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HO26 1 立体商標「ジャンポール・ゴルチエ」香水瓶事件 ニーチェアX
HO26 13 立体商標「ジャンポール・ゴルチエ」香水瓶事件 知財高裁平成23年4月21日 本願商標が香水について自他商品識別力を 有するに至った結果,これと極めて密接な関 係にある化粧品等の本願の前記限定された 指定商品に,本願商標が使用された場合にも, 香水に係る取引者・需要者と重なる上記指定 商品の取引者・需要者において,上記商品が 香水に係る「ジャンポール・ゴルチエ」ブランド を販売する原告の販売に係る商品であること を認識することができるというべきである。 13 知財高判H23/4/21 シャンポール・ゴルチェ事件 知高230629 立体商標 13 Yチェア・ハンス J ウェグナー 最一判03032 著作権 ニューヨーク近代美術館永久収蔵品 ニーチェアのNY(ニー)はデザイナー新居猛の 姓(ニイ)とデンマーク語のNY(新しい・フレッシュ) の意味をとって名付けられました。 ニーチェアX 13 知財高判H23/6/29 Yチェア事件 1 HO26 菓子おまけフィギュア事件 大阪高裁170728 16 16 大阪高判H17/7/28 海洋堂フィギュア事件 菓子おまけフィギュア事件 大阪高裁170728 16 動物フィギュアは,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり, 動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見 られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたと いうような事情は見当たらない。 したがって,本件動物フィギュアには,制作者の個性が強く表出されているとい うことはできず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。 してみると,本件動物フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた 一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評 価されるとまではいえず,著作物には該当しないと解される」 妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」 を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一 定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し 得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認 められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当 である。 とりやま せきえん 16 大阪高判H17/7/28 海洋堂フィギュア事件 2 HO26 16 ファービー事件:応用美術(人形) 平成14年7月9日判決 仙台高裁刑事1部 •「ファービー」の形態の著作物性について ◦「ファービー」の形態は,物の形態あるいは外観の美的創作であって,著作権 法の領域においては,実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的と して制作される応用美術といわれるものに属する。 ◦「実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用 美術については,現行著作権法上は原則として著作権法の対象とならず,意 匠法等工業所有権制度による保護に委ねられていると解すべきである。 ただ,そうした応用美術のうちでも,純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の 対象とされると認められるものは,美術の著作物として著作権法上保護の対象 となると解釈することはできる。そこで,美術の著作物といえるためには,応用 美術が,純粋美術と等しく美術鑑賞の対象となりうる程度の審美性を備えてい ることが必要である。これを本件で問題となっている実用品のデザイン形態に ついていえば,そのデザイン形態で生産される実用品の形態,外観が,美術鑑 賞の対象となりうるだけの審美性を備えている場合には,美術の著作物に該 当するといえる。」 本件『ファービー』のデザイン形態は,著作権法2条1項1号に定める著作物に 該当しない 16 仙台高判H14/7/9 ファービー刑事事件 ギャロップレーサー事件 19 最高裁160213 競走馬の馬主らが,競走馬の名称を無断で使用したゲー ムソ フト(ギャロップレーサー)を製作,販売したゲームソフ ト会社に対し,ゲームソフトの販売差し止め及び損害賠償 を求めた。 1審(名古屋地裁),2審(名古屋高裁)とも,顧客吸引力を 根拠にパブリシティ権侵害を認めたが,最高裁は物のパ ブリシティ権を否定した。 ・ 各競争馬の名称に対する保護は,競走馬に対する所有権 からは生じず,競走馬の名称を勝手に用いても所有権侵害に はならない。 ・ 物の名称の使用などに関しては,商標法,著作権法,不正 競争防止法などの法律により,一定の要件の下で保護してお り,これらの法律による保護とは別に法令等の根拠もなく,排 他的な権利を認め,あるいは無断利用行為を不法行為とする ことはできない。 19 最判H16/2/13 ギャロップレーサー事件 3 HO26 28 自然法則に反する発明 東京高裁480629 本願発明は,出願人によれば,いわゆる永久運動,すなわち無限に動力を発 生させることは,現在まで,エネルギー恒存の原理から絶対不可能とされてい たが,本願発明は,これを可能ならしめた方法であり,水素は酸素と化合する 際熱を発して水となり,水は分解すると酸素と水素に分離し,両者は,分解力, 化合発熱量は相等しく,水素は浮力を有し,自己の十数倍の質量を上昇せしめ る力をもち,上昇した水素ガスは,上空において空気と混合させ,燃焼して熱と 水を生じ,この水と浮昇の際持ち揚げた質量と共に落下して動力を生ずるとい う原理を種々の方法により装置化すれば永久に動力と酸素ガスが発生し,無 限動力を得ることができるとの知見を基礎とし水等を分解し,その水素の浮揚 力により物質を上昇せしめ,空気と混合燃焼し,動力と水を得,その水を上昇 せしめた水と共に落下せしめ動力を起こし,それらの動力により分解のエネル ギーを給与し,もって動力を発生せしめる無限動力発生方法,をその要旨とす るものであることが明らかであるところ,鑑定の結果によれば,本願発明 は,その実施は不可能であるとみるを相当とし,これを左右するに足る 的確な証拠はない」 28 東京高判S48/6/29 無限動力発生方法事件 29 双方向歯科治療ネットワーク事件 知財高裁平成20年6月24日 請求項に何らかの技術的手段が提示されているとしても,請求 項に記載された内容を全体として考察した結果,発明の本質が, 精神活動それ自体に向けられている場合は,特許法2条1項に 規定する「発明」に該当するとはいえない。 他方,人の精神活動による行為が含まれている,又は精神活 動に関連する場合であっても,発明の本質が,人の精神活動を 支援する,又はこれに置き換わる技術的手段を提供するもので ある場合は,「発明」に当たらないとしてこれを特許の対象から排 除すべきものではない。 特許法29条1項柱書きにいう「発明」に該当しない 特願2000-579144号 特表2002-528832号 請求項18から補正により12 29 知財高判H20/6/24 双方向歯科治療ネットワーク事件 1 HO26 29 音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書 知財高裁平成20年08月26日 本願発明が特許法2条1項に定義する「発明」ということはできず,同法2 9条1項柱書きの規定により特許を受けることができないとした拒絶審決 の取消を求めた審決取消訴訟で,特許庁の拒絶審決が取り消された事案 ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,その構成中に, 人の精神活動,意思決定又は行動態様を含んでいたり,人の精 神活動等と密接な関連性があったりする場合において,そのこと のみを理由として,特許法2条1項所定の「発明」であることを否 定すべきではなく,特許請求の範囲の記載全体を考察し,かつ, 明細書等の記載を参酌して,自然法則の利用されている技術的 思想の創作が課題解決の主要な手段として示されていると解さ れる場合には,同項所定の「発明」に該当するというべきである。 29 知財高判H20/8/26 音素索引多要素行列構造の対訳辞書事件 資金別貸借対照表事件 29 東京地裁平成15年1月20日 実用新案登録第2077899号 平成元年10月16日出願 資金別貸借対照表を使用する被告の行為が実用新案権を侵害するとして,そ の使用の差止めと損害賠償を求めた事案で,登録要件としての考案性すなわち 「自然法則を利用した技術的思想の創作」が争われた 実用新案法2条1項及び3条1項によれば,「たとえ技術的思想の創作であったと しても,その思想が,専ら,人間の精神的活動を介在させた原理や法則,社会科 学上の原理や法則,人為的な取り決めを利用したものである場合には,実用新案 登録を受けることができない 技術的思想の創作中に,自然法則を利用した部分が全く含まれない場合はいう までもないが,仮に,自然法則を利用した部分が含まれていても,ごく些細な部分 のみに含まれているだけで,技術的な意味を持たないような場合も,同様に,実用 新案登録を受けることができないというべきである 効果も,自然法則の利用とは無関係の会計理論ないし会計実務を前提とした効 果にすぎない 29 東京地判H15/1/20 資金別貸借対照表事件 2 HO26 30 ビットの集まりの短縮表現を生成する方法 知財高裁平成20年02月29日 数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)そのものは, 純然たる学問上の法則であって,何ら自然法則を利用するものではないか ら,これを法2条1項にいう発明ということができないことは明らかである。 また,既存の演算装置を用いて数式を演算することは,上記数学的課題 の解法ないし数学的な計算手順を実現するものにほかならないから,これ により自然法則を利用した技術的思想が付加されるものではない。 数学的なアルゴリズムであってもコンピュータで演算を実行することで時間 が短縮されれば発明になるというに等しく,自然法則を利用しない単 なる数式を発明から除外する法2条1項の趣旨を没却するものでる。 30 知財高判H20/2/29 ビットの集まりの短縮表現生成方法事件 欧文字単一電報隠語作成方法事件 30 最一1953年04月30日 原判決において,原告らの発明は,「欧文字,数字,記号,等を 適当に組み合わせて電報用の暗号を作成する方法」と認定 「特許に値すべき発明の本体は自然法則の利用によつて一定 の文化目的を達するに適する技術的考案ということにあつて,工 業的発明とはあらゆる産業に利用されうるものであるが技術産 業的特質をもつた発明に限る趣旨と解す 本願発明は結局何等装置を用いず,又,自然力を利用した手段 を施していないから,特許に値する工業的発明であるとはいえな い 30 最判S28/4/30 欧文字単一電報隠語作成方法事件 3 HO26 原子力エネルギー発生装置事件 32 最高裁昭和44年1月28日 本発明装置は,定常的かつ安全に実施しがたく,技術的に未完 成と認められる以上,エネルギー発生装置として産業的な技術 的効果を生ずる程度にも至っていない 発明は自然法則の利用に基礎づけられた一定の技術に関する 創作的な思想であるが,特許制度の趣旨にかんがみれば,その 創作された技術内容は,その技術分野における通常の知識・経 験をもつ者であれば何人でもこれを反覆実施してその目的とす る技術効果をあげることができる程度にまで具体化 され,客観 化されたものでなければならない。 その技術内容がこの程度に構成されていないものは,発明とし ては未完成であり,もとより旧特許法一条にいう工業的発明に該 当しないものと いうべきである。 32 最判S44/1/28 原子力工ネルギー発生装置事件 育種増殖法事件 最三120229 特許法1条,29条 黄桃 33 【要旨】:育種過程における反復可能性は,科学的にその植物を再現することが当 業者において可能であれば足り,その確率が高いことを要しない。 【判示】:発明は,自然法則の利用に基礎付けられた一定の技術に関する創作的な 思想であるが,その創作された技術内容は,その技術分野における通常の知識経 験を持つ者であれば何人でもこれを反復実施してその目的とする技術効果を挙げる ことができる程度にまで具体化され,客観化されたものでなければならないから,そ の技術内容がこの程度に構成されていないものは,発明としては未完成のもので あって,特許法2条1項にいう「発明」とはいえない(最高裁昭和39年(行ツ)第92号同 44年1月28日第三小法廷判決・民集23巻1号54頁参照)。したがって,同条にいう 「自然法則を利用した」発明であるたには,当業者がそれを反復実施することにより 同一結果を得られること,すなわち,反復可能性のあることが必要である。そして,こ の反復可能性は,「植物の新品種を育種し増殖する方法」に係る発明の育種過 程に関しては,その特性にかんがみ,科学的にその植物を再現することが当業 者において可能であれば足り,その確率が高いことを要しないものと解するのが 相当である。けだし,右発明においては,新品種が育種されれば,その後は従来用 いられている増殖方法により再生産することができるのであって,確率が低くても新 品種の育種が可能であれば,当該発明の目的とする技術効果を挙げることができる からである。 33 最判H12/2/29 黄桃の育種増殖法事件 4 HO26 非常に大規模な固定化ペプチドの合成事件 33 知財高裁平成19年11月29日 本件発明のような「解析装置」についての発明の実施可能性の 判断にまで,黄桃事件判決の趣旨が及ぶものではない。 本件発明は「装置」の発明である以上,常に一定の効果を発揮 するからこそ「発明」ということができるものであり,当業者が反復 実施してその目的とする技術効果を挙げることができる程度にま で具体化され,客観化されたものでなければならない。 また,明細書の記載は,当業者が容易に反復して発明の実施を することができる程度のものでなければならない。 33 知財高判H19/11/29 非常に大規模な固定化ペプチドの合成事件 薬物製品事件 34 最高裁判所第一小法廷昭和52年10月13日 審決取消 特許権 行政訴訟 原告:特許庁 法四九条一号は,特許出願にかかる発明が法二九条の規定によ り特許をすることができないものであることを特許出願の拒絶理 由とし,法二九条は,その一項柱書において,出願の発明が「産 業上利用することができる発明」であることを特許要件の一つとし ているが,そこにいう「発明」は法二条一項にいう「発明」の意義に 理解すべきものであるから,出願の発明が発明として未完成のも のである場合,法二九条一項柱書にいう「発明」にあたらないこと を理由として特許出願について拒絶をすることは,もとより,法の 当然に予定し,また,要請するところというべきである。 34 最判S52/10/13 薬物製品事件 5 HO26_3 44 ビンゴゲーム公序良俗事件 装置が不正行為の用に供せられない利用も可能 本装置により行われる競技又は遊戯が不生産的非工業的であるとしても, 発明の内容たる競技装置自体を製造又は販売すること等による工業的効 果がないものとは到底認められない 本装置が遊戯者に於て格別の技倆を用いることなく,殆んど偶然の結果によ り勝敗を争う遊戯の器具であることは明らかであり,このような器具による勝 敗に金品を賭すること及び之に随伴して不正手段の行われることのあり得べ きことは当裁判所に顕著なところであるけれども,器具が本来之を純然たる 娯楽の用に供することを目的としたものであって,賭博行為その他の不正行 為の用に供することを目的としたものでないことは発明の明細書の記載内容 上明らかであり,且発明の内容に照らし,純然たる娯楽用に供し,不正行為 の用に供さないことも可能と認められるから,装置が不正行為の用に供せら れることがあり得ると言う理由を以て特許法第三条第四号にいわゆる秩序若 くは風俗を紊る恐れがあるものとすることはできない 44 東京高判S31/12/15 ビンゴゲーム装置事件 44 実用新案権 公序良俗事件 紙幣に孔をあける技術は国により利用可能 東京高裁S611225 紙幣にパンチ孔を穿設するという行為,す なわち,犯罪行為をそそのかすこと以外に 有り得ない旨主張するが,実施不能である ことと公序違反となることとは直接結びつく ものでないばかりか,本願考案は,産業上 利用できる考案というべきであるから,本 願考案が国によって実施される可能性が 将来において全くないとはいい難いし,仮 に,本願考案がヒントになって,パンチ孔 の穿設していない紙幣に孔を穿つ者がい るとしても,そのことと本願考案が公序に 反するか否かとは全く別問題であつて,被 告の右主張は,採用するに由ない。 44 東京高判S61/12/25 紙幣事件 1 HO26_3 医療行為の産業利用性 45 医療行為は産業上利用性はない 【要旨】医薬や医療機器と医療行為そのものとの間には,特許性の有無を検討 する上で,見過ごすことのできない重大な相違がある 【判示】医療行為そのものにも特許性が認められるという制度の下では,現に医 療行為に当たる医師にとって,少なくとも観念的には,自らの行おうとしている医 療行為が特許の対象とされている可能性が常に存在するということになる。しか も,一般に,ある行為が特許権行使の対象となるものであるか否かは,必ずしも 直ちに一義的に明確になるとは限らず,結果的には特許権侵害ではないとされ る行為に対しても,差止請求などの形で権利主張がなされることも決して少なく ないことは,当裁判所に顕著である。 医師は,常に,これから自分が行おうとしていることが特許の対象になってい るのではないか,それを行うことにより特許権侵害の責任を追及されることにな るのではないか,どのような責任を追及されることになるのか,などといったこと を恐れながら,医療行為に当たらなければならないことになりかねない。医療行 為そのものを特許の対象にする制度の下では,それを防ぐための対策が講じら れた上でのことでない限り,医師は,このような状況で医療行為に当たらなけれ ばならないことになるのである。 45 東京高判H14/4/11 外科手術を再生可能に表示する装置事件 48 一眼レフカメラ事件 要求による公布も頒布された刊行物 【要旨】:29条1項3号の刊行物は,要求の都度,複写され交付されるものでよ い。 【判示】:特許法29条1項3号にいう頒布された刊行物とは,公衆に対し頒布に より公開することを目的として複製された文書,図画その他これに類する情 報伝達媒体であって,頒布されたものを指すところ,ここに公衆に対し頒布に より公開することを目的として複製されたものであるということができるものは, 必ずしも公衆の閲覧を期待してあらかじめ公衆の要求を満たすことができる とみられる相当程度の部数が原本から複製されて広く公衆に提供されている ようなものに限られるとしなければならないものではなく,右原本自体が公開 されて公衆の自由な閲覧に供され,かつ,その複写物が公衆からの要求に 即応して遅滞なく交付される態勢が整っているならば,公衆からの要求をまっ てその都度原本から複写して交付されるものであっても差し支えないと解す るのが相当である。 48 最判S55/7/4 一眼レフカメラ事件 2 HO26_3 かき餅生地の製造公然実施 49 不特定者が見学可能ならば公然実施 工場内に設置された機械装置に具現された発明が公然実施されていたと認め 得るかどうかについては,その工場の管理者が,工場内に立ち入る者に対し,当 該機械装置に具現された技術内容を,原則として秘密にするとの方針の下に, 何らかの必要な措置を取り,例えば,一般人による当該機械装置の見学は,原 則として認めない,との方針を取っていたか,それとも,工場内に立ち入る者に 対し,当該機械装置に具現された技術内容を,原則として秘密にするとの措置を 取らず,見学の希望があれば,不特定多数の一般人に対しても,当該機械装置 を公開し,その機械装置の見学を自由に許すとの方針を取っていたかどうかを 基準として区別すべきである。 前者であれば,当該機械装置に具現された発明を公然実施していたと認める ことはできないというべきである。しかし,後者であれば,実際に工場に出入りし た者が少数の特定の者にすぎなかったかどうか,あるいは,実際に希望をして見 学に来た者がいたかどうかを問わず,当該機械装置を秘密にすることなく公開す るとの方針を取ってこの機械装置を営業運転してきたということだけで,この機械 装置に具現された発明は,公然実施されてきたものと認めるに十分というべき である。 49 東京高判H15/4/10 かき餅生地の製造装置事件 49 マイクロバブル審決取消 商品が購入可能ならば公然実施 「公然実施」とは,その発明の内容を不特定多数の者がその発 明の内容を知り得るような状況でその発明が実施されることを意 味する。 本件のような物の発明の場合には,購入者が販売者からその発 明の内容に関しその分析等の試験を行うことを禁じられているな ど特段の事情がない限り,購入者は商品を自由に分解・分析して その発明の内容を知ることができる。 よって,商品が販売されたことにより,その商品に関する発明は 不特定多数の者が知り得る状況におかれたことになるというべき である。 49 東京高判H16/3/24 マイクロバブル事件 3 HO26_3 医薬品公然実施事件 東京地裁170210 成分が公開されても分析不可なら公然実施でない 特許制度は,新たな技術思想の社会への公開の代償として,これについて独占権を付与するも のであるから,既に社会的に知られている技術的手段に対して独占権を付与する必要はなく,また, そのような技術的手段に対して独占権を付与することは自由な技術の発展をかえって妨げること になりかねないものである。 特許法が,同法29条1項各号所定の発明については特許を受けることができない旨を規定し ているのは,このような趣旨に出たものである。そうすると,同項2号の「公然実施」については,不 特定多数の者の前で実施をしたことにより当該発明の内容を知り得る状況となったことを要するも のであり,単に当該発明の実施品が存在したというだけでは,特許取得の妨げとはならないと解す るのが相当である。この場合において,当該発明が物の発明である場合にあっては,当該発明の 実施品が,当業者にとって当該実施品を完全に再現可能なほどに分析することが可能な状態にあ ることまでは必要でないが,当業者が利用可能な分析技術を用いて当該発明の実施品を分析する ことにより,特許請求の範囲に記載されている物に該当するかどうかの判断が可能な状態にある ことを要するものと解するのが相当である。 被告製剤の製造方法は,企業秘密として厳格に管理されており,その含有成分の組成は公開さ れているものの,その他の情報は外部に開示されておらず,分岐鎖アミノ酸原料と練合材を練合し, 造粒して顆粒状にし,さらにコーティングを施した製剤という性質上,イソロイシン,ロイシンの個々 の粒子を練合前の粒子径のままに分離することは困難であると認められ,市販されている被告製 剤からこれに含有される分岐鎖アミノ酸粒子の粒度を解析し,被告製剤が本件第1特許発明請求 項3の構成を備えたものであり,同請求項1の方法により製造されたことを知ることは,当業者が通 常に利用可能な分析技術によっては極めて困難というべきである 50 東京地判H17/2/10 分岐鎖アミノ酸含有医薬品穎粒製剤事件 4 HO26_4 用途発明の特許性 引用例は一般式を有する有機燐酸エステルの製法であるのに 対し、本件発明は、特定の構造を有する化合物を含有すること を特徴とする、特定の効果を有する殺虫剤であって、発明の範 疇を異にするものである。 本件発明の殺虫剤が含有する化合物は、引用例に一般式で 示された上位概念のうちに包含されるものではあるけれども、引 用例には具体的に明記されず、かつ本件発明の殺虫剤は、引用 例の全然言及しなかった独立の技術的課題を解決した別個の 発明と解すべきものである。 本件発明が含有する化合物を引用特許発明の製法による場 合、両者の間には利用関係が成立するとしても、同一発明に対 する二重特許のおそれがあるものではない。 56 東京高判S38/10/31 有機燐酸エステル殺虫剤事件 発明者と管理者 本願発明は,Mが,多孔性現象を発見したことが端緒となったこと,多孔性 現象の効果及び有用性などを確認し,検証するために,被告の指導を受け ながら,条件等を変え,実験を重ねて,有用性に関する条件を見いだし,そ の結果に基づいて,本件修士論文を作成したことが明らかである。 本件修士論文には本願発明について,その技術的思想の特徴的部分が含 まれているので,遅くともMが本件修士論文を作成した時点において,当業 者が反復実施して技術効果を挙げることができる程度に具体的・客観的な構 成を得たものということができ,本願発明が完成したものということができる。 原告のMに対する指導,説明,指示等の具体的内容としては,①水熱化学 の分野について一般的な説明をし,実験の手順を説明したこと,②DTA分析 を指示したこと,③現象発見の後にSEM写真の撮影を指示したことであるが, ①,②については,本願発明とは直接な関係はなく,③についても一般的な 指導にとどまる。 そうすると,原告は,Mに対して,管理者として,一般的な助言・指導を与え たにすぎないので,本願発明の発明者であると認めることはできない。 66 知財高判H20/5/29 ガラス多孔体事件 1 HO26_4 特許権譲渡対価請求事件 発明の成立過程を着想の提供と着想の具体化の2段階に分け,①提供した着 想が新しい場合には,着想者は発明者であり,②新着想を具体化した者は,その 具体化が当業者にとって自明程度のことに属しない限り,共同発明者である,と する見解が存在する。 この見解については,発明が機械的構成に属するような場合には,一般に,着 想の段階で,これを具体化した結果を予測することが可能であり,上記①により 発明者を確定し得る場合も少なくないと思われるが,発明が化学関連の分野の 場合には,一般に,着想を具体化した結果を事前に予想することは困難であり, 着想がそのまま発明の成立に結び付き難いことから,①を当てはめて発明者を 確定することができる場合は,むしろ少ないと解される。 本件についても,細粒核を製造する方法と論文に示された方法を組み合わせる という着想は,それだけでは結果に結び付くものではなく,また,着想自体も当業 者であればさほどの困難もなく想到するものであって,創作的価値を有する発想 ということもできない。 66 東京地判H14/8/27 細粒核事件 2 HO26_5 発明完成と使用者の貢献 本件発明当時原告は商品試験所所長の地位にあり,同発明は原 告の職務の遂行そのものの過程で得られたものであること,同発 明は,被告従業員の協力を得た上,創業以来被告の社内に蓄積 されてきたガラス製マホービンの製造に関しての幾多の発明考案 や経験及びノウハウ等を利用して成立したいわゆる工場発明の色 彩が濃厚であり,原告としては,被告の設備及びスタッフを最大限 活用して発明を完成したものであること,その他本件に現れた一切 の諸事情を総合考慮すると,同発明について被告が貢献した程度 を考慮すれば,被告が受けるべき利益の2分の1の3,200万円 の20%に相当する640万円をもって同発明につき特許を受ける 権利の譲渡に対する相当な対価と認めるのが相当である。 75 大阪地判H6/4/28 マホービン事件 ◎日亜化学:青色発光ダイオード 200億円支払い命令(相当の対価は604億円) 2001年8月 中村氏 日亜化学に対し、特許権(特許2628404号)の中村氏への 帰属と相当の対価(20億円)の支払い求めて提訴 2002年9月 東京地裁 404号特許は日亜化学に帰属するとの中間判決(中村氏 の主張を却下) 2003年1月 東京地裁 日亜化学に対して200億円の支払命令 判決における「相当の対価」の計算 ①1997年(設定登録)~平成2010年(期間満了)までの日亜化学の青色 LEDの推定売上高:1兆2086億円 ②本特許を競合他社にライセンスした場合、競合他社による売上高(本特 許の貢献度):①の50% ③ライセンスした場合のロイヤリティ(実施料率):売上高の20% ④本特許による独占によって得た利益:①×50%×20%=1208億円 ⑤中村氏の貢献度:50% 押圧ガス(不活性ガス) ⑥相当の対価:④×50%=604億円 東京高裁で和解 サファイア基板 反応ガス 78 東京地判H16/1/30 色発光ダイオード事件 1 HO26_5 審査対象外特許請求の範囲 特許法49条は,一つの特許出願における複数の請求項に係る発明の いずれか一つが,法29条等の規定に基づき,特許をすることができな いものであるときは,その特許出願全体を拒絶すべきことを規定してい るものと解すべきである。 ・49条についての上記解釈により出願人が不利益を被る結果となるこ とについては,十分な手続的な担保がなされているとみることができる。 ・審査官が審査の段階で全請求項について審査したとしても,これは, 拒絶査定がされた後,出願人が審判を請求するときに補正が可能であ ることを考慮しての単なる運用というべきもの ・納付手数料が,請求項の数に応じたものとなっていることは,特許が される場合にすべての請求項について審理・判断がされることに対応 するものである。 86 東京高判H14/1/31 複合軸受装置を備えるモータ事件 2 HO26_6 パラメータ発明 知財大合議 実施例が少なくサポート要件不十分 明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負う。 パラメータ発明に関する発明において,特許請求の範囲の記載が,明細書 のサポート要件に適合するためには,発明の詳細な説明は,その数式が示す 範囲と得られる効果(性能)との関係の技術的意味が,特許出願時において, 具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許 出願時の技術常識を参酌して,当該数式が示す範囲内であれば,所望の効 果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して 記載することを要する。 実施例が二つと比較例が二つ記載されているにすぎず,具体例を開示して 記載しているとはいえず,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件 に適合するということはできない。 特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載 外で補足することよって,その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範 囲まで拡張ないし一般化し,明細書のサポート要件に適合させることは,発明 の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されない。 86 知財高判H17/11/11 パラメータ特許事件 除くクレーム 知財大合議 除くクレームは新規事項でなく訂正可能 『明細書又は図面に記載した事項』とは,技術的思想の高度の創作である 発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示され るものであるから,ここでいう『事項』とは明細書又は図面によって開示された 発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,『明細書又は図面に 記載した事項』とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総 合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれ る技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものである ときは,当該補正は,『明細書又は図面に記載した事項の範囲内において』す るものということができる。 特許出願に係る発明のうち,特許出願時には公開されていなかった先願発 明と同一である部分を,いわゆる「除くクレーム」によって除外する訂正を請求 する場合についても,一般的な判断基準が適用される。 91 知財高判H20/5/30 ソルダーレジスト除くクレーム事件 1 HO26_8 固有必要的共同訴訟 実用新案登録を受ける権利の共有者が、その共有に係る権利を目的 とする実用新案登録出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し、請 求が成り立たない旨の審決を受けた場合に、右共有者の提起する審決 取消訴訟は、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要 的共同訴訟と解すべきである(最高裁55年1月18日)。 けだし、右訴訟における審決の違法性の有無の判断は共有者全員の 有する一個の権利の成否を決めるものであって、右審決を取り消すか 否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるからである。実用 新案法が、実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権 利について審判を請求するときは共有者の全員が共同で請求しなけれ ばならないとしているのも、右と同様の趣旨に出たものというべきである。 100 最判H7/3/7 磁気治療器事件 1 HO26_9 独占通常実施権: セットブラシ事件 【要旨】完全独占的通常実施権者であつてもこれに差止請求権を認めることは困難であ るが,損害賠償請求をなし得る。 【判示】:通常実施権ひいては完全独占的通常実施権の性質は,無権限の第三者が当該 意匠を実施した場合にも,実施権者の実施それ自体は何ら妨げられるものではなく,権 利者が第三者にも実施許諾をすることは,実施権者に対する債務不履行とはなるにして も,実施許諾権そのものは権利者に留保されて在り,完全独占的通常実施権の場合にも 右実施許諾権が実施権者に移付されるものではないのであるから,実施権者の有する 権利が排他性を有するということはできず,通常実施権者である限りは,それが完全独 占的通常実施権者であつてもこれに差止請求権を認めることは困難であり,許されない ものといわざるをえない。 完全独占的通常実施権においては,権利者は実施権者に対し,実施権者以外の第三 者に実施権を許諾しない義務を負うばかりか,権利者自身も実施しない義務を負つてお り,その結果実施権者は権利の実施品の製造販売にかかる市場及び利益を独占できる 地位,期待をえているのであり,そのためにそれに見合う実施料を権利者に支払つてい るのであるから,無権限の第三者が当該意匠を実施することは実施権者の右地位を害し, その期待利益を奪うものであり,これによつて損害が生じた場合には,完全独占的通常 実施権者は固有の権利として直接侵害者に対して損害賠償請求をなし得るものと解する のが相当である。 107 大阪地判S59/12/20 ヘアーブラシ事件 1 HO26_10 ボールスプライン均等論 最三判100224 均等論を認める根拠 出願時に将来のあらゆる侵害態様を予想し てクレームを記載することは極めて困難であ り、クレームに記載された構成の一部を出願 後に明らかとなった物質・技術等に置換する のは容易である。これを放置すると、発明の 保護が図れないだけでなく、衡平の理念に反 する 均等の判断基準(次のすべてを満たす場合には、均等となる) (1)一部置き換え部分が特許発明の本質的部分ではない<本質要件> (2)置き換えても、特許発明の目的を達し、同一の作用効果を奏する<置換可能> (3)当業者がイ号製品の製造の時点において容易に想到することができる<置換容易> (4)イ号製品が、特許発明の出願時の公知技術から容易に推考できない<推考容易> (5)包袋禁反言に該当しないこと<意識除外> 118 最判H10/2/24 ボールスプライン事件 一太郎アイコン訴訟間接侵害 訴え提起 松下電器 東京地裁 知大判170930:初の大合議 ジャストシステム 侵害容認:一太郎と花子の製造・販売の中止と在庫品の廃棄 2005/2/1 「松下の特許は進歩性を欠き、無効とすべきもの」 知財高裁大合議 2005/9/33 上告せず 特許請求の範囲請求項1 「アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン,および 所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示 させる表示手段と,前記表示手段の表示画面上に表示されたアイコンを指 定する指定手段と,前記指定手段による,第1のアイコンの指定に引き続く 第2のアイコンの指定に応じて,前記表示手段の表示画面上に前記第2の アイコンの機能説明を表示させる制御手段とを有することを特徴とする情報 処理装置」 「ソフトウェアが特許権の侵害品となり得る」という一般論が認められた点を評価 120 知財高判H17/9/30 一太郎事件 1 HO26_11 キルビー権利濫用 最三判120411 無効理由が存在することが明らかなときは、特段の事情が ない限り、権利の濫用に当たり許されない 特許権は無効審決の確定までは適法かつ有効に存続し、対世的に無効とさ れるわけではない。 しかし、特許に無効理由が存在することが明らかで、無効審判請求がされた場合に は無効審決の確定により当該特許が無効とされることが確実に予見される場合にも、 その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求が許されると解することは、相当で はない。 ・特許権者に不当な利益を与え衡平の理念に反する ・特許の対世的な無効までも求める意思のない当事者に無効審判の手続を強いることとなり、訴訟 経済にも反する ・特許が無効にされることが確実に予見される場合にまで、訴訟手続を中止すべきでない ※ この判決を踏まえ104条の3を追加改正 125 最判H12/4/11 キルビー事件 BBS並行輸入消尽 最三判090701 並行輸入に対する差止請求 特許権の国際消尽 我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において当該特許 発明に係る製品を譲渡した場合においては、その後の転得者に対して は、当該製品について我が国において特許権に基づき差止請求権損 害賠償請求権等を行使することはできない 次の場合を除き 1 特許権者は、譲受人に対しては当該製品について販売先ないし使用地 域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合 2 譲受人との間で右旨を合意した上当該製品にこれを明確に表示した場 合 パリ条約は、特許権自体の存立が、他国の特許権の無効、消滅、存続期 間等により影響を受けないということを定めるものであって、一定の事情 のある場合に特許権者が特許権を行使することが許されるかどうかとい う問題は、同条の定めるところではないというべきである。 127 最判H9/7/1 ベーベーエス事件 1 HO26_11 インクカートリッジ事件 キャノン 知高判180131 訴え提起 プリンタインキ販売 リサイクル・アシスト 輸入販売 利用者 使用後廃棄 日本へ輸出 リサイクル 廃品回収業者 回収 中国で再生 輸出 127 最判H19/11/8 インクタンク事件 インクカートリッジ事件 訴え提起 キャノン 知高判180131 リサイクル・アシスト ☆環境問題を主張 東京地裁 生産ではなく修理であり特許権侵害に該当しない 2004/12/8 知財高裁 2006/1/31 特許権を侵害する (第1類型) 製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を 終えた後に再使用又は再生利用がされた場合 (第2類型) 特許発明の本質的部分に係る部材が,その全部又 は一部につき,第三者により加工又は交換がされたとき 本件は、第2類型に該当 2006/2/13 最高裁 知財高裁判決支持(2007/11/8 最1判) 総合考慮: ①特許製品の属性 ②特許発明の内容 ③加工及び部材の交換の態様 ④取引の実情 127 最判H19/11/8 インクタンク事件 2 HO26_12 ラストメッセージ事件(東京地裁7年12月18日) 出版社が休刊又は廃刊となった雑誌の最終号に掲 載されたあいさつ文をまとめて掲載した書籍を著作 権者の許諾なく発行の差止と損害賠償請求 著作権法の成立後今日までの社会状況の変化を考慮しても、 被告書籍における本件記事の利用について、実定法の根拠 のないまま被告主張の「フェア・ユース」の法理を適用す ることこそが正当であるとするような事情は認められない 「ラストメッセージ in 最終号」 286誌の休刊廃刊雑誌 136 東京地判H7/12/18 ラストメッセージ事件 1 HO26_13 裁判傍聴記の著作物性 『思想又は感情を表現した』というためには,対象として記述者 の『思想又は感情』が表現されることが必要である。言語表現に よる記述等における表現の内容が,専ら『事実』を,格別の評価, 意見を入れることなく,そのまま叙述する場合は,記述者の『思 想又は感情』を表現したことにならないというべきである 証言内容を記述した部分は,証人が実際に証言した内容を原 告が聴取したとおり記述したか,又は仮に要約したものであった としてもごくありふれた方法で要約したものであるから,原告の 個性が表れている部分はなく,創作性を認めることはできない。 139 知財高判H20/7/17 ライブドア裁判傍聴事件 ホームページ写真著作権 ある写真が,どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを, その写真自体から知ることは困難であることが多く,写真から知り得る のは,結果として得られた表現の内容である。撮影に当たってどのよう な技法が用いられたのかにかかわらず,静物や風景を撮影した写真で も,その構図,光線,背景等には何らかの独自性が表れることが多く, 結果として得られた写真の表現自体に独自性が表れ,創作性の存在を 肯定し得る場合があるというべきである。 創作性の存在が肯定される場合でも,その写真における表現の独自 性がどの程度のものであるかによって,創作性の程度に高度なものか ら微少なものまで大きな差異があることはいうまでもないから,著作物 の保護の範囲,仕方等は,そうした差異に大きく依存するものというべ きである。したがって,創作性が微少な場合には,当該写真をそのまま コピーして利用したような場合にほぼ限定して複製権侵害を肯定する にとどめるべきものである。』 140 知財高判H18/3/29 スメルゲット写真事件 1 HO26_13 菓子おまけフィギュア事件 大阪高裁170728 142,16 大阪高判H17/7/28 海洋堂フィギュア事件 菓子おまけフィギュア事件 大阪高裁170728 動物フィギュアは,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり, 動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見 られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたと いうような事情は見当たらない。 したがって,本件動物フィギュアには,制作者の個性が強く表出されているとい うことはできず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。 してみると,本件動物フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた 一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評 価されるとまではいえず,著作物には該当しないと解される」 妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」 を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一 定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し 得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認 められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当 である。 とりやま せきえん 142,16 大阪高判H17/7/28 海洋堂フィギュア事件 2 HO26_13 中古ゲームソフト事件 (焦点は頒布権) ゲームソフトメーカー VS 中古ソフト販売業者 1.事件の背景 ①公正取引委員会が、SCEが小売業者や卸売業者に対して中古ゲームソ フトを取り扱わないよう強制しているのは、独禁法違反と指摘(1998年 1月) ②SCE側は、中古ゲームソフトの販売は、映画の著作物に対して認めら れる頒布権の侵害であり、中古ゲームの販売を排除するのは著作権の行使 であると反論 ③大手ゲームソフトメーカー6 社が、中古ソフト販売業者に対 し、中古品販売の差止を求めて 大阪地裁に提訴 (1998年7月) ③大手中古ソフト販売業者が、 大手ゲームソフトメーカーに対 し、中古ソフトに頒布件は存在 しないことの確認訴訟を 東京地裁に提訴 (1998年10月) 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 中古ゲームソフト事件 (焦点は頒布権) ③大阪地裁 H11.10.07 メーカーの勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当 する頒布権も認められ、譲渡後も頒 布権は消尽しない 理由: ゲームはプレイヤーの操作によって 影像やその順序が異なるとはいえ、 その変化は、プログラムによって予 め設定された範囲内にすぎず、ゲー ムソフト自体が、映画と同じく著作 者の統一的な思想・感情を表現した ものである 映画の頒布権は譲渡後も消尽しない のであるから、ゲームソフトの頒布 権も消尽しないと解するのが妥当。 ゲームソフトメーカー VS 中古ソフト販売業者 ③東京地裁 H11. 5.27 販売業者の 勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当 しない 理由: 映画の著作物とは、多数の観客に対 して同一の視聴覚的効果を与えるも のと解するべき 各々のプレーヤーが個別の画面上に それぞれ異なった影像を能動的に表 示させるゲームは、映画の著作物に 相当するとは解せない 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 3 HO26_13 ④大阪高裁 H13. 3.29 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当し 、頒布権も認められるが、頒布権は譲 渡後に消尽する 理由: ゲームソフトは大量の複製物を販売す る過程において投資の回収を図ることが できるものであるから、頒布を繰り返す ことにより投資の回収を行う映画フィル ムとは異なる 一旦、適正な価格にて販売されたゲー ムソフトは、既に投資回収の機会が与え られたものであり、商品取引の自由の観 点から見ても権利が消尽したと解するの が相当 ④東京高裁 H13.3.27 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当す るが、頒布権は認められない 理由: ゲームにおける影像の変化は予め設定 されたものからの選択にすぎず、プレイ ヤー自身が新たな影像を創造しているわ けではない。映画にも、ストーリー、ア ングルを聴衆が選択可能になっているも のもあり、ゲームと映画に有意な差はな い ただし、多量の複製物を販売するゲ ームソフトは、流通を支配することによ り投資の回収を図る映画フィルムとは異 なるものであり、頒布権は認められない ⑤最高裁 平成13(受)952 第一小法廷 (H14.4.25) 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当し頒布権も認められるが、一旦適法に譲渡された後 は頒布権は消尽し、中古品の再譲渡にまで頒布権は及ばない 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 ファービー事件:応用美術(人形) 平成14年7月9日判決 仙台高裁刑事1部 •「ファービー」の形態の著作物性について ◦「ファービー」の形態は,物の形態あるいは外観の美的創作であって,著作権 法の領域においては,実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的と して制作される応用美術といわれるものに属する。 ◦「実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用 美術については,現行著作権法上は原則として著作権法の対象とならず,意 匠法等工業所有権制度による保護に委ねられていると解すべきである。 ただ,そうした応用美術のうちでも,純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の 対象とされると認められるものは,美術の著作物として著作権法上保護の対象 となると解釈することはできる。そこで,美術の著作物といえるためには,応用 美術が,純粋美術と等しく美術鑑賞の対象となりうる程度の審美性を備えてい ることが必要である。これを本件で問題となっている実用品のデザイン形態に ついていえば,そのデザイン形態で生産される実用品の形態,外観が,美術鑑 賞の対象となりうるだけの審美性を備えている場合には,美術の著作物に該 当するといえる。」 本件『ファービー』のデザイン形態は,著作権法2条1項1号に定める著作物に 該当しない 148,16 仙台高判H14/7/9 ファービー刑事事件 4 HO26_14 RGBアドベンチャー事件 最二150411 「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等の 指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,支払 う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業 務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関す る具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきである。 被上告人は,1回目の来日の直後から,上告人の従業員宅に居住し, 上告人のオフィスで作業を行い,上告人から毎月基本給名目で一定額 の金銭の支払を受け,給料支払明細書も受領していたのであり,しかも, 被上告人は,上告人の企画したアニメーション作品等に使用するものと して本件図画を作成したのである。 これらの事実は,被上告人が上告人の指揮監督下で労務を提供し,そ の対価として金銭の支払を受けていたことをうかがわせるものとみるべ きである。 159 最判H15/4/11 RGBアドベンチャー事件 青い海のまち・みさわ映画事件 東高判050909 最ニ判081014 映画の未編集フイルムの権利帰属 映画製作者が映画の著作物の著作権を取得するためには、著作物と認められるに 足りる映画が完成することが必要であるから、いまだ完成されていない映画について 製作者が著作権を取得することはなく、未編集の状態であるフィルムについては、著 作物と認めるに足りる映画はいまだ存在しない。 撮影収録された映像が、それ自体で創作性、著作物性を備えたものというべき場合、 当該フィルムに撮影収録された映像著作物の著作権は、監督としてその撮影にかか わった著作者に帰属する。 163 東京高判H5/9/9 三沢市勢映画製作事件 1 HO26_15 ワン・レイニー・ナイト・・・複製事件 最一判530907 楽曲の偶然の一致は著作権侵害になるか 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに 足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性 のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたもので ないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地 はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従って、その存在、内容を知 らなかったものは、これを知らなかったことにつき過失があると否とにかかわら ず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の 著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じな ければならないものではない 167 最判S53/9/7 ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件 中古ゲームソフト事件 (焦点は頒布権) ゲームソフトメーカー VS 中古ソフト販売業者 1.事件の背景 ①公正取引委員会が、SCEが小売業者や卸売業者に対して中古ゲームソ フトを取り扱わないよう強制しているのは、独禁法違反と指摘(1998年 1月) ②SCE側は、中古ゲームソフトの販売は、映画の著作物に対して認めら れる頒布権の侵害であり、中古ゲームの販売を排除するのは著作権の行使 であると反論 ③大手ゲームソフトメーカー6 社が、中古ソフト販売業者に対 し、中古品販売の差止を求めて 大阪地裁に提訴 (1998年7月) ③大手中古ソフト販売業者が、 大手ゲームソフトメーカーに対 し、中古ソフトに頒布件は存在 しないことの確認訴訟を 東京地裁に提訴 (1998年10月) 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 1 HO26_15 中古ゲームソフト事件 (焦点は頒布権) ③大阪地裁 H11.10.07 メーカーの勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当 する頒布権も認められ、譲渡後も頒 布権は消尽しない 理由: ゲームはプレイヤーの操作によって 影像やその順序が異なるとはいえ、 その変化は、プログラムによって予 め設定された範囲内にすぎず、ゲー ムソフト自体が、映画と同じく著作 者の統一的な思想・感情を表現した ものである 映画の頒布権は譲渡後も消尽しない のであるから、ゲームソフトの頒布 権も消尽しないと解するのが妥当。 ゲームソフトメーカー VS 中古ソフト販売業者 ③東京地裁 H11. 5.27 販売業者の 勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当 しない 理由: 映画の著作物とは、多数の観客に対 して同一の視聴覚的効果を与えるも のと解するべき 各々のプレーヤーが個別の画面上に それぞれ異なった影像を能動的に表 示させるゲームは、映画の著作物に 相当するとは解せない 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 ④大阪高裁 H13. 3.29 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当し 、頒布権も認められるが、頒布権は譲 渡後に消尽する 理由: ゲームソフトは大量の複製物を販売す る過程において投資の回収を図ることが できるものであるから、頒布を繰り返す ことにより投資の回収を行う映画フィル ムとは異なる 一旦、適正な価格にて販売されたゲー ムソフトは、既に投資回収の機会が与え られたものであり、商品取引の自由の観 点から見ても権利が消尽したと解するの が相当 ④東京高裁 H13.3.27 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当す るが、頒布権は認められない 理由: ゲームにおける影像の変化は予め設定 されたものからの選択にすぎず、プレイ ヤー自身が新たな影像を創造しているわ けではない。映画にも、ストーリー、ア ングルを聴衆が選択可能になっているも のもあり、ゲームと映画に有意な差はな い ただし、多量の複製物を販売するゲ ームソフトは、流通を支配することによ り投資の回収を図る映画フィルムとは異 なるものであり、頒布権は認められない ⑤最高裁 平成13(受)952 第一小法廷 (H14.4.25) 販売業者の勝訴 ゲームソフトは映画の著作物に該当し頒布権も認められるが、一旦適法に譲渡された後 は頒布権は消尽し、中古品の再譲渡にまで頒布権は及ばない 143 最判H14/4/25 中古ゲームソフト事件 2 HO26_15 江差追分事件 北の波濤に唄う 最一判130628 翻案権、放送権、氏名表示権 ノンフィクション書籍 NHKTV番組:「ほっかいどうスペシャ ル・・・江差追分のルーツ・・・」 NHKTV番組 争点:プロローグの翻案にあたるか にしん御殿 既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデ ア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が ない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には, 翻案には当たらない。 本件ナレーションは,本件著作物に依拠して創作されたものであるが,本件プロ ローグと同一性を有する部分は,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作 性がない部分であって,本件ナレーションの表現から本件プロローグの表現上の 本質的な特徴を直接感得することはできないから,本件プロローグを翻案したも のとはいえない。 174 最判H13/6/28 江差追分事件 2ちゃんねる小学館事件 インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開 設し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な 注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく, 著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を 速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。 掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘 を受けた場合には,可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし, 更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに 削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。 小学館刊行の「ファンブック 罪に濡れたふたり~Kasumi~」の18頁にわたる 座談会頁の全文が公開 180 東京高判H17/3/3 2ちゃんねる小学館事件 3 HO26_16 舞台装置設計図企業内利用の複製 著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範 囲内において使用することを目的とする場合には、その使用する 者が複製することができる旨法30条に規定されているが、企業そ の他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を 複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえず、か つ家庭内に準ずる限られた範囲内における使用にあるとはいえな いから、30条所定の私的使用には該当しないと解するのが相当で ある。 被告らは、会社における内部的利用のために第一設計図の複製 をしたことが明らかであつて、その複製行為は、同法第30所定の 私的使用には該当しないから、原告の許諾を得る必要がないとい うことはできない 184 東京地判S52/7/22 舞台装置設計図事件 パロディ(モンタージユ) 最三判550328 モンタージユ写真の作成発行による著作者人格権の侵害 雪の斜面をスノータイヤの痕跡のようなシュプールを描いて滑降し て来たスキーヤーを撮影して著作したカラーの山岳風景写真の一部 を省き、シュプールをタイヤの痕跡に見立ててその起点にあたる雪 の斜面上縁に巨大なスノータイヤの写真を合成した白黒のモンター ジユ写真を発行することは、著作者人格権を侵害する 引用とは、自己の著作物中に他人 の著作物の一部を採録することを いい、引用側と被引用著作物とを 明瞭に区別して認識でき、主従の 関係があることを要す 他人の写真を改変してモンタージュ写真を作成発行した場合に他人の写真 における本質的な特徴自体を直接感得することができるときは、モンタージュ 写真を一個の著作物とみることができるとしても、著作者人格権を侵害する 187 最判S55/3/28 パロディ・モンタージュ事件 1 HO26_16 美術鑑定証書事件 知財高裁221013 引用が許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行 に合致したもので,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであること が必要 引用としての利用に当たるか否かの判断においては、利用の目的のほ か、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の 著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならな い 美術鑑定証書事件 著作物の鑑定のために複製を利用することは、著作権法の 規定する引用の目的に含まれ,その方法ないし態様としてみて も、社会通念上、合理的な範囲内にとどまる カラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などと は異なり、経済的利益を得る機会が失われるということも考え 難い 本件各鑑定証書を作製するに際して、その裏面に本件各コ ピーを添付したことは、著作物を引用して鑑定する方法ないし 態様において、その鑑定に求められる公正な慣行に合致した ものということができ、かつ、その引用の目的上でも、正当な範 囲内のものである 32条1項における引用として適法とされるためには、利用者 が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であること は要件でないと解される 最決平成24年3月13日上告不受理 2 HO26_16 サザエさんバス車体事件 東京地裁510526 バスの車体にサザエさんのキャラクターである 「サザエ」「カツオ」「ワカメ」の3人を描き都内を 観光していた 無許諾の運行で,作者が立川バスを相手に 著作権侵害で訴え,キャラクターは著作権上 保護されるべきと認められた 頭部画は、誰がこれを見てもそこに連載漫画「サザエさん」の登場人物であ るサザエさん、カツオ、ワカメが表現されていると感得されるようなものである。 つまり、そこには連載漫画「サザエさん」の登場人物のキヤラクターが表現さ れているものということができる。 ところで、本件頭部画と同一又は類似のものを「漫画サザエさん」の特定の 齣の中にあるいは見出し得るかも知れない。しかし、そのような対比をするま でもなく、本件においては、被告の本件行為は、原告が著作権を有する漫画 「サザエさん」が長年月にわたつて新聞紙上に掲載されて構成された漫画サ ザエさんのキヤラクターを利用するものであつて、結局のところ原告の著作権 を侵害するものというべきである。 193 東京地判H13/7/25 バス車体絵画事件 3 HO26_17 三島由紀夫手紙事件 東高120523 東地111018 (60条) 著作者人格権、公表権 生前の三島由紀夫が福島次郎に宛てた手紙を、実名小説「三島由紀 夫 ‐‐ 剣と寒紅」で公開した 私信が著作権法上の著作物と判断された 本件各手紙が、もともと私信であって公表を予 期しないで書かれたものであることに照らせば, 例えば、本件手紙には、「貴兄が小生から、かう いふ警告を受けたといふことは極秘にして下さ い。」との記載がある。このような記載は、少なく とも書かれた当時は公表を予期しない私信であ るからこそ書かれたことが明らかである。 本件各手紙の公表が意を害しないものと認 めることはできない。 文芸春秋 一重寒紅 ひとえかんこう 200 東京高判H12/5/23 三島由紀夫手紙事件 中田英寿事件 公表権 東京地裁120229 公表権の侵害について 1 公表権の侵害は、公表されていない著作物又は著作者の同意を得な いで公表された著作物が公衆に提供され又は提示された場合に認められ る(18条1項)。 本件詩は言語の著作物(10条1項1号)であるから、これが発行された場 合に公表されたといえる(4条1項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応 じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたこと をいい(3条1項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとさ れている(2条5項)。 2 これを本件についてみるに、本件詩は、平成3年度の甲府市立北中学 校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年 度の卒業生に合計300部以上配布されたことが認められる。 右認定の事実によれば、本件詩は、300名以上という多数の者の要求を 満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、 公表されたものと認められる。また、本件詩の著作者である原告は、本件 詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右 のような形で公表されることに同意していたということができる。 200 東京地判H12/2/29 中田英寿事件 1 HO26_17 パロディ(モンタージユ) 最三判550328 モンタージユ写真の作成発行による著作者人格権の侵害 雪の斜面をスノータイヤの痕跡のようなシュプールを描いて滑降し て来たスキーヤーを撮影して著作したカラーの山岳風景写真の一部 を省き、シュプールをタイヤの痕跡に見立ててその起点にあたる雪 の斜面上縁に巨大なスノータイヤの写真を合成した白黒のモンター ジユ写真を発行することは、著作者人格権を侵害する 引用とは、自己の著作物中に他人 の著作物の一部を採録することを いい、引用側と被引用著作物とを 明瞭に区別して認識でき、主従の 関係があることを要す 他人の写真を改変してモンタージュ写真を作成発行した場合に他人の写真 における本質的な特徴自体を直接感得することができるときは、モンタージュ 写真を一個の著作物とみることができるとしても、著作者人格権を侵害する 205,187 最判S55/3/28 パロディ・モンタージュ事件 ときめきメモリアル 最三判130213 メモリカードの使用はゲームソフトの同一性保持権を侵害 ゲームを行う主人公(プレイヤー)が架空の高等学校の生徒となって,設定された登場人物 の中からあこがれの女生徒を選択し,卒業式の当日,この女生徒から愛の告白を受けるこ とを目指して,3年間の勉学や出来事,行事等を通してあこがれの女生徒から愛の告白を 受けるのにふさわしい能力を備えるための努力を積み重ねるという内容の恋愛シミュレー ションゲーム プレイヤーが到達したパラメータの数値いかんにより女生徒から愛の告白を受けることが できるか否かが決定され、そのストーリーは,一定の条件下に一定の範囲内で展開される メモリーカードの使用によって,ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表 現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストー リーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらす 専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモ リーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図 して流通に置くことは,他人の使用によるゲー ムソフトの同一性保持権の侵害を惹起したもの として,不法行為に基づく損害賠償責任を負う 205 最判H13/2/13 ときめきメモリアル事件 4 2 HO26_17 法政大論文事件同一性保持権 東高031219 学生の研究論文を、表記の統一ため句読点を含め変更することは教 科用の図書の場合と異なり同一性保持権侵害となる。 「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと 認められる改変」の意義についてみると、20条2項の規定が1項に規定する同 一性保持権による著作者の人格的利益保護の例外規定であり、かつ、例外 として許容される改変における著作物の性質、利用の目的及び態様に照ら すと、同条4号の「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには、 利用の目的及び態様において、著作権者の同意を得ない改変を必要とする 要請がこれらの法定された例外的場合と同程度に存在することが必要であ ると解するのが相当というべきである。 本件論文は大学における学生の研究論文であり、また、本件雑誌が大学 生を対象としたものであることからすると、利用の目的において、教科用の図 書の場合と同様に改変を行わなければ、大学における教育目的の達成に支 障が生ずるものとは解し難いし、また、他の論文との表記の統一がいかなる 理由で要請されるのかも明確ではない。 205 東京高判H3/12/19 法政大学懸賞論文事件 3 HO26_19 CUP NOODLE 文字意匠事件 本意匠は、CUP及びNOODLEのローマ字を中間調子の 線条で囲むかなり図案化した字体で左右に重ね合わさるよ うに二段に構成して容器の正背面周側中央部に表したも のである。 文字であつても模様化が進み言語の伝達手段としての文 字本来の機能を失なつているとみられるものは、模様とし てその創作性を認める余地があることはいうまでもない。 本意匠についてみるに、CUP及びNOODLEは、ローマ 字を読むための普通の配列方法で配列されており、カップ 入りのヌードルを表す商品名をあたかも商標のように表示 して、これを看る者をしてそのように読み取らせるものであ り、かつ読み取ることは十分可能とみられるから、いまだ ローマ字が模様に変化して文字本来の機能を失つている とはいえない。 220 東京高判S55/3/25 CUP NOODLE事件 コネクター接続端子 拡大視認事件 「意匠に係る物品の取引,に際して,当該物品の形状 等を肉眼によって観察することが通常である場合には, 肉眼によって認識することのできない形状等は,『視覚 を通じて美感を起こさせるもの』に当たらず,意匠登録 を受けることができないというべきである。 しかし,意匠に係る物品の取引に際して,現物又は サンプル品を拡大鏡等により観察する,拡大写真や拡 大図をカタログ,仕様書等に掲載するなどの方法に よって,当該物品の形状等を拡大して観察することが 通常である場合には,当該物品の形状等は,肉眼に よって認識することができないとしても『視覚を通じて 美感を起こさせるもの』に当たると解するのが相当であ る」 220 知財高判H18/3/31 コネクター接続端子事件 1 HO26_19 化粧用パフ 部分意匠事件 意匠の類否は,一般需要者を基準とし,登録意 匠と類似の美感を生じさせ,両意匠に混同を生じ させるおそれがあるか否かによって決すべきもの であることにかんがみると,意匠に係る物品の類 否も,一般需要者を基準とし,両物品が同一又は 類似の用途,機能を有すると解される結果,両物 品間に混同を生じさせるおそれがあるか否かとい う観点からこれを決すべきものと解される 「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅 の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや 小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ 部」を有している点」を共通にする以上,両意匠 の形態は類似する イ号物品に化粧の汚れを落とす機能と,マッサージ 機能を認定するとともに,本件意匠の化粧用パフに ついても,単に白粉の塗布機能のみならず,洗顔や, 化粧落とし機能があり,両者は類似物品である 230 大阪地判H17/12/15 化粧用パフ事件 2 HO26_21 化粧用パフ 部分意匠事件 部分意匠の類否判断も一般需要者を基準 意匠の類否は,一般需要者を基準とし,登録意 匠と類似の美感を生じさせ,両意匠に混同を生じ させるおそれがあるか否かによって決すべきもの であることにかんがみると,意匠に係る物品の類 否も,一般需要者を基準とし,両物品が同一又は 類似の用途,機能を有すると解される結果,両物 品間に混同を生じさせるおそれがあるか否かとい う観点からこれを決すべきものと解される 「楕円形の薄板状の本体の片面に,若干の幅 の周縁部を除き,根元から先端に向かってやや 小径となる突起を多数設けて構成されるブラシ 部」を有している点」を共通にする以上,両意匠 の形態は類似する イ号物品に化粧の汚れを落とす機能と,マッサージ 機能を認定するとともに,本件意匠の化粧用パフに ついても,単に白粉の塗布機能のみならず,洗顔や, 化粧落とし機能があり,両者は類似物品である 230 大阪地判H17/12/15 化粧用パフ事件 長柄鋏事件 意匠の要部 関心は各部長さの比率と機能を有する刃部 本件登録意匠の要部は,刃部の形状及び長柄鋏 全体に占める固定連結部や柄部の長さの比率であ ると認める 需要者は,刃部の形状自体については,長柄鋏に おける最も重要な機能を有する箇所であるため,注 目するものの,そのなかでも,刃部の刃体の形状に 関心が集まる その取付部に対する関心の度合いは高いとは考え られない 両意匠とも,固定連結部の上端にある円筒状取付 部の側面に垂直方向に取り付けている点で共通して おり,被告意匠の方がタグ状の取付部があるため頑 丈な印象を与える程度の違いにしか過ぎない。 本件登録意匠との共通点から受ける印象が,差異 点に係る具体的な形状の違いから受ける印象を凌 駕しており,両意匠が視覚を通じて起こさせる全体と しての美感を共通にしている 231 大阪地判H22/12/16 長柄鋏事件 1 HO26_21 学習机事件 意匠の利用関係 非類似意匠を実施すると必然的に利用する意匠 意匠の利用とは、ある意匠がその構成要素中に他の登録意匠又は類似する意 匠の全部を、その特徴を破壊することなく包含し、この部分と他の構成要素との結 合により全体としては登録意匠とは非類似の一個の意匠をなしているが、この意 匠を実施すると必然的に登録意匠を実施する関係にある場合をいう 登録意匠の出願の先後関係により先願の権利を優先せしめ、後願の登録意匠 又はこれに類似する意匠が先願の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用する ものであるときは、後願にかかる意匠権の実施権をもつて先願にかかる意匠権の 排他権に対抗しえない 意匠中に他人の登録意匠の全部が、その特 徴が破壊されることなく、他の部分と区別しうる 態様において存在することを要し、もしこれが 混然一体となって彼此区別しえないときは、利 用関係の成立は否定される 232 大阪地判S46/12/22 学習机事件 2 HO26_26 巨峰事件 商標としての使用 容器に大きく表示されるのは内容物の名 包装容器の商標は、内容物の表示と混同されることのないように、容器の側 面や底面に、また表面であれば隅のほうに小さく表示されるのが通例であり、 見やすい位置に見やすい方法で表示されるのは内容物たる商品の商品名と して理解され、容器の商標とは受け取られないのが今日の取引の経験則であ る。 したがって、「巨峰」「KYOHO」の文字は、客観的に見ても内容物であるぶど うの商品名の表示と解するのが相当であり、製造している被申請人の主観的 意図からも段ボール箱の商標として使用しているものではないので、申請人 の商標権を侵害するものではない。 「包装容器」に「巨峰・キョホゥー」を商標 登録していた段ボールメーカー服部紙店 段ボール箱に「巨峰」の文字をあらかじめ印 刷しこれをぶどう生産者に販売していた段 ボールメーカー飯塚段ボール 249 福岡地飯塚支判S46/9/17 巨峰事件 日本国内向けでなければ使用ではない パパジョンズ事件 不使用取消 (指定商品) 第30類「ピザ」 我が国の商標法は,商標権者による商標の現実的使用を重視している(3条1 項柱書,50条)ことからすると,同法50条2項にいう「正当な理由」とは,商標権 者において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる 特別の事情がある場合に限られると解すべきところ,被告の主張は,企業たる 被告の内部事情にすぎず,これをもって特別の事情と認めることはできない。 したがって,商標権者である被告が上記のように外国企業であっても,本件商 標の指定商品である「ピザ」について本件商標を使用することができないことに つき「正当な理由」があったと認めることはできない。 雑誌は,日本国内において頒布されたとしても,日本国内で発行されたものとは認められない上,そ の内容もすべて英語で表示されたものであって,日本の需要者を対象としたものとは認められない。 被告は,日本国内において指定商品であるピザを生産・販売したことはなく,日 本の需要者は被告のピザの提供を受けることができないのであるから,雑誌の 広告は,指定商品であるピザに関し日本国内においてなされた広告であるとは 認めることはできない。 259 知財高判H17/12/20 パパジョンズ事件 1 HO26_28 アルミダイカストロボット 営業秘密 原告の過去に受注したロボットシステムの部品構成や仕入額等が記載さ れた明細の営業秘密性について、 有用性に関し、これらの情報は,ロボットシステムを設計,製造,販売する 同業他社にとって,汎用部品及びその仕入先,外注部品の外注先を選択す る上において,また,仕入先,外注先との価格交渉をする上において,有益 な情報である 秘密管理性について、従業員及び外部者から認識可能な程度に客観的に 秘密としての管理状態を維持していることをいい,具体的には,当該情報に アクセスできる者が制限されていること,当該情報にアクセスした者が当該 情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることなどが 必要と解され,要求される情報管理の程度や態様は,秘密として管理される 情報の性質,保有形態,企業の規模等に応じて決せられるものというべきで ある。』 産業用ロボットシステムの製造販売等を目的として管理する設計図面,設 計CADデータ等が営業秘密に当たり,同種の産業用ロボットを取り扱う会 社に,退社した社員が設計等に係る産業用ロボットを製造,販売した行為は 不正競争行為に当たる 268 名古屋地判H20/3/13 アルミダイカストロボットシステム事件 公共土木工事単価表 不正競争事件 法の趣旨からすれば,犯罪の手口や脱税の方法等を教示し,あるいは麻薬・ 覚せい剤等の禁制品の製造方法や入手方法を示す情報のような公序良俗に 反する内容の情報は,法的な保護の対象に値しないものとして,営業秘密とし ての保護を受けないものと解すべきである。 本件情報は,地方公共団体の実施する公共土木工事につき,公正な入札手 続を通じて適正な受注価格が形成されることを妨げるものであり,企業間の公 正な競争と地方財政の適正な運用という公共の利益に反する性質を有するも のと認められるから,前記のような不正競争防止法の趣旨に照らし,営業秘密 として保護されるべき要件を欠くものといわざるを得ない。 したがって,本件情報は法的保護に値するものということができず,不正競 争防止法にいう「営業秘密」に該当しない。 法的保護に値せず,かえって公共の利益に反する内容の情報については, これを秘密として保持する旨の契約をしても公序良俗に反するものとして,契 約当事者はその内容に拘束されないと解するのが相当である(民法90条) 269 東京地判H14/2/14 公共土木工事単価表事件 1 HO26_28 269 東京地判H14/2/14 公共土木工事単価表事件 光通風雨戸事件 不正競争事件 市場で流通している製品から容易に取得できる情報は,不競法2条6項所定 の「公然と知られていないもの」ということができないところ,本件製造販売契 約に関連して東衛産業又はディリー産業から控訴人夢工房に対して交付され た図面等は,本件情報に係る部品に関するものに限られ,かつ,当該部品は, いずれも,光通風雨戸を組み立てるに当たって使用される補助的な部品で, 一般的な技術的手段を用いれば光通風雨戸の製品自体から再製することが 容易なものであるから,本件情報は,不競法2条6項所定の「公然と知られて いないもの」ということはできない。 270 知財高判H23/7/21 光通風雨戸事件 2 HO26_28 セラミックコンデンサー不正競争事件 本件電子データは、約6000枚に上るセラミックコンデンサー積層機及び印刷 機の設計図に係るものであり、1機種当たり数百から千数百点に及ぶ各部品に ついて、形状、寸法、選定及び加工に関する情報などが記載され、そこには、精 緻で高性能のセラミックコンデンサー積層機及び印刷機を製造するための技術 的なノウハウが示されており、本件電子データは、CADソフトによって活用し得 ることにより、高い有用性を有しているものである。 このような電子データの量、内容及び態様に照らすと、原告のセラミックコンデ ンサー積層機及び印刷機のリバースエンジニアリングによって、本件電子デー タと同じ情報を得るのは困難であるものと考えられ、また、仮にリバースエンジ ニアリングによって本件電子データに近い情報を得ようとすれば、専門家により、 多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であるものと推認さ れる。 したがって、本件電子データは、原告のセラミックコンデンサー積層機及び印 刷機の相当台数が秘密保持契約なしに販売されたことによって公知になったと はいえない。 270 大阪地判H15/2/27 セラミックコンデンサー事件 磁気信号記録用金属粉末不正競争事件 競業者の取引先に対する権利侵害の告知行為が,特許権者の権利行使の 一環としての外形をとりながらも,社会通念上必要と認められる範囲を超えた内 容,態様となっている場合,すなわち,権利行使に名を借りているとはいえ,そ の実質が,むしろ,競業者の取引先に対する信用を毀損し,取引先との取引な いし市場での競争において優位に立つことを目的としてされたものであると認め られる場合には,告知の内容が結果的に虚偽であれば,もはやこれを正当行為 と認めることができないことは明らかであるから,不正競争行為となり,特許権 者がこれに対して責任を負うべきことは当然である。 競業者の取引先に対する警告が,適法かどうかについては,警告文書等の形 式・文面のみならず,警告に至るまでの競業者との交渉の経緯,警告文書等の 配布時期・期間,配布先の数・範囲,警告文書等の配布先である取引先の業 種・事業内容,事業規模,競業者との関係・取引態様,侵害被疑製品への関与 の態様,特許侵害争訟への対応能力,警告文書等の配布への取引先の対応, その後の特許権者及び取引先の行動等の,諸般の事情を総合して判断するの が相当である。 278 東京高判H14/8/29 磁気信号記録用金属粉末事件 3 HO26_28 フッ素樹脂ライニング事件 不正競争事件 争点5 被告は、原告に対して本件誓約書により退職後の競業避止義務を負う か。また、被告は右義務に違反したか。競業避止義務を理由とする原告の請求 は権利の濫用か 誓約書の第五項には「勤務に際して知り得た会社の技術、情報等及び会社が 秘密保持義務を負う第三者の技術、情報等を他に漏らさないようにし、会社に 損害を及ぼしたときは、弁償の責に任じること。なお、会社を退職した後もこれを 遵守すること。」と、第六項には「会社を退職した後五年間は、会社の営業の部 類に属する事業を営む他企業への勤務又は自家営業を行わず、その他会社の 技術、情報等を利用して会社に損害を及ぼす行為を一切行わないこと」と記載 本件誓約書による競業避止の約定は、その対象について非常に広範であるこ と、場所的限定がないこと、期間が長期に過ぎること、代償措置がないか不十 分であることを考慮すると、営業秘密の開示、使用の禁止以上に競業避止を認 める合理性に欠け、公序良俗に反し無効であると認めるのが相当である。 280 大阪地判H10/12/22 フッ素樹脂シートライニング事件 4