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第9回 5月28日

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第9回 5月28日
オプション(option)とは何か?
リスクマネジメント第9回
2003年5月28日(水)
10:15-11:45
zコールオプション(call option)
ある資産(原資産:underlying asset)を将来の定め
られた期日(満期日=maturity date,行使日
=expiration date)(まで)に,決められた価格(行使
価格=exercise price, strike price)で購入する権利
zプットオプション(put option)
ある資産を将来の定められた期日(まで)に,決めら
れた価格で売却する権利
オプションの型
オプションの型にはヨーロッパ型とアメリカ型がある
zEuropean-type option
満期日にのみ権利を行使できるオプション
zAmerican-type option
満期日以前にいつでも権利を行使できるオプ
ション
オプションのポジション
zコールオプションの買い持ち
zプットオプションの買い持ち
zコールオプションの売り持ち
zプットオプションの売り持ち
{買い持ち: long position
→long;(買い気,騰貴を見込んで)強気の
{売り持ち: short position
→short; (安値を見込んで)空売りの
オプションの例(コールオプション)
オプションの例(プットオプション)
★現在の株価S(t)=¥2,700のA社の株に対して,行使
価格¥3,000のユーロピアンコールオプションを1株
あたり¥100で1000株分購入.満期日をTとすると:
★現在の株価S(t)=¥2,000のB社の株に対して,行使
価格¥1,900のユーロピアンプットオプションを1株あ
たり¥120で1000株分購入.満期日をTとすると:
z ケース1:S(T)=¥3,200→コールオプション行使
z ケース1:S(T)=¥1,700→プットオプション行使
z ケース2: S(T)= ¥3,050→コールオプション行使
z ケース2: S(T)=¥1,850→プットオプション行使
z ケース3: S(T)= ¥2,950→オプションを行使せず
z ケース3: S(T)=¥2,100→オプションを行使せず
(3,200-3,000)x1,000=200,000
純収益:200,000-100,000=100,000
(3,050-3,000)x1,000=50,000
純収益:50,000-100,000=-50,000
(1,900-1,700)x1,000=200,000
純収益:200,000-120,000=80,000
(1,850-1,700)x1,000=50,000
純収益:50,000-120,000=-70,000
„1
コールオプションのペイオフの複製
ペイオフ(収益)曲線
コールオプション買い持ち
コールオプション売り持ち
プットオプション買い持ち
プットオプション売り持ち
プットオプションとコールオプションの関係
(プットーコール・パリティ)
z満期日における等価のペイオフ
コール=プット+株+行使価格相当の借入
→現在に割り戻す
コールの価値=プットの価値+株価−行使価格のPV
プットの価値=コールの価値−株価+行使価格のPV
ブル型バーティカル・スプレッド
オプションの組み合わせによるペイオフ
z Spread:複数の同じタイプのオプションを組み合わせ
たもの
{ブル型バーティカル・スプレッド(上向き相場の時に適した
スプレッド:bullish vertical spread)
{ベア型バーティカル・スプレッド(下向き相場の時に適した
スプレッド:bearish vertical spread)
{バタフライ・スプレッド(butterfly spread)
z Combination:異なるタイプのオプションの組み合わせ
{ボトム(orトップ)・ストラドル(bottom (top) straddle)
{ボトム(orトップ)・バーティカル・コンビネーション(bottom
(top) vertical combination)
ベア型バーティカル・スプレッド
„2
バタフライ・スプレッド
ボトム・ストラドル
トップ・ストラドル
ボトム・バーティカル・コンビネーション
トップ・バーティカル・コンビネーション
負債のある企業の株式
z発行株数10,000株の企業が1株当たり5,000
円の借り入れをするというのはどういうことか
株主のペイオフはコール
オプションと同じ
„3
企業資産(価値)と資本
安全な債券,リスクのある債券
貸借対照表:B/S (Balance Sheet)
Debit
借方
Credit
貸方
Debt
借入
purchased
asset or the
object of the
fund
source of
the fund
Asset
資産
資金の使途
Equity
株主資本
資金の出所
リスクのある債券のペイオフ
z コールオプションの価値+債権者への支払い義務額
の現在価値(行使価格の現在価値)=プットオプショ
ンの価値+企業の資産価値(株式の価格)
z 債券の価値=企業の資産価値-コールオプションの
価値=債権者への支払い義務額の現在価値-プット
オプションの価値
z債権者は無リスクの債券を買い,株主にプッ
トオプションを与えたのと同じ
z安全な債券の場合,株主に渡したプットオプ
ションが行使されることがない
コールオプションの価値のとり得る範囲
行使価格=100円
オプションの裁定
オプションの価値に影響する要因
zコールオプションが株式より高い場合:
{オプションを売って株を買う→資金は不要
{行使日に株価が行使価格より高い場合,オプショ
ン分の株を売却し清算,残りを売却
{行使価格より低い場合,株を売却
zコールオプションが直ちに行使された場合の
ペイオフよりも安い場合:
{株を空売りしオプションを買う→資金は不要
{行使価格より高い場合,オプション行使
{行使価格より低い場合,空売りした株から利益
z原資産の時価
zオプションの行使価格
z満期までの期間
z原資産の価格変動性(ボラティリティ)
z非危険利子率
z配当
„4
もっとも簡単な二項過程モデル
(二状態モデル)
ペイオフを複製するポートフォリオ(1)
z 権利行使価格145円のコール・オプション
z株式に配当はない
z税金,取引費用はない
z株価は二通りにしか変化しない
現在
→
100
1年後
200
50
z非危険利子率を10%とする
ペイオフを複製するポートフォリオ(2)
z B円の資金を非危険利子率で借り入れ,株式を
γ単位購入することで複製する
1年後のペイオフ
200γ − 1.1B = 55

50γ − 1.1B = 0
株価上昇シナリオ
株価下落シナリオ
簡単なデルタヘッジ
55
11
=
≈ 0.37
200 − 50 30
11 50
1
B=
× 50 ×
=
≈ 17
1.1
30 3
γ=
z 現時点で17円の借金をし,株式を0.37単位買い付け
るというポートフォリオによりコール・オプションのペイ
オフが複製できる.株価が100円の現状で,このよう
なポートフォリオを組むための資金は20円必要である
→このコール・オプションの価値は20円である
二状態モデルの一般化(1)
記号の説明
S 0 : 現在の株価
S + : 上昇シナリオ時の株価
δ=
BE コールオプションのペ イオフの差
=
AE
行使時点における株価 の差
二状態モデルの一般化(2)
S + × γ − (1 + r )B = P+

S − × γ − (1 + r )B = P−
S − : 下降シナリオ時の株価
γ : 買うべき原資産の単位 数
P+ : 上昇シナリオ時のペイ オフ
γ=
P+ − P−
S+ − S−
B=
S − P+ − S + P−
(1 + r )(S + − S − )
P− : 下降シナリオ時のペイ オフ
B : 借入金
r : 非危険利子率
V0 : オプションの価値
„5
二状態モデルの一般化(3)
二状態モデルの一般化(4)
z 株と借入金の複製ポートフォリオを作成するのに必要
な資金,つまり,現時点におけるγ単位の株価と借
入金Bとの差額がコール・オプションの価値なので:

 (1 + r )S 0 − S − 
 1  (1 + r )S 0 − S −
 × P− 
V0 = 
× P+ + 1 −

S + − S − 
 1 + r  S + − S −


(1 + r )S0 − S − = η
ここで
とおくと
S+ − S−
V0 = S 0γ − B
=
S 0 (P+ − P− )
S P − S + P−
− − +
(1 + r )(S + − S − )
S+ − S−
V0 =
 1  S0 (1 + r )(P+ − P− ) S + P− − S − P+ 
=
+


S+ − S−
S+ − S− 
 1 + r 
 1  S0 (1 + r )P+ − S − P+ S + P− − S − P− + S − P− − S0 (1 + r )P− 
=
+


S+ − S−
S+ − S−
 1 + r 


 (1 + r )S0 − S − 
 1  (1 + r )S0 − S −
 × P− 
=
× P+ + 1 −

S + − S − 
 1 + r  S + − S −


さらに
η × P+ + (1 − η ) × P−
(1 + r )
(1 + r )S 0 = η × S + + (1 − η )S −
このようなηをリスク中立確率という
リスク中立という概念
z リスク中立とはリスクに対して何らプレミアムを求めないし払いも
しないということである.例えば,リスク回避的な人のリスクのあ
る投資に対する期待利益率は確実性等価(非危険利子率)より
も大きい.つまりこのような人はリスクに対するプレミアムを求め
ている.逆にリスク好きな人はリスクをとることに対して喜んでプ
レミアムを支払うので,リスクのある投資に対する期待利益率は
非危険利子率よりも小さくてよいことになる.これに対し,リスク
中立の世界では,リスクのあるあらゆる投資に対する期待利益
率はその確実性等価である非危険利子率に等しくなる
z リスク中立確率は,例えば二項過程世界においては,期待利益
率が非危険利子率に等しくなるように,資産価値が上昇シナリ
オをとる確率
„6
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