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これからの服作りの在り方について 株式会社ケーエム縫製 代表取締役

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これからの服作りの在り方について 株式会社ケーエム縫製 代表取締役
これからの服作りの在り方について
株式会社ケーエム縫製
代表取締役 水谷 浩睦
長引くファッション業界の構造不況は、未だ出口が見えずにテキスタイル・ア
パレル・
製造・販売といった川の流れの各所においても体力勝負の持久戦の様相を呈し
て来ました。
ファストファッションに代表される”洋服の日用品化”は、ファッションという
本来は”オシャレ”という付加価値あるものを、生活必需品というジャンルに押し
下げてしまいました。
百貨店ビジネスも同様で、多種多様なアイテムをニーズに合わせる事で、ブ
ランドイメージを失墜させ、さらには製造原価を抑える為に生地・品質を落と
して目先の売りに走っています。差別化の出来ない画一的になった商品は、消
費者が敏感に反応して敬遠される為にさらなる値下げ競争へと向かい、尚且つ
セールの前倒し化によってバーゲン待ちで購入というプロパー販売期間の圧縮
など、「負のスパイラル」に陥っています。
「魅力的な洋服がない」という誠に悲しい現況は、男女問わず本来皆様が有す
る「オシャレ感」をくすぐらない事が、消費行動を喚起しない起因となってい
ます。
洋服、特にジャケットは、袖を通して初めて生きるものです。
「着心地の良い服」
は、その服を永年大切に着用したいと思わせる要素を織り込まなければ作り得
ません。見た目の形に囚われ過ぎて袖の上がらない窮屈な服が、売り場で見受
けられたりもしています。
現在、洋服の生産背景は90%以上が海外にシフトされています。生き残った
我々が国内において作る服とは、日本人がDNAとして持つ「器用さ」
「丁寧さ」
を最大限に生かし、世界最高のテキスタイルと、新進気鋭のデザイナーとの三
位一体となって海外に進出する新たな方法論が一つあります。
国内製品の評価の高い特に東南アジアのマーケットに対して、生産輸入国とい
う位置付けではなく、次々と生み出される新興富裕者層に向けて積極的にアプ
ローチをしていくべきだと考えます。
その為の「魅力ある服作り」は、現状のような垂直軸の縦割りとなった服作り
の関係ではなく、テキスタイル・デザイナー・パタンナー・工場などの服作り
に携わる各パートのプロが情報を共有し、リスクも利益もシェアするようなフ
ラットな関係・良好なパートナーシップでなければ実現しないと思います。
その情報を共有するアイテムは一つだけ、それは「パターン」です。
デザイナー・パタンナーの思い描く3次元のイメージ・フォルムを、一旦 2 次
元のパターンに変換して、そこから工場が意図・こだわりを理解しながら忠実
に立体化(3D化)する。
この変換作業の基となるパターンは、工場サイドに近ければ近いほど効率よく、
且つ円滑に進行します。理想形は、イタリアのように「工場がパターン機能を
持つ」という事になりますが、外部のパタンナーの方とも意思疎通が図れれば、
チームとして服作りを進める事が可能になります。
さらに突詰めれば、パタンナーはフォルム追求に注力して、工場はノウハウを
生かした展開を加えて工業パターン化するという明確な作業分担で効率化を図
る事です。
現在は、この「パターン展開」が双方の作業ロスと誤解の種となっていますの
で、この部分をクリアすればさらに効率化される事と思います。
この生産サイドがパターン力を有するという事は、先にも述べました若手ブラ
ンドの後押しには必要不可欠なのですが、この関係が構築されればまた新たな
領域の広がりが見えてきます。
それは国内市場におきましても実現可能で、その方向性としては「顧客情報を
持った小売先とダイレクトに手を結ぶ」という事だと言えます。
消費者マーケットを第一に考えれば、お客様の声を即座に取り入れながら服作
りを対応させるレスポンスが必要で、それは販売から生産までの距離が短いほ
どクイックに対応が可能になります。既にそれを実行して収益の柱へと育て上
げた仲間も実在しまして、その可能性を実証しています。
もう1点だけ述べさせていただきます。
約3年に亘り、若手ブランドの服作りを手掛けてきましたが、関われば関わる
ほどさらに高い壁と深い溝が目の前に立ちはだかります。
以下、簡単にその問題点を列記しますと・・・
◆ 若手ブランドに理容師や美容師のような国家資格などの指針がない為に、
玉石混交状態である。
◆ 経済産業省を始めとした各種若手支援プロジェクトは、器を用意するだけの
単年度支援の為、ブランドデビューするものの継続活動が困難である。
◆ 学校のカリキュラムも、彼らがブランディングする為の実地教育を完全にカ
バー出来ていない。
◆ ブランドを立ち上げる為には出資金が必要となり、個人で立ち上げるのが
困難な状況である。
毎年多くのファッション志望の学生を輩出しているのに、若手ブランドが思う
ように萌芽しない現状に一石を投じるべく、
「学生のうちからチームとしてブラ
ンドビジネスを体験させる」そのようなプログラムを是非皆様で論じていただ
きたい。
切にそう願います。
幸いな事に、この問題に危機感を持つ現場レベルの気概のある方々が立ち上が
りまして、新たなプログラム作りを模索し始めています。
最後になりますが、
我々の目指す服作りは、必要だから仕方なくという「NEEDS」ではなく、
どうしても欲しいという欲求を演出する「WANTS」だと思います。
マスの時代は終わりました。個性・ライフスタイルを重要視する今を再認識す
る必要性があります。
そしてマーケットは国内だけではなく、海外でも「MADE IN JAPAN の服」
を求めているという事です。既に輸出の主力・海外認知の原動力となっている
サブカルチャーとの連動も視野に入れながら、日本だからこそ作り得る服作り
もその一つだと思います。
歴史を遡ってみましても、不況下においてこそ変革や新たなファッションの提
言が生み出されています。
その為の様々な方策作り・仕組み作りに、これからも邁進する所存です。
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