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検討や研究って本当におもしろいよね - 公益社団法人 愛知県臨床検査

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検討や研究って本当におもしろいよね - 公益社団法人 愛知県臨床検査
『検討や研究って本当におもしろいよね』
NAKAMA PJ & ぎんりゅうかい♂
小田原市立病院 病理診断科 磯崎 勝
ODAWARA Municipal Hospital Department of diagnostic pathology
ISOZAKI MASARU (B. Sc.)
はじめに
私たち病理技術者は、日常の仕事を行っていると検討や
研究に結びつく事象や現象に遭遇することがよくあります。ま
た、病理医や先輩技師からこんな検討してみない?といった
お誘いを受けることもあるかと思います。実際に、検討や研究
を行うといっても、私たちは臨床検査技師の養成学校(特に
専門学校)では検討や研究の方法に関して細かな指導を受
けたわけでもなく、授業の一環として教わったわけでもありま
せん。そのようなことから、実際に検討や研究どのように行っ
ていけばよいのかさっぱり分からない方も多いと思います。も
ちろん、私も同様でした。しかしながら、自分なりにいろいろと
調べて検討や研究を行い多くのことを模索し、悩んでいく中
で知りえた知識や勉強になったことは多くあります。もちろん、
わたくしとて崇高な実験をして有名な論文を書いた訳ではあ
りませんし、未だ現役で地味な検討や研究を行っているのが
現状です。検討や研究は大きさやインパクトに関わらず、行う
者の知識を確実に向上させてくれることは間違いありません。
今回は検討や研究を行う上での一般的な進め方や考え方、
失敗から学んだ事例を含めて解説します。それ以外にも、多
くの方が苦手としている、抄録や論文を書く際に大変重要な
日本語表現に関して説明をします。
研究をする上で大切な力
検討や研究に対して重要な力が3つあります。それは
【重要な力】
 踏み出す力
 継続する力
 考える力
踏み出す力:
検討や研究を行う第一歩が踏み出せるのか、検討や研究
した結果から次へのステップを踏み出せるかどうか。検討や
研究を苦手な文章(論文)にしようとする力。
継続する力:
検討や研究は、一つのものを終えたら終止符を打つので
はなく、次を目指さなければ進歩がありません、もしも、一過
性にその検討や実験から離れたり休止したりしていても、それ
らを結びつける思考を常に持っていなければならない。この
ように、同時並行的にたくさんの検討や研究を諦めずに長く
続けていくことで新しい道が見えたり、点として存在した知識
がつながりを生じる要因にもなり得る。
研究や検討の原動力
検討や研究を行う動機は人それぞれ千差万別です。しか
し、実際に検討や研究を行うのは自分自身です。もちろん、
検討や研究を行えば多くの自分の時間をそのために費やさ
なければなりません。その上、私たちは病理検査技術や細胞
検査士の仕事を生業としているわけであり、検討や研究を行
ったからといって給料が上がるわけでもなく、個人の評価が飛
躍的に上がるというものでもありません。私たちが行う検討や
研究とは、そういうものだということを踏まえた上でも、なおそ
れを行うという心構えが重要です。
また、実際に検討や研究を行おうと思ったときに重要なこと
は、検討や研究への第一歩を踏み出せるか否かがカギとなり、
その後の大きな分かれ道となることは明白です。
考える力:
検討や研究で重要なことはオリジナリティーの追及である。
オリジナルな思考や技術は「人の真似はせず、自分で考えて
創りだす」 という思考に起因する。常に考えることで点の知
識は線となり大きな力となることは明白である。
さあ、あなたもその一歩を踏み出してみませんか?
検討や研究を行って自分自身にマイナスになることなんて
何もありません。検討や研究を行いながら同時に多くのことを
考え、学び、学問(知識)の奔流に触れてみませんか?
研究に関して
検討や研究を行う力とは、それを行おうとする者の
『無限の興味と探究心だけが検討や研究へと自分を突き動
かす原動力』
なのです。
『検討や研究を行う上で最も重要な注意点』
(1) 日常業務が最優先:
私たち病理技術者は検討や研究で飯を食っている訳
ではありません。そのような私たちが、検討や研究を行う
上で最も重要なことは、日常業務をしっかり行うことであ
る。日常業務を行った上で、必要な検討や研究を行わ
なければならない。ゆえに、自分勝手に日常業務に区
切りをつけて、身勝手に検討や研究を行うために時間を
充てるのは愚の骨頂である。検討や研究を行う際には、
それが正規の業務ではないことを理解し周囲の状況に
細心の注意を払う必要があります。職場環境が良好であ
ればあるほど自分の検討や研究に対して回りの人の理
解が得られることは間違いありません。また、自らの意志
で検討や研究を行うことを決心したわけですから、日常
の業務を疎かにすることは恥じるべき行為に他なりませ
ん。
(2) 人の真似はしない:
検討や研究はオリジナリティーの追及です。自らが考
えて検討や研究を遂行し、自らによって結果を解釈ある
いは考察しなければ検討や研究を行う意味がありません。
また、他人の行った研究を横取りしたり、実験結果だけ
を盗んで、あたかも自分が実験を行ったかのように公表
することは恥ずべき行為であり、慎まなければならない。
(3) 結果の改ざんやねつ造は絶対にしない:
検討や研究の結果が自分や社会に及ぼす影響を考
えるあまり、都合の良いように結果を改ざんあるいはねつ
造してはならない。また、学会発表や論文提出期限など
に間に合わないからといって結果を改ざん、あるいはね
つ造してはならない。ねつ造したデータは信頼性がなく
再現性に乏しい。データのねつ造や改ざんは検討や研
究を行う者として劣る行為に他ならない。
研究で大切な要素
検討や研究を行う際には以下のことが重要になります。
新規性 Originality
(3) 研究材料として何を用いるのが適切かを考える:
自分が調達できるもの(器材)を用いて研究を行う必要
がある。自分で調達ができないのに「あの装置があれば
できるのに」 とか、「あの材料があればできるのに」 など
といった考え方は改めるべきである。
(4) 自分の持っている技術で計画した実験を遂行できるかど
うかを考える:
共同研究として行う必要があるかを確認する。
(5) 新しい技術や独自の実験系の開発:
自分達の独特な系を持つことは、他の研究者の追随を
許さない。また、自分自身に得意な分野をもつことは検討
や研究を行う上でアドバンテージとなる。独自の実験にか
かる経費は低いほど良い。インターネットなどの普及に伴
って実験の器具なども安価で容易に入手できる。それら
を組み合わせて実験を行うことで独自の系となる。
(6) たとえ他人が既に研究していることが判っていたとして行
ってみる:
検討や研究の内容が他人と重複していたり、同じであ
った場合でも実験を継続する必要がある。たとえ結果が
同様であったとしても結果の解釈(考察)は人それぞれで
ある。そこから、オリジナルな研究の一歩を踏み出すこと
もできる。
2. 研究の進め方
(1) 実験に用いる技術、方法の原理をよく理解する:
特にキット等を用いる際には原報の Methods をよく調
べる。初期の論文には実験方法のノウハウが書かれてい
ることが多いので、よく調べてみよう。
独創性、創作性、オリジナリティー
有効性 Availability
利用能、役立つこと、入手可能なこと
信頼性 Reliablity
信頼、確実、信頼性、確実性、信頼できること
発 案
1. 研究テーマの選択(最も重要)
(1) 自分が興味をもっていることをよく考えてみる:
自分がやりがいを感じることを対象に検討や研究を行う
ことが重要である。実験のインパクトや結果云々よりも興
味があるか否かで発案を決めると検討や研究が楽しくな
る。
また、自分がやりがいを感じる分野のことを、様々な角
度から調べてみる。調べることで、何が解っていないのか、
そのことは本当なのか、など疑問や問題点が見えてきま
す。何を検討や研究の題材にするかは、調べた(学んだ)
量に比例して明確になっていくものと考えられます。
(2) 関連分野の研究をよく調べて、何が解っていないのかに
ついて検討する:
研究のオリジナリティーの検証をする必要がある。二番
煎じも良いが独自なものを目指そう。
(2) ある程度、出てくる結果を前もって予測する:
闇雲に検討や研究を行うのではなく、ある程度予想さ
れる結果を想定して実験を行う必要がある。
(3) 実験を行う前にフローチャートを書き、実験の目的と流れ
を把握する:
記録(ノート)を後で他人が見ても解るようにきちんと整
理してつける(これは引き続き研究していく上での自分の
財産となる。特に、失敗した時や予想に反するデータが
出た時は、自分なりにその理由を考察する。予想に反す
るデータから新しい発見が生まれることは多い。解らない
時は友人や先輩に相談する。また、インターネットや情報
交換の場で聞いてみる。ただし、この場合には自分の研
究を盗まれないように注意する。わらないことを恥じる必
要は全くない!聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥)。
実験で集めた資料や生データシートはノートに張り付ける
などして保存しておく。そうすることで、時間が経過したも
のでも、その時の考え方や記憶が鮮明に戻ってくる。検
討や研究は使い捨てではない。保存したものは後々必ず
役に立つので大切に管理しておくことを勧める。
(4) 常に論文としてまとめることを意識する:
良い雑誌に投稿するためにはどのようなデータが必要
かを考えながら研究を進める。また、論文として投稿する
雑誌を想定しておくと良い。
(5) 検討や研究での行き詰まり:
私の場合には、良いデータが出ない時に、その研究に
対する引き際が早い。また、研究が思うようにいかないと
きや、行き詰まってしまったときには別の検討や研究を行
うようにしている。そうすると、数か月あるいは数年後に良
いアイデアが突然思い浮かぶことも多い。こういった実験
の休息期に文献や成書あるいは関連雑誌を読むと解決
へのヒントが見つかることが多い。
検体の取扱いと倫理
検討や研究を行う際には、生体材料を用いることも想定さ
れる。検体を取扱う際の倫理に関する規定や方法は各々の
施設基準に準じることが多い。また、各学会が倫理に関する
指針を提示しているのでそれに従って取扱う。
医学研究における倫理規範として「ヘルシンキ宣言」がある。
このなかにある倫理観は、臨床検査や病理検査においても
そのまま通用するものであり、検討や研究を行う者は一読して
おくことを勧める。
化学実験を安全に行うために
化学実験を行う際には、器具や用具の取り扱い方を知って
おく必要がある。化学実験では危険はさけあれないものある。
しかしながら、取扱を熟知していれば危険にさらされるリスク
は減少することは間違いない。実験前には下のような本を読
んで操作を理解しておく必要がある。
上手な実験の仕方とは、昔か
ら多くの人たちによって工夫さ
れ、受け継がれてきた安全で、
確実で、能率の良い実験方法
をいう。初心者はまずこれらの
方法に習熟し、体得することが
必要である。しかしながら、実験
には伝統的な方法もあり研究
者によって流儀が異なる場合も
多い。この本では一般的な方
法を示しているが掲載されてい
る全てが最善の方法とはいえな
い。自らの経験でより良い方法
を選び、改善していくこともまた
研究者にとって重要な任務である。
「実験は頭でせよ」といわれる。指導者に従って機械的に行
っていては上手な実験を体得することはできない。例え些細
な実験でも、実験を行うときには次の心得を守って、常に考え
ながら行わなければならない。
1. 実験には周到な計画が必要である
実験の方法をよく調べ手順を練り、事前に頭の中で実験を
一通り行ってみるくらいにすべきである。
2. 実験準備は万全を期さねばならない
準備すべきことを怠ってはならない。少し慣れると横着にな
り、事故を起こす。正規の器材を用い、無理のない手順で行
うことが大切である。
3. 実験中は注意力を集中すべきである
五感を働かせ、ちょっとした危険への兆しも見逃さないよう
に観察することが、実験を安全に、確実に行うために最も必
要なことである。やむをえず実験中に現場を離れるときも心は
残しておく。
4. 実験の記録は詳細にとらなければならない
実験中はノートを傍らに置き、実験経過、結果をできるだけ
詳細に記入すること。また、問題点や着想などもその都度ノ
ートに控えておくことも重要である。
5. 実験には常に災害を予想し、その対策を立てておかなけ
ればならない
災害は不注意から起きる。防災ために
労を惜しんではならない。
実験では、普段に使用しない機器や
器具を使うことが多い。電気機器などは、
火災も考慮してまめにコンセントから電源
ソケットを抜いておくように心掛ける。
データ処理
検討や研究を行うと結果を統計学による処理にゆだねる場
合がある。また、文献などで表中に P<0.05 のような表記もみ
たことがあるかと思います。これはいったい何を表しているも
のなのでしょうか?
こういったことが、少しでも分かると検討や研究に興味や関
心がでてくるかもしれません。よって、ここに統計学に基づい
たデータ処理の原理や特性を簡単に解説します。
実験データは統計学に基づいて処理されることが多い。こ
のようなことは、病理技術を行っている者にとっては、なじみ
がなく苦手な分野でもあるのではないでしょうか。特に、得ら
れたデータを解析しその結果の検定を行う必要性がある場合
に、どのように検定を進めていくべきか、あるいはどのような検
定方法を選択すべきかが、解らない方が多いと思います。
データ処理は検定を行うことで、結果が統計学的に解析さ
れているということを示したり、データ解析の信頼性をより向上
させる手段として有用である。以下に検定に関する概念を記
載するので検討や研究で検定を行う際に参考にしてもらいた
い。
【統計学の機能】
少数の情報から全体を推し量る・・推論する
統計は全体としての母集団からその一部としての標本を取
り出すことで、少数の情報から効率よく全体について推論す
ることを可能とする。その方法は、大きく検定と推定に分かれ
る。検定とは、標本を基準に母集団の特徴や状態について
何らかの仮説を設け、その妥当性を確立論的に検証する方
法である。正確には統計的仮説検定 statistical hypothesus
testing と呼ばれる。例えば、ある2つの標本に差異を認めた
とき、それらは同一母集団から得られたという仮説とそうでな
いという仮説をおき、確立的にはどちらがより妥当であるかを
客観的に判断する手段が検定法である。
一方、推定は標本の特徴(統計量)から、母集団の特徴(母
数)を推し量る方法である。正確には統計的推定 statistic
estimation と呼ばれる。
【統計学の特徴】
1. 統計処理の精度はデータ数に依存する。
統計数学は、その取り扱う対象が「ばらつき」であるた
め、統計処理で得た要約値や判定結果の精度(再現性)
はデータ数に依存する。すなわち、統計処理対象となる
データ数が少ないと、その情報は偶然に大きく影響され
ることになり、そこら導かれる統計的判断も曖昧なものに
なる(精度が悪くなる)。逆に十分なデータ数があると、そ
こから導かれる統計的推論の信頼性は極めて高くなる。
結局、インプットしたデータ以上の推論(計算)精度を統
計から引き出すことはできないのである。
【検定の大前提】
統計分布
標準(基準)正規分布の理解
2. 統計処理の正確度は過程の妥協性に依存する。
統計の理論や計算は常にいくつかの仮説に基づいて
いる。このため仮説の妥当性が明確でない限り、統計処
理結果を厳密に解釈することはできない。しかし、現実
にはそれを検証するに足る十分なデータを確保しにくく、
もともとのデータ数が少ないから統計に依存している、と
いう矛盾がつきまとう。例えば、基準範囲を健常者群の
95%信頼区間として、その平均値±1。96×標準偏差か
ら求める場合、正しくもとまるのは健常者の値が正規分
布していると仮定できるときだけである。
3. 推計学的な判断は天気予報と同じで絶対的なものでは
ない
この意味で、有意差検定や信頼区間の推定は天気予
報に似ている。誰でも天気予報の確率を参考にしようと
する。しかし、その数値に絶対的な信頼性をおいている
わけではない。それは、その確率がいくつかの曖昧な仮
定に立脚していることを常識的に理解しているからであ
る。一方、一般の統計処理は、我々も常識の及ばないデ
ータを扱うことが多いので結果をうのみにしがちである。
やはり、そこから導かれる判断に対しても、天気予報の
場合と同様の受け止め方が必要であろう。
4. 推計学的判断には、相反する2つの過誤を伴う
2つの現象に差があるかどうかを検定し、本当は差が
ないのに「差がある」と判断してしまう過ちを「第1種の過
誤(α)という。もうひとつは、本当は差があるのに「差がな
い(正確には差があるとはいえない)」と判断してしまう場
合で、これを「第2種の過誤(β)と呼ぶ。差の判定を厳し
くするとαは減らせるが、逆にβは増える。差の判定を
甘くしてβを減らそうとするとαは大きくなる。この矛盾は
データの少なさ「ばらつき」に起因しており、唯一データ
数を増やすことで両側両方の誤りを減らすことができる。
しかし、そのようなことを行うと少ない情報から推理すると
いう統計本来の意味が薄れてしまう。
5. 研究段階で異なる有意差検定の意義
有意差検定は、それを研究のどの段階で用いるかで
その意義大きく異なる。未知の現象に対していろいろな
角度からデータを集め分析している場合には、有意差
検定は、要因分析の一つの手がかりとして利用している
にすぎない。実際に、有意差検定の妥当性すら明確で
なく、正確な確率を出しても意味はない。このような、研
究の調査段階での統計処理を、探索的なデータ解析と
よぶ。一般にこの段階では思考錯誤的に何度も「有意差
検定」を行うことが多く、上途の第1種の過誤(実際には
差がないのに差があると判定)の可能性が大きくなる。こ
れを検定の多重性と呼び、統計的に有意とするレベル
(有意水準)を調整する方がよいとされる。結局、検討や
研究での有意差検定は「違い」に関する一つのて手が
かりを与えているにすぎない。
平均 0、 分散 1 の正規分布、つまり N (0、1)を「標準(基準)
正規分布」と呼びます。
標準正規分布の確率密度の式は
 1   ( z 2 / 2)
f ( z)  
e
 2 
です。標準正規分布の横軸は z とおくのがふつうです。
正規分布では、ある区間に対応する確率を(特定の場合を除
いて)積分して求めることはできません。そこで、標準正規分
布について数値計算によって求めた確率の値が表になって
います。平気がμで分散がσ2 の正規分布の横軸の値 x は
Z= (x-μ)/σ
とすると、標準正規分布の z に対応します。そこで x を z に直
せば、標準正規分布について作られた確率の表を使って、ど
んな正規分布でも任意の区間に対応する確率を求めることが
できます。x → z とすることを「標準化」とよんでいます。
t 分布(Student t)
密度関数
 d 1
 d 1 



2 
2   t  2 

1  
f t  
d
d 
d   
2
で表される分布を t 分布(Student の t 分布)といい、自由度と
呼ばれる整数値 d を分母として含む。標本平均値の分布に
用いられる。分布の形は標準正規分布(上図)に類似して、0
を中心とする左右対称分布であり変量 t の領域は実数全域
である。dが大きくなると次第に標準正規分布に近づく。
カイ二乗分布
f分布
といった分布に従うことを前提とした検定ではパラメトリック手
法を用いる。対照的に集団が上のような分布に従わない、あ
るいは分からないときはノンパラメトリック手法用いることにな
る。
【パラメトリック検定 parametric test 】
検定法の中で、母集団の分布に対して一定の仮定をおき、
それに基づいて統計的仮説を行うものをパラメトリック検定と
呼ぶ。例えば、代表的な一標本または二標本 t 検定、分散分
析などがそれにあたり、いずれも母集団が正規分布であるこ
とを前提とする。この分布の正規性の仮定は同時に、測定の
尺度が間隔尺度でなければならないことを要求する。しかし、
少数例の標本しかない場合には、正規分布かどうかはっきり
させにくいので不用意に制限なく利用されることが多い。
【ノンパラメトリック検定 non-parametric test 】
検定法の中で、その適用にあたり母集団の分布に関して
特別の仮定を置く必要がないものをノンパラメトリック検定法
または分布に依存しない検定法 distribution free test と呼
ぶ。代表的なものに、Wilcoxon 検定、Mann-Whitney 検定、
Friedman 検定、などがある。
ここで分布型に仮定を置くという概念は、間隔尺度に固有の
もので、例えば順序尺度では、測定の状況によらずその測定
値(順位)の分布は一様分布をとり、分布型を区別するという
概念は存在しない。したがって、ノンパラメトリック検定で分布
型の制約がないのは、それがもともと順序尺度や、名義尺度
で測定されたテータに対する検定法であるためである。もち
ろんデータが間隔尺度で測定されていても、それをより低次
の尺度に直すので、やはり分布型に依存しない形の検定に
なる。なお、ノンパラメトリック検定法の欠点として、本来パラメ
トリック検定法が妥当とされる場合に使うと、検定の効率が若
干悪くなることがあげられる。しかし、検定法にもよるが、その
程度はわずかと考えてよい。
*測定の尺度 scale of measurement
分類尺度 categorical scale :
[定義] 固体をある定性的な特性によって、数値や分類名を
割り振って分類する場合のような測定基準を分類尺度という。
また、名義尺度 nominal scale ともいう。
順序尺度 ordinal scale or ranking scale:
[定義] 固体をある量的な特性の順序によって数値(順位)や
分類名を割り振って測定する場合の測定基準を順序尺度と
呼ぶ。
間隔尺度 interval scale と比尺度 ratio scale:
[定義] ある量的特性を個体間の順序関係だけでなく、その
距離も明確にして測定する際の基準をさす。数値は連続変
量 continuous variate の形をとることが多い。
【検定方法の共通原理】
「差がある」という仮説は、そのままの形では検定ができな
い。検定にあたって大切なことは、「差がある」という仮説は、
そのままでは検定できない点である。なぜなら、その差の大
きさをあらかじめ特定しておかないと証明にならないからであ
る。ところが、もともとその差の大きさがわからないから検定す
るわけであり、これでは理論がかみ合わない。
そこで、「差がある」という仮説を証明するには、まずその
逆の「差がない」という仮説を調べる。そして、その仮説に何
らかの矛盾がみつかれば、もとの「差がある」という仮説を正し
いと判断する。逆に、明らかな矛盾がみつからないときは判
断を保留するという形式をとる。
この意味で検定の理論は反証法(背理法)にあたり、「差が
ある」ことを証明ために、その命題を置き換えて「差がないと
すると、矛盾してしまう」ことを証明する。また、ここで「差がな
い」という仮説は本来「無に帰すべきもの」として「帰無仮説」
null hypothesis と呼び H0 と略す。そして、もとの「差がある」と
いう仮説は「対立仮説」 alternative hypothesis と呼び H1 と略
す。
【検定のフロー】
設問
差はあるのでは?
(1) 仮説の設定
差がない H0 : 帰無仮説
(差がある H1: 対立仮説)
(2) 統計量 X を求める
検定しやすいようにデータを一つの数値に要約
する。
(3) 確率を求める
H0 のとき、統計量 X が生じる確率 P を求める
(4) 判 定
P が有意水準αより大
→H0 を棄却できない。(判定保留)
P が有意水準αより小
→H0 を棄却し、H1 を採用する。
有意水準 level of significance
帰無仮説が正しいのに、それを誤って否定する確率で α で
表す。危険率ともよぶ。バイオサイエンスの分野では、α=0。
05(5%)が用いられる。
求めることができる。
(4) 判定: 有意水準をαとすると
P≧αのとき: H0 を棄却できず判定保留
P<αのとき: H0 を棄却し、対立仮説 H1 を採用(差があ
ると判定)
【検定の方法】
○独立二群の差の検定
○関連2群の差の検定
一標本 t 検定 (パラメトリック)
[検定の手順]
「2群間に差があるといってよいか?」
(1) 仮説の設定: いったん「差がない」と仮定する(帰無仮
説: H0)。「差がある」という仮定は対立仮説(H1)として保
留。
(2) 統計量を求める: n 組のデータにつき各ペアの差を求
め、その平均値 d を統計量とする。(d に2群の差が要約
されている。)
(3) 確率を求める: d が確率的にどの程度偏った値である
かを求める。これには d をその標準誤差(Sd/√ )でわっ
て標準化すると、その値 t が自由度 n-1 の t 分布するこ
とを利用する。
二標本 t 検定 (パラメトリック)
[検定の手順]
「2群間に差があるといってよいか?」
(1) 仮説の設定: いったん「差がない」と仮定する(帰無仮
説 H0: 2 群は同一の正規母集団から得られた標本)。
「差がある」とする逆の仮説(対立仮説 H1)は保留。
(2) 統計量を求める: 両群の平均を 、
とすると、2 群
の差が平均の差 - に要約されていると考える。
H0 より期待値は 0。
(3) 確率を求める: H0 のもとで - の生じる確率を求め
有意差を判定する。確率は - をその標準誤差で標
準化すると、自由度 df = n1+n2-2 の t 分布に従うことを
利用して求めることができる。
1
標準化
t は自由度 n -1 の分布
√
ここに Sd は差 d の標準偏差で
∑
1
である。この t 値(標準化された )の生じる確率は t 分布
表から求めることができる。
(4) 判定: 有意水準α、自由度 n-1 の t 値(tα)*を t 分布
表から求める。この値を標本の t 値と比較する。
| t | ≦ tαのとき: 差があるとはいえない(H0 を棄却でき
ず判定保留)
| t | > tαのとき: P <αとなり有意差あり(H0 を棄却し
対立仮説を採用)
Wilcoxon 検定 (ノンパラメトリック法)
[検定の手順]
「2群間に差があるといってよいか?」
(1) 仮説の設定: いったん「差がない」と仮定する(帰無仮
説: H0 ) 。「差がある」という仮定は対立仮説(H1 )として
保留。
(2) 統計量を求める:
① n 組のペアについて差 d を求める。
② 符号を無視して d を小さいほうから順に並べる。
③ d の符号により、その順位を+と-に分け、少ない
方の不後に属する順位をたし合わせて T とする
この符号順位和 T は、2群の差を表す Wilcoxon 統
計量で差が大きいほど小さくなる。
(3) 確率を求める。
n≦25 のとき Wilcoxon 検定表から T の有意性を示す確
率を求める。
n>25 のとき T は近似的に正規分布に従う。
平均値
標準偏差 σT
したがって T を標準化し
から z 値を標準正規分布表で調べれば、その確率 P を
1
ここで s は、両群の分散 12 、 22 から求めた合成成分
の平方根として
1
1
1
1
2
2
2
1
2
で求めることができる。また
が
-
の標
準誤差にあたる。
(4) 判定: t 分布表より、自由度 df、有意水準αの t 値(tα)
を調べ、標本の t 値と比較する。
| t | ≦ tαのとき: 差があるとはいえない(H0 を棄却でき
ず判定保留)。
| t | > | tα|のとき有意差あり (H0 を棄却し対立仮説 H1
を採用)。
Mann-Whitney 検定 (ノンパラメトリック法)
[検定の手順]
(1) 仮説の設定:
帰無仮説 H0 : 2 群の点の配置(順序関係)に偏りがない。
(対立仮説 H1 : 2 群の配置の偏りがある)
(2) 統計量 U を求める: どちらか一方の群について、個々の
点に注目し、その点より大きい他方の群のデータ数を調
べていく
その合計Uは群間の差を表す。この例では U = 0 + 1 + 3
となり U 値が小さいほど群間の差が大きいことになる。
文献の検索方法
関連文献の検索
インターネットが最も有用である。
【英語論文の検索】
(3) 確率を求める。
U 値の生じる確率 P を求める。両軍のデータ数が
・n1≦20 かつ n2≦20 のとき、Mann-Whitney 検定表をみ
る。
・n1、 n2 一方が 20 以上のとき、U の理論分布は近似的
に
平均値
標準誤差
の正規分布をすることから、標本の U 値を
により標準化し、標準正規分布表をみる。
(4) 判定: 有意水準をαとすると、
P ≧αのとき: H0 を棄却できず判定保留
P <αのとき: H0 を棄却し H1 を採用
考察について
「考察」は「結果」で示した調査結果や分析結果を踏まえて
結論にいたるまでの議論を展開するパートである。「考察」は
英語では“discussion”であり文字通り議論する場である。結
論とは、「目的」や「はじめに」などで設定した研究の課題に対
する答えである。また、結論は「結果」から抽出した情報に則
って、検討あるいは研究者の判断が加わって導かれるもので
ある。「結果」から導くことができる結論は自明でなく、ある程
度の幅をもつ。したがって、「考察」での内容は結論の適切さ
を保証するためのプロセスであり、検討や研究の感想ではな
い。
「結果」(調査や分析の結果)を解釈して「目的」で述べられた
研究課題への回答となる諸命題を引き出す。結論として何が
分かったのかを示す部分である。 このことが、「考察」の中
核をなす。
MEDLINE
MEDLINER ( メ ッ ド ラ イ ン ) ま た は MEDLARSR Online
(MEDical Literature Analysis and Retrieval System Online)
は、医学を中心とする生命科学の文献情報を収集したオンラ
インデータベースである。
MEDLINER は、米国およびその他 80 カ国以上の国で出版
される、37 の言語の 5、000 以上の学術誌に掲載された 1500
万を超える文献情報を網羅する(2006 年現在)
MEDLINER は文献の情報を、著者やタイトル、雑誌名、巻
数、号数、出版日、施設、言語、登録番号など 53 以上のデー
タ フ ィ ー ル ド で 管 理 す る 。 特 記 す べ き は MeSH (Medical
Subject Headings) と呼ばれる NLM で定めた生物医学用語
であり、それぞれの文献には文献の内容を示す MeSH 用語
が 10 から 15 個程度付与されている。そのうち、特に主要な 2
個程度の MeSH 用語には * をつけて区別している。1975 年
以降の文献については多くが論文の要旨(アブストラクト)も
データ化されている。
MEDLINE のデータは、サーチエンジン「PubMed」や「NLM
Gateway」によって無料で利用可能になっている。PubMed は
基本的には CUI であり、サードパーティーにより GUI 化された
物(有料)が大学や研究機関では古くから利用されている
(Ovid など)。これを受けて、本家 PubMed も現在徐々に GUI
メニューを拡充しているが、Web 検索エンジンしか使ったこと
の無い人間が MeSH やフィールド指定、論理演算式などを使
いこなすにはまだ若干の慣れが必要である。
PubMed は MEDLINE データベースのみならず、MeSH の
付加されていない MEDLINE に収録される前の文献や、
MEDLINE から外された文献、MEDLINE 収録の文献に引用
されている生命科学外の文献も検索できる。一部の文献につ
いては全文の無料閲覧が可能な電子アーカイブ「PubMed
Central」へのリンクがついている。更に NLM の全データベー
スを検索できる「Entrez」によって他のデータベース(GenBank、
dbSNP、dbEST など)にもリンクしている。
PubMed
【考察を書く上で注意すべきこと】
 結論は、調査や分析の結果から自動的に結論が導出さ
れるわけではないので、洞察力を働かせて価値ある確か
な情報を引き出し考察すること。
 仮説はどこまで立証できたのか、また、論点にどのように
決着をつけたか、について丁寧に議論すること。
 既存研究の成果もふまえて結果を解釈すること。
 立証の過程で論理の飛躍が起きないようにすること。
 「考察」では、新たな事実提示や新規のデータ解析を行
わないこと。
 研究課題と関係ない議論を不用意に展開しないこと。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/
PubMed(ぱぶめど)は、アメリカ国立医学図書館の国立生
物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の
学術文献検索サービス。
PMID
PMID(ぱぶめどあいでぃー、PubMed Unique Identifier) は
文献検索サイト PubMed が各文献へ割りふっている ID 番
号。この番号を指定することで、サイト上で単一の文献を指定
することができる。例えば 1990 年に米国科学アカデミー紀要
に掲載された小川誠二の論文(fMRI の基礎となる BLOD 法
の原理を提出した論文)は 2124706 という PMID を持つ。こ
の数字を PubMed の検索窓に直接打ち込むと、対象論文の
文献情報が表示される。オープンアクセスで無料公開されて
いるものは、画面右上に論文本文へのリンクがアイコンで表
示される。
MeSH
プロテインデータバンク
MeSHR(メッシュ)は、Medical Subject Headings の頭文字
であり、米国国立医学図書館 (NLM) が定める生命科学用
語集(シソーラス)である。NLM が MEDLINE データベースに
おいて文献を管理する際、文献の内容を表す適切な用語を
10?15 個程度文献に付与し、この用語により文献を検索・管
理できるようにしているが、このとき MeSH の用語を用いる。
MeSH は毎年改訂されて新しい概念や語句が追加・修正され、
最新の生命科学に対応できるようにしている。
MeSH は 、 定 義 語 Descriptors 、 副 表 題 Qualifiers
(Subheadings)、補足用語 Supplementary Concept Records
の 3 つの基本事項と、それに加えて出版物の種類
Publication Characteristics (Publication Type) 、 場 所
Geographics についての用語を含む。 2005 年の MeSH は
22、997 の定義語、83 の副表題、151、000 の補足用語を含
む。
定義語 Descriptors
定義語は、文献の内容を表すのに使われる。例えば喘息
Asthma、大腸菌 Escherichia coli、腫瘍幹細胞 Tumor Stem
Cells などが含まれる。MEDLINE データベースではこの定義
語が文献に 10-15 個程度付与される。定義語は階層構造で
細かく分類されている。
副表題 Qualifiers (Subheadings)
副表題は、さまざまな分野で用いられ、階層構造に入らな
い大きな概念を別にしたもので、定義語と組み合わせて使う。
例えば、診断 diagnosis、治療 therapy、手術 surgery、器具
instrumentation、教育 education などが含まれる。
蛋白質や酵素などの構造を調べるときに便利である。生物
系で最も有名なデータベースである Research Collaboratory
for Structural Bioinformatics(RCSB)による Protein Data Bank
(PDB、 プロテインデータバンク)にアクセスすると情報を得る
ことができる。
http://www.rcsb.org/pdb/
補足用語 Supplementary Concept Records
補足用語は、薬物や化学物質、タンパクなどの名前を定め
た用語である。
出版物の種類 Publication Characteristics (Publication Type)
出版物の種類は、文献がどういった形で発表されたかを記
したものである。例えば、学術誌の記事 Journal Article、論
説 Editorial、コメント Comment、総説 Review などが含まれ
る。
【日本の文献検索サービス】
CiNii
CiNii(NII 論文情報ナビゲータ[サイニィ])は、は、論文や図
書・雑誌などの学術情報で検索できるデータベース・サービ
スであり、誰でも利用できます。
使い方
「CiNii Articles - 日本の論文をさがす」
学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記
事索引データベースなどの学術論文情報を検索することが
できます。
「CiNii Books - 大学図書館の本をさがす」
全国の大学図書館等が所蔵する本(図書・雑誌)の情報を検
索できます。
メディカルオンライン
メディカルオンラインは、医療関係者のための医療情報の
綜合 WEB サイトです医師、看護婦、医療技術者の方を始め、
大学、病院、関連企業・団体などの多くの方々を対象として、
2000 年 12 月からサービスを開始している。
【特殊なデータの検索など】
3D 分子モデル作成ソフト Facio
http://www1.bbiq.jp/zzzfelis/Facio_jp.html
フリーソフトによる分子模型作成ソフトウエアである。原子間
距離や結合角度(3次元)も自動的に修正してくれる。分子の
立体構造を観察する際には大変便利なソフトウエアである。
また、描いた立体構造は Jpg や bmp ァイルとして保存するこt
ができる。
論文や抄録文の書き方
検討や研究を行った後には、その内容を文章にして発表す
る必要がある。多くの方は、文章を書くことが苦手あるいは文
才がないといった意識が強く、このことが実験や研究を行うこ
とへの障害になっていることも多い。このように、苦手とする文
章作成に対して職場内で指導してくれる同僚や先輩がいれ
ば良いが、研究環境に乏しい職場ではそれを期待することは
できない。では、文章を書く上で何が最も重要であるのか、あ
るいは科学論文などで手本とすべき日本語表現について記
載する。
論文や抄録文を書く際には、投稿先の規定にしたがって書
くことが重要である。投稿する際には、必ず投稿先の投稿規
定を読んでおくことは重要である。この投稿規定に従って文
章を作成していく訳だが、投稿規定には大まかな規定しか掲
載されていない。それ以外に、抄録や論文の基本的な書き
方(日本語表現)は存在する。多くの場合には、公用文の書
き方に従って書いていくのが通常である。
文章作成の優先すべき順序としては、投稿規定の内容→
その領域における慣習あるいは慣例的表現→公用文規則
である。
【文章作成の実際】
論文や抄録文を書く上で最も重要なことは
『漢字にすべきか平仮名にすべきか迷う場合』
その漢字の本来の意味として使用していない語句は平仮名で書く。
『一文一情報』 を心がける。
ことである。
科学論文では情緒的な表現や比喩などを多用した文章は
必要ない。文章を構成する成分には段落あるいは文などがあ
るが、構成単位である「文」に対して複数の情報や内容を盛り
込むことは好ましくない。文は主語から述語までで構成されて
おおり、この中に複数の情報を盛り込まないことが明解な文
章を書く秘訣であり最も重要なことである。必要な情報は一つ
の文章に一つで十分であり明解である。また、多くの項目を
文章で表現する場合には箇条書きなどを用いて明瞭に要所
をまとめるテクニックも重要である。多数のことを文章で書くと、
ダラダラとしたまとまりのない文章が出来上がりやすいので、
同一の内容や類似の内容はできるだけ各々をまとめて、箇条
書きにするほうが読み手に対して親切であることは間違いな
い。このように、文章を書くということは読者に、より解りやすく
内容を伝えることにある。
文章の明解さを検証する方法として、自分が書いた文章を
自分あるいは他人に声を出して読む、あるいは読んでもらうと
良い。読んでいて引っかかる部分や区切りの悪い部分は良
い文章表現とは言えず、修正を必要とする場合が多いので
注意が必要である。
私は、技師会活動を通じて広報の仕事を行っており多くの
方々の書いた文章を目にする機会が多い。そのような中で、
私たち臨床衛生検査技師が書く文章には決定的に良くない
点が共通に存在するので紹介する。
① 主語の無い文章が多すぎる
文章の基本構成は主語から述語までが通常であるにも
関わらず主語がない、あるいは省略されすぎている文章
が目立ちます。文章の書き手にとっては当然のことでも、
読み手にとっては分からないことが多く(読み手は専門の
方ばかりではない)、主語を省略しすぎてしまうと意図が
ぼやけてしまうことが多い。また、主語のない文章は唐突
な表現となってしまう場合が多い。文章を書く際には、主
語が存在しているのかを常に確認する必要がある。
② 体現止めや名詞と目といわれる表現が多い
体現止めや名詞止めとは、名詞の直後に句読点であ
る「、」や「。」がくる表現である。よく目にする文章にこのよ
うな表現が非常に多いことを感じます。抄録や論文は、新
聞の見出しではないので体現止めは行わないほうがよい。
体現止めや名詞止めの表現は、抄録や論文の本文で投
げやりな印象を与えるので使用しないように心掛けるべき
である。
誤
という事は
ということは
する時は
するときは
して置く
しておく
して来る
してくる
○○と言う方法
○○という方法
それは○○では無い
それは○○ではない
ということは有りえ無い
ということはあり得ない
『カタカナの表現』 長音「ー」
外来語、特に英語で er、 or、 y で終わる単語は、カタカ
ナでは伸ばさないのが以前の傾向であった。
誤
正
コンピューター
コンピュータ
リアクター
リアクタ (リアクトル)
コンデンサー
コンデンサ
インターフェース
インターフェイス
インタフェース
リアリティー
リアリティ
現在の公用語において、長音は原則として長音符号「-」
を用いて書くとされている(H22)。
正
正
コンピューター
コンピュータ
リアクター
リアクタ (リアクトル)
コンデンサー
コンデンサ
インターフェース
インターフェイス
インタフェース
リアリティー
リアリティ
また、英語の語末の-er、 -or、 -ar などの当たるものは、原
則としてア列の長音とし長音符号「-」を用いて書き表す。た
だし、慣用に応じて「-」を省くことができる。
長音表記に関しては抄録や論文の提出先の用字・用語基
準を原則とし明記がない場合には、

「現代仮名遣い」の実施について
(昭和 61 年 7 月 1 日内閣告示第1号)

常用漢字表
(平成 22 年 11 月 30 日内閣告示第 2 号)

公用文における漢字使用等について
(平成 22 年 11 月 30 日内閣告示第 1 号)

外来語の表記
(平成 3 年 6 月 28 日内閣告示第 2 号)
実際の表現テクニック
【注意すべき文章表現】
文章表現では、仮名で表現すべきか漢字で表現すべきか
を迷う場合がある。また、パーソナルコンピュータでそのような
文書に対して変換を行うと漢字で変換されてしまう場合があ
る。
そのようなときのために注意すべき日本語表現を示す。
正
にしたがって記載するとよい。
【公用文における漢字使用等について】
平成 22 年 11 月 30 日内閣訓令第 1 号
1 漢字使用について
(1) 公用文における漢字使用は、「常用漢字表」(平成 22
年内閣告示第2号)の本表及び付表(表の見方及び使
い方を含む。)によるものとする。なお、字体については
通用字体を用いるものとする。
(2) 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表
すに当たっては、次の事項に留意する。
ア 次のような代名詞は、原則として、漢字で書く。
例) 俺 彼 誰 何 僕 私 我々
イ 次のような副詞及び連体詞は、原則として、漢字で書く。
例(副詞)
余り 至って 大いに 恐らく 概して 必ず 必ずしも
辛うじて 極めて 殊に 更に 実に 少なくとも 少し
既に 全て 切に 大して 絶えず 互いに 直ちに
例えば 次いで 努めて 常に 特に 突然 初めて
果たして 甚だ 再び 全く 無論 最も 専ら 僅か
割に
(連体詞)
明くる 大きな 来る 去る 小さな 我が(国)
ただし、次のような副詞は、原則として、仮名で書く。
例 かなり ふと やはり よほど
ウ 次の接頭語は、その接頭語が付く語を漢字で書く場合は、
原則として、漢字で書き、その接頭語が付く語を仮名で書く
場合は、原則として、仮名で書く。
例)
御案内(御+案内) 御挨拶(御+挨拶)
ごもっとも(ご+もっとも)
エ 次のような接尾語は、原則として、仮名で書く。
例)
げ (惜しげもなく) ども (私ども) ぶる (偉ぶる)
み (弱み) め (少なめ)
オ 次のような接続詞は、原則として、仮名で書く。
例)
おって かつ したがって ただし ついては ところが
ところで また ゆえに
ただし、次の4語は、原則として、漢字で書く。
及び 並びに 又は 若しくは
カ 助動詞及び助詞は、仮名で書く。
例)
ない (現地には、行かない。)
ようだ (それ以外に方法がないようだ。)
ぐらい (二十歳ぐらいの人)
だけ (調査しただけである。)
ほど (三日ほど経過した。)
キ 次のような語句を、( )の中に示した例のように用いるとき
は、原則として、仮名で書く。
例)
ある (その点に問題がある。)
いる (ここに関係者がいる。)
こと (許可しないことがある。)
できる (誰でも利用ができる。)
とおり (次のとおりである。)
とき (事故のときは連絡する。)
ところ (現在のところ差し支えない。)
とも (説明するとともに意見を聞く。)
ない (欠点がない。)
なる (合計すると1万円になる。)
ほか (そのほか…、特別の場合を除くほか…)
もの (正しいものと認める。)
ゆえ (一部の反対のゆえにはかどらない。)
わけ (賛成するわけにはいかない。)
・・・かもしれない (間違いかもしれない。)
・・・てあげる (図書を貸してあげる。)
・・・ていく (負担が増えていく。)
・・・ていただく (報告していただく。)
・・・ておく (通知しておく。)
・・・てください (問題点を話してください。)
・・・てくる (寒くなってくる。)
・・・てしまう (書いてしまう。)
・・・てみる (見てみる。)
・・・てよい (連絡してよい。)
・・・にすぎない (調査だけにすぎない。)
・・・について (これについて考慮する。)
2 送り仮名の付け方について
(1) 公用文における送り仮名の付け方は、原則として、「送り
仮名の付け方」(昭和 48 年内閣告示第2号)の本文の通則1
から通則6までの「本則」・「例外」、通則7及び「付表の語」(1
のなお書きを除く。)によるものとする。
ただし、複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を
適用する語を除く。)のうち、活用のない語であって読み間違
えるおそれのない語については、「送り仮名の付け方」の本
文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。な
お、これに該当する語は、次のとおりとする。
明渡し 預り金 言渡し 入替え 植付け 魚釣用具
受入れ 受皿 受持ち 受渡し 渦巻 打合せ 打合せ会
打切り 内払 移替え 埋立て 売上げ 売惜しみ 売出し
売場 売払い 売渡し 売行き 縁組 追越し 置場 贈物
帯留 折詰 買上げ 買入れ 買受け 買換え 買占め
買取り 買戻し 買物 書換え 格付 掛金 貸切り 貸金
貸越し 貸倒れ 貸出し 貸付け 借入れ 借受け 借換え
刈取り 缶切 期限付 切上げ 切替え 切下げ 切捨て
切土 切取り 切離し 靴下留 組合せ 組入れ 組替え
組立て くみ取便所 繰上げ 繰入れ 繰替え 繰越し
繰下げ 繰延べ 繰戻し 差押え 差止め 差引き 差戻し
砂糖漬 下請 締切り 条件付 仕分 据置き 据付け
捨場 座込み 栓抜 備置き 備付け 染物 田植 立会い
立入り 立替え 立札 月掛 付添い 月払 積卸し
積替え 積込み 積出し 積立て 積付け 釣合い 釣鐘
釣銭 釣針 手続 問合せ 届出 取上げ 取扱い 取卸し
取替え 取決め 取崩し 取消し 取壊し 取下げ 取締り
取調べ 取立て 取次ぎ 取付け 取戻し 投売り 抜取り
飲物 乗換え 乗組み 話合い 払込み 払下げ 払出し
払戻し 払渡し 払渡 済み 貼付け 引上げ 引揚げ
引受け 引起し 引換え 引込み 引下げ 引締め 引継ぎ
引取り 引渡し 日雇 歩留り 船着場 不払 賦払
振出し 前払 巻付け 巻取り 見合せ 見積り 見習
未払 申合せ 申合せ事項 申入れ 申込み 申立て 申出
持家 持込み 持分 元請 戻入れ 催物 盛土 焼付け
雇入れ 雇主 譲受け 譲渡し 呼出し 読替え 割当て
割増し 割戻し
(2) (1)にかかわらず、必要と認める場合は、「送り仮名の付け
方」の本文の通則2、通則4及び通則6((1)のただし書の適用
がある場合を除く。)の「許容」並びに「付表の語」の1のなお
書きを適用して差し支えない。
3 その他
(1) 1及び2は、固有名詞を対象とするものではない。
(2) 専門用語又は特殊用語を書き表す場合など、特別な漢
字使用等を必要とする場合には、1及び2によらなくてもよ
い。
(3) 専門用語等で読みにくいと思われるような場合は、必要
に応じて、振り仮名を用いる等、適切な配慮をするものとす
る。
4 法令における取扱い
法令における漢字使用等については、別途、内閣法制局か
らの通知による。
【句読点に関する注意】
句読点については日本語の表記の上でも基本的なルール
が定まっておらず、特に読点についてはルール化が難しい
状況にある。しかし、公用文については幾つかの特別なルー
ルもあり、最小限の基本原則を整理することは可能であるの
で、以下にその概要を示す。
【句点】
て「、」を打つ。
例)
諸般の事情を勘案し、最終決定を行う。
なお、「~(し)て」となる場合は、原則として「、」を打たない。
例
諸般の事情を勘案して最終決定を行う。
ただし、法令の条文中、「~に関し」や「~に対し」の後には、
慣用上「、」を打たないことが多い。
例)
意見書は、その日から3日以内に知事に対し提出しなけ
ればならない。
(3)接続詞の後には、「、」を打つ。
例)
しかし、それには賛成できない。
この場合、そのすぐ後に短い主語がくるときは、主語の後の
「、」を省略することができる。
例)
しかし、私はそれには賛成できない。
1 公用文における句点のルールは、次のとおりである。
(1)文末には、原則として「。」を打つ。
(2)文末が「~こと」又は「~とき」のときは、「。」を打つ。
(3)文末が体言(名詞)又は「~もの」のときは、「。」を打た
ない(一連の文章中ある文を文飾のため体言止めにし
ているような場合を除く。)。
(4)( )の中が文になっているときは、「。」を打つ。
本庁各部局(警察本部を除く。)は、予算要求書を本日
中に提出してください。
なお、( )の中で体言止めに続いて文がくるときは、例外的に
体言の後に「。」を打つ。
例)
建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。
以下「区分所有法」という。)第1条の規定に基づき~
【読点】
2 読点については、明確なルールはないが、以下は公用文
に特有のルールを中心にまとめたものである。なお、長文
化すれば普通は「、」を打たない位置でも「、」を打つことも
あり、読みやすい文にするための例外は許容される。
(1)単文(「主語+述語」関係が1か所しかない文をいう。)の
主語の後には、「、」を打つ。
例)
私は、貿易関係の会社に勤めている。
なお、主題を表す助詞の付いた文節など主語に準ずる場合
も同様である(以下同じ。)。
例
)行政改革については、至急その具体策を取りまとめなけ
ればならない。
(2)動詞の連用形の後に(用言が付かないとき)は、原則とし
(4)名詞を列挙する場合は、「、」を打つ。
例)
消耗品とは、鉛筆、消しゴム、用紙等の文房具をいう。
(5)条件節又は重文(「主語+述語」関係が2か所以上ある
文をいう。)の第1節の後には、「、」を打つ。
例)
雨が降れば、運動会は延期される。(条件節)
おじいさんは山へ柴刈りに行き、おばあさんは川へ洗濯
に行った。(重文)
(6)条件節の主語、重文の第1節若しくは第2節の主語又は
複文(主部(主語の部分)又は述部(述語の部分)の中に
「主語+述語」関係がある文をいう。)の主部若しくは述部
の主語の後には、原則として「、」を打たない。
例)
国が賛成すれば、県もやりやすくなる。(条件節)
私は賛成だが、彼は反対だ。(重文)
花が咲くときが、やってきた。(複文)
設計費にあっては当初予算に計上し、工事費にあっては
時期を見て補正予算で対応する。
(7)接続助詞の後には「、」を打つのが原則であるが、例外も
多い。
例)
住民の同意を得たので、事業は順調に進むであろう。
他部局との協議も必要であるが、まず担当部で十分検討
する必要がある。
【名詞の列挙】
続のみに用い、他の小括弧の接続には「若しくは」を用いる。
公用文では、名詞を列挙する場合が多いが、これにも一定
のルールがある。列挙には、特定の数の名詞を列挙する限
定列挙と「等」や「その他」を用いて類似の名詞を類推させる
非限定列挙がある。
3 非限定列挙では、「等」を用いるのが一般的である。名詞
を全て 「、」で結び、最後に「等」を付ける。よくある間違い
は、「及び」又は「又は」との併用である。「及び」又は「又は」
が小括弧の接続に用いられる場合を除き、絶対に「等」と併
用してはならない。
1 限定列挙には、「及び」を用いて集合の全体を示す集合列
挙と「又は」を用いて集合の要素を示す選択列挙がある。
試験には、鉛筆、万年筆及びボールペンを持参してくださ
い。
(鉛筆と万年筆とボールペンの全てを持参しなければなら
ない。)
例)
試験には、鉛筆、万年筆、ボールペン等の筆記用具を持参
してください。
(×試験には、鉛筆、万年筆及びボールペン等の筆記用具
を持参してください。)
次の遠足には、鉛筆又はシャープペンシル、メモ帳、虫眼
鏡等必要なものを持参してください。
試験には、鉛筆、万年筆又はボールペンを持参してくださ
い。
(鉛筆、万年筆、ボールペンのうちいずれかを持参すれば
いい。)
(「又は」は、「鉛筆」と「シャープペンシル」を接続しているだ
けであるので、「等」と併用してもかまわない。)
この場合、各名詞は「、」で結び、最後の名詞の前にのみ
「及び」又は「又は」を置く。「及び」及び「又は」の前後には、
「、」を打ってはならない。ただし、動詞の列挙の場合は、動詞
の連用形の後には「、」を打つルールがあるので、「、」を打つ
ことになる。
4 非限定列挙には、「その他」又は「その他の」を用いるもの
がある。これは、具体的な名詞を列挙し、「その他」又は「そ
の他の」の後の抽象的な名詞の内容を類推させるものであ
る。「その他」と「その他の」の用法は異なっているので、文
章中で用いる場合は注意しなければならない。
この工事の施工を第三者に委託し、請け負わせ、又は承継
させてはならない。
また、「~とき」を列挙する場合も、「とき」の後には「、」を打つ。
「~こと」の場合も、同様である。
(1)「その他」は、次のように「その他」の後の名詞をその前に
列挙した名詞と並列的に列挙する場合に用いる。
例)
俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決
定する妥当な事情を考慮して定められ、~
会議は、委員の3分の1以上から要求があったとき、又は知
事が必要と認めたときに、招集される。
(この場合、「人事院の決定する妥当な事情」の中に「生計費」
や「民間における賃金」は含まれていない。)
2 限定列挙を行う場合において、列挙される名詞の集合が
階層的になることがある。分かりやすく表現すると、名詞の
列挙に大括弧と小括弧が必要な場合がある。この場合は、
集合列挙のときは「及び」が小括弧の接続に、「並びに」が
大括弧の接続に用いられ、選択列挙のときは「又は」が大
括弧の接続に、「若しくは」が小括弧の接続に用いられる。
「及び」と「又は」の場合で原則が逆であるので、注意する必
要がある。
例)
(2)「その他の」は、次のように「その他の」の後の名詞がその
前に列挙した名詞を例示として受ける場合に用いる。
例)
地方公共団体は、この法律に基づいて定められた給与、勤
務時間その他の勤務条件が国及び他の地方公共団体の
職員との間に権衡を失しないよう~
(この場合、「勤務条件」の中に「給与」や「勤務時間」が含ま
れている。)
国及び地方公共団体の職員並びに公共企業体の役員
及び職員消印された証紙又は著しく汚染若しくはき損し
た証紙
これを分解してみると、次のようになる。
(3)「その他」及び「その他の」も、「及び」又は「又は」と併用
できない。
例)
{(国)及び(地方公共団体)の職員}並びに{公共企業体の
(役員)及び(職員)}{消印された証紙}又は{著しく(汚染)
若しくは(き損)した証紙}
例えば法律の条文中に「重油、軽油、揮発油その他政令で
定める石油類」と規定されていれば、政令では「重油、軽油、
揮発油」について改めて定める必要はないが、「重油、軽油、
揮発油その他の政令で定める石油類」と規定されていれば、
「重油、軽油、揮発油」は例示にすぎないので、政令では「重
油、軽油、揮発油」についても改めて定める必要がある。
「並びに」又は「若しくは」は、「及び」又は「又は」とともに用い
る場合でなければ用いることができないことに十分注意しな
ければならない。
なお、限定列挙の階層関係が3階以上になる場合がある。
その場合は、集合列挙のときは、「及び」を最も小さい小括弧
の接続のみに用い、他の大括弧の接続には「並びに」を用い
る。また、選択列挙のときは、「又は」を最も大きい大括弧の接
【異字同訓】
この一覧は、同音で意味の近い語が、漢字で書かれる場
合、その寛容上の使い分けの大体を示す。
異字同訓
あう
いたむ・いためる
合う
計算が合う。目が合う。服が体に合う。
痛む・痛める
足が痛む。腰を痛める。
好みに合う。割に合わない仕事。駅で落ち合う。
傷む・傷める
家が傷む。傷んだ果物。建物を傷める。
会う
客と会う時刻。人に会いに行く。
遭う
災難に遭う。にわか雨に遭う。
悼む
死を悼む。故人を悼む。
いる
入る
あがる ・あげる
上がる・上げる
揚がる・揚げる
挙げる
地位は上がる。物価が上がる。腕前を上げる。
要る
花火が揚がる。歓声が揚がる。たこを揚げる。
何も要らない。
荷物を揚げる。天ぷらを揚げる。
例を挙げる。全力を挙げる。国を挙げて。犯人を挙げる。
うける
受ける
あく・あける
明く・明ける
背に明いた服。目明き千人。夜が明ける。
空く・空ける
席が空く。空き箱。家を空ける。時間を空ける。
開く・開ける
念の入った話。気に入る。仲間入り。恐れ入る。
金が要る。保証人が要る。親の承諾が要る。
幕が開く。開いた口がふさがらない。
請ける
注文を受ける。命令を受ける。保護を受ける。
相談を受ける。
請け負う。下請け。
うたう
店を開ける。窓を開ける。
歌う
流行歌を歌う。鳥が歌う。歌う人。
謡う
謡曲「高砂」を謡う。民謡を謡う。
あし
足
足の裏。足げく通う。客足。
脚
机の脚(足)。えり脚(足)。船脚(足)。
うつ
打つ
あたい
価
値
価が高くて買えない。商品に価を付ける。
暖まる・暖める
称賛に値する。
賊を討つ。義士の討ち入り。相手を討ち取る。
撃つ
鉄砲で撃つ。いのししを猟銃で撃つ。
うつす・うつる
写す・写る
暖かい心。暖かな毛布。暖まった空気。
温かい。温かだ。
温かい料理。温かな家庭。心温まる話。
温まる。温める。
スープを温める。
映す・映る
書類を写す。写真を写す。風景を文章に写す。
写真の中央に写っている人。
幻燈を映す。スクリーンに映す。壁に影が映る。
着物がよく映る。
うむ・うまれる
生む・生まれる
あたる ・あてる
ボールが体に当たる。任に当たる。予報が当たる。
当たる・当てる
打ち消す。
討つ
そのものの持つ値。未知数xの値を求める。
あたたかい・あたたかだ・あたたまる ・あたためる
暖かい・暖かだ・
くぎを打つ。碁を打つ。電報を打つ。心を打つ話。
産む・産まれる
出発に当たって。胸に手を当てる。日光に当てる。
新記録を生む。傑作を生む。下町生まれ。
京都に生まれる。
卵を産み付ける。産みの苦しみ。産み月。
予定がきてもなかなか産まれない。
当て外れ。
充てる
建築費に充(当)てる。保安要員に充(当)てる
うれい・うれえ
憂い・憂え
愁い
あつい
暑い
今年の夏は暑い。暑い部屋。暑がり屋。
熱い
熱い湯。
厚い
後顧の憂い(え)。災害を招く憂い(え)がある。
春の憂い。愁いに沈む。
うれえる
厚い壁で隔てる。支持者の層が厚い。
憂える
行く末を憂える。病の再発を憂える。
手厚いもてなし。
愁える
ひとり愁える。政治家の腐敗を愁える。
える
あと
跡
後
足の跡。苦心の跡が見える。容疑者の跡を追う。
得る
勝利を得る。許可を得る。得物を振り回す。
跡目を継ぐ。
獲る
獲物をねらう。
犯す
過ちを犯す。法を犯す。
後の祭り。後を頼んで行く。後からいく。
後になり先になり。
おかす
あやまる
誤る
適用を誤る。誤りを見付ける。
謝る
謝って済ます。手落ちを謝る。
侵す
権利を侵(犯)す。故郷を侵(犯)す。
冒す
危険を冒す。激しい雨を冒して行く。
おくる
あらい
荒い
波が荒い。気が荒い。金遣いが荒い。
粗い
網の目が粗い。きめが粗い。仕事が粗い。
送る
荷物を送る。卒業生を送る。順に席を送る。送り状。
贈る
お祝いの品を贈る。感謝状を贈る。故人に位を贈る。
おくれる
あらわす・あらわれる
表す・表れる
言葉に表す。喜びを顔に表す。喜びの表れ。
現す・現れる
姿を現す。太陽が現れる。怪獣が現れる。
著す
書物を著す。
遅れる
完成が遅れる。列車が遅れる。会合に遅れる。
後れる
気後れする。人に後れをとる。後れ毛。
おこす・おこる
起こす・起こる
ある
有る
財源が有る。子が有る。有り合わせ。有り金。有様。
在る
日本はアジアの東に在る。在り方。
興す・興る
体を起こす。訴訟を起こす。朝早く起こす.
事件が起こる。持病が起こる。物事の起こり。
産業を興す。国が興る。
おさえる
あわせる
合わせる
併せる
手を合わせて拝む。時計を合わせる。調子を合わせる。
力を合わせる。
二つの会社を併せる。両社を併せて考える。
併せて健康を祈る。
押さえる
抑える
紙の端を押さえる。証拠を押さえる。要点を押さえる。
差し押さえる。
物価の上昇を抑える。要求を抑える。怒りを抑える。
おさまる ・おさめる
かわく
収まる・収める
納まる・納める
博物館に収まる、争いが収まる。効果を収める。
乾く
空気が乾く.干し物が乾く.乾いた土.
成功を収める。目録に収める。
渇く
のどが渇く.渇きを覚える.
品物が納まった。国庫に納まる。税を納める。
注文の品を納める。
治まる・治める
国内がよく治まる。痛みが治まる。領地を治める。
修まる・修める
身持ちが修まらない。学を修める。
きく
聞く
聴く
物音を聞いた.話し声を聞く.うわさを聞く.
聞き流しにする
音楽を聴く.国民の声を聴く.
おす
押す
ベルを押す。横車を押す。押し付けがましい。
推す
会長に推す。推して知るべしだ。
きく
効く
薬が効く.宣伝が効く.効き目がある.
利く
左手が利く.目が利く.機転が利く.
おど る
踊る
リズムに乗って踊る。踊らされて動く。盆踊り。踊り子。
躍る
馬が躍り上がる。小躍りして喜ぶ。胸が躍る。
きわまる ・きわめる
窮まる・窮める
極まる・極める
おもて
表
表と裏。表で遊ぶ。表向き。
面
面もふらずにまっしぐらに。矢面に立つ。
究める
進退窮まる.窮まりなき宇宙.心理を窮(究)める
不都合極まる言動.山頂を極める.栄華を極める.
見極める.極めて優秀な成績.
学を究(窮)める
くら
おりる
電車を降りる。高台から飛び降りる、月面に降り立つ。
降りる・降ろす
卸りる・卸す
倉敷料.倉庫証券.
蔵
蔵座敷.蔵払い.
霜が降りる。次の駅で降ろしてください。
主役から降ろされた。
下りる・下ろす
倉
こえる ・こす
幕が下りる、錠が下りる。許可が下りる。枝を下ろす。
越える・越す
貯金を下ろす。
超える・超す
小売に卸す、卸値。たな卸し。
かえす・かえる
山を越える.峠を越す.年を越す.引っ越す.
現代を超(越)える.人間の能力を超(越)える.
百万円を超(越)える.一千万人を超(越)す人口
こおる ・こおり
返す・返る
帰す・帰る
もとの持ち主に返す。借金を返す。恩返し。
凍る
貸した金が返る。正気に返る。返り咲き。
氷
湖水が凍る.土が凍る.
氷は張った.氷をかく.氷砂糖.
親のもとへ帰す。故郷へ帰る。帰らぬ人となる。帰り道。
さがす
かえりみる
顧みる
過去を顧みる。顧みて他を言う。
省みる
自らを省みる。省みて恥じるところがない。
捜す
うちの中を捜す.犯人を捜す.
探す
空き家を探(捜)す.あらを探(捜)す.
裂く
布を裂く.仲を裂く.引き裂く.
割く
時間を割く.紙面を割く.人手を割く.
さく
かえる ・かわる
変える・変わる
換える・換る
替える・替る
代える・代わる
形を変える。観点を変える。位置が変わる
声変わり。変わり種。
物を金に換える。名義を書き換える。車を乗り換える。
さげる
金に換る。
下げる
値段を下げる.軒に下げる.
振り替える。替え地。替え歌。二の替り。入れ替わる。
提げる
手に提げる.手提げかばん.
書面をもって挨拶に代える。父に代わって言う。
身代りになる。
さす
差す
かおる
腰に刀を差す.かさを差す.差しつ差されつ.
行司の差し違え.抜き差しならぬ.差し支え.差し出す.
薫る
風薫る。
指す
目的地を指して進む.名指しをする.指し示す.
香り
茶の香り
刺す
人を刺す.布を刺す.本塁で刺される.とげが刺さる.
香る
花が香る
挿す
花瓶に花を挿す.かんざしを挿す.挿絵.挿木.
かかる ・かける
さます
掛かる・掛ける
迷惑が掛かる。腰を掛ける。保険を掛ける。
懸かる・懸ける
月が中天に懸かる。優勝が懸かる。命を懸けて。
架かる・架ける
橋が架かる。電線を架ける。
係る
覚ます・覚める
冷ます・冷める
太平の眠りを覚ます.迷いを覚ます.
目が覚める.寝覚めが悪い.
湯冷まし.湯が冷める.料理が冷める.熱が冷める.
本件に係る訴訟。係り結び。係員。
しずまる ・しずめる
かげ
静まる・静める
心が静まる,あらしが静まる.鳴りを静める.気を静める.
鎮まる・鎮める
内乱が鎮まる.反乱を鎮める.痛みを鎮める.
陰
山の陰.陰の声.陰口を利く
影
障子に影が映る.影を隠す.影も形もない.影が薄い.
形
自由型.跡形もなく.
絞る
手ぬぐいを絞る.絞り染め.
型
型にはまる.1970年型.血液型.鋳型.
搾る
乳を搾る.搾り取る.
かた
沈める
船を沈める.
しぼる
かたい
しまる ・しめる
堅い
堅い材木.堅炭.手堅い商売.
固い
団結が固い.固練り.頭が固い.固く信じる.
硬い
硬い石.硬い表現.
かわ
皮
皮をはぐ.とらの皮.木の皮.面の皮.化けの皮
革
革のくつ.なめし革.
締まる・締める
ひもが締まる.引き締まった顔.帯を締める.ネジを締める.
心を引き締める.申し込みの締め切り.
絞まる・絞める
首が絞まる.首を絞める.羽交い絞め.
閉まる・閉める
戸が閉まる.ふたを閉める.店を閉める.
すすめる
つつしむ
進める
前へ進める.時計を進める.交渉を進める.
慎む
身を慎む.酒を慎む.言葉を慎む.
勧める
入会を勧める.転地を勧める.
謹む
謹んで聞く.謹んで祝意を表する.
薦める
候補者として薦める.
つとめる
努める
する
刷る
名刺を刷る.刷り物.
擦る
転んでひざを擦りむく.擦り傷.洋服が擦り切れる.
勤める
努める
研究に努める.解決に努める.努めて早起きする.
会社に勤める.永年勤め上げた人.本堂でお勤めをする人
務め人.
議長を務める.主役を務める.主婦の務めを果たす.
そう
沿う
川沿いの家.路線に沿って歩く.
添う
影の形に添うように.連れ添う.付き添い.
とく・とける
解く・解ける
溶く・溶ける
そなえる ・そなわる
備える・備わる
供える
必要品はすべて備わっている.人徳が備わる.
絵の具を溶く.砂糖が水に溶ける.地域社会に溶け込む.
ととのう・ととのえる
お神酒を供える.お供え物.
整う・整える
調う・調える
耐える
ひもが解ける.雪解け.疑いが解ける.
台風に備える.調度品を備える.老後の備え.
たえる
堪える
結び目を解く.包囲を解く.問題を解く.会長の任を解かれ
整った文章.隊列を整える.身辺を整える.調子を整える.
嫁入り道具が調う.晴れ着を調える.味を調える.
費用を調える.
任に堪える.鑑賞に堪えない.遺憾に堪えない.
重圧に耐(堪)える.風雪に耐(堪)える.
とぶ
困苦欠乏に耐(堪)える.
飛ぶ
跳ぶ
たずねる
尋ねる
道を尋ねる.由来を尋ねる.尋ね人.
訪ねる
知人を訪ねる.史跡を訪ねる.明日はお訪ねします.
止まる・止める
敵と戦う.
闘う
病気と闘う.
海に飛び込む.家を飛び出す.飛び石.
みぞを跳ぶ.三段跳び.飛び跳ねる.
とまる
たたかう
戦う
鳥が空を飛ぶ.アフリカに飛ぶ.うわさが飛ぶ.
留まる・留める
泊まる・泊める
交通が止まる.水道が止まる.笑いが止まらない.
息を止める.通行止め.
小鳥が木の枝に留(止)まる.ボタンを留める.
留め置く.書留.
船が港に泊まる.宿直室に泊まる.友達を家に泊める.
たつ
断つ
退路を断つ.快刀乱麻を断つ.茶断ち.
絶つ
命を絶つ.縁を絶つ.消息を絶つ.後を絶たない.
裁つ
生地を裁つ.紙を裁つ.裁ちさばき.
とる
取る
連絡を取る.年を取る.
採る
血を採る.高校の卒業生を採る.会議で決を採る.
執る
筆を執る.事務を執る.式を執り行うなう.
演壇に立つ.席を立つ.使者に立つ.危機に立つ.
捕る
ねずみを捕る.生け捕る.捕り物.
見通しが立つ.うわさが立つ.立ち会う.柱を立てる.
撮る
写真を撮る.映画を撮る.
たつ・たてる
立つ・立てる
手に取る.着物の汚れを取る.資格を取る.メモを取る.
計画を立てる.手柄を立てる.顔を立てる.立て直す.
建つ・建てる
家が建つ.ビルを建てる.銅像を建てる.建て物.
なおす・なおる
直す・直る
たっとい・とうとい
尊い
尊い神.尊い犠牲を払う.
貴い
貴い資料.貴い体験.
治す・治る
誤りを直す,機械を直す.服装を直す.故障を直す.
ゆがみが直る.
風邪を治(直)す.けがが治(直)る.治(直)らない病気.
なか
たま
玉
玉にきず.目の玉.玉を磨く.
球
電気の球.球を投げる.
弾
ピストルの弾
機械を使って仕事をする.重油を使う.
遣う
気遣う.心遣い.小遣い銭.仮名遣い.
着く・着ける
就く・就ける
仲がいい.仲を取り持つ.仲働き.
長い
長い髪の毛.長い道.気が長い.枝が長く伸びる.
永い
ついに永い眠りに就く.永の別れ.末永く契る.
習う
先生にピアノを習う.見習う.
倣う
前例に倣う.
ならう
つく・つける
付く・付ける
箱の中.両者の中に入る.
仲
ながい
つかう
使う
中
墨が顔に付く.味方に付く.利息が付く.名を付ける.
気をつける.条件を付ける.付け加える.
席に着く.手紙が着く.東京に着く.船を岸に着ける.
仕事に手を着ける.衣服を身に着ける.
床に就く.緒に就く.職に就く.役に就ける.
のせる
乗せる・乗る
載せる・載る
母を飛行機に乗せて帰す.電波に乗せる.計略に乗せる.
電車に乗って行く.馬に乗る.風に乗って飛ぶ.
自動車の貨物を載せる.たなに本を載せる.
雑誌に広告を載せる.机に載っている本.新聞に載った事件.
つぐ
次ぐ
事件が相次ぐ.富士山に次ぐ山.取り次ぐ.次の間.
継ぐ
布を継ぐ.後を継ぐ.引き継ぐ.継ぎ目.継ぎを当てる.
接ぐ
木を接ぐ.骨を接ぐ.接ぎ木.
のばす・のびる
伸ばす・伸びる
延ばす・延びる
つくる
作る
造る
米を作る.規則を作る.小説を作る.まぐろを刺身に作る.
生け作り.
船を造る.庭園を造る.酒を造る.
手足を伸ばす.勢力を伸ばす.草が伸びる.身長が伸びる.
学力が伸びる.伸び伸びと育つ.
出発を延ばす.開会を延ばす.地下鉄が郊外まで延びる.
寿命が延びる.支払いが延び延びになる
まち
のぼる
上る
水銀柱が上る.損害が一億円に上る.川を上る.上り列車.
町
町と村.町ぐるみの歓迎.町役場.下町.
登る
山に登る.木に登る.演壇に登る.
街
街を吹く風.学生の街.街の明かり.
昇る
日が昇(上)る.天に昇(上)る.
まる い
はえる
映え・映える
栄え・栄える
夕映え.紅葉が夕日に映える.
丸い
背中が丸くなる.丸く治める.丸ごと.丸太.日の丸.
円い
円(丸)い窓.円(丸)く輪になる.
回り
身の回り.胴回り.
周り
池の周り.周りの人.
栄えある勝利.見事な出来栄え.見栄えがする.
優勝に栄える.受賞に栄える作品
まわり
はかる
図る
合理化を図る.解決を図る.便宜を図る.
計る
時間を計る.計り知れない恩恵.まんまと計られる.
測る
測定器で測る.
見る
遠くの景色を見る.エンジンの調子を見る.面倒を見る.
量る
目方を量る.升で量る.容積を量る.
診る
患者を診る.脈を診る.
謀る
暗殺を謀る.悪事を謀る.
諮る
審議会に諮る.
みる
もと
下
法の下に平等.一撃の下に倒した.
元
火の元.出版元.元が掛かる.
初めてこう思った.初めての体験.
本
本を正す.本と末.
会が始まる.始めと終わり.御用始め.仕事を始める.
基
資料を基にする.基づく.
はじまる ・はじめ・はじめて・はじめる
初め・初めて
始まる・始め・始める
はな
や
花
花も実もない.花の都.花形.
屋
屋根.酒屋.屋敷.
華
華やか.華々しい.
家
二階家.家主.家賃.
はなす・はなれる
やぶる ・やぶれる
離す・離れる
放す・放れる
間を離す.駅から遠く離れた町.離れ島.職を離れる.
破る・破れる
離れ離れになる.
敗れる
約束を破る.障子が破れる.平和が破れる.
競技に敗れる.勝負に敗れる.人生に敗れる.
鳥を放す.見放す.放し飼い.矢が弓を放れる.放れ馬.
やわらかい・やわらかだ
はやい
早い
時期が早い.気が早い.早く起きる.早変わり.矢継ぎ早.
速い
流れが速い.投球の球が速い.テンポが速い.車の速さ.
柔らかい・柔らかだ
柔らかい毛布.身のこなしが柔らかだ.物柔らかな態度.
軟らかい・軟らかだ
表情が軟(柔)らかい.軟(柔)らかい話.軟(柔)らかな土.
ゆく
ひ
火
火が燃える.火に掛ける.火を見るより明らか.
灯
灯がともる.遠くに町の灯が見える.
行く
買い物に行く.道行く人.行く末.行方.
逝く
天寿を全うして逝く.逝く春を惜しむ.
良い
品質が良い.成績が良い.手際が良い.
善い
善い行い.世のために善いことをする.
読む
本を読む.字を読む.人の心を読む.秒読み.
詠む
和歌を詠む.一首詠む.
よい
ひく
引く
網を引く.線を引く.例を引く.車を引く.
弾く
ピアノを弾く.ショパンの曲を弾く.
よむ
ふえる ・ふやす
殖える・殖やす
財産が殖える.財産を殖やす.
増える・増やす
人数が増える.水かさが増える.人数を増やす.
わかれる
分かれる
ふく
吹く
風が吹く.笛を吹く.
噴く
火を噴き出す.火山が煙を噴く.
別れる
道が二つに分かれる.意見が分かれる.勝敗の分かれ目.
幼い時に両親と別れる.友と駅頭で別れる.家族と別れて住む.
わざ
ふける
更ける
夜が更ける.秋が更ける.
老ける
老けて見える.老け込む.
業
至難の業.離れ業.業師.
技
柔道の技.技を磨く.
わずらう・わずらわす
煩う・煩わす
ふた
二
二重.二目と見られない.二つ折り.
双
双子.双葉.
舟
舟をこぐ.小舟.ささ舟.
船
船の甲板.船で帰国する.船旅.親船.
ふね
ふる う
振るう
士気が振るう.事業が振るわない.刀を振るう.
震う
声を震わせる.身震い.武者震い.
奮う
勇気を奮って立ち向かう.奮って参加する.奮い立つ.
まざ る ・まじる ・まぜる
交ざる・交じる・交ぜる 麻が交ざっている.漢字仮名交じり文.交ぜ織り.
混ざる・混じる
混ぜる
酒に水が混ざる.西洋人の血が混じる.異物が混じる.
雑音が混じる.セメントに砂を混ぜる.絵の具を混ぜる.
患う
思い煩う.人手を煩わす.心を煩わす.
胸を患う.三年ほど患う.
非特異的銀粒子の吸着の有無を確認する。
非特異的銀粒子は写真に示す灰~黒色の粒子とした。
検討 例
鍍銀染色(渡辺法)の検討 銀液~還元液を中心に
非特異的銀粒子
神奈川県臨床衛生検査技師会雑誌
第 40 巻第 1 号(通巻 152 号) 2005 年 8 月 19 日発行
発行元:神奈川県臨床衛生検査技師会
鍍銀染色は好銀線維染色として肝臓、リンパ節あるいは
間質由来の腫瘍の特殊染色として用いられる。鍍銀染色
では、通常アンモニア銀液が用いられる。アンモニア銀
液は硝酸銀を水酸化ナトリウムと反応させ酸化銀を生成
させた後、アンモニアを加えジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH3)2]+
を形成させる。これが組織のアルデヒドと反応し銀が析出・
沈殿する。
細網線維(RETICLIN)との反応
【結果】
1. 固定液の種類による比較
HISTOLOGICAL AND HISTOCHEMICAL METHODS
ジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH3)2]+
【方法】
1. 固定液の種類による比較
・10%・20%ホルマリン液
・10%・20%中性緩衝ホルマリン液
2. アンモニア銀液→還元液での工程を変えてみる
・銀液→蒸留水→アルコール→還元液
・銀液→アルコール→還元液
・銀液→蒸留水→還元液
・銀液→還元液
3. 還元液の組成を変えてみる
・ホルマリン+鉄ミョウバン
・ホルマリン
【判定】
染色の強度あるいはコントラストを比較する。
10%・20%ホルマリン液および 10%・20%中性緩衝ホ
ルマリン液固定組織において、細網線維並びに膠原線維
の染色性に変化は認められない。
2. アンモニア銀液→還元液での工程を変えてみる
・銀液→蒸留水→アルコール→還元液
細網線維並びに膠原線維の染色性は良好である。細胞
質内の非特異的銀粒子の沈着は認められない。また、
細胞質には透過性がみられる。
・銀液→アルコール→還元液
細網線維並びに膠原線維の染色性は良好である。細
胞質内の非特異的銀粒子の沈着は認められない。また、
細胞質内は赤褐色を呈する。
【考察】
固定液による影響
ホルマリン固定液の種類による鍍銀染色の染色性の違
いは認められない、中性緩衝ホルマリンに含まれるリン
酸塩などの緩衝剤の成分は組織に対する銀吸着に対して
影響はない。
染色原理に関すること
・銀液→蒸留水→還元液
細網線維並びに膠原線維の染色性は良好である。細
胞質内の非特異的銀粒子の沈着が認められる。細胞質
内には透過性がみられる。
1) アンモニア銀液後の蒸留水水洗に関して
アンモニア銀液後の蒸留水水洗は銀粒子や銀イオンを
拡散させる作用あると考えられる。
2) アルコール処理
アンモニア銀液後に蒸留水で軽く洗浄した後に、ある
いは、アンモニア銀液処理後に直接アルコールを通すこ
との作用はアルコールの分子構造に起因する。アルコー
ルは親水・疎水基を有し組織に対して層を形成すること
により非特異的な銀粒子の付着をお防止する作用がある
ものと考えられる。
【10年以上経過してからの考え方】
アンモニア銀液後のアルコール分別に関する詳細な説明
・銀液→還元液
細網線維並びに膠原線維の染色性は良好である。細
胞質内の非特異的銀粒子は多数認められる。細胞質内
は透過性がある。周囲のガラスにも銀粒子の沈着が認
められる。
鍍銀染色では、アンモニア銀液後にアルコールによる
分別を行う。また、施設によってはアンモニア銀液→蒸
留水→アルコールといった工程の施設もある。このよう
な作業は、主に非特異的銀粒子の吸着を除去するために
行うのであるが、その作用機序に関して説明する。
まず、本題に入る前に基礎的な知識として、簡単にア
ルコールに関する説明を示す。
注意) 今回の発表ではアルコールと表記した場合にはエタノールを示す。
【非共有電子対の構造】
3. 還元液の組成を変えてみる
ホルマリン+鉄ミョウバン還元液、ホルマリン還元
液共に染色性に大きな差異は認められない。
子は4つの軌道に入る訳だが電子で満たされない軌道が
2つ存在する。
(通常一つの軌道には2つの電子が入るこ
とができる。)
(Pauri の排他原理: Pauri exclusion principle, Hund の法則:
Hund’s rule より)
※Pauri の排他原理: Pauri exclusion principle
一つの軌道には最大二つの電子しか収容できないし、それら
は逆向きスピンを持たなければならない。
【極性をもつ分子の構造】
【極性をもつ要因 –双極子モーメント-】
※Hund の法則: Hund’s rule
二つ以上のエネルギーの等しい空軌道がある場合は、スピン
の向きが同じ一つずつの電子がそれら全てを満たすまで収容
される。
この電子で満たされない軌道が他の原子の同様な軌道
から電子を共有することで生じる原子間の結合を共有結
合といい、電子で満たされていない軌道は他の原子と電
子を共有する結合のために使われるのである。一方、電
子で満たされた非共有電子対は水素結合に対して重要な
働きを示す。水分子と水酸基の非共有電子対が水素結合
をすることで水分子との相互作用(水素結合)が発生す
る。水素結合は強い分子間力であり非共有電子対をもつ
物質と水素結合をするように働く。このような水素結合
による分子間相互作用こそが、アルコールが水に溶解性
する、あるいは水に対して親和性を示す要因なのである。
ここで示した非共有電子対は水素結合のような分子間相
互作用をもたらすことばかりではなく、錯体といわれる
共有結合やイオン結合とは異なる結合(配位結合:Alfred
Werner1866-1919)の形成にも重要な働きを示す。錯体
とは中心金属と配位子からなり複合体のことをいい配位
する配位子の非共有電子対は錯体中心に存在する金属原
子と配位結合をするように働く。
【アルコール分子の水素結合( -OH)】
【水やアンモニアの水素結合】
アルコールとはアルカン(メタンやエタンなど)と水酸
基(-OH)によって構成される物質である。アルカンとは炭
素と水素のみによって構成され、それらが単結合で構成
されている物質をいい無極性である。よってその性質は
極性溶媒である水(H2O)とは溶け合わない、つまり親水性
に乏しい。この水との親和性に乏しい性質を疎水性とア
ルカンにおける特性のひとつである。しかしながら、ア
ルコールは水に対して無限に溶解する。これはアルコー
ルが水酸基といわれる親水性に富む官能基を持つことに
起因する。アルコールは、これら親水・疎水基で構成さ
れている分子でありアルコールが水にも油にも溶けるの
はこの分子構造による。では、なぜ水酸基(-OH)があると
水に溶ける(親水性)になるのでしょうか。
これは、水(H2O)を構成する酸素(O)やアルコールに親
水性をもたらす水酸基(-OH)を構成する酸素(O)が非共有
電子対(lone pair)と呼ばれる2個の電子で満たされた空
(から)の軌道をもつことによる。酸素は通常4つの軌
道を持ち最外殻電子を6個持っている。これら6個の電
このようなことを理解したうえで、鍍銀染色の分別操
作の理論に当てはめてみる。
アンモニア銀液(水溶液)から切片をアルコール溶液
に移すと、アルコールの分子が切片上の組織に対して疎
水基を接点として配列する。これにより結合が不十分な
銀粒子が溶媒中に押し出される。また、エタノールは銀
イオンなどの配位子として存在し溶媒に銀を拡散させる
働きがあるものと考えられる。これによって、いわゆる
分別効果が発生するのである。
また、アンモニア銀液との反応後に生成した陽性部位
となるべき銀粒子にはアルコールの水酸基が配位し外向
きに疎水層が形成されることにより銀粒子の過剰な剥離
を防止するように働くものと考えられる。
アルコールによる洗浄の働きは、以上より非特異的銀
粒子の付着除去並びに過剰な銀粒子の除去にあると考え
られる。
プロセス
【事前調査】
エオシンの構造を知る必要がある。
EOSIN C.I. Acid red 87
Classical name: eosin
Tetrabromofluorescin
An acid dye; absorption maximum 515 – 518
Solubility at 26℃ : in water 44.20 %、 in alcohol 2.18 %
右図 黄色で着色した部分は疎水性を示す部分
話は前後するが、アンモニア銀液反応後に切片を蒸留
水で軽く水洗する工程を行う施設も多い。この工程おけ
る蒸留水水洗の作用は、銀反応で過剰に付着した銀粒子
を洗浄・除去する役目を負う。水溶液中では金属銀に対
して水(配位子としての性質をもつ。
)が配位子となり存
在する。組織と結合がみられない、あるいは緩く結合し
ている銀イオンや粒子を取り囲むように水分子が配位し
て溶媒に拡散させる働きがあるものと考えられる。しか
しながら、蒸留水による洗浄・除去のみでは分別として
の効果は少なく溶媒中に遊離した銀粒子の再付着なども
考えられ除去が不完全(分別不良)となやすい。実際に、
アルコールを使用しない分別洗浄を行うと非特異的銀粒
子の付着が多くなる。よって、蒸留水のみの洗浄では非
特異的銀粒子の吸着除去も不完全となりやすい。
失敗から学ぶこと
検討や研究を行っていると、常に最良の結果が得られるわ
けではなく、多くは失敗に終わることが多い。しかしながら、失
敗から得られることも数多くあります。また、失敗した事から学
んだり、多くの知識を得たり、といったように失敗は決してマイ
ナスの要素ばかりではないのです。
失敗例:エオシン染色液の検討
発案:エオシン液は時間の経過とともに染色性の低下(いわ
ゆる劣化)が認められる。この原因を解明すべく検討を試み
た。
色調の変化との関連に着目する。調整直後のエオシン溶液
は混濁しているが時間の経過とともに透明化してくる。濁度と
染色性は関係があるのではないかと考え実験を行った。
しかしながら、一定期間使用したエオシンは、濁度が減少
するものの染色性に大きな変化がみられないことが多いこと
がわかり、濁度と染色性には相関がないとう結論に至った。
Br の親水性や=O, -COO などの非共有電子対による水素結
合によってエオシンは親水性を示している。
このように、有機色素では油の性質と水に親和性を示す性
質の両方を有する。分子全体として、親水性あるいは疎水性
のバランスが、どちらへどのくらいかたよっているかを、分子構
造から数値で決めることもできる。(グリフィン法によるエオシン
の HLB 値: 11.3 計算値 -水に半透明に溶解 o/w 型エマルジ
ョン- ) この数値を HLB(hydrophile-lipophile balance)という。
エオシンという色素は、水に溶ける性質があるものの組織
の吸着(着色)に関しては油性を有するものと考えられる。エ
オシンは、組織中の多くの部分に吸着し明確な特異的染色
性は示さない。よって、この色素の吸着原理はエオシン分子
のもつ化学官能基との反応というよりは、むしろ疎水性相互
作用(Van der Waals force)などがより強く関与しているものと
考えられる。
フリーソフトを用いて立体構造を観察する。
化学構造・分子模型ソフト
3D 分子モデル編集ソフト「Avogadro」
3D 分子モデル作成ソフト 「Facio」
などを用いて作成する。
Xanthen
エオシンの吸光度 Peak MAX は 520nm 前後で文献[H. J.
Conn’s Biological Stains] と同様である。しかしながら、この
吸光度曲線は酢酸添加によっての結果と類似していることが
わかる。文献の吸光度グラフは酢酸添加による状態のものと
示唆される。エオシンの水溶液と比較してみると、酢酸を添加
することによって吸光の強度が下がるという結果を得た。
また、吸光度に大きな差がみられるのは、エオシン水に酢
酸を添加することで溶液が混濁しエオシン分子が会合したコ
ロイドを形成するために光の透過性が増したものと考えられ
る。
エオシンは酢酸を添加することによって混濁する。これによ
って吸光度に変化が現れたのではないかと考えて、濁度の
調査を行うこととした。
化学構造式と立体構造を比較してみると分子を構成する原
子の位置関係が異なることが良く分かる。実際に EOSIN の
Xanthen の部分は平面構造をとるのに対して下部のベンゼン
環については Xanthen 部分とが垂直方向に配置しないと空
間的な歪が生まれてしまうことが立体化することでよく分かる。
上図中の ABC と EDF のなす角度が直交に近くなる。
エオシン色素の可溶性に関与する官能基は-COONa 部で
あると言われている。この官能基がイオン化し水溶液中では
-COO-(カルボニルイオン)となり可溶化する。また、文献に
よっては、この-COO-が生体内の蛋白質のリジン(Lysin)末端
にあるアミノ基(-NH+)と結合することで色素が結合されるとも
言われているが詳細は不明である。
また、Xanthen 部分にある=O も EOSIN 色素の可溶化や結
合に関与するものと考えられる。EOSIN 色素は-COOH や=O
の非共有電子対の作用によって水に可溶となる構造を呈し
ている。
エオシン溶液の吸光度測定
EOSIN
abs
EOSIN(pH6.8)
EOSIN ACETIC ACID(pH3)
2.000
1.000
0.000
490
【方法】
溶液に強い光源による光線をあてることのよって濁度が解
る。
光散乱法:コロイドが濁って見えるのは、コロイド粒子が光を
散乱するからである。肉眼で透明に見えても、横から強い光
をあててみると光の通路が濁って見える。この現象をチンダ
ル現象という。コロイドではない普通の分子やイオン溶液では
チンダル現象はみられない。だから、コロイドと普通の溶液を
見分けるにはチンダル現象が現れるかどうかをみれば良い。
光源装置: 実体顕微鏡で使用されていた光源装置を用い
た。
TEMP 25.0℃
3.000
390
EOSIN の濁度を検証する - ミセルの形成 -
1) 自家作製直後の EOSIN 液に光源装置を用いて強い日
光をあてってみる。
吸光度を測定してみる
290
エオシン溶液の濁度に関して調査を行う。
濁度の簡易的な測定方法としてチンダル散乱を観察する
方法があるので実験をおこなってみた。
590
690
790
nm
H。 J。 Conn’s Biological Stains R。 D。 LILLIE、 M。D。
890
990
拡大すると
移動率( flow rate, rate of migration)
平面クロマトグラフィーにおける物質の移動速度を定量的
に表す値で Rf 値と略称され次式のように定義される。
Rf = (原点から溶質スポット中心までの距離)/(原点から展
開液最前線までの距離)
エオシン+酢酸水溶液
エオシン水溶液
エオシン+酢酸水溶液およびエオシン水溶液では、共に
光の光路が明瞭である。これは、EOSIN 溶液がコロイドあるい
はミセル化を光が散乱するチンダル現象に起因する。
対照として水に光をあててみると
上写真のクロマトグラフは正式なクロマトグラフではないが、
劣化エオシンと新調エオシンの吸着差をみたものである。こ
れは単位時間当たりの移動距離を反映し、新旧の溶液では
移動速度が異なっていることがわかる。同一物質である場合
に移動距離が異なるということは物質の大きさに差が生じて
いることになる。この差はエオシン分子のコロイド状態を反映
しているものと考えることができる。
エオシンは調整後、数日が経過すると溶液が目に見えて
透明化(濁度の減少)してくる。そうなったからといって、染色
性には何ら影響することはない。つまり、濁度と染色性の間に
は関連性がないものと判断した。
光路は認められない。
エオシン水溶液
酢酸加エオシン
アルコールエオシン
エオシンは使用期間が長くなると液表面に膜が張る現象や
染色容器内にオレンジ色の結晶が付着するようになる。これ
は、エオシン分子の親水・疎水バランスが崩れることによって
発生し、多くの場合膜や結晶物質は水 に溶けにくくアルコ
ールに可溶のものが多い。エオシンは、色素の機能として水
に可溶であればあるほど都合がよい。よって、できるだけ水に
溶けやすいように官能基や原子が分子内に存在するように合
成されている。この水に可溶化するような官能基の機能が低
下することで疎水性の要素が強くなることで結晶化や膜化が
起きるものと考えられる。
濁度を増す理由を考察する。
エオシンが酢酸を添加することによって濁度が増す。
これはエオシンの大きな粒ができあがっていることに他
ならない。つまり、エオシン分子が会合しコロイドを形
成していることが考えられる。エオシンの構造は基本骨
格をなす Xanthen(疎水性)に親水基を与えた物質であり溶
液中でミセルを形成しやすい構造を呈してしる。エオシンの
水溶液よりもアルコール溶液のほうが濁度が強いのはアルコ
ールが弱酸の性質をもつことによって分子に会合が進んだも
のと考えられる。
新調したエオシン溶液と劣化したエオシン溶液をクロマトグ
ラフィーで測定する。
まとめ
ペーパークロマトグラフィー [paper chromatography]
ろ紙クロマトグラフィーとも呼
ばれ、PC と略される。ろ紙上
で分離するクロマトグラフィー
である。主要なものはろ紙の
中に含まれている水を固定相
とし、各種の有機溶媒を毛細
管現象による浸透によって展
開するものである。固定相と移
動相の間に試料各成分が分
配し、それぞれの分配係数の
違いによって分離される。定
性は Rf 値(移動率)が用いられ
る。
今回は、検討や研究について説明をした。検討や研究をや
ってみると今まで知らなかったことがあまりに多いことに改め
て気付かされる。また、やれば何かしらの成果や達成感を得
られることは確かである。また、発表などでは今までに経験し
たことのない緊張感を得ることができる。臨床検査や病理技
術を行っている者であれば、一度はやってみるべきものであ
る。失敗も成功も含めて、己を磨く良い機会になることは間違
いない。
研究にともなう面白い話
ギリシア・ローマ神話:
エオシン(EOSIN: 女神が染める真紅の夜明け)
毎日暗い夜の後には必ず
明るい朝がやってきます。こ
れは『暁すなわち夜明けの
女神 Eos (ローマ神話では
Aurola: オーロラ) 』のおか
げなのです。彼女は『月の女
神セレーネー』の姉ですがセ
レーネーとは違い薔薇色の
指をもちサフラン色の衣をま
とう、それは それは大変美
しい『夜明けの女神』でした。
彼女は、毎朝必ず2頭の馬
に曳かれた馬車に乗って天
空をかけ上がり、門を開くと
金色と赤色の美しい光が夜
空に差し込み夜が明けるのです。また Eos は、その美しさゆ
えに常に男性の欲望を目ざますように生まれついていました。
そして、あるとき、神軍アレースと恋に陥り愛を受け入れて一
夜を共に過ごしてしまいました。これを知った『愛の女神アプ
ロディーテ』の怒りをかい、そのねたみによって Eos がいつも
人間の男との恋に身をやつすようにしてしまいました。
この呪いをかけられた Eos は、地上の美しい男をみると、さ
らって空の東にある自分の館に連れて行き寝所に入れるの
でした。その最初の一人は、ティートーノスというトロイア王の
一族の人間の若者で、彼は神ともまごう淡麗な風貌をしてい
ました。Eos はすっかり魅せられて黄金の車で彼を誘惑しまし
た。彼を深く愛した Eos は『ゼウスの大神』のもとへ行き恋人が
永遠に死なないように乞い願いました。この願いはゼウスに
聞き入れられましたが、この時にうっかりして若さも保てるよう
に願わなかったためティートーノスは次第に年をとって白髪と
なり、美しい顔もシワだらけになってきました。さすがの Eos も、
とうとう彼と寝所をともにしなくなり、小さな一室に隠して閉じこ
めてしまいました。ティートーノスはその中で小さな声を出す
だけでしたが、最後には蝉(セミ)になってしまったということで
す。
そして、もう一人はオリオンです。彼は狩人でしたが巨人で
たくましかったため、Eos にデーロス島へ連れて行かれました。
しかし、そこでおごり高ぶった彼は『お産の女神アルテミス』に
挑んだために、女神の送ったサソリに刺されて死んでしまいま
した。蠍は功によって空に上げられ蠍座となりました。この蠍
(座)はいまでも天空でオリオン(座)を追いかけています。
このように浮気な Eos ですが、夜明けになるとまだ真っ暗な
うちに愛する男性との寝所を離れ、その薔薇色の指で翼をつ
け、サフラン色の衣装をまとい Lampos(光)と Phaethon(輝き)と
いう名の2頭の馬車に曳かれた戦車に乗って、瓶から夜露を
まきちらしながら『太陽神ヘリオス』の先駆けとして天空に駆け
上がっていきます。彼女が天空の門戸を開くと太陽の光がさ
っと宇宙に差し込み、夜明けの空は真っ赤に染まります。
のちになって、テトラブロムフルオレセインのナトリウム塩が
きれいな深紅色になることを知った人々が、かの『暁の女神
Eos』が夜明けの空を真紅に染めて現れる姿を思い出して、こ
れを『EOSIN』と名付けたのです。
「楽しい医学用語ものがたり」星和夫 著より
一部再編
【参照文献】
Edward J Huth: How to Write and Publish papers in the Medical Science,
Igaku-syoin Ltd., Tokyo, 1994.
R. D. LILLIE: H. J. CONN’S Biological Stains NINTH EDITION, Sigma
Chemical Company, USA, 1977.
Theory and practice of Histological Techniques Fifth /Sixth Edition:
Bancroft/Gamble, Churchill Livingstone. USA.
Histological and Histochemical methods theory and practice 3th/4th Edition:
J.A. Kiernan, UK
Histotechnology A Self-Instructional Text 3rd edition: Curson Hladik,
American Society for Clinical Pathology Press, Hong Kong.
市原清志:バイオサイエンスの統計学 正しく活用するための実践理論, 株式
会社南江堂, 2010, 東京.
粕谷英一:生物学を学ぶひとのための 統計のはなし ~きみにも出せる有意
差~, 株式会社文一総合出版, 2010, 東京.
星和夫: 楽しい医学用語ものがたり, 医歯薬出版株式会社, 1998 ,東京.
星和夫: 続 楽しい医学用語ものがたり, 医歯薬出版株式会社, 1998 ,東京.
伊坂裕次, 木村龍司編: 表現ハンドブック, 有限会社笠間書院, 1997,東京.
第一法規編集部[編]:常用漢字表における公文書作成の手引[平成 22 年度改
正対応版], 第一法規株式会社, 2011, 東京.
化学同人編集部 編: 新版 続 実験を安全に行うために, 化学同人, 1996,
京都.
北原文雄: 化学の話シリーズ8コロイドの話, 培風館, 2002, 東京
社団法人日本化学会:コロイド科学Ⅰ-基礎および分散・吸着-, 株式会社東
京化学同人, 1995, 東京.
中 村 桂 子 ・ 松 原 謙 一 監 修 : MOLECULAR BIOLOGY OF THE CELL
SECOND EDITION 細胞の分子生物学 第2版, 株式会社教育社編集企画
センター, 1992, 東京.
生検査材料の取扱いと倫理:臨床検査 2003 Vol.47 no.12:医学書院株式会
社, 2003, 東京.
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