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高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二
Received: Apr 13, 2009 Accepted: Jun 25, 2009 Published online: Jul 17, 2009 Original Article Effect of Double Filtration Plasmapheresis (DFPP) in Male Patients with Borderline Hyper-LDL-cholesterolemia : Lipid Removal and Inflammation Suppression Sawako Hibino 1), Yang Kwang Seok 2), Hiroshi Tsuda 2), and Yoshikazu Yonei 1) 1) Anti-Aging Medical Research Center, Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University 2) Juntendo Tokyo Koto Geriatric Medical Center Anti-Aging Medicine 6 (5) : 32-40, 2009 (日本語翻訳版) 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP)の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ 日比野佐和子 1)、梁 広石 2)、津田裕士 2)、米井嘉一 1) 1) 同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター 2) 順天堂東京江東高齢者医療センター 抄録 目的:二重濾過血漿交換療法(double filtration plasmapheresis:DFPP)はLDLコレステロール(LDL-C)な ど血中病因物質の除去により、動脈硬化性病変に有効な治療として注目されている。今回DFPPによる心身に及ぼ す影響につき知見を得るため有対照オープン比較試験を行った。 方法:高LDL-C血症境界領域(134.0±41.1mg/dL)男性を対象にDFPP群7例(43.0±5.3歳、BMI 26.0±4.5)、 対照群7例(39.1±11.4歳、BMI 28.9±8.1)の2群に分けた。観察期間8週間とし、DFPP群は2回DFPPを施 行した。 結果:抗加齢QOL共通問診票「身体症状」のうちDFPP群で「目が疲れる」「目がかすむ」「肩がこる」「健康感 がない」が8週後有意に軽減した。血液検査では対照群に比べDFPP群において8週後ヘモグロビン(+3.6%、p =0.047)、総蛋白(+4.1%、p=0.019)、アルブミン(+4.9%、p=0.018)が高く維持された。LDL-C除去にも かかわらず、脂肪肝の指標ALT(+5.7%、p=0.008)と脂質代謝の指標LDL-C(+11.6%、p=0.012)はみかけ 上DFPP群の方が高値を示した。内分泌検査では対照群に比べDFPP群においてDHEA-s減少傾向(−13.7%、p= 0.003)、コルチゾル増加傾向(+27.5%、p=0.005)、プロゲステロン増加傾向(+50%、p=0.030)がみられた。 高感度CRPは対照群に比べDFPP群で低下傾向を認めた(−26.5%、p=0.030)。DFPPによる重篤な有害事象は 認められなかった。 結語:DFPPによるLDL-C除去は、脂肪沈着をきたした内臓脂肪組織や肝組織に対し炎症鎮静化作用を示し組織環 境を改善する可能性が示唆された。 KEY WORDS:アフェレシス(血液成分除去法)、二重濾過血漿交換療法 (double filtration plasmapheresis)、CRP、LDLコレステロール、 メタボリックシンドローム、脂肪肝、NASH(nonalcoholic steatohepatitis) Anti-Aging Medicine 6 (5) : 22-31, 2009 本論文を引用する際はこちらを引用してください。 (c) Japanese Society of Anti-Aging Medicine ( 1 ) 〒610-0321 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 同志社大学生命医科学部 アンチエイジングリサーチセンター 教授 米井嘉一 電話&FAX:0774-65-6394 メール:[email protected] 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP) の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ はじめに 二重濾過血漿交換療法 (double-filtration plasmapheresis: DFPP) 抗加齢医学を実践する医療機関では機能的年齢の評価に DFPPは以下の如く行った。被験者の肘静脈より体外に 筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢にわ 誘導した血液を膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05W(旭化 けて評価することが多い 1)。抗加齢医療(アンチエイジン 成クラレメディカル、東京)により血球成分と血漿成分に グ医療)はこのような機能年齢の老化予防であり若返りと 分離した後、分離した血漿を血漿成分分離器Cascadeflo とらえられる。血管年齢を若く保つためには動脈硬化に発 EC-50W(旭化成クラレメディカル、東京)を用いて病因 症予防が重要であり、そのために高血圧、糖尿病、脂質異 物質を分離除去、その後血漿および血球を被験者に戻した 常症、喫煙といった危険因子を是正する。内臓脂肪の蓄積 ( Fig.1 )。血液、血漿循環には体外循環ポンプ付血液浄 を基盤とするメタボリックシンドロームは同一個人に多く 化装置プラソートiQ21(旭化成クラレメディカル、東京) の危険因子が集中するマルチリスクファクター症候群である。 を用いた。 動脈硬化の発症予防、治療の観点からは低比重リポタンパ 設定条件は、血液流量は50∼140ml/分、血漿分離速度 ク質コレステロール(low density lipoprotein-cholesterol: は血液流速の25∼30%とし(血漿流量:20∼25ml/分)、 LDL-C)の低下のみでなく動脈硬化の種々の危険因子を 血漿処理量は体重の1/25を目標(廃液流量:2.2∼2.5ml/ 取り除くことが重要である。アフェレシス(血液成分除去 分)とした。抗凝固剤としてヘパリンを使用した。 法)の中でも二重濾過血漿交換療法(Double Filtration 膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05Wはポリエチレンビニ Plasmapheresis:DFPP)2) はLDL-Cを強力に除去する 3-7)。 ルアルコール製中空糸により構成され 今回著者らは、DFPPによるLDL-Cなどの有害物質除去が 350±50μm、膜厚:50±10μm、平均孔径:0.3μm、 心身に及ぼす影響につき有対照オープン比較試験を行い、 膜面積:0.5㎡であった。血漿成分透過率(濾過血漿中の 新たな可能性を見出したので報告した。 濃度/元血液中の濃度×100)は、血液流速:80∼130ml/ 8) 、中空糸内径: 分、血漿流量:20∼44ml/分の施行条件で、総蛋白、アル ブミン、免疫グロブリン、総コレステロール透過率は95% 以上であった 9)。膜型血漿分離Cascadeflo EC-50Wはエチ 対象および方法 レン・ビニルアルコール共重合体製中空糸により構成され、 対象 中空糸内径:175μm、膜厚:40μm、有効面積:2.0㎡、 対象は高LDL-C血症の疾病境界域男性(LDL-C 140∼ 血液容量:150mlで、使用前はパイロジェンフリー無菌水 200mg/dL)14名とし、ランダムにDFPP施行群7例(43.0 が充填されていた。 ±5.3歳、体重75.96±15.09kg、BMI 25.98±4.52)、対 照群7例(39.1±11.4歳、体重83.45±24.31kg、BMI 試験デザイン 28.92±8.06)に分けた。本試験への参加に対し、本人か DFPP群は、2008年8月22日から12月12日までの期間に、 ら参加同意を文書で得た。被験者に対して、各観察日前日 4週毎に計2回DFPP施行した。対照群では、同観察期間 の飲酒は避けること、また試験期間中は不規則な生活を避け、 通常通りの生活を心がけた。 睡眠、食事、運動、アルコールの摂取等に関しては、本試 試験開始時(第1回DFPP前後)、1週後、2週後、4週 験開始前の日常生活と同様の量・質を維持することを指導 後(第2回DFPP前後)、5週後、6週後、8週後に自多覚 した。 症状、理学的所見、血液尿検査、血管弾力性の評価を行った。 本試験は順天堂東京江東高齢者医療センター倫理委員会 の承認の下、試験実施計画書、「ヘルシンキ宣言」並びに 評価方法 厚生労働省・文部科学省「疫学研究に関する倫理指針」 自覚症状の評価は、「身体の症状」と「心の症状」に分け、 (http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i- 既報の如く10,11) 抗加齢QOL共通問診票(Anti-Aging QOL kenkyu/ekigaku/0504sisin.html)に定められた倫理的 Common Questionnaire: AAQol)を用いてポイント1∼ 原則を遵守して実施した。試験統括医師は同志社大学アン 5の5段階に分けて評価した。本問診票は日本抗加齢医学 チエイジングリサーチセンター 米井 嘉一、日比野 佐和 会ホームページ(http://www.anti-aging.gr.jp/ 子、試験責任医師 順天堂東京江東高齢者医療センター高 anti/clinical.html)よりダウンロードした。身体計測には 齢者総合診療科 津田 裕士、試験分担医師順天堂東京江東 体重計を用いた。血液生化学・尿検査は三菱化学メディエ 高齢者医療センター高齢者総合診療科 梁 広石とした。 ンス(株)(東京)で実施した。 ( 2 ) Fig. 1. Double filtration plasmapheresis (DFPP) 動脈硬化の程度を評価する血管機能検査として、脈波伝 播速度(PulseWave Velocity: PWV)12,13) 結果 および上腕と 足首の血圧比(Ankle-Brachial Index:ABI)14) を測定 した。PWVは血管固有の硬さを示し、ABIは下肢動脈の狭 窄・閉塞を評価する指標で、測定にはform PWV/ABI(オ 抗加齢QOL共通問診票による自覚症状 共通問診票身体症状33項目のうちDFPP群で8週後に有 意改善した項目は「目が疲れる」「目がかすむ」「肩がこる」 「健康感がない」の4項目であった(Table 1)。群間解析 ムロンコーリン、東京)を用いた。 でDFP群Pの方が有意に改善した項目は「息切れ」「汗を かきやすい」の2項目で、対照の方が良かった項目はなかっ 統計解析 治療前(0週)と8週後の検査値変化について、両群間 の比較をMann-WhitneyのU検定を施行、データの種類に 応じて適切な統計手法を用いた。有意水準は両側5%とした。 た。 心の症状21項目のうちDFPP群で8週後有意改善した項目 は「意欲がわかない」「ど忘れをする」「緊張感」の3項目 であった(Table 2)。群間解析では「物忘れ」がDFPP群で 有意に改善した。 肌症状のうち群間有意差を認めた項目は「爪につやがな くなった」で、DFPP群で改善度が高かった(Table 3)。 生活習慣についてはDFPP群では水分摂取量が増加して いたが(p=0.009)、運動量、飲酒量など生活習慣に変化 なかった(Table 4)。対照群には酒量が減り運動量が増え た例1例、運動量が増えた例1例、全般的な生活習慣が改 善した例1例が含まれ、脂肪肝改善(ALT低下)を認めた (Fig.2)。 理学所見・血管機能検査(Table 5) 体重・BMI・血圧についてはDFPP群と対照群における 試験前後での有意変動、有意な群間差は認められなかった。 ( 3 ) 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP) の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ Table 1 Physical symptoms DFPP Before Mean ± SD Tired eyes Blurry eyes Eye pain Stiff shoulders Muscular pain/stiffness Palpitations Shortness of breath Tendency to gain weight Weight loss; thin Lethargy No feeling of good health Thirst Skin problems Anorexia Early satiety Epigastralgia Liable to catch colds Coughing and sputum Diarrhea Constipation Hair loss Gray hair Headache Dizziness Tinnitus Lumbago Arthralgia Edematous Easily breaking into a sweat Frequent urination Hot flash Cold skin 2.57 2.14 1.71 3.29 2.86 1.29 1.71 3.14 1.71 2.14 2.43 2.14 2.14 1.43 1.71 1.43 2.29 2.00 2.00 1.71 2.71 1.86 2.43 1.43 1.29 1.86 1.71 2.14 3.00 1.71 1.57 1.71 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.98 0.90 0.76 1.50 1.21 0.49 0.49 0.90 0.76 0.90 0.79 0.90 0.90 0.53 0.76 0.79 0.95 0.82 1.15 1.11 0.95 0.90 1.27 0.53 0.49 0.90 0.95 0.90 1.53 0.76 0.79 1.50 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 1.86 1.57 1.29 2.43 1.86 1.29 1.29 2.57 1.57 1.71 1.71 1.71 1.71 1.43 1.43 1.43 1.71 1.57 1.57 1.71 2.43 1.71 1.57 1.29 1.29 1.43 1.71 1.86 2.57 1.43 1.43 1.71 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.69 0.53 0.49 1.40 0.90 0.49 0.49 1.13 0.79 0.49 0.49 0.95 0.76 0.53 0.53 0.53 0.76 0.53 0.79 1.11 0.98 0.95 0.53 0.49 0.49 0.53 0.95 0.90 1.27 0.53 0.53 1.50 p value 0.047 0.030 0.200 0.045 0.111 1.000 0.078 0.103 0.356 0.078 0.008 0.356 0.200 ND 0.356 1.000 0.231 0.078 0.356 ND 0.356 0.356 0.111 0.356 1.000 0.200 1.000 0.172 0.078 0.172 0.356 1.000 Mean ± SD 2.00 1.86 1.29 2.71 2.43 1.14 1.29 3.43 1.29 2.57 1.86 2.29 1.57 1.29 1.43 1.14 1.29 1.43 1.43 1.86 2.86 2.43 1.86 1.29 1.71 2.43 1.43 1.57 2.00 1.43 1.29 1.29 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 1.00 0.90 0.49 1.11 1.13 0.38 0.49 1.13 0.49 1.13 1.07 1.11 0.79 0.49 0.79 0.38 0.49 0.53 0.53 1.21 1.07 1.13 0.90 0.49 1.11 1.62 0.53 0.79 1.15 0.53 0.49 0.49 Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 1.86 1.57 1.29 2.14 1.71 1.29 1.43 2.71 1.43 2.57 2.14 2.00 1.43 1.29 1.29 1.29 2.29 2.29 1.29 1.71 2.29 2.00 1.43 1.14 1.57 2.43 1.29 1.43 2.14 1.43 1.14 1.14 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.69 0.53 0.49 1.35 1.11 0.49 0.53 1.25 0.53 1.51 1.46 1.41 0.79 0.49 0.49 0.49 1.11 1.38 0.49 1.11 1.11 1.00 0.79 0.38 1.13 1.62 0.49 0.79 1.35 0.79 0.38 0.38 p value Difference Ratio Log(ratio) 0.604 0.172 ND 0.172 0.094 0.356 0.356 0.094 0.356 1.000 0.569 0.457 0.356 1.000 0.604 0.356 0.086 0.200 0.356 0.356 0.172 0.200 0.289 0.604 0.604 1.000 0.604 0.356 0.356 1.000 0.356 0.356 0.172 0.457 0.200 0.631 0.715 0.604 0.030 0.736 0.172 0.356 0.111 0.838 0.457 1.000 0.736 0.689 0.091 0.136 0.569 0.356 0.356 0.172 0.448 1.000 0.689 0.407 0.604 0.604 0.030 0.457 1.000 0.356 0.206 0.394 0.582 0.720 0.954 0.766 0.047 0.922 0.200 0.462 0.145 0.959 0.617 0.689 0.818 0.936 0.075 0.167 0.805 0.356 0.334 0.182 0.578 0.736 0.788 0.368 0.604 0.703 0.036 0.422 0.805 0.356 0.165 0.376 0.241 0.951 0.833 0.604 0.030 0.826 0.172 0.587 0.085 0.830 0.592 1.000 0.736 0.803 0.067 0.129 0.689 0.356 0.282 0.180 0.747 1.000 0.689 0.445 0.604 0.733 0.036 0.592 0.749 0.356 n=7 per group. Table 2 Mental symptoms DFPP Before Mean ± SD Irritability Easily angered Loss of motivation No feeling of happiness Nothing to look forward to in life Daily life is not enjoyable Lose confidence Reluctance to talk with others Depressed Feeling of uselessness Shallow sleep Difficulty in falling asleep Pessimism Lapse of memory Inability to concentrate Inability to solve problems Inability to make judgments readily Inability to sleep because of worries A sense of tension Feeling of anxiety for no special reason Vague feeling of fear 2.43 2.14 2.43 2.29 2.14 2.29 2.29 1.71 1.86 1.86 2.00 2.29 2.29 2.43 2.43 2.14 2.29 2.14 2.43 1.86 1.71 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.79 0.69 0.98 0.76 0.69 0.76 0.76 0.76 0.90 0.69 1.15 1.38 1.11 0.79 0.98 0.69 0.76 0.69 0.79 0.69 0.76 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 2.00 1.71 1.86 1.86 1.71 1.86 1.57 1.86 1.71 1.71 1.86 2.00 1.86 1.71 1.86 1.71 1.71 1.71 1.71 1.57 1.43 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.82 0.76 0.69 0.69 0.76 0.69 0.79 0.69 0.76 0.76 1.07 1.15 0.69 0.49 0.69 0.76 0.76 0.76 0.76 0.79 0.79 p value 0.078 0.200 0.030 0.078 0.078 0.078 0.094 0.356 0.604 0.356 0.689 0.356 0.200 0.047 0.103 0.200 0.103 0.078 0.047 0.172 0.172 Mean ± SD 2.14 1.71 1.43 1.57 1.14 1.29 1.43 1.43 1.29 1.14 2.29 2.14 1.43 2.29 1.71 1.14 1.29 1.86 1.43 1.29 1.14 n=7 per group. ( 4 ) ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.90 0.95 0.79 0.79 0.38 0.49 0.79 0.79 0.49 0.38 1.25 1.21 0.53 1.38 0.76 0.38 0.76 0.90 0.79 0.49 0.38 Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 1.71 1.57 1.43 1.14 1.29 1.29 1.29 1.14 1.14 1.14 1.14 1.29 1.29 2.29 1.14 1.14 1.29 1.14 1.14 1.14 1.14 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.95 0.79 0.79 0.38 0.49 0.49 0.49 0.38 0.38 0.38 0.38 0.49 0.49 1.38 0.38 0.38 0.49 0.38 0.38 0.38 0.38 p value Difference Ratio Log(ratio) 0.200 0.356 1.000 0.078 0.356 1.000 0.356 0.172 0.356 ND 0.047 0.045 0.356 1.000 0.030 ND 1.000 0.047 0.172 0.356 ND 1.000 0.356 0.231 1.000 0.103 0.200 0.103 0.078 1.000 0.356 0.177 0.321 0.356 0.047 1.000 0.200 0.172 0.172 0.200 0.356 0.172 1.000 0.253 0.317 0.846 0.128 0.253 0.093 0.121 0.569 0.356 0.131 0.211 0.569 0.095 0.573 0.177 0.122 0.103 0.225 0.356 0.172 0.854 0.250 0.330 0.795 0.089 0.223 0.089 0.088 0.749 0.356 0.125 0.212 0.628 0.113 0.570 0.185 0.120 0.083 0.174 0.356 0.172 Table 3 Skin symptoms DFPP Before Mean ± SD Loss of elasticity and gloss Finely wrinkled skin around the eyes Frequent exposure to ultraviolet light Unstable skin condition Swelling below the eyes Downward slanting eyes Downward slanting mouth Loss of eyebrows Flabby jaw Darkening of overall skin tone Thinning of hair Slow nail growth Dull and cracked nails 2.75 2.00 2.25 2.25 2.50 2.50 1.75 2.25 2.25 2.50 3.50 1.75 3.00 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.96 0.00 0.50 0.50 0.58 1.00 0.50 0.50 0.50 0.58 1.29 0.50 0.82 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 1.86 1.57 1.71 1.71 1.57 1.43 1.43 1.57 1.43 1.57 2.14 1.57 1.29 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 1.07 0.53 0.76 0.76 0.53 0.53 0.53 0.79 0.53 0.79 1.07 0.53 0.49 p value 0.39 0.39 0.39 0.39 0.22 0.25 0.64 0.18 0.06 0.22 0.22 1.00 0.06 Mean ± SD 1.67 1.67 1.50 1.67 1.50 1.67 1.67 1.50 2.00 1.67 2.33 1.50 1.67 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.82 0.82 0.55 0.82 0.84 0.82 0.82 0.84 1.10 0.82 0.82 0.55 0.82 Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 1.43 1.57 1.29 1.43 1.43 1.43 1.43 1.29 1.57 1.43 2.29 1.29 1.29 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.79 0.79 0.49 0.79 0.79 0.79 0.79 0.49 0.79 0.79 1.11 0.49 0.49 p value Difference Ratio Log(ratio) 0.363 ND 0.363 0.363 ND 0.363 0.363 0.695 0.175 0.363 0.741 0.363 0.363 0.391 0.391 0.391 0.391 0.215 0.252 0.638 0.182 0.182 0.215 0.278 1.000 0.058 0.391 0.391 0.391 0.391 0.215 0.194 1.000 0.182 0.182 0.188 0.360 0.718 0.017 0.391 0.391 0.391 0.391 0.243 0.215 0.638 0.182 0.182 0.198 0.408 1.000 0.052 n=7 per group. Table 4 Lifestyle DFPP Before Mean ± SD No. of cigarettes/day Alcohol intake (mL) Alcohol intake/week Amount of exercise/week Hours of sleep Water intake (L/day) Hours of VDT work 2.14 171.4 0.61 0.14 6.00 1.14 5.71 ± ± ± ± ± ± ± 3.93 219.6 1.12 0.38 1.53 0.38 3.50 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 2.14 171.4 0.61 0.00 6.29 1.50 5.86 ± ± ± ± ± ± ± 3.93 219.58 1.12 0.00 1.11 0.76 3.44 p value ND ND ND 0.36 0.17 0.09 0.36 Mean ± SD 15.71 600.0 1.36 1.29 6.21 1.74 6.07 ± ± ± ± ± ± ± 13.97 704.2 1.25 1.70 1.25 0.96 3.11 Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 16.43 600.0 2.00 0.86 5.86 1.64 4.86 ± ± ± ± ± ± ± 13.76 704.2 2.06 0.69 1.35 0.69 3.29 p value Difference Ratio Log(ratio) 0.356 ND 0.243 0.356 0.182 0.726 0.520 0.356 ND ND ND 0.093 0.173 0.468 0.500 ND ND ND 0.115 0.599 0.417 0.500 ND ND ND 0.111 0.246 0.345 n=7 per group. Fig. 2. Change in serum ALT. 004:Increased amount of exercise 008:Decreased alcohol intake and increased amount of exercise 014:Overall improved lifestyle Table 5 Physical findings and blood vessel function test DFPP Before Mean ± SD Body weight BMI Systolic blood pressure Diastolic blood pressure Pulse PWV ABI Kg Kg/m2 mmHg mmHg /min right left right left 76.0 26.0 136.9 87.9 69.0 1331.1 1362.1 1.13 1.13 ± ± ± ± ± ± ± ± ± 15.1 4.5 22.4 13.8 11.1 180.9 195.3 0.08 0.10 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 75.5 25.8 135.1 87.6 76.0 1326.3 1357.6 1.08 1.11 ± ± ± ± ± ± ± ± ± 15.7 4.8 17.9 10.2 10.9 172.5 157.4 0.05 0.07 p value 0.327 0.323 0.651 0.913 0.119 0.924 0.922 0.206 0.471 Mean ± SD 83.5 28.9 141.0 92.0 74.4 1324.1 1323.9 1.11 1.14 n=7 per group. ( 5 ) ± ± ± ± ± ± ± ± ± 24.3 8.1 18.3 17.2 9.6 151.2 212.7 0.06 0.09 Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 83.9 29.1 148.6 89.7 81.4 1274.6 1281.6 1.07 1.07 ± ± ± ± ± ± ± ± ± 24.9 8.3 24.6 12.4 13.5 140.8 171.7 0.06 0.09 p value Difference Ratio Log(ratio) 0.707 0.684 0.081 0.480 0.041 0.106 0.168 0.103 0.032 0.512 0.494 0.290 0.331 0.924 0.229 0.111 0.681 1.000 0.468 0.468 0.256 0.322 0.978 0.209 0.149 0.680 0.717 0.477 0.477 0.290 0.347 0.985 0.213 0.140 0.681 0.791 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP) の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ 身体症状「息切れ」ともに心肺能力を反映する安静時脈拍 た(+3.6%、p=0.047)。BUN、クレアニチンおよび が対照群で8週後に有意に増加していたが(+9.4%、 BUN/クレアチン比、電解質の変動からはDFPP群におけ p=0.041)、DFPP群では試験前後での有意差はなかった。 る脱水所見はみられなかった。 血管機能検査ではPWVについてはDFPP群と対照群にお 蛋白代謝については、血清総蛋白量、アルブミンに群間 ける試験前後での有意変動、有意な群間差は認められなかっ 差を認め、対照群で低下傾向であったのに対しDFPP群で た。下肢の血管抵抗と逆比例するABIは対照群で8週後に 上昇傾向であった(総蛋白:+4.1%、p=0.019、アルブミ 有意に低下したが(−6.1%、p=0.032)、DFPP群では有 ン:+4.9%、p=0.018)。アルブミンは対照群のみで前値 意差はなかった。 に比べ8週後有意に低下した(p=0.004)。 脂質代謝については、TCおよびLDL-CがDFPP群のみで 血液尿検査(Table 6) 8週後有意に上昇し、対照群と群間有意差を認めた(TC: 梢血液検査では、ヘモグロビン量変化に群間差を認め、 +10.2%、p=0.015、LDL-C:11.6%、p=0.012)。HDL- 対照群で低下傾向であったのに対しDFPP群で上昇傾向であっ C、TG、酸化LDL、動脈硬化指数には試験前後での有意変 Table 6 Hematology and blood chemistry DFPP Before Mean ± SD White blood cell count Red blood cell count Hemoglobin Hematocrit Platelet count MCV MCH MCHC Neutrophil Lymphocyte Monocyte Eosinophil Basophil Fibrinogen Total protein Albumin A/G ratio AST ALT LDH Total bilirubin ALP γ-GTP CK Urea nitrogen Creatinine Uric acid Na Cl K Ca (* adjusted) Fe TC LDL-C HDL-C TG Oxidized LDL AI-INDEX Blood glucose HbA1c IGF-I Cortisol DHEA-s Progesterone Total testosterone Adiponectin High-sensitive CRP /µℓ x104/µℓ g/dℓ % x104/µℓ fℓ pg % % % % % % mg/dℓ g/dl g/dl IU/ℓ IU/ℓ IU/ℓ mg/dl IU/ℓ IU/ℓ IU/ℓ mg/dl mg/dl mg/dl nEq/ℓ nEq/ℓ nEq/ℓ mg/dl mg/dl µg/dl mg/dl mg/dl mg/dl mg/dl U/ml mg/dl % ng/ml µg/dl µg/dl ng/ml ng/ml µg/ml mg/dl 5857.1 486.43 14.27 44.04 25.16 90.43 29.31 32.39 59.43 32.64 5.39 2.16 0.39 334.86 7.29 4.40 1.53 22.43 35.29 187.86 0.59 265.57 28.71 121.43 13.29 0.83 5.53 140.71 101.57 3.91 9.46 9.06 86.57 205.14 137.14 46.00 135.29 9.59 3.64 84.43 4.91 187.00 7.23 176.71 0.51 2.98 6.35 0.07 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 1872.5 39.03 1.31 3.50 5.40 2.76 0.78 0.76 8.02 7.96 1.51 1.12 0.17 36.96 0.48 0.32 0.15 8.46 26.81 19.24 0.19 62.61 14.23 43.81 2.12 0.11 1.42 1.11 1.72 0.16 0.22 0.13 25.76 17.65 20.75 10.98 55.71 7.82 0.98 4.50 0.20 40.68 2.84 129.79 0.16 1.08 3.17 0.05 Control Before After 8 weeks Mean ± SD 6428.6 497.14 14.79 45.13 24.74 90.86 29.71 32.71 58.29 34.19 5.27 1.79 0.47 341.00 7.59 4.61 1.57 24.43 37.29 191.29 0.61 277.00 27.86 137.71 12.94 0.85 5.40 140.86 100.71 4.10 9.67 9.06 102.71 226.00 153.00 44.86 162.86 11.36 4.23 88.86 4.81 234.57 9.21 152.57 0.77 3.38 6.01 0.05 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 1284.2 23.05 1.11 2.19 3.80 2.34 1.14 0.93 9.72 9.86 0.75 1.56 0.30 28.79 0.25 0.13 0.17 11.00 29.14 30.86 0.12 48.99 12.67 67.42 2.44 0.10 1.57 1.35 1.25 0.41 0.19 0.13 37.62 31.49 23.53 8.51 57.63 10.90 1.41 9.92 0.20 82.02 3.81 90.44 0.28 1.45 2.99 0.03 p value 0.214 0.268 0.117 0.190 0.737 0.407 0.275 0.431 0.728 0.539 0.834 0.541 0.534 0.633 0.094 0.057 0.078 0.267 0.243 0.731 0.654 0.322 0.597 0.315 0.702 0.407 0.597 0.873 0.325 0.297 0.041 1.000 0.422 0.046 0.035 0.607 0.357 0.227 0.068 0.238 0.086 0.080 0.238 0.170 0.003 0.475 0.429 0.155 Mean ± SD 8671.4 506.57 15.44 47.33 30.81 94.00 30.60 32.61 63.61 29.41 4.64 1.67 0.66 395.57 7.51 4.71 1.71 31.14 41.86 212.14 0.61 274.57 50.43 125.86 10.30 0.78 5.11 140.14 98.71 4.09 9.76 9.04 91.86 222.14 150.00 49.43 142.29 7.17 4.07 92.00 5.24 178.57 13.51 198.86 0.89 4.68 4.57 0.10 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 4011.5 37.36 0.63 1.31 7.52 6.90 2.45 0.63 7.35 6.35 1.65 0.96 0.40 70.69 0.43 0.18 0.31 14.31 21.84 34.76 0.11 64.73 24.37 63.60 3.19 0.07 1.55 1.35 2.43 0.49 0.34 0.24 35.82 10.07 14.19 20.08 62.32 3.66 1.78 11.12 0.56 34.23 3.89 110.65 0.23 1.23 1.07 0.08 n=7 per group. *Ca level was adjusted by albumin; Adjusted Ca [mg/dl] = Measured Ca [mg/dl] + (4.0 – serum albumin[g/dl]) ( 6 ) Inter-group analysis After 8 weeks Mean ± SD 8614.3 497.00 15.00 46.73 30.21 94.43 30.33 32.11 67.04 26.06 4.60 1.86 0.44 411.71 7.43 4.59 1.64 24.86 33.43 206.57 0.63 278.57 43.43 167.43 11.06 0.80 5.24 141.29 99.86 4.27 9.79 9.20 74.86 216.57 145.86 50.57 140.86 5.00 3.53 93.57 5.29 222.43 9.00 234.71 0.84 4.53 4.95 0.12 ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 3257.5 37.47 0.42 1.61 6.93 7.21 2.29 0.70 6.17 5.12 1.42 1.44 0.44 75.74 0.46 0.17 0.23 8.67 15.62 29.58 0.11 69.91 19.23 99.77 2.39 0.12 1.25 1.50 2.19 0.59 0.22 0.19 5.21 13.66 13.32 13.46 87.88 2.04 1.09 12.38 0.65 47.76 5.22 104.17 0.22 1.49 1.27 0.08 p value 0.883 0.041 0.054 0.156 0.612 0.200 0.242 0.137 0.035 0.021 0.911 0.585 0.062 0.386 0.111 0.004 0.253 0.109 0.057 0.214 0.736 0.610 0.042 0.121 0.364 0.525 0.536 0.084 0.172 0.208 0.673 0.052 0.260 0.238 0.274 0.728 0.961 0.139 0.144 0.535 0.482 0.025 0.079 0.150 0.682 0.752 0.221 0.099 Difference Ratio Log(ratio) 0.260 0.126 0.049 0.158 0.828 1.000 0.099 0.087 0.224 0.121 0.888 0.489 0.089 0.650 0.022 0.021 0.139 0.069 0.051 0.458 0.788 0.561 0.067 0.415 0.444 0.956 0.424 0.435 0.134 1.000 0.162 0.091 0.235 0.018 0.017 0.620 0.548 0.515 0.129 0.077 0.063 0.904 0.016 0.022 0.014 0.338 0.247 0.091 0.210 0.111 0.050 0.141 0.716 0.933 0.107 0.083 0.332 0.058 0.991 0.251 0.167 0.747 0.019 0.018 0.148 0.081 0.009 0.537 0.461 0.376 0.148 0.438 0.284 0.944 0.306 0.440 0.136 0.967 0.162 0.092 0.325 0.016 0.012 0.324 0.529 0.474 0.134 0.461 0.136 0.929 0.008 0.007 0.010 0.288 0.284 0.211 0.245 0.113 0.047 0.144 0.789 0.940 0.113 0.089 0.282 0.057 0.951 ND ND 0.760 0.020 0.019 0.130 0.069 0.008 0.600 0.542 0.402 0.143 0.436 0.329 0.893 0.296 0.435 0.135 0.990 0.161 0.091 0.275 0.015 0.012 0.366 0.416 0.489 0.137 0.905 0.124 0.867 0.005 0.003 0.008 0.397 0.271 0.030 考案 動や有意な群間差は認められなかった。 糖代謝については、血糖およびHbA1cに試験前後での有 生活習慣については対照群には酒量が減る、運動量が増 意変動や有意な群間差は認められなかった。 肝機能については、総ビリルビン、AST、LDH、ALPは DFPP群と対照群における試験前後での有意変動や有意な 群間差は認められなかった。ALTについてはDFPP群と対 照群ともに8週後の変化は生理的変動範囲であったが、変 化率に群間有意差を認めた(+5.7%、p=0.008)。対照群 で前値に比べγ-GTPの有意な減少を認めた(p=0.042)。 腎機能については、尿素窒素、クレアチニン、尿酸は DFPP群と対照群における試験前後での有意変動や有意な えるなど生活習慣が改善した例が含まれ、そのためALT、 γGTP、脂質、LDL-Cの改善傾向がみられた。対照群では 監視の目が入ることで、生活習慣の改善方向へ行動変容を 起こした可能性がある。DFPP群でも同様に監視の目が入っ ているが、DFPP施行していることもあり行動変容惹起に は至らなかったようである。 本試験結果のうちDFPPの好影響として、第一に自覚症 状の改善がみられた。DFPP群で身体症状改善項目に「目 が疲れる」「目がかすむ」「肩がこる」「健康感がない」 群間差は認められなかった。 電解質については、Na、Cl、K、FeはDFPP群と対照群 における試験前後での有意変動や有意な群間差は認められ なかった。DFPP群で前値に比べCaの有意な上昇(p=0.041) を認めたが、アルブミン補正値には有意変動はなかった。 内分泌検査では、アディポネクチン、総テストステロン はDFPP群と対照群における試験前後での有意変動や有意 な群間差は認められなかった。DHEA-sとコルチゾルにつ いてはDFPP群と対照群ともに8週後の変動は有意でなかっ たが、変化に群間有意差を認めた(DHEA-s:−13.7%、 p=0.003、コルチゾル:+27.5%、p=0.005)。プロゲステ ロンはDFPP群のみで8週後に有意に上昇、群間有意差を 認めた(+50%、p=0.008)。対照群で前値に比べIGF-Iの があり、全般的にDFPP群で症状改善が顕著であった。 対照群では下肢血管抵抗増大を反映するABI低下、心肺 能力低下を反映する「息切れ」と安静時脈拍増加を認めた がDFPP群ではなかった。DFPPが心肺肺能力の劣化予防的 に作用した可能性がある。 DFPP群におけるヘモグロビン、総蛋白、アルブミンの 増加所見は、肝臓の蛋白合成や造血組織のヘム合成の活発 化を示唆している。 そして特記すべきはDFPP群にてCRP減少がみられたこ とである。脂肪組織へのマクロファージ浸潤や脂肪組織に おける慢性炎症がインスリン抵抗性惹起に重要な組織環境 を提示する概念が現れた15)。高感度CRPはメタボリックシ ンドローム活動性指標として、心血管イベントの予測因子 有意な上昇を認めた(p=0.025)。 炎症反応検査(高感度CRP)ではDFPP群と対照群とも に8週後の変動は軽微であったが、変化率に群間有意差を 認め、DFPP群でCRP値が改善していた(−26.5%、p=0.030)。 として有用であるが、最近NASHでも上昇することが報告 されている 16)。本試験DFPP群でCRP減少があったことは、 脂肪や脂肪肝を含む身体組織において炎症反応が抑制され た可能性を示唆する。単純脂肪肝(simple steatosis)と 非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)の違いが炎症にあること(単純脂肪肝+炎症→ NASH)を考慮すると(Table 7)17)、脂肪肝からNASHへ の移行やNASHの進展過程において炎症を抑える意義は大 きい。機序としては「脂肪組織あるいは脂肪肝組織からの ①コレステロール・中性脂肪・エンドトキシン除去 ②酸 化ストレス原因物質除去→ 悪性サイクルからの脱却 → 恒 常性の回復 → 活性化マクロファージの減少 → 炎症性サイ トカイン↓ → 炎症の鎮静化」を考えている( Fig.3 )。 DFPP群でコルチゾル増加傾向があり、内因性コルチゾル を介している可能性もある。対照群でコルチゾルが低下し ているが、かえって炎症反応が増加している。血清LDL-C 値はDFPPの回数を重ねることで低下することがわかって おり18-19)、初期には㈰肝臓や脂肪組織に残存したコレステ ロールの血中への動員、㈪腸管におけるコレステロール吸 収の増加などの理由でLDL-Cは不変あるいは高値となる。 ( 7 ) 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP) の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ Table 7 Histological finding Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Disease classification of non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD). Fatty deposits + + + + Inflammation Balloon-like Mallory body or denaturation fibrosis of hepatocytes – + + + – – + + – – – + Modified from Matteoni CA et al. (1999).17) Fig. 3. Significance of lipid removal by DFPP 以上の所見から、将来的な組織繊維化やインスリン抵抗 には、食事療法や薬物療法のほかに血漿中LDL-Cなどを除 性惹起をきたす可能性のある脂肪組織におけるマクロファー 去する目的でアフェレシス療法が用いられる。これにより ジ浸潤や慢性炎症といった悪組織環境に対して、DFPPに LDL-Cが除去されるだけでなく、血管イベントリスクが低 よる脂質除去が悪性サイクルから脱却して組織恒常性を回 下する 復する契機となる可能性がある。 性が高まる 23)。 4,20-22)。また酸化LDL値が低下し、LDL-Cの酸化耐 FH症例に対しDHPPを月1∼2回施行した場合の臨床デー 脂質代謝への作用 タ推移をみると、初期はDFPP直後の血清LDL-Cは低下す 血液中コレステロールは蛋白質と結合してリポ蛋白とし るが2週間で前値に戻り、LDL-Cが前値より10∼20%低下 て代謝利用される。このリポ蛋白のうち、LDLに含まれる した状態で維持されるのは1∼2年後となる 18,19) 。血中 コレステロール(LDL-C)は動脈硬化と関係が深く、「悪 LDL-Cが不変期間でも、確実にLDL-Cが除去され、体内 玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁に沈着して動脈硬化 残存のLDL-C由来代謝産物は減少し、徐々に脂肪肝の改善、 を促進する。HDLに含まれるコレステロール(HDL-C) 体脂肪の改善がみられる。本試験でDFPPによるLDL-C除 は動脈硬化を抑制する働きをすることから「善玉コレステロー 去後も血中LDL-Cが高く留まったのは、8週間という観察 ル」と呼ばれる。家族性高コレステロール血症(familial 期間がまだ不変期間内であったからである。体内コレステロー hypercholesterolemia:FH)は先天性代謝異常のために ル量は以前より確実に減少している。対照群で改善傾向に 血中LDL-C値が異常高値を呈し、黄色腫やアキレス腱の肥 あることもありデータ解釈がやや難しくなっているが、問 厚、角膜輪などの症状を認め、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血 題解決のために症例数を増やすことと観察期間が長くする や腎梗塞などの心血管イベントリスクが高い。FHの治療 ことが必要である。 ( 8 ) 本試験の参加症例は、進行したFH患者に比較して身体 結語 へのLDL-C蓄積とそれによる累積障害は軽度であろう。 DFPPによるLDL-C除去がFH患者の血管イベントリクス を軽減させるのであれば、障害が生じる前に早期の段階か らLDL-C除去を行い、一度リセットして身体の恒常性を取 り戻す試みは、予防医学の観点から意義があるものと考える。 100歳を超えた後の百寿者生存率の調査結果においても脂 肪機能の維持の重要性が指摘されている 24)。特に脂肪沈着 をきたした内臓脂肪組織や肝組織において炎症を鎮静化さ せることは、将来NASHや脂肪組織炎への移行に対し予防 本試験ではDFPPによるLDL-C除去により脂肪組織や肝 組織における炎症鎮静化作用が示唆された。DFPP施行が 組織内マクロファージへ及ぼす影響や炎症性サイトカイン の動態についての知見は乏しく、細胞内シグナル伝達経路 についてもほとんど不明である。また脂肪組織におけるアディ ポサイトカインバランスや脂肪代謝経路に及ぼす影響は興 味深い検討課題である。今後、観察期間を延長し、症例数 を増やした研究を予定している。 的に作用する可能性があり期待がかかる。 ステロイドホルモンパスウェイへの影響 今回測定したコルチゾル、DHEA-s、プロゲステロン、 総テストステロンはコレステロールに由来するステロイド ホルモンであるためコレステロール代謝の影響を受ける。 男性におけるDHEA-s、コルチゾルは副腎皮質由来、総テ ストステロンは精巣由来である。テストステロン合成は精 巣機能を反映しており、加齢に伴う生成量低下のほか、高 LDL-C血症により抑制される 25) 。プロゲステロンは精巣 ライディヒ(Leydig)細胞と副腎で合成されるが、精巣で の合成が優位でテストステロン合成量と相関し、中年以降 は加齢に伴い生成量が減少する 26)。本試験結果では精巣の テストステロンについては有意差がなかったがプロゲステ ロンの有意な増加を認めた。この変化についてはFDPPに よるLDL-C除去の結果、精巣組織環境が改善しステロイド ホルモン合成が活発化した可能性が考えられる。男性では プロゲステロンが脂質代謝改善 尿道括約筋の機能維持 28) 27) 、前立腺肥大の抑制、 に有効といわれ、生理的範囲で のプロゲステロン上昇は好影響といえる。 有害事象について DFPPなどアフェレシス療法は劇症肝炎や腎不全など重 篤な肝臓疾患、重症膵炎や腎疾患に対しても救命目的を多 数施行されており、その点では安全性が確立された治療法 となっている。有害事象としては嘔気、嘔吐、血圧低下、 欠伸、発汗、冷汗、頻脈、発熱、Ca喪失などの報告がある 29-31)。その他欠点は、血流量の確保のため比較的径の大き な静脈を確保する必要があること、血管ルート確保が困難 な例があること、施行時間が1∼3時間と比較的長時間で あることがあげられる。頻脈や一過性血圧低下など循環器 系有害事象は多くの場合手技の不備に起因する。本試験で は代償的水分摂取量の増加もあり、BUN、クリアニチン異 状を伴う脱水や循環血液量低下は認められなかった。 ( 9 ) 高LDLコレステロール血症境界領域男性に対する二重濾過血漿交換療法 (Double Filtration Plasmapheresis:DFPP) の影響 ∼脂質除去と炎症鎮静化∼ References 1) Yonei Y, Mizuno Y: The human dock of tomorrow-Annual health checkup for anti-aging. 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