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報告書
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
パネルディスカッション
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
コーディネーター
NHK解説副委員長
山
登
司会:
これより東日本大震災消防団報告研修会のパネル
ディスカッションを開始いたします。
コーディネーターは、NHK 解説副委員長の山
登さんです。
それではこれから山崎さんに司会をお願い致しま
す。
山
NHK 解説副委員長(以下、
「山
」):
皆さんこんにちは。今ご紹介をいただきましたが、
パネルディスカッション
−
東日本大震災の教訓をこれからの防災対策にいかす
NHK で解説委員という仕事をしています山
と申
します。解説委員という肩書をついた人間が今回の
東日本大震災をきっかけに、たとえば原発の事故の
まず最初に、岩手 ・ 宮城、それから福島のそれぞ
解説とかで、たくさん出ていますが、私は、長いこ
れの県の消防団の皆さんに、昨日活動報告をしてい
と防災とか自然災害とか消防といった分野の担当を
らっしゃいますけれども、これからの防災にいった
しております。大きな地震があったり、火山が噴火
いどんな課題があって、どんな教訓を伝えていけば
したり、あるいは台風が来て洪水が起きたり、土砂
いいのかというところに絞ったかたちで、10 分くら
災害が起きたりというようなときには、それぞれの
いずつ話をしていただいて、それを元に皆さんで話
現場へ出かけて行って今日会場にいらっしゃるよう
し合いをしていきたいと思います。
な消防関係の皆さんや国の防災担当の皆さん、それ
から被災地の自治体の皆さんにですね、いろいろ教
えていただきながら災害の教訓を考えるという仕事
まず最初に、福島県の南相馬市消防団の副団長
長澤さんお願いいたします。
をしております。
−
昨日から会場で大変に厳しい現場の報告を聞かせ
長澤副団長(以下、
「長澤」):
ていただきましたけれども、今日は東日本大震災の
皆さんこんにちは。ご紹介をいただきました福島
教訓をこれからの防災にどう生かしていけばいいの
県南相馬市消防団副団長の長澤でございます。よろ
かというテーマで、5人のパネリストの皆さんと話
しくお願いいたします。鹿島区団長を兼務しており
を進めていきたいと思います。
ますが、昭和 45 年に旧鹿島市消防団に入団、部長、
副訓練指導員を経て平成2年より 16 年間分団長を
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2011
Conference Report
あります。無情だったのは、せっかく早く避難場所
に避難をしながら、想像を超える津波により犠牲に
なった人は、運命のいたずらによる過失としか思え
ません。本当に気の毒な思いであります。
また、消防団員は、警報が出れば巡回広報が基本
であります。今回は特に大変な地震だったわけであ
りまして、自ら必死の思いで活動をし尊い犠牲に
なってしまったと思います。次にどうすると良かっ
たかと思いますかということでありますが、1番目、
地震 ・ 津波に対する怖さ ・ 恐ろしさを認識 ・ 自覚し、
いち早く高台に逃げることだと思います。2点目、
津波解除が出るまでは、絶対に戻らないということ
だと思います。3点目、消防団員の広報活動は、津
波のときは危険性が大であり、防災無線等での広報
呼びかけで対応する方法が的確だと思います。それ
と、活動団員の総避難の早めの指示であったと思い
ます。避難をして難を免れた団員もいたことからも、
避難の徹底を何回もしておけばと悔やまれておりま
す。4点目、野球場に避難をした方が犠牲になりま
したが、高台に避難していればと思っております。
平坦地の中の方なので西の方に避難していたらと
思っております。車での避難時間がなかったのかも
と思っております。以上であります。
させていただきました。平成 18 年に副区団長、昨
年より副団長兼区団長を務めております。この間、
昭和 62 年より 20 年間ほど町 ・ 市議会議員を務めさ
山 :
はい、ありがとうございました。それでは続いて
気仙沼市消防団の村上さんお願いいたします。
せていただきました。現在は、福島県ソフトボール
協会の理事長を務め、スポーツをこよなく愛してお
村上分団長(以下、「村上」):
ります。それでは、まず活動の困難だった点につい
気仙沼市消防団分団長を務める村上でございま
て申していきます。
す。私は、昭和 52 年に入団いたしまして、平成 18
年に副分団長、21 年に分団長になりまして、まだ2、
なんといっても福島第一原子力発電所の津波事故
3年のそれしかやっておりませんので。仕事は造船
による制限であります。避難指示によりまして団員
場に、鉄鋼所をやっております。まだ、経験も浅く
も避難を余儀なくされ、人数が少なくなり捜索活動
て消防活動もあまりよくできないと思うんですけ
が限定されました。津波の危険性と合わせまして捜
ど、皆さんのお力添えをお借りして一生懸命やって
索活動がたびたび中断されたのであります。
おります。それでは、発表をいたします。
震災初日には夜間活動になり、さらに冠水と寒さ
によりまして救助が困難でありました。それと携帯
気仙沼市消防団の主な災害活動ですけれども、今
電話を含む通信網の不通は、連絡指示等で大変な状
回の震災活動では、火災防ぎょ ・ 避難誘導 ・ 救助活
況でありました。次に何が被害につながったかであ
動 ・ 集中捜索活動 ・ 遺体搬送活動 ・ 公共施設の清掃
りますが、やはり一番は津波に対する認識だったと
活動を実施いたしました。鹿折地区中心部で発生し
思います。今まで当地方は津波が来なかったことで、
た街区火災防ぎょ図の図面ですけれども、3月 11
来ない、大丈夫との判断で行動をしたため、あるい
日 15 時 56 分火災を確知し、出火場所は気仙沼市西
は大津波が来た後に、もう大丈夫との判断で戻って、
みなと町と中みなと町の市内で赤斜線の区域内で
さらには当日が寒い日であったために防寒対策で家
す。
に戻り二波・三波により流され犠牲になったわけで
先程東京消防庁の五十嵐副参事さんでしたか、同
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生してから、街中心部の瓦礫がくすぶり続け、鎮火
したのが3月 23 日の朝7時 48 分でした。13 日間燃
えた火災であります。焼損棟数は 295 棟、焼失面積
は約 10 万 m2 でした。
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その他、この鹿折地区で救助 ・ 遺体搬送活動を実
施しましたが、老人ホームの施設では2階建ての耐
火構造でありましたけれども、2階の部分やスロー
プなどが破壊されておりまして1階内部は壊滅状態
でありました。屋上には避難者の毛布や布団引き物
が点在している状態でありました。津波により孤立
して取り残された職員や入居者 50 名ほど東京消防
庁や広域消防・うちの分団、東京消防庁のハイパー
レスキュー隊などと連携しながら救助しました。進
入区域内から救助し、安全な地域への誘導と搬送を
行いました。一方では、残念ながら津波から逃げき
れなかった人のご遺体の搬送活動を行いました。こ
ういった搬送が消防団の活動になるか分かりません
が、いずれにしてもそういう状態を目の前にして私
たちは何とかしなければと思ったのは、やらなけれ
ばという気持ちの方が優先したのでやりました。遺
体は職員の手で2階のベッドや屋上に寝かせてあり
ましたけれども、手分けして団員で簡易担架を作成
いたしまして遺体搬送を行いました。目のやり場の
じような図面でございますけれども、初動時、広域
ないような状況だったのですけども、何としてもやら
消防隊と連携し消防団はBライン中継隊形をとった
なければ、という意気込みで頑張って活動をしました。
のですけれども、なかなか水利が確保できなくて劣
問題点と課題点ですけれども、こんなものを挙げ
勢状況でありました。火災は、広範囲に拡大してお
ました。防災行政無線の津波による使用不能での情
りまして広域消防では被災区域外の消防団に応援要
報不足。瓦礫・進入禁止区域における早期道路啓開
請をしまして、応援要請で駆けつけた消防団の各分
がなければ現場にたどり着けないような状況。大津
団は水利が十分ではないところを遠距離送水を余儀
波の水門門扉閉鎖活動については、その必要性と避
なくされ、図面のAラインは、ポンプ車や小型ポン
難の判断時機。被災している団員も長期災害活動を
プ6台での中継隊形を取り 1000m の遠距離操作を行
余儀なくされたのですが、精神的・肉体的ストレス
いました。活動は、街区全体に広がったのですが、
の対応の問題も考えなければと。避難指示に対して
南側からの進入は津波で浸水いたしましてなかなか
一部の住民が避難しようとせずにいたので、避難意
進入できませんので、火災防ぎょ活動は全て北側か
識の低下が見られました。団員が不足している中で
らの活動となりました。火災防ぎょ中、たびたび津
の長期活動における交代要員を欠くことについて、
波の襲来や津波警報に襲われまして、そのたびに消
これらの問題点と課題をとらえまして今後対策をど
火活動も中断しておりまして、延焼が拡大しました。
う取ったらよいのか。災害時においても消防団員は
夜間も燃料補給などで車両も交代しながら、一昼夜
地域住民の生命を守るために活動をいたしますが、
防ぎょ活動を続けましたが、瓦礫に阻まれなかなか
消防団の人数的な限界もあるし、時間的にも限界が
鎮圧することができない状況でした。翌日には、緊
あります。そのほか情報収集や災害活動においても、
急消防援助隊の東京消防庁と合同での活動を実施
体制の確立が必要だと思います。しかし、死者ゼロ
し、消防団は火災発生から3日間不眠不休で消火活
を目指すことが一番、そのためには住民の意識改革
動を行いました。出動車両は、ポンプ車 11 台・小
もしなければと思っております。防災意識と知識の
型ポンプ6台 出動人員は延べ 271 名で行いました。
飛躍につとめ、自助共助の精神を確立しなければな
鹿折地区のこの火災は、3月 11 日 15 時 56 分に発
らないと、こんなことも考えます。地域住民と消防
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Conference Report
て他の分団に確認をしたところ、使用した水利は防
火水槽であったようです。消火栓については、使用
不能だったようです。また、消火活動により減水し
た防火水槽への補水は、沢水を土嚢によってせき止
めて活用したようです。私たち 10 分団は幸い部署
した防火水槽の水で鎮圧することができましたが、
防火水槽の底を確認しながらの放水は本当に神経を
使いました。地震に強い防火水槽でも長時間の放水
となれば、補水体制が課題になるかと思われます。
2点目は、安否不明者名簿作成の大切さについて
です。安否不明者の捜索を行うにあたって行政区ご
とに名簿を作成いたしました。名簿の作成には団員
を居住していた行政区の担当に割り当て、被災時の
各家庭の家族構成まで把握させました。自衛隊と連
携して実施した倒壊家屋の捜索では、あらかじめ家
族から聞いていた家の間取りや不明者が日常使用し
ている部屋を重点的に捜索し効率よく発見すること
ができました。自衛隊と連携した捜索活動は、活動
回数を重ねるごとに信頼関係が深まり、毎朝捜索活
動の前にミーティングを行いました。倒壊家屋に重
機を入れる場合、不明者の家族の方と相談しながら
重機で除去し、ご遺体を傷つけることなく発見する
ことができました。また、建物の外でご遺体が発見
された場合、安否不明者名簿と照らし合わせて避難
団の命を守るために、防災機関が連携して講じなけ
所にいる身元関係者と思われる方を現場に案内し、
ればならないと、そんな風に思っております。以上
身元の確認を迅速に行いました。この行政区ごとの
です。
安否不明者名簿を作成したことが、身元不明者を殆
ど出さなかったよい結果になったと思います。
山
:
3点目は、活動団員の休息および活動終了時期に
はい、ありがとうございました。
ついてです。長期間にわたった捜索活動において団
では、岩手県山田町消防団の大石さん、お願いい
員の疲労の軽減を図るためローテーションを考えま
たします。
したが、避難所にいる住民の方々の捜索にかかる要
望が強く、団員を休ませることができませんでした。
大石分団長(以下、
「大石」)
:
雪と低温という過酷な環境での活動において、殆ど
山田町消防団第 10 分団分団長の大石です。消防
の団員が体調を崩したため1日休みを取ることにし
団には、昭和 55 年4月に入団しました。平成 17 年
ました。捜索活動が、1ヶ月以上続きご遺体の発見
4月から分団長を務めております。仕事は、カキと
も少なくなり団員の肉体的 ・ 精神的疲労も蓄積して
ホタテの養殖を営んでおりましたが、養殖棚も船も
きたことから、ひとつの区切りとして一斉捜索を実
全て津波で流されてしまいました。現在は、仮設住
施し捜索活動を終了いたしました。言葉は適切では
宅に入居し、支援でいただいた小型の船で漁業再開
ないと思いますが、一斉捜索というひとつの儀式を
に向けて準備をしております。それでは、昨日発表
行ったことにより、住民の方々には一定の理解が得
した活動報告の内容の中から、活動の困難性や問題
られたと感じております。捜索活動については、そ
点について、私が感じたことを6点ほど発言させて
の後も情報が入れば、その都度対応し、活動を実施
いただきます。
しました。団員の休息と活動終了時期というのは非
1点目は、災害時における防火水槽の重要性につ
いてです。津波襲来後、町内各地の津波浸水区域内
で火災が発生いたしました。後日、消火活動につい
常に難しい問題だと感じました。
4点目は、食糧および燃料の確保についてです。
津波被害により役場および消防署が被災し道路が寸
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パネルディスカッション
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断され、大沢地区が孤立しました。自衛隊の救援が
まれた方々です。この方々は、自分の所有する船を
大沢地区に入るまで、避難所の備蓄食料と近くの沢
確認するため海岸に降りたものと聞いております。
水で対応していましたが、食糧が不足してきたので
次に多かったのは、自宅にとどまって津波に巻き込
大沢地区コミュニティ会長が、自腹を切って山間部
まれた方々です。この方々は、家族や近所の方々が
の農家から米や野菜を仕入れてきてくれました。ま
避難を促しても、自分の意志で自宅にとどまったも
た、消防車両の燃料については、被災当初近くに給
のと聞いております。その次に多かったのは、車を
油所がなく、被害を免れた町内の給油所は大沢地区
運転中に津波に巻き込まれた方々です。特に国道を
から遠く1回の給油量が指定されていたので、長い
走行中に津波に巻き込まれた方は、大沢地区以外の
道のりを往復して少量の給油という効率の悪い給油
方が多かったようです。一番多かった津波襲来時海
となりました。苦肉の策として、津波で被災した団
岸付近にいて津波に巻き込まれた方々について考え
員の魚船や車両から燃料をかき集めて使用したとこ
てみると、私たちは海の恵みを受けながら漁業で生
ろエンジンが不調になりました。幸い大沢地区内の
活していました。これからも、そうしていかなけれ
整備工場が被災していなかったので、ただちに整備
ば生きていけません。津波注意報・警報が発表になっ
工場で修理してもらいました。自衛隊到着後は、食
たら、ただちに高台へ避難することは鉄則ですが、
糧および燃料の支援体制が確保されました。災害発
注意報レベルで高台避難なのか、現実問題として非
生から自衛隊の救援部隊が到着するまでのこの数日
常に難しいと思います。今までの例をみても津波注
間の食糧 ・ 燃料を、どのように備蓄し対応するかが
意報が長時間に及ぶと、仕事ができなくなるから閉
課題であるかと思います。
鎖した門扉をあけてくれと住民の方々の要望が強
5点目は、消防団の装備についてです。先程もお
話をしましたが、津波被害により役場および消防署
大きな潮位変化のない警報が続くと、警報に対する
が被災し道路が寸断され、大沢地区が孤立しました。
恐れも薄くなっていったことも事実です。その辺の
そこで避難所のふるさとセンターを大沢地区の災害
緊急度の伝達の方法が、大切になってくると思いま
対策の中核として、地区コミュニティのリーダーと
す。消防団の避難広報には限界があります。海岸付
消防団が一体となりひとつの自治組織として活動す
近にいる方に緊急度をどのように伝達するか、そこ
る状況となりました。もう1つの避難所大沢小学校
が避難広報活動の難しさであると思います。
から校長先生も参加し、毎日ふるさとセンターにお
いて朝と夕方に対策会議が開催されました。朝の会
山 :
議場において消防団はその日の活動計画を報告し、
はい、ありがとうございました。
夕方の会議ではご遺体の発見状況などの活動報告な
岩手 ・ 宮城 ・ それから福島の消防団の方に、被害
どを行いました。災害発生当初の消火活動や救助活
を減らすためにどんな考え方をしていけば良いのか
動はもとより、長期間に及んだ捜索活動においてト
ということを、現場の実感としてお話頂きました。
ランシーバーは対策本部のふるさとセンターと現場
私も災害直後に被災地何ヶ所か取材いたしまして、
をつなぐ通信手段として、有効に活用されました。
消防団の方が自分自身のご家族が犠牲になってい
被災地においては携帯電話も使用できなくなること
る方がいらっしゃる中、捜索活動をなさっている
から、現場活動の通信手段とすれば免許不要で誰で
姿を見て頭が下がる思いがしました。昨日、今日と
も取り扱いのできるトランシーバーが有効であると
お話しをうかがって津波の最前線で献身的に活動し
実感しました。
ておられたんだということがわかりました。消防庁
最後 6 点目は、避難誘導活動の課題についてです
が、今回の東日本大震災では津波により多数の犠牲
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の佐々木さん、皆さんの発表を聞いて、今どんなふ
うにお感じですか?
者が出てしまいました。残念ながら大沢地区におい
ても、多数の犠牲者が出てしまいました。大津波警
−
く、現場の団員は大変苦労をいたしました。また、
佐々木部長(以下、「佐々木」):
報が発表された後、住民の方々は各避難所 ・ 避難場
まずもって今回の東日本大震災におきまして献身
所に避難し、津波を免れました。その一方、津波に
的な活動を行っていただきました、消防関係の皆さ
巻き込まれた方々がいたことも事実です。捜索活動
まにこの場をお借りして敬意と感謝の気持ちを表し
においてご遺体を収容していくうえで、いくつかの
たいと思います。それから昨日、本日と被災された
行動パターンがあることを感じました。一番多かっ
地域の消防団の方々から実体験に基づいた貴重なお
たのは、津波襲来時、海岸付近にいて津波に巻き込
話をお聞かせいただきまして、非常に心詰まるよう
2011
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なお話もたくさんありまして、私ども防災に携わる
下での消防団活動の在り方、どこまでどういうよう
者といたしまして、この思いを今後の消防行政 ・ 防
にすべきなのか。先程の発表では、ともかくやらね
災行政にぜひ生かさなければと改めて意を固くした
ば、なんでもかんでもやるという、それは消防団の
ところです。また、この未曾有の震災における地域
スピリットかわかりませんけども、ひとつは今まで
での体験をさらに今後の対策に生かしていくべく、
やった危険な広報、車で地域広報活動をするという
いろんなご意見も頂いておりますので、こういった
ことがひとつの活動の在り方としてあったけれど
ものを完全に吸収しながら生かしていくということ
も、津波が切迫するようなところでの現場に行って
が、私どもの使命と改めて感じさせていただいたと
の広報活動をするというようなことではなくて、防
ころでございます。
災無線 ・ 別の形があるのではないかという危険な行
動をどう考えたらよいのか、ゲートを閉めるという
山
:
はい、室
こともそうですね、非常に危険だけどやらなければ
さん。室
さんはずっと皆さんの発表
ならない、でも、それは命と引き換えということが
を聞きながら、これから教訓として生かしていくポ
あるという危険な消防団活動というのは、どうとら
イントをちょっと整理してもらえますか?
えたらよいのかということがひとつあるのかと思い
ます。2つ目はやっぱり被災者なり住民のニーズが
室
教授(以下「室
」
)
:
あって、先程清掃活動もやったと、あるいは問題に
あまりたくさんあってそう簡単に整理できないん
なっているのはご遺体の搬送活動みたいなものから
ですけれども、いくつか、お三方なり佐々木さんの
始まって、ありとあらゆる活動をやっぱり消防の方
お話を聞いていて、このあたりがポイントかなとま
がやられて、今まで消防団というのは火事がおきて
とまってきましたので、それをご紹介させていただ
消すとか、火事場の警戒をするとか、ある程度限定
きたいと思っています。
的だったものから、ありとあらゆる救助とかから非
1番目はですね、こういう巨大災害時といいます
常に活動が広がっている。広がっているというのは
か、それと津波が来襲してくる非常に危険な状況の
ひとつ良い面があるのだと思うけど、そこまで消防
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団がやらなくてはならないのかという考えもあっ
問題を含めてその通信連絡の手段をどう考えたら良
て、消防団の活動をどう整理してどこで線を引くの
いのか、そこをどう改善したら良いのかと大きな装
か、線を引くという表現が良いのかどうかと思いま
備の問題。2つ目は、先程言いましたガソリンがな
すけれども、こういう大災害における消防団の活動
いということもそうだし食糧がないとか、団として
をどうするのかと。消防団の活動の3つ目のポイン
の備蓄というようなことをどう考えたら良いのか、
トはね、先程休息の時間をどう取るのかローテー
物資や資源というものをどう用意をしたらいいんだ
ションのシステムがほしいとの声がありましたけれ
ろうかというようなところも、ひとつ大きな課題に
ども、非常に過酷な状況で水も食糧も何もない中で、
なってくるのではないかと思います。これは団の装
寝ずにもう働き続けるという状況が生まれているの
備ではないかと思いますけど、関連していいますけ
ですけれども、このことに対してやはり消防団の健
ど、大石さんから防火水槽の重要性、火を消すとい
康管理とかのいろんな視点からそれはどうしたら良
うとても重要なことですね。気仙沼市の鹿折の話で
いのか、そこまで過酷な状況におく必要があるのか
は、非常に長距離放水をしておりますので、そうい
という感じもいたしますし、僕はローテーションの
う水利の確保みたいなことで改めて考えないといけ
システムはこれからしっかり考えないといけないの
ないのかなと思います。そういうこと含めて団の装
ではないか、そういうことを含めて、危険な環境で
備だとか装置だとか、物の在り方とかを、今回のよ
の消防団の過酷な活動の在り方をもう一度整理をす
うな大規模災害の中で考えていかなくてはならな
ることが必要ではないか、これは非常に大きな問題
い、ということ。3つ目ですが、津波という危険性
です。
をどう理解をするのか、それは消防団員だけではな
2番目はですね、それに関連して消防団の装備の
くて、むしろ住民の方の危機意識。消防団員が本当
問題、消防団の活動の中身との関係もあるんですけ
に必死になって説得しても逃げてもらえなかったと
ど、その中で一番、昨日今日と前面に出てきたのが、
ころであるということに関係して、津波の危険性を
通信連絡の手段、代表的なものがトランシーバーが
どういうふうに教え、伝えていくか。あるいは意識
役に立ったという話もあるのですけれども、無線で
啓発をより高めていくかということも、とても重要
も一方通行でしか通信ができないとか、あるいは津
な課題であったのかなと思います。
波に関していうと津波の非常に危険な状態が、末端
津波の危険性とその認識と、それのコミュニケー
の団員までにきちっと伝えきれていなかったという
ションのリスクの在り方みたいなものが、昔から言
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われてきたことだと思うのですけれども、改めて問
て来たんだと思うんですよ。だから住民たちも3日
われているのではないかなと感じた次第でありま
前に来たあのぐらいの地震でも来ない、そういう津
す。もうひとつ言うと、
たとえば自衛隊と一緒になっ
波に対する意識がちょっと薄れていったんじゃない
て遺体の捜索をやったとか、あるいは緊急消防援助
かなと思っているんですが、最初はそうでもなかっ
隊と消火活動を鹿折地区でやったとかいろんなとこ
た訳だけど、段々このごろ多くなってきているから。
ろで連携の話があって、自衛隊や警察や常備もあり
ますし緊急消防援助隊もいますし、市役所とかコ
山 :
ミュニティがある。組織間連携とはこういう場合、
去年のチリ地震の津波の時にも警報が出ました
どういうふうに行われたのか、あるいはこれからど
が、そんな大きな津波が来なかったとか。
うあるべきかということも、これから考えていかな
いといけないのかなと思います。
大石:
そのためだと思います。
情報の問題
山 :
村上さんいかがですかこのへんは。
山
:
はい、ありがとうございました。
村上:
気仙沼あたりでもそうなんですけど注意報で
大変多岐にわたっているのですけれども、いくつ
10cm か 20cm くらい、警報で 50cm 前後。1年位前
かのポイントに絞ってこれから皆さんと話していき
ですか、チリからの津波があったときは、あのとき
たいと思うのですが、まず1つは情報の問題かなと
は多分大津波警報だったと思ったんですが、あの時
いう気がします。この問題を話し合って、そのあと
でも1m50cm くらい、2m いかなかったのかくらい。
消防団の装備とか、あるいは備蓄の問題とかですね、
そういう状態の中でたとえば注意報、警報が出ても
消防団とか消防本部のように災害時に拠点になると
慣れてしまって逃げないというのが多分あると思い
ころをどういうところに構えて、どういうふうに普
ます。今度の津波でも大津波警報が出ても、どのく
段準備をしていたらいいのかというような話をし
らい来るのか自分たちの経験から判断して、私たち
て、最終的には今皆さんのお話の中にありましたよ
の地元にもあったんですけど、1階でお茶を飲んで
うに、消防団だけではなくて、今回消防団に犠牲に
いて「津波だ。逃げたら。
」って言っても2階に逃
なった人がたくさんいるのですが、その中に避難誘
げて終わり。まさか家まで持っていかれないと、そ
導中という方がたくさんいらっしゃいます。私たち
ういう観念があったんじゃないかなと。私も感じま
の防災意識をどう高めるのか、そしてこの津波の教
す。
訓をどうやって語り継いでいくのかというあたりま
で話が出来ればいいなと思います。
まず情報の問題ですが、大石さん、先程大石さん
山 :
長澤さんいかがですか。
の話の中にとても気になることがありまして、注意
報ぐらいでしたら逃げないよという話がありました
長澤:
よね。津波はみんな警報があったり注意報があった
私どもの地方は、津波が全く来ないっていう今ま
りしたら私たちも含めてとにかく高いところに逃げ
での思いがあるんですよね。先程3日前に来なかっ
てくれということをずっと言い続けてきましたが、
たという話がありましたが、あのときに少しでも来
これはどういうふうに考えればいいのですかね。今
てれば、津波が来るという判断ができたんじゃない
回は、岩手県の場合は当初津波警報3m と出ました。
かと思います。もう昔から相馬地方は津波が来ない
そうするとやっぱり注意報でないのでこれは逃げな
んだという判断の元に、ハザードマップなども作ら
くっちゃいけないという感じになったのでしょう
れているんでね、そういう状況の中で絶対安心だと
か?教えていただけないですか?
いう安心感があったんじゃないかと思います。実際
に河口で水が完全に引けた状態で、遠く山間部から
大石:
来た人が、これはすごい津波が来るということで逃
津波注意報と警報について、だんだんに慣れが出
げて助かったという人がいるんですね。やっぱり遠
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くの人の方が、地元の人以外の方がそういう判断を
的な避難指示の基準を各自治体で早く作ってくださ
しているという。むしろ地元の人が、特に漁港・海
いということを、かねてよりお願いしております。
岸の人たちはそういう状態にあると。むしろ津波を
今回、被災3県の方は比較的地震が来るということ
見に行くくらいの判断でいて、逃げ遅れたというの
が言われておりましたので、想定の規模は違いまし
がありますね。
たけれど、そういった意味では、かなり作っていた
だいていたというふうに思っています。ところが、
山 :
お話がありましたように、実際そのオオカミ少年的
長澤さんは、津波が全くなかったとおっしゃいま
になっていたといいますか、来る来るといってそう
したけど、今回は警報で3m と出ましたよね。3m
でもなかったということがありました。また、実際
の津波が来そうだと。それを聞いても、やっぱりそ
に警報・注意報を出すのは気象庁になるわけですけ
んなには来ないだろうという感じが強かったですか
れども、気象庁も最初の地震の規模を、モーメント
ね。
マグニチュードで9ということを認識してなかった
ということがあって、最初は低めに出ている。途中
長澤:
から上げていったのですが、最初の情報だけが流れ
地元住民はそうだと思いますね。それで逃げなかっ
て、上げていった情報が伝わらなかった。消防団の
たと。消防団がいくら広報かけても、逃げなかった
方も最初の情報のまま避難誘導にあたられていて、
というのが結果的には犠牲に繋がったということで。
後でもっと大きいのが来るという情報が受け取れ
ず、きちっとした避難が出来なくて殉職なされたと
山 :
いうふうなことも伺っております。こういった点な
大石さんのところは、三陸は堤防の高さが 10m く
ども含めて、国としてもどういう警報の出し方がい
らいあるのですか、山田町あたりで5m、もっとあ
いのかとか、改めて議論している段階です。具体的
りますね。
には、学識・有識者を集めて気象庁の方で勉強され
ていますけれども、高さをなまじ言わない方がいい、
大石:
言うと、それくらいだったら大丈夫と判断してしま
5m から6m ぐらい。
うこともあるので言わない方がいいという説と、そ
れでもやはりできる限り言うべきだと分かれており
山 :
まして、この辺が相当真剣といいますか熱いといい
そのくらいの堤防があると、3m と言われると大
ますか、そういった議論がなされるだろうと思って
丈夫かなって感じになるのでしょうか。
おります。
私どもはそういった議論を受け、改めて地方公共
大石:
団体として、避難勧告をどういうときに、どういう
今度の場合3m って言ったからじゃないんです
ふうに流していくのか、それを受けて住民の方々に
が、あのくらいの地震では、養殖施設が1m の津波
も、その避難勧告を受け止めてどう行動するのが適
がくれば完全に壊れるんですよ。だからみんなそれ
切なのか、こういった議論と言いますか啓発ですね、
を見に行く、岸壁の方に養殖棚を見に行く、船を見
こういったものを総合的に、今回の地震、震災を契
に行く、そんな感じでした。
機に見直していくということが必要ではないかなと
いうふうに思っております。
山 :
佐々木さん、国の防災対策は津波警報、津波注意
報が出れば、もう早く逃げてくれというふうに言っ
山 :
室
さんいかがですか。どうしたらいいですか。
ていました。なかなかこれは浸透していなかったと
−
いうことでしょうか。それとも、現実を踏まえた対
室 :
策になっていなかったというふうに考えた方がいい
大きくいうとその情報を受ける側の問題と情報を
のでしょうか。
出す側の問題とありますよね。ややもすると風化と
いうのか何度も何度も出すうちに、危険性を忘れて
122
佐々木:
しまう、あるいは軽視する傾向が受け手側の被災者、
まず、津波の警報なり注意報なりに対しての具体
住民の側にあるんだ、そこを何とかしようという議
2011
Conference Report
論が中心だったと思うのですね。それはそれである
たら良かったために、トランシーバーを買ってそれ
んだと思うのですけど、僕はやはり先程報告されま
から順次整備をしていったという感じです。
した「うちは来ない」とか「前は来たけどこうだっ
たと思う」だとか、そう思うのは人間の本性なので
山 :
そう変わらないと、思うんです。それを何度も何度
消防本部の消防ポンプ車ですね、消防職員のポン
も口だけで責め立てても、今はすぐ逃げようと思う
プ車は筒先とはどういうふうに連絡を取っているの
んですけれど、また何日かすると忘れてしまうよう
ですか?
なところがあるんですね。そのことに関して言いま
すとね、しっかり繰り返し危険性を伝えるとか、学
大石:
習をするということで、今度で言いますと釜石の、
あれは、トランシーバーを使っているんじゃない
群馬大の片田先生たちの取り組みが典型的なよう
ですか。
に、小学校できっちっと教えていればやっぱり子供
たちはちゃんと逃げた、ということもあるので、や
山 :
はり教育の仕方によってでしか気持ちを変えられな
消防本部はトランシーバーが常備されている。
いということはそのとおりなのですけど、だけど他
方、情報を出す方でもっと工夫をしないといけない。
大石:
結果論ですけれども、これはこの前のチリ津波と違
はい。そうなんですが、そういう常備のような本
うんだという解釈があれば、もっと違ったのではな
格的な設備を持てない、写真にあったような、あれ
いのかということもありますし、ただそれも難しい
ぐらい小さい方のトランシーバーを使いました。
ことかもわかりませんが、どういうふうに情報を出
せばできるだけ早く切迫した危険性を受け止めても
らえるのかということと、同時に出す側の、オオカ
ミ少年になるということは、空振りになるというこ
山 :
なるほど。そういうことですか。村上さんいかが
ですか?
とで、それでもいいから、どんどん出しなさいと言
うのだけれども、いつもいつもいい加減、空振りを
村上:
するようなことを繰り返すとオオカミ少年になるの
私のところもトランシーバーはあるのですけれど
で、科学技術の問題だと思いますが、精度を高める
も、数が少ないのか、持っている部隊もあるし。私
努力をとれと、しっかり意図をちゃんと伝えるとい
の所は後援会組織がありますので、後援会に買って
う出す側の努力というものも相当今回は問われてい
いただいて持っている班もあります。火事のときに
るのではないかと思います。
筒先と機械員が使うくらいで、数多くはないんです
よね。持っているのはポンプ車や積載車があるよう
山
:
なところで、普通の小型ポンプのようなところはな
はい、分かりました。情報の問題には、警報のよ
い。数的には多分少ないと思います。それは、持っ
うに周辺の人たち全員に伝える情報もありますけど
ている人同士の通信手段だから、それを今回のよう
も、今回のお話をうかがっておりますと、たとえば
な津波のようなときに活用できるか、それがどこま
最前線で活動をしている消防団員ひとりひとりに危
で活用できるかについては、ちょっと分からないと
険な情報がきちんと伝えることができるのか、それ
ころがありますね。
はどうしたらよいのかということが、もうひとつ大
きいのではないかと思います。先程大石さんの話の
山 :
中にトランシーバーが役立ったというお話がありま
たとえば、それぞれの団員に情報だけが伝わる受
したが、トランシーバーはどういういきさつで揃え
令機だけではだめですか?
ることになったのですか?
村上:
大石:
あれは、20 年ぐらい前、火災現場へ行った時、筒
先とポンプ車が連絡取れないし、そのときにトラン
ポンプ車には受令機はついていますが、受令機は
本部からの一方的な指令を受令するだけで、こっち
からは発信はできない。
シーバーの方がいいのではないかと考え、やってみ
123
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
パネルディスカッション
−
山 :
大石:
こっちからできないと…。
はい。
村上:
山 :
できないと一方的に、向こうから言ってきて、そ
なるほど。佐々木さんどうしたら良いですか?
れはどうなのって思っても問いかけができない。こ
ちらが、どういう状況なのかという説明ができない。
佐々木:
受けるだけでは、ちょっとうまくいかないかな。
そうですね。現在、消防団の操法大会で操法の練
習をたいへん力を入れてやられていますけれども、
山 :
基本的に消火の場面ですと隊で動くという形になっ
なるほど。長澤さん、たとえば、今回の津波災害で、
ております。今の情報通信の構築は、それを前提に
それぞれの人たちにトランシーバーがあったとした
こういう通信機能があればいいと、判断されている
ら何か変わったことがあったと思われますか?
ということだと思っております。
今回改めて当たり前といえば当たり前だったので
長澤:
すが、消防団の仕事として水門を閉める、あるいは
私どもは、各積載車部隊に全部消防団波による無
避難誘導をするということが明確にあるわけです
線がついております。これは応答もできます。です
ね。これを前提とした装備 ・ 資機材、そしてそれを
から、そういう意味では機動性は発揮できたと思い
ベースにフルに活用するための訓練といったもの
ますが、ただ、全部の地域が傍受できないんです。
が、今ひとつきちっと位置付けがされていなかった
一部不通になる場所があるので、やっぱりその場合
のではないかな、と若干個人的な考えになりますけ
は車に指示を伝えても、伝わるまでにどうしても時
れども、思いとしてあります。
間がかかってしまうという不便さがあります。です
からもっと高機能の無線があればいいなと思います。
たことがあるんだ、ということをもう少しきちっと
山 :
前提において、資機材の整備、訓練も取り組んでい
大石さん、消防団が、水門操作をしておられます
くことが、私としては大きな課題と感じております。
よね。岩手県では水門操作をしているところが多
その中で通信の在り方も、いろいろ工夫をしてい
かったと思うのですが、たとえば操作している人た
くのかなと。地域とか、使用場面で、どういうもの
ちに、津波が向こうから来ているぞというようなこ
を使うのがよいのか。先程トランシーバーとありま
とを伝えることはできたのですか?
したが、常備消防本部の無線を借りるとか、MCA
を使うとか、いろんなやり方があるんだということ。
大石:
それぞれの地域特性にふさわしい通信手段の効果的
10 分団では、まず8分で閉めるという訓練をして
な確保を、それぞれの自治体で市町村長さんに談判
いるんですよ。だから、その前に絶対に閉めろとい
をしていただくというようなことも積極的に議論を
う感じでやっているから、その時間までは、みんな大
して、構築していただけるといいのでは、と思って
丈夫だという思いで動いているから、情報を伝えなく
います。
ても大丈夫。閉めるのには十分な時間があります。
山 :
山 :
もし、その現場の人たちに今こういう状況だとい
うことを伝えようと思ったら伝えられたのですか?
−
大規模災害においては、消防団が果たす役割とい
うものが、避難誘導なり水門を閉めるなりそういっ
室
さん、今回津波が来るまで、30 分とか 40 分
かかりましたけれども、心配される東海地震 ・ 東南
海地震は本当に数分で来ることがあります。そうい
うところでも、もし、津波の水門を閉める仕事を消
大石:
防団がやっているとするとそれは相当危険ですよ
それはないです。
ね。そこに情報が届かないっていうのは相当厳しい
と思うのですが、いかがですか?
山 :
ない。
124
2011
Conference Report
室
:
ています。
まず今回の東日本大震災で問題になって、消防団
やはりそういう2∼3分では絶対に消防団員が
員に対する情報の連絡手段についていうと、今の議
行って閉めることは、僕は限りなく危険なので、そ
論の中で2つ課題があって、1つは双方向のコミュ
ういう状況の下で一番危険なところに行かなければ
ニケーションが出来ないと、一方的な情報のいわゆ
ならない、できればこれは遠隔操作、高台のような
る受令・指示だけではうまくいかない。双方向をう
ところで遠隔操作をするような形で操作を消防団が
まく達成をして、むしろ現場の状況もしっかりつか
やられてもいいと思うのですけれども、そういう意
めるような仕組みをどう作るかという課題だと思い
味でいいますと、団員の安全を前提にシステムを構
ますね。
築する。ただ、今の地震の揺れでは、すぐ5分後に
2つは、今までは、隊というかポンプ自動車の隊
来るものかどうかと分からないという意味では、切
にはなんらかの情報がいくけれども、さらにその今
迫感ある情報は、現地に伝えるための手段は必要だ
回の場合であると、さらに少人数の部隊になりチー
と思うのです。少しそういうことも含めて、やっぱ
ムで動く、水門を閉めていく、2人で閉めに行くと
りゲートを閉めに行こうとか、閉めなければならな
話がありましたけれども、そうすると、もう少し消
いとか、団員に適切な指示が送れ、危険な情報を伝
防ポンプ自動車隊で情報がつながるだけでなく、活
えられ、津波が来るのを伝えられる手段はやはり必
動をしている隊に、少人数のひとりひとりまでにと
要でないかと思います。
いうかは別として、もう少し細やかな情報がきちっ
と伝えられたり、コミュニケーションができるよう
な、さらに細かいレベルでの伝達システムをどう作
備蓄の問題
るとかいうような、それはどういう方法でやるかと
か、新しい技術を使うとか行政と相談するとか。
それに関連して津波の話で、和歌山県串本は南海
山
:
地震が起きると6分と言われているんですよ。揺れ
はい、分かりました。ありがとうございました。
ている間は3∼4分あって2∼3分で逃げて水門を
情報の問題について考えてきましたが、なかなか
閉めなければいけない。そういうことで本当に危険
難しいことがよく分かりました。2つ目の問題でい
なところは、私は、自動か遠隔操作しかないと思っ
ろんなところでお話を伺うとですね、不眠不休で働
125
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
いたとか、飲む水がなかったとか、食糧がなかった
という話を伺うのですが、村上さん、その活動して
いる時の、その食糧とか水とかそれから燃料も不足
山 :
大石さん、どうですか。食糧とか水、燃料のご苦
労とかはどんなだったのですか?
したと思うのですが、そういうものはどういうふう
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
パネルディスカッション
−
−
に確保しておられたのですか?
食糧の方は避難所のふるさとセンターに団員は寝
村上:
泊りしたもので、そこに避難したお母さん方がおに
細長い地形なんですね、3分団は。被災に遭った
ぎりを作ってくれたり、あとはコミュニティのリー
方は3分団の中の3部・4部が海岸で、1部・2部
ダーが食糧を買いに行ってくれました。それで団員
が山の方で、1部・2部の方は被災していないんで
は、たいていはそこにいるから、食べることはどう
すよ。被災していない所からお米をいただいたり、
にか良かったです。水は地下水だから大丈夫だった
水を貰ったり、副分団長とか部長の個人の家からお
のですが、一番問題だった燃料は、漁船や被災車両
にぎりを毎日 100 個とか、自治会の方から 100 個と
から持ってきたり、やはり被災したスタンドで入れ
か、活動中は食糧をいただいておりました。
たり、そういうことだったから塩水がちょっと入っ
燃料に関しては、今回はあまり使ってないので。
車については災害車両は 10 リッター、市の方で出
ていたりして、ワゴン車を壊してしまって、すぐ直
しに行ったという状態でした。
しますからという話がありましたので、燃料につい
ては 10 リッター入れてもらって。食糧の方は被災
山 :
外の団員の家から、自治会の方からいただきました。
なるほど。佐々木さん、食糧とか水とかの備蓄の
問題も消防団にとって、今まであまり検討されてこ
山 :
なかった気がするのですが。
長澤さん、地域防災計画等を見ますと、それぞれ
の自治体で住民の備蓄食料や備蓄の水については手
配されていますけれども、消防団の食糧とか水につ
いての備蓄はどうなっているのですか?
佐々木:
3日の備蓄は必要というような今までの常識とい
いますか、ある程度のコンセンサスがあったのです
が、今回はそれが根底から崩れているというふうに
長澤:
思っています。実は緊急消防援助隊も、応援に行く
私どもの市では、基本的には備蓄をしていないん
ときには全部自前で、当然地元に迷惑をかけずに行
ですよね。その理由は、今までの災害の中では、1
くということで出ていただいたのですけれども、途
日か2日あれば全国から物資が届いて来ている。
中で調達することができず燃料不足が発生しまし
て、大きな課題として残ったと思っています。そう
山 :
いった意味では、物資の拠点をどういうふうに効果
なるほど。
的に作っていくかということが大事だなと思ってお
ります。今の消防団の関係でも、消防分団ごとに作っ
長澤:
ていくのがいいのか、あるいは市として戦略的なポ
さらに賞味期限の問題とか、あるいは処分の対応、
イントに作ってやるのか。その際、住民の方々に届
倉庫の確保ですかね、そういう問題があって備蓄を
いてないのに消防団だけ受け取るわけにはいかない
やってなかったということです。ただ今回は原発問
とかですね、いろんな問題が出てくると思うのです。
題がありまして、物が入ってこなかったというのが
この辺や、全体をうまく調整をしながら、今までの
実態です。ただ、
水はですね、
食料もそうなんですが、
常識を超えた災害に何とか耐えられるような仕掛け
全国の多くの消防関係者あるいはボランティアの
といいますか、できるだけそれに対応できるような
方々の支援をいただいたので確保できました。特に
備蓄をやっていく必要があると思っています。
国会議員の OB の方などは大量な支援をいただいて、
126
大石:
あと1点、若干余談になるかもしれませんが、昔
本当にカレーなどは身に染みる思いで食べさせてい
に比べると企業の、いわゆる流通備蓄というものが
ただきましたけれども、全国のそういうありがたい
非常に少なくなっているのですね。システム管理が
支援があったということですね。それと燃料はまさ
厳格にできていて、無駄な在庫を置かない。かつて
に不足で大変だったです。
は少し余裕のある在庫があったので、地元である程
2011
Conference Report
度まわしていたのですけれども、極めてそれが薄く
山 :
なっているというのが今回実感いたしまして、こう
なるほど。あと村上さんのところで団員不足の話
いった点も含めて全体としての備蓄の問題を考えて
がありましたが、今回の消防団の現場で、最前線で
いかなければ、と思っております。
活動している姿は地元の人たちにとっても、大変頼
もしく映ったと思うのですが、今後消防団員になり
たいという若者が増えることになるのでしょうか?
消防団の問題
村上:
いや、どうなんでしょうねぇ。実際、私の分団で
山
:
は減ったままの状態になって横ばい状態なんですけ
はい、ありがとうございました。それからこれは
れども、この災害をきっかけに私としては増えるん
皆さんにお伺いするということではないのですが、
じゃないかなぁと、増えてほしい面もありますけど、
昨日今日と発表を聞いていて、会場にもいらっしゃ
増えるんじゃないかなぁとは思っているんですけ
いますが、女性消防団員が最近ずいぶん増えていま
ど、何しろ若い人がいないんですよねぇ。
す。それぞれの地区で女性消防団員がどんな活動を
みんな仙台とか東京とか仕事に行っているもの
したのかという報告がなかったのですが、長澤さん
で、気仙沼市で加工工場とかが被災して解雇になっ
のところはいかがだったですか?
たり、大きな工場でも、こっちの工場再建するまで
九州に何十名とかって行っているので、雇用の問題
長澤:
にしても若い人がいないから。入ってほしいのはや
私のところは女性団員が 16 名おります。震災の
まやまですけれども、なかなか入る人がいないん
ときも活動していただいたのですが、広報活動なり
じゃないかなと、そんなふうに思います。
炊き出し等ですね。被災して家を流された女性団員
もいますし、原発事故と合わせて、途中から避難し
山 :
てしまったために活動できなかったというのが実態
大石さんのところは団員不足は深刻じゃないと
です。
伺ったのですが、そういうことでよろしいですか?
127
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
大石:
分団は定員 30 名で、本部の方に3人行っている
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
パネルディスカッション
−
−
自衛隊が来たときには、もうおいしいご飯作って、
んです。今度1人活動に参加してくれて、すぐ入団
いろんなものがちゃんとあって、ゆっくりローテー
手続きをしたので、まだどうにか揃っています。
ションが出来るシステムでやって来るんですね。
ところが日本の場合、緊急消防援助隊も来るんで
山 :
すけど、もう寝るところもなく、とにかく食べるも
なるほど。
のも途中で買ってきますけど、自前では用意できな
いとかっていう形のね、そういう後方補てんをする
大石:
ようなシステムとか車両とかが、非常に弱いような
若い人たちは多いです。ただ、問題なのは、人数
感じがするんですね。では、それぞれのところで燃
は揃っていたのですが、住まう仮設住宅がバラバラ
料を揃えるのか、それぞれのところで炊飯器みたい
になってしまったので、それが今からちょっと心配
な食糧作るそういうもの揃えるのかって、それは大
です。
変ですけど、あるいはブロック別に消防団支援拠点
というものが整備されて、そこにいつも消防団のガ
山 :
ソリンが備蓄されているとか、食事を作るような機
室崎さん、先程の備蓄の問題、それから消防団員
械、自衛隊の機械もものすごくおいしいご飯出来る、
が少しずつ減っている問題、この辺についてどうい
自衛隊のやつはうらやましいぐらいに。それを消防
うふうにお感じなりますか?
もですね、あんな立派なものじゃないけれども、い
ざとなったらちゃんと食事が自前で作れる仕組み、
室 :
装備をちゃんと用意しておくというようなことと
そうですね、阪神淡路大震災の後でも消防士、消
か、そういうこと少し考えてみて、消防もいろんな
防職員になりたいとか、看護師さんになりたいとい
活動をしようと思ったら、十分それは周辺からサ
う若者がものすごく増えたんです。やっぱりこうい
ポートができるんだよという体制を考えていくって
う災害を見たときに何とかしたい、世の中の役に立
ことも必要だと思うんですね。
ちたいって気持ちは若者の中に大きく出てくるんで
これ3つ目なんですけど、こんな意識を持ってい
すね。そういう意味では、基本的に言うと僕は消防
る国民はいないと思うんですけど、先程も言いまし
団の成り手がまずは増えるような、だけれどもそう
たけど、消防団が食事していたら、消防団だけがお
いう善意っていうか若者の気持ちだけにすがってい
いしいもの食べてる、けしからんって人はいないと
たらいいのかって、そうではなくて消防団の置かれ
思うんです、僕は。消防団の方がね、すごく謙虚だ
ている、たとえば装備の問題とか環境の問題だとか
から自分たちは一番後でいいと思われて、それはそ
消防団そのものがもっと魅力的な存在に変わってい
のとおりだと思うんですけど、むしろ最優先で、消
かないと、なんとかしてやろうと思ってもそこに
防団とか警察がそういう人たちには食事もそういう
行って装備も無線機もなんにもなくて、車も動かせ
こともサポートしなくちゃいけない。でないと働い
るかどうか分からない消防団にはやっぱり少し魅力
てもらえないわけですから、そうしてみると社会的
を感じないように思うので、もう1歩で言うと消防
に消防団の活動環境を整備していく。これはだから
団の魅力みたいなものを、この際もっといろんな形
自治体なり国の仕事ではないかなって思うんですよ
で地域に密着したひとつの防災の部隊としてだけ
ね。消防団だけではどうにもならない世界なので、
ど、たとえば、今 I T 技術がすごく進んできている
少しそういうことも考えて消防団の環境を良くして
中で、消防団の中でいろんな無線だとか通信コミュ
いく、魅力をつけていけば若者が、こういう機会を
ニケーションをしっかりつくっていくようなひとつ
通じてどんどん入ってこようとしてくれるんではな
の場ができると、情報のその魅力というもので自分
いかなと、そういうふうに思います。
の持っている技量を消防団に行って生かせるって気
持ちになってくると思う。だから人を助けたいって
気持ちと自分がパソコンが強いというそういうもの
がうまく両立できれば、より魅力的になるんだろう
と思いますし。
そういうことで言うなら、装備では自衛隊がうら
128
やましいんですよ。
2011
Conference Report
大石:
地域の防災力の向上
津波注意報・警報が発表になったら、ただちに高
台に避難することは鉄則ですが、津波注意報レベル
で高台に避難なのか、現実問題として非常に難しい
山
:
と思います。津波襲来時沿岸付近にいて津波に巻き
はい、ありがとうございました。
込まれた方々について考えてみると、津波注意報・
もうひとつ大きなテーマとして、消防団を中心と
警報が発表になったからといって、ただちに生活の
して地域の防災力を、どうやって高めていくのか。
糧になる漁船を置いて高台に避難することは難しい
国の復興構想会議それから中央防災会議がこれから
と思います。注意報だから大丈夫、警報だから高台
は、減災の思想で防災対策をやっていこうと。今ま
に避難しよう。その辺の判断基準が難しいと思いま
での防災というものはどちらかというと、たとえば
す。
津波に関して言うと、きちんとした堤防を作って、
また、今回の津波注意報により感じたことは木造
それでもって津波を防ぎますということだったけれ
の建物はすべて壊れている中、鉄筋コンクリート造
ども、自然が相手ですから堤防を越えてくる津波が
りの建物は残ったことです。特に大沢漁協の建物は
いつあるか分からない。だとすると、そういう津波
鉄筋コンクリート造り3階建てで、防波堤より海側
に対しては防災意識を高めて早めに避難するという
にあり3階部分まで浸水しましたが、建物は壊れな
ことで、被害を減らしていこうという方向を打ち出
いで残っています。また、津波によって防波堤の外
していますけれども、津波に関してもそれから地震
に流された方が、漁協の3階部分につかまり、窓か
に関しても洪水に関しても、防災意識を高めるとい
ら中に入り助かりました。このように津波によって
うのは、なかなか難しいことだと思うのですが、現
流された方が、鉄筋コンクリート造りの建物の窓や
場で活動しておられて、防災意識を高めて地域の防災
中にはい上がり助かった事例は、町内でも多数あっ
力を高めるためにどうしていったらいいというふうに
たと聞いています。また、海岸付近にいた方が潮位
お感じになっているか。今度は大石さんからいきま
の変化を確認してから高台に避難するとなると、距
しょうか。
離もあり時間もかかり、海岸付近に鉄筋コンクリー
129
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
ト造りの4階以上の高い建物があれば、距離的にも
い時代になって、防災意識を全国的に高めていかな
時間的にも避難が可能ではないかと思っています。
くてはいけませんが、地域の防災を高めるためにど
うしたら良いとお考えですか?
山 :
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
すか。その津波も含めた地域の防災力を高めるため
に、どんなことが必要だと今お感じですか?
佐々木:
これはよく言われますけども、常備消防があって
消防団があって、更には自主防災組織とあって、地
震、風水害などについて言うと、特に地域住民の方々
村上:
の取り組み、あるいは消防団の取り組みというもの
そうですね、団員も含めて地域住民もそうですけ
を強化していくということは、非常に大きな課題で
ども、意識の改革をしっかりしないと駄目かなと。
あるということが指摘されております。かねてより
たとえば、今までの注意報、警報のときの津波の高
そういった観点から、私どももどういうことができ
さ、注意報のときはこれくらい、警報のときはこれ
るかということを考えてきているのですけれども、
くらいとか、こんなに大きな津波は来ないだろうと
なかなか有効な手段がないというのも正直なところ
いう概念は捨てて、今までもやってきましたけれど
です。
も訓練を何回もおこなって、自分たちはこういう注
ただ、実は昨日、新潟・福島で集中豪雨の関係が
意報でこのくらいだからとか簡単な判断をしない
ございまして、7年前と全く同じような形だったの
で、とにかく訓練どおりに、マニュアルどおりに避
です。7年前は避難を出すタイミングが遅れて、遅
難する、準備する、そんな感じを作った方がいいの
れたといいますかうまく出せなくて、多くの方々が
かなと、個人個人で判断しないで。注意報のときは
救助の対象になったりということがあったのです
ここらへんに集まる、警報のときはこの高台に集ま
が、その後、避難の計画やシステムを作り、マニュ
る、そんな訓練を重ねていったら、もう少し自分た
アルを作りまして、今回は比較的そういった意味で
ちの意識が変わっていくのかと思います。
は 7 年前と比べると、ずいぶんよく避難行動ができ
たということが言われております。
山 :
今回の震災を期に、津波についてもどういう形で
長澤さんいかがですか?
具体的に発令をして、どういうふうに逃げていただ
くのか、それを住民の方にどう受け止めていただく
パネルディスカッション
−
はい、ありがとうございました。村上さんどうで
−
長澤:
のかということをはっきりさせていくことが大事か
私の消防団は警報が出れば、当然、任務として広
と思っています。あるときテレビで見ていましたら、
報活動に出るわけですね。今回犠牲になった消防団
今までは警報が出ても逃げなかったのだけれど、こ
員についても、住民の生命、財産を守るという任務、
れからは 100 回逃げて 99 回空振りであったとして
それに向けて活動したと、結果的には尊い殉職に
も、1回あるかもしれないから逃げなければいかん
なってしまったということなのですね。やはりこう
なというコメントをしていた方があって、非常に印
いう津波のときに、消防団員が危険な場所で広報す
象的だったのですけど、その気持ちをいかに持続さ
るという状況を解消するためには高度な無線、行政
せるか、どうしても人間忘れっぽくなりますので、
無線が必要だろうと。あとは先程室
これをどういうふうに持続させていくかというのが
先生が、教育
のお話をされましたけれども、やはり地域の住民が
一堂に会してを訓練された講習会あるいは防災訓練
大きな課題かと思っております。
それからあと1つ、いろいろなケースを聞いてい
等の構築、これを継続してやって身につけさせて、
ると、たとえば避難場所であった公民館にみんな逃
それが一朝有事のときに役立てると習慣づけ、慣習
げてきたのですが、その公民館の責任者の方が、今
化だと思いますけどね。
回の地震ではここでも危ないと言って、さらに高い
ところまでみんな逃げましょうという判断をされて
130
山 :
みんな助かったということがありました。学校の方
はい、ありがとうございました。佐々木さん、日
での避難の話も出ていますけども、住民全員の防災
本は地震が活発な時期に入ったと言われる。それか
意識を上げていくのはもちろんですが、避難の指導
ら雨については、地球温暖化の影響か、昔は降らな
的役割を担う立場に立つ可能性のある方々に対し
かったような豪雨がもうどこで降ってもおかしくな
て、特に集中的に啓発していく、そういう意識を持っ
2011
Conference Report
ていただくということが効果的な進め方かとか、い
というのは、避難所に行ったとしても津波が本当に
ろいろ皆様方の意見や経験とかを参考にさせていた
来るかどうか分からないけれど、地域の防災リー
だきながら、より防災力を高めていくための取り組
ダー、消防団員がそこで津波とは何かとか、津波の
みを進めていきたいというふうに思っています。
勉強会を始めるとかですね。勉強会の後で、備蓄食
料で炊き出しをして食べて帰るとかっていうような
山
:
ことをセットにする、少なくとも勉強会というかそ
はい、ありがとうございました。今までの話を受
けて地域の防災力の向上のためには、室
先生どう
ですか?。
の災害の情報を、避難所で「今起きている地震はこ
ういう地震ですよ」と誰かがちゃんと説明をしてあ
げて、本当に津波が来たとしても、それはそれで良
い。何か単に逃げるだけでお終いではなくて本番か
室
:
訓練か分からないようなことをして、訓練と思えば
1つささやかな話からすると、建物の火災警報器・
いいので、そういう発想をちょっと変えてみるとい
煙感知器・熱感知器も、確率論的に 1000 回に1回
うことは必要。少なくとも、明日の試験はないです
くらいが本当なんですね。だから、この火災警報器
よとか、得する試みを提供してあげないと試験勉強
が鳴っても逃げない人がいっぱいいるんですが、で
ができなくなるので、そういうようなことやそれ以
も 1000 回に1回でも本当の火事のときに、軽視し
外にも個人の利益があると。そういう発想というの
て逃げ遅れるわけなんですね。そういうことに関し
は、これが本質じゃなくて本筋は地域の防災力って
て言うと、前の大学では、よく鳴るんです、設計が
いうと、地域の教育だと思うんですよね。
悪くて後から感知器の横にですね、暖房機つけたり
教育はですね、今までは、大昔は地域が教育の担
したもんですからね、冬になるとすぐビーと鳴るん
い手でした。安全とか防災とかの教育はおじいさん
です。鳴ると、うちの学生は全部一斉に外に出てグ
が「50 年前には、こんなことがあったよ」というこ
ラウンドの楠が立っているんで、そこまでみんなで
とをお孫さんに伝えて、あるいはその地域の人が「こ
競争するんです。一番最初に着いた者は、一番遅れ
こは前、水が出たときは、ここまで水が出たよ」と
てきた者からコーヒーおごってもらうルールがあり
いうようなことを、ずっと伝えていくような地域の
まして、その後喫茶店に行ってみんなでお茶を飲む
教育力みたいなものがすごく生きていて、場合に
んです。だからゼミをしていようと、授業中であろ
よっては、それがさらに進むと、お祭りとかいうよ
うと、みんなバーッと行ってですね、そこでゆっく
うな中に、たとえば、火祭りなんかはいろいろあり
りみんなで色々な話をするっていうルールがあっ
ますよね。京都で言うと鞍馬の火祭なんかそうなん
て、そうするとみんながベルが鳴るのを楽しみにし
ですけど、賽の神がいて、藁に火をつけてみて、子
ていて、
「先生、冬なのに鳴りませんね」
、なんてね。
供たちに火の訓練をさせて、そういういろいろな訓
中にはわざと鳴らすヤツが出てくる、煙草の煙使っ
練を通じながら教育をしていく仕組み。日常の生活
てとか。何を言っているかというと、要するにいち
の中で、地域力を高めるようなそういうものが、行
いち空振りだからけしからんて怒っていたらもう要
われていたように思うんですね。そういうようなこ
するに逃げる気にもならないし、逆に怒られている
とを、本来は地域が行うのだけれども、今は何とな
と怒られる方も絞り出すわけ、下手に怒られてまた
く学校がしてくれると、みんな思っているわけなん
怒られることになっていく。むしろ鳴って空振りで
です。学校の先生、学校も頑張らないといけないと
も、基本的にはいいんですよ。津波が来なかったっ
思うんですよね。学校は今、人権教育や環境教育や
て怒る必要ないですよ。
国際教育や、算数とか国語ができなかったら成績の
来なくて良かったって喜ばなければいけないんで
ベストテンが出るんだそうです、共通テストね。こ
しょうけれども、でも明日テストがあるとかね、病
の辺の小学校はレベルが低いとか、もう算数とか国
気がちとかね、あんな寒いところに避難したらどう
語とかを教えるのが精いっぱいで、とても防災とか
にもならないとか、何か行きたくない理由がいっぱ
安全とかは…。本来ならば月1回でいい、学校で2
いあるわけです。そういう意味で言うと、警報が出
時間防災教育やってくれたらいいと思うんですけれ
た次の日はテストがないとか、宿題はキャンセルに
ど、その時間もないし。学校の先生の教育力も違う
してあげるとか、そういうような配慮がいってない
んですね。学校の先生自身が、津波とは何たるかと
と、逃げたら損をするっていう世界だと誰も逃げな
いうのが分からないというか、学校の先生も昔でい
くなるので、逃げても少なくとも損はしない仕組み
うと師範学校なんですけども、いまでいう教育大の
131
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
パネルディスカッション
−
養成のところで、十分に安全というものを教えられ
皆さんと一緒に話を進めてきましたけれども、こ
てない。文部省のガイドブックがありますが、学校
こで会場の皆さんからも、ぜひ意見を言いたいとか
の教室の中で教えられない、結局学校での防災教育
質問があるという方にご発言をお願いしたいという
はややおざなりになっているんです。
ふうに思います。
家庭はというと、家庭も同じように、お父さん、
手を挙げていただいて私が指名をいたしますの
お母さんがあまりにも防災のことに、たとえば衣服
で、お名前と消防団の方なのか行政の方なのかとい
に火が付いたらどうしたらよいかとか、もうバケツ
うことをおっしゃっていただいて、質問がある場合
リレーの仕方も教えられないお父さん、お母さんが
には誰々に質問ということを言ってからお話しいた
多くて、そうするとお父さん、お母さんもなかなか
だければと思います。
あてにならない。そうすると最後はどこかというと、
それでは、一番手前の方。
やっぱり地域に戻って、地域には昔消防団やってい
たとか、戦争でバケツリレーやったとか、あるいは
この間の水害を体験したとかいろんな人たちがい
大森団長:
私は岩手県一関市の消防団長の大森と申します。
る。あるいはハイテクの工場に通っているとか、病
岩手県の最南端でございますけれども、平成 20 年の
院の看護師さん、いろいろな人たちがいて教えるこ
岩手・宮城内陸地震で大きな被害をこうむった地域
とができる人が実際たくさんいる。そういう人を
でございますが、また今年もそれの倍以上の被害を
使って月1回、公民館でみんなで子供たち集めて何
広範にわたってこうむっております。
かやるとか、地域にもう一度防災教育、安全教育の
今日は沿岸の大きな災害のことについて体験発表
場を戻す。その中でハザードマップや、津波が来た
がありましたけれども、その中で消防団に関わる問
らこうなるんだよっていう絵をみんなで、子供たち
題についてご質問申し上げたいと思いますが、まず
と大人が地域で一緒にやるとか、学校の先生も出て
今日は関西学院大学の室
きて地域と一緒にやるとか、そういう地域ぐるみの
から佐々木さんにおいでいただいておりますので、
ことをやっていると、それが地域のひとつの財産に
率直にお伺いしたいと思いますがよろしくどうぞお
なっていく感じがするんです。地域のコミュニティ
願いいたします。
先生、そしてまた消防庁
というのは、最後は教育っていうか、みんなで、地
まず、あの消防団に関わる問題が多岐にわたって
域の危険性を認識してどうすれば良いかと語り合っ
出ております。消防団というのは多岐にわたって活
て地域の力にして…。地域の教育力のような感じが
動すると、たとえば防災活動、地域のお祭り、国民
するので、先程も言いましたが、釜石市の小学校の
保護法に避難とかいろいろありますけれども、そう
そういうのをきちんと参考にしながら少し地域教育
いう役割というものは非常に広いわけです。しかし
のモデルを作って、日本の国のすべての地域で、防
消防団というのは仕事を持ちながらやっております
災教育運動みたいなものを興す。話は長くなるんで
ので、どこに今いるのかわからないわけです。そう
すけど、僕は1月 17 日と3月 11 日と9月 1 日は学
いうときに、災害が発生いたします。そのときに緊
校の勉強をやめて、地域に全部子供たちを返してほ
急招集があるわけでございますが、3分以内、5分
しいと、地域の中で子供とお年寄りを避難所に連れ
以内というのはたいへん難しい状況になっておりま
て行く訓練をするとか、みんなで今回は炊き出しの
す。
訓練をするとか、そこで地域の会長さんとか、ある
それから団員が年々減少しておりまして、全国で
いは消防分団長さんのハンコをもらって学校に行っ
も 100 万人だったのが 80 数万人、こういうふうに
たら出席扱いになるとか、そういう地域に少し防災
トントンと減っております。特に地方は、経済的な
の教育の重点を置くような、そういう発想が必要な
疲弊から若者が中央に進出して、入団する人が少な
感じがします。
くなっております。私も団員確保について努力して
おりますけれども、たいへん厳しい状況になってお
−
りまして、今 2630 人の条例定数ではございますが、
質疑応答
今現在は 2550 人くらいになっております。そうい
うことで、先程から出ていますように、まず1つは
消防団の待遇、これが依然として準公務員となって
132
山 :
おりますけども、待遇がこれでいいものなのかどう
はい、ありがとうございました。
か。私たちは義勇消防と伝えられてきましたけれど
2011
Conference Report
も、これから私が若い消防団員にどうやってこれを
ような方法もひとつだと思うのですが、そういうふ
伝えていくか大きな課題となっております。
うな方法で全国のこの 90 万人のネットワークを利
待遇改善、あるいは設備の充実。無線機をはじめ
用すれば、かなり大きな力が得られると私は思いま
車両、それから消防屯所、こういったような様々な
す。室
待遇が必要だと思っておりますけれども、地方の財
していただきまして、何とかそういう形で消防団同
政は非常に厳しいためになかなかこれは実現されて
士の助け合いが出来ないものかというところで
おりません。
ちょっとお尋ねしたいと思います。
こういう中で、室
先生とか佐々木さんにいろんなお知恵を貸
先生そして佐々木さんにこの
問題について待遇改善をどのようにお考えになって
山 :
いるか、あるいは設備の充実、特に無線機は平成 28
はい、ありがとうございました。他にございます
年にデジタル化となっており、そのために古いもの
か。はい女性の方、前の方にいらっしゃいました。
で使えないようなもので我慢している地域もござい
ます。今これをどうすればいいのか、緊急時に備え
桜川分団長:
て大変危機感を持っておりますが、この点について
三重県津市消防団デージー分団の分団長をさせて
これからの団員の確保対策と、今言ったような問題
いただいております桜川政子と申します。発表して
についてどのようにお考えになっているかお伺いし
くださった皆さまは本当に今でもまだまだ大変な状
たいと思います。
況の中、よくこちらにお越しくださいました。本当
に心から感謝をしたいと思います。私は女性消防団
山
:
はい、ありがとうございました。それでは他にご
ざいますか?真ん中の前の方。
員ですので、山
さんがさっき女性消防団員にふれ
てくださったので「よし、来た来た」と思ったので
すけれども、何かちょっとあっさりと終ってしまっ
たような気がいたしまして、どういう活動をしたと
松島副団長:
いうのは、長澤様にお聞きいたしましたので女性消
三重県の津市消防団の松島といいます。前段で室
防団員の必要性について、もし女性消防団員がい
先生のご指摘の中にございました消防団同士の助
らっしゃらない団があったとしても女性消防団員を
け合いの方法、これが一番強く胸に響きました。と
どのように思われているのかをちょっと長澤様、村
申しますのも、ご存じのように消防団は全国で約 90
上様、大石様にお聞きしたいと思っております。失
万人。これだけのネットワークを持って、価値観も
礼いたします。
殆ど近いものを持っている団体でございますので、
何かがあれば今回のように大きな災害があったとき
には、できることなら消防団として協力に行きたい
山 :
はい、ありがとうございました。それではまず、
のです。でも現在消防団というのは地元を守るのが
佐々木さんと室
本来の役目でございますので、地元を放ってまでは
防団の報酬とか屯所などを含めた待遇改善の問題
行けないというところもございますし、いろんなク
と、消防団同士の全国的な助け合い連携、これにつ
リアしなければならないような技術的な問題がかな
いていかがですか、佐々木さん。
さんにお答えいただきますが、消
りたくさん出ていると思うんですけれども、そこら
辺の問題をクリアしつつ、やはり価値観をともにし
佐々木:
ている我々消防団員から見ると、どこの消防団員も
大きな課題として待遇改善なり情報通信の機器な
仲間なんです。やはり仲間の困っているときに自分
り、これはもう少しよくしていただきたいというふ
たちの仲間を助けに行きたいんだけれども、ただボ
うに思っておりまして、これは国会でもよく質問も
ランティアとしてではなく、もちろん消防団員の中
いただきます。若干専門的になりますけれども、国
にもボランティアとしてたくさん行かれている方も
の方から地方の一般財源として、自由に使えるお金
おりますが、それよりもやはり何らかの形で消防団
として、交付税というのがあるのですけれどもその
員として、たとえば大石分団長のところへ直接どこ
中に、これぐらい消防団でかかりますという前提で
かの分団が行く。もちろん出動する場合は、消防団
お配りさせていただいているお金があります。ただ、
員ですけれども、完全なボランティアとして団員の
待遇報酬として積算上入れている額と、実際の皆さ
名前を出しながらもボランティアとしていくという
んに支払われている報酬なり手当というものを比べ
133
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
パネルディスカッション
−
ると、その水準までいっていないというのが実態で
わないといけないということについては、私はとか
ございまして、私どもの大臣も、こういった待遇改
くいう意見は持ってないんです。むしろ私が思って
善については折に触れて市町村長さんに強く訴えか
いるのは、消防団の装備をもっともっと良くしない
けていきたいというような答弁もしているところで
といけないと思っています。
ございます。それと合わせて、私どももいろんな機
会で訴えかけていきたいと思います。
会さんがご援助していて多機能型の消防車を配って
それから今回の震災を受けまして、地域の防災計
いるのですけれど、もっと早くすべての消防団の分
画の見直しが各自治体でも今後進められていくと思
団にいきわたるようにできないのかという思いで
いますが、先程来、ご指摘もありましたが地域の防
す。元を正せばお金の話なのですが、消防団だから
災力を高めていく中枢基盤がやはり消防団であると
常備よりもレベルの低い装備であっていいわけでは
思っておりますので、地域防災計画の中で、消防団
なくて、まさに同じ内容の活動、人を助ける活動な
の位置付けを、ぜひもっと充実したものにしていた
ので、救助器具、救命器具を含めて、あるいはそう
だきたいというふうなことも、私どもとしては今後
いう無線通信の装備についても、これは研究開発も
各自治体には、お願いをしていきたいと考えていま
必要だと思います。非常に低コストでもレベルの高
す。そういったことを通じて、今お話があったよう
い装備が出来ると思いますので、もっと力を入れて
な待遇面ですとか設備面を少しでも良くしていきた
最高度の装備を全国の消防団にお届けできるように
いと思っております。
努力をしないといけないと私は思っています。そう
それから消防団の助け合いの関係。これも、実際
すると魅力ももっと出てくると思います。
そういう要望を私どももお聞きしまして、何とかで
2つ目はですね、昔と違って自営業というかその
きないかと思っております。ただ、やはりいろいろ
場に住んでいる人がどんどん少なくなってサラリー
クリアすべき課題がありますので、一律的な制度化
マン型の人たちが増えてくる。そうするとその活動
というのはなかなか難しいと思っております。そう
条件のいつでも3分以内、5分以内に集合しないと
いった中でも、県内での相互の応援協定を結んでい
駄目だというと、とても敷居が高くなる。これを言
るという県があったり、今回の震災でも消防団とし
うといい加減になるかも知れないけれども、できる
て応援されていた例もあるやに聞いておりまして、
ときに精いっぱいやってもらったらいいっていうふ
今こういった実例、取り組み事例を私どもも集めて
うな考え方っていうか、機能別消防分団だとか学生
おります。こういうことを積み重ねて、こんな感じ
消防団だとかの発想にいきつくわけなのですけれど
だとできるのではないかということが、見えてくる
も、そういういろんな形での消防団活動で、いくつ
かもしれないと思っています。またボランティアで
かのタイプを認めていきながら多様な関わり合い
行くという形を少しうまく工夫してできないか、そ
方、これは組織が秩序を乱していても当然あるので
の辺はいろいろと検討していきたいと思います。例
すけれども、こういう時代というのはたとえば夏休
えば、緊急消防援助隊が大規模災害で動きますと、
みだけだとか、あるいは夜間だけだとかいろんなこ
その応援に行っているところは、その分消防力は落
と限定しながらでも、最大限やっていただけるなら、
ちていることになりますので、そこをまさに補完し
少しその消防団の活動の今までの考えより柔らかな
ていただくのが消防団としての一義的には大きく期
仕組みを取り入れてはどうかということと、それに
待されるところだという意見も根強くありますの
関連して言うと、大学生はとても貴重な、将来のひ
で、この辺をどう調和を取っていくのかというとこ
とつの消防団の担い手の資源の山のように思うので
ろも含めて、いろいろ勉強していきたいと思ってい
す。
るところです。
先程の雇用の話と一緒で、消防団員になるのと地
元での再就職みたいなものをセットにしながら、大
山 :
−
1つポンプ自動車をとっても、これは日本消防協
はい、室
学生のときに消防団活動というものを身近に感じる
さんいかがですか?
ようになって、ああ俺はこれを故郷に帰ってやろう
というようなことを将来の可能性として、その大学
134
室 :
生に、消防団活動の意義を分かってもらい、その魅
まず最初の消防団員の待遇改善の話ですけれど、
力を知ってもらう。そのことによってその大学生に
報酬については今佐々木さんが言われたとおりで、
地域・地方を大切に教えながら、どうやって消防団
国・自治体等でしっかり検討なり見直しをしてもら
に入りたいという、先程今回の震災でひょっとした
2011
Conference Report
ら増えるんじゃないかという根拠のない楽観論も関
には、女性消防団員の必要性について伺います。ま
係しているのですけれども、でもそこは努力すれば
ず、長澤さん。
やはり学生が目を向けてくれるのではないかなと
思っています。そういうところにひとつ待遇改善の
長澤:
ことではないですけれど、大きな問題が残っている
私は、女性消防団員は絶対必要という考えで、実
のかなと思います。
もう一方のご質問、消防団相互の支援活動の話は、
は旧鹿島町消防団のときに私が提案して現在の 16
名、当時は少なかったんですが女性消防団員を入団
私も同意見です。ただ、その1番目の話と2番目の
させた経緯があるんです。若い独身の男性がいっぱ
話が関係すると思うんですけれど、佐々木さんが地
いますので。それからラッパ隊ですね。ドリル的な
域防災に消防団を位置付けるということにも関係す
大きなところまで発展ができればいいなと思ってい
るんですが、地方自治体っていうのは地方の住人だ
るんですが、そういう意味での女性団員の位置付け
というふうに思うんです。消防団をしっかり消防団
などが出来ればもっと魅力ある、先生がおっしゃた
の価値っていうのか大切さをしっかり認識してもら
魅力ある消防団が出来るのではないかと、このよう
うのが前提なんです。1つの根っこは、消防団員が
に私としては力を入れていきたいと思っています。
ボランティアで行くのもいいんですけれど、行く費
用は誰が持つのかっていう、常備の緊急援助隊の人
山 :
には、それなりのお給料が、日常的な給料が支給さ
はい、ありがとうございました。村上さん。
れているので行きやすいのですけれども、消防団員
はたとえば1週間被災地にいると、そのときのいろ
村上:
んな手当とか少なくとも食事はどうするんだ、自分
私の団にも女性団員がいます。がさつで汚い男の団
たちで出しなさいってことになるのか。その地方を
よりは、華やかできれいな女性団員がいっぱいいれば
支援する自治体で、今回は消防団員を中心に出て
いいんじゃないかなと。女性ならではの活躍も期待で
行ってもらおうと、自治体がその支援プログラムの
きるのではないかと思っております。
中に消防団を入れていただいて、その消防団を被災
地に行って活躍してもらうという形で自治体がバッ
山 :
クアップするという考え方が必要なのではないかと
はい、ありがとうございました。大石さん。
思っています。
それから全然関係のないことですが、消防団の素
大石:
晴らしい活動に対して、国民とか企業とかが、しっ
10 分団では、どうにか今のところ男性だけで 34
かり消防団の価値を認めて募金をする、基金をする
人いるんです。でも、本当は女性団員が欲しいんで
という支援金を出すというようなもう少ししっかり
す。男性ができないこと、老人とかそういう人たち
した消防団活動の基金の仕組み。なぜ、これを言っ
の心のケア、それを一番やってほしいのは 10 分団
ているのかというと、国にお金がないって言ってい
でも分かっていると思うんですよ。でも、大沢地区
るから。日本消防協会と企業の連携のファンド、消
では女性が少ないもので、入る人がありません。
防団ファンドみたいな大きなものを作ってそれを消
防団のいろんな活動、設備や装備やあるいはボラン
山 :
ティア活動の資金にしていくようなものを考えてい
はい、ありがとうございました。
くってこともあり得るのかな。それはなぜかという
と、やはり国民というか住民の理解を求めることと
同じなんです。単にお金を出してもらうのではなく
総 括
て、消防団がいかに大切かと理解してもらって初め
てお金は集まるので、そういう意味でのファンドを
作って、今の待遇改善とかボランティア活動の支援
という形につなげていく。ちょっと長くなりました。
山 :
それでは時間もまいりましたので、パネリストの
皆さんに、最後に言い残したこと、あるいは提言あ
山
:
ありがとうございました。それではお三方の団長
るいは感想や意見をひと言ずつお願いしてシンポジ
ウムを終わりにしたいというふうに思います。では、
135
-DSDQ)LUH¿JKWHUV$VVRFLDWLRQ
大石さんから。
神大震災のときにも痛感いたしましたけれども、今
回の大震災はもっと痛感をしてですね、やはりこう
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書
いうときっていうことは、あってはならないことで
先程、情報伝達での課題をちょっと言い残したの
すけれども、やはりその通常の防災力が本当に対応
ですが、今度の津波で私たちはテレビ ・ ラジオの情
しきれないときは、最後の頼みは消防団だというふ
報が全然入りませんでした。津波だと分かったのは、
うに思いますので、やはりその消防団の重要性が今
山田湾の入り口から帯状の白波が陸地に迫ってきた
回ほどさらに明確になったことはないので、そうい
ので「あっ津波なんだ」
、と分かりました。そして
うことをもっと社会に訴えて消防団が大きくなれる
一番高い高台に走って避難、そのとき排水路がゴー
ように努力していかなければならないと思っており
という音を出したのを、今でも記憶しております。
ます。
何か異常があったらすぐに伝達できる方法があれば
よいと思うんですが、そういうのをちょっと考えて
山 :
みたいと思います。
はい、佐々木さん。
山 :
はい、ありがとうございました。村上さん。
今回、このような場を設けていただきまして、日
本消防協会に御礼を申し上げたいと思います。また、
今回このホールに来て、全国からこれだけの仲間
被災3県の消防団の方々からとても貴重なご報告を
が集まっている。でも、この十倍、何百倍の団員が
いただきましてありがとうございました。被災地は
いるんでしょう。こんなにも仲間がいるんだなって
まだまだ大変な状況でありますけれども、私どもと
心強いな、そう思いました。終わります。
しましても今回の経験を更に詳しく調査をさせてい
ただきたいと思いまして、非常にご迷惑をおかけす
山 :
るかもしれませんけれども、私どもの調査が入りま
はい、ありがとうございました。長澤さん。
した際には、よろしくご協力をいただければと思い
ます。それを今後の消防行政 ・ 防災行政に生かして
いきたいと思っております。
今回殉職された消防団員の日本消防協会での弔慰
それから、いろいろなご意見もいただきまして、
金の件でありますが、多数にわたったということで
大災害時における消防団の在り方について資機材の
1100 万円ほどになってしまったのですが、協会とし
話ですとか、訓練の話ですとか、どういった形がい
てはやむを得ないと思うのですが、国等の手当善処
いのか。避難にしても、水門を閉めるにしても、もっ
をお願いしたいと。
ときめ細やかなマニュアルといいますか、訓練なり
それと、東北岩手県の事例ですが、普代村の元村
あってもいいのかとかいろんなことを考えさせられ
長であります、和村村長さん、たいへん素晴らしい
ましたので、そういった検討を今後ぜひ進めてまい
功績を残して今回行方不明者1名だったんですよ
りたいと思っております。本当に今日は貴重なお話
ね。地域住民の命を守る政治事業であれば、命を懸
を聞かせていただきまして、ありがとうございまし
けて説得しながらやり遂げなさいという教訓があり
た。
ます。岩手県の、関東大震災のときの帝都院総裁で
ありました後藤新平、まさに平成の後藤新平の出現
山 :
を待ちたいとそういうことで、国にその教訓をお渡
はい、ありがとうございました。私も長いこと消
ししたいとこのように思っております。
−
佐々木:
村上:
長澤:
パネルディスカッション
−
大石:
防とか消防団を取材させていただいていますけれど
も、今回現場で、それと昨日・今日と皆さんのお話
山 :
はい、ありがとうございました。室
を聞いて、消防団というのは本当に地域の防災のき
さん。
されていたんだということを改めて痛感しました。
私はもうかなり前から、消防団というのをですね、
私は消防団を中心にして地域のコミュニティをもう
一番重要になるのは災害があるときだと、そして阪
136
めの細かいところ、しかも最前線で献身的な努力を
室 :
一度再構築しないと、地域の防災力がなかなか高ま
2011
Conference Report
らないんじゃないかいうふうに最近考えています。
去年、全国でたいへん大きな話題になりましたけ
れども、家族もそれから近所の人たちも知らない高
齢者が全国でものすごくたくさん出ましたよね。あ
あいうのを聞きますと地域のコミュニティが、機能
不全に陥っているのではないかと、そういうことを
痛感しました。でも、無縁社会じゃ人は救えないで
すよね。
東南海地震の被害が心配されている地域で、地域
防災で一番頼りになる集団・専門家は?とアンケー
トを取ったら、一番が消防団だったんです。地域の
コミュニティが薄れている中で地域の人たちは、い
ろんなところで消防団が活躍していて、いざという
ときはやっぱり消防団が頼りになると知っているん
どうもありがとうございました。これでシンポジウ
だと思いますし、今回の震災の現場でもやっぱりそ
ムを終わりにします。
れが証明されたんだというふうに思います。消防団
の皆さんにはますます頑張っていただかないといけ
司会:
ないんですけれども、そうした皆さんの知恵を生か
ありがとうございました。これで東日本大震災全
しながら、地域の防災をどうやって高めていけばい
国消防団報告研修会のパネルディスカッションを終
いのかということを、これからも私は、取材者の立
了します。
場から考えていきたいと思います。今回は、大変勉
強になりました。パネリストの皆さん会場の皆さん
137
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