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高血圧とその治療薬
高血圧とその治療薬 2015年11月12日 血圧調節とその破綻、治療薬 ●血圧調節のメカニズム ●降圧因子と昇圧因子 ●高血圧症関連遺伝子 ●高血圧を伴う単一遺伝子病 ●高血圧症の薬物治療 ●妊娠と高血圧症 血圧測定の仕方 血圧測定 血圧は如何にして調節されるか? 血圧調節機構 血圧調節に関わる因子 (1)神経性調節 交感神経系を活性化または抑制する機構 (副交感神経を活性化または抑制する機構) (2)液性調節 血圧上昇に関与する因子(昇圧因子) 血圧下降に関与する因子(降圧因子) 血圧調節に関わる重要な臓器 ●中枢神経 ●自律神経系 ●心臓 ●腎臓 ●血管系(動脈系、静脈系、血管内皮細胞) ●内分泌器官(副腎、甲状腺など) 血圧の神経性調節 心血管中枢と末梢との関係 CVLM: Caudal ventricular medulla, RVLM: Rostral ventricular medulla 自律神経機能の検査 ノルアドレナリン静注試験 自律神 経系の 障害 PAF:pan-autonomic failure MSA:multiple systemic atrophy イソプロテレノール負荷試験 チラミン静注試験 アトロピン静注試験 血管内皮細胞機能検査 L-arginine負荷試験 方法:上腕動脈にテフロン針を留置し連続的に血圧を測定しながら、30分の仰臥位安静後、 L-アルギニン500mg/kgを30分かけて点滴静注し、血圧および脈拍数の変化を検討する。 血圧の日内変動 血圧の日内変動と病態 Dipper 型 Non-dipper型 血圧の日内変動と心血管イベント 血中カテコラミンの日内変動 ストレスと高血圧 男女別の高血圧患者の割合 24時間血圧測定の有用性 ●白衣高血圧の発見 ●薬物抵抗性または有効性の評価 ●夜間血圧変動の評価 ●発作性高血圧 ●降圧薬または自律神経障害に伴う低血圧の診断 ●頚動脈洞性失神発作およびペースメーカー症候群 家庭血圧と外来血圧の違い 【まとめー1】 ✔血圧は神経系と液性因子で調節される ✔血圧調節に関わる臓器は多岐にわたっている ✔自律神経機能検査で神経系調節を推定 ✔血圧の日内変動と24血圧測定の意義 血圧調節の液性因子 昇圧因子 ●レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 ●陽イオン(Na+,K+.Ca2+) ●インスリン ●カテコラミン ●トロンボキサン ●プロスタグランジンH2 ●エンドセリン ●セロトニン(血圧降下とそれに続く血圧上昇反応) 降圧因子 ●カリクレイン・キニン系 ●プロスタグランジンI2 ●内皮由来血管弛緩因子(一酸化窒素) ●ナトリウム利尿ペプチド(ANP、 BNP) ●アドレノメジュリン RAA系(ANG IIの役割) キニン・カリクレイン系とRAS アンジオテンシンIIの作用 ●副腎皮質に作用し、アルドステロンの産生を増加させる。 ●血管平滑筋を収縮させる。 ●腎臓の輸出細動脈を収縮し、糸球体濾過率、 腎血流量、 電解質排泄量を調節する。 ●末梢交感神経系のシナプスに作用し、 ノルエピネフリン分泌を亢進させる。 アンジオテンシンIIの受容体 【2種類の受容体】 (1)AT1受容体 AT1A:血管平滑筋、副腎、腎臓、心臓 AT1B:副腎、下垂体 (2)AT2受容体 正常では成熟期に脳、副腎、子宮に存在 病的状態(血管障害、心筋梗塞、心肥大) では細胞増殖、分化、アポトーシスと関連 アンジオテンシン生成とレニン アンジオテンシン-(1-7) ●血管収縮作用、中枢昇圧作用、渇刺激作用がない ●プロスタグランジン、NOを刺激し、降圧作用 ●ACE阻害剤、AT1受容体拮抗薬投与時には アンジオテンシン-(1-7)が増加し、降圧に寄与して いる可能性あり。 レニン分泌の調節 ●腎臓の輸入細動脈の圧受容体を介する応答 ●糸球体に接する遠位尿細管の一部である マクラデンサ内のクロール、ナトリウム濃度 ●傍糸球体を支配する交感神経系 ●血中のアンジオテンシンII濃度 ●血中心房性ナトリウム利尿因子(ANP)濃度 組織レニン・アンジオテンシン系の役割 ●従来内分泌系と考えられてきたRAAシステムは血管壁、腎、 副腎、脳、心臓など局所にも独立して存在し、オートクライン、パ ラクラインしている。 ●血管壁:血管平滑筋の収縮、増殖、肥大 ●腎:GFR,PBF、ナトリウム排泄の調節 ●副腎:アルドステロン分泌調節 ●脳:飲水、食塩摂取、血圧、交感神経活動調節 ●心臓:心筋肥大、収縮能調節 血管収縮の分子機構 血管拡張の分子機構 まとめー2 ✔血圧調節の液性因子 ✔RAA系の役割 AT II受容体の役割とその破綻 ACEの役割 (RAA系とキニン―カリクレイン系を調節) ✔キニン―カリクレイン系の役割 ✔血管収縮の細胞内分子機構 ✔血管拡張の細胞内分子機構 成人における高血圧症の診断 高血圧症の原因 (1)本態性高血圧(一次性高血圧) 原因がはっきりしない (多因子遺伝の関与) (2)二次性高血圧 原因がはっきりしているもの (単一遺伝子病) 高血圧症の遺伝素因、環境素因 高血圧と降圧因子との関係 ●本態性高血圧症の血管壁及び腎では、 降圧系カリクレイン・キニンー プロスタグランジン系 の機能低下がある。 ●食塩感受性高血圧では、降圧系は 遺伝学的に成因と関係している。 ●降圧系機能低下は血管平滑筋の過形成と 肥大を伴い、動脈硬化を促進する。 なぜ高血圧症は治療が必要か? 心血管病の危険因子 ●高血圧 ●喫煙 ●高コレステロール血症 ●糖尿病 ●高齢(男性60歳以上、女性65歳以上) ●若年発症の心血管病の家族歴 (日本高血圧学会ガイドライン) 高血圧治療になぜ利尿薬を使うのか? 高血圧症の薬物療法 ●利尿薬 ●b遮断薬 ●a b遮断薬 ●a遮断薬 ●交感神経抑制薬 ●カルシウム拮抗薬 ●ACE阻害薬 ●アンジオテンシンII受容体遮断薬 ●血管平滑筋作用薬 一人あたりの食塩摂取量の年次推移 「10g/day以下が望ましい」と言われている 高血圧における腎の役割 (ANPとは別物) 圧‐利尿曲線 食塩感受性とは? 0.5g/dayの減塩食を7日間、ついで14.6g/dayの高塩食を7日間 平均血圧の上昇が10%以上⇒食塩感受性群(salt-sensitive:SS) これに満たない群⇒食塩非感受性群と定義する。 ANPの作用機序 ●腎でのナトリウムおよび水利尿作用 ●血管透過性亢進 ●レニン・アンジオテンシン阻害(分泌抑制) ●アルドステロン産生阻害 ●血管拡張作用(直接作用) ●中枢性交感神経活動の抑制 ナトリウム利尿ペプチドファミリーと受容体 肥満と高血圧(メタボリック症候群との関連) 本態性高血圧症との関連が示唆 される候補遺伝子と染色体座位 遺伝性血圧異常症の原因遺伝子と その染色体座位 単一遺伝子異常による高血圧症 -----Liddle症候群(優性遺伝)の例----- 高血圧症の治療 ●一般治療(ライフスタイルの改善) 減量(一か月で10%減を目標) ストレスを避ける 運動療法 禁煙 節酒 減塩 ●薬物療法 高血圧症の薬物療法 ●利尿薬 ●b遮断薬 ●a b遮断薬 ●a遮断薬 ●交感神経抑制薬 ●カルシウム拮抗薬 ●ACE阻害薬 ●アンジオテンシンII受容体遮断薬 ●血管平滑筋作用薬 利尿薬の作用機序 高血圧の時使用 する利尿薬 利尿薬のまとめ 高血圧治療に用いられる利尿薬 サイアザイド投与前・後の圧‐利尿曲線の変化 圧‐利尿曲線の傾きは増大し、一方、血圧軸―切片には有意な変化を及ぼさない。 サイアザイド利尿薬は単位時間当たりのNa+排泄量を増大させ降圧作用を発揮している サイアザイド利尿薬の特徴 ●腎機能が低下(GFRで30mL/min未満)するとほとん ど利尿効果は得られない。 ●遠位尿細管でのNaイオンの再吸収は7%程度(サ イアザイドはここに作用している)で、もともと利尿効 果がループ利尿薬に比べて小さい。 ●ループ利尿薬を投与すると、サイアザイド感受性 Na共輸送体が誘導される。(この輸送体はアルドス テロン誘導タンパク質でもある) ⇒抗アルドステロン剤の併用する理由でもある。 b遮断薬の血管拡張機序 ●腎からのレニン分泌の減少 ●圧受容体反射機能の抑制 ●中枢神経系を介する交感神経の抑制 ●シナプス前b2受容体を介する交感神経末端から のノルアドレナリン放出抑制 ●心機能抑制による血圧低下の影響は動物実験レ ベルではあるが、ヒトへの投与では効果は少ない。 b遮断薬 ●開発当初は狭心症治療薬として用いられた。 ●サイアザイド系利尿薬との併用で死亡率低下 ●ISA:intrinsic sympathomimetic activity ●PAA(partial agonist activity)とも呼ばれる。 ●ISAの有無は降圧効果に影響しない。 ●ISAを持つものはb2受容体刺激作用を持つものが多く、 洞性徐脈、レイノー減少を伴うものに有効 ●副作用が問題となる場合はb1選択的薬物を使用 b 受容体遮断薬の種類 b遮断作用の比較 b遮断薬使用時の注意 ●気管支喘息の有無(気管支の狭窄) ●閉塞性動脈硬化症の有無 ●心不全の程度 ●2度以上の房室ブロック ●異型狭心症 ●血糖降下薬の併用(交感神経緊張症状をマスクする) ●レイノー病 a遮断薬 ●プラゾシン,ドキサゾシン,ブナゾシン ●起立性低血圧に注意 ●現在は高血圧治療薬としては第一選択薬で はない ⇒薬理の教科書 (自律神経薬を参照すること) ACE阻害薬の作用機序 アンジオテンシンII受容体の作用 ACE阻害剤の種類 〈アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤 の特徴と副作用〉 ●RAA系の抑制とキニン・プロスタグランジン系の賦活化 ●乾性の咳、血管浮腫、顆粒球減少、味覚障害、 血清カリウムの上昇 ●腎機能が低下しているときはあまり勧められない ●代謝に対する影響がなく糖尿病の患者でも使える ●血漿レニン活性は年齢とともに低下するので、若年者ほど 効果が高い。また高齢者には降圧効果は弱いが逆に利点とも なる。 ARBの種類 ●ロサルタン ●バルサルタン ●カンデサルタン ●テルミサルタン ●オルべサルタン ●イルべサルタン 〈アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の特徴〉 ●1型受容体を阻害することと、それに伴うアンジオテンシン IIの上昇で2型受容体を活性化し血管拡張作用、左室リモデ リング(高血圧に伴う合併症)を予防できる。 ●高カリウム血症、腎機能低下をきたす可能性がある ●妊娠中は投与不可 ●咳などの副作用は認められない 直接的レニン阻害薬 アリスキレンフマル酸塩(Aliskiren Fumarate) カルシウム拮抗薬 2種類ある! ●Caチャネル選択的 ●Caチャネル非選択的 カルシウム拮抗薬 カルシウム拮抗薬 ●Nifedipine ●Nicardipine ●Nilvadipine ●Etonidipine ●Citonidipine ●Manidipine ●Benidipine ●Amiodipine ●副作用 紅潮, 頭痛, 低血圧, 下肢浮腫 徐脈 ●妊婦には禁忌 〈カルシウム拮抗薬の特徴と副作用〉 ●血管平滑筋のカルシウム流入を抑制して 血管を弛緩させる薬物 ●心臓に対しても(収縮力、伝導性、心拍数) 抑制作用を持っている ●ジヒドロピリジン系薬剤は 交感神経反射(動悸、頻脈)を起こしやすい ●グレープフルーツジュースと併用しない (不活化酵素を不可逆的に阻害するため) アドレナリン作動性ニューロン遮断薬の作用部位 交感神経抑制薬 ●Reserpine シナプス小胞への取り込み阻害 うつ傾向、胃・十二指腸潰瘍、鼻閉、性欲減退 ●Guanethidine, Bethanidine シナプス小胞への取り込み促進 起立性低血圧、徐脈、インポテンツ、 下痢、冠不全、心不全のときの投与には注意 ●第一選択薬から外されている ●離断現象:反射的に血圧上昇 血管平滑筋作用薬(直接作用) Hydralazine Budralazine ●副作用:頻脈, 狭心症様症候群, 頭痛, Na貯留, ループス様症候群(SLE) Todralazine 【まとめー3】 ✔高血圧の原因 ✔塩分摂取と高血圧 ✔ANPの役割 ✔遺伝性高血圧症候群 ✔高血圧の薬物療法 (特に重要なもの、作用、副作用) 利尿薬 ACE阻害薬 ARB カルシウム拮抗薬 血圧調節とステロイドホルモン 産科・小児科領域で重要 妊娠中の内分泌系の変化 妊娠に伴う母体内分泌系の変化 ●ステロイドホルモンの変化 プロゲステロン:主に母体コレステロール由来で妊娠末期では非 妊娠時の100倍にもなる。 エストロゲン:胎児副腎由来 ●副腎皮質の変化 RAA系:アルドステロン産生が増加する(10倍) レニン活性も上昇する 糖質コルチコイド:血中コルチゾールは非妊娠時の3倍(糖質コル チコイド結合たんぱく質の増加による)に達しCushing症候群に相 当するレベルまで増加するが日内変動は保たれる。妊娠線ができ ることと関連 ●アンドロゲン :妊娠初期には増加するが次第に減少する。 妊娠中の血行動態変化 心拍数:徐々に20%上昇 血圧:34週まで徐々に低下⇒妊娠前のレベルに戻る 心拍出量:28週まで20%増加、その後さらに10%増加 末梢血管抵抗:出産まで徐々に低下 妊娠に伴う母体の血行動態変化 ●妊娠30週ごろまでに血圧は10%程度低下する。 ●循環血液量、心拍数、一回拍出量ともに増加する が、血管収縮反応が低下することと胎盤シャント血流 が増加するため。 ●血管収縮反応の低下は妊娠中はアンジオテンシン に対する血管系の収縮反応が低下している。 ●アルドステロン産生は10倍に増加しているがプロゲ ステロンは100倍に増加しておりミネラルコルチコイド 受容体に拮抗するため高ナトリウム血症、低カリウム 血症は生じず、血圧も増加しない。 食塩感受性高血圧症の分類 ●ミネラルコルチコイド産生および作用の過剰 糖質コルチコイド反応性アルドステロン症 11b-hydroxysteroid dehydrogenase異常 Mineralcorticoid receptorの活性化変異 副腎性器症候群の一部 17a-hydroxylase欠損症 11b hydroxylase欠損症 ●尿細管異常によるNa排泄障害 Liddle症候群 Gordon症候群(偽性低アルドステロン症I型) ●腎不全 ●本態性高血圧の一部 ステロイドホルモン代謝経路 遺伝性高血圧症の一例とその原因 Cortisol & aldosterone 11b hydroxysteroid dehydrogenase type 2(11bHSD2)の役割 (遠位尿細管細胞) 11b hydroxysteroid dehydrogenase type2(11bHSD type2)によって アルドステロンのアルドステロン受容体への結合能が保障されている。