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学校教育法施行規則の一部を改正する省令案に反対
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案に反対する意見 2014 年 8 月 24 日 東京私大教連中央執行委員会 1.学校教育法施行規則第 144 条の削除について 同条を削除することに断固反対である。 <理由> ①学校教育法施行規則第 144 条「学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議 を経て、学長が定める。 」を、全文削除する合理的理由は一切無い。文科省は、パブリックコメン ト募集文書において、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 88 号)の成立に伴い」同条を削除するとしているが、まったく理由にならない。改正学校教育法 は、第 93 条において、「学生の入学、卒業及び課程の修了」 、「学位の授与」について、教授会は 学長が決定を行うに当たり意見を述べるものとすると定めたが、退学、転学、留学、休学につい ては教授会の議を経る必要がないなどと定めたわけではなく、学校教育法施行規則第 144 条を全 文削除することは不当かつ違法である。 ②同条を削除することは、学生の退学、転学、留学、休学について、教育を直接担い、学生に対 する教育上の責任を負う教員集団たる教授会の審議を一切行うことなく、学長が一存でこれらの 重要事項を決定できるようにすることを意味する。実際に、 「大学のガバナンス改革の推進方策に 関する検討会議」で配布された施行通知案によれば、「第 93 条第 2 項第 1 号で規定された以外 の、学生の退学、転学、留学、休学については、本人の希望を尊重すべき場合など様々な事情が あり得ることから、教授会が意見を述べることを義務付けておら」ないとされている。 しかし、これは断じて容認できるものではない。実態としても、学生の退学、転学、留学、休 学について教授会が審議しないなどということは、あり得ない。それらの事項は、学生の終了年 限や取得単位数の認定、留学においては留学先大学等の選択の妥当性や留学先での取得単位の読 み替えをどうするのか、退学を希望する学生に対しての教育的な援助のあり方などは大学教育そ のものであり、それらを教授会が専門的見地、教育的見地から審議することは、学生の学習権を 保障するためにも必要不可欠である。 学長が教授会の一切関知していないところで、学生の退学、転学、留学、休学について独断で 決定するなどという事態を法令で容認もしくは推奨することは、大学教育の破壊であり、暴挙と いうほかない。 ③学校教育法改正の衆議院文部科学委員会における 5 月 23 日の審議で、宮本岳志議員(日本共産 党)は、「現行学校教育法施行規則第 144 条では、『入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、 教授会の議を経て、学長が定める』とされております。 (これと法案を)比べたときに、退学、転 学、留学、休学というものが抜けているわけですけれども、これは一体どこに行ったんですか」 と問題性を指摘し、 「学長が教授会の意見を聞くことが必要でないと判断すれば、教授会の議を経 ずに学生を退学させることができることになりますね」と質したに対して、吉田大輔文部科学省 高等教育局長は、 「まさにその法律と省令との関係を再検討する際の一つの論点として考えており ます」と述べている。それに対し宮本議員は、 「そうしたらあれですか、省令を変えずに、退学に ついても議を経るということを残すということを今おっしゃっているんですか」と重ねて質した のに対して、吉田高等教育局長は、 「その点は、そういうものも選択肢としてあって、検討したい と思っています」と回答している。 しかし、 「大学のガバナンス改革の推進方策に関する検討会議」では、はじめから削除ありきで 施行通知案が作成されており、 「選択肢」としてさえ一切検討されていない。これは国会審議の無 視であり、学校教育法施行規則 144 条の削除を白紙撤回したうえで、大学関係者の議論を広く丁 寧に行うべきである。 ④改正学校教育法は、第 93 条 1 項において、教授会が「学長が決定を行うにあたり、意見を述べ る」事項を「学生の入学、卒業及び課程の修了」 「学位の授与」 「教育研究に関する重要な事項で、 教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」とした。そもそも、これらは教 授会が実質的に審議・決定すべき事項であるが、国会審議においても、 「大学のガバナンス改革の 推進方策に関する検討会議」の配布資料でも、 「学長に対しても、教授会に意見を述べさせる義務 を課しているものと解される」とされている。 「義務」と述べるからには、学長においても、教授 会の意見を尊重すべきことは当然である。 現行学校教育法施行規則 144 条においても、 「教授会の議を経て、学長が定める」とされており、 教授会の審議決定に関して公正を欠く疑いが強いなどの理由がある場合には、学長が執行に対し て責任を負う立場から、教授会に対して差し戻すなどの対応を取ることは現行法でも認められる ことであり、学長は教授会のいかなる決定に対しても無条件に従わなければならないとされてい るわけではない。 学生の身分に関して教授会が審議し意見を述べること、学長はその意見を尊重することは、今 般の学校教育法改正に基づいても、学校教育法施行規則 144 条において盛り込まれていなければ ならない。したがって、144 条を全文削除することは、改正法の趣旨にも反するとものと言わざ るを得ない。 ⑤学校教育法改正の衆議院文部科学委員会における 5 月 23 日の審議では、吉田泉委員(民主党) が「例えば、学位の授与というものは、世界的に、教授会の審議が基本的に尊重されている。学 位の証書にも、教授会の審議に基づきというような文言が書かれる国が多いそうなんですけれど も、今後は、学位の授与、確かに法定事項ではあるんだけれども、単に意見を聞くだけにすぎな いことになってしまうのではないか、果たしてこういう書き方でいいのかという危惧が出されて いるところでございます」と指摘し、6月 19 日の参議院文教科学委員会における審議で田村智子 委員(日本共産党)も、問題性を厳しく指摘している。下村博文文部科学大臣からはそれらの危 惧を払拭する答弁はなかったが、学校教育法施行規則 144 条を削除するならば、こうした危惧が 杞憂ではなくなることは明らかである。 2.当パブリックコメントの募集期間を短縮したことについて 当パブリックコメントの募集期間を短縮したことは、行政手続き上、重大な瑕疵がある。学校 教育法施行規則の検討そのものも含めて、やり直すべきである。 <理由> ①学校教育法改正の衆議院文部科学委員会における 5 月 23 日の審議で、宮本岳志議員(日本共産 党)は、「現行学校教育法施行規則第 144 条では、『入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、 教授会の議を経て、学長が定める』とされております。 (これと法案を)比べたときに、退学、転 学、留学、休学というものが抜けているわけですけれども、これは一体どこに行ったんですか」 と問題性を指摘し、 「学長が教授会の意見を聞くことが必要でないと判断すれば、教授会の議を経 ずに学生を退学させることができることになりますね」と質したに対して、吉田大輔文部科学省 高等教育局長は、 「まさにその法律と省令との関係を再検討する際の一つの論点として考えており ます」と述べている。それに対し宮本議員は、 「そうしたらあれですか、省令を変えずに、退学に ついても議を経るということを残すということを今おっしゃっているんですか」と重ねて質した のに対して、吉田高等教育局長は、 「その点は、そういうものも選択肢としてあって、検討したい と思っています」と回答している。 しかし、 「大学のガバナンス改革の推進方策に関する検討会議」では、はじめから削除ありきで 施行通知案が作成されており、 「選択肢」としてさえ一切検討されていない。これは国会審議の無 視であり、学校教育法施行規則 144 条の削除を白紙撤回したうえで、大学関係者の議論を広く丁 寧に行うべきである。 ②意見公募期間は 30 日以上でなければならないが(行政手続法第 39 条第 3 項)、文科省は当パブ リックコメントの意見提出期間を 23 日間に短縮した。これには合理的理由がない。文科省は、 「意 見提出が 30 日未満の場合その理由」について、 「平成 27 年 4 月 1 日の改正法及び本省令の施行に 向けて、各大学において関係する学内規則の総点検及び見直しを行う必要があり、そのための検 討期間や準備・作業期間を適切に確保するため、これらの根拠となる省令・通知の内容を早期に 確定させる必要がある」と説明しているが、30 日以上での意見募集を行ったからといって、 「検 討期間や準備・作業期間を適切に確保する」ことに支障が生じるというのは詭弁である。文科省 は、あらかじめ 8 月中の施行通知発出、9 月 2 日の説明会開催というスケジュールを決め、その スケジュールありきで、拙速に手続きをすすめているとみなすほかない。 学校教育法施行規則第 144 条を削除する理由も明示せず、関連資料の提示もせずに、パブリッ クコメントを募集していることも、重大な問題である。大学のあり方を大きく変質させる今般の 改正を、このように拙速にすすめることは言語同断であり、すべての大学に大きな混乱をもたら すことにつながることは明らかである。 以 上