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税配分範囲論争の混迷=と 会計理論存立ダ基盤の危l機尚

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税配分範囲論争の混迷=と 会計理論存立ダ基盤の危l機尚
追手門経営論築,
pp.4
f-82.
Received
Vol. S, No.
Sept. Jo, t夕夕夕
税配分範囲論争の混迷=と
会計理論存立ダ基盤の危l機尚
西……::村幹………仁
目 次
はじめに
1 会計基準の変遷 ≒.
2 全面的配分説と部分的配分説の意義と類型
3 回 転一無限定配分説の類型
4 解消延期一限定的配分説の類型
5 解消延期T無限定配分説の類型
6 論点の吟味:回転説対解消延期説
7 論点の吟味:解消延期=無限定配分説
8 法人所得税と対応概念
むすび
参考文献
は じ め に
いわゆる期間差異(timing
difference)または一時差異(temporary
difference)にかかる税配分の適用に関して,税配分の論理構成方式と並
びあるいはそれ以上に激しく果てしない論争の場を提供してきたのは,税
配分の適用範囲の問題であった。それは,税配分の論理の成立する範囲ま
1)
1)
期間差異や一時差異をどのように定義するかという問題は■
―
41 −
2.
December,・1999
ぞれ自体重要
追手門狸宮謡柴Vol.5 No.2
西大村幹仁
たは税効果会計が正当である範囲を意味するから,その結論がどのような
ものであるかによって,税配分後利益は,大きく異なるものとなる場合が
少なくない。ノ\ \ ∧ ダ =
このようj=,yな税配分範囲をめぐる主たる議論はいこれをつぎのように分類
することができよう。
(1)長期・反復的期間差異に関する税配分の当否
(2)税配分資産の認識範囲(保守主義の適用限界)
(3)解消の有無が不確実な特定の期間差異に関する税配分の当否
(4)期間差異解消が税効果を生じるに十分な利益を期待することの当否
膨大な議論の大半は,第1の問題,すなわち,長期にわたり反復的に生
起する期間差異に関して税配分を実施するかどうかという点に集中してい
た。それは,長期・反復的差異について税配分を実施すべきであるとする
全面的配分(comprehensive
allocation,
fullprovision)説と,これについて
税配分を行うべきでないとする部分的配分べpartial
allocation,
p artialpro-
vision)説との対立であった。税効果会計を格別に乗り越えがたく困難な
ものにした最大のものは,こめ問題であったといってよい。本稿は,ここ
に焦点を当てようとするものである。 E. ・
第1節にみるように,イギリスやアメリカの会計基準の歴史を振り返る
なテーマであるが,本稿では,この問題を論じない。期間差異と一時差異の
定義や範囲については,西村[1990,
pp. 132 −138]で詳細に論じている。本
稿は,イギリスのように期間差異概念を用いる場合にも,アメリカ等のよう
にバ吟差異概念を阻いる場合にも,ともに妥当する共通問題である汀期間差
異または一時差異のうちどこまで税配分するのか」という問題を論じようと
している。なお,以下では,便宜上,税配分の対象として,原則的に期間差
異の語を用いることにする。また,税配分の目的となる租税は,法人の所得
を課税標準とする租税またはそのような租税を課税標準とする租税のすべて
を含み,これをわが国では法人税等と表記することが多いが,内容をヨリ明
確に示す法人所得税の語を使うことにする。 =
−42 −
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
December ^夕夕夕
と,全面的配分説から部分的配分説へ,あるいは部分的配分説から全面的
配分説へと大きな変節を遂げながら,現在なお両国では,税効果会計の論
理を共有するには至らず,むしろ,正反対の方向が選択されている。税効
果会計において世界をリードしてきたイギリスとアメリカ両国の企業が作
成する財務諸表の間には,到底埋めることのできない大きな食い違いがあ
る。しかも,税配分範囲をめぐる議論の混乱は,会計基準設定過程に対す
る政治プロセスの介入を許したのであった[西村,1997]。一方,会計基準
の国際的調和が強く求められるなかで,イギリスでは,新たな会計基準の
公開草案[ASB,1999]が発表され,ようやく,アメリカの基準に歩み寄る
べく,全面的配分説への転換が提案されたところである。しかし,それに
〈略語表〉
AIA : American
Institute of Accountants
(アメリカ会計士協会)
AICPA : American Institute of Certified Public Accountants
(アメリカ公認会計士協会)
APR
: Accounting
APBO: APB
Principles Board (会計原則密議会)
Opiyiion(会計原則審議会意見書)
ARB
: Accounting
Research Bulletin・(会計研究公報)
ARS
: Accounting
Research Study (会計調査研究)
ASB
: Accounting
Standards
Board (会計基準審議会)
ASC
: Accounting
Standards
Committee
/SR
: Accounting
ASSC: Accounting
j: Accounting
CICA : Canadian
CIC/□認:CICA
FASB
Standards
Steering Committee
(会計基準制定委員会)
and Auditing Practices Bulletin (会計・監査実務公報)
Institute of Chartered Accountants (カナダ勅許会計士協会)
Handbook
: Financial
(会計基準委員会)
Series Release (会計連続通牒)
(CICA便覧)
Accounting
Standards
Board (財務会計基準密議会)
F?El:): Financial Reporting Exposure Draft (財務報告公開草案)
IAS: International
Accounting
Standard (国際会計基準)
IΛsc : International
A ccounting Standards Committee
ICAEW
: Institute of Chartered Accountants in England
(国際会計基準委員会)
and Wales
(イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)
RAP: Recom魏endation
on Accounting Principles (会計原則勧告書)
SEC : Securities and Exchange
Commission
(証券取引委員会)
SFAS: Statement
of FinaricialAccounti7ig Standards (財務会計基準書)
SSAP: Statement
of゛Standard Accounting Practice (会計実務基準書)
−43 -
西村幹仁
追手門経官設柴Vol.
5
No.2
もかかわらず,公開草案は√これまでの基準(部分的配分説)が決して間
違っていたわけではないとしきりに繰り返すこ=とによ=り√あえて混乱を引
き起こしている。 このような状況のもとで,わが国会計基準[企業会計審
議会. 1998ト(以下,税効果会計基準と呼ぶo)においては,十分な議論を欠い
たまま,アメリカのそれをそっくり受け入れることとなった。
われわれの選択は正しいものであり,われわれは,‥いま正しい道を進も
うとしでいるのだろうか。この点をいま一度,しっかりと検討しなおすこ
とは,決して無駄ではないと思われる。本稿の目的はここにある。そこで,
全面的配分説と部分的配分説の論点をそれぞれ慎重に分類し,これを吟味
することを通して,問題の本質を捉えたいと思う。それに対する解答は,
現行会計の基礎的構造のなかからこれを得るであろう。
1
会計基準の変遷
現在,アメリカおよびカナダの会計基準[SFAS
16, 63, 203 −205; CICA
Handbook,
109, FASB,
1992, pars.
CICA, 1997, pars. 3465. 22, 23)では全面的配
分説が取られており,イギリスのそれ[SSAP
15 (Revised), ASC, 1985(a),
pars. 25 −28]では部分的配分説が採用されている。そこに至るまでのこれ
ら3国における税配分範囲に関する会計基準の変遷について整理したもの
が表Iである。
そこにみるように,イギリスでは,
1958年にその会計基準において税
配分範囲の問題が公式に認知されて以来20年間,全面的税配分の立場が
広く承認されてきたが,
1978年に至り,部分的税配分へと大転換が図ら
れ,以後現在までの21年間,その立場に対して優勢な支持が寄せられて
きた。 ところが,
1999年8月には,これを全面的税配分へと引き戻そう
とする会計基準の公開草案[FRED
19,ASB,
1999]が発表されるところと
なった。再度の方向転換への挑戦は,これに先立つ1995年に発表された
−44−
)ecember
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
会計基準の試案(討議資料)(Discussion Paper,ASB, 1995]のなかですでに
提案されていた。試案は,論争嗇巻き起こしたけれど,
4年半の期間を経
て,いまようやく,公開草案へと一歩前進したばかりでIあり,しその行方は。
2)
なお混沌とした状況にある。
これに対して,アメリカ会計基準における税配分範囲に関する歴史は,
1944年,部分的配分説の承認から始まる。その後14年間は,部分的配分
が一般に認められた会計原則を構成してきたのであったが,早くも1958
年,その立場を放棄し,全面的配分をもって会計原則の正当にして不可欠
の一部として承認するに至る。以後,現在まで一貫して,全面的配分説に
対して公式の支持が与えられ続けている。 ・・。・。・ 。・ 。・ ・=
カナダでは,これら3国を通じてもっとも早く,
1954年に全面的配分
説への公式の支持が表明されたあと,今日まで同じ立場が貫かれてきた点
で,少なくとも表面的には,他の2国に比べて少七状況が違づているとい
える。 しかし, CICAの研究プログラムの一環としてその委託を受けて実
施された研究の成果であるBeechy[1983]が,
CICAの。会計基準に正面
から挑戦して部分的配分説を支持したこと[pp.
xxii, 129−131],また,
CICA
Handbookの解釈指針としてCICA自身が供給し続けている
Byrd-Chen[1999]が,全面的配分説の解説のなかで,部分的配分説への
内心の選好をあえて表明せずにはいられなかったこと[pars.
(60-56)-(60-
59)]をみても分かるように,この問題に関する議論の対立は決して解消
済みではなかったのである。
他方,国際会計基準の動向も,これら各国における動きに歩調を合わせ
るものであった。 1978年に公表されたIAS
12 [IASC, 1979]は,当時の
事情を反映して,全面的配分を原則的方法としつうも,部分的配分の選択
をも認めるというものであった[par.
2)たとえば,
43]。ここで残された会計基準の調
Editor of The Accountant[1999, p. 7]参照。
−45−
西村丿幹仁
追手門経営綸集 VoiS No. 2
和化の課題は,その解決のために17年の期間を必要とした。 こうして,
IASCは,
1996年,全面的配分への一本化を打ち出したのである[IAS
(Revised 1996),pars.15.24]。
表1 米・英・加3国における税配分範囲の歴史
アメリカ イギリス カ ナ ダ
繰延差異繰上差異繰延差異繰上差異繰延差異繰上差異
-----1944 ARB23[AIA] の の
1953 ARB
43[AIA] P ?
1954
1954 ARB
1958 ARB
44(RバAICPA] 口
1958
RAP
1960 ASR
19[ICAEW] μ
85[SEC] (C)
1962 APBO
1965
B 却[CICA] 口
44[AICPA] の
j[AICPA] (C)
ICAEW通牒[ICAEW] c* C
1967
1967 APBO
1968
B 26[CICA] C C
11[AICPA] C C
RAP
1968
27[ICAEW] C C
CICA
HB[CICA] C C
1975
SSAP
H [ASSC] C C
1978
SSAP15[ASC] P P
1985
SSAP
15(RバASC] P P
1987 SFAS
96[FASB] C C
1992 SFAS
109[FASB] C C
1997
1999
FRED
CICA
HB[CICA] C C
19[ASB](未承認) c* C
(注)1 本表は,主たる会計基準書のうち,税配分範囲に関してその立場を明示しているも
ののみを取り上げた。 2 木稿では,期間差異を繰延期間差異と繰上期間差異に二分する。これについて,脚
注5)を参照されたい。 3 記号の意味は,つぎのとおりである。
C:全面的配分説
j):部分的配分説
り:特定の期間差異のみを議論の対象としている。
4 *資産の買換および再評価による差益にかかる課税繰延のみについては,部分的配
分説をとっている。
46 −
12
December
・夕99
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
以上のように,法人所得税の期間配分をどこまで行うかという問題は,
ときにより,地域により,あるいは環境により異なる解答を生じつつも,
全面的配分説がようやくその地歩を固めつつあるように思われる。このよ
うな会計基準の変節の歴史は,税配分範囲をめぐる膨大な論争を生み出し
ている。いま,その論争の歴史をしっかりと受け止めるとき,一点に収束
しつつあるかのようにすらみえる形勢の推移の背後で,実は,
2つの対立
する立場の間に掘り進められた溝は,さらに深く埋め尽くしがたいものと
なっていることが分かるであろう。
2 全面的配分説と部分的配分説の意義と類型
部分的配分説によれば,ある期間差異の解消時に同種の他の差異が発生
する場合,古い差異の解消の税効果(tax
effect)が,新たに発生する差異
の税効果によって相殺される結果,そのかぎりで,当該解消が事実上無効
となる。すなわち,解消の無効化または延期を擬制するものである。そこ
で,たとえば,成長企業が会計上の減価償却に較ベヨリ加速的な償却を税
務上実施しているケースにおいて,活発な設備投資を通じて当該期間差異
が反復的に継起することにより,その解消(税務上の償却額が会計上のそれ
を下回ること)の無効化が継続するような場合には,当初の税効果を取り
消す逆方向の税効果の発生が今後期待されないのであるから,これについ
て税配分を行ってはならないということになる。
3)
3)さらに,つぎのように論じるものもある[Crowe,
pp. 359 −360 ; Davidson-Stickney-Weil,
1956, p.53; Hill, 1957,
1979, p.393など]。がりに,企業規
模の縮小により,解消延期の停止という事態に直面するとしても,そのよう
な状況では,通常,欠損に陥っているため,解消の税効果は実現するに至ら
ないであろうと。なお,当該解消年度が欠損年度であったとしても,欠損金
の繰戻または繰越控除を可能にする所得がその前後の年度で稼得されるなら
−47
−
西 村し幹仁
追手門経S論菜yd.
5
No. 2
これに対して√全面的配分説によれば;期間差異の長期・反復的継起の
有無は,それ自体,税配分の実施の当否とは独立であるとみなされるよ古
い差異の解消の税効果と新しい差異の発生の税効果は,’その相殺的関係に
もかかわらず,それぞれ別個の会計的認識を与えら:れるべき2つの事象で
ある。期間差異のもたらす効果は,課税所得の繰延または繰上以上のもの
でもなければ,トそれ以下でもないと解するのである。
部分的配分説には,期間差異の解消の無効化も反復的に継起する同種
の差異の間においてのみならず,異なる種類の差異の相互間においても認
めようとするものかおる。その場合には,期間差異の解消延期が一括判定
され,全期間差異の累積残高が将来減少するかぎりで例外的に税配分が行
4)
われることになる。
〉全面的配分説と部分的配分説の相違を計算例によってみておくことにし
よう。発生年度の翌年度に解消するという特徴をもっある種類の繰延期間
5)
差異(加算差異)の発生と解消が,第1年度から第4年度まで表2のよう
に変化していき,第5年度以降においては,毎期160の差異が発生するも
のとしよう。その結果,この期間差異の累積残高は,いつまでも減少しな
い。このほかに,期間差異は存在しないものとする。また,各年度の税引
ば,解消の税効果の実現が妨げられることとな=らない点に注意すべきである。
4)上記SSAP
15 )(Revised)[Appendix par. 4]は,この立場を取ってい
る。 しかし,イギリスの旧基準[SSAP
15, pars。7, 9−12]では,期間差異
の種類別に解消延期を判定することが要求されていた。
5)SFAS
109[FASB,
: temporary
1992, par. 13]は,一時差異を加算一時差異(taxable
difference)と減算一時差異(deductible temporary
に区分した。税効果会計基準は,これに習い,
difference)
2種類の一時差異をそれぞれ
将来加算一時差異と将来減算二時差異と呼んだ[第2−1−3]。本稿では,期
間差異の特性をヨリ明確に示す用語として,繰延期間差異と繰上期間差異の
語を用いることにする。繰延期間差異は,課税繰延の効果を生じる差異であ
り,繰上期間差異は,課税繰上め効果を生じる差異である。
−48−
December
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
前利益を400,税率を50%とする。この仮定のもとで全面的配分を実施
する場合,/毎斯,>期間差異発生額に税率を適用した金額に相当する税配分
負債が計上され,各翌年度にその全額が取り崩されることになる(貨幣の
O
時間価値は,ここで重要性が小さく,割引計算の要否は問題にならないものとす
る。)。第5年度までの税配分め結果は,表2に要約するとおりである。部
分的配分説によれば,この例において,各年度で発生するすべての期間差
異について,その解消が無期限に延期ざれ,したがって,それらめ期間差
異は,事実上,絶対的な税額減免をもたらすと解されるから,これについ
て税配分は行われないよすなわち,表の「租税債務」欄の金額がそのまま
法人所得税費用となる。この場合,絶対的な税の減免額は,正味の期間差
異発生額に税率を適用して,第1年度から順に,
50, 0, 10, 20, 0と計算さ
れる。
表に示されているように,全面的配分において,毎期,税引前利益に見
合った法人所得税費用が計上されるのに対して,部分的配分にあっては,
6)SFAS
109[par. 13]は,繰延期間差異にかかる将来の税効果(課税繰延
により将来増加する法人所得税)の見越計上によって認識される税配分負債
を繰延税金負債(deferred
tax liability).繰上期間差異にかかる将来の税効
果(課税繰上により将来減少する法人所得税)の見越計上によって認識され
る税配分資産を繰延税金資産(deferred
tax asset)と呼んだ。税効果会計
基準は,税配分資産を「法人税等の前払額」[税効果会計に係る会計基準の設
定について,
2−2]と規定するにもかかわらず,
SFAS
109の取扱をそのま
ま受け入れてしまった[第2−2]。
税配分資産に関するこのような取扱が現行会計の基本的枠組に違背するこ
とは,西村[1990;1998(a)]で論証した。われわれが承認している会計の枠
組のもとでは,「法人税等の前払」があったとき,「法人税等を控除する前の
当期純利益と法人税等を合理的に対応させる」[税効果会計基準,第1]ため
にとられるべき手続は,前払された税額の繰延であったはずであり,将来の
支出の軽減分を見越計上するというものではなかったはずである。本稿では,
この問題をこれ以上論じないことにする。
−49
−
西 村 幹 仁
追手門経営綸集 Vol. 5 No. 2
期間差異の発生と解消がバランスしないかぎり,税引前利益と法人所得税
費用の関係は変動することになる。全面的配分を行う場合の税配分負債の
残高は,このケースではいつまでも減少することがない。
表2 全面的配分の例示
累積残高
税引前 期間差異 課税租税 税配分負債 所得税期間税配分
年度利益発生解消所得債務計上取崩費用差異負債
一
1 400(100) 300 150 50 200 100 50
2 400(100)100 400 200 50(50)200 100 50
3 400(120)100 380 190 60 (50)200 120 60
4 400(160)120 360 180 80(60)200 160 80
5 400
(160)160 400 200 80 (80)200 160 80
つぎに,第3年度の差異発生が60であることが分かっているとしよう。
この場合の部分的配分の結果を示したものが表3である。このヶ−スでは,
第1年度の期間差異のうち40について,第3年度で解消の無効化が中断
するため,この部分に関しては,第1年度と第3年度との間で税配分を行
う必要があるにこでも割引計算は,考慮する必要がないものとする。)。しか
し,期間差異の他の部分は,解消の延期が継続するから,税配分の対象と
表3 部分的配分の例示
累積残高
税引前 期間差異 課税租税税配分負債所得税期間税配分
年度利益発生解消差引所得債務計上取崩費用差異負債
一
1 400(100) (100)300
150 20 170 100 20
2 400(100)100 0 400 200 200 100 20
3 400(60)100 40 440 220 (20)200 60 0
4 400(160)60(100)300
5 400
150 150 160 0
(160)160 0 400 200 200 160 0
−50
)ecember ・<)9タ
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
ならない。このケースでも,全面的配分は,毎期の所得税費用を200とす
るであろう。その場合,各期の税配分負債の残高は,上記のケースと同じ
く,期間差異の累積残高に税率を適用したものとなり(第1年度から順に,
50, 50, 30, 80, 80),第3年度に20の減少を経験するが,これを除いて,ト税
配分負債の残高は減少しない。 ……
I‥‥‥‥] : 1 。1 =}。。
全面的配分論者は,税配分残高が貸借対照表に際限なぐ累積されていく
傾向があるという点に関して,丁勘定の回転」(revolving
account)の論理
で防衛するのが通例である。彼らによれば√期間差異の反復的継起は√:=そ
の解消の無効化したがって解消延期をもたらすものと解されない。ノ累積残
高が増加するにしても,それを構成する個々の要素は,たえず新たな項目
によって置き換えられているのであり,税配分残高の増加の裏にその構成
要素の回転の事実を見抜くべきであるというのである。この立場を「回転
一無限定配分説」と呼ぶことにしよう。これに対して,部分的配分論者の
ほとんどは,期間差異の解消無効化・延期の論理をよりどころに,長期・
反復的差異に関する税配分を否定する。これを「解消延期一限定的配分
説」と呼んでおく。
ところが,全面的配分説と部分的配分説の対立は,回転一無限定配分説
と解消延期一限定的配分説の間のそれに尽きない/ことに留意すべきである。
全面的配分説にも,期間差異の解消延期を承認するものがあり,また,部
分的配分説にあっても,無限定配分の立場を取るものがあるのである。後
者は,期間差異の解消延期を認める一方でレすべての差異についての税配
分を承認する。そのうえで,ここに割引計算の適用を要求し,これにより,
長期・反復的期間差異に関する税配分額は,ゼロもしくは無視しうる金額
になるとして,事実上,部分的配分を主張するのである。これを「解消延
期一無限定配分一割引説」と呼んでおくことにしよう。そして,この場合
にも,割引計算の適用を要求しない論者がみられるところであり,それが
もうひとうの全面的配分説となる。すなわち,「解消延期一無限定配分−
51,−
西 村 幹 仁
追手門経営論集 Vol. 5 No, 2
非割引説」である。 以上を整理したものが下図である.それはまた,本稿の議論の基本的方
向を示すものである.まず,=4説のそれぞれを,そこで用いられでいる論
拠を中心=にさらに分類し,これを批判的に吟味するこごとにより,議論の本
質的要素を抽出し,その他の要素を捨て去ることが必要である.全面的配
分説と部分的配分説の論拠の分類は,Beresford-Best-Craig-Weber
[1983, pp.35 − 40]においても試みられている。PJ.下においては,論点をヨ
リ鮮明化ずる尭めに,そこに加除修正を加えるとともに再分類したうえで,
これを新たな座標に位置付けたい。
全面的配分説と部分的配分説の分類
回 転-ョ・無限定配分 ⇒回 転一無限定配分説
)全面的配分説
非割引⇒解消延期一無限定配分一非割引説
無限定配分4[
じ 割 引⇒解消延期うii限定配分一割引説≫
解消延期4
部分的配分悦
限定的配分 ⇒解消延期一限定的配分説
3
回 転一無限定配分説の類型
回転一無限定配分説の論者は,いずれも,期間差異の解消延期を否認し,
回転する期間差異について,回転する税配分残高を対応せしめようとする。
これを裏付ける主たる論拠としては,以下のようなものを挙げることがで
きよう。
1 税効果の個別性
利益があらゆる資産・負債の結合の結果として生み出されてくるのは事
実であるが,それにもかかわらず,個々の資産・負債・収益・費用の,利
−52−
December
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
益に対する,したがって法人所得税に対する効果というものは,これを明
確に決定することができるという事実を変えることはできない。固定資産
(減価償却)に関する期間差異のために繰り延べられまたは緩り上げられた
所得税を個々の固定資産(個々の期間差異)に結びつ廿で理解することは,
それゆえ至当である(すなわち,減価償却費総額とその損金算入総額との正味の
差異に関してのみ税効果が識別されるのではない。)。それは,他の期間差異に
ついてもまた同様である。かくのごとく,期間差異とその税効果を個別的
に識別する場合には,古い差異の解消の税効果は,他の新たな差異分発生
の税効果と結びつけられ消滅せしめられるのでなく,古い差異自体と結び
つけられ有効となる。新たに発生する期間差異は,個別に識別されるそれ
自身の税効果を有すると解される。そこでは,期間差異と税効果がただ回
転しているにすぎない。 :レ
Richardson[1957,
ARS
9[Black,
p。524]; Sands[1959,
1966, p。71]; Hawkins[1969,
pp. 169−170]; Milburn[1988,p.
[pars. 204, 205]; Discussion
263];SFAS
Paper
1995[pars.
p. 585];
Carr[1963,
pp。41−42];
96[pars.
p.243];
Baylis[1971,
179]; SFAS
(4.4.10),(4.4.12)]
2 将来事象の税効果の認識の禁止
資産や負債は,現在または過去の取引から生じるのであって,将来の取
引から生じるのではない。将来の独立した取引のもつ相殺的効果は,将来
においてのみ記録される。将来発生する期間差異の税効果は,将来の事象
(取引)の結果であって,これを現在までに認識された事象のべ現在の期間
差異の)税効果と相殺することによ力2つの税効果のいずれをも認識しな
いことは,むしろ,将来事象の結果たる将来の期間差異め税効果を現在に
たたみ込み,それを現在の財務諸表のなかで認識するのに等しい。現在の
財務諸表において認識が許されるのは,すでに起こ9だ事象とそのような
事象の結果のみであるから,期間差異と税効果については,その回転を認
−53
109
西 村 幹 仁
追手門鰹官la奥Vol.5
No. 2
める以外にないというのである。
ソARS
9[p. 71]; Moonitz[1970,
Wyatt-Dieter-Stewart[1984,
cussion Paper 1995[pars.
pp.382−383]; Skinner[1972,
p.14]; SFAS
p.141];
96[pars. 7, 77, 178]1 Dis-
30,31,(5.8.2)]1FRED
19[Appendix
V par
24]
3ト他勘定からの類推
税配分残高は,買掛金やその他の勘定と共通の特性をもっている。買掛
金の残高が将来減少するとは期待されないということをもって,その支払
が無期限に延期されるゆえ,買掛金を記録することは必要でないと主張す
る者がないのと同じく,税配分残高が将来減少すると期待されない場合に,
これをもってその期間差異の解消の無期限延期を主張することは許されな
いというべきである。買掛金も税配分残高も,その構成要素は,絶えず回
転しているのである。
Moonitz[1957,
7)
p.181]; Richardson[1957,
p.524]; Graham[1959(a),
pp. 60−61,63,65]; Hicks[1963, p.48]■ARS
9[p. 71]; Hawkins[1969,
p. 42]; Baylis[1971, p.170]1 Discussion Paper 1995[pars.
(1.3.2)-
(1.3.5)]
4 測定の客観性
犬部分的配分説は,税効果の相殺が永続するという不確実極まりない期待
に会計の基礎を置くことを意味するか,さもなくば,期間差異の解消の延
期とその最終的解消の予測のために,無用の不確実性を導入する。そこで
は,過度に主観的あるいは恣意的な判断が行使されるため,測定結果の信
7)Graham[1959(b)]の内容は,本稿に直接関係しない若干の点を除いて,
これ[1959(a)]と同一である。
−54−
December
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
頼性は,疑わしいものとなる。回転一無限定配分説は,トそ=のような余地を
最小限に抑えるであろう6トそれは,同一の事実に対して同一の測定値を
(異なる事実に対して異なる測定値を)才物当てることにより,会計測定の首
尾一貫性と比較可能性を高めることになる
○ 。・
Graham[1959(a),
l:
pp.60,
1995[Preface
Paper
Byrd-Chen
Appendiχ
[1999,
V
and
63−64];
Beresford[1984,
Invitation
to Comment√pars.
p. 52];ノDiscussion
(3.2.3), (5.3.9)]
pars. (60- 57)-(60- 59)]; FRED 19[1999,Preface,
par. 24] し ……= ‥‥‥‥‥ ‥:
5 対応の最適化 犬 ∧ \
勘定の回転の論理を採用することにより適時に税効果を認識することを
通してのみ,税引前利益と法人所得税の適切な対応が可能になる。し課税所
得でなく,報告利益に結びつけて所得税費用を期間配分することによって
もたらされる対応の最適化は,損益計算書を通じて合理的な収益性評価を
行うための欠くことのできない要件である。対応の最適化それ自体が回転
一無限定配分説の採用を要請しているのである。,
ARB
44 (Revised)[par.
7];Graham[1959(a), pp.61−62,65]
4 解消延期一限定的配分説の類型
解消延期一限定的配分説の論者は,期間差異の解消無効化・延期をより
どころに,長期・反復的差異以外の差異にづいてのみ税配分を実施するこ
8)
とを主張する。その主たる論拠には,以下のものがみられる。
8)解消延期説を税配分の全面的な否定のために援用する議論もみられるとこ
ろであるが,もとよ呪 解消延期説は,長期・反復的差異以外の差異に関す
る税配分を排除するものではない。 その議論は,解消延期一無配分説の形式
を取ってはいても,そのかぎりで,理論上また事実上,解消延期¬限定的配
−55
−
;
西ト村丿幹・・仁
追手/'?拝読冷菓Vol. 5
No. 2
まし税効果の包括性………= プ 犬 : ・ ● 。: 。 。。・
<利益というものは,多種多様な資産・,負債の複雑な結合のなかから一体
として生み出されてくるものである。=個々の資産9負債から生じた利益・
損失および法人所得税というものを想定することは認めがたい。=固定資産
に関する期間差異のために所得税が増加または減少する場合,当該税効果
は,=グループ化された¬体としての固定資産(一体としての差異)に結びつ
けられるのであり,=これを個々の固定資産にまで分割して捉えるべjきでは
ない。減価償却費総額とその損金算入総額との正味の包括的差異のみが期
間差異の発生または解消を意味するのであり,また,その所得税への正味
の包括的な効果のみが税効果を意味するのである。さらに,異種の差異を
含むすべての差異を一括して包括的に期間差異の発生と解消を判定しよう
とする立場があ乙ることは,上述のとおりである。
Hill[1957,
Bevis[1965,
pp。359
−360]; Davidson[1958,
pp.79,
Meagher[1967,
123−125 (熊野,
; 1970, p. 380];
1968, pp. 69 −70, 107 −109); 1968, p. 40];
p. 48]; Waugh[1968,
[1974,pp. 90, 205]; Beechy[1982,
pp. 173, 176−177
pp. 537 −538];
Wheeler-Galliart
r .130]; Chaney-Jeter[1989,
p. 11]
2 将来事象の積極的予測
資産・負債の認談・レ測定にあたって,現在までに生起した事象の結果た
る将来の事象の積極的な見積を行うことは不可避である。会計担当者は,
将来の予測を基礎に判断を行使するというその役割を放棄することは許さ
れない。 期間差異の反復的な生起をもたらす投資政策のゆえに,繰り延べ
られた所得税が最終的に支払われることはないと予測されるときには√こ
分説を擁護するであろ=う1∧以下では,これらを解消延期一限定的配分説と同
様に分類する。Hill[1957, pp. 359 −360], Barton[1970, pp。13−21]などが
これに属する。
−56−
December
'夕夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
の事実を負債認識に反映すべきである.この議論は,つぎのような論理を
その前提に置いていると理解さこれる.=すなわぢ,反復的期間差異について
解消の延期を経て最終的に生じるに至る税効果こそが(もしそれが生じるな
らば)涙在の事象の(現在の期間差異の)真の結果であり√これこそが現在
の会計的認識の対象になる.もし,かかる=税効果が最終的に生じなこいので
あれば,税配分の対象は存在しない. .・..・・・ .1 二 :...:
Waugh[1968,p。538];
Bevis[1968,
380 −381]; Wheeler-Galliart[1974,
pp. 41-42];
Davidson[1970,
pp.
pp. 70−71, 203−204]; Chaney-Jeter
[1989.pp. 7-8,12−13] / ト: .・
3 他勘定との異質性 ,=I 犬 ト=== ト
税配分残高は,買掛金のような項目とは基本的に異質である○プ町らかに,
買掛金における勘定の回転は,実際の個別的取引に裏付けられているoそ
れは,財・サーヴィスの受入を伴い,<すべて特定人に対する債務で構成さ
れており,その債務金額と期日が文書に明記されており√そして,現金が
実際に支払われる。ところが,税配分残高に関しては,犬その回転がこのよ
うな実際の取引によって支えられているとはいいがたい。発生する期間差
異と解消する期間差異の正味の効果を含む課税所得の金額について,所得
税が一括して計算され支払われるのみであり,=これに対応して財こ・サービ
スが受け入れられているわけでもない。会計は,実際の事実を取り扱うも
のゆえ,税配分残高の回転を想定するくこと,は虚構というほかない。
Meagher[1967,
pp. 47, 48]; Waugh[1968,
Wheeler-Galliart[1974,
p. 538]; Barton[1970,
pp. 82, 89−90]; ASC[1985(b),
p.21];
par. 8]つ
4 経済的現実の洞察
全面的配分は,経済的現実というものをみていない。賃要なのは,期間
差異が現実にどのような(正味の)キャッシュ・フローをもたらすことに
−57−
西 村………幹 仁
追手門鰹営農業Vol.5
No. 2
なる=かである。実際に予測=される結果に税配分の焦点を合わせることに
よづてこそ,会計測定は,経済的現実を適切に反映したものとなる。それ
は,同一の状況を同様に測定し,異なる状況を異なるものと七て測定する
ことにより,会計測定の首尾¬貫性と比較可能性を高めることになる。
……:・Davidson [1970, p.380];/Wheeler-Galliart[1974,
[1982, pp. 126 −128];
Scrimgeour[1984,
‥[par. 12]; Givoly-Hayn[1992,
28];
9)
Keegan[1997,
Appendix
pp. 16, 203]; Beechy
p.112]; SSAP)15
pp. 394 −406]; Weetman
p. 89]; Responses
to Discussion
(Revised)
(1992, pp.=20,27−
Paper[FRED
19,
V par. 19]゛
5 利益平準化の禁止 ,
全面的配分は,不当な利益平準化をもたらすことになる。税配分は√報
告利益と所得税との間に事実としての対応関係が認識される場合にのみ実
施さこれるべきであり,\仮構的対応関係のうえに好ましい利益を創り出そう
とする全面的配分説の試みは不毛である。丿部分的配分の結果生じる利益の
変動は,事実を反映するものである。解消延期一限定的配分説こそ,合理
的な収益性の評価を可能にする。
……Powel1[1959,
pp. 25-27];∇Wheeler-Galliart[1974,
[1982, p. 130]; Chaney-Jeter[1989,
p. 205]; Beechy
p. 9]
5 解消延期一無限定配分説の類型
解消延期一無限定配分説は√割引説と非割引説とに区分される。両者は,
9)Weetmanは,
flow-through法(無配分法)に対して支持を与えたが,そ
の方法では↓短期的期間差異4こついて税配分を実施するものとされている
[p.20]。この点で,むしろそれは,ひとつの部分的配分法であった。
−58−
December
・999
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
税効果に割引計算を適用するかどうかという点で異な,るけれど,すべての
期間差異について税配分を承認することにおいては共通である。解消延期
一無限定配分一非割引説は,解消延期一限定的配分説に基づく部分的配分
論に対する反論として用意されたものであり,し反復的期間差異の解消の延
期を承認したうえで,それでもなお全面的配分か必要であると主張する。
一方,解消延期一無限定配分一割引説は,その場合において,無限定配分
自体は認めつつも,税効果に割引計算を適用することによって,長期・反
復的差異に関する税配分を事実上否定しようとする。ト割引の当否につjいて
は,西村[1998(b)]ですでにこれを論じたところであるから,ここでは,
割引説か非割引説かにかかわらず,解消延期一無限定配分説自体の論拠を
整理しておくことにしよう。
10)
1 特別の資金源泉:資金説
貸借対照表は,資金の源泉(貸方)と使途(借方)の対照表である。い
ま,期間差異の発生により当期の税額が減少したとする。それは,営業活
動外の源泉からの特別の資金の獲得を意味しており,この事実は,差異の
解消が無期限に延期されようとも,なんら変わることはないのであるから,
当該特別の資金源泉の総額を貸借対照表の右側に利益とは区分してこれを
計上すべきである。こうして,資金説では,将来,税効果が生じると予想
されようとされまいと,税配分の実施が要請される。 し
Jaedicke-Nelson[1960,
pp。278−281]; Hawkins[1968,
pp. 35−44]; Graul-Lemke[1976,
pp. 20 −41; 1969,
pp. 14−33]; Burns[1977,
pp. 83−84]
2 恒久的解消延期の非現実性
期間差異の反復的生起によってその解消が延期されたとしても,企業の
10)西村[1990,
pp. 109, 110 ; 1998(a), p. 110]を参照。
−59
−
西・村二幹仁
追手門経営冷集Vol.S No.2
存続中にいずれは解消の日を迎えることになる。実際)長期・反復的差異
といえども,少=なぐとも部分的な解消延期の中断,すなわち期間差異の累
積残高の減少という事態に直面することは通常避けられない。税法の改正
によって,反復的差異が部分的にあるいは全面的に解消をみることもある
かもしれない。しか払企業の成長が止まり縮小しでいく過程および清算
等の段階においては,かっての反復的差異にもその解消の日が訪れること
になる。こうして,解消の延期は,解消が恒久的に生じないことを意味す
11)
るも=のと解すべきでない。
Sands[1959,
12)
pp。585−586]; Morley[1973,
pp. 180 −181];Sansing
(1998。
13)
pp. 357 −363] ト 〉
14)
3『税引後方式』による防戦
税務上のみ加速的な償却を実施している場合において,この期間差異が
かりに反復的に生じるとしても,犬償却費の損金算入に伴って資産の租税控
除能力(tax deductibility)が逐次実現し失われていくという事実は変わら
ない。それゆえ,このようなヶ−スにあっても,加速的償却を通じて追加
11)Macpherson[1954,
pp. 357−359]もこの立場に通じるものがある。
12)Sandsも,まず回転こ削限定配分説を支持するが,続いて,解消延期説を
採用するとした,場合において,恒久的な解消延期の論法の破綻を指摘したう
えで,この場合にもやはり,すべての期間差異について税配分を実施すべき
であるとしている。むしろ,分析の重点は,後者に置かれているようにうか
がわれる。
13)企業評価モデルに基づいて税配分負債の経済的価値を決定しようとするや
や特異なアプローチにより,期間差異の解消が延期されつづけても,なお税
配分負債は,正当な負債であり,一定の割引計算により評価されるべきであ
るとする。
14)資産原価配分方式としての『税引後方式』と税配分方式としての税引後方
式の違いについては,西村[1998(a), pp. 117−124]を参照。
−60−
December
^夕夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
的に実現した税額軽減(税効果)に相当する資産原価を(会計上の)追加的
減価償却費として配分する方法を取ることは非難されるべきでない。かく
のごとく,この立場を取る論者は,『税引後方式』の論理をもって,解消
延期一限定的配分説に基づく批判を回避しつつ,全面的税配分の目的を達
成しようとする。
Richardson[1957,
15)
pp. 525−526];
Hendriksen[1958,
[1959, pp. 343−344]; Wyatt[1984,
pp. 51-52];
Board
Members
p.220]; Coutts
Distinct
View
among
[Discussion Paper 1995. pars. 25,
( 4.4.13),
(4.4.14)]
恒久的解消延期が稀であること(上記2)を根拠に無限定配分の立場を
取るSands[1959,
p.586]によれば,現在価値への割引の慣行をもたない
現行会計においては,税効果の割引は時期尚早であるけれど,理論的には,
他のすべての長期負債とともにこれを実施することが望まれるであろうと
される。解消延期一無限定配分一割引説がかなりの論者によって支持され
ていたことは,たとえば,所得税の会計処理に関する FASB 公聴会
(1984年4月)において,税配分残高の膨張という問題に対処しこれを減少
させるための方法として,税効果の割引を支持する多数の意見表明が行わ
れたこと[Liebtag,
1984, p.52]がこれを示している(税配分残高の膨張は問
題であると認めることは,解消延期説を承認していることを意味する。また,もし,
限定的配分説が論者の立場であったならば,割引という方法に救いを求める必要は
15)税配分残高の回転を唱えるRichardsonは,それにもかかわらず,解消の
無期限延期の問題によく応えるのは,資産原価配分方法としての『税引後方
式』であるとして,その立場を後退させている。 これにより,解消延期の主
張を容認した場合にも,『税引後方式』の助けを借りてその全面的配分の立場
を守ろうとしている。 また,税配分残高の回転を信じ論証しているGraham
[1959(a)]が長期・反復的差異について『税引後方式』の適用を特別に認め
たとき[p.
の論脈は,
64],彼は,解消延期説に一片の道理をみていたと思われる。 そ
ARB
44 (Revised)[pars。4,5,7]のそれと同じものであった。
−61
−
西 村 幹 仁
追手門経営論襲Vol.5
No. 2
なかったはずである。)。
6
論点の吟味:回転説対解消延期説
以上のように,税配分範囲はどうあるべきかという問題をめぐっては,
数え切れないほどの論者によって,実にさまざまな角度から果てしない議
論が展開されてきた。第1節でみたように,現在,大勢は,全面的配分説
へと傾きつつあるようにみえるにもかかわらず,そこからは,激しい論争
が解決され理論的調和の高みに到達するときにもたらされる安らぎや平穏
というものが生み出されてこない。一挙に流れを逆転させる変節の経験,
そこへの政治プロセスの介入[西村,
1997],部分的配分説の最後の砦で
あったイギリスASBの「われわれは正しかった。 それにもかかわらず,
基準の調和を受け入れる。」といわんばかりの理解困難な態度(FRED)19,
Preface,Appendix V pars.22,24,25]等は,われわれを不安の淵に突き落と
す。そしてなによりも,第3節∼第5節に掲げた論争は,決して,一方が
他方に理論的に打ち破られることによって解決されたというには程遠い状
況にあるというほかない。
こうして,少しまじめに問題を考察するならば,到底,ここで真剣な吟
味を加えることなく,全面的配分説を受け入れていくことは許されないこ
とが分かる(無条件に部分的配分説を受け入れることは,なおさら許されないだ
ろう。)。そこでまず,回転説と解消延期説の衝突について,上記に整理し
た対立点に沿って,順に再吟味していくことにしよう。この両説の対立は,
事実上,回転一無限定配分説と解消延期一限定的配分説の対立であった。
他の2つの立場に属する論者は,回転か,解消延期かという論争に積極的
に参加することはないようである。
まず,税効果の個別性(第3節の1:以下,
3−1と表記する。)とその包括
性(4−1)の対立は,税配分範囲論争の最大の焦点のひとつであった。問
−62−
■December
・SS夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
題は,期間差異とその税効果は,これを個別的に識別すべきなのか,包括
的に一体として識別すべきなのかという点にある。前者によれば,反復的
期間差異グループを構成する個々の差異とその税効果は絶えず回転し,そ
の内容を変えているのに対して,後者によれば,そのような個々の差異と
その税効果の回転は相殺され無効化し,解消は延期されることになる。
困ったことに,われわれは,期間差異とその税効果が現れ消えゆく様を,
包括的に一体としてとらえる能力のみならず,これを個別的に識別し構成
していく能力をも与えられている。重い荷物をみんなで支えあっている場
合,重荷は,みんなの力の結合によって一体として支えられていると思考
することもできるし,ひとりひとりが,それぞれの分に応じ力を出し合っ
ているなかで,各人の個別的な貢献の大きさを思考することも可能である。
こうして,いずれの主張も,白紙の状態から出発し,その主張の文脈のな
かに身を沈めて考量するかぎり,それぞれに高い説得力を有しており,容
易にこれを覆すことはできない。税効果の個別性と包括性のいずれを承認
する立場が正しいのか。一方の主張を否定するためには,先験的に他方の
立場を選択し,当該他方の立場が正しいことを出発点として,もう一方の
主張を裁いていくか(もちろん,これは邪道である。),さもなくば,税効果
の個別性対包括性の問題の外にこの議論を裁く鍵を求めるしかない。
つぎに,未発生の期間差異の税効果を見積もって現在に取り込むことは,
許されるのか(4-2)許されないのか(3-2)という問題をめぐる議論も
また,税配分範囲論争における最大のもののひとっであった。この問題を,
将来の事象の結果を現在認識することが許されるかどうかという問題に置
き換えてしまうかぎり,この問いに対しては否定的に答えるしかありえな
いから,その帰結は自明である。すなわち,期間差異も税効果も回転して
いるものとみなされる。一方,期間差異の解消によって消滅するはずの課
税繰延の効果を,新たに発生する期間差異の効果によりさらに将来へと引
き継ぐことに成功した場合,そこにおける期回差異の真の経済的効果とし
−63
−
西 村 幹 仁
追手門経営謡柴Vol.
5
No. 2
て,延長されたヨリ長い期間にわたる課税繰延の機会を得たものとして事
態を構成することも不自然ではない。その場合には,解消の延期を経て最
終的に生じる税効果こそが現在の事象の結果として認められることになる。
しかるに,いずれの論者も,われわれの会計が,現在までに生起した事象
のみならず,その事象の結果として将来生じる事象をもいま認識するとい
う方法をとっていることについては,異論なくこれを承認するのであるか
ら,論点は,将来生じる税効果のうち,どこまでが現在の事象の結果であ
り,どこからが現在の事象とは独立の将来の事象の結果なのかという点に
帰着する。こうして,この場合の論争も,結局,上記の個別匪対包括性の
論争に収束する。すなわち,相次いで発生する2つ以上の期間差異を一体
としてとらえることが禁止されるかぎり,将来発生する期間差異の税効果
は,現在の期間差異から切り離され,すべて将来の期間差異の,したがっ
て将来の事象の結果とみなされる。また,最初の期間差異の税効果のみが
現在の事象の結果となる。逆に,もし期間差異を一体として認識すること
が許されるならば,結論は,正反対のものとなる。いずれにせよ,ここで,
一方を事実,他方を虚構と断じることは困難である。
上記の2つの論点と並んで,税配分範囲をめぐる論争の焦点となったの
は,税配分残高に他勘定からの類推を適用して勘定の回転を描こうとする
立場(3-3)と,他勘定との異質性を理由にこれを禁じようとする立場
(4−3)の対立であった。反復的期間差異について,税配分残高がいつま
でも減少することなく累積されていく場合においてし勘定の構成要素は,
買掛金等がそうであるのと同様に絶えず回転しているとする主張が認めら
れるかどうかは,税配分残高と買掛金等が類推に足る共通性を有している
かどうかに依存する。ある人は,買掛金の回転が,財・サーヴィスの受入,
個別的債務の発生,その支払による消滅等の実際の取引に裏付けられてい
るのに対して,税配分残高がそのような特徴を欠くことを強調する。強い
説得力をもつこの主張に対して,他の人は,そのような都合のよい特製の
−64−
December
'夕夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
区分基準に異議を唱えて防戦に努める。しかるに,税配分残高の回転も,
その背後で日々営まれる実際の経済活動とこれに対して行使される熾烈な
税務戦略とによって裏付けられており,課税の繰延や繰上の発生と解消は,
それぞれ,個々に特定の経済的決定や行動に対応している。そして,その
ような課税所得および税額計算のプロセスのなかで,期間差異の発生と解
消が,また,税効果の具体的・個別的回転が明確に識別可能である。これ
を根拠に,税配分残高の回転は,買掛金の回転と同様に事実であるとする
主張は,容易には退けられないであろう。やはりここでも,一方を事実,
他方を虚構と決め付けることはできないのであり,論点は,上記の個別性
対包括性の論争へと帰着する。税効果の個別目五が認められるかどうかが,
税配分残高の回転が認められるかどうかを決定するのである。
税配分範囲論争のなかで多くの論者が議論を戦わしてきた他の論点につ
ぎのものかおる。それは,測定の客観性(3-4)と経済的現実に即した測
定(4-4)のいずれを取るかという問題である。部分的配分による場合,
全面的配分によるのと比べて,予測のために要するコストは少なからず増
大するであろうし,それにもかかわらず,測定の不確実性が著しく高くな
ること(測定の客観性の低下)は避けられない。 しかし,これだけを取り上
げて,部分的配分説を批判し,全面的配分説にポイントを与えるとしたら,
それは公正でない。同様に,測定の客観性を考慮に入れず,いずれの測定
がヨリよく経済的現実を反映しているかという点にれを測定の不偏性と呼
んでおこう。)だけに基づいて,一方の議論を評価し,他方を批判するとし
たら,これもやはり公正とはいいがたい。事実,測定の客観性が低いにも
かわらず,その不偏Mミが極めて高い結果,全体としてその測定の目標によ
く到達している(測定の信頼性が高い)場合もあれば,いくら不倫吐が高く
ても,それをもって埋め合わせ切れないまでの客観性の欠如のために,全
体としての信頼性が低い場合もあるからである。また,逆に,少し不偏性
において劣るとしても,高い客観性のために,結果的に,全体として高い
65−
西 村 幹 仁
追手門経官設業Vol.5 No.2
信頼匪を確保している場合もあれば,高い客観性をもってしても償い得な
いほどに不偏性の欠如が甚大であるという場合もありうるからである。さ
らに,以上において,部分的配分が経済的現実を適切に反映している(高
い不偏性)のに対して,全面的配分は,現実を見ようとしていない(低い不
倫│生)というように決め付けるところから出発することもまた不公正であ
る。税配分が反映すべき経済的現実とは何かを決するのは,やはり上記の
個別匪対包括性の問題である。そのうえで,測定の客観性をあわせ考量し
て,測定の信頼性が評価されなくてはならない。
以上の論争の陰に隠れがちであるが,つぎの議論は,注目すべき視点を
提供している。すなわち,一方が,全面的配分こそ税引前利益と法人所得
税の対応の最適化を実現すると主張するのに対して(3−5),他方は,全
面的配分を,税引前利益と所得税の関係および税引後利益を不当な平準化
の操作で歪めるものであると非難する(4-5)。後者によれば,利益を測
定するまえに,測定の対象となる事実が存在しているはずであり,測定は,
これを的確に反映するプロセスでなくてはならないのに,全面的配分は,
事実がどこにあるかをみようとせず,むしろ,都合のよい事実を作り出そ
うとしているということになる。全面的配分によって実現される税引前利
益と所得税の関係の規則性は,会計測定者が創り出した虚構を反映してい
るにすぎないのか,それとも,逆に,部分的配分によって実現される税引
前利益と所得税の不規則な変動こそ虚構なのか。これをいくら問い続けて
も,そことどまっているかぎり,決して対立が解消することはない。しか
し,ここで問題となっている,会計測定者が事実を創り出しているとの論
点は,後の議論につながる重要な問題提起となるだろう。対応の最適化対
利益平準化禁止の論争は,税効果会計において(さらには,企業会計一般に
おいて),対応概念が立ち向かうべき事実とはどのようなものなのかを掘
り下げて解明しないかぎり,問題解決はありえないということをわれわれ
に教えている。
−66−
December
^烈夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
先の論点の吟味を通して,最後の議論を除くいずれの論点も,税効果の
個別性対包括性の問題へと収束することを明らかにした。そして,個別性
対包括性の問題を解決するための鍵は,この議論の外に見出すほかないこ
とも指摘した。いまや,われわれに残された道は,対応概念の適用に関し
て,企業会計が直面し処理しようとしている事実とはどのようなものであ
るか,それをどのようにとらえ構成すべきなのかという基礎的な問題を解
き明かすことに挑戦すること以外にない。おそらく,この道の向こうに,
個別性対包括性の問題を解決するための鍵があるだろう。しかし,この道
を進んでいくまえに,他の未解決の問題について検討し解決しておきたい。
7 論点の吟味:解消延期一無限定配分説
ここで,回転説対解消延期説の衝突を解決するまえに,無限定配分説の
議論を取り上げ,その存立の可能性について検討しておこう。解消延期説
に基づく限定的配分の立場からの全面的配分説への激しい攻勢のまえに,
全面的配分の砦を死守するために工夫された反論が,解消延期一無限定配
分であった。これを掲げる人々は,回転説の解消延期説に対する敗北を認
める代わりに,税配分範囲を回転一解消延期論争から独立させたうえで,
特製の論理により無限定配分を圭張する。
そのような論理のひとつが資金説(5-1)であった。資金説における貸
借対照表は,資金の源泉と使途の対照表であり,課税の繰延または繰上は,
営業活動外の源泉からの資金の獲得または営業活動外の資金の使途を意味
するから,これを利益計算過程より除外して,貸借対照表に税配分負債ま
たは税配分資産としてすべて計上すべきであるとする。それは,負債また
は資産が当然に有する特性のひとつ一資金の源泉または使途−を取り上げ,
その他の特性を切り捨てること(たとえば,負債は,もはや将来支払われるか
どうかを問われることはない。)により,これを貸借対照表能力の判定のため
−67−
西 村 幹 仁
追手門,経営論集Vol.5
の必要十分条件へと格上げしようとする。しかし,そこで切り捨てられた
特性は,むしろ,資産性または負債性の本質的要件を構成するものであっ
た。資金説は,会計が成り立っていくためになくてはならない一番大切な
ものをみんな捨てて,全面的配分説を死守しようとしている。その論理の
破綻は,すでに明白であろう。
これに対して,期間差異の恒久的解消延期の非現実性(5−2)を主張す
る人々かおる。それによれば,どのような期間差異も,永久には存続しえ
ない以上,すべての差異について税配分を行う以外にない。遅くとも,企
業の成長が止まり縮小していく過程でまたは清算等の段階において,そし
て,かなりの部分は,これよりもずっと早く,その解消のときを向かえる
ことになるというのである。しかし,これは,われわれの会計の基本的約
束に違反する。すなわち,反証がないかぎり,会計測定の対象となる企業
は,永続的に存続し活動し続けるという前提を放棄することは許されない。
継続企業の公準を解き放ったうえで,予測不可能な遠い将来から,都合の
よい事象(期間差異の行く末)のみを現在へと取り込むことによって,この
立場を取る人々もまた,一番大切なものを捨てようとしている。
解消延期説を取りながら無限定配分を主張するための第3の論理は,
『税引後方式』の装置を利用するものである(5-3)。税配分の目的を,
租税項目以外の資産・負債・収益・費用項目,たとえば,固定資産と減価
償却費の会計処理を変更することによって達成しようとする『税引後方
式』の論理に従って,税務上の加速償却に際して計上される追加的減価償
却は,現在の租税控除能力の喪失を反映するのみであるから,将来この期
間差異の解消が起こるのかどうか,または延期されるのかどうかを考慮す
る必要はないと説明されることになる。しかし,税配分の目的と減価償却
の目的は相容れないから,『税引後方式』の論理で解消延期一無限定配分
16)
を擁護する試みは成功しない。それは,会計の基本的枠組を犠牲にして全
16)r税引後方式』の批判について,西村[1998(a),
−68−
pp. 117−124]参照。
No. 2
December
^勿夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
面的配分説を守ろうとしている。
こうして,解消延期一限定的配分説の立場からの批判に応えるべく用意
された上記の3つのアプローチは,そのいずれもがもろくも崩れ去るので
ある。解消延期を承認するかぎり,無限定配分の論理の存立の余地はない
といわなければならない。なお,解消延期一無限定配分説にあって,税効
果に割引計算を適用することにより,長期・反復的差異についての税配分
を事実上否定しようとする人々があるが,その論理の破綻も,解消延期一
無限定配分説を共有するかぎりにおいて避けられない。
8 法人所得税と対応概念
残された課題である回転説対解消延期説の衝突の決着は,上述のように,
税効果の個別性と包括性の対立をどのように解決するかという一点へと帰
着し,さらに,その解決のためには,対応概念の適用に関して,税効果会
計が(さらには,企業会計が)直面している事実とはどのようなものであり,
これをどのように構成すべきかというヨリ基礎的な問題に光を当てること
による以外にないことを明らかにした。そこで,法人所得税を含む財貨費
消と財貨発生の認識について,われわれの会計が採用している方法はどの
ようなものであったかを,会計の基本的枠組みに回帰しつつ整mすること
17)
にしよう。
会計は,企業の支配する財貨の費消と発生を一定の支配の基準に基づい
て認識する。そのような財貨の変動は,様々な財の増減の渾然たる寄せ集
めとして素朴にとらえられるのではない。すべての財貨変動は,一定の対
17)本節でレビューする会計の枠組みは,井尻[1968,pp.93
−158 ; 1976, pp.
77−157]に負うところが大きい。なお,そこでは,われわれの「対応」を
「交換」と呼んでいる。
−69−
西 村 幹 仁
追手門経St診菜Vol.
5
応概念を基準としてこれを全面的に再構成することになる。すなわち,財
貨変動の集合は,注意深く観察され分析され,強い対応関係(犠牲と効益
の関係)にある財貨費消と財貨発生が切り出され結合される。原則として,
すべての財貨変動が,このような対応関係にある対の形式へと分析され整
理されなくてはならない。かかる対応の連鎖を通してのみ,すべての非貨
幣的財貨(たとえば,製造プロセスを通して完成された製品)を貨幣(たとえば,
原料の購入代金)と結びつけ,これに貨幣的評価を与えることが可能とな
り,また,このような非貨幣的財貨の譲渡について,損益を認識すること
18)
が可能となる。
対応付けられた対を構成する財貨費消と財貨発生は,そのいずれもが現
在までに発生している必要はない。対の一方は,将来発生するものであっ
てかまわない。そのような対応のうち,現在記録することが許される対応
には,対の一方である財貨発生が現在に属し,もう一方の財貨費消が将来
に属する対応と,その逆に,財貨費消が現在に,財貨発生が将来に属する
対応の2類型かおる。われわれが問題としている税配分負債は,この前者
の対応によって認識されたものにほかならない。また,税配分資産は,後
者の対応によって認識されたものである。この対応を構成する財貨費消は,
租税の支払であり,同じく財貨発生は,税引前利益としての収益余剰で
あった。こうして,税引前利益に合理的に対応する法人所得税の認識を求
めて積み重ねられた努力の成果こそ税効果会計にほかならない。
18)なお,ある種の財貨費消は,どのような財貨発生にも結びつかず,また,
ある種の財貨発生は,どのような財貨費消にも結びつかないということがあ
る。そのために,このままでは,会計的な評価プロセスの全体を完遂するう
えで支障が生じるという場合には,貨幣を対価とする取引(対応)を擬制す
ることが必要になる。 たとえば,無償で取得した資産を公正な時価で評価す
るということは,当該時価相当額の現金が対価として支払われたことを擬制
しているものにほかならない。
−70−
No. 2
December
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
税配分範囲をめぐる論争は,税引前利益と法人所得税の対応における未
発生の対,たとえば,現在までに発生した税引前利益(財貨発生)に対応
する将来の所得税(財貨費消)が,将来実際に生じることになるのかどう
か,あるいは,いつ生じるのかという論争であったが,それは,次から次
へと生起する将来の財貨変動のなかから,過去の財貨発生に対応しそれと
対を作る資格のある財貨費消をどのように選び出すかという問題であった。
その選択の方法として,
2つの有力な候補が名乗りをあげているのであり,
これまでに提示された論拠をみるかぎり,両者は,それぞれに説得力を有
しているけれど,一方が他方を圧倒するだけの優劣の差がみられないため,
いずれが選ばれてもおかしくないという状況にある。われわれは,このよ
うな状況のもとで,いずれか一方を選び出し他方を捨てるという困難な選
択に直面しているのである。選択のための公正な基準は,過去の論争から
直接には得られない。
問題を解決するためには,対応概念とそれが立ち向かおうとしている事
実との関係をさらに掘り下げて考察していくしかない。井尻[1968,pp.
111−117]によれば,「……過去の規則性が将来にも働くであろうという信
念,すなわち類似仮定こそ未来を予測する唯一の基礎なのである。」[同,
p.117]過去および未来に向かって広がる複雑かつ膨大な財貨の流れを,
因果的な規則性を基準にして分類・整理するという困難な創造的仕事を通
じて,財貨費消と財貨発生が可及的にしかも明確に対応付けられて記録さ
れるのでなくては,未来を予測することも計画することもできない。それ
だけでなく,ある物を得るのに何を犠牲にしたのかを知りえないから,企
業の経済活動を理解し評価することすら不可能となる。
測定対象としての財貨の流れは,通常,対応概念の適用のための与件と
みなされよう。しかし,対応概念は,そこでは前面に現れてこないもうひ
とつの非常に重要な役割を果たしている。対応概念の働きは,与件として
の財貨費消・財貨発生をまえにして,それを合理的に結合するというもの
−71
−
西 村 幹 仁
遮手門経営論集Vol.S No.2
にとどまらず,むしろ逆に,対応概念それ自体が財貨費消または財貨発生
の認識のための重要な役割を担うことになるのが普通である。そのひとつ
のケースは,現在の財貨費消または財貨発生が将来の財貨発生または財貨
費消と結合する場合に現れる。そこでは,当該将来の財貨変動は,対応の
認識のための与件としてあらかじめ与えられるのではなく,現在の財貨変
動との対応を唯一の手がかりに,これを捜し求めていくという過程が必要
なのである。また,現在の財貨変動にあっても,対応の対の一方として財
貨変動が認識されたことを手がかりに,他方の対を予測し探し出す結果と
して,新たな財貨変動が認識されることが少なくない。さらに,対外取引,
生産活動など,対応を引き起こす原因となる活動自体に基づいて,起こっ
たはずの(起こるべき)対応のパターンがまず認識され,つぎに,これを
手がかりとして,当該対応に当てはまる財貨費消と財貨発生が認識される
こともまた少なくないであろう。
このように,対応概念は,財貨変動を前提として事後的に働くのみでな
く,財貨変動の認識のための(事前的な)積極的役割をも演じるのである。
その仕事は,財貨費消と財貨発生の間の対応関係を余すところなく看破す
ることに加えて,現在あるいは将来の財貨変動それ自体を能動的に発見す
るというものであった。企業のまえに広がる世界または経済事象は,その
境界がきわめて不明瞭であり,しかも,複雑極まりない無限の連続体をな
している。企業会計が認識しようとするのは,このような世界であるから,
必然的に,企業会計のなすべき仕事は,まことに困難なものとならざるを
えない。ここにおいて,対応概念は,上記の事前的機能および事後的機能
の両者相まって,会計測定者が複雑を極める世界を意味ある形で分類し,
秩序付け,解釈することを可能にし,会計の目をもって世界を見抜くため
の強力な手段を提供する。対応概念がこのような役割を果たすことによっ
てはじめて,企業会計は,その課された仕事を完遂することが可能となる。
企業会計に課された困難な仕事のなかで,対応概念の果たすべきこのよう
−72−
December
り夕夕
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
な役割の重要性は,いくら強調しても,強調し過ぎるということはないで
あろう。
対応概念は,混沌たる世界に秩序を与え,これを理解することを可能に
する。しかし,その仕事は,あるがままの全体を一撃で写真に収めるごと
く,忠実に写し取ろうとするものではなく,むしろ,それは,観察者の主
体的・能動的な働きかけを通して,その脳裏に描いた世界を詩文で記述し
ようとするのに近いといえる。すなわち,財貨費消と財貨発生の対応関係
を識別するという仕事は,知覚と判断のプロセスであり,優れて創造的な
性格のものである。こうして,対応概念は,複雑を極める世界を意味ある
形で分類し,秩序付け,解釈することを可能にすることを最大の目標とし
て,財貨費消と財貨発生のあらゆる対応関係を発見ずべく,創造的に機能
する。
そこで,いま,ある財貨費消を他の財貨発生と結合するについて複数の
候補かおり,そのいずれも,十分にもっともらしい説得力を有しているよ
うな場合において,どの結合の仕方を採用するかによって,測定結果に重
大な相違が生じるというケースは,会計実務上,決して珍しいことではな
い。それらは,企業会計の歴史のなかで,いつも大きな論争のテーマを提
供してきた。原価計算における製造間接費の配賦の方法あるいは繰延資産
や引当金の範囲の問題は,その典型的な例であり,また,われわれの税配
分範囲の問題も,まさしくこれであった。いま,われわれは,直面してい
る会計測定領域において,測定対象となる事実または経済的現実の解釈に
関する複数の候補について,それを振り分け特定する方法をこれ以上もち
合わせていないという状況にあることに留意すべきである。対応概念の適
用のおり方に関するこのような問題を乗り越えるためには,上記の対応概
念の本義に照らして判断を下すほかないというべきであろう。混沌の世界
に秩序を取り戻し,理解可能性を回復する財貨費消と財貨発生の対応関係
を発見することこそが求められるのであるから,ここで必要なことは,つ
−73
西 村 幹 仁
追手門経営論集yal、5
ぎの問いに答えることである。すなわち,混沌の世界への秩序と理解可能
性の回復というゴールをもっともよく達成する対応のとらえ方はいずれで
あるか。これである。それは,いずれの対応が事実であるかをひたすら探
し出そうとする受動的会計の姿ではなく,逆に,対応概念の本義に基づい
て,主体的に優れた対応あるいは事実を創り出そうとする能動的な会計の
姿をみているのである。
われわれの選択肢は,回転説か,解消延期説かというものである。回転
説が達成しようとするのは,税引前利益と個別的に識別される税効果との
対応であり,回転する税配分残高の確立である。解消延期説の目指すもの
は,税引前利益と包括的に識別される税効果との対応であり,その税配分
残高の回転は相殺され,期間差異解消の税効果は延期される。回転説では,
税引前利益に対応する税効果がつねに発見され用意されるのに対して,解
消延期説では,長期・反復的期間差異について税引前利益に対応させるべ
き税効果が用意されることはない。回転説において,税引前利益と法人所
得税の対応関係が瞭然として明らかな規則性を回復するのに対して,解消
延期説においては,その対応関係が不規則に変動して定まらない。こうし
て,上記のような対応概念それ自体のゴールをもっともよく達成するのは,
回転説による対応のとらえ方であると答えることになる。回転説において
識別される対応は,税引前利益と法人所得税との間に理解可能な秩序を回
復するもっとも有効な方式である。
上記の対応の最適化対利益平準化禁止の論争において,会計測定者が事
実を創り出しているとの論点が提起されたが,それは,対応の最適化のア
プローチ(3-5)を批判することを目的としていた。しかし,われわれは,
むしろ逆に,会計測定者はつねに事実を創り出すと論じているのである。
こうして,われわれが到達した結論は,税引前利益と法人所得税の対応の
最適化を実現するのは,勘定の回転の論理に基づく全面的配分の方法であ
ると論じた上記の対応の最適化のアプローチにおけるそれにちょうど重な
−74−
No. 2
)ecember・999
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
ることになる。ここで,回転説が達成しようとしているのは,不当な利益
平準化であるとの批判を許してはならない。われわれは,回転説と解消延
期説について,既存の論理によっては優劣つけがたいという状況から出発
していることを思い起こすべきである。それを振り分け特定する方法をこ
れ以上もち合わせていない状況において,対応の対が美しくまたは規則的
に配列されているという一点をとらえ,ひたすらそのことのゆえに,それ
を虚構に基づく利益平準化であると断定する態度は危険である。
ここで,測定の客観性(3-4)と経済的現実に即した測定(4-4)のい
ずれを取るかの論争にも決着をつけることができる。その論争のなかでも,
部分的配分が測定の客観性の顕著な低下を生じるという点については,意
見の相違はみられなかった。一方,回転説が描き出そうとする事実こそ,
会計測定が目指すべき経済的現実に一致する(高い不偏性)ということが
いま明らかになった。したがって,客観性においても不偏性においても
勝っている回転説に基づく全面的配分が,会計測定の全体としての信頼性
においてもまた打ち勝つであろう。
む す び
税配分範囲をめぐる果てしない論争の歴史に,いま,ひとつの大詰めが
用意されようとしているのかもしれない。大勢は,全面的配分説へと傾き
つつあるようにみえるにもかかわらず,それは,議論を尽くしたうえで到
達した理論的調和を反映するものとはいいがたい状況にある。長く激しい
論争を通して,議論の量は,十分過ぎるまでに達していても,もはや,解
決の見込みない論点の対立が延々と反復されるのみであった。ところが,
幸いにも,本稿の議論を通じて選択されることになったのは,回転説に基
づく全面的配分の立場であった。幸運は感謝してよいが,議論を尽くすこ
となく達した合意は,妥協にほかならず,かりに,われわれがいま正しい
75−
西 村 幹 仁
追手門、経営洽集Vol.S
ところにいるとしても,その地位は,磐石を欠いている。過去にそうで
あったように,特定の利益を代表する強力な政治的力に直面して,またも
や,そのもろさを暴露するかもしれない。議論の空白は埋められなくては
ならないのである。会計理論の存立基盤がいま挑戦されている。
本稿では,税配分範囲に関する議論を4つのタイプに分類した。最大の
議論の対立は,回転一無限定配分説と解消延期一限定的配分説に属する論
者の間で繰り広げられてきた。それは,反復的に生起する期間差異とそれ
にかかる税配分残高の回転は信じてよいか,それとも,実態は静正してい
るに過ぎず,期間差異の解消が延期されているとみるのが正しいのかとい
う点を争うものであった。これをめぐる論争をその論点の違いに基づいて
分類し,ひとつづつ吟味していった結果,問題解決の鍵は,そのような議
論のなかにはなく,対応概念が企業会計のまえに広がる世界をどのように
とらえ構成しようとしているのかを理解することにあることが明らかに
なった。
続いて,税配分範囲に関する他の2つのタイプの議論を取り上げた。そ
れらは,解消延期説に立ちながら,無限定配分を主張するものであったが,
一方が税効果に割引計算を適用するのに対して,他方は,割引計算の適用
を否認した。そこで,後者の無限定配分がそのまま全面的配分を意味した
のに対して,前者のそれは,長期・反復的期間差異に関する税配分額がゼ
ロもしくは無視しうる金額になるため,結局,部分的配分説に属すること
になった。解消延期一無限定配分説の論点にもいくつかのものがみられた
けれど,そのいずれも,会計の基本的枠組みを犠牲にして,その立場を守
ろうとしていると指摘した。
こうして,税配分範囲を左右する論点は,対応概念とそれが立ち向かお
うとしている世界または事実との関わりのあり方へと収束することになっ
た。問題の本質をとらえんと,会計の基本構造まで降りていき,そこから
改めて問題を照らし出すことによって到達するところは,いずれの対応が
−76−
iVo.2
)ecember ・SSSI
税配分範囲論争の混迷と会計理論存立基盤の危機
事実であるかをひたすら探し出そうとする受動的会計の姿ではなく,逆に,
混沌の世界への秩序と理解可能性の回復という対応概念の本義に基づいて,
主体的に優れた対応あるいは事実を創り出そうとする能動的な会計の姿で
ある。かくて,回転説において識別される対応こそ,税引前利益と法人所
得税との間に理解可能な秩序を回復するというまさにそのことのゆえに,
回転一無限定配分による全面的配分説が最後に選択されることになる。問
題解決の鍵は,まさしく議論の原点に立ち帰ることにあったのである。
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