「カンキツ果実腐敗対策について」 佐賀県果樹試験場 野口真弓 いよいよ

「カンキツ果実腐敗対策について」
佐賀県果樹試験場
野口真弓
いよいよ露地みかんの収穫がはじまります。丹精を込めて作ったみかんを「元気な姿」
で消費者の元へ届けましょう!!
せっかく作ったみかんも、腐ってしまってはどうしようもありません。もし、購入した
みかんの中に腐ったものが混じっていたら、消費者は非常にがっかりしていやな気分にな
り、みかんの消費拡大に水を差してしまうことになりかねません。
果実腐敗対策をきちんと行い、消費者に「佐賀のみかんをまた買いたい」と思われるよ
うに細心の注意を払いましょう。
①取り扱いは丁寧に!!
腐敗対策は農薬をしっかり散布さえすればよい、というわけではありません。もちろん
農薬の散布も重要な対策の 1 つです。しかし、それ以上に大切なのが、果実の取り扱い方
です。たくさんの果実を収穫するうちに、ついつい雑に扱ってしまっていることはありま
せんか？
果実腐敗の原因となる病原菌(軸腐れ病は除く)は、果面の傷口から侵入し、果実腐敗の原
因となります。そのため、果面が傷つかないように丁寧に扱うことで、果実腐敗を減らす
ことができます(表１)。収穫カゴに入れる際は、傷の原因になる果梗枝や枯れ枝を混入させ
ないこと、地面に落としてしまった果実は入れないことが大事です。収穫カゴからコンテ
ナに移すときも優しく取り扱いましょう。不知火を収穫する場合は専用ハサミを使用し、
傷つけないようにします。丁寧に果実を取り扱い、傷が付かないようにしましょう!!
なお、軸腐病の原因は、黒点病菌です。黒点病菌がへタの部分に潜伏し、ヘタが弱った
ら果実に侵入して発病します。そのため、軸腐病は黒点病の多発園で多く発生します。軸
腐病が多い場合は、黒点病の防除がうまくいっているか見直しましょう。
また、果実が濡れた状態での収穫は禁物です。そのような状態で収穫を行うと、腐敗が
助長されてしまいます。果皮が乾いた状態での収穫を徹底してください。
表１
果面の傷による腐敗果の発生率(1994～1995 年、佐賀果試)
付傷の有無 1)
腐敗果の発生率(%)
A園
B園
C園
D園
なし
0
6.8
4.7
0
あり
13.3
68.6
19.6
15.8
※前処理は長さ 5m のコンクリート坂道を転がす付傷処理。
収穫前の腐敗防止剤は無散布。
②腐敗
敗果実は放置
置しない!!
緑か
かび病(写真
真１)などが発
発生した果実
実をそのまま園内や貯蔵庫
庫内に放置す
すると、空気
気の動
きによって胞子が
が周囲に浮遊
遊し、他の果
果実の腐敗の
の原因となります。必ず
ず、園内や貯
貯蔵庫
ください。
内から除去してく
写真
真１
緑かび
び病
③農薬
薬の散布も丁
丁寧に!!
果実
実腐敗の原因
因となる病原
原菌の多くは
は、空気中を
を漂っていま
ます。風によ
よって運ばれてき
ますの
ので、果実表
表面のどこに
に病原菌が付
付着するかわ
わかりません
ん。そのため
め、腐敗防止のた
めの薬
薬剤を散布し
しても散布ム
ムラがあると
と、十分な防
防除効果は得
得られません
ん。
さて
て、腐敗防止
止のための薬
薬剤は、どの
のようなノズ
ズルで散布さ
されています
すか？
薬液
液が霧状に出
出るディスク
クノズル(新広
広角二頭口ノ
ノズル)を使用
用し、果実を
を一個一個包
包み込
むように丁寧に散
散布しましょ
ょう。キリナ
ナシノズルは
はドリフトが
が少ないこと や樹幹の内部ま
液が届きやす
すいというメ
メリットはあ
ありますが、ムラがない
いように散布
布する必要がある
で薬液
果実腐
腐敗の防除に
には向いてい
いません。腐
腐敗を減らす
すためにはデ
ディスクノズ
ズルを使用しまし
ょう。
。キリナシノ
ノズルを使用
用する場合と
と比べると、ディスクノズルでは樹
樹幹の内部まで薬
液が届
届きにくいと
という欠点が
があります。 樹幹内部ま
まで丁寧に散
散布するよう 心がけてくださ
い。
表２
殺
殺菌剤散布に使
使用するノズ
ズルの違いと
と果実腐敗の
の防除効果と
と薬液付着程
程度
(2004 年、佐賀果試)
キ
キリナシノズ
ズル
ディ
ィスクノズル
ル
無散布
無
腐敗果
果率(%)
１０
４
４０
薬液の付
付着程度
５３
８５
０
※収穫
穫前日にベン
ンレート水和
和剤 4,000 倍
倍＋ベフラン
ン液剤 25 2,0
000 倍を散布
布。
キリナシノズル
デ
ディスクノズ
ズル
ナシプラ 3 頭
頭口)
(強力キリナ
(新
新広角タテ 2 頭口)
早生
生温州や年内
内出荷の高糖
糖系温州につ
ついては収穫
穫７～10 日前
前に、年明け
け出荷の高糖
糖系温
州につ
ついては収穫
穫 7～21 日前
前、露地不知
知火や清見等
等の中晩生柑
柑橘類につい
いては収穫 7～21
日前ま
または袋かけ
け直前に薬剤
剤防除を行い
います。
【トップジンＭ水
水和剤 2,0000 倍またはベ
ベンレ
ート水
水和剤 4,000
0 倍】と【ベ
ベフラン液剤
剤 25 2,000 倍】を混用散
倍
散布するか、 ベフトップ
プジン
フロア
アブル 1,500
0 倍を散布し
します。薬液
液を調整する
る際には必ず
ずトップジン
ンＭ水和剤か
かベン
レート水和剤を先
先に溶かして
てからベフラ
ラン液剤を溶
溶かしてくだ
ださい。逆の
の順で溶かす
すと沈
生じることが
があります。単独で用い
いると、トッ
ップジン M 水和剤やベン
水
ンレート水和
和剤で
殿を生
は耐性
性菌の出現に
に伴う効力低
低下、ベフラ
ラン液剤 25 では軸腐れ病
で
病に対する防
防除効果が低
低いな
どの問
問題がありま
ますが、これ
れらの剤を混
混用すること
とで、安定し
した防除効果
果が得られます。
なお、
、ベフトップ
プジンフロア
アブルはトッ
ップジン M 水和剤とベフ
水
フラン液剤 225 の成分が含ま
れた薬
薬剤になりま
ます。
十分な果実
実腐敗対策を
を行い、おい
いしい佐賀の
のみかんを消費者に届けま
ましょう!!