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スマートベータの有効性を検証する
APRIL 2014 FTSE NEWSLETTER APRIL 2014 FTSE NEWSLETTER 市場ハイライト ●FTSE Kaigai(先進国除く日本)のパフォーマンスは先月末比で1.31%のプラスとなりました。 ●FTSE RAFIエマージングはFTSEエマージングを1.39%アウトパフォームしました。 ●FTSE EDHEC JapanはFTSE Japanを0.60%アウトパフォームしました。 Index 銘柄数 時価総額 (兆円) パフォーマンス実績(%) (日本円、 トータルリターン) 1カ月 3カ月 6カ月 年初来 1年 3年 5年 配当 利回り (%) 日本市場 FTSE Japan 461 295,927.19 -0.19 -7.28 1.67 -7.28 18.38 46.79 71.35 1.84 FTSE Japan Value 461 147,488.62 -0.34 -6.52 1.77 -6.52 16.07 41.32 60.56 2.26 FTSE Japan Growth 461 148,438.57 -0.03 -8.03 1.58 -8.03 20.71 52.43 82.29 1.42 FTSE GWA Japan 461 - -0.26 -7.01 1.62 -7.01 17.62 45.74 78.14 2.05 FTSE RAFI Japan 267 - -1.10 -7.35 0.91 -7.35 20.28 43.62 77.03 2.03 FTSE EDHEC Japan 461 - 0.41 -3.72 4.11 -3.72 19.10 48.09 78.49 1.61 FTSE Japan Minimum Variance 284 - 1.10 -0.96 6.22 -0.96 20.63 61.42 78.49 1.87 FTSE Developed 2,060 3,431,655.66 1.17 -0.72 14.82 -0.72 30.85 68.14 147.34 2.40 FTSE Kaigai 1,599 3,135,728.46 1.31 -0.05 16.24 -0.05 32.16 70.36 156.77 2.45 FTSE GWA Kaigai 1,599 - 2.00 0.26 16.79 0.26 33.52 66.27 170.07 2.70 FTSE RAFI Kaigai 1000 1,017 - 2.09 0.90 18.08 0.90 37.71 70.07 186.73 2.97 FTSE DBI Kaigai 1,599 - 1.92 0.78 16.04 0.78 33.32 54.52 127.85 FTSE EDHEC Developed ex Japan (Kaigai) 1,599 - 0.90 1.49 16.92 1.49 33.35 77.11 FTSE Developed Minimum Variance 1,306 3,454,635.95 1.83 0.39 12.56 0.39 24.12 72.93 グローバル市場 指数革命 www.ftse.jp ノンプライスインデックスは効率的か? スマートベータの有効性を検証する 時価総額加重型インデックスは、市場プレミアムをパッシブに捉えるベンチメ オルタナティブベータや戦略指数とも ークとして有効だ。ただ、近年の不透明な金融市場環境のもと、従来以上に 呼ばれるスマートベータ。その種類は多 安定した収益機会の提供が投資家から求められている。こうした声に対して 岐にわたる。例えば株式のサイズ(小型 注目を集めているのが、異なるリターンの源泉にパッシブに投資するスマート 株/大型株)、各銘柄のリスクや企業フ ベータだ。果たして、スマートベータは有効に寄与しているのか、リサーチ・ ァンダメンタル(売 上 や ROE など)の ほ 2.94 アフィリエイツ社のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)であり、UCLA か、指数自体のボラティリティに着目し、 203.45 2.19 アンダーソン・ビジネス・スクールファイナンス教授であるJason C. Hsu 氏 ウェイト付けを行う指数もある。 155.47 2.46 (ジェイソン・C・スー、以下スー氏)に話を聞いた。 スマートベータのうち、オーソドック スとされる6 つの戦略について、過去 20 エマージング市場 スマートベータは市場ベータを アウトパフォーム可能なのか? まれた指数であり、従来アルファと捉え 年間の投資環境に当てはめバックテスト られていたものを市場ベータとは違った を行ったところ、 「いずれの戦略でも、時 ベータとして捉え、これに対してパッシ 価総額加重型インデックスのパフォーマ TOPIXや S&P 500に代表される時価総 ブにエクスポージャーを取ることが可能 ンスと比べて高いリターンを得ることが 額加重型インデックスは、広範な銘柄群 だ」 できた」とスー氏。そこで、スマートベ FTSE Emerging 889 337,758.50 4.85 -2.11 6.50 -2.11 7.28 13.21 107.48 2.94 FTSE GWA Emerging 889 - 5.08 -3.79 3.65 -3.79 5.11 6.42 104.27 3.58 FTSE RAFI Emerging 360 - 6.24 -3.62 3.24 -3.62 3.91 4.84 94.89 3.79 FTSE EDHEC Emerging 889 - 5.63 -1.41 6.86 -1.41 6.64 28.90 162.04 2.95 FTSE DBI All Emerging 889 - 3.40 -2.23 4.58 -2.23 2.56 21.41 141.38 2.72 FTSE EPRA/NAREIT Developed 312 114,173.42 1.05 1.92 8.63 1.92 11.93 58.65 193.11 3.73 なった銘柄のウェイトが高くなってしま FTSE EPRA/NAREIT Developed REITs 229 87,943.61 1.01 5.53 12.35 5.53 12.95 63.07 220.56 4.22 う」といった構造上の非効率性が指摘さ FTSE EPRA/NAREIT Emerging 147 13,784.37 4.73 1.60 2.11 1.60 -4.92 21.31 113.53 3.11 れてきた。注目が集まっているスマート FTSE Global Core Infrastructure 205 147,225.88 2.59 2.78 14.26 2.78 21.35 77.61 131.66 3.09 ベータを導入する年金基金も増えてきて FTSE Developed Core Infrastructure 140 139,509.14 2.47 3.04 14.77 3.04 22.83 82.16 131.71 3.11 おり、個人投資家が扱える商品も現れ始 4.66 -2.28 4.87 -2.28 -2.37 17.45 114.88 2.79 めている。 オルタナティブ FTSE Emerging Core Infrastructure に対して時価総額を基にウェイト付けを 行うため、 「ときに株価が上昇して割高に 65 7,716.73 データ出典:FTSE Group 2014年3月31日付 これまで、多くの機関投資家に活用さ れてきた時価総額加重型インデックスを 指数に関するご質問・ご相談は、右記までご気軽にお問い合わせください 「市場ベータ」とするならば、スマートベ FTSE 日本オフィス TEL:03-3581-2811 E-mail:[email protected] 詳細に関しましてはwww.ftse.comをご参照下さい 「FTSE®」は、ロンドン証券取引所(London Stock Exchange Plc)の商標であり、ライセンスに基づきFTSEが使用しています。すべての情報は、情報提供のみを目的としたものです。 本書に記載されるすべての情報の正確性を確保するために、あらゆる努力を行っていますが、FTSEまたはそのライセンサーは、本書の誤りまたは本書の使用に起因する損失に つき、一切責任を負いません。FTSEも、そのライセンサーのいずれも、FTSEインデックス(「インデックス」)の使用から得られる結果に関し、または特定目的へのインデックスの 適合性もしくは適切性に関し、明示・黙示を問わず、いかなる主張、予想、保証または表明も行いません。本情報のいかなる部分も、FTSEの書面による事前許可を得ることなく、 電子的、機械的、複写、記録その他の形式または手段を問わず、複製、検索システムへの保存または伝送を行うことは禁じられています。FTSEインデックス値の配信および金融 商品の開発を目的とするFTSEインデックスの使用には、FTSEまたはそのライセンサーのライセンスが必要です。 ータとは「時価総額以外の様々な要素で ウェイト付けを行うことで、市場ベータ 以外のプレミアム獲得を目指す指数」だ とスー氏は定義する。 「ある資産のリスクプレミアムは単一で はなく、複数あると見直される過程で生 図表 1 一般的なスマートベータ戦略と逆数戦略のリターン比較 グローバル 1991-2012 7.10% グローバル時価総額加重 7.90% ボラティリティ加重 9.30% ボラティリティ加重の逆数戦略 8.40% 最小分散 8.70% 最小分散の逆数戦略 7.10% 最大分散 8.90% 最大分散の逆数戦略 11.0% ファンダメンタル加重 12.50% ファンダメンタル加重の逆数戦略 9.00% リスク効率性(λ=2) 8.50% リスク効率性(λ=2)の逆数戦略 9.50% リスククラスター均等加重 9.40% リスククラスター均等加重の逆数戦略 0% 出典:Research Affiliates, LLC, based on Arnott, Hsu, Kalesnik and Tindall (2013) 5% 10% 15% ※「Research Affiliates, LLC.」の資料を基にFTSEが作成 ンデックス) 」に対して、過去1年間では みてもアウトパフォームする結果となっ 市場での有効性も高いと述べた。 5.55%、過去5年間では29.96%(日本円、 た。併せてスー氏は市場の効率性から 時価総額加重型インデックスを上回る トータルリターン)の超過収益を達成した。 見た特徴として、 「非効率的な市場であれ リターンを期待する投資家にとってスマ パッシブ運用の新たな可能性を切り拓 FTSE RAFI インデックス・シリーズを、 ばあるほど、ミスプライシングが起きる ートベータは低コストで機会を提供する 資以下のパフォーマンスとなる。共分散 いたかに見えるスマートベータだが、決 類似する他のスマートベータと比較して 可能性が高くなる」ため、エマージング ことができるのかもしれない。 ーンが得られた」という(図表1)。 部分は各銘柄の組入れ比率と期待リター して万能ではない。実際に活用していく では、なぜスマートベータは――逆数 ンとの関係を示すものであり、期待リタ にあたっては、押さえておくべきいくつか 戦略でさえも――時価総額加重型インデ ーンが高い銘柄のウェイトを高めればプ のポイントがある。まずITバブルのよう ックスを上回るパフォーマンスを得られ ラスに、逆であればマイナスになる」 な短期的なグロース相場では、時価総額 るのだろうか。その理由を紐解いていき 上記を踏まえてスー氏は、時価総額加 加重型インデックスのほうが、パフォーマ ータの特性を探るため、本来なら市場 「共分散をプラスにさせないことには、 ベータを下回るリターンとなるはずの「6 ポートフォリオの運用成果は何も考えな つの戦略とは正反対の戦略」 (逆数戦略) い等金額投資を上回ることはない。逆に コスト最小化と超過収益を両立 ファンダメンタル加重型戦略 を用いて再度比較を行ってみると、 「驚く 共分散部分がマイナスになると等金額投 ことに、同様に市場ベータを上回るリタ 図表 3 調整済み一日あたり取引高(百万米ドル) 2010年1月 図表 4 FTSE RAFI インデックス構築のプロセス (例)FTSE RAFI Kaigai1000インデックス 800 株主資本(%) FTSE Developed ex Japan All Cap ユニバース 時価総額加重 売上(%) たい。 重型インデックスをこの数式に当てはめ ンスが良くなることをスー氏は指摘する。 株価と低相関な要素への加重が 将来リターンへつながることも た場合に、どのような結果になるかを解 このような相場では銘柄の値上がりが続 説する。「株価が高くなるにつれて、将 くからである(リターンリバーサルが効か 来のリターンは下がる」という関係性(リ ない相場がしばらく続く) 。 そもそも時価総額加重型インデックス ターンリバーサルが存在する)を前提と 次に多くの運用者に共通して言えるこ は指数の性質上、 「割高株を多く持って、 して、 「株価が上昇している銘柄に加重を とだが、インプリメンテーションコストに 割安株を少なく保有する」ことになるた かけること(時価総額加重型の戦略)は、 対して細心の注意を払う必要がある。株 め、相対的に株価の高い銘柄へのウェ 裏を返せば将来のリターンが下がる銘柄 価と低相関な要素にウェイト付けを行う イトが大きくなる傾向にある。一方スマ に加重をかけていることに等しい」とス ことで一定の頻度でリバランスが発生す ートベータとその逆数戦略は、前述のよ ー氏は指摘。数式における共分散部分 るため、運用上避けては通れない問題 うに株価とは低相関な要素にウェイトが がマイナスになり、ときに時価総額加重 だからだ。 置かれることでリバランス効果が得られ、 型インデックスは均等加重インデックス 流動性を最大化し回転率や取引コスト 結果的に「割安株を買って、割高株を売 よりもパフォーマンスが悪くなるとした。 を最小化したい投資家にとって解決する る」ため、バリュー戦略を取ることと同義 同様にスマートベータを数式に当ては べき課題であるインプリメンテーション になるという。 めた場合は、どのような捉え方ができる コスト。だが、スマートベータのなかで スー氏は、銘柄選択のスキルに着目 のだろうか。スー氏が「スマートベータ」 も「ファンダメンタル加重型」の戦略であ 相変わらずスマートベータが大きな注目を浴びている。 してくれる。一般的にアノーマリーの寿命は短い。そして、 と「逆数戦略」の両方を検証した結果、 れば、時価総額加重型インデックスと大 すでに多くの機関投資家がスマートベータを採用し始めて スマートベータも例外ではなく、何らかのリスクプレミア の 有 意 性を訴える。数式は「均等加重 共分散は0 に近づくことがわかった。な きく変わらない流動性と取引高が確保さ いる。投資家サイドにもある程度の知識の蓄積が出来てき ムかアノーマリーを利用してリターンを取得していると考 (EW)と共分散 (n・cov [r i ,w i ] ) の2 つの ぜなら株価と相関性の低い要素でウェイ れ、取引コストも低いため、比較的イン たであろう。パフォーマンスが良いという理由でスマートベ えることができる。 コンポーネントによりポートフォリオのリ ト付けを行ったためである。時価総額加 プリメンテーションコストを小さく抑えら ータ導入を検討していた時期を第 1フェーズとすれば、今、 例えば、最小分散ポートフォリオは小型株ファクター、フ ターンは構成される」ということを意味し 重型インデックスと比べて株価による影 れるという(図表3)。スー氏は活用しや なぜ良いのかという要因を理解した上でスマートベータ導 ァンダメンタルインデックスはバリューファクターの影響が ている(図表2)。運用者のスキルという 響を低減することができたのが大きな理 すいファンダメンタル加重型スマートベ 入を検討する第 2フェーズの時期を迎えていると言える。さ それぞれ大きいことが多くの研究で示されている。これら 観点で見た場合に、1 つ目のコンポーネ 由だ。時価総額加重型の戦略よりも良い ータのひとつとして「FTSE RAFI インデック て、多くの研究でスマートベータの過去のリターンあるい 小型ファクターやバリューファクターはリスクプレミアムをも ントである均等加重は「スキル無し=0」 パフォーマンスを得るためには「共分散 ス」シリーズを挙げる。 は単位リスク当たりのリターンが時価総額加重型のベンチ たらすと考えられている。(なお、これらのファクターがアノ を、2 つ目のコンポーネントである共分 をプラスに近づけるために、いかに株 「FTSE RAFI インデックス」では株価と相 マークに比べて高いことが報告されている。 ーマリーだという考え方もある。)ちなみに、2013 年 3月末 散は「運用者ごとの銘柄選択のスキル」 価と低相関な要素に加重付けを行えるか 関性が低く、企業の規模を計るうえで有 しかし、世の中で高いリターンを提供してくれるのは、 までの過去3 年間のリターンでみると、小型株ファクターは を示している。 が重要になる」とス−氏は結論づける。 効と考えられる「株主資本」 「キャッシュフ した1つの数式とともにスマートベータ ロー」 「売上」 「配当」の4つのファンダメ ンタル指標に対してウェイト付けを行っ 【図表2】ポートフォリオのリターン Rp = n・E [r i w i] = n・E [w i] +n・cov [r i ]E [r i ,w i] = EW+ n・cov [r i ,w i] Point 共分散部分をプラスにできるよう なウェイト付けを行うことによっ て、等金額投資型や時価総額加 重型ポートフォリオ以上のリター ンが得られる (注)EW:均等加重(スキル無し) n・cov :共分散(銘柄選択のスキル) [r i , w i] 出典:Research Affiliates, LLC. ている(図表 4) 。いずれも企業の規模を 捉える上で有効な指標ではあるが、一つ だけでは問題も生じるので(例えば売上 だけでは卸売業の方が製造業よりも過大 評価される)複数の指標を使用している。 市場別パフォーマンスを比較してみると 「FTSE RAFI Kaigai 1000」は「FTSE Kaigai (日本を除く先進国の時価総額加重型イ 600 ファンダメンタル加重 リスククラスター均等加重 最小分散 リスク効率性 均等加重 最大分散 400 200 0 column 配当(%) 4つのファンダメンタル要素の平均を基に、 ファンダメンタル・バリューを算出 ファンダメンタル・バリューの 上位1000企業を選出 FTSE RAFI Kaigai1000インデックス Global 出典:Research Affiliates, LLC. キャッシュフロー(%) 出典:FTSE 第2フェーズを迎えるスマートベータ 加藤 康之(京都大学大学院経営管理研究部 教授、FTSE シニア アドバイザー) リスクプレミアムかアノーマリーのどちらかである。リスク 高く、バリューファクターは低い。これが過去 3 年間のスマ プレミアムとは、何らかのリスクを取ることに対する代償 ートベータのリターンにも影響しているはずである。 であり、だれでもそのリスクを取れば得られるリターンで いずれにしろ、長期的にリスクプレミアムを生み出すリス ある。ちなみに、このリスクプレミアムをもたらすものを クファクターも短期的には出来不出来が起こる。このリスク リスクファクターと呼んでいる。伝統的な投資理論では市 ファクターのリターンの変動はスマートベータのリターンに 場リターンに対する感応度である市場ベータが唯一存在 大きく影響する。スマートベータを選ぶには、何のファクタ するリスクファクターということになるが、最近はバリュー ー、何のアノーマリーからリターンを取得しようとしている やサイズなど複数のリスクファクターを考えるのが一般的 のか、あるいはどれだけ効率的にリターンを取得しようとし である。一方、アノーマリーとは投資家の非合理的行動 ているのかを詳細に検討する必要がある。第2フェーズを や制度に存在する不整合性等から生じたリターン取得の 迎えた今、スマートベータ選びもスマートに行きたいもの 機会であり、追加的なリスクを取らずにリターンをもたら である。