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9.適正施工の確保編

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9.適正施工の確保編
富士市建設工事監督検査実務要覧
Ⅳ.請負工事関係通達等
・関係通達編
・適正施工の確保編
平成24年
平成26年
富士市工事検査室監修
9. 適 正 施 工 の 確 保 編
・富士市建設工事施工体制点検取扱要領
・工事現場等における施工体制点検チェックリスト
・ - 建設業法遵守ガイドライン -
「元請負人と下請負人の関係確認」の概要
元請負人と下請との適正な関係の確認
「発注者と受注者の適正な関係」の概要
発注者と受注者間の間の適正な関係について
・ 建設現場における安全衛生管理
・ 富士市優良工事表彰制度(実施要領)
・ 公共建設工事における個人情保護(対応事例)
・ 補足事項 主な改正点と今後の改正事項への対応について
9.適正施工の確保編
項
9-1.富士市建設工事施工体制点検取扱要領 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・602
9-2.工事現場等における施工体制点検チェックリスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・605
9-3.建設業法遵守ガイドライン
a.「元請負人と下請負人の関係確認」の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・606
b.元請負人と下請との適正な関係の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・607
c.「発注者と受注者の適正な関係」の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・625
d.発注者と受注者の間の適正な関係について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・628
9-4.建設現場における安全衛生管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・642
9-5.富士市優良工事表彰制度(実施要領)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・650
9-6.公共建設工事における個人情報保護(対応事例) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・652
9-7. 補足事項 主な改正点と今後の改正事項への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・665
富士市建設工事施工体制点検取扱要領
1 趣 旨
この要領は、
本市が発注する建設工事の品質を確保し、
目的物の整備が的確に行われるようにするため、
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成 12 年法律第 127 号)及び同法第 15 条の規定
による適正化指針に基づき、工事現場における適正な施工体制の確保を図るための監督業務における点検事
項について、必要な事項を定めるものとする。
2 対象工事
(1)次項第 2 号ア及びイに係る事項
請負代金の額が 2,500 万円(建設一式工事にあっては、5,000 万円)以上のものについて実施するも
のとする。
(2)次項第 2 号ウ、エ及びオに係る事項
下請契約の請負代金の合計額が 3,000 万円(建設一式工事にあっては、4,500 万円)以上のものにつ
いて実施するものとする。
(3)次項第 2 号カ及びキに係る事項
前 2 号に掲げるものについて、実施するものとする。
3 工事現場における点検
(1)点検方法
監督員は、工事現場に出向き、提出された着手届、工程評、主任技術者等通知書等に基づき、現場代
理人その他の工事関係者との面接等の方法により点検し、確認する。
(2)点検内容
別記のチェックリストにより、次の事項を点検し、確認する。
ア 監理(主任)技術者
監理技術者資格証(主任技術者の場合は、運転免許証等)の提示を求め、その者が富士市建設工事
請負契約約款第 10 条第 1 項に基づきあらかじめ通知された監理(主任)技術者と同一であり、元請
負人の企業に所属するものであることを確認する。
イ 技術者等の現場の常駐状況
監理(主任)技術者及び現場代理人の現場常駐状況について、適切な頻度で点検すること。
ウ 施工体制台帳
提出された施工体制台帳の写し及び添付された下請負契約書、再下請負契約書、再下請負通知書等
を工事期間中に点検すること。
エ 施工体系図
施工体系図が、工事現場の工事関係者及び公衆が見やすい場所に掲げられていることを確認するこ
と。
- 602 -
オ 施工体制の把握
施工体制が一括下請負に該当していないこと、及び施工体制台帳並びに施工体系図が実際の施工体
制と異なるものでないことを点検すること。この場合において、同一工事の入札参加者が下請負人と
なっていないことを確認すること。
カ 工事カルテの登録
工事カルテの登録を行い、CORINS 登録の受領書が交付されていることを確認すること。
キ 建設業許可を示す標識等
① 建設業の許可を受けたことを示す標識が公衆の見やすい場所に掲示されていることを確認する
こと
② 建設業退職金共済制度適用事業主の工事現場である旨を明示する標識が掲示されていることを
確認すること。
③ 労災保険関係の提示事項が提示されていることを確認すること。
(3)点検回数
① 原則として毎月1回以上点検を実施するものとする。
② 工期が3ヶ月以内の工事については、①にかかわらず、工期の最初、中間及び工期末の3回以上と
する。
(4)点検を実施する者
① 主任監督員又は担当監督員が実施するものとする。
② 少なくとも 1 回以上は、総括監督員が主体となって実施すること。ただし、対象工事件数が多い工
事担当課にあっては、主任監督員がこれに代わることができる。
4 点検結果の報告
(1)監督員は、点検が完了したつど、別記のチェックリストに所見を記入し、上司に報告し工事検査時
に検査員に提示すること。
(2)点検及び確認により、次のいずれかに該当すると疑うに足りる事実を把握したときは、工事施行担
当課長は市長に、その内容を報告しなければならない。
ア 受注者又は下請負人が、その請け負った工事を一括して他人に請け負わせたとき。
イ 受注者又は下請負人が、建設業の許可を受けていない者に、建設業法に規程する金額以上の金額の
下請負をさせたとき。
ウ 受注者又は下請負人が、監督官庁から営業の停止又は禁止を命じられた建設業者と当該停止され、又
は禁止されている営業の範囲に係る下請負契約を締結したとき。
エ 受注者が、施工体制台帳(変更を含む)の写しを本市に提出しなかったとき。
オ 受注者が、監理(主任)技術者の設置状況その他施工体制の点検を本市から求められ、これを受け入
れることを拒んだとき。
カ 受注者が、施工体系図を工事関係者及び公衆の見やすい場所に掲げていないとき。
キ 受注者が、必要な施工体制台帳を作成せず、又は作成した施工体制台帳を現場に備え置かなかったと
き。
ク 当該工事の下請負人が、その請け負った建設工事を他の建設業者に請け負わせたにもかかわらず、そ
の通知を受注者にしていなかったとき。
- 603 -
ケ 受注者又は下請負人が、必要な監理(主任)技術者を配置していなかったとき。
コ 受注者が配置した監理技術者が、監理技術者資格証の交付を受けていなかったとき。
サ 受注者が配置した監理技術者が、監理技術者資格証の提示を拒んだとき。
シ 土木一式工事又は建築一式工事を請け負った受注者又は下請負人が、土木一式工事又は建築一式工事
以外の建設工事を自ら施工する場合において、当該建設工事を管理する資格を持った技術者を配置して
いなかったとき、又は当該建設工事にかかる建設業の許可を受けていない者にその建設工事を請け負わ
せたとき。
ス 受注者または下請負人が、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事を自ら施工す
る場合において、当該建設工事を管理する資格を持った技術者を配置していなかったとき、又は当該建
設工事に係わる建設業の許可を受けていない者にその建設工事を請け負わせたとき。
セ 受注者または下請負人が、その業務に関し、法令に違反し、建設業者として不適当であると認められ
るとき
5 建設業許可部局への通知
市長は、前項第 2 号の報告があったときは、当該受注者又は下請負人が建設業の許可を受けた国土交通
大臣又は都道府県知事及び当該事業に係る営業が行われる区域を管轄する都道府県知事に対し、その
事実を通知するものとする。
附 則
(施行時期)
1 この要領は、平成 18 年 4 月1日から施行する。
(工事現場等における施工体制の点検取扱要領の廃止)
2 平成 13 年 4 月1日工事現場等における施工体制の点検取扱要領は、廃止する。
- 604 -
別記
課
長
総括監督員
主任監督員
工事現場等における施工体制チェツクリスト(第
回)
点検日:
点検者:
工事担当課:
工
年
月
日
担当監督員名:
事
年度
担当監督員
契
約
の
第
概
要
号
工事名
工事
工 期
着手
年
月
日
受注者:
完成
月
請負代金額:
点
1
年
検
一次下請負金額:
項
目
監理(主任)技術者の調書(写し)と本人の同一性の点検
(1)
技術者の区分
□監理技術者
□主任技術者
調書氏名:
□同一者
本人氏名:
□他 者
(2) 監理技術者資格者証又は主任技術者の身分証明書(運転免許証等)の携帯
(3) 他者の場合の措置
2
指示書等
(1)
(2)
月
日
□無
結果:
雇用関係の点検
技術者の資格要件
雇用の状況
□有
□無
勤務する企業名:
□恒常的勤務 :従業員年数
年入社
□直前雇用
年
月
年
月
:直前入社日
年
日
国家資格名:
技術者番号:
取得年月日:
日
専任すべき技術者、現場代理人の常駐
(1)
(2)
4
年
□有
監理(主任)技術者の身分の点検(直接的かつ恒常的な雇用関係と資格要件の点検)
健康保険証等の確認
3
日
監理(主任)技術者
□在
□不在
不在の場合の連絡体制 □有
不在の場合の理由:
連絡方法:
現場代理人名:
不在の場合の連絡体制 □有
□在 □不在
□無
□無
連絡方法:
不在の理由:
施工体制台帳・施工体系図の整備状況
施工体制台帳・施工体系図が現場に整備されているか
□適 □否
台帳と施工体制が一致しているか
□適 □否
(2) 一次下請負契約書(写し)の添付
□有 □無
(3) 再下請負通知書、再下請負契約書(写し)の内容(再下請負契約を締結した場合)
□適 □否
(4) 工事カルテ受領書(写し)が提出されているか
□有 □無
(1)
5
標識の掲示等(工事の施工範囲内、屋外掲示が原則)
(1) 施工体系図が、工事関係者及び公衆の見やすい場所に掲示してあるか
□有 □無
(2) 建設業退職金共済組合への加入標識が、現場の見やすい場所に掲示してあるか
□有 □無
(3) 労災保険関係の成立を表す標識が、現場の見やすい場所に設置されているか
□有 □無
(4) 建設業の許可を受けたことを表す標識を、公衆の見やすい場所に設置されているか
□有 □無
点検者の所見:
- 605 -
参考資料
元請負人と下請負人の関係に係る建設業法令遵守ガイドラインの概要
1. 趣旨
本ガイドラインは、元請負人と下請負人との関係に関して、どのような行為が建設業法に違
反するか具体的に示すことにより、法律の不知による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負
人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的とする
2.内容
(1)建設業の下請取引における取引の流れに沿った形で、見積条件の提示、契約締結といっ
た以下の11項目について、
ア
留意すべき建設業法の規定を解説
イ
建設業法に抵触するおそれのある行為事例を提示
1.見積条件の提示
(建設業法第20条第3項)
2.書面による契約締結
2-1 当初契約 (建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3)
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約 (建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3 工期変更に伴う変更契約 (建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.不当に低い請負代金
建設業法第19条の3)
4.指値発注 (建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
5.不当な使用資材等の購入強制
(建設業法第19条の4)
6.やり直し工事(建設業法第18条、第19条第2項、第19条の3)
7.赤伝処理 (建設業法第18条、第19条、第19条の3、第20条第3項)
8.工期
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
9.支払保留 (建設業法第24条の3、第24条の5)
10.長期手形 (建設業法第24条の5第3項)
11.帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存(建設業法第40条の3)
(2)関連法令の解説として以下の内容を掲載
12.関係法令
12-1 独占禁止法との関係について(建設業の下請取引に関する建設業法との関係)
12-2 社会保険・労働保険について(社会保険等の強制加入方式)
3. その他
建設業の下請取引に関して留意すべき関連条文等(未添付)
・「建設業法」(抄)
(昭和24年5月24日法律第 100 号)
・「建設工事標準下請契約約款」(昭和52年4月26日中央建設業審議会決定)
・「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(抄)(昭和22年法律第54号)
・「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」
(昭和47年4月1日公正取引委員会事務局長通達第4号)
・「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(抄)(平成12年法律第104号)
- 606 -
- 607 -
- 608 -
参考資料
元請負人と下請負人の関係に係る
建設業法令遵守ガイドラインについて
記載内容は国土交通省(平成24年7月)に準拠
目
次
はじめに
1.見積条件の提示
(建設業法第20条第3項)
2.書面による契約締結
2-1 当初契約 (建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3)
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3 工期変更に伴う変更契約
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.不当に低い請負代金
(建設業法第19条の3)
4.指値発注
(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
5.不当な使用資材等の購入強制
(建設業法第19条の4)
6.やり直し工事(建設業法第18条、第19条第2項、第19条の3)
7.赤伝処理 〔☆〕(建設業法第18条、第19条、第19条の3、第20条第3項)
8.工期
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
9.支払保留 〔☆〕(建設業法第24条の3、第24条の5)
10.長期手形 〔☆〕(建設業法第24条の5第3項)
11.帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存 〔◎〕(建設業法第40条の3)
12.関係法令
12-1 独占禁止法との関係について
12-2 社会保険・労働保険について
尚、(☆)(◎)は、「発注者・受注者間における建設業法遵守ガイドライン(国交省H23)」に
は含まれていない項目であり、特に(☆)の項目は、下請関係に適用される事項である。
- 609 -
《はじめに》
建設産業は、激しい競争の時代に突入し、過剰供給構造にある建設業にとって、適正な競争を通じて、
技術と経営に優れた企業が生き残り伸びていくことが求められています。しかしながら、建設業におい
ては、従来から、適切な施工能力を有しない、いわゆるペーパーカンパニーなどの不良・不適格業者の
存在を始め、一括下請負、技術者の不専任、不適正な元請下請関係等の法令違反が問題となっています。
このような状況下で、建設業に対する国民の信頼の回復、建設業の魅力の向上のため、建設業者が法令
遵守を徹底することが求められております。
既に、一括下請負、技術者の不専任については「一括下請負の禁止について(平成4年12月17日
建設省経建発第379号)」及び「監理技術者制度運用マニュアルについて(平成16年3月1日国総
建第315号)」が定められているところですが、不当に低い請負代金、指値発注、赤伝処理等の不適
正な元請下請関係については、どのような行為が法令に違反するかを示した通達等が定められておらず、
違法であるという認識のないまま法令違反行為が繰り返されている可能性があります。
本ガイドラインは、元請負人と下請負人との間で交わされる下請契約が発注者と元請負人が交わす請
負契約と同様に建設業法(昭和24年法律第100号)に基づく請負契約であり、契約を締結する際は、
建設業法に従って契約をしなければならないことや、また、元請負人と下請負人との関係に関して、ど
のような行為が建設業法に違反するかを具体的に示すことにより、法律の不知による法令違反行為を防
ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的として
います。
なお、本ガイドラインについては、できるだけ多くの事例を対象にすることを考えており、今後、随
時更新を重ね、充実させることとしています。
国土交通省
土地・建設産業局
建設業課
平成24年7月
1.見積条件の提示(建設業法第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により下請負人に見積りを行わせた場合
②元請負人が下請負人から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、元請負人が、未回答あるいは
曖昧な回答をした場合
【建設業法上違反となる行為事例】
③元請負人が予定価格が700万円の下請契約を締結する際、見積期間を3日として下請負人に見積りを行
わせた場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれがあり、
③のケースは同項に違反する。
建設業法第20条第3項では、元請負人は、下請契約を締結する以前に、下記(1)に示す具体的内容を
下請負人に提示し、その後、下請負人が当該下請工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けること
が義務付けられている。これは、下請契約が適正に締結されるためには、元請負人が下請負人に対し、あら
かじめ、契約の内容となるべき重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じない
よう検討する期間を確保し請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行わせることが必要
であることを踏まえたものである。
(1)見積りに当たっては下請契約の具体的内容を提示することが必要
建設業法第20条第3項により、元請負人が下請負人に対して具体的内容を提示しなければならない事項
は、同法第19条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工
事完成の時期、前金払又は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(4ページ「2-1 当初契約」参照))
のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。
見積りを適正に行うという建設業法第20条第3項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」
に関し、元請負人が最低限明示すべき事項としては、
①
②
工事名称
施工場所
- 610 -
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
設計図書(数量等を含む)
下請工事の責任施工範囲
下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
施工環境、施工制約に関する事項
材料費、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項
が挙げられ、元請負人は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならな
い。 施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、元請負人が、下請負人に対して、
契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違反する。
(2)望ましくは、下請契約の内容は書面で提示すること、更に作業内容を明確にすること
元請負人が見積りを依頼する際は、下請負人に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書面に
よりその内容を示すことが望ましく、更に、元請負人は、「施工条件・範囲リスト」(建設生産システム合
理化推進協議会作成)に提示されているように、材料、機器、図面・書類、運搬、足場、養生、片付などの
作業内容を明確にしておくことが望ましい。
(3)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要
建設業法第20条第3項により、元請負人は以下のとおり下請負人が見積りを行うために必要な一定の期
間(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条)を設けなければならない。
ア 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
上記期間は、下請負人に対する契約内容の提示から当該契約の締結までの間に設けなければならない期間
である。そのため、例えば、6月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は6月3日、イ
に該当する場合は6月12日、ウに該当する場合は6月17日以降に契約の締結をしなければならない。た
だし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
なお、上記の見積期間は、下請負人が見積りを行うための最短期間であり、元請負人は下請負人に対し十
分な見積期間を設けることが望ましい。
2.書面による契約締結
2-1
当初契約(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①下請工事に関し、書面による契約を行わなかった場合
②下請工事に関し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
③元請負人からの指示に従い下請負人が書面による請負契約の締結前に工事に着手し、工事の施工途中又
は工事終了後に契約書面を相互に交付した場合
上記①から③のケースは、いずれも建設業法第19条第1項に違反する。
(1)契約は下請工事の着工前に書面により行うことが必要
建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、対等な立場で契約すべきであり、建設業法第
19条第1項により定められた下記(2)の①から⑭までの14の事項を書面に記載し、署名又は記名押印
をして相互に交付しなければならないこととなっている。
契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わな
ければならない。
建設業法19条第1項において、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して契約内容を書面に
記載し相互に交付すべきことを求めているのは、請負契約の明確性及び、正確性を担保し、紛争の発生を防
止するためである。また、あらかじめ契約の内容を書面により明確にしておくことは、いわゆる請負契約の
「片務性」の改善に資することともなり、極めて重要な意義がある。
- 611 -
(2)契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載することが必要
契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①~⑭の事項である。特に、①工事内容」については、
下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖
昧な記載は避けるべきである。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
工事内容
請負代金の額
工事着手の時期及び工事完成の時期
請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時
期及び方法
当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出が
あった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関
する定め
天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若し
くは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及
び方法に関する定め
注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結
その他の措置に関する定めをするときは、その内容
各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
契約に関する紛争の解決方法
(3)注文書・請書による契約は一定の要件を満たすことが必要
注文書・請書による請負契約を締結する場合は、次に掲げる場合に応じた要件を満たさなければならない。
ア 当事者間で基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書及び請書の交換による場
合
① 基本契約書には、建設業法第19条第1項第4号から第14号に掲げる事項(上記(2)の④か
ら⑭までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載し、当事者の
署名又は記名押印をして相互に交付すること。
② 注文書及び請書には、建設業法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項(上記(2)
の①から③までの事項)その他必要な事項を記載すること。
③ 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本
契約書の定めによるべきことが明記されていること。
④ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
イ
注文書及び請書の交換のみによる場合
① 注文書及び請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付又は印刷すること。
② 契約約款には、建設業法第19条第1項第4号から第14号に掲げる事項(上記(2)の④から
⑭までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載すること。
③ 注文書又は請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
④ 注文書及び請書の個別的記載欄には、建設業法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事
項(上記(2)の①から③までの事項)その他必要な事項を記載すること。
⑤ 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項
については契約約款の定めによるべきことが明記されていること。
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
(4)電子契約によることも可能
書面契約に代えて、CI-NET等による電子契約も認められる。その場合でも上記(2)の①~⑭の事
項を記載しなければならない。
- 612 -
(5)建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書による契約が基本
建設業法第18条では、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公
正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定している。建設工事の下請
契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ
契約書による契約を締結することが基本である。
(6)片務的な内容による契約は、建設業法上不適当
元請負人と下請負人の双方の義務であるべきところを下請負人に一方的に義務を課すものや、元請負人の
裁量の範囲が大きく、下請負人に過大な負担を課す内容など、建設工事標準下請契約約款に比べて片務的な
内容による契約については、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金(12
ページ「3.不当に低い請負代金」参照)につながる可能性が高い契約となるので、適当ではない。
また、発注者と元請負人の関係において、例えば、発注者が契約変更に応じないことを理由として、下請
負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請負人に追加工事等の費用を負担させることは、元請
負人としての責任を果たしているとはいえず、元請負人は発注者に対して発注者が契約変更等、適切な対応
をとるよう働きかけを行うことが望ましい。
(7)一定規模以上の解体工事等の場合は、契約書面にさらに以下の事項の記載が必要
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号。
以下「建設リサイクル法」という。)第13条では、一定規模*以上の解体工事等に係る下請契約を行う場合
に、以下の①から④までの4事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない
こととなっており、そのような工事に係る契約書面は上記(2)の①から⑭までの14事項に加え、以下の
4事項の記載が必要となる。
① 分別解体等の方法
② 解体工事に要する費用
③ 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
④ 再資源化等に要する費用
*「一定規模」とは、次のそれぞれの規模をいう
ア 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が
80平方メートル
イ 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部
分に限る。)の床面積の合計が500平方メートル
ウ 建築物に係る新築工事等(上記イを除く)…その請負代金の額が1億円
エ 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が500万円
注 解体工事又は新築工事等を二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契
約で請け負ったものとみなして、前項に規定する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づ
いて契約を分割したときは、この限りでない。
2-2
追加工事等に伴う追加・変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①下請工事に関し追加工事又は変更工事(以下、「追加工事等」という。)が発生したが、元請負人が書面に
よる変更契約を行わなかった場合
②下請工事に係る追加工事等について、工事に着手した後又は工事が終了した後に書面により契約変更を
行った場合
③下請負人に対して追加工事等の施工を指示した元請負人が、発注者との契約変更手続が未了であること
を理由として、下請契約の変更に応じなかった場合
④下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請工事の工期が当初契約の工期より短くなり、
残された工期内に工事を完了させるため労働者の増員等が必要となった場合に、下請負人との協議にも応
じず、元請負人の一方的な都合により変更の契約締結を行わなかった場合
上記①から④のケースは、いずれも建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかっ
た場合には同法第19条の3に違反するおそれがある。
(1)追加工事等の着工前に書面による契約変更が必要
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請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、追加工事等の発生により請負契約の内容で当初の請負契
約書に掲げる事項を変更するときは、建設業法第19条第2項により、当初契約を締結した際と同様に追加
工事等の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない
こととなっている。
これは、当初契約書において契約内容を明定しても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契
約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観点からも望ましくないためであり、災害時等でやむ
を得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前に契約変更を行うことが必要である。
元請負人及び下請負人が追加工事等に関する協議を円滑に行えるよう、下請工事の当初契約において、建
設業法第19条第1項第5号に掲げる事項(当事者の一方から設計変更等の申し出があった場合における工
期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる
限り具体的に定めておくことが望ましい。
(2)追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由により、追
加工事等の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、元請負人は、以下の
事項を記載した書面を追加工事等の着工前に下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、
追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で遅滞なく行うものとする。
① 下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
② 当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期
③ 追加工事等に係る契約単価の額
(3)元請負人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合は建設業法に違反
追加工事等が発生しているにもかかわらず、例えば、元請負人が発注者との間で追加・変更契約を締結し
ていないことを理由として、下請負人からの追加・変更契約の申出に応じない行為等、元請負人が合理的な
理由もなく一方的に変更契約を行わない行為については、建設業法第19条第2項に違反する。
(4)追加工事等の費用を下請負人に負担させることは、建設業法第19条の3に違反するおそれ
追加工事等を下請負人の負担により施工させたことにより、下請代金の額が当初契約工事及び追加工事等
を施工するために「通常必要と認められる原価」(12ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たな
い金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請
負代金の禁止に違反するおそれがある。
2-3
工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請工事の当初契約で定めた工期が変更にな
り、下請工事の費用が増加したが、元請負人が下請負人からの協議に応じず、書面による変更契約を行わ
なかった場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法
第19条の3に違反するおそれがある。
(1)工期変更にかかる工事の着工前に書面による契約変更が必要
請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、工期変更により請負契約で当初の請負契約書に掲げる事
項を変更するときは、建設業法第19条第2項により、当初契約を締結した際と同様に工期変更にかかる工
事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
元請負人及び下請負人が工期変更に関する協議を円滑に行えるよう、下請工事の当初契約において、建設
業法第19条第1項第5号に掲げる事項(当事者の一方から工事着手の延期等の申し出があった場合におけ
る工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、で
きる限り具体的に定めておくことが望ましい。
(2)工事に着手した後に工期が変更になった場合、追加工事等の内容及び変更後の工期が
直ちに確定できない場合の対応
下請工事に着手した後に工期が変更になった場合は、契約変更等の手続きについては、変更後の工期が確
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定した時点で遅滞なく行うものとする。工期を変更する必要があると認めるに至ったが、変更後の工期の確
定が直ちにできない場合には、工期の変更が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期を記載
した書面を、工期を変更する必要があると認めた時点で下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続
については、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとする。
(3)下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して
下請工事の費用が増加したが、元請負人が下請工事の変更を行わない場合は建設業法違反
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用
が増加したにもかかわらず、例えば、元請負人が発注者から増額変更が認められないことを理由として、下
請負人からの契約変更の申し出に応じない行為等、必要な変更契約を行わない行為については、建設業法第
19条第2項に違反する。
(4)下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して
下請工事の費用が増加した場合に、費用の増加分について下請負人に負担させることは、建設業法第
19条の3に違反するおそれ
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因して下請工事の費用
が増加した場合に、費用の増加分について下請負人に負担させたことにより、下請代金の額が下請工事を施
工するために「通常必要と認められる原価」(12ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たない金
額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代
金の禁止に違反するおそれがある。
(5)追加工事等の発生に起因する工期変更の場合の対応
工事現場においては、工期の変更のみが行われる場合のほか、追加工事等の発生に起因して工期の変更が
行われる場合が多いが、追加工事等の発生が伴う場合には、(1)から(4)のほか、追加工事等に伴う追
加・変更契約に関する記述が該当する(8ページ「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)。
3.不当に低い請負代金(建設業法第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人が、自らの予算額のみを基準として、下請負人との協議を行うことなく、下請負人による見積
額を大幅に下回る額で下請契約を締結した場合
②元請負人が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆
して、下請負人との従来の取引価格を大幅に下回る額で、下請契約を締結した場合
③元請負人が、下請代金の増額に応じることなく、下請負人に対し追加工事を施工させた場合
④元請負人が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合
上記①から④のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
(1)「不当に低い請負代金の禁止」の定義
建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」とは、注文者が、自己の取引上の地位を不当に利
用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額
とする請負契約を請負人と締結することを禁止するものである。
元請下請間における下請契約では、元請負人が「注文者」となり、下請負人が「請負人」となる。
(2)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある元請負人が、
下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いること
建設業法第19条の3の「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある元請
負人が、下請負人の指名権、選択権等を背景に、下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いる
ことをいう。
ア
取引上の優越的な地位
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取引上優越的な地位にある場合とは、下請負人にとって元請負人との取引の継続が困難になることが
下請負人の事業経営上大きな支障をきたすため、元請負人が下請負人にとって著しく不利益な要請を行
っても、下請負人がこれを受け入れざるを得ないような場合をいう。取引上優越的な地位に当たるか否
かについては、元請下請間の取引依存度等により判断されることとなるため、例えば下請負人にとって
大口取引先に当たる元請負人については、取引上優越的な地位に該当する蓋然性が高いと考えられる。
イ
地位の不当利用
元請負人が、下請負人の指名権、選択権等を背景に、下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引
等を強いたか否かについては、下請代金の額の決定に当たり下請負人と十分な協議が行われたかどうか
といった対価の決定方法等により判断されるものであり、例えば下請負人と十分な協議を行うことなく
元請負人が価格を一方的に決定し当該価格による取引を強要する指値発注(14ページ「4.指値発注」
参照)については、元請負人による地位の不当利用に当たるものと考えられる。
(3)「通常必要と認められる原価」とは、工事を施工するために一般的に必要と認
められる価格
建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」とは、当該工事の施工地域において当該工事を施
工するために一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、
一般管理費(利潤相当額は含まない。)の合計額)をいい、具体的には、下請負人の実行予算や下請負人に
よる再下請先、資材業者等との取引状況、さらには当該地域の施工区域における同種工事の請負代金額の実
例等により判断することとなる。
(4)建設業法第19条の3は契約変更にも適用
建設業法第19条の3により禁止される行為は、当初契約の締結に際して、不当に低い請負代金を強制す
ることに限られず、契約締結後元請負人が原価の上昇を伴うような工事内容の変更をしたのに、それに見合
った下請代金の増額を行わないことや、一方的に下請代金を減額することにより原価を下回ることも含まれ
る。
4.指値発注(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人が自らの予算額のみを基準として、下請負人との協議を行うことなく、一方的に下請代金の額
を決定し、その額で下請契約を締結した場合
②元請負人が合理的根拠がないのにもかかわらず、下請負人による見積額を著しく下回る額で下請代金の
額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した場合
③元請負人が下請負人に対して、複数の下請負人から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に下
請代金の額として決定し、その額で下請契約を締結した場合
【建設業法上違反となる行為事例】
④元請下請間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、下請負人に工事を着手させ、工事の
施工途中又は工事終了後に元請負人が下請負人との協議に応じることなく下請代金の額を一方的に決定
し、その額で下請契約を締結した場合
⑤元請負人が、下請負人が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を下請負人に提示し、
下請契約締結の判断をその場で行わせ、その額で下請契約を締結した場合
上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあるほか、
同法第28条第1項第2号に該当するおそれがある。また、④のケースは同法第19条第1項に違反し、
⑤のケースは同法第20条第3項に違反する。
元請負人が下請負人との請負契約を交わす際、下請負人と十分な協議をせず又は
下請負人の協議に応じることなく、元請負人が一方的に決めた請負代金の額を下請負人に提示(指値)し、
その額で下請負人に契約を締結させる、指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々
の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結する。)を没却するものである。
(1)指値発注は建設業法に違反するおそれ
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指値発注は、元請負人としての地位の不当利用に当たるものと考えられ、下請代金の額がその工事を施工
するために「通常必要と認められる原価」(12ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たない金額
となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金
の禁止に違反するおそれがある。
元請負人が下請負人に対して示した工期が、通常の工期に比べて著しく短いなど厳しい工期である場合に
は、下請工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、元請負人が示した厳しい工期で下請工事
を完成させることを前提として算定されるべきである。
元請負人が、通常の工期を前提とした下請代金の額で指値をした上で厳しい工期で下請工事を完成させる
ことにより、下請代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(12ページ「3.
不当に低い請負代金」参照)を下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、下請負人が元請負人が指値した額で下請契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく、
回答を求める行為については、建設業法第20条第3項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する
(2ページ「1.見積条件の提示」参照)。
さらに、元請下請間において請負代金の額の合意が得られず、このことにより契約書面の取り交わしが行
われていない段階で、元請負人が下請負人に対し下請工事の施工を強要し、その後に下請代金の額を元請負
人の指値により一方的に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する(4ページ「2.書面による
契約締結」参照)。
なお、上記に該当しない場合についても、指値発注は、その情状によっては、建設業法第28条第1項第
2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがある。
(2)元請負人は、指値発注により下請契約を締結することがないよう留意することが必要
下請契約の締結に当たり、元請負人が契約額を提示する場合には、自らが提示した額の積算根拠を明らか
にして下請負人と十分に協議を行うなど、指値発注により下請契約を締結することがないよう留意すべきで
ある。
5.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①下請契約の締結後に、元請負人が下請負人に対して、下請工事に使用する資材又は機械器具等を指定、
あるいはその購入先を指定した結果、下請負人は予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入する
こととなった場合
②下請契約の締結後、元請負人が指定した資材等を購入させたことにより、下請負人が既に購入していた
資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引
関係にあった販売店との取引関係が悪化した場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条の4に違反するおそれがある。
(1)「不当な使用資材等の購入強制」の定義
建設業法第19条の4で禁止される「不当な使用資材等の購入強制」とは、請負契約の締結後に「注文者
が、自己の取引上の地位を不当に利用して、請負人に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定
し、これらを請負人に購入させて、その利益を害すること」である。
元請下請間における下請契約では、元請負人が「注文者」となり、下請負人が「請負人」となる。
(2)建設業法第19条の4は、下請契約の締結後の行為が規制の対象
「不当な使用資材等の購入強制」が禁止されるのは、下請契約の締結後における行為に限られる。これは、
元請負人の希望するものを作るのが建設工事の請負契約であるから、下請契約の締結に当たって、元請負人
が、自己の希望する資材等やその購入先を指定することは、当然のことであり、これを認めたとしても下請
負人はそれに従って適正な見積りを行い、適正な下請代金で契約を締結することができるため、下請負人の
利益は何ら害されるものではないからである。
(3)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある元請負人が、
下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いること
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「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある元請負人が、下請負人の指名
権、選択権等を背景に、下請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう(12ページ
「3.不当に低い請負代金」参照)。
(4)「資材等又はこれらの購入先の指定」とは、商品名又は販売会社を指定すること
「請負人に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて」とは、
元請負人が下請工事の使用資材等について具体的に○○会社○○型というように会社名、商品名等を指定す
る場合又は購入先となる販売会社等を指定する場合をいう。
(5)「請負人の利益を害する」とは、金銭面及び信用面において損害を与えること
「その利益を害する」とは、資材等を指定して購入させた結果、下請負人が予定していた資材等の購入価
格より高い価格で購入せざるを得なかった場合、あるいは既に購入していた資材等を返却せざるを得なくな
り金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係
が極度に悪化した場合等をいう。
したがって、元請負人が指定した資材等の価格の方が下請負人が予定していた購入価格より安く、かつ、
元請負人の指定により資材の返却等の問題が生じない場合には、下請負人の利益は害されたことにはならな
い。
(6)元請負人が使用資材等の指定を行う場合には、見積条件として提示することが必要
使用資材等について購入先等の指定を行う場合には、元請負人は、あらかじめ見積条件としてそれらの項
目を提示する必要がある。
6.やり直し工事(建設業法第18条、第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
元請負人が、元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしないままやり直し工事を下請負人に行
わせ、その費用を一方的に下請負人に負担させた場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項、第19条の3に違反するおそれがあ
るほか、同法第28条第1項第2号に該当するおそれがある。
(1)やり直し工事を下請負人に依頼する場合は、やり直し工事が下請負人の責めに帰すべき
場合を除き、その費用は元請負人が負担することが必要
元請負人は下請工事の施工に関し下請負人と十分な協議を行い、また、明確な施工指示を行うなど、下請
工事のやり直し(手戻り)が発生しない施工に努めることはもちろんであるが、やむを得ず、下請工事の施
工後に、元請負人が下請負人に対して工事のやり直しを依頼する場合には、やり直し工事が下請負人の責め
に帰すべき理由がある場合を除き、当該やり直し工事に必要な費用は元請負人が負担する必要がある。
(2)下請負人の責めに帰さないやり直し工事を下請負人に依頼する場合は、契約変更が必要
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、下請工事の施工後に、元請負人が下請負人に対して工事のや
り直しを依頼する場合にあっては、元請負人は速やかに当該工事に必要となる費用について元請下請間で十
分に協議した上で、契約変更を行う必要があり、元請負人が、このような契約変更を行わず、当該やり直し
工事を下請負人に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違反する(8ページ「2-2 追加工事
等に伴う追加・変更契約」参照)。
(3)下請負人の一方的な費用負担は建設業法に違反するおそれ
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、その費用を一方的に下請負人に負担させるやり直し工事によ
って、下請代金の額が、当初契約工事及びやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(1
2ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度
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等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
また、上記建設業法第19条第2項及び第19条の3に違反しない場合であっても、やり直し工事により、
元請負人が下請負人の利益を不当に害した場合には、その情状によっては、建設業法第28条第1項第2号
の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがある。
(4)下請負人の責めに帰すべき理由がある場合とは、下請負人の施工が契約書面に明示された
内容と異なる場合又は下請負人の施工に瑕疵等がある場合
下請負人の責めに帰すべき理由があるとして、元請負人が費用を全く負担することなく、下請負人に対し
て工事のやり直しを求めることができるのは、下請負人の施工が契約書面に明示された内容と異なる場合又
は下請負人の施工に瑕疵等がある場合に限られる。なお、次の場合には、元請負人が費用の全額を負担する
ことなく、下請負人の施工が契約書面と異なること又は瑕疵等があることを理由としてやり直しを要請する
ことは認められない。
ア 下請負人から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、元請負人が正当な理由な
く施工内容等を明確にせず、下請負人に継続して作業を行わせ、その後、下請工事の内容が契約内容
と異なるとする場合
イ 施工内容について下請負人が確認を求め、元請負人が了承した内容に基づき下請負人が施工したに
もかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
7.赤伝処理(建設業法第18条、第19条、第19条の3、第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人が、下請負人と合意することなく、下請工事の施工に伴い副次的に発生した建設廃棄物の処理
費用、下請代金を下請負人の銀行口座へ振り込む際の手数料等を下請負人に負担させ、下請代金から差し
引く場合
②元請負人が、建設廃棄物の発生がない下請工事の下請負人から、建設廃棄物の処理費用との名目で、一
定額を下請代金から差し引く場合
③元請負人が、元請負人の販売促進名目の協力費等、差し引く根拠が不明確な費用を、下請代金から差し引く
場合
④元請負人が、工事のために自らが確保した駐車場、宿舎を下請負人に使用させる場合に、その使用料と
して実際にかかる費用より過大な金額を差し引く場合
⑤元請負人が、元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしないままやり直し工事を別の専門工事
業者に行わせ、その費用を一方的に下請代金から減額することにより下請負人に負担させた場合
上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあるほか、同法第28条
第1項第2号に該当するおそれがある。
また、上記①のケースについて、当該事項を契約書面に記載しなかった場合には建設業法第19条、見積
条件として具体的な内容を提示しなかった場合には同法第20条第3項に違反する。
赤伝処理とは、元請負人が
① 下請代金の支払に関して発生する諸費用(下請代金の振り込み手数料等)
② 下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設廃棄物の処理費用
③ 上記以外の諸費用(駐車場代、弁当ごみ等のごみ処理費用、安全協力会費等)
を下請代金の支払時に差引く(相殺する)行為である。
(1)赤伝処理を行う場合は、元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要
赤伝処理を行うこと自体が直ちに建設業法上の問題となることはないが、赤伝処理を行うためには、その
内容や差引く根拠等について元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要であることに、元請負人は留意し
なければならない。
(2)赤伝処理を行う場合は、その内容を見積条件・契約書面に明示することが必要
下請代金の支払に関して発生する諸費用及び下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設廃棄物の処理
費用について赤伝処理を行う場合には、元請負人は、その内容や差引額の算定根拠等について、見積条件や
契約書面に明示する必要があり、当該事項を見積条件に明示しなかった場合については建設業法第20条第
- 619 -
3項に、当該事項を契約書面に記載しなかった場合については同法第19条に違反する。
また、建設リサイクル法第13条では、建設副産物の再資源化に関する費用を契約書面に明示することを
義務付けていることにも、元請負人は留意すべきである(4ページ「2-1 当初契約」参照)。
(3)適正な手続に基づかない赤伝処理は建設業法に違反するおそれ
赤伝処理として、元請負人と下請負人双方の協議・合意がないまま元請負人が一方的に諸費用を下請代金
から差引く行為や下請負人との合意はあるものの、差引く根拠が不明確な諸費用を下請代金から差引く行為
又は実際に要した諸費用(実費)より過大な費用を下請代金から差引く行為等は、建設業法第18条の建設
工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結する。)を没却するこ
ととなるため、元請負人の一方的な赤伝処理については、その情状によっては、建設業法第28条第1項第
2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがある。
なお、赤伝処理によって、下請代金の額が、その工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(1
2ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度
等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
(4)赤伝処理は下請負人との合意のもとで行い、差引額についても下請負人の過剰負担となることがない
よう十分に配慮することが必要
赤伝処理は、下請負人に費用負担を求める合理的な理由があるものについて、元請負人が、下請負人との
合意のもとで行えるものである。元請負人は、赤伝処理を行うに当たっては、差引額の算出根拠、使途等を
明らかにして、下請負人と十分に協議を行うとともに、例えば、安全協力費については下請工事の完成後に
当該費用の収支について下請負人に開示するなど、その透明性の確保に努め、赤伝処理による費用負担が下
請負人に過剰なものにならないよう十分に配慮する必要がある。
また、赤伝処理に関する元請下請間における合意事項については、駐車場代等建設業法第19条の規定に
よる書面化義務の対象とならないものについても、後日の紛争を回避する観点から、書面化して相互に取り
交わしておくことが望ましい。
8.工期(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人の施工管理が不十分であったなど、下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず下請
工事の工程に遅れが生じ、その結果下請負人の工期を短縮せざるを得なくなった場合において、これに伴
って発生した増加費用について下請負人との協議を行うことなく、その費用を一方的に下請負人に負担さ
せた場合
②元請負人の施工管理が不十分であったなど、下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず下請
工事の工期が不足し、完成期日に間に合わないおそれがあった場合において、元請負人が下請負人との協
議を行うことなく、他の下請負人と下請契約を締結し、又は元請負人自ら労働者を手配し、その費用を一
方的に下請負人に負担させた場合
③元請負人の都合により、下請工事が一時中断され、工期を延長した場合において、その間も元請負人の
指示により下請負人が重機等を現場に待機させ、又は技術者等を確保していたにもかかわらず、これらに
伴って発生した増加費用を一方的に下請負人に負担させた場合
上記①から③のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあるほか、同法第28
条第1項第2号に該当するおそれがある。また、いずれのケースも変更契約を行わない場合には、建設
業法第19条第2項に違反する。
(1)工期に変更が生じた場合には、当初契約と同様に変更契約を締結することが必要
建設工事の請負契約の当事者である元請負人及び下請負人は、当初契約の締結に当たって、適正な工期を
設定すべきであり、また、元請負人は工程管理を適正に行うなど、できる限り工期に変更が生じないよう努
めるべきであることはいうまでもない。しかし、工事現場の状況により、やむを得ず工期を変更することが
必要になる場合も多い。このような場合には、建設業法第19条第2項により、当初契約を締結した際と同
様に、変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなってい
る(10ページ「2-3 工期変更に伴う変更契約」参照)。
工期の変更に関する変更契約の締結に際しても、他の変更契約の締結の際と同様に、元請負人は、速やか
に当該変更に係る工期や費用等について、下請負人と十分に協議を行う必要がある。合理的な理由もなく元
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請負人の一方的な都合により、下請負人の申し出に応じず、必要な変更契約の締結を行わない場合には、建
設業法第19条第2項に違反する。
(2)下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず工期が変更になり、これに起因する
下請工事の費用が増加した場合は、元請負人がその費用を負担することが必要
下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、例えば、元請負人の施工管理が十分に行われなか
ったため、下請工事の工期を短縮せざるを得ず、労働者を集中的に配置した等の理由により、下請工事の費
用が増加した場合には、その増加した費用については元請負人が負担する必要がある。
(3)元請負人が、工期変更に起因する費用増を下請負人に一方的に負担させることは
建設業法に違反するおそれ
元請負人が下請負人に対して、自己の取引上の地位を利用して、一方的に下請代金の額を決定し、その額
で下請契約を締結させた場合や、下請負人の責めに帰すべき理由がない工期の変更による下請工事の費用の
増加を元請負人の都合により、一方的に下請負人に負担させ又は赤伝処理を行った結果、下請代金の額が「通
常必要と認められる原価」(12ページ「3.不当に低い請負代金」参照)に満たない金額となる場合には、
当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反する
おそれがある。
また、上記建設業法第19条第2項及び第19条の3に違反しない場合であっても、工期の変更により、
元請負人が下請負人の利益を不当に害した場合には、その情状によっては、建設業法第28条第1項第2号
の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがある。
9.支払保留(建設業法第24条の3、第24条の5)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①下請契約に基づく工事目的物が完成し、元請負人の検査及び元請負人への引渡し終了後、元請負人が下
請負人に対し、長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わない場合
②建設工事の前工程である基礎工事、土工事、鉄筋工事等について、それぞれの工事が完成し、元請負人
の検査及び引渡しを終了したが、元請負人が下請負人に対し、工事全体が終了(発注者への完成引渡しが
終了)するまでの長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わない場合
③工事全体が終了したにもかかわらず、元請負人が他の工事現場まで保留金を持ち越した場合
上記①から③のケースは、いずれも建設業法第24条の3及び第24条の5に違反する
おそれがある。
下請代金については、元請負人と下請負人の合意により交わされた下請契約に基づいて適正に支払われな
ければならない。
建設業法第24条の3で、元請負人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後にお
ける支払を受けたときは、下請負人に対して、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び下請
負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い
期間内に支払わなければならないと定められている。
また、建設業法第24条の5では、元請負人が特定建設業者であり下請負人が一般建設業者(資本金額が
4,000万円以上の法人であるものを除く。)である場合、発注者から工事代金の支払があるか否かにかかわ
らず、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内において
期日を定め下請代金を支払わなければならないと定められている。そのため、特定建設業者の下請代金の支
払期限については、注文者から出来高払い又は竣工払を受けた日から1月を経過する日か、下請負人が引渡
しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日のいずれか早い期日となる。
(1)正当な理由がない長期支払保留は建設業法に違反
工事が完成し、元請負人の検査及び引渡しが終了後、正当な理由がないにもかかわらず長期間にわたり保
留金として下請代金の一部を支払わないことは、建設業法第24条の3又は同法第24条の5に違反する。
(2)望ましくは下請代金をできるだけ早期に支払うこと
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元請負人が特定建設業者か一般建設業者かを問わず、また、下請負人の資本金の額が4,000万円未満かを
問わず、元請負人は下請負人に対し下請代金の支払はできるだけ早い時期に行うことが望ましい。
10.長期手形(建設業法第24条の5第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
特定建設業者である元請負人が、手形期間が120日を超える手形により下請代金の支払を行った場合
上記のケースは、建設業法第24条の5第3項に違反するおそれがある。
建設業法第24条の5第3項では、元請負人が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一
般建設業者である場合、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると
認められる手形を交付してはならないとされている。
(1)割引を受けることが困難な長期手形の交付は建設業法に違反
元請負人が手形期間120日を超える長期手形を交付した場合は、「割引を受けることが困難である手形
の交付」と認められる場合があり、その場合には建設業法第24条の5第3項に違反する。
(2)望ましくは手形期間は120日を超えないこと
元請負人が特定建設業者か一般建設業者かを問わず、下請代金を手形で支払う場合には、元請負人は
下請負人に対し手形期間が120日を超えない手形を交付することが望ましい。
11.帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存(建設業法第40条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①建設業を営む営業所に帳簿及び添付書類が備付けられていなかった場合
②帳簿及び添付書類は備付けられていたが、5年間保存されていなかった場合
③発注者から直接請け負った建設工事の完成図等の営業に関する図書が、10年間保存されていなかった
場合
上記①から③のケースは、いずれも建設業法第40条の3に違反する。
※③については、平成20年11月28日以降に工事目的物の引渡しをしたものに限る。
(1)営業所ごとに、帳簿を備え、5年間保存することが必要
建設業法第40条の3では、建設業者は営業所ごとに、営業に関する事項を記録した帳簿を備え、5年間
(平成21年10月1日以降については、発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあっては、
10年間。)保存しなければならないとされている。(建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)
第28条第1項)。
(2)帳簿には、営業所の代表者の氏名、請負契約・下請契約に関する事項などを記載することが必要
①
②
帳簿に記載する事項は以下のとおりである(建設業法施行規則第26条第1項)。
営業所の代表者の氏名及びその者が営業所の代表者となった年月日
注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項
・ 請け負った建設工事の名称及び工事現場の所在地
・ 注文者と請負契約を締結した年月日
- 622 -
・
・
・
注文者の商号・名称(氏名)、住所、許可番号
請け負った建設工事の完成を確認するための検査が完了した年月日
工事目的物を注文者に引渡した年月日
③
発注者(宅地建物取引業者を除く。)と締結した住宅を新築する建設工事の請負契約に関する事項
当該住宅の床面積
建設瑕疵負担割合(発注者と複数の建設業者の間で請負契約が締結された場合)
住宅瑕疵担保責任保険法人の名称(資力確保措置を保険により行った場合)
④ 下請負人と締結した下請契約に関する事項
・ 下請負人に請け負わせた建設工事の名称及び工事現場の所在地
・ 下請負人と下請契約を締結した年月日
・ 下請負人の商号・名称、住所、許可番号
・ 下請負人に請け負わせた建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日
・ 下請工事の目的物について下請負人から引渡しを受けた年月日
⑤ 特定建設業者が注文者となって資本金4,000万円未満の法人又は個人である一般建設業者と下請契
約を締結したときは、上記の記載事項に加え、以下の事項
・ 支払った下請代金の額、支払年月日及び支払手段
・ 支払手形を交付したとき…その手形の金額、交付年月日及び手形の満期
・ 下請代金の一部を支払ったとき…その後の下請代金の残額
・ 遅延利息を支払ったとき…その額及び支払年月日
※上記の帳簿は電磁的記録によることも可能。
・
・
・
(3)帳簿には契約書などを添付することが必要
帳簿には、契約書若しくはその写し又はその電磁的記録を添付しなければならない(建設業法施行規則第
26条第2項、第6項)。
また、以下の場合にはこれらの書類に加え、次のそれぞれの書類を添付する。
ア 特定建設業者が注文者となって資本金4,000万円未満の法人又は個人である一般建設業者と下請契
約を締結した場合は、下請負人に支払った下請代金の額、支払年月日及び支払手段を証明する書類(領
収書等)又はその写しを添付
イ 特定建設業者が元請工事について、3,000万円(建築一式工事の場合4,500万円。一次下請負人への
下請代金の総額で判断。)以上の下請契約を締結した場合は、工事完成後(建設業法施行規則第26
条第3項)に施工体制台帳のうち以下に掲げる事項が記載された部分を添付
・ 自社が実際に工事現場に置いた監理技術者の氏名及びその有する監理技術者資格
・ 自社が監理技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理をつかさどる
建設工事の内容及びその有する主任技術者資格
・ 下請負人の商号又は名称及び許可番号
・ 下請負人に請け負わせた建設工事の内容及び工期
・ 下請負人が実際に工事現場に置いた主任技術者の氏名及びその有する主任技術者資格
・ 下請負人が主任技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理をつかさ
どる建設工事の内容及びその有する主任技術者資格
(4)発注者から直接建設工事を請け負った場合は、営業所ごとに、営業に関する図書を
10年間保存することが必要
発注者から直接建設工事を請け負った場合は、営業所ごとに、以下の営業に関する図書を当該建設工事の
目的物の引渡をしたときから10年間保存しなければならないとされている。(建設業法施行規則第26条
第5項、第8項、第28条第2項)
① 完成図(建設業者が作成した場合又は発注者から受領した場合のみ。)
② 工事内容に関する発注者との打ち合わせ記録(相互に交付したものに限る。)
③ 施工体系図(発注者から直接請け負った建設工事について、3,000万円(建築一式工事の場合4,500
万円。一次下請負人への下請代金の総額で判断。)以上の下請契約を締結した特定建設業者の場合の
み。)
※平成20年11月28日以降に引渡をしたものから適用。なお、上記の図書は
電磁的記録によることも可能。
- 623 -
12
関係法令
12-1
独占禁止法との関係について
建設業法第42条では、国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第19条の3(不
当に低い請負代金の禁止)、第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)、第24条の3(下請代
金の支払)第1項、第24条の4(検査及び引渡し)又は第24条の5(特定建設業者の下請代金の支払期
日等)第3項若しくは第4項の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の
確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条の規定に違反してい
ると認めるときは、公正取引委員会に対して措置請求を行うことができると規定している。
また、公正取引委員会は、独占禁止法第19条の規定の適用に関して、建設業の下請取引における不公正
な取引方法の認定基準(昭和47年4月1日公正取引委員会事務局長通達第4号。以下「認定基準」という。)
を示している。
なお、本ガイドラインと関係のある認定基準は以下のとおりである。
「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期変更に伴う変更契約」、「3.不
当に低い請負代金」、「6.やり直し工事」及び「8.工期」に関しては、認定基準の6に掲げる
「不当に低い請負代金」及び認定基準の7に掲げる「不当減額」
② 「4.指値発注」に関しては、認定基準の6に掲げる「不当に低い請負代金」
③ 「5.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、認定基準の8に掲げる「購入強制」
④ 「7.赤伝処理」に関しては、認定基準の7に掲げる「不当減額」
⑤ 「8.支払保留」に関しては、認定基準の3に掲げる「注文者から支払を受けた場合の下請代金の
支払」及び認定基準の4に掲げる「特定建設業者の下請代金の支払」
⑥ 「9.長期手形」に関しては、認定基準の5に掲げる「交付手形の制限」
①
12-2
社会保険・労働保険について
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度である。このため、社会保険、労働保険は
強制加入の方式がとられている。
健康保険と厚生年金保険については、法人の場合にはすべての事業所について、個人経営の場合でも常時
5人以上の従業員を使用する限り、必ず加入手続を行わなければならない。また、雇用保険については建設
事業主の場合、個人経営か法人かにかかわらず、労働者を1人でも雇用する限り、必ず加入手続をとらなけ
ればならない。
これらの保険料は、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費であり、建設業法第19条の
3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものである。
このため、元請負人及び下請負人は見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要がある。
下請負人は、見積書に法定福利費相当額を明示すべきであり、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明
示されているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、法定福利費相当額を一方的に削減したり、法定
福利費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満
たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低
い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
また、社会保険・労働保険への加入は法律で義務づけられているので、保険未加入業者は、その情状によ
っては、建設業法第28条第1項第3号の「その業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当」に
該当するおそれがある。
- 624 -
参考資料
発注者と受注者の間における建設業法遵守ガイドラインの概要
- 625 -
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- 627 -
- 628 -
- 629 -
参考資料
発注者・受注者間における
建設業法令遵守ガイドラインについて
記載内容は国土交通省(平成23年8月)に準拠
目 次
はじめに
1.見積条件の提示
(建設業法第20条3項)
2.書面による契約締結
2-1 当初契約 (建設業法第19条第1項、第19条の3)
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約 (建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3 工期変更に伴う変更契約 (建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.不当に低い発注金額
4.指値発注
(建設業法第19条の3)
(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
5.不当な使用資材等の購入強制
6.やり直し工事
7.支払
(建設業法第19条の4)
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
(建設業法第24条の5)
8.関係法令
8-1 独占禁止法との関係について
8-2 社会保険・労働保険について
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《はじめに》 発注者と受注者との間の契約は建設生産システムのスタートとして位置付けられるものです。
両者の間の契約の適正化を図ることは、元請下請間の契約を含め建設業における契約全体について当事者が対等
な立場に立ってそれぞれの責任と役割の分担を明確化することを促進するとともに、適正な施工の確保にも資す
るものであり、ひいては発注者等の最終消費者の利益にもつながるものです。
建設業法においては、契約当事者は、各々対等な立場における合意に基づいて、契約締結及びその履行を図るべ
きものとし、不当に低い請負代金の禁止、不当な使用資材等の購入強制の禁止など契約適正化のために契約当事
者が遵守すべき最低限の義務等を定めていますが、これらの規定の趣旨が十分に認識されていない場合等におい
ては、法令遵守が徹底されず、建設業の健全な発展と建設工事の適正な施工を妨げるおそれがあります。法令遵
守は、受発注者双方が徹底を図らなければならないものです。
こうした観点から、公共工事、民間工事にかかわらず、発注者と受注者との間で行われる請負契約の締結やその
履行に関し、法律の不知等による法令違反行為を防ぎ、発注者と受注者との対等な関係の構築及び公正・透明な
取引の実現を図るための対策として、受発注者間の建設業法令遵守ガイドラインの早期策定及びその活用の必要
性が指摘され、平成23年6月に建設産業戦略会議がとりまとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」
においてもその旨が盛り込まれたところです。
これを受け、今般、発注者と受注者との間の取引において、必ずしも十分に徹底されていない法条を中心に、建
設業法に照らし、受発注者はどのような対応をとるべきか、また、どのような行為が不適切であるかを明示した
「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」を策定しました。
本ガイドラインの活用により、発注者と受注者との間の契約の適正化が促進されるとともに、元請下請間の契約
の適正化を図るために平成19年6月に策定した「建設業法令遵守ガイドライン」も併せて活用することにより、
建設業における契約全体の適正化が促進されることが期待されます。
(注1)本ガイドラインにおける用語の意義は、以下のとおり。
「発注者」とは、建設工事の最初の注文者(いわゆる「施主」)をいう。
「受注者」とは、発注者から直接工事を請け負った請負人をいう。
(注2)本ガイドラインは、公共工事及び民間工事における発注者と受注者との間の取引全般を対象としているが、個人が発注
する工事で専ら自ら利用する住宅や施設を目的物とするものに関する取引は含まない。
(注3)本ガイドラインは上記のとおり発注者と受注者との間の請負契約全般を対象としているが、公共工事については、入札
契約手続が制度化されていることや、支払についての規定があること等、民間工事とは異なる点があることに留意し必要に
応じ記述を加えている。
(注4)発注者の代理人が行った行為が、本ガイドラインに抵触する場合にも、発注者が責めを免れるものではない。
国土交通省 土地・建設産業局 建 設 業 課(平成23年8月)
1. 見積条件の提示(建設業法第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により受注予定者に見積りを依頼した場合
②発注者が受注予定者から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、発注者が未回答あるいは曖昧な回答を
した場合
【建設業法上違反となる行為事例】
③発注者が予定価格1億円の請負契約を締結しようとする際、見積期間を1週間として受注予定者に見積りを行わ
せた場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれがあり、③のケースは、建設業法第2
0条第3項に違反する。
建設業法第20条第3項では、発注者は、建設工事の請負契約を締結する前に、下記(1)に示す具体的内容を受注予
定者に提示し、その後、受注予定者が当該工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられて
いる。これは、請負契約が適正に締結されるためには、発注者が受注予定者に対し、あらかじめ、契約の内容となるべ
き重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じないよう検討する期間を確保し、受注予定者
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が請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行うことが可能となることが必要であることを踏まえた
ものである。
(1)見積りに当たっては工事の具体的内容を提示することが必要
建設業法第20条第3項により、発注者が受注予定者に対して提示しなければならない具体的内容は、同法第19
条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、前金払又
は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(「2-1 当初契約」参照))のうち、請負代金の額を除くすべての
事項となる。
見積りを適正に行うという建設業法第20条第3項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」に関し、発
注者が最低限明示すべき事項としては、
・工事名称
・施工場所
・工事の全体工程
・見積条件
・設計図書(数量等を含む)
・工事の責任施工範囲
・施工環境、施工制約に関する事項
が挙げられ、発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならない。施工条
件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記
事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違反する。
(2)望ましくは、工事の内容を書面で提示し、作業内容を明確にすること
発注者が受注予定者に見積りを依頼する際は、受注予定者に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書
面によりその内容を示すことが望ましい。
(3)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要
建設業法第20条第3項により、発注者は、以下のとおり受注予定者が見積りを行うために必要な一定の期間(下
記ア~ウ(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条))を設けなければならないこととされている。
ア 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
上記期間は、受注予定者に対する契約内容の提示から当該契約の締結又は入札までの間に設けなければならない期間
である。そのため、例えば、4月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は4月3日、イに該当す
る場合は4月12日、ウに該当する場合は4月17日以降に契約の締結又は入札をしなければならない。ただし、や
むを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
上記の見積期間は、受注予定者が見積りを行うための最短期間であり、より適正な見積が行われるようにするために
は、とりわけ大型工事等において、発注者は、受注予定者に対し、余裕を持った十分な見積期間を設けることが望ま
しい。
なお、国が一般競争入札により発注する公共工事については、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第
74条の規定により入札期日の前日から起算して少なくとも10日前(急を要する場合には5日までに短縮可能)に
公告しなければならないとされており、この期間が上記ア~ウの見積期間とみなされる。
2. 書面による契約締結
2-1 当初契約(建設業法第19条第1項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①建設工事の発注に際し、書面による契約を行わなかった場合
②建設工事の発注に際し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
③建設工事の発注に際し、請負契約の締結前に建設業者に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に契約
書面を相互に交付した場合
上記①~③のケースは、いずれも建設業法第19条第1項に違反する。
(1)契約は工事の着工前に書面により行うことが必要
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建設工事の請負契約の当事者である発注者と受注者は、対等な立場で契約すべきであり、建設業法第19条第1項
により定められた下記(2)の各事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこと
となっている。
契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければならない。
(2)契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載することが必要
建設業法第19条第1項において、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して契約内容を書面に記載し
相互に交付すべきことを求めているのは、請負契約の明確性及び正確性を担保し、紛争の発生を防止するためである。
また、あらかじめ契約の内容を書面により明確にしておくことは、いわゆる請負契約の「片務性」の改善に資するこ
とともなり、極めて重要な意義がある。契約書面に記載しなければならない事項は、以下の事項である。特に、「工
事内容」については、受注者の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式
といった曖昧な記載は避けるべきである。
・工事内容
・請負代金の額
・工事着手の時期及び工事完成の時期
・請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
・当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合にお
ける工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
・天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
・価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基
づく請負代金の額又は工事内容の変更
・工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
・発注者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関す
る定め
・ 発注者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
・工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
・工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に
関する定めをするときは、その内容
・各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
・契約に関する紛争の解決方法
(3)電子契約によることも可能
書面契約に代えて、電子契約も認められる。その場合でも、(2)の各事項を記載しなければならない。
(4)工期の設定時の留意事項
建設工事の請負契約において、受注者が適正な施工を行うためには、施工内容に応じた適切な工期設定が必要であ
る。発注者へ工事の目的物を引き渡す前に設備(空調、衛生、電気、昇降機等)の試運転などが必要な場合には、こ
れらも含めた工期とする必要がある。
工期が施工を行うために必要な期間よりも短ければ、手抜き工事、不良工事や公衆災害、労働災害等の発生につなが
る可能性がある。発注者及び受注者は、当初契約の締結に当たって、十分に協議を行った上で、適正な工期を設定す
る必要がある。
公共工事については、発注者が入札公告等において、契約に盛り込む予定の工期を明示することが一般的であるが、
発注者においては、適正な予定工期を検討することが必要である。
また、受注者の責めに帰すべき事由により、工期内に工事を完成することができない場合における違約金の設定につ
いては、過大な額にならないよう設定することが必要である。
(5)短い工期にもかかわらず、通常の工期を前提とした請負代金の額で請負契約を締結することは、不当に低い請負
代金の禁止に違反するおそれ
やむを得ず、通常の工期に比べて著しく短い工期で契約する場合には、工事を施工するために「通常必要と認めら
れる原価」は、短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきである。
発注者が、短い工期にもかかわらず、通常の工期を前提とした請負代金の額で請負契約を締結させることにより、請
負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」を下回る場合には、建設業法第19条の3に
違反するおそれがある。
(「3.不当に低い発注金額」参照)
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(6)受注者に過度な義務や負担を課す片務的な内容による契約を行わないことが必要
建設業法第18条においては、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正
な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定している。建設工事の請負契約の締結
に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、公共工事については、中央建設業審議会が作成する公共工事標準請負契約約款
(以下「公共約款」又は民間契約を含め「契約約款」という。)に沿った契約が締結されている。
※ 民間約款に沿った内容の約款として、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款がある。
民間工事の中には、民間約款等を大幅に修正した契約が締結されており、その修正内容が受注者に過大な義務を課
す等、次のような片務的な内容となっている場合がある。
① 発注者の責めに帰すべき事由により生じた損害についても、受注者に負担させること
② 工事の施工に伴い通常避けることができない騒音等の第三者への損害についても、受注者に負担させること
③ 例えば、民法(明治29年法律第89号)や住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)
に定める期間を大幅に超えて、長期間の瑕疵担保期間を設けること
④ 過度なアフターサービス、例えば、経年劣化等に起因する不具合についてのアフターサービスなどを受注者に負
担させること。
また、契約外の事項である次のような業務を発注者が求めることも片務的な行為に該当すると考えられる。
⑤ 販売促進への協力など、工事請負契約の内容にない業務を受注者に無償で求めること
⑥ 設計図書と工事現場の状況が異なっていた場合に、設計変更の作業を受注者に無償で協力させること
このような、受注者に過度な義務や負担を課すなど、片務的な内容による契約や契約外の行為をさせることは、結
果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金(「3.不当に低い発注金額」参照)による契
約となる可能性があり、厳に慎むべきである。
(7)一定規模以上の解体工事等の場合は、契約書面に更に以下の事項の記載が必要
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)第13条においては、一定規模(*)
以上の解体工事等に係る契約を行う場合に、以下の4事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しな
ければならないこととされており、そのような工事に係る契約書面は上記(2)の各14事項に加え、以下の4事項
の記載が必要となる。
・分別解体等の方法
・解体工事に要する費用
・再資源化等をするための施設の名称及び所在地
・再資源化等に要する費用
*「一定規模」とは、次のそれぞれの規模をいう
ア 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が80平方メートル
イ 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る。)の床面
積の合計が500平方メートル
ウ 建築物に係る新築工事等(上記イを除く)…その請負代金の額が1億円
エ 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が500万円
注 解体工事又は新築工事等を二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負ったも
のとみなして、上記の「一定規模」に関する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したとき
は、この限りでない。
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となる行為事例】
①追加工事又は変更工事が発生したが、発注者が書面による契約変更を行わなかった場合
②追加工事又は変更工事について、これらの工事に着手した後又は工事が終了した後に書面により契約変更を行っ
た場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同
法第19条の3に違反するおそれがある。
(1)追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが必要
建設業法第19条第2項では、請負契約の当事者は、追加工事又は変更工事(工事の一時中止に伴う中止期間中の
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工事現場の維持、工事体制の縮小及び工事の再開準備を含む。以下「追加工事等」という。)の発生により当初の請
負契約書(以下「当初契約書」という。)に掲げる事項を変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又
は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっている。これは、当初契約書において契約内容を明定し
ても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観
点からも望ましくないためであり、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前に、契約変
更を行うことが必要である。
発注者及び受注者が追加工事等に関する協議を円滑に行えるよう、建設工事の当初契約書において、建設業法第19
条第1項第5号に掲げる事項(当事者の一方から設計変更等の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額
の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望
ましい。
なお、追加・変更契約を行うべき事由及びその方法については、契約約款等において規定しているほか、国土交通省
等では、「工事請負契約における設計変更ガイドライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を策定している。
(2)追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
工事状況により追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由により、追加工事等
の依頼に際して、その都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、発注者は、以下の事項を記載した書面
を追加工事等の着工前に受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、追加工事等の内容が確定した
時点で遅滞なく行う必要がある。
・ 受注者に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
・ 当該追加工事等が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期
・ 追加工事等に係る契約単価の額
(3)追加工事等に要する費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ
追加・変更契約を行う場合には、追加工事等が発生した状況に応じ、当該追加工事等に係る費用について、発注者
と受注者との間で十分協議を行い決定することが必要である。発注者が、受注者に一方的に費用を負担させたことに
より、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために「通常必要と認められる原価」(「3.不当に
低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受注者の当該発注者への取引依存度等の状況によっては、建
設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
2-3 工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【 建設業法上違反となる行為事例】
受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当初契約で定めた工期を短縮し、又は延長せざるを得なくな
り、また、これに伴って工事費用が増加したが、発注者が受注者からの協議に応じず、書面による契約変更を行わ
なかった場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項に違反するほか、必要な増額を行わなかった場合には同法第19条の3に
違反するおそれがある。
工期は、建設業法第19条第1項第3号により、建設工事の請負契約において定めなければならない項目となってい
る。建設工事の請負契約の当事者は、当初契約の締結に当たって適正な工期を設定すべきであり、また、受注者は工程
管理を適正に行うなど、できる限り工期に変更が生じないよう努めるべきである。しかし、工事現場の状況により、や
むを得ず工期を変更することが必要になる場合も多い。こうした場合において、工期の変更に係る請負契約の締結に関
しても、書面によることが必要である。
なお、工期の変更の原因となった工事の一時中止の期間中における現場維持、体制縮小又は再開準備に要する費用につ
いては、追加工事が発生した場合と同様に書面で契約変更等を行うことが必要である。(「2-2 追加工事等に伴う
追加・変更契約」参照)
(1)工期変更についても書面による契約変更が必要
建設工事の請負契約において、工期に係る変更をする場合には、建設業法第19条第2項により、契約当事者であ
る発注者及び受注者は、原則として工期変更に係る工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押
印をして相互に交付しなければならない。
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また、発注者及び受注者が工期変更に関する協議を円滑に行えるよう、当初契約書において、建設業法第19条第1
項第5号に掲げる事項(当事者の一方から工事着手の延期等の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額
の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め)について、できる限り具体的に定めておくことが望
ましい。
なお、工期に係る変更の方法については、公共約款、民間約款等において規定しているほか、国土交通省等では、「工
事請負契約における設計変更ガイドライン」や「工事一時中止に係るガイドライン」を策定している。
(2)工事に着手した後に工期が変更になった場合、変更後の工期が直ちに確定できない場合の対応
工事に着手した後に工期が変更になった場合の契約変更等の手続については、変更後の工期が確定した時点で遅滞
なく行うものとする。工期を変更する必要があると認めるに至ったが、変更後の工期の確定が直ちにできない場合に
は、発注者は、工期の変更が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期を記載した書面を、工期を変更
する必要があると認めた時点で受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、変更後の工期が確定し
た時点で遅滞なく行うものとする。
(3)工期の変更に伴う費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ
工期が変更になり、これに起因して工事の費用が増加した場合には、発注者と受注者とが工期変更の原因及び増加
費用の負担について、十分協議を行うことが必要であり、発注者の一方的な都合により受注者の申出に応じず、必要
な変更契約を締結しない場合には、建設業法第19条第2項に違反する。(「2-2 追加工事等に伴う追加・変更
契約」参照)
また、発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になった場合に、発注者が、工期変更に起因する費用の増加分
を受注者に一方的に負担させたことにより、請負代金の額が工事を施工するために「通常必要と認められる原価」
(1
6ページ「3.不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となるときには、受注者の当該発注者への取引依存度等
の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
(4)追加工事等の発生に起因する工期変更の場合の対応
工事現場においては、工期の変更のみが行われる場合のほか、追加工事等の発生に起因して工期の変更が行われる
場合が多いが、追加工事等の発生が伴う場合には、(1)から(3)のほか、追加工事等に伴う追加・変更契約に関
する記述が該当する(「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)。
3. 不当に低い発注金額(建設業法第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受注者による見積額を大幅に下回
る額で建設工事の請負契約を締結した場合
②発注者が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆して、受注
者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、建設工事の請負契約を締結した場合
③発注者が、請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させた場合
④発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにもかかわらず、発注者が請負代金
の増額に応じない場合
⑤発注者が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合
上記のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
公共工事においては、発注者が直接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等により積算した予定価格の範囲
内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、①及び②のようなケースは生じにくいものと考える。しか
し、発注者は、積算した金額(設計金額)からいわゆる歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格
による入札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強い
るようなことは、建設業法第19条の3に違反するおそれがあり、厳に慎む必要がある。
また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請負代金の増額に応じないなどの
ケースが生じるおそれがあり、同条違反とならないよう留意が必要である。
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(1)「不当に低い請負代金の禁止」の定義
建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」とは、発注者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、
その注文した工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を受
注者と締結することを禁止するものである。
発注者が、取引上の地位を不当に利用して、不当に低い請負代金による契約を強いた場合には、受注者が工事の施工
方法、工程等について技術的に無理な手段、期間等の採用を強いられることとなり、手抜き工事、不良工事や公衆災
害、労働災害等の発生につながる可能性もある。
(2)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受注者を経済的に不当に圧迫す
るような取引等を強いること
建設業法第19条の3の「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受
注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう。
ア 取引上の優越的な地位 :取引上優越的な地位にある場合とは、受注者にとって発注者との取引の継続が困難にな
ることが受注者の事業経営上大きな支障を来すため、発注者が受注者にとって著しく不利益な要請を行っても、受
注者がこれを受け入れざるを得ないような場合をいう。取引上優越的な地位に当たるか否かについては、受注者の
発注者への取引依存度等により判断されることとなるため、例えば受注者にとって大口取引先に当たる発注者につ
いては、取引上優越的な地位に該当する蓋然性が高いと考えられる。
イ 地位の不当利用 :発注者が、受注者の選定権等を背景に、受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強
いたか否かについては、請負代金の額の決定に当たり受注者と十分な協議が行われたかどうかといった対価の決定
方法等により判断されるものであり、例えば受注者と十分な協議を行うことなく発注者が価格を一方的に決定し、
当該価格による取引を強要する指値発注(「4.指値発注」参照)については、発注者による地位の不当利用に当
たるものと考えられる。
(3)「通常必要と認められる原価」とは、工事を施工するために一般的に必要と認められる価格
建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」とは、当該工事の施工地域において当該工事を施工するた
めに一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、一般管理費(利
潤相当額は含まない。)の合計額)をいい、具体的には、受注者の実行予算や下請先、資材業者等との取引状況、さ
らには当該施工区域における同種工事の請負代金額の実例等により判断することとなる。
(4)建設業法第19条の3は変更契約にも適用
建設業法第19条の3により禁止される行為は、当初の契約の締結に際して、不当に低い請負代金を強いることに
限られず、契約締結後、発注者が原価の上昇を伴うような工事内容や工期の変更をしたのに、それに見合った請負代
金の増額を行わないことや、一方的に請負代金を減額したことにより原価を下回ることも含まれる。
追加工事等を受注者の負担により一方的に施工させたことにより、請負代金の額が当初契約工事及び追加工事等を
施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額とならないよう、適正な追加・変更契約を行うことが
必要である。(「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)
4. 指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者と協議を行うことなく、一方的に請負代金の額を決定し、そ
の額で請負契約を締結した場合
②発注者が、合理的根拠がないにもかかわらず、受注者の見積額を著しく下回る額で請負代金の額を一方的に決定
し、その額で請負契約を締結した場合
③発注者が複数の建設業者から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に請負代金の額として決定し、当該
見積の提出者以外の者とその額で請負契約を締結した場合
【建設業法上違反となる行為事例】
④発注者と受注者の間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、受注者に工事に着手させ、工事の施
工途中又は工事終了後に発注者が受注者との協議に応じることなく請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負
契約を締結した場合
⑤発注者が、受注者が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を受注者に提示し、請負契約締結
の判断をその場で行わせ、その額で請負契約を締結した場合
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上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある。また、④のケースは同法第19
条第1項に違反し、⑤のケースは同法第20条第3項に違反する。
指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせず、又は受注者との協議に応じる
ことなく、発注者が一方的に決めた請負代金の額を受注者に提示(指値)し、その額で受注者に契約を締結させること
をいう。指値発注は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意に基づいて公正
な契約を締結する。)を没却するものである。
公共工事においては、入札公告などから入札期日の前日まで一定の期間を設け、また、発注者が積算した予定価格の範
囲内で応札した者の中から受注者を決めるのが一般的であり、当初契約時においては、①から⑤までのようなケースは
生じにくいものと考える。しかし、発注者は、歩切りをして予定価格を設定することや、歩切りした予定価格による入
札手続の入札辞退者にペナルティを課すなどにより、歩切りをした予定価格の範囲内での入札を実質的に強いるような
ことは、厳に慎む必要がある。また、変更契約は、入札手続を経ることなく、相対で締結されることから、発注者が請
負代金の増額に応じないなどのケースが生じるおそれがあり、建設業法第19条の3違反とならないよう留意が必要で
ある。
(1)指値発注は建設業法に違反するおそれ
指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えられ、請負代金の額がその工事を施工す
るために「通常必要と認められる原価」(「3. 不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合には、受
注者の当該発注者に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違
反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて著しく短い工期である場合には、工事を施工するために
「通常必要と認められる原価」は、発注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきで
あり、発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工期で工事を完成させることにより、請
負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」(「3.不当に低い発注金額」参照)を下回
る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判断する期間を与えることなく回答を求め
る行為については、建設業法第20条第3項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する(「1.見積条件の提
示」参照)。
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、このことにより契約書面の取り交わしが行わ
れていない段階で、発注者が受注者に対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的
に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する(「2.書面による契約締結」参照)。
(2)請負代金決定に当たっては、十分に協議を行うことが必要
建設工事の請負契約の締結に当たり、発注者が契約希望額を提示した場合には、自らが提示した額の積算根拠を明
らかにして受注者と十分に協議を行うなど、一方的な指値発注により請負契約を締結することがないよう留意すべき
である。
5. 不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①請負契約の締結後に、発注者が受注者に対して、工事に使用する資材又は機械器具等を指定し、あるいはその購
入先を指定した結果、受注者が予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった場合
②請負契約の締結後、当該契約に基づかないで発注者が指定した資材等を購入させたことにより、受注者が既に購
入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取
引関係にあった販売店との取引関係が悪化した場合
上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第19条の4に違反するおそれがある。
(1)「不当な使用資材等の購入強制」の定義
建設業法第19条の4で禁止される「不当な使用資材等の購入強制」とは、請負契約の締結後に、発注者が、自己
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の取引上の地位を不当に利用して、受注者に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを受注
者に購入させて、その利益を害することである。
(2)建設業法第19条の4は、請負契約の締結後の行為が規制の対象
「不当な使用資材等の購入強制」が禁止されるのは、請負契約の締結後における行為に限られる。これは、発注者
の希望するものを作るのが建設工事の請負契約であり、請負契約の締結に当たって、発注者が、自己の希望する資材
等やその購入先を指定することは、当然想定し得る。発注者が請負契約締結前にこれを行ったとしても、受注者はそ
れに従って適正な見積りを行い、適正な請負代金で契約を締結することができるため、建設業法第19条の4の規定
の対象とはならない。
(3)「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受注者を経済的に不当に圧迫す
るような取引等を強いること
「自己の取引上の地位を不当に利用して」とは、取引上優越的な地位にある発注者が、受注者の選定権等を背景に、
受注者を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう(「3.不当に低い発注金額」参照)。
(4)「資材等又はこれらの購入先の指定」とは、商品名又は販売会社を指定すること
「使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを購入させる」とは、発注者が工事の使用資材
等について具体的に○○会社○○型というように会社名、商品名等を指定する場合又は購入先となる販売会社等を指
定する場合をいう。
(5)受注者の「利益を害する」とは、金銭面及び信用面において損害を与えること
受注者の「利益を害する」とは、資材等を指定して購入させた結果、受注者が予定していた資材等の購入価格より
高い価格で購入せざるを得なかった場合、あるいは、既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり、金銭面及
び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が極度に悪化した場
合等をいう。
したがって、発注者が指定した資材等の価格の方が受注者が予定していた購入価格より安く、かつ、発注者の指定に
より資材の返却等の問題が生じない場合には、受注者の利益は害されたことにはならない。
(6)資材等の指定を行う場合には、見積条件として提示することが必要
使用資材等について購入先等の指定を行う場合には、発注者は、あらかじめ見積条件としてそれらの項目を提示す
る必要がある。
6. やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
発注者が、受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、やり直し工事を行わせ、必要な変更契約を締結せ
ずにその費用を一方的に受注者に負担させた場合
上記のケースは、建設業法第19条第2項、第19条の3に違反するおそれがある。
(1)やり直し工事を受注者に依頼する場合、発注者と受注者が帰責事由・費用負担について十分協議することが必要
発注者と受注者は、工事の施工に関し十分な協議を行い、工事のやり直し(手戻り)が発生しないよう努めること
はもちろんであるが、発注者の指示や要求により、やむを得ず、工事の施工途中又は施工後において、やり直し工事
が発生する場合がある。やり直し工事が発生した場合には、発注者が受注者に対して一方的に費用を負担させること
なく、発注者と受注者とが帰責事由や費用負担について十分協議することが必要である。
(2)受注者の責めに帰さないやり直し工事を依頼する場合は、契約変更が必要
受注者の責めに帰すべき事由がないのに、工事の施工途中又は施工後において、発注者が受注者に対して工事のや
り直しを依頼する場合にあっては、発注者は速やかに受注者と十分に協議した上で契約変更を行う必要があり、発注
者がこのような契約変更を行わず、当該やり直し工事を受注者に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違
- 639 -
反する(「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」参照)。
(3)やり直し工事の費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ
発注者の責めに帰すべき事由によりやり直し工事が必要になった場合に、発注者がやり直し工事に係る費用を一方
的に受注者に負担させることによって、請負代金の額が当初契約工事及びやり直し工事を施工するために「通常必要
と認められる原価」(「3.不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となるときには、発注者と受注者との間の
取引依存度等によっては、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
(4)受注者の責めに帰すべき事由がある場合とは、施工内容が契約書面に明示された内容と異なる場合や施工に瑕疵
等がある場合
受注者の責めに帰すべき事由があるため、受注者に全ての費用を負担させ、工事のやり直しを求めることができる
ケースとしては、施工が契約書面に明示された内容と異なる場合や施工に瑕疵等がある場合などが考えられる。
次のような場合には、施工が契約書面と異なり、又は瑕疵等があるとは認められず、発注者の責めに帰すべき事由が
ある場合に該当する。
ア 受注者から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、発注者が正当な理由なく明確にせず、受
注者に継続して作業を行わせたことにより、施工が発注者の意図と異なることとなった場合
イ 発注者の指示、あるいは了承した施工内容に基づき施工した場合において、工事の内容が契約内容と異なる場合
なお、天災等により工事目的物が滅失し、工事の手戻り等が生じる場合があるが、発注者及び受注者の双方の責め
に帰すことができない不可抗力による損害の負担者については、民間約款等において、協議により重大と認めるもの
は発注者がこれを負担すると規定されている。
7. 支払(建設業法第24条の5)
【望ましくない行為事例】
①請負契約に基づく工事目的物が完成し、引渡し終了後、発注者が受注者に対し、速やかに請負代金を支払わない
場合
②発注者が、手形期間の長い手形により請負代金の支払を行った場合
上記①及び②のケースは、いずれも発注者が受注者による建設業法第24条の5違反の行為を誘発するおそれがあり、
望ましくない。
(1)請負代金の支払時の留意事項
請負代金については、発注者と受注者の合意により交わされた請負契約に基づいて適正に支払われなければならな
い。請負代金の支払方法については、原則として当事者間の取り決めにより自由に定めることができるが、本来は工
事目的物の引渡しと請負代金の支払は同時履行の関係に立つものであり、民間約款等においても、その旨が規定され
ている。また、発注者から受注者への支払は、元請下請間の支払に大きな影響を及ぼすことから、尐なくとも引渡し
終了後できるだけ速やかに適正な支払を行うように定めることが求められる。
更に、実際には、特に長期工事の場合等、工事完成まで支払がなされないと、受注者及び下請負人の工事に必要な
資金が不足するおそれがあるため、民間工事標準請負契約約款の規定に沿って前払金制度あるいは部分払制度(いわ
ゆる出来高払制度)を活用するなど、迅速かつ適正な支払を行うことが望ましい。
(2)目的物の引渡しを受けた場合には、できるだけ速やかに支払を行うこと
発注者は、請負契約に基づく目的物の引渡しを受けた場合、受注者に対し、請負契約において取り決められた請負
代金の額を、できるだけ速やかに支払うことが望ましい。
建設業法第24条の5では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者であ
る場合、下請契約における下請代金の支払期日は、下請負人が引渡の申出を行った日から起算して50日以内と規定
している。これは、発注者から受注者に工事代金の支払があるか否かにかかわらず適用される規定であるが、発注者
の支払期日によっては建設業法に定めた元請下請間の支払に実質的な影響を与えかねないことから、発注者は、これ
らの元請下請間の下請代金の支払に関する規定も考慮し、できるだけ速やかに支払を行うことが望ましい。
国が発注する公共工事においては、政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)に、検査、
- 640 -
支払の時期が規定されており、同法に従って支払が行われている。国以外の公共発注者においても、それぞれが定め
た検査や支払についての規則に従って行われているが、受注者からの工事完了の通知の速やかな受理や検査の適切な
実施を含め、迅速な支払の確保に努めるべきである。
(3)長期手形を交付しない
建設業法第24条の5第3項では、受注者が特定建設業者であり下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設
業者である場合、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形
(例えば、手形期間が120日超の長期手形)を交付してはならないとされている。
発注者から受注者への支払方法は、元請下請間の支払に実質的な影響を与えかねないことから、発注者は、受注者に
対する請負代金を手形で支払う場合にも、同条の趣旨を踏まえ、長期手形を交付することがないようにすることが望
ましい。
8. 関係法令
8-1 独占禁止法との関係について
不当に低い発注金額や不当な使用資材等の購入強制については、建設業法第19条の3及び第19条の4でこれを禁
止しているが、これらの規定に違反する上記行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法
律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条で禁止している不公正な取引方法の一類型である優越的な地位の
濫用にも該当するおそれがある。優越的地位の濫用に関して、公正取引委員会は、平成22年11月30日、「優越的
地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(以下「考え方」という。)を示している。
この「考え方」のうち、本ガイドラインと関係のある主な部分は以下のとおりである。
① 「1.見積条件の提示」、「2-1 当初契約」、「2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約」、「2-3 工期
変更に伴う変更契約」及び「3.不当に低い発注金額」に関しては、「考え方」第4の2(3)に掲げる「その他
経済上の利益の提供の要請」、第4の3(4)に掲げる「減額」及び第4の3(5)に掲げる「その他取引の相手
方に不利益となる取引条件の設定等」
② 「4.指値発注」に関しては、「考え方」第4の3(5)アに掲げる「取引の対価の一方的決定」
③ 「5.不当な使用資材等の購入強制」に関しては、「考え方」第4の1に掲げる「購入・利用強制」
④ 「6.やり直し工事」に関しては、「考え方」第4の3(5)イに掲げる「やり直しの要請」
⑤ 「7.支払」に関しては、「考え方」第4の3(3)に掲げる「支払遅延」
なお、発注者が独占禁止法第2条第1項に規定する事業者でない場合(公的発注機関の場合)には、建設業法第19条
の5において、国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者が同法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)又は
第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)の規定に違反している事実があり、特に必要があると認めるとき
は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができると規定している。
8-2 社会保険・労働保険(法定福利費)について
社会保険や労働保険は労働者が安心して働くために必要な制度であり、強制加入の方式がとられている。
具体的には、健康保険と厚生年金保険については、法人の場合にはすべての事業所について、個人経営の場合でも常時
5人以上の従業員を使用する限り、必ず加入手続を行わなければならず、また、雇用保険については、建設事業主の場
合、個人経営か法人かにかかわらず、労働者を1人でも雇用する限り、必ず加入手続をとらなければならない。
このため、受注者には、これらの保険料に係る費用負担が不可避となっている。
これらの保険料にかかる受注者の費用は、労災保険料とともに受注者が義務的に負担しなければならない法定福利費で
あり、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるべきものである。
このため、発注者及び受注者は見積時から法定福利費を必要経費として適正に考慮すべきであり、法定福利費相当額を
含まない金額で建設工事の請負契約を締結した場合には、発注者がこれらの保険への加入義務を定めた法令の違反を誘
発するおそれがあるとともに、発注者が建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
- 641 -
建設現場における安全衛生管理
1.安全衛生管理体制
1) 選任が必要な者(労働安全衛生法による)
2)選任が必要な者(中小規模建設工事現場における安全衛生管理指針による)
2.元方事業者による建設現場における安全管理手法
3.作業主任者の選任が必要な作業
4.特別教育を必要とする業務
※凡例
・安法 :
労働安全衛生法
昭和 47 年 6 月 8 日
法律第 57 号
・安令 :
労働安全衛生法施行令
昭和 47 年 8 月 19 日
政令第 318 号
・安則 :
労働安全衛生規則
昭和 47 年 9 月 30 日
労働省令第 32 号
・石綿則:
石綿障害予防規則
平成 17 年 2 月 2 日
厚生労働省令第 21 号
・特化則:
特定化学物質障害予防規則
昭和 47 年 9 月 30 日
労働省令第 39 号
- 642 -
1.安全衛生管理体制
1)選任が必要な者(労働安全衛生法による)
職
名
適用範囲
業務の内容
法令
統括安全衛生
同一場所で元請、下請け合わ
・協議会組織の設置及び運営
安法 15
責任者
せて 50 人以上の労働者が混
・作業間の連絡及び調整
安法 30
在する事業の元方事業者
・作業所の巡視
元方安全衛生
管理者
等
・統括安全衛生責任者を選任 ・統括安全衛生責任者のおこな
した事業者
う業務の内、技術的事項の管
・圧気工法の作業 等
安法 15 の 2
安規 18 の 3
理
店社安全衛生
・ずい道の建設
・現場の月1回以上の巡視
安法 15 の 3
管理者
・橋梁の建設(人口が集中し
・災害防止協議会への参加
安規 18 の 6
ている区域内における道路
・現場監督者に対する指導
安規 18 の 8
上若しくは道路に隣接した ・工程に関する計画及び機械の
場所又は鉄道の軌道上若し
設置に関する計画の確認
くは軌道に隣接した場所)
等
・鉄骨及び鉄骨鉄筋コンクリート
造の建築作業で 20 人規模
以上のもの(統括安全衛
生責任者、元方安全衛生
管理者を選任している場合
を除く)
安全衛生責任
統括安全衛生責任者の選任
・統括安全衛生責任者との連絡
安法 16
者
が必用な現場で、統括安全
・統括安全衛生責任者からの連
安規 19
衛生責任者を選任すべき事
絡事項のうち、当該請負人に
業者以外の請負人(下請人)
係わる事項の実施
・請負人が作成する作業計画書
等について、統括安全衛生責
任者との調整
安全衛生推進
常時 10 人以上 50 人未満の
者
労働者を使用する事業場
等
・労働者の危険又は健康障害
安法 12 の 2
を防止するための措置に関
安規 12-2・
すること
・労働者の安全又は衛生のた
めの教育の実施に関するこ
と
・健康診断の実施その他健康
の保持増進のための措置に
関すること
・労働災害の原因の調査及び
再発防止対策に関すること
・その他労働災害を防止する
ために必用な業務
- 643 -
12-3
職
名
統括安全衛生責任者
資
格
法令
1)当該場所で、その事業の実施を統括管理する者
安法 15
2)統括安全衛生責任者講習終了者
元方安全衛生管理者
1)大学(高校)理科系卒で、建設工事施工における
安規 18 の 4
安全衛生実務3年(5年)以上
2)厚生労働大臣が定める者
店社安全衛生管理者
1)大学(高校)理科系卒で、建設工事施工における
安規 18 の 7
安全衛生実務3年(5年)以上
2)8年以上の建設工事の施工における安全衛生実務
経験
3)店社安全衛生管理者能力向上教育修了者
安全衛生責任者
1)事業者の指名した者(職長等)
2)職長、安全衛生責任者教育修了者
安全衛生推進者
・安全衛生推進者の業務を担当するに必要な能力を
労告第 80 号
有すると認められる者
2)選任が必要な者(中小規模建設工事現場における安全衛生管理指針による)
職
名
業務の内容
資 格
統括安全衛生責任者
・混在作業による労働災害を防止
に準ずる者
するために必用な事項について統
・その事業を統括管理する
者
括管理を行う。
元方安全衛生管理者
・混在作業による労働災害を防止
に準ずる者
するために必用な事項の内の技術
・元方安全衛生管理者と同じ
的事項を管理する。
店社安全衛生管理者
・混在作業による労働災害を防止
に準ずる者
するために必用な事項を担当する
・店社安全衛生管理者と同じ
者に対して指導を行う。
・毎月1回以上当該建設現場を巡
視する。
・当該工事現場の協議組織に随時
参加する。
等
安全衛生責任者に
・統括安全衛生責任者に準ずる者と
に準ずる者
の連絡及び連絡を受けた事項の関係
者への連絡を行うこと。
・混在作業による危険の有無を確認
すること。
等
- 644 -
※
中小規模建設工事現場における安全衛生管理指針(抜粋)
基発第 209 号の 2
平成5年3月31日
1.趣 旨
統括安全衛生責任者等の選任による統括安全衛生管理体制の整備が義務付けられていない中小規
模建設工事現場において、元方事業者の統括安全衛生管理が不十分なことによる労働災害が多発し
ていることにかんがみ、中小規模建設工事現場における統括安全衛生管理体制又は本店、支店、営
業所等による建設工事現場に対する指導体制の確立を図り、中小規模建設工事現場における安全衛
生管理の充実を図ることを目的とする。
2.対象建設工事現場
概ね労働者数 10~49 人規模の建設工事現場(統括安全衛生責任者又は店社安全衛生管理者の選任
が義務付けられている建設工事現場を除く。
)
3.安全衛生管理体制の確立
(1)統括安全衛生責任者に準ずる者及び元方安全衛生管理者に準ずる者又は店社安全衛生管理者に
準ずる者の選任
上記2の対象建設工事現場について元方事業者は、当該建設工事現場の状況に応じ建設工事
現場単位での統括安全衛生責任者に準ずる者及び元方安全衛生管理者に準ずる者又は当該現
場を管轄する本店、支店、営業所等(以下「店社」という。
)において店社安全衛生管理者に
準ずる者の選任を行うものとする。
この場合、元方事業者が、統括安全衛生責任者に準ずる者及び元方安全衛生管理者に準ずる
者を選任する場合においては、関係請負人は、安全衛生責任者に準ずる者を選任するものとす
る。
略
4.統括安全衛生管理の充実
(1)建設工事現場における統括安全衛生管理の充実
イ.元方事業者は次の事項を確実に実施し、建設工事現場における統括安全衛生管理の充実を
図るものとする。
(イ)混在作業による労働災害を防止するために必用な事項
(1)協議組織の設置及び運営
(2)作業間の連絡及び調整
(3)作業場所の巡視
(4)関係請負人が行う安全衛生教育に対する指導、援助
以下 省略
- 645 -
2.元方事業者による建設現場における安全管理手法
(元方事業者による建設現場安全衛生管理指針について
基発第 267 号の 2 平成 7 年 4 月 21 日)
第1 趣旨 (略)
第2 建設現場における安全管理
1.安全衛生管理計画の作成(記載内容:安全衛生管理の基本方針及び目標・労働災害防
止対策)
2.過度の重層請負の改善
3.請負契約書における労働災害防止対策の実施及びその経費の負担者の明確化等
4.元方事業者による関係請負人及びその労働者の把握等
・安全衛生責任者、作業員氏名の通知
・安全衛生責任者の状況の把握
・建設機械設備の事前通知、定期検査及び始業前検査の実施
5.作業手順書(労働災害防止に配慮した)の作成
6.協議組織(労働災害防止協議会等)の設置・運営
7.作業間の連絡及び調整
8.作業所の巡視(毎作業日1回以上)
9.新規入場者教育(関係請負人が実施する新規入場者教育の実施に必要な場所、資料を
提供)
10.新たに作業を行う関係請負人に対する措置
11.作業開始前の安全衛生打合せ(毎日、その労働者を集め、作業開始前の安全衛生打合
せを実施)
12.安全施工サイクル活動の実施
13.職長会(リーダー会)の設置
14.関係請負人が実施する事項
以下 省略
3.作業主任者の選任が必用な作業
区
分
足場の組立て等作業
適用範囲
資
格
法規
つり足場、張出し足場高さ5m ・足場の組立て等作業主任者技能
安法 14
以上の足場の組立て・解体又は
安令 6-15
講習修了者
変更の作業
建築物等の鉄骨の組
建築物の骨組みで金属製の部 ・建築物等の鉄骨の組立て等作業
立て等作業
材で構成、その高さが5m以上
主任者技能講習修了者
安令 6-15 の
2
の組立て解体変更の作業
鋼橋架設等作業
安法 14
橋梁の上部構造が金属製の部 ・鋼橋架設等作業主任者技能講習
安法 14
材で構成、その高さが5m以上
安令 6-15 の
又は支間が 30m以上の架設・解
体変更の作業
- 646 -
終了者
3
区
分
適用範囲
資
格
法規
コンクリート橋架設
橋梁の上部構造がコンクリー ・コンクリート橋架設等作業主任
安法 14
等作業
ト造で、その高さが5m以上又
安令 6-15 の
者技能講習終了者
は支間が 30m以上の架設・変更
6
の作業
型枠支保工の組立て
型枠支保工の組立て又は解体 ・型枠支保工の組立て等作業主任
安法 14
等作業
の作業
安令 6-14
木造建築物の組立て
軒の高さ5m以上の木造建築 ・木造建築物の組立て等作業主任
安法 14
等作業
物の構造部材の組立て、又はこ
安令 6-15 の
者技能講習終了者
者技能講習修了者
れに伴う屋根下地、若しくは外
4
壁下地の取り付け作業
コンクリート造の工
コンクリート造の工作物(その ・コンクリート造の工作物の解体
安法 14
作物の解体等作業
高さが5m以上であるものに
安令 6-15 の
等作業主任者技能講習修了者
限る)の解体又は破壊の作業
5
コンクリート破砕器
コンクリート破砕器を使用す ・コンクリート破砕器作業主任者
安法 14
作業
る作業
安令 6-8 の 2
有機溶剤作業
屋内作業又はタンク、船倉若し ・有機溶剤作業主任者技能講習修
技能講習修了者
くは抗の内部その他の場所で、
了者
安法 14
安令 6-22
安令別表6の2に掲げる有機
有 則 16 ・
溶剤と以外のものとの混合物
17・18
で有機溶剤を当該混合物の重
量の5%を超えて含有するも
のを製造し、又は取扱う業務で
有機則 19 で定める作業
地山の掘削作業
掘削面の高さが2m以上とな
・地山の掘削作業及び土止め支
保工作業主任者技能講習修了
る地山の掘削作業
安法 14
安令 6-9
者
土止め支保工作業
土止め支保工のきりばり、又は ・地山の掘削作業及び土止め支保
安法 14
腹おこしの取付け又は取り外
安令 6-10
工作業主任者技能講習修了者
しの作業
採石のための掘削作
掘削面の高さが2m以上とな
業
る岩石の採取のための掘削作
・採石のための掘削作業主任者
技能講習修了者
安法 14
安令 6-11
業
ずい道の掘削等作業
ずい道等の掘削作業
・ずい道の掘削作業等作業主任者
技能講習修了者
安法 14
安令 6-12 の
2
ガス溶接作業
アセチレン溶接装置又はガス
集合溶接装置を用いておこな
う金属の溶接溶断又は加熱の
作業
- 647 -
・ガス溶接免許所有者
安法 14
安令 6-2
区
分
適用範囲
木材加工用機械作業
資
格
法規
丸のこ盤、帯のこ盤等、木材加 ・木材加工用機械作業主任者技能
安法 14
工用機械を5台以上有する事
安令 6-6
講習修了者
業場における当該機械による
作業
高圧室内作業
高圧室内作業(大気圧を超える
・高圧室内免許所有者
気圧下の作業室又はシャフト
安法 14
安令 6-1
の内部において行う作業
第一種酸素欠乏危険
酸素欠乏症にかかるおそれは ・酸素欠乏危険作業主任者又は酸
作業
あるが硫化水素中毒にかかる
素欠乏・硫化水素危険作業主任
おそれのない場所における作
者技能講習修了者
安法 14
安令 6-21
業
第二種酸素欠乏危険
酸素欠乏症及び硫化水素中毒
作業
にかかるおそれのある場所に
・酸素欠乏・硫化水素危険作業主
任者技能講習修了者
安法 14
安令 6-21
おける作業
特定化学物質等作業
令別表3に掲げる特定化学物 ・特定化学物質等作業主任者技能
安法 14
質を製造し、又は取り扱う作業
安令 6-18
講習修了者
特化則 27・
28
石綿作業
石綿が使用されている建築物 ・石綿作業主任者技能講習修了者
等の解体等の作業
石綿則 19・
・平成 18 年 3 月までに特定化学
20
物質等作業主任者技能講習修
了者
4. 特別教育を必用とする業務(抜粋)
区
分
アーク溶接作業者
業務内容
アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務
低圧電気取扱者(600V 以下) 充電電路又はその支持物の敷設、点検、修理、充電部分が
法規
安則 36-3
安則 36-4
露出した開閉器の操作業務
伐木等
胸高直径が 70cm 以上の立木の伐木、胸高直径 20cm 以上で
安則 36 8
著しく偏心の立木の伐木、特殊な方法の伐木又はかかり木
の胸高直径 20cm 以上の処理
チェーンソーを用いて行う
チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又
造材等の業務
は造材の業務
玉掛け作業者
つり上げ荷重1t未満のクレーン、移動式クレーンの玉掛
安則 36-8 の
2
安則 36 19
けの業務
廃棄物の焼却等設備の解体
廃棄物焼却炉等の設備の解体等の業務
安則 36 36
石綿が使用されている建築物等の解体等の作業、封じ込め
安則 36
又は囲い込みの業務
石綿則 27
等作業員
石綿の取り扱い作業者
- 648 -
区
分
業務内容
法規
特定粉塵作業者
特定粉塵作業に係わる業務
安則 36-36
第一種酸素欠乏危険作業員
第一種酸素欠乏危険作業に係わる業務
安則 36-26
第二種酸素欠乏危険作業員
第二種酸素欠乏危険作業に係わる業務
安則 36-26
ボーリングマシーン運転者
ボーリングマシーンの運転業務
安則 36-10
の3
高所作業車運転者
作業床の高さが 10m未満の高所作業車の運転業務
安則 36-10
の4
巻き上げ機運転者
動力駆動の巻き上げ機運転の業務
安則 36-11
クレーン運転者
つり上げ荷重 5t未満のクレーンの運転業務
安則 36-15
建設用リフト運転者
建設用リフトの運転業務
安則 36-18
ゴンドラ操作者
ゴンドラ操作の業務
安則 36-20
車両系荷役運搬機械運転者
最大荷重 1t未満のショベルローダー、フォークローダーの
安則 36-5
運転業務
不整地運搬車運転者
の2
最大積載量が 1t未満の不整地運搬車の運転業務
安則 36-5
の3
車両系建設機械基礎工事用
基礎工事用機械の作業装置の操作(車体上の運転席におけ
安則 36-9
の作業装置操作者
る操作除く)
の3
車両系建設機械運転者
機体重量 3t未満の令別表第7、第1号・第 2 号・第 3 号の
安則 36-9
(ブルドーザー、ドラグショベル、
機械の運転の業務
くい打機等)
車両系建設機械運転者
機体重量 3t未満の解体用機械(ブレーカ)の運転業務
安則 36-9
車両系建設機械運転者
締め固め用機械(ローラー)の運転業務及びコンクリート
安則 36-9
(ローラー・コンクリートポンプ車)
ポンプ車の操作業務
(ブレーカ)
- 649 -
富士市優良工事表彰実施要領
(平成17年 5 月19日制定)
(目的)
第1条 この要領は、富士市の発注する建設工事を請負った建設業者のうち、対象工事の成績評定が優
れた業者を優良工事施工業者として認定し、このうちから他の模範となる工事施工業者及び主任技術
者等を表彰することにより、建設技術の向上並びに施工の適正化を図り、もって優れた社会資本の整
備に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 工事 建設業法(昭和24年法律第100号。以下「法」という。
)第2条第1項に定める工事
をいう。
(2) 建設業者 法第2条第3項に定める者で、工事を直接請負うものをいう。
(3) 主任技術者等 法第26条第1項の主任技術者又は同条第2項の監理技術者をいう。
(4) 対象工事
富士市が発注し前年度に完成した工事で、工事検査室が取り扱う工事をいう。 た
だし、修繕工事等を除く。
(富士市優良工事選考委員会)
第3条 優良工事施工業者の認定候補者並びに優良工事施工業者及び主任技術者等の表彰候補者を選考
し、市長に推薦するため、富士市優良工事選考委員会(以下「委員会」という。) を置く。
(組織)
第3条の2 委員会は、委員長、副委員長及び委員をもって組織する。
2 委員長は副市長をもって充てる。
3 副委員長は、工事検査室長をもって充てる。
4 委員は、別表に掲げる職にある者をもって充てる。
5 委員長は、委員会の会務を総理し、委員会の会議の議長となる。
6 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときは、その職務を代行する。
7 委員会の庶務は、工事検査室が処理する。
(会議等)
第3条の3 会議は、委員長が招集する。
2 委員会は、構成員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 委員会の議事は、出席構成員の3分の2以上をもって決する。
(選考、推薦)
第3条の4 委員会は、別に定める富士市優良工事表彰実施要領 運用基準(以下「運用基準」という。
)
の認定要件に該当する工事施工業者を選考し、
優良工事施工業者の認定候補者として市長に推薦する。
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2 委員会は、前項の認定候補者の内から、運用基準の表彰要件に該当する工事施工業者及び主任技術
者等を選考し、表彰候補者として市長に推薦する。
3 前2項の場合において、委員会は、工事担当課長の意見を求めることができる。
(認定)
第4条 市長は、委員会の推薦に基づき優良工事施工業者を認定し、これを公表する。
2 市長は、前項の優良工事施工業者(以下「認定業者」という。
)に対し、工事の競争入札参加者の指
名等において、次年度の認定が行われるまでの間に限り、特別な配慮をすることができる。
ただし、認定業者が、運用基準の「特別な配慮をしない場合」に該当したときは、この限りでない。
(表彰)
第5条 市長は、委員会の推薦に基づき表彰者を決定し、これを表彰する。
(その他)
第6条 この要領に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。
附 則
この要領は、平成17年5月19日から施行する。
ただし、第4条第2項及び第5条第2項の規定は、平成18年の認定および表彰の日から施行する。
この要領は、平成18年5月10日から施行する。
この要領は、平成19年6月7日から施行する。
この要領は、平成22年6月7日から施行する。
この要領は、平成24年5月10日から施行する。
別表(第3条関係)
財政部長
商工農林部長
都市整備部長
上下水道部長
建設部長
財政部契約課長
上下水道部上下水道総務課長
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公共建設工事の個人情報保護事例
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H24.9.28.
富士市建設工事監督検査実務要覧の主な変更点などについて
富士市公共建設工事に適用する、
「富士市建設工事監督検査実務要覧」
(以下「監督検査実
務要覧」という。)を、平成24年度の規則、要領など建設工事執行に関する改正点などを反
映した内容に、更新します。
監督検査実務要覧における平成18年版からの主な改正点は以下の通り。
記
1.監督検査実務要覧の構成
工事成績評定に関して、土木工事と建築・設備工事に細分化を図り、併せて{請負
工事関係通達}などを追加した。
平成24年版は、全4冊(『Ⅰ.監督検査規定、規則・約款』
・
『Ⅱ.土木工事成績評定
等』・『Ⅲ.建築・設備工事成績評定等』・『Ⅳ.請負工事関係通達等』)で構成。
※ 尚、以下の第 2 項及び 3 項に関しては、平成23年版から平成24年版への修
正事項は{文字下に点線}付きで、追加事項は{文字下に二重線}付きで表示。
2.更新された規則、規定、要領など
《建設工事全般に共通する監督検査、規則・約款などに関する事項》
・富士市建設工事監督規程(平成 23 年3月 29 日改正)
・富士市建設工事検査規定(平成 23 年3月 29 日改正)
・富士市建設工事検査規定の運用について(平成 22 年8月 1 日改正)
・富士市建設工事成績評定実施要領(平成 23 年 7 月 1 日改正)
・富士市建設工事執行規則(平成 24 年4月 27 日改正)
・富士市建設工事請負契約約款(平成 24 年 5 月 1 日改正)
・富士市少額建設工事成績評定の運用(平成 22 年8月 1 日改正)
・富士市少額工事 維持・修繕工事成績評定の運用(平成 23 年7月 1 日改正)
・維持・修繕工事の評定方法(平成 23 年4月 1 日改正)
・富士市建設工事評定結果第 1 次検討委員会設置要領(平成 22 年5月 1 日改正)
・富士市建設工事評定結果第 2 次検討委員会設置要領(平成 22 年5月 1 日改正)
・富士市優良工事表彰実施要領(平成 22 年6月 7 日改正)
《土木工事の成績評定に関する事項》
・富士市土木工事成績評定基準(平成 23 年 7 月 1 日改正)
・ 工 事 成 績 評 定 表 ( 土 木 ) 、 工 事 成 績 採 点 表 、 施 工 フ ゚ ロ セ ス チ ェ ッ ク リ ス ト (H24.4 改 正 ) 、
考査項目別運用表(平成 23 年 7 月 1 日改正)
・工事特性、創意工夫、社会性等に関する実施状況報告書(平成 23 年 7 月 1 日改正)
《建築・設備工事の成績評定に関する事項》
・富士市建築・設備工事成績評定基準(平成 22 年 8 月 1 日改正)
・工事成績評定表(建築・設備)、工事成績採点表、施工プロセスチェックリスト、
考査項目別運用表(平成 22 年 8 月 1 日改正)
・工事特性、創意工夫、社会性等に関する実施状況報告書(平成 22 年 8 月 1 日改正)
- 665 -
3.平成23年版以降で追加収録したもの
《土木工事、建築・設備工事に共通する関係通達等》
・「建設工事執行及び設計変更事務処理にかかわる事務取り扱い」以外の下記の事項
1.CORINS への登録、 2.建退共制度、 3.社会保険・労働保険への加入(H24 追加)、
4.工事保険への加入、 5.主任又は監理技術者と現場代理人の取扱、
6.主任又は監理技術者の専任を要しない期間、 7.低入札価格調査制度
8.建設機械の排ガス対策、 9.騒音・振動対策と特定建設作業(届) など
・富士市発注工事における建設発生土の適正処理について(H24.4 現在)
・公共工事における個人情報保護の対応事例(H24 追加)
《土木工事用》
・少額建設工事成績評定に関する
・・・・・・請負金額 500 万円未満の工事成績評定
1)工事採点表
2)細目別評定点採点表
3)項目別評定点
4)考査項目別運用表(担当監督員・主任監督員・検査員)
・土木工事の品質証明制度と品質証明員について
・・・・・・品確法及び低入札対応
・土木工事の設計照査ガイドラインに関する(H24.4 現在)
・・・・・・適正化法への対応
・土木工事の設計変更ガイドラインに関する(H24.4 現在)
・・・・・・適正化法への対応
・土木工事契約関係書類チェックリスト(案)(H24.9 現在)
・・・・・・適正化法への対応
・土木工事完成図書チェックリスト(案)(H24.9 現在)
・・・・・・適正化法への対応
・土木工事写真の撮り方(案) (H24.9 現在)
・・・・・・品確法及び適正化法などへの対応
《建築・設備工事用》
・考査項目別運用表の解説(担当監督員・総括監督員・検査員)
・・・・・・H22 改訂への対応
・少額建設工事成績評定に関する
・・・・・・請負金額 500 万円未満の工事成績評定
1)工事採点表 2)細目別評定点採点表
3)項目別評定点
4)考査項目別運用表(担当監督員・総括監督員・検査員)
※「品確法」とは、「公共工事の品質確保に関する法律」の略称。
※「適正化法」とは、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の略称。
4.請負者など従来名称の更新と存続・読替
平成23年度の契約締結より、建設業法遵守として対等な契約締結の為に、「請負者」
との記述は「受注者」になりましたが、建設業法および労働安全衛生法など従来からの
記載表現に沿った「請負人」「工事請負」「下請」などの記述は、平成22年以前の通知文書
などを含め原文のまま掲載しております。 したがって、該当文書などにおける、監督
検査実務要覧内の「請負者」との記載については、平成23年度以降の契約締結工事にお
いては、「受注者」と読み替えるものとする。
5.今後の改正事項への対応
今後、新たに監督検査実務要覧が作成等更新されるまでの間に、建設工事執行に
関する改正事項がある場合の対応は、
別紙、「補足、今後の改正事項への対応」による。
以上
- 666 -
H24.9.28.
補足、今後の改正事項への対応
今後(この文書の配信以降)、条例、規則、要領など建設工事執行に関する更新・改正・制定
などがなされた場合、監督検査実務要領の更新改定を公表するまでの間については、富士
市公共建設工事における監督検査業務の適切な履行を図る上から、監督検査実務要領に関
連する改正事項への対応としては、原則として以下の通りとする。
記
1.改正事項などの反映
監督検査実務要領として通知(公開等を含む)した内容に関する改正点が今後通知された
場合には、現行の記載内容を改正された内容に読替えて適用(注1)することとする。
また、監督検査実務要領により公開している内容以外(注2)に、新たに建設工事の監督検査
の執行に関する事項が公開された場合は、原則として監督検査実務要領への記載事項と同
等に扱う。
ただし、設計図書の特記仕様書などに定めた事項(注2)に関しては、適切な契約履行上か
ら、下記第 4 項に適用に該当しない場合には、仕様の変更協議が必要となる。
(注1)読替えるとは、公開文書全般が更新等されずに、部分改正などの通知文が新たに公開 (web 公開などによ
る通知を含み以下「改定通知」という。)された場合、公開済み文書中での表現に関して、改訂通知された内容
についてのみを読替えて適用することをいうものであり、この「読替え」の範囲には、新たに追加された事
項の適用有無は含まれない。
また、その改訂通知の有効期間は、当該内容に関して新たな公開などが行われるまでとする。
(注2)公開している内容以外とは、前述(注1)の該当内容を含む監督検査実務要覧として公開している内容以外
の、本来であれば監督検査実務要覧に追加すべき事項のことであり、当該文書を公開する際には、原則として
その取扱いを記載するとともに、原則として公開日以降がその取扱い期間となる。
(注3)特記仕様書などに定めた事項の範囲としては、施工管理基準が明確でない事項に関する管理基準の設定や、
施工管理基準を上回る管理基準の設定などをいい、特記仕様書などで現場条件として明示していることのほ
か、設計照査などによる協議事項として支持承諾された管理基準についても含まれる。
2.改正事項などの履行
改正事項などの履行期日に関しては、履行する旨の通知・公開情報に期日の定めのない
限り、原則として通知・公開情報の開始された日(注4)とする。
(注4)開始された日とは、電子文書による通知であれば「到達日」
、web 公開情報であれば「web サイトへの公開
日」をいい、工事検査室の庁内公開フォルダ掲示日は含まれない。
3.改正事項の履行が行われなかった場合
工事の成績評定などにおいて、工事検査室が対応実施を通知した共通仕様書及び施工管
理基準など、請負工事関係提出書類(注5)に関する改正点が履行されなかった場合には、各
該当項目の評定考査において、受注者の履行不足として考査することとする。
また、条例などに関する改正点を履行されなかった場合には、法令遵守などに関する減点
要素として、考査しなければならない。
(注5)請負工事関係書類には、契約関係及び完成図書などの提出書類のほか、検査時などに提示する書類(共通
仕様書での提示義務、法令などにより作成義務を負うもの)も含まれる。
- 667 -
4.改正事項の反映・履行を留保する場合
次のいずれかに該当する場合は、改正事項の反映・履行から除外する。
・工事検査室より他の運用等を促す通知文書・公開情報など、指示事項が別途有る場合
には、その内容を優先する。
・履行開始期日に、既に関連事項の施工・事務処理などが修了または開始されており、
改正事項への対応が極めて困難であることが確認(注6)できた場合。
・工事執行上、改正事項の履行を行わないことを監督員が担当検査員と協議の上、受注
者に文書で指示(注7)した場合。
・その他、改正事項の反映・履行を留保することを市長が特に認めた場合。
(注6)極めて困難であることが確認できた場合とは、刑事・民事を含む何らかの公的な処分に該当する法令違反
等が無く、かつ、工事目的物の機能や品質・代価に関して不足が無いことを前提条件とする。
(注7)文書で指示とは、設計条件として現場説明事項などに共通仕様書への遵守などを規定した工事において、
受注者側よりの設計照査や協議書により指示を求められた場合に限ることとし、該当する場合には、施工計
画書等にその旨を明記しなければならない。
よって、設計図書における現場条件などの明示が不十分な場
合、設計照査などによる対応も、受発注者間では当然なされていなければならない。
また、指示が文書以外(口頭など)の場合は、原則として有効とは認められない。
5.実務要覧の改正・改訂に直接含まれないもの
以下の内容は、富士市建設工事監督検査実務要覧の改正・改訂に伴う記載事項には含まれ
ない。
①
②
③
工事共通仕様書及び施工管理基準などの改正・改訂に関する事項(注8)。
設計積算基準及び設計積算単価などの改正・改訂に関する事項(注9)。
その他、建設工事監督検査実務の履行に関して、特に重要ではない事項(注 10)と市長
が認めたもの。
(注8)共通仕様書及び施工管理基準は、工事監督技術基準に該当するものであるが、その改正・改訂に関する事
項とは、富士市の仕様書及び基準の定義や改正・改訂をいい、監督検査実務要覧の記載内容以外に関しては、
別途の取扱いにおいて公開される。
(注9)積算基準及び積算単価は、工事監督技術基準に該当するものであるが、その改正・改訂に関する事項とは、
積算内容を対象とし、一般的にこれに伴って、監督検査実務要覧の記載事項が変更されることはない。
(注 10)特に重要ではない事項と成り得るための前提条件は、この第 1 項から第 4 項まで及び第 5 項の①・②に
該当しないことであり、かつ、工事検査室よりの文書等の公開が行われていない事項に限られるが、その適
用には充分留意すること。
以上
- 668 -
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