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ピルで妊娠の危険性
○ 4年次前期 専門科目群Ⅰ (選択科目) 2単位 薬剤疫学 11回目 生物薬剤学講座 児玉庸夫 1 講義の内容(1) • • • • • • • • ○ 第1回 薬剤疫学の役割 第2回 最小二乗法による回帰 (小テスト) 第3回 帰無仮説、信頼区間(小テスト) 第4回 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定、二群 間の平均値の差の検定法(小テスト) 第5回 二群間の平均値の差の検定法、χ2検定(小テ スト) 第6回 多重比較検定法と多変量解析(小テスト) 第7回 検定のまとめと演習(中間テスト) 第8回 臨床試験のデザイン(1) (小テスト) 2 ○ 講義の内容(2) • 第9回 臨床試験のデザイン(2) (小テスト) • 第10回 臨床試験のバイアス (小テスト) • 第11回 臨床試験におけるリスク因子(1) (小テ スト) • 第12回 臨床試験におけるリスク因子(2) (小テ スト) • 第13回 生存時間解析法 (小テスト) • 第14回 演習 3 ○ 第11回 臨床試験における リスク因子(1) • リスク因子の評価として、オッズ比、相対 危険度、及び信頼区間について説明し、計 算できる。 • 薬剤師国家試験 医5I-b、解析・評価 衛1B-c、疫学 法2C-c、治験の取扱い 4 ○ ケース・コントロール研究(症例・対照 研究)とオッズ比 5 ○ 臨床研究のデザイン・目的による 分類 実験的研究 前向き 研究 後向き 研究 断面研 究 観察的研究 臨床試験(探索・検証) コホート研究 (要因・対照研究) (探索・検証) ケース・コントロール研究 (症例・対照研究) (記述・探索) 断面研究(記述・探索) 6 薬8 ○ ケース・コントロール研究(症例・対照研究)と コホート研究(要因・対照研究)の比較 ①ケース・コントロール研究(症例・対照研究) ②コホート研究(要因・対照研究) 1.情報に対するアプローチの方向が逆である ①副作用の有無 ⇒ 服薬の有無(過去へ) ②服薬の有無 ⇒ 副作用の有無(未来へ) 2.用いられる指標が違う ①オッズ比(Odds Ratio : OR) ②相対危険度又は相対リスク(Relative Risk : RR) 3.母集団 ①未知(調査しないとわからない) ②既知(研究計画作成段階で規定する) 7 斉藤 ○ 相対危険度・相対リスク(RR)と オッズ比(OR)(1) ケース・コントロール研究 相対危険度・相対リスク(RR) a/(a+b)÷c/(c+d)=a(c+d)/c(a+b) オッズ比(OR) a/c÷b/d 結果(疾病) =ad/bc 要因 コホート研究 疾病あり 疾病なし 合計 (ケース群) (コントロール群) あり(曝露) a b a+b なし(非曝露) c d c+d オッズ a/c b/d 8 薬疫な ○ コホート研究( (要因・対照研究) )と ケース・コントロール研究(症例・対照研究) 実験的研究 前向き 研究 後向き 研究 断面研 究 観察的研究 臨床試験(探索・検証) コホート研究 (要因・対照研究) (探索・検証) ケース・コントロール研究 (症例・対照研究) (記述・探索) 断面研究(記述・探索) 9 薬8 ○ コホート研究( (要因・対照研究) )と ケース・コントロール研究(症例・対照研究) 母集団(症 情報に対するアプ 例数) ローチの方向 指標 コホート研究 決まってい 服用の有無 (要因・対照 る → 副作用の有無 研究) 相対危険度 相対リスク (Relative Risk) ケース・コント ロール研究 決まってい 副作用の有無 → 服用の有無 (症例・対照 ない 研究) オッズ比 (Odds Ratio) 10 斉藤 ○ オッズ比(1) • オッズ比(OR、odds ratio)は、罹患したグ ループのオッズ(危険因子(リスク因子)に曝 露した数/危険因子(リスク因子)に曝露しな かった数)を、罹患しなかったグループのオッ ズ(危険因子(リスク因子)に曝露した数/危 険因子(リスク因子)に曝露しなかった数)で 割ることで算出される • オッズ比は、疾患・副作用などが危険因子 (リスク因子)による影響を受けたか考察する 際に重要である 11 薬8 ○ オッズ比(2) • オッズ比が1.0は、罹患に影響を及ぼすとさ れた因子は危険因子(リスク因子)でないこと を意味する • オッズ比が1.0以上は、罹患に影響を及ぼす とされた因子は危険因子(リスク因子)である ことを意味する • オッズ比が1.0以下は、罹患に影響を及ぼす とされた因子は危険因子(リスク因子)でなく、 むしろ罹患しにくくしている因子であることを 意味する 12 薬8 ○ オッズ比(3) • オッズ比の値は、罹患と危険因子(リスク因子)の 関係の強さを推定しているが(点推定値)、この点 推定値の不確実さを図るためには、オッズ比の自 然対数をとり95%信頼区間を算出し、推定値の変動 の幅を算出することが有益である • 95%信頼区間全体が1.0以上の場合、罹患に影響を 及ぼすとされた因子は危険因子(リスク因子)であ ることを意味する • 95%信頼区間全体が1.0以下の場合、罹患に影響を 及ぼすとされた因子は危険因子(リスク因子)でなく、 むしろ罹患しにくくしている因子であることを意味す る • 95%信頼区間が1.0を挟む場合、罹患に影響を及ぼ すとされた因子は危険因子(リスク因子)でないこと 13 薬8 を意味する 薬疫な ○ 相対危険度・相対リスク(RR)と オッズ比(OR) ケース・コントロール研究 相対危険度・相対リスク(RR) a/(a+b)÷c/(c+d)=a(c+d)/c(a+b) オッズ比(OR) a/c÷b/d 結果(疾病) =ad/bc 要因 コホート研究 疾病あり 疾病なし 合計 (ケース群) (コントロール群) あり(曝露) a b a+b なし(非曝露) c d c+d オッズ a/c b/d 14 薬疫な ○ 観察的研究 ーケース・コントロール研究(症例・対照研究)(1)ー • ケース・コントロール研究(症例・対照研究) は後向き研究である • ケース・コントロール研究(症例・対照研究) は、ケース(研究対象としての症例)とコント ロール(対照)の群を設定し、過去の関心あ る危険因子に関する記録を調査し、その関 連性を検討するものである。 15 薬8 ○ 観察的研究 ーケース・コントロール研究(症例・対照研究)(2)ー • 事象(罹患・副作用など)固 定型 • 集団から事象(罹患・副作用 など)ありの人と事象なしの 人を抽出 • 抽出は無作為化(ランダム 化) • 事象発生から振り返って曝 露(医薬品の使用など)を調 査(後向き) • 発生頻度のまれな疾患の調 査に適している • まれに発症する疾病の要因 が解明できる 事象 あり 事象 なし 曝露 あり a b 曝露 なし c d オッズ a/c b/d オッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc 16 薬8 斉藤 ○ 観察的研究 ーケース・コントロール研究(症例・対照研究)(3)ー • ケース・コントロール研究(症例・対照研究)では、 ケース(研究対象としての症例)に対する適切なコ ントロール(対照)を選択できないこと(選択バイア ス)、面接調査などによって得られる過去の情報の 不確実さ(思い出しバイアス)など、潜在的に多くの バイアスが存在する(欠点) • ケース・コントロール研究(症例・対照研究)では、 潜在的に多くのバイアスが存在するため、得られた 結果から、興味のある危険因子と疾患との関連の 解釈は容易でない場合が多い(欠点) 17 薬8 ○ ケース・コントロール研究(症例・対照 研究)でのオッズ比の事例 18 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(1) ○ • 四肢奇形児を出産した母親で、サリドマイドを 服用した者は90人、服用しなかった者は22 人である • 正常児を出産した母親で、サリドマイドを服用 した者は2人、服用しなかった者は186人で ある ↓ 四肢奇形児の出産は、危険因子(リスク因子) であるサリドマイドによる影響を受けたと判定 できるか 19 斉藤 ○ 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(2) 課題1 四肢奇形に対するサリドマイドの影響 について、オッズ比を算出せよ 指名された者は発表する 20 斉藤 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(3) 事象あり 奇形児出産 事象なし 正常児出産 曝露あり サリドマイド服用 a b 曝露なし サリドマイド非服用 c d オッズ a/c ○ b/d オッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc 21 斉藤 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(4) 事象あり 奇形児出産 曝露あり サリドマイド服用 a 曝露なし サリドマイド非服用 c オッズ 事象なし 正常児出産 b 90 2 d 22 90/22 186 2/186 オッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc → 90/22÷2/186=380.45 (95%信頼区間は不明) 22 斉藤 ○ 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(5) 課題2 算出したオッズ比から、四肢奇形はサ リドマイドによる影響を受けたと判定 できるかどうか考察せよ 指名された者は発表する 23 斉藤 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(6) • 算出したオッズ比から、どのように判定する か ①四肢奇形はサリドマイドによる影響を受ける ②四肢奇形はサリドマイドによる影響を受けな い 24 斉藤 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(7) • 算出したオッズ比から、どのように判定する か ①四肢奇形はサリドマイドによる影響を受ける 根拠:オッズ比が380.45と高い値である ②四肢奇形はサリドマイドによる影響を受けな い 根拠:サリドマイド非服用母親22人が奇形 児を出産している 25 斉藤 外国事例1 四肢奇形はサリドマイド による影響であるとのレンツ報告(8) • 算出したオッズ比からの判定 ①四肢奇形はサリドマイドによる影響を受ける 根拠:オッズ比が380.45と高い値である 26 斉藤 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(1) ○ • 問題の起源 脳梗塞・脳出血を発現した者(女性)の危険因子(リ スク因子)として、高用量ピルの使用が指摘されて いる • 方法 脳梗塞・脳出血群:15~44歳女性、脳卒中症例 対照群:条件:年齢などを一致させた女性 に対して、経口避妊薬服用の有無を聞き取り調査 • 期間 斉藤 薬疫な 1991年~1994年の3年間 27 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(2) ○ • 脳梗塞・脳出血を発現した者(女性)と対照者 (女性)で、低用量ピル(低用量エストロゲン 経口避妊薬)を現在使用している人と、非使 用者(過去に服用者含む)を比較したオッズ 比 脳梗塞で1.18(95%信頼区間:0.54-2.59) 脳出血で1.14(95%信頼区間:0.60-2.16) 斉藤 薬疫な 28 ○ 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(3) 課題1 算出したオッズ比から、脳梗塞・脳出血は 低用量ピルによる影響を受けたと判定で きるかどうか考察せよ 指名された者は発表する 斉藤 薬疫な 29 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(4) • 算出したオッズ比から、どのように判定する か ①脳梗塞・脳出血は低用量ピルによる影響を 受ける ②脳梗塞・脳出血は低用量ピルによる影響を 受けない 斉藤 薬疫な 30 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(5) • 算出したオッズ比から、どのように判定するか ①脳梗塞・脳出血は低用量ピルによる影響を受ける 根拠:脳梗塞・脳出血の危険因子として、高用量ピ ルの服用が指摘されているので、低用量ピルの服 用も危険因子として考えられる ②脳梗塞・脳出血は低用量ピルによる影響を受けな い 根拠:オッズ比は、脳梗塞1.18、脳出血1.14で、脳梗 塞および脳出血ともに95%信頼区間は1.0を挟んでい る 斉藤 薬疫な 31 外国事例2 脳梗塞・脳出血と低用量ピル(低 用量エストロゲン経口避妊薬)の関係(6) • 算出したオッズ比からの判定 ②脳梗塞・脳出血は低用量ピルによる影響を 受けない 根拠:オッズ比は、脳梗塞1.18、脳出血1.14 で、脳梗塞および脳出血ともに95%信頼区間 は1.0を挟んでいる ↓ 脳梗塞および脳出血の発現に、低用量ピル は影響を及ぼさない 斉藤 薬疫な 32 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(1) ○ • 問題の起源 1995年より、心筋梗塞とカルシウム拮抗薬の関連性 が指摘され、安全性論争が起きた。問題解決のた め、大規模な無作為化臨床試験が実施されている が、この関連性を短期間に調査できないか? • 方法 急性心筋梗塞死亡群:75歳以下の急性心筋梗塞 死亡患者 対照群:年齢、性別、担当医、診断日を一致させた 患者 • 調査対象期間 斉藤 1991年1月~1995年4月 薬疫な 33 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(2) 曝露あり カルシウム拮抗薬服用 曝露なし β遮断薬服用 オッズ ○ 事象なし 事象あり 急性心筋梗塞死 対照群 亡群 a 35 b 62 c 105 a/c カルシウム拮抗薬のオッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc d 189 b/d 斉藤 薬疫な 34 ○ 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(3) 課題1 心筋梗塞に対するカルシウム拮抗薬の影 響について、オッズ比を算出せよ 指名された者は発表する 斉藤 薬疫な 35 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(4) 曝露あり カルシウム拮抗薬服用 曝露なし β遮断薬服用 オッズ 事象あり 急性心筋梗 塞死亡群 a 35 c 105 a/c 0.33 事象なし 対照群 b 62 d 189 b/d 0.33 カルシウム拮抗薬のオッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc → 35/105÷62/189=1.0 (95%信頼区間は0.5-1.5) 斉藤 薬疫な 36 ○ 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(5) 課題2 算出したオッズ比から、心筋梗塞はカルシウム 拮抗薬による影響を受けたと判定できるかどう か考察せよ 指名された者は発表する 斉藤 薬疫な 37 外国事例3 心筋梗塞とカルシウム拮 抗薬の関係(6) • 算出したオッズ比からの判定 心筋梗塞は、カルシウム拮抗薬による影響を 受けない 根拠:オッズ比は1.0である (95%信頼区間は1.0を挟んでいる) 斉藤 薬疫な 38 ○ 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(1) • 問題の起源 上部消化管障害を発現した者の危険因子(リスク因 子)として、非ステロイド性抗炎症薬の使用が指摘さ れている • 方法 上部消化管障害発現群:出血または穿孔を伴う上 部消化管潰瘍性病変を有し、発症後24時間以内に 緊急内視鏡検査あるいは緊急治療を実施した患者 対照群:ケースと同施設入院患者で上部消化管の 出血や穿孔はなく、年齢、性がマッチする患者 斉藤 薬疫な 39 ○ 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(2) • 上部消化管障害を発現した患者で、非ステロイド性 抗炎症薬の使用者は70人である • 上部消化管障害を発現した患者で、非ステロイド性 抗炎症薬の非使用者は159人である • 対照患者で、非ステロイド性抗炎症薬の使用者は2 0人である • 対照患者で、非ステロイド性抗炎症薬の非使用者 は209人である ↓ 上部消化管障害は、危険因子(リスク因子)である非 ステロイド性抗炎症薬による影響を受けたと判定で 斉藤 きるか 薬疫な 40 ○ 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(3) 課題1 上部消化管障害発現に対する非ステロイ ド性抗炎症薬の影響について、オッズ比 を算出せよ 指名された者は発表する 斉藤 薬疫な 41 ○ 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(4) 事象あり 事象なし 上部消化管障害発現 対照群 曝露あり 非ステロイド性 抗炎症薬服用 曝露なし 非ステロイド性 抗炎症薬非服用 オッズ オッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc a b c d a/c b/d 斉藤 薬疫な 42 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(5) 事象あり 上部消化管障害発現 曝露あり 非ステロイド性 抗炎症薬服用 曝露なし 非ステロイド性 抗炎症薬非服用 オッズ a 事象なし 対照群 b 70 c d 159 a/c 20 0.44 209 b/d 0.10 オッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc → 70/159÷20/209=4.6 (95%信頼区間2.7-7.9) 斉藤 薬疫な 43 ○ 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(6) 課題2 算出したオッズ比から、上部消化管障害 発現は非ステロイド性抗炎症薬による影 響を受けたと判定できるかどうか考察せよ 指名された者は発表する 44 斉藤 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(7) • 算出したオッズ比から、どのように判定する か ①上部消化管障害は非ステロイド性抗炎症薬 による影響を受ける ②上部消化管障害は非ステロイド性抗炎症薬 による影響を受けない 斉藤 薬疫な 45 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(8) • 算出したオッズ比から、どのように判定するか ①上部消化管障害は非ステロイド性抗炎症薬による 影響を受ける 根拠:オッズ比は4.6で、95%信頼区間全体は1.0以上 である ②上部消化管障害は非ステロイド性抗炎症薬による 影響を受けない 根拠:上部消化管障害の危険因子として、年齢、喫 煙、ストレスなどの影響が考慮されていないので、 オッズ比の妥当性は低い(年齢、喫煙、ストレスなど 斉藤 で調整したオッズ比を算出する必要がある) 薬疫な 46 国内事例1 上部消化管障害と非ス テロイド性抗炎症薬の関係(9) • 算出したオッズ比からの判定 ①上部消化管障害は非ステロイド性抗炎症薬による 影響を受ける 根拠:オッズ比は4.6で、95%信頼区間全体は1.0以上 である ↓ 報告論文では、年齢について調整したオッズ比は4.6 (95%信頼区間:2.8-7.5)、喫煙について調整した オッズ比は4.7(95%信頼区間:2.9-7.7)、ストレスにつ いて調整したオッズ比は3.7(95%信頼区間:2.2-6.3) となり、 いずれも95%信頼区間全体は1.0以上である 斉藤 薬疫な 47 国内事例2 脳出血と高血圧治療状 況の関係(1) ○ • 問題の起源 沖縄県では脳卒中が極めて少ないが、平良市では 長年、脳出血による死亡が多い • 方法 脳出血発症群:一定期間に脳出血を発症し、発症 前に高血圧の既往が確認された患者 対照群:脳出血を発症していない高血圧者で性・年 齢がマッチする患者 • 調査対象期間 脳出血発症群:発症前の2年間 対照群:1992年4月~1994年3月 斉藤 薬疫な 48 国内事例2 脳出血と高血圧治療状 況の関係(2) ○ • 脳出血を発症した患者で、高血圧治療継続の患者は4人で ある • 脳出血を発症した患者で、高血圧治療なしの患者は8人で ある • 脳出血を発症した患者で、高血圧治療を中断した患者は8 人である • 対照患者で、高血圧治療継続の患者は46人である • 対照患者で、高血圧治療なしの患者は21人である • 対照患者で、高血圧治療を中断した患者は19人である ↓ 脳出血発症は、高血圧治療受療状況による影響を受けたと 斉藤 判定できるか 薬疫な 49 ○ 国内事例2 脳出血と高血圧治療状 斉藤 況の関係(3) 薬疫な 事象あり 脳出血発症 事象なし 対照群 高血圧治療なし a 8 b 21 高血圧治療中断 a 8 b 19 高血圧治療継続 c 4 d 46 オッズ a/c b/d 高血圧治療なしのオッズ比(OR) a/c÷b/d=ad/bc → 8/4÷21/46=4.4(95%信頼区間全体は1.0以上) 高血圧治療中断のオッズ比(OR) 50 a/c÷b/d=ad/bc → 8/4÷19/46=4.8(95%信頼区間全体は1.0以上) ○ 国内事例2 脳出血と高血圧治療状況 の関係(4) 課題1 算出したオッズ比から、脳出血は高血圧治療状 況による影響を受けたと判定できるかどうか考 察せよ 指名された者は発表する 斉藤 薬疫な 51 国内事例2 脳出血と高血圧治療状 況の関係(5) • 算出したオッズ比からの判定 脳出血のリスクは、高血圧治療なしや治療中 断で増大する 根拠:オッズ比はそれぞれ4.4および4.8で、 95%信頼区間全体は1.0以上である 斉藤 薬疫な 52 ○ 89回国試 低体重児を出産した100例と、対照として非低体重児 を出産した100例について、妊婦の妊娠中の喫煙状況との関係 に関するケース・コントロール研究(症例・対照研究)の結果を示 した。妊娠中の喫煙と低体重児出産との関係について正しいも のを選択せよ。(2004年) 低体重児出産(人) 非低体重児出産(人) 合計 喫煙あり(人) a 20 b 14 34 喫煙なし(人) c 80 d 86 166 100 200 合計 100 ①妊娠中の喫煙による低体重児出産の相対危険度(相対リス ク)は、20/100と14/100の比である ②妊娠中の喫煙による低体重児出産のオッズ比は、20/80と 14/86の比である 53 89回国試 低体重児を出産した100例と、対照として非低体重 児を出産した100例について、妊婦の妊娠中の喫煙状況との関 係に関するケース・コントロール研究(症例・対照研究)の結果を 示した。妊娠中の喫煙と低体重児出産との関係について正しい ものを選択せよ。(2004年) 低体重児出産(人) 非低体重児出産(人) 合計 喫煙あり(人) a 20 b 14 34 喫煙なし(人) c 80 d 86 166 100 200 合計 100 正解 ②妊娠中の喫煙による低体重児出産のオッズ比は、20/80と 14/86の比である 54