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オンライン漫画,インタラクティブアートとしての産業的価値 The industrial

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オンライン漫画,インタラクティブアートとしての産業的価値 The industrial
「エンタテインメントコンピューティングシンポジウム(EC2014)
」2014 年 9 月
オンライン漫画,インタラクティブアートとしての産業的価値
-日本と韓国の比較を中心に
金孝源†1
オンライン漫画と出版漫画は,流通構造だけではなく,読者の受容方式にも多くの差がある.韓国の
オンライン漫画では,コメント(Reply)という双方向フィードバックを通じて,読者がストーリー構造
や展開に参与できる.また,ある場面の BGM・アニメ効果を読者のクリック・タッチで決定するインタ
ラクション(Interaction)機能などが発達してきている.日本のオンライン漫画は,モバイルを中心に規
模成長をしている.業界は,漫画雑誌での人気作品をモバイルでリニューアルして提供したり,漫画の
一部のみを WEB 上に公開したりするなど,商品の購買への誘導を戦略化してきている.本研究は,日本
と韓国におけるオンライン漫画現状を比較分析する.また,モーションコミックスを含むインタラクテ
ィブコミックスの可能性を通じて,新たなプラットホームにおける産業メカニズムを提示することが目
的である.
The industrial value of online comics as an interactive art.
KIM HYOWON†1
Comparing the situations of the online comics and publishing cartoons in Korea and those ones in Japan, there are lots of
differences in the way of readers' reception precess as well as a distribution system. In the online comics in Korea, a double way
feedback called REPLY can make it possible for the readers to take part in the story developing. And the interaction functions,
which make it possible for the readers to decide if they add sound/animation effect to the screen with their click and touch
only, are being used as well. The online comics in Japan are growing mainly with mobile contents industry. In that field of
business in Japan, they are trying to raise the readers' purchsing desire by providing the new version of popular items or by
revealing some parts of them on the website. This is the study on the comparison and the analysis of the situations in those two
countries, and which is aimed at the presenting the mechanism for industry of new platform through the possiblity of interactive
comics including motion comics.
1. はじめに
る.デジコミ第 1 世代は,オンラインが大衆化する前の 1980
年代後半に,家庭用ゲーム機を通じて提供された.PC エンジ
ンや 3DO などの CD-ROM ドライブゲーム機が登場し,大量
日本における漫画の産業的価値は,出版産業のみに限らず,
の画像データ処理が可能となったのである.代表的な作品と
大衆メディア全般にかけて大きい意味がある.日本ではドラ
しては,ハドソン社の「コブラ黒竜王の伝説,1989」
,
「うる
マ・映画・アニメなどのメディア市場やキャラクター産業の
星やつら STAY WITH YOU,1990」
,リバーヒルソフト社の「ト
大部分が,漫画原作を中心にしている.それは,漫画という
ップをねらえ!GunBuster,1992」などがある.デジコミ第 2
ジャンルが原作ソースとしての価値を備えている上,他のメ
世代は,1990 年代後半から電子書籍・携帯などを通じて提供
ディアジャンルと比べ少ない費用で興行可能性を予測できる
された.デジコミ第 1 世代は,漫画雑誌市場が成長する時期
からである.このような日本の出版漫画市場は,1995 年を起
に登場した反面,デジコミ第 2 世代は漫画雑誌市場の縮小と
点として減少し続けている.その原因として,90 年代中盤に
共に登場した.これを産業的観点からみると,消費者受容空
人気を集めた漫画が連載終了,
そして 90 年代中盤に登場した
間の拡張と移動で区分できる.
ウィンドウズ 95(WINDOWS95)が,出版漫画の大衆文化消
費の支配力を多様なコンテンツに分散させたからだと分析で
区分
消費者受容空間の拡
張
移動
内容
デジコミ第1世代
デジコミ第2世代
・家庭用ゲーム機
・モバイルコミック
きる.また,インターネットプラットホームを基盤とする漫
画コンテンツ・デジコミも登場し,漫画雑誌と単行本に集中
していた漫画ジャンルの消費経路が,より多様になったこと
も重要な要因である.
消費者受容空間の
・PC 向けスキャン漫画
日本のデジコミは,大きく第 1 世代・第 2 世代で区分でき
登場時期
†1 京都精華大学
Kyoto Seika University
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
漫画雑誌市場の
漫画雑誌市場の
成長と共に
縮小と共に
表 1 消費者受容空間の拡張と移動
123 1
2011 年基準,日本の電子書籍市場の規模は 650 億円.モバ
イルマンガ市場の規模は 572 億円で,この数値は電子書籍市
場の 88%を占める規模である.このような規模成長と市場構
造の変化にも関わらず,日本のコンテンツ業界の原作ソース
として活用されるのは,未だに出版漫画が大部分である.こ
のような現状の大きな要因は,デジコミがコンテンツ産業の
核心条件であるコアターゲットを確保できなかったからだと
思われる.
スマートフォン・携帯タブレット PC などの普及率が高く
なることによって,オンライン基盤のインタラクティブコミ
ックス,スマートフォン向けの漫画コンテンツなどの開発が
増加している.いわゆる,デジコミ第 3 世代が始まったので
ある.既に漫画のオンラインサービスが主流になっている韓
国では,ウェブトゥーンというジャンルと共に,多様なイン
タラクション要素を活用するタブトゥーン・アップトゥーン・
図 1 韓国のウェブトゥーン
(NAVER サイト[2])
ガンドハ氏の『偉大なキャッツビー,2001』
・ガンプル氏の
インタラクティブトゥーンなどのサービスが展開されている.
『純情漫画,2003』などは,現在まで多くのウェブトゥーン
日本の各出版社からも,ウェブ・スマホといったプラットホ
が使用している垂直構造の演出技法で制作された.出版漫画
ームへのサービスが拡大されている.現在の漫画コンテンツ
のようにページ中心に演出するのではなく,コマを中心に演
市場は,消費者受容空間の拡張と移動が同時に行われる新た
出する技法で,アニメのストーリボードでのレイアウトと似
な世代へ向かっているのである.
ている技法である.コマとコマ間の時間的空間が,作家によ
中野晴行氏は,彼の著書『マンガ進化論』で,
“漫画産業の
って調節できる.出版漫画と比べ,テキストの大きさ・配置
未来の案は韓国にある”と論じている[1].本研究は,韓国オ
などが自由にでき,作家の個性を効果的に表現することが可
ンライン漫画と日本のデジコミの差を比較分析し,新たな漫
能である.このマウスの上下スクロール方式の重要な特徴は,
画ジャンルの産業的価値と可能性を展望する.
チルト(Tilt)やフェード(Fade)などの映画演出技法の活用
である.スクリーンの表現範囲を超える長い場面を通じて,
2. オンライン基盤の漫画コンテンツ
連続的なイメージの演出が可能である.
2.1 韓国のウェブトゥーン(WebToon)
韓国において初期のオンライン漫画は,出版漫画をスキャ
ンして WEB 上に掲載する形態が主流であった.以後,新人
作家やアマチュア作家たちが,自分のホームページやブログ
などを通じてウェブブラウザ形式の作品を発表し始めた.当
時の作品は大部分が,個人の日常・周囲での出来事の話など
を題材としたエッセイ形式が主流であった.以後,韓国内の
大手ポータルサイトである NAVER・DAUM・YAHOO などで
漫画コンテンツ連載が開始され,長編連載形式の漫画コンテ
ンツが登場する.漫画コンテンツがウェブ上で市場行為を始
めたこの時期から,本格的にウェブトゥーンというジャンル
として区分できたといえる.ウェブトゥーン(WebToon)と
は,ウェブ(Web)+カートゥーン(Cartoon)の複合語で,
ウェブプラットホームを基盤にサービスが展開される漫画コ
ンテンツである.
図 2 ウェブトゥーンでの映画演出技法
ガンドハ作「偉大なキャッツビー,2003」
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
124 2
ウェブトゥーンの展開方式においての特徴は,デジタル叙
低い販売率を記録している.それは,ウェブトゥーンがウェ
事である.既存の叙事は,作家によって完成された叙事を読
ブに最適化されているコンテンツである上,ウェブ上では無
者へ伝える形式であった.しかしデジタル叙事では,コンピ
料で閲覧できるからである[4].少数の人気作品が,映画化や
ューターという空間で読者がある行為ができ,叙事構成に関
キャラクターマーチャンダイジングなどの関連産業への連携
与できるのである.ほとんどのウェブトゥーンコンテンツに
をみせているが,原作漫画への消費再創出は微々たるもので
は,読者コメント欄がある.ウェブトゥーンの作り手は,読
ある.このような現状の原因は,ほとんどのウェブトゥーン
者コメントからフィードバックを受け取ることができる.デ
が 1 人制作システムであり,漫画コンテンツ産業に関する専
ジタル叙事の形成は,作家⇒読者の一方向的な意思疎通から,
門家の知識や経験が不足しているからだと解析できる.
作家⇔読者という双方向的な意思疎通への転換だといえる
[3].読者からフィードバックを受け取る行為は,漫画雑誌で
2.2 日本のデジコミ
のアンケート方式に似ているが,ウェブトゥーンでのフィー
ドバックは,リアルタイムに相互間でに行なう.韓国のウェ
韓国のオンライン漫画がコンピューターを基盤とするウ
ブトゥーンでは,1 作品につき 1 回で平均 2000 から 10000 個
ェブメディアとして展開されたとすると,日本のオンライン
の読者コメントが発信されている.
漫画はモバイルを中心に市場を確保したといえる.2003 年,
韓国のウェブトゥーンは,漫画雑誌の廃刊・休刊で発表の
au の CDMA サービス開始と共に,携帯にコミックサービス
場を失った既存の作家はもちろん,多くの新人作家の活動の
が始まった.以後,DOCOMO と SOFTBANK から3G を基
場である.現在,NAVER では 100 人以上の作家の作品が連
盤とする漫画サービスが開始され,モバイルコミックという
載され,週 1 回から 2 回の連載方式で掲載されている.新人
ジャンルが生まれる.日本のデジコミ第 2 世代は,PC 基盤の
作家のデビューは,
読者達の推選によって決定される方式で,
漫画が 10%,モバイル基盤の漫画が 90%で,PC 中心の韓国
誰でも挑戦できる競争システムである.スマートフォンが大
ウェブトゥーンとはかなり差がある.2008 年に発表した韓国
衆化されながら,既存のスクロール方式はもちろん,タッチ
の大韓貿易投資振興公社の研究報告書によると,韓国のモバ
形式のスマートゥーンも提供されている.また,タブトゥー
イルインターネット加入者数は全体モバイル加入者の 50%
ン・ブランドトゥーンなどの多様な形態のジャンルも登場し
以下の反面,日本のモバイルインターネット加入者数は 8900
ている.アイカートゥーン・ネイトマンガなどのアプリコン
万人・全体モバイル加入者の 85%以上である[5].
テンツは,アップトゥーンというジャンルとしてサービスし
ている.
図 4
携帯コミックサイト,シーモアのメイン画面
図 3 左)Android 基盤のアップトゥーン
右)NAVER スマートゥーン説明ページ
キムギュサム作「バフ少女オオラ,2012」
日本の各通信社のパケットサービス開始,BL・TL などの
コンテンツの増加が,日本内モバイルコミック市場の規模成
長を促進させたと分析できる.BL(Boy’s Love)と TL(Teen’s
韓国のウェブ漫画コンテンツのほとんどは,無料で提供さ
Love)というジャンルは,過去に少女漫画として区分され,
れている.そのため,多くの作家の収入源が原稿料に限られ
出版漫画の全体市場規模に影響を与える程ではなかった.し
るという問題点が発生する.日本の出版漫画ビジネスは,多
かし,モバイルコミックの市場成長と共に,市場規模が大き
様な漫画コンテンツ産業のメカニズムを提示したが,韓国ウ
く成長したのである.韓国コンテンツ振興院から発行する
ェブトゥーンの関連コンテンツ産業は,せいぜい単行本化程
「2009 海外コンテンツ市場調査」によると,EBOOK・YAHOO
度である.その単行本さえ,ウェブトゥーンの人気と比べ,
コミックスなどのオンライン漫画の利用者が 30~50 代の男性
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
125 3
であるの反面,モバイルコミックの利用者は 60~70%が 10,20
代の女性だである[6].
が活用されている.
ロシアのベンチャー会社 NARR 社は,
2011 年に設立され,
モバイルコミックは,携帯の画面を通じて提供され,小さ
NARR8 というモバイルアプリ基盤のインタラクティブコミ
い画面の特徴上,1 コマ単位で演出する作品が多い.画面に
ックスを提供している[8].BGM やアニメ効果はもちろん,
入り切らない場面は,セリフや効果音の流れに合わせスクロ
読者がタッチすると特殊効果画面を見せるなどのインタラク
ールする方式もある.従って,単純で短い叙事の作品が,多
ション要素を活用している.
数登場する.既存の出版漫画を提供する為には,別のリニュ
ーアルを必要とする.ページ捲りやコマ移動は,主に携帯の
上下ボタンを使用する.
現在(2014 年)は,アイフォンを含むスマホ・タブレット
PC などの普及率が増加するに従って,携帯より拡張したディ
スプレイで漫画コンテンツが提供されている.小学館・集英
社・講談社のようなメジャーな出版社を含む多くの出版社が,
漫画作品のデジタル化に関する計画を表明している.また,
既存の出版漫画をスキャンして一部を無料提供し,単行本の
ような商品の購買を促進している.このサービスでは,コメ
ントやフィードバック行為が行われてはいるが,相互的なフ
ィードバックではない.それは,提供されるコンテンツが,
図 5 The Knights of the Void-NARR8's Interactive Motion Comic
すでに完成された作品のリニューアルだからである.
2013 年 10 月,韓国のポータル業者である NAVER は,
読者の関与によって,イメージの変形ができるインタラク
Comico というサイトを開設し,日本でウェブトゥーンサービ
ティブコミックスも登場している.代表的な事例は,オース
スを開始した.既存のウェブトゥーンのような上下スクロー
トラリアの 「Nawlz」である.オーストラリアのデザイナー
ル演出方式で,日本の作家を中心としている.また,既存の
ストゥ氏(SUTU)のナウルツ(Nawlz)は,内容によって変
韓国ウェブトゥーンを日本語でリニューアルし,アプリとし
わる BGM で,読者の緊張感や不安感を極大化させる.また,
てサービスを開始した.Comico は,韓国での流通メカニズム
マウスやタッチなど,読者の行為によってイメージが変形で
のように無料サービスで,編集者ではなく担当者が作品の連
きる.
載を許可・決定する.担当者は作品の性格・企画などに一切
関与せず,作家から伝達された原稿をウェブ上にアップロー
ドする業務のみ行う.これは,韓国ウェブトゥーン界で発見
された無料サービスの非効率的な市場構造であり、ほとんど
の制作が一人のアマチュア作家を中心に行われている.
更に,
漫画コンテンツ産業への経験が無いポータルサイトに著作権
か帰属され,コンテンツビジネスの展開が活性化され難い・
膨大なコンテンツの量に従うコアターゲットの消失などが問
題となり,代案を必要とする.
2.3 癒合コンテンツ-インタラクティブコミックス
インタラクティブ(Interactive)とは,インター(Inter)と
図 6 Nawlz の Trailer 映像[9]
アクティブ(Active)の複合語で,双方向的な意思疎通・相
互活動的という意味である.キムヨンヒョン氏の「ウェブト
ユーザ経験創出への多様な試みは,漫画コンテンツの核心
ゥーンでの没頭(Flow)の為のインタラクションデザイン分
であるストーリー構造まで行なう.一方向のストーリー構造
析研究,2010,ハンヤン大学校」によると,
“インタラクショ
ではなく,ストーリーの分岐点を読者の関与によって展開す
ンデザインの究極の目標は,ユーザー経験創出(Creating User
る方式で,非線形ストーリー構造と呼ばれる.非線形展開方
Experience)だ”と論じている.また彼は,インタラクション
式は,主にゲームジャンルで活用される要素である.漫画コ
デザイン要素として,動き(Motion)
,空間(Space)
,時間(Time)
,
ンテンツでの非線形ストーリー方式の活用は,コンテンツジ
外観(Appearance)
,質感(Texture)
,音(Sound)で区分して
ャンル間の境界が薄くなる融合産業として意味がある.非線
いる[7].最近,登場しているインタラクティブコミックスで
形ストーリー構造のインタラクティブコミックスの代表的な
は,主に動き(Motion)
,空間(Space)
,時間(Time)
, 音(Sound)
事例として,NARR8,DC Comics,Orbit Comics などがある.
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
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先ほど論じた NARR8 は,2013 年 6 月に編集プログラムであ
ブコミックスのような思考的・物理的関与を活用する没頭
るストーリービルダーを公開した.NARR 8 チームは,消費
(Flow)効果への研究が必要である.また,漫画ジャンルは,
者が作った 1000 個以上のストーリーを確保・検討し,アプリ
メディアの表現可能範囲を積極的に活用する融合産業に変化
を通じて提供している[10].スーパーマン,バットマンの製
すべきである.実は,このような融合産業としての様相は,
作社である DC Comics は,DC and DC2 Multiverse というデジ
過去日本の家庭用ゲーム機で発売されたデジコミ第1世代か
タル漫画をランチングしている.この作品は,読者がコンテ
ら発見できる.漫画と共にゲーム市場が産業的に大規模成長
ンツに BGM を自由に添付できる.また,ストーリーの展開
しながら,漫画とゲームの融合型コンテンツが生まれたので
方向を読者が決めることができる.アメリカの Orbit media の
ある.小説をゲーム化するビジュアルノベルもまた,小説と
インタラクティブコンテンツ Orbit Comics も,読者の関与に
ゲームの融合型コンテンツだと解析できる.また,ビジュア
よって展開が変わる非線形ストーリー構造をしている.
また,
ルノベルはオプションによってストーリーが変わる方式で,
テキストの動きや人物のモーション効果を活用し,ユーザの
非線形的叙事構造の初期モデルともいえる.
好奇心と没頭(Flow)を誘導している[11].
図 8
ビジュアルノベル
戯匠 Works 作「イツワルセカイ-Relight My Soul-」
図 7
Orbit Comics のインタラクティブコミックス
メディアは現在,技術の発展と多様なプラットホームの登
韓国のオンライン漫画は,スマートゥーン・アップトゥー
場で,その活用範囲をより広げている.過去の出版漫画のよ
ンに舞台を拡張し,インタラクトゥーンという造語を生み出
うに,オンライン漫画コンテンツが OSMU(One Source Multi
した.漫画の場面に適切な効果音・BGM などを,読者の選
Use)の源泉ソースになる為には,映像・ゲーム・音楽・非線
択ボタンによって実行され,読者の関与を引き出し,聴覚的
形的構造などの多様なソースを活用し,コアターゲットを確
に注意を集中させる.また,ある場面でアニメが再生するな
保しなければいけない.その為,漫画コンテンツ製作には,
ど,モーションコミックスの要素も活用している.
ゲーム産業・映画産業のチーム形式の分業プロセスのように,
作家の要求に応じる各要素の専門プログラマーが登場すると
3. おわりに
予想できる.つまり,漫画コンテンツの制作は,OSMU(One
Source Multi Use)の為の MSOU(Multi Source One Use)の概念で
理解されるべきである.
漫画は本来,受容者の関与を誘導する独特なジャンルであ
る.コマ間のアングル変化・人物の動きなどを,読者の能動
的な思考で進行していくものなのだ.技術の発展とメディア
映像メディア
ゲーム要素
の変化は,このような漫画の叙事構造に,物理的なインタラ
クション要素を可能にしている.ユーザにとってコンテンツ
音楽要素
への積極的参与は,効果的な没頭(Flow)の手段になるだろ
う.
コミュニティ
マンガ
CONTENT
WebContent
キャラクター
現在,日本の多くの出版社と関連業界は,減少を続けてい
る出版漫画市場の代案として,オンライン市場への市場を拡
張している.しかし,出版漫画と比べ流動性が強いオンライ
広告
映像要素
ン紙上で,コアターゲットが確保できないと,出版漫画ビジ
ネスのようなコンテンツ市場メカニズムを期待することは難
表 2 漫画コンテンツビジネスの展望
しい.このようなジレンマを克服するには,インタラクティ
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
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漫画研究家スコットマクラウド(Scott McCloud)は,メデ
ィアが新たな時代に向かうと,その環境に適応した突然変異
ストーリーテーリングが登場すると論じている[12].現在の
漫画コンテンツの変化を見ると,時代はリニア(Linear)ス
トーリーテーリングからデジタル(Digital),またはインタラク
ティブストーリーテーリングへ変化していることが分かる.
デジタルストーリーテーリングとは,あるコンテンツをテキ
スト・映像・音声などの多様な要素で,相互疎通する過程を
意味する.日本の漫画ビジネスにおいて,大きな役割を担う
編集者の企画・製作段階での関与は,読者との双方向コミュ
ニケーションを通じて,より多様で効率的な製作を可能にさ
せるだろう.また,リアルタイムフィードバックは,関連コ
ンテンツ産業の展開にも,大きいシナジー効果を上げると期
待できる.その上,日本の漫画ビジネス専門家のノウハウが
加えられると,オンライン漫画は,コンテンツビジネスの新
たなメカニズムを形成すると思われる.
参考文献
1) 長野晴行: 漫画雑誌が消える日が来る,マンガ進化論,pp.88,
P-Vine Books(2009)
.
2) NAVER ウェブトゥーン.
http://comic.naver.com/webtoon/weekday.nhn
3) イイェリ,イユジョン,イヨンソク: 漫画の定義と影響に関する
研究,pp.21,漫画の美学と文化研究.
4) ハンチャンワン,ジョンヒョンジ: ウェブトゥーン無料サービス
においてのブラックマーケット研究,アニメーション研究 Vol.17,
No.1(通巻 16 号)
5) キムジュンハン: 日本モバイル市場,大韓貿易投資振興公社
(2008).
6) イサンオ: 2009 海外コンテンツ市場調査,韓国コンテンツ振興院,
pp.61 (2010).
7) キムヨンヒョン: ウェブトゥーンでの没頭(Flow)の為のインタ
ラクションデザイン分析研究,pp.19,ハンヤン大学校デザイン修士
論文,(2010).
8) https://itunes.apple.com
9) ナウルツのインタラクティブコミックスのトレーラー映像
http://www.youtube.com/watch?v=lsfXk4xtt0o
10) ジョンギャンヨン: モーションブック NARR8,ティストアでサ
ービス,ヘラルド経済新聞 (2013 年 10 月 30 日).
11) オービットコミックス http://www.orbitcomics.com/
12) Scott McCloud: 漫画に関して,TED talk (2005).
http://www.ted.com/talks/lang/ko/scott_mccloud_on_comics.html
ⓒ2014 Information Processing Society of Japan
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