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E-1 シケプリ

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E-1 シケプリ
E-1 シケプリ
始めに:まず最初に謝らなくてはいけません。
というのも、今回、E-1 のシケタイは 10 人もいたわけですが、船頭多くしてなん
と
やら、ぶっちゃけ 10 人分の形式を揃えるなんてことは不可能でした。なので、ものによってま
とめてるポイントがまちまちだったりしてると思います。とりあえず目次らしきものをつけて
はみましたが、別に授業通りに並んでるわけでもなく、ページ数とかも載ってないので、その
点での使いづらさは保証が出来ます。ごめんなさい。しかも、内容についても、自分自身も小
児の試験前でほとんど他の人のシケプリに目を通していないので、ぶっちゃけこのシケプリが
使えるのか使えないのか全く分かりません。開けてない箱です。可能性は無限大ですが、開け
てみたら大した物が入ってない可能性も大いにあります。とても素敵なものが出来上がってる
のかも知れませんが、保証は出来ません。なので、時間がなくてシケプリ読むか過去問を解く
か悩んでる人がいたら、とりあえず過去問を解いた方がいいと思います。ってか、確実です、
by ガタ
その方が。
☆目次(と呼べなくもないもの)
・ひじゅん担当分
……
腰背部痛、呼吸困難、蛋白尿、腹部痛
・あねご担当分
……
月経異常、意識障害・失神、発疹、食欲不振
・もりし担当分
……
胸水、嚥下困難・障害、尿量・排尿障害、出血傾向
・がたがた担当分
……
けいれん、血痰・喀痰、全身倦怠感、肥満やせ
・いたい担当分
……
チアノーゼ、下痢、めまい、吐血・下血
・しま♀担当分
……
血尿、腹部膨満、貧血
・たてお担当分
……
悪心・嘔吐、黄疸、発熱、胸痛
・ちゅう担当分
……
咳・痰
・たべい担当分
……
脱水、便秘、関節痛、動悸
腰背部痛
☆腰背部痛の原因
1脊椎性腰痛(脊柱の骨折成分を冒す病変、仙腸関節の変化、椎間板、靭帯、筋に生じる変化によって
起こる。)
2神経性腰痛(腰神経根の緊張、刺激、圧迫により下肢への関連痛を生じる)
3内臓性腰痛(腎臓や骨盤内臓障害、小腸病変、後腹膜腫瘍などによっておきる、安静にしていても軽
減しない疼痛が特徴)
4血管性疼痛(動脈瘤、末梢血管性疾患におって、腰椎や坐骨神経様症状を生じる)
5心因性腰痛
☆発症様式から
急性発症
・はっきりとした誘因がある時。
1腰椎捻挫
2腰椎椎間板ヘルニア
3変形性脊椎症
4骨粗鬆症の圧迫骨折、悪性腫瘍転移の病的骨折
・はっきりした誘因が見当たらない時。
尿路結石、解離性大動脈瘤などの内蔵由来の痛みを考える。
亜急性発症
脊椎炎・腫瘍など
慢性発症
退行性病変(変形性脊椎症、骨粗鬆症など)構築性異常(分離症、移行椎など)など
☆身体・検査所見から
1腰椎捻挫:側屈姿勢、傍脊柱筋の圧痛点
腰椎エックス線像で異常所見を認めない。
2腰椎椎間板ヘルニアの疑い:下肢症状、伸展位下肢挙上テスト
腰椎エックス線像で椎間腔の狭小化、MRI で椎間板ヘルニアの証明。
3腰部脊柱管窮窄症:間欠跛行の有無
腰椎エックス線像で変形性脊椎症性変化、MRI で脊椎管狭窄像の証明。
4骨粗鬆症の圧迫骨折、悪性腫瘍転移の病的骨折の疑い:
殴打痛、安静時痛、夜間痛の有無。
腰椎エックス線像で椎体骨折、椎対圧潰像の証明。
悪性腫瘍の場合、体重減少の有無を確認も必要。
呼吸困難
☆呼吸困難の原因と問診・検査
1呼吸器疾患:喀痰・咳嗽の有無、定期健康診断結果
胸郭の形態や呼吸の仕方、呼吸音の確認
2循環器疾患:心雑音の既往、動悸、臥位での呼吸困難、下肢浮腫
血圧や脈拍、心雑音、頚静脈怒脹、下肢浮腫など確認
3血液疾患:月経過多、妊娠、偏食
眼瞼結膜や爪床などの確認
4内分泌疾患:心悸亢進、前頸部腫脹、眼球突出
前頸部腫脹、眼球突出、動悸の確認
5腎疾患:糖尿病や腎不全の既往
体重、浮腫、血圧などを確認
6神経・心疾患:全身筋力低下、眼瞼下垂
体型、筋量を確認。神経学的所見も重要である。
7精神疾患:過換気症候群の既往、抑うつ状態、不安感
過剰なストレスの有無、精神状態の確認。
☆発症様式から
急性発症
胸痛の有無の確認。あり⇒気胸、胸膜炎、肺梗塞、虚血性心疾患。
なし⇒笛性ラ音の聴取⇒気管支喘息
⇒断続性ラ音⇒肺水腫、慢性呼吸器疾患の急性増悪
⇒先行する感冒症状の有無⇒ギランバレー症候群
COPD の急性増悪
⇒手指のこわばりた良好な PaO2 の値⇒過換気症候群
⇒以上がない場合は異物の誤嚥を考慮する。
慢性発症
胸郭に変形。⇒胸郭変形異常、肺結核後遺症(胸郭形成術術後)
胸部エックス線上肺野に異常陰影⇒肺気腫、間質性肺炎、肺癌
肺結核後遺症、鬱血性心不全、心弁膜症
心電図変化⇒心筋炎、心筋症
BUN の上昇、尿沈渣異常⇒腎不全
赤血球、Hb の減少⇒貧血
T-Cho 上昇、Alb 減少、甲状腺ホルモン高値⇒甲状腺機能亢進症
筋力低下、筋電図異常、神経伝達速度異常⇒神経、筋疾患
手首のこわばりや良好な PaO2⇒過換気症候群
蛋白尿
☆病歴から考える
1患者の年齢は若年か否か。
2急な発症か否か。
3血尿(特に赤血球円柱)があるか。
4ネフローゼ症候群か。
5全身性疾患があるか。
6腎の大きさ(超音波検査)
1~6さらに血液検査で原疾患が推定できる。
しかし、確定診断には腎生検が必要。
☆身体・検査所見から考える
炎症所見:白血球数増加、CRP 上昇、血沈の亢進
消化管悪性腫瘍を示唆する所見:便潜血陽性、腫瘍マーカー(CEA)の上昇
腸管ガスの異常:胸腹部エックス線像でフリーエアや小腸ガス像をみる。
心・肺疾患の疑い:血圧、脈拍、頚静脈怒張、心音、心雑音、肺のクラックル
心電図、動脈血ガスの異常、胸部エックス線による拡大、肺紋理増強
肝疾患の疑い:黄疸、肝脾腫、腹水、くも状血管腫、肝機能、ビリルビン値の異常
低蛋白血症、血小板の低下、肝炎、ウイルス抗体価の陽性をみる。
腎疾患の疑い:尿毒症の有無、眼瞼浮腫、過剰心音、腎腫大
蛋白尿、BUN、Cr 上昇、低蛋白血症
貧血の疑い:眼瞼結膜の貧血、スプーンネイル
☆考えるべき疾患
1
起立性蛋白尿
成長期にしばしば学校検尿で蛋白尿が陽性になることがある。就寝前に排尿し、起床時の採尿(早朝
尿)で淡白尿が陰性であれば予後はきわめて良好。
2
熱性疾患
発熱時にも蛋白尿が出現することがある。解熱後に再検する。
3
腎血管性高血圧、悪性高血圧、うっ血性心不全
血行動態の異常に伴って、レニンーアンジオテンシン系亢進によるアンジオテンシンⅡや、交感神経
系亢進によるノルエピネフリンにより蛋白尿が陽性となる。
4
糸球体疾患
各種の糸球体腎炎、腎症がある。
血尿を伴う疾患も多く、尿沈渣に赤血球円柱や変形赤血球が認められれば、糸球体腎炎と考えてよい。
糸球体腎炎はさらに病理学的に細分される。
血尿は認められないが、ごく軽度なものに腎硬化症(高血圧による糸球体病変)糖尿病性腎症および
アミロイドーシス。
血尿主体
血尿・蛋白尿
蛋白尿主体
急性糸球体腎炎
IgA腎症
微笑変化型ネフローゼ
IgA腎症
膜性増殖性糸球体腎炎
巣状糸球体硬化症
紫斑病性腎炎
紫斑病性腎炎
膜性腎症
非薄基底膜病
ループス腎炎
糖尿病性腎症
良性反復性血尿
急速進行性腎炎症候群
糖尿病性腎症
アミロイド腎症
ループス腎炎
腎硬化症
5
尿細管病変
尿中に尿細管性蛋白尿(β2-ミクログロブリン、α1-ミクログロブリン)が強陽性となる。しか
し糸球体性蛋白尿(アルブミン尿)も陽性になることがある。
6
オーバーフロー蛋白尿
多発性骨髄腫の免疫グロブリン軽鎖、横紋筋融解のミオグオブリン尿、溶血によるヘモグロビン尿が
ある。
これらの蛋白尿は試験紙法では検出されない。
腹部痛
疼痛部位⇒痛みの性状⇒疑われる疾患:随伴症状、検査所見⇒次に施行すべき検査
の順番です。
心窩部痛
⇒ 心疾患 ⇒ 狭心症:胸痛、ECG 異常
⇒ 心筋梗塞:胸痛、ECG 異常、CK、LDH、GOT 上昇
⇒ 食道疾患 ⇒ 食道破裂:胸痛、頻回の嘔吐後、胸部X線縦隔気腫 ⇒ 食道透視
⇒ 嚥下時(臥位で悪化) ⇒ 食道疾患 ⇒ 逆流性食道炎:胸焼け ⇒ 上部消化管内視鏡
⇒ 食後1~2時間⇒胃疾患 ⇒ 急性胃炎、胃粘膜病変、胃潰瘍 ⇒ 上部消化管内視鏡
⇒ 激痛 ⇒ 胃・十二指腸疾患 ⇒ 胃・十二指腸潰瘍穿孔:胸部 X 線 free air ⇒ 腹部 CT など
⇒ 背部痛 ⇒ 膵疾患 ⇒ 膵炎:膵酵素上昇、炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー、CT
右上腹部痛
⇒ 空腹時痛 ⇒ 十二指腸疾患 ⇒ 十二指腸潰瘍 ⇒ 上腹部管内視鏡
⇒ 鈍痛 ⇒ 肝疾患 ⇒ 肝膿瘍:発熱、炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー、CT
⇒ 急性肝炎:黄疸、下腿浮腫、肝酵素上昇 ⇒ 腹部エコー、CT
⇒ うっ血性肝:下腿浮腫、肝酵素上昇、胸部 X 線拡大
⇒ 腹部エコー、CT、心エコー
⇒ 激痛 ⇒ 肝疾患 ⇒ 肝癌破裂:ショック、貧血、肝機能異常 ⇒ 腹部エコー、CT、血管造影
⇒ 疝痛 ⇒ 肝疾患 ⇒ 急性アルコール性肝炎:黄疸、肝胆道酵素上昇 ⇒ 腹部エコー、CT
(胆道系は右房へ拡散) ⇒ 胆道疾患
⇒ 胆管結石、胆肝炎:発熱、黄疸、肝・胆道酵素上昇、炎症反応高値
⇒ 腹部エコー、CT
⇒ 胆石、胆のう炎:発熱、炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー、CT、MRCP
右・左上腹部痛
⇒ 鈍痛(呼吸で増強)⇒ 呼吸器疾患 ⇒ 肺炎、膿胸:咳、発熱、炎症反応高値、胸部 X 線異常陰影
左上腹部痛
⇒ 鈍痛 ⇒ 脾疾患 ⇒ 脾腫:汎血球減少 ⇒ 腹部エコー、CT
⇒ 激痛 ⇒ 脾疾患 ⇒ 脾破裂、梗塞:炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー、CT
⇒ 側腹部~下腹部痛 ⇒ 持続痛 ⇒ 泌尿器疾患 ⇒ 腎盂腎炎:発熱、尿 WBC 高値、炎症反応高値
⇒ 腹部エコー、CT
⇒疝痛 ⇒ 泌尿器疾患 ⇒ 尿結石:尿潜血陽性 ⇒ 腹部エコー、CT、DIP
下腹部痛
⇒ 激痛 ⇒ 大腸疾患 ⇒ 大腸穿孔:腹部 X 線 free air ⇒ 腹部 CT など
⇒ 排尿時痛 ⇒ 泌尿器疾患 ⇒ 膀胱炎:頻尿、尿 WBC 高値、潜血陽性 ⇒ 腹部 CT など
⇒ さまざま ⇒ 産婦人科疾患 ⇒ 子宮内膜症:月経時痛
⇒ 持続痛 ⇒ 産婦人科疾患 ⇒ 卵巣出血 ⇒ 腹部エコー、CT
⇒ 急性卵管炎:炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー、CT
右下腹部痛
⇒ 激痛 ⇒ 大腸疾患 ⇒ 盲腸軸捻:腹部 X 線
⇒ 持続痛 ⇒ 大腸疾患 ⇒ 上行結腸、盲腸憩室炎:炎症反応高値
⇒ 腹部エコー・CT、注腸・下部消化管内視鏡
⇒ 小腸疾患 ⇒ 急性回腸末端炎:炎症反応高値
⇒ 腹部エコー・CT、注腸・下部消化管内視鏡
上腹部痛から始まる ⇒ 虫垂疾患 ⇒ 急性虫垂炎:炎症反応高値 ⇒ 腹部エコー・CT
右・左下腹部痛
⇒ 激痛 ⇒ 産婦人科疾患 ⇒ 子宮外妊娠破裂:ショック、妊娠徴候、尿妊娠反応陽性
⇒ 腹部エコー・CT
⇒ 卵巣嚢腫茎捻転 ⇒ 腹部エコー・CT
⇒ 持続痛 ⇒ 産婦人科疾患 ⇒ 卵巣嚢腫破裂 ⇒ 腹部エコー・CT
左下腹部痛
⇒ 激痛 ⇒ 大腸疾患 ⇒ S 状結腸軸捻:便秘、腹満、腹部 X 線 ⇒ 下部消化管内視鏡
⇒ 持続痛 ⇒ 大腸疾患 ⇒ S 状結腸憩室炎:炎症反応高値
⇒ 腹部エコー・CT、注腸・下部消化管内視鏡
⇒ 増強する痛み ⇒ 大腸疾患 ⇒ 虚血性腸炎:下痢、下血 ⇒ 下部消化管内視鏡
臍周囲痛
⇒ 疝痛 ⇒ 小腸疾患 ⇒ 急性腸炎 ⇒ かぜ症状
びまん性の痛み
⇒ 激痛 ⇒ 腹部血管疾患⇒上腸間膜動脈閉塞症:心房細動、動脈硬化、アシドーシス、Amy↑
⇒ 腹部エコー・CT、血管造影
⇒ 腹部大動脈瘤破裂:ショック、背部痛、貧血 ⇒ 腹部エコー・CT、血管造影
⇒疝痛 ⇒ 大腸・小腸疾患 ⇒ イレウス:便秘、腹満、嘔吐、腹部 X 線二ボー ⇒ 腹部エコー・CT
⇒ さまざま ⇒ 代謝疾患 ⇒ 糖尿病ケトアシドーシス
⇒ 尿毒症
⇒ 急性間欠性ポルフィリン症
⇒ その他 ⇒ 心疾患、脊髄ろう、鉛中毒、Schonlein-Henoch 紫斑症
皮膚痛
片側性 ⇒ 皮膚疾患 ⇒ 帯状疱疹
月経異常
4 月 21 日分
担当:徳永
<「性器出血」の症状で疑うべき疾患>
性器出血
妊娠(+)
妊娠(-)
不正性器出血
月経異常
子宮筋腫
子宮悪性腫瘍
卵巣悪性腫瘍
月経量の異常
月経周期の異常
内膜ポリープ
内性器感染症
など
無月経
晩発性無月経
希初月経
頻発月経
続発性無月経
原発性無月経
視床下部性
単純性体重減少
神経性食欲不振症
下垂体性
Seehan症候群
下垂体腺腫
卵巣性
その他
特発性早発閉経
子宮性
ゴナトトロピン不応症
甲状腺疾患
高プロラクチン血症
先端巨大症
多嚢胞性卵巣症候群
副腎疾患
など
Cushing症候群
など
薬剤
など
など
<各疾患について>
~不正性器出血~
*悪性腫瘍の疑いがある場合は、内診や画像診断に加え、細胞診・組織診・腫瘍マーカ測定などを
行う。確定診断は組織学的に。
~晩発性無月経・原発性無月経~
*染色体異常や性分化異常に起因することが多い。
~続発性無月経・希発月経~
視床下部性
*LH-RH パルスが亢進する場合と減衰する場合があり、単純性体重減少性無月経と神経性食欲不
振症では後者で LH・FSH ともに↓
○単純性体重減少性無月経と神経性食欲不振症
・共通する症状:標準体重の-20%以上のやせ、やせをきたす器質的疾患なし、無月経
・単純性体重減少:病識あり、食行動異常なし、体重減少が無月経に先行。神経性食欲不振症:食
行動異常あり、発症が 30 歳以下、体型・体重に歪んだ認識あり。
○高プロラクチン血症性無月経
・無月経・乳汁漏出症を伴う慢性無排卵症。視床下部・下垂体の腫瘍や原発性甲状腺機能低下症や
薬剤などが原因で起こる。
下垂体性
*下垂体損傷により LH・FSH がともに↓
*Cushing 症候群では高 ACTH 血症、先端巨大症では高 GH 血症を呈する。
☆視床下部性か下垂体性か診断するには LH-RH テストをする。
反応(+)→視床下部性、反応(-)→下垂体性
卵巣性
*中枢に対するネガティブ・フィードバック機構が崩れるので LH・FSH ともに↑
○多嚢胞性卵巣症候群
・症状:両側卵巣の多嚢胞化と腫大、LH・アンドロゲンともに高値のため卵胞発育抑制されること
で月経異常(無排卵・無月経)
、不妊。インスリン抵抗性のため肥満、卵巣からのテストステロン分
泌増加に伴う男性化徴候・多毛なども。
・超音波所見:多数の小卵胞と高エコーを呈する卵巣間質(ネックレスサイン)
・LH↑、FSH 正常値のことが多い。
☆診断ポイント(症状→疑ってみる疾患)
・短期間での体重減少・摂取障害→単純性体重減少、神経性食欲不振症
・肥満、多毛、男性化徴候→Cushing 症候群、副腎腫瘍、多嚢胞性卵巣症候群⇒各血中ホルモン値
測定、画像診断
・甲状腺の腫大→甲状腺疾患⇒TSH、fT3、fT4 などの血中ホルモン値測定
・乳汁分泌→高プロラクチン血症⇒血中プロラクチン値測定
意識障害・失神
5 月 23 日分
担当:徳永
*はじめに:下のフローチャートの太字に沿って大体絞って下さい。あとは各検査値を参考にして
鑑別して下さい。細かいことまで触れません。すいません。
<「意識障害」の症状で疑うべき疾患>
意識障害
神経学的局在症状(+)
…脳血管障害中心となる疾患
・脳内出血(高血圧性・外傷性)
・広範囲の脳梗塞
・脳膿瘍・硬膜下膿瘍
・硬膜外血腫・硬膜下血腫・脳挫傷
・脳腫瘍
など
神経学的局在症状(-)
髄液検査:赤血球あり
くも膜下出血
髄膜刺激症状(+)
髄液検査:白血球あり
髄膜炎
髄膜刺激症状(-)
…全身性疾患による二次的な意識障害で、広範囲の皮質性・脳幹性病変に
よる疾患
・代謝障害:低酸素血症、糖尿病性アシドーシス、尿毒症、肝性昏睡、低
血糖、電解質異常、甲状腺機能障害など
・中毒疾患:アルコール、バルビタール酸など
・重症全身性感染症:肺炎、マラリア、敗血症など
・循環虚脱状態(ショック)
・てんかん
・高血圧性脳症
・高体温・低体温
など
*意識が保たれる機構を考えると、意識障害の責任病変:大脳皮質全般か脳幹網様体
*バイタルサイン・外傷・内科的全身所見などをチェック→神経学的診察
<「意識障害」の神経学的診察>
●髄膜刺激症状…項部硬直(+)、Kernig 徴候(+)→髄膜刺激症状(+)
●神経学的局在症状
・運動麻痺…錐体路障害あることを示す。単麻痺・片麻痺・対麻痺・四肢麻痺があり、その分布か
ら障害部位がある程度絞れる。
(詳しいことは各自で確認して下さい。
)
・瞳孔…対光反射(求心路が視神経、遠心路が動眼神経)や瞳孔の大きさ(瞳孔の開閉は交感神経
と副交感神経が関与)から、どの神経が障害されているか分かる。
*加えて眼球運動や呼吸パターンから障害神経を判定し、解剖学的に病巣診断を。
●頭蓋内圧亢進症状…眼底検査:うっ血乳頭(+)→頭蓋内圧亢進の疑い高
以上の検査で大体病巣診断できる。あとは画像診断や血液・髄液検査や脳波などを行う。
●その他
上位ニューロン
麻痺
深部腱反射
下位ニューロン
痙性麻痺
弛緩性麻痺
↑
↓
表在反射
(-)
(-)
病的反射
(+)
(-)
線維束攣縮
(-)
(+)
筋萎縮
(±)
(+)
偽性球麻痺
球麻痺
↑
↓
舌萎縮
(-)
(+)
舌線維束攣縮
(-)
(+)
下顎反射
*偽性球麻痺…延髄のⅨ・Ⅹ・Ⅻ核より上位のニューロンが麻痺した場合
球麻痺…延髄のⅨ・Ⅹ・Ⅻ核が麻痺した場合
*筋固縮(+)→錐体外路の障害(+)
*髄液(正常)
・水様透明
・髄液圧:60~180mmH2O(200mmH2O≦:脳圧亢進、50 mmH2O>:低髄液圧)
・細胞数:3~4 個/1mm3 以下、細胞の種類:リンパ球(約 70%、大部分 T 細胞)
、単球(約 30%)
・蛋白:腰椎部 15~45mg/dL(アルブミン 80%、グロブリン 20%)
、糖:45~80mg/dL(血糖値の 55
~80%)
<各疾患について>
○脳内出血
・大半が高血圧の持続による血管の壊死に起因。
・急性。活動期に突然の激しい頭痛・嘔吐により発症。
・神経症状:頭蓋内圧亢進のため進行性でときに昏睡、髄液:血性
・出血の部
位・程度により症状が大きく異なる。
○脳梗塞
・脳血栓(アテローム硬化部位への血小板付着による)と脳塞栓(心原性)がある。
・急性。安静時に発症。脳内出血に比べ頭痛・意識障害軽い。
・神経症状:神経学的局所症状(片麻痺など)
、意識障害軽い。髄液:清澄
○脳膿瘍
・副鼻腔炎などが波及し、限局性の病変作る。
・亜急性~慢性が多い。脳浮腫→頭痛、髄膜刺激症状。CT でリング状
○くも膜下出血
・多くが嚢状脳動脈破綻が原因。
・急性。激しい頭痛で始まる。硝子体下(網膜前)出血
・神経症状:意識障害はむしろ一過性
*以上の疾患には、画像診断が有効。
○髄膜炎
・細菌性・ウィルス性は急性で発熱・頭痛・嘔吐・意識障害(ウィルス性では稀)など、結核性・
真菌性は亜急性で発熱・頭痛で始まり悪心・嘔吐・意識障害などが見られる。
・髄液では細胞・圧・蛋白↑、細菌性:濁・多核白血球↑・糖↓、ウィルス性:水様・リンパ球↑・
糖不変、結核性・真菌性:スリガラス様・リンパ球↑・糖↓
○高血圧性脳症
・急激な過度の血圧上昇(収縮期 160~300mmHg、拡張期 110~200mmHg)により頭痛、悪心・嘔吐、
精神症状、視力障害、意識障害をきたす。
・脳浮腫のような所見→血圧正常化で消失:可逆的
*授業では敗血症による意識障害を扱いました。敗血症の診断は、血液検査やその他の所見から診
断できるんじゃないでしょうか??あと JCS と GCS は各自見といて下さい。
発疹
5 月 26 日分
担当:徳永
<「水疱」の症状で疑うべき疾患(比較的重症な場合)>
・Stevens-Johnson症状群
・中毒性表皮壊死症(TEN)
・尋常性天疱瘡
・水疱性類天疱瘡
・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
など
<各疾患について>
○Stevens-Johnson症状群
・薬剤が原因の約50%。TENに移行することあり。死亡率約10%。
・症状:高熱・関節痛、全身性の紅斑(虹彩状紅斑も見られる)を伴う水疱(表皮下水疱)
。眼・口
腔・外陰部の粘膜部のびらんが著名で重篤な症状。
・検査所見:血沈・CRP・白血球↑、肝・腎機能障害
○中毒性表皮壊死症(TEN)
・薬剤が原因の80%以上。死亡率約30%。
・症状:広範囲の有痛性紅斑→表皮下水疱形成し、全身の表皮剥離(Nikolsky現象+)。眼・口腔・
陰部・気道・食道の粘膜の強いびらん。重篤な肝・腎・呼吸器・消化器・造血器障害→シ
ョック状態、後遺症として機能障害になることあり。
・組織学的所見:表皮細胞が全層にわたり融解壊死(アポトーシス)、表皮・真皮境界部に解離
☆SJSとTENの鑑別
・侵される皮膚面積
TEN:>30%
SJS:<10%
・虹彩状紅斑
TEN:なし
SJS:あり
○尋常性天疱瘡
・天疱瘡(デスモグレインに対する自己抗体によりデスモゾーム構造が破壊され表皮内水疱が生じる
疾患)の一種。中年~老年に好発。
・症状:紅斑伴わず破れやすい水疱が粘膜、続いて皮膚に多発。生じるびらんは難治性で二次感染
起こす。Nikolsky現象+
・抗表皮細胞間IgG抗体+
・組織学的所見:表皮基底層直上に棘融解による表皮内水疱、棘融解細胞
*棘融解…デスモゾームの変性・形成不全によりケラチノサイト同士の結合が失われバラバラにな
っている状態。
○水疱性類天疱瘡
・ヘミデスモゾームに存在する類天疱瘡抗原に対する自己免疫性水疱症。
・症状:紅斑伴う破れにくい緊満性水疱が多発。強い瘙痒。Nikolsky現象-
・抗基底膜部IgG抗体+
・組織学的所見:表皮・真皮境界部に裂隙、基底膜直上に表皮下水疱
○ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
・黄色ブドウ球菌の表皮剥脱素により間擦部の紅斑→水疱→表皮剥離。Nikolsky現象+
・主に小児に発症。かなりまれで予後良好。
・咽頭・鼻腔にブドウ球菌証明される。
・組織学的所見:表皮顆粒間の棘融解、顆粒層での水疱形成
食欲不振
6 月 7 日分
担当:徳永
<「食欲不振」の症状で疑うべき疾患>
・消化器疾患(多い)
・内分泌疾患
・精神疾患(神経性食欲不振症、うつ病)
・悪性腫瘍
・重症感染症
・循環器疾患
・腎疾患
・呼吸器疾患
・薬物
など
☆診断ポイント(症状→疑ってみる疾患)
*随伴症状に注目し、ある程度絞れたところで各種検査を行う。
・嘔吐、腹・背部痛、下痢・便秘、下血、黄疸→消化器疾患
・無月経、月経過多、悪性腫瘍は常に念頭に。
・発熱→感染症、代謝性疾患、腫瘍性疾患
・動機、息切れ、咳、浮腫、全身倦怠感→心・腎・肺・甲状腺疾患
各種検査をして上記の疾患を除外し器質性疾患がない場合、精神疾患を疑う。
(この授業は精神疾患中心だったので上記の疾患の鑑別は省略させてもらいます。
)
<各疾患について>
○神経性食欲不振症(AN)
・ANR(ひたすら食べない)とANBP(食べて吐く)がある。
・症状:標準体重の85%以下の低体重、やせ願望・肥満恐怖、ボディー・イメージの障害、無月経、
身体的状態の深刻さに比して過活動、自傷行為・自殺企図(ANBPで)
・神経性大食症(BN)と容易に移行し合う。
(自信ある状態はAN、自己嫌悪気味だとBNぽい)
○うつ病
・症状:憂鬱気分、意欲低下、不安、焦燥、罪悪感、気分の日内変動(特に朝方不調)、食欲不振・
体重減少、睡眠障害(熟眠障害・中途覚醒・早朝覚醒など)
、自傷行為、自殺観念・自殺企
図、精神運動・思考・認知障害
*神経性食欲不振症における体重減少は、やせ願望・肥満恐怖により食べないことが原因。うつ病
における体重減少は、食べる意欲が低下して食べないことが原因。
*昨年度の過去問に神経性大食症が出ていたので念のため触れておきます。
○神経性大食症(BN)
・BNP(吐く)とBNNP(吐かずに食べまくり)がある。
(BNPのANBPとの違いは月経停止・激しいやせ願
望が見られないこと。
)
・症状:短時間での多食と食行動に関するコントロール喪失、体重増加防止のための不適切な代償
行為(自己誘発嘔吐・絶食など)、自己評価は体型・体重の影響を過剰に受ける(やせ願望
あるが必ずしも強くない)
、一部は無月経、自傷行為、自殺企図
・うつ病合併すること多
胸水
4 月 19 日分
BY M島
1 胸水とは・・
胸水とは、胸膜腔に存在する液体です。正常でも1日に10ml程度の胸水が産生・吸収されており、呼吸運動を
円滑にする潤滑油の働きをしています。この産生と吸収のバランスが崩れると、胸水が増加し問題が生じます。
具体的に
産生量が増加する原因としては、
・ 毛細血管透過性の亢進(炎症や悪性腫瘍などによる)
吸収量が低下する原因としては
・
静水圧の上昇
・
膠原浸透圧の低下(低アルブミン血症など)
・
胸膜リンパ系の通過障害(癌による閉塞など)
2 胸水の性状
漏出液
滲出液
外見
淡黄色、透明、水様
黄色~褐色、混濁、血性、膿性、乳び性
比重
1.015以下
1.018以上
PH
7.3以上
7.3以下
リバルタ反応
陰性
陽性
総蛋白 (g/dl)
3.0未満
3.0以上
胸水LDH (IU)
200未満
200以上
3 考えるべき疾患
1、 漏出液
・
大循環の静水圧上昇・・・・うっ血性心不全、収縮性心膜炎など(両側性が多いが片側性のときもある)
・
血漿膠質浸透圧の低下・・・・ネフローゼ、肝不全などによる低アルブミン血症
・
胸腔内圧の低下・・・・無気肺、trapped lung など
・
横隔膜を通過した腹水・・・・メグズ症候群(Meigs’syndrome)、腹水をきたす疾患
2、 滲出液
・ 胸膜の毛細血管透過性亢進・・・・胸膜炎、胸膜腫瘍(悪性胸膜中皮種など)、膵炎、
横隔膜下膿瘍、膠原病など
・
胸膜リンパ管圧の上昇・・・・腫瘍、炎症などによるリンパ管閉塞
3、 血液
肺癌、外傷、肺梗塞など
4、 乳び
外傷による胸管損傷、悪性腫瘍による胸管閉塞、肺リンパ脈管筋腫症に合併するもの
4 診断の流れ
・ 胸水の原因疾患の診断は1回の試験穿刺でつくこともあるが困難の場合も多いので、頻度から考えるのが実
際的である。悪性腫瘍によるもの、感染症、心不全、その他の順に考える。
・ 一側肺の透過性が低下してしまう(白くなる)ほどの胸水はほとんどが悪性である。
・ 感染症は結核と肺炎に伴う細菌性胸膜炎がほぼ同数である。
・ 試験穿刺をしたら、ph、蛋白、糖、LDH、ADA、アミラーゼ、WBC、細胞診、一般細菌培養、抗酸菌培養を
チェックする。
<胸水の原因疾患の診断>
→
YES
↓
NO
胸水 → 両側性か → 心不全、低アルブミン血症など
↓
流動性がないか → 陳旧性胸膜炎、限局した膿胸、胸膜炎
↓
漏出性か → 心不全、低アルブミン血症、無気肺、腹水など
↓
WBCが多いか → 炎症性
↓
ADA高値 → 結核性の可能性(ADA100以上ならほぼ確実)
↓
癌性の可能性
嚥下困難・障害
5 月 9 日分
BY M島
1、 考えるべき疾患と鑑別に用いる検査
① 口腔(舌)・咽頭疾患
・
炎症性疾患・・・舌炎、口内炎、扁桃炎(扁桃の腫大、発赤、白苔など)
→ 炎症が強い場合は血液検査でWBCやCRPが上昇。
・
良性腫瘍・・・舌の血管腫や乳頭腫があるがマレ
→ 腫瘍性病変があるときは生検を行い悪性腫瘍との鑑別が重要。
・
悪性腫瘍・・・舌癌、咽頭癌、悪性リンパ腫など
→ ファイバースコープや後鼻鏡で舌や咽頭粘膜の性状、発赤、潰瘍、苔被
出血の有無などを観察。
→ CTやMRIで病変の広がりや周辺組織との関係、リンパ節転移などをみる。
・
神経・筋疾患・・・重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、転移性腫瘍などによる球麻痺
多発性脳梗塞による仮性球麻痺、筋ジストロフィーなど
→筋電図、筋生検、頭部CT・MRIなどが有用
※ 嚥下障害と同時に構音障害、誤嚥、鼻腔への逆流を認めることが多い。
② 食道疾患
・
炎症性疾患・・・食道憩室、食道炎や食道潰瘍による瘢痕性食道狭窄など
→ 食道X線造影検査や上部消化管内視鏡検査が有効。
※ 胸やけ、胸痛、胸骨後方痛、心窩部痛、食道の逆流を伴う。
・
良性腫瘍・・・平滑筋種、脂肪腫、乳頭腫などがあるがマレ
→ 上部消化管造影や内視鏡で良悪性の鑑別をつけ、生検で確定診断。
※ 一般的には無症状だが、腫瘍が大きくなると嚥下困難あり
・
悪性腫瘍・・・食道癌、咽頭癌など
→ 上部消化管造影と上部消化管内視鏡が有効である。
超音波内視鏡、胸腹部CT/MRIでは病変の進行度やリンパ節転移がわかる。
※ 最初は固形物、続いて流動物の嚥下障害がおこる。
病変の進行に伴い、胸痛、吐血、体重減少、嗄声(反回神経麻痺)を認める。
・
機能的疾患・・・アカラシアなど
→ 食道内圧検査や24時間食道内PHモニタリング検査が必要。
食道アカラシアでは食道X線造影検査を行う。
※ 初発時から固形物と液状物に対する嚥下障害を認める。
③
食道外圧迫性疾患・・・甲状腺腫瘍、縦隔腫瘍など
→ 食道X線造影検査で食道外圧迫を認めたら、CTやMRIで腫瘍性病変の
確認を行い、病理組織学的検査(生検、腫瘍摘出)で診断が確定する
④
全身性疾患・・・強皮症、皮膚筋炎、アミロイドーシスなど
→ 強皮症では四肢抹消での皮膚硬化、関節・筋症状の出現、抗核抗体や抗Scl-70抗体 陽性
→ 皮膚筋炎では四肢近位筋主体の対称性の筋力低下、筋電図の筋原生変化、
抗核抗体や抗Jo-1抗体 陽性
→ アミロイドーシスでは肝臓や腎臓へのアミロイド沈着が高頻度。
冒される臓器により症状や検査所見は多岐にわたるが、尿蛋白、ベンス・ジョーンズ蛋白、肝・腎機
能障害、ネフローゼ症候群、心電図異常(低電位、伝導障害)などがある。
⑤
精神的病因・・・ヒステリーなど
→ 器質的疾患の除外が必要である。
尿量・排尿障害
5 月 24 日分
BY M島
1、多尿・・・1日尿量が2500~3000mlを超えたとき
多尿
↓
↓
↓
低浸透圧尿
浸透圧利尿
(尿浸透圧<250Osm/L)
(尿浸透圧>300Osm/L)
↓
↓
中枢性尿崩症(バソプレシンの分泌低下)
糖尿病
腎性尿崩症(バソプレシン抵抗性)
マンニトール
心因性・その他による多飲
尿素
薬剤・嗜好品(口渇の誘発や利尿作用など)
その他の尿溶質
2、乏尿・無尿・・・1日尿量が500ml以下が乏尿、100ml以下が無尿
腎前性
血圧低下、心不全、脱水症など腎血流量の低下をきたす疾患を考える。
腎性
腎炎、腎梗塞、腎皮質壊死、腎尿細管壊死などの腎疾患を考える。
腎後性
両側尿管結石や悪性腫瘍などによる両側性の尿管閉塞の機序を考える。 また、両側性の水腎
症をきたす疾患には先天性、膀胱尿管逆流症(VUR)、後腹膜線維症などがある。
※ これらの病態では高窒素血症になってくるが、尿毒症に発展するので、迅速な診断と対処が必要である。
3、尿閉・・・膀胱内の尿を排尿できず、膀胱内に尿が充満している状態
・
下部尿路(尿道)の通過障害・・・前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、尿道結石、膀胱頚部に発生し
た膀胱癌、陰茎や尿道の悪性腫瘍、小児の尿道弁、子宮筋腫などの小骨盤腔内腫瘤など
・
神経因性膀胱による膀胱の収縮機能障害
※ 触診所見で下腹部に拡張した膀胱が触知される。
恥骨上部からのエコー検査で尿が充満した膀胱を容易に確認できる。
尿道狭窄や尿道結石などがなければ導尿によって尿閉の確認と解消ができる。
4、頻尿・・・排尿の回数がふえること
・
神経性頻尿・・・残尿や尿路感染がなく膀胱機能に異常がないにも関わらず、覚醒時に頻尿が出現。
・
前立腺肥大症・・・夜間頻尿が多い。
・
急性および慢性の膀胱炎や前立腺炎・・・膀胱炎の背景に結石や膀胱腫瘍があることも。
・
間質性膀胱炎や萎縮膀胱炎・・・膀胱容量が減少し頻尿に。
5、尿失禁・・・膀胱内に尿を蓄尿しておくことができずに漏れてしまうこと
腹圧性尿失禁
咳、笑ったとき、運動中などで膀胱内圧が高まったときに、蓄尿を維持する尿道内圧が不十分
なために尿が漏れてしまう。
切迫性尿失禁
尿意を伴って、間に合わずに尿が漏れ出る失禁で、不安定膀胱、排尿筋過反射などの要因が
しばしばみられる。
溢流性尿失禁
排尿ができずに膀胱内に充満した尿(尿閉状態)によって膀胱内圧亢進が生じ、尿道内圧を
上回ったときに漏れ出る失禁で、奇異性尿失禁ともよぶ。
持続性尿失禁
尿管膣廔、膀胱膣廔、尿管異所性開口や括約筋障害時におこる。
機能性尿失禁
排尿筋や尿道に基本的な問題はないが、感染、結石、異物、薬剤などによる二次性尿失禁。
6、遺尿症・・・本人が意識していないにもかかわらず排尿してしまうこと
括約筋機能や膀胱排尿神経機能に器質的な異常はなく、無意識に通常と同様の排尿が起こる点で、狭
義の尿失禁とは異なる。覚醒時に起こるか否かにより昼間遺尿症と夜間遺尿症とに分けられ、夜間遺尿症を夜尿
症とよぶ。
出血傾向
6 月 5 日分
BY M島
1、 出血傾向の診断の進め方
医療面接
→
先天性疾患の確認
→
出血の部位、程度(重症度)を確認
↓
身体診察
↓
スクリーニング検査
・
血球検査、赤沈
・
出血時間、毛細血管脆弱性試験
・
PT,APTT
確定診断のための検査
・
骨髄検査
・
抗血小板抗体、抗核抗体
・
血小板凝集能、粘着能検査
・
凝固因子定量
・
フィブリノーゲン、FDP、Dダイマー、PIC、TA
T
2、
考えるべき疾患
① 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
・
急性に発症し数週から数ヶ月の経過をとる急性型と、徐々に発症して年余の経過をとる慢性型がある。
・
急性型は2~9歳の小児に多く、男女差は少ない。発症前にウイルス感染症などがあることが多い。
・
慢性型は20~40歳の成人で男女比は1:3~4である。
・
抗血小板抗体、特に血小板結合免疫グロブリンG(PAIgG)が約90%の症例が陽性である。
② 再発不良性貧血
・
造血細胞の障害により、末梢血では汎血球減少と骨髄の低形成が特徴である。
・
初発症状としては血小板減少による出血傾向がみられることがあり、末梢血液検査、
骨髄検査で診断する。
③ 白血病
・
骨髄で白血病細胞が増殖し、造血幹細胞の増殖が妨げられので、汎血球減少が起こる。
・
診断には末梢血液検査、骨髄検査が必要である。
④ 血小板無力症
・
血小板は正常であるが、血小板凝集能が障害されているために出血傾向になる。
・
常染色体劣性遺伝性疾患で、新生時期や小児期から鼻出血、歯肉出血、点状出血、紫斑などがおこる。
⑤ アレルギー性紫斑病(Schonlein-Henoch 紫斑病)
・
血小板数、血小板機能、血液凝固能には異常がなく、アレルギー性血管炎があり、紫斑、関節痛、腹痛、
腎障害などの多彩な症状をきたす。
・
主として小児に多く、3~7歳に多い。
・
上気道感染などの先行感染、薬物服用、虫さされなどがきっかけになることもある。
⑥ 血友病
・
凝固因子の先天的な欠乏あるいは活性異常によっておこる出血傾向。
・
診断は、血小板、PTは正常で、APTTが延長し、凝固因子活性の検査で行う。
⑦ 播種性血管内凝固症候群(DIC)
・
凝固反応が活性化され、播種性に微小血栓が形成され、臓器に虚血性障害を起こすと同時に、線溶系
が亢進し、血小板、凝固因子が消費されて出血傾向をおこす。
・
血小板減少、PTおよびAPTTの延長、フィブリノーゲン減少、FDP高値が診断に有用。
⑧ 肝硬変
・
血小板数が減少し、血液凝固因子のほとんどは肝臓で合成されるので、凝固因子活性が低下する。
そのため、出血傾向をきたす。
⑨ ビタミンK欠乏
・
ビタミンKは凝固因子、凝固阻止因子の合成に必要である。
・
新生児ではビタミンK欠乏により新生児メレナをおこす。
⑩ 薬物起因性
・
抗腫瘍薬は血小板産生を抑制し、血小板減少をきたす。
・
抗菌薬、抗炎症薬などでは免疫学的機序によって血小板を破壊し、血小板減少をきたす。
・
アスピリン、チクロピジンなどは血小板凝集を抑制する。
・
ワルファリンはビタミンKと拮抗し、凝固因子の生合成を抑制する。
けいれん
☆けいれんとは
痙攣とは一過性の神経細胞の興奮による筋収縮のことで、緊張性(強直性)のものと間代性(収縮と弛
緩を繰り返す)のものがあります。また、Na や Ca などの電解質異常によっても痙攣が生じます。あと、
激しい運動後の局所的な痙攣もありますが、これは乳酸などの疲労物質が蓄積することによって起こる
ものと考えられており、臨床上問題となることは稀っぽいので今回は割愛します。
☆思い浮かべるべき疾患
痙攣で気にしなくてはいけないことは、その痙攣が部分的なものなのか、それとも全身性のものなのか
ということと、神経学的な所見を伴うかどうかという点です。基本的には、部分的+神経学的所見(+)
の場合は中枢神経の局所が傷害されている場合が多く、全身性+神経学的所見(+)では中枢神経がびま
ん性に傷害されています。また、全身性+神経学的所見(-)の場合には、中枢神経というよりは電解質
や薬物中毒など体内環境の異常が示唆されます。
①頭蓋内疾患
脳血管障害(脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血・もやもや病・静脈血栓症など)、
脳腫瘍(転移を含む)、感染症(髄膜炎、脳炎)
、てんかん
②代謝性障害
脱水、低血糖症、低酸素血症、電解質異常、尿毒症など
③薬物、アルコール
ベンゾジアゼピン系やバルビタール系の断薬、テオフィリン中毒、アルコール
の離脱症状
④外傷
脳挫傷、頭蓋内血腫
→
外傷後てんかん
⑤その他
不整脈による Adams-Stokes 発作(失神に近い)
、ヒステリー、詐病
☆各々の疾患について
① 脳血管障害
けいれん発作は急性期と慢性期(数ヶ月~)に起きてきます。痙攣は部分的なものが多いですが、障
害部位が広範であれば全身性の痙攣となります。神経学的所見は障害部位に依存し、局所症状を認め
ます。その他の随伴症状としては、頭痛が重要です。高血圧や糖尿病、心房細動の既往はリスクファ
クターとなるので要チェック。神経学的所見で局所症状が見られたら積極的に頭部 CT、MRI を行い、
出血や梗塞巣の有無を確認しましょう。
② 脳腫瘍
腫瘍による刺激で痙攣発作が出ますが、その内容はてんかんに似ているため症候性てんかんと呼ばれ
ています。そのため、成人で初発のてんかんを認めた場合には、脳
腫瘍を疑い頭部 CT、MRI を行
う必要があります。その他の症状として、頭蓋内圧亢進症状(嘔吐、頭痛、乳頭浮腫)は多くの場合
で認められます。腫瘍による局所症状も当然現れてきます。また、転移性だった場合には、胸部腹部
CT や腫瘍マーカー、PET などにより原発巣の検索を進める必要があります。
③ 感染症
髄膜炎は発熱や頭痛、髄膜刺激症状を認めた場合には積極的に疑い、腰椎穿刺を行います。ただし、
頭蓋内占拠病変がないことを頭部 CT などで確認してから行った方が良いとのことです(少なくとも
眼底所見から乳頭浮腫がないことを確認すること)。脳炎では病変が局所にとどまっている場合には
部分性のこともありますが、多くは全身性の痙攣を引き起こします。これもやはり発熱や頭痛を伴い、
髄液検査が有用です。また、頭部 CT では浮腫を反映して低吸収域となります。その他、MRI や SPECT
が行われる場合もあります。
※けいれんは髄膜炎よりも脳炎に出やすいらしいです。
④ てんかん
痙攣の内容は様々で、局所症状のみの部分発作や、それが多発的に起こった複雑部分発作、あるいは
全身性に出る強直間代性発作などがあります。機能性のてんかんは小児に多く、その診断には脳波が
有用で、スパイクなどの異常脳波が観察されます。一方、器質性のてんかん(症候性てんかん)は成
人に多く、その原因は脳腫瘍や外傷です。前述の通り、成人で初発のてんかん発作を認めた場合には
脳腫瘍の検索を行うことが大切です。また、てんかんは一度だけの発作で診断されることはなく、以
前にも同じような発作があったかどうかを問診することが大切になってきます。
⑤ 低血糖症
症状が出るのは血糖が大体 50mg/dl 以下になったときですが、高血糖と違い、明確にいくつだと低血
糖という定義はありません。分類としては空腹時低血糖(インスリノーマなど)、医原性低血糖(イ
ンスリン過剰摂取)、アルコール過剰摂取など原因は様々です。血糖が足りないので痙攣は全身性と
なります。その他の症状としては人格変化や異常行動、意識レベルの低下、気分不快、冷汗、振戦、
心悸亢進、皮膚蒼白、頻脈などが認められます。緊急性が高いので疑ったらとりあえずブドウ糖を急
速静注します。
⑤ 電解質異常
低 Na 血症、高 Na 血症、低 Ca 血症、低 Mg 血症が原因となる。体液の異常なので痙攣は全身性と
なります。これらは血液検査を行えば異常を発見できるので、実際に患者さんをみた時に電解質異常
を疑えるように、以下には各々に特徴的な症状をいくつか列挙しておきます。低 Na 血症(135mEq/L
以下)は、軽度では傾眠や全身倦怠感、であるが、高度では昏睡状態となる。高 Na 血症(154mEq/L
以上)は皮膚や粘膜の乾燥、血圧低下や頻脈などの脱水症状が出る。低 Ca 血症(8.0mEq/dL 以下)
は白内障、下痢、乳頭浮腫、異常行動などを呈す。
血痰、喀血
☆血痰、喀血をきたす原因
原因としては、呼吸器疾患、循環器疾患、全身性疾患の3パターンが考えられます。なので、まずは、
血痰、喀血の原因がこれら3つのうち、どれに起因しているかの目星をつけましょう。
①呼吸器疾患
咳嗽、喀痰、発熱、呼吸困難、肺胞呼吸音の異常、あるいはこれらの呼吸器症状の既往、
喫煙歴などがある場合に、積極的に疑う。
②循環器疾患
心雑音の既往、胸痛、動悸、起座呼吸、浮腫(特に下腿)、肺胞呼吸音の異常(胸水が
貯まることによる湿性ラ音)などがある時は積極的に疑う。
③全身性疾患
範囲は広いですが、この場合、出血素因や膠原病などの可能性があるので、血液疾患の
既往、全身の出血傾向、関節痛、血尿、浮腫、皮膚症状などがあるかどうかに注目する。
☆思い浮かべるべき疾患
①呼吸器疾患
感染症(肺炎、結核、肺化膿症、肺アスペルギウス症など)、肺癌、気管支拡張症、慢
性気管支炎などなど。
②循環器疾患
大動脈瘤、肺梗塞、うっ血性心不全など
③全身性疾患
出血性素因(白血病、血小板減少性紫斑病 etc)、膠原病(Goodpasture 症候群 etc)
など
☆喀血と吐血の違い
当たり前ですが、患者さんが「喀血したんですが!!」などと言って来院することは稀です。という
か、あったとしてもそれが実際に喀血かどうかというと、吐血の可能性もあり、決めつけるのは危険で
す。なので、テスト的に必要かどうかは分かりませんが、
「血を吐いた」という訴えの患者さんが来たと
きに吐血なのか喀血なのかを見分けるポイントをいくつか載せておきます。
喀血
咳と共に出ることが多く、色は鮮紅色。泡沫状で凝固はしていないことが多く、食物残渣が含
まれることはありません。また、胸部の苦悶感や呼吸困難など呼吸器疾患を疑わせる症状が存
在する場合も喀血の可能性が高くなります。
吐血
悪心を伴い、嘔吐によって排出されます。色は暗褐色でコーヒー残渣様と表現されることもあ
ります。性状は塊様で凝固を伴うことが多く、時に食物残渣を含みます。また、悪心や胃部不
快感などの上部消化管を疑う症状がある場合は吐血の可能性が高くなります。
※それ以外に、上咽頭や口腔からの出血を吐血や喀血と勘違いしてくる患者さんもいるらしいので注意が必要です。
☆各々の疾患について
① 肺癌
肺門型は早期から喀血や咳などの症状が出やすいが、肺野型では早期には無症状なので注意が必要。
胸部 Xp で結節性陰影を見いだし、疑った場合には擦過細胞診(気管支鏡にて)
、喀痰細胞診(肺門
型がターゲット。肺野型での感度が低い)、腫瘍マーカー(扁平上皮癌:SCC、小細胞癌:NSE,Pro-GRP、
肺腺癌:SLX)などを調べます。
② 気管支拡張症
授業の症例はこれでした。気管支での持続感染により筋組織や弾性繊維が破壊されて起こります。喀
痰や血痰、喀血などの症状が持続的にみられ、閉塞性障害を認めます。胸部 Xp では変化を捕らえづ
らいですが、胸部 CT で線状陰影や輪状陰影など特徴的な画像が得られるので、教科書等で一回は画
像を確認しておいた方がいいと思います。
③ うっ血性心不全
通常は狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症などなんらかの心疾患の既往を持つ。労作性呼吸困難や起座呼
吸、倦怠感に加え、浮腫、頚静脈怒張、肝腫大、胸水、腹水などが認められる。その他、胸部聴診や
心電図(左室肥大など)の確認も大切である。
④ 肺塞栓症
突然の呼吸困難、胸痛、ショックで発症する。PaO2↓、頻呼吸による呼吸性アルカローシス、胸部
造影 CT(血流が途絶えた先が無血管野となり明るく抜ける。塞栓を捕らえられる場合もある)、肺換
気・血流シンチ、肺動脈造影などで診断する。塞栓の出所として一番多いのは下肢の深在静脈からの
血栓である。
⑤ 急性白血病
正常造血が抑制されることにより、血小板が減少し出血傾向を呈す。その他に貧血症状、易感染性、
発熱、肝脾腫、リンパ節腫大などが認められる。多くの場合、白血球は増加し、異常な白血球を認め
る。骨髄穿刺や骨髄生検を行うこともある。
⑥ Goodpasture 症候群
自己免疫の異常により抗基底膜抗体が産生されることにより、肺及び腎臓の基底膜が障害される。重
篤な喀血、呼吸困難、急速進行性腎不全などが特徴で、所見としては、血尿や蛋白尿、胸部 Xp にて
非左右対称で両側性の斑状陰影を認める。
⑦ 肺結核
結核で喀血が出るのはわりと病状が進行してからです。胸部 Xp で初感染では下肺野、既感染発病で
は上肺野に淡い浸潤影や辺縁不鮮明の結節陰影、石灰化などを認めます。胸部 CT では肉芽組織が小
さな粒状影として認められます。また、ツベルクリン反応(-)なら未感染と考えられますが、感染間
もない時期や免疫力低下がある場合には偽陰性となるので要注意。培養は確定診断にはなりますが、
3週間ほどかかるので、その場での診断には役立ちません。胸水検査では滲出性で色の濁った胸水を
認め、LDH↑、リンパ球↑、Rivalta 反応(+)となり、ADA が高値ならば結核の可能性はかなり高
くなります。
全身倦怠感(体がだりぃ)
☆気にすべきこと
まずは、全身倦怠感がの原因が精神疾患なのか器質疾患なのかを念頭に置きながら、患者さんが訴える
全身倦怠感の内容を聞いてみましょう。一般的に、精神疾患では病気で悩んでいる期間が長く、休息な
どを取っても気分は晴れないので症状は改善せず、返って悪化することもあります。また、倦怠感は一
日の始まりである朝方に強い傾向があり、過去に何かしらのきっかけ(配偶者の死など)があることが
多いようです。一方、器質疾患では、病期は短めで、休息を取ると倦怠感が改善することが多く、疲労
がたまる夕方の方が症状が強い傾向があります。また、精神疾患に見られるような心理的なきっかけは
ないのが普通です。
☆思い浮かべるべき疾患
……って、発熱ともども鑑別にこれほど困る症状もないように思いますが(汗。
とりあえずは、どんな時に全身倦怠感が生じるかを大まかに箇条書きにしたいと思います。
・気分(精神的)
・代謝、内分泌が異常
・慢性消耗性疾患
・筋肉などの疲労
・酸素が足りない
・睡眠不足
・薬など
では、以上のような倦怠感の大まかな原因を頭に浮かべながら、随伴症状、随伴所見に注目して疾患を
絞り込んでいくことにしましょう。
① 精神疾患
気分障害(うつ病・うつ状態)、不安障害(パニック障害など)、適応障害、アルコール依存症、薬
物依存症、精神分裂病など
→
随伴症状は頭痛、背部痛、腰痛、腹痛など多岐にわたり、しかも症状の内容があまり一定してい
ない印象を受けます。また、消炎鎮痛剤や湿布などを処方しても改善しないことが多いです。一
方、血液検査などの検査所見に関しては、大きな異常は認められません。ただし、倦怠感により
食欲不振がある場合には、低栄養から低アルブミン血症や体重減少をきたす場合はあります。し
かし、その場合でも、検査値の変動は器質疾患を思わせるほどの異常値を取ることはまれです。
② 慢性消耗性疾患:感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍、炎症性疾患など
→ 感染症や炎症性疾患では、発熱・CRP↑・白血球↑・原発巣での疼痛や圧痛・体重減少などの症
状を伴います。自己免疫疾患では微熱・免疫グロブリン↑・自己抗体(+)・皮膚症状・関節痛・
体重減少・その他にも各自己免疫疾患に独特の症状が出るのが普通です。悪性腫瘍では、全身倦
怠感だけということも稀にありますが、一般には貧血・体重減少・リンパ節腫脹・その他にも犯
されている臓器に基づく症状や所見が出ます。
③ 酸素不足:貧血、呼吸不全、循環不全など
→ 貧血の有無については、赤血球数・Ht・Hb などを見れば分かります。呼吸不全では、咳や痰、
呼吸困難感の有無・チアノーゼ・肺音の異常・肺 Xp や胸部 CT の異常・血ガスの異常(酸素分圧
↓など)などなど、明らかな呼吸器系の異常があります。循環不全では、下腿浮腫・呼吸困難感・
起座呼吸・心雑音・心肥大・心電図の異常・心エコーでの異常・心筋逸脱酵素↑(CK-MB、トロ
ポニン T、トロポニン I)など、明らかな心臓系の異常があるので見逃さないようにしましょう。
④ 代謝、内分泌の異常:肝疾患、腎疾患、電解質異常、内分泌異常、糖尿病など
→ 肝疾患では、悪心、嘔吐、AST・ALT・T-bil・ALP・γ-GTP の上昇、Alb の減少、黄疸、高脂血
症、肝脾の触知、発熱、肝炎ウイルス(+)など肝炎や肝硬変に基づく所見が得られる。腎疾患で
は、Cr・BUN の上昇、尿検査異常(蛋白尿など)、電解質バランスの異常などが認められる。電
解質異常は低 Na 血症や低 K 血症、低 Ca 血症の時に現れます。これらは検査値を見れば一発で
すが、その背後には、脱水、腎疾患、内分泌疾患(尿崩症・副甲状腺機能亢進症・Cushing 症候群
など)、ホルモン産生腫瘍(異所性 ACTH 産生腫瘍・SIADH=抗利尿ホルモン不適正分泌症候群な
ど)、などが隠れている。内分泌疾患で倦怠感を示す代表例は、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低
下症である。これらは Total Thyroxine や freeT3、T4、TSH などを測ったり、付加試験を行うこ
とで鑑別できる。また、症状として、甲状腺機能亢進症は動悸を感じ、活動性が活発なわりに疲
れやすく、精神的にイライラしたり不安定であることが多い。甲状腺機能低下症では徐脈、低体
温、non-pitting の浮腫、粘液水腫、腱反射の低下と弛緩相の延長、舌の肥大などが見られる。そ
の他内分泌疾患は電解質異常により全身倦怠感を引き起こす。糖尿病は血糖を見てくれ。分かる。
⑤ 筋肉の疲労:生理的疲労、神経筋疾患など
→ 生理的疲労は、いわゆる筋肉痛などを伴う疲労であり、問診により原因が明らかなことが多い。
神経筋疾患としては、重症筋無力症を押さえておけばよいでしょう。夕方に増悪する疲労感、神
経伝導速度は正常、筋電図で Waning(スパイクが漸減していく)、抗 ACh レセプター抗体(+)な
どが所見になります。
⑥ 睡眠不足:ASA=睡眠時無呼吸症候群を抑えましょう。日中に強烈な眠気に襲われたり、気がついた
ら寝てるなどのエピソードがあったら疑って下さい。
⑦ 薬剤性:薬飲んでたらとりあえず疑うことが大切です。てか、疑ってくれ。
肥満・やせ
☆肥満をきたす原因
原因の 98~99%は単純性肥満であり、いわゆる「ただの肥満」である。それ以外では大部分が内分泌
疾患によるもので、その他に精神疾患、薬の副作用が考えられる。
以下に単純性肥満とそれ以外の肥満を区別するポイントを挙げる。
部位
単純性では体の一部だけが太るということは滅多になく、逆に限られた部位(体幹
だけ、四肢だけなど)が太くなった場合には病的なものを考える必要がある。
性状
脂肪がたまっているのではなく、浮腫の場合もある。
経過、重症度
どのくらいの期間で何 kg 太ったか?もとの体重はいくつだったか?食事量の変化
がないのに短期間で体重が増えた時は病気の存在が疑われる。
状況、きっかけ
食生活に大きな変化はなかったか?出産、禁煙などストレスで食欲が増してしまっ
ていることもある。
随伴症状
単純性では、高血圧や高脂血症、糖尿病などを合併しメタボリック・シンドローム
が当てはまる場合はあるが、それらに起因しない目立った随伴症状というものは見
られないのが普通である。
☆思い浮かべるべき疾患(単純性肥満=肥満症を除く)
① 内分泌疾患:甲状腺機能低下症、Cushing 症候群、インスリノーマ、間脳性腫瘍など
② 精神疾患
:過食症(神経性大食症)など
③ 薬の副作用:クロルプロマジン、副腎皮質ステロイド、インスリン製剤など
☆各々の疾患について
① 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが足りない、あるいは上手く働かないために代謝が落ちます。そのため、耐寒性が
下がる、倦怠感、発汗減少、便秘、嗄声、難聴記銘力低下、計算力低下などが起こる。貧血、TSH、
freeT4、T3 の低下、T-chol↑、CK↑、LDH↑を認める。徐脈と心音減弱、腱反射では弛緩相の延
長、粘液水腫も所見として現れる。TRH 負荷試験も有用。
② Cushing 症候群
倦怠感、筋力低下、気分の変化、中心性肥満、赤色皮膚線条、満月様顔貌を認める。易感染性もあ
り、難治性の白癬などを煩っていることもある。血液学的には高血糖、白血球↑、高脂血症、Na
軽度上昇、K 軽度低下を認める。ACTH の値の変化も Cushing 症候群の原因を探る上では大切で
ある。負荷試験としてはデキサメサゾン抑制試験、ACTH 負荷試験、CRH 負荷試験などがある。
☆やせをきたす原因
やせは食物摂取不足、栄養吸収障害、栄養素の利用障害、代謝亢進、運動量増加栄養素の体外での消
失などによって起こる。また、どんな疾患であっても慢性的に体力を消耗する疾患では、最終的にはや
せを呈してくる。
☆思い浮かべるべき疾患
①感染症
急性感染症の場合は一時的に起きてくる。慢性の場合は、感染自体が目立たずに、や
せが初発症状となることもある。
②消化器疾患
炎症性腸疾患では吸収障害によってやせとなる。また、炎症が慢性的な場合も消耗す
るためやせを呈してくる。
③内分泌疾患
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や褐色細胞腫(カテコラミン分泌↑)では基礎代謝
が亢進しやせとなる。この場合、動悸や高血圧、発汗などの随伴症状を伴い、特徴的
である。また、下垂体機能低下症(シモンズ病)でも全般的にホルモンが不足するた
め、やせを呈すことがある。
④代謝疾患
糖尿病ではグルコースをエネルギーとして利用できないので、最終的には体重減少を
きたします。
⑤悪性腫瘍
やせの原因として常に頭に思い浮かべておく。原発臓器における随伴症状を丁寧にみ
ることや、腫瘍マーカーのチェックなどが役立つ。
⑥摂食障害
神経性食欲不振症や神経性過食症(嘔吐などを伴う)などの精神疾患が考えられる。
☆各々の疾患について
① バセドウ病
三徴として甲状腺腫・眼球突出・頻脈。その他にも落ち着きがなくなる、腱反射の亢進、筋力低下、
低 K 性周期性四肢麻痺、下痢、腹痛、発汗、体温上昇、暑がるなどの症状を呈しますが、ほとんど
は代謝が亢進していると考えると分かりやすいです。検査としては T-chol↓、T4,T3 の著増、TSH
1 2 3
↓、I摂取率↑、TSR 受容体抗体(+)など結果を得られます。ただし、食欲も亢進するため 10%で
はやせずに肥満になることがあるので注意が必要です。
② 褐色細胞腫
90%は副腎髄皮質に、10%は副腎外に発生します。カテコラミンを自動的に産生しますが、分泌様
式により持続型と発作型(間欠的にしか分泌しない)に分けられます。症状としては、交感神経の
緊張を引き起こしすことにより、頭痛、動悸、蒼白、発汗過多、手指振戦、胸部苦悶感、めまい、
不安感、口渇、排尿障害、体重減少、血圧上昇、頻脈、高血糖、消化管の運動低下など多彩な症状
を呈します。血中カテコラミン↑(尿中ではメタネフリン、ノルエピネフリンも↑)、血漿レニン活
性↑もきたします。画像では CT にて球状の腫瘤影、MRI では T1 強調で肝臓より低信号、T2 で著
1 3 1
名な高信号を呈します。I-MIBG を用いたシンチグラフィでは Hot に描出されます。
③ 神経性食欲不振症
標準体重よりも 15%以上の体重減少があり、体重増加に対する強い恐怖、ボディイメージの障害を
認め、るいそうによる無月経を来していることが多いです。食べないので放っておくと死に至りま
す。ただし、問診では「食べないといけないと分かっているが食べれない」など、ボディイメージ
の障害や体重増加に対する恐怖がないかのような言動をとることもあるらしく、注意が必要である。
④ 神経性過食症
むちゃ食いのエピソードがあり、体重増加を防ぐために嘔吐や下剤の使用がある。これらのエピソ
ードが週2回3ヶ月以上持続し、体型へのこだわりがみられる。ただし、神経性食欲不振症に比べ
ると、やせの程度は軽く、死に至ることは稀である。
チアノーゼ
チアノーゼとは
毛細血管内の還元ヘモグロビン濃度が 5g/dL 以上になり、その領域の皮膚や粘膜が紫色を示す徴候
機序による分類と鑑別のポイント
末梢性チアノーゼ
局所循環が悪くなって起こるチアノーゼ
原因
心拍出量低下、低温曝露、血管の閉塞、四肢からの血流の再分布
中枢性チアノーゼ
低酸素血症を起こすことによって惹起されるチアノーゼ。ここでは、呼吸器系、循環器系、血液系、中
枢神経系にわけて考える。
呼吸器疾患
病歴から
労作時息切れ、咳、痰、その他既往歴や嗜好歴など
身体所見から
全身性チアノーゼが見られる
腹部膨満
検査所見から
→
気胸、肺気腫の疑い
胸部X線上で異常が見られる。
動脈血ガス分析
PaO2 の低下を認める。
換気障害のある場合は PaCO2 の上昇もあり。
血液検査
炎症所見があるかなど
循環器疾患
病歴から
心雑音の指摘
→
先天性心疾患(かならず心雑音があるわけではない)
身体所見
全身性チアノーゼ、心雑音
検査所見から
胸部X線
重症心不全→心拡大、肺うっ血所見
心電図
右室肥大、左室肥大など。所見が特定の疾患に結びつくことは少ない。
エコー
弁の開閉の異常など
血液疾患
病歴
薬剤中毒(硝酸塩、アセトアニリド、フェナセチン、アセトアミノフェン、スルホン
アミドなど)があるか
→
後天性メトヘモグロビン血症
重症化すると頭痛、めまいをともなう。
身体所見
全身性チアノーゼ
検査所見
動脈血酸素飽和度の割合は正常である
中枢神経
病歴
痙攣、眼球、四肢の異常運動など
身体所見
意識障害
検査所見
頭部CT、MRI検査、髄液検査
※胸部X線
中枢が疑われる場合でも呼吸器疾患を否定するために行う。
補足
新生児疾患について
上記にあげた各種疾患に加えて
① 血糖値(低血糖を起こしていないか)
② 血清カルシウム(低カルシウム血症)
③ 血液・尿・髄液検査(重症細菌感染の前駆症状としてのチアノーゼ)
チアノーゼを示す先天性心疾患
右→左シャントの存在する先天性心疾患では中枢性チアノーゼを起こす。
(Fallot 四徴症、アイゼンメン
ゲル症候群、心房欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症。
めまい
~平衡機能の反射系が傷害され、姿勢の統御が困難になった状態のこと~
緊急を要する疾患
※脳血管障害(例、椎骨脳底動脈の障害、小脳出血など)に付随してめまいが起こっているときは早急
な診断、治療が必要。代表的な症状は、意識障害、呼吸障害、眼球運動異常、脳神経麻痺、小脳徴候
などが起こったら即時入院させて精査する。
※一般的に回転性のめまいは前庭障害の時に起こるが、急激に発症する脳血管障害(特に小脳出血)は
しばしば回転性のめまいを呈する(前庭性と違って閉眼で憎悪しない)。
鑑別診断
前庭障害
・ 回転性のめまいを生じる
(回転型)
・ 原因疾患は以下のとおり
末梢病変
良性発作性頭位めまい、前庭神経炎、第Ⅷ神経障害性薬剤(ストレプ
トマイシン、ゲンタマイシン)、メニエル病、第Ⅷ神経鞘腫、他の小
脳橋角部腫瘍、神経血管圧迫症候群
中枢病変
脳幹、小脳梗塞、椎骨脳底動脈循環不全、多発性硬化症、薬剤性(鎮
静薬、功痙攣薬)
心血管型
・ [症状] 頭がふらふらする。目の前が暗くなる、頭から血の気が引くなど
(失神型)
・ [原因疾患]
高度大動脈弁狭窄、頚動脈過敏、脱水、重度貧血、自律神経不全、高齢者における
神経血管反射の低下
感覚障害
・ [症状] 非回転性のめまい、目の前がくらくなる感じ
代謝性障害
・ [原因疾患]
糖尿病、白内障手術、多発性硬化症、頚椎症、小脳疾患、低酸素血症重度低血糖、
低または高炭酸ガス血症、薬剤
精神科的疾患
暗黒感などを訴える。回転性めまいの訴えは少ない
不安状態、うつ、それ以外の各種精神病
そのほか
過換気症候群
眼振検査
注視下、非注視下で観察する。
注視下
左右上下(上下は正面より30度傾ける)を注視させる
非注視下 ~Frenzel 眼鏡を患者につけて観察する~
①自発眼振
・座位で出現する眼振
②頭位眼振
・頭を傾けた状態で出現する眼振
③頭位変換眼振
・急激な頭位変換により出現する眼振
平衡機能の検査
直立検査(両脚直立、マン検査、単脚直立)足踏み、歩行、書字検査、重心動揺計など
代表的疾患の鑑別のポイント(頻度順で上から5個あつめました~参照
良性発作性頭位めまい
今日の診断指針)
・ 頭位変換で誘発されるめまい
・ 反対回旋性頭位めまい
メニエル病
・ 反復性の自発性めまい
・ 随伴する蝸牛症状(耳鳴り、耳閉感、難聴)←良性発作性めまいとの鑑別
・ 低音障害型の感音性難聴
めまいを伴う突発性難聴
・ 自発性めまいが起きるが反復しない
・ めまいと前後して難聴、耳鳴りが急速に進行する
前庭神経炎
・
難聴を伴わない比較的長時間持続する単発性のめまい
外リンパろう
・ 髄液圧、鼓室圧の急激な変動を起こすような誘因の後に耳閉感、難聴、
耳鳴、めまい、平衡障害が起こる
・ 外耳、中耳の加圧、減圧でめまいを訴える
・ 高度難聴が数日かけて生じたり、水の流れるような耳鳴りやパッチ音が
聞こえる
下痢
~何らかの原因で、小腸および大腸において水と電解質の吸収不良、分泌亢進が生じ、
液状便ありは半流動性便を頻回に排便する状態~
緊急処置
急性の下痢において、脱水、代謝性アシドーシス、電解質異常をきたした場合は、速やかに補液を行う。
1 感染症による急性の下痢
・ 原因となる病原体には細菌、ウイルス、原虫があるが、そのうち細菌性のものが最頻である。
<細菌性下痢の機序による分類>
Enterotoxin 産生
腸上皮の分泌機構に作用して、多量の分泌により水様性下痢を生じる。
例
Cytotoxin 産生
コレラ、病原性大腸菌
腸上皮を破壊し、病変を形成。腸管出血を起こすので血便を呈する。
例
赤痢菌、Clostridium difficile
Neurotoxin 産生
末梢性、または中枢神経系に障害を及ぼす。
最近の腸粘膜への進入
赤痢菌、病原性大腸菌、チフス、エルシニアなど
鑑別を要する疾患
:
薬剤性大腸炎、虚血性大腸炎などとの鑑別が必要
<感染性下痢の代表例と鑑別ポイント>
細菌性赤痢
発熱、頻回少量の排便(血便ふくむ)
、腹痛
コレラ
水様性下痢と急速に進行する脱水症状、海外感染、輸入食品
腸チフス
高熱→バラ疹→下痢→下血、腸穿孔
カンピロバクター腸炎
発熱、頭痛、筋肉痛→水様性下痢+回盲部腹痛(盲腸との鑑別が大切)
腸炎ビブリオ
魚介類の生食など
腸管病原性大腸菌
腹痛発作、頻回の血便
アメーバ性腸炎
下腹部痛、下痢
ウイルス性腸炎
ロタウイルスなど(幼児に多い)
2 非感染症による急性の下痢の代表例と鑑別ポイント
食べすぎ、飲みすぎ
水様性のことが多い。注意しましょう
ソルビトール摂取
ダイエット食品、シュガーレスガムなど
乳頭不耐症
牛乳、乳製品、確定診断には乳頭負荷試験を行う
薬剤性
下剤、抗生物質、高脂血症治療薬、胆石溶解剤、経腸栄養剤、利
尿剤、ビグアナイド、金製剤、コルヒチン、メソトレキセート、
レセルピンなど、、、多いです。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎、Crohn 病など
虚血性大腸炎
老年者に好発。血便
3
慢性下痢
<疾患と鑑別ポイント>
大腸癌
便潜血、注腸X線検査での腫瘍を示す陰影、内視鏡検査所見
過敏性腸症候群
若年層、午前中に下痢が多い。排便、排ガス後に腹痛が軽快
注腸X線検査、内視鏡→小腸、大腸の緊張、運動機能亢進。
(器質疾患を除外すること)
潰瘍性大腸炎
若年層、粘血便、腹痛、
注腸X線検査→ハウストラ消失、鋸歯状陰影、鉛管像など
内視鏡→潰瘍がみられる、多くは直腸から連続した病変
(Crohn 病との鑑別)
Crohn 病
若年層、肛門部病変、発熱、腹痛、体重減少、低蛋白血症
X線→縦走潰瘍、敷石像、非連続性の病巣
腸結核
ツベルクリン反応陽性、結核性疾患の既往、便の結核菌培養証明
消化吸収不良症候群
脂肪便、低栄養状態、体重減少、浮腫、貧血、低蛋白血症、低アル
ブミン血症、低コレステロール血症など
原因疾患
胃腸管切除、乳糖不耐症、Crohn 病、腸結核、アミ
ロイドーシス、強皮症、腸内細菌異常繁殖、抗がん
剤、放射線障害、膵胆道疾患など
吐血・下血
吐血~Treitz 靱帯より口側の消化管から出血し、その血液が口腔を通じて排出されること
下血~消化管からの出血を肛門から排出すること
診断の流れ
吐血・下血
↓
問診・身体所見、血液性化学検査
↓(出血性のショックがある場合は輸液、輸血をして状態改善を図る
吐血している============吐血していない
↓
↓
↓
黒色便
↓
↓
上部消化管内視鏡
上部消化管内視鏡
↓(便の状態は?)
新鮮血便
↓
下部消化管内視鏡
以上の流れで出血源がわかった場合は止血する。わからなかったら他に検査を加えて(血管造営とか)
さらに同定する
原因疾患
1消化管疾患
食道
食道炎、食道潰瘍、食道静脈瘤、食道がん、Mallory-Weiss 症候群、動脈瘤食道ろう
胃、十二指腸
胃・十二指腸潰瘍、急性胃・十二指腸粘膜病変、胃静脈瘤、胃癌、十二指腸癌、消化管
間葉系腫瘍、カルチノイド、悪性リンパ腫、異所性子宮内膜症、動脈瘤十二指腸ろう
2近接臓器疾患
3全身性
臓器系統疾患
小腸
癌、悪性リンパ腫、消化管間葉系腫瘍、Crohn 病、など
大腸
大腸癌、大腸ポリープ、海洋性大腸炎、Crohn 病など
肛門
痔核
胆血症
血液疾患
多血症、多発性骨髄腫、白血病、DIC、血友病など
血管性疾患
遺伝性出血性血管拡張症、血管異形性
そのほか
アミロイドーシス、膠原病、
良くある疾患の鑑別
胃・十二指腸潰瘍
・ 心か部痛、食欲不振、胸やけ、悪心、嘔吐
・ 潰瘍の既往、非ステロイド性抗炎症薬、ストレスの有無を聞く
急性・十二指腸粘膜病変
・ ストレス、薬剤(非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、抗がん剤、抗生
物質)アルコールなどで発症
・ 急性潰瘍、びらん、出血
食道・胃静脈瘤
・ 肝硬変などの門脈圧亢進症にともない発症
・ 突然、大量の出血を認めることが多い
・ 黄疸、くも状血管腫、腹水
Mallory-Weiss 症候群
・
飲酒後などの頻回の悪心、嘔吐により食道・胃粘膜接合部に列創を商事、
出血をきたす
胃癌
・ 心か部痛、食思不振、悪心・嘔吐、体重減少、貧血などをみたときにはま
ず疑う。
大腸ポリープ、大腸癌
・
明確な出血がみられないこともある
潰瘍性大腸炎
・ 若年者に多く、持続性または反復性の粘血便を呈する
・ 腹痛、発熱を伴う
虚血性大腸炎
・ 高齢者に多く、急激な腹痛、下痢に引き続いて鮮血便を認めることが多い
・ 高血圧、動脈硬化性疾患や糖尿病などの基礎疾患を有するものに多い
・ 若年発症では便秘や経口避妊薬の服用と関連する場合が多い
・ 左半結腸に病変を認める
薬剤起因性腸炎
・ 抗生物質、抗がん剤などで発症
・ 薬剤投与後に下痢、下血、腹痛などをみとめる
大腸憩室
・ 高齢者に多い
・ 腹痛をともなわないことが多い
血尿
5.17
まずは、当然ながら、血尿にとらわれず全体的に考えましょう。
Ⅰ
病歴
血尿が症候性であるか無症候性であるか?
症候性であればその症状(↓)から、無症候性であれば検査結果(→☆)から探っていきましょう。
症状その① 発熱;急性腎盂腎炎、急性前立腺炎、腎膿瘍などの急性感染症
その② 排尿時痛;暴行近傍の尿管、膀胱、前立腺、尿道の炎症
など
その③ 側腹部の疼痛;尿路結石、腎盂や腎実質の感染症など
その④ 排尿困難;前立腺肥大症、前立腺がん、急性前立腺炎などによる下部尿路の閉塞障害
その⑤ 浮腫・腹水・乏尿;腎炎、ネフローゼ症候群、進行性の悪性腫瘍
Ⅱ
身体所見
腹部腫瘤;尿路の腫瘍性病変など
腎部打診痛;尿路結石、急性腎盂腎炎
など
前立腺の直腸診;硬度が高ければ前立腺癌、慢性前立腺炎、前立腺結石
など
表面平滑で弾性硬の、大きい前立腺なら前立腺肥大症
熱っぽい痛みのある腫脹なら急性前立腺炎
Ⅲ
など
検査所見
膿尿の合併;当然ながら感染症による血尿を考える!!
☆以下、血尿に重点をおいた検査および診断の流れです。
。。
まず大事なことは、肉眼的血尿、尿潜血反応(+)→血尿
としてはいけないということです!!
ヘモグロビン尿やミオグロビン尿でも、見た目は赤っぽくなるし尿潜血反応(+)にもなるからです。
真の血尿とは、あくまで尿沈査所見でRBCたくさん出た場合(高視野に5こ以上)を指します!
なので、まず
Q,血尿出ちゃったんですけど…
と患者さんに言われたら?
A,尿沈査所見で赤血球の有無を確認する
そう、ここで血尿と紛らわしいほかの色素尿を区別しましょう。
次にやるべきことは変形赤血球の有無を確認することです。
真の血尿だとわかったら、以後大きく内科的血尿と泌尿器科的血尿に分けて診断を進めましょう。
1. 内科的血尿(糸球体性血尿)
尿沈査に変形赤血球を見ることで、糸球体由来の血尿だと判断することができます。
(これは損傷
した糸球体基底膜を通過するときの機械的ストレスにより赤血球が変形するものと考えられていま
す。
)このときはもう悲しいことに糸球体がいかれちゃってるので蛋白もどしどし流出します。なの
で多くは蛋白尿を伴っており、円柱もよく検出されます。このときは糸球体腎炎をメインに内科的
疾患を考えて検査(腎機能検査、エコー、血清学的検査、尿細胞診、腎生検)を進めます。
。
2. 泌尿器科的血尿
まず出血部位を推定しましょう。このとき有用なのがトンプソン 2 分杯尿法というものです。こ
れは排尿の最初の部分とそのあと大きく排尿量を 2 つに分けてそれぞれの血尿具合を比較するもの
です。
1 杯目が赤くて 2 杯目が普通の尿なら…前部尿道での出血
1杯目が普通で 2 杯目が赤いなら…後部尿道や膀胱頸部での出血
1 杯目も 2 杯目もずっと赤い…上部尿路(腎・尿管)または膀胱からの出血
あとは当然ながら
尿細胞診、PSA、エコー、膀胱内視鏡、CT、KUB
などを行いましょう!
~授業でやった症例について~
28歳
男性
肉眼的血尿、発熱、腰痛、筋肉痛を主訴として来院
身体所見の異常
脈92
検査所見の異常
WBC9400
尿沈査
咽頭発赤
扁桃腺腫大
尿潜血3+ 尿蛋白2+
RBC40-50/HPF
柱あり
血液検査
CRP
硝子円柱
赤血球円柱
顆粒円
80%以上が大小不同
赤血球形態
2.1mg/dl
ここまでで、RBC の存在から真の血尿だとわかり、赤血球の変形から糸球体由来の出血だとわかり
ます。で尿蛋白も出てるので糸球体腎炎を疑います。でこのあとの追加検査で
抗体、抗 DNA 抗体、リウマチ因子
すべて陰性
免疫グロブリン(IgA,IgG,IgM,IgE)、ANCA 抗体
腹部エコー;正常
「“あとやりたい検査は
……と
腎生検
免疫学検査;抗核
すべて正常
すべて正常で、ここまできたときに、
で、IgA 腎症が最も疑わしい
”ことまで判断できれば、この症
例に関しては合格◎」
、って先生は言ってました!
ここでのポイントは、①日本人の腎生検の結果の 6 割が IgA 腎症で、②そのうち4割の人の血清 IgA
値は正常ってことです!病名にとらわれちゃいけないんですねぇ。
腹部膨満
5.18
Ⅰ
病歴
腹部全体の膨満を示す疾患の代表は鼓腸と腹水であり、局所性腹部膨満の成因のほとんどは腹部腫
瘤です。
急激に発症したものには消化管穿孔、機械性イレウス、肝癌破裂による腹腔内出血、腹
部大動脈瘤破裂など緊急対応を要するものが多いです!
消化管の悪性腫瘍の疑い
大腸がん、胃がん
炎症性腫瘤の疑い
クローン病、回盲部周囲膿瘍など
後腹膜臓器の腫瘍の疑い
膵癌、腎腫瘍、腎のう胞、副腎腫瘍、子宮筋腫、卵巣がん
腹部大動脈瘤の疑い
原因疾患(肝疾患、心疾患、腎疾患、悪性腫瘍など)の既往や可能性
など
を念頭においての問診が重要
腹水、ガス貯留の可能性
Ⅱ
身体所見
腹水、ガス、腫瘤のいずれであるかを診察所見から診断します。
腫瘤の場合はその位置、大きさを触診で確認し、由来臓器を決定します。
消化管の悪性腫瘍の疑い
圧痛のない腫瘤のことが多い
炎症性腫瘤の疑い
発熱、自発痛、圧痛をともなうことが多い
後腹膜臓器の腫瘍の疑い
腹腔内腫瘤は呼吸に連動して上下に動くが、後腹膜臓器は深在性のた
め、呼吸性移動を伴わない場合が多い。
腹部大動脈瘤の疑い
触診、聴診で拍動を触知するかをみる。腫瘤に拍動がある場合は、大
動脈瘤や大動脈に接している腫瘤。
腹水、ガス貯留の可能性
触診による波動の確認や体位変換による移動により、確認できる。打
診で鼓音を呈する場合には、消化管内ガス貯留だと推定できる。
Ⅲ
検査所見
消化管の悪性腫瘍の疑い
便潜血要請、腫瘍マーカーの上昇、貧血、血沈の亢進、低蛋白血症
炎症性腫瘤の疑い
白血球増加、CRP 上昇、血沈亢進
☆ 腹水
腹水をきたすおもな疾患としては、肝硬変、うっ血性心不全、ネフローゼ症候群などの頻度が高い。
かなり大量に貯留しないと自覚しないが、他覚的には波動を触知することから診断できる。腹部超
音波検査、CT により、少量の腹水でも診断が可能!
腹水の鑑別診断には、腹水穿刺による診断が有用で、その蛋白濃度によって 2.5g/dl 以下なら漏出
性、4.0g/dl 以上なら滲出性に分類される。判断がつかないときは血清と腹水のアルブミン濃度差が
1.1g/dl のときを漏出性、未満のものを滲出性とする。
・ 漏出性腹水の原因疾患
肝硬変、門脈圧亢進症、心不全、甲状腺機能低下症
など
・ 滲出性腹水の原因疾患
癌性腹膜炎、膵性腹水、結核性腹膜炎
など
~授業でやった症例について~
41歳
女性
38歳のときクッシング症候群→右副腎腫瘍摘出
3ヶ月前から
時折背部痛、右側腹部痛
1週間前から
背部痛の増強、全身倦怠感、腹部膨満感
身体所見の異常
BMI28
血圧 148
腸管ガスの軽度増加とされ経過観察
心拍数 120
胸部
右下肺で呼吸音減弱
腹部
膨瘤、皮膚線状あり、右背部、下腹部に自発痛あり
腫瘤は触知せず、波動を触知
検査所見の異常
TP5.4
生化学
LDH 324
尿所見
蛋白+-
胸部 X 線 右 CPA
Alb 2.8
HDL 33
CRP 3.9
TG
Cr 1.42
AMY 34
220
ケトン体+
dull
腹部 X 線 腸腰筋陰影消失
…ここで、尿中ケトン体が+なのは、
腸管での吸収がうまくいかない→脂肪の分解が起こってしまう
→ケトン体↑↑→排泄過剰!?
だそうです。
また、胸部x線の右 CPA
dull は胸水の存在を、
腹部 x 線の腸腰筋陰影消失は腹水の存在を
さします。
つぎに画像所見が配られ、腹部 CT から多量の腹水の存在がわかります。
上部内視鏡像、MDL 像から胃がん(スキラス←若年女性に多い)の存在が確認できました。。
。
よって今回の最終診断は
胃癌(スキラス)、癌性腹膜炎、癌性胸膜炎
…となりました。
貧血
5.19
Ⅰ
病歴
貧血の自覚症状は、貧血が急激に発症したかゆっくり発症したかでまったく異なります。
既往歴・生活暦聴取のポイントとしては、
・ 一般的情報;発熱や出血、飲酒状況、手術暦、服用薬物の種類と量
・ 食生活の情報;消化器症状、下血の有無、便の色、食欲状態、偏食の有無
・ 婦人科的情報;月経の状態・量・期間、子宮筋腫の有無
Ⅱ
…などが重要です!
身体所見
① 貧血の有無・程度を確認;皮膚、粘膜の色調や頻脈などを確認
② 貧血の原因を推定できる所見を確認;舌や爪を診る
舌…高度の舌乳頭の萎縮や舌の痛みは悪性貧血と高度の鉄欠乏製貧血に見られる。
歯肉…歯肉腫脹は単球性白血病によくみられる。
つめの変形…匙状爪は鉄欠乏性貧血に特徴的!
Ⅲ
検査所見
① 貧血の有無・程度の確認;ヘモグロビン量が有用
貧血の基準
ヘモグロビン濃度で判定
成人男子 13g/dl 以下
成人女子
12g/dl 以下
② 貧血の原因を推定する;赤血球指数(MCV,MCHC)が便利
③ 網赤血球数→骨髄における赤血球の産生の多寡を反映
☆ 赤血球指数による貧血の鑑別
・小球性低色素性貧血
大多数が鉄欠乏製貧血!!
(MCV80未満、MCHC30未満)
血清鉄低値と鉄結合能高値であれば鉄欠乏製貧血と判断してよい。フェリ
チンも著減しているが、必須の検査ではない。
鉄芽球性貧血では鉄結合能が低くフェリチンが高値であり、骨髄穿刺で環状鉄芽球を確認する。
・ 正球性正色素性貧血
(MC V80~100、MCHC31~36)
正球性貧血で溶血所見があれば溶血性貧血の鑑別をする。
再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、骨髄ろう→骨髄穿刺や骨髄生検によって診断する。
正球性貧血には多くの症候性貧血が含まれる。
免疫グロブリンに M 蛋白が存在→多発性骨髄腫
BUN が50を超すような慢性腎不全+貧血→腎性貧血を疑い、さらに血中エリスロポエチンが低
ければ確定診断となる。
(腎性貧血:造血因子であるエリスロポエチンが腎臓で産生されなくなることで生じる)
・ 大球性正色素性貧血
(MCV101以上、MCHC31~36)
大球性貧血をみたら巨赤芽球性貧血の鑑別をする。
巨赤芽球性貧血では血清ビタミン B12 あるいは血清葉酸のいずれかが低値を示すことが重要!
葉酸が低下しているなら→葉酸欠乏製貧血
ビタミン B12 の低下→悪性貧血
悪性貧血ならさらに萎縮性胃炎が存在し、血清中に抗内因子抗体を確認することが大切!
~授業でやった症例について~
29歳
女性
2ヶ月前から
軽度の頭痛、全身倦怠感
1ヶ月前から
悪心、顔色不良、階段昇降時に動悸息切れ
月経は28日周期で不整はないが、ここ3ヶ月ほど月経量が増えたような気がする
排便時に痛みを伴う出血あり
歯を磨くと歯肉から出血
…ちなみにこのとき先生がめちゃくちゃ強調してたのは、女性を見たら必ず月経について聞
け!!、ってことでした。最終月経はいつか、周期は何日か、量はどうか、とか。
身体所見の異常
脈 112
顔色不良
眼瞼結膜に著名な貧血
肛門周囲に発赤、圧痛
検査所見の異常
画像所見
四肢に点状出血および軽度の浮腫あり
WBC 1700(リンパ球 84%)RBC240
CRP
4.3
フェリチン
口腔内に小出血斑あり
87
Hb
7.8
Ht
24.0
便潜血(+)
骨髄生検:脂肪髄
…骨髄生検の脂肪髄所見および汎血球数減少より、再生不良性貧血と診断しました。
そして治療法は
1.薬物療法(シクロスポリンなどの免疫抑制剤)
2.骨髄移植(HLA 同型なら成功率 80~90%)
* ちなみに、20 代の女性が貧血で来院した場合、
80~90%という圧倒的な確率で、子宮筋腫 or 月経による鉄欠乏性貧血!
だそうです。
悪心・嘔吐
5.8
担当:消化器内科 文責:たてぬま
① フローチャート
エラー!
悪心・嘔吐
腹痛(+)
発熱(+)
腹痛(-)
発熱(-)
急性虫垂炎
急性胃粘膜病変
急性腸炎・肝炎
胃十二指腸潰瘍
膵炎・胆嚢炎
胃癌
急性腹膜炎
幽門狭窄
子宮外妊娠
イレウス
頭痛(+)
意識障害
(+)
意識障害
頭痛(-)
胸痛(+)
(-)
心筋梗塞
胆石症
肝硬変・肝癌
膵癌
脳血管障害
片頭痛
髄膜炎
緑内障
狭心症
うっ血性
脳腫瘍
心不全
※ ここでは、参考書に基づいてイレウスを「発熱(-)」としましたが、
実際の授業(この日の疾患はイレウスでした)では 37.5℃と発熱がありました。
※ 胸痛(-)に該当する疾患としては・・・
・ メイエル病(めまいあり)
・糖尿病性アシドーシス(アセトン臭あり)
・ 肝性脳症、尿毒症(腹水、浮腫あり)
・妊娠悪阻(無月経あり)
② 診断のポイント
・ 悪心を伴わない、噴出するような嘔吐⇒頭蓋内圧亢進
・ 食事との関係
食直後⇒急性胃炎、消化性潰瘍
食後数時間後⇒幽門狭窄
・ 吐物の性状
食物残渣を大量に含む⇒幽門狭窄、アカラシア
胆汁を大量に含む⇒十二指腸乳頭部以下の閉塞
コーヒー残渣様⇒胃癌、消化性潰瘍
糞臭⇒イレウス
胸痛(-)
③ 各論
A. イレウス
(ⅰ)分類
<機械的イレウス>
・ 単純性イレウス・・・血行障害を伴わない
・ 絞やく性イレウス・・・血行障害を伴う
ex:術後癒着、腫瘍など
ex:腸重積、腸軸捻転
<機能性イレウス>
・ 麻痺性イレウス・・・腸管の蠕動運動の低下
ex:急性腹膜炎、腸間膜動脈閉塞症
・ 痙攣性イレウス・・・腸管の分節運動の過剰
ex:鉛中毒、ヒステリー
(ⅱ)症状、検査
・ 腸管内容停滞→腸内細菌増殖→bacterial translocation(細菌が血中に流れ込む)→菌血症、腹膜炎
・ 腸管吸収障害→脱水 → BUN↑、Ht↑
→ 電解質異常→Na↓、K↓、Cl↓
・ 腸管閉塞→腸管蠕動障害 → 金属音
→ 口側腸管拡張 → 腸管内容逆流 → 悪心・嘔吐
→ 鼓腸
・ 腹部単純 X 線検査
上部小腸の閉塞:輪状ヒダがニシンの骨状に写る(herring bone appearance)
下部小腸の閉塞:ニボーが階段はしご状に写る(step ladder appearance)
B. 胃十二指腸潰瘍
・ヘリコバクター・ピロリが関係
・検査→上部消化管造影検査、内視鏡検査
黄疸
4.18
担当:消化器内科
文責:たてぬま
① フローチャート
間接ビリルビン優位
末梢血液:網状赤血球↑
胆管拡張なし
赤血球寿命短縮
化学検査:LDH↑、ハプトグロブリン↑
溶血性黄疸
(先天性溶血性貧血)
(後天性溶血性貧血)
体質性黄疸
末梢血液:異常なし
化学検査:異常なし
直接ビリルビン優位
末梢血液:白血球↓、リンパ球↑
胆管拡張なし
化学検査:GOT,GPT↑↑
末梢血液:汎血球減少
(Gilbert 症候群)
(Crigler-Najjar 症候群)
ウイルス性肝炎
原発性胆汁性肝硬変
化学検査:ALP,γ-GTP↑
ミトコンドリア抗体(+)
ERCP:胆管狭窄なし
末梢血液:白血球↑
化学検査:ALP、γ-GTP↑
原発性硬化性胆管炎
ERCP:胆管狭窄あり
直接ビリルビン優位
胆管拡張あり
末梢血液:貧血
ERCP:病変部位の確認
閉塞性黄疸
(悪性腫瘍)
② 診察のポイント
黄疸の確認→眼球結膜で行う
(教科書的には血清ビリルビンが 2.0mg/dl 以上で黄疸が現れるが、実際はもっと高くならないと出
ないってさ)
その他、肝腫大や腹壁静脈の怒張の有無、発熱、浮腫に気をつける。
③各論
(上のフローチャートに載せられなかった疾患にも触れるので注意してください)
A) 胆管癌(この日の疾患でした)
・初期は原則として無症状
・胆道閉塞→腸管への胆汁排泄↓→灰白色便
→血中 D-bil↑→眼球黄染、掻痒、褐色尿
・CEA、CA19‐9 がしばしば高値(ある程度進行してから)
B)原発性胆汁性肝硬変
・症状・・・かゆみで初発、黄色腫、進行すると黄疸
早期より門脈圧亢進(速やかに食道静脈瘤の検査を行う)
Sjogren 症候群の合併が多い
・検査・・・抗ミトコンドリア抗体(AMA)が陽性
血清銅値↑、尿中銅↑
C)原発性硬化性胆管炎
・潰瘍性大腸炎の合併が多い、自己抗体陰性
・ERCP、PTC→びまん性に狭窄した肝内及び肝外胆管(数珠様所見)
・消失する黄疸
D)膵炎
・症状・・・腹痛(海老型姿勢で軽快)、発熱、悪心・嘔吐
胆石性急性膵炎では、閉塞性黄疸(それ以外の膵炎でも、軽度の黄疸)
・逸脱酵素・・・アミラーゼ(血清、尿中)、リパーゼ、エラスターゼ-1
同時に上昇し、この順番で正常化
E)総胆管結石
・胆道感染→急性化膿性胆管炎→Charcot の三徴(発熱、腹痛、黄疸)
Reynolds の五徴(Charcot の三徴に加えてショック、意識障害)
・ まず、侵襲性のない腹部エコーを行う。
F)胆嚢癌
・1:2で女性に多く、50歳以上に好発
・ 胆石、膵胆管合流異常は胆嚢癌の危険因子である
・ 病初期は無症状で、肝門部まで進展して黄疸を起こす
・ 腹部エコー、PTC,ERCPを行う(CEA,CA-19-9は大きくならないと上昇しない)
発熱
6.2
担当:医学教育学 文責:たてぬま
① 発熱の原因
感染症
ウイルス感染症(長くて2~3週で消失)
臓器感染症(肺炎、腎盂炎、胆嚢炎など)
日和見感染症など
悪性腫瘍
血液の悪性腫瘍(特に Hodgkin リンパ腫)、固形癌
膠原病
血管炎、成人型 Still 病、SLE
不明熱・・・38℃の発熱を3週間以上にわたり経験し、少なくとも1週間以上は診断がつかないもの。
② 各論
A) 血管炎
発熱を伴う膠原病としては結節性多発動脈炎や側頭動脈炎などがある。
詳しくは膠原病のシケプリでも見てください。検査項目と注意するとこを書いときます。
(ⅰ)結節性多発動脈炎(PN)
血液検査:血沈の亢進、CRP↑、WBC(特に好中球)↑、血小板↑、高γ-グロブリン血症
蛋白尿、血尿、尿沈渣の異常所見(腎病変を反映)
血管造影:中小動脈を侵す古典的 PN→血管内腔の狭窄像、多発する小動脈瘤
P-ANCA:顕微鏡的 PN では高率で P-ANCA 陽性
(ⅱ)側頭動脈炎
ほとんどが頭痛が主症状(発熱が先行することがある)
他覚的所見:側頭動脈の圧痛、虚血性視神経症
血液検査:血沈亢進、CRP↑、自己抗体は検出されない
B) 成人型 Still 病
症状:発症は急激・・・38℃を超える弛張熱(1日の熱差が 1℃以上ある熱型)
直径4~5mmのサーモンピンクの紅班
関節炎
血液検査:血沈亢進、CRP↑、WBC↑、血清フェリチン↑↑、リウマトイド因子は陰性
C) SLE
症状は多彩なんで、これまた膠原病のシケプリでも見てください。
血液検査:多クローン性の高γ-グロブリン血症、血沈亢進、汎血球減少
免疫学的検査:抗 dsDNA抗体と抗 Sm 抗体陽性(特異度が高い)
抗ヒストン抗体の抗体価高値、多数のLE細胞出現
D)感染性心内膜炎(この日の疾患でした)
起因菌:緑色レンサ球菌(亜急性に多い)、黄色ブドウ球菌(急性に多い)
基礎疾患と誘因:心臓に基礎疾患→抜歯などが誘因(この日の例では歯肉炎がありました)
⇒問診が大切
症状:感染症状・・・発熱(微熱のこともある)、関節痛、脾腫
心症状・・・心雑音(この日は大動脈閉鎖不全がありました)
血管塞栓症状・・・皮膚の点状出血、爪下出血
Osler 結節(指趾の掌側に見られる有痛性の赤紫色をした小結節)
Janeway 斑点(指趾の掌側に見られる無痛性の出血性の結節)
Roth 班(眼底の動脈閉塞)→視野欠損
検査:血液検査・・・血沈亢進、CRP↑、WBC↑
亜急性では貧血、低アルブミン血症、高γ-グロブリン血症、RF陽性
心エコー検査:診断に最も大切
弁尖に付着した疣贅を描出
③ 診察のポイント
・ 発熱、寝汗、体重減少⇒結核を疑う
・ 消化器症状(腹痛、下痢、粘血便)を若年者が訴えた場合⇒潰瘍性大腸炎を疑う
・ 突然の呼吸困難、胸痛、発熱⇒肺炎
肺塞栓(下腿に深部静脈炎)
・ 薬剤の使用でも発熱を起こしうるんで注意が必要である
感染症については触れませんでしたが、もちろん発熱の原因としては最も多いので、感染症のシケプ
リででもチェックしとくといいんじゃないっすかね。
胸痛
5/11
担当:旧2内
文責:たてぬま
① 胸痛の原因
心臓
:虚血性心疾患、心弁膜症、心膜炎
大血管系:解離性大動脈瘤、大動脈炎、肺塞栓症
呼吸器系:肺炎、気管支炎、肺腫瘍、自然気胸、
消化器系:食道炎、食道癌、食道裂孔ヘルニア、胃炎、肝・胆道疾患、膵炎
胸壁
:肋骨骨折、帯状疱疹
② 鑑別のポイント
A)激しい持続の長い胸痛、心不全、ショック、不整脈、血圧低下、Ⅲ音あるいはⅣ音の聴取
⇒急性心筋梗塞
B)数分間持続する前胸部あるいは心か部の絞やく感、労作・食事・興奮で誘発、発作中に診察でき
ることは稀
⇒安定狭心症
C)安静時の前胸部あるいは心か部の締め付けられるような痛み、早朝に多い、数分で治まるが重症
例もある
⇒不安定狭心症、異型狭心症
D)背部痛を主体として疼痛部位が上方あるいは下方に移動、駆出音、拡張早期雑音、高血圧
⇒解離性大動脈瘤(胸部X線、心エコー図、CT)
E)呼吸で増悪する胸痛、呼吸困難、Ⅱ音亢進、頚動脈怒張、血痰、下肢静脈瘤
⇒肺動脈塞栓症(胸部X線、PO2低下、肺シンチグラフィー)
F)突然の胸痛、呼吸困難、連続性雑音の出現
⇒Valsalva 動脈瘤破裂(心エコードプラー法)
G)胸痛、体位や呼吸で変化、上気道炎様症状が先行、心膜摩擦音
⇒急性心膜炎(ST上昇、心エコー図)
H)呼吸で増悪する胸痛、呼吸困難、患側の呼吸音減弱、打診
⇒自然気胸(胸部X線)
③ 狭心症と心筋梗塞の鑑別
(ⅰ)安定狭心症(SA)
・ 労作や食事、情動などにより発作
・ 逸脱酵素なし
・ 5~10分の肩や腕に放散する胸痛(絞やく感、圧迫感)
・ 心電図:発作時にST低下、陰性T波
・ 検査:トレッドミル心電図、ホルター心電図、負荷心筋シンチグラフィ(虚血部は cold)、冠動
脈造影
・ ニトログリセリン舌下投与で軽快
(ⅱ)不安定狭心症(USA)
・ 安静時にも発作頻度↑、痛みは30分以下
・ 早朝や深夜に多い
・ 安定狭心症から急性心筋梗塞への移行期
・ 検査:ホルター心電図(トレッドミル心電図はやらないほうが良い)、負荷心筋シンチ、冠動脈
造影
(ⅲ)異型狭心症
・ 心電図:ST上昇
・ 発作時にはニトロ舌下投与、予防としてCa拮抗薬
(ⅳ)急性心筋梗塞
・ 逸脱酵素・・・トロポニンI・T、CK-MB、GOT,LDH,ミオグロビン
・ 心電図:ST上昇、冠性T波、異常Q波
・ 30分以上持続する肩や腕に放散する胸痛、安静にしても軽快しない
・ 検査:冠動脈造影、心筋シンチグラフィ
・ ニトロ無効
ACS(急性冠症候群)
・・・不安定狭心症も急性心筋梗塞も詰まる程度の違いで、発症機序は同じであ
るので、
同じ疾患として考える。
咳・痰
(鑑別診断ノート:No.19、過去問:10・24・30・83)
10
70 歳の男性。3 ヵ月前から続く微熱、全身倦怠感を主訴に来院した。咳と痰を認める。診断を確定
するうえで必要性の低い検査はどれか。
a. 喀痰検査
b. 胸部 X 線検査
c. ツベルクリン反応
d. 気管支鏡検査
e. 動脈血ガス検査
答:c
ツベルクリン反応は、結核の蛋白成分から遅延過敏症(Ⅳ型アレルギー)を起こす物質を抽出・精製し、
その溶解液を皮内注射して免疫応答を見る検査です。この反応の陽性は、結核菌に対し既感染者である
ことを示し、陰性は未感染を意味します。ただ、感染して間もない場合や、既感染者でも細胞性免疫が
機能しないアネルギーという病態では陰性になります。後者の具体例は、麻疹、風疹などのウイルス感
染、サルコイドーシス、悪性リンパ腫などがあげられます。
従ってツベルクリン反応は結核感染のスクリーニングに用いられ、確定診断に用いることはできません。
24
69 歳の男性、3 ヶ月前からの咳嗽、喀痰を認めていた。1 週間前から痰に血液が混じるようになり、
外来を受診した。胸部レントゲンで左肺門部腫瘤を認め、胸部 CT でも左肺門部に腫瘤を認めた。
可能性の高い疾患を 2 つ選べ。
a. 肺結核
b. 肺癌
c. 気管支喘息
d. 肺気腫
e. 逆流性食道炎
答:a b
3 ヶ月前に咳嗽、喀痰、1 週間前に血痰、胸部画像診断で左肺門部に腫脹があることから…(以下略)。
肺門部のリンパ節腫張がみられる肺結核、肺門部型の癌ならば共に咳嗽・血痰が見られます。
逆流性食道炎(GERD)でも、逆流に伴う喘息発作や慢性咳嗽がみられることがあり、逆流による呼吸
器疾患、咽喉頭異常などもまとめた概念として非定型的 GERD が認知されつつあるらしいです。ただ今
回の場合は、病態や所見と照らし合わせると答ではない気が…。
30
慢瀬咳嗽について誤っているのはどれか。
a. 慢性咳嗽の治療に ACE 阻害薬が有効である。
b. 肥満などに見られる逆流性食道炎の時に起こる時がある。
c. 喘息では咳が主体で喘鳴のほとんど見られないことがある。
d. 心因性の慢性咳嗽も見られる。
e. 慢性副鼻腔炎は慢性咳嗽の原因となり得る。
答:a
咳嗽は生理学的には、短い吸気に引き続いて一度声門が閉鎖し、胸腔内圧の上昇により再度声門が開
き、強い呼気とともに気道の中のものが口腔に向かって押し出される現象です。通常咳嗽が起こる原因
となるのは、喉頭、気管、気管支粘膜などへの刺激です。その求心路は粘膜に存在する受容体から、迷
走神経(の枝である上喉頭神経)を介し、延髄の咳中枢に至ります。他方、遠心路は延髄の咳中枢を出
て、横隔神経を介して横隔膜にいたるルートが中心です。つまり、中枢は異なるものの、神経走行路は
呼吸運動のルートと重なります。若干反則気味に、腫瘍などが上記の神経を刺激して咳嗽を生じること
もあるようです。
咳嗽が見られる場合は、急性/慢性、乾性/湿性、好発時間帯等の情報に注意が必要です。特に乾性
か湿性かは重要で、前者は痰がほとんどなく、気道と接していない場所に病変があると考えられます。
具体的には、間質性肺炎、気胸、胸膜炎、ガン性リンパ病変、ACE 阻害薬の副作用等があります。後者
は痰などの分泌物を伴い、気道で過剰な分泌物が産生されていること、つまり気道の炎症病変を疑うこ
とができます。具体的には鼻疾患、肺炎、閉塞性肺疾患などがあります。病名はシケプリの鑑別診断ノ
ートを参考にして下さい。
83 は問題を省略して正しい組み合わせだけを記載します。
ちなみに過去問では c が出題されていました。
a. 喀痰 Grocott 染色(メセナミン銀染色):真菌を検出(カリニ肺炎、アレルギー性気管支肺アスペル
ギルス症)
b. 喀痰細胞診:肺癌
c. 喀痰チールニールセン(Ziehl-Neelsen)染色:結核
…培養に時間がかかるので答え合わせにしかならない
d. 結核 PCR 検査:肺結核
迅速診断可能
e. 喀痰グラム染色:クリプトコッカス症
おまけに・・・
肺水腫では肺胞内に漏れ出た血漿成分由来のピンク色の泡沫状痰、気管支拡張症・胚梗塞・肺結核・肺
化膿症、Goodpasture 症候群では血痰が見られます。
講義では 65 歳女性で 3 ヶ月以上続く咳嗽と体重減少を主訴とする患者さんがテーマで、最終的に喀痰
検査の痰を培養し、ナイアシンテストで好酸菌 2+となり結核と診断されていました。
脱水
脱水を考えるときには水だけでなくナトリウムも考えなきゃならない。水が多く失われる水欠乏性脱水
とナトリウムが多く失われる Na 欠乏性脱水と両者が同程度失われる混合性脱水がある。水欠乏性脱水
では高浸透圧とそれに伴い細胞内脱水をきたします。だから細胞外液量も細胞内液量も減ります。当然
血清 Na や BUN や尿 Na 濃度は上がります。Na 欠乏性は循環不全と細胞内水中毒を病態とします。当
然細胞外液量は減って、内液量は増えます。血清 Na、尿 Na 濃度は低くなります。混合性脱水は循環不
全を病態として、細胞外液量は減るが、内液は変わりません。血清 Na と尿 Na は下がります。基本的に
脱水になると口渇、立ちくらみ、倦怠感、頭痛嘔吐、痙攣などが見られますが、混合性脱水では立ちく
らみくらいしか見られないっぽい。
病歴聴取・診察に際して注意すること
・ 食事水分摂取の状況
・ 体液喪失程度:下痢、嘔吐、発汗、尿量など)
・ 発熱の有無
・ 尿の色
・ 腎疾患の有無
・ 消化器疾患の有無
・ 糖尿病などの基礎疾患
・ 服薬や治療歴の確認
脱水をきたす疾患
1.主に水欠乏による脱水
1)水分摂取不足
① 消耗性疾患
② 消化器疾患(上部消化管閉塞など)
③ 精神・神経疾患
2)非腎性水分消失
① 消化管からの喪失(下痢)
② 皮膚からの喪失(高温、発熱、発刊過多)
③ 肺からの喪失(過喚起、気管切開)
3)腎性水分喪失
① 浸透圧利尿(高血糖、浸透圧利尿薬、造影剤)
② 尿濃縮力低下(尿崩症、慢性腎炎、急性腎不全多尿期)
4)威原性
混合性脱水への高張液による不適切な補給
2.主に Na 欠乏による脱水
1)非腎性体液喪失
① 消化管からの喪失(嘔吐、下痢、出血、持続吸引)
② 皮膚からの喪失(熱傷、滲出性皮膚炎)
2)腎性体液喪失
① 食塩喪失性腎疾患(慢性腎炎、慢性間質性腎炎)
② 副腎機能不全(Addison 病)
③ 利尿薬過剰投与
3)血管外への移行
腹腔内や腸管への貯留(腸閉塞、腹膜炎、重症膵炎)
4)医原性
① 混合性脱水への低張液による不適切な補給
② 過度の利尿薬(腎性体液喪失)
便秘
成人の便秘の原因
最近の発症
例
大腸閉塞
新生物、狭窄、虚血、憩室、炎症
肛門括約筋の攣縮
肛門婁、痛みを伴う痔
薬物
慢性
過敏性腸症候群
便秘が前面に出るもの、交代性
薬物
カルシウム拮抗薬、抗うつ薬
結腸偽性閉塞
結腸の通過遅延、巨大結腸
直腸の排出障害
骨盤底機能不全、肛門括約筋攣縮
会陰下降症候群、直腸粘膜脱、直腸癌
内分泌疾患
甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、妊娠
精神疾患
うつ病、摂食障害、薬物
神経疾患
Parkinson 症候群、多発性硬化症、脊椎損傷
全身性筋疾患
進行性全身性硬化症
関節痛
間接症状を示す疾患
・
免疫異常(RA、SLE などの膠原病)
・
感染症(インフルエンジャーとか)
・
代謝性疾患(痛風、オクロノーシスなど)
・
変性疾患(変形性関節症)
診察に際して注意すること
・ 性別と年齢
小児では骨端炎、化膿性関節炎、先天性股関節脱臼、若年性関節リウマチ Still 病を、若い女性なら
ば SLE、皮膚筋炎、多発筋炎、強皮症などの膠原病を疑う
・ 外傷の有無
外傷の既往があるときは、間接内骨折、膝内症、回旋筋腱板損傷、外傷性関節炎を考える
・ 罹患間接の部位
指 DIP 関節では Heberden 結節または乾癬性関節炎を、MTP 間接は通風を疑う。
・ 単発性または多発性
多発性で左右対称ならば RA の可能性大
・ 痛みの起き方、経過、性状
椅子からの立ち上がり、階段の上り下り時に膝または股関節に疼痛が生じたならば変形性関節症を
疑う。また1~3日で消失する痛みを繰り返すときは回帰性リウマチを疑う。一方、ずきずきとし
た疼痛が日増しに強くなり、腫脹、発赤、熱感を伴うときは化膿性関節炎を考える
・ 発熱、倦怠感、体重減少、食欲不振などの全身症状
このような症状が見られるときは全身症状の一症状であることが多い
・ 他の疾患の有無
糖尿病は神経病性関節症を、虹彩毛様体炎はベーチェット症候群を肺癌は肥厚性骨関節症を腎結石
は痛風を、潰瘍性大腸炎やクローン病は仙腸関節炎を、透析患者はアミロイドーシスを疑う
動悸
<非心臓性疾患による動悸>
不安神経症
貧血
発熱
甲状腺中毒症
低血糖
褐色細胞腫
大動脈瘤
動静脈瘻
薬物
<非不整脈心疾患で動悸をきたすもの>
大動脈弁閉鎖不全
僧帽弁閉鎖不全
大動脈弁狭窄症
僧帽弁狭窄
動脈管開存
著しい心肥大
心室中隔欠損
急性左室不全
心房中隔欠損
三尖弁閉鎖不全
Barlow 症候群
過剰収縮症候群
<不整脈の種類>
頻脈
主に徐脈
伝導障害
その他
洞房ブロック
WPW 症候群
上室性頻拍
房室ブロック
LGL 症候群
心室期外収縮
心室内伝導障害
QT 延長症候群など
洞性頻脈
上室期外収縮
上室性不整脈
洞性徐脈
心房粗動
洞不全症候群
心房細動
心室頻拍
心室性不整脈
心室粗動
心室細動
<重要な不整脈>
1
刺激生成異常
洞不全症候群(SSS)
a. 洞性徐脈
PQRST は正常、それぞれの間隔が延長
b. 洞停止
期外収縮
2
a. 上室期外収縮
洞調律より早期に P 波出現(異所性 P 波)
b. 心室期外収縮
P 波なし
普通よりも早期に wide QRS
発作性上室性頻拍(PSVT)
RR 間隔整
narrow QRS
心房粗動(AF)
RR 間隔整
narrow QRS 鋸歯状波(F 波)
心房細動(Af)
RR 間隔不整
心室細動(Vf)
まったく不規則!とにかくヤバいのですぐ除細動
P 波なし
AF との鑑別が必要
基線の細かい動揺(f 波)
刺激伝導異常
房室ブロック(AV Block)
a.
I度
b.
II 度
PR 間隔が一定に延長
1) Wenckebach 型(Mobitz I 型)
PR 間隔が徐々に延長後、QRS 脱落
2) Mobitz II 型
PR 間隔は一定に延長、突如 QRS 脱落
c. III 度
WPW症候群
1)より重症
P 波と QRS 波がそれぞれ独立に一定の波を出す
←授業でやったやつ
δ波が特徴的(R 波の前に⊿な波が出現)
最重症
続 読め!
~KBL
コアカリE1
Kakomon Based Learning~
浮腫、頭痛、ショック
担当
井上
祥
はじめに
世間はワールドカップ一色ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?今日は 6 月 11 日の日曜日、オラ
ンダ vs セルビアモンテネグロ戦が行われる 40 分前くらいです。ミーハーな自分は既にドイツ vs コス
タリカ、イングランド vs パラグアイ、スウェーデン vs トリニダードトバゴと 3 試合も見てしまいまし
た。明日は日本がオーストラリアと激突しますね。
さて、ようやくE1の過去問を入手したのでシケプリとか作る気になりました。板井くんにどういう
ものを作ればいいのか聞いたもののよくわからなかったので、自分が使いたいようなシケプリを作るこ
とにしました。まぁ所詮自分の作る物なんであまり期待しないで欲しいのですが(日本人にありがちな
謙遜)、前回に引き続き、試験当日の午前 3 時くらいにシケプリをおもむろに持ち出して勉強を始め出
す我々劣等生でもそこそこ使えるような物を目指すつもりです。読み物形式、過去問全て掲載、なおか
つ余計な雑談のためページ数は多めになる予定ですが、多分読むのにそんなに時間はかからないし、気
を張らずに電車内やちょっと暇な時にでも読めるのではないかと思います。好評、不評、質問、激励な
どは井上祥まで。
相変らず前置きが長いですが、本題に入りましょう。
「浮腫」
過去問出題数
1題
さて、まず浮腫からいきますか。これは記念すべき第一回の症候学の授業で行われたものでしたね。
授業で扱われたのはネフローゼ症候群(膜性腎症)でした。とりあえず思うのは、困ったら授業でやっ
た疾患やそれに関する選択肢を選べばいいのでは、ということですが皆様どうでしょうか?
その浮腫ですが、過去問を見たところ 1 題しか出題されていませんでした。今年はどうか分かりませ
んが時間が無い人はこれを飛ばしても良いかもしれません。こんな 1 題しか出されていないところにあ
まり時間をかけたくないと思うので、エッセンスだけおさえて試験に臨みましょう。
浮腫とはなんでしょうか?浮腫は内科診断学によれば細胞外液のうち、組織間液が異常に増加し、体
表面が腫脹して見える状態を指している、とか書いてあります。よくわかりませんね。まぁ早い話がむ
くんでいるとか組織に水がたまってるってことを言うのですが、なんでこんなことが起きるのでしょう
か?まず、毛細血管が組織へと栄養やら酸素やらを行き渡らせている様子をイメージしてみましょう。
具体的にどういう風に行われているかと言えば、毛細血管の動脈から毛細血管内皮細胞を介して血管外
の組織間腔に血漿成分が染み出して、静脈へと再吸収されています(一部はリンパ管に再吸収されます)。
あ、10 時になった、キックオフだ!オランダ見なきゃ!…2 時間後…オランダ勝ちました。ロッベン
の決勝ゴール。
話がそれましたね。まぁこのように末梢の毛細血管では動脈→組織間腔→静脈って感じで血漿成分を
濾過してるわけでごんす。で、その組織間腔になんで水がたまってしまうのか?動脈から血漿成分がメ
チャクチャたくさん出ちゃってるとき、こんな時は浮腫になりそうですね(血管透過性亢進時)。また
は静脈での再吸収ができなくなっちゃってる時、こんな時もなりそうですね(静脈圧上昇時)。あるいは
循環血液自体がめっちゃくっちゃに増えている時、これも組織間腔に水がたまってしまいそうです(体液
増加時)。あとは低アルブミン血症(膠質浸透圧低下時)なんですが、これは後でちょっと説明を加えます。
でもとりあえずここまで理解できればあとは早いです。次は用語を覚えましょう。
「膠質浸透圧」どれだけアルブミンなどのタンパク質が脈管内に入っているかを規定するものです。こ
こでは高ければ高いほどアルブミンの量が多い、濃度が高い、とでも覚えましょう。浸透圧は濃度によ
って規定されるんでしたね(高校生の知識)
「静水圧」ただ単に血圧のことだと考えましょう。特に浸透圧と区別する時に使う用語です。静脈圧や
ら動脈圧のことですね。
次に、過去問を見てみましょう。
1.浮腫をきたす病態と機序の組み合わせで誤っているのはどれか。
a.収縮性心膜炎―静水圧の低下
b.慢性腎不全―膠質浸透圧の低下
c.肝硬変―膠質浸透圧の低下
d.肺性心―静水圧の上昇
e.ネフローゼ症候群―膠質浸透圧の低下
誤っているものを答えさせる問題です。まず、選択肢のテクニックから a と d に絞れるのですが、そ
れはまぁ置いといて一つ一つ説明を加えていきましょう。最初に考えるのは、膠質浸透圧が低下すると
なんで浮腫になるのかってことです。血管を流れるアルブミンが減少したとします。血液中のアルブミ
ン濃度は当然下がります。そうすると濃度の低下と共に膠質浸透圧は下がります。もう分かりましたね。
動脈→組織間腔→静脈という一連の流れで血管側のアルブミン濃度が下がったら濃度勾配の関係上、組
織間腔側に水分(血漿成分)が流れ出ていくに決まってます。…当たり前のことを説明しすぎた、と思
いましたがせっかく打ったしもったいないので残しておきます。次に膠質浸透圧が低下するという選択
肢の b,d,e を見ましょう。b の慢性腎不全、低アルブミン血症になります。腎機能低下すると尿蛋白で
るでしょ?タンパク質であるアルブミンも出ていきそうですね。d の肝硬変、肝臓でアルブミンを作っ
ているんだから間違いないでしょう。e のネフローゼ症候群、これも低アルブミン血症になりますね。
むしろネフローゼ症候群といえば尿蛋白ってくらいですよね。
次に静水圧。ここでは静脈圧を考えましょう。d の肺性心を考えます。肺性心になったら右心不全系
の症状が起きる。当然静脈圧は上がる。静脈圧が上がれば動脈→組織間腔→静脈という流れを考えれば
静脈に組織間腔から水分(血漿成分)が入れない。浮腫になりますね。てなわけで静水圧の低下、とか
書いてある a の収縮性心膜炎をはじくことができます。収縮性心膜炎も右心不全系の症状を起こします。
さて、大体浮腫はこんなもんかな。結構長くなりましたね。これくらい分かってれば大体試験場で考
えられるかな。あ、でもあともうちょっと触れなきゃならないことがある・・・。でも眠いのでまた明
日。ん?明日は日本 vs オーストラリア?まぁでも明日は自宅観戦の予定だし、それまでの間やるか。
いやぁ、一番比重の軽そうな浮腫でこんなにページとられるなんて…先が思いやられますな。雑談が多
いのもいけないのかもしれません。(6/12 午前 1 時 44 分)
ちょっと話がそれすぎな感があるこのシケプリですが、続きを書きたいと思います。今はオーストラ
リア戦の 6 時間前です。明け方、ポルトガルはデコなしで勝利しました。「浮腫」という病態から考え
られる疾患を答えさせる問題も想定できます。その時に注意しなくてはいけないのは、浮腫が全身性か、
あるいは局所性か、ってことです。全身性の浮腫はネフローゼ症候群、うっ血性心不全、腎不全、甲状
腺機能低下症の4つです。全身性の浮腫は大事だと思うので、これだけは覚えましょう。それ以外は局
所性、静脈血栓症、肝硬変(非代償期)だとかが考えられます。一応頭にいれておいてもいいかな?自
分は五択の問題を解くためには半分だけ覚えていれば解けると思っています。ここでは重要な全身性だ
け覚えておきましょう。
あとはこの全身性の浮腫4つの鑑別の仕方くらいまでやりますか。甲状腺機能低下症の場合は皮膚を
圧迫しても元に戻る浮腫なんです。あとの3つは皮膚を圧迫したら元に戻らない(圧迫痕ができる)浮
腫です。心原性浮腫(右心不全系)と腎性浮腫(腎不全、ネフローゼ症候群)の違いくらいは問題文読
めばおそらく分かるのでは、と思います。また、ネフローゼ症候群と腎不全が両方選択肢に入っている
ことは考えにくい。ネフローゼ症候群から腎不全になるしね。
所詮浮腫は一題です。落としてもいいくらいの気持ちで臨みましょう。ここまで理解できてれば 8 割
方正解できると思うけどね。次は頭痛にするか、ショックにするか…ちょっと考え中です。
「頭痛」
過去問出題数
4題
結局次は頭痛にしてみました。授業で扱われた疾患はくも膜下出血です。頭痛は 4 題出題されている
範囲、できれば拾いたいところですね。4 題全てを拾おうと思うとかなりの苦労が必要です。けれども
3 題拾いにいくならわりと簡単にできる、そんな分野だと思います。最初にこれだけはおさえなければ
いけない基礎を提示して、過去問を検討しながらそれに関して随時説明を加えていって、先生方が僕ら
に何を求めているのかを考えていきたいと思います。
頭痛を診断する上でこれだけはおさえておきたい基礎を書きたいと思います。というよりはキーワー
ドから選択肢を絞っていくためのものです。五択の問題では全て理解しなくてもキーワードからある程
度絞れれば正解率はかなり上がります。
1.頭痛の発症様式
どういう風に始まったのかってことです。初めての強烈な痛み(ハンマーで殴られたような)である
ならばクモ膜下出血、繰り返す頭痛ならば片頭痛や緊張型頭痛が考えられます。
2.頭痛の部位
常に片側性であるならば群発頭痛が、一定部位が痛むのであるならば片頭痛が考えられます。
3.頭痛の性状
ここでは拍動性の頭痛に注目しましょう。まず片頭痛、続いて側頭動脈炎などの血管性の頭痛が代表
的です。
4.頭痛の発現・持続時間
夜間睡眠中の決まった時間に出現して 30 分~2 時間くらい続く、こう来たら群発頭痛です。あとは
早朝時に頭痛が生じる場合、これは脳腫瘍のことが多いんです。
5.随伴症状
頭痛に伴う症状です。これはとても大事。まず発熱がある場合、これは髄膜炎を第一に考えましょう。
あとは髄膜刺激症状がある時、これはクモ膜下出血、髄膜炎なんかが考えられます。
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に関しては過去問分析で説明を加えるとしましょう。ここでは髄膜刺
激症状について少し説明を加えておきます。と思いましたがちょっと疲れたのでチェスでもして一休み
したいと思います。現在 12 日の 18 時 15 分。キックオフが待ち遠しい限りです。
結局キックオフまでチェスしてたんですが日本 1-3 オーストラリア。負けてしまいました。
残念です。
次に期待ですな。
髄膜刺激症状について少し。髄膜刺激症状ってのは自覚的なものとしては嘔吐、頭痛が大事です。他
覚的なものとしてはとにかく項部硬直!!あとは Kernig 徴候。項部硬直ってのは「他動的に項部を前
屈させると、抵抗を感じる」と定義されております。ついでに Kernig 徴候は「膝関節を曲げたまま下
肢を股関節で屈曲させ、ついで股関節を進展させようとすると疼痛と抵抗が認められる」だそうです。
この辺はまんまだから特に説明はなし。
さて、過去問に参りましょう。
5.54 歳男性。仕事中に突然頭を抱えるような仕草をして、嘔吐したのち、意識を失い、
救急車にて近くの大学病院の救命センターへ搬送された。搬送された時、意識レベルは
300(JCS)。呼吸は浅く舌根沈下認められ、心拍 120/分、血圧 200/120 であった。直ちに、
気管内挿管すると、淡いピンク状の泡沫状の分泌液が多量に吸引された。瞳孔は左右同大
で対抗反射はやや緩慢であり、四肢の麻痺は認められなかった。この時点で考えられるの
はどれか。
a.脳梗塞
b.急性硬膜下血腫
c.てんかん
d.高血圧性脳出血
e.くも膜下出血
まず、この問題は頭痛の問題なのでしょうか?でも、突然頭を抱えるような仕草をするってのはその
時非常に重い頭痛を受けていたのではないかと判断することもできます。それで、とりあえずこの問題
を頭痛に入れてみました。この問題は見た瞬間に e のくも膜下出血だと思いました。これを否定できる
要素がない。てなわけで他の選択肢をはじく根拠を一つずつ挙げていきましょう。まず、b の急性硬膜
下血腫はとりあえず外傷がなさそうだし、はじけますね。(硬膜下血腫については後半の方の問題で詳し
く取り扱います)次に c のてんかんもはじけそう。年齢がいきすぎているし、髄膜刺激症状は特徴的では
ありません。脳波もとっていないし、「この時点で考える」というならやはり脳血管で何か起きたので
はないかと考えるべきでしょう。次の2つはかなり悩ましいです。a の脳梗塞はステップいわく、最初
の発作では意識障害や頭痛が脳出血より軽めとのこと。d の高血圧性脳出血はもちろん出血部位から考
えなくてはなりませんが、片麻痺や四肢麻痺がとても特徴的です。四肢麻痺がないことから否定しまし
た。よって、やはり直感通り、e のくも膜下出血を正解とします。
次の問題に入ろうかとも思ったのですがこの問題が予想以上に難しかったため、ここで寝ます。それ
ではまた明日お会いしましょう。
なんだかんだで水曜日。今はスペイン vs ウクライナ4時間前です。グループリーグ屈指の好カード
ですね。どうでもいいですね。それでは次の問題に入りましょう。
11.65 歳の男性。歓送迎会で飲酒して帰宅し、自宅の階段で足を踏み外して、左頭頂部
を打撲した。打撲部位は皮下血腫を認めたが、2,3 日でそれもなくなり、痛みもないため
医者にもかからなかった。約 1 ヶ月後、頭痛を感じるようになり、右足に力が入らないよ
うに感じ、歩きにくくなったため、病院を受診した。考えられるのはどれか。
a.脳梗塞
b.高血圧性脳出血
c.慢性硬膜下血腫
d.緊張型頭痛
e.脳腫瘍
これは簡単ですね。c の慢性硬膜下血腫です。これを機に頭部外傷系統疾患の解説をいくつか。
慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷による微量の出血が原因となります。この頭部外傷の3週間~6ヶ
月以上(最も多いのは2~3ヶ月後)で発症します。症状としては頭痛、片麻痺、記銘力低下、意識障
害が特徴的です。血腫による脳圧迫症状ですね。この過去問の症例でも「右足に力が入らないように感
じ歩きにくくなった」という片麻痺のような症状を呈しています。CT では三日月型を示します。この
くらいのキーワードが頭に入っていれば五択では十分でしょう。
あとは同じく頭部外傷系統の疾患で出題される可能性がある急性硬膜下血腫と急性硬膜外血腫との
鑑別くらいはやっておきますか。急性硬膜下血腫は死亡率 40~60%にも及びます。重傷です。頭部外
傷の直後から意識障害を認めます。そして高度の脳挫傷をともなうことが多いです。また、どこに血が
たまるかというと、硬膜とクモ膜の間ですな。解剖を考えていただければ分かると思いますが、硬膜と
クモ膜って癒着してないよね。そんなおかげで血腫は脳表に瞬く間に広がります。CT では三日月型。
次に急性硬膜外血腫。えーっとこれは硬膜と頭蓋骨の間に血がたまります。特徴としては頭部外傷後、
数時間を経過した後、急激な意識レベルの低下が起こることが多い、つまり外傷を受けてから数時間は
意識が明瞭なんだそうな。これも即座に開頭して血腫除去+出血源の止血を行わないと死んでしまうら
しいです。CT では両凸レンズ型(楕円みたいな感じ?)です。
それでは次の問題に参りましょう。
12.32 歳の男性、21 歳から片頭痛が出現、頭痛時は市販の痛み止めを服用していた。
最近、片頭痛はないが、気管支喘息で加療中であった。今日、スキーをしている最中に、
突然、後頭部痛、めまいが出現したため救急車で来院した。意識は清明。左の外転神経麻
痺、左の顔面神経麻痺と右上下肢の運動麻痺を認めた。頭部 MRI を行ったところ左橋下
部腹側に脳梗塞を認めた。最初に行うべき検査はどれか。
a.造影 CT
b.CT アンギオグラフィー
c.MRA(頭部・頸部)
d.ホルター心電図
e.心エコー
悩みました。片頭痛や気管支喘息の既往歴はとりあえず、問題文と選択肢を5つ全部見て読み取れる
のは、これは脳梗塞のうち脳塞栓症であるということです。脳塞栓症の特徴は、日中の活動中に発症し
ていること、基礎疾患として心疾患があることです。出題者心理として、選択肢の中に脳自体を調べる
CT や MRA の他に、基礎疾患の心疾患を調べるべく、ホルター心電図や心エコーが混ざっているのだ
な、と考えるのは自然でしょう。
CT 系ではないことは分かりました(アンギオグラフィーは血管造影)。理由は脳梗塞には CT より
MRI の方が検査として優れているからです。MRA はどうでしょう。MRA は非侵襲的な血管造影法で
す。これはまだ消すには早い。次に基礎疾患の心疾患を調べるならばホルター心電図でしょうか?心エ
コーでしょうか?最初に行うべき検査、明らかに心エコーでしょう。心臓に塞栓があるか分かるし時間
もかかりません。ホルター心電図は時間がかかりすぎます。さて、心エコーと MRA に絞れました。最
後にもう一度問題文を読んでみるとどうも MRI を見て、責任病巣が明らかになっているのではないか
と感じられます。MRA は責任血管を明らかにするためのものです(血管造影)。しかも MRA では明ら
かにならない時もあります。ならば、やはり基礎疾患を調べるための e.心エコーではないか?という結
論が出ました。皆さんはどう考えますか?ご意見をお待ちしております。ではスペイン vs ウクライナ
キックオフです。
スペイン vs ウクライナはスペインが前半 2-0 です。頭痛の最後の問題に参りたいと思います。
81.頭痛と症状の組み合わせで誤っているものを二つ選べ。
a.前兆として閃輝性暗点が出現し、眼の奥から側頭部にかけての頭痛―緊張型頭痛
b.突然出現した後頭部の激しい頭痛で時に嘔吐を伴う―くも膜下出血
c.朝になると頭部全体が痛くなり、しばしば嘔吐を伴う―頭蓋内圧亢進による頭痛
d.急に出現した頭痛でしばしば麻痺、意識障害を伴う―脳出血に伴う頭痛
e.後頭部や前頭部付近の痛みで、軽い羞明を訴えることが多い―片頭痛
この問題の答えは a と e ですが、実はこの問題が分かるとさきほど解説した過去問の5.を解く手がか
りになります。5.ではくも膜下出血と脳出血の鑑別がキーポイントになっていました。この問題には大
きなヒントが隠されていますね…(笑)お、スペイン vs ウクライナの後半が始まった模様です。てい
うか 3-0 じゃん…。またお会いしましょう。…45 分後…4-0 でスペインが勝ちました。全く予想外です。
とりあえず誤っている選択肢については後で解説するとして正しい選択肢に触れましょう。まず b と
d は5.の解説を見てもらえば大体分かると思いますがこの通りです。特に b の選択肢とかはそのまま
覚えたいくらいの内容ですね。d も同じ。ちなみに脳出血は高血圧が原因で起こることが多いんです。
5.では「高血圧性脳出血」という選択肢が出ていましたがこれは病態としては一般的な脳出血と同じ
だと思っていただいても構いません。次に c の頭蓋内圧亢進。これは慢性頭蓋内圧亢進のことを示して
いるのでしょう(急性頭蓋内圧亢進は頭部外傷や脳出血に引き続いて起こるもので、激しい頭痛にけい
れん、徐脈に意識障害を起こすものだからです)。慢性頭蓋内圧亢進の三主徴は頭痛、嘔吐、うっ血乳
頭です。また、頭蓋内圧亢進は脳腫瘍が原因で起こることが多い(最初の基礎のところで早朝の頭痛は
脳腫瘍と書きましたがまさにこのことです)。この慢性頭蓋内圧亢進の頭痛ですが morning headache
と呼ばれるほど早朝に多く起こります。これに伴って嘔吐がみられますが嘔吐と共に頭痛が軽快するこ
とが多いのもまた特徴です。うっ血乳頭は網膜中心静脈が頭蓋内圧亢進により物理的に圧迫されている
ことにより起こります。
よけいな脱線が多いのも事実ですが頭痛は 4 題出題されているだけあってかなり長くなっていますね。
あと少し、がんばりましょう。誤りである a と e の選択肢を考えるために、そして機能性頭痛の鑑別疾
患の問題が出ても対応できるように、最後に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の特徴を軽く挙げておきま
す。片頭痛は若年女性に起こる頭痛で、一側性で側頭部に起こる拍動性の頭痛です。なぜ側頭部に拍動
性の頭痛が起きるか?それは血管の拡張による圧迫によって起こる頭痛だからです(これはまだ仮説の
段階ですが、かなり信憑性の高い仮説です)。前兆として閃輝性暗点や異常感覚などが起こることもあ
り、随伴症状として悪心、嘔吐などが起こることもあります。緊張型頭痛は 30-50 歳に多く、ストレス
により誘発される頭痛です。原則として両側性です。次に前後のことを考えてみましょう。前頭部や後
頭部のみに起こることもあるし、あるいは頭部全体にも起こることもあります。性質は「頭を締め付け
られるような」といわれる圧迫性頭痛です。最後に群発頭痛。これは中年男性(しばしば 20-30 歳男性)
に突発する一側性で眼窩周囲に起こる拍動性頭痛です。「目玉にナイフを突き刺されるような痛み」と
表現されます。一回の頭痛は 20 分~90 分程度で 1 日に何回も起こり、一度発症すると数日~数週間続
きます。一旦おさまったら数ヶ月~数年発作が起こらないというのも特徴の一つです。
ふう、シケプリ作るのってなかなか大変ですね。現在午前 2 時。これで頭痛を終わります。五択試験
対応型のシケプリはキーワードが大切だと思うので、それに気を配りながら作っているつもりですがど
うでしょう?また眠気が襲ってまいりました。残すはショックのみです。
さて、もう 6 月 18 日の日曜日になってしまいました。アルゼンチンは 6 点とって旧ユーゴを沈めま
した。それよりもチェコがガーナに完敗したのが驚きでした。今は日本 vs クロアチアの前です。今日
こそは健闘してほしいと思いますがクロアチアも強いですね。応援のテンションはやや下がっておりま
す。ここ 2 日間体調不良とかいろいろあって、チェスの早指し大会に参加できずにストレスがたまり気
味ですがショックの解説に移りたいと思います。
「ショック」
過去問出題数
3題
授業では尿路感染による敗血症性ショックが扱われていました。過去問出題数から言うと対策が必要
そうな範囲でしょうか。ただ、過去問を見て問題をある程度想定してみましたがこれは結構対策がしや
すいかな、という感じです。「五択であるならキーワードを覚える」という作戦が功を奏すような問題
ばかりだからです。出題された問題の種類は、疾患からショックの種類を答えさせる問題、SIRS に関
する問題、出血性ショックの特徴を答えさせる問題の3つ。つまり代表的なショックの特徴をおさえる、
鑑別に際してのキーワードを覚える、SIRS の定義を覚える、これでこの分野は攻略できるでしょう。
今までと同じように過去問を見ながら考えていきましょう。
ショックの定義は「急激な全身的な組織血液灌流低下によって組織が低酸素状態に陥り、細胞代謝が
障害された状態である。結果として、重要臓器の機能低下やアシドーシスによる諸症状が出現する。
」
とされていますがちょっと長いですね。まぁつまり循環不全によって臓器が低酸素血症に陥る、そんで
もって細胞が不可逆的障害を受ける、ってことです。イントロダクションとして、ショックの診断基準
とどのようなショックがあるか紹介しましょう。細かいところは過去問を見ながら解説をしていきます。
それではまずショックの診断基準です。ショックの診断基準は以下の通り。Ⅰ.はまず必ず満たさなけ
ればなりません。その後にⅡ.のうち 3 項目以上を認める場合をショックとします。
Ⅰ.
収縮期血圧<90mmHg 以下
Ⅱ.
a)心拍数>100 回/分
b)微弱な頻拍
c)爪床の毛細血管の refilling 遅延(圧迫解除後 2 秒以上)
d)意識障害または不穏、興奮状態
e)乏尿、無尿(0.5ml/kg/時間 以下の時)
f)皮膚蒼白と冷汗または 39℃以上の発熱(感染性ショックの場合)
ちなみに c)は末梢循環を見るためのもので、爪を押して圧迫した後色が 2 秒以内に元通りに赤くなら
なかったら、ってことです。
次に分類です。臨床病態から見て、次のようなショックの種類があります。「循環不全」に着目しな
がら読んでいただければより理解が深まるかもです。
1.出血性ショック(低容量性ショック)
本によっては低容量性ショックと書かれていましたが出血性ショックのことです。循環血液が減った
ら循環不全に陥るのは納得ですよね。どのような出血パターンがあるかといえば、外出血と内出血です。
外出血は分かりやすい。外傷を負っているか見ればいいだけです。内出血のパターンとしては消化管出
血、大動脈瘤破裂、あとは女性であれば子宮外妊娠破裂も考えられます。外傷を負った後の皮下血腫に
も注意しましょう。
2.心原性ショック
循環を司るポンプの心臓がやられてももちろんショックになります。最初に、急性心筋梗塞が筆頭に
挙げられます。あるいは心筋炎や心タンポナーデもありますね。他には肺塞栓、緊張性気胸などをおさ
えておきましょう。
3.敗血症性ショック
敗血症性ショックは細菌によって起こされるショック、感染症に伴うショックです。特にグラム陰桿
菌によって起こされる敗血症性ショックをエンドトキシンショックといいます。ただし、起炎菌が何で
あっても大して症状(発熱、発汗、頻脈、呼吸促迫、乏尿、消化器症状、意識レベルの低下)に差があ
りません。これはなぜなのか?それは生体に直接ダメージを与えているのは細菌感染に伴って白血球な
どが分泌するサイトカインだからです。いまいち分かりにくいかもしれませんがつまり敗血症性ショッ
クとは、高サイトカイン血症になり、全身で炎症状態が引き起こされ、まもなくそれによる多臓器不全
が起きるであろう状態ということになります。全身の炎症状態ということで、ここで SIRS についてふ
れましょう。SIRS は systemic inflammatory response syndrome の略で強いて日本語に訳せば全身性
炎症反応症候群です。SIRS の診断基準は次の 4 項目のうち 2 項目を満たすものです。
SIRS の診断基準項目
①体温が 36℃以下、または 38℃以上。
②脈拍数が 90 以上。
③呼吸数が 20 回/分以上または PaCO2 が 32mmHg 以上。
④白血球数が 12000/mm3 以上または 4000/mm3 以下。
さて、どうして SIRS という考え方が生まれてきたのでしょうか?従来の概念でとらえた敗血症に対
していくら新しい治療を試みても、もう手遅れでなかなかその効果を発揮しないという事実がありまし
た。そこで、患者の状態を血圧低下や臓器障害ではなく、もっと包括的にとらえようという試みの中で
でてきたのが SIRS の概念です。SIRS と診断された患者がすべて重篤な敗血症に移行するわけではあ
りません。しかし SIRS の症例はそうでない症例に比べて、その後の臨床経過で敗血症や敗血症性ショ
ックに移行する頻度が高く、また SIRS の診断項目のうち、より多くの項目を満たす症例の方が死亡率
が高いことが報告されています。つまり SIRS は重得な病態に移行する前の段階で、その危険性を把握
しうる指標として有用であり、その特徴を理解し臨床に応用することは意義のあるものであると考えら
れています。
ついでに高サイトカイン血症から循環不全(最初にも説明したように、ショックの本質は循環不全で
す)が導かれる理由はまだ完全には明らかになっていませんが、とりあえずサイトカインにより末梢血
管が拡張されます。末梢血管が拡張すれば血圧は一挙に低下し、心臓に戻る血液が少なくなって、循環
不全に陥り、ショック状態になる、と考えればいいでしょう。あとは warm shock について触れねばな
らないところですが過去問で扱われていたのでその際に追加で解説をいれます。
4.アナフィラキシーショック
抗原が全身に運ばれ、いたるところでⅠ型アレルギーが生じると、ショック症状を来たします。この
病態は末梢血管が拡張すると共に透過性の亢進した血管から循環血漿がどんどんと漏れ出し、心臓に戻
る血液が一挙に減少する循環不全です。これに、喉頭浮腫、気管支平滑筋の収縮による呼吸器症状が加
わります。Ⅰ型アレルギーなので原因は薬物や食物によるものです。
5.神経原性ショック
最後に循環調節を司る元の元である自律神経系の破綻によるショックをおさえておきましょう。原因
として脊髄を含む中枢神経の損傷、血管迷走神経反射、交感神経遮断薬の作用、脊椎麻酔などが挙げら
れます。血管迷走神経反射とは何でしょう。これは激しい痛みや肉体的な苦痛、恐怖などの精神的な打
撃によって自律神経に起こる反射で、循環調節系が破綻します。
この 5 種類のショックは必ずおさえておきましょう。さて、いまいちテンションは上がりませんが日
本 vs クロアチアでも見ますか。見終わったら過去問解説をしましょう。…2時間後…いや、よくがん
ばりました。1次リーグ突破は厳しいもののクロアチアに引き分けなら大健闘でしょう。
7.75 歳、男性、結腸切除術第5病日。体温 39.1℃、血圧 75/40mmHg。術野のドレーン
は汚染されている。四肢末梢は温かい。可能性が高いのはどれか。
a.急性心筋梗塞
b.心原性ショック
c.出血性ショック
d.敗血症性ショック
e.アナフィラキシーショック
いわゆる術後感染症ですね。それと同時にこれは四肢末端が温かいというところから d.の敗血症性シ
ョックと一発で分かります。さきほどキーワードだけ挙げた warm shock です。前述のように敗血症性
ショックにおいては末梢血管が拡張します。末梢血管が拡張すると心臓に戻ってくる血液が減少します
が、それを代償しようとして、心臓ががんばります。心拍出量を増やすわけです。そうするとしばらく
の間は末梢に潤沢に血液が流れることになり、皮膚温は上昇します。これを warm shock といいます。
もちろん心臓のがんばりにも限界があるので、心臓が疲弊するにつれ、皮膚を流れる血液も乏しくなり、
他のショックと同じく cold shock となります。
次の問題にまいりましょう。
27.systemic inflammatory response syndrome(SIRS)について正しいものはどれか。
a.低血圧は診断項目の一つである。
b.低酸素血症は診断項目の一つである。
c.ウィルスによる重症肺炎である。
d.急性膵炎は原因となる。
e.治療には抗生剤が有効である。
かなりの難問です。SIRS についてはイントロダクションの部分に書いたのでそこをもう一度読んで
みてください。診断項目を覚えていれば a.と b.ははじけます。a.の低血圧はショックの代表的な症状で
すが、SIRS の項目には加えられていないので注意が必要です。b.も違う。大事なのは PaCO2 です。二
酸化炭素分圧については書かれているものの酸素分圧については項目に加えられておりません。c.はサ
ーズ違い(笑)。最後に d.と e.を比較しましょう。先に e.をみてみましょう。確かに抗生物質は菌がは
っきりすれば有効です。しかしエンドトキシンショックの時にはグラム陰性桿菌を破壊してしまったら
どうなるでしょう?ますますエンドトキシンが出て大変なことになりますね。よって答えは d.となりま
す。急性膵炎は SIRS にしばしば移行する重要な疾患です。
非常に難しい問題でした。診断項目を覚えていれば正解させてくれてもいいのに、d.と e.の二択にま
でしか絞れないからです。(c.は最初からはじける)
さて、最後の一題にいきますか。その前にブラジル vs オーストラリアを少し…今前半が終わったと
こみたいですね。まだ両者点が入っておりません。
36.出血性ショックの所見として正しいものはどれか。
a.皮膚紅潮
b.血圧上昇
c.末梢血管抵抗上昇
d.中心静脈圧上昇
e.尿量増加
答えは c.の末梢血管抵抗上昇です。「出血性ショック」が「敗血症性ショック」など他のショック名
になっても答えられるように、ショックの鑑別のための所見比較をしておきましょう。
【血圧、尿量】まず、ショックにおいては必ず血圧は低下して、尿量は減少します。これだけは覚え
ておきましょう。これでこの問題のように「血圧上昇」とか「尿量増加」とか書いてあったら五択のう
ち二つは消せます。
【皮膚】皮膚は基本的には蒼白になったり冷たくなったりします。循環不全ですから。けれども唯一、
さきほど説明した敗血症性ショックでのみ「warm shock」という一時的な皮膚温上昇、皮膚紅潮のシ
ョックがあります。
【末梢血管抵抗】これは基本的には上昇します。大事な臓器に血液がいくようにしなくてはなりませ
ん。末梢に血液を循環させている場合ではない。けれども敗血症性ショックでは末梢血管が拡張するの
で抵抗は減少します。アナフィラキシーショックでも末梢血管は拡張するので抵抗は減少します。(け
れども、末梢血管の透過性が亢進しているので皮膚温上昇はありません)。
【中心静脈圧】出血性ショックでのみ下がると覚えておきましょう。心原性ショックでは血液量には問
題がないのに心臓のポンプ機能に問題が出るので、むしろ上がります。
ようやく最後までたどり着きました。長かったですね。ここまでお付き合い頂いた皆さん、どうもあ
りがとうございました。了解済みだとは思いますが誉めて伸びるタイプなんでよろしくね(笑)。ブラ
ジル vs オーストラリアはブラジルが 2-0 で勝利。負けたオーストラリアも強かったです。さて、きり
がないのでそろそろここらへんでこのシケプリを終わらせていただきます。とにかく五択はキーワード
とイメージだと思います。キーワードには線を引っ張っておいたのでそれを覚えればなんとか対応でき
ると思います。
こんな劣等生が語るのもなんですが、勉強は正解の確率を少しでも上げるためにやるものだと思いま
す。五択で言えば少しでも消せる選択肢を増やすこと。最後二択にまで絞れたらあとは運次第。神様に
任せましょう。
「間違ってるな」って思った箇所があったり、「このシケプリいいわー」って思ったらすぐにメール
してくださいね(笑)。
6 月 19 日月曜日 午前 3 時 27 分
~ここまで読んでくれた皆さんに感謝しながら~
S.Inoue
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