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計測標準と 計量管理
計測標準と計量管理 計測標準と計量管理 2 号 平成27年8月18日 印刷 平成27年8月20日 発行 ISSN 1880-1420 平成27年8月20日 計測標準 と ●特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ MEASUREMENT STANDARDS and METROLOGY MANAGEMENT 特集 計量管理 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ C O N T E N T S 鳴振動を利用した固体材料の力学特性評価 共 ビッカース持回り試験 一軸試験機の校正/検証 日本試験機工業会 材料試験技術委員会 校正分科会の紹介 はかりの校正手順と不確かさの算出方法 力計(フォースゲージ、ロードセル)の校正方法の紹介 JCGMの最新動向:GUM及びVIMの現状と将来 百貨店の品質管理と計量士への期待 不確かさ評価の簡易化の検討 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 KIKUSUIのJCSS11年間の変遷 量子電流標準と微小電流計測の可能性 太陽電池の性能評価とそのトレーサビリティの確立 IAJapanコーナー 第 巻 65 第2号 2015 Vol.65 No.2 二〇一五年 2 雑誌 03317-08 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 一般社団法人 日本計量振興協会 Japan Association For Metrology Promotion http://www.nikkeishin.or.jp 計測標準 と MEASUREMENT STANDARDS and METROLOGY MANAGEMENT 特集 2015 Vol. 65 No. 2 計量管理 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ ❶ 共鳴振動を利用した固体材料の力学特性評価 大阪大学大学院工学研究科 垂水 竜一 … 2 -超音波共鳴法の紹介と最新の応用事例について- ❷ ビッカース持回り試験 一般財団法人 日本軸受検査協会 花木 一臣 … 9 ❸ 一軸試験機の校正╱検証 株式会社 島津アクセス 高田雄二、醍醐忠嗣 … 26 JIS B 7721 と ASTM-E4 の結果の違い ❹ 日本試験機工業会 材料試験技術委員会 校正分科会の紹介 株式会社 井谷衡機製作所 尾崎 達也 … 32 ❺ はかりの校正手順と不確かさの算出方法 関東メジャー株式会社 遠藤 久史 … 37 -包含係数の決定を中心に- ❻ 力計(フォースゲージ、ロードセル)の校正方法の紹介 株式会社 日本校正センター 三浦征一朗 … 45 - JIS B 7721 に準じる方法- 株式会社 東京測器研究所 小和田雅彦 国際動向 JCGM の最新動向:GUM 及び VIM の現状と将来 NMIJ 客員研究員、NITE 客員調査員 今井 秀孝 … 52 計量管理事例 百貨店の品質管理と計量士への期待 株式会社 髙島屋 木谷 一成 … 60 測定の不確かさ事例 不確かさ評価の簡易化の検討 一般財団法人 日本品質保証機構 佐藤 恵子 … 65 標準物質紹介 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 朝海 敏昭 … 71 認定事業者紹介 KIKUSUI の JCSS 11 年間の変遷 菊水電子工業株式会社 山本 武 … 75 産総研コーナー 量子電流標準と微小電流計測の可能性 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 中村 秀司 … 79 太陽電池の性能評価とそのトレーサビリティの確立 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 猪狩 真一 … 84 IAJapan コーナー IAJapan コーナー 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 … 93 事 編集後記 務 局 … 98 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【特別講演】 共鳴振動を利用した固体材料の力学特性評価 超音波共鳴法の紹介と最新の応用事例について 大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 准教授 1 1.1 1.2 はじめに 垂 水 竜 一 超音波共鳴法 いまから約 世紀前、イギリスの物理学者 Rayleigh は様々な音響現象の理論解析を進めていたが、そうし 線形弾性理論と弾性定数 よく知られているように、固体材料の力学特性は線 た解析の一つに固体の共鳴振動問題がある1)。この問 形弾性理論(いわゆる Hooke の法則)によって記述さ 題の解析に、Rayleigh は共鳴振動によって弾性体内に れている。この理論では、材料に負荷された応力テン 生じる変位の関数形を仮定し、それを基に計算した運 ソル σ と、それによって生じるひずみテンソル ϵ の 動エネルギーとひずみエネルギーの比(レイリー商) 間には、次の関係式が成り立つことを仮定している。 から共鳴周波数を推定している。Rayleigh の解析法は、 本来未知である共鳴振動変位の関数形を必要とするた σ = C ϵ め、この問題の解法としては不完全である(ただし、 階のテ レイリー商の考え方そのものは有効である)。この理 階テンソル σ ,ϵ を結び付け 論を完成させたのが同時代の数学者 Ritz である2), 3)。 る線形変換(一次変換)の役割を果たしている。線形 Ritz はこの問題の解析に、未知の共鳴振動変位の関数 上式において、C は弾性定数と呼ばれる ンソルであり、二つの 弾性理論では、この関係式は材料によらず不変であり、 形を既知の完備系関数列で級数展開し、得られた弾性 固体材料の持つ固有の性質は全て弾性定数 C の中に 体の作用汎関数にハミルトンの原理(最小作用の原理) 取り込まれている。 を適用して未知の展開係数を定める、いわゆる Ritz 法 金属材料を構造用材料として利用する場合、その適 を導入した。こうして完成したのが線形共鳴振動理論 正な使用範囲は、一般に弾性変形領域内に限られてい である。早世した Ritz の残したこの解法は、数学的に る。そのため、金属材料の弾性定数 C を正確に計測 は変分問題の直接解法に分類されており、今日の有限 することは、機械部品や構造体等の設計時に極めて重 要素法へと続く金字塔である。 要である。弾性定数 C の計測にはいくつかの方法が 1970 年代に入ると、米国の Demarest が線形共鳴振 存在するが、現在のところ最も優れた計測方法と考え 動理論を応用した新しい弾性定数計測法を提案した 4)。 られているのが本稿の主題である超音波共鳴法 線形共鳴振動理論を用いれば、直方体形状を持つ固体 (Resonant Ultrasound Spectroscopy:RUS 法)である。 材料の形状、密度、および弾性定数を与えることで、 RUS 法は、全ての固体材料が固有に持つ共鳴周波数 その材料の持つ共鳴周波数と共鳴振動変位を理論的に (固有振動数)を精密に計測し、これを線形共鳴振動理 計算することができる。もちろん固体材料の形状と密 論に基づいて逆解析することで、その材料の持つ全て 度の計測は容易であり、また共鳴周波数についても当 の独立な弾性定数 C を決定する方法である。ここで 時のシステムで正確な計測が可能であった。そのため、 はまず、線形共鳴振動理論と RUS 法が開発された経 実験計測した共鳴周波数と理論計算した共鳴周波数が 緯について説明したい。 一致するよう理論計算に用いる弾性定数を最適化すれ ば、原理的にはその固体材料の持つ全ての独立な弾性 定数 C を共鳴周波数の実測値から決定することがで 2 計測標準と計量管理 02-特集(垂水様) Page 1 15/07/08 10:57 v2.10 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【セッション 2:硬さ】 ビ ッ カ ー ス 持 回 り 試 験 一般財団法人 日本軸受検査協会 試験所 硬さ標準トレーサビリティ研究会 花 1 はじめに 2 木 一 臣 参加事業所 ビッカース硬さ試験とは、正四角錐のダイヤモンド 硬さ標準トレーサビリティ研究会メンバー約 18 事 圧子を、試料の表面に押し込み、その試験力を解除し 業所(標準片製造事業者、試験機製造業者、試験機校 た後、表面に残った残留くぼみの対角線長さを測定す 正(修理)事業者、第三者機関)である。 る。 ビッカース硬さは、試験力を、底面が正方形で頂点 の角度が圧子と同じ正四角錐と仮定したくぼみの表面 積で除して得られる値に比例する 。 1) 3 3.1 持回り試験方法 対象硬さ範囲及び対象試験力範囲 ビッカース硬さ及び低試験力、マイクロビッカース ビッカース硬さ試験は広い範囲の試験条件が設定出 領域とする。両領域とも 800 HV、500 HV、100 HV の 来る為、産業界等で多く使用されている硬さ試験の一 硬さレベルで、ビッカース硬さでは HV 30、HV 10、 つである。ただ、他の硬さ試験に比べ測定者のくぼみ HV 5 と低試験力、マイクロビッカース領域では、HV 読み取り誤差が硬さ値に大きく影響することが特徴で 1、HV 0.5、HV 0.3、HV 0.1、HV 0.01 とする。 もある。 今回の持回り試験は、本格的なビッカース硬さ試験 の JCSS 実務の稼働に際して、日本国内におけるビッ カース硬さ試験の実態調査が目的である。 過去には持回り試験が行われたことがあったが、そ 3.2 対象試験機 対象試験機は、参加事業者の基準としている試験機 もしくは校正完了している試験機とし、硬さ基準片校 正用試験機(JIS B 7735:2010 5 校正用試験機) 、一般 の後長年行われていないこともあり、これを機に誤差、 用試験機との区別はしない。 ばらつきの関係を把握する。 一般財団法人 日本軸受検査協会 試験所では、区 分:長さ(ブロックゲージ:光波干渉測定法、比較測 3.3 試験条件 くぼみ付け条件は、JIS Z 2244:2009 試験力保持時 定法)区分:硬さ(ロックウェル硬さ試験機等、ロッ 間は 15 s を原則とするが、それに従わない場合も可と クウェル硬さ標準片、ロックウェル硬さ試験機)を する。 JCSS 登録しており、今後ビッカース硬さ試験機等(ビ ッカース硬さ標準片、ビッカース硬さ試験機)の JCSS 登録を目指している。 3.4 測 定 各硬さレベルは 2 個の標準片((株)山本科学工具研 究社製、(株)旭工業所製)とし、各標準片に 点測定 Vol. 65, No. 2, 2015 07-特集(花木様) Page 1 9 15/07/31 18:35 v2.10 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【セッション 3:引張・圧縮試験(1)】 一軸試験機の校正╱検証 JIS B 7721 と ASTM-E4 の結果の違い 株式会社 島津アクセス 高 田 雄 二、醍 醐 忠 嗣 1 でパーセント(%)で表示する。 はじめに 試験機が表示した力と機器の読みから計算した力を 近年では、一軸試験機の力の校正において原子力業 界・航空業界・自動車業界から ASTM-E4 規格を適用 した校正証明書を要求してくることが多くなって来た。 当事業所は独立行政法人製品評価技術基盤機構が運営 する認定プログラムの ASNITE 校正の認定を受けた ASTM E4 規格に基づく校正と JIS B 7721 規格に基づ 用 2.1 に計算する。 E=A−B A:試験機で表示した力 lbf(又は N) 語 B :校正機器で判断した作用した力の正しい値 lbf (又は N) 定義 2.1.1 A−B × 100 B E = ここで、 く JCSS の校正の相違点を紹介する。 2 記録し、誤差 E 及びパーセント誤差 E を以下のよう 校正( ) 試験対象の力の表示を標準と比較して誤差要件を満 2.1.5 たすように調整を行う工程である。 許容変動又は公差 ( ) 試験機の表示数値が許容される最大誤差である。 2.1.2 誤差( ) 試験機が表示した力から校正機器が表示した力を減 じた差となる。 2.1.6 力表示器の分解能 ( JIS B 7721 では、試験力の差は表明していない。相 ) 試験機に加えられた任意の力について力を表示する 対指示誤差(%)で報告している。 装置の判断可能な最小変化である。 2.1.3 2.1.6.1 力( ) 試験機において重力ポンド・ニュートン又は重力キ ログラムの単位で測定される力である。 (1 lbf)は、質量が 重量ポンド ポンドの物体に加速度 32.1740 ft/s 2(9.80665 m/s 2)を生じさせる力である。 アナログ式力指示計(スケール、ダイヤル、 記録計等)の分解能 ( .) ニュ 分解能は、指針或いはペンの軌跡線による変位で表 ートン(1 N)は、質量 1 kg の物体に 1 m/s の加速度を 示される力の最小変化である。分解能は、“一つの目 生じさせる力である。 盛に対応する力”に“二つの隣接目盛り線の中心間距 2 離(目幅)に対する指針幅又はペンの軌跡線幅の割合” 2.1.4 パーセント誤差( ) 試験機に作用した力の正しい値に対する誤差の割合 26 の積で計算される。使用する代表的な比率は、1:1、 1:2、1:5、又は 1:10 の何れかである。ここで、1:10 計測標準と計量管理 08-特集(高田様・醍醐様) Page 1 15/08/10 17:53 v2.10 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【セッション 4:引張・圧縮試験(2)】 日本試験機工業会 材料試験技術委員会 校正分科会の紹介 株式会社 井谷衡機製作所 JTM 材料試験技術委員会 校正分科会 尾 +1 崎 達 也 はじめに 今回で、力学量標準トレーサビリティ・ワークショ ップも第 17 回を数えるにいたりましたが、これも、 力 標準トレーサビリティ連絡会議 、 力試験機トレーサ ビリティ連絡会議 研究会 及び 硬さ標準トレーサビリティ の会員をはじめとする、業界各位・関連機関 の方々のご協力と支持があったればこそと存じます。 こうした流れを受けて、日本試験機工業会(略称 試工/ JTM)においても、 校正 日 の分野をきちんと 位置付け、各連絡会議・研究会との連携を深めつつ、 校正 図 :名称 図 :会員 に関する活動を更に発展させていくことを目 的に、材料試験技術委員会のなかに、新たに 科会 を発足させました。そして、昨年 員企業・機関からオブザーバー 校正分 月より、会 名を入れた 16 名が 集まり、活動を開始しました。まだ、活動開始から、 年にも足りませんが、 技能試験プロバイダー を立 ち上げるなど積極的な活動を行っています。製造事業 者の集まりであった日本試験機工業会に、 校正 を切 り口として新しくできたこの分科会の活動状況を、日 本試験機工業会及びその各組織の概要と活動を交えて ご紹介します。 2 日本試験機工業会の概要 日本試験機工業会は、日中戦争が激化していた昭和 15 年(1940 年) 月に、それまで道府県別に存在した 工業組合を業種別に改組し、全国の試験機製造業者が 集まって 全国材料試験機工業組合 を発足させたの が、始まりとされます。当時の会員数は 14 社で、その 中の 社である東京衡機製造所が理事会社となり、事 務所も当時品川にあった東京衡機の工場内に置かれま した。 32 図 :組織図 計測標準と計量管理 09-特集(尾崎様) Page 1 15/08/10 17:55 v2.10 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【セッション 5:質量】 はかりの校正手順と不確かさの算出方法 包 含 係 数 の 決 定 を 中 心 に 関東メジャー株式会社 遠 1 史 定で構成される測定の条件)における測定の精密さで 計量器の中であらゆる分野で多種多様に利用されて 重さ 久 短時間での同一又は類似の対象についての複数回の測 はじめに いるのが 藤 の測定をするはかりである。身のま ある。このことを踏まえ下記のとおり実験を計画した。 2.1 実験目的 わりにも多くのはかりが存在する。はかりの信頼性を 同一のオペレータが、同一の分銅で、複数回、同一 確保するために、取引・証明に使用されるはかりは、 のはかりを同一の校正エリアで、弊社の校正手順を用 計量法に基づく様々な規制がある。 いて、目量の違う 台のはかりについて測定を行った 製品や材料の重さの品質管理等に使用されるはかり ときに、繰り返し回数及び繰り返し性の試験荷重の違 の信頼性については、トレーサブルが確保され、校正 いが包含係数の決定に、目量の違う各はかりが、それ 技術能力が確認されている認定事業者が実施する ぞれどのように影響するかを実験結果の解析より検 JCSS 校正が有効である。 証・確認する。 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 認定センター (以降 NITE 認定センターと云う)から認定されてい 2.2 実験概要 台のはかりで行う測定の繰り返し回数は、タイプ るはかりの校正事業者は、国内で約 50 社にのぼる。弊 月に質量区分 はかり 電子式非自動 Aの信頼性の評価をあえて検討しなくてもよいと はかりの JCSS 認定を取得して、はや 13 年となる。今 NITE 認定センター発行の JCSS ガイド 2)(JCG200)で 後は、校正技術者の世代交代も進み、校正手順並びに 表明されている、10 回とする。また、校正範囲全体に 不確かさ算出手順等の校正技術の引き継ぎが重要な課 適用する測定の繰り返し性を評価するための試験荷重 題となりつつある。 として、0.1 社も平成 15 年 また、JCSS 校正証明書における信頼の水準約 95 % これらの背景から本稿では、繰り返し回数並びに試 験荷重の違いが包含係数の決定に及ぼす影響について 実験を行った。この実験結果を交えながら弊社のはか り校正手順及び不確かさ算出手順について、実験によ つの 下の 回、試験荷重は 0.1 以上 以 つの荷重をひょう量によってリスト化し選択し ている。 データの解析は、最初の測定から繰り返し回数 (1 ∼3 )、最初の測定から繰り返し回数 st rd 回 回(1 ∼6 )、 st th 最初の測定から繰り返し回数 10 回(1 ∼10 th)の標準 るデータを用いて紹介する。 2 以下の範囲内にある 荷重を選択して実施する。なお、弊社校正手順では、 繰り返し回数は 表記への移行が平成 27 年度に完了する。 以上 st 不確かさ(U)を各々求め、拡張不確かさ(U)を計 実験計画 算し、これらを繰り返し性の評価をする試験荷重の違 測定の繰り返し性とは、国際計量計測用語 (TS Z 1) いにおける影響も交えて比較検証する。 0032)によれば、一組の測定の繰り返し条件下(同一 の測定手順、同一のオペレータ、同一の測定システム、 同一操作条件及び同一場所を含む一連の条件、並びに、 Vol. 65, No. 2, 2015 10-特集(遠藤様) Page 1 37 15/07/31 18:37 v2.10 特集 力学量標準トレーサビリティ・ワークショップ 【セッション 6:力】 力計(フォースゲージ、ロードセル)の校正方法の紹介 JIS B 7721 に 準 じ る 方 法 株式会社日本校正センター 株式会社東京測器研究所 桐生工場 三浦 征一朗 小和田 雅彦 力標準トレーサビリティ連絡会議技術委員会 JIS B 7728 以外の力計分科会 1 のエビデンスとして有効なものとなっている。 そこ はじめに で、弊社は、フォースゲージの校正方法等を中心にそ 力計の JCSS 校正が、JIS B 7728 による方法で開始 1) の内容について紹介する。 されてから、15 年以上が経過した。JIS B 7728 で適用 される力計は一軸試験機の校正に使用される力計に限 2.1 校正範囲 定されており、それ以外の力計測器の JCSS による校 常設校正 正が要望され 2010 年に、力計(JIS B 7721 に準じる方 圧縮 10 N∼5000 N 法)の技術指針が制定された。 引張 10 N∼5000 N この技術指針の概要は以下の通りである。 現地校正 参照標準 JIS B 7721 2) に規定のおもり 圧縮 1 N∼5000 N 引張 1 N∼5000 N JIS B 7728 に規定の力計 力基準機 2.2 校正対象機器 力計(ただし、一軸試験機の力測定系の校正に常用 参照標準として用いられる力計を除く。 )例えば、フォ 校正環境 温度 10 ℃∼35 ℃ 湿度 75 %以下 大気圧 安定度 ± 2 ℃ 急激に変動するような状況でない ースゲージ、プッシュプルゲージ、ロードセル等。 校正方法 2.3 JIS B 7721 に準じた方法 校正方法 フォースゲージの基本的な校正手順について説明す る。 本稿では、JIS B 7721 に準じる方法で力計の JCSS の 認定を取得している校正事業者が実際に行っている力 計の校正方法について紹介する。 2 予備負荷 (1) 負荷試験の測定前に最大試験力で 回実施する。 (2) 除荷後に 30 秒以上の待機時間をとる。 フォースゲージの校正方法の紹介 株式会社日本校正センターは 2011 年に 2.3.1 力計(JIS 2.3.2 負荷ステップ B 7721 に準じる方法) の認定(登録)事業者として力 (1) 通常 計、特にフォースゲージ、プッシュプルゲージを中心 (2) 測定ステップは、最大試験力の 20 %∼100 %の に JCSS 校正を開始した。弊社のユーザーの力計の用 途は、多くは製造工程で使用されるものが多く、品質 管理の観点から、校正値とそれに付随する不確かさが 回の負荷試験の測定を行う。 点で行う。 (3) 各ステップへの移動時間はできる限り均一に行 う。 表記されている JCSS 校正証明書がトレーサビリティ Vol. 65, No. 2, 2015 11-特集(三浦様・小和田様) Page 1 45 15/07/31 18:38 v2.10 国際動向 JCGM の最新動向:GUM 及び VIM の現状と将来 NMIJ 客員研究員 NITE 客員調査員 今 1 はじめに 井 秀 孝 にも踏襲されている。特に、 量と単位 の項目は VIM と ISO/IEC 80000 の両者がその内容を共有している。 もの や 事象 をはかって、その結果を評価する また、ISO/TC 12 では、計量単位に関する規格類を、 ことは古くから人間生活と密接な関係にあり、政治・ TC 69 では、統計的手法の適用に関する規格類、TC 経済・学術の面はもとより、最近の急速な技術革新と 176 では、適合性評価に関する規格類を扱っており、 も密接につながっている。特に、1999 年にメートル条 JCGM とも密接な連携をとっている。なお、ISO/IEC 約のもとでのグローバル MRA(CIPM-MRA)の署名 Directives Part 2(JIS Z 8301 規格票の様式 に相当) が開始されてからは、国家計量標準研究所間の国際比 には、ISO/IEC 17025 と共に、VIM 及び GUM を採用 較の結果(計量計測トレーサビリティと測定不確かさ することを推奨している。 の記述を伴う)や ISO/IEC 17025 に基づくマネジメン トシステム構築の表明が、適合性評価や法定計量の分 3 JCGM は、ISO の TAG 4 の任務の一部を継承する形 野においても必須要件とされてきている。 これらの技術能力やマネジメントシステムの構築 JCGM の活動 で 1997 年に設置されており、現在では BIPM、IEC、 には、国際単位系(SI:International System of units) IFCC、ISO、ILAC、IUPAC、IUPAP、OIML の や ISO/IEC の規格文書などとともに、計量計測関連 組織により構成されている。計量計測分野における国 文書の国際的な位置付けの確保が求められており、 際文書の編集・発行を目的とする二つの作業部会: JCGM(Joint Committee for Guides in Metrology)に WG をもち、各 WG はそれぞれ WG 1:GUM(測定に よる VIM(International Vocabulary of Metrology)と おける不確かさの表現方法)、WG 2:VIM(国際計量 GUM(Guide to Uncertainty in Measurement)の国際 計測用語集)と分担している。また、年に 文書の編集・発行作業に力が注がれている。 員会と言うべき Plenary Meeting が開催されている。 本稿では、JCGM 活動を概観し VIM や GUM の編集 国際 回は親委 はその略年史を示したものである。VIM は初版が 表 状況、特に VIM や GUM の改訂の動きを通して、最近 1984 年(JCGM の設置以前)に発行されており、第 の状況を報告する。なお、JCGM のこれまでの活動に 版(VIM 2)が GUM と同時に 1993 年に発行されてい 関しては、NMIJ/AIST の研究戦略部国際計量室のホ る。 ームページに順次掲載されているので、ご参照いただ きたい。 (国際計量室 HP ⇒ https: www.nmij.jp ∼imco/) 2 計量計測に関する国際文書類 計量計測分野では、BIPM が発行する国際単位系 (SI:International System of units)が基本であり、そ の内容は ISO/IEC 80000 シリーズ(JIS 8000 シリーズ) 52 GUM は発行後 22 年が経ち(1993 年発行、2008 年に ISO/IEC Guide 98-3 となる)、その改訂原案(WG 1 委 員会案)が作成されて加盟組織へのコメント収集が実 施された(コメントの締切りは 2015 年 表 月 日) 。 はすでに発行済みの JCGM 文書を示したもの である。VIM 関連は ほか、関連文書が 件のみで、GUM 関連は本体の 件発行されている(JCGM 104 は GUM 関連の文書全体を紹介した文書) 。なお、JCGM 計測標準と計量管理 14-国際動向(今井様).smd Page 1 15/08/04 09:06 v2.10 計量管理事例 ※ 百貨店の品質管理と計量士への期待 株式会社 髙島屋 法務・リスクマネジメント室 品質管理グループ 次長 1 本年 はじめに 木 谷 一 成 月に本社総務本部に法務・リスクマネジメント 室(品質管理グループを含む)の専任部署を設置し、グ 髙島屋(以下当社)で販売される商品は、品質・安全 性・諸表示などで確実な商品であり、特に対面販売商 品は、その特徴と取り扱いについて適切な商品説明を 行って販売することを基本としている。 そのために、品質管理グループを設置し食料品、繊 ループ全体のリスクマネジメント体制の確立に取り組 んでいる。 2 当社におけるリスクティクの考え方 百貨店はお客様のご意見を直接お伺い出来る立場に 維製品、雑貨、日用品などの管理方法として 品質管 あり、当社では頂戴したご意見には、必ず現状の対応 理規則 表示基 と今後の対応策を中心に返答するシステムになってい とその細則として 品質基準 及び 準 を定め、 品質・安全の検査及び諸表示のチェック や 情報発信・指導啓発 危機管理対応 を行い、確 かな商品の提供に努めるとともに商品関連事故の 防・再発防止策の指導徹底 予 に取り組んでいる。 る。 当社では、働く全ての人の基本的価値観の共有を大 前提に お客様第一主義 リスクティク が経営の基 本となっている。 現在、品質管理グループは、東京と大阪に配置され リスクティク に関しては、お客様を基点に果敢に 百貨店と関連会社各店を含む髙島屋グループの品質管 チャレンジすることでこれまで直面したことのない課 理を行っている。(写真 参照) 題に向き合うとおのずとリスクが発生するが、リスク また、リスクマネジメント推進体制として、髙島屋 から逃げることなく正面から向き合い、同時に企業の グループリスクマネジメント委員会のもと、新たなビ 痛手とならないようにリスクをコントロールすること ジネスチャンスに挑戦する上で発生するリスクに対し、 を意味している。 グループを横断的にコントロールしコンプライアンス お客様視点を基点として失敗を恐れず果敢にチャレ リスク・危機リスクなどの低減・極小化を図るため、 ンジし、お客様の満足を得られることが、当社のめざ すリスクマネジメントである。(図 参照) この考え方は、当社品質管理グループの業務そのも ので、平成 年に発生した 堺市でのO-157 事件で は、堺市内にある百貨店はその当時、当社(堺店・泉北 店)のみで、直ちに組織を立ち上げ対応策を決定し お 客様 行政 報道関係 からのお問合せ対応等につ いて日々の情報共有化を実践した。 一ヵ月後には、社内全店で統一・共有化し、全国の 百貨店から対応状況の質問に回答するのが大変なぐら 写真 :分析機器類 ※本報文は、第 13 回全国計量士大会(2015 年 60 いであったことを記憶している。社内でも品質管理グ 月 20 日)で講演したものである。 計測標準と計量管理 03-計量管理事例(木谷様) Page 1 15/07/31 18:39 v2.10 測定の不確かさ事例 不確かさ評価の簡易化の検討 一般財団法人 日本品質保証機構 計量計測センター 電子計測課 課長 1 佐 藤 恵 子 明らかにしておく。 はじめに 次に、箇条書きにした手順や測定のモデル式を見な 最近では、測定を実施するに当たって同時に不確か がら不確かさの要因の特定を行う。これには、この測 さを求めるのは一般的になっていると感じる。一方で、 定に精通した知識が必要であり、大事な要因を見落と 不確かさの評価は非常に複雑で難しく、どのように取 さないことである。 不確かさの計算は難しい という り組んで良いのか分からないという声も聞かれる。実 話を聞くことがあるが、よくよく聞いてみると実は 不 際に、不確かさを評価するというのは思っているより 確かさの要因の特定をするのが難しい も手がかかるものである。そこで、ある一定の条件を いうこともある。試験所認定の認定機関では、その機 与えることで、不確かさの評価を簡略化できないか検 関が公開する文書の中で不確かさの要因を明らかにし 討してみることとした。 ている場合もあるので、試験所認定を取るわけではな 2 状態だったと くても参考にするとよいだろう。 不確かさ評価手順の整理 不確かさの要因が特定できたら、その要因がどのよ まず、不確かさを評価するときの手順の一例を示し うな大きさなのかを考えなくてはいけない。資料や過 ておく。評価のためには色々なアプローチがあり、こ 去のデータから得られる要因の大きさもあるが、要因 こでは一般的と思われる流れを示す。 の大きさの評価のために改めて実験の計画を立て、解 不確かさを評価しようとするときには、何を測定し 析を実施しなければいけないことがある。更に、実験 どのような結果を得たいのか明らかにしておく必要が や解析は、後からでも再現できるように記録に残すこ あり、やみくもに何かを測定し不確かさを出そうとし とが望ましい。これも、 不確かさは複雑で手がかか ても、評価の対象が何であるのかあいまいになってし る まうことがある。測定の手順や方法は、箇条書きで書 といわれる所以かもしれない。 要因の大きさが得られたら、その要因から 標準不 き出すなどして整理しておくことが大事である。また、 確かさ 測定値を得る場合に測定器からの値をそのまま使用す 確かさが推定された後には、 合成標準不確かさ を計 ることもあれば、測定器からの値に補正値を補正した 算し、最終的には、試験証明書や校正証明書に記載す 値を利用したり、いくつかの測定器から得られる値を る 拡張不確かさ を算出する。一般的には、 不確か 計算式に代入して測定値が得られたりもする。この時 さのバジェット の計算式を やすく管理しやすい。 測定のモデル式 と呼んだりする。この 測定のモデル式は、ベテランの測定者にとっては当た り前のことがあり、明らかにされていないことがある。 場合によっては、書き記すには非常に簡単な式なって 3 を推定することが必要となる。また、標準不 と呼ばれる表を作成するのが計算し 簡略化に必要な条件 被試験品を試験する場合、最終の目的は試験した結 しまうこともあり、改めて必要と感じないこともある。 果の値がある決められた範囲に入っているかどうかを しかしながら、不確かさの評価においては、大事な内 判断したいためであることはよくある。不確かさを評 容であるので、どのような単位を使用するのかも含め 価する理由の一つには、このような、ある限られた条 Vol. 65, No. 2, 2015 05-測定の不確かさ事例(佐藤様) Page 1 65 15/07/31 18:40 v2.10 標準物質紹介 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 研究戦略部 朝 計量標準調査室 総括主幹 1 海 敏 昭 CRM とは別に、校正サービス(依頼試験)も行ってい はじめに ます。現在、32 種類の校正サービスを実施しており、 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総 詳細は、 (https: www.nmij.jp service P )をご覧頂け 合センター(National Metrology Institute of Japan、以 ればと思います。純度の校正サービスでは、主として 下、NMIJ ) で は、ISO Guide 34:2009 及 び ISO/IEC 核磁気共鳴法、凝固点降下法を用いた高純度有機標準 17025:2005 に適合するマネジメントシステムに基づ 物質の純度測定を行っています。 き、国家計量標準機関として国際的に認められる認証 標準物質(Certified Reference Material、CRM)の開 発・供給を行っています。このマネジメントシステム 2 NMIJ の組織 NMIJ の新規認証標準物質の紹介の前に NMIJ の組 は、独立行政法人製品評価技術基盤機構の認定センタ 織について触れておきます。平成 27 年 月 日、産業 ー ( IAJapan ) の 製 品 評 価 技 術 基 盤 機 構 認 定 制 度 技術総合研究所が独立行政法人から国立研究開発法人 へ移行し組織改編が行われました。新しくなった産総 (ASNITE)による認定を受けています。 NMIJ で開発された CRM(NMIJ CRM)は、材料系 研は 社会ニーズ、産業ニーズを踏まえた世界最高水 (EPMA 用、高分子材料等) 、無機・有機、環境組成や 準の研究とその成果の“橋渡し”により、イノベーシ グリーン調達対応、高圧ガス、熱物性等、多岐にわた ョンの中心となって持続可能な社会の実現に貢献し、 り、これまでに 200 以上の CRM が開発されてきました。 社会から信頼される研究所 を目指し、新しい研究体 これら CRM の情報は、NMIJ の標準物質のホームペー 制として つの研究領域(エネルギー・環境領域、生 ジ(https: www.nmij.jp service C )から閲覧すること 命科学領域、情報・人間工学領域、材料・化学領域、 が可能です。このページには、NMIJ 認証標準物質カ エレクトロニクス・製造領域、地質調査総合センター、 タログ 2014-2015、NMIJ 標準物質・有効期限・供給状 計量標準総合センター(NMIJ))を定めました。旧組 況一覧、取り扱い業者・標準物質分類一覧、CRM の詳 織においては、計量標準に係わる業務は計測標準研究 細が分かる認証書の見本等が掲載されています。また、 部門及び計量標準管理センターが担当してきましたが、 現在、国内外の標準物質を検索することができる つ の デ ー タ ベ ー ス、標 準 物 質 総 合 情 報 シ ス テ ム ( Reference Materials Total Information Services of 新組織ではこの 組織を統合し計量標準総合センター (NMIJ)を設置すると共に、旧計測標準研究部門を つに分割する改組が行われました。図 に全体組織の Japan、RMinfo)及び国際標準物質データベース(Code 概要と、表 に NMIJ の新旧組織対応表を掲載しまし d' Indexation des MAtériaux de Référence、COMAR) た。本改組に係わる情報は、計量標準総合センターウ が、NMIJ のホームページから閲覧できるようになっ ェブサイト(https: www.nmij.jp )にても公開して ています(https: www.nmij.jp rminfo )。NMIJ CRM おりますので、是非御確認頂ければと思います。 だけではなく、世界中の標準物質についての情報が NMIJ のホームページから得られるようになりました ので、是非ご利用頂ければと思います。また、NMIJ Vol. 65, No. 2, 2015 12-標準物質紹介(朝海様) Page 1 71 15/07/31 18:41 v2.10 認定事業者紹介 KIKUSUI の JCSS 11 年間の変遷 菊水電子工業株式会社 品質保証部品質保証課 山 1 本 武 はじめに 菊水電子工業株式会社(以下当社)は、1951 年(昭和 26 年)に株式会社菊水電波として創立され、1962 年(昭 和 37 年)に現在の社名に変更し、各種電子計測器、産 業用電源装置、安全関連試験器、ソフトウェアの設計、 製造、販売及び輸出入を行っている。 本稿では、当社における JCSS について、登録取得 からこれまで 11 年間の取り組みと、登録範囲の変遷 を紹介したい。 2 2.1 写真 会社概要 所 :富士勝山事業所 売を通じ、電気製品・自動車・部品製造はもとより、 エネルギー・社会インフラのためのソリューションを 在 横浜市都筑区に本社・技術センター(写真 )を置 提供している。事業の概念図を図 に示す。 き、山梨県南都留郡富士河口湖町に富士勝山事業所 (写真 ) 、営業所を横浜、仙台、さいたま、名古屋、 吹田と福岡(出張所)に置き国内拠点をとしている。 2.3 品質・環境マネジメントシステム 品質保証の国際規格である ISO 9001 の認証を 1995 年に、環境マネジメントシステムの国際規格である ISO 14001 の認証を 2000 年に取得して、品質方針では 顧客満足の向上 を、環境方針においては 人と自然 を大切にする社会づくりへの貢献 を基本理念に定め、 維持・向上に努めている。 3 JCSS の取り組み 3.1 取得に向けた調査 従来から製品の販売とあわせ保守メンテナンス(一 写真 :本社・技術センター 般校正)を行っていたが、1990 年代中盤よりお客様か ら “ガイド 25”(現在の ISO/IEC 17025)の校正はで 2.2 主要製品 直流電源装置、交流電源装置、電子負荷装置、通信 計測器、耐電圧試験器、絶縁試験器、アース導通試験 器、校正器、信号発生器、その他各種電子計測器の販 きないか とのお問い合わせをいただくことが増え、 “ガイド 25”を調査することから JCSS への取り組みが はじまった。 創設当初の JCSS では、常用参照標準は特定標準器 Vol. 65, No. 2, 2015 01-認定事業者紹介(山本様) Page 1 75 15/07/31 18:41 v2.10 産総研コーナー 量子電流標準と微小電流計測の可能性 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ 研究員 1 中 村 秀 司 のであることはもはや説明するに及ばないと思う。ざ はじめに っくりといえば、測定する際に使用する 我々が日常生活を送る中で、電気を使用しているも ものさし を共通にすることで、この定量性・普遍性を担保して のに一日一度も接しないということはほぼ皆無である いる。この ものさし は、昔であれば人間の身体の といって良いと思う。蛍光灯や電球から始まり、車、 一部の長さなどが用いられ、その名残は インチ テレビ、炊飯器、冷蔵庫、パソコン、携帯電話にいた ィート るまで我々を取り巻く多くのものが電気的なエネルギ 万人にとってより普遍的な科学的な手法、法則に基づ ーを利用して動作している。人類が電気の利用を始め いて実現されている。このものさしは standard(標 て 200 年程度たっているが、電気的な現象が発見され 準) と呼ばれ、この標準を如何に精度よく実現できる た当初このようなことは想像だにされていなかったで かが、各国の科学技術の発展度をはかる文字通りの も フ あろう。電気エネルギーが利用、研究されるとともに、 のさし ヤード などに見ることができるが、現在は ともなっている。たとえば時間の基準を表す さまざまな電気的な物理量の定量的な評価が必要とな 周波数標準は、 (周波数は時間の逆数であり、周波数を り 電流([A]:アンペア) 精確に決めることは時間を精確に決めることと等価) 電圧([V]:ボルト) キャパシタンス([F]:ファラ レーザーや原子物理と大きく結びついており一朝一夕 抵抗([Ω]:オーム) ッド) インダクタンス([H]:ヘンリー) 電荷量 ([C]:クーロン) 磁束([Wb]:ウェーバー) といっ で実現できる技術ではない。 さて、ここからは電気量をあらわす単位として た物理量と単位が用いられるようになっていった。こ ーム れら物理量間もしくは物理量の変化の間にはさまざま これら単位の電気標準は現在量子力学的な現象に基づ な法則が成り立ちお互いに結びついていて、例えば 抵 いて実現されている、もしくは実現されつつある。量 抗 電圧 の間には V = RI という有名なオー 子力学的な系においては、ある物理量の離散化(量子 ムの法則が成り立っているし、 電圧 と 磁束の時間 化)が起きるという著しい特徴を持っている。この物 変化 の間には電磁誘導の法則が成り立っている。余 理量の離散化は系のとりうるエネルギー(状態)の離 電流 アンペア ボルト オ に注目して話を進める。 談ではあるが最近では メムリスタンス 1) と呼ばれ 散化と結びついており、外部から離散化したエネルギ る とを結びつける物理量も登場 ー以下の擾乱が与えられても系の状態は変化すること し、人工知能やメモリーなどの分野で注目を集めてい ができない。このことは標準を量子力学的な系で実現 る。 する大きな利点である。すなわちこのことによって外 磁束 と 電荷量 ではこれら電気量の定量性と普遍性はどのようにし 部からの擾乱に強い標準が実現されるわけである。例 て担保されているのだろうか?言い換えるのならば、 えば 例えば日本で測った電圧と海外で測った電圧とが一致 る。量子ホール効果は、電子が二次元的に広がった二 するのはなぜであろうか。この電気量の定量性・普遍 次元電子系と呼ばれる系に面直に磁場を印加する事で 性、広くいえば単位の定量性・普遍性が、科学技術の 発生する。電子に磁場を印加すると電子はローレンツ 根幹であり、産業基盤として欠かすことのできないも 力によって軌道を曲げられ、二次元電子系中でサイク 抵抗 の現在の標準は 量子ホール効果 Vol. 65, No. 2, 2015 06-産総研コーナー(中村様) Page 1 であ 79 15/08/03 17:50 v2.10 産総研コーナー 太陽電池の性能評価とそのトレーサビリティの確立 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 太陽光発電研究センター 主任研究員 1 狩 真 一 CB スキーム(Certification Body:認証機関)に加盟し はじめに 平成 23 年 猪 ている認証機関によって行われている(図 )。しかし、 月の第 177 回通常国会で成立した 電気 従来の製品認証は、信頼性・安全性試験を実施した前 事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する 後の電気出力の変化量を判定基準とするに止まり、標 特別措置法 に基づき、再生可能エネルギーの普及・ 準試験条件での性能(出力電力等)の判定基準もメー 拡大を目的として、 再生可能エネルギーの固定価格 カーの定格値 ±10%と許容範囲が広い上に、測定の不 買取制度 が平成 24 年 日からスタートした。こ 確かさも考慮されていない。製品認証の国際相互承認 の制度での全量買い取りの対象は、経済産業大臣の認 は CB 制度で行われているため、相互査察は行われて 定を受けた設備を用いて供給される電気とされ、その いるが、CB 試験所(CBTL)の多くは ISO/IEC 17025 認定には、安定的かつ効率的に再生可能エネルギー源 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項 を用いて発電を行う設備であること等の確認が要求さ に対する能力の第三者認定を取得していない。世界的 れる。 な太陽光発電の普及拡大の時代を迎え、利害関係者の 月 現 在 ま で、太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル の 製 品 認 証 は、 増加や買い取りに係る損益意識の高まりが予測され、 IECEE(IEC 電気機器安全規格適合性試験制度)の 太陽電池の出力特性評価の信頼性に対する関心がこれ 図 84 :太陽電池モジュール製品認証の国際相互承認(IECEE-CB-FCS) 計測標準と計量管理 15-産総研コーナー(猪狩様).smd Page 1 15/08/03 09:14 v2.10 IAJapan コーナー 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 認定センター http: www.nite.go.jp iajapan 本コーナーは、JCSS、JNLA、MLAP、ASNITE を中心に IAJapan の各認定プログラムの認定実績等について お知らせしております。 ◆ IAJapan の広報活動 JASIS 2015 2015 年 月 出展のお知らせ 日(水)∼ 日(金)に幕張メッセ国際展示場で開催される JASIS 2015 に NMIJ、CERI、 IAJapan の三者で共同出展いたします。IAJapan は JCSS の普及を主目的とした広報活動を行います。 TEST 2015 2015 年 企画 出展のお知らせ 月 16 日(水)∼18 日(金)に東京ビッグサイトで開催される TEST 2015 に出展いたします。主催者 協賛団体 認定・検定機関ゾーン にて展示予定です。 Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS) 平成 27 年 月から平成 27 年 月末までの間に認定範囲の拡大も含め、登録又は登録更新が承認された事業 所は、次のとおりです。 (登録) 登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分 0320 平成27年 月30日 株式会社 トーケン 校正室 力 0321 平成27年 月12日 株式会社 堀場テクノサービス 品質 CSR 推進室 流量・流速 0322 平成27年 月12日 株式会社 日立 ICT ビジネスサービス プロダクトサポート本部 校正サービスグループ 電気(直流・低周波) (区分追加) 登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分 0315 平成27年 月30日 城南電計株式会社 質量 0096 平成27年 月12日 株式会社 共和電業 生産本部 標準器室 電気(直流・低周波)、 時間 0170 平成27年 月12日 株式会社 小野測器 品質保証ブロック品質管理グループ 電気(直流・低周波) 0184 平成27年 月12日 地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター 長さ Vol. 65, No. 2, 2015 13-IAJapanコーナー Page 1 93 15/07/31 18:43 v2.10