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モジュラーチ工法の適用性に関する研究(その8)

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モジュラーチ工法の適用性に関する研究(その8)
モジュラーチ工法の適用性に関する研究(その8)
木村
1.
亮*・岸田
潔**・澤村康生***
研究の目的
近年施工事例が増加しているヒンジ式プレキャストアーチカルバートは,部材のたわみやヒンジ
部の回転によって変形をある程度許容することで,周辺地盤から積極的に地盤反力を引き出す構造
である.したがって,部材の剛性によって外力を支持する剛性カルバートと比べて,大断面・高土
被り下での施工が可能である.しかし,盛土施工過程における変形挙動について,実施工時に内空
変位を計測した事例はあるが,カルバートに作用する土圧の推移やカルバートの応力分布について
計測した例は少ない.また,強地震時におけるカルバートの損傷形態や限界状態についても不明確
な点があり,地震時にヒンジ部が逸脱し,カルバート全体が崩壊する危険性が指摘されている.そ
こで本研究では,盛土施工過程における変形挙動の把握と,地震時における破壊メカニズムの解明
を目的に,実構造の 1/5 スケールの 2 ヒンジプレキャストアーチカルバートに対して強震応答実験
装置を用いた振動台実験を実施した.
2.
研究の方法
本実験では,京都大学防災研究所所有の強震応答実験装置を用いた.図 1 に実験土槽と計測器の
配置を示す.土槽は,側壁下部がヒンジ構造となっており,両壁の上部を PC 鋼棒で連結して,地
盤のせん断変形を許容する構造としている.また,加振中の地盤と土槽壁の摩擦を軽減するために,
テフロンシートを使用した.本実験で用いた模型は,内空幅 7880 mm,内空高 5600 mm,土被り 2000
mm の条件で設計した RC 構造に対して,縮尺のみを 1/5 としている.また,両肩のヒンジ部につい
て,実際は曲がりボルトという部材でサイドウォールとボールトが連結されているが,本実験では
ヒンジ構造そのものの安定性を確認するために,ヒンジ部は単純な突合せ構造とした. 2 ヒンジプ
レキャストアーチカルバートの盛土施工基準では、締固め度 92 %以上で盛土を施工管理することが
求められている.そのため、本実験では、締固め度 92 %以上を目標に,人力で踏み固める方法で地
盤の締固めを行った.地盤材料には,最適含水比(20.8 %)付近である含水比 20.0 %に調整した江
戸崎砂を用い,加振実験後に行った含水比測定では,採取した全ての点において含水比が 20±1 %以
内であることを確認した.
ひずみゲージ貼付断面
レーザー変位計
接触式変位計
加振実験において,第 1 加振ではレベル 1
土圧計
加速度計
ビデオカメラ
地震動(最大加速度 1.39 m/sec2),第 2 加振で
加振方向
はレベル 2 地震動(最大加速度 7.71 m/sec2)
3500
を入力した.地盤種別は,一般性を考慮して
[mm]
Ⅱ種地盤としている.また,大きな地盤変形
400
を発生させてカルバートの限界状態を確認す
るため,第 3 加振では 1 Hz テーパー付き正弦
波(最大加速度 8.58 m/sec2)を入力した.
1250
3.
得られた成果
写真 1 に加振後のカルバートの状況を示す.
写真より,加振後のカルバートには,サイド
ウォール内外にクラックが発生していること
がわかる.また,インバートとサイドウォー
*
京都大学・大学院工学研究科・教授,**同・准教授,***同・助教
310
1798
図1 実験土槽
ルの継ぎ目には部材を貫通する亀裂が発生しており,繰り返しの加振に伴い,継ぎ目の部分に非常
に大きな負荷が作用していたことが推測される.このような損傷について,最終加振である第 3 加
振の結果から,発生した原因を考察する.
図 2 に,第 3 加振(正弦波 8.58 m/sec2)における盛土上部の水平変位の時刻歴を示す.土槽壁面
と比べて盛土中央における変位振幅の方が小さく,地盤の最大せん断ひずみは,左壁面付近で 6.89 %,
盛土中央付近で 6.21 %となった.兵庫県南部地震における非液状化地盤のせん断ひずみは 1 %弱で
あったため,本加振では非常に大きな地盤のせん断ひずみが発生していることがわかる.
図 3 には,8.42 sec におけるカルバートの鉄筋ひずみ分布を示す.ひずみは引張りを正としてい
る.図より,サイドウォール右側のスプリングラインの少し上で,カルバート内側の鉄筋に局所的
に大きなひずみが発生していることがわかる.また,インバートの両端では,鉄筋に比較的大きな
ひずみが発生している.写真 1(ii)におけるインバートの継ぎ目の損傷状況と併せて考えると,繰
り返しの加振に伴い,インバートには大きな曲げが作用し,その力がインバートとサイドウォール
の継ぎ目という構造的な弱部に伝達したことによって,亀裂が発生したと考えられる.本実験にお
いて,インバートとサイドウォールは現場と同じ継ぎ方をしているため,カルバート横断方向の地
震動により,実構造においても同様の損傷が発生する可能性がある.
クラック線
200
ボールト
サイド
ウォール
インバート
両端の大き
インバート
な亀裂
Displacement [mm]
Spring line
Wall(1.96m)
Embankment
100
0
-
+
-100
11.57 sec : 盛土のレーザー
変位計がレンジアウトした
-2000
5
10
Time [sec]
15
20
図2 盛土上部の水平変位時刻歴
(i) 全景
11760
Spring line
Spring line
2000
0
0
2000
0
(ii) サイドウォールとインバートの継ぎ目
(写真(i)左側)
写真1 加振後のカルバートの状況
4.
謝
Strain ×10-6
2000
図3 8.42 secにおける鉄筋ひずみ分布
辞
本研究は,モジュラーチ工法協会より委託されたものであり,関係各位に謝意を表す.
発 表 論 文
1) 澤村康生,並川卓矢,岸田 潔,木村 亮:強震応答実験装置を用いた 2 ヒンジプレキャストアーチカルバートに対する振
動実験,第 49 回地盤工学研究発表会発表論文集,地盤工学会,pp.1057-1058, 2014-7.
2) 澤村康生,並川卓矢,岸田 潔,木村 亮:2 ヒンジプレキャストアーチカルバート強震応答実験に対する数値解析,第 69
回土木学会学術講演会講演概要集,Ⅲ-006, pp.11-12,2014-9.
3) 宮﨑祐輔,澤村康生,岸田 潔,木村 亮:プレキャストアーチカルバート盛土における縦断方向の地震時挙動に関する遠
心模型実験,第 69 回土木学会学術講演会講演概要集,Ⅲ-005, pp.9-10, 2014-9.
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