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アナリストレポート(2011.4.15.)(258 KB)PDF
サニーサイドアップ(2180・JASDAQ グロース)
2011 年 4 月 15 日
JASDAQアナリストレポート・プラットフォーム<ベーシックレポート>
時代の追い風を捉えた PR 会社
(株)アドバンスト・リサーチ・ジャパン
長井
亨
„
2012 年 6 月期は過去最高益更新へ
„
スポーツ関係者のマネジメントで定評を持つ広報マーケッティン
グ企画会社。元サッカー選手中田英寿氏のマネジメントはあまり
会
社
概
要
に有名。マネジメントに加え、PR、企画開発、セールス・プロモ
所
在
地
東京都渋谷区
代
表
者
次原 悦子
ーションの 4 部門が事業の柱を担う。
„
同社の特色は、「メディアに仕掛け、ニュースにされることで PR
設 立 年 月
1985/07
する」という手法と、スポーツアスリートのブランド力を高める
資
430.7 百万円
マネジメント、といった斬新な手法にある。今やこの手法そのも
本
金
(2010/12/31 現在)
のがある意味でブランド化されており、後発企業の追随を許して
上
場
日
いない。しかも、ブランディングの成功により、それら自身が強
U
R
L
2008/09/05
力なコンテンツとなって PR に貢献。それがまた別のブランド化
http://www.ssu.co.jp/home/
業
種
を促進させるといった各事業間での相乗効果も非常に高い。
サービス
„
に、大幅改善を実現する見通し。bills レストランの 2 号店の貢献
主要指標 2011/04/13 現在
株
価
840 円
発行済株式数
847,600 株
売 買 単 位
100 株
時 価 総 額
712 百万円
予 想 配 当
5.0 円
(
会
予 想
社
)
E P S
もあり、全社売上は前年比 29%増加し、過去最高売上を更新。損
益的にも黒字回復を予想する。2012 年 6 月期は、売上 95 億円、
経常利益は 3.5 億円と予想。いずれも過去最高を更新しよう。大
震災の影響など楽観できる状況にはまだないが、買収した香港子
会社とレストラン 3 号点がオープンする bills が牽引役となる見通
し。
176.97 円
( ア ナ リ ス ト )
実 績
2011 年 6 月期の業績は、外食企業からの新規大型受注案件をテコ
P B R
0.55 倍
※ 実績 PBR は直前第 2 四半期末における BPS で算出
【業績動向】
2 0 1 0 / 6
実
2 0 1 2 / 6
前年比
営業利益
前年比
経常利益
前年比
当期純利益
前年比
EPS
百万円
%
百万円
%
百万円
%
百万円
%
円
績
6,031
2.4
-210
赤転
-191
赤転
-418
赤転
-499.63
想
7,154
18.6
192
黒転
212
黒転
117
黒転
143.54
アナリスト予想
7,800
29.3
250
黒転
250
黒転
150
黒転
176.97
アナリスト予想
9,500
21.8
350
40.0
350
40.0
200
33.3
235.96
会
2 0 1 1 / 6
売上高
社
予
(2011 年 2 月発表)
1
会 社 概 要
株式会社サニーサイドアップは、スポーツ関係者のマネジメントで定評を持つ広報マーケッティング
企画会社。マネジメント契約下にあるスポーツ選手は、元サッカー選手中田英寿氏、プロゴルフ選手
上田桃子氏など。マネジメントに加え、PR、企画開発、セールス・プロモーションの 4 部門が事業の
柱を担う。主要顧客は東急エージェンシー。本社は東京都渋谷区。資本金は 4 億 3,070 万円、連結従
業員数は 2010 年 6 月末現在で 166 名。
発足は 1985 年。
「ニュースをつくる」PR 会社としてスタート。広告を作成し、それをメディアに露出
させるといった PR ではなく、「メディアがニュースにしたくなるような」素材を打ち出すことで結果
的に広告効果を得るといった斬新な手法を展開。他の広告会社とは一線を画している。このメディア
を使ってのブランド作りのノウハウが、スポーツ選手のマネジメント業務にも活かされている。現在
は、スポーツアスリートに留まらずブランディング・マネジメントを手がけるうえ、2006 年には商品・
サービスの具体的なセールス・プロモーションを手掛けるワイズインテグレーションと資本提携(完全
子会社化)。2010 年にはセールス・プロモーション機能の強化を狙い、ノベルティ(広告用記念品)製造
拠点として TCN Technology(香港)を子会社化した。事業コンセプトは「ムーブメント製造業」。多く
の人の共感を得るための表現を通じ、人の心を豊かにする出来事や文化をつくっていきたいとしてい
る。
現代表取締役社長の次原悦子氏は、同社創業者の一人(1997 年より現職)。現在も発行済株式数の 50%
を保有している。ちなみに、大株主の第 2 位には元プロサッカー選手の中田英寿氏が名を連ねる。
表 1:沿革
東京都中野区中野に、企業 PR をサポートする PR 代行会社として設立(後、本社は
1995 年に新宿区愛住に、2005 年に渋谷区千駄ヶ谷に移転)。
トライアスロン選手・宮塚英也氏とマネジメント契約を締結。マネジメント事業を開
1991 年 7 月
始。
日本プロサッカーリーグ発足に合わせ、プロサッカー選手に対するマネジメント業務
1993 年 5 月
を開始。サッカー選手・前園真聖氏とマネジメント契約。
1985 年 7 月
1998 年 1 月 サッカー選手・中田英寿氏とマネジメント契約。
1998 年 5 月 中田英寿氏オフィシャルサイト nakata.net を開設。
1998 年 7 月 マネジメント部(現マネジメント本部)を設置。
2000 年 7 月 エンタテインメント部(現企画開発本部)を設置し、コンテンツ開発事業を開始。
2003 年 6 月 日本初のプロ競泳選手として北島康介氏とマネジメント契約。
株式会社ワイズ・インテグレーションを完全子会社化し、セールス・プロモーション
事業を開始。
大阪証券取引所ニッポン・ニュー・マーケット・ヘラクレス(現 大阪証券取引所
2008 年 9 月
JASDAQ(グロース))に株式を上場。
2006 年 7 月
2009 年 7 月 本社を現所在地に移転。
出所:会社資料、アドバンスト・リサーチ・ジャパン
2
事 業 概 要
サニーサイドアップの事業構造は、PR、マネジメント、コンテンツ開発、SP(セールス・プロモーシ
ョン)の 4 本柱から成る。コンテンツ開発を除き、いずれもクライアントから広告、ブランディング、
プロモーションなどの依頼を受け、その報酬を受け取るビジネスモデル。PR は企業、商品、イベント
などの広告を、マネジメントは主にスポーツアスリートのブランディングを、それぞれ行っている。
また、2006 年より参入した SP では、デザインやノベルティなどにより、商品個々の消費者への直接
訴求を展開している。唯一、コンテンツ開発はオリジナルの企画開発であり、自社でリスクを負う形
態。創造型、提案型ビジネスへの布石としている。2010 年 6 月期のセグメント別売上、利益構成は下
表の通りである。
表 2:2010 年 6 月期セグメント別売上高と利益構成
( 百万円)
売上高
構成比
営業利益 営業利益率
1,
174
19%
216
18%
PR
1, 134
19%
42
4%
マネジ メント
1, 364
23%
26
2%
コンテ ンツ開発
2, 467
41%
8
0%
SP
-107
-503
消去
6, 031
1
-210
-3%
全社
出所:会社資料
なお、同社は 2011 年 6 月期から開示セグメントを変更しており、旧セグメントとは連続性が失われて
いる。下表は、新セグメントによる 2011 年 6 月期中間決算実績と、それぞれが旧セグメントのどれに
相当するかを示したものである。ただし、新旧セグメントの対比はあくまで大まかな分類であり、厳
密には正確でないことに留意されたい。
表 3:2011 年 6 月期中間期セグメント別売上高と利益構成、および旧セグメント対比
( 百万円)
売上高
構成比
営業利益 営業利益率 旧セグメント
815
19%
165
20% P R、 コンテ ンツ開発(一部)
コミ ュ ニケーション
515
12%
73
14% マ ネジ メント
スポーツ
192
4%
15
8% マ ネジ メント(一部)、 コンテ ンツ開発( 一部)
開発
SP / MD
2, 506
57%
217
9% SP
bills
383
9%
19
5% コンテ ンツ開発(一部)
28
1%
-15
その他
-42
-210
調整
4, 396
100%
264
6%
全社
出所:会社資料、アドバンスト・リサーチ・ジャパン
3
事 業 概 要
¾
PR 事業
創業来、同社の根幹をなす事業。売上は全社の 20%程度ながら、利益面では最大の稼ぎ頭の一つ。利
益率も昨年度実績で 18%と圧倒的に高い。スポーツマネジメントの印象が強い同社ながら、実態はや
はり PR 事業の会社であることがよくわかる。
同社の PR 事業は一般的な広告 PR 事業とかなり様相を異にする。通常は、広告コンテンツを TV コマ
ーシャルなどに乗せて消費者にアピールする方法が採られるが、同社の場合は、メディアが自ら報道
したくなるようなコンテンツを作成し、「ニュース」としてアピールする手法を採る。TV コマーシャ
ルは繰り返し放送されることで消費者の意識に訴えるが、同社のアプローチはニュースとして認識さ
せることを目指している。ニュースとして捉えられることのメリットは、①報道というフィルタを通
すことで、広告主体からの意図的な直接のメッセージとは受け止められず、より客観点で信頼性に足
る情報として認識されやすい、②その結果、イメージなどを構築しやすくなり、ブランディングにも
効力を発揮する、などである。
一方、デメリットとしては、①報道されるかどうかの決定権は持てない、②報道されなければ効果が
限定的となる、など。そのため、如何に「ニュースを作ることができるか」が重要となる。ただし、
同社は 85 年の創業以来、この手法のノウハウは蓄積されており、その実績では他社の追随を許さない。
同社が PR を手掛けることで「ニュース性があるかもしれない」といった期待が実際にニュースにさせ、
それがさらに注目を集めるといった好循環もある。これらがデメリットを抑制させる構造にある。
表 4:「ニュースを作る」主な PR 実績
1993 年
プロ野球球団日本ハム 観客動員増加企画「キッスでドームが入場無料」
1997 年
ショートショート実行委員会 「ショートショートフィルムフェスティバル」
2001 年
ユニリーバジャパン 「ユニリーバ」
2003 年
東ハト プロサッカー選手中田英寿氏を執行役員 CBO(チーフブランディングオフィサー)に起用
2004 年
東ハト 「暴君ハバネロ」
2004 年
グランドハイアット東京 「グランドハイアット東京」
2005 年
キッズシティジャパン 「キッザニア東京」
2006 年
三菱地所 「丸の内朝大学」
2007 年
ぺルノ・リカール・ジャパン 「ペリエ ジュネ」
2007 年
日本郵政 「カーボンオフセット年賀」
2009 年
日本コカコーラ
「コカ・コーラゼロ」
出所:会社資料、報道資料などよりアドバンストリサーチ作成
4
事 業 概 要
現在、契約しているクライアント(広告主)はおよそ 100 社。そのうち、PR を一定期間フルにサポート
するリテナー契約がおよそ 20%、プロジェクト毎に PR を行うスポット契約がおよそ 80%である。通
常、リテナー契約は業績を安定させる一方、採算面ではスポット契約に見劣りする傾向が強い。そう
いった観点すれば、同社の PR 事業は高採算構造にあるものの、安定性に欠けるといった見立てができ
よう。ただし、広告主は、経費削減圧力が増大する中、メリハリがあり、効果の捕捉しやすいスポッ
トに契約の主体をシフトさせつつあるのも事実。実際、リテナー契約といってよい内容でもスポット
として契約するケースは明らかに増加基調にあり、同社のスポット契約にもリテナー的色彩の強いも
のが多いと推察される。スポット契約のウェイトの高さは見掛けほどリスクを抱えたものではないと
思われる。
グラフ 1:PR 事業セグメントの業績推移(四半期推移)
百万円
500
売上高
450
営業利益
営業利益率(右軸)
30%
25%
400
350
20%
300
250
15%
200
10%
150
100
5%
50
0
0%
08/1‐3
08/7‐9
09/1‐3
09/7‐9
10/1‐3
10/7‐9
注:セグメント変更に拠り、2010 年 7-9 月期以降はコミュニケーション事業(従来セグメントに一部コンテンツ開発を
含む)。したがって、それ以前と厳密な連続性はない。
出所:会社資料
5
事 業 概 要
¾
マネジメント事業
スポーツアスリートのマネジメントなど、同社の顔とも言える事業分野。ただし、全社売上に占める
割合は 15%程度であり、利益面での寄与も PR 事業、SP 事業の後塵を拝する。PR 事業で培ったブラ
ンディングのノウハウをアスリートという「人」に適用。単なるマネジメントに留まらず、ブランデ
ィングまで手掛けることで、この分野における位置付けを確固たるものにした。従来もスポーツ選手
が芸能プロダクションに所属する例はあるが、ブランディングまで昇華できている例はほとんど見ら
れない。当然ながら、
「人」のブランド価値を向上させることで、PR 事業とのシナジー(企業広告に抜
擢することによる企業ブランドのさらなる改善など)も期待できるようになる。
きっかけは、1991 年のトライアスロン選手宮塚英也氏との契約。スポーツセグメントにおいては、現
在 17 人のアスリートと契約を結んでおり、5 人 1 チームとアライアンスを結んでいる。元プロサッカ
ー選手中田英寿氏のマネジメントを担当していることはあまりにも有名。フィギアスケート選手村主
章枝氏は、同社のスポーツマーケッティング事業部社員でもある。また、2000 年以降はアスリートに
留まらず、様々な分野におけるスペシャリストに対してもマネジメントを開始(開発セグメントにて売
上計上)。現在契約下にあるスペシャリストは 9 人で、棋士、ネイルアーチスト、シンガー、美食アド
バイザー、サウンドデザイナーなど多種多彩な分野でのトップランナーが連なる。
マネジメントの具体的業務は、契約関連のエージェント(代理人)選定契約業務に加え、肖像権管理、メ
ディア露出(取材などにおけるメディアトレーニング、CF/TV 出演、出版など)のコーディネイト、な
ど。ただし、契約相手であるアスリートやスペシャリストからの直接的なマネジメント収入はわずか
で、CF/TV/出版物への出演料や肖像権使用料が発生した場合に、そこからマネジメント料を受け取る
というビジネス形態となっている。換言すれば、それだけの商品価値を持つであろう「ダイヤの原石」
を発掘してマネジメントすることが重要となる。そして当然、そのアスリート、スペシャリストのブ
ランド力をフルに活かして、前段の PR 事業を強化することもできる。PR 事業とマネジメント事業は
別のビジネスながら、相互補完的な位置付けにあるとも言えよう。
ただし、世界的に活躍できるアスリートやスペシャリストの層が日本に厚くはないこと、またそのブ
ランド力を認知する市場が国内に限定されること、などから、同社はアスリート、スペシャリストか
らの受託が中心であるマネジメント事業の成長余力を懸念。実際に、同事業の収益は他部門に比べて
伸び悩みの傾向となっている。同社はさらなる成長を求め、ブランド力を活かしたイベントなどを契
約外のアスリート、スペシャリストにも能動的に提案する動きの模索を始めている。
6
事 業 概 要
グラフ 2:マネジメント事業セグメントの業績推移(四半期推移)
百万円
450
売上高
400
営業利益
営業利益率(右軸)
20%
15%
350
300
10%
250
5%
200
150
0%
100
‐5%
50
‐10%
0
‐50
‐15%
08/1‐3
08/7‐9
09/1‐3
09/7‐9
10/1‐3
10/7‐9
注:セグメント変更に拠り、2010 年 7-9 月期以降はスポーツ事業と開発事業(従来セグメントに一部コンテンツ開発
を含む)の合計。したがって、それ以前と厳密な連続性はない。
出所:会社資料
¾
コンテンツ開発事業
PR 事業、マネジメント事業がクライアントからの受託型ビジネスであるのに対し、この事業ではより
能動的、創造的に「ニュースをつくり」出すことを目指す。事実上の最後発事業であるために、全社
売上に占める割合は 15%程度あるものの、利益率は他部門のそれを大きく下回り(2011 年 6 月期中間
決算時点で推定 4%程度)、利益面での貢献はまだ小さいものに留まっている。
コンテンツ開発の業務は、注目を集めるようなオリジナルの企画、イベントなどを展開し、そのコン
テンツそのものから収益を生み出すことを指向するというもの。具体的には、ワールドカップイヤー
にサッカーファンの拡大を目指したカフェの企画、運営(中田英寿氏の呼び掛けによる nakata.net
café)、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟有償利用プログラム、ハードル選手為末大氏を
擁し、東京丸の内のオフィス街で開催された「東京ストリート陸上」(2007 年)、プロ競泳選手北島康
介氏を「1 日体育教師」として、全国の小学校を訪問する「フロッグタウンミーティング」(2004 年~)、
といった活動がある。また、貧困撲滅キャンペーンとなったホワイトバンドプロジェクト(2005-2006
年)のプロモーションサポートなどもある。総じて、創造型ビジネス育成のための起点といった位置付
けにあるといえよう。
7
事 業 概 要
現在、その中で最も成功しているのが「bills」事業。コンテンツ開発事業における利益のほとんどは
この事業が稼ぎ出しているものと推定される(2011 年 6 月期決算よりセグメントとして独立)。具体的
には、
「世界一の朝食を食べられる店」としてオーストラリアで人気のレストラン「bills」の海外初店
舗を鎌倉にオープンさせたもので(2008 年)、レストラン bills の企画、運営、PR を展開。2010 年には
横浜に 2 号店を、2011 年には東京お台場に 3 号店をオープンする予定にある。また、レシピ本の出版
といった相乗効果もあり、損益的にもトレンドを創造するといった観点からも、コンテンツ開発分野
を代表する事業となっている。
グラフ 3:コンテンツ開発事業の売上内訳(2011 年 6 月期中間期実績)
スペシャリ
ストマネジメ
ント(マネジ
メント事業)
bills
その他コ
ンテンツ
開発
注:開発事業と bills 事業の合算。ただし、開発事業に含まれる一部マネジメント事業の売上は白で示している。
出所:会社資料よりアドバンストリサーチジャパン推定
8
事 業 概 要
¾
SP 事業
2006 年に完全子会社としたワイズインテグレーションが手掛け、同社で最大の売上規模を誇る事業。
末端消費者に向けての購買誘引や接触拡大の現場プロモーションが中心で、目を引く広告デザインの
作成、ノベルティなどのセールスグッズ(販促製品)生産、消費者キャンペーン事務、効果測定、などが
具体的な業務となる。前段の「ニュースを作る」PR 事業がよりマスを対象にしていることと比べ、そ
の位置付けは異なる。派手ではないが、その分むしろ手堅い事業分野であると言えよう。ただし、PR
から SP までを一貫に手掛けることで、広告主に対してはワンストップ・サービスの提供が可能となる
うえ、同社の事業ポートフォリオもバランスを取ることができる。特に、膨大な量の情報が行き交う
一方、消費者の価値観や嗜好がより多様化する中において、マスを対象にすることは着実に困難さを
増してくる公算が大きい。そういった中でも収益を安定させる事業構造の確保というのは、中期的な
同社の課題でもある。SP 事業はその課題への一つの回答を担うものと考えられる。
特徴的なのは利益率。売上規模が大きい分、絶対額における損益の貢献度は大きいが、営業利益率は
全事業分野の中で最も低い。PR やマネジメントが大掛かりな仕掛けで付加価値を高めるのに対し、SP
では小規模かつ手間のかかる現場プロモーションが主体となるのがその主たる要因である。そのため、
2011 年にはノベルティ(広告用記念品)の製造拠点として TCN Technology(香港)を子会社化。ノベルテ
ィの生産機能を自社内に取り込むことで利益率の改善を急いでいる。TCN の生産技術は既に定評を得
ており、日本の玩具メーカーの OEM(相手先ブランドによる製造)でも実績がある。PR 会社にとって
製造拠点を抱え込むことはリスクでもあるが、OEM により一定の稼働率は確保可能との判断にあると
推察される。延いては、今後の成長が目される中国市場における SP 事業展開の橋頭保としても機能す
る可能性があろう。
なお、この事業も基本的にはクライアントからの受託となる。ただし、これまでは大手広告代理店(東
急エージェンシーなど)の下請け的なビジネスが主体であったものの、サニーサイドアップによる買収
後は PR 事業からの派生的ビジネスが増加。徐々にではあるが、そのシナジー効果が発現しつつある。
ちなみに、2009 年 6 月期には SP 事業売上の 70%超が大手代理店からの委託であったと推定されるの
に対し、2010 年 6 月期は 30%程度にまでその割合が低下している。
9
事 業 概 要
グラフ 4:SP 事業セグメントの業績推移(四半期推移)
百万円
1,800
12%
売上高
1,600
営業利益
営業利益率(右軸)
1,400
10%
8%
1,200
6%
1,000
4%
800
2%
600
0%
400
200
‐2%
0
‐4%
‐200
‐6%
08/1‐3
08/7‐9
09/1‐3
09/7‐9
10/1‐3
出所:会社資料
10
10/7‐9
経営力についての分析
¾
時代を見る目を持つ経営
サニーサイドアップの特色は、
「メディアに仕掛け、ニュースにされることで PR する」という手法と、
スポーツアスリートのブランド力を高めるマネジメント、といった斬新なアプローチにある。数多の
PR 会社やマネジメント会社はあるが、こういった手法を手掛けた(あるいは成功した)例は創業者の一
人である次原代表取締役社長の発想力、時代を見る目、実行力がその背景にあることは間違いない。
こういった手法で先鞭をつけたことで、今やサニーサイドアップの手法そのものがある意味でブラン
ド化されるに至っている。これが後発企業の追随を許さず(ブランド化を目指す広告主が二番煎じの誹
りをうけかねない後発企業に依頼する必然性はそもそも低い)、他社と一線を画す立ち位置を確固たる
ものにしている。
実際、90 年代以降、消費者は企業などからの一方的なメッセージを盲目的には受け止めなくなってき
ていた。銀行神話や不動産神話が崩れ、年金ですら確実でなくなった時代においては、直接的なメッ
セージよりも客観的な第三者による評価の方がより説得力を増すケースが増加し始めたのである。
「コ
ロンブスの卵」ではあったものの、報道をフィルターに仕立てた同社の PR 手法はそういった点で極め
てユニークであり、時代の先進性を伴うものであった。
アスリートのマネジメントも同様である。日本のプロ野球選手がメジャーリーグを目指し始め、サッ
カーではワールドカップへの挑戦が始まるなど、90 年代は急激に「日本独自の箱庭規格」から「世界
で通用する規格」へと評価の尺度が変化していく時代に重なる。日本全体が停滞する中、日本での成
功に満足せずに世界規格に挑戦するアスリートの姿は、
「商品」としても「ブランド」としても、魅力
あるものであった。同社のマネジメントも、もちろんその秀でた手腕は当然ながら、そういった時代
の流れを捉えたものであったと言ってよい。
¾
ビジネスモデルの転換を模索
さらに、経営陣は同社ビジネスモデルの転換を模索し始めている。第一には、ある程度のリスクを自
社で負うコンテンツ開発事業であり、創造型、提案型ビジネスを目指すというもの。インターネット
などで情報が氾濫する一方、消費者の嗜好が極めて多様化する中において、ニュースというフィルタ
ー機能やマスメディアによる情報伝播力の有効性が変わっていく可能性がある。その時のための布石
として、自ら企画、発信していく手段の確立を加速させる方針である。第二には、SP 事業の拡充によ
り、ビジネスポートフォリオの構築を急いでいること。ワンストップサービスの拡充にも繋がり、大
手の下請け的ビジネスは早くも明らかに低下してきている。香港企業の買収により、中国市場へリー
チを伸ばす拠点も確保した。まだ具体的な転換は手探りながら、本業が順調な現段階で早くもその準
備を始めた姿勢は注目できよう。
11
経営力についての分析
¾
相乗効果の期待できる事業展開
同社のビジネスのもう一つの特色として、各事業部門間での相乗効果が大きい、ということも重要で
ある。
「人や商品、企業」のブランド化に成功すれば、今後はそれら自身が強力なコンテンツとなって
PR に貢献ができるうえ、またその過程において、また別の「人や商品、企業」のブランド化を促進さ
せることも可能となる。元プロサッカー選手・中田英寿氏の起用はその典型例であろう。一例をあげ
れば、彼自身のブランド化の大成功のみならず、氏というコンテンツを持つことが PR ビジネスの獲得
機会の増加、強化に発展。さらに、氏を前面に出しての開発事業(nakata.net.cafe など)にまでビジネ
スは広がってきている。また、そういったコンテンツに他の素材(人、商品、企業)をコラボレーション
(共演)させることで、それらのブランド化も加速させる、といった展開である。
通常、PR 会社とマネジメント会社は別個の存在であり、こういった相乗効果は生まれにくい。PR 会
社は広告のノウハウはふんだんにあるが、自前のコンテンツを有していないためであり、マネジメン
ト会社はオリジナルのコンテンツを持つものの、自力で PR 広告を打てるだけのノウハウがないためで
ある。同社がそれを可能にしているのは、①PR 会社としての成り立ちに加え、②「ニュースを通して
PR していく」という手法を確立し、③その手法がイメージ作り、ブランディングに非常に有効であっ
た、といった経緯を持つため。結果として、本来は別個のものである PR とマネジメントの両輪展開を
実現できている。
しかも、例えば人であれば、ブランドを構築する生き方や考え方、生活様式への評価が短期間で激変
するとは考え難い。そのため、ブランド化されたコンテンツは、比較的長期のビジネス展開が可能と
なる。対照的に、瞬間的な注目度では人気沸騰の「旬の芸能人」が優るのだろうが、一種のブームに
乗った効果は結局、短期集中型にならざるを得ない。もちろん、これらの戦略に優劣はないが、事業
間での相乗効果を期待するのであれば、長くビジネス展開できた方がより効果的なのは明らかであろ
う。
12
業
績
¾
リーマンショック以降は業績停滞局面に
サニーサイドアップの業績は、2008 年のリーマンショック前まで順調に拡大基調をたどってきた。ビ
ジネスの性質上、ワールドカップやオリンピックなどの大規模イベントがある期と端境期では事業環
境の変動が避けられないはずながら、ユニークなビジネスモデルを武器とした平均広告単価の上昇や
新規顧客の獲得などで吸収。2006 年の SP 事業進出(ワイズインテグレーションの買収)もあり、売上
は 2008 年 6 月期まで 5 期連続で増加している。2003 年 6 月期以来、5 年間で売上高は実に 3.6 倍に
も急成長となった。
その分、従業員数も急激に増加。売上が 3.6 倍になる間に、従業員数も 3.3 倍まで跳ね上がっている。
それでも期中平均従業員一人当たりの売上高を見ると、2007 年 6 月期には 5,600 万円までの上昇(その
前のボトムは 2005 年 6 月期の 4,300 万円)を達成。従業員の大幅増加にもかかわらず、一人当たり売
上高も大きく伸長しているということは、それだけ同社ビジネスモデルの付加価値が強固であること
の証左ともなっている。ただし、従業員増加に伴う固定費負担の増加は損益分岐点の上昇も招く。そ
のため、損益は売上拡大ピッチのわずかな変化で大きく変動する構造となりつつある。2005 年 6 月期
以降、利益変動の振れ幅が拡大しているのはそういったことが背景にある。ちなみに、過去最高業績
となったのは、売上 68 億円、経常利益 3 億円を計上した 2008 年 6 月期である。
グラフ 5:連結業績推移(四半期推移)
百万円(売上高)、千万円(経常利益)
7,000
売上高
6,000
経常利益
5,000
従業員数(右目盛り)
4,000
人
180
3,000
100
2,000
80
1,000
60
0
40
‐1,000
20
‐2,000
0
03/6
04/6
05/6
06/6
160
140
120
07/6
08/6
出所:会社資料
13
09/6
10/6
業
績
しかし、2008 年のリーマンショックにより、業績は一旦停滞を余儀なくされる。景気後退懸念を背景
に、企業からの広告宣伝費が大幅に削減されたことがその主因。同社のユニークなアプローチや強力
なコンテンツを持ってしても、またワールドカップ南アフリカ大会直前というタイミングを持ってし
ても、その逆風は吸収できなかった。売上はピーク比で 10%超も減少。経常損益に至っては、その直
前まで従業員の増加を図っていたこともあり、固定費負担増が重石となって 2010 年 6 月期に 2 億円の
赤字転落を強いられている。
ただし、セグメント別にはかなり明暗が分かれる。比較的付加価値が高く、独自色の強い PR、マネジ
メント、コンテンツ開発の各事業の業績は堅調を維持。売上はほぼリーマンショック前の水準を確保
し、bills レストランを開始したコンテンツ開発事業に至っては増収基調での推移となった。営業利益
を見ても、マネジメントやコンテンツ開発はさすがに単価下落圧力や経費増に抗しきれず減益となっ
たものの、同社の強みを活かした PR 事業は高い利益率を維持して連続増益を達成。底力を見せつけて
いる。一方、苦戦となったのは SP 事業。宣伝費圧縮の流れをまともに受け、売上は実に 30%程度も
減少。固定費負担をカバーしきれず、2010 年 6 月期はピーク比で 95%もの営業減益となった。
¾
2011 年 6 月期は大幅改善へ
2011 年 6 月期の業績は、ようやく停滞局面から脱し、大幅改善を実現する見通し。売上は、外食企業
からの新規大型受注案件をテコに SP 事業が躍進。同案件による追い風を受け、PR 事業もさらなる増
収を確保しよう。開発事業においても 2010 年 3 月にオープンした bills レストランの 2 号店(横浜)が
通期で貢献。全社売上は前年比 29%増の 78 億円に達し、過去最高売上を更新すると予想する。損益
的にも、SP 事業拡大を受けて黒字回復を想定。営業利益、経常利益ともに前年比約 4.5 億円改善の 2.5
億円と見込む。セグメント別には、SP 事業のみで 2.5 億円、PR 事業で 1 億円、マネジメント、コン
テンツ開発、その他で 1 億円の寄与となろう。
ただし、半期別にみると、上期の実績(売上 44 億円、営業利益 2.6 億円)に対し、下期は売上 34 億円、
営業利益は 0.1 億円の赤字と、減速を予想。買収した TCN Technology の業績が 2 カ月分程度決算に
反映されるものの、上期に集中した大型受注案件の一巡、東日本大震災後の景気鈍化などを想定した。
ただし、大震災後の動静は依然として混沌としており、現時点で合理的な予測を建てるのが難しい状
況にあることは理解されたい。ここではイベントの中止、広告宣伝単価のさらなる下落、といったリ
スクを想定し、上期比 0.5 億円程度の利益圧迫要因として予想に織り込んでいる。
14
業
績
¾
2012 年 6 月期は大幅改善へ
2012 年 6 月期は、売上 95 億円、営業利益、経常利益はともに 3.5 億円と予想。いずれも過去最高を
更新しよう。当期予想比では、売上で 22%、利益で 40%のそれぞれ増加となる見通し。増収増益を牽
引するのは、香港子会社 TCN Technology と bills。TCN Technology は業績が通期で決算にフル寄与
するうえ、bills は東京お台場にオープンするレストラン 3 号店が貢献しよう。さらに、期後半になれ
ば宣伝広告の抑制も緩和され、イベントなども再開してくると想定。電力ネックの継続など楽観でき
る状況にはまだないが、徐々に通常を取り戻す動きは鮮明となり、当期に損益圧迫要因として見込ん
だリスク分は消失すると考えた。なお、当期に改善の立役者となった新規受注案件は、2012 年 6 月期
も継続する見通し。ただし、その規模は半減するとの前提を置く。スポット契約形式とはいえ、継続
となると条件交渉はよりシビアになる公算が大きいうえ、やはり広告宣伝費抑制の流れは無視できな
いとの判断に基づく。総じて、2011 年 6 月期からの回復局面は、主力の PR 事業、看板のマネジメン
ト事業ではなく、近年に買収した SP 事業がその任を果たすだろうという点で非常に興味深い。
その翌年度となる 2013 年 6 月期も、あまりに不透明要因は多いものの、業績続伸となる可能性は高い。
2012 年 7 月から始まるこの年度は、ロンドンで開催されるオリンピックイヤーでもあるからである。
当然、その開催期間中、およびその前後はイベントや広告が多く企画されるとすれば、スポーツコン
テンツに強みを持つ同社がそのメリットを享受する公算は大きいと思われよう。また、東日本大震災
からの復旧・復興はより加速しているものと想定。広告宣伝予算もほぼ通常ベースかそれ以上に回復
してくると考える。2013 年 6 月期の業績は、不測の大きな出来事が起こらないという前提で、売上で
100 億円、営業利益、経常利益で 4.5 億円と予想。過去最高水準のさらなる更新を見込む。
グラフ 6:業績推移
百万円(売上高)、千万円(経常利益)
10,000
売上高
8,000
経常利益
6,000
4,000
2,000
0
‐2,000
03/6
04/6
05/6
06/6
07/6
08/6
出所:会社、予想は ARJ
15
09/6
10/6 11/6予 12/6予
サ ニ ー サイ ト ゙ [ 2 1 80 / J Q] 週 足
20 1 1 /0 4 / 15
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
200
0
2008/09/05 12/08
03/02 05/25 08/17 11/09
08/09/05 - 11/04/11 [137]
02/01
04/26
07/20
10/12
01/11
04/04
(出所)㈱QUICK
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2008/6
株 価 推 移
2009/6
2011/6 予
(アナリスト)
2010/6
株価(年間高値)
円
08 年 9 月上場
4,160
1,200
-
株価(年間安値)
円
08 年 9 月上場
1,020
700
-
月間平均出来高
百株
08 年 9 月上場
1,979
131
-
売
上
高
百万円
6,791
5,889
6,031
7,800
営
業
利
益
百万円
363
74
-210
250
経
常
利
益
百万円
300
66
-191
250
百万円
150
0
-418
150
業 績 推 移
当 期 純 利 益
E
P
S
円
228.68
0.16
-499.63
176.97
R
O
E
%
14.5
0.0
-31.0
11.8
流動資産合計
百万円
2,867
2,346
2,445
-
固定資産合計
百万円
964
1,138
1,280
-
資
百万円
3,831
3,484
3,726
-
産
合
計
貸借対照表
流動負債合計
百万円
2,208
1,653
2,273
-
主 要 項 目
固定負債合計
百万円
518
250
326
-
負
百万円
2,726
1,903
2,600
-
株主資本合計
百万円
1,105
1,575
1,125
-
純 資 産 合 計
百万円
1,105
1,580
1,125
-
営業活動による CF
百万円
-17
-55
-524
-
投資活動による CF
百万円
-25
-230
-202
-
財務活動による CF
百万円
128
135
468
-
現金及び現金同等
物の期末残高
百万円
656
509
251
-
キャッシュフ
ロー計算書
主 要 項 目
債
合
計
16
リスク分 析
サニーサイドアップの事業リスクとしては以下の 2 点があげられる。
¾
コンテンツに関わるリスク
同社の強みとして間違いなく指摘できるのは、ブランド化に成功したアスリートやスペシャリストと
いった強力なコンテンツを有していることである。単にブランディングの手腕が認知されるのみなら
ず、それらが PR など他事業に与える波及効果は非常に大きく、相乗効果の起点ともなっていることは
前述の通りである。しかし、このことは弱点とも捉えることができる。高齢化によるパワーダウンや
時代の流れの変化などにより、そのコンテンツ自身が持つ勢い(モメンタム)に陰りが出てくると、それ
らは逆の相乗効果となって、PR など他事業に影響を与えてしまいかねないためである。
現実問題として、如何に強力なコンテンツでも、その神通力はどこかで減衰してくることは避けられ
まい。それを回避するためには、ダイヤの原石を探し続け、また磨き続け、商品としてのコンテンツ
を途切れさせないようにしておく必要がある。しかし、自前でコンテンツを育成してブランド化させ
るには時間が相当かかるうえ、そもそもコンスタントにダイヤの原石が見つかるという保証もない。
同社が創造型、提案型へビジネスモデルの転換を模索しているのは、そのためでもある。自前のコン
テンツに拘らず、その時々で最も有効なコンテンツに対して創造的にかつ遊撃的にアプローチするこ
とが可能となれば、コンテンツ不足の懸念はかなり緩和できるために他ならないからである。
ただし、この手法はその時々で旬なタレントを広告に起用する他社のアプローチに一歩近づくことに
もなりかねない。同社の強みである独自のアプローチとそれへの高い評価がそう易々と希薄化すると
は考え難いが、「大きくなるに連れて、『普通』の会社になっていく」というリスクは着実に増すこと
となろう。当然、それは同時に同社自身の個性が失われていくことに繋がる。もちろん、そういった
アプローチにおいても、これまで通り、同社ならではの斬新な手法を以て他社とは一線を画す展開を
実現する可能性は十分ある。実際、メディアをうまく活用するノウハウについて、その実力はこれま
での実績が示す通りであろう。今後も独自色の強い PR を打ち出せるかどうかの手腕こそが、同社の経
営陣に対する今後の最大の注目点となる。
17
リスク分 析
¾
マニュアル化、属人化にかかわるリスク
同様に、トレンドに対する見極めもリスク要因となる。これまでは、時代の変化を的確に捉えた手法
で成長を実現してきたが、今後もそれを継続できるかどうかの保証はないためである。そもそも、時
代の変化などは多分に属人的な発想力に依存せざるを得ない。このことは以下の 2 点において、経営
上のリスクとなり得る。すなわち、第一に、あやふやな属人的感性に賭けなければならないというこ
と、第二に、それが成功すればするほど「(有能な属人を核とした)個人商店化」が進行し、企業規模
の拡大成長には阻害要因となってしまうということ、である。当然ながら、企業が大きくなっていく
ためには、誰が担当となってもきちんとビジネスが機能するようにある程度のマニュアル化や可視化
が不可欠となる。個人商店では、当人のキャパシティを越えては仕事が回らなくなってしまうからに
他ならない。
しかし、このリスクの解消は非常に難しい。マニュアル化や定量的なトレンド予測を進めれば、それ
こそ大手広告会社と同質化してしまい、同社の存在価値を疑われることになる。一方、属人的感性に
賭ける方法では、当人自身が知らぬ間に「時代遅れ」になってしまうというリスクがつきまとううえ、
企業の成長余力にも足枷を嵌める手法となる。現実的な解決策はマニュアル化と感性との間でうまく
バランスを取っていくこととなろうが、経営の舵取りとしては決して容易ではない。具体的には、感
性で勝負できる創業期は企業規模の拡大に向けてマニュアル化や定量的手法の導入を急がなければな
らないのに対し、ある程度企業規模が大きくなると企業文化が保守的になる中、活力維持のために今
度は一転して感性重視の姿勢を鼓舞しなければならない。その舵取りを間違えると、活気が失われて
しまったり、過度な事業リスクを抱えて暴走したり、企業が小さくまとまってしまったり、などとい
った結果を招くことになる。
現在、同社はちょうど創業期から事業拡大期にシフトしつつある局面に思われる。したがって、今後
は属人的な感性に加えて、マニュアル化や定量的手法を如何に導入できるかどうかが、更なる拡大に
向けての当面の試金石となろう。これらは、感性を起点にしたこれまでの成功体験とは相容れないも
のであろうが、個人商店化を避けるためには不可欠であると考える。もちろん、尖った感性を武器に
し、企業規模の拡大は追わないという経営も選択肢の一つである。しかし、SP 事業の買収など、徐々
に企業規模は大きくなってきていることもまた事実である。今後数年間の経営の舵取りは、同社の将
来の方向性を大きく決定づけるとの位置付けにある。
18
ディスクレーマー
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ません。
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成されたものであり、その作成費用は、当該企業が大証に支払った金額に大証からの助成金を加えたう
えで株式会社アドバンスト・リサーチ・ジャパン(以下「レポート作成会社」といいます。
)に支払われ
ています。
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誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま
せん)。
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