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寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析*

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寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析*
551,515,8;551,515,4(521.3)
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析*
●
o
多
要旨
夏季・中央日本を通過する寒冷前線の消長を,特に熱界雷の発生機構に着目して解析した.本事例の場合,
寒冷前線に伴う総観規模の暖域側の下層風が弱く,850mb面より下層の大気が日射により加熱され不安定
化するとともに,松本付近に熱的原因によると思われる中規模の低気圧が発生し,関東平野北部には東ない
し南東方より湿潤な気塊の移流がある.この水蒸気が,前線の南下に先立って関東山地・足尾山地などで発
生した雷雲のエネルギー源と考えられる.前線が中部山岳地域以北にある時の主要な降雨域は,前線の北西
側数10kmないし100km程度に位置している.前線は暖域内の収束域に吸い込まれるように,一時南下
速度を増す.そして,前線に伴う積雲は熱的原因による雷雲とカップリソグして非常に発達する.しかし,
全体的に見て積雲は分散状態となり,関東地方の降雨域は北西部に限定される.
1.はじめに
が大きく,日本海上では約10。K/100㎞の勾配を示
日本における寒冷前線性降水の総観気候学的な研究に
す.前線の南縁には350。Kを越える暖湿気団が,東シ
よって,夏季の降水は特異な分布を示すことと,それが
ナ海の300N付近から舌状に流入している.しかし,こ
熱界雷の発生に起因することがある程度理解された(山
のような場合に南西風が強まりやすい日本海沿岸の地域
川,1980).その中央目本における発生機構を典型的事
でも,風速は高々15m/sec程度に留まっている.
例の解析を通して明らかにすることが本稿の目的であ
850mb面における北海道西方の低気圧に対応する地
る.資料としては,気象観測日原簿,AMeDAS,自記
紙,・レーダーエコーのスケッチ図,Aerological Data of
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Japanなどを用いた・1977年8月5日に中央日本を通過
した寒冷前線を対象として事例解析を行った.第2章で
日本列島スケールにおいて概観し,第3章では中央日本
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、躍鱒屍:’撚1
におけるメソ解析の結果を述べる.そして,第4章で本
事例の位置づけを行う.第3章中に出てくる図の観測点
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をあらかじめここで明らかにしておきたい(第1図).
● ●
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2・日本列島スケールでの概観
第2図は本事例の総観場の気圧配置と気団の特性を概
●1’
観するために,8月5日09時の850mb面における高
:・∠・∵●塾
・溜 .
度・相当温位(以下θ・と記す)・風向風速を示したも
のである.北海道西方にある低気圧から南南西に寒冷前
線が伸び九州北部に達している.前線沿いのθ・の傾度
*Analyses of the heat−fヒontal thunderstorm accom−
panied by a cold f}ont in central Japan.
**Sh吋i Yamakawa,東京都立大学地理学教室大学院
一1980年6月18日受領一
一1980年8月4日受理一
1980年10月
・.2
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山川修治**
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km
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第1図
観測地点の分布.◎は気象官署,・はAMeDAS
を示す,前者は第4,5,7,8図に,後者は第6,
7,8図に使用した.NK:日光,KS:草津,
ME:前橋,IS:伊勢崎,KM:熊谷,CC:秩
父,NG:長野,UE:上田,MT:松本,TK:
高山.TG:富来(第3章に出てくる地点を記
した).
41
736
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
上の低気圧(998mb)は,津軽海峡付近を通過した.
ロ ノ
す め ノ
第3図は,地上の低気圧・前線の位置(09時と21時),
農、い1鴨叢瀬㎜
及び寒冷前線性と認められる降水を,気象台・測候所の
33%一、\1 戊鍵12縛 ㈱
●
観測網で調べ図示したものである.大まかに見て,日本
欝海臆難)
海や東シナ海に面する地域で5mm以上の所が多く,
一部で20mmに達しているのに対して,太平洋側の大
部分は無降水であるが,関東地方北西部方面で5mm以
上の極大域が特徴的な位置を占めている.寒冷前線通過
時に無降水の確率が高い太平洋側地域の中で,夏季に寒
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冷前線性降水が比較的出現しやすくなる地域があり,他
の事例(例えば,1974年7月30日,1975年7月17目)に
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おいても,本事例と類似性のある降水分布パターンを呈
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している.このような観点から,本事例は夏季の典型例
第2図850mb面天気図(1977年8月5日09時).
と考えられる.降水量の分布と前線との関係などについ
実線は等高線(gpm),破線は相当温位
ての詳細は次章で述べる.
(。K)を示す.風速は国際式.
1
3.中央日本におけるメソ解析
中央日本の各気象官署における各種気象要素の自記紙
ゆP……5:20mm
を調査し,主として風向の急変,従として気温一・露点・
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風速の変化に基づいて,寒冷前線の通過時刻を求め図示
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関東地方北部や東海地方に出るまでの速度は一時的に
9競,一・栢98
。(mb)
したのが第4図である.前線が北陸地方から飛騨山脈に
さしかかるまでの平均移動速度は約25km/hであるが,
ヤ
、
50km/hに達している.しかし,関東平野に入ってから
は,暖湿気団の残留によって,南下が非常に遅くなって
いる.中部山岳地域において前線の南下が速まる傾向を
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第3図 日本列島スケールでみた寒冷前線性降水
(P)の分布(1977年8月5日).no pass
とは,気象台・測候所の風向の時系列変
化から寒冷前線の通過が認められない地
域のほかに,降水の時系列調査にょり,
Pが他の降水(低気圧中心付近の降水な
ど)と識別不可能な地域をも含めている・
42
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5・6.Aug.’77
第4図 寒冷前線の通過時刻.等高線(点線)は
1000m間隔で,斜線部分は2000m以上.
寒天気”27.10.
●
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
b.
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21JST
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第5図 気圧とレーダーエコーの分布(1977年8月5日,3時間ごと).
1980年10月
43
738
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
持つことは,熱界雷の発生しやすい夏を中心とした暖候
期特有の現象と思われる.
醒麹i……ll………… ll華
次に,3時間ごとの気圧とレーダーエコーのパターソ
●
(富士山・福井・新潟・名古屋・東京の各レーダーのス
ケッチ図より合成)を第5図に示した.気圧は海面更正
値を用いたが,原田(1979)が実測値に基づき指摘して
いるように,補正の問題がある.また,レーダーエコー
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、 ,!茶、¥ ¥ ・・、
イ魁
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に関しては,舟田・岡村(1978)がモデルを用いて指摘
したように,山かげの問題がある.しかしながら,両者
はそれぞれ風系・降水の原因として重要であるので,誤
差を認めつつ変化の様子を調べることにした.
__二二一
5日09時(第5図,a)には前線はまだ能登半島に
q。 5。1。。km,
一
さしかかったばかりであるが,既に松本付近に熱的低気
第6図 寒冷前線・熱界雷の通過に伴う総降水量
圧(1000mb)が発生している.エコーは前線の北側に
(mm)の分布(1977年8月5∼6日).
沿ってかなり規則正しく配列している.10分間隔のシネ
写真から求めた結果によると,エコー要素は平均して
記録しているほか,飛騨山脈西方の北陸地方や両白山地
2500の方向から55㎞/hの速度で移動していた(中井・
の南方に多降水域が認められる.長野・松本付近で極小
横山,1979).12時(b)になると,前線は日本海沿岸
を示し,その東には,例えば山沿いの草津付近,前橋・
まで南下し,エコーは能登半島付近でやや塊状を呈し始
伊勢崎付近,秩父付近に独立したセル状の降水域が分布
めた.徐々に発達した低気圧は,15時(c)には996mb
している.結局,関東地方の降水域は,熱的低気圧の移
にまで達した.その近傍まで南下した前線に伴うエコー
動経路の北側に限定されたが,両者の関係は直接的でな
は,Mレベル以上のものが減少傾向を示し,一方,面積
く,むしろ熱的原因(後述するような局地循環も含め
は小さいが足尾山地と関東山地に雷雲の発生している点
て)による積雲の発生地およびエコー要素の移動方向と
が注目される.前線が南下速度を増して山岳地帯を通過
寿命によって決定されたと思われる.
するうちに,18時(d)に見られるようなエコーの分散
このような1日程度の降水量分布に見られる特性は,
が進むが,局地的には前線に伴う積雲と熱的原因による
時間降水量においてはどのように現れているのだろう
積雲がカップリソグして非常に発達し,特に19時頃に
か.前線の動きに伴う降水分布の変化に地上風系の流線
は,前橋付近に雲頂高度約16kmの巨大な雷雲も認め
と蒸気圧の分布を加えて示したのが第7図である.時間
られた.
降水量はAMeDASのデータに基づいている.流線は
熱的低気圧は前線が接近するまでほぼ停滞し,前線と
1時間の最多風向を,蒸気圧は1時間の平均値を表して
ともに,つまり波動性低気圧となって衰弱しながら移動
いるが,いずれも各気象官署の自記紙から読み取ったも
し,21時(e)には関東地方南部へ達した.なお,18時
のである.卓越風向が1時間内に変化している場合に
頃一時的に現れた東京付近の小低気圧は,熱的低気圧の
は,AMeDASも参考にして空間分布に置き換え図示し
一部が移動してきたもののように見える.
ている.
さらに詳細な解析を進める必要があるが,その前に本
順を追って特徴を挙げると次のようになる.12∼13時
事例の寒冷前線と熱界雷による降水の総量を明らかにし
(a):前線の南側では全般に南西ないし南の風が卓越
ておきたい.第6図はその分布を示したものである.こ
し,蒸気圧30mb以上の湿潤空気で覆われた地域(r湿
れは約460のAMeDAS観測点の毎時間の値に基づいて
潤域」と呼ぶ)に着目すると,東海地方から関東地方東
いるが,降水の有無については,甲種・乙種の観測所に
部にかけて広く分布していることがわかるが,この状況
おける5日09時から6日09時までの日降水量により代
は既に09時頃から現れている.11時頃発生した関東地方
用して表した.なお,降水開始から終了までの総量と日
西部の低気圧性渦の北方に鹿島灘から湿潤な気塊の移流
降水量の差は,この場合ほとんど無い.
があり,前橋・秩父付近まで浸入している.13∼14時
能登半島の富来では80mm(対象地域内で最高)を
(b):最も湿潤域が広がる.関東地方の南東風系に対し
44
、天気”27.10.
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45
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
L、740
て,長野で北風,軽井沢で北西風が一時的に吹いてお
時には,暖気の流線の低気圧性曲率が減少して乱れが少
り,その間に収束域が出現している.これが雷雲の発生
なくなり,19∼20時には,ついに東成分の風が流入しな
を促したものと考えられる.14∼15時(c):東南東の風
くなった.風速は前線の南側で5∼7m/secを保ってい
がさらに内陸に浸入して,前線まで到達している.日本
るのに対して,北側の風は琵琶湖付近から東海地方にか
列島を横断する収束帯(ドットラインで図示)が明瞭で
けて3∼4m/secに達しているほかは全般に弱》.そし
ある.15∼16時(d):この時間に限らないが,前線の北
て20∼21時になると,前線に伴う降水はほとんど終了
西側数10翠mないし100km付近に主要な降水域が認
した.
められる.別の見方をすれば,その強雨域は上記の収束
次に,降水強度の時間変化をより明確に理解するため
帯を北方へ延長した所に当たっている(14∼17時).し
に,高山・熊谷間の断面をとり横軸に示し,縦軸には上
かし,これは単なる偶然であろうか.また,能登半島に
向きに時刻をとって表したのが第8図である.この作図
2次前線性の細長いレイソバンドが見られる.16∼17時
(e):前線の東進に伴い東風域・湿潤域も東へ後退し
にあたり,記入した各気象官署のデータのほか,この断
面付近に位置するAMeDASのデータも,降水強度の
た.降水域は,三国山脈付近や目光付近を中心としてセ
チェックポイントとして使用した.
ル状になりつつある.17∼18時(f):エコーにも現れ
飛騨山脈付近の比較的広域に広がる極大域から,松
ていたように,降水域も分散状態となるが,局地的な強
本・上田付近の極小域と軽井沢付近の極大域,さらにそ
雨域は残っている.一時後退した東風が残留し,前橋付
の東の極小域を経て,前橋・伊勢崎付近の顕著な極大域
近で前線の南下が遅れている.図は省略したが,18∼19
へつながっている.熱的低気圧の中心付近よりも周辺部
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MAEBASHI
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●
第8図 高山・熊谷の断面における降水強度・曇天域・前線・風の時空間解析(1977年8月5目).
46
、天気”27.10.
743
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
にあたる山麓にて雷雲が発生し,東方へ移動したことが
わかる.また,この図において,東風流入の卓越時間な
●
ロつ
なお,橿間・上坂(1978)によって,寒冷前線に伴う
降雨帯のジャンプする現象がJP事例として解析されて
1
2
3
は,山越えした降雨帯が衰弱・消滅するWK事例にむ
4
5
4.本事例の位置づけ
寒冷前線に伴う熱界雷の解析を典型的な一例について
行ってきた.前述の調査(山川,1980)で抽出された40
の寒冷前線通過の事例のうち,当該地域を通過するもの
は32例あるが,その中で本事例が果してどのような位
置を占めているのかということをまとめておきたい.そ
o
れには多面的な捕え方が必要であろうが,ここでは,
Yonetani(1975)によって指摘されたように,雷雨と密
接な関係のある高層大気特性を調査したので,その結果
を述べる.
まず,前橋においてみられる前線通過時の天気型を3
つの型,すなわち,雷雨型(丁型),雷を伴わない降水
型(P型),及び,無降水型(N型)に分類した.丁型
は7例,P型は9例,N型は16例である.そして,前線
が能登半島付近を南下している時の館野における風速と
θ・を調べ,天気型と前線南縁の大気特性との対応関係
を統計的に検討した.
第9図は,天気型と風速の鉛直分布の関係をみたもの
じ
である.丁型は全層にわたって弱風で,900mb面に小
さなピークがあるが,むしろ下層でもあまり強くないこ
とが特徴で,強い寒冷前線に伴って出現しやすい下層ジ
ェットは,この型の場合現れにくいことがわかる(標
準偏差は900mbで5.7m/sec,700mbで4.1m/sec
であり,N型と同程度で,P型より小さい).P型は,
900mb面に平均でも17m/secの下層ジェットが出現
している(1/3の事例で20m/sec以上).N型と比較し
て,900mb面より下層で強風,500mb面より上層で
弱風になっている.
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第9図 前橋の天気型別にみた館野に却け
る風速の鉛直分布.
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第10図 前橋の天気型別にみた館野におけ
る相当温位の鉛直分布.
第10図は,天気型とθ・の鉛直分布の関係をみるため
●
に作成したもので,気団の特性,特に安定度の状態が天
いるN型では,900mb面より下層が安定層になる傾
気にどう左右するかを理解したい.P型とN型は,平
均的にみて等温位層が存在する(ただし,P型は標準偏
700mbで5.5。Kと比較的小さい).また,丁型は全層
向を示している(N型の標準偏差は900fnbで8。3。K,
差が900mbで14.7。K,700mbで13.3。Kと大きい
で高い値を示しており,700mb面よ』り下層の対流不安
ので一概に言えない).全層にわたって低い値を示して
定層が特徴である(丁型の標準偏差は900mbで11.2
1980年10月
47
742
寒冷前線に伴う熱界雷の中央日本における解析
5.まとめ
Wind Speed
得られた結果の主要な部分を列挙すると次のようにな
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る.(1)通例,寒冷前線性降水の現れにくい関東地方
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20
の暖域側における下層の弱風が挙げられる.(2)そのた
め,800mb面以下の下層大気が加熱されやすく不安定
生し,関東地方付近の低気圧性循環が発達する.(4)関
東平野北部では,地上から900mb面付近にかけて,東
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ないし南東方から湿潤な気塊の移流があり,この水蒸気
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が前線の南下に先立って関東地方北西部の山地で発生し
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で,熱界雷を発生させる大気の条件としては,寒冷前線
化する.(3)松本付近には朝のうちから熱的低気圧が発
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340
た雷雲のエネルギー源となる.(5)寒冷前線が暖湿な気
塊(2)(4)に接触するまでの主な降雨域は,前線の北
西側数10kmないし100km程度の所に位置している.
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第11図 前橋の天気型別にみた館野におけ
る900mb面の風速と相当温位.
(6)中部山岳地域における前線の南下は,暖域内に形成
された収束域に向けて一時的に加速される.(7)寒冷前
●
線に伴って南下してきた組織的な積雲が,雷雲(4)とカ
ップリソグして局地的に鉛直方向へ発達し,その結果,
エコーはセル状に分散・縮小する.(8)関東地方の降雨
。K,700mbで7.4。K).本事例(1977年8月5日09
域は,熱的低気圧の経路とは直接関係なく,雷雲(4)の
時,長い破線)においては,顕著な不安定層が出現して
発生地・移動方向・寿命によって限定される.
いる.
第9図と第10図によって熱界雷発生の状況を考察する
謝辞
と,館野付近でθ・が高く弱風ということから,前線に
本稿を作成するに当り,ご助言を賜った東京都立大学
沿って南西方から暖湿な気団が流入するという現象はあ
の前島郁雄教授に心から感謝いたします.また,こころ
まり強調すべきではなく,ごく下層(地上ないし900mb
よく自記紙やレーダーエコースケッチ図などの資料を閲
面付近)に中規模の現象として湿潤空気が流入するこ
覧させてくださった各気象官署の関係各位に深く感謝い
と,並びに,日射によって800mb面以下の下層大気が
たします.なお,本稿は1979年度春季の日本気象学会に
加熱されることが重要な意味を持っていると理解でき
て発表した内容を修正・加筆したものである.
る.
一
文 献
2つの鉛直分布で明らかになった高層大気特性のう
ち,寒冷前線の影響を受けた時の気象現象を良く示し,
しかも熱的影響の有無を判定できる900mb面を取りあ
舟田久之,岡村敏夫,1978:レーダーエコーとアメ
ダスの1時間雨量,研究時報,30,215−228.
原田 朗,1979:中部地方の熱的低気圧の実態につ
げて,θ・・風速・天気型の関係を図示した(第11図).
いて,研究時報,31,199−202.
丁型は,θ,が高く,風速の弱い領域に集中している.
櫃間道夫,上坂慶正,1978:アメダスの風,気温デ
ータを雨予報に利用するための事例研究,研究時
例外が1つあるが,これは春の事例(1974年5月26日21
時)で,中規模の熱的影響の加わらない純粋な界雷であ
報,30,207−212.
中井公太,横山 博,1979:レ}ダーエコーの発
ったと考えられる.P型は,一般にN型より強風で,
丁型より低温位の領域に位置し,またN型は,ばらつ
達・衰弱について,研究時報,31,177−185.
きが大きいが,一応θθは3250K以下,風速20m/sec
観気候学的研究,地理学評論,53,574−588.
未満の領域に限定されている.最後に,本事例(矢印で
山川修治,1980:日本における寒冷前線性降水の総
Yonetani,T.,1975:Characteristics of Atmospheric
Vertical Structure on Days with Thunderstorms
示す)においては,高温位・弱風という発雷条件がそろ
in the Northern Kanto Plain−A Statistical Ana。
っていたことを指摘しておきたい.
1ysis一,J.Met・soc・Japan,53,139−148・
48
、天気”27.10.
●
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