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SDR20160831YN 20160901 改訂 2016 年 8 月 24 日 01 時 36 分

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SDR20160831YN 20160901 改訂 2016 年 8 月 24 日 01 時 36 分
SDR20160831YN
20160901 改訂
2016 年 8 月 24 日 01 時 36 分(世界標準時)頃に発生しアマトリーチェ周辺に大きな被害
をもたらした地震の強震記録から推定した各地のリアルタイム震度の変動と早期警報
中村 豊(SDR)
イタリアの強震観測ネットワーク ITACA(http://itaca.mi.ingv.it/ItacaNet/)により公開さ
れた表記地震(M6.0、深さ 4.2km、INGV による)を使って、震央付近のいくつかの地点
の地震動をリアルタイム震度の観点から概観する。
震央付近の強震観測点などをプロットした GoogleEarth を図 1 に示す。また、図 2 に各地
のリアルタイム震度の変動を地震検知時刻を合わせて表示したものを示す。これには、2009
年ラクイラ地震の際にラクイラ近郊の AQV で記録から算定されるリアルタイム震度の変動
を、比較のために示している。また地震到達後の変動を詳しく見るために波動到達後 10 秒
程度を拡大して別図に示した。リアルタイム震度の定義などは補遺に示したので参照され
たい。なお、我々が 1998 年から 2003 年にかけて論文などで新しく定義し提案したリアル
タイム震度であるが、後になって、別の算定方法に同じ呼称をつけて混乱を招いている機
関もあるのでご注意いただきたい。
図 2 には、FREQL 警報がどの時点で出るかも推算して表示した。また、被害が出始める震
度の大きさは日本ではおおよそ震度 5 以上と考えられているが、ここでは震度 4 を被害の
出始めの地震動と考え、EEW によって、この時点までにどのくらいの時間が稼げるのかを
見積もって表示した。なお、図の右側には MMI スケールも示したので、参考にされたい。
これらの結果を見ると、今回の地震では、震央域では 2 秒から 5 秒程度しか稼ぐことがで
きないことがわかる。つまり、極めて短い時間しかないので、脆弱な建物から生き延びる
には、よほどの準備がなくては困難であろうと推測される。耐震性の確保が地震防災の基
本であることが改めて認識される。
リアルタイム震度の変動をみると、
通常の直下地震の場合のように(参考に掲げている 2009
年のラクイラ地震 AQV 地点のように)
、地震波動の到達から一気に有感域まで震度が大き
くならず、何回かの鋭いが小さな立ち上がりに分かれている。その結果、P 波到来から警報
まで、思いのほか多くの時間を要している。このため、短い先行時間がより短くなってい
る。この図には最終的に震度 4 を超えない、安全と考えられる地点も 2 地点ほど含まれて
いるが、これらの地点に対しては、P 波警報は発令されないと推測される。そのほかの地点
に対しては、ピンク色で示した 2 本の下矢印の間の時間帯で P 波警報が発令されると推測
される。
大きな被害が出てしまったアマトリーチェの近くの強震記録 AMT によると、リアルタイム
震度の最大値(計測震度相当値)は 5.1 であり、この程度の地震動では日本ではほとんど被
害は出ないと考えられる。強震動記録によると、リアルタイム震度で最大となる 5.3 を示す
のは震央の北側で記録された NRC であるが、ここノルチャでは被害はほとんどなく死者も
なかったという。読売新聞(2016 年 8 月 30 日)の報道によれば、ここは耐震補強がなさ
れていたとのことで、耐震補強の効果があったということだろう。
つまり、建物の耐震性が地域によって大きくばらついている可能性がある。通常は地域特
性としては表層地盤の増幅特性などが注目されるが、AMT と NRT のリアルタイム震度を
見てもわかるように、NRT 地点は地震動がより増幅されているように推測される。にもか
かわらず AMT の方がはるかに大きな被害であったことは、地盤の特性を把握することも重
要であるが、古い伝統的な構造物が多く残るイタリアなどでは、それ以上に個々の建物の
耐震性を把握して適切に対処することの方が重要になると思われる。常時微動などを使っ
た建物の耐震診断を進めることと適切な耐震補強方法を確立することが急務であろう。
早期警報に関連して、最初の 5 地点の強震観測点を波動が伝播するのに要する時間は約 2.8
秒であったが、これらの地点での P 波到達時間から震源位置を最小二乗法で推定すると、
図 3 に示すようになった。INGV による震央よりやや東のほぼアマトリーチェの北方の深
さ 9.6km という結果である。AMT のデータを用いたユレダス処理によっても震源はアマト
リーチェの北方であり、初期の震源推定としては妥当なものと思われる。AMT での FREQL
警報は概ね P 波検知後 1.3 秒経過した後であるから、これらの地点が連携されていれば、
概ね、その 1.5 秒後には、上記の震源が判明し、続いてマグニチュードの大きさを確定でき
たものと推察される。災害地域への警報としては遅いものであるが、地域の防災関係部署
に対する即時対応のための起動情報としては使えるのではないだろうか。
なお、INGV による 2016 年 8 月 29 日までの余震分布を図 4 に示す。
以上
図1
6
10
9
FOC
4
6
RM33
SPD
3
5
AQV
2
1
7
4
Alarm level
3
TERO
2
1
AMT
0
-1
-2
NRC
0
FOC
-1
TERO
-2
RM33
-3
SPD
-3
-5
ref. AQV 2009 L'Aquila Eq.
Data Processing:SDR
-4
-4
AQV
Data Source:ITACA
-6
-7
-5
-5
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
10
begining level of
Damage
3
2
Alarm level
NRC
AMT
9
8
7
RM33
TERO
6
SPD
5
FOC
4
AQV
3
1
2
1
AMT
0
-1
-2
0
NRC
P-wave Arrival
Realtime Seismic Intensity RI
4
Lead time
at AMT
Alarm at SPD
5
P-wave Alarm at AMT
6
FOC
-1
TERO
-2
RM33
-3
SPD
-3
-4
AQV
Data Source:ITACA
-5
ref. AQV 2009 L'Aquila Eq.
Data Processing:SDR
-4
-6
-7
-5
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
Elapsed Time from P-wave arrival in seconds
図2
8
9
Modified Mercalli Seismic Intensity MMI
Realtime Seismic Intensity RI
8
begining level of Damage
Modified Mercalli Seismic Intensity MMI
AMT NRC
5
43.1
FOC
43
42.9
NRC
42.8
USGS
10km
42.7
SDR 9.6km using first 5 sites;
AMT, NRC, RM33, SPD, TERO
INGV 4.2km
AMT
TERO
42.6
SPD
RM33
42.5
AQV
42.4
42.3
12.8
図3
図4
12.9
13
13.1
13.2
13.3
13.4
13.5
13.6
13.7
補遺)リアルタイム震度の定義と改正メルカリ震度への変換
リアルタイム震度 RI は、1kg あたりの質量に作用する地震動のパワーPD の常用対数に、
常数項を加えた次式で定義される(下記文献参照)
。
RI=log(PD)+6.4
PD=a・v
ここで、a および v は、それぞれ地震動加速度ベクトルおよび地震動速度ベクトルを表し、
演算子・は内積を意味する。定数項は、RI の最大値が気象庁の計測震度に一致するように
設定したもので、両ベクトルの単位が MKS の場合のものである。Gal と kine の場合には、
定数項は 2.4 となる。
改正メルカリ震度階 MMI への変換は、下記文献に従い、次式で行った。
MMI=RI×(11/7)+0.5
なお、単位質量あたりのパワーを PD(パワーデンシティー、power density、単位 W/kg)
ということがあるが、人間の基礎代謝量をこれで表すと、概ね 1W/kg 程度となる。つまり、
人間の基礎代謝に相当する PD は、リアルタイム震度(計測震度に相当)に換算すると、
6.4 になるということである。地震動のパワーは意外に小さい。しかし、これがすべての質
量に作用するので、重いものほど大きな地震動パワーが作用することになる。
文献:中村 豊、合理的な地震動強度指標値の検討- DI 値を中心にした地震動指標値間の
関係‐、第 27 回地震工学研究発表会 (2003.12.9~12、大阪) 梗概集
(補遺終)
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