Comments
Description
Transcript
ガスの侵入・通過経路
保管後の変色(燃焼ガスによる変色) 保管中に酸化窒素ガス(空気が燃焼する際に発生する)や亜硫酸 ガス(石油など硫黄を含む燃料などが燃焼したときに発生する) が染料を分解して変色を起こす。 発生源としては、家庭では石油ストーブ、ガスストーブ、ガスコン ロ、ガス湯沸かし器、我々の業務では、灯油・ガス・重油などを 燃料とするボイラー(電気ボイラーからは発生しません)など。 自動車の排気ガス、工場の燃焼した空気の排気など。 ガスの経路に沿って下から上へ向かってボンヤリと変色するのが 特徴。 裏側にも変色が及ぶ。(紫外線の場合は裏は変色しない) 特に分散染料で染める淡色のナイロン(ナイロンの濃色は酸性染 料で染める)やアセテート・トリアセテート(同じ分散染料を使 ナイロン 用するポリエステルに比べ、親水性が高い) 反応染料(綿製品な トリアセテート ど)で発生しやすい。 ガスの侵入・通過経路 ガスは、親水性が高いところに吸着 ガスの経路 包装の ポリカバー ガ ス は ポ リ 袋 を 通 過 す る 水分 酸化窒素ガスは、水分と相性が良いため 汗じみや食べこぼしなどの水溶性汚れが 残留しているところにガスが吸着し、変 色しやすい。この場合、境界がハッキリ した変色になることがある。 3 ガスはポリカバーの 前後に他の衣類があ デの外側を通って衿 きないので、ソデの したから侵入し、ソ 首に抜ける ると、ガスが通過で 外側を通る事が多い 包装の ガスは下からも侵入 ポリカバー ポリカバーを掛けてい ると内部が結露して、 ガスが吸着しやすくな る。 4 ガス褪色は消費者トラブルに 保管後のレモンイエローの変色(酸化防止剤) なりやすい 一般消費者は、このようなガスがで変色が起こることをほと んど知らないので、トラブルになりやすい。 クリーニング後に変色が顕在化(表面化)する事がある(ク リーニング前には分かりにくい)。 ストーブ、ファンヒーター、ガスコンロの燃焼ガスの影響を 受ける部屋での保管を避けるよう、注意を促す。 交通量の多い道路に面した部屋で保管しない要注意を促す。 ポリカバーは、絶対に外して保管してもらうよう徹底する。 普段から、店頭ポップなどで写真を掲示し、啓発に努める。 5 納品時に使用するポリ袋等には、主にその透明度を保つため酸 化防止剤(BHT:ブチルヒドロキシトルエン等)が使用され ている。 その様なポリ袋などに接触した状態で保管され、酸化窒素ガス 等の影響を受けると、「鮮やかなレモンイエロー」を特徴とし た黄変が発生する事がある。 この黄変は、酸で消失しアルカリで復色(黄変が戻る)、紫外 線に曝すことで消失したり、有機溶剤で溶解除去できたりする ことから、これらの処理により確認できる。 ほとんどの素材に発生するが、特に淡色のナイロン(分散染 料)・アセテート(分散染料)などの合成繊維、半合成繊維に 発生しやすく、また保管場所が多湿な場合に発生しやすい。 納品時に「必ずポリカバーを外して保管」「ストー ブ等を使用する部屋には保管しない」事などを消費 者に啓蒙する。 また、包装はポリプロピレン(PP)を避け、なるべ くポリエチレン(PE)を使用するようにする(ポリエ チレンの方がBHTの含有率が低い) BHT黄変の修正 不揮発性の安全な弱酸であるクエン酸で黄変部分を酸性に する。 クエン酸2 ∼ 3 g/L 水溶液+IPAアルコールを1:1で混合 し、(pH5∼5.5くらい) その混合液をスプレーする。 *酢酸などの揮発性酸では、時間が経つと黄変が戻る。 8 フェイクファーの熱収縮 • アクリルは、熱に弱い • ポリエステルと同程度のガラス 転移点であるが(60∼90℃。 ポリエステルは70℃程度)、ア 事故品 クリルの方がより物理的な変化 が大きい素材である。 • 特に、アクリル系であった場 合、より熱の影響を受けやすい ので注意が必要。 • 仕上げの際、スチームアイロ ン・スチームトンネルは厳禁。 • タンブラー乾燥時、タンブラー の設定温度よりもタンブラーの 内胴表面の温度が高くなってい る可能性があるので、乾燥温度 50℃以下に設定のこと。 • タンブラー乾燥後、アクリル ファーが縮れてしまった。 正常品 9 融点とガラス転移点? アクリル・アクリル系の違いと特性に注目 合成樹脂の構造 アクリルとは? 日本で開発された繊維。 結晶部分 アクリルの原料、アクリルニトリルは熱で容易に変質するの で、溶剤で溶かして糸にする。 ウールに性質が似ている 柔らかなものから粗い味のものまで自由に作ることができる 非結晶部分 ゴム状態 アクリルとアクリル系の違い アクリル:アクリルニトル85%以上 アクリル系:アクリルニトル35∼85%(塩ビなどを含む) アクリル系は、難燃性には優れるが、アクリルに比べ熱により変 結晶部分 非結晶部分 ガ ラ ス 転 移 点 結晶部分 ガラス状態 結晶していない部分が 急激に柔らかくなる点の事 質しやすい。 アクリルと表示されていても、アクリル系の場合がある→中国の 現行法では、アクリルとアクリル系の区別が無く両方ともアクリ ルと表記されるので、日本国内表示でアクリルと表示されている 場合があるので注意!。 • 水洗いして自然乾燥がベスト *結晶している部分が急激に柔らかく なる点を「融点」という。 11 アクリルニット製品の仕上げ温度に注意! リブ編みの伸び等 タンブラー温度とプリーツの開き ポリエステルプリーツの消失 プリーツ 開角度 • ポリエステル等の合成繊 維は、「熱可塑性」とい 130 う、熱で形を固定できる プ リ 110 ー ツ 開 角 90 度 性質が有り、これを利用 してプリーツなどの加工 がされるが、ガラス転移 点を超えるような熱が加 70 わると、プリーツが消失 してしまうことがある。 136 新合繊タイプの ポリエステル 76 83 76 50℃ 13 138 104 86 90 従来タイプの ポリエステル 79 60℃ タンブラー温度 70℃ 80℃ 14 タンブラー内温度が60℃の時、タンブラー内胴表面温度は70数℃以上 マッキントッシュコートはドライできない • マッキントッシュコートとは? • 綿の織物生地をゴムで貼り合わせた イギリスの定番レインコート、その ブランド名。他に、エルメスやグッ チなどもこの生地を使ったレインコ ートを作っている。 • ドライクリーニングすると、ゴム引 きのゴムに影響が出る、防水処理テ ープの接着剤が溶ける • 左のケアラベルから、「ドライでき ない」「洗濯機で洗えない」「小さ な汚れは石けんと水で」「溶剤や洗 合成洗浄剤は使わないこと」「石け んと柔らかいブラシだけで」などの 表記が読み取れる。 15 16 ボンディング加工のトラブル 使用されている接着樹脂は劣化する ボンディングの構造 異素材をボンドで貼り合わせる 接着樹脂(ボンド) 表素材 裏素材(フィルムや生地など) • 表地裏に「防風・防水などの機 能」、「張りのある風合いを出 す」等の目的でフィルムや生地 が接着されている • この接着に使用されている樹脂 が、時間の経過と共に空気中の 水分や皮脂、酸化窒素ガス、紫 外線、カビその他の影響で劣化 し、溶剤して剥がれる。 • 多くの場合、表面に樹脂が浸み だしてべた付いたり、汚れを吸 着したりする。 • 製品の寿命と言える。早いもの なら生地製造から2∼3年。 18 17 同様事例 高額ブランドのコートが購入から2∼3年で 接着樹脂の浸み出し 雨や紫外線、髪の毛に 使用する整髪剤などの 要因で接着樹脂が劣化 し、ドライクリーニング 後、浸みだしてべた付く ようになった事例 皮脂や汗などによって 接着樹脂が劣化し、表 面に浸みだした事例。 19 このようなものをドラ イすると、溶剤中の汚 れなどが吸着・汚染す ることがある 20