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微分法の基礎 2 2005.9.07up
7 命題 3.1 (加法定理) 複合同順として, sin(α ± β) = sin α cos β ± cos α sin β, cos(α ± β) = cos α cos β ∓ sin α sin β, tan α ± tan β tan(α ± β) = . 1 ∓ tan α tan β この公式から,以下の倍角の公式と半角の公式が得られます. 命題 3.2 sin 2α = 2 sin α cos α, cos 2α = cos2 α − sin2 α = 2 cos2 α − 1 = 1 − 2 sin2 α, 1 + cos 2α 1 − cos 2α , cos2 α = . sin2 α = 2 2 さらに,やはり加法定理から差を積に変形する式が得られます. 命題 3.3 a+b b−a sin , 2 2 a+b b−a cos b − cos a = −2 sin sin , 2 2 tan b − tan a = {1 + tan b tan a} tan(b − a) . sin b − sin a = 2 cos (1) (2) (3) この差を積に変形する公式が因数分解に相当する式になります.それから3角関数とそ の変数との間の関係が不等式により得ることができます. 命題 3.4 (i) (ii) 3角関数 sin x, tan x とその変0数 x との間につぎの不等式が成り立つ: x 6= 0 のとき, π 0 < |x| < のとき, 2 したがって, π (iii) 0 < |x| < のとき, 2 | sin x| < |x|, |x| < | tan x|, cos x < sin x < 1. x 注意. ここで3角関数の角度の単位は,半径1の円の弧の長さをもってその中心角の角 度を表す弧度法が採用されていることに注意してください.この角度の単位を用いること 8 により,3角関数の微分の演算がやりやすくなります. 命題 3.5 (3角関数の基本的な極限) sin x = 1, x tan x lim = 1. x→0 x lim (4) x→0 証明.命題 3.4 より, cos x < sin x <1 x (5) ³ 0 < |x| < π´ 2 との関係が得られています. lim cos x = cos 0 = 1 x→0 であるから(これも実際には証明が必要の事実),右辺が常に1だということも合わせて, 間の関数も1に近づく(この考え方をはさみうちの原理といいます),すなわち, sin x = 1. x→0 x lim また,再び命題 3.4 の不等式より, 1< sin x 1 tan x = < x x cos x cos x ³ 0 < |x| < π´ 2 が得られますから,はさみうちの原理により, tan x =1 x→0 x lim が得られます. 2 これが3角関数の約分に相当する式ですが,具体的には sin x, tan x の原点における接 線の傾きがそれぞれ1であることをいっています.また,a を定数として, sin ax =a x→0 x lim となることに注意してください. 問題 3.1 点Oを中心とし,ABを直径とする半円周上の1点をPとし,∠APO = ∠OPQ と なるように,点QをAB上にえらぶ.点Pが円周に沿って点Bに近づくとき,点Qの極限 の位置を求めなさい1 . 命題 3.4 を用いると3角関数の導関数が求まります. 1 水本久夫,微分積分学問題集−−改訂版,培風館,p.15. 9 (III) (IV) (V) π ) 2 π {cos x}0 = − sin x = cos(x + ) 2 {sin x}0 = cos x = sin(x + {tan x}0 = 1 + tan2 x = (−∞ < x < ∞) (−∞ < x < ∞) 1 cos2 x (x 6= nπ + π ; n = 0, ±1, ±2, . . . ) 2 証明. 加法定理の (1) 式により, 2 cos(x + h2 ) sin h2 sin(x + h) − sin x = h h h sin h = cos(x + ) h 2 2 2 したがって (4) 式により, sin h sin(x + h) − sin x h = lim cos(x + ) lim h 2 h→0 h→0 h 2 h→0 2 = cos x . lim 同様に, (2) と (4) により, sin h cos(x + h) − cos x h = lim (− sin(x + )) lim h 2 h→0 h→0 h 2 h→0 2 = − sin x . lim また,tan x の加法定理 (3) と (5) を用いると,x 6= nπ + π のとき, 2 tan(x + h) − tan x tan h = lim (1 + tan(x + h) tan x) lim h→0 h→0 h→0 h h 2 = 1 + tan x . lim 2 ここでは極限の計算が数多く出てきていますが, lim f (x) = α x→a は関数 f (x) の x = a の値を,本来の値 f (a) をいったん無視して,x = a の近くの動 きからみるとどうなるかということをみています.したがって, f (a) の値と異なること もあるし,場合によっては f (a) の値が定義されていなくても α が決まるということが あります.いままでの微分の計算はすべてその例になっているものです.もちろん, lim f (x) = α, x→a f (a) = α 10 となるときもあるわけで,そのとき関数 f (x) は x = a において連続であるといわれま す.この場合,f (a) の値とまわりの動きが一致しているわけですから,グラフはその点で つながることになります. 極限の計算をする場合はつぎの演算に関する定理を用います: 定理 3.6 lim f (x) = α, x→a lim g(x) = β x→a ならば, (i) lim {f (x) + g(x)} = α + β x→a (ii) lim kf (x) = kα x→a (iii) (k は定数) lim f (x)g(x) = αβ x→a (iv) β 6= 0 のとき, lim x→a α f (x) = . g(x) β また 命題 3.5 の証明において‘ はさみうちの原理 ’が用いられていますが,それは 定理 3.7 g(x) 5 f (x) 5 h(x) (x 6= a) かつ, lim g(x) = α, x→a lim h(x) = α x→a ならば, lim f (x) = α . x→a と一般に述べることができます.定理 3.6 あるいは定理 3.7 を用いて,xn , cos x, sin x が 各点 a において連続であることが示されます.すなわち, lim xn = an , x→a lim cos x = cos a , x→a lim sin x = sin a , x→a lim tan x = tan a x→a (a 6= nπ + π ; n = 0, ±1, ±2, . . . ) 2 問題 3.2 座標軸上に2定点A (a, 0), B (0, b)(ab 6= 0) がある.動点P (p, 0), Q √ (0, q) がその距離を一定値 l = a2 + b2 に保ちながら,それぞれ横軸上,縦軸上を限りな くA,Bに近づくとき,直線ABと直線PQの交点の極限の位置を求めなさい.