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博士論文 Talaromyces wortmannii の生産するβ-カリオフィレン の植物生育促進作用と耐病性付与作用に関する研究 平成24年9月 山際 泰夫 岡山大学大学院 自然科学研究科 目次 頁 第1章 序論 1 第2章 圃場から有用な植物生育促進菌(PGPF)の分離および同定 5 第1節 圃場からの土壌菌の分離 第1項 生育比較試験 第2項 土壌菌分離 第2節 分離菌からの植物生育促進菌(PGPF)の選抜 第1項 非接触の条件下におけるコマツナの生育 第2項 接触させた場合のコマツナの生育 第3節 候補菌株の同定 第1項 電子顕微鏡による FS2 菌の観察 第2項 FS2 菌の ITS1 領域の解析 2-1.FS2 菌の genomic DNA の抽出 2-2.ITS1 領域の塩基配列の決定と分子系統樹の同定 第4節 第3章 考察 Talaromyces wortmannii の生産する揮発性成分の同定 第1節 揮発性成分の回収と GC-MS 解析 第2節 結果 第3節 考察 第4章 β-caryophyllene の植物に対する生育促進作用および耐病性増進作用の解析 第1節 β-caryophyllene で処理されたコマツナ(Brassica rapa var. perviridis)の 生育と耐病性 第1項 β-caryophyllene 溶液で処理されたコマツナ葉におけるアブラナ科 炭疽病菌(C. destructivum MAFF 305635)の感染と病斑形成 第2項 気化した β-caryophyllene で処理したコマツナの生育とアブラナ科 炭疽病耐病性 第3項 第2節 気化した β-caryophyllene で処理されたコマツナ苗の根の生育 β-caryophyllene 気体で処理されたキュウリ(Cucumis sativus)の生育と耐病性 第1項 β-caryophyllene(volatile)で処理されたキュウリ(Cucumis sativus)の 生育と耐病性 第2項 β-caryophyllene 処理キュウリ(Cucumis sativus)の果実の収量 13 16 第3節 β-caryophyllene 気体で処理されたタバコ(Nicotiana benthamiana)の生育と耐病性 第4節 β-caryophyllene 気体で処理されたオオムギ(Hordeum vulgare L.)の生育と耐病性 第1項 生育と耐病性に及ぼす影響 第2項 β-caryophyllene (volatile) の処理時間とオオムギうどんこ病耐病性の関係 第5節 第5章 考察 β-caryophyllene 処理シロイヌナズナにおける抵抗性誘導 28 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 の生育と耐病性 第1節 第 1 項 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 の生育 第 2 項 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana (Col-0)の耐病性 第2節 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 における発現遺伝子の解析 第1項 マイクロアレイ解析 第2項 β-caryophyllene 溶液処理で Arabidopsis thaliana Col-0 に誘導される 遺伝子発現(特に防衛関連遺伝子の変動) 第3節 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 変異体、形質転換体における アブラナ科炭疽病菌の感染 第4節 第6章 考察 総合考察 39 引用文献 46 謝辞 52 第1章 序 論 最近、地球の環境問題が大きくクローズアップされている。特に CO2 等による影響 で地球の温暖化が促進され、平均気温が上昇し、異常気象が表面化しつつある。その結 果、南極の氷が溶けて海抜が上昇したり、北極の氷が溶けて白クマの生存が危ぶまれた りしている。また、このような異常気象は、世界の食糧生産に悪影響を与えるものと危 惧されている。例えば、数年前のオーストラリアの大干ばつにより小麦の生産が激減し たと伝えられている。また、今年はアメリカの穀倉地帯で干ばつの予想が伝えられると、 その情報によりトウモロコシの価格が異常に上昇している。一方、原油高騰により、代 替エネルギー確保のためトウモロコシ等の穀物からバイオエタノールの生産を拡大す ることで、需要が増え、食糧との競合が起きている。また、中国やインドを初めとする 発展途上国の GDP の大幅な成長により人々の生活レベルの向上が進み、肉類の消費拡 大に伴って飼料用穀物の需要が増加している。このように、今後、食糧の需要拡大と共 に、異常気象等による食糧生産の不安定さや供給量の不足が益々加速されると予想され る。 ところで、農業技術が進歩した現在でもなお、世界的には毎年、10~15%の食糧が植 物(作物)の病害によって失われている。これは、世界の 8 億人分の食糧に相当するこ とが明らかとなっている。同時に、世界的で進行する砂漠化や化石エネルギー資源の減 少あるいは枯渇が懸念されており、これ以上の耕地の拡大は困難であり、また、農薬や 農業資材等化石資源の過剰な投入については経済的および地球の環境問題の観点から 困難な状況となることが予想される。近年、農業資材や労働(高齢化による労働の負荷) の軽減、薬剤耐性菌の出現抑制、また、消費者のニーズから、農薬資材、特に農薬の使 用 を で き る だ け 抑 え る 防 除 へ の 取 組 み 、 す な わ ち 総 合 防 除 ( Integrated Pest Management)の一環として、生物防除(Biological Control)が再び注目を集めてい る。 このような状況にあって、食糧生産における病害による損害並びに農薬等による自然 環境への悪影響を低減するために植物の備える免疫システムを活用したり、あるいは、 自然に棲息する微生物を植物保護に利用するというように、自然のシステムに注目し、 有効な資材の開発と作用機構の研究が近年盛んに行われるようになってきた。 植物病害の生物防除のはじまりは、18 世紀の終わり頃に遡る。文献に記載されたも のとしては、1785 年に Le Berryais が剪定した枝に泥を塗ることでカビの感染を防い だ,というのが最初である。1874 年には Roberts は拮抗作用(antagonism)という「微 生物と微生物という 2 つの生物個体群の間の働きあい、相互関係」を表す言葉を微生物 学に導入した。一方、1921 年に Hartly が拮抗微生物を用いたマツ立枯病の防除を報告 したが、これが植物の病害防除に具体的な拮抗微生物を用いた最初の例とされている。 わが国においても、生物防除の研究は土壌病害を対象にはじまった。Fusarium 属菌 1 (難防除性土壌病原菌)の選択培地“Komada’s medium”を世界で初めて開発した駒田 博士が 1988 年の国際植物病理学会(日本)で「非病原性のフザリウムを用いたサツマ イモのつる割れ病の防除」を発表され、その生物防除効果に世界の研究者は魅了された。 また、 「指定産地制度」のもとに主産地の形成が推進され、作物の単純化、専作化が進 み、連作が一般化した。その結果、土壌での病原菌密度が高まり、連作障害が顕在化し た。土壌病害は人間がつくりだした病気(man made disease)という認識がこうした 背景のもとに広がるとともに、薬剤耐性の問題や土壌病害などの難防除病害の対策とし て生物的防除法(微生物農薬)の開発が活発化した。拮抗微生物による発病抑制作用の 機構の研究が進み、病原菌への直接的な寄生あるいは溶菌による死滅、栄養源や感染の 場の競合、抗菌性物質による直接的な毒性作用、病原性低下因子(dsRNA)、エチレン のような揮発性物質による直接的、間接的作用のいずれか、あるいはそれらの複合的作 用によることが明らかにされた。 現在、遺伝子工学等のバイオテクノロジー技術の進歩により、弱病原性株の作出、病 害耐性植物の作出、生物防除エージェントの作用機作の解明、生物エージェントの開発 と改良の研究が活発化している。また、分子生物学的手法を用いた病害防除機構の解明 が進展し、それによる抵抗性誘導農薬(プラントアクチベーター)などの環境の負荷が 少ない農薬開発が活発化している。ところで、現在(2007 年)までにわが国で微生物 防除剤として 18 剤が農薬登録されている。このうち、17 剤は 10 年以内に登録された ものである(百町氏ら 2009) 。 従来、土壌中の糸状菌類のうち、Fusarium属、Rhizoctonia属、Verticillium属などは、 植物(作物)の病気を原因する植物病原菌としてよく知られている。これらは、難防除 性土壌病原菌とされ、薬剤耐性の発達など化学的防除(薬剤による防除)が困難な例が 少なくない。一方、最近、菌根菌や根圏菌類のTrichoderma属菌、Rhizoctonia solani あ るいはSterile菌などの拮抗微生物に関する研究が進展し、これらの菌類が、土壌から植 物へのリン酸供給を行い植物の生育を促進することや、病原菌の生育や定着を直接抑制 すること、さらにこれらの菌類が抵抗性誘導により発病を抑制するとの報告が多数見受 けられるようになってきた(百町ら2003年) 。 根圏の微生物は、農業において重要な役割を果たし、植物の生育や健康を改善してい る。これらの微生物の中に、Trichoderma, Fusarium, Penicillium および Phomaに属する PGPF(plant growth promoting fungi)は数種類の穀物の生育を促進するだけでなく、病 原菌に対する防御もする(Hyakumachi 1994; Koike et al. 2001; Muslim et al. 2003; Shivanna et al. 1996)。例えば、根圏から分離されたPGPF Penicillium simplicissimum GP17-2,は、 広範囲の穀物の生育を促進し(Hyakumachi 1994; Shivanna et al. 1994)、土壌病害を効果的 にコントロールできる(Hyakumachi 1994)。また、病気に対する全身抵抗性も誘導する (Koike et al. 2001; Shivanna et al. 1996)。Penicillium frequentansは、果樹の褐色腐敗病をコ ントロールが可能で (Guijarro et al. 2008)、Penicillium oxalicumは、トマトに抵抗性を誘 2 導することで、フザリュウムによる病気を低減させる(De Cal et al. 1997)。移植7日前 のトマトにP. oxalicumの胞子を接種すると、立枯れ病をコントロールが可能になる(De Cal et al. 1997, 2000)。Talaromyces flavusは、Verticillium dahliaeに起因するナス(Fahima and Henis 1995)やジャガイモ(Tjamos and Fravel 1997)やトマト(Dutta 1981)の立枯 れ病(Fahima and Henis 1995)に対して有効な菌である。 更に、Penicillium spp.(Talaromyces spp.)の代謝産物についてであるが、P. simplicissimum GP17-2 の培養ろ過液や 12-kDa fraction の両方ともキュウリの病気に対して非常に効果 がある(Koike et al. 2001)。P. chrysogenum の菌糸の水溶性抽出物は、独立した既知の シグナル経路の抵抗性を誘導する(Thuerig et al. 2006)。Candida albicans に対する抗菌 性物質の Talaroconvolutins を Talaromyces convolutes から抽出した(Suzuki et al. 2000)。 また、活性酸素生成の酵素、グルコースオキシデースは、T. flavus(Klo¨cker)により生 産され、71kDa の同質の 2 つのサブユニットから構成される(Stosz et al. 1996)。T. flavus のグルコースオキシデースにより根圏で生産される過酸化水素は、立枯れの病原菌、 Verticillium dahliae を抑制できることを示唆している(Stosz et al. 1998)。T. flavus の培 養濾液由来のグルコースオキシデースは、in vitro では、もっぱら V. dahliae の発芽の抑 制をする(Stosz et al. 1996)。T. flavus の培養濾液由来のプロテアーゼを精製し、ソラ マメに Botrytis fabae が起こす赤色斑点病に対する抗菌活性を調べた (Haggag et al. 2006)。 この様に Penicillium spp 由来の多くの物質が、病気のコントロールに関与する。 菌類の抵抗性誘導の作用機作について、これまでに種々の細菌、放線菌、糸状菌、お よび高等植物が揮発性物質を生産することが報告されている。空気中に放出される揮発 性天然物としてよく知られているものにサリチル酸メチル(MeSA)、ジャスモン酸メ チル(MeJA)およびエチレンがあるが、これらは植物の防御応答を活性化する働きが あ る 。 た と え ば 、 MeJA 処 理 を し た ト マ ト に お い て は proteinase inhibitor と polyphenol oxidase の生成が誘導され(Fidantsef et al. 1999)、マメやオオムギにおい てはファイトアレキシンが集積する(Weidhase et al. 1999; Croft et al. 1993) 。その他 に も 、 MeSA を 処 理 し た タ バ コ で は 防 御 関 連 遺 伝 子 の 発 現 が 誘 導 さ れ る こ と や (Shuleav et al. 1997) 、エチレンを処理したアラビドプシスでは病気の進展が抑制さ れることが明らかとなっている(Thomma et al. 1999) 。これらの物質は隣接する植物 の防御応答を活性化する濃度で植物の葉から放出されているという。また、C6-aldehyde は植物だけでなく微生物も生産することから、微生物‐植物‐病原菌の 3 者間の相互作 用に関与している。その他にも微生物が生産する揮発性物質がいくつか報告されており、 その作用として植物への抵抗性の誘導、病原菌に対する抗菌活性、および植物の生育促 進の 3 つが知られている。Ruy et al. (2003) は、微生物が生産する揮発性物質が植物 に抵抗性を誘導することを報告している。PGPR である Bacillus subtilis GB03 が生 産する揮発性物質を少なくとも 4 日間処理したアラビドプシスは、Erwinia carotovora に対して抵抗性を示し、この揮発性物質は 2,3-butanediol と同定された。また、各種シ 3 グナル化合物に非対応なアラビドプシスの形質転換株や変異株を用いたバイオアッセ イの結果、2,3-butanediol が誘導する抵抗性にはジャスモン酸とエチレンがシグナル伝 達物質として関与することを明らかにした。 そこで、本研究では、最終的に上述のような環境負荷の小さい、しかも安全・安心で、 農業生産現場での扱いが簡単な生物防除エージェントの開発のための基礎研究を目指 すものである。まず、高梁川流域の岡山県総社市の圃場をモデルに、実際の生産現場に おける有用微生物(特に糸状菌)の探索を試みた。さらに、有用な揮発性物質を生産す る土壌菌類に注目して、その土壌菌の農業生産における応用を検討するために必要な解 析(菌の同定、揮発性物質の同定および作用機作、生育促進作用および耐病性付与効果 等)を行うこととした。 更に、その揮発性物質の植物に対する耐病性付与の作用機作について、モデル植物の Arabidopsis thaliana を供して遺伝子の発現レベルでの解析を行った。加えて、各種シ グナル化合物に非応答な Arabidopsis thaliana の形質転換株や変異株を用いたバイオ アッセイを行った。 4 第2章 圃場から有用な植物生育促進菌(PGPF)の分離および同定 高梁川流域の岡山県総社市の圃場をモデルに、土壌から植物の生育を促進する土壌菌 類の検索を試みた。その際、赤塚グループ㈱エフエフシー・ジャパンが販売している土 壌改質剤(FFCエース)の処理区も設けることとした。本剤の有効成分は硫酸カルシ ウムであり、土壌微生物のバランスを整え、植物が生育しやすい土壌環境を形成すると 言われている。なお、FFCエースには有機成分はほとんど含まれていない。 (;http://www.akatsuka.co.jp/ 参照) 第1節 圃場からの土壌菌の分離 第1項 生育比較試験 先ず下記の要領で生育比較試験を行った。 1. 実験圃場準備として 1.5m×3mの面積に、苦土石灰(2007 9/28)を施肥(150 g/㎡)し、翌日堆肥を施肥(2kg/㎡)した。次に、FFC 処理区(1.5m×1.5m) と非 FFC 処理区(1.5m×1.5m)に分離し、各区 3 種類の試験作物を供するた めに 3 列の畝(0.2m×1.5m)を設定した。 (Figs. 2-1, 2-2) 2. 2007 10/2 に FFC 処理区、非 FFC 区にそれぞれ試験作物[シュンギク(大葉し ゅんぎく:トーホク) (キク科) 、ハツカダイコン(赤丸はつか大根:トーホク) (アブラナ科)、ホウレンソウ(次郎丸ほうれん草:トーホク) (アカザ科)]の 3 種を列ごとに播種し、2007 10/4 に FFC 処理区に土壌改質剤 FFC エース 10 g/列を土壌に混合した。 3. 播種後、一週毎に各区の植物の個体別の生育(地上部および地下部の長さ、重 量)を測定した。 4. 播種 4 週間後(2007 10/30)の測定では、ホウレンソウとシュンギクは FFC 区 が大きく、ハツカダイコンは非 FFC 区が大きかった(Fig. 2-3) 。 ホウレンソウは、地上部は非 FFC 区の平均 15.4cm に対し FFC 区は平均 17.4cm で 13%大きく(有意差なし)、同じく地下部は非 FFC 区の平均 9.3cm に対し、 FFC 区は平均 12.9cm で 39%大きかった(有意差有り) 。また、個体重量は、 平均は非 FFC 区の平均 4.9gに対し、FFC 区は平均 5.3gで 8%大きかった(有 意差なし) 。 シュンギクにおいて本葉は非 FFC 区の平均 11.9cm に対し FFC 区は平均 13.9cm で 17%大きく、同じく地下部は非 FFC 区の平均 9.9cm に対し、FFC 5 区は平均 12.3cm で 24%大きかった。また、個体重量は、平均は非 FFC 区の 平均 2.9gに対し、FFC 区は平均 3.8gで 31%大きかった。但し、有意差はな かった。逆にハツカダイコンにおいて、地上部は非 FFC 区の平均 16.4cm に対 し FFC 区は平均 14.4cm で 12%小さく、同じく地下部は非 FFC 区の平均 12.2cm に対し、FFC 区は平均 10.9cm で 11%小さかった。また、個体重量は、 平均は非 FFC 区の平均 14.7gに対し、FFC 区は平均 13.1gで 11%小さかった。 但し、有意差はなかった(Fig. 2-3)。 第2項 土壌菌分離 2007 年 10 月 18 日に FFC 処理区の根元に支柱で直径 2cm、深さ 5cmの孔 を開けて、菌分離用 FFC エースを孔に施用した。約 1 ヵ月後(11/19)に FFC 処理区の根元の FFC エースおよび非 FFC 処理区の根元の土壌を回収し、下記の 方法で土壌菌を分離培養した。 1. 各 6 区の土壌(含水状態)を十分攪拌後1g を秤量し、20ml の滅菌水を加え て、よく振盪し、上澄液を原液とした。 2. 原液1ml を 19ml の滅菌水に希釈した。 (20 倍希釈液) 3. 20 倍希釈液1ml を 19ml の滅菌水に希釈した。 (400 倍希釈液) 4. 各6区の原液、20 倍希釈液、または 400 倍希釈液 100 μl を PDA 培地(STM 100 μg/ml 添加)の入った 9 cm シャーレに展開し、23℃で 2 日間培養後、菌類の 出現を観察した。これらをおおまかに、菌層の形態と色で分類し、それぞれの 菌数を計測した結果を Table. 2-1 に示した。 5. それぞれの PDA プレートから出現した菌を単離した。 6. その中から下記の 22 菌株を分離した。 非 FFC 区 FFC 区 ・シュンギク分離菌 3 菌株 5 菌株 (Fig. 2-4) ・ハツカダイコン分離菌 5 菌株 3 菌株 (Fig. 2-5) ・ホウレンソウ分離菌 3 菌株 3 菌株 (Fig. 2-6) 6 第2節 分離菌から植物生育促進菌類 (PGPF) の選抜 コマツナ(楽天;タキイ)を供して分離菌の中から植物生育促進菌(plant growth promoting fungi ; PGPF)の選抜を試みた。また、同時に、これら選抜株を接種し たコマツナのアブラナ科植物炭疽病菌 Colletotrichum destructivum Saccardo (MAFF:305635)に対する耐病性の有無について検定した。 第1項 非接触の条件下におけるコマツナの生育 実験材料と方法 ① 菌株:PDA 入りの 9cmシャーレ上に、23℃、7日間培養した。なお、これら の菌の起源は第 1 節 2 項の通りである。 ② コマツナの種子を 5 粒/Jiffy-7(Jiffy products AS)に播種した。 ③ 密封容器(エンテック社製プラスティックタッパウエアー No.S-23 ;1.22 L) 内に、①の分離菌を培養したシャーレを静置(植物との接触なし)し、②の Jiffy を 2 個づつ置いた。 ④ 密封後(湿度とガス成分を保つため) 、23℃、16 時間照明で種子を発芽させ、 約 2 週間後にその生育(個体重量 g、茎長 cm、第一葉の長さ cm)を測定した (Fig. 2-7) 。 [結果] 変動幅は大きいものの、培地のみ対照区と比較して平均値で S1 区は 122%、FS2 区 は 137%、FS3 区は 119%が認められた(Fig. 2-8)が、各個体の変動幅が大きく有意 差は無なかった。そこで、最も生育促進作用が顕著であった FS2 区について 3 回の追 試を行った所、常に生育促進の傾向が観察され、3 回目の試験では有意差(p≦0.05) が認められた(Fig. 2-9)。このように、FS2 菌等は、作物との非接触条件下でも、生育 を促進したことから、生育促進作用の一部は、ガス態でも活性を示す分子(あるいはガ ス態となり易い分子)に原因すると推定できる。本結果は、百町氏らの観察(私信)と も一致している。 第2項 接触させた場合のコマツナの生育 実験材料と方法 ① 培養土(サカタ:スーパーミックス)をオートクレーブで加圧滅菌(加圧1気 圧 121℃ 20 分)し、60℃で乾燥後、6 穴プレート(IWAKI Non-treated 7 MICROPLATE 6 Well with Lid, dia. 35mm)に約 7.5g /穴分注し、前項で生 育促進効果の優れていた FS2 菌を植菌し、23℃で 12 日間培養した。 ② 菌糸の出現を確認して、コマツナの種子(70%エタノールで消毒)を 4 粒/穴 播種し、23℃12 時間照明の人工気象器で生育させ発芽を観察した。 ③ コマツナの発芽を確認して、そのプレートを密封容器(エンテック社製プラス ティックタッパウエアーNo. ;1.22 L)へ移し替えて、23℃、12 時間照明の人工 気象器で生育状況を観察した。 結果 播種 2 日後に発芽が観察された。FS2 区の発芽が早く始まり、発芽にバラツキが少 なかった(Fig. 2-10)。播種7日後に観察した結果、同様に FS2 区において、発育のバ ラツキが少なく、生育は旺盛であった。一方、無菌対照区は発芽にバラつきがあり(Fig. 2-11)、FS2 区と比較すると、生育が劣る傾向が見られた。このように、実際の農場の 土壌中には、FS2 菌のような作物生育促進菌類が棲息していることが明らかとなった。 第3節 候補菌株の同定 第 2 節で明らかになったように、総社の実圃場から、植物の生育を顕著に促進する FS2 菌が分離された。この植物生育促進菌を用いた研究を進める上で、その形態学的特 徴を把握する必要や、将来の資材化を目指す上で安全性を証明するためにも、分類的位 置づけを明らかにする必要がある。 菌類の分類は、主に形態学的観察に基づいており、栄養体や繁殖体の形態や有性生殖の 有無で大きく分類される。そこで、まず、FS2 の菌の形態を電子顕微鏡で観察し、さら に種の同定(分子系統学分類)に重要な ITS1(Internal transcribed spacer 1)の高度 可変領域(Wainright et al. 1993)の塩基配列を解析した。 第1項 電子顕微鏡による FS2 菌の観察 PDA 寒天培地上に FS2 菌を植菌し、23℃で 14 日間培養した。この菌のコロニーの 周縁部を培地ごと薄くはがし、培地面が下になるように両面テープで試料台に固定し、 密封容器に入れ、真空乾燥した。次にこの試料をイオンコーターにより白金バナジウム で約 2 分コーティングした後、コロニー表面の胞子および分生子柄の形態を走査型電子 顕微鏡で(日立 S-800、加速電圧 15KV)で観察した。 8 [結果] 電子顕微鏡による形態学的観察の結果、本菌の特徴は、分生子柄が菌糸から 1 本もしくは少ない束状で短く立ち、先端近くで枝分かれする。いわゆる毛筆状で、 それぞれの枝の先にフィアライド(phialide)と呼ばれる分生子形成細胞が数個並 んでいる。フィアライドは紡錘形で、その先端から分生子を出芽するように形成し ている。このような特徴から、 Penicillium 属もしくはそれに近い菌と推測した (Figs. 2-12a, 2-12b.)(Barnett et al. 1987)。 第 2 項 FS2 菌の ITS1 領域の解析 2-1.FS2 菌の genomic DNA の抽出 ① 実験材料及び方法 FS2 菌をジャガイモ・デキストロース液体培地 (PDB;Difco 社製 Potato Dextrose Broth)で 23℃、12 日培養し、菌体を回収した。この菌体 94 mg を測定し、液体 窒素で凍結摩砕後、キアゲン社の DNeasy キットを使用して genomic DNA を抽出 した。抽出方法は、キアゲン社の DNeasy Plant Mini kit のプロトコールに沿って 実施した。抽出した DNA の濃度は、Spectrophotometer (ND-1000)で調べた。 ② 結果 genomic DNA の収量は、289.3 ng/μL、全容量 100 μL、 Abs at 260 nm =5.785、Abs at 280 nm =3.041 であった(Fig. 2-13) 。 2-2.ITS1 領域の塩基配列の決定と分子系統樹の同定 ① 材料及び方法 上記の抽出した genomic DNA 23144 ng をタカラバイオ社へ送付し、ITS1 領域 の塩基配列決定を依頼した。同社にて下記の Primer により PCR 反応を行い、 ITS1 の高度可変領域の一部を増幅した。 Primer: ITS1F: GTAACAAGGT(T/C)TCCGT ITS1R: CGTTCTTCATCGATG 10x ExTaq buffer 5 μl 2.5 mM dNTP 4 μl 9 F primer 50 pmol R primer 50 pmol Genome DNA 28.9 ng ExTaq polymerase (5U/ul) 1 μl 50 μl with dH2O 反応は、94 ℃ 1 min 1 cycle, 30 cycles (94 ℃ 30 s, 55℃ 1 min, 72℃ 1 min), 72 ℃ 3 min 1 cycle で実施した。 1 μl を1%アガロースゲルで電気泳動し、ゲルから PCR 増幅断片を抽出した。 ITS1F 及び ITS1R プライマーを用いて、Dye terminator 法によりシークエンス反 応を行った。サンプルを X-terminator (アプライド)で精製し、AB13730 によりシ ークエンス解析を行った。 ②結果 塩基配列は下記のように決定された。 CGTTCTTCATCGATGCCGGAACCAAGAGATCCGTTGTTGAAAGTTTTAATGATT TAAAATCTCACTCAGACTCACTGTTCAGGCAGGGTTCTAGGGTGCTTCGGCGG GAGCGGGCCCGGGGGCAGAAGCCCCCCGGCGACCGGGGCCAGGCCCCAGTG GGCCCGCCGAGGCAACGCGGTAACAGTAAACACGGGTGGGAGGTTGGGCTCG TTCGAACCCGCACTCGGTAATGATCCTTCCGCAGGTTCACCTACGGAAACCTT GTTACA この配列を基に、データバンク(DDBJ)に登録されている既知の真菌の遺伝子の配 列との相同性について BLAST プログラムを用いて比較した。DNA、タンパク質配列 データの分子進化・系統学解析ソフト MEGA4 を用いて、BLAST 検索で得られた相同 性の高い真菌の塩基配列から系統樹を作成し、候補菌の種を推定した。 10 99 88 77 AF455543 Penicillium islandicum isola... AY787845 Penicillium rugulosum strain... AY373936 Penicillium variabile strain... 69 DQ666825 Penicillium piceum strain AT... AB353914 Penicillium marneffei rev AF455490 Penicillium chrysogenum isol... 60 NW 001849579 Aspergillus oryzae RIB40... OSH01 A 100 AY533698 Talaromyces wortmannii isola... 0.1 Fig. 2-15. Phylogenic tree of ITS1 region of FS2 DNA (soft: MEGA4). ITS1 高度可変領域の塩基配列の同一性から、本菌は Talaromyces wortmannii と同定 された。 第4節 考 察 総社の本圃場から土壌菌類を分離し、その中から植物生育促進菌類(Plant growth promoting funji : PGPF)をスクリーニングした。スクリーニングの検定植物としてコ マツナ(品種:楽天;タキイ)を使用した。 この結果、シュンギク栽培土壌の FFC 処理区から 2 株、非 FFC 処理区から 1 株、 生育促進をする菌が分離され、その中から特に植物生育促進菌類(PGPF)として有望 と思われる FS2 株が得られた。 この FS2 の菌株は、検定植物であるコマツナと接触および非接触の両方の試験で生 育を促進した。非接触の試験を 4 回反復したが、常に対照区と比較して、生育(生重量 の増加)は顕著であり、安定して生育を促進する結果が得られた(3 回目の試験では、 生重量の増加に有意差(p≦0.05)が認められた) 。 これまで顕著な生育促進効果を持つ PGPF として報告のあった菌類の大半は Fusarium, Penicillium, Phoma, Sterile, Trichoderma に 属 し て い る が 、 中 に は Alternaria, Rhizopus および Phythium などにも生育促進効果を示すものが報告され ている(百町ら 2003)。また種としては、 Trichoderma 属では、 T. harianum, T. koningii, T. viride, T. hamatum, T. inhamatum, および T. aureoviride が、Fusarium 属では F. roseum, F. equiseti が、Rhizopus 属では、R. nigricans が、また、Pythium 属では P. dissotocum, P. sylvaticum および P. vexans が報告されている(百町ら 2003)。このように、PGPF は数種の土壌菌類の中から見いだされているがその種類は 限られており、また、PGPR(Plant growth promoting rhizobacteria)に比べそれら の報告事例も多くない(百町ら 2003)。 百町氏らは、PGPF の生育促進機構として、①PGPF 自体の生育促進物質の生産、② 11 土壌中の有機物を PGPF が分解し植物に利用しやすくする、いわゆる有機物のミネラ リゼーション化、および③PGPF による有害微生物の抑制などが考えられるとしている。 よって、今回得られた菌株は植物に非接触の条件下でも植物の生育を促進したことから、 植物の生育促進作用(一部か全てかは不明)を示す揮発性成分を生産するものと推定さ れた。なお、本菌株は、コマツナに直接接触させた場合でも、生育阻害などの作用は認 められなかったことから、菌体やその生産物は植物に対する害作用を持たないものと推 定される。このように本菌は、応用場面、すなわち、実際に圃場に導入した場合におい ても、好ましい性質を表すことが期待される。 本菌の特徴は、培地上では薄いカーキ色~茶色のコロニーを形成し、電子顕微鏡によ る形態学的観察では、分生子柄が菌糸から 1 本もしくは少ない束状で短く立ち、先端近 くで枝分かれする、いわゆる毛筆状で、それぞれの枝の先にフィアライド(phialide) と呼ばれる分生子形成細胞が数個並んでいる。フィアライドは紡錘形で、その先端から 分生子を出芽するように形成している。このような特徴から、Penicillium 属もしくは それに近い菌と推測した。 キアゲン社の DNeasy plant Mini kit を使って genomic DNA を抽出し、同定し、ITS 配列を用いた分子系統学的解析から Talaromyces wortmannii (Penicillium kloeckeri Pitt)と判明した(Fig. 2-15)。Talaromyces 属は Penicillium 属 の有性世代の属名である。したがって、系統樹解析の結果(99%相同)および形態観察 の結果からも妥当な結果である。 Talaromyces 属は約 60 種が報告されている。その中で、食品業界では耐熱性カビと して知られており、食品汚染の原因菌の 1 つとして警戒されている(宇田川、1991)。 一方、既に農業資材(生物農薬)として市販されている T. flavus(バイオトラスト水 和剤:出光興産)もあることから、圃場の土中には、このような有用菌が棲息している ことが判明している。今後の研究により本菌が有効利用されることが期待される。 12 第3章 Talaromyces wortmannii の生産する揮発性成分の同定 第 2 章 第 1 項の結果から生育促進作用の一部は、揮発性の分子(あるいはガス態と なり易い分子)に起因するものと推定された。そこで、培養された T. wortmannii が揮 発性成分を生産するか否か、また、生産するとすればどのような物質なのかについて解 析した。 第1節 揮発性成分の回収と GC-MS 解析 T. wortmannii (FS2 株)を PDA 培地上で 23℃、16 日間(2008 10/19~11/4)培 養した。PDA プレート内の気体成分(有機物)は、シリカ母材の吸着剤(Mono Trap DCC18:ジーエルサイエンス社)を1プレート当たり 2 枚置き、密封後、室温(20℃ ~23℃)で 3 日静置してトラップ(パッシブトラップ)した。成分の解析は高砂香料 株式会社へ依頼した。なお、対照区として、空のプレート(プレート自体からの揮発性 物質排出を調べるため)と PDA 培地入りプレート(プレートと培地からの揮発性物質 排出を調べるため)を設けた。 ガラスバイアルに DDC18 を入れ、1 枚当たり 200 μl のジクロロメタンを加え、5 分間 の超音波処理により吸着成分を溶出させた。溶出液に窒素ガスを吹き込んで濃縮し、 GC-MS 解析に供した。なお、GC-MS 分析の条件は下記の通りである。 13 第2節 結果 両対照区とイオンクロマトグラフを比較した結果、FS2 菌培養プレート内には、Fig. 3-1 に示す様に、上述のガスクロマト条件で、保持時間、13.5 分、16 分、26.4 分、26.5 分、28 分、30.5 分、および 31 分に7本の特異的ピークが確認できた。すなわち、パッ シブトラップ法で、比較的簡便に揮発性成分を捕集できることが判明した。これらのう ち 16 分(#2)の物質は、高砂香料の MS ライブラリー(データベース)との照合か ら、セスキテルペン類の β-caryophyllene であることが明らかとなった(Fig. 3-2)。しか し、その他の 6 本のピーク(♯1、#3~♯6)については、セスキテルペン類と推察され るものの、ライブラリー検索からは同定できなかった。 第3節 考察 T. wortmannii が生産する揮発性成分の 1 つは β-caryophyllene であることが判明した。 β-caryophyllene はセスキテルペンの一種で、分子式は C15H24、分子量は 204.35 の疎水性 物質である(Fig. 3-3) 。 一般的に、テルペンは、イソプレンを構成単位とする炭化水素で、植物や昆虫、菌類 などによって作り出される生体物質である。その生理活性作用は多義にわたり、例えば セスキテルペンのアブシジン酸は植物ホルモンとして作用し、ジテルペノイドであるパ クリタキセルは、抗がん剤として使われている。また、すべてのセスキテルペンは、細 胞質で生合成(メバロン酸経路)される。 β-caryophyllene やその誘導体は、Pestalotiopsis sp., Wallemia sebi, Poronia punctata, Naematoloma fasciculare, や Hypoxylon terricola.などの数種の菌類から放出される ことが報告されている (Yang et al. 2009)。 しかし、 β-caryophyllene が PGPF の T. wortmannii によって生産されるとの報告はこれまでに見当たらない。 β-caryophyllene やその誘導体は、black pepper (Piper nigrum L.), cinnamon (Cinnamomum spp.), oregano (Origanum Vulgare L.), clary sage oil (SalVia sclarea L.), Lychnophora affinis Gardn.(キク科), Inula spiraefolia(キク科イヌラ属) や Pulicaria sp.(キク科) のような多くのハーブ植物由来のエッセンシャルオイルに含まれることはよく知られ ている(Yang et al. 2009) 。Lee et al. (2008) は、チョウセンゴヨウマツの実から抽出した エッセンシャルオイル(caryophyllene 1.71%を含む 87 種の混合物)のグラム陽性菌、グ ラム陰性菌および真菌に対する抗菌活性を調べた結果、Candida glabrata YFCC 062 や Cryptococcus neoformans B 42419 に対して顕著な抗菌活性が確認されたと報告している。 しかし、この場合どのような成分あるいは組合せが有効であるかについては明らかにさ れていない。 Yu cai et al.(2002) は、播種後 8 週の Artemisia annua(クソニンジン;キク科ヨモギ 14 属)の出葉にエリシターとして作用する病原性の Verticillium dahliae の抽出物(病原性 の Verticillium dahliae の抽出物は、ファイトアレキシン生合成とオキシダーティブバー ストの非特異的エリシターとして機能する)を処理したところ、caryophyllene synthase の転写レベルは 2 日目に劇的に増加したと報告している。これは β-caryophyllene が病原 菌の感染に対して植物側の防御反応に関与していることを推測させる。 一方、人(動物)に対する β-caryophyllene(あるいは本物質を含む混合物)の効果も 知られている。β-caryophyllene はクローブやイランイランの精油に含まれる香り成分と して、アロマセラピーに利用されている。チューリッヒ工科大学の Jurg Gertsch(2008) は、β-caryophyllene の作用の分子生理学的解析から、本セスキテルペンが、「カンナビ ノイド受容体・タイプ 2」 (CB2)に結合して、本受容体を活性化し、活性化された CB2 は、免疫系を落ち着かせ、骨量を増やし、痛みの信号を遮断することを明らかにしてい る。このように、β-caryophyllene は植物や動物にポジティブな作用を示すことが推察さ れた。 なお、本論文では、T. wortmannii が生産する β-caryophyllene 以外の 6 種類の揮発性成 分を同定することができなかった。今後、これらの物質の同定と生理活性の解明を進め る必要がある。 15 第 4 章 β-caryophyllene の植物に対する生育促進作用および耐病性 増進作用の解析 第 3 章で Talaromyces wortmannii が生産する揮発性成分の 1 つが、β-caryophyllene であ ることが判明した。そこで、コマツナ(アブラナ科)、キュウリ(ウリ科)タバコ(ナ ス科)、オオムギ(イネ科)を使って、実際に β-caryophyllene が植物(作物)の生育促 進作用を有するのか否か、また、病原菌に対する抗菌性を有するのか否か、さらに耐病 性を付与するか否かについて解析した。 第1節 β-caryophyllene で処理されたコマツナ(Brassica rapa var. perviridis)の生 育と耐病性 コマツナ(品種:楽天;タキイ)を供し、β-caryophyllene 溶液を直接処理した場合と、 揮発させて処理した場合の生育状況並びにアブラナ科炭疽病菌の感染や発病に対する 効果を調べた。 第1項 β-caryophyllene 溶液で処理されたコマツナ葉におけるアブラナ科炭疽病菌(C. destructivum MAFF 305635)の感染と病斑形成 実験1. 先ず、アブラナ科炭疽病菌の胞子の形態形成や侵入行動に対して β-caryophyllene が直接影響するか否かについて、エタノールで固定したタマネギ内表皮を用いて調べた。 [実験1の方法] 1. タマネギ燐片の内表皮を EtOH で固定し、 蒸留水で置換した死表皮組織上で調べた。 2. 対照区として 1% EtOH 処理区と、β-caryophyllene 3. 処理方法は、β-caryophyllene 4.4 mM 処理区の 2 区を設けた。 4.4 mM を 5 μl 滴下し,同時にアブラナ科炭疽病菌(C. destructivum)の胞子懸濁液(5×105 spores/ml)を 5 μl 接種し、接種 45 時間後にコッ トンブルーで染色後、付着器形成率と侵入率を光学顕微鏡で調べた。1% EtOH 処理 区を対照区とした。 [結果] β-caryophyllene 処理区と 1% EtOH 処理区の間では、アブラナ科炭疽病菌の発芽率、 付着器形成率および侵入率には有意な差は認められなかった(Fig. 4-1)。すなわち、 β-caryophyllene は、アブラナ科炭疽病菌に対して直接的な発芽阻止効果、付着器形成阻 16 害効果および侵入阻害効果は無いことが示めされた。 実験2.コマツナ第 1 葉に β-caryophyllen 溶液を滴下し、直ちに同じスポットにアブラ ナ科炭疽病菌(C. destructivum )分生胞子懸濁液を接種した場合の効果について調べた。 [実験2の方法] 1. ガラス瓶へ Milli Q 水を 9900 μl 入れ、これに EtOH を 100 μl 加える。--- A(エタノ ール水対照区) 2. β-caryophyllene を 10 mg 秤量し、EtOH(100 μl)で溶解後、さらに Milli Q 水を 9900 μl 加える。--- B(4.40 mM) 3. A を試験管 4 本にそれぞれ 200 μl 分注し(C)、その 1 本に B を 100 μl 加える。--- D (1.47 mM) 4. 別の C 200 μl に D を 100 μl 加える。--- E(0.49 mM) 5. 別の C 200 μl に E を 100 μl 加える。--- F(0.16 mM) 6. 別の C 200 μl に F を 100 μl 加える。--- G(0.05 mM) 7. 恒温室(20~23℃)で生育させた播種後約 3 週齢の良く展開したコマツナの第一葉 5 枚を切取り、切口から給水し、それぞれに A~G(C を除く 6 スポット)を 5 μl づつスポットし(接種部位によるバラツキを避けるために葉先から濃度勾配順に右 回りにスポットする葉と、葉元から濃度勾配順に左回りにスポットする葉を設定し た)、直ちに各スポットに炭疽病菌(C. destructivum;PDA 培地で 23℃、10 日培養) の胞子懸濁液(5×105 spores/ml)を 5 μl 接種し、湿度を保って、23℃、16 時間照明 の人工気象器内に静置した。なお、胞子滴下後の β-caryophyllene の最終濃度は、そ れぞれ 1/2 の濃度すなわち 2.20 mM、0.74 mM、0.25 mM、0.08 mM、0.03 mM とな る。 8. 接種 3 日後、上記の葉 5 枚の内、2 枚の葉の接種部位を切取り固定液(酢酸 10%+ EtOH 90%)で固定脱色し、コットンブルーで染色後、光学顕微鏡で観察し、感染率 (侵入菌糸を形成した胞子数/付着器形成した胞子数×100)を求めた。 9. 接種 6 日後、上記の残りの葉を撮影し、標本を作製した。 [結果] β-caryophyllene 溶液処理後、直ちに接種した場合、炭疽病菌(C. destructivum )の病 斑面積は、エタノール水対照区と比較して 2.20 mM 区では抑制された(Fig. 4-2) 。また、 感染率は、β-caryophyllene の処理濃度に比例して低下する傾向がみられたが、有意差は 認められなかった(Fig. 4-3) 。 17 実験3.実験2の結果に基づき、次に前処理した β-caryophyllene 溶液の炭疽病菌(C. destructivum )の感染と病斑形成に及ぼす効果について調べた。 [実験3の方法] 1. β-caryophyllene の調整は実験1に従った。 2. 播種後約 3 週齢の良く展開したコマツナの第一葉 5 枚にそれぞれ A~G(C を除く 6 スポット)を 5 μl づつスポットし(接種部位によるバラツキを避けるために葉先か ら濃度勾配順に右回りにスポットする葉と、葉元から濃度勾配順に左回りにスポッ トする葉を設定した)、24 時間静置した後に各スポットに炭疽病菌(C. destructivum MAFF 305635;PDA 培地で 23℃、10 日培養)の胞子懸濁液(5×105 spores/ml)を 5 μl 接種し、湿度を保って、23℃ 16 時間照明の人工気象器内に静置した。前述のように、 菌接種後の β-caryophyllene の濃度は、それぞれ 1/2 の濃度すなわち 2.20 mM、0.74 mM、 0.25 mM、0.08 mM、0.03 mM となる。 3. 接種 3 日後、上記の 5 枚の内、2 枚の葉の接種部位を切取り固定液(酢酸 10%+EtOH 90%)で固定し、コットンブルーで染色後、光学顕微鏡で観察し、感染率(侵入菌 糸形成胞子数/付着器形成胞子数×100)を計測した。 4. 接種 6 日後、上記の残りの葉を撮影し、標本を作製した。 [結果] β-caryophyllene 溶液前処理で炭疽病菌接種コマツナ葉の病斑形成は、特に 2.20 mM 区 では対照区と比較して抑制される傾向にあった(Fig. 4-4)。また、菌接種 3 日後に計測 した感染率は、対照区と比較して各処理区とも有意(p≦0.001)に低かった(Fig. 4-5) 。 β-caryophyllene 処理直後に接種すると、炭疽病菌の感染や病斑形成を抑制する作用も僅 かながら認められるものの(有意差はない)、前処理によって、病斑の形成、感染率が 有意に低下したことは、β-caryophyllene がコマツナの拡大抵抗性や侵入抵抗性を誘導す る可能性を示唆している。 第2項 気化した β-caryophyllene で処理したコマツナの生育とアブラナ科炭疽病耐病性 密封容器内でコマツナに自然に揮発させた β-caryophyllene で処理した場合の生育状 況とアブラナ科炭疽病菌(C. destructivum)の感染、発病に対する影響について調べた。実 験方法は下記の通りある。 18 [実験方法] 1. ジフィー(No. 7) 36 個にコマツナの種子(4 粒/ジフィー)を播種し、23℃ 16 時間照 明下の人工気象器内で生育させた。 2. 播種 2 日後、コマツナの発芽を確認し、密封容器 3 個(株式会社エンテック社製タ ッパウエアー1.22 L)にそれぞれジフィーを 6 個移し、5 cm のガラスシャーレに β-caryophyllene を 2 μl(全量が蒸発すると計算上、1.34 ppm となる) 及び 200 μl(134 ppm)をろ紙に浸み込ませ自然に揮発させて、23℃ 12 時間照明下に生育させた(こ の場合、発芽段階から処理することとなる)。 3. 播種 5 日後、残りのコマツナが双葉展開したのを確認し、別の 3 個の密封容器(株 式会社エンテック社製タッパウエアー1.22 L)にそれぞれジフィーを 6 個移し、5 cm のガラスシャーレに β-caryophyllene を 2 μl 及び 200 μl をろ紙に浸み込ませ自然 に揮発させて、23℃、12 時間照明下の人工気象器で生育させた。(この場合は、 子葉展開後からの処理となる)。 4. 播種 22 日後、各区コマツナ 12 本を根元で切り取って、個体重量を測定した。 5. 同時に、各区の残りのコマツナ葉に炭疽病菌(C. destructivum;PDA 培地で 23℃、 10 日培養)の胞子懸濁液 5 μl(5×105 spores/ml)を滴下し、23℃ 12 時間照明下に静 置した。 6. 接種 2 日後、処理区毎に葉 2 枚を固定(固定液:EtOH・90%+酢酸・10%)し、コ ットンブルーで染色後、光学顕微鏡下に、感染率(侵入菌糸形成胞子数/付着器形 成胞子数×100)を測定した。 [結果] β-caryophyllene をコマツナ種子の発芽時から処理した場合は、無処理対照区と比較し て生育の差は見られなかったが(Fig. 4-6)、炭疽病菌の感染率は、無処理対照区=1.34 ppm >134 ppm の傾向が認められた。無処理対照区と 1.34 ppm 間では感染率に有意差がなか ったが、無処理対照区と 134 ppm 間及び 1.34 ppm と 134 ppm 間では有意差が認められ た(p≦0.05)(Fig. 4-7) 。 一方、β-caryophyllene で子葉展開時(播種 5 日後)から処理した場合、生重量は、無 処理対照区=1.34 ppm<134 ppm の傾向が認められた(Fig. 4-6) 。無処理対照区と 1.34 ppm 間では生重量の有意差がなかったが、無処理対照区と 134 ppm 間及び 1.34 ppm と 134 ppm 間では生重量に有意差(p≦0.01)が認められた(Fig. 4-6) 。また、炭疽病菌の 感染率は、無処理対照区>1.34 ppm≧134 ppm の順で低くなる傾向があり、無処理対照 区と 1.34 ppm 間及び無処理対照区と 134 ppm 間では有意差(p≦0.01)が認められた。 但し、1.34 ppm と 134 ppm 間では有意差はなかった(Fig. 4-7)。 すなわち、気体状態の β-caryophyllene でコマツナを処理した場合、発芽時よりは子葉 展開時から処理する方が、生育が促進される傾向があった。一方、炭疽病菌の感染につ 19 いては、いずれの処理法においても無処理対照区と 134 ppm 処理区間で有意な差があり、 播種 5 日後に与えた場合では、無処理と 1.34 ppm 処理区の間でも有意差が認められた ことから、子葉展開後に与えた方が抵抗性が増すようである。以上の様に、自然に揮発 した β-caryophyllene の処理によって、コマツナに生重量の増加と耐病性を付与できるこ とが判明したが、コマツナでは耐病性付与の効果がより顕著に現れるようである。 第3項 気化した β-caryophyllene で処理されたコマツナ苗の根の生育 第 2 項の実験から、β-caryophyllene (volatile)で処理したコマツナの根の生育が促進さ れる傾向が認められた(Fig. 4-8) 。そこで、コマツナ(楽天:タキイ種苗 京都)の根 の生育に対する β-caryophyllene (volatile)の影響を調べた。処理区、無処理区それぞれ 18 mm ×18 cm の試験管 20 本を試験管立で固定し、実験方法に示した水耕栽培用ホーグラ ンド第 1 液を上部 1 cm 残して満たし、その上部にガラスウールを固定し、コマツナを 1 粒播種した。水面以外はアルミ泊で覆った。 [実験方法] 1. 25℃暗所で催芽した。 2. 発芽が確認された種子を 1 粒づつ試験管に播種し、25℃暗所で静置した。 3. 播種翌日、水面以外はアルミ泊で覆い、23℃ 、12 時間/日の照明下に静置した。 4. 播種 3 日後、子葉展開を確認後、根の長さが約 3 cm 程度に生育したコマツナ(試験 管)を 10 本づつ、密封容器(容量:6.6 L)に移した。密封容器の内側の上部にろ 紙を張り、β-caryophyllene を 1082 μl 浸み込ませ、自然揮発させて処理した(計算上 の濃度は 0.73 mM)。 5. 播種 6 日後(処理 3 日後)、β-caryophyllene の処理を中止した。 6. 播種 10 日後、培養液を根元まで補充した。 7. 播種 17 日後、各区の根の生育(最長根の長さ)を測定した(β-caryophyllene 処理 14 日後)。 ホーグランド第 1 液 培養液組成 ( g/l ) KNO3 0.51 g 5 mM Ca(NO3)2・4H2O2 1.18 g 5 mM KH2PO4 0.136 g 1 mM MgSO4・7H2O 0.49 g 2 mM 20 [結果] 無処理区の根は、主根が相対的に短く先端部の側根があまり発達していないのに対し、 処理区では、主根が長く先端部まで側根がよく発達していた(Fig. 4-9)。根の生育は無 処理区と比較して、β-caryophyllene (volatile)処理区の方が有意に(p≦0.05)伸長するこ とが明らかとなった(Fig. 4-9)。このような根の発達は、地上部の発達を促進する一つ の要因になっているものと推測できる。 第2節 β-caryophyllene 気体で処理されたキュウリ(Cucumis sativus)の生育と耐 病性 β-caryophyllene がコマツナ以外の植物でも同様な作用を示すか否かを調べるために、 キュウリを供して生育促進作用及びウリ類炭疽病(Colletotrichum orbiculare)に対する 耐病性について解析した。 第1項 β-caryophyllene (volatile)で処理されたキュウリ(Cucumis sativus)の生育と耐病 性 第 1 節のコマツナを供した実験から β-caryophyllene 処理によりコマツナの生育が促進 され、炭疽病に対する耐性が付与されることが判明した。そこで、アブラナ科以外の植 物として、キュウリ(品種:夏すずみ;タキイ)を用いて、密封容器内で自然に揮発さ せた β-caryophyllene で処理したキュウリの生育状況と発病に対する効果を調べた。実験 方法の詳細は下記の通りである。 [実験方法] 1. キュウリ(品種:夏すずみ)の種子を 2 粒/ポット(9 cm プラスチックポット、培養 土:サカタスーパーミックスとバーミュキライトを 1:1 の混合)播種し、ハイポネ ックス 500 倍を 80 ml/ポット潅水した。計 16 ポットを 23℃、16 時間照明の人工気 象器で培養した。 2. 播種 6 日後、双葉の展開を確認し、正常発育したキュウリを 1 本選抜し、容量 4.5 L のプラスチック製の密封容器 3 個に、それぞれ 4 ポットづつ置いた。 3. 密封容器内に直径 3 cm のガラスシャーレを置き、ろ紙に β-caryophyllene を 738 μl (134 ppm)、 7.4 μl (1.34 ppm) の各量を浸み込ませ、直ぐに密封して、23℃、16 時間 照明の人工気象器内で生育させた。また、密封容器内にキュウリ苗だけを置く無処 理対照区(0 ppm) を設けた。 4. 播種 32 日目に各区のキュウリを根元から切り取り生重量を測定した。 21 5. 次に各区の各葉を切取りプラスチック容器に並べ、ウリ類炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare Ellis & Halsted、104T 株;PDA で 23℃14 日培養)の胞子懸濁液(1×10 6 spores/ ml)を葉面に噴霧接種し(噴霧量は、21×31=651 cm2 当り 5 ml)、湿度を保 って 23℃、12 時間照明の人工気象器内に静置した。 6. 噴霧接種 5 日後、病斑を観察した(撮影) 。 7. 病斑面積については、Assess 2.0(APS の病斑面積測定ソフト)を用いて測定した。 [結果] 播種 32 日後(β-caryophyllene 処理 26 日後)のキュウリ苗の生重量は、β-caryophyllene の 134 ppm 処理区が最も大きく、平均で 5.24 g/苗 (n=4)であった。1.34 ppm 処理区は 2.21 g/苗、無処理対照区 1.92 g/苗と比較して顕著な生育の差が認められ、t 検定によ り有意差 (p≦0.001) が確認された( Figs. 4-11, 4-12)。また、134 ppm の β-caryophyllene で処理したキュウリ葉にウリ類炭疽病菌を噴霧接種し、5 日後の病斑面積を Assess 2.0 により測定した結果、無処理区の病斑面積率(病斑面積/葉面積×100)の平均は 64.6% に対して、1.34 ppm 処理区 12.2%、134 ppm 処理区 3.0%となり、明らかに病斑の拡大・ 進展が抑制された(p≦0.05)(Fig. 4-14)。以上のように、β-caryophyllene 処理により、 キュウリにも生育促進と耐病性が付与された。 第2項 β-caryophyllene 処理キュウリ(Cucumis sativus)の果実の収量 次に第 1 項と同じように β-caryophyllene で処理したキュウリ苗を圃場に移植して収量 調査を行った。 [実験方法] キュウリの生育および β-caryophyllene 処理は第 1 項に準じた。但し、密封容器は 9 L のデシケーターを使用し、β-caryophyllene の処理濃度を 136 ppm, 13.6 ppm に変更した。 播種 32 日後にキュウリ苗をサカタソイルミックス 1/2 量混入した圃場に移植し、移植 28 日後から 30 日間収穫調査をした。 [結果] 30 日間のキュウリの収量は、13.6 ppm および 136 ppm 処理区において総本数および 総重量共に 1%EtOH 処理区と比較して有意に大きかった(Fig. 4-16)。これを収穫日の 累計本数で表すと、 1%EtOH 処理区が 4.5 本に対して、 13.6 ppm 処理区は 15.5 本、136 ppm 処理区は 23 本となり、明確に収量の増加(p≦0.01)が確認できた(Fig. 4-15 b)。す なわち、β-caryophyllene で処理されたキュウリは生育が促進され、その効果により収穫 時期が早まり収量が増加した、いわば促成的な効果が得られたと考えられる。 22 第3節 β-caryophyllene 気体で処理されたタバコ(Nicotiana benthamiana)の生育 と耐病性 次にベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana;ナス科)を用いて、β-caryophyllene (volatile)の処理による生育と灰色かび病(病原菌 Botrytis cinerea )に対する耐病性 を調べた。 〔実験方法〕 1. タバコの種子を Jiffy(No.7)に播種した。 2. 播種 7 日後、新しい Jiffy(No.7)に 3 個体づつ移植した。 3. 播種 10 日後 Jiffy を 4 個づつ 3 つの密封容器(1.22 L)に移し、無処理区(0 ppm、 対照区), β-caryophyllene の 2 μl (1.34 ppm), 200 μl (134 ppm)処理区を設けた。播 種 31 日後、タバコを根元で切取りし、個体別重量を測定した。また、切取った 第 1 葉、第 2 葉に灰色かび病菌 (Botrytis cinerea Bcr2 株)の胞子懸濁液(9×105 spores/ml)を 6 μl 滴下接種し、23℃ 12 時間照明下に静置した。 4. 接種 2 日後、一部の接種葉を MeOH で固定した。 5. 接種 4 日後、残りの接種葉を撮影し、作標した。 [結果] 無処理区の平均生重量 343 mg/苗と比較して、1.34 ppm 処理区は 384 mg/苗、134 ppm 処理区は 604 mg/苗と生育が促進された(Fig. 4-17)。無処理対照区と 1.34 ppm 間では生重量に有意差がなかったが、無処理対照区と 134 ppm 間及び 1.34 ppm と 134 ppm 間では生重量に有意差(p≦0.01)が認められた。 灰色かび病菌(B. cinerea)の接種試験の結果、無処理区の感染率が 74%に対し、1.34 ppm 処理区の感染率は 62%、134 ppm 処理区の感染率は 45%で、134 ppm 処理区の感 染は、無処理区と比較して有意(p≦0.001)に抑制された(Fig. 4-20)。また、無処理 区は接種部位に明瞭な灰色かび病菌(B. cinerea)の病斑が観察されたが、1.34 ppm 及び 134 ppm 処理区の病斑は微細であった(Fig. 4-19)。 また、病斑面積を Assess 2.0 で測定した結果、無処理区の平均の病斑面積が 5.89 mm2/ 病斑に対し、1.34 ppm 処理区の平均の病斑面積は 1.06 mm2/病斑、134 ppm 処理区の平 均の病斑面積は 0.68 mm2/病斑で、1.34 ppm 及び 134 ppm 処理区の病斑面積は、無処理 区と比較して有意(p≦0.01)に抑制された(Fig. 4-18)。すなわち、β-caryophyllene 処 理により、ベンサミアナタバコ(ナス科)においても生育が促進され、灰色かび病に対 する耐病性が増進された。 23 第4節 β-caryophyllene 気体で処理されたオオムギ(Hordeum vulgare L.)の生育と耐 病性 β-caryophyllene は双子葉植物のコマツナ(アブラナ科) 、キュウリ(ウリ科) タバコ (ナス科)の生育を促進し、それぞれの炭疽病や灰色かび病に対する耐病性を増進する ことが判明した。そこで、次に、単子葉植物のオオムギ(イネ科)を供して β-caryophyllene の生育促進および、オオムギうどんこ病に対する耐病性の増進の有無を調べた。 第1項 生育と耐病性に及ぼす影響 〔実験方法〕 1. シャーレに十分水分を含ませたペーパーを敷きオオムギ(品種コビンカタギ)を播 種し、室温にて静置した。 2. 播種翌日、種子を4粒/ジフィーに移し、23℃で静置した。 3. 播種4日後、各区共に6個のジフィーを密封容器に移し、β-caryophyllene を 0 ppm、 1.34 ppm、13.4 ppm で処理し、23℃で静置した。 4. 播種 11 日後、各区共に 4 本/ジフィー×4+4=20本の苗を切り取り、個体別 に重量を測定し、統計処理した。 残りの 1 本/ジフィー×4=4本の苗には Blumeria graminis f. sp hordei(race1)の胞子を絵筆で接種した。 5. 接種 48 時間後に接種部を切り取り、メタノールで固定脱色した。水洗後、コット ンブルーで染色後、光学顕微鏡で観察し、感染率(吸器形成胞子数/付着器形成胞 子数×100)を求めた。 [結果] 無処理区の平均生重量が 206 mg と比較して、1.34ppm 処理区は 235 mg/苗、13.4 ppm 処理区は 235 mg/苗と生育が促進された(Fig. 4-22)。統計処理の結果、無処理対照区 と 1.34 ppm には生重量に有意差がなかったが、無処理対照区と 13.4 ppm 間には有意差 (p≦0.05)が認められた。 また、オオムギうどんこ病菌の感染率(吸器形成胞子数/付着器形成胞子数×100) は、無処理区が 65.3%に対して、1.34ppm 処理区は 48.9%、13.4 ppm 処理区は 31.5%と なり、無処理区と比較して、それぞれ有意差(p≦0.01 あるいは p≦=0.001)が認められ た(Fig. 5-23)。以上のように、β-caryophyllene (volatile)処理によりオオムギは生育促進 され、オオムギうどんこ病菌に対する耐病性が付与された。 なお、134 ppm の β-caryophyllene (volatile)の処理により、うどんこ病に対する耐病性 は促進されたが、オオムギの茎葉が黄変あるいは褐変したため、本実験では 13.4 ppm を用いている。これは、双子葉植物よりもオオムギの β-caryophyllene (volatile) に対す 24 る感受性が高いこと、換言するならば、本セスキテルペンにはオオムギに対する顕著な アレロパシー作用を有することが示唆される。 第2項 β-caryophyllene (volatile) の処理時間とオオムギうどんこ病耐病性の関係 次に β-caryophyllene (volatile) の処理時間がオオムギうどんこ病耐病性に及ぼす影響 を調べた。 〔実験方法〕 1. オオムギ(品種コビンカタギ)を4粒/ジフィーに播種した。 2. 播種 3 日後から、密封容器にジフィーを 4 個づつ移動し、β-caryophyllene(13.4 ppm) で処理をした。処理時間は 1-5 日間とし、対照には無処理区を設けた。 3. それぞれの時間 β-caryophyllene で処理した後、オオムギうどんこ病菌の分生胞子を 絵筆で接種し(いずれも播種後 8 日目となる)、接種 2 日後にメタノールで固定、 脱色し、コットンブルーで染色した。 4. 染色後、光学顕微鏡で観察し、感染率(吸器形成胞子数/付着器形成胞子数×100) を求めた。 [結果] β-caryophyllene (volatile)の 1 日処理区(61.1 %)では、無処理区(65.3 %)と比較して 感染率の有意な低下は認められなかった(Fig. 4-24)。また、β-caryophyllene (volatile) の 2 日処理区(41.5 %)では、無処理区と比較して感染率が有意(p≦0.01)に低下した。 さらに、β-caryophyllene (volatile)の 3 日(32.1 %)、4 日(36.4 %)、5 日(31.5 %)処 理区は、無処理区と比較して、感染が有意(p≦0.001)に抑制された。 このように、この組み合わせで調べた限りでは、処理後 2 日目には有意に耐病性が誘 導され、処理 3 日後には、耐病性(抵抗性)の誘導はプラトーに達することが明らかと なった。 第5節 1. 考察 タ マ ネ ギ モ デ ル 表 皮 を 用 い た 実 験 か ら 、 β-caryophyllene 溶 液 は 炭 疽 病 菌 ( C. destructivum)の発芽、付着器形成、また穿孔を直接阻害する作用はないことが明ら かとなった(Fig. 4-1)。しかし、コマツナ葉を β-caryophyllene 溶液で処理すると、 濃度依存的に感染が阻害され、また、接種 1 日前処理の方が感染阻害作用はより顕 25 著であることが判明した。以上の結果から、β-caryophyllene は炭疽病菌に対する侵 入抵抗性または拡大抵抗性を誘導する可能性が強く示唆された。ちなみに、侵入抵 抗性は、主に穿孔に対する抵抗性で栄養関係が成立するまでの感染初期に発揮され る。したがって、感染の成否に深く関わっている。一方、拡大抵抗性は、病原菌が 栄養関係を成立させた後、組織内を蔓延して、発病や繁殖体形成に至るまでに発揮 される抵抗性で、病気の進展度や繁殖体形成量の違いとなって現れる。 β-caryophyllene 処理コマツナ葉において、感染が阻害されるという結果から、 β-caryophyllene は、第一義的には、侵入抵抗性を誘導する可能性が高い(Fig. 4-5) 。 2. β-caryophyllene (volatile)でコマツナ苗を処理すると、根の伸長と分岐および地上部 の生育が促進された(Figs. 4-8, 4-9)。すなわち、β-caryophyllene (volatile)のコマツ ナに対する生育促進効果は、コマツナの根の生育、栄養吸収力を促進し、その結果、 地上部の生育を促進することが示唆された。 3. β-caryophyllene (volatile)で処理されたコマツナ苗では、炭疽病菌の感染が抑制され た。すなわち、β-caryophyllene は気体で処理した場合も、コマツナの耐病性を促進 する。この場合、β-caryophyllene (volatile)を発芽時から処理するより子葉展開時に 処理した方が、生育においても耐病性においてもより顕著な誘導作用を示した。こ のことは、β-caryophyllene (volatile)は、子葉の気孔から植物に取り込まれて作用す る可能性を示唆している。 4. キュウリ苗を密封容器内で β-caryophyllene (volatile)で処理すると、生育が促進され (Fig. 4-12) 、ウリ科炭疽病菌の感染は抑制された。また、β-caryophyllene 処理され たキュウリ苗を圃場に定植すると、収穫時期が早まり、定植後 28 日目から1ヶ月 間の収量が増加した(これ以降のデータは取っていないため不明)。すなわち、 β-caryophyllene (volatile)で処理することによって、促成的な効果が得られたと考え られる(Fig. 4-15a) 。 5. ベンサミアナタバコを密封容器内で β-caryophyllene (volatile)処理すると、生育が促 進された(Fig. 4-17)。また、B. cinerea に対する耐病性付与効果も確認できた(Fig. 4-20)。すなわち、β-caryophyllene は、アブラナ科、ウリ科およびナス科などの多 くの双子葉植物に対して、生育を促進し、耐病性を付与することが判明した。また、 付与された耐病性は、hemibiotroph に限らず necrotroph にも有効であることが判明 した。 6. イネ科植物のオオムギ(品種コビンカタギ)においても β-caryophyllene 処理により 生育の促進と(Fig. 4-22)、うどんこ病に対する耐病性の促進が認め(Fig. 4-23a)。 オオムギに対する β-caryophyllene の作用は双子葉植物よりも低濃度で現れることか ら、オオムギは、β-caryophyllene に対する感受性が高いことが示唆された。 7. β-caryophyllene (volatile) で処理されたオオムギにおけるうどんこ病菌の感染は、処 理 3 日後までは、処理時間が長いほど感染が抑制された(Fig. 4-24) 。しかし、処理 26 時間がそれより長くなっても感染阻害程度は、3 日間処理とほとんど同様で、これ 以上の感染阻害効果は認められなかった。このように、β-caryophyllene は純寄生性 のオオムギうどんこ病菌の感染(侵入)行動を約 50 %抑制できる程度の耐病性を 誘導できた。今回の実験では、特に侵入阻害作用を調べたが、うどんこ病菌(接種 4 日後以降)の胞子形成や病斑拡大に対する作用(拡大抵抗性)については調べる 必要がある。 8. β-caryophyllene は、双子葉植物(アブラナ科、ウリ科、ナス科)および単子葉植物 (イネ科)などの広汎な植物に対する生育促進作用を示した。また、これら全ての 供試植物に、耐病性を付与する作用も認められた。このような知見から、 β-caryophyllene は、ウリ科、アブラナ科、ナス科およびイネ科などの双子葉植物・ 単子葉植物に共通する生育や耐病性に関わる遺伝子発現を誘導することが示唆さ れた。β-caryophyllene で誘導される抵抗性は、広汎な植物の様々な寄生様式(栄養 法)を持つ病原菌、すなわち biotroph、hemibiotroph、necrotroph に有効であること から、広汎な作物病害への応用が期待される。 9. β-caryophyllene は、LD50 は 300 mg/kg 以上で、化粧品やアロマセラピーにも利用 され、また、抗アレルギー剤としての特許も取得されている。このような知見を総 合すると、β-caryophyllene が広範な植物病害の制御と生育促進において、有用な農 業資材として利用可能であるものと推察した。β-caryophyllene 単体の、植物体に対 する有用な作用に関する以上の知見は、これまで全く報告されておらず、本論文研 究で始めて明らかになった。 27 第5章 β-caryophyllene 処理シロイヌナズナにおける抵抗性誘導 第 4 章で、β-caryophyllene 処理により、広汎な植物の生育が促進され、耐病性が付 与されることを確認した。そこで、本章では後者の作用に注目し、Arabidopsis thaliana Col-0 を用いて、幾つかの防御関連遺伝子発現を指標に、β-caryophyllene 処理により誘 導される防御反応に関わる情報伝達経路を調べた。なお、解析した遺伝子は、JAZ7, JAZ10, DIN11, GSTU11, PAD3, MYB15, MYC2, COI1, Thi2.1, PDF1.2, JAR1, NPR1, PR1, PAL2, PER4 である。なお、内部標準には EF-1αを用いた。 第1節 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 の生育と耐病性 まず、β-caryophyllene が、モデル植物 Arabidopsis thaliana (Col-0)の生育を促進し、耐 病性を付与するか否かについて調べた。 第1項 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 の生育 「実験方法」 1. Arabidopsis thaliana (Col-0)の種子をジフィー(No.7)に適量播種し、4℃ 暗所に 静置し、2 日後、恒温室(22℃ 日長 16 時間)へ移動した。 2. 播種 12 日後、Col-0 をジフィー当り 4~5 本にした。 3. 播種 20 日後、2 個の密封容器(1.22 L)に 4 個づつジフィーを入れ、一方は β-caryophyllene で処理し、他方は無処理とした。 4. β-caryophyllene 処 理 方 法 は 、 密 封 容 器 内 に 直 径 5 cm の シ ャ レ ー を 置 き 、 β-caryophyllene 200 μl(密封容器内の濃度は 134 ppm)入れ、自然に気化させた。 5. 播種 38 日後に、地上部を切取り個体別に重量を測定した。 [結果] 各区の平均個体別重量は、無処理区が 254±26 mg に対して、β-caryophyllene 処理区 は 410±43 mg となり、t 検定の結果、有意差(p≦0.01)が認められた(Fig. 5-1) 。この ように、β-caryophyllene の処理により、Col-0 にも、コマツナ、キュウリ、ベンサミア ナタバコやオオムギと同様に生育促進効果が認められた。 第2項 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana (Col-0)の耐病性 「実験材料」 β-caryophyllene :4.4 mM(原液の 1000 倍希釈、1% EtOH)、0.44 mM(原液の 10,000 倍希釈、1% EtOH)、0.04 mM(原液の 100,000 倍希釈、1% EtOH)と 1% EtOH 区(対 照区)を設けた。 Arabidopsis thaliana (Col-0): 播種後 46 日の切葉を使用した。 検定菌:アブラナ科炭疽病菌(C. destructivum;MAFF305635) 28 〔実験方法〕 播種後 46 日の Col-0 の切葉に、β-caryophyllene を 4.4 mM、0.44 mM、0.04 mM およ び 1% EtOH 区(対照区)を 5 μl 滴下し、同じスポットにアブラナ科炭疽病菌(5×105 spores/ml)の胞子懸濁液を 5 μl 接種して、接種後 3 日目に感染率、4 日目に病斑面積 を調べた。β-caryophyllene の終濃度は、それぞれ、2.2 mM, 0.22 mM, 0.02 mM となる。 0d 46 d 播種 47 d 前処理区 同時処理区 β-caryophyllene β-caryophyllene+ Inoculation 3 dpi (50 d) 4 dpi (51 d) 顕鏡(infection rate) 観察(lesion) 前処理区:A. thaliana の切葉を各区 4 枚に β-caryophyllene、4.4 mM、0.44 mM、0.04 mM と 1% EtOH を 5 μl づつ 2 スポット/葉 滴下し、24 時間後にアブラナ科炭疽病菌(5 ×10 5 spores/ml)の胞子懸濁液を 5 μl 接種し、23℃で静置した。 同時処理区:Col-0 の切葉各区 4 枚に β-caryophyllene 4.4 mM、0.44 mM、0.04 mM と 1% EtOH を 5 μl 処理し、直ちにアブラナ科炭疽病菌(5×10 5 spores/ml)の胞子懸濁液を 5 μl 接種し、23℃で静置した。 アブラナ科炭疽病菌接種 3 日後、 各処理葉を 2 枚づつ trypan blue staining solution で 95℃、 2 分処理し、抱水クロラールで洗浄後、光学顕微鏡下に感染の有無を観察した。また、 菌接種 4 日後には、病斑(接種葉を 2 枚づつ)を撮影した。 [結果] 肉眼的な観察からは、菌接種 4 日後の病斑には顕著な差は認められなかったが、 β-caryophyllene 4.4 mM 前処理区および同時処理区で病斑面積が抑制される傾向が認め られた(Fig. 5-3) 。しかし、顕微鏡下で感染率を調べた結果、β-caryophyllene の 24 時 間前処理では、アブラナ科炭疽病菌の感染が有意に抑制された。また、同時処理では、 感染率に有意差はないが、抑制される傾向が認められた(Fig. 5-2) 。後者は、観察区数 を増やすことで有意差が認められるものと考えられる。これらの結果より、 β-caryophyllene の処理により、A. thaliana には耐病性が付与されることが示された。 第2節 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 における発現遺伝子の解 析 β-caryophyllene 処理によって誘導される防御関連遺伝子の発現を調べるための予備 実験として、β-caryophyllene (volatile)処理した Arabidopsis thaliana Col-0 の遺伝子発現 を DNA マイクロアレイで解析した。 第1項 マイクロアレイ解析 [処理区と処理方法] 1. 無処理対照区 2. β-caryophyllene ;volatile の 1.34 ppm 3 時間処理 29 3. 4. 5. 6. β-caryophyllene ;volatile の 134 ppm 3 時間処理 無処理対照区(C) β-caryophyllene ;volatile の 1.34 ppm 3 日間処理 β-caryophyllene ;volatile の 134 ppm 3 日間処理 Jiffy に播種した播種後 30 日目の A. thaliana Col-0 を密封容器に 4 個づつ入れ、それぞ れ β-caryophyllene (volatile)処理をした。 3 時間後に、A. thaliana Col-0 を(各区 400 mg を目安に 4~5 本)株下からカットし、 重量測定後、アルミ箔に包んで‐80℃で保存した。 3 日後に、A. thaliana Col-0 を(各区 400 mg を目安に 4~5 本)株下からカットし、重 量測定後、アルミ箔に包んで‐80℃で保存した。 [RNA 抽出] 各サンプルから RNeasy Plant Mini Kit(キアゲン)を用いて、プロトコールに従い Total RNA を抽出した。抽出した Total RNA 量は、下記の通りである。また、各サンプル 500 ng を電気泳動して品質を確認した(Fig. 5-4) 。 Sample No 1 2 3 4 5 6 260/280 260/230 2.18 2.19 2.20 2.19 2.19 2.18 2.37 2.42 1.93 2.27 2.28 2.18 ng/μl 1186.8 1020.8 808.0 1046.1 977.0 525.8 Electrophoresis lane 1 2 3 4 5 6 Treatment 3 hours 3 hours 3 hours 3 days 3 days 3 days 0 ppm 1.34 ppm 134 ppm 0 ppm 1.34 ppm 134 ppm マイクロアレイ解析のため、これらの Sample 各 20 μl( 10 μg 以上)をタカラバイオ 社へ送付した。 [結果] β-caryophyllene (volatile) 処理による Arabidopsis thaliana Col-0 の遺伝子発現の増減は、 Table5-3 の通りであった。β-caryophyllene (volatile) 処理 3 時間後では、合計 5780 の遺 伝子のうち β-caryophyllene 濃度に関係なく同じ 62 遺伝子の発現が 2 倍以上に増加し、 49 遺伝子の発現が 1/2 以下に減少した。β-caryophyllene (volatile) 処理 3 日後では、1.34 ppm 処理区では、91 遺伝子の発現が 2 倍以上に増加し、20 遺伝子の発現が 1/2 以下に 減少した。また、134 ppm 処理区では、77 遺伝子の発現が 2 倍以上に増加し、34 遺伝 子の発現が 1/2 以下に減少した。 また、β-caryophyllene (volatile) 処理により発現が 2 倍以上に増加した主な防御関連 遺伝子は JAZ7, JAZ10, DIN11, GSTU11, PAD3, MYB15, MYC2 であった。また、生育促進 に関連すると思われる主な遺伝子は、IAA29(indoleacetic acid-induced protein 29; transcription factor)と DIN11(DARK INDUCIBLE 11; oxidoreductase; 糖代謝)であっ た。 30 Table 5-3. Up- and down-regulated genes of Arabidopsis thaliana Col-0 treated with volatile β-caryophyllene β-caryophyllene 3 h after treated up-regulated 1.34 ppm (2 μl) 134 ppm (200 μl) AR0193 Set01 AR0193 Set02 gene number β-caryophyllene 3 days after treated 62 1.34 ppm (2 μl) AR0193 Set03 gene number up-regulated 91 down-regulated 20 down-regulated 49 non 5669 non 5669 up-regulated 62 up-regulated 77 downregulated 49 downregulated 34 non 5669 non 5669 Total 5780 Total 5780 134 ppm (200 μl) AR0193 Set04 Set 01, 1.34 ppm/healthy ; Set 02, 134 ppm/healthy ; Set 03, 1.34 ppm /healthy; Set 04, 134 ppm/healthy . 第 2 項 β-caryophyllene 溶液処理で Arabidopsis thaliana Col-0 に誘導される遺伝子発現 (特に防衛関連遺伝子の変動) 次に、Col-0 の切葉を供して、β-caryophyllene 水溶液の処理で up-regulate される遺伝 子を解析した。マイクロアレイ解析の結果から、発現が 2 倍以上 up-regulate された遺 伝子の中から、JAZ7, JAZ10, DIN11, GSTU11, PAD3, MYB15, MYC2 を、また、マイクロ アレイ解析では、発現は顕著で無かったものの、重要な防衛関連遺伝子として COI1, Thi2.1, PDF1.2, JAR1, NPR1, PR1, PAL2, PER4 などを加えた。 〔処理区と処理方法〕 無処理対照区 水処理区 : 1.5 h、3 h 1% EtOH 区 : 1.5 h、3 h β-caryophyllene ;4.4 mM(原液の 1000 倍希釈、1% EtOH): 1.5 h、3 h 播種後 49 日目の A. thaliana の葉 1 枚につきそれぞれの処理液を 10 μl × 6 spots/ leaf 処理し、フィルムでカバーし、1.5 h、3 h 後に、液体窒素で固定した。 〔実験方法〕 1.TRIzol 法により Total RNA を抽出し、ND-1000 Spectrophotometer NanoDrop(エル・ エム・エス社製)で各処理区の Total RNA の濃度を測定した(Fig. 5-4)。 31 TRIzol 法 1. ジルコニアビーズ 1 g 入を入れた 2 ml のチューブにサンプル(約 50 mg)を移し、 液体窒素で固定した。 2. TRIzol を 500 μl 加え、Micro Smash MS-100 ( TOMY 社製) により 3000 rpm、90 sec 摩砕した。 3. 室温で 5 分静置した。 4. クロロホルムを 100 μl 加え、15 sec 混合した。 5. 室温で 3 分静置した。 6. 10,000 x g, 15 min, 4 ℃で遠心した。 7. 上澄みを 200 μl を取り出し、新しいチューブへ移した。 8. 2-プロパノールを等量加え、ボルテックスした。 9. 室温で 10 分静置後、-30℃で静置した。 10. 次に 12,000 x g, 15 min, 4 ℃で遠心した。 11. 沈殿物のペレットをとらない様に上澄み液を回収した。 12. 70% EtOH を 500 μl 以上加え、リンスした。 13. 12,000 x g, 1 min, 4℃で遠心した(ペレットが剥がれたら 5 min)。 14. 上澄みの EtOH を捨てた。 15. エバポレータで 5 分乾燥させた。 16. RNases free water を 20 μl 加えた。 17. 室温で 2-3 分静置後、タッピングにより十分に溶解した。 18. Spectrophotometer ND-1000 (NanoDrop 社製)の RNA40 で Total RNA の濃度を測定し た。 処理区 Sample ID ng/ul 260/280 1 control 124.5 1.89 2 1.5h Water 133.4 1.94 3 1.5h EtOH 135.3 1.85 4 1.5h β−caryophyllene 120.3 1.79 5 3h Water 136.0 1.90 6 3h EtOH 136.3 1.85 7 3h β−caryophyllene 137.6 1.93 2.Total RNA を電気泳動で確認後(Fig. 5-4)、RT-PCR により cDNA を作成した。 RT-1 Total RNA (500 ng) Oligo dT primer (1μg/μl) Nuclease-free water 4.0 μl 0.5 μl (0.5μg) 0.5 μl 70 ℃で 10 min サーマルサイクラーにかけ、急冷した。 32 RT-2 Denatured RNA 5 x RT buffer RNase inhibitor (40 U/μl; Takara 2313A) dNTP( 10 mM each ) AMV Reverse transcriptase (5 U/μl; Takara 2630A) H2O ( RNase free ) Total 42 ℃ 60 ℃ 12 ℃ 5.0 μl 2.0 μl 0.25 μl 1.0 μl (1 mM) 0.1 μl (0.5 U) 1.65 μl 10.0 μl 60 min 10 min ∞ 3.2 の cDNA の PCR Table 5-5 の 16 種類の primers を用いて、PCR 反応を行なった。反応条件は、下記の 通りである。PCR 産物の確認のため EF-1αのみ電気泳動した(Fig. 5-7)。 Go Tag Green Master Mix (2X) Primer (S) : 10 pmol/μl Primer (A) : 10 pmol/μl H2O ( RNase free ) cDNA(10 倍希釈) Total 温度 95 ℃ 95 ℃ 60 ℃ 72 ℃ 72 ℃ 12 ℃ 時間 2 min 15 sec 30 sec 30 sec 2 min ∞ 12.5 μl 0.5 μl 0.5 μl 9.5 μl 2.0 μl 25 μl サイクル数 1 25~35 1 finish 33 Table 5-5. Primer sets for analysis of the transcriptional activation of several defense-related genes Gene AGI NO. A AtJAZ7 At2g34600 B AtJAZ10 At5g13220 C AtDIN11 At3g49620 D AtGSTU11 At1g69930 E PAD3 At3g26830 F AtMYB15 At3g23250 G AtMYC2 At1g32640 H AtCOI1 At2g39940 I AtThi2.1 At1g72260 J PDF1.2 At5g44420 K JAR1 At2g46370 L NPR1 At1g64280 M PR1 At4g07820 N PAL2 At3g53260 O PER4 At1g14540 P EF-1a At5g60390 F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R Primer sequences (5'→3') GCTCGTTGGACGAATCAAGCAGC TGTTGGAGGATCCGAACCGTCTG TGAAGGTCGCTAATGAAGCAGC TCTCTCCTTGCGCTTCTCGAGA GGCCAAACCAGTGGCCAGGA AGTCAGTGTGAGCTCCACATCCA AGGAGCATGGCCTAGCCCTT GGATGGGAGGACCGGAGAGCC CCGGTGAATCTTGAGAGAGCC GATCAGCTCGGTCATTCCCC AGGACCATGGACACCTGAAG CTGCAATCGCTGACCATCTA CGACGACAACGCTTCTATGA CCAACCTTCGTGTGTTCCTT ACATGGCGGTGTATGTCTCA GTTAAGCCGCCTTGTCTCAG GGCCGCCTAAACTGTTGTAA CCATTCCGTTCAAAGCAAAT TAAGTTTGCTTCCATCATCACCC GTGCTGGGAAGACATAGTTGCAT CCTATTCTCACTGGTCACCCT AGAATTCCGGATAAGAGATGGC CAAGCCACTATGGCGGTTGAATG CTGAAAGGTGCTATCTTTACACCCG CAGCCCCAAGACTACTTCAATGC GGTCGTTCAATAAGAATGACAGACG GGAATCAACGGTGAGTTACATCCG CCTTCACACATAGCAGTGAAGACC ATGCTCGTGGCAACTCCCAC GGACAACGACGCTTACGGGT GGTAACGGTTACGCCCCAGT GCCTTGGACCTTGGCTCC Tm Size(bp) 62.2 203 62.2 58.6 176 60.4 62.5 234 60.5 60.4 230 66.3 461 58.4 56.3 56.3 56.3 56.3 58.4 56.3 52.2 56.9 58 58.5 56.7 60.5 60.5 60.5 60.5 60.5 60.5 60.4 60.4 60.4 60.4 239 205 208 225 208 362 344 394 410 445 301 4.これらの PCR 産物を MultiNA により解析した。 MCE-202 MultiNA(島津製作所製)は、マイクロチップ電気泳動装置で、多数のサ ンプルの解析に有効な装置である。 マニュアルに従って、 これらの PCR 産物を MultiNA 装置により解析した。これらの実験を 5 回反復した。 [結果] β-caryophyllene の処理により無処理区と比較して発現が増加した主な遺伝子は、 PAD3 (camalexin 生合成系), PDF1.2 (JA 系), NPR1 (SA 系), PR1 (SA 系), PAL2 (SA/PA 他) の defense-related genes であった(Table 5-7)。5 回反復した実測値は、(Table 5-6)の a から e に記載した。また、a の実測値について、それぞれの処理区の EF-1αを1とし て、各遺伝子の発現量を表した(Fig. 5-8)。 34 また、β-caryophyllene の処理により無処理区と比較して発現が抑制された主な遺伝子 は、JAZ7, JAZ8, MYC2 であった。この結果はマイクロアレイの結果とは相反する結果 であるが、RT−PCR を反復した結果、再現性が認められた。 以上のようにファイトアレキシン生合成系、JA 系、SA 系に関連する遺伝子の発現 が認められたことから、β-caryophyllene で処理された植物における耐病性は、ISR (induced systemic resistance) 様の抵抗性の増進によることが示唆された。 Penicillinm chrysogenum のエリシター(Pen)をアラビドプシスの野生株(Col-0)に 処理をすると抵抗性が誘導されるが、NahG、coi1-1、ein2-1 の形質転換体や変異体で 抵抗性の誘導を調べたところ、NahG のみ抵抗性の低下が認められた(Thuerig, et al., 2006)。このことから Pen による ISR には少なくとも SA が関与することが示される。 また、PGPF である Phoma sp. GS6-2 の培養濾液は、Col-0, jar-1 および ein2-1 には、 Pseudomonas syringe pv. tomato (Pst)に対する抵抗性を誘導したが、NahG、npr-1 には抵 抗性を誘導しなかった。これらの結果は、Phoma sp. GS6-2 で誘導される ISR には、SA と NPR1 が関与することを示唆する(Sultana et al. 2008)。 Table 5-6 a. Amount of RT-PCR products of several defense-related genes (a) Gene JAZ 7 JAZ 10 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 EF-1a 1.5h water 1.5h 1% EtOH 1.5h β-caryophyllene 5.98 6.95 0.12 0 0.16 0.31 0.25 0 0.13 0.34 1.15 0.72 0 0 0.27 0.97 2.18 0 0 0 0.94 0 0 44.96 0.27 2.25 0 0.58 0.19 0.48 0 0 53.02 0.19 2.12 0 0.67 1.35 0.69 0 0 44.11 3h water 3h 1% EtOH 0.91 0.56 0 0.19 0.26 0.15 0.22 2.7 0.24 0.98 2.55 1.67 0.12 0.21 54.45 The products were analyzed with MultiNA (Shimadzu, Kyoto) (ng/ul). 35 3h β-caryophyllene 1.97 0.73 0 0 0.16 0.86 0.41 0 0.12 0.88 0.68 3.01 0.18 2.73 4.22 1.05 0.11 0 47.47 0.96 3.57 3.1 3.5 10.39 2.36 0.17 0.1 56.26 Table 5-7. Up-regulate genes of Arabidopsis thaliana treated with β-caryophyllene solution (4.4 mM) up-regulated genes 1.5H 3H A B C D E F G H I J K L M N JAZ 7 JAZ 10 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 1/5 2/5 4/5 1/5 0/5 - 2/5 0/5 3/5 3/5 1/5 2/5 3/5 3/5 2/5 - 1/5 - 1/5 1/5 - 1/5 3/5 0/5 1/5 0/5 3/5 1/5 3/5 1/5 2/5 - 1/5 *第2項の実験を5回反復し、遺伝子毎に up-regulate した回数から down-regulate し た回数を引いて、その結果を示した。 第3節 β-caryophyllene 処理 Arabidopsis thaliana Col-0 変異体、形質転換体にお けるアブラナ科炭疽病菌の感染 β-caryophyllene 処理 Col-0 における防御関連遺伝子の RT-PCR による発現解析の結果、 処理 1.5 時間では PDF1.2 (JA 系), JAR1 (JA 系), PAL2 , PER4、処理 3 時間では、 PAD3(camalexin 生合成系)、PR1(SA 系)などの発現が増加した。 即ち、ファイトアレキシン生合成系、SA 系、JA 系に関連する遺伝子の発現が認めら れたことから、β-caryophyllene の処理による植物への耐病性付与は ISR (induced systemic resistance) 様の抵抗性の増進が示唆された。そこで、この点を確かめるために Col-0 の変異体、形質転換体を供して、β-caryophyllene 処理による感染試験を行った。 〔実験方法〕 播種後 4 週令の Col-0 (WT)および jar1(Staswick et al. 1992), npr1 (Cao et al. 1994), NahG(Lawton et al. 1995), pad3(Glazebrook and Ausubel. 1994)の各個体の上位 葉より 3 枚の葉を切り取り、処理区毎(Water, 1 % EtOH, 4.4 mM β-caryophllene)に 2 枚づつ計 6 枚接種実験に使用した。処理方法は、切葉に処理液を 5 ul 滴下処理し、24 時間後にアブラナ科炭疽病菌の胞子懸濁液(5×105 spores/ml)を処理液と同位置に 5 ul 接種し、湿度を十分保って 23℃、12 h 照明下に静置した。接種 3 日後、トリパンブル ー染色液で 95℃、約 2 分煮沸染色し、抱水クロラールで浸漬洗浄した。脱色後、感染 率(侵入菌糸形成胞子数/付着器形成胞子数×100)を計測した。 36 [結果] WT(Col-0)においては、2.2 mM β-caryophyllene 処理区の炭疽病菌の感染率は 12%で、 1% EtOH 処理区(23%)と比較して有意(p≦0.05)に感染が抑制された(Fig. 5-9)。 jar1 においては、β-caryophyllene 処理区の感染率は 20%で、1% EtOH 処理区(31%) と比較して有意(p≦0.05)に感染が抑制された(Fig. 5-9)。このように、jar1 では β-caryophyllene による抵抗性誘導作用は失われなかった。 一方、npr1 では β-caryophyllene 処理区の炭疽病菌感染率は 48%で、水処理区(27%)、 1% EtOH 処理区(24%)と比較して有意(p≦0.001)に感染率が上昇した(Fig. 5-9)。 また、β-caryophyllene 処理 WT と比較しても感染率に有意な上昇が確認された。NahG では、β-caryophyllene 処理区の感染率は 25%で、NahG 水処理区(27%)、NahG 1% EtOH 処理区(28%)と比較して、炭疽病菌の感染は低下することはなかった(Fig. 5-9)。 さらに、pad-3 では、β-caryophyllene 処理区の感染率は 54%で、水処理区(38%)、 1% EtOH 処理区(45%)と比較して有意に感染率が上昇した(Fig. 5-9)。 第4節 1. 2. 3. 4. 考察 β-caryophyllene が、モデル植物の Arabidopsis thaliana (Col-0)の生育促進し、耐病性 を付与するか否かを調べた結果、β-caryophyllene (volatile) 処理により、Col-0 もコ マツナ、キュウリ、タバコおよびオオムギと同様に生育が促進された。 また、β-caryophyllene 水溶液処理により、Arabidopsis thaliana (Col-0)もコマツナ、 キュウリ、タバコおよびオオムギと同様に耐病性が付与された。このことは、 β-caryophyllene が広汎な植物に対して生育促進すると同時に耐病性を増進するこ とを示している。 β-caryophyllene の処理により無処理区と比較して発現が増加した主な遺伝子は PAD3 (camalexin 生合成系), PDF1.2 (JA 系), NPR1 (SA 系), PR1 (SA 系), PAL2 (SA/PA 他)等で、一部の defense-related genes の発現が増加した。逆に、 β-caryophyllene の処理により無処理区と比較して発現が抑制された主な遺伝子は、 JAZ7, JAZ8, MYC2 等の遺伝子であった。以上、ファイトアレキシン生合成系、JA 系、SA 系に関連する遺伝子の発現が認められたことから、β-caryophyllene の処理 による植物への耐病性付与は ISR (induced systemic resistance) 様抵抗性の増進によ ることが示唆された。植物根圏細菌(plant growth promoting rhizobacteria ; PGPR) が植物の根に定着すると、植物は全身的な抵抗性を誘導する(ISR)ことが明らか にされて以降、さまざまな植物種―生物防除微生物間でこの現象が確認されてい る。非病原性の Pseudomonas fluorescens WCS417r は、A. thaliana を用いた ISR の 機構解析のモデル菌株となっている(Pieterse et al. 2002)。WCS417r が A. thaliana に定着すると、空気伝染性病原細菌(Xanthomonas campestris pv. armoraciae, Pseudomonas syringae pv. tomato (Pst)) や空気伝染性病原菌(Alternaria brassicicola)、 および卵菌類 Hyaloperonospora parasitica に ISR を示すとともに、土壌伝染性病原 菌(Fusarium oxysporum f. sp. raphani)に対しても ISR を示すことが報告された (Pieterse et al. 1996, van Wees et al. 1997, Ton et al. 2002)。WCS417r 以外にも数種 の PGPR 菌株(Bacillus pumilus SE34 と T4, P. fluorescens 89B61, Serratia marcescens 90-166)においても、Pst に対する抵抗性誘導が確認されている(Ryu et al. 2003)。 β-caryophyllene 処理 jar1 変異体では、WT (Col-0)上と同様、炭疽病菌に対する抵 37 5. 6. 7. 抗性が誘導された(有意に阻害された)ことから、β-caryophyllene による抵抗性(耐 病性)の誘導は、JA 系(厳密には JAR1)を介さないことが示唆された。 一方、β-caryophyllene 処理 NahG 変異体では炭疽病菌の感染の低下が認められなか ったことから、SA 情報伝達系の耐病性付与における重要性が示唆された。すなわ ち、SA 蓄積が起こらないと抵抗性の増進が起こらないと考えられる。npr-1 変異 体では、β-caryophyllene 処理によって、抵抗性は付与できず、むしろ感染率の上昇 が認められた。これは、NPR1 とこの下流の(あるいはこれから派生する)経路が、 β-caryophyllene 処理で誘導される抵抗性に重要な役割を果たしていることを示唆 する。これは、Penicillium chrysogenum のエリシター(Pen)で A. thaliana の野生 株(Col-0)を処理すると抵抗性が誘導されるが、NahG、coi1-1、ein2-1 において 抵抗性の誘導を調べたところ、NahG のみ抵抗性の低下が認められた(Thuerig et al. 2006)。この結果は、Pen による ISR には少なくとも SA が関与することを示して おり、β-caryophyllene 処理と共通する。Dong(2004)は、制御タンパク質として 知られる NPR1 を作らない変異株 npr1 に純寄生性病原菌を接種しても SA の生成 が誘導されないことから、NPR1 遺伝子は SA で誘導されるシグナル伝達に必須で あることを示した。SA 処理により阻害されるはずの JA 誘導性の遺伝子の発現が npr1 のみにおいてみられることから、NPR1 は SA、および JA シグナル伝達間に おけるクロストークに重要な役割を果たしていることが示されている(Spoel et al. 2003, 2007)。 また、pad-3 変異体では、β-caryophyllene 処理によって、抵抗性は付与できず、む しろ感染率の上昇が認められた。これは、phytoalexin が β-caryophyllene 処理で誘 導される抵抗性に重要な役割を果たしていることを示唆する。 以上の様に、β-caryophyllene によって誘導される抵抗性には、少なくとも、SA 情 報伝達系とファイトアレキシン生合成系の両者が必須であることを示している。 すなわち、β-caryophyllene は、SA 情報伝達系とファイトアレキシン生合成系に依 存した ISR 様の抵抗性を誘導し(Hossain et al. 2007 を参照) 、4章で述べたように、 広汎な植物を、necrotroph から biotroph に至る広汎な病害から保護する状態(完全 ではないにしても)を作り出していることが推察された。このことは β-caryophyllene の作用の普遍性と有用性を強く示している。 38 第6章 総合考察 本研究は、岡山県総社市の圃場をモデルに、実際の生産現場における有用微生物、特 に植物生育促進菌類(PGPF)の探索を試み、さらに、単離した PGPF の生育促進機構 を明らかにするため、本菌の生産する揮発性物質に注目して解析を進めたものである。 すなわち、PGPF あるいはこの代謝産物の農業生産における応用を目指して、菌の同定、 揮発性物質の同定、生育促進作用および耐病性付与効果などの解析等を行った。 農業生産が行なわれる圃場では、それぞれ環境・生態が異なることはいうまでもない。 従って,ある圃場で PGPF を安定的に利用するには、その場所で生態的にニッチを得 た PGPF を利用することが理想的である。このような考えから、著者が実際に作物を 栽培している上記の場所を PGPF 採集の場として選択した。シュンギク栽培土壌から 植物生育促進菌類(PGPF)として有望と思われる FS2 を分離した(Fig. 2-4) 。FS2 は、検定に用いたコマツナと接触および非接触の条件で生育を促進した。百町ら(2003) が、PGPF の生育促進機構として提唱している条件、①PGPF 自体の生育促進物質の生 産、②土壌中の有機物を PGPF が分解し植物に利用しやすくする(いわゆる有機物の ミネラリゼーション化) 、および③PGPF による有害微生物の抑制などのうち、特に、 ①の可能性が推察された。その理由は、本菌株は非接触の条件下でも植物の生育を促進 したことから、ある種の揮発性物質を生産し、これに植物生育促進作用(一部か全てか は不明)があると考えられたからである。 植物生育促進菌類(PGPF)として有望と思われる FS2 について、将来の資材化を目 指す上で安全性を証明するためにも、分類的位置づけは重要である。本菌株は、PDA 培地上では薄いベージュからピンク色のコロニーを形成し、電子顕微鏡による形態学的 観察では、分生子柄が菌糸から 1 本もしくは数本束状で短く立ち、先端近くで枝分かれ するいわゆる毛筆状で、それぞれの枝の先にフィアライド(phialide)と呼ばれる分生 子形成細胞が数個並んでいる。フィアライドは紡錘形で、その先端から分生子を出芽す るように形成している。このような特徴から、Penicillium 属もしくはそれに近い菌と 推測できた(Fig. 2-12a)(Barnett et al. 1987)。Genomic DNA の ITS1 高度可変領域 塩基配列(Fig. 2-15)の系統樹解析から、本菌は Talaromyces wortmannii(anamorph Penicillium kloeckeri Pitt)と同定された。Talaromyces 属は Penicillium 属の有性世代の 属名であり、系統樹解析(Fig. 2-16)の結果 (99%相同)や形態観察の結果からも矛盾 しない。現在の所、Talaromyces 属は約 60 種が報告されているが、食品業界では耐熱 性カビとして知られ、食品汚染の原因菌の 1 つとして警戒されている(宇田川、1991)。 たとえば、清涼飲料水の業界で Talaromyces 属菌が加熱殺菌された後の飲料から検出 され大きな問題となっている。一方、圃場から見出された T. flavus は、農業資材(生 物農薬)として市販されている「バイオトラスト水和剤」の有効成分であることから、 39 土中には、このような有用菌が常在していることが伺える。 次に、T. wortmannii の植物生育促進作用と耐病性付与効果に関わる因子について解 析した。抗菌性や抵抗性に関わる Penicillium spp. (Talaromyces spp.)の代謝産物について は、これまでに幾つかの報告がある。P. simplicissimum GP17-2 の培養濾液やその液中の 12-kDa 画分は、キュウリの病気を抑制するとの報告がある(Koike et al. 2001)。また、 Thuerig et al. (2006) は、P. chrysogenum の菌糸の水溶性抽出物が、ジャスモン酸/エチ レン(JA/ET)およびサリチル酸(SA)の一部分のシグナル伝達経路による抵抗性を誘 導すると報告している。Talaromyces convolutes から抽出した低分子抗菌性物質の Talaroconvolutins は Candida albicans の生育を抑制する(Suzuki et al. 2000)。更に、Stosz et al. (1998)は、T. flavus (Klo¨cker) が生産する活性酸素生成酵素の一つ glucose oxidase が、作物の根圏で過酸化水素を生成し、半身萎凋病菌 Verticillium dahliae の生育を抑制 できることを示唆している。また、Haggag et al. (2006) は、T. flavus 培養濾液からプロ テアーゼを精製し、ソラマメ赤色斑点病菌 Botrytis fabae に対する抗菌活性があることを 示した。この様に Penicillium spp.由来の多くの物質が、病気の抑制に貢献するようであ る。 第 2 章 第 2 節の結果から、T. wortmannii FS2 の生育促進作用の一部は、揮発性の分子 (あるいは気化し易い分子)に起因することが予想された。これまでに種々の細菌、放線 菌、糸状菌、および高等植物が揮発性物質を生産することが報告されている。植物由来の 揮発性天然物としてよく知られているものにサリチル酸メチル(MeSA)、ジャスモン酸メ チル(MeJA)およびエチレンがあるが、これらは植物の防御応答を活性化する働きがある。 たとえば、MeJA を処理したトマトにおいては proteinase inhibitor と polyphenol oxidase の生成が誘導され(Fidantsef et al. 1999)、マメやオオムギにおいてはファイトアレキシ ンが集積する(Weidhase et al. 1999 ; Croft et al. 1993)。この他にも、MeSA を処理した タバコでは防御関連遺伝子の発現が誘導されることや(Shuleav, et al., 1997)、エチレンで 処理した A. thaliana では病気の進展が抑制されることが明らかとなっている(Thomma et al. 1999)。これらの物質は隣接する植物の防御応答を活性化する濃度で植物の葉から放出 されるという。また、C6-aldehyde は、植物からだけでなく微生物からも生産されることか ら、微生物‐植物‐病原菌の 3 者間の相互作用に関与しているとされる(Takabayashi et al. 1996)。その他にも微生物が生産する揮発性物質がいくつか報告されており、その作用は植 物への抵抗性の誘導、病原菌に対する抗菌活性、および植物の生育促進の 3 つが知られて いる(百町 2003)。 本研究では、PDA 培地上で培養された T. wortmannii が生産する揮発性成分ついて解析 した。揮発性成分をパッシブトラップ法で回収して GC-MS/MS で分離同定を試みた。この 結果、FS2 の揮発性成分中には少なくとも 7 種の成分が確認され、それらはセスキテルペン 関連化合物と推察された。その中の 1 種は、β-caryophyllene(Fig. 3-1)であることが判明 した。β−caryophyllene は、疎水性で、分子式は C15H24、分子量は 204.35 である(Fig. 3-4)。 40 セスキテルペン類は3個のイソプレン(C5)単位で構成され(15 炭素)、3000 種類以上存 在し、テルペノイド中で最も大きなグループである。また、セスキテルペンは、その骨格 から非環式、単環式、多環式に分類され、β-caryophyllene は多環式である(Fig. 3-4)。 β-caryophyllene やその誘導体は、 Pestalotiopsis sp., Wallemia sebi, Poronia punctata, Naematoloma fasciculare, や Hypoxylon terricola など数種の菌類から放出されるとの報 告(Yang et al. 2009)があるが、T. wortmannii によって生産されることは本研究にお いて初めて明らかとなった。β-caryophyllene は、black pepper (Piper nigrum L.), cinnamon (Cinnamomum spp.), oregano (Origanum Vulgare L.), clary sage oil (SalVia sclarea L.), Lychnophora affinis Gardn, Inula spiraefolia や Pulicaria sp. のような多くのハーブ植 物由来のエッセンシャルオイルに共通の成分として含まれる(Yang et al. 2009) 。 Lee et al. (2008) は、チョウセンゴヨウマツの実から抽出したエッセンシャルオイル (caryophyllene 1.71%を含む 87 種の混合物)のグラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌 に対する抗菌活性を調べ、Candida glabrata YFCC 062 や Cryptococcus neoformans B 42419 に対して顕著な抗菌活性を示すことを報告した。また、Bajipai et al. (2008)は、ムシトリ ナデシコ(Silene armeria L.)の花から抽出したエッセンシャルオイル(β-caryophyllene を含む)の抗菌活性を調べ、Fusarium oxysporum, Fusarium solani, Phytophthora capsici, Colletotrichum capsici, Sclerotrinia sclerotiorum, Botrytis cinerea, Rhizoctonia solani 等に対 する抗菌性を見出した。しかし、β-caryophyllene 単体の抗菌活性を明らかにした例はな い。本研究では、タマネギ表皮上における炭疽病菌(C. destructivum)の形態形成に 及ぼす β-caryophyllene の影響を調べた。発芽、付着器形成および侵入行動は全く阻害さ れず、顕著な抗菌活性は検出できなかった(Fig. 4-1)。 合成された β-caryophyllene を供して、植物に対する作用を解析した。密封容器内で自 然に揮発させた β-caryophyllene をコマツナに処理すると、コマツナの根および地上部の 生育が濃度依存的に促進された(Figs. 4-6, 4-10)。また、β-caryophyllene で処理された コマツナ葉では、炭疽病菌(C. destructivum)の感染が処理濃度依存的に抑制された (Fig. 4-7) 。すなわち、β-caryophyllene はコマツナの炭疽病耐性を増進した。すなわち、 β-caryophyllene には顕著な抗菌性はないにも関わらず、β-caryophyllene 処理コマツナに おける感染率が低下した原因は、β-caryophyllene の直接的な抗菌作用や感染(侵入)の 阻害作用ではなく、処理されたコマツナに侵入抵抗性を誘導した結果であることを強く 示している。このように、β-caryophyllene は、抵抗性(耐病性)誘導剤として病害防除 に利用できる可能性が示唆された。 なお、β-caryophyllene は、発芽時から処理するより、子葉展開時から処理した方が生 育や耐病性の誘導に、より高い効果が現れた。このことは、β-caryophyllene は、気孔か ら植物体内(細胞)に取り込まれて作用する可能性を示唆している。 密封容器内で β-caryophyllene を自然に揮発させ、キュウリに処理すると、キュウリの 生育が顕著に促進された(Fig. 4-12)。また、処理キュウリにウリ類炭疽病菌(C. 41 orbiculare)を接種して調べた結果、キュウリが耐病化することも確認した(Fig. 4-14) 。 さらに、β-caryophyllene で処理されたキュウリを圃場に移植し、その後 1 ヶ月間の収量 を計測した結果、β-caryophyllene で処理されたキュウリからの収量本数は、無処理対照 区と比較して 4 倍以上となった(Fig 4-15a)。このことは、β-caryophyllene による生育 の促進が、その後の増収(増益)に結びつくものと期待される。 ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)とオオムギ(品種コビンカタギ)につ いても、β-caryophyllene 処理による生育促進や耐病性付与の効果を調べた。ベンサミア ナタバコにおいても、キュウリやコマツナと同様に生育が促進された(Fig 4-17)。ま た、β-caryophyllene 処理ベンサミアナタバコには、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)に対 する耐病性が付与された(Fig 4-20)。オオムギ(品種コビンカタギ)に対する効果も 同様で、生育の促進とオオムギうどんこ病(病原菌;Blumeria graminis f. sp. hordei, race1) に対する耐病性の増進が認められた(Figs. 4-22, 4-23a) 。しかし、β-caryophyllene は、オ オムギに対しては、双子葉植物よりも低濃度(13.4 ppm)で効果が見られ、134 ppm(0.78 mM)では、地上部の生体重の増加や耐病性の付与は認められるものの、葉の黄化や褐 変が誘導された。すなわち、β-caryophyllene に対するオオムギの感受性は双子葉植物よ りも高いことが示唆された。β-caryophyllene (volatile)の処理時間とうどんこ病菌(B. graminis f. sp. hordei)感染阻害活性の関係を調べた結果、24 時間処理では感染は低下し ないが、処理 2 日目には有意に感染率が低下し、処理 3 日後にはその阻害はほぼプラト ーに達した。すなわち、β-caryophyllene で 3 日間処理されたオオムギには、純寄生性病 原菌の感染(侵入)行動を約 50 %抑制する抵抗性が誘導される(Fig 4-24)。 以上、β-caryophyllene は、程度の差あるものの、アブラナ科、ウリ科、ナス科および イネ科など広汎な植物に、生育促進効果と耐病性付与作用を示すことを見出した。付記 するならば、β-caryophyllene は、モデル植物の Arabidopsis thaliana に対しても、生育を 促進し、耐病性を付与する(Figs. 5-1, 5-2)。また、いずれの組合わせにおいても、生育 促進効果よりも耐病性付与効果が強く現れることが確認された。しかし、この仕組みや 原因については、現在の所不明である。 前述のようにハーブ植物が、精油(ハーブオイル)成分を生産することは良く知られ ている。一方、PGPR (plant growth-promoting rhizobacteria)、PGPF や endophytes などの微生物も、抗菌性の揮発性物質を生産する。ハーブ植物由来の揮発性物質 (Volatile Organic Compounds)が、抗菌性を示すことや病気から作物を保護すると の報告は多数にのぼる(e.g., Chutia et al. 2009; Kordali et al. 2008; Reitz et al. 2008)。 しかし、実際の試験は、混合物を用いている事例が圧倒的に多く、揮発性物質(VOCs) 中のどの成分が、植物の防御や生育に寄与するかは不明である。一方、VOCs の中の単 一の物質が、直接、植物病原菌や植物の生育に影響するという報告がある(Table 6-1) 。 例 え ば 、 葉 面 糸 状 菌 Irpex lacteus ( ウ ス バ タ ケ ) 由 来 の 抗 菌 性 物 質 5-(4-pentenyl)-2-furaldehyde と 5-pentyl-2-furaldehyde がパセリやコムギのうどんこ 42 病を抑制することが知られている(Koitabashi et al. 2002, 2004)。病原性の F. oxysporum f. sp. lactucae の fmk1 や chsv の病原関連遺伝子の発現を抑制する土壌菌 F. oxysporum strain MSA35 が放出するα-humulene は、有害な Penicillium sp.や Aspergillus sp.なども抑制するとの報告もある (Minerdi et al. 2009)。また、Bacillus subtilis から放出される 3-hydroxy-2-butanone(acetoin)や 2,3-butanediol が、A. thaliana の生育促進や抵抗性を誘導するとの報告もある(Ryu et al. 2003, 2004)。こ の他にも、Trichoderma harzianum のある系統は、抗菌活性と生育促進の両方の作用 のある harzianic acid を生産するとの報告(Vinale et al. 2009)や、PGPFs である Cladosporium sp. や Ampelomyces sp. 由 来 の 揮 発 性 の methylbenzol や methylcresol が A. thaliana の induced systemic resistance (ISR)を誘導するとの報告 がある(Kiyohara and Hyakumachi 2010)。すなわち、PGPF/PGPR により放出さ れる VOCs のあるものは、抗菌性や生育促進、また、生物ストレスに対する抵抗性を 誘導する活性を有することが判明している。 以上のことから、β-caryophyllene の作用は、 抗菌活性ではなく、ISR 様の抵抗性誘導によることが示唆された。 ちなみに ISR については、多数の報告があるが、例えば、Zoysiagrass(シバ)由来 の PGPF の処理によりキュウリ苗で ISR が観察された(Hyakumachi 1997; Koike et al. 2001; Meera et al. 1994)との報告がある。Zoysiagrass 由来のほとんどの PGPF が、 キュウリ炭疽病に対する抵抗性を誘導できたと百町らは、報告しているが、一方、Ishiba et al.(1981)によれば、キュウリの根圏から分離した菌群のうち僅かに 1.9-2.4%だけ が、キュウリの炭疽病に対する抵抗性を誘導できたと報告している。また、二核の Rhizoctonia や Trichoderma のいくつかは、実際に生長促進作用が認められ、微生物 防除剤として使われているが、Zoysiagrass 由来の PGPF は、キュウリに対する ISR が、温室では 9 週間も持続し、野外でも 6 週間持続したが、これは PGPF の菌糸が耐 熱性の植物保護物質を生産するためと説明されている(Meera et al. 1995)。 β-caryophyllene は、双子葉植物や単子葉植物に生育促進と、炭疽病だけではなく広範 な病害への耐病性を付与できることから、これらの事象に関わる共通の遺伝子発現に関 与していることが推測できた。そこで、Arabidopsis thaliana を用いて β-caryophyllene による遺伝子発現について解析を試みた。マイクロアレイ解析に基づき発現が 2 倍以上 up-regulate される遺伝子の中から、JAZ7, JAZ10, DIN11, GSTU11, PAD3, MYB15, MYC2 を、また、マイクロアレイ解析では、発現は顕著に上昇しなかったものの、重 要な防衛関連遺伝子である COI1, Thi2.1, PDF1.2, JAR1, NPR1, PR1, PAL2, PER4 な ども加え、これらの遺伝子について、RT-PCR によって発現を調べた。その結果、無処 理区と比較して発現が増加した主な遺伝子は PAD3 (camalexin 生合成系), PDF1.2 (JA 系), NPR1 (SA 系), PR1 (SA 系), PAL2(SA/PA 他)等であった。逆に、β-caryophyllene の処理により無処理区と比較して発現が抑制された主な遺伝子は、JAZ7, JAZ8, MYC2 等であった。以上の結果より、β-caryophyllene の処理による植物への耐病性付与は、ファ 43 イトアレキシン生合成系、JA 系(一部)、SA 系情報伝達の活性化、すなわち、ISR 様全 身抵抗性の増進によることが示唆された。 さらに、Arabidopsis thaliana の変異株による炭疽病菌(C. destructivum)の接種試験の 結果、β-caryophyllene 処理 jar1 変異体(Staswick et al. 1992)では、WT (Col-0)と 同様に有意に感染が阻害されたことから、β-caryophyllene による抵抗性(耐病性)の 誘導は、JA 系(厳密には JAR1)を介さないことが示唆された。一方、WT (Col-0)と は異なり、β-caryophyllene 処理 NahG 形質転換体(Lawton et al. 1995)では、感染 の低下が全く認められなくなったことから、サリチル酸(SA)の耐病性付与における 重要性が強く示唆された。すなわち、SA の蓄積が起こらないと抵抗性の増進が起こら ないと考えられる。この結果は、npr-1 変異体(Cao et al. 1994)でβ-caryophyllene 処 理によっても抵抗性は付与できず、むしろ感染率の上昇が認められたことと一致する。 これは、NPR1 とこの下流(あるいはこれから派生する)経路が、β-caryophyllene 処 理で誘導される抵抗性に重要な役割を果たしていることを示唆する。一方、pad-3 変異 体(Glazebrook and Ausubel. 1994)でも、WT (Col-0)とは異なり、β-caryophyllene 処 理によって、抵抗性は付与できず、むしろ感染率の上昇が認められた。これは、 phytoalexin もβ-caryophyllene 処理で誘導される抵抗性に重要な役割を果たしていること を強く示唆する。この様に、β-caryophyllene は少なくとも、SA 情報伝達系とファイト アレキシン生合成系を介する抵抗性を誘導し、病原菌に対する耐病性を付与することが 強く示唆された。すなわち、β-caryophyllene による抵抗性誘導には、SA 情報伝達系と ファイトアレキシン生合成系の両方が必須であると考えられる。 前述の様に、Ruy et al. (2003)によれば、PGPR の Bacillus subtilis GB03 が生産する揮 発性物質 2,3-butanediol を 4 日間処理した A. thaliana は、 Erwinia carotovora(野菜類軟 腐病菌)に対して抵抗性となる。さらに、A. thaliana の形質転換株や変異株を用いた接 種試験の結果から、2,3-butanediol が誘導する抵抗性にはジャスモン酸とエチレンが関与 することが明らかにされている。一方、jar1、NahG、npr-1、pad3 などを用いて行なっ た本研究の結果からは β-caryophyllene の処理により A. thaliana に誘導される抵抗性には、 JA(あるいは ET)情報伝達系よりも、むしろ SA 情報伝達系やファイトアレキシン生 合成系の重要性が明らかとなった。このような違いが、物質と受容体の違いに因るもの か、あるいは、検定に用いた病原微生物の栄養摂取法の違いに因るものなのかは現在の 所不明である。しかし、β-caryophyllene によって誘導される抵抗性は、biotroph である うどんこ病菌や hemibiotroph である炭疽病菌に有効であるだけではなく、Erwinia carotovora と同様に necrotroph である Botrytis cinerea に対する抵抗性も誘導できる(第 4章参照)ことから、検定微生物の違いよりも、むしろ物質とその認識機構(そして、 その下流の情報伝達系)の違いに起因するものと考えることができるであろう。 本研究では、PGPF である T. wortmannii FS2 が、β-caryophyllene を生産し、植物の生 育を促進し、植物の耐病性を増進すること明らかにした。この他、少なくとも6種の揮 44 発性物質が生産されるが、本研究では、同定と作用機作の解析には至らなかった。しか し、β-caryophyllene が、生育促進と耐病性の付与の一端を担っていることは間違いない。 β-caryophyllene は、SA 情報伝達系やファイトアレキシン生合成系を活性化し、Hossain et al. (2007)が記述しているような、ISR 様の抵抗性を誘導する可能性は高い。特に興味深 いのは、β-caryophyllene が全ての供試植物の生育を促進し、耐病性を付与できた点であ る。生育促進作用の原因や機構については、本研究で十分な解明を見なかったが、 β-caryophyllene の 処 理 に よ っ て 、 AGL47 、 AT3G54830.1 、 ATHB40/HB-5 、 UDP-glucoronosyl/UDP-glucosyl transferase や多くの DIN 遺伝子など糖やアミノ酸代謝、 また、成長ホルモン関連遺伝子が up-regulate されることが、マイクロアレイ解析から示 唆されている。今後の研究の進展に期待したい。 本論文の結論としては、β-caryophyllene は、作物の生育促進と耐病性付与という二つ の好ましい性質を備える物質であることが明らかになったことから、Talaromyces wortmannii (Penicillium kloeckeri Pitt )あるいは、β-caryophyllene は、農業場面での応用が 期待される。特に、生物そのものの資材化については、導入される生態環境の影響を受 けることや生産される代謝物質に関して不確定要素が少なくない(例えば、生菌の場合 過度の環境ストレス下におかれた場合、毒素を生産する可能性も捨てきれないなど)。 一方、β-caryophyllene は、顕著な抗菌性(毒性)は認められず、また、ED50>300 mg/kg マウスで普通物(極めて低毒性)であること、また、既に、クローブなどの精油主成分 としてアロマセラピー(精神安定効果)でも使用されており、さらに、近年抗アレルギ ー剤(アレルギー治療薬)としての効果が注目されていること等から、安心安全で心の ケアーにも有効な農業資材としての活用が大いに期待できるであろう。 今後、分子生物学的な基礎研究と並行して、実際の農業場面での多数の実証研究が望 まれる。 45 謝 辞 本研究は、岡山大学大学院 自然科学研究科(農学系)の 白石友紀教授、 一瀬勇規教授、豊田和弘准教授、稲垣善茂准教授のご指導のもとで行ったもの であります。この場を借りて厚く御礼申し上げます。研究遂行および論文作成 にあたり終始ご指導、ご鞭撻をいただきました岡山大学大学院 白石友紀教授、 豊田和弘准教授に深く感謝の意を示します。 揮発性物質の解析にあたり、ご協力を頂いた高砂香料株式会社の平本忠浩 博士および大宮忠将氏に深く感謝の意を示します。 また、本実験に用いたアブラナ科炭疽病菌およびウリ類炭疽病菌を分離いた だいた京都府立大学生命環境部 久保康之教授に深く感謝の意を示します。 研究の実践にあたり、大きな御支援、御助言、を頂いた岡山大学農学部植物 感染制御学、並びに遺伝子工学研究室の諸氏、諸先輩方に厚く御礼申し上げま す。 最後になりましたが、大学院への入学を承諾し、5 年の長きにわたり精神的、 経済的に援助してくれた妻 裕子に感謝いたします。 52 引用文献 Arimura G, Ozawa R, Nishioka T, Boland W, Koch T, Kuhnemann F, Takabayashi J (2000) Herbivore-induced volatile induce the emission of ethylene in neighboring lima bean plants. 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No-treated field 21 days after sowing. upper : Spinach middle : Crown daisy lower : Radish Length (cm) or weight (g) 25 FFC non‐FFC 20 15 * 10 5 0 stem leaves aerial under‐ weight g aerial part cm part ground part cm cm Spinach under‐ weight g aerial under‐ weight g ground part ground part part cm cm cm Crown daisy Radish Fig. 2-3. Effect of FFC-ace on the growth of spinach, crown daisy and radish. The growth was observed 4 weeks after sowing. ( * , p<0.05) Table 2-1. The number of fungi isolated from the field in Soja city Morphology FFC Crop Undiluted Morphology 20 time cfu dilution cfu like a green white green green white Brown moss cotton needle 60 6,000 54 + Spinach Crown daily 26 2,600 11 + Radish 26 2,600 15 + 6 1 5 9 8 like a green white green green white Brown moss cotton needle 15 30,000 13 2 1 4 8,000 1 2 3 6,000 1 1 1 1 1 0 41 4,100 35 - Spinach Crown daily 31 3,100 12 - Radish 16 1,600 10 - 9 6 4 8,000 3 1 10 5 10,000 1 3 6 3 6,000 2 1 The number of fungi was counted after 3 days at 23 ℃ on the PDA with STM (100 μg). A 100 μl of the soil suspension was used. 1 1 1 2 5 6 3 4 7 8 Fig. 2-4. Fungi isolated from the soil where crown daisy plants were cultivated. The PDA plate was incubated at 23 ℃ for 3 days. 1; FS1, 2; FS2, 3; FS3, 4; FS4, 5; FS5, 6; S1, 7; S2, 8; S3. 1 5 2 6 3 7 4 8 Fig. 2-5. Fungi isolated from the soil where radish plants were cultivated. The PDA plate was incubated at 23 ℃ for 3 days. 1; FH1, 2; FH2, 3; FH3, 4; H1, 5; H2, 6; H3, 7; H4, 8; H5. 4 1 2 3 5 6 Fig. 2-6. Fungi isolated from the soil where spinach plants were cultivated. The PDA plate was incubated at 23 ℃ for 3 days. 1; FHo1, 2; FHo2, 3; FHo3, 4; Ho1, 5; Ho2, 6; Ho3. A) FS2 in container B) non‐treatment Fig. 2-7. Effect of FS2 on the growth of Komatsuna in a plastic container. The picture were taken at 21 days after the start of treatment with respective fungus. A) treated with FS2 ; B) non-trretment 0.5 Weight (g) 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Fig. 2-8. Effect of fungi isolated from the soil where crown daisy plants were cultivated on the growth of Brassica rapa L(Komatsuna). The growth was measured 14 days after the start of incubation with respective fungi. 0.5 * Weight (g) 0.4 0.3 0.2 0.1 0 Non treatment FS2 Fig. 2-9. Effect of an isolated fungus (FS2) on the growth of Brassica rapa L(Komatsuna). The growth was measured 18 days after the start of incubation with FS2. n=8;*, p≦0.05) A) B) Fig. 2-10. Effect of FS2 on the growth of Komatsuna. FS2 was cultured in Sakata soil mix for 12 days at 23 ℃, and then, Komatsuna seeds were sown in the soil. The germination was observed 2 days after sowing . A), FS2 ; B), no FS2 (control). A) B) Fig. 2-11. Effect of FS2 on the growth of Komatsuna. FS2 was cultured in Sakata soil mix for 12 days at 23 ℃, and then, Komatsuna seeds were sown in the soil. The germination was observed 7 days after sowing . A), FS2; B), no FS2(control). Co P CP Fig. 2‐12a. SEM‐image of FS2 (accelerating voltage 15 KV). Co; conidium, CP; conidiospore, P; phialide Fig. 2‐12b. SEM‐images of FS2. Fig. 2-13. UV absorbance of DNA from FS2. M1, pHY marker(TaKaRa) M2, λ EcoT14 I PC, positive control NC, negative control A, FS2 Fig. 2-14. Electrophoresis of a PCR product of ITS1 region in FS2 DNA. (X10.000.000 ) a 1.0 0.0 b Total ion (No) 1.0 0.0 #2 RT(min)=16.06 c #7 2.0 #2 1.0 #1 0.0 10.0 #5 #6 #4 #3 20.0 30.0 40.0 Retention time (min) Fig. 3-1. Total ion chromatogram of volatiles derived from FS2. a; Schale, b; Agar medium, c; Culture 31 #2 #3 #4 Fig. 3-2. MS spectra of the compounds Nos.1-7. #5 #6 #7 #7 Fig. 3-2 (continue). Fig. 3-3. Chemical structure and molecular weight of β-caryophyllene. ih A ih B ap ap 100% 80% 60% 0 mM 40% 2.2 mM 20% 0% Germination Appressorial formation Penetration Fig. 4-1. Effect of β-caryophyllene on germination, appressorial formation and penetration by Colletotrichum destructivum on ethanol-killed onion epidermis. Appressorial formation and penetration were observed 3 days after inoculation. Note that no significant difference was observed between 1% EtOH (0 mM, control) and 2.2 mM β-caryophyllene . ( p>0.05) A, C. destructivum on ethanol-killed onion epidermis with 1% EtOH ; B, C. destructivum on ethanolkilled onion epidermis with 2.2 mM β-caryophyllene. ih, infection hypha; ap, appressorium. 2.20 mM 0 mM 0.03 mM 0.74 mM 0.08 mM 0.25 mM Fig. 4-2. Lesion formation by Colletotrichum destructivum on Brassica rapa var. perviridis (Komatsuna) treated with β-caryophyllene solutions. The 3-week-old leaves were inoculated with spores of C. destructivum (5 ×105 spores/mL) immediately after treatment with β-caryophyllene. Lesion was observed 6 dpi. Infection rate (%) 40 30 20 10 0 0 0.03 0.08 0.25 0.74 2.20 β-Caryophyllene (mM) Fig. 4-3. Infection by Colletotrichum destructivum on Komatsuna leaves treated with β-caryophyllene solutions. The 3-week-old leaves were inoculated with spores of C. destructivum (5 ×105 spores/mL) immediately after treatment with β-caryophyllene solutions. Infection was observed 3 dpi. 0.25 mM 0 mM 0.03 mM 0.74 mM 2.20 mM 0.08 mM Fig. 4-4. Lesion formation by Colletotrichum destructivum on Komatsuna leaves after treated with β-caryophyllene solutions for 1 day. Infection rate (%) The 3-week-old leaves were inoculated with spores of C. destructivum (5 ×105 spores/mL) 24 h after treatment with β-caryophyllene solutions. Lesion was observed 6 dpi. 40 30 20 *** 10 *** *** *** *** 0.08 0.25 0.74 2.20 0 0 0.03 β-Caryophyllene (mM) Fig. 4-5a. Effect of β-caryophyllene solution on the infection by Colletotrichum destructivum on Komatsuna leaves with β-caryophyllene solution for 1 day. The 3-week-old leaves were inoculated with spores of C. destructivum (5 ×105 spores/mL) 24 h after treatment with β-caryophyllene solutions. Infection was observed 3 dpi. (***; p≦0.001 ) ap s ih 10 μm 0 mM s ap 10 μm 2.2 mM β-Caryophyllene (mM) Fig. 4-5b. Effect of β-caryophyllene solution on the infection by Colletotrichum destructivum on Komatsuna leaves treated with β-caryophyllene solution for 1day. The 3-week-old leaves were inoculated with spores of C. destructivum (5 ×105 spores/mL) 24 h after treatment with β-caryophyllene. Infection was observed 3 dpi. (***; p≦0.001 ) S, spore; ap, appressorium; ih, infection hypha. Fresh weight (mg) 300 250 2 days after sowing 5 days after sowing ** 200 150 100 50 0 0 1.34 134134 ppm 0 β-Caryophyllene (ppm) 1.34 134 ppm 134 Fig . 4-6. Effect of volatile β-caryophyllene on the growth of Komatsuna seedlings. The 2‐ and 5‐day‐old seedlings of Komatusna were treated with volatile β-caryophyllene for 20 and 17 days, respectively, and were detached on the ground 22 days after sowing. (**; p≦0.01) Infection rate (%) 2 days after sowing. 5 days after sowing. β-Caryophyllene (ppm) Fig . 4-7. Effect of volatile β-caryophyllene on the infection by Colletotichum destructivum on Komatsuna leaves. The 2‐ and 5‐day‐old seedlings of Komatusna were treated with volatile β-caryophyllene for 20 and 17 days, respectively, and the infection was observed 3dpi. (*; p≦0.05, **; p≦0.01) 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-8. Komatsuna seedlings treated with volatile β-caryophyllene for 17 days. At 5 days after sowing , Jiffy pots were transferred to respective 1.22-L plastic containers and treated with 0, 1.34 ppm (2 μl) or 134 ppm (200 μl) of volatile β-caryophyllene. Fig. 4-9. Effect of volatile β-caryophyllene on the growth of Komatsuna roots. No.1-4, 0 ppm ; No. 5-8, 134 ppm . The length of Komatsuna roots (mm) The 3-day-old Komatsuna seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 4 days. The root length was measured 17 days after sowing. 120 * 100 80 60 40 20 0 0 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-10. Effect of volatile β-caryophyllene on the growth of Komatsuna roots. The 3-day-old Komatsuna seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 4 days, and root length was measured 17 days after sowing. (n=7, *; p≦0.05) 134 1.34 0 β-Caryophyllene ( ppm ) Fig. 4-11. Effect of volatile β-caryophyllene on the growth of cucumber seedlings. The 6-day-old cucumber seedlings were treated with 0, 1.34 or 134 ppm volatile β-caryophyllene in respective plastic containers (4.5 L) for 26 days. 6 *** Fresh weight (g) 5 4 3 2 1 0 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-12. Effect of volatile β-caryophyllene on the fresh weight of cucumber seedlings. Four seedlings of cucumber were treated in the same way as Fig. 4-11. After treatment, the seedlings were detached on the ground and weighed. (n=4, ***;p≦0.001) 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-13. Effect of volatile β-caryophyllene on the lesion formation by Colletotrichum orbicular on cucumber leaves. Percentage of lesion area (%) The 32-day-old cucumber leaves were inoculated with spores of C. orbiculare (1 ×106 spores/mL) 26 days after treatment with volatile β-caryophyllene. Lesion was observed 7 days after inoculation. 100 80 60 40 * 20 * 0 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-14. Effect of volatile β-caryophyllene on the lesion formation by Colletotrichum orbicular on cucumber leaves treated with volatile β-caryophyllene for 26 days. The 32-day-old cucumber leaves were inoculated with spores of C. orbiculare (1 ×106 spores/mL) 26 days after treatment with volatile β-caryophyllene. Lesion was observed 7 dpi and measured with Assess 2.0. (n=4, * ; p≦0.05) Total number for harvest of cucumber fruit 30 25 136 ppm a 13.6 ppm a 20 1% EtOH a 136ppm b 15 13.6ppm b 1% EtOH b 10 5 0 Fig. 4-15 a. Periodical change in the number of cucumber fruits collected from cucumber plants treated with volatile β-caryophyllene. Cucumber seedlings were transplanted to the field 26 days after treatment with volatile β-caryophyllene. The yield of cucumber fruits was measured for one month from 28 days after transplanting. Total number for harvest of cucumber fruit. 30 136 ppm a 13.6 ppm a 1% EtOH a 線形 (136 ppm a) 線形 (13.6 ppm a) 線形 (1% EtOH a) 25 20 15 y = 0.7537x ‐ 30159 R² = 0.9825 y = 0.5023x ‐ 20101 R² = 0.963 10 y = 0.1848x ‐ 7396.3 R² = 0.8923 5 0 7/16 7/21 7/26 7/31 8/5 8/10 8/15 8/20 8/25 ‐5 Total number for harvest of cucumber fruit 25 136ppm b 13.6ppm b 1% EtOH b 線形 (136ppm b) 線形 (13.6ppm b) 線形 (1% EtOH b) 20 15 y = 0.5979x ‐ 23928 R² = 0.9465 y = 0.4569x ‐ 18283 R² = 0.9778 10 y = 0.1176x ‐ 4708.3 R² = 0.8715 5 0 7/16 7/21 7/26 7/31 8/5 8/10 8/15 8/20 8/25 ‐5 Fig. 4-15 b. Periodical change in the number of cucumber fruits collected from cucumber plants treated with volatile β-caryophyllene for 26 days before trans planting. The yield of cucumber fruits was measured for one month from 28 days after transplanting. ** 40 * 30 3 ** 2 * 20 4 10 1 0 0 number weight 100 g 0 1% EtOH number weight 100 g number 13.6 13.6 ppm Total weight of cucumber fruit (kg) Total number of cucumber fruit 50 weight 100 g 136 136 ppm β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-16. Total number and weight of cucumber fruits collected from cucumber plants treated with volatile β-caryophyllene. Note that treatment with β-caryophyllene for 26 days before transplanting resulted in increases of number and weight of cucumber fruits for one month from 28 days after transplanting. (n=2, *; p≦0.05, **; p≦0.01) Fresh weight (mg) 700 ** 600 500 400 300 200 100 0 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-17 Effect of β-caryophyllene on the growth of Nicotiana benthamiana. The 10-day-old seedlings were treated with volatile β-carypohyllene for 21 days. The seedlings were detached on the ground 21 days after treatment. (n=4, **: p≦0.01) Lesion area (mm2) 8 6 4 2 ** ** 0 0 1.34 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-18. Lesion formation by Botrytis cinerea on Nicotiana benthamiana seedlings treated with volatile β-caryophyllene. The 31-day-old seedlings were inoculated with spores of B. cinerea (1 ×106 spores/mL) 21 days after treatment with volatile β-caryophyllene. Lesion was observed 4 dpi. (n=16, ** ; p≦0.01) 0 ppm 1.34 ppm 134 ppm 10 mm Fig. 4-19. Lesion formation by Botrytis cinerea on Nicotiana benthamiana leaves treated with volatile β-caryophyllene. The 31-day-old leaves were inoculated with spores of B. cinerea (1 ×106 spores/mL) 21 days after treatment with volatile β-caryophyllene. Lesion was observed 4 dpi. 80 Infection rate (%) 70 60 *** 50 40 30 20 10 0 0 1.34 β-Caryophyllene (ppm) 134 134 ppm 0 ppm ap s s s ih ap 50 μm ap 50 μm Fig. 4-20. Infection by Botrytis cinerea on Nicotiana benthamiana seedlings treated with volatile β-caryophyllene. Leaves of 31-day-old N. benthamiana seedlings were inoculated with spores of B. cinerea (1 ×106 spores/mL) 21 day after treatment with volatile β-caryophyllene. Infection was observed 2 dpi. (n=16, ** ; p≦0.01) S, spore; ap, appressorium; ih, infection hypha. 0 ppm 13.4 ppm β-Caryophyllene (ppm) 50 mm Fig. 4-21. Barley (Hordeum vulgare L) seedlings treated with volatile β-caryophyllene . The 4-day-old seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 7 days. Fresh weight (mg) 300 * 250 200 150 100 50 0 0 1.34 13.4 β-Caryophyllene (ppm) Fig. 4-22. Effect of volatile β-caryophyllene on the growth of barley (Hordeum vulgare L). The 4-day-old seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 7 days. (n=19, *; p≦0.05) Infection rate (%) 80 60 ** 40 *** 20 0 0 1.34 β-Caryophyllene (ppm) 13.4 Fig. 4-23 a. Infection by Blumeria graminis f. sp. hordai on the leves of barley treated with volatile β-caryophyllene. The 4-day-old seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 7 days, and, were inoculated with Blumeria graminis f. sp. hordai. Infection was observed 2 dpi. (**; p≦0.01, ***; p≦0.001) 0 ppm sh c sh 13.4 ppm ap c sh 200 μm Fig. 4-23 b. Infection by Blumeria graminis f. sp. hordai on the leves of barley treated with volatile β-caryophyllene. The 4-day-old seedlings were treated with volatile β-caryophyllene for 7 days, and, were inoculatred with conidia of Blumeria graminis f. sp. hordai. The colony was observed 2 dpi. c, conidium; ap, appressorium; sh, secondary hypha. Infection rate (%) 80 60 ** *** *** 40 *** 20 0 0 1 2 3 Days for treatment 4 5 Fig. 4-24. Effect of the time for treatment of barley seedlings with volatile βcaryophyllene on the infection by Blumeria graminis hordei (race 1). (**; p≦0.01, ***; p≦0.001) Inoculate 3d Observe 2d Saw seeds 5d 4d 3d 2d 1d Treat 0d Weight (mg/seedling) 600 ** 400 200 0 0 134 β-Caryophyllene (ppm) Fig.5-1. The effect of volatile β-caryophyllene on the growth of Arabidopsis. thaliana Col-0. The 20-day-old seedlings of Col-0 were treated with volatile β-caryophyllene for 18 days. The seedlings were detached on the ground and were weight. (n=9, **; p≦0.01) Infection rate (%) 100 Pretreatment Simultaneous treatment 80 ** 60 *** ** 40 20 0 0 1% EtOH 0.02 0.22 2.2 0 1% EtOH 0.02 0.22 2.2 β‐Caryophyllene (mM) Fig. 5-2. Infection by Colletotrichum destructivum on Arabidopsis thaliana leaves treated with β-caryophyllene solution. Infection was observed 3 days after inoculation. (n=4,**; P≦0.01,***; P≦0.001) β-caryophyllene was disoluted in 1% EtOH. Treated simultaneously 0 0.02 Pretreated for 1 day 0 2.2 2.2 0.02 0.22 0.22 β-Caryophyllene (mM) Fig. 5-3. Effect of β-caryophyllene solution on the lesion formation by Colletorichum destructivum on Arabidopsis thaliana leaves. Lesion was observed 4 days after inoculation. Sample No.1 2 Sample 260/280 No 3 260/230 4 ng/μl 5 6 Treatment 1 2.18 2.37 1186.8 0 ppm 2 2.19 2.42 1020.8 3h 1.34 ppm 3 2.20 1.93 808.0 3h 134 ppm 4 2.19 2.27 1046.1 5 2.19 2.28 977.0 3d 1.34 ppm 6 2.18 2.18 525.8 3d 134 ppm 0 ppm Fig.5-4. Agarose gel electrophoresis of total RNA extracted from Arabidopsis thaliana treated with volatile β−caryophyllene. A 0.5 μg of RNA was applied to each lane of 1% agarose gel. Table 5-1. Up-graded genes of Arabidopsis thaliana treated with volatile β-caryophyllene (1.34 or 134 ppm) for 3 h FeatureNum Description Set01_Log2 Ratio Set02_Log2 Ratio 23842 6546 peroxidase, putative [AT1G44970.1] serine-type endopeptidase inhibitor [AT5G43570.1] 4.53 3.92 4.05 1.43 34185 BP785622 RAFL7 Arabidopsis thaliana cDNA clone RAFL07-95-K18 3', mRNA sequence [BP785622] 3.17 1.27 24954 11708 42880 MIOX2 (MYO-INOSITOL OXYGENASE 2) [AT2G19800.1] MADS-box protein (AGL47) [AT5G55690.1] DNA binding / transcription factor [AT4G05170.1] 2.70 2.69 2.59 1.22 1.45 2.32 30464 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT3G01950.1); similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO68311.1) [AT5G14110.1] 2.43 1.24 2.27 2.26 2.20 2.20 2.18 2.16 1.12 1.66 1.40 1.02 1.39 1.63 39239 10195 13397 11061 41348 25508 IAA29 (indoleacetic acid-induced protein 29); transcription factor [AT4G32280.1] 12826078 CERES-AN65 Arabidopsis thaliana cDNA clone 1361839 5', mRNA sequence [DR368472] BT1 (BTB and TAZ domain protein 1); protein binding / transcription regulator [AT5G63160.1] MIOX4 (MYO-INOSITOL OXYGENASE 4) [AT4G26260.1] amino acid transporter family protein [AT3G54830.1] 12895 ATHB40/HB-5 (ARABIDOPSIS THALIANA HOMEOBOX PROTEIN 40); DNA binding / transcription factor [AT4G36740.1] 2.06 1.32 42604 BP609708 RAFL16 Arabidopsis thaliana cDNA clone RAFL16-83-B16 3', mRNA sequence [BP609708] 2.04 1.01 1.96 1.95 1.93 1.93 1.90 1.77 1.15 1.12 1.43 1.10 15050 39036 2819 7335 31782 unknown protein [AT4G37295.1] ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.1] myb family transcription factor [AT1G13300.1] ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.3] 42928 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT2G27385.1); similar to hypothetical protein [Vitis vinifera] (GB:CAN68427.1) [AT5G22430.1] 1.90 2.53 17658 34813 4800 21557 12524 32226 ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.1] DIN11 (DARK INDUCIBLE 11); oxidoreductase [AT3G49620.1] heavy-metal-associated domain-containing protein [AT5G02600.2] tryptophan synthase, beta subunit, putative [AT5G28237.1] glutaredoxin family protein [AT4G15670.1] JAS1/JAZ10/TIFY9 (JASMONATE-ZIM-DOMAIN PROTEIN 10) [AT5G13220.1] 1.86 1.86 1.86 1.85 1.82 1.79 1.10 1.14 1.48 2.78 1.06 2.08 27416 similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO40332.1); contains domain PROKAR_LIPOPROTEIN (PS51257) [AT3G22275.1] 1.79 2.15 11130 29360 12807 37707 14978 4329 unknown protein [AT5G56880.1] MA3 domain-containing protein [AT3G48390.1] AOC1 (ALLENE OXIDE CYCLASE 1) [AT3G25760.1] other RNA [AT5G53048.1] peroxidase 40 (PER40) (P40) [AT4G16270.1] senescence-associated protein-related [AT1G53885.1] 1.78 1.77 1.74 1.74 1.71 1.65 1.29 1.23 1.15 1.10 5.23 1.47 11182 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT3G19680.1); similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO61535.1); contains InterPro domain Protein of unknown function DUF1005 (InterPro:IPR010410) [AT1G50040.1] 1.64 1.60 18683 12877 11965 25787 31915 23844 20696 5272 39749 35648 3482 14915 19550 CYP94B1 (cytochrome P450, family 94, subfamily B, polypeptide 1); oxygen binding [AT5G63450.1] JAS1/JAZ10/TIFY9 (JASMONATE-ZIM-DOMAIN PROTEIN 10) [AT5G13220.2] protein kinase family protein [AT4G38470.1] glutamine amidotransferase-related [AT1G15040.1] FAD-binding domain-containing protein [AT1G30730.1] SEP3 (SEPALLATA3); transcription factor [AT1G24260.1] JAZ7/TIFY5B (JASMONATE-ZIM-DOMAIN PROTEIN 7) [AT2G34600.1] GDSL-motif lipase, putative [AT1G58725.1] peroxidase, putative [AT5G39580.1] AOC1 (ALLENE OXIDE CYCLASE 1) [AT3G25760.1] RGL3 (RGA-LIKE 3); transcription factor [AT5G17490.1] DNA-binding protein, putative [AT2G36080.1] cell wall protein precursor, putative [AT2G20870.1] 1.63 1.62 1.60 1.57 1.55 1.55 1.53 1.46 1.45 1.43 1.39 1.39 1.37 1.45 1.77 1.05 1.03 1.04 1.96 1.40 1.04 1.19 1.08 1.48 1.00 2.47 Table 5-2. Up-graded genes of Arabidopsis thaliana treated with volatile β-caryophyllene (1.34 or 134 ppm) for 3 days FeatureNum Description Set03_Log2 Ratio 7.15 5.45 Set04_Log2 Ratio 3.60 5.47 21225 34813 glycosyl hydrolase family 1 protein [AT3G60120.1] DIN11 (DARK INDUCIBLE 11); oxidoreductase [AT3G49620.1] 17340 CYP71A18 (cytochrome P450, family 71, subfamily A, polypeptide 18); oxygen binding [AT1G11610.1] 4.06 2.24 35504 39749 10538 7631 26283 32079 leucine-rich repeat family protein [AT2G25470.1] peroxidase, putative [AT5G39580.1] cinnamoyl-CoA reductase [AT1G76470.1] PAD3 (PHYTOALEXIN DEFICIENT 3); oxygen binding [AT3G26830.1] cinnamoyl-CoA reductase [AT1G76470.1] lipase class 3 family protein [AT4G16820.1] 3.70 3.32 3.32 3.30 3.20 3.20 4.88 3.44 3.22 1.78 1.83 1.34 42879 CYP71A13 (CYTOCHROME P450, FAMILY 71, SUBFAMILY A, POLYPEPTIDE 13); indoleacetaldoxime dehydratase/ oxygen binding [AT2G30770.1] 3.14 1.44 15073 ACS2 (1-Amino-cyclopropane-1-carboxylate synthase 2) [AT1G01480.1] 3.11 1.06 32560 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT2G31345.1) [AT1G06135.1] 3.09 1.22 1723 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT1G13520.1); similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO42040.1); contains InterPro domain Protein of unknown function DUF1262 (InterPro:IPR010683) [AT1G13480.1] 3.08 -1.35 42111 CYP71A13 (CYTOCHROME P450, FAMILY 71, SUBFAMILY A, POLYPEPTIDE 13); indoleacetaldoxime dehydratase/ oxygen binding [AT2G30770.1] 3.05 1.61 15050 25646 unknown protein [AT4G37295.1] HSP17.6II (17.6 KDA CLASS II HEAT SHOCK PROTEIN) [AT5G12020.1] 2.97 2.97 2.87 2.33 3546 AtMYB15/AtY19/MYB15 (myb domain protein 15); DNA binding / transcription factor [AT3G23250.1] 2.92 4.11 2633 methionine sulfoxide reductase domain-containing protein / SeIR domain-containing protein [AT4G21830.1] 2.92 2.87 20696 JAZ7/TIFY5B (JASMONATE-ZIM-DOMAIN PROTEIN 7) [AT2G34600.1] 2.90 2.96 1.62 34242 UDP-glucoronosyl/UDP-glucosyl transferase family protein [AT3G11340.1] 2.88 25787 glutamine amidotransferase-related [AT1G15040.1] 2.85 2.68 25282 CYP71A12 (CYTOCHROME P450, FAMILY 71, SUBFAMILY A, POLYPEPTIDE 12); oxygen binding [AT2G30750.1] 2.81 1.00 31915 11061 7335 FAD-binding domain-containing protein [AT1G30730.1] 2.77 2.76 2.70 3.85 2.86 3.35 2.70 1.23 12361 myb family transcription factor [AT1G13300.1] ATGSTU11 (Arabidopsis thaliana Glutathione S-transferase (class tau) 11); glutathione transferase [AT1G69930.1] 44823 AtMYB15/AtY19/MYB15 (myb domain protein 15); DNA binding [AT3G23250.2] 2.57 4.12 24661 JAZ8/TIFY5A (JASMONATE-ZIM-DOMAIN PROTEIN 8) [AT1G30135.1] 2.53 2.87 2819 24954 ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.1] MIOX2 (MYO-INOSITOL OXYGENASE 2) [AT2G19800.1] 2.44 2.42 2.25 3.68 44104 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT1G36640.1) [AT1G36622.1] 2.39 1.40 4809 similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO62924.1) [AT4G24110.1] 2.39 3.50 11196 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT1G13480.1); similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO42040.1); contains InterPro domain Protein of unknown function DUF1262 (InterPro:IPR010683) [AT1G13520.1] 2.35 -1.09 6546 serine-type endopeptidase inhibitor [AT5G43570.1] 2.30 2.23 9214 PQ-loop repeat family protein / transmembrane family protein [AT4G36850.1] 2.28 2.04 30464 similar to unknown protein [Arabidopsis thaliana] (TAIR:AT3G01950.1); similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO68311.1) [AT5G14110.1] 2.27 2.15 34185 BP785622 RAFL7 Arabidopsis thaliana cDNA clone RAFL07-95-K18 3', mRNA sequence [BP785622] 2.25 3.50 2.42 2.35 2.23 2.06 17658 ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.3] similar to unnamed protein product [Vitis vinifera] (GB:CAO40332.1); contains domain PROKAR_LIPOPROTEIN (PS51257) [AT3G22275.1] ASN1 (DARK INDUCIBLE 6) [AT3G47340.1] 2.25 2.25 2.19 2.25 13397 BT1 (BTB and TAZ domain protein 1); protein binding / transcription regulator [AT5G63160.1] 2.16 4.04 3759 vesicle-associated membrane protein, putative / VAMP, putative [AT2G23830.1] 2.15 -2.62 44903 ASK12 (ARABIDOPSIS SKP1-LIKE 12); protein binding / ubiquitin-protein ligase [AT4G34470.1] 2.10 3.16 6152 CYP82G1 (cytochrome P450, family 82, subfamily G, polypeptide 1); oxygen binding [AT3G25180.1] 2.08 1.06 25508 12524 36039 23205 14641 31387 19925 amino acid transporter family protein [AT3G54830.1] glutaredoxin family protein [AT4G15670.1] ATMC7 (METACASPASE 7); caspase [AT1G79310.1] protein binding / zinc ion binding [AT2G44581.1] S-locus protein-related [AT5G43620.1] calmodulin-binding family protein [AT5G57010.1] mannitol transporter, putative [AT4G36670.1] 1.99 1.95 1.94 1.86 1.86 1.86 1.84 3.12 1.27 2.01 3.34 3.07 2.18 2.32 39036 31782 27416 Table. 5-3. Up- and down-regulated genes of Arabidopsis thaliana Col-0 treated with β-caryophyllene β-caryo- 3 h after treated phyllene up1.34 ppm regulated AR0193 Set01 (2 μl) 134 ppm (200 μl) AR0193 Set02 gene β-caryonumber phyllene 62 3 days after treated 1.34 ppm (2 μl) AR0193 Set03 gene number upregulated 91 downregulated 49 downregulated 20 non 5669 non 5669 upregulated 62 upregulated 77 downregulated 49 downregulated 34 non 5669 non 5669 134 ppm (200 μl) AR0193 Set04 Set01;1.34 ppm/healthy, Set02;134 ppm/healthy, Set03;1.34 ppm/healthy, Set04;134 ppm/healthy. 62 49 5669 91 up‐regulated down‐regulated non Set 01, 1.34ppm: 3 h 62 5669 49 up‐regulated 5669 Set 02, 134 ppm: 3 h down‐regulated non Set 03, 1.34ppm: 3 days 77 up‐regulated down‐regulated non 20 5669 34 up‐regulated down‐regulated non Set 04, 134 ppm: 3 days Fig. 5-5. Up- and down-regulated genes of A. thaliana treated with volatile β-caryophyllene. Sample No. 1 2 3 4 5 6 7 No Treatment ng/ul 260/280 1 Non treatment 124.5 1.89 2 1.5h Water 133.4 1.94 3 1.5h 1%EtOH 135.3 1.85 4 1.5h β-caryophyllene 120.3 1.79 5 3h Water 136.0 1.90 6 3h 1%EtOH 136.3 1.85 7 3h β-caryophyllene 137.6 1.93 Fig. 5-6. Agarose gel electrophoresis of total RNA extracted from Col-0 leaves treated with 4.4 mM β-caryophyllene. PDF1.2 NPR1 PAL2 PR1 PAD3 EF1a 1 2 3 4 5 6 7 Fig. 5-7. RT-PCR products of total RNA extracted from Col-0 leaves treated with 4.4 mM β-caryophyllene. cDNAs were analyzed with MultiNA (SHIMADZU, Kyoto). No 1 2 3 4 5 6 7 Treatment Non-treatment 1.5 h-water 1.5 h-EtOH 1.5 h-β-caryophyllene 3 h-water 3 h-EtOH 3 h-β-caryophyllene Table 5-6 b. Amount of RT-PCR products of several defense-related genes (b-e) b c Gene non1.5h 1% 1.5h β-caryo1.5h water 3h water phyllene treatment EtOH 3h 1% EtOH 3h β-caryophyllene JAZ 7 2.42 1.15 1.66 1.52 1.1 4.95 0.46 JAZ 10 1.87 0.16 0.73 1.81 1.03 4.42 0.13 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 EF-1a 0.14 0 3.6 1.72 1.7 4.95 0 0 0.36 1.4 1.59 0 2.66 0 3.54 19.59 0.17 0.77 1.29 0 11.95 1.05 6.94 4.36 0.32 4.01 0 0.72 4.53 3.22 2.41 2.86 0.41 6.37 0.95 0.5 2.81 0.39 3.17 6.18 2.99 2.31 0.82 0.21 4.43 0.36 8.85 0.36 2.2 10.23 0.54 2.23 4.25 1.11 14.12 2.62 0.44 10.01 0.19 8.62 0.19 2.18 21.77 0.59 4.78 0.68 15.29 6.99 3.44 2.77 9.55 1.29 13.79 0.91 10.37 15.06 0.49 4.49 3.02 2.31 9.61 0.57 1.46 7.41 0.25 5.66 0.92 7.46 13.6 3.7 2.64 Gene JAZ 7 non1.5h 1% 1.5h β-caryo1.5h water 3h water treatment EtOH phyllene 3h 1% EtOH 3h β-caryophyllene 3.8 10.16 5.4 19.36 6.79 7.41 14.94 JAZ 10 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 4.52 1.55 10.41 8.37 2.51 1.02 2.76 4.99 0.37 1.18 0.11 2.92 0 10.84 31.5 60.53 32.95 9.6 3.73 3.14 28.46 1.11 1.74 0.48 9.76 0.25 7.01 1.54 33.99 17.53 5.1 0 2.71 27.8 4.57 4.18 0.16 11.27 0 16.58 18.78 42.33 26.61 19.56 5.52 3.62 32.15 13.35 4.43 0.48 18.08 1.12 5.84 0.26 9.74 18.53 3.81 16.52 3.44 13.82 5.83 5.47 0.42 13.06 0 6.19 0.82 53.43 32.5 12.29 13.01 4.63 35.25 6.87 7.04 0.5 13.36 3.48 11.86 26.3 55.76 36.22 26.27 16.21 5.94 51.05 9.89 8.24 2.03 15.72 2.86 EF-1a 6.52 10.48 6.65 6.98 9.44 6.94 7.01 Table 5-6 b. continue d Gene JAZ 7 JAZ 8 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 EF-1a e Gene JAZ 7 JAZ 10 DIN 11 GSTU 11 PAD 3 MYB 15 MYC 2 COI 1 PDF1.2 JAR1 NPR1 PR1 PAL2 PER4 EF-1a non1.5h 1% 1.5h b-caryo1.5h water 3h water treatment EtOH phyllene 7.3 1.86 0.7 1.5 0.46 0.8 2.26 1.56 8.76 7.52 0.78 0.39 1.53 0.84 2.51 1.37 0.14 1.58 3.01 12.36 1.05 2.29 7.95 57.38 8.44 8.56 1.3 9.03 2.25 4.62 14.32 6.49 17.24 16.27 21.15 15.41 18.67 16.77 14.24 22.17 10.71 3.1 16.17 7.34 5.38 7.71 3.06 9.12 16.63 42.01 8.16 17.77 21 10.96 14.4 20.62 4.09 15.6 4.46 6.22 12.67 3.69 9.27 8.43 16.79 10.1 4.78 13.84 5.21 21.61 19.01 2.27 8.82 4.41 7.03 non1.5h 1% 1.5h b-caryo1.5h water 3h water treatment EtOH phyllene 5.85 0.66 1.55 0.22 6.26 0 10.41 5.34 2.3 28.57 3.34 0.57 6.88 0.11 6.67 2.55 0.99 1.36 2.2 43.12 1.77 2.55 4.49 3.63 3.44 5.95 0.62 15 4.29 11.13 8.86 2.65 0.65 5.94 40.71 8.7 5.46 5.07 4.05 7.12 8.84 2 15.08 7.52 8.59 1.69 1.26 3.08 1.72 29.66 0.91 5.17 3.83 6.97 2.51 6.12 0.51 17.7 2.36 10.01 6.06 1.16 1.04 10.45 32.16 5.27 6.34 5.17 5.53 2.06 7.93 1.37 10.98 5.26 14.2 3h 1% EtOH 12.68 7.28 29.54 5.82 2.55 12.64 6.76 0.37 10.56 11.58 8.49 0.9 10.94 5.8 2.51 3h 1% EtOH 5.88 1.77 5.12 10.13 40 5.71 4.04 4.05 2.34 38.24 6.58 1.59 13.68 10.64 5.56 3h b-caryophyllene 7.75 8.42 6.87 1.83 6.19 1.55 18.62 0.26 26.23 25.51 23.14 1.08 17.35 0 5.05 3h b-caryophyllene 0.8 0.55 0.6 0.33 42.58 2.47 5.98 5.89 5.37 9.04 7.57 0.63 11.97 5.32 10.47 PAD 3 PR1 0.018 0.016 0.014 0.012 0.01 0.008 0.006 0.004 0.002 0 0.045 0.04 0.035 0.03 0.025 0.02 0.015 0.01 0.005 0 1 2 3 4 5 6 1 7 2 PAL2 3 4 5 6 7 5 6 7 PDF1.2 0.0035 0.06 0.003 0.05 0.0025 0.04 0.002 0.0015 0.03 0.001 0.02 0.0005 0.01 0 1 2 3 4 5 6 7 NPR1 0.15 0.1 0.05 0 2 Fig. 5-8 3 4 1 No 1 2 3 4 5 6 7 0.2 1 0 5 6 2 3 4 Treatment Non-treatment 1.5 h-water 1.5 h-EtOH 1.5 h-β-caryophyllene 3 h-water 3 h-EtOH 3 h-β-caryophyllene 7 . Relative amount of RT-PCR products of several defense-related genes (a). Y-axis indicates relative value calculated as signal No. of respective cDNA of defense-related genes/signal No. of EF1a cDNA of respective cDNA. Table 5-5. Primer sets for analysis of the transcriptional activation of several defenserelated genes Gene AGI NO. AtJAZ7 At2g34600 AtJAZ10 At5g13220 AtDIN11 At3g49620 AtGSTU11 At1g69930 PAD3 At3g26830 AtMYB15 At3g23250 AtMYC2 At1g32640 AtCOI1 At2g39940 AtThi2.1 At1g72260 AtPDF1.2 At5g44420 JAR1 At2g46370 NPR1 At1g64280 PR1 At4g07820 PAL2 At3g53260 PER4 At1g14540 EF-1a At5g60390 F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R F R Primer sequences (5'→3') GCTCGTTGGACGAATCAAGCAGC TGTTGGAGGATCCGAACCGTCTG TGAAGGTCGCTAATGAAGCAGC TCTCTCCTTGCGCTTCTCGAGA GGCCAAACCAGTGGCCAGGA AGTCAGTGTGAGCTCCACATCCA AGGAGCATGGCCTAGCCCTT GGATGGGAGGACCGGAGAGCC AATCTCGCCGAAATGTATGG GCATCAGACTCCACTCGTCA AGGACCATGGACACCTGAAG CTGCAATCGCTGACCATCTA CGACGACAACGCTTCTATGA CCAACCTTCGTGTGTTCCTT ACATGGCGGTGTATGTCTCA GTTAAGCCGCCTTGTCTCAG GGCCGCCTAAACTGTTGTAA CCATTCCGTTCAAAGCAAAT CACCCTTATCTTCGCTGCTC GTTGCATGATCCATGTTTGG CACCGAAAGAGACCTTCAGC AACTAACGTAACCCGCATCG CAAGCCACTATGGCGGTTGAATG CTGAAAGGTGCTATCTTTACACCCG CAGCCCCAAGACTACTTCAATGC GGTCGTTCAATAAGAATGACAGACG GAGGCAGCGTTAAGGTTGAG TATTCCGGCGTTCAAAAATC TCTCATCCGTCTCCATTTCC TATCAGCGCAAGAAACAACG TGGTGACGCTGGTATGGTTA CATCATTTGGCACCCTTCTT Size(bp) 203 176 234 230 211 239 205 208 225 175 218 344 394 197 194 201 60 * Infection rate (%) *** 40 * 20 * 0 W Et Car W Et Car W Et Car W Et Car W Et Car Col-0 jar-1 Jar-1 npr-1 npr-1 NahG NahG pad-3 Pad-3 Fig. 5-9. Effect of β-caryophyllene soln. on the infection by Colletotrichum destructivum on several mutants of Arabidopsis thaliana Col-0. (W: water, Et: 1% EtOH, Car: 4.4 mM β-caryophyllene) The 4-week-old seedlings of several mutants were treated with 4.4 mM β-caryophyllene for 1 day, and then were inoculated with C. destructivum. Infection was observed 3 dpi. ( *; p≦0.05 , ***; p≦0.001 ) ap, appressorium; ih, infection hypha. ih ih ap ih ap ap ih Col-0 Et Col-0 Car jar-1 Et ap jar-1 Car continue ap ap ih ih npr-1 Car npr-1 Et ih ih ap ap NahG Car NahG Et ih ih ap ap pad-3 Et pad-3 Car Relative value 2.5 *** 2 1.5 * 1 0.5 * * 0 Col-0 jar-1 npr-1 NahG Pad-3 Fig. 5-10. Relative infection rate of Colletotrichum destructivum on several mutants treated with β-caryophyllene. Relative value was calculated as infection rate on a mutants treated with β-caryophyllene /infection rate on the mutants treated with 1%EtOH, respectively. Significant difference was calculated to the respective controls (1% EtOH-treatment). (*; p≦0.05 ,***; p≦0.001 ) Table 6-1 Activity of disease suppression against fungi and bacteria by substance form organisms organisms plant substance Ethylene MeSA MeJA C6-Aldehyde (E)-b-Ocimene-2 lima bean (Z)-2-Hexenal (Z)-3-Hexenal pathogen Bacillus amyloliquefaciens 2,3-Butanediol Erwinia carotovora B. subtilis 2,3-Butanediol 3-hydroxy-2-butanone Erwinia carotovora Streptomyces platensis Phenylethyl alchohol Rhizoctonia solani, Sclerotium (+)epi-Bicyclesesquiphellandene Botrytis cinerea Activity resistance induction resistance induction plant growth promoting resistance induction plant growth promoting Ref. Fidantsef 1999 Weidhase 1999 Croft 1993 Hoffman 1999 Bent 1992 Shulaev 1997 Arimura 2000 2002 Takabayashi 1996 Fall 1999 Zeringue 1992 Kishimoto 2006 D'Auria 2006 Gomi 2003 Farag 2005 Bate 1998 Paschold 2006 Shiojiri 2006 Ryu et al. 2003 Ryu et al. 2003 antimicrobial Wan et al. 2008 Irpex lacteus 5-Pentyl-2-furaldehyde 5-(4-pentenyl)-2-furaldehyde Blumeria graminis f. sp. tritici, Oidium. sp antimicrobial Koitabashi et al. 2004, 2005 Muscodor albus 2-Methyl-1-butanol Isobutyric acid Botrytis, Colletotrichum, Monilinia, Penicillium, Rhizopus antimicrobial Mercier and Jimenez. 2004 Trichoderma harzianum Harzianic acid Fusarium oxysporum strain MSA35 a-Humulene Cladosporium sp. Methyl bezoate Ampelomyces sp. m-Cresol resistance induction plant growth promoting penicillium sp. Vinale et al. 2009 antimicrobial Minerdi et al. 2009 antimicrobial Kiyohara and Hyakumachi 2010