...

4 技術・家庭科の評価

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

4 技術・家庭科の評価
4
技術・家庭科の評価
(1)観点別学習状況がすべての基本
新学習指導要領では、前回の観点別学習状況の考え方をさらに発展された「目標に準拠
した評価(いわゆる絶対評価)」を一層重視することとなった。新学習指導要領では、完
全学校週5日制の下、基礎的・基本的な内容の確実な習得を図り、自ら学び自ら考える力
などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしている。観点別学習状況を基本
とする目標に準拠した評価は、学習指導要領に示された基礎的・基本的な内容を生徒が確
実に習得していくことに対する社会からの要請に応えたものである。
目標に準拠した評価である観点別学習状況は「関心・意欲・態度 」「思考・判断 」「技
能・表現 」「知識・理解」の四つの観点より構成されている。技術・家庭科においては以
下の四つの観点である。
技術・家庭科における評価の観点及びその趣旨とその解説
生活や技術への
生活を
生活の技能
生活や技術につい
関心・意欲・態度
工夫し創造する能力
ての知識・理解
【趣旨】
【趣旨】
生活や技術について
生活について見直
生活に必要な基礎的
生活や技術に関す
関心をもち、生活を
し、課題を見付け、
な技術を身に付けて
る基礎的な事項や
充実向上するために
その解決を目指して
いる。
生活と技術とのか
進んで実践しようと
自分なりに工夫し創
かわりについて理
する。
造する。
解し、知識を身に
【趣旨】
【趣旨】
付けている。
【技術分野】
【技術分野】
【技術分野】
【技術分野】
ものづくりやエネル
生活と技術とのかか
ものづくりやエネル
生活や産業の中で
ギー利用及びコンピ
わりについて見直
ギー利用及びコンピ
の技術の役割につ
ュータ活用等に関す
し、課題を見付け、
ュータ活用等に必要
いて理解し、もの
る技術について関心
その解決を目指して
な基礎的な技術を身
づくりやエネルギ
をもち、生活をより
自分なりに工夫し創
に付け、その技術を
ー利用及びコンピ
よくするために知識
造する。
安全で適切に活用で
ュータ活用等に必
きる。
要な基礎的な知識
と技術を進んで活用
しようとする。
を身に付けてい
る。
- 24 -
【家庭分野】
【家庭分野】
【家庭分野】
【家庭分野】
衣食住や家族の生活
衣食住や家族の生活
生活の自立に必要な
家庭の基本的な機
について関心をも
について見直し、課
衣食住や家族の生活
能について理解
ち、家族生活をより
題を見付けるととも
に関する基礎的な技
し、生活の自立に
よくするために知識
に、その解決を目指
術を身に付けてい
必要な衣食住や家
や技術を進んで活用
して家族生活をより
る。
族の生活に関する
しようとする。
よくするために工夫
基礎的な知識を身
し創造する。
に付けている。
【解説】
【解説】
【解説】
【解説】
生活の課題に積極的
自分の生活を見直
生活の自立を図るこ
生活の自立を図る
に取り組む姿勢を重
し、課題を見つける
とや生活を工夫・創
ことや生活を工夫
視し、育てるもので
とともにその解決に
造するためには、そ
・創造するために
ある。生活や技術に
向けて様々な工夫を
の基盤となるための
は、その基盤とな
ついて関心をもち、
したり、自分なりの
生活に必要な基本的
るための生活に必
生活をよりよくしよ
方法を考えてみたり
な技能が必要であ
要な基本的な知識
うとするための実践
するなど工夫し、創
る。ここでは単にも
が必要である。こ
的な態度や意欲を評
造する能力を評価す
のをつくる技術だけ
こでは単なる知識
価する。また、習得
るものである。ただ
でなく、安全に留意
だけでなく、生活
した知識や技術を実
し、あくまでも中学
しながら活用、応用
との関わりについ
際に生活に活用する
生としてのレベルで
できる技術も評価す
て理解しているこ
態度を育て、評価す
評価することに配慮
る。
とも評価する。
る。
する。
観点別学習状況については,その評価の観点について、現行学習指導要領に示す各教
科の目標や内容を踏まえ、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力の育
成に重点を置くことが明確になるよう、どの教科も基本的に「関心・意欲・態度」「思考
・判断」「技能・表現「知識・理解」の順に示されている。
国立教育政策研究所より示された4つの観点から構成された内容のまとまりごとの評価
規準及びその具体例はおおむね満足できる状況(B)を示すものである。生徒が実現して
いる学習の状況について質的な高まりや深まりをもっていると判断されるとき、当該児童
生徒について「十分満足できる」状況(A)という評価になると考える。また(B)の状
況に到達していない状況は(C)となる。
また、指導要録に示す評定については、観点別学習状況をもとにし、従前の5段階評価
(5、4、3、2、1 )で記載するものとした。なお、選択教科は3段階評価である。
- 25 -
【中学校生徒指導要録】
(学習指導要領に示す必修教科の取扱いは次のとおり)
〔各教科の学習の記録〕
Ⅰ観点別学習状況(小学校児童指導要録と同じ)
Ⅱ評定
各教科別に新学習指導要領に示す目標に照らして、その実現状況を総括的に
評価し、5、 4、 3、 2、 1 により記入する。その表示は次のとおり
である。
「十分満足できると判断されるもののうち,特に高い程度のもの:5 」
「十分満足できると判断されるもの:4 」
「おおむね満足できると判断されるもの:3 」
「努力を要すると判断されるもの:2 」
「一層努力を要すると判断されるもの:1 」
なお「評定」についても、あくまでも観点別学習状況をもとにして導き出したものでな
ければならない。学習指導要領の示された目標や内容を確実に習得したかどうかを評価す
るには、4つの観点から評価することが最も適切と考えられ、前の学習指導要領より行わ
れれている指導要録の観点別学習状況の評価がそのまま踏襲されたのである。
観点別学習状況と評定は、このように密接に関連したものであるが、観点別学習状況の
評価の方はあくまでも分析的・客観的に、評定の方は総合的・主観的に取り組むものとし
て大きく分類できると考えられる。もちろんこれらはあくまでも重点の置き方の違いであ
る。ただ、それぞれの持つ情報の特徴を適切にとらえて評価活動を行うことは大切である。
教員が自信を持って評定を判断できるためには、ある程度の実践の積み重ねと教員間の検
討が必要である。
観点別学習状況の評価
評定
分析的
総合的
客観的
主観的
4つの観点からどの項目がおおもね満
観点別学習状況の評価結果をもとに、
足できる状況であるのか、どこが支援を
様々な評価に関する資料を収集し、最終
要する状況であるのかを明らかにする。
的には教員の判断(judge)が求められ
る。
- 26 -
(2)評価方法の工夫
今回の学習指導要領の改訂で、「関心・意欲・態度」をどう評価するかが引き続き大き
な問題となっている。確かに「関心・意欲・態度」を教員が客観的に評価するのは難しく、
1クラス40人の生徒をすべて適切に見とることは困難な作業である。
ただ、ここで大切なことは、学校が行う評価活動は決して知識偏重、技能偏重ではない
という明確な宣言であるということである。技術・家庭科においても作品を製作する技能
が弱い生徒の場合、教員は作品の完成度だけで評価することは従来からなかったであろう。
それらを補ってあまりある意欲を有している生徒の場合、やはり総合的に高い評定を教員
として行うことは当然である。
確かに「関心・意欲・態度」の評価は、難しい。それゆえそれらを判断するための資料
の収集や観察方法の検討がさらに必要である。
「知識・理解」や「技能」の評価であれば、
ペーパーテストや作品で評価することは容易であるが、「思考・判断」や「関心・意欲・
態度」の評価では、これで評価できるという絶対的な方法や手段はないであろう。様々な
評価方法を組み合わせ、しかも適宜新しい工夫も加えていく必要があろう。
また、「思考・判断」や「関心・意欲・態度」の評価は、評定の基本的な資料とするだ
けでなく、それらの観点を育てるという意義も含まれている。それだけに適切な評価技法
の開発、工夫は常に検討を要する性質のものである。「思考・判断」や「関心・意欲・態度」
などの評価では、まずは学習の過程における顕著な生徒や事象をもとに、生徒の自己評価
や長い期間での観察を加えながら見とることから始めたい。そこから教員間のネットワー
クを活用して、相互に評価方法を批評しながら徐々に客観的で適切な評価の方法を構築し
ていきたい。
なお、今後の課題であるが、技術・家庭科の特質である問題解決的な学習の評価をどの
ように進めるかは、まだまだ研究の段階であり苦慮するところである。問題解決的な学習
の過程をどのように評価していくか今後、実践を通して検討していかねばならない。
また、「関心・意欲・態度」や「工夫・創造」をペーパーテストによって評価する方法も今
後の課題である。
次項に現状の中で考えられる各観点における様々な評価方法について示す。
- 27 -
評
価
の
観
点
評
価
の
方
法
生活や技術への関心・
教員の観察(座席表を活用した観察記録など)
意欲・態度
生徒による自己評価(単なる感想にならないように)
今後の課題としては、「関心・意欲・態度」を評価する問題や方
法の開発がある。
生活を工夫し創造する
教員の観察(学習の過程を中心にした記録メモなど)
能力
自己評価(学習の過程だけでなく、学習後に自身の生活で活
用した場面なども評価する)
作品、レポートなど(教科の特質となる観点なので、生徒が
「工夫・創造」を理解できる場面も学習計画の中で設定する)
今後の課題としては、「工夫・創造」を評価する問題や方法
の開発がある。
生活の技能
作品、レポートなど(作品など形に残るものだけでなく、作
品発表会におけるスキル等など生徒の行動についての評価を
行う)
技能試験なども適宜行う。
生活や技術についての
ペーパーテストやレポート、学習ノートなど
知識・理解
- 28 -
Fly UP