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栄養管理の基礎的事項 - 佐賀摂食・嚥下リハビリテーション研究会
2011/8/22 栄養管理の基礎的事項 佐賀社会保険病院 リハビリテーション科 本多 知行 第20回佐賀摂食・嚥下リハビリテーション研究会 於:佐賀県歯科医師会館 2010・11・06(土) 栄養状態の評価 ( 1 ) 1. 体重 現BW / 健BW BW× ×100=%USWT 100=%USWT( (Us Usual ual Weigh eightt ) 74%以下重度 74% 以下重度,75 ,75ー ー85% 85%中等度 中等度,85 ,85ー ー95% 95%軽度 軽度 2. 上腕三頭筋皮下脂肪 頭筋 (TSF: TSF:T Triceps p Skin Fold) old) 体脂肪の消耗状態を反映。標準TSF 体脂肪の消耗状態を反映。標準 TSFに対する に対する% % 60%以下高度 60% 以下高度,60 ,60ー ー80% 80%中等度 中等度,80 ,80ー ー90% 90%軽度 軽度 3. 上腕筋囲(AMC AMC: :Arm Muscle Circumference) 筋蛋白の消耗状態を反映。標準AMC 筋蛋白の消耗状態を反映。標準 AMCに対する に対する% % 60%以下高度 60% 以下高度,60 ,60ー ー80% 80%中等度 中等度,80 ,80ー ー90% 90%軽度 軽度 栄養管理面から(NST) PEM: PEM :Protein Energy Malnutrition(蛋白質・エネル Malnutrition(蛋白質・エネル ギー低栄養状態) 高齢者の栄養問題=PEM 高齢者の栄養問題= PEM 血清ALB 血清 ALB< <3.5g/dL 3.5g/dLかつ かつADL ADLの の 低下⇒ 低下 ⇒死亡率 死亡率↑ ↑生存年数も少な い PEM入院患者は回復遅く、合 PEM 入院患者は回復遅く、合 併症を併発しやすく死亡率を高 くする ⇔PEM PEMは平均在院日数の長期 は平均在院日数の長期 化・医療費増大する原因のひと つ TP&Alb TP& Alb((6.5 6.5∼ ∼7.8 7.8& &3.5 3.5∼ ∼4.9 4.9)) 低下: 1)摂取不足:栄養障害、悪液質 2)体外喪失:ネフローゼ症候群・蛋 白漏出性胃腸症・熱傷・手術・外 傷・胸水・腹水 3)合成障害:肝硬変・劇症肝炎 4)蛋白異化亢進:炎症・腫瘍・手術 5)血液希釈:水血症・妊娠 RTP:現在の栄養状態に鋭敏に RTP :現在の栄養状態に鋭敏に 反応。短期の栄養管理に有用 1)プレアルブミン・レチノール結合蛋 白・トランスフェリン 栄養状態の評価( 2 ) 4. 血清ALB 血清ALB((g/dl g/dl)); 血漿膠質浸透圧の維持 2.1以下高度 2.1 以下高度,, 2.1− 2.1−3.0 3.0中等度 中等度,, 3.0− 3.0−3.5 3.5軽度 軽度 5. 血清トランスフェリン( 血清トランスフェリン(mg/dl mg/dl)); 鉄の輸送 100以下高度 100 以下高度,, 100− 100−150 150中等度, 中等度,150 150− −200 200軽度 軽度 6. クレアチニン身長係数 クレアチニン身長係数((CHI CHI::Creatinine Height ndex)) 筋代謝産物の尿中排泄量は全身の筋肉 Index 量と相関 7. 免疫能検査 抹消血総リンパ球数(1200/mm³ 抹消血総リンパ球数( 1200/mm³以下) 以下) 皮内反応(ツベルクリン反応) 栄養関連事項 BMI:体重(K BMI:体重( Kg) g)//【身長(m)】 身長(m)】2 基礎エネルギー(BEE 基礎エネルギー( BEE): ):Harris Harris− −Benedict Benedict式 式 男性:66.47 男性: 66.47+ +13.75W 13.75W+ +5.0H 5.0H− −6.76A 女性:655.10 女性: 655.10+ +9.56W 9.56W+ +1.85H 1.85H− −4.68A (W体重 体重Kg Kg; g;H身長 身長cm;A 身長cm; ;A年齢歳) 簡易法:男性=14.1W 簡易法:男性= 14.1W+ +620 620((Kcal/ Kcal/日) 日) 女性=10 女性= 10・・8W 8W+ +620 (Kcal/ Kcal/日) 日) ストレス係数(1.0 ストレス係数( 1.0∼ ∼2.0 2.0)・活動係数( )・活動係数(1.0 1.0∼ ∼1.3 1.3)) 総エネルギー必要量=BEE×活動係数 活動係数× ×侵襲係数 蛋白質:1・0 蛋白質:1・ 0g/kg 脂質:総カロリーの 脂質:総カロリーの20 20∼30% ∼30% 蛋白・糖4Cal/g 蛋白・糖4 Cal/g 脂質:9 脂質:9Cal/ Cal/g g 1 2011/8/22 BMIとストレス係数 1日に必要な水分・エネルギー 水分量/日; 水分量/ 日;1000 1000∼ ∼1300 1300ml ml 程度(食物外) カロリー//日;男性 1000 カロリー 1000∼ ∼1400Kcal 女性 800∼ 800 ∼1200Kcal チェックポイント 体重の増減:病前の体重が目安 尿量(1 尿量( 1日) : 600 600ml ml 検査所見 : 尿素窒素(BUN)),ヘマトクリット( 尿素窒素(BUN ヘマトクリット(Ht Ht),総蛋白( ),総蛋白(TP TP), ), アルブミン(A アルブミン( Alb),ナトリウム( lb),ナトリウム(Na Na)) BMI=22がすべての有病率・死亡率が 最も低いという統計的データ 主観的包括的評価(SGA 主観的包括的評価( SGA::Subjective Global Assessment) 栄養改善度を鋭敏に表す栄養指標 1) アルブミン 正常値 血漿膠質浸透圧の維持 2) トランスフェリン 正常値 鉄の輸送 3) プレアルブミン 正常値 甲状腺ホルモンと結合 4) レチノール結合蛋白 正常値 Vit.Aの輸送 栄養指標による低栄養の判定 3.5−5.0 g/dl 半減期 約20日 200−400 mg/dl 半減期 8−10日 10−40 mg/dl 半減期 2−3日 2.7−7.6 mg/dl 半減期 半日 経腸栄養VS静脈栄養 体重減少 1ヶ月間に健常時体重の ヶ月間に健常時体重の5% 5%以上の体重減少 以上の体重減少 6ヶ月間に健常時体重の ヶ月間に健常時体重の10% 10%以上 以上の体重減 の体重減 少 血清アルブミン値≦ 血清アルブミン値 ≦2.8 2.8g g/dl 血清トランスフェリン≦ 血清トランスフェリン ≦150m 150mg g/dl 総リンパ球数≦ 総リンパ球数 ≦1200 1200/ /mm 2 2011/8/22 経腸栄養について 1. 経腸栄養の適応 栄養状態が悪く積極的に改善を必要とする患者・消化管機能 が保たれている・嘔吐の危険性が少ない患者・栄養管理期間 が少なくとも10 が少なくとも 10日以上 日以上 2. 経腸栄養の利点 腸管の粘膜や機能が保持される・腸管粘膜萎縮による bacterial translocationを回避できる・免疫機能を保持でき translocationを回避できる・免疫機能を保持でき るので感染症に強い・消化管ホルモン分泌を抑制しない 3. 経腸栄養の禁忌 栄養期間が短い・腸管の通過障害がある・胃液の貯留や悪心 や嘔吐がある・下痢が強い場合 大静脈穿刺部位(ルート) 経静脈栄養について 1. 末梢静脈栄養(輸液) 血漿の浸透圧約295mOsmol/L((5% 血漿の浸透圧約295mOsmol/L 5%糖、生食液)以上の輸液 糖、生食液)以上の輸液 濃度10~12% 濃度 10~12%までが限度、血管痛や静脈炎を起こす・栄養期 までが限度、血管痛や静脈炎を起こす・栄養期 間が2 間が 2週以内・ 週以内・1000~1200Kcal 1000~1200Kcalまで投与可能 まで投与可能 2. 中心静脈栄養(TPN: 中心静脈栄養(TPN:T Total Parenteral Nutrition utrition)) (IVH IVH::Intra ntrav venous Hyperalimentation yperalimentation)) はやや前時代的言葉・ 高濃度の栄養を血管痛などなく直接 大量に投与可能 適応;経腸栄養が施行できず、腸管を休ませた方が良い場合 禁忌;意識障害や嚥下障害(消化管に問題なし) 合併症; 合併症 ;気胸(皮下気腫)・動脈穿刺・血胸・皮下血腫・ 空気塞栓・胸管損傷・神経損傷・カテーテル位置異常 カテーテル遺残・カテーテル敗血症 経腸栄養(EN)と静脈栄養(TPN)との比較 適応の幅 消化 排便量 手技・管理 合併症 安全性 経済性 TPN 広い 不要 ほとんどなし 煩雑 多い 敗血症など 低い 高価 EN 制限あり 必要 多少あり 簡単 少ない 下痢など 高い 安価 人工栄養剤の特徴と種類 自然食品流動食:普通流動食・ミキサー食・濃厚流動食 バランス良い栄養成分・栄養価高い・経済性あり・浸透圧高く流 動性なくチューブを通過不可能 半消化態栄養剤(人工濃厚流動食): 自然食品を人工的に処理した高エネルギ 高蛋白の栄養剤、 自然食品を人工的に処理した高エネルギー・高蛋白の栄養剤 窒素源が蛋白質で脂肪含有量が多い・食品と医薬品の2 窒素源が蛋白質で脂肪含有量が多い・食品と医薬品の 2種類あ る(食事箋と処方箋)・栄養素は最終段階まで分解されていない ので正常の消化管機能が必要 消化態栄養剤(成分栄養剤) 化学的に組成の明らかなものだけからなる高エネルギー高窒素 の合成栄養剤・ 消化能の低下している短腸症候群に適応あり 3 2011/8/22 それぞれの代替摂食法 経鼻経管栄養(持続) 間歇的経管栄養 胃瘻(PEG 胃瘻( PEG)) 中心静脈栄養(IVH 中心静脈栄養( IVH) ) 抹梢点滴 胃瘻((PEG 胃瘻 PEG: :Percutaneous Endoscopic Gastrostomy) お腹の皮膚から胃まで直 接チューブを通します。 (よい点) よい点)顔面の不快感なし、 顔面の不快感なし、 一定の栄養と水分をとるこ とができる (悪い点)身体に穴を開ける (悪い点) 身体に穴を開ける ことを嫌がる人が多い 経鼻経管栄養 経管栄養法の方法と名称(体系) 木佐の報告 持続的経管栄養の弊害 1)見た目が悪い 2)咽頭の細菌叢が増加 3)逆流がおこりやすい 4)鼻・咽頭の不快感強い 5)チューブ抜去トラブル多 い 細くてやわらかいもの・こまめに交換 経管栄養の方法 胃食道逆流の防止(座位) 口腔ケアをしっかりとやる・廃用の防止 経管栄養(C:catheterization) 持続的 ( CC : Continuous Ca ) 間歇的 ( IC : Intermittent Ca ) 経 食道経管 養法 法 ・経鼻胃経管栄養法 ∼NGチューフ ∼NGチューブ ・経口食道経管栄養法∼OE法 ( IOE : I Oro Esophageal ) ( CNG : C Naso Gastric ) ・経口胃経管栄養法 ・経鼻食道経管栄養法 ∼口腔ネラトン法∼ ( CNE : C Naso Esophageal ) ( IOG : I Oro Gastric ) ・経鼻十二指腸経管栄養法 ・経鼻食道経管栄養法 ( CND : C Naso Duodenal ) ( INE : I Naso Esophageal ) ・経鼻胃経管栄養法 ( ING : I Naso Gastric) 経鼻経管栄養(NGチューブ)の弊害・合併症(リスク) NGチューブが嚥下障害患者 挿入時留置中の違和感・外見の醜さ チューブ周囲の汚染 出血・潰瘍(鼻腔・咽頭・喉頭・食道粘膜) 気道内へのチューブ誤挿入 咽頭内でのループ形成から呼吸困難 Nasogastric Tube Syndrome 唾液誤嚥や誤嚥性肺炎の誘発 胃食道逆流GER 胃食道逆流 GER( (Gastro Esophageal Reflux ) 大野ら 日摂食嚥下リハ会誌 日摂食嚥下リハ会誌10 10(2); (2);125 125− −134 134, ,2006 の嚥下に与える影響: 63件、チューブ抜去前後での嚥下機能、チューブ走行、 チューブのサイズの検討 喉頭蓋反転改善28 28件・咽頭残留改善 件・咽頭残留改善14 件・食道通過改善 喉頭蓋反転改善 件 咽頭残留改善14件・食道通過改善 件 食道通過改善 5件・誤嚥改善9件・嚥下可能5件 同側留置25 同側留置 25件・交差留置 件・交差留置38 38件、喉頭蓋反転や咽頭残留の 件、喉頭蓋反転や咽頭残留の 改善は同側群が交差群より有意に改善 チューブサイズでは太いものが喉頭蓋反転が有意に改善、 誤嚥の改善は太いチューブ抜去後に有意差あり ⇒細いチューブ8か 細いチューブ8か10Fr 10Fr以下のチューブで同側挿入が一番 以下のチューブで同側挿入が一番 影響が少ない! 4 2011/8/22 経鼻経管栄養と胃瘻の治療成績の比較(1) 28日間の観察 症例数(人) 治療の失敗(%) カテーテルの位置異常(人) カテ テルの抜去 閉塞(人) カテーテルの抜去・閉塞(人) 患者の継続拒否(人) 治療の完結数(人) 平均使用期間(日) 平均栄養供給率(%) 合併症(%) (ParkRHR, et al ,1992より) 経鼻栄養 胃瘻 19 19 0 94.7 0 2 0 14 0 2 19 1 (100%) (5.3%) 28 5.2 93 55 15.8 0 胃瘻群で肺炎2例、創部感染1例 経鼻経管栄養と胃瘻の治療成績の比較(2) 6週間の観察 症例数(人) 治療の失敗(%) 死亡症例(人) 脳血管障害(人) 肺炎(人) 全量栄養摂取率(%) 血中Alb値の上昇症例(%) 6週後の退院率(%) (Norton B, et al ,1996より) 経鼻栄養 胃瘻 14 21.4 8 (57%) 4 4 71 10 7 16 0 2 ( (12%) ) 1 1 100 60 37.5 5