月 全 体 (n=776) 55.5 44.5 34歳以下 (n=216) 56.5 43.5 35~54歳 (n=466) 55歳以上 (n=94) (注) 開業準備期間とは、具体的な開業準備(場所の検討、取引先の探索、求人活動など) を始めてから事業を開始するまでの期間である。 8 確保していなかった 54.5 58.5 45.5 41.5 (2)自己資金額と従業者数~より多くの従業員を雇用 ○ シニア起業家が開業時に準備した自己資金額は平均605万円と、他の年齢層よりも多い(図-14)。「1,000万円以上」の割合も 23.7%と、ほぼ4人に1人となっている。 ○ 開業時の従業者数をみると、シニア起業家では平均6.0人となっており、他の年齢層を上回る(図-15)。分布をみても「5~ 9人」は24.5%、「10人以上」は14.9%となっており、これらの割合は他の年齢層よりも高い。 図-14 自己資金額 図-15 開業時の従業者数 (単位:%) (単位:%) 500万~1,000万円未満 250万円未満 全 体 (n=753) 50.3 34歳以下 (n=205) 35~54歳 (n=455) 55歳以上 (n=93) 250万~500万円未満 24.2 55.1 41.9 1,000万円以上 16.7 26.8 49.9 23.7 20.4 8.8 14.6 18.2 14.0 10人以上 23.7 3.4 8.1 平 均 369万円 中央値 230万円 全 体 (n=762) 平 均 274万円 中央値 200万円 34歳以下 (n=208) 平 均 364万円 中央値 250万円 35~54歳 (n=460) 平 均 605万円 中央値 300万円 55歳以上 (n=94) 9 1人 27.7 32.2 4人 23.4 14.6 10.1 18.0 6.3 9.1 17.8 平 均 5.8 3.7人 中央値 2.0人 22.1 28.0 16.0 2人 3人 13.0 25.4 16.0 14.9 15.2 13.8 9.8 24.5 5~9人 16.7 4.8 14.9 平 均 4.0人 中央値 2.0人 平 均 3.6人 中央値 2.0人 平 均 6.0人 中央値 4.0人 (3)開業計画へのアドバイス~受けた人の割合は大きく変わらない ○ 開業計画へのアドバイスを受けたシニア起業家の割合は82.1%となっており、他の年齢層と大きく変わらない(図-16)。 ○ シニア起業家がアドバイスを受けた相手をみると、「同じ業種の事業経営者」が53.8%と最も多いが、この割合は他の年齢層と比 べてやや低い(図-17)。また、「異なる業種の事業経営者」(14.1%)の割合も低く、事業経営者からアドバイスを受けたシニア 起業家は比較的少ない。 図-16 開業計画へのアドバイス 図-17 アドバイスを受けた相手(複数回答) (単位:%) 受けた 全 体 (n=779) 受けていない 0 10 20 11.6 92.6 7.4 経営コンサルタント 9.2 14.1 14.5 民間の創業支援機関 87.8 12.2 民間の金融機関 6.0 5.8 82.1 17.9 11.5 17.0 20.2 24.4 43.5 51.1 47.4 21.4 19.2 2.0 4.1 1.3 (注)アドバイスを受けた人について集計した。 10 37.2 25.6 友人・知人 その他 61.8 80 71.0 34歳以下(n=200) 35~54歳(n=411) 55歳以上(n=78) 3.0 3.4 2.6 3.5 3.2 2.6 家族 70 16.7 16.5 18.0 日本政策金融公庫 55歳以上 (n=95) 60 30.0 20.9 29.5 27.0 商工会議所・商工会 公的な創業支援機関 35~54歳 (n=468) 50 53.8 税理士、会計士 34歳以下 (n=216) 40 同じ業種の 事業経営者 異なる業種の 事業経営者 88.4 30 39.5 (%) 5 開業後の状況 (1)採算状況と予想月商達成率~黒字基調割合が低い ○ シニア起業家の採算状況をみると、黒字基調が54.5%であるのに対して、赤字基調が45.5%となっている(図-18)。黒字基調の 割合は他の年齢層よりも低い。 ○ 予想月商達成率(開業前に予想した月商に対する現在の月商の割合)をみると、シニア起業家の平均は95.6%と他の年齢層よりも 低い(図-19)。「達成」(予想月商達成率100%以上)の割合をみても40.4%と、他の年齢層を下回る。 図-18 採算状況 図-19 予想月商達成率 (単位:%) (単位:%) 75~100%未満 黒字基調 全 体 (n=734) 64.4 50%未満 50~75%未満 赤字基調 全 体 (n=734) 35.6 10.4 18.5 100~125%未満 20.4 24.9 25.7 達成 34歳以下 (n=202) 72.8 27.2 34歳以下 (n=202) 6.9 17.3 125%以上 16.8 平 均 119.5% 中央値 100.0% 50.7 28.2 30.7 平 均 119.9% 中央値 100.0% 達成 58.9 35~54歳 (n=444) 62.6 37.4 35~54歳 (n=443) 10.8 18.7 21.4 23.9 25.1 達成 55歳以上 (n=88) 54.5 45.5 55歳以上 (n=89) 15.7 20.2 23.6 49.0 22.5 達成 18.0 40.4 (注)予想月商達成率=(現在の月商÷開業前に予想していた月商)×100 11 平 均 124.2% 中央値 95.0% 平 均 95.6% 中央値 82.9% (2)売上の状況~増加傾向が約5割 ○ 開業時に確保していた販売先・顧客への売上が開業前の「予想よりも多い」とするシニア起業家の割合は12.7%、これに対して 「予想よりも少ない」が38.2%、「予想どおり」が49.1%となっている(図-20)。他の年齢層と比べて「予想よりも少ない」の 割合がやや高い。 ○ 現在の売上状況をみると、シニア起業家のうち「増加傾向」は51.1%となっている(図-21)。この割合は他の年齢層よりもや や低いものの、売上を増加させつつあるシニア起業家も少なくない。 図-20 開業時に確保していた販売先・顧客への売上状況 図-21 現在の売上状況 (単位:%) (単位:%) 予想よりも多い 全 体 (n=430) 34歳以下 (n=122) 35~54歳 (n=253) 55歳以上 (n=55) 17.9 予想どおり 48.8 23.8 16.2 12.7 47.5 49.4 49.1 予想よりも少ない 増加傾向 全 体 (n=749) 33.3 34歳以下 (n=209) 28.7 35~54歳 (n=448) 34.4 55歳以上 (n=92) 38.2 (注) 開業時に販売先・顧客を確保していた回答者について集計した。 12 55.0 横ばい 36.8 58.4 54.2 51.1 34.9 38.2 34.8 減少傾向 8.1 6.7 7.6 14.1 6 事業に対する意識 (1)事業拡大意欲と上場意向~「拡大したい」の割合は変わらない ○ 今後の事業規模(売上高)について、シニア起業家では「拡大したい」が89.5%と大半を占める(図-22)。この割合は他の年 齢層とほとんど変わらない。 ○ 将来の株式上場を考えているとするシニア起業家の割合は2.2%に過ぎず、他の年齢層と比べて低い水準にとどまる(図-23)。 図-22 今後の事業規模(売上高) 図-23 将来の株式上場 (単位:%) (単位:%) 縮小したい 拡大したい 全 体 (n=776) 34歳以下 (n=215) 91.1 考えている 現状程度でよい 全 体 (n=772) 8.5 11.9 考えていない 88.1 0.4 93.5 34歳以下 (n=214) 6.0 0.5 35~54歳 (n=466) 90.3 55歳以上 (n=95) 89.5 35~54歳 (n=465) 9.2 0.4 20.6 9.9 55歳以上 2.2 (n=93) 10.5 0.0 13 79.4 90.1 97.8 (2)事業承継の意向~引き継がせたいが7割 ○ 事業承継の意向をみると、シニア起業家では「引き継がせたい」が68.4%となっており、他の年齢層と比べて高い(図-24)。一 方、「わからない」(16.8%)の割合は低い。開業後日が浅いうちから事業承継について考えているシニア起業家は少なくない。 ○ シニア起業家が事業承継させたい相手は「一緒に働いている家族」「家族以外の従業員」がともに31.7%と最も多い(図-25)。 図-24 事業承継の意向 図-25 事業承継させたい相手 (単位:%) (単位:%) 一緒に働いていない家族 引き継がせたいと思う 全 体 (n=777) 45.8 34歳以下 (n=215) 41.9 35~54歳 (n=467) 43.0 55歳以上 (n=95) 引き継がせたいとは思わない 25.2 全 体 (n=348) 29.0 24.7 33.5 27.6 68.4 一緒に働いている家族 わからない 29.3 14.7 34歳以下 (n=87) 9.2 35~54歳 (n=198) 10.1 55歳以上 (n=63) 16.8 13.8 家族以外の従業員 19.8 8.0 33.3 37.9 26.8 31.7 その他 3.4 6.9 31.8 14.3 決まっていない 29.6 37.9 2.5 31.7 28.8 1.6 20.6 (注)図-24で「引き継がせたいと思う」と回答した人に対する設問である。 14 Ⅴ まとめ 1 開業直前にマネジメントに携わっていた人の割合が高い シニア起業家には、①開業直前の勤務先でマネジメントに携わっていた人の割合が高い、②開業直前に規模が大きい企業に勤務して いた人の割合が高い、③大学卒の割合が高い、という特徴がある。また、自宅を所有しており住宅ローンもすでに終えている人や、年 金など事業以外からの収入を有している人が多い。 2 長い経験を活用した開業がある一方、未経験分野での開業もみられる シニア起業家の斯業経験年数(現在の事業に関連する仕事の経験年数)の平均は長く、分布をみても「30年以上」の割合が高い。半 面、経験なしの割合も高い。長い経験を活用した開業がある一方、未経験分野での開業もみられる。 3 「できるだけ多くの収入を得たい」は少ない シニア起業家の開業動機をみると、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかったから」「社会の役に立つ仕事がしたかった」「年齢 や性別に関係なく仕事がしたかった」が上位3項目となっている。一方、収入に対する考え方として「できるだけ多くの収入を得たい」 を挙げるシニア起業家は少ない。 4 黒字基調の割合は低い シニア起業家の半数以上は黒字基調だが、他の年齢層と比べてその割合は低い。開業前に予想していた月商を達成したという割合も 低い。 15