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流通実態 - 農林水産省

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流通実態 - 農林水産省
ており、多様な色使いの大きく装飾的なアレンジを施された花が好まれる他、新設のホテ
ルを中心にエキゾチックな花に対する需要も徐々に増加している。
UAEの花き産業は過去数年間15%以上のペースで拡大しており、居住者のライフスタイ
ルの変化や個人所得の増加、ホテルに代表される法人需要の増加がこれを促している。
生鮮品に関する殆どの損失は倉庫での保管時に高温に晒されることにより発生する。他
方、航空機を含む輸送時の損失は稀であり、航空会社がプレミア・チャージを課すのは専ら
予定時間内での到着を保証するためである(航空会社によってはこの保証を外すことによ
って安価な輸送レートを提供するものもあり、比較的温度変化に強い品目を扱う低コスト
志向の貿易業者がこれを利用している)。温度変化による損失を最小限に抑えるには、取引
相手との信頼関係を構築する他、輸送量を少なめでマネジブルな範囲に抑えることも必要
と考えられている。
(2) 流通実態
①販売方法、販売促進方法
輸入業者→卸売業者→小売店/ホテル・レストラン/スーパー→消費者という経路が一般
的な流通経路だが、大手スーパー/ハイパー・マーケッやホテルの中には卸売業者を通さ
ず輸入業者と直接取引を行うものもある。花きの場合、ホテル・レストランが主要な消費
主体として全体の 60%を占めており、その他、前述の小売店、スーパー/コンビニ等の小
売販売拠点、造園会社、不動産開発会社、さらにウェディング・プランナー等も「消費者」
に加えられる(ある業者によれば、一回の結婚式で 10 万~15 万 Dh(約 300 万~450 万円)
を花に使うことも珍しくない、とのこと)。すなわち、販売方法の観点からは、一般消費者
を対象とする小売に加えて、ホテル、レストランやリゾートの開発時に建物に付随する園
芸・植栽として花きを供給する場合、また、これらの施設における日常のディスプレイと
して継続的に提供する場合、さらに、結婚式や各種イベントに提供する場合、がある。
なお、UAE 及びドバイ首長国政府は、ドバイ・フラワー・センター(DFC)の設立が示
すように、欧州(アムステルダム)が担っている世界の花の集配機能を Dubai においても確
立すべく注力しており、
その一環として 2006 年から国際見本市 IPM
(International Plants Expo
Middle East) DUBAI を毎年 3 月に開催している。IPM DUBAI は、ドイツにおいて行われて
いる IPM ESSEN の派生イベントとして位置づけられており、主催はドイツの Messe Essen
GmbH 及び UAE の planetfair Dubai LLC という民間企業であるが、ドバイ民間航空局長兼エ
ミレーツグループ会長である H.H. Sheikh Ahmed Bin Saeed Al Maktoum をパトロネジとし、
ドバイ首長国政府、ドバイ民間航空局、ドバイ商工会議所、DFC、UAE 環境水利省の全面
的な支援の下に実施されている。
湾岸・中東及びインドの花き・植物の生産者、トレーダー、卸売業者、小売業者、デベロ
102
ッパー、ガーデンセンター、造園・植栽業者、ホテル関係者等、いずれも専門家をターゲ
ットとして、国別のパビリオン、セミナー、実演(アレンジメント)デモンストレーショ
ン、ワークショップ等が行われている。2007 年 3 月 6 日から 8 日にかけて開催された第二
回の IPM では、200 社による出展と、UAE の他、湾岸・中東諸国、インド、EU、アジア、
米州、アフリカ、豪州等多様な地域から 2,500 人近い参加者があった(2006 年参加者は 1,500
人余)12。第三回 IPM は、2008 年 3 月 4 日-6 日、第二回同様 Airport Expo Dubai のエキシ
ビション会場にて行われる。
IPM DUBAI 2007 の模様
出所:IPM DUBAI 2007 Final Report
他方、日本産花きに関するプロモーションの機会はこれまで前述の農水省補助事業にとど
まるが、熱心な地場の輸入業者(主にインド人)からは、日本の業者の関心とイニシアチ
ブの欠如が指摘されている。
②物流実態
地場の流通業者によれば、100%効率的なコールドチェーンは未だ確立されていないもの
の、約 97%の荷物(生鮮品)がコールドチェーンの不備による損傷なしに目的地の市場に
安全に輸送されている。
輸出元からUAEの市場に至るまでの物流経路(空路)とコールドチェーンの整備状況を
12
IPM DUBAI 2007 Final Report による。
103
示すと概ね下図のとおりである。
図3.8 輸出元からUAEの市場に至るまでの物流経路(空路)とコールドチェーンの整備状況
輸送業者
輸送車
(空調管理)
地元空港
カーゴ・ユニット
(空調管理)
栽培農家
輸送航空機
カーゴ
(空調管理)
ドバイ空港
カーゴ・ユニット
(空調管理)
DFC(空調管理)
輸入業者毎の
倉庫(包装等付
加価値作業)
再輸出用倉庫
輸送業者
輸送車
(空調管理)
輸送航空機
カーゴ
(空調管理)
UAE 市場へ
出所:Market Vision
切花や一部の果実は航空便で輸送され、輸出元国の農場から UAE の小売店頭に並ぶまで
2-3 日かかる。内訳は下記のとおりである。
1)農場→地元の空港(5~6 時間)
2)空港での積込み→輸送→目的地空港(8~12 時間+α)
3)ドバイ空港到着後の通関検査・検疫(5~6 時間)
4)空港→小売店頭(5~6 時間)
なお、ドバイ国際空港に隣接するドバイ・フラワーセンター(DFC)では、飛行機到着か
ら次の出荷までのプロセスを、冷蔵移動パレットと自動荷捌き機器、電気自動車、及び温
度管理のなされたエアロックを用いて管理している。本館にはその他、試験場、品質管理
104
室、税関、開梱・梱包エリア、冷蔵室が備えられている。スムースかつ迅速な通過を実現
するために、輸入業者は通常空港に常駐する代理人をアサインし、必要書類を前もって提
出している。また、DFC ではワンストップ・ショップ・サービスを提供して通関手続き時
間の短縮を図っている。
卸売業者の倉庫での保管状況
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③小売段階における差別化の状況
UAEの花き類の小売拠点においては、特に目立った商品の差別化や工夫は見られない。
例えば、Dubai市内にあって比較的豊富な品揃えを有するDubai Garden Centerは、日本の所
謂ガーデンセンターとほぼ同様の店舗形態であるが、例えば以下のような特徴が見出せる13。
・インドアプランツは観葉植物中心。
・品質としてはオランダの生産品としてのレベルに輸送による痛みが加わって落ちた程
度。観葉植物など輸送痛みを受けにくいものは許容範囲だがポインセチアなどは日本で
の商品と比べるとB級品の判断。観葉植物も品種の違いよりはサイズの大小からくる輸
入コストの違いがプライスに反映されており、大きなものは割高。
・アウトドアプランツは花苗についてはC級品を言わざるを得ない品質で日本であれば取
引不可能なレベル。
・庭木類は気候条件から東南アジアなどでみるような熱帯樹木類が多く、果樹も同じく
熱帯果樹が陳列されている。温帯産の樹木類は永年的な植栽には耐えられない模様。
また、Spinneys等スーパー・マーケットの花コーナーではバラやキク、ポインセチアの鉢
物や切花(単品売り及びブーケ売)が陳列・販売されているが、品揃えは少なく、品質も
悪い。
④商慣行
UAEの当該品目市場では、売り手が60~90日間の売掛を提供することが一般的である(60
~75日間の売掛+手形現金化に15~20日間)。その期間は業者によって異なるものの、相互
の良好な関係と理解に基づくものである。しかし、この関係は新規市場参入者には障壁と
なっており、DFCに入居している企業のいくつかは、この点を代金回収に係る問題点として
指摘している。こうした商習慣は、当地の花き市場が2、3の大手卸売企業によって独占さ
れ、彼らが顧客に対して6ヶ月後の支払いを許容するために固定化したものであると言われ
る。
上記の例からも推察されるように、UAEにおける取引関係‐サプライヤー、輸入業者、
卸売業者、小売業者‐は長期にわたるものが多く、安定した価格と納期を実現しているが、
それ故に、新規参入者には自らリスクをとって魅力的な値引きを提供することが求められ
る。
⑤輸送方法
航空便は最も高価であるが生鮮品(果実・花き)の品質保持期間を考慮すると最も需要の
多い輸送手段である。航空便が高コストである要因としては、①燃料費の上昇、②ドライ
13
現地調査に参加した豊明花き株式・福永常務取締役の所感による。
106
アイスに掛かる輸送費、③花きについてはスペースが嵩む、④航空会社によっては生鮮品
に対してプレミア・チャージをとる、等がある。輸送業者からのヒアリングによれば、日
本から当地までのフレート料金は航空便で¥300/kg~¥350/kg(ドライカーゴ)
、船便で
$1,800/20ft 程度である。ただし、航空便の冷蔵・冷凍仕様は品目・航空会社により大き
く異なること、及び上述の理由から、結果的に現在¥1,000/kg 程度にまで上昇している。
国内トラック輸送費の上昇とあいまって
輸入食品価格は大きな影響を受けている模様で
ある。
日本からドバイに航空便で輸送を行うには、東南アジア(バンコク、シンガポール、香港、
デリー等)を経由する他、関空及び中部国際空港からエミレーツ航空による直行便を利用
することができる。
表 3.4 エミレーツ航空の運航スケジュール(2008 年 2 月現在)
出発地
便名
出発時間
到着時間
運行
関西国際空港
EK317
23:15
翌 05:55
毎日
中部国際空港
EK315
22:45
翌 05:55
毎日
⑥関税、手数料
関税は一律CIF価格の5%。その他、bill processing charges(bill毎に60-85Dh(約1,800-
2,500円)がかかる。
表3.5 関税分類と関税率
出所:Market Vision
107
⑦手続と所要日数
UAEに輸入される貨物は、湾岸協力会議(CGC)法に従い、すべて税関への申告を義務付
けられている。輸入業者は輸入貨物の詳細を証明し関税を支払うために、以下の書類を提
出しなければならない。
・船荷証券/航空貨物運送状
・貨物引き渡し指示書
・インボイス
・原産地証明書
・パッキングリスト
・積荷目録
・輸入許可証及び引渡指図書(輸入制限品目の場合)
植物の輸入に際しては、通関に先立って輸入検疫が行われる。輸入検疫は、1)書類検査、
2)現物検査、3)試験室検査の順に行われる。
1)書類検査
上記通関書類に加えて、記入済の申請用紙、有効な商業許可証・農業活動許可証の写し
が必要である。これらの書類が正しく揃えられているか否かについて検査が行われる。
2)現場検査
すべての輸入貨物について、申請所記入事項との相違、貨物の腐敗品質の有無等につい
て検査が行われる14。
3)試験室検査(抽出検査)
『標本抽出検査マニュアル』に基づき食品の品種、原産国、商標によって抽出検査の頻度
は決められる15。DFC内の検疫所では税関の要請にしたがって積荷毎・品種毎にサンプル(3
~4)を抜取り検査を行っている(ただし再輸出品は対象外)。繁殖目的での輸入、根及び
果実、害虫及び病気、土及び汚染物質の付着は禁止されている他、ナツメヤシ、ココナッ
ツ、観葉植物に関してはred weevils感染記録のある国からの輸入が禁止されている。また、
かんきつ類はlime witches’ bloom disease感染記録のある国からの輸入が禁止されている。
昆虫、ホワイトフライ(オンシツコナジラミ)
、リーフホッパー(ヨコバイ)、レッドマイ
ツ(ハダニ)
、アフィッド(アリマキ)、リーフマイナー(ハモグリバエ)、スリップス(ア
ザミウマ)等について注意が払われているが、リーフホッパーによって媒介されるファイ
14
農林水産省『我が国の農林水産物・食品輸出マニュアル-UAE 編-』海外調査報告平成 18
年度報告。
15
同上。
108
トプラズマはカンキツ類に甚大な被害を与えるために特に警戒されている。輸入停止とす
るか否かはこれらの虫の付着や病気の程度によるが、その判断は検査官によって異なる。
花きの輸入・検査に係る費用は以下の通りである。
表3.6 花きの輸入・検査費用
種類
料金(Dh)
輸入許可費用(花、プラント及び種子の 3 種類に対し
500
て個別に支払いが可能。輸入許可は 6 ヶ月有効)
検査費用(サンプル毎)
- 切花(生花)
50
- プラント
300
- 種子
300
衛生検疫証明取得費(船積み毎に環境水利省より取得)
100
純度及び発芽分析*費(船積み毎)
300
*純度分析は、当該植物の純度、他種や雑種、不活性物質の混入度合を測るために行われ
る。UAEでは低純度の植物の拡散を厳しく抑制するため、最低純度を95%に定めてい
る。また、最低発芽率は85%以上としている。
出所:環境水利省からのヒアリングにより作成
⑧関係機関、関係法令等
植物検疫を管轄するのは環境水利省(Ministry of Environment and Water)であり、下記
の法令がその根拠となっている。
‐Federal Law Number (5) of the year 1979 Concerning Agricultural Quarantine
‐Federal Law Number (6) of the year 1992 Concerning the amendments of some provisions of
the Federal Law Number (5) of the year 1979 Regarding The Agricultural Quarantine
輸出入管理、関税制度については、経済省(Ministry of Economy)、連邦関税庁(Federal
Customs Authority)が管轄しているが、法令の実際の施行や実務的な管理・監督については
各首長国の権限が大きい。なお、輸入通関に関する事項は前述の通りGCC統一関税法(GCC
Common Customs Law)に従っている。
表3.7 関係機関
機関名
電話
ファックス
電子メール
webサイト
関税局
Dubai Ports & Customs
+971 4 3023828/ +971 4 3453458/
[email protected]
3023543
3453031
www.dbxcustoms.gov.ae
Abu Dhabi Customs
+971 2 6730700
www.auhcustoms.gov.ae
+971 2 6731150
[email protected]
Sharjah Customs
+971 6 5282216/ +971 6 5281425/
[email protected]
Department
5282666
5282251
花き関連機関
Ministry of Environment
+971 4 2958161
+971 4 2957766
[email protected]
and Water
Dubai Flower Center
+971 4 2163434
+971 4 2244995
[email protected]
出所:Market Vision
109
www.sharjahcustoms.gov.ae
www.moew.gov.ae
www.dubaiflowercentre.com
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