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スライド 1 - 経済産業省
日中韓投資協定の概要 平成24年6月 経済産業省 通商政策局 経済連携課 1.投資協定の特徴 投資協定の特徴 • 海外に投資した企業等(投資家)やその投資財産の保護、規制の透明性向上等により、 投資を促進するための内容を規定している。 • 投資家は、国際仲裁手続の下で、直接、投資先の政府を訴えることができる。 • 投資ルールは、貿易におけるWTO協定のような多国間協定がなく、二国間協定中心。 投資家の範囲 • 協定締結国の国民や企業(締約国の法律によって設立された企業)に限らず、法人格の ない組合、非営利団体、国有企業も含む。 投資財産の範囲 • 「every kind of asset owned or controlled, directly or indirectly, by an investor」 と定義 することが一般的。協定によって違いはあるが、通常、以下の内容を例示している。 -企業及び企業の支店 -株式、出資その他の形態の企業の持分 -債券、社債、貸付金その他の債務証書 -契約(完成後引渡し、建設、経営、生産又は利益配分に関する契約等)に基づく権利 -金銭債権・金銭的価値を有する契約に基づく給付の請求権のうち、投資関連のもの -知的財産権 -法令又は契約により与えられる権利(例えば、特許、免許、承認、許可) 等 1 1.投資協定の特徴 投資活動の範囲 • ①適用範囲を投資後に限定している協定(保護協定)と②投資後に加えて参入段階も 対象とする協定(自由化協定)の大きく2種類が存在。 • ②自由化協定は、参入段階の「内国民待遇、最恵国待遇、特定措置の履行要求禁止」 について例外とする分野を留保表に明示し、制度の透明性と安定性を確保。 参入段階(投資設立) (会社設立、株式取得等) 参入後の段階(投資保護) (運営、管理、売却等) 投資家と国家の仲裁手続 内国民待遇 例外分野 (留保表) 最恵国待遇 特定措置の履行要求禁止 公正衡平待遇 収用の制限と適切な補償 ・ ・ ・ 「例外とする分野、措置、根拠法令等」を 「ⅰ現状維持義務のかかるもの」と 「ⅱ同義務のかからないもの」に分けて、 留保表に掲載。 資金移転の自由 契約等の約束遵守 2 2.投資協定の主なルール ① 第三国や現地の企業に劣後しない待遇の付与(最恵国待遇・内国民待遇) • 最恵国待遇 (Most-Favored-Nation Treatment): 相手国の投資家及びその投資財産に対して、第三 国の投資家に与えている待遇より不利でない待遇を与えること。 • 内国民待遇 (National Treatment): 相手国の投資家及びその投資財産に対して、自国の企業に与え ている待遇より不利でない待遇を与えること。 公正衡平待遇(fair and equitable treatment) 投資財産の保護に対して慎重な注意を払う義務、適正な手続を行う義務、裁判拒否の禁止、 恣意的措置の禁止、投資家の合理的期待を裏切らない義務などを含む。仲裁判断において、 頻繁に争われる項目。 収用の制限と適切な補償 政府による収用(国有化)を原則禁止。①公共目的のため、②正当な法手続の下、③差別的 でない方法により、④迅速かつ実効的に補償を行う場合のみ、収用を認める。 また、補償は、公正な市場価格に基づいて行うことを義務づける。 なお、所有権等の移動を伴わなくとも、裁量的な許認可の剥奪や生産上限の規定など、投資 財産の利用やそこから得られる収益を阻害するような措置も収用に含まれる。 3 2.投資協定の主なルール ② 争乱による損害に対する補償の公平性 紛争や争乱、革命などによって投資財産が損害を被った場合、投資受入国政府は、それに対 する損害賠償について内国民待遇及び最恵国待遇を保障する。 投資活動に対する特定措置の履行要求の禁止 (パフォーマンス要求の禁止) 投資受入国が、投資活動の条件として、投資家に以下のような要求を行うことを禁止。 (a) (b) (c) (d) (e) (f) (g) (h) (i) (j) (k) (l) 一定の水準又は割合を輸出すること 原材料を現地で調達すること (TRIMでも例示) 現地の物品・サービスを購入・使用すること (TRIMでも例示) 輸入額(量)を、輸出額(量)や投資財産に関する外貨流入量に関連づけること (TRIMでも例示) 当該投資家が行う現地販売について、輸出額(量)や外貨獲得量に応じて、制限すること 輸出を制限すること(輸出のための販売を制限することを含む) (TRIMでも例示) 特定の国籍を有する者を役員に任命すること 技術移転 (a)~(l)は原則禁止されているが、 投資受入国内に事業本部を設置すること (g)~(l)については、投資受入国が、 投資家に対する利益の付与 一定の数又は割合の自国民を雇用すること (例:税の優遇や許認可の付与)を 一定の水準又は価額の研究開発を現地で達成すること 条件として、投資家にこれらを要求 当該投資家が特定地域に向けて生産する物品・ することは、協定上、許されている。 提供するサービスを、自国区域のみから供給すること 注:全ての協定が(a)~(l)の全ての項目を含んでいる訳ではなく、(a)~(l)のうちどれを含んでいるかは協定毎に異なる。 4 3.投資協定の執行(国家と投資家間の紛争解決) ・相手国政府との間に投資環境をめぐる問題が生じた場合、投資家による個別の交渉や官民が参加する ビジネス環境整備小委員会を通じた協議に加え、協定違反行為があるような場合には「国家と国家間」 及び「投資家と国家間」の紛争解決手続の活用が考えられる。 ・世界では、「投資家と国家間の紛争解決手続」にもとづき、直近10年間に公表案件だけでも300件超の 仲裁が行われている。 ・同手続により、司法制度が未発達な国の政府との紛争についても、公正な紛争処理手段を利用可能と なる。また、実際に訴えなくとも、相手国政府を牽制し、交渉を有利に進める材料として有効。 紛争解決の枠組み • ICSID仲裁:ICSID(投資紛争解決国際センター)は1966年に世界銀行の 下に設置された常設の機関。同仲裁は、会議室や仲裁人名簿等を 利用可能。仲裁手続上、一定の情報公開が必要。仲裁判断にもとづ く義務を履行しない場合、世界銀行の融資停止等の可能性がある。 • UNCITRAL仲裁:国連国際商取引法委員会の規則にもとづく仲裁。 ICSID仲裁と比べ、情報の公開等の手続に柔軟性がある。 国際仲裁手続 投資家(企業) 問題勃発 (ICSID、UNCITRALなど) 仲裁判断 友好的な協議または交渉 (ビジネス環境整備小委員会 なども利用可能) 和解 国内裁判所 投資先政府 判決 5 4.南米における外資国有化の動き 最近、一部の南米諸国において、エネルギー分野を中心に、外資系企業の国有化等の動きが見られる。 エクアドル 2008年に鉱業令を制定。探鉱 や環境影響調査を行っていな いとして、企業の鉱業権益 (4500件弱)を経済補償無く一 方的に取り消した。 2010年に炭化水素法を改正 し、従来の権利契約を、すべ て、政府が主体となる契約へ の移行を外資系石油企業に 強制した。交渉期限までに契 約を行わなかった外資には撤 退が求められた。 ボリビア 2006年5月の「炭化水素資源国有 化」に係る大統領令発出およびこれ に伴うガス輸出価格大幅引き上げの 意図表明は内外の大きな波紋を呼 んだ。その他、電力部門の完全国有 化、鉱業部門(現在新鉱業法改正 中)や農地の扱い(外国人の土地所 有制限等)についても新政策の導入 が行われつつある。 2012年には、スペイン系送電会社 TDEを国有化へ。 ベネズエラ 2006年1月には、チャべス大統領が 「オリノコベルト超重質油プロジェクト を国家の財産とすべき」と発言、具体 的には同プロジェクトに進出する各 合弁企業におけるベネズエラ国営石 油公社(PDVSA)の出資比率を60% 以上に引き上げる大統領令を公布。 また、2008年3月にセメント産業、同 年4月に鉄鋼会社の「国有化」(共に ベネズエラ政府を60%以上の筆頭株 主とする合併会社に移行)を発表し、 2009年5月には、石油関係事業の接 収を可能にする法律の制定や製鉄 関連企業の「国有化」を発表した。 アルゼンチン スペイン石油大手傘下のYPF(スペイン系石油企業 の子会社)について、2012年3月14日に、チュブット 州知事、サンタ・クルス州知事がYPF社鉱区の採 掘権を剥奪する政令に署名。また、同年4月16日、 フェルナンデス大統領がYPF社の株式51%を接収 することを発表。法案「アルゼンチン炭化水素主権 回復計画法案」を議会に提出し、デビード公共事業 大臣らをYPF社の経営監督責任者に任命すること を発表。 6 5.投資協定の活用事例 • 上海市嘉定区に進出してまだ間もない日系企業十数社が2006年、商業・住宅地の開発 に伴い、地元政府から立ち退きを求められた。 • 当初、補償条件が明確でなかったことが日系企業関係者に混乱をもたらした。上海市 の法令によると、移転に伴う操業停止補償として、立ち退き対象工場の建築面積1平方 メートル当たり300~400元(1元=約12.0円)の補償金しか認められないため、これでは 不十分ではないかという不安が関係者の間に広がった。 • このため、日本総領事館の領事が「日中投資保護協定第5条の規定に基づく適切な補 償を得られるようにすべきだ」と主張し、これが効果的だったという。 • 日中投資保護協定第5条には、国民と会社の投資財産が相手国で保護されるべきこと が規定されており、土地収用などに当たっての補償の水準は「その措置が取られなかっ たとしたならば、当該国民および会社が置かれたであろう財産状況と同一の状況に当 該国民および会社を置くものではなければならない」(同条第3項)と規定されている。 • 上記の働きかけにより、本件はほぼ解決に至った。 出典:ジェトロ通商弘報 「地元政府との交渉に6つのポイント-上海市嘉定区の工場立ち退き経験者が語る- (中国)」 ( 2011年08月01日 上海発)より作成 7 6.日中韓投資協定の意義 <経緯> • 日中韓の三か国の間には、日中投資協定(1989年発効)、日韓 投資協定(2003年発効)、中韓投資協定(2007年改正発効)と、 それぞれの二国間の投資協定が存在。 • 三か国間のさらなる投資促進を図るため、2007年3月から日中 韓投資協定の交渉を開始。13回の交渉会合を経て、2012年3月 21日に実質的に交渉が妥結、同年5月13日に署名。今後、各国 の批准を経て発効予定。 <意義> • 日中韓投資協定は、三か国間の投資を一層活発化させ、三か 国の経済成長に大きく寄与するもの。 • また、日中韓三か国による経済分野での初めての法的枠組み を構築するものであり、経済的意義のみならず、三か国間の関 係強化という政治的な意義も有する。 8 7.日中韓投資協定の構成 条文 ルール内容 条文 ルール内容 代位 (国の貿易保険機関による請求など) 一の締約国と他の締約国の投資家との間の投資紛争の 解決(ISDS) 前文 14 1 定義 (投資財産の内容などを規定) 15 2 投資の促進及び保護 16 特別な手続及び情報の要求 3 内国民待遇 17 締約国間の紛争の解決 18 安全保障のための例外 一時的なセーフガード措置 (国際収支に関する重大な困難が生じている場合の例外) 信用秩序の維持のための措置 (金融サービスに関する例外) 租税 (租税条約との関係など) 4 5 最恵国待遇 投資財産に関する一般的待遇 (公正衡平待遇など) 19 6 裁判所の裁判を受ける権利 20 7 特定措置の履行要求の禁止 21 8 9 人員の入国 (投資を行う者の入国への配慮など) 知的財産権 22 利益の否認 23 環境に関する措置 10 透明性 24 合同委員会 11 収用及び補償 25 他の協定との関係 12 損失又は損害についての補償 26 13 資金の移転 27 見出し 最終規定 (効力発生時期など) 9 8.日中韓投資協定の主なルール ① 現地の企業に劣後しない待遇の付与 (内国民待遇:National Treatment) 締約国は、他の締約国の投資家とその投資財産に対し、投資設立後の段階について、自 国の投資家とその投資財産に与える待遇より不利でない待遇を与える。 日中韓投資協定と日中投資協定では、内国民待遇の一部留保が認められている。日中 投資協定では、関係法令に従って、公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のた めの差別的な措置を取ることが認められている。他方、日中韓投資協定では、締約国が協 定発効日に法令に基づいて維持している差別的な措置のみ取ることが認められており、ま た、締約国はそのような措置を漸進的に撤廃するための適切な措置を取らなければならな いと規定されている。 公正衡平な待遇 日中韓投資協定では、締約国は、他の締約国の投資家の投資財産に対し、公正かつ衡平 な待遇並びに十分な保護及び保障を与える義務を負う。 日中投資協定では不断の保護と保障を与える義務のみを規定している。 国が投資家になした約束の遵守義務(アンブレラ条項) 締約国は、他の締約国の投資家の投資財産に関し、書面による約束(契約等)を行う場合、 その約束を遵守する義務を負う。例えば、締約国が、他の締約国の投資家と、インフラ事業 や資源開発等にかかる許可について書面による約束を行い、締約国がその約束を履行しな かった場合、投資家は本投資協定に基づき国際仲裁・調停に訴えることが可能。 日中投資協定及び日韓投資協定には、アンブレラ条項は設けられていない。 10 8.日中韓投資協定の主なルール ② 特定措置の履行要求の禁止(パフォーマンス要求の禁止) 締約国は、他の締約国の投資家に対し、ローカルコンテンツ(現地調達)や輸出入の均衡、 輸出制限等を要求してはならない。また、締約国は、他の締約国の投資家に対し、輸出要求 又は技術移転要求について、不当な又は差別的な措置を課してはならない。 日中投資協定にはこのような規定はない。 知的財産権の保護 日中韓投資協定では、締約国は、自国の法令に従って知的財産権を保護する義務を負い、 また、知的財産権に関する透明な制度を設立・維持する義務等を負う。 日中投資協定及び日韓投資協定には、このような規定は設けられていない。 透明性の確保 締約国は、投資活動に関連し又は影響を与える法令や行政手続等を、速やかに公表し、又 は公に利用可能なものとする。 締約国は、法令を導入・変更する場合は、合理的な猶予期間を置くよう努める。 締約国は、自国の措置であって、他の締約国及びその投資家の利益に重大な影響を及ぼす 恐れがあるものについて、個別の質問に応じ、情報を提供する。 締約国は、投資に関する規制を設定する前に、パブリックコメントの機会を事前に与える。 日中投資協定にはこのような規定は設けられていない。 11 8.日中韓投資協定の主なルール ③ 資金移転の自由 締約国は、海外への送金が、遅滞なく且つ自由に行われることを確保する。 資金移転に関する手続がある場合には、必要な承認を与えるまでの期間は、申請の提出か ら約1か月とし、2か月を超えてはならない旨を規定。 日中投資協定及び日韓投資協定では、資金移転の自由の確保の義務は規定されているが、 資金移転に関する手続の承認の期限に関する規定は設けられていない。 投資家と締約国間の紛争解決(ISDS)手続 投資受入国が投資協定の義務を履行せず、それによって他の締約国の投資家が被害を 被った場合、当該投資家が、その投資受入国を、国際的な紛争仲裁手続に則って、国際仲 裁・調停に訴えることができる。 日中投資協定にもISDS手続の規定はあるが、その対象は収用の補償額に関する紛争の みに限定されている。他方、日中韓投資協定では、「知的財産権に関する透明な制度を設 立・維持する義務」等を除き、ほぼ全ての投資協定上の義務がISDSの対象となっている。 12 9.具体的問題点と投資協定による対応① 我が国企業の直面する課題 国名 対応可能性のある規定 総論 中国 中国 詳細 輸出規制 国内需要の逼迫を理由に突然石炭の輸出が停止された。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第7条 特定措置の履行要求の禁止 輸出規制 ・尖閣問題の影響で、日系企業の通関、日本人の出入国のみ厳しい調査 が行われたり、中国税関が全量検査を実施するなどし、貨物の通関遅延 が発生した。 ・日中関係悪化時、通関時間が通常よりかかったり、書類審査が厳しくなっ たことがあった。 ・上海万博開催時、通関審査が厳しくなり、特に溶剤関係は厳しく取引先 の印刷メーカーにおいて必要以上の在庫が禁止された。当社への納品が 遅れることがあった。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第7条 特定措置の履行要求の禁止 知的財産権の保護 知的財産権を尊重する意識が低い国民性のため、想定外の知財法無視 の事例が頻発。又、法制度に優先する人治主義のため安定した法的アク ションが取れない。具体的な事例としては、「絶えることなき偽物(罰則強化 第5条 投資財産に関する一般的待遇 要)」、「意匠侵害の増大(他国への輸出増)」、「権利付与機関での審査/審 第9条 知的財産権 判の遅延」、「司法の質(判事/判決内容等)~ 三権分立ではない」などが問 題点。 中国 知的財産権の保護 模倣品問題に対する防止策が、まだ不十分、不徹底。関連法については 整備が進んできてはいるが、現状、まだ監視や制裁が十分と言える状況に はなっていない。模倣品の摘発や対応には、調査会社関係費用や、現地 調査、真贋鑑定等のための人員派遣等、多額の経費が必要。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第9条 知的財産権 中国 知的財産権の保護 取引先からの技術・ノウハウの技術漏洩リスクが日系企業の研究開発や 技術移転を阻害する恐れがある。技術・ノウハウ・営業秘密等が適切に保 護されるよう、法制度の整備を要望したい。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第9条 知的財産権 中国 13 9.具体的問題点と投資協定による対応② 我が国企業の直面する課題 国名 中国 中国 中国 中国 対応可能性のある規定 総論 詳細 法令法律施行の猶予期 間の不足 各税関において法制度やHSコードの解釈に違いがみられるなどの問題が 発生している。税関の窓口が十分な対応ができず、手続において混乱を招 くケースが多発している。通関に伴う規制・制度の変更を実施する場合は、 十分な準備期間を確保するなどの対応をしていただきたい。 制度改正の透明性確保 パブリックコメント 電子情報製品汚染制御管理弁法(中国版RoHS)や廃棄電器電子製品回 収処理管理条例(中国版WEEE)の検討に際して、より透明性、公平性が 確保された中で検討を行っていただきたい。また、日系企業をはじめとする 外資企業の意見を聞く機会を持つよう強く要望したい。 法律の突然の変更 法令法律施行の猶予期 間の不足 ・法規制の変更が事前情報ないまま、実施され、今まで必要なかった手続 や提出資料等が発生し、特に輸入時において支障が出ている。 ・現地法人設立の出願の直前に法令が変更されて、書類の作成直しなど が必要となり時間を浪費した。 ・国家、省、市政府レベルの規定(法令)の改訂が行われる際、発布から施 行まで短時間で行われることが比較的多い。また、過去に遡って改訂内容 を適用することもある。今回も市レベルの社会保険関連(2つの保険)で改 訂があり、1 月4 日発布、1 月1 日から適用、というものであった。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第10条 透明性 収用の補償 上海市嘉定区に進出してまだ間もない日系企業十数社が、地元政府から 立ち退きを求められた。当初、補償条件が明確でなく、上海市の法令で認 められる補償金では不十分との懸念があった。本件につき、日中BIT第5 条(収用の補償)に基づく適切な補償を得られるようにすべきと主張したこ とにより、適正な補償の確保につながったとされる。 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第11条 収用の補償 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第10条 透明性 第5条 投資財産に関する一般的待遇 第10条 透明性 出所:「中国経済と日本企業2011年白書」(中国日本商会)、「我が国企業の直面する課題」:貿易・投資円滑化ビジネス協議会-各国・地域の貿易・ 投資上の問題点と要望 「2010年/2011年版」-(日本機械輸出組合)、「ジェトロ通商弘報 『地元政府との交渉に6つのポイント-上海市嘉定区の工 場立ち退き経験者が語る- (中国)』( 2011年08月01日 上海発)」(ジェトロ) より作成 14 (参考) 15 10.国際投資仲裁(国対投資家)利用の現状① ・投資協定に基づく投資家対国家の投資仲裁は、2011年末までの累計で450件。 ・このうち、279件がICSIDに付託され、126件がUNCITRALの手続を利用。 ・日系企業が提訴した例は、野村證券の子会社がオランダーチェコ投資協定に基づき、チェコ 政府に勝訴した一件(サルカ事件)。 累計件数 年間件数 出典:UNCTAD, Latest Developments in investor-state dispute settlement IIA ISSUES NOTE No.1 (2012) 16 10.国際投資仲裁(国対投資家)利用の現状② ・投資家から提訴された国は、法制度の未整備な発展途上国が過半数を占めており、中南米、 東欧、旧ソ連諸国が多い。日本が提訴された実績はない。 ・対象種は、エネルギー・インフラ分野を中心として、第一次産業から第三次産業まで幅広い 業種に跨っている。 国別の被提訴件数 (2011年末までの累積) 順位 1 2 3 4 5 6 7 11 12 13 被提訴国 アルゼンチン ベネズエラ エクアドル メキシコ チェコ カナダ エジプト ポーランド ウクライナ 米国 カザフスタン インド ボリビア ロシア スロバキア トルコ (以下、省略) 合 計 ICSID仲裁に付託された案件の業種別割合 (2011年末までの累積) 件数 51 25 23 19 18 17 14 11 10 農林水産業 (5%) 情報通信 (6%) 石油・ガス・鉱山業 (25%) 金融 (7%) サービス・貿易 (4%) 電力等の エネルギー 産業(13%) 運輸(11%) 上下水道、治水 (6%) 9 建設(7%) その他(11%) 450 出典:UNCTAD Latest Developments in investor-state dispute settlement IIA ISSUES NOTE No.1 (2012) 観光(5%) 出典:ICSID The ICSID Caseload - Statistics (2012-1) 17 11.世界の投資協定の締結状況 ・世界では90年代以降、二国間投資協定が急増し、2010年末現在、2,807件が存在する。 ・欧州各国や中国などは100件前後の投資協定を締結する一方、日本は28件(署名数)に とどまる。 投資協定の署名数 世界の投資協定数の推移 3,000 2,500 2,099 1,857 2,000 2,181 2,265 2,392 2,495 2,573 2,608 2,676 2,753 2,807 1,941 1,500 1,000 投資協定署名数 ドイツ 136 中国 127 スイス 118 イギリス 104 フランス 101 ・・ ・ 国名 385 500 72 165 米国 日本(※) ・ ・・ 【出所】UNCTAD “Recent developments in international investment agreements (2008-June.2009)” “World Investment Report 2011” 韓国 ・・・ 0 90 47 28 ※日本は、投資協定と経済連携協定投資章の合計数 (2012年4月現在) 18 12.投資協定に関する日本の取組 (投資協定又は投資に関する規律を含むEPA等を我が国が締結済又は交渉中の国・地域) 経済連携協定 投資章 1 2 3 4 5 6 7 8 9 * 10 シンガポール メキシコ マレーシア フィリピン チリ タイ ブルネイ インドネシア スイス ベトナム インド 2002年11月発効 2005年 4月発効 2006年 7月発効 2008年12月発効 2007年 9月発効 2007年11月発効 2008年 7月発効 2008年 7月発効 2009年 9月発効 2009年10月発効 2011年 8月発効 *すべて自由化協定(投資設立の段階も対象)。 * ベトナム、ペルーとの経済連携協定には投資協定 を準用している。 * GCCは、「投資設立章」 * ペルー オーストラリア GCC ASEAN モンゴル カナダ 2012年3月発効 交渉中 交渉中 * 交渉中 交渉準備中 交渉準備中 投資協定 1 エジプト 1978年 1月発効 2 スリランカ 1982年 8月発効 3 中国 1989年 5月発効 4 トルコ 1993年 3月発効 5 香港 1997年 6月発効 6 パキスタン 2002年 5月発効 7 バングラデシュ 1999年 8月発効 8 ロシア 2000年 5月発効 9 モンゴル 2002年 3月発効 10 韓国 2003年 1月発効 11 ベトナム 2004年12月発効 12 カンボジア 2008年 7月発効 13 ラオス 2008年 8月発効 14 ウズベキスタン 2009年 9月発効 15 ペルー 2009年12月発効 16 パプアニューギニア 2011年4月署名 17 コロンビア 2011年9月署名 18 クウェート 2012年3月署名 19 日中韓 2012年5月署名 20 イラク 2012年6月署名 サウジアラビア 実質合意 アンゴラ 大筋合意 カザフスタン 交渉中 ウクライナ 交渉中 アルジェリア 交渉中 ミャンマー 予備協議中 リビア 予備協議開始合意 モザンビーク 交渉準備中 カタール 交渉準備中 モロッコ 交渉準備中 *1~9, 16,19は、保護協定(投資後の段階が対象)、 10~15,17,18は、自由化協定(投資設立の段階も対象)。 * 台湾とは民間窓口機関間の協力取決めがある。 ご静聴ありがとうございました。 【日中韓投資協定】: http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/index.html 【問い合わせ先】 ・経済産業省 通商政策局 経済連携課 投資担当 TEL:+81-3-3501-1595 FAX:+81-3-3501-1592 e-mail:[email protected] 20