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研究・教育活動 - 東北大学 21世紀COE プログラム
Ⅰ.教育プログラムと教育支援活動 【教育活動実績】 若手研究者の育成は、本拠点における最重要課題の一つである。そのため、若手研究者育成のた めの運営組織として、拠点に関係するすべての専攻の教務担当教員と若手教員からなる教育運営委 員会を設けて、以下に述べるような様々な大学院生、PD、若手教員への支援プログラムを実施した。 先端地球惑星科学拠点大学院コース 地学・地球物理学の融合と理学・工学連携の目的を実現するカリキュラムの構築をめざして設置した、 地学・地球物理学専攻の大学院博士課程(前期・後期)コースを併せた「先端地球惑星科学拠点大学 院コース」では、地学・地球物理学・環境科学の3専攻の専門科目をそれぞれの学生便覧に関連科目 として記載することで、相互の単位取得を可能にした。また、国内外の研究機関・大学での活躍ならび にフィールドワークを奨励するため、授業科目としてインターンシップ研修を導入し単位認定を行った。 このとき,自分の所属とは異なる研究科の講義も関連科目指定制度を用いて履修可能とした。こうした、 講義に関しての専攻間、研究科間の乗り入れや、理工連携のシステムは、東北大学においても本CO Eに特有のものである。また、博士課程後期3年の大学院生の指導に当たっては、各大学院生全員に 対して、原則として分野横断型の複数の構成メンバーからなるアドバイザリーボードの設置を今年度も 引き続き行った。また国内の優秀な研究者を招いたり、外国人フェローによる COE 用の新しい講義も 引き続き開講した。 国際化を目指した先端理学国際コース 理学研究科には、外国人留学生の積極的な受け入れを目指した先端理学国際コース(IGPAS)が2 004年10月より設置されており、本拠点の地学・地物2専攻は、平成16年度秋学期より入学者の受 け入れを開始している。これは理学研究科関係のCOEが主体になって、外国人学生を受け入れ、講 義、研究指導をすべて英語で行うプログラムであるが、これにより理学研究科の国際化を計ると同時に、 本COEの国際交流、ならびに日本人学生の国際化にも大いに寄与している。先端理学国際コースに は、文部科学省が滞在費を保証する国費留学生制度と、理学研究科が奨学金を授与する複数のサポ ート体制が敷かれている。これに関連し、 (A) Origin of the Earth and Life 1(2単位) (B) Origin of the Earth and Life 2(2単位) (C) Origin of the Earth and Life3(2単位) (E) Atmospheric Science(2単位) (F) Seminar(2単位) (G) Advanced Physical Oceanography (2 単位) (H) Special Lecture on Advanced Earth Science 1 (2単位) (I)Geography (2単位) (J)Tectonics and Geodynamics (2単位) (K)Special Lecture on Advanced Earth Science Ⅱ(2単位) といった英語による授業が開講された。講義は、日本人教員と外国人招聘研究者等によって行われた。 これらの講義は,先端地球惑星科学拠点大学院コースの一貫としても開講しており、日本人受講者に も単位を出した。その他にも、短期招聘外国人研究者によるセミナー(先端地球惑星科学セミナー、20 07年度延べ65回)や長期招聘外国人教員(9名)による講義、招聘外国人研究者による国際シンポジ ウム(30名の外国人研究者によって28日間開催、総勢240人程度のの大学院生が受講)等を実施し ている。もちろん、これらの招聘外国人研究者と大学院生・若手研究者との講義以外での個人的な議 論、付き合いは日常的になされた。 若手研究者による国際会議企画プログラム 2007年9月開催の国際シンポジウム「EASTEC symposium 2007 "Dynamic Earth -its origin and future-"」、2007年9月開催の国際ワークショップ「Water Dynamics 5」については、若手研究者よりな る実行委員会が中心になって,招聘研究者の決定や、来日依頼の折衝などを行ない,実施した。 博士課程後期学生支援プログラム 博士課程後期3年の課程の院生をRAとして雇用し(5万円/月)、研究の実践をサポートするととも に、教育実践の経験を充分に踏めるよう、配慮した(2003年度58名、2004年度69名、2005年度6 5名、2006年度57名,2007年度45名を雇用)。その中から特に卓越した院生(スーパードクター(S DC)を選抜(2003年度6名、2004年度9名、2005年度15名、2006年度15名,2007年度8名) し、通常の2倍額のRA雇用(10万円/月)を行い、優れた若手研究者の研究の進展を、さらに重点的 に支援した(平成15年度より実施)。SDCの選定にあたっては、英文論文(査読付き)の質と数、国際 会議での発表実績、COE研究への貢献度、将来研究リーダーとして活躍できるか等、を選考基準とし た。 若手研究者海外派遣プログラム 8名のPD及び若手教員を海外の研究拠点(コロラド州立大学、ウィスコンシン大学、アルゴンヌ国立 研究所、米国地質調査所、スクリップス海洋研究所等)に派遣して、これらの研究拠点との共同研究を 推進した。また、博士課程後期大学院生、COE研究員(PD)に対して、国際学会での発表のための旅 費支援を行った。PD全員に、外国出張旅費の支給、博士課程後期学生には、2003年度9名、2004 年度25名、2005年度32名、2006年度31名,2007年度23名に対して、国際学会での発表のた めの旅費支援を行っている。 若手教員による研究者招聘プログラム 本COE拠点の運営組織である教育運営委員会と研究運営委員会の委員には、若手教員を積極的 に登用し、招聘研究者の決定等に参加させた。それによって、若手研究者の研究方針に沿った海外研 究者の招聘を可能にするとともに、それを契機とした若手研究者による海外拠点との国際共同研究の 推進を後押しした(カリフォルニア大学、ワシントン大学・オークランド大学等)。 若手研究者連携・交流プログラム 今年度も,理学研究科内の3つの COE と大学院 GP と共同で、「ヤングブレインズによる先端科学シ ンポジウム」を開催した。本 COE に所属する SDC を中心に他分野研究者との交流を行った。 COE研究員(PD)、若手研究者への連携・融合研究支援プログラム 若手の助手やCOE研究員(PD)への研究費の補助(研究費50万円/年、国際会議出席旅費25万 円/年を支給)、ならびに、公募による若手研究者への連携融合研究費の支援を行ない(2003年度3 00万円×11件、2005年度13件総額840万、2006年度13件500万,2007年度16件450万)、 多くの成果を挙げた。 その他 以上のようなプログラムの推進によって、大学院生を含む若手研究者の研究のポテンシャルが大い に増加した。例えば、若手研究者による研究奨励賞・論文賞授与や、国際会議でのポスター賞授与等 が認められ、また、SDCやPDからの助教採用、海外の拠点研究機関への博士研究員としての転出な どが認められ、若手研究者の流動性が増した。また、学術振興会特別研究員もコンスタントに採用され ている(2003年度13名、2004年度14名、2005年度17名、2006年度24名、2007年度27名)。 これらに関する具体的な事例は、本報告書に掲載されている通りである。 【教育支援活動】 平成19年度 特待大学院生 平成19年度の特待大学院生(SDC)を以下の通り決定しました. 選考過程と結果 本COE拠点を構成する部局に所属する,大学院博士課程後期の大学院生を対象として公募し ました.29名の応募者のなかから (1)研究の意義と重要性, (2)英文論文の発表実績, (3)国際学会における発表の実績, (4)研究の目的が本COEの方向性と合致するか, (5)将来的に研究リーダーとして活躍が期待できるか, の5つの基準に則り厳正に審査した結果,以下の8名の方々を特待大学院生(SDC)として選考 するに至り,6 月 1 日付で発令し、その後8月1日付で発令の追加を行いました。 (順不同,敬称略.カッコ内は,専攻・学年,所属研究グループ,指導教員名) 阿部 淳 (環境科学専攻 博士後期2年,固体地球/地震火山, 土屋 範芳) 内田 良始(地学専攻 博士後期3年,固体地球/地震火山,大槻 憲四郎) 株田 知到 (環境科学専攻 博士後期2年,固体地球/地震火山, 土屋 範芳)(H19.11 まで) 高山 卓也(環境科学専攻 博士後期2年,地球進化史/佐藤 源之)(H19.8 から) 対馬 弘晃(地球物理学専攻 博士後期1年,固体地球/地震火山,日野 亮太) 坪内 崇真(地球物理学専攻 博士後期3年,流体地球・惑星圏/気候変動,須賀 利雄) 覃 慧玲 (地球物理学専攻 博士後期2年,流体地球・惑星圏/気候変動,川村 宏)(H19.9 まで) 中村 一輝(地学専攻 博士後期3年,固体地球/地震火山,谷口 宏充) 平成19年度 リサーチアシスタント 平成19年度のリサーチアシスタント(RA)を以下の通り決定しました. 選考過程と結果 本COE拠点を構成する部局に所属する,大学院博士課程後期の大学院生を対象として公募しまし た.選考の結果,本COEのプロジェクトメンバーの研究を支援していただくリサーチアシスタント(RA) として,今年度は次の方々(順不同,学年・敬称略)の採用を決定し、6 月 1 日付けで発令しました. <地学専攻> 石川 仁子, 石川 弘真, 大原 祥平, 神谷 敏詩, 工藤 賢太郎, Khobaer T.M, 小暮 昌史, 紺谷 和生, 佐々木 達, 下宿 彰, 鄭 錫鎬, 竹谷 裕, 千代延 俊, 中村 隆志, 畠田 健太朗, 森下 信人, 門馬 綱一, 山本 健太, 吉村 俊平 <地球物理学専攻> 東 龍介, 今井 浩太, 梅澤 拓, 小淵 保幸, Kalaee Mohammad Javad, 木村 哲士, Kombiyil Raj Mohan, 小玉 知央, 佐藤 由佳, 高村 近子, 遠山 勝也, 萩原 雄一朗, 服部 友則, 八木 晃司 <環境科学専攻> 阿部 淳, 李 志霞 <航空宇宙工学専攻> 菊池崇将, 沼田大樹 大学院生 国際学会参加旅費支援プログラム 大学院博士後期課程の学生を対象として、海外で開催される国際学会への参加を促進する旅 費支援プログラムを実施しました。 (支援一覧は次ページ) 大学院生 海外長期滞在旅費支援プログラム 博士課程後期の大学院生が海外で長期にわたり研究を行うことを奨励するため、旅費支援プロ グラムを実施しました。 (支援一覧は45ページ) 平成19年度 大学院生国際学会参加旅費支援一覧 1 氏名 専攻 指導教員 開催地 学会名 チン・ホイリン 地球物理 川村 宏 ペルージャ The XXⅣ IUGG(International Union of Geodesy and Geophysics) General Assembly (第24回国際測地学・地球物理学 連合総会) International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) 2007 国 際測地学・地球物理学連合総会 2007 Qin Huiling 2 沢田 雅洋 (イタリア) 地球物理 岩崎 俊樹 3 八木 晃司 ペルージャ (イタリア) Masahiro Sawada 地球物理 花輪 公雄 Koji Yagi ペルージャ (イタリア) 発表演題及び派遣目的 Hot Event And Diurnal SST Variation In The Equatorial Indo-Pacific Warm Pool Impacts of ice phase processes on the development of tropical cyclone (氷相過程が熱帯低気圧の発達に及ぼす影響) International Union of Geodesy Difference of large-scale atmospheric circulation fields between extremely and Geophysics (IUGG) 2007 国 severe weather in December 2005 and extremely mild weather in December 際測地学・地球物理学連合総会 2006 2007 (2005年12月の厳冬と2006年12月の暖冬における大気大循環場の違い) 4 遠山 勝也 地球物理 須賀 利雄 (イタリア) Katsuya Toyama 5 ロスビンタルティ・カルティカ・レスタリ 地球物理 岩崎 俊樹 阿部 淳 環境科学 土屋 範芳 Jun Abe 7 大原 祥平 内田 良始 地学 掛川 武 小玉 知央 地学 大槻 憲四郎 遠藤 尚 地球物理 岩崎 俊樹 石川 仁子 地学 日野 正輝 千代延 俊 ボゴール (インドネシア) 地学 尾田 太良 上海 (中国) Satoko Ishikawa 12 ポートランド (アメリカ) Endo Nao 11 ケルン (ドイツ) Chihiro Kodama 10 ケルン (ドイツ) Yoshiharu Uchida 9 昆明 (中国) Shohei Ohara 8 ペルージャ (イタリア) Rosbintarti Kartika Lestari 6 ペルージャ 地学 尾田 太良 上海 (中国) Shun Chiyonobu International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) 2007 国 際測地学・地球物理学連合総会 2008 Vertical Structure of Various Pycnostads in the North Pacific ( 北太平洋の種々の低渦位水の鉛直構造) International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) 2007 国 Roles of seasonal marches of the SST and land-sea thermal contrast in the 際測地学・地球物理学連合総会 Asian summer monsoon 2009 (夏季アジアモンスーンにおける海面水温と海陸の熱的コントラストの役割) Twelfth International Symposium on Water Rock Interaction (第12回 岩石ー水相互作用国際 シンポジウム) Experimental estimation of molecular structure of the water-rock inerface under high-temperature and high-pressure conditions rebealed by in situ IR and Raman spectroscopy (高温高圧環境下における岩石ー水界面のその場赤外およびラマン分光測定) 2007 V.M. Goldschmidt Conference (2007ゴールドシュミット国際会 議) Catalytic potential of silicate, oxide and sulfide minerals for the abiotic polymerization of glycine under high pressure and temperature condtions (高温高圧条件下での非生物的グリシン重合反応における珪酸塩鉱物、酸化 鉱物および硫化鉱物の触媒能) 2008 V.M. Goldschmidt Conference(2007ゴールドシュミット国際 会議) Short Course Fluid Equlibria in the Crust(ショートコース地殻内相平衡) Determination PVTX date and the phase change of crustal fluid (地殻流体のPVTXデータベース確立と相平衡) 15thConference on Air-Sea Interraction and the 14th Conference on Middle Atmosphere 第15回大気海洋相互作用に関する会議 および第14回中層大気に関する会議) Influence of the increased SST on baroclinic instability wave activities unded the aqua planet condition (水惑星条件における、傾圧不安定波動の活動に対するSST上昇の影響) JSPS-DGHE Core University Program Seminar in Applied Biosciences The Responses form Households to Small Rainfall in Rural West Java (西ジャワ農村における少雨に対する世帯の対応) 9th International Conference on Paleoceanography 第9回国際古海洋学会 The paleoceanographic variability in the western North Pacific over the last 150 kyr reconstructed from planktic foraminiferal records. (浮遊性有孔虫化石から復元される過去15万年間の西部北大西洋における 古海洋環境変動) Quaternary calcareous nannofossils form IODP Exp. 303Site 1308: Its floral 10th International Conference on changes relation to the Mid Brunhes Event Paleoceanography (IODP EXP.303 Site U1308の第四紀石灰質ナンノ化石群集:Mid Brunhes 第9回国際古海洋学会 Event と関連して) 13 コンビイル・ラジ・モハン 地球物理 笠羽 康正 (エチオピア) Rajmohan Kombiyil 14 オイドフ・ムンフツェツェグ 地学 (アメリカ) 地学 佐藤 由佳 (アメリカ) 地球物理 竹谷 裕 (アメリカ) 地学専攻 坪内 崇真 (アメリカ) 地球物理 須賀 利雄 ラハマット ヒーダヤトゥ 地球物理 Rahmat Hidayat AGU 2007 Fall Meeting Petrography and mineralogy of a unique spherical CAI in the Murchison (CM2) meteorite (マーチソン(CM2)隕石で発見された異常な球状CAIの記載岩石学的及び鉱 物学的研究) AGU 2007 Fall Meeting Occurrence characteristics of MF auroral radio emissions observed in Iceland (アイスランドで観測されたMF帯オーロラ電波放射の出現特性について) AGU 2008 Fall Meeting Quantitative Analysis of Cations in Solutions Using ion Exchange Filter Paper by X-ray Fluorescence Spectrometry (イオン交換濾紙を用いた蛍光X線分析法による溶液中の陽イオンの定量分析) Ocean Sciences Meeting (海洋科学学会) Comparison study of spatial structure of subtropical mode waters in the world ocean (全球の亜熱帯モード水の空間構造の比較研究) Ocean Sciences Meeting (海洋科学学会) MJO-Induced Rainfall Variability Over the Maritime Continent Observed by TRMM (MJOによるインドネシアの降水量変動の衛星観測資料に基づく解析) オーランド (アメリカ) Takamasa Tsubouchi 19 Magmatism in the Tsagaandelger, Eastern Mongolian Volcanic belt: Petrological, Geochemical and Isotopic Constraints on Mesozoic Geodynamic Setting 藤巻 宏和 サンフランシスコ Yutaka Taketani 18 AGU 2007 Fall Meeting 小野 高幸 サンフランシスコ Yuka Sato 17 “Electrodynamic coupling between high- and low-latitudes – Characterization and modeling” 藤巻 宏和 サンフランシスコ Kentaro Kudo 16 IHY-Africa Space Weather Science and Education workshop 藤巻 宏和 サンフランシスコ Munkhtsetseg Oidov 15 工藤 賢太郎 アジスアベバ 木津 昭一 オーランド (アメリカ) 平成19年度 研究者活動支援成果報告 【派遣者氏名】土屋 史紀 (地球物理学専攻・惑星プラズマ・大気研究センター・助手) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関: 米国 Southwest Research Institute 受入研究者: S. J. Bolton 氏 【派遣時期と期間】 平成 19 年 6 月 24 日から 7 月 1 日(8 日間) 【派遣先における研究活動】 惑星プラズマ研究センターでは、附属惑星圏飯舘観測所に設置されている飯舘惑星電波望遠鏡を 用い、木星の放射線帯に捕捉された高エネルギー電子より放射されるシンクロトロン放射観測を実施し、 木星放射線帯の時間変動について観測的な研究成果が得られつつあります。放射線帯は、高エネル ギー粒子が惑星の双極子磁場に捕捉された領域ですが、木星放射線帯のシンクロトロン放射領域は、 特に双極子磁場の強い木星近傍に捕捉されているために、外部(太陽風)から擾乱の影響を受けず、 非常に安定な捕捉領域と考えられてきました。ところが、近年、数日スケールのシンクロトロン放射強度 変動が同定され、このようなダイナミックスを引き起こす物理過程が木星放射線帯の研究課題の 1 つと なっています。シンクロトロン放射の観測から木星放射線帯の生成・輸送・損失の物理過程を議論して ゆくためには、木星放射線帯のモデリング研究との比較が欠かせないことから、米国 Southwest Research Institute が主催した Magnetospheres of the Outer Planets (MOP) Meeting に出席・発表を行 うと伴に、木星放射線帯研究の第一人者である同研究所の S.J.Bolton 氏と伴に木星放射線帯のモデリ ング研究を行っている D. Santos-Costa 氏と木星放射線帯の生成・輸送・損失の各過程の物理過程と その時間スケールについて議論し、放射線帯の時間変動を引き起こしうる物理過程とその時間スケー ルについて整理を行うことができました。今後、今回 整理された結果を我々の観測結果の解釈及び物理 モデルへ反映していきたいと思います。 MOP Meeting では、ハッブル宇宙望遠鏡が観測し た木星のオーロラ変動の動画や、最近木星磁気圏を flyby した New Horizon 探査機、現在土星の周回軌道 で土星磁気圏を探査している Cassini 探査機の数々 の最新成果が発表され、木星・土星磁気圏の研究も、 質的に地球磁気圏と比較惑星的な視点で研究が出 来つつある事を実感すると伴に、新しい情報を得るこ とができました。 最後に、今回のご支援を頂いた 21 世紀 COE プ ログラムに感謝いたします。 MOP Meeting 講演会場の様子。1 会場で活発な議論 が交わされた。講演者が探査機の計測データを出す たびに、会場では他の計測器チームがすぐに PC 上 に同じ時間帯のデータを表示・確認していた。 【派遣者氏名】 井龍 康文 (地学専攻・助教授) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関:VSEGEI (All-Russian Geological Research Institute) 受入研究者:Dr. Olga Kossovaya 【派遣時期と期間】 平成 19 年 8 月 10 日~8 月 18 日(9 日間) 【派遣先における研究活動】 北大東島のサンゴ礁性堆積物の検討結果から, (1) 礁が急速な海水準の上昇に同調して成長することができず(3 次オーダー(105〜106 年)の海水準 変動にも同調して成長できない),溺れる(沈水する), (2) 沈水したサンゴ礁上に,その後の低海水準期に新たなサンゴ礁が形成される という 2 つの事例が認められました.これらは,サンゴ礁は温暖な高海水準期に活発に形成されるとす る地質学の常識と矛盾します. 以上の事例は新生代の海洋島(北大東島)の特異なものなのか,それとも,より古い地質時代(中生 代および古生代)や異なる地質学的セッティング(例えば,大陸縁辺)にある礁/炭酸塩プラットフォー ム堆積物でも同様の事例が認められるのかを,Kossovaya 博士をはじめとする欧米の研究者と議論し てきました. その結果,上記の事例 1 は,中生代および古生代の礁/炭酸塩プラットフォーム堆積物でも普遍的 に認められることが確認されました.しかし,事例 2 に対応づけられる事例は認められませんでした.こ れは,中生代および古生代の礁/炭酸塩プラットフォーム堆積物の場合, (1) 堆積水深を推定する際の精度が高くないこと(沈水したという事実が見逃されている可能性があ る) (2) 年代を正確に決定することができないことが多く,必ずしも,礁/炭酸塩プラットフォーム堆積物の 形成発達を汎世界的海水準変動と関連づけて議論できない ことに起因すると思われます. 今回の派遣により,欧米の研究者がどのような視点から中生代および古生代の礁/炭酸塩プラット フォーム堆積物を研究しているかを理解できました.また,彼らと気候・海洋環境変動に対するサンゴ 礁の応答に関して,活発な議論を行うとともに,親交を深めることができました.これらは,今後の研究 教育活動に非常に有益な経験となるでしょう. 最後に,本派遣の機会を与えていただいた東北大学 21 世紀 COE プログラム(先端地球科学技術に よる地球の未来像創出)の関係者各位に対し深く感謝いたします. 【派遣者氏名】 鈴木 紀穀 ( 地学専攻・地圏進化学講座・助手 ) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関:フンボルト大学自然史博物館 受入研究者:David Lazarus 博士 【派遣時期と期間】 平成 19 年 10 月 14 日から 10 月 25 日(12 日間) 【派遣先における研究活動】 2007 年 10 月 14 日から 10 月 25 日にかけて,「始新世―暁新世放散虫の種基準確定のためのエ ーレンベルグ・コレクション再検討」のため,ドイツ・ベルリンのフンボルト大学付属自然史博物館で,エ ーレンベルグ・コレクションの模式標本調査を行いました.当初 14 日間の調査を予定していましたが, 先方の都合で3日間短縮となりました.エーレンベルグは,化石放散虫を初めて記載した研究者で,生 涯に 532 もの放散虫の新種を報告しました.その多くは今も有効名として論文にあらわれ,環境指標種 や示準化石となっている重要なコレクションです.このコレクションに含まれる種名の基準標本を現在の 科学水準で見直すのが今回の調査の目的でした.調査対象は 1150 個体になります.この調査は 2006 年の放散虫研究者国際会議で,当該分野でもっとも優先するべき国際プロジェクトとして注目を浴びて おり,2009 年の次回会議で取り上げる方向で準備が進められています. 今回の 21COE による派遣では,未調査であった約 300 個体が対象です.日本では江戸時代にあたる 1830 年代頃に作成された顕微鏡用スライドであるため,貸し出しは不可能なので,この博物館の実験 室で,慎重に取り出して検鏡を行いました.エーレンベルグ自身が遺した,彼自筆のスケッチや彼の娘 が記録した標本所在帳を頼りに目的の個体を探し出しました.227 個体を見つける事ができ,記録に収 めました.2004 年度以来,断続的に調査を行ってきましたが,今回で調査対象はすべて検鏡を終えま した.これまでの調査とあわせると,合計 1017 個体を撮影しました.これには彼が記録していない個体 も含みます.エーレンベルグ自身が遺したスケッチ個体は 584 個体ありますが,そのうち 82.4%の 481 個体を発見できました.これは彼が記載した種のうち,427 種にあたります.スケッチが残るのは 468 種 なので,91.2%の種の模式標本を“再”発見できたことになります. この成果は,現在1本の論文が投稿済みであるほか,これまで撮影したすべての個体を図版集として 出版する予定で共同研究者と調整をすすめています.膨大な個体数ですが,2009 年の放散虫研究者 国際会議までに印刷予定です.この成果は放散虫微化石分野が存続する限り引用され続ける金字塔 となる見込みです.最後になりましたが,2年連続でこの研究テーマのために派遣をお認め下さった, 21 世紀 COE プログラム「先端地球科学技術による地球の未来像創出」の関係各位に篤く御礼申し上 げます. 図1.自筆スケッチの保管庫.3000 枚ある. 図2エーレンベルグ自筆のスケッチの一例. 図3.大切に保管されている未処理試料. 【派遣者氏名】後藤 章夫(東北アジア研究センター 基礎研究部門 地球化学研究分野・助手) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関:フィレンツェ大学 受入研究者:Dr. Maurizio Ripepe 【派遣時期と期間】 平成 19 年 10 月 10 日~平成 19 年 10 月 20 日(11 日間) 【派遣先における研究活動】 一般的に,噴火前に蓄積されていた圧力が高いほど,爆発による空振は強く,噴出物は遠くまで飛ば されると考えがちです.しかしながら,ガス容器に蓄積した高圧ガスを瞬時に放出する火山爆発模擬実 験で, 1.「圧力解放が急激であるほど爆発的」とは限らない 2.「爆風の圧力が高いほど噴出物の速度は大きい(遠くまで飛ぶ)」とは限らない ことが示されました.実際,浅間山 2004 年噴火では,空振圧力と,地震波から見積もられた噴火前の 蓄積圧が,必ずしも正の相関にないことが報告されています.これは圧力だけでなく,その解放プロセ スが重要であることを意味しますが,このような視点からの研究は少なく,検証に利用可能な観測デー タも限られていました.そこで,およそ 10 分おきに噴火を繰り返しているイタリア・ストロンボリ火山の観 測データを用いるために,同火山研究の第一人者であるフィレンツェ大学・Maurizio Ripepe 教授に協力 を依頼し,同氏とともに現地観測を行いました. 観測に先立ち,フィレンツェ大学にある Ripepe 教授の研究室を訪問し,持参した観測機器の調整を行 いました.持参したのは平成 18 年度の地球科学 21 世紀 COE 研究費で製作した,噴火にともなう圧力 波を機動的に観測するシステムにビデオカメラを組み合わせたもので,GPS 時計の信号を双方に入れ ることで,映像と圧力波の同期が取られています(写真 1).一般に火山の圧力波は比較的低いサンプ リングレートで収録されていますが,本システムでは 5kHz の高速サンプリングが可能で,これまで認識 されていなかったシグナルを捉えられる可能性もあります.研究室訪問のもう一つの理由は,Ripepe 教 授の観測網で得られるデータを把握し,後に自らが収録したデータとの比較を行うことにありました. その後フィレンツェからストロンボリ火山に移動し,山頂での観測を行いました.滞在中は好天に恵ま れ,毎日観測ができました.収録機器のトラブルや,濃い火山ガスにより視界不良となることもありまし たが,映像と圧力波を同期したデータが 177 セット得られました.解析は現在も進行中ですが,同じ火 口からの噴火でもマグマが多い場合とガス主体の場合とでは波形に違いが見られるなど,興味深いデ ータが得られました.また,Ripepe 教授もこれまで見たことがなかった,火山灰放出に連続して激しくマ グマを噴出する噴火(写真 2)が観測されるなど,貴重な現象も記録できました.今後さらに,映像及び 圧力波の詳細な時間変化を検討し,両者の関係付けを進める予定です. 現地での活動を全面的にサポートしてくださった Maurizio Ripepe 教授,ならびに,このような貴重な機 会を与えてくださった 21 世紀 COE プログラムの関係各位に感謝いたします. 左:写真1 観測システム 左:写真2 火山灰噴出とそれ に続くマグマ噴火 【派遣者氏名】岡田 知己 (地震・噴火予知研究観測センター・助教授) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関:ニュージーランド・オタゴ大学 受入研究者:Rick Sibson 教授 【派遣時期と期間】 平成 19 年度 11 月 3 日~11 月 10 日(8 日間) 【派遣先における研究活動】 派遣者はこれまで日本内陸で発生した地震の震源域について,ダブル・ディファレンス・トモグラフィ 法により,三次元地震波速度構造を求め,地震断層および地震時大すべり域(アスペリティ)の地震波 速度構造に基づくイメージングを行ってきました.受入研究者の Sibson 教授は,これまで地震地質学の 観点より断層でのすべりの発生条件やすべりの際の物理・化学過程について研究を行っており,特に 地震発生と水との係りに関する研究においては世界的に見て第一人者です. 本派遣においては,申請者がこれまで得てきた地震断層および地震時大すべり域(アスペリティ)の 地震波速度構造に基づくイメージについて,地震地質学の観点より議論・検討を行い,2003 年宮城県 北部地震や 2004 年新潟県中越地震などの最近発生した日本の内陸地震についてその発生過程にお ける流体との関わりについての知見を得ることができました. 一方,本派遣期間中においては,ニュージーランドの最大の断層であるアルパイン断層およびその 周辺域の巡検を行いました.また,アルパイン断層に関するワークショップにも参加し,GNS(ニュージ ーランド地質原子科学研究所)やビクトリア大学の研究者とも議論を行いました. 写真:アルパイン断層近傍で採取されたシュードタキライト(石に見られる黒い筋状の部分). 派遣者氏名】 山本 希 (地球物理学専攻・固体地球物理学講座・助手) 【派遣先機関と受入研究者】 派遣先機関: 英国・University of Leeds 受入研究者: Jurgen Neuberg 教授 【派遣時期と期間】 平成 20 年 1 月 15 日から 2 月 16 日 (32 日間) 【派遣先における研究活動】 派遣者の研究課題である火山性地震(特に低周波・長周期火山性地震)の発生メカニズムの構築に おいては,火山性流体と周辺岩体との弾性相互作用を的確にモデリングすることが不可欠です.本滞 在では,火山性地震のモデリング・観測研究の第一人者である Neuberg 教授とともに,モデリング手 法・モデリングの背景にある仮定の比較検討を行い,シミュレーション結果の比較を通じ,火道内プロ セスにより生じた波動の伝播様式などについて議論を行いました.また同時に,火山性流体の物性の 深さ依存・マグマ中の気泡成長による影響についても派遣先グループの最新の研究成果を交えて議 論を行い,火山性地震発生メカニズムのより高度なモデリングに不可欠な要素について多くの知見を 得ることができました.特に,P. Smith 氏との議論を通じ,マグマ中揮発成分のダイナミクスおよび波動 伝播に対する影響に理解を深め,有用な多くの最新の研究成果に触れることができました. また,滞在中には派遣者の研究紹介のセミナーを行い,Volcano Seismology Group 以外の幅広い研 究領域の研究者にご参加頂きました.特に応用地球物理領域の方々からは火山における固液気相互 作用現象と物理探査などにおいて見られる現象の類似点などが指摘され,その解析法などについて 教示頂きました. 今回の派遣においては,火山性地震の発生メカニズムのモデリングに関する多くの知見が得られた という直接的な収穫があったとともに,固液気相が複雑に関与しあう火山性プロセスのシミュレーション において計算結果の解釈に際し各素過程の深い理解が不可欠であることを再認識できたことが今後 の研究の発展のために非常に有意義でした. 最後になりましたが,今回の派遣に際しご支援頂きました21 世紀COE プログラム「先端地球科学 技術による地球の未来像創出」の関係各位に篤く御礼申し上げます. 派遣先 University of Leeds・School of Earth and Environment の入口および続く廊下に掲げられ たVolcano Seismology Groupの最新研究紹介ポ スターの数々 Ⅱ. 研究活動成果 【平成19年度の研究活動概要】 1.特筆すべき研究成果: 1) プレート境界地震に関するアスペリティ・モデル(図1) を確立し(Hasegawa et al., 2007)、島弧沈み込み帯の 詳細な不均質構造のイメージングによりマグマ生成・ 上昇および内陸地震発生モデルを提案した (Hasegawa et al., Tectonophys, 2005)。火山内部にお けるマグマ内発泡現象のモデルを構築し、不均質構 造における短周期地震波エンベロープ形成に関する 数理的モデルを構築した。 図1 2) 高解像度のグローバルトモグラフィの手法を開発し、 マントルプルームと沈み込むスラブの深部構造を従来にない精度で解明した(Zhao et al., EPSL, 2001; PEPI, 2004)。 3) 核マントル境界を超えた条件下(305GPa, 3600K)における高温高圧 X 線回折測定技術を開発し た。海洋地殻に含まれる水が核マントル境界までにまで輸送されることを明らかにし(図2:図の 矢印は H,H2O の移動)(Sano et al., GRL, 2007)、スラブ直下のマントル遷移層に水が局在するこ とを明らかにした。マントル遷移層最上部に周りよりも重い含水のマグマが存在することを高温 高圧実験によって明らかにした(Sakamaki et al., Nature, 2006)。 3) 地殻内部がたんぱく質を作る格好の場であるという説を提案した(Ohara et al., OLEB, 2007)。 理工の連携により独自の衝撃波実験法を開発し、海洋への隕石衝突に伴うアミノ 酸生成(Furukawa et al., EPSL, 2007)や生物大量絶滅の影響(Saito et al., IJIE, 2006)を解 明するなど、本拠点独自の生命発生・進化研究を展開し、世界に発信した。 4) 北太平洋亜熱帯モード水の再出現が時間依存することを示し、これがアリューシャン低気 圧の活動と一定の位相関係を持つことを 明らかにした(図 3:冬季海面水温偏差の 再出現域:Hanawa and Sugimoto, GRL, 2004)。複数の衛星搭載センサーによる 新世代海面水温ディジタルデータをリア ルタイムで処理し、一般に公開するととも に、ホットイベントと呼ばれる数十日の時 間スケールを持つ熱帯域の高海面水温 図2 現象を発見した。 5) 温室効果気体の濃度と同位体比を世界で最も高い精度で測定する技術を開発し、これを 用いて地上基地に加え、大気球・航空機など様々な手段を用いて、それらの地球規模にお ける時間・空間変動の実態を明らかにし、変動を支配するメカニズムを解明した(Nakazawa et al., 2002)。 6) 衛星観測によって、超高層の発光現象(エル ブス)を発見しそのメカニズムを解明した。 JAXAと共同で月探査衛星のレーダー電波探 査装置を開発・搭載して月地下のグロー バル電波探査に世界で初めて成功した。 ハワイ大学天文学研究所との共同研究によ り惑星光学観測を行い、従来にない精度で水 星ナトリウムテールの全容を明らかにした。 図3 以上の研究成果と若手研究者の育成等が評価され、拠点のメンバーは、2003 年以降現在まで に、米国地球物理学連合フェロー、米国地球物理学連合火山地球化学岩石学部門の N.L.Bowen 賞、 島津賞、地球化学会三宅賞、気象学会堀内賞、地震学会論文賞、火山学会論文賞、および高圧科 学会奨励賞などの国内学会の若手奨励賞 6 件など国内外の学術賞を得ている。 2.国際化と世界への情報発信 これらの研究は、アラスカ大学、カリフォルニア大学、イェール大学、イリノイ大学、コペンハー ゲン大学など 10 以上の世界の大学と若手研究者を相互派遣するなど、国際共同研究により 推進した。21 世紀 COE 事業推進担当者 24 名は、年間 100 編以上の英文査読付き論文を国 際的に評価の高い雑誌(2006 年以降 Nature および Science 誌に 5 編など)に発表するととも に、米国地球物理学連合など国際会議の招待講演を年間 50 件以上行うなど、研究成果を 国際的に発信し、世界の学界をリードした。また、理・工学の連携を目指す 5 回に及ぶ Water Dynamics(WD)国際ワークショップなど、5 年間で 11 回の国際シンポジウムを開催した。WD-3、 4 の論文集を Am. Inst. Phys.から、また国際会議 IGC2004 のセッションの論文集を Geol. Soc. Am.のモノグラフとして出版した。 大谷 栄治 部局:理学研究科 地学専攻・教授 専門分野:鉱物物理学・高圧地球科学 主な研究課題:核・マントルダイナミクスの研究,地球内部の物質科学、 地球惑星の形成進化、地球内部構造の研究 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:地球中心部への物質大規模移動の研究 2) 研究目的と成果概要: 本研究は、核・マントルダイナミクス研究の一環として、地球内部への水を含む物質の移動と循 環の過程を解明することを目的としている。本年度は、本 COE の最終年として、これまで行われて きたスラブによる物質の移動等を総括することを目指した。本年度の成果は以下のようにまとめら れる。 1. マントルで生じる重要な相転移である橄欖石からウオズレアイト転移及びリングウッダイトの分 解の相境界に対する水の影響を、前年度のペリドタイト系の実験に引き続いて、熱力学的にモ デル化可能な単純系Mg2SiO4系について、X線その場観察実験によって明らかにした。その 結果、410kmと660kmの地震波不連続面の凹凸を説明できる水の存在量の推定が可能にな った。 2. マントル遷移層に存在する主要鉱物であるウオズレアイトとリングウッダイト中の酸素と珪素の 拡散速度を決定した。これらの拡散は、昨年度明らかにした水素の拡散に比べて格段に遅い ことを明らかにした。また、珪素の拡散係数は酸素よりも遅く、変形流動を律速するのは珪素の 拡散であることを明らかにした。また、わずかな水の存在下で、こ珪素の拡散が促進されること が明らかになった。 3. 含水δAlOOH相の安定領域を高温高圧X線その場観察によって明らかにした。その結果、こ の相は、CMBの条件を超える180GPa、2000K以上の温度でも安定に存在することが明らか になった。これ以上の高温高圧では、δ相は構造未知の高圧相に転移することを示唆する結 果を得ている。 4. 核を構成するFeSi合金、FeS合金の高圧安定相と融解曲線を核マントル境界を越える150 GPa、3000K以上まで明らかにした。特に内核を構成するFe-4wt.%Si合金については、 256GPa, 3500Kにおいてhcp相が安定であることを始めて明らかにした。 5. 上記の実験結果を総合することによって、水がマントル遷移層に濃集し、さらに少量の水は含 水相に取り込まれて、核内部に運ばれ得ることを明らかにした。 長谷川 昭 部局:理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター・教授 専門分野:地震学 主な研究課題:1)地殻・マントル構造,2)沈み込み帯の地震テクトニクス, 3)地震発生予測 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:沈み込み帯における地殻・上部マントル構造と地震発生機構の研究 2) 研究目的と成果概要: 地震発生や火山噴火の予測精度を向上させるためには,地震発生・マグマ生成の場である地 殻・上部マントル構造,その中で起きる地震の発生機構と火山の噴火機構を理解する必要がある. 本研究の目的は(1)プレート沈み込み帯の地殻・上部マントル構造,(2)その中で発生する地震で あるプレート境界地震,内陸地殻内地震,スラブ内地震それぞれについて,その発生機構,すなわ ち地震発生に至る応力集中機構の理解を深めることである. 地殻・上部マントル構造の研究では,地震波トモグラフィ解析により沈み込むスラブの地殻部分 を低 V ,高 Vp/Vs 層,マントル部分を高 V 層としてイメージングすることに成功し,その結果と震 源メカニズム解とに基き,沈み込むフィリピン海スラブの位置・形状を関東から九州に至る全域で 詳細に推定することができた.フィリピン海スラブは,従来知られていなかった伊豆半島北方でも, 約130㎞の深さまで裂けることなく連続して分布すること,関東下での太平洋プレートとの衝突によ り波板のように大きく変形していること,一方,太平洋スラブもフィリピン海スラブとの衝突により接 触域で局所的に下方に凹んでいることを明らかにした. プレート境界地震については,約5年半間隔で比較的規則的に発生し2001年にはその発生予 測に成功した釜石沖の繰り返し地震について震源過程の解析を行い,この繰り返し地震を起こす アスペリティが実は複数のアスペリティで形成されていること,速度・状態依存摩擦構成式に基く数 値シミュレーションと小繰り返し地震の波形データ解析を行い,周囲のゆっくりすべりの速度に応じ てアスペリティのすべり様式にゆらぎが生じることなど,アスペリティモデルを高度化する上で重要 な成果を得た. スラブ内地震については,昨年度に引き続きその発生機構の理解に進展がみられた.北海道か ら東北地方にかけて,太平洋スラブ地殻内に存在する含水鉱物の脱水分解により火山フロントに 平行にその前弧側に形成されると推定される上面地震帯が,関東ではフィリピン海スラブとの接触 域の北端まで存在すること,フィリピン海スラブ内の二重深発地震面下面の地震は太平洋スラブと の接触域の範囲にのみ分布することなど,スラブ内地震の発生が脱水脆性化によるとする考えを 強く支持する観測事実を得た. 内陸地震については,東北日本沈み込み帯を対象として内陸の活断層にどのように応力が集 中し地震発生に至るかを説明する内陸地震発生モデルを提案してきたが,今年度は2004年新潟 県中越地震,2007年新潟県中越沖地震の震源域周辺の構造を調べ,これら二つの地震の震源域 直下の下部地殻・上部マントルに顕著な低速度域が存在することを見出すなど,上記モデルを支 持する結果を得た. 塚本 勝男 部局:理学研究科・教授 専門分野:結晶成長学、惑星科学、鉱物学 主な研究課題:実験惑星科学、宇宙空間での結晶成長メカニズム 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1)研究タイトル: 宇宙環境での結晶成長と惑星進化: 2)研究目的: 原始太陽系での物質の誕生 現在の地球の環境変動を知るためには、地球がどのような初期条件の元に形成されたのかを知る ことが重要である。それには地球の材料物質である固体物質が、初期太陽系においてどのように 進化してきたのかを解明することである。宇宙空間に存在しているミクロンサイズ以下の微粒子が数 1000km サイズの惑星に進化 した過程については、様々な理論・観測・実験による研究が行われて きた。しかし、観測そのものの困難さ、観測結果の解釈の困難さから、理論と直接比較しうる対象が 存在せず、我々地球の起源に関する議論は手探り状態である。未だ謎の多い惑星形成過程を解明 するためには、確固たる証拠に基づいた論理の再構築が必要である。我々はこの問題に対し原始 太陽系の環境を模擬した結晶成長実験を行ない、分子スケールの”その場”観察をすることによって、 結晶成長の時間的尺度などモデル構築に欠かせない速度論の情報を求める。これら天然試料の観 察、及び、室内実験の”その場”観察で得られた証拠に基づき、初期太陽系における固体物質進化 モデルを構築する。 原始太陽系形成時に初めて融解を経験したとされるコンドリュールの形成過程を,超音波や無重 力を利用した浮遊実験により初めて明らかにした.従来、数日から数十年必要と考えられていたコン ドリュールの形成時間は、一秒前後の極めて短時間であることが実験により明らかになった。コンド リュールメルトからの結晶の核形成は極めて困難なことが浮遊実験などで明らかになった。オリビン メルトからでは、数百℃から 1000℃以上の過冷却状態に達しないと結晶の核形成が起きない。さら に、輝石メルトでは浮遊状態のメルトからは、いかなる過冷却状態でも核形成が生じないことが確か められた。これらの実験的事実をもとに、惑星間で形成される宇宙塵やコンドリュールなどは従来の 考えより数桁早い冷却過程で形成されたことが分かった。これらの結論は、従来のゆっくりしたガス 星雲の冷却でなく、コンドリュールや宇宙塵がショックウエーブ通過による急激な加熱・冷却で形成さ れたという三浦らのモデルを強く支持する。 佐藤 春夫 部局:理学研究科 地球物理学専攻・教授 専門分野:固体地球物理学・地震学 主な研究課題:固体地球の不均質構造の解明 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:固体地球の不均質構造の解明 2) 研究目的: 固体地球のリソスフェアは構造が不均質でランダムな短波長成分に富む.震源ではパルス的な 地震波も,伝播距離の増加とともに不均質構造による散乱の効果によって大きく崩れ,主要動の継 続時間が大きくなる.本研究では,ランダム不均質構造におけるパルス波の伝播の数理的モデル を構築するとともに,島弧・火山における高周波数地震波のエンベロープ形状から不均質構造を推 定し,強振動の定量的予測の基礎を確立することを目的とする. 成果概要:今年度の主要な成果を下記に記す. 数理論的研究としては,ランダム不均質構造における短周ベクトル波動伝播に関する統計的手 法を発展させ,速度ゆらぎのスペクトルがガウス型の場合に波動エンベロープの導出法を確立した. また,ランダム不均質弾性媒質が自由表面を持つ場合に,実体波とレーリー波の変換散乱を考慮 したコーダ波エンベロープの導出法を確立した.観測研究としては,微小地震の S 波最大振幅の初 動からの後れに着目してその経路依存性を詳細に解析したところ,第四紀の火山の下では減衰が 強く低速度であるというだけではなく,速度ゆらぎが特に大きいことをはじめて明らかにした.遠地 P 波の Transverse 成分の励起の程度はリソスフェアの不均質の良い指標となる.IRIS の観測デー タの解析を解析したところ,地域による違いは大きいが,リソスフェアの厚さを100km とした場合,速 度ゆらぎは大陸で2−4%程度,活動的なところで5-19%程度と求められた.昨年執筆した微動解 析の新しい手法に関する総合報告“Curtis, A., P. Gerstoft, H. Sato, R. Snieder, R. and K. Wapenaar, Seismic interferometry -turning noise into signal, The Leading Edge, 25, 1082-1092, doi:10.1016/j.jvolgeores.2006.04.003, 2006”が,Society of Exploration Geophysicists(米国物理探査 学会)の”Honorable Mention in the category of Best Paper in THE LEADING EDGE”を受賞した. 3)国際交流: IUGG 国際会議(イタリア・ペルージャ市,2007年7月)において,地球の不均質構造と地震波の 散乱に関するシンポジウムを主催した.同時に,弾性波動を用いた地球の不均質構造の解明の研 究を強化することを目的とした Task Group on scattering and heterogeneity of the Earth の会議を 開催した.これに関連して,IASPEI の Task group on scattering and heterogeneity のホームページ を運営(http://www.scat.geophys.tohoku.ac.jp/index.html)している. 藤本 博巳 部局:理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター・教授 専門分野:海底測地学 主な研究課題:海底地殻変動観測による沈みこみ活動の研究 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:海底における地震・津波・地殻変動観測による沈みこみ活動の研究 2) 研究目的: 沈みこみ帯の海底地震計網による自然地震の長期観測と、海底圧力計による海洋・海底の変動 および津波の観測、GPS 音響結合方式の繰り返し海底測位による海底地殻変動の観測などによ り、日本周辺海溝域における海洋プレートの沈み込み過程と地震発生機構を解明する。 成果概要: 平成16 年度より,GPS 音響結合方式の繰り返し測位による海底地殻変動観測を岩手県沖か ら福島県沖にいたる日本海溝周辺と紀伊半島南東沖の南海トラフ海域で順開始しており,ほぼ毎 年,各海域における観測を繰り返している.今年度の重要な成果は,測位精度を向上し,観測時 間の短縮を可能とする新しい観測手法を開発し,論文で紹介したことである.GPS 音響結合方式 の海底地殻変動観測では,海中の音速構造の時空間変化が測位精度に直接影響を与えることが 最大の問題であり,数日間の観測の平均をとることでその影響を抑える観測を行ってきた.しかし 5台の海底局を用いた海底測位観測により,海中の音速変化の影響を定量的に評価し除去できる ことが明らかになった. 紀伊半島沖のケーブル式海底観測システムの構築(DONET)計画に関係して,係留ブイを用 いた連続観測に向けた GPS 音響結合海底測位システムの開発を進めるとともに,海底間の短基 線音響測距と海底圧力のアレイ観測により,断層を挟む局所的な海底地殻変動を連続モニターす るシステムを開発し,熊野灘において試験観測を開始した. 宮城県沖および福島県沖における海底地震観測により得られたデータを用いて,2005年に発 生した宮城県沖地震の破壊域周辺の地震活動および地震波速度構造についての研究を進めた. その結果,地震時すべりあるいは余効すべりが卓越する領域の端部に,すべりに起因するプレー ト内応力集中による活発な微小地震活動を見いだした.また,地震波トモグラフィにより,地震時す べりが卓越する領域では,プレート境界面上側のマントルウエッジ内の地震波速度が周囲に比べ て高速度であることが明らかとなった.陸上の GPS 観測からは,宮城県沖とともに南側の福島県 沖もプレート間の固着の程度が強いと推定されているが,宮城県沖ではM7クラスの大地震が繰り 返し発生するのに対して,福島県沖では微小地震活動は活発であるが大地震は少ない.マントル ウエッジ内に見いだされた地震波速度の不均質構造が,このようなプレート境界地震の発生様式 の違いの原因である可能性が指摘される. 長濱 裕幸 部局:理学研究科 地学専攻・助教授 専門分野:岩石破壊力学・地球連続体力学 主な研究課題:活断層系の不均質構造と余震分布の解明,地殻の粘弾性遷 移挙動の解明,断層岩石英中の hydrogen 分布と地殻強度軟化に関する研 究,地殻岩石の流動・破壊・摩擦すべりに伴う電磁気現象に関する研究, 地 震前兆時の大気中ラドン濃度変動に関する研究,環境放射能について,連続 転位分布理論等 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:「地殻岩石の流動・破壊に伴う電磁気現象とそのスケール不変性に関する研究」 「地震前兆時の大気中ラドン濃度変動に関する研究」 2)研究目的と成果概要: 本研究は、21 世紀 COE プログラム「先端地球科学技術による地球の未来像創出」の「地震火山ダイ ナミクス研究」の一環として, 地殻岩石の流動・破壊に伴う電磁気現象とそのスケール不変性の解明 や大気中ラドン濃度変動の連続計測による地震発生予測を目的としている. 今年度は,地殻岩石の破壊・摩擦すべりに伴う各種電磁気現象の発生メカニズムを解明するため に, Pin-on-disk 摩擦すべり実験による石英円盤と黄鉄鉱・石英ピン間に発生する摩擦プラズマ放電 (発光現象)についての研究成果をもとに, 断層活動初期(あるいは活動時)における断層アスペリ ティー周辺での摩擦プラズマ放電現象や断層面間に形成される電気双極子からの電磁波放射につ いて論じた. 地震電磁気現象発生メカニズムの解明に関連して, 地震前兆の大気中ラドン濃度変化や大気電 位変化についての研究をすすめた. 兵庫県南部地震の前兆に観測された大気中ラドン濃度連続観 測から認められた Benioff 歪解放緩和型の大気中ラドン濃度変化則を用いて,地震発生予測の可能 性について論じた。さらに,不可逆過程の熱力学的アプローチにより,前震 Benioff 歪解放緩和則と大 気中ラドン散逸過程で認められる時間に関するスケーリング則について,さらに地震や破壊に伴う地 磁気異常と前震 Benioff 歪解放緩和則との関係について論じた.兵庫県南部地震前兆時の大気中ラ ドン濃度変化から大気電離に伴い形成される大気イオン濃度変化や大気電位変化を定量的に見積 もり,地震前兆時には晴天時においても雷雲下の大気電位変化が起こりうることを指摘した. 上記の成果以外に,連続転位分布理論・多結晶塑性力学理論・micromorphic 連続体理論・高次河 口空間での地震波線理論・フィンスラー空間による力武ダイナモモデルの幾何学化・非線形力学系 に関する KCC 理論に関する微分幾何学を開拓し, 研究成果を数物系国際学術雑誌で公表した.現在 神戸大学理学部地球惑星科学科山崎和仁博士と転位(断層)周辺の J−積分(経路積分不変性)とガ ウス・ボンネ定理との関係についての研究成果を投稿・査読中. 土屋 範芳 部局:環境科学研究科 環境科学専攻・教授 専門分野:地震火山、地殻内流体 主な研究課題:岩石-水相互作用,及び地震発生における水の役割 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル: 地震発生と水の役割 2) 研究目的と成果概要: 地殻内の流体の特性(構造化,組成,流動特性)および流体流路,さらに断層などの岩盤不連 続面におけるアスペリティ分布についての実験的および野外地質学的研究手法から検討した. 超臨界地殻流体の特性を明らかにするため,高温高圧セルを開発し,超臨界状態にある水のラ マン散乱と赤外吸収スペクトルを計測する装置を開発し,鉱物界面における水の分光学的性質に ついて検討を行った.この結果,石英表面の水は,ice-like の構造化された水であり,この性質は 常温から超臨界状態に至る広い温度圧力範囲でほぼ普遍的に観察することができる. 一方,表面修飾した石英やアルミナの表面にはこのような構造化された水を認めることができな い.これらのことから,石英の表面ではシラノール基の形成とこれと相互作用する水素結合により 構造化された水が形成されるものと推定される.さらに,メソポーラスシリカを用いた実験から,この 構造下水の厚みは,数 10nm と推定される.これは分子動力学的研究から推定される構造化され た水の厚みより一桁以上の厚い.珪酸塩鉱物界面にける水は,岩石の破壊現象に強く関与してい る可能性が指摘できる. 地震発生帯における流体を含む断層面の模擬実験として,封圧下にある岩石き裂の接触状態 を可視化に成功し,き裂内(断層内)には優先流路(チャネリングフロー)が生じることを実験的に明 確に示した.また,流体を含むせん断すべり面の接触部(アスペリティ)では,急速なせん断すべり の結果,岩石の摩擦溶解が局所的に生じている可能性がある.また優先流路(チャネリングフロ ー)を流動する流体の3次元流動シミュレータを開発した. 研究室ホームページ:http://geo.kankyo.tohoku.ac.jp/ 吉田 武義 部局:理学研究科 地学専攻・教授 専門分野:火成岩岩石学および火山学 主な研究課題:島弧マグマ成因論、島弧の形成発達史、カルデラ学 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:東北本州弧における火成活動史と地殻・マントル構造 2) 研究目的と成果概要: 本研究の目的は、東北本州弧の地殻〜マントル構造を地質学的、岩石学的に検討すると共に、 それらを地球物理学的観測データと統合し、地殻〜マントルの3D構造モデルを構築することであ る。 近年の地震波トモグラフィーの発展によって、東北本州弧の地殻・マントル構造を、詳しく可視化 することが可能になった。地殻の発達史に関する地質学的データや,火山岩中に含まれる深部起 源の苦鉄質〜超苦鉄質外来岩片の岩質,組成に関する岩石学的データ,それら外来岩片につい ての地震波速度の測定データ等を合わせ検討することにより、地震波トモグラフィーは、地殻やマ ントルの岩石学的モデルや温度構造を明らかにするための有効な道具となる。玄武岩質火山岩類 を用いて岩石学的に推定される現在のウェッジマントルの温度構造は、地震波速度構造とよく対応 している。後期中新世〜鮮新世にかけて大量に形成された大規模陥没カルデラの地下で起こった であろう珪長質マグマの貫入は、地殻内に大規模なマグマ溜りを形成し、地殻内温度構造に、多 大な影響を与えたと考えられる。この温度構造撹乱の名残りは、現在も地震学的に検出できる。東 北本州弧の地殻・マントル構造ならびに現在の温度構造は、後期新生代における火成島弧の発展 と密接に関連して発達してきたと考えられる。火山岩中の外来岩片の研究に基づく,地殻やマント ルを構成する岩石についての高温高圧下での地震波速度測定データと地震波トモグラフィーで得 られる Vp、Vs 速度構造を,詳細に対応させることにより、地殻〜マントル内部での,詳細な,岩石 学的不均質構造が見えるに至っている。これらの詳細な構造データと火山岩の示す地球化学的デ ータを統合することにより、これまでに無い精度での、地殻〜マントル内構造とその形成史を論ず ることが可能となってきた。 西村 太志 部局:理学研究科 地球物理学専攻・助教授 専門分野:火山物理学 主な研究課題:火山噴火のダイナミクスの研究 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 火山噴火の爆発性に関する研究 2) 研究目的と成果概要: 火山活動に伴って発現する地殻変動は,GPSや傾斜計などによって捉えられ,近年マグマの貫 入位置や大きさが正確に推定されるようになってきた.最近では,火口極近傍でも高精度な観測が 行われるようになり,諏訪之瀬島やインドネシアのスメル火山,イタリアのストロンボリ火山などで 繰り返し発生するブルカノ式あるいはストロンボリ式の小爆発の前に,極微小ではあるが,山体膨 脹が加速していく様子が捉えられるようになった.このような地殻変動の時間変化を理解するには, マグマ上昇プロセスの基礎的な原理をもとに理解することが必要である.そこで,本研究では,繰り 返し発生する火山爆発現象を対象に,マグマ内に含まれる水の気泡挙動を取り入れたモデルを構 築した. 前記した火山では,火山爆発が数分から数十分程度で繰り返し発生していることから,火道は 開口状態であると考えられる.火道内部には低粘性のマグマが満たされるが,最上部は大気との 冷却や降下火砕物によって,高粘性になっていると想定される.また,マグマ内には気泡が含まれ, メルトが低粘性の場合,気泡はマグマよりも速く上昇する.このような開口型火道内のマグマの挙 動を,火道最上部の高粘性層の運動方程式,メルト中の気泡の上昇速度の式,気泡内のガス (水)の状態方程式を用いて表した.さらに,数値計算を行い,マグマの圧力,高粘性層の上昇速 度などの時間変化を求めた. その結果,次のような過程が明らかとなった.マグマ中の気泡は,上昇に伴う減圧のため,体積 が急増する.その結果,マグマ全体の体積が増加し,高粘性層が押し上げられる.高粘性層の上 昇は,粘性効果によってマグマの圧力を増加させる.気泡量が多く,高粘性層の粘性が大きい場 合,マグマの増圧量は一般的に大きくなる.ただ,高粘性層の粘性の大小により,増圧の時間変化 に違いがある.粘性が小さい場合には,気泡の体積の急増に伴って高粘性層が上昇するため,マ グマの圧力は加速的に増加する.一方,粘性が大きい場合は高粘性層の上昇が抑制されるため 比較的単調に圧力は増加する. このモデルから予測される開口型火道内のマグマの増圧によって,繰り返し発生する火山爆発 に先行して発生する火山体膨張現象を説明できる可能性がある. 谷口 宏充 部局:東北アジア研究センター 地域環境研究部門・教授 専門分野:火山科学 主な研究課題:爆発的噴火のダイナミックス 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:火山探査移動観測ステーション MOVE の開発 中朝国境の活火山白頭山の火山活動について 2) 研究目的と成果概要: 爆発的な噴火活動のダイナミックス理解を目的にして、危険を避け、遠方より噴火推移の調査や 観測を行えるよう、無人火山探査機の開発を進めている。1昨年までに、すでに一応の開発を終了 し、実際の火山において運用可能かどうか、問題があるとするならそれはどのような点でありその 解決方法とは何か、などを探ってきた。具体的には、伊豆大島において走行試験と爆発実験によ る搭載観測機器の性能試験を行い、その結果、約2km離れた地点からスコリアの散在する山道を 無線操縦により登坂させることに成功し、爆発実験に伴う映像や圧力波の受信にも成功している。 本年度は、今まで、主として予算的な面から不可能であった基地局の機動化を、新たな予算裏づ けのもとに検討を開始している。 中朝国境地帯に位置する白頭山火山について、従来、10世紀巨大噴火による周囲王朝に与え た歴史的影響に関する項目と、噴火推移についての現地調査に基づく研究をおこなってきた。しか し、2007 年1月に北京において行った日中韓朝関係4ヶ国による協議を契機として、今後、4ヶ国で 共同研究を進めてゆくことを決めていた。その後、北朝鮮問題が深刻化して4ヶ国共同研究は事実 上不可能になった。そのため主として日中の2ヶ国間で研究を進めた。研究内容の要点は第一に 干渉 SAR などの衛星観測技術を用いた地殻変動の観測であり、現在、同山では火山危機が発生 していることを明らかにした。第二は、白頭山を含む蓋馬溶岩台地の全容解明であり、現地調査と 岩石試料の採集を行い、現在、年代測定や化学組成の分析を行っている。第三としては、近世に おける火山活動の歴史を明らかにするため、朝鮮実録を代表とする古文書の解析に取り組みはじ めている。そのうち朝鮮実録については合計1649巻の文書検討を終了し、数10ヶ所に噴火を示 すかもしれない異変を見いだしており、現在、その真偽を検討している最中である。 流体地球・惑星圏研究グループの研究成果概要 【事業推進担当者】 花輪 中澤 川村 岡本 井龍 小野 高橋 中村 公雄 高清 宏 創 康文 高幸 幸弘 教博 理学研究科 理学研究科 理学研究科 理学研究科 理学研究科 理学研究科 理学研究科 理学研究科 地球物理学専攻・教授 地球物理学専攻・教授 地球物理学専攻・教授 地球物理学専攻・助教授 地学専攻・助教授 地球物理学専攻・教授 地球物理学専攻・講師 地学専攻(総合学術博物館)・助手 その他,理学研究科地球物理学専攻,地学専攻,環境科学研究科環境科学専攻に所属 する教員が協力教員として教育と研究に従事している. 【研究・教育活動】 (1) COE フェロー・特大大学院生等 2007 年度,本グループには 4 名の COE フェローが所属し,研究に従事した.また,2007 年 度,本グループから特待大学院生(SDC)として 2 名が採用された.さらに,大学院生国際学 会参加支援プログラムにより,本グループから 6 名の院生が海外で開催された学会やシンポ ジウム等に参加し,研究発表を行った. (2) 海外からの招聘研究者等 2007 年度,本グループは,4 名の長期招聘研究者と 2 名の短期招聘研究者を迎え,本グ ループ研究者との共同研究を進め,さらにセミナーを多数開催した.また,長期招聘研究者 は,英語による大学院講義 4 コマ分行い,多数の院生が受講した. (3) シンポジウム等 2007 年度,本グループ所属研究者が中心となって,「第 4 回微化石サマースクール」(8 月 1 日~3 日,本学・理学研究科)を開催した.また,本 COE 主催の国際シンポジウム「EASTEC Symposium 2007 “Dynamic Earth – its origin and future”」(9 月 18 日~21 日,仙台市戦災復 興記念会館),理学研究科主催の「アジア理学フォーラム」(年 9 月 10 日~11 日,仙台国際セ ンター)に本グループメンバーも参加した.また,本学 100 周年記念事業として本研究科が主 催した「青葉山サイエンス・サマースクール」(8 月 20 日~24 日)には,本グループから講演者 を派遣し,多くの高校生・市民に対し,本グループの研究成果をやさしく解説した. (4) COE セミナー等 2007 年度,本グループは外部からの研究者を迎え,集中講義(4 コマ分)を行った.また,国 内外からの研究者により,16 回の COE セミナーを開催した.各セミナーには,研究科,専攻 の枠を超えて,また外部研究機関からの参加者もあり,院生に対して大きな刺激を与えた. (5) 特記事項 本グループの中澤高清教授は 2007 年度の島津賞,ならびに,三宅賞を受賞した.また,花 輪公雄教授は,2007 年度ノーベル平和賞を受賞した IPCC の第 4 次評価報告書の執筆者と して参加した. 【研究成果概要】 「流体地球・惑星圏研究グループ」の目的は,地球の表層から超高層,太陽・惑星圏を対 象として様々な視点から研究を行うことで,気候形成の理解,気候変動の理解,地球温暖化 の理解を深め,地球気候の未来像の構築することである.本グループは,「気候変動ダイナミ クス」領域,および「太陽地球系ダイナミクス」領域の 2 つのサブグループからなる. 「気候変動ダイナミクス」領域は,地球の気候形成の仕組みを理解し,過去から現代に至る 様々時間スケールでの変動を復元・解明し,さらに数値シミュレーションにより,未来の気候 像を提出することを目的とし,「太陽地球系ダイナミクス」領域は太陽活動変動にともなう,地 球周辺の電磁環境変動(宇宙天気)や地球の気候変動の解明を目指し,また他の惑星にお ける環境変動とを比較研究することで,広義の地球気候システムを理解することを目的として いる.本流体地球・惑星圏研究グループの 2007 年度の主な研究成果は以下のようにまとめ られる. 「気候変動ダイナミクス」グループ 本領域の研究は,気候変動の実態と,変動のメカニズムを解明するため,多方面からアプ ローチによる研究が進展した.事業担当者による研究成果は以下のようにまとめられる. (1) 北太平洋の亜熱帯モード水の再出現現象の理解がさらに深まった.このモード水は遠 隔再出現現象を起こすが,その長期変動を調べたところ,約 20 年周期で再出現と,非再 出現を繰り返していることがわかった.また,この変動は,冬季アリューシャン低気圧の変 動と密接に結びついていることもわかった.さらに,北太平洋中央部の冬季 SST は,その 年の大気の強制力と遠隔再出現機構,双方の効果が効いていることもわかった. (2) 深層氷床コアに含まれる空気の酸素濃度からコアの絶対年代を推定する手法を新たに 確立し,氷期—間氷期サイクルという自然的要因による大気成分の変動を過去 57 万年に わたって復元し,それらの解釈を行った(図1参照).また,今日大きな関心を集めている 南大洋における CO2 吸収は,人間活動による気候変動の影響を受けて 1980 年頃から弱 まっている,北半球中高緯度と赤道域における陸上生物圏の正味 CO2 吸収が従来の理 解とは大きく異なる,といった可能性があることを新たに指摘した. 図1.南極コアの酸素濃度を用いた年代決定.ドームふじコア(上段赤)とボストークコア(上段青)の酸 素濃度(正確には酸素と窒素の濃度比)のデータを,南緯 77°の夏至における日射量(中段)と合わせ ることにより,コアの年代を正確に求めた.下段は年代決定誤差. (3) 赤道域超高温海面水温現象(Hot Event)に関する研究がさらに進展した.今年度,2006 年 11 月に発生した事例の解析研究を行い,その発生メカニズムを明らかにした.すなわ ち,El Nino に起因する高温の厚い層上の高海面水温に加え,周辺までも含めた広い海 域での海面が,高日射と無風条件下で急速に高温化し,結合することで生じている. (4) アクティブセンサーを用いた雲とエアロゾル観測を進め,船舶観測では熱帯において雲 と霧雨の発生頻度を解析から導く事ができた(図 2 参照).大気大循環モデルの比較検証 も進み,モデルにおいては熱帯では特に上層雲が過大評価となっていること,これはモデ ルの中で深い対流の発生頻度が実際よりも多すぎることが問題であることを示した.雲レ ーダのドップラー機能から,雲の形成過程に重要な要素である鉛直流を導出するアルゴ リズムの開発に成功した.衛星搭載雲レーダ・ライダの全球解析に着手し,独自の雲マス クや雲とエアロゾルの微物理特性解析アルゴリズム開発が進展中である. 16x10 3 14 C1 C5 Height [m] 12 10 8 6 4 2 0 5 10 15 20 25 30 図 2.西部熱帯太平洋上にて観測船「み らい」に搭載された雲レーダとライダから 導かれた,霧雨と雲を含む出現頻度分 布(点線)と雲の出現頻度分布(実線)の 比較.霧雨の出現頻度は全観測期間中 で17%あり,雲が出現した場合その約 7 割が霧雨を伴うことを示していた. Cloud fraction [%] (5) 国際統合深海掘削計画第 310 次航海(タヒチ島の海水準変動)の共同主席研究者とし て,研究を推進中である.2007 年 11 月(11 月 12 日~16 日)には,2nd Post-cruise Meeting(タヒチ島)を開催し,これまでの研究成果を集約し,今後の研究の方向性を議論・ 決定した.また,サンゴ礁の分布の北限が位置する琉球列島をフィールドとして第四紀気 候変動に対するサンゴおよびサンゴ礁生態系の応答を調べることを主目的とする国際共 同研究である COREF 計画に関しては,リード・プロポネントとして,2007 年 1 月のワークシ ョップの結果をとりまとめ, 2008 年 1 月には,Preliminary Full Drilling Proposal を提出した. 今年度は,琉球列島でのサンゴ礁掘削の実現に向けて,大きな進展があった年と総括で きる. 「太陽地球系ダイナミクス」グループ 本領域の惑星圏研究惑星圏研究に関する研究・教育の成果として,太陽活動変動に伴う 地球磁気圏・プラズマ圏・電離圏の応答に関する研究の他,太陽活動変動が木星や水星等 の惑星や月を含む衛星の大気・プラズマ環境にもたらす影響を詳細に評価する研究とこの研 究課題にかかわる学生の教育活動が積極的に実施された. 太陽活動変動に伴う地球磁気圏・プラズマ圏・電離圏の応答に関する研究では,あけぼの 衛星,FORMOSAT-2 衛星,REIMEI 衛星などによる観測研究が継続された.また惑星圏観測 所設備による太陽電波や地磁気脈動観測,昭和基地,スピッツベルゲンやアイスランドにお ける ELF 電波,オーロラ電波放射観測などをもとにした多岐にわたる電磁圏変動に関する地 上観測研究,データ解析研究並びにシミュレーション研究が行われた.特にあけぼの衛星に より磁気嵐時の異常電場分布が見出されたほか, FORMOSAT-2 による広視野におけるオ ーロラやスプライト観測,宇宙からでのオーロラ観測を行う REIMEI 衛星観測によるパルセー ティングオーロラやブラックオーロラ研究,また月周回軌道からの自然プラズマ波動観測や月 地下探査の新たな試みの研究成果等は世界からの注目を集めている. 太陽活動変動が惑星や衛星の大気・プラズマ環境にもたらす影響を詳細に評価する研究 では,水星,金星,木星並びに衛星イオについて,地上光学観測研究,木星電磁圏ダイナミ クスのシミュレーション研究が行われた.水星ナトリウムテールの全容を初めて観測した.イ オ起源プラズマが木星内部磁気圏にマスローディングされる過程が明らかにされた. 2006 年度惑星圏研究成果の中での特記事項として,マウイ島ハレアカラ山頂(海抜 3000m)の惑星光学観測施設(図 3 参照)での観測において,水星ナトリ ウムテール中の太 陽光圧加速の非一様性が検出された.また、衛星イオの公転に伴う 木星ナトリウム雲構造 の周期的変化がはじめて観測された.月の起源の解明に関わると共に月探査衛星「かぐや」 が新たに月面並びに地下探査の新しい観測として加わった(図 4 参照).また水星探査機 BepiColombo,金星探査機 Planet-C の観測装置開発などの準備が進められた.さらにハワイ における将来の惑星電波・光学望遠鏡,大学衛星,ジオスペース探査衛星などの計画検討 が進められた. その他,惑星圏研究・教育の成果として,学術誌掲載論文 23 編,紀要掲載論文 24 編,国 際学会における研究成果の発表 73 編,国 内学会発表 204 件,また惑星圏研究に関わ る科学研究費補助金は 6 件,学術振興会特 別研究生在籍者数 7 名,学会賞の受賞は 2 件であった. 図 3.新設ハワイ・ハレアカラ観測所. 「太陽地球系ダイナミクス」グループ (40cm シュミットカセグレン望遠鏡) 図4.「かぐや」搭載の月レーダサウンダー(LRS) 観測による月地下観測データ http://wms.selene.jaxa.jp/index_j.html 花輪 公雄 部 局: 専門分野: 研究課題: 連 絡 先: 理学研究科 地球物理学専攻・教授 海洋物理学 大規模大気海洋相互作用,数十年スケール変動 E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:大規模大気海洋相互作用による気候変動のダイナミクス 2) 研究目的と成果概要: 気候システムの主要構成要素である大気と海洋とが,相互に作用して起こる季節から数十年ス ケールの気候変動のメカニズムを,既存資料の解析と海洋監視手法を駆使して解明することを課 題としている.2007 年度に得られた主な研究成果は以下のようにまとめられる. 1.冬季海面水温(SST)偏差再出現機構の研究(Sugimoto and Hanawa, 2007a) 冬季 SST 場において,翌年の冬季に前年の冬季と同じ偏差を再び出現させることがある.これ を再出現現象と呼ぶ.我々の研究により,これらの海域はモード水形成域であること,北太平洋 亜熱帯モード水のような強流帯に位置するモード水は,移流により SST 偏差形成域から離れた海 域 で , 偏 差 を 再 出 現 さ せ る こ と を 明 ら か に し た . こ の よ う な 再 出 現 を 「 遠 隔 再 出 現 ( remote reemergence)」と呼ぶ.この遠隔再出現の長期変動を調べたところ,約 20 年周期で再出現と,非 再出現を繰り返していることがわかった.また,この変動は,冬季アリューシャン低気圧の変動と 密接に結びついていることもわかった.さらに,北太平洋中央部の冬季 SST は,その年の大気の 強制力と遠隔再出現機構,双方の効果が効いていることもわかった. 2.北太平洋東部亜熱帯モード水の非再出現の要因について(Sugimoto and Hanawa, 2007b) 主要モード水は再出現現象を起こすが,東部亜熱帯モード水はこの現象を起こさない.この要 因を再検討した.その結果,冬季混合層の厚さが薄いことに加え,下部における二重拡散対流混 合が大きいこと,暖候期の加熱が弱く,大気との遮断が弱く急速に水質を変化させていることによ ることがわかった. 3.南太平洋亜熱帯モード水の研究(Tsubouchi, Suga, and Hanawa, 2007) これまで全貌が明らかでなかった南太平洋亜熱帯モード水について,高密度 XBT 観測資料など を基に考察した.その結果,水質の異なる3つのタイプのモード水が存在することを明らかにした. これらは,西岸境界流,その再循環流,およびその前線の構造に強く支配されていることがわか った.また,そのインベントリの変動を考察したところ,長周期変動は亜熱帯循環系のスピンアップ /ダウンと密接な関係があることがわかった. 4.その他の研究成果(Saito et al., 2007; Hasegawa and Hanawa, 2007a) 北太平洋亜熱帯域から亜寒帯域への移行領域に,これまで指摘されていなかった新たなモード 水の存在をオキらかにした(Saito et al., 2007).また,西部北太平洋熱帯域におけるエルニーニョ /南方振動に伴う貯熱量変動の形成メカニズムを考察した.その結果,エルニーニョ終焉後,正 の貯熱量偏差が,北緯 15 度帯を北米海岸沖から西方伝播すること,同期して負の風応力カール 場が形成され,エクマンパンピングにより暖水が蓄積すること,さらに潜熱放出が弱化することの 複合作用によって形成されていることがわかった(Hasegawa and Hanawa, 2007).から 中澤 高清 部局:理学研究科 附属大気海洋変動観測研究センター・教授 専門分野:大気物理学・気象学 主な研究課題:大気組成の変動と気候影響 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:温室効果気体の変動と循環 2) 研究目的と成果概要: 本研究においては,大気中の温室効果気体と関連物質の濃度および同位体比の変動を広域に わたって観測し,その結果を循環モデルなどで解析する事により,全球規模の循環の解明と収支 の評価を行う.また,極域で掘削された氷床コアを分析することによって過去における大気組成の 変動を復元し,気候・環境への関わりを明らかにする.本年度に実施した研究とその成果の概要は 以下の通りである. 仙台,南極昭和基地,北極ニーオルスン基地での地上観測,太平洋上や日本近海での船舶観 測,日本上空やシベリア上空での航空機観測,日本上空での大気球観測などを実施し,温室効果 気体や O2 の濃度およびそれらの同位体比の時間空間変動を明らかにした.昨年度に可能性を見 いだした成層圏における大気成分の重力分離について,日本上空に加え,スカンジナビア半島と 昭和基地での大気球観測の結果および北極域での航空機観測の結果も合わせて解析する事によ り,確かに生じている事を確認し,従来の認識を変える新たな知見となった.また,昨年度まで継続 した中国国内での CO2 観測の結果を解析し,全域にわたる濃度の分布と変動を初めて示すととも に,国内で行ってきた観測から,特に中国における化石燃料消費の影響が近年強まっている事を 明らかにした. 南極ドームふじ深層コアの分析を継続し,過去 57 万年に及ぶ CO2 や CH4, N2O 濃度,O2/N2 比,空気含有量の変動を復元した.特に O2/N2 比の変動が現場での日射量の変化と極めて良く対 応していることを見いだし,日射によって氷床が変質され,それがフィルンー氷遷移過程での O2 と N2 の分別に反映されたためと考えられ,深層氷床コアの絶対年代を決定する新たな方法として利 用できる事を示した.また,氷床コアから抽出した 4 ml の微少空気試料から,CO2 濃度を 0.3ppm, CH4 濃度を 1ppb,N2O 濃度を 1ppb の高精度で同時に分析する技術を完成させた. 北半球の 10 地点で行った航空機観測から求められた CO2 濃度の鉛直分布を基に,12 の全球 大気輸送モデルによる逆解法解析を検討した結果,従来考えられていたよりも,赤道域の陸上生 物圏からの正味 CO2 放出は,手つかずの森林による強い吸収のためにはるかに弱く,逆に北半球 中高緯度の生物圏による吸収は弱い事を示唆した.また,昭和基地を含む南極周辺での 12 地点, その他 40 地点での CO2 濃度を用いて全球大気輸送モデルによる逆解法を行い,南大洋による CO2 吸収能力は、1981-2004 年に 10 年間当たり 0.08GtC/yr の割合で弱まり、現在はほとんどゼ ロとなっている可能性を見いだした.この原因について,全球海洋循環生物化学モデルによる海洋 炭素循環の数値解析を行い検討したところ,人間活動に伴う気候変動によって南極周辺で風速が 強まり、海洋循環が変化し,炭素が豊富な深層水が表層に上昇しているためと考えられた. 川村 宏 部局:理学研究科 付属大気海洋変動観測研究センター・教授 専門分野:海洋物理学 主な研究課題:気候変動、衛星海洋 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:衛星地球観測技術による高解像度海洋環境観測研究 2) 研究目的: 衛星地球観測技術がもたらす、高解像度広域海洋情報を活用することにより、海洋環境の実態 を明らかにし、新しい知見を創出。 成果概要: 1. 衛星地球観測技術による新世代海面水温・毎時高精度海面水温・毎時高解像度日射量開発: 現在、世界中で開発が進む新しい高解像度海面水温開発は、本研究者らが中心となった日本 の成果が世界をリードする。複数の赤外衛星観測にマイクロ波センサーによる海面水温を融合す ることにより、雲無し毎日高解像度海面水温を開発。さらに、新しい静止気象衛星 MTSAT の直 接受信データを用いて、毎時高精度海面水温と毎時海面到達日射量の作成手法を開発し、広域 海面を高解像度(5km 格子、毎時)で観測することを可能とした。 2. 高解像度海面水温・海面到達日射量を用いた熱帯域超高温海面水温現象の発見: 新しい地球観測技術を駆使し、インド洋-西太平洋赤道域の暖水プールに出現する超高海面水 温現象の存在を見いだした。3x106km2 を越える広い範囲に出現する超高海面水温(30 度を越 える、周囲より際だって高い)の空間的に連続な領域は、約20日間程度継続する。この現象は、 日変動スケールの大気海洋相互作用(海面水温日変動)と密接に関係することが判った。暖水プ ール海域は高い平均海面水温(28-29 度)で特徴づけられるが、この現象は短期間ながら、それ を越える高海面水温を出現させることから、Hot Event(超高海面水温現象)と名付けられた。 3. 衛星超高解像度海上風観測による沿岸域波浪発達に関する研究: 沿岸域で複雑に変動する海上風と波浪場は、その複雑さゆえいまだ観測が難しく、未知の学問 領域として残されている。合成開口レーダーを本格的に活用し、他の衛星搭載マイクロ波センサ ーを有効に組み合わせることで、高解像度海上風・波浪場の実態が的確に把握できることを示し、 さらに気象数値モデルと波浪数値モデルを組み合わせて、高精度で予測する手法を新たに創出 した。100m 格子の超高解像度衛星観測と波浪シミュレーションは、世界をリードする。 岡本 創 部局:大気海洋変動観測研究センター・准教授 専門分野:大気物理学、光散乱、レーダ、雲 主な研究課題:アクティブセンサーを用いた雲・エアロゾルの研究 連絡先:E-mail: [email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:雲とエアロゾルの変動とそれらの気候システムへの影響 2) 研究目的と概要 1.日本近海西部太平洋上における雲鉛直分布とその大気大循環モデルにおける再現性に関 する研究 (Okamoto et al., 2007): 2001 年 5 月に海洋研究開発機構の観測船「みらい」に雲レーダとライダを搭載した観測航海 を実施し,大気大循環モデル CCSR/NIES/FRCGC AGCM によって雲の再現実験を行い比較した. モデルでは上層の雲出現頻度を50%程度の過大評価、また下層雲を過小評価する等の問題 がわかった. 2. 西部熱帯太平洋上における大気大循環モデルの雲再現性の解析 (Okamoto et al., 2008): 2001 年に実施された西部熱帯太平洋上において得られた観測データを元に、AGCM によって 再現された雲鉛直分布, 微物理特性を検証した. 上層の雲は 2-3 倍程度,また降水頻度も同じく 過大評価しており, これは深い対流の頻度をモデルが過大評価していることが原因であった. 3.ドップラー機能を持つ雲レーダとライダを組み合わせた鉛直流と雲微物理量の解析 (Sato et al., 2007): 雲レーダのドップラー機能を用いて巻雲の微物理量と大気の鉛直流の速度を求めるアルゴリ ズムを開発した. 得られた鉛直流は,赤道大気レーダ EAR によって得られたものと比較し、十分 な精度であった. 4.2波長偏光ライダを用いたエアロゾル解析アルゴリズムの開発(Nishizawa et al, 2007, 2008): ライダを用いてエアロゾルのタイプ識別とそれぞれのタイプの消散係数の導出を行うアルゴ リズムを開発した. 晴天域で 10%程度の精度が達成できていることを確認した.日本近海太平洋 上におけるライダーによるエアロゾル観測に適用した結果,高度 1km 以下では海塩粒子が卓越, それより上では硫酸エアロゾルが卓越してた. 5.雲レーダとライダによる氷晶雲の微物理特性解析アルゴリズム比較検証実験 (Heymsfield et al., 2008): 雲レーダとライダからアルゴリズムによって解析された氷粒子の有効半径と氷水量の導出結 果を、航空機にデータと比較する検証実験に参加した. 我々のレーダとライダを組み合わせる アルゴリズム(Okamoto et al., 2003)と、レーダ反射因子とドップラー速度を組み合わせる Sato and Okamoto 2006, 2007 のアルゴリズムが最も小さい分散を与え、航空機の解析結果に近いも のであることが判明した. 井龍 康文 部局:理学研究科 地学専攻・准教授 専門分野:炭酸塩堆積学・地球化学,古生物学 主な研究課題:炭酸塩堆積物および炭酸塩生物殻を用いた古環境復元 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル: 1. タヒチ島における海水準変動(国際統合深海掘削計画第 310 次航海) 2. 琉球弧におけるサンゴ礁前線の移動:北西太平洋域での第四紀気候変動に対する高緯度域 サンゴ礁の呼応の解明(COREF Project) 3. 礁の誕生,発達,崩壊のダイナミクス ━北大東島を例にして━ 4. 腕足動物殻を用いた顕生代における海洋の溶存無機炭素の同位体比変化の解明 2) 研究目的と成果概要: 1. タヒチ島における海水準変動(国際統合深海掘削計画第 310 次航海) 国際統合深海掘削計画第 310 次航海(タヒチ島の海水準変動)の共同主席研究者として, 研究を推進中である.本年度は,11 月タヒチにて,第2回ポストクルーズ会議を開催し, これまでの研究の総括と今後の成果の出版方針を話し合った.また,担当している無節サン ゴモ化石の検討による古環境復元(特に,古水深の決定)の研究結果は,2 名の海外の共同 研究者の結果と併せて,2008 年中に論文としてまとめる予定である. 2. 琉球弧におけるサンゴ礁前線の移動:北西太平洋域での第四紀気候変動に対する高緯度 域サンゴ礁の呼応の解明(COREF Project) COREF Project は,北西太平洋におけるサンゴ礁の分布の北限に位置する琉球列島におい て陸上掘削(ICDP)および海洋掘削(IODP)を行い,第四紀サンゴ礁複合体堆積物ならび にその沖合堆積物を採取し,第四紀気候変動に対するサンゴ礁生態系の応答を明確にする ことを目的とする.本年は,陸上掘削の候補地点である,沖縄本島勝連半島の地表踏査を 行い,層序と年代を明らかにした. 3. 礁の誕生,発達,崩壊のダイナミクス ━北大東島を例にして━ 我々の研究グループでは,10 万年~100 万年スケールでの炭酸塩岩の堆積過程および続 成過程を知るために,北大東島試錐試料および同島の地表試料の堆積学的・同位体地質学 的・古生物学的研究を行っている.本年度より,石川剛志氏(海洋研究開発機構高知コア 研究所)と,同島の地表に分布するドロマイトのストロンチウム同位体比に関する研究を 開始した.これにより,地表のドロマイトの形成年代が明らかになるとともに,ドロマイ ト化の際のストロンチウムの挙動が明らかになると期待される. 4. 腕足動物殻を用いた顕生代における海洋の溶存無機炭素の同位体比変化の解明 海棲生物が形成する炭酸塩骨格の炭素・酸素同位体組成は,古環境を復元するために最 も重要な情報のひとつである。従来,腕足動物は,その殻の炭素・酸素同位体組成に基づ いて,特に古生代の古海洋環境を復元するために最適な生物として数多くの古環境解析で 用いられてきた.しかしながら,これまでの研究は,古環境指標としての腕足動物殻の炭 素・酸素同位体組成の有用性が十分検討されないうちに,応用研究が展開されてきたと指 摘される.そこで本研究では,腕足動物殻の炭素・酸素同位体組成の環境指標としての有 用性を正確に評価するために,日本周辺海域に生息する腕足動物に関して,同一殻内にお ける炭素・酸素同位体組成を詳細に検討するとともに,それらの生息地における海水温・ 塩分の年間データの取得や海水の炭素・酸素同位体比の測定を併せて行っている.将来的 には,生息地の海水の溶存無機炭素同位体比をよく反映している分類群と部位を特定し, それらを用いて,顕生代における海洋の溶存無機炭素の同位体比変化を描き出したいと考 えている. 小野 高幸 部局:理学研究科 地球物理学専攻・教授 専門分野:惑星プラズマ物理学 主な研究課題:太陽活動変動に伴う内部磁気圏電磁プラズマ現象の研究 並びに 電磁波を用いた月惑星の科学研究 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1)研究タイトル:太陽活動変動に伴う内部磁気圏電磁プラズマ現象の研究 2)研究目的と成果概要: 本研究は、磁気嵐時に内部磁気圏に生じる大きな電磁場変動とそれに伴う高エネルギー粒 子の運動、及びこれらの高エネルギー粒子と磁気赤道域プラズマ波動の関連性について究明 を行うものである。2007 年度における研究の成果として、あけぼの衛星に搭載されたプラズマ 波動観測機(PWS)は、17 年間の継続観測を通じて宇宙空間プラズマ波動の諸相に関して多くの新 しい知見をもたらしている。とりわけ、静穏時のプラズマ圏磁気赤道域の高度3000km以上 の領域において強い強度をもって出現する fQ 周波数付近の静電的電子サイクロトロン波(ESCH 波)はプラズマ圏内の熱プラズマの実体を直接示す波動現象であるのみならず、プラズマ物理学上 の重要な知見をもたらしている。本研究では、この ESCH 波の発生領域、周波数特性、太陽・磁気 圏擾乱依存性をまとめることでプラズマ圏の熱プラズマの加熱プロセスを解き明かすことができ た。 2007 年度は以上の成果を学術誌に公表した。 図1: Akebono 衛星により赤道域にて観測された①UHR モード、②③Zモードプラ ズマ波動並びに④静電的電子サイクロトロン高調波。 1. 2. 研究タイトル:電磁波を用いた月惑星の科学研究 研究目的と成果概要: 比較惑星科学の一環として、月地下の構造を探るため、月周回衛星 SELENE に搭載する月レ ーダサウンダ(LRS)観測装置は 2007 年次においては装置単体の最終動作確認試験並びに衛星 に組み込んでの総合環境試験及び総合電器試験を実施した。LRS観測では、比較的伝搬減 衰の少ない HF 帯レーダ電波を用いて、高度 100km の月周回軌道より月表層の地形や物性、ま た地下数 km に至る地層構造の探査を行う。また、地球周辺での惑星電波観測では、電離層や 磁気圏の影響や人工電波の影響を受けるが、月周回軌道ではこれらの影響を受けず、広帯域 で高感度の観測が可能となる。このメリットを活かしてLRSでは 10Hz より 30MHz に至る周 波数帯で自然プラズマ波動並びに自然電波観測を行うことにより、月周辺プラズマ環境や太 陽・惑星電波放射の詳しい観測が計画されている。 2007年度の開発研究の成果として、月周回衛星かぐやは2007年9月14日(日本時間、以 下同様)に種子島宇宙センターから無事に打ち上げられ、同年10月18日に高度約100 km の月周回観測軌道に投入された。その後、搭載機器(バス機器、観測機器)の初期機能確 認を約2ヶ月にわたり実施し、LRSは電気的・熱的に要求性能を満たしていることを確認 した。10月29日にアンテナ伸展作業を行い、引き続き自然電波観測が開始して観測性能 を評価した結果、当初の性能を満たしていることを確認した。11月20日から21日にかけ て高圧投入試験を実施し、サウンダーモードで観測を開始、取得されたデータを整理し た結果、月地下探査に関する初期結果を得ることができた。得られたレーダーエコー信 号の特徴は、予め計算機シミュレーションによって予測されていたものと極めて似た特 性を示しており、目指す表層から地下数kmに至る地質構造探査実施の可能性が確認され た。12月21日に定常運用へ移行し、現在LRSは正常にデータを取得し続けている。 図 4 平成 19 年 11 月 21 日 22:13-22:15(日本時 間)に得られた雨の海北東部 Kirch クレータ (39.N/5.W 直径 11km)付近の解析結果。 高橋 幸弘 部局:理学研究科・太陽惑星空間・講師 専門分野:超高層大気物理学 主な研究課題:雷放電に伴う過渡発光現象 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:雷放電及び雷放電に伴う過渡現象の世界分布とメカニズムの解明 2) 研究目的と成果概要: 本研究課題では、台湾の FORMSAT-2 衛星と地上観測設備の戦略的運用、及び気球実験によ って得られたデータ解析によって、雷雲活動に伴う高々度放電発光現象、地球ガンマ線、グローバ ルな雷放電活動とそれらの大気及び電離圏・磁気圏への影響について、メカニズム解明と定量的 理解への道筋を確立することを目的としている。19 年度に実施した研究内容と成果を以下に示す。 a. 世界 ELF 観測ネットーワークデータに基づく雷放電の世界分布の推定 東北大学が設置・運用している世界 4 カ所のセンサーから構成される ELF 観測ネットワーク で 2004 年に取得された 270,000 個の雷放電データを解析し、それらの発生位置と電荷モーメ ントを推定した。その結果、スプライトを発生させる可能性が高くなる 200 Ckm 以上の雷放電 の発生頻度は、全球で 0.73/sec と求められた。また、アフリカ大陸中央部は、他の地域と比 べ著しく正極性落雷の比率が高くいことが見いだされた。これは、スプライトの発生数が同地 域で極大を持つことと整合的である。 b. FORMOSAT-2 衛星搭載 ISUAL イメージャーによるスプライトの世界発生頻度の推定 FORMOSAT-2 衛星搭載の ISUAL イメージャーによって取得されたスプライトのデータと、 ELF ネットワーク観測を組み合わせることで、雷放電規模毎のスプライト発生確率を算出した。 その結果、1200 Ckm 以上では 70%、1000 Ckm 以下では 10%以下であることが明らかになっ た。 c. FORMOSAT-2 衛星搭載 ISUAL アレイフォトメータによるスプライト発光強度計測 FORMOSAT-2 衛星搭載の ISUAL アレイフォトメータのデータを解析し、スプライトの発する 絶対光量を初めて決定した。その結果 N2 1PG および 2PG バンドの総エネルギーの平均値は それぞれ 176 kJ および 119 kJ1 となった。また光量と ELF から求めた電荷モーメントとの関係 から、発光現象のしきい値が 640 Ckm であることを示した。 d. 気球観測によるエルブス発生条件の解明 エルブスとスプライトを初めて気球から捉えた、2006 年 8 月に実施した三陸気球観測キャン ペーンのデータから、エルブスを発生させる雷放電は、強い鉛直電場を放射させていることを 初めて定量的に明らかにした。 e. スプライト・地球ガンマ線観測用小型衛星の開発 2008 年度打上げ予定のスプライト・地球ガンマ線観測用小型衛星について、工学研究科・航空 宇宙工学専攻及びスタンフォード大、カリフォルニア大と共同で設計・開発を進め、衛星本体およ び科学計測器のフライト品の完成にめどを付けた。 中村 教博 部局:理学研究科 地学専攻・助手 専門分野:地球惑星磁気学 主な研究課題:隕石やシュードタキライトを用いた古磁場環境の研究 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:断層破砕帯・隕石の磁性とレーザースポット加熱式古地磁気測定システムの開発 2) 研究目的と成果概要: 地震時や原始太陽系星雲形成時の磁場環境を,隕石やシュードタキライトといった岩石から復 元することを目的として研究をおこなっている.本年度は台湾・チェールンプ断層を貫くボーリングコ ア試料の古地磁気測定から昨年度導出した仮説「地震断層すべり時に数百アンペアの地震性電 流が発生した」の検証をおこなった.これまでの多くの岩石磁気学の研究から,サブミクロンサイズ の磁鉄鉱が磁化を担っている場合は仮説が実証されるが,粗粒なヘマタイトが磁化を担っている 場合,地震性電流の仮説は崩れることが知られている.そこで,走査型磁場顕微鏡と電子線散乱 回折法(EBSD)を利用して,残留磁化を担っている鉱物がクロムを含有する微細磁鉄鉱粒子である ことを確認した.これは地下1000mの断層破砕帯で地震性の電流が発生していた可能性が極め て高いことを示している.隕石中(衝撃溶融脈やダスティーオリビン)の磁化に関して,「低温・長時 間で獲得した磁化と高温・短時間で獲得した磁化が等価」であるとする温度・時間等価性が破綻す る場合があることを実験的に示し,この等価性の破綻が磁性鉱物の粒径によることを,フラクタル 幾何学と磁気スピン理論によって説明した.最後に,30W連続発振グリーンレーザーによるその 場スポット加熱装置を走査型磁場顕微鏡に取り込むための技術開発をおこない,将来、岩石・隕石 中の微小領域に不均質に分布する磁化を局所段階的に加熱消磁できることを可能にする古磁場 推定実験技術を培った. 地球進化史研究グループの研究成果概要 【事業推進担当者】 掛川 箕浦 海保 佐藤 孫 武 幸治 邦夫 源之 明宇 今村 文彦 理学研究科 地学専攻・助教授 理学研究科 地学専攻・教授 理学研究科 地学専攻・教授 東北アジア研究センター 地域環境研究部門・教授 学際科学国際高等研究センター、(兼)流体科学研究所・ 学際衝撃波研究分野・助教授 工学研究科 災害制御研究センター・教授 【研究成果概要】 (1) 概要 地球進化史研究グループは、初期地球システムの構築(生命の起源含む)、大規模氷河— 温暖化と生物進化、小天体衝突と大量絶滅を重点課題とし研究教育を行ってきている。特に 2007 年度は理工連携のもと衝撃波シミュレーション実験を行い二畳紀・三畳紀境界での隕 石落下に伴う環境変動を示し論文として公表した。小天体海洋衝突実験で煙粒子生成に成 功しアエロゾルの影響に関する論文も出版した。タンパク質を作るためのペプチド高温高圧 合成に世界ではじめて成功した。理工連携による津波研究も推進した。2007 年度の目標は、 おおむね達成してきている。理工連携も東北大学大学院理学研究科—流体科学研究所—物 質材料研究機構—環境科学研究科—災害制御研究センターの間で進行している。科研費も 基盤研究 S, 基盤研究 A,B など潤沢である。教育においても先端理学国際コースと連携した 英語授業など開講し、研究内容を教育に還元してきている。 (2) 大学院学生の活動 博士学生2名が日本学術振興会特別研究員として研究を行った。1名が長期海外派遣さ れた。 (3) ポストドクトラル・フェローの活動 日本人2名(渡邊(新規)・大庭(新規))を COE 経費で雇用した。特にバイオマーカーを武 器にする大庭の雇用は、COE 研究促進に大きな意味を持つ。JSPS のポスドクも積極的に受 け入れた。1名は理工連携枠として雇用した。 (4) シンポジウムと国際共同研究 2007 年 9 月に開催された本 COE シンポジウムでは地球進化史研究グループが主導にな り1セッションを企画した。2 名の外国人(Hildebrand, Schoonen)を招聘した。グリーンランド イスア地域、カナダサンダーベイ地域などで国際フィールドワークを実施した。 掛川 武 部局:理学研究科 地学専攻・助教授 専門分野:地球進化 主な研究課題:初期地球環境の復元、生命起源に関する化学進化 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 本年度は、掛川が代表を務める日本学術振興会の科研費にそって研究を進めた。 基盤研究 A「微惑星・隕石の初期海洋衝突による生体有機分子生成の可能性」では、世界ではじ めてアミノ酸の一種であるグリシンの高温高圧重合に成功した。その成果を Origin of Life and Early Evolution に出版した。その他のアミノ酸(バリン、アスパラギン酸)に関しても同様の研究を 行い、高温高圧条件がペプチド形成に有利であることを示した。 また、物質材料研究機構と行った共同研究で隕石・海洋衝突の模擬実験を実施した。それにより ケイ酸塩鉱物が容易に蒸発することが分かり、煙微粒子を形成することが分かった。その成果は Earth Planetary Science Letter に出版された。また、一連の研究で、炭素からアミノ酸が生成され うることを見いだした。この研究費で購入された LC-MS を用いて同位体ラベルした炭素からの生成 を証明した。 基盤研究 B「世界最古の生物起源グラファイトの探査に関する国際共同研究」では世界最古の地 層が残るグリーンランドイスア地域と、30億年前の地層が残るカナダスティープロック地域での調査 を行った。JAMSTEC 定期刊行誌 Blue Earth でイスア地域の研究が紹介された。イスア地域の研 究はコペンハーゲン大学との共同研究として行った。スティープロック地域調査は、アメリカ・アストロ バイオロジー・インスティチュートと共同で行った。世界最古の生命の痕跡を見出すと同時に、30億 年前の微生物生態系が、地質環境に対応した情報とともに再現された。 その他、白亜紀の有機炭素同位体測定を行い、炭素循環とそれに対応した生物活動の変化を論 文化した(Palaios).またデボン紀の浅海性堆積物の硫黄同位体測定を行い、海洋の無酸素化のプ ロセスを詳細に解明し論文化した(Chemical Geology)。 箕浦 幸治 部局:理学研究科 地学専攻・教授 専門分野:地球科学 主な研究課題:地質学、古生物学 連絡先:E-mail:[email protected] 【研究報告】 研究目的と成果概要 Climatic cooling or warming is a fundamental phenomenon of the Earth, however we do not realize exactly the cause of ice sheets. There is no consensus in the interpretation of continental freezing and thawing, and the mechanism of the onset of ice-age periods or stages remains controversial. The general understanding on climate change is that it is a combination of several important factors: changes in atmospheric composition and circulation, tectonic plate motion and consequent shifting of continents into Polar Regions, variation in solar energy utility of the surface, changes in the Earth’s orbit around the Sun, orbital dynamics of the Earth-Moon system. Meteorite impact and increased volcanic eruption reduce in solar radiation, and might have caused drastic changes in the global climate. The first and the second of the major factors are responsible for much of the climate formation. The third and the forth are the most significant factors to account for cyclic climate oscillations, especially for the periodic occurrence of glacial-interglacial climate in the Late Cenozoic. Solar energy utility depends on the changes in Earth orbit, and the precession alters the amount of insolation reaching the surface. Through the cooling episode, the Earth had experienced freezing over, except for the equatorial zone. The other factors, however, are interpreted to do matter in complex and interrelated ways, and the process of freezing has been much debated due to the lack of enough geological information. In this study I focus the cooling events that took place repeatedly during the late Quaternary. To better understand the processes that connect the continental environment to the global climate changes, study program must address questions that cut across traditional earth-science disciplines. Here I pay attention on the type of on-land vegetation, because flora controls the solar energy utility and contributes the physical condition of ground surface corresponding with changing water circulation. Precipitation is the most important factor controlling albedo in the high latitudinal areas surrounding the polar circles. The schematics in Figure 1 illustrate the relationship between albedo and snow-temperature feedback in arboreal-steppe regions. In order to elucidate the cyclic mechanism of continental glaciation and subsequent deglaciation, the dynamics of this feedback system must be understood. In this context, I interpret that Siberia has a key for unwrapping global climate mysteries. By analogy with the geological results, I address the variability of Siberian climate, and then investigate potential links between continental climate formation and the cause of freezing or thawing in the Northern Hemisphere. Figure 1 The utility of solar energy depends on the surface condition and vegetation. 海保 邦夫 部局:理学研究科 地学専攻・教授 専門分野:微古生物学、古海洋学 主な研究課題:生物の大量絶滅の原因とプロセスの解明 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:大量絶滅の原因とプロセスの解明 2) 研究目的と成果概要 堆積物の化学分析の結果から、大量絶滅の原因と環境激変の実態を明らかにする。数値計算・ 実験から、小天体衝突により形成される成層圏エアロゾルが、生物と地球環境に及ぼした影響を 明らかにする。 1. 暁新世/始新世境界(5500 万年前)の極端温暖化の最初期の環境変動を最も詳しく捕らえた。 底生有孔虫の絶滅事変の約 4000 年前に森林火災と火山活動と石灰質ナノプランクトン群集 の変化と炭素の大量放出があったことを、スペインのカラバカで掘削したボーリングコアを使い、 明らかにした。極端温暖化は海洋表層部と大気で始まり、約 4000 年かけて海洋深層に及んで 行ったことがわかった。重要な発見は、その極端温暖化の始まりを示す炭素の大量放出が 100 年以内の短期間に起こって停止したことである。 2. ペルム紀末の史上最大の大量絶滅と硫酸塩硫黄同位体比の減少が同時であることを、中国の ペルム紀/三畳紀境界の模式地とヨーロッパの2地点で明らかにし Chemical Geology に報 告した。また、ペルム紀末の大量絶滅前の 100 万年間に硫酸塩硫黄同位体比が増加したこと を明らかにした。これは、海洋深層に硫化水素が大量に蓄積したことを意味し、硫酸塩硫黄同 位体比の減少は硫化水素が海洋表層と大気に放出されたことを意味する 。この大量の硫化 水素の大気への放出が、さらなる温暖化を招き、大気中酸素を減少させたことを示した。これら の証拠を基に、超温暖化と大気中酸素減少がペルム紀末の大量絶滅の原因であったとする説 を提唱した。 3. ペルム紀グアダルピアン期/ローピンジアン期境界における大量絶滅と同時のアリルイソプレノ イド、ジベンゾチオフェンの濃集、硫酸塩硫黄同位体比の減少などの変動を初めて明らかにし た。これらは、海洋深層に硫化水素が蓄積し、海洋表層と大気に放出されたことを意味する 。 ペルム紀末の史上最大の大量絶滅と原因が似ていると考えられる。 4. 改善した 2D モデリングによるより精度のよい衝突シミュレーションを行ない、直径 10 km と 20 km の小惑星と 10 km の彗星の地球の海洋地殻への衝突により成層圏に上がる海水、地殻、 マントルの量をそれぞれ求め, International Journal of Impact Engineering に報告した。 5. 小天体衝突により形成される成層圏硫酸エアロゾルによる太陽光反射後の晴れ上がり時の紫 外線量増加現象を Geophysical Research Letters に報告した。 佐藤 源之 部局: 東北アジア研究センター、資源環境学研究分野 専門分野: 電波応用計測 主な研究課題:地中レーダ、合成開口レーダ 連絡先:E-mail:[email protected] 【研究報告】 1)研究タイトル:人道的地雷除去活動 2)研究目的と成果概要:研究目的と成果概要 従来から開発を進めてきた金属探知器と地中レーダ(GPR)を組み合わせたデュアルセンサである ALIS(エイリス)の実用化をめざした実証的研究を進めた。本年度は ALIS を VNA 搭載型とパルス GPR 搭載型の 2 種類について同時に進めることとした。ALIS(VNA 搭載型)は、現在考えられる GPR の最高性能を利用する装置である。これに対し、ALIS-PG(パルス GPR 搭載型)は小型軽量化による 汎用性をめざした装置である。 国際的な地雷技術評価機関である ITEP によるハンドヘルド型デュアルセンサの評価試験として計画 されたクロアチア・CROMAC のベンコバッツ・テストサイトにおいて9-10月に ALIS 評価試験を行な った。現地には ALIS 2 式、ALIS-PG 2 式を搬入した。最新型の ALIS-PG は重量が軽く、また実験 室における予備試験においても、通常の土壌環境においては ALIS より優れたイメージングが可能で あるため、現地試験でも ALIS-PG を使用することを考えた。現地到着後、ALIS-PG による予備実験を 行った結果、ALIS-PG が問題なく動作することが確認できたので、計測実験は ALIS-PG のみを使用 した。また、できる限り土壌の状態を把握した上で試験を行うため、土壌物性値の計測を行った。実 験に先だち、CROMAC の地雷除去作業員に対して2週をかけて ALIS の基本的な使用法を指導した。 2 週目には東北大学が設営したキャリブレーション・レーンにおいて、作業員が ALIS で検知したター ゲットを解釈した上で、実際の埋設物を教え、毎回、作業員の判断した理由を確認し、GPR における クラッタの表れ方に慣れる訓練を行った。この後10月22日より1週間、未知の埋設物を埋めたテスト レーンにおいて試験を実施した。 更に 2007 年 12 月から半年間の予定でクロアチア政府地雷除去機関(CROMAC)の参加にある活動 期間 CROMAC-CTDT によって、評価テストが行われることになった。本テストは CROMAC から在クロ アチア日本大使館に対して提出された要望に基づき、外務省、JST などの支援を受けて実施されるも のであり、ALIS は順調に運用を開始した。 孫 明宇 部局:学際科学国際高等研究センター、 (兼)流体科学研究所・学際衝撃波研究分野・助教授 専門分野:衝撃波工学、流体工学、数値流体力学 主な研究課題:衝撃波を含む混相流現象に関する研究 連絡先:E-mail:sun@ cir.tohoku.ac.jp [研究報告] 1) 研究タイトル: 火山噴火の直接シミュレーション 2) 研究目的と成果概要: 火山噴火現象を始め、レーザー誘起気泡及び衝撃波のような非定常現象は気泡の成長・崩壊過 程を含め、圧縮性が顕著な混相流である。圧縮性流体を対象とするとき、リーマン問題の解析に重 点があるため、この流れ場の数値解析には気泡の成長・崩壊などが関係する変形をいかに巧妙に リーマン解析に組み込むかは数値流体力学の分野での未解決の難関である。そのため、火山噴火 現象に関する直接数値解析も行われていない。本研究は、リーマン問題を考慮した精度の高いか つ効率の良い圧縮性二相流解析技術の開発を目標とする。流体工学にとって基礎的な知識を与え、 火山噴火の原理究明やレーザー誘起マイクロジェット発生装置の設計及び特性予測などに値する。 さらに、関連するいくつかの応用分野として、例えば、水中爆発、燃焼問題における高速燃料ジェッ トの発生及び混合問題などをあげることができる。本年度には、完全保存型かつリーマン問題を取 り組んだ界面解法の開発に成功した。 火山噴火の直接シミュレーション(赤:マグマ; 青:気体) パソコンで計算時間は約20分 今村 文彦 部局:工学研究科 災害制御研究センター・教授 専門分野: 津波工学 主な研究課題:津波現象の解明と災害軽減技術の開発 連絡先:E-mail:[email protected] [研究報告] 1) 研究タイトル:リアルタイム津波予測の検討 2) 研究目的と成果概要: 背景・目的: 昨年は、緊急地震速報の運用も始まり、リアルタイム地震情報が活用されるようになりつつあり ます。被害軽減に、このような迅速性のある情報の利用が期待される.リアルタイム地震データを 利用した津波予測の可能性について、最近の地震を例に検討した.リアルタイム地震情報を活用し た予測は、一般的に、迅速性を優先すれば限られた情報での予測であるため、信頼性(精度)が低 くなる。そのため、時間経過と伴にアップデートする津波予報システムが望まれる. 成果: 2006 年千島列島津波では東北太平洋沿岸全域に 0.5m の津波注意報が発表された。気象庁の量的 津波予報のようなデータベース検索による地域ブロック(予報区)ごとの津波予測に加えて、図-1 に示すように、地域ごとにより詳細な津波予測情報をリアルタイムで提供することが可能となった. 地震発生後,数十分で断層パラメータの詳細が決定されるため、より正確な数値解析が可能とな る.断層パラメータ決定後の再現計算も実施した.その結果,断層パラメータ決定後の計算結果は、 第一波の到達時間および波高において、検潮記録に近い値となった 震源速報値から相似則により断層パラメータを決定した断層モデルでは、到達時間が実際のもの より遅く、また波高が小さくなった.到達時間については、地震動解析によるモデルのほうが、断 層長が 1.4 倍も長く、その波源域が日本列 Case Case Case Case 島により近くまで延びているためと考え 平 均 : 0.21 0.20 0.14 られる.また、波高についても、地震動解 0 14 析によるモデルのほうが、すべり量が 1.3 倍も大きく設定されたこと、および断層サ イズが大きくなったことが影響し、相似則 による推定より波高が大きくなり、検潮記 ma 録とより一致するようになったと考えら れる 以上の成果により,土木学会東北支部技 術開発賞(平成 18 年5月)を受賞してい る.また, 博士課程 3 年生の柳澤英明く んが,マングローブの減災効果について日 0 0 0.50.51 0 0.5 01 1.5 11.5 1.5 0.50 0.51 11.51.5 00 0.50.51 1.51 本自然災害学会学術発表優秀賞(平成 19 図-1 東北地方の最大波高分布 年 9 月)を受賞している. Ⅲ. COE研究員 ― COE研究員一覧 ― 固体地球研究グループ 鈴木 由希,博士(理学) (地震火山ダイナミクス, 受入: 吉田 武義) 根本 克己,博士(学術) (地震火山ダイナミクス, 受入: 土屋 範芳) 王 建, 博士(理学) (地震火山ダイナミクス, 受入: 長谷川 昭)平成 19 年 6 月 2 日から 宮原 正明,博士(理学) (核マントルダイナミクス, 受入: 大谷 栄治) Konstantin Litasov, Ph. D (核マントルダイナミクス, 受入: 大谷 栄治)平成 19 年 12 月 4 日まで 長嶋 剣, 博士(理学) (核マントルダイナミクス(理工連携), 受入: 塚本勝男) 流体地球・惑星研究グループ 上原 裕樹,博士(理学) (気候変動ダイナミクス, 受入: 花輪 公雄)平成 19 年 12 月 31 日まで 石戸谷 重之,博士(理学)(気候変動ダイナミクス, 受入: 中澤 高清) 堂満 華子,博士(理学) (気候変動ダイナミクス, 受入: 尾田 太良) 山田 学,博士(理学) (太陽地球系ダイナミクス,受入: 岡野 章一) 地球進化史研究グループ 大庭 雅寛,博士(理学) (地球進化史,受入: 海保 邦夫) 菅原 大助,博士(理学) (地球進化史(理工連携),受入: 箕浦 幸治) 渡邉 隆広,博士(理学) (地球進化史,受入: 掛川 武)平成 19 年 4 月 1 日から 日本学術振興会 COE 枠 博士研究員 谷島 尚宏 (地震火山ダイナミクス, 指導: 長濱 裕幸) す ず き ゆ き 鈴木 由希 受入教員名:吉田 武義 研究グループ名:固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 噴火に際した(マグマ溜りからの)マグマ上昇の速度や様式は,噴火様式,噴火位置,噴火間隙,火山ガス 放出,地震といった地表付近での現象をコントロールする.そこで前者は後者の理解に不可欠である.この ような観点から,火山噴出物の物質科学的研究を行った.今年度は(2)の二つのテーマに取り組んだ. (2) 平成 19 年度研究活動の概要• 進捗状況 テーマ1:1火山複数噴火のマグマ上昇過程の系統的研究 噴火に際した上昇過程は,地殻構造と地層毎の密度,といった局所条件に影響されるので,火山毎,そし て山頂・山腹といった火口位置毎に特徴を有している可能性がある.そして上昇に左右される噴火様式•噴 火位置にも規則性がある可能性がある.このような観点から有珠を対象に,噴火に際した上昇の特徴を探 ると共に,山頂下での上昇と最終的な噴火位置の関わりも調べた.特にマグマ上昇の微分情報を抽出する 手法(鈴木,2006など)を駆使することで,噴火様式•位 置の分岐点を明らかにすることを試みた. その結果,1)噴火によらず山頂地下を短時間で上昇 の後 2km付近で減速する傾向(←地殻とマグマの密度 差減少),2)2km深までの速度は噴火位置によらず同じ で,速度から位置は予測できないこと,3)マグマ破砕に 先立ち,2kmより浅所にマグマが上昇して来る場合,山 頂噴火になる傾向,が明らかにされた(右図). テーマ 2:1 噴火を通じたマグマ上昇の進化 有珠 1977 年の噴火を対象に,4 度のプリニー式噴火を通じたマグマ上昇の進化,マグマ上昇速度と噴煙 柱高度の関係を議論した(中村氏らとの共同研究). 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 テーマ 1,2 共に,成果を学会で発表すると共に,論文準備中である(Suzuki and Nakamura と Nakamura et al.). テーマ 1 は,噴火時対応の向上にも貢献する研究へと今後発達するものと期待される.すなわち,過去 の噴火における情報を蓄積しておけば,噴火前のリアルタイム観測結果(マグマ位置,深度)と照合させるこ とで,噴火様式や噴火位置の予測が行っていける可能性がある. テーマ 1,2 の他に,榛名火山を対象にした,噴火に際したマグマ溜りでのマグマ挙動•マグマ供給系に関 する論文を出版した(Suzuki and Nakada,2007). (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. 2. Suzuki, Y., Gardner, J. E. and Larsen, J.F. Experimental constraints on syneruptive magma ascent related to the phreatomagmatic phase of the 2000 A.D. eruption of Usu volcano, Japan. Bull Volcanol., 69, 423-444, 2007 (Published online in 2006). Suzuki, Y. and Nakada, S. Remobilization of highly crystalline felsic magma by injection of mafic magma: Constraints from the middle 6th century eruption at Haruna volcano, Honshu, Japan. J. Pet., 48, 1543-1567, 2007. ISI 以外の査読付き論文 1. 鈴木由希,結晶作用から見た噴火時のマグマ上昇-最近の減圧実験による発展-. 火山,51, 373-391,2006. 【学会講演】 国内 1. 2. 3. 鈴木由希, 中村一輝,噴火に際したマグマ上昇と噴火位置の関係-有珠山 1977,2000 年噴火から の例-.日本火山学会秋季大会,C01, 島原,11 月 18 日, 2007. 鈴木由希, 中村一輝,噴火に際したマグマ上昇と噴火位置の関係-有珠山 1977,2000 年噴 火か らの例-.日本地球惑星科学連合 2007 年大会,V156-041, 東京,5 月 19-24 日,2007 中村一輝, 鈴木由希, 谷口宏充,軽石のマイクロライト組織から推定する有珠火山 1977 年プリ ニアン噴火におけるマグマの上昇過程. 日本地球惑星科学連合 2007 年大会,V157-011, 東京,5 月 19-24 日,2007. 国際 1. Suzuki, Y., Nakada, S., Remobilization of highly crystalline felsic magma by injection of mafic magma:Constraints from the middle 6th century eruption at Haruna volcano. Cities on volcanoes 5, 11-P-144, Shimabara, November19- November 23, 2007. 2. Suzuki, Y., Nakamura, K., Relationship between eruption place and syneruptive magma ascent -example from 2000 and 1977 eruptions of Usu volcano-. 21COE International Symposium 2007, VE-P03, Sendai, September 18- September 21, 2007. 3. Nakamura, K., Suzuki, Y., Taniguchi, H., Microlite texture of pumice from Usu 1977 Plinian eruption: Implication for magma ascent and degassing processes. 21COE International Symposium 2007, VE-P04, Sendai, September 18- September 21, 2007. ね も と かつみ 根本 克己 受入教員名:土屋 範芳 教授 研究グループ名: 個体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 地震発生メカニズムにおける岩石-水相互作用 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 • 昨年度に得た垂直応力下き裂の流動異方性に関する結果をまとめ、国内外の学会において 発表ならびに議論した。その結果、国外で開催された学会(Geothermal Resources Council 2007 Annual Meeting)に投稿した論文がベストペーパー賞を受賞した。 • 昨年度に引き続き、封圧下において流体流動をともなう模擬断層の摩擦すべり模擬実験を継 続実施し、実験データの蓄積を行った。ここでは、封圧 5 MPa、すべり速度 0.001 mm/s の条件 において定常的な流体供給を受ける模擬断層の摩擦すべり挙動ならびにすべりにともなう透 水性を評価している。また、実験後の試料すべり面に対する顕微鏡観察から推測された摩擦 熔融の発生可能性を、観察結果と既存の研究論文とにもとづいて検討した。その結果、すべ り面上の特定の領域(摩擦破損域)において摩擦熔融を生じる可能性を示唆する結果を得 た。 • 地殻構造運動により生じた花崗岩せん断帯(秋田県太平山複合花崗岩体)の路頭より採取し た岩石を使用して単一き裂含有試料を作製し、100 MPa までの封圧条件において透水試験を 実施した。 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 • 国内外における学会ならびに研究集会において得られた成果を発表し、参加した国際学会の 一つにおいて投稿した論文にてベストペーパー賞を受賞した。 • また、本COEプログラム主催の国際ワークショップ(5th International Workshop on WATER DYNAMICS)における実行委員として運営に参加するとともに、研究成果の発表・討論を行っ た。 (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Nemoto, K., Moriya, H., Niitsuma, H., and Tsuchiya, N. Mechanical and hydraulic coupling of injection-induced slip along pre-existing fractures. Geothermics, 2008. in press. ISI 以外の査読付き論文 1. Nemoto, K., Watanabe, N., Hirano, N., and Tsuchiya, N. Evaluation of flow anisotropy within a simulated shear fracture under stress conditions from shallow to deep reservoirs, Geothermal Resources Council Trans., 31, 301-306, 2007. その他 1. 2. 根本克己・渡邉則昭・平野伸夫・土屋範芳,岩石き裂における流動異方性,地震発生の素過程研 究集会,つくば,2 月 27-29 日,2008. 根本克己・土屋範芳,せん断すべり実験におけるすべり破損域の微細組織,地震発生の素過程研 究集会,東京,3 月 2-3 日,2007. 【学会講演】 国内 1. 根本克己,渡邉則昭,平野伸夫,土屋範芳 せん断すべりにともなうき裂内流動場の評価.2007 年度日本地熱学会学術講演会, P09, つくば,11 月 28-30 日, 2007. 国際 1. 2. Nemoto, K., Watanabe, N., and Tsuchiya, N. Evaluation of fluid flow field in single rock fracture during frictional sliding. 5th International Workshop on WATER DYNAMICS, Sendai, Sep. 25-27, 2007. Nemoto, K., Watanabe, N., Hirano, N., and Tsuchiya, N. Evaluation of flow anisotropy within a simulated shear fracture under stress conditions from shallow to deep reservoirs, Geothermal Resources Council 2007 Annual Meeting, Sparks (Reno), NV, USA, Sep. 31-Oct. 3, 2007. おう Jian Wang(王 けん 建) Advisors: Prof. Dapeng Zhao and Prof. Akira Hasegawa Research group:Solid Earth Research Group (Dynamics of Earthquakes and Volcanism Research Subgroup) Term of Assignment:June 2, 2007~March 31, 2008 【Research Activity】 (1)Research title/topic or purpose of your research Title: P-wave anisotropic tomography beneath Japan subduction zone So far many researchers have studied the heterogeneous structure of the crust and upper mantle under the Japan Islands with isotropic tomography method, which have greatly advanced our understanding of seismotectonics, magmatism and dynamics of this typical subduction zone (e.g., Zhao et al., 1992, 1994; Hasegawa et al., 2005). Some researchers have studied seismic anisotropy of the Japan subduction zone by using shear-wave splitting measurements. For example, Nakajima & Hasegawa (2004) showed the existence of strong anisotropy in the mantle wedge under NE Japan. However, anisotropic bodies may exist extensively in different portions of the subduction zone, such as the subducting slab, the mantle wedge, the ductile lower crust, and the brittle upper crust. This complexity makes it difficult to figure out exactly where and how the anisotropy originates from the shear-wave splitting measurements alone. Recently Ishise & Oda (2005) applied three-dimensional anisotropic tomography to first P-wave arrival times of local earthquakes in NE Japan by assuming P-wave azimuthal anisotropy with hexagonal symmetry axis. However, Ishise & Oda (2005) did not consider the well-established velocity discontinuities (such as the Conrad, the Moho, and the upper boundary of the subducting Pacific slab) in their model. We are modifying the tomographic method of Zhao et al. (1992, 1994) to invert for both 3-D velocity heterogeneity and anisotropy beneath the Japan Islands, which would result in a better understanding of the structure and dynamics of this region. (2) Outline/summary of your research activity in 2007 (a) I have studied seriously the tomographic method and computer program (TOMOG3D) of Zhao et al. (1992, 1994) since I came to Tohoku University in June 2007. This body-wave tomography method can adapt to a general velocity structure with a number of complexly shaped seismic velocity discontinuities. An efficient three-dimensional ray tracing algorithm which iteratively uses the pseudo-bending technique and Snell’s law is applied. The large and sparse system of observation equations is solved by using the LSQR algorithm. (b) I have derived the equations for P-wave anisotropy tomography by assuming P-wave azimuthal anisotropy with hexagonal symmetry axis, referring to the previous studies (e.g., Eberhart-Phillips & Henderson, 2004; Ishise & Oda, 2005). (c) I have collected a large number of P-arrival times from the seismic network (Hi-net) for the P-wave anisotropic tomography beneath Japan. (d) I am modifying the computer program (TOMOG3D) of Zhao et al. (1992, 1994) for determining 3-D P-wave anisotropic tomography under Japan. The travel-time inversion is parameterized with an isotropic component and two azimuthal anisotropic parameters for each grid node by assuming P-wave azimuthal anisotropy with hexagonal symmetry axis. Because of the trade-off between isotropic and anisotropic components, I plan to update the tomographic code to two versions. One is that the isotropic and anisotropic components are determined simultaneously by a joint inversion. The other one is that the isotropic and anisotropic components are determined successively by two steps of inversion. Because of the complexity of the scientific problem and the Fortran computer programs (nearly 100 subroutines and thousands of lines), this programming work would still need some time to complete. 【Result of your research activity in 2007】 (1) Summary of the results (a) I completed the derivation of equations for P-wave anisotropy tomography by assuming P-wave azimuthal anisotropy with hexagonal symmetry axis. (b) I completed the data collection (including the first P-arrival times and shear-wave splitting data) for P-wave anisotropic tomography. (c) I completed most parts of the computer programming for the anisotropic tomography. (2) Publications 【Scientific papers】 ISI registered books 1. Wang, J., Z. Ye, J. He. Three-dimensional mechanical modeling of large-scale crustal deformation in China constrained by the GPS velocity field. Tectonophysics, 446, 51-60, 2008. 【Presentation in meetings】 Domestic meetings 1. Wang, J., Z. Ye, J. He, Three-dimensional mechanical modeling of large-scale crustal deformation in China constrained by the GPS velocity field, The 21st Century COE (Earth Science) International Symposium, DE-P08, Sendai, Japan, September 18-21, 2007. おおうち と も ひろ 大内 智博 受入教員名: 中村 美千彦 研究グループ名: 固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 超臨界流体存在下の岩石中におけるクラックヒーリング:上部マントル条件下での実験的研究 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 地球内部における超臨界流体の移動及び分布状態は、物質移動・マグマ生成を支配するほか、岩石(特 にマントル構成岩)のレオロジー的性質を大きく変化させるため(Karato et al., 1986; Takei, 2002)、全地球ダ イナミクスを考える上で非常に重要であるほか、超臨界熱水を工学的に利用する上でも重要である。本研究 では、上部マントル条件下(マントルウェッジ)での本問題をモデルケースと位置づけた上で、上部マントル主 要構成物質であるかんらん岩中でのクラックヒーリングの素過程及び速度論について、実験的手法を主体と して検討した。 クラックヒーリングの素過程は、鉱物粒子の界面移動を必然的に伴う。そのため、界面移動の様子を“そ の場”で観察する手法がその素過程の解明には有効である。しかし上部マントル条件下の高圧実験におい てそれを行うのは困難である。そこで本研究では、これまでに開発してきた独自の実験手法(鉱物粒界に対 してトレーサーとなりうる元素を高圧実験の最中に試料外部から浸透させ、回収試料中のトレーサー元素の 分布を観察することで、粒界移動の様子を把握するといった新しい実験手法)を用いることによって、高圧下 におけるかんらん石粒子の界面移動を観察することに成功した。これにより、鉱物粒子の界面移動の理論 的解釈を、実験結果をもとにして進めることが可能となったため、意義は非常に大きいといえる。以上の成果 については既に学会において公表したほか、国際誌においても公表する予定である(現在投稿準備中)。 【研究成果】 (1)平成 19 年度の研究活動成果 本研究の内容は、本 COE プログラムにおける高圧岩石物性研究のみならず熱水科学において貢献でき るものである。これは、研究内容・成果を天然のクラックを地熱発電用井戸など人工流体移動経路の場合に 置き換えれば、本研究の結果は人工流体移動経路の寿命の見積もりにも応用できるため、工学的にも重要 であるためである。そのため、本研究を本 COE プログラムの理工連携にて行う意義は大きい。 そこで、熱水科学を専門とする環境科学研究科の土屋範芳教授の主催する、5th international workshop on Water Dynamics 理工連携セミナー巡検(秋田県小坂地方、2007 年 9 月)に主催者側として参加することによ り、理工連携による熱水科学研究を推進させた。 (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Ohuchi, T. and Nakamura, M. Grain growth in the system forsterite-diopside-water. Physics of the Earth and Planetary Interiors, 161, 281-304, 2007. 査読なし論文 1. 大内智博,中村美千彦,かんらん石-単斜輝石系における粒成長.月刊地球,印刷中,2008. 【学会講演】 国内 1. 大内智博,中村美千彦,ダナイトにおける粒界移動. 日本地球惑星科学連合 2007 年大会、I127-012, 東京,5 月 19-24 日,2007. 国際 1. Ohuchi, T. and Nakamura, M., Grain boundary migration in dunite, Dynamic Earth: its origin and future (the 21st century COE international symposium), ST-P15, Sendai, September 18-21, 2007. 2. Ohuchi, T. and Nakamura, M., Grain growth in the system forsterite-diopside-water, 5th international workshop on Water Dynamics, B-7, Sendai, September 25-27, September, 2007. みやはら まさあき 宮原 正明 受入教員名: 大谷 栄治 研究グループ名: 固体地球研究グループ(核マントルダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 Ⅰ 衝撃を受けたコンドライト隕石に生成する高圧鉱物の解析 Ⅱ 炭素質コンドライトに記録された水質変成履歴の解析 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 Ⅰ FEG-SEM 及びラマン分光法を用いてショックメルトベイン中の高圧鉱物の探索を行った.用いた試 料は Peace River (L6), Y-791384 (L6), Y-75100 (L6)及び ALH-78003 (H)隕石である.高圧鉱物の一 部を FIB 法で取り出し,それを TEM/STEM で観察・分析した(バイロイト大学(独),茨城大学及び東 北大学金属材料研究所との共同研究). Ⅱ 水質変成を受けた隕石(Cold Bokkeveld (CM)及び Tagish Lake (CI))中のコンドリュール内部とその 周囲に存在する細粒物質部分を FIB 法で取り出し,TEM/STEM でそれらの組織とそこに存在する変 質鉱物を明らかにした(九州大学超高圧電子顕微鏡室との共同研究). 【研究成果】 (1)平成 19 年度の研究活動成果 Ⅰ Peace River (L6)及び ALH-78003 (H)隕石のショックメルトベインから,Mg に富むワズレアイト-Fe に富むリングウーダイトの共生組織が見出された.ワズレアイトとリングウーダイトは等粒状であり,両 者の化学組成には大きな差があった(Fa 成分を基準とすると最大で 32 mol%).このような大きな組成 差を持つワズレアイト-リングウーダイト共生の報告は初めてである.衝撃により発生した高温・高圧 でオリビンが融解し,まず Mg に富むワズレアイトが晶出し,引き続いて Fe に富むリングウーダイトが 結晶化したと考えられる.(Mg, Fe)2SiO4 組成を持つデンドライト部分とその内部にワズレアイトが見出 されたことも融解したオリビンからワズレアイトとリングウーダイトが直接晶出したことを支持している. 融解したオリビンを起源とするオリビン高圧相の発見は世界で始めてのことである。 Ⅱ Cold Bokkeveld (CM)隕石のコンドリュール内部から Fe-蛇紋石と Mg に富む低結晶性ケイ酸塩鉱物 が見出された.後者は輝石を置換したもので,前者は輝石の結晶間隙に生成していた.これは水質 変成初期段階でコンドリュールが Fe に富む流体で変質し,引き続いて Mg に富む流体で変質したこと を示唆している.このような変質過程はコンドリュール周囲の細粒物質層でも認められ,コンドリュー ルと細粒物質層が同一環境で変質したことを意味している. (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI登録誌 1. 2. 3. 4. 5. 6. Miyahara M., Sakai T., Kobayashi Y., Ohtani E., Kondo T., Nagase T., Yoo J.-H., Nishijima M. and Vashaei Z., Application of FIB system to ultra-high pressure Earth science. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences. in print, 2008. Miyahara M. and Uehara S., The high-resolution elemental mapping of chlorite-vermiculite mixed-layer mineral by STEM-EDS. under review. Miyahara M., El Goresy A., Ohtani E., Nagase T., Nishijima M., Vashaei Z., Ferroir T., Gillet P., Dubrovinsky L. and Simionovici A. Ringwoodite and wadsleyite crystallized from individual olivine melts in porphyritic olivine chondrules entrained in shock–melt veins in the Peace River L6 chondrite, in preparation. Miyahara M., Uehara S., Ohtani E., Nagase T., Nishijima M., Vashaei Z. and Kitagawa R., The anatomy of altered chondrules and FGRs covering them in a CM chondrite by FIB-TEM/STEM. under review. Zheng G., Kuno A., Mahdi T.A., Evans D.J., Miyahara M., Takahashi Y., Matsuo M. and Shimizu H., Iron speciation and mineral characterization of contaminated sediments by coal mining drainage in Neath Canal, South Wales, United Kingdom. Geochemical Journal, 41, 463-474, 2007. Ohkawa, M., Miyahara, M., Ohta, E. and Hoshino, K. Silicon-substituted magnetite and accompanying iron oxides and hydroxides from the Kumano mine, Yamaguchi Prefecture, Japan: Reexamination of the so-called maghemite (γ-Fe2O3). Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 102, 182-193, 2007. 【学会講演】 国内 1. 小澤信,大谷栄治,鈴木昭夫,宮原正明.寺田健太郎,木村眞,衝撃を受けたコンドライトの温度・ 圧力履歴と衝突.日本鉱物科学会2007年度年会,G6-P03,東京大学,9月22-24日,2007. 2. 境毅,大谷栄治,寺崎英紀,宮原正明,西嶋雅彦,亀卦川卓美,平尾直久,佐多永吉,大石泰生, 初期地球マグマオーシャンと現在の核マントル境界における珪酸塩と溶解鉄の化学反応.日本鉱物 科学会2007年度年会,K1-11,東京大学,9月22-24日,2007. 3. 高井康宏,上原誠一郎,宮原正明,大分県若山鉱山の”garnierite”の微細組織. 日本鉱物科学会 2007年度年会,K8-P12,東京大学,9月22-24日,2007. 4. 宮原正明,地球深部研究へのFIB及びTEM法の適用.イオンビームを用いた電顕試料作成のセミナー, 東京大学,8月23日,2007(依頼講演). 5. 高井康宏,吉村考功,上原誠一郎,宮原正明,珪ニッケル鉱の微細組織‐大分県若山鉱山の珪ニッ ケル鉱.第51回粘土科学討論会,P11,北海道大学,9月12-14日,2007. 6. Miyahara M, Sakai T., Ohtani E., Kobayashi Y, Kamada S., Kondo T. and Nagase T., The FIB milling of LHDAC sample for TEM, EMPA and SEM analyses. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I128-P025, Makuhari, May 19-24, 2007. 7. Asanuma H., Ohtani E., Kondo T., Terasaki H., Miyahara M. and Kikegawa T., Melting curve of Fe-Si alloy up to core-mantle boundary pressure. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I128-011, Makuhari, May 19-24, 2007. 8. Sakai T., Ohtani E., Miyahara M. and Nishijima M., Kondo T. and Kikegawa T., Element partitioning between post-perovskite and ferropericlase and implication to the lowermost mantle structure. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I128-015, Makuhari, May 19-24, 2007. 9. Sawada N., Ohtani E., Kondo T., Terasaki H. and Miyahara M., Partitioning of Ni and Co between metallic iron and lower mantle minerals at high pressures. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I128-P019, Makuhari, May 19-24, 2007. 10. Kamada S., Ohtani E., Kondo T., Miyahara M., Sakai T., Kikegawa T. and Nishijima M., Partitioning of potassium between Fe-S melt and magma at high pressure and temperature. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I128-P021, Makuhari, May 19-24, 2007. 11. Ohtani E., Sakai T., Miyahara M., Terasaki H., Nishijima M. and Kikegawa T., Geochemical Signature of Inner Core fractionation and Plume Source Region at CMB. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I214-006, Makuhari, May 19-24, 2007. 12. 13. Shiraishi R., Ohtani E., Kanagawa K., Shimojuku A. and Miyahara M., The lattice preferred orientation of akimotoite MgSiO3. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, I214-P019, Makuhari, May 19-24, 2007. Ozawa S., Ohtani E., Suzuki A., Miyahara M., Terada K. and Kimura M., Shock events in the early solar system recorded in L6-chondrites: pressure-temperature conditions and its timing. The Japan Geoscience Union Meeting 2007, P136-029, Makuhari, May 19-24, 2007. 国際 1. Miyahara M., Uehara S., Ohtani E., Nagase T., Nishijima M., Vashaei Z. and Kitagawa R., The natomy of altered chondrules and FGRs covering them in a CM chondrite by FIB-TEM/STEM. 39th Lunar and Planetary Science Conference, League City, Texas, March 10-14, 2008, submitted. 2. Miyahara M, El Goresy A., Eiji Ohtani E., Ferroir T., Gillet P., Toshiro Nagase T., Nishijima M. and Vashaei Z., Wadsleyite and ringwoodite formation from melt induced by a shock event in Peace River L6 chondrite. AGU2007 Fall meeting, MR43B-1233, San Francisco, December 10–14, 2007. 3. Ozawa S., Ohtani E., Suzuki A., Miyahara M., Terada K. and Kimura M., Shock Metamorphism of L6 Chondrites Sahara 98222 and Yamato 74445: the P-T Conditions and the Shock age. AGU2007 Fall meeting, MR43B-1234, San Francisco, December 10–14, 2007. 4. Sakai T., Ohtani E., Miyahara M., Nishijima M., Terasaki H., Kondo T., Kikegawa T., Hirao N. and Ohishi, Y., Fe-Mg partitioning between perovskite, post-perovskite, and ferropericlase at the lowermost mantle. AGU2007 Fall meeting, MR31B-0365, San Francisco, December 10–14, 2007. 5. Kamada S., Sakai T., Ohtani E., Kondo T., Miyahara M., Nishijima M. and Kikegawa T., Partitioning of Potassium Between Fe-S and K-rich Silicate at High Temperature. AGU2007 Fall meeting, MR31B-0371 San Francisco, December 10–14, 2007. 6. Miyahara M., Sakai T., Ohtani E., Uehara S., El Goresy A., Kamada S., Kondo T., Nagase T., Nishijima M., Vashaei Z., Yoo J.H. and Kitagawa R., The application of a FIB-TEM/STEM work to the Earth and Planetary Science. The 21st century COE [Earth Science] international symposium, SD-P02, Sendai, September 18-21, 2007. 7. Miyahara M., Sakai T., Ohtani E., Kobayashi Y., Kamada S., Kondo T., El Goresy A., Nagase T., Yoo J.H., Nishijima M. and Vashaei Z., The application of FIB system to high-pressure Earth science. 7th high pressure mineral physics seminar, P1-29, Matsushima, May 8-12, 2007. 8. Miyahara M., Uehara S., Ohtani E., Nagase T. and Kitagawa R., The study of fine-grained interstice filling materials in chondrule and the fine-grained rim within Cold Bokkeveld chondrite by FIB-TEM/STEM. 70th annual meeting of the meteoritical society, #5020, Tucson, August 13-17, 2007. 9. El Goresy A., Miyajima N., Miyahara M., Ohtani E., Ferroir T., Gillet Ph., Chen M., Two contrasting nucleation and growth settings induced by dynamic high-pressure phase transitions of olivine to ringwoodite and wadsleyite in shocked L6-chondrites. 70th annual meeting of the meteoritical society, #5024, Tucson, August 13-17, 2007. リ タ ソ フ コ ン ス タ ン チ ン Litasov Konstantin Advisor:Prof. Eiji Ohtani Research group:Solid Earth Research Group(Core-mantle Dynamics Research Subgroup) Term of Assignment:April 1, 2007~March 31, 2008 【Research Activity】 Title: Influence of water and other volatiles on phase relation in the Earth’s mantle and deep water cycle. (a) Hydrogen solubility and water partitioning between olivine, wadsleyite, and ringwoodite. (b) Equation of state of ferropericlase, magnesite, hydrous olivine, and phase E. (c) Phase relations in carbonated basalt and peridotite. (d) Phase relations in peridotite and basalt with CO2 and Cl. (a) I continued work on water solubility in olivine, wadsleyite, and ringwoodite. The hydrogen solubility and hydrogen incorporation mechanism into (Mg,Fe)2SiO4 olivine have been studied at pressures of 9-15 GPa and temperatures of 1100-2000oC. The hydrogen solubility increases with pressure, but the temperature dependence is complex. The hydrogen solubility increases from 1100-1400oC and then decreases at 1400-2000oC. Maximum hydrogen solubility, equivalent to 6000 ppm H2O, was determined in olivine at 13.5 GPa and 1200-1400oC. At temperatures of 1800-2000oC the H2O contents of olivine is very low (150-400 ppm). H2O content of wadsleyite gradually decreases from about 2.1 wt.% at 1373 K to 0.1 wt.% at 2273 K. We have found complex dependence of the partition coefficient of H2O between olivine and wadsleyite from temperature. (b) I synthesized large single crystal phases of Al-and Fe-bearing Mg-perovskite, ferropericlase, hydrous olivine, phase E and superhydrous phase B. We performed high-pressure and high temperature Brillouin spectroscopic studies on equation of state of ferropericlase and phase E. This study is in progress for hydrous olivine, superhydrous phase B and Mg-perovskite. Using in situ X-ray diffraction technique at synchrotron radiation facility SPring-8, we obtained also P-V-T data for Al-Fe-bearing Mg-perovskite, magnesite, and Au-Pt-MgO mixture to calibrate equations of state for pressure standards for our high-pressure cells. We would like to use latter data for inter-laboratory comparisons. (c) I studied phase relations in carbonated peridotite and basalt simplified to CaO-MgO-Al2O3-SiO2-Na2O system. 5 wt.% CO2 was added as carbonates. I used multianvil apparatus with ultrahard WC second stage anvils to generate pressure up to 33 GPa. Preliminary data show that solidus temperature of carbonated basalt was lower than that of carbonated perdotite in studied pressure range (1400oC at 10 GPa and at 1650oC at 33 GPa for basalt and 1500oC at 10 GPa and 1800oC at 33 GPa for peridotite). I observed gradual increase of solidus temperature being consistent with lower pressure experiments at 10 GPa. I did not observe anomalies in solidus temperature for carbonated peridotite reported recently for pressure range 14-16 GPa. (d) I performed high-pressure experiments in CaO-MgO-Al2O3-SiO2 system with additions of CO2 and NaCl-KCl mixture in the systems close to peridotite and basalt in compositions. The PT ranges for these experiments were 1200-1800oC and 5-15 GPa. I have found high melting temperatures for chloride solid solution and no reactions between chloride and carbonatite melt (below melting temperature of chlorides). 【Result of your research activity in 2007】 1. We have found drastic shift of post-stishovite (stishovite to CaCl2 structure) phase boundary in Al-H-bearing SiO2 to lower pressure and observed transition in Al-stishovite at 25 GPa (instead of 50-60 GPa in Al-free system). We applied these data to explain unknown seismic anomalies in the uppermost lower mantle, which may be related to post-stishovite transition in subducted oceanic crust. We determined highest H2O concentrations in Al-stishovite up to date and have shown that it can accommodate up to 0.3 wt.% H2O at 20 GPa. 2. We studied systematically water solubility in Fe-free and Fe-bearing olivine, wadsleyite and ringwoodite and proposed precise map of water storage capacity of the upper mantle and transition zone. 3. We measured pressure-volume-temperature relations for superhydrous phase B and Fe-bearing phase D using synchrotron X-ray diffraction with a multianvil apparatus of SPring-8 facility and obtained parameters for the equation of state of these phases. Present EOSs enables to accurate estimate of the density of superhydrous phase B and phase D in pyrolitic composition in the deep mantle conditions. The density reduction of a model hydrated subducting slab (1 wt.% H2O) at the top of the lower mantle due to presence of superhydrous phase B/phase D would be 1.5-2.0%. This indicate that hydrated slab (>1 wt.% H2O) may be buoyant in the surrounding mantle rocks and does not penetrate to the deep lower mantle. 【Scientific papers】 ISI registered books 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. Litasov, K.D., Ohtani, E., Suzuki, A., Funakoshi, K., The compressibility of Fe- and Al-bearing phase D to 30 GPa, Phys. Chem. Miner., 34, 159-167, 2007. Lakshtanov, D.L., Litasov, K.D., Sinogeikin, S.V., Hellwig, H., Li, J., Ohtani, E., Bass, J., Effect of Al3+ and H+ on the elastic properties of stishovite, Amer. Mineral., 92, 1026-1030, 2007. Lakshtanov, D.L., Sinogeikin, S.V., Litasov, K.D., Prakapenka, V.B., Hellwig, H., Wang, J., Sanches-Valle, C., Perrillat, J.P., Chen, B., Somayazulu, M., Li, J., Ohtani, E., Bass, J.D., The post-stishovite phase transition in hydrous alumina-bearing SiO2 in the lower mantle of the Earth, Proc. Nat. Acad. Sci., 104, 13588-13590, 2007. Litasov, K.D., Ohtani, E., Kagi, H., Jacobsen, S.B., Ghosh, S., Temperature dependence and mechanism of hydrogen incorporation in olivine at 12.5-14.0 GPa, Geophys. Res. Lett., 34, L16314, doi:10.1029/2007GL030737, 2007. Litasov, K.D., Ohtani, E., Ghosh, S., Suzuki, A., Funakoshi, K., Thermal equation of state of superhydrous phase B to 27 GPa and 1373 K, Phys. Earth. Planet. Inter., 164, 142-160, 2007. Litasov, K.D., Kagi, H., Shatskiy, A.F., Ohtani, E., Lakshtanov, D.L., Bass J.D., Ito, E., High hydrogen solubility in Al-rich stishovite and water transport to the lower mantle, Earth Planet. Sci. Lett., 262, 620-634, 2007. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K.D., Suzuki, A., Sakamaki, T., Stability of carbonated basaltic melt at the base of the Earth’s upper mantle, Geophys. Res. Lett., 34, L22312, doi:10.1029/2007GL031349, 2007. Kudoh, Y., Kuribayashi, T., Litasov, K.D., Ohtani, E., Cation vacancies and possible hydrogen atom positions in Fe-bearing hydrous forsterite, Mg1.85Fe0.14Si0.99H0.06O4, synthesized at 13.5 GPa and 1400 °C, J. Mineral. Petrol. Sci., 102, 306-310, 2007. Litasov, K.D., Ohtani, E., Nishihara, Y., Suzuki, A., Funakoshi, K., Thermal equation of state of Fe- and Al-bearing phase D, J. Geophys. Res. B, 2008, in press. Litasov, K.D., Shatskiy, A., Katsura, T., Ohtani, E., 2007, Water solubility in forsterite at 8-14 GPa, Doklady Earth Sciences, 2008, in press. Papers without referee review(including bulletins/proceedings): 1. Litasov, K.D., Ohtani, E., Systematic study of hydrogen incorporation into Fe-bearing wadsleyite and water storage capacity of the transition zone, Proceedings of 5th International Workshop on Water Dynamics, Amer. Inst. Phys. Conf. Proceedings, 2007, in press. Books: 1. Litasov, K.D., Ohtani, E., Effect of water on the phase relations in the Earth’s mantle and deep water cycle, in “Advances in High-Pressure Mineralogy”, E. Ohtani ed., Geol. Soc. Amer. Spec. Paper, v.421, pp.115-156. doi: 10/1130/2007.2421(08), 2007. Domestic meetings 1. 2. 3. 4. Kudoh, Y., Kuribayashi, T., Litasov, K.D., Ohtani, E., Crystal structure of Fe-bearing hydrous forsterite and its possible hydrogen position. Abst. 2007 Japan Geoscience Union Meeting, Makuhari-Messe, Chiba, CD-edition, 2007. Litasov, K.D., Ohtani, E., Kagi, H., Hydrogen Incorporation into Olivine at 9-15 GPa and 1100-2000oC. Abst. 2007 Japan Geoscience Union Meeting, Makuhari-Messe, Chiba, CD-edition, 2007. Litasov K.D., Ohtani E., Shatskiy A., Pressure-temperature dependence of hydrogen solubility in Fe-free and Fe-bearing wadsleyite Abstract of 46th High Pressure Conference of Japan. Special Issue of Rew. High Pressure Sci. Tech., v.17, p.185, 2007. Shindou, S., Ohtani, E., Terasaki, H., Litasov, K.D., Permeability of aqueous fluid in pyrolite Abstract of 46th High Pressure Conference of Japan. Special Issue of Rew. High Pressure Sci. Tech., v.17, p.270, 2007. International meetings 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. Ohtani, E., Kudo, T., Litasov, K.D., Sano, A., Transport and distribution of water in transition zone and lower mantle, 7th High Pressure Mineral Physics Seminar, Programs and Abstracts, Matsushima, Japan, p.24, 2007. Kudoh, Y., Kuribayashi, T., Litasov, K.D., Ohtani, E., Crystal structure of Fe-bearing forsterite and its possible hydrogen positions, 7th High Pressure Mineral Physics Seminar, Programs and Abstracts, Matsushima, Japan, p.138, 2007. Shindou, S., Ohtani, E., Terasaki, H., Litasov, K.D., Permeability of aqueous fluid in pyrolite, 7th High Pressure Mineral Physics Seminar, Programs and Abstracts, Matsushima, Japan, p.152, 2007. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K.D., Suzuki, A., Terasaki, H., Phase relations in carbonated peridotite to 20 GPa, 7th High Pressure Mineral Physics Seminar, Programs and Abstracts, Matsushima, Japan, p.158-159, 2007. Litasov K.D., Ohtani E., Suzuki, A., Funakoshi, K., In situ X-ray diffraction study of influence of water on olivine-wadsleyite transition, 7th High Pressure Mineral Physics Seminar, Programs and Abstracts, Matsushima, Japan, p.52-53, 2007. Sanchez-Valle C., Litasov K., Othani E., Bass J.D., Sound velocities and single-crystal elastic properties of DHMS phase E to high pressure, Abst. Frontiers in Mineral Sciences Meeting, Cambridge, UK, 2007. Sanchez-Valle C., Litasov K., Othani E., Bass J.D., Effect of Al3+ on the elastic properties of ferropericlase at high pressure, 16th Annual V.M. Goldschmidt conference, Copenhagen, Denmark, A873. 2007. Litasov K.D., Ohtani E., Suzuki, A., Funakoshi, K., Effect of superhydrous phase B and phase D on density of hydrated slabs in the deep mantle, Abst. IUGG Perugia, Italy, 2007. Litasov K.D., Shatskiy A., Ohtani E., Katsura T. Systematic study of hydrogen solubility in Fe-free wadsleyite: Implication to water storage capacity of the transition zone, 21th Century COE Int. Symp. “Dynamic Earth, Its origin and Future”, Sendai, Japan, 2007. Ghosh S., Suzuki A., Ohtani E., Litasov K.D., Terasaki H., Sakamaki T., Ozawa S., Shibazaki Y., and Funakoshi, K., Experimental determination of post-spinel transition in Mg2SiO4-H2O system using in situ X-ray diffractometry, 21th Century COE Int. Symp. “Dynamic Earth, Its origin and Future”, Sendai, Japan, 2007. Litasov K.D., Ohtani E, Systematic study of hydrogen incorporation into Fe-bearing wadsleyite and water storage capacity of the transition zone, Abstracts of 5th International Workshop on Water Dynamics, Sendai, Japan, 2007. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K.D., Suzuki, A., Sakamaki, T., Density of carbonated magmas and stability of carbonatite and kimberlite at the Earth’s upper mantle and transition zone, Eos Trans. AGU, 88 (52), Fall Meet. Suppl., Abstract DI33A-1123, 2007. Wang J., Lakshanov D.L., Litasov K.D., Morgenstern1 M., Ohtani E., Bass J.D. Single-crystal elastic properties of hydrous olivine Eos Trans. AGU, 88 (52), Fall Meet. Suppl., Abstract DI33A-1123 MR31A-0140, 2007. Kudoh, Y., Kuribayashi, T., Litasov, K.D., Ohtani, E., Cation vacancies and possible hydrogen atom positions in Fe-bearing hydrous forsterite AGU, 88 (52), Fall Meet. Suppl., Abstract MR31A-0141, 2007. ながしま けん 長嶋 剣 受入教員名: 塚本 勝男 研究グループ名: 固体地球研究グループ(核マントルダイナミクス) 在任期間: 平成 18 年 5 月 15 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 工学連携研究として「浮遊実験によるコンドリュール形成メカニズムの解明」というテーマにより宇宙 工学,宇宙実験分野に対して貢献すること. (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 ガスジェット浮遊炉を用いたシリケイトメルトの結晶化実験により,ガラス化のための臨界冷却速度の 組成依存性を求めた.このデータを元にコンドリュール形成環境の考察,ならびにフォルステライトメルト -結晶間の界面張力の推定を行った. 【研究成果】 (1)平成 19 年度の研究活動成果 1. 浮遊メルト急冷法によるガラスの作製 浮遊環境では接触部からの不均質核形成が抑制されるため,結晶化が非常に困難である.これを逆手 にとり,通常の方法では作製が困難な組成の珪酸塩ガラスを浮遊メルト急冷法により作成した.浮遊メルト 急冷法でガラスを得る場合は、容器を用いたガラス作製に比べて 1/1000 以下の冷却速度で容易に得られ ることがわかった.この成果は国際誌に投稿した (Nagashima et al., revised). 2. フォルステライトメルトとフォルステライト結晶との界面張力測定 浮遊環境では均質核形成に非常に近い結晶化現象が起こるため,どのような温度・タイムスケールで核 形成が起こるのかを求めるには最適である.そこで,北大低温研・田中今日子氏らとの共同研究により, 珪酸塩メルト結晶化シミュレーションを行うことでフォルステライトメルトとフォルステライト結晶との界面張 力を~600 mJ/m2 と求めた.この手法や結果はただちに惑星科学や岩石学等へ応用可能であるため,国際 誌に投稿しアクセプトされた (Tanaka et al., in press). 3. 隕石包有物、コンドリュールの形成条件を探る 隕石は大きくわけてコンドリュールとマトリックスからなっている.まずは,隕石中に含まれる mm サイズ の珪酸塩結晶球であるコンドリュールの再現実験を行った.コンドリュール形成環境は宇宙空間であるた め浮遊実験は最適な模擬実験となる.その結果,浮遊した珪酸塩メルトは著しく結晶化が抑制されるため に冷却に伴いほぼガラス化してしまうこと,結晶化するには周辺にあったダスト微粒子との衝突が不可欠 であることがわかった (Nagashima, Tsukamoto, Satoh, Yamamoto, Nakamoto, Why do pyroxene chondrules crystallized in space?, to be submitted to Science). また,この結果はガラスコンドリュールが大量生産された後に再加熱されることでコンドリュールが結晶 化している可能性も示している.そこでガラス再加熱実験を行うことで,ガラス再加熱コンドリュールを作製 した (Nagashima et al., in preparation). 特徴的な結晶組織を持つバードオリビンコンドリュールの結晶組織の形成条件を調べるための共同研 究として,学習院大・横山悦郎氏らが3次元フェーズ・フィールドモデルによる結晶組織形成シミュレーショ ンを行いバードオリビンコンドリュールの形成条件を求めた (Yokoyama, Irisawa, Nagashima, Tsukamoto, Formation of rims structure on a chondrule melt droplet during cooling using a three dimensional phase field model., in preparation). 4. 隕石包有物、マトリックスの形成条件を探る 本学博士課程・野澤純氏との共同研究により,隕石マトリックス表面の FE-SEM,AFM 観察を行い,分 子のパターンである単分子ステップを初めて観察することに成功した.また,その成長パターンから急冷に 伴う気相成長によってマトリックスが形成したことを示した (Nozawa et al., submitted). また,本学多元研・小畠秀和氏との共同研究により,このような超高過飽和環境からの凝縮実験でマト リックス類似組織を作り出すことに成功した (Kobatake et al., revised). 5. 隕石包有物、マグネタイトコロイドから隕石母天体の環境を探る 本学博士課程・野澤純氏との共同研究により,水質変成を受けた隕石中からマグネタイトコロイド結晶を 発見した.これらは人工的に作製不可能な特徴をいくつも持っており,これらの解析によりフォトニック結晶 として期待されるコロイド結晶作製の制御に役立つことが期待できる (Nozawa, Tsukamoto, Enckevort, Kimura, Satoh, Nagashima, Magnetite colloidal crystals formed in the early solar system 4.6 billion years ago., to be submitted to Nature). (2)業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. 2. 3. Tanaka, K. K., Yamamoto, T., Nagashima, K., Tsukamoto, K., A new method of evaluation of melt/crystal interfacial energy and activation energy of diffusion. Journal of Crystal Growth (in press). Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tsukamoto, K., Tanaka, K. K., Kobatake, H., Critical cooling rates for glass formation in the Mg2SiO4-MgSiO3 chondrule melts during levitation. Journal of Mineralogical and Petrological Science (revised). Kobatake, H., Tsukamoto, K., Nozawa, J., Nagashima, K., Satoh, H., Dold, P., Crystallization of cosmic dust from highly supersaturated silicate vapor in a rapidly cooled environment. Icarus (revised). 査読なし論文 1. 2. 3. 4. Moriuchi, Y., Nagashima, K., Tsukamoto, K., Formation of amorphous forsterite particles by levitating Mg2SiO4 melt droplets. Geochimica et Cosmochimica Acta, 71(15), A689-A689 Suppl., 2007. Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tanaka, K. K., Tsukamoto, K., In-situ observation of radial pyroxene chondrule formation from levitated melts. Geochimica et Cosmochimica Acta, 71(15), A699-A699 Suppl., 2007. Nozawa, J., Tsukamoto, K., Satoh, H., Nagashima, K., Yamada, K., 3-D colloidal crystals of magnetite in the Tagish Lake carbonaceous chondrite. Geochimica et Cosmochimica Acta, 71(15), A726-A726 Suppl., 2007. Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tsukamoto, K., Nozawa, J., Tanaka, K. K., Reproduction of chondrules from levitated melts. EASTEC Symposium 2007 “Dynamic Earth –its origin and future–“, 25-28, 2007. その他 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. Moriuchi, Y., Nagashima, K., Tsukamoto, K., Amorphous forsterite particles formed from levitated melts. Abstract of Frontier of Crystal Growth Science, 34-35, 2007. Nagashima, K., Moriuchi, Y., Satoh, H., Tsukamoto, K., Reproduction of meteoritic silicate spherules from levitated melts. Abstract of Frontier of Crystal Growth Science, 36-37, 2007. Nozawa, J., Tsukamoto, K., Satoh, H., Nagashima, K., Yamada, K., Magnetite colloidal crystals in the meteorite. Abstract of Frontier of Crystal Growth Science, 39-40, 2007. 野澤純, 小畠秀和, 山田淳也, 佐藤久夫, 長嶋剣, 塚本勝男, 表面観察によるマトリックスオ リビンの成長メカニズムの解明. 科研費特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会集録, 85-90, 2007. 森内善伸, 長嶋剣, 塚本勝男, 浮遊メルト急冷法によるアモルファスフォルステライト形成, 科研費特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会集録, 91-93, 2007. 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, コスミックダストのコンドリュール形成に関する役割. 科研費 特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会集録, 94-97, 2007. 田中今日子, 山本哲生, 長嶋剣, 液滴からの結晶化の理論:浮遊法実験との比較, 科研費特定 「系外惑星」ダスト班第三回研究会集録, 98-106, 2007. 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, 浮遊メルト結晶化実験によるコンドリュール形成環境の検討. 科研費特定「系外惑星」ダスト班第四回研究会集録(印刷中). 長嶋剣, The 15th International Conference in Crystal Growth 報告,7.結晶評価・その場 観察. 日本結晶成長学会誌, 34, 57-57, 2007(国際会議報告). 【学会講演】 国内 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, コスミックダストのコンドリュール形成に関する役割. 科研費 特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会, 北海道, 3 月 1-3 日, 2007. 野澤純, 小畠秀和, 山田淳也, 佐藤久夫, 長嶋剣, 塚本勝男, 表面観察によるマトリックスオ リビンの成長メカニズムの解明. 科研費特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会, 北海道, 3 月 1-3 日, 2007. 森内善伸, 長嶋剣, 塚本勝男, 浮遊メルト急冷法によるアモルファスフォルステライト形成. 科研費特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会, 北海道, 3 月 1-3 日, 2007. 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, コスミックダストのコンドリュール形成に関する役割. 科研費 特定「系外惑星」ダスト班第三回研究会, 北海道, 3 月 1-3 日, 2007. 田中今日子, 山本哲生, 長嶋剣, 液滴からの結晶化の理論:浮遊法実験との比較. 科研費特定 「系外惑星」ダスト班第三回研究会, 北海道, 3 月 1-3 日, 2007. 長嶋剣, 塚本勝男, どのようにしてコンドリュールは結晶化したのか?日本地球惑星科学連合 2007 年大会, P137-009, 千葉, 5 月 19-24 日, 2007. 田中今日子, 山本哲生, 長嶋剣, 液滴の結晶化モデル:超過冷却液滴からのコンドリュール形成. 日本地球惑星科学連合 2007 年大会, P137-010, 千葉, 5 月 19-24 日, 2007. 長嶋剣, 小宮敦樹, 小畠秀和, 野澤純, 古代コンクリートと惑星科学. 東北大学若手研究者萌 芽育成研究プログラム(ERYS)研究成果発表会, 宮城, 7 月 20 日, 2007 (poster). 森内善伸, 長嶋剣, 田中今日子, 塚本勝男, 浮遊したメルトからのアモルファスフォルステラ イト形成. 日本惑星科学会 2007 年秋季講演会, 318, 高知, 9 月 25-27 日, 2007. 長嶋剣, 森内善伸, 田中今日子, 塚本勝男, 浮遊したコンドリュールメルトの結晶化その場観 察. 日本惑星科学会 2007 年秋季講演会, 319, 高知, 9 月 25-27 日, 2007. 長嶋剣, 塚本勝男, 46 億年昔のメルト成長. 第 32 回結晶成長討論会, 北海道, 11 月 3-4 日, 2007 (poster). 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, 田中今日子, 山本哲夫, 横山悦郎, 微粒子付着による浮遊した 珪酸塩メルトの核形成制御. 第 37 回結晶成長国内会議, 06aC06, 北海道, 11 月 5-7 日, 2007. 13. 14. 15. 16. 17. 田中今日子, 山本哲生, 長嶋剣, 塚本勝男, 浮遊法による液体-結晶間の界面エネルギーと拡 散の活性化エネルギーの導出. 第 37 回結晶成長国内会議, 07aC07, 北海道, 11 月 5-7 日, 2007. 小澤良太郎, 塚本勝男, 長嶋剣, 朝倉悦郎, コンクリートの微小体積変化の測定. 第 37 回結晶 成長国内会議, 06PS22, 北海道, 11 月 5-7 日, 2007 (poster). 山田淳也, 長嶋剣, 塚本勝男, フォルステライトの凝縮係数測定. 第 37 回結晶成長国内会議, 06PS23, 北海道, 11 月 5-7 日, 2007 (poster). 長嶋剣, 森内善伸, 塚本勝男, 浮遊メルト結晶化実験によるコンドリュール形成環境の検討. 科研費特定「系外惑星」ダスト班第四回研究会, 北海道, 1 月 10-12 日, 2008. 長嶋剣, 非接触浮遊法による隕石組織の再現. 「複雑系におけるソフトマターの結晶成長」研究 会, 札幌(北海道大学), 2 月 21–22 日, 2008(招待講演). 国際 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. Nagashima, K., Moriuchi, Y., Satoh, H., Tsukamoto, K., Reproduction of Meteoritic Silicate Spherules from Levitated Melts. Frontier of Crystal Growth Science, Miyagi, Japan, February 20-22, 2007 (poster). Nozawa, J., Tsukamoto, K., Satoh, H., Nagashima, K., Yamada, K., Magnetite Colloidal Crystals in the Meteorite. Frontier of Crystal Growth Science, Miyagi, Japan, February 20-22, 2007 (poster). Moriuchi, Y., Nagashima, K., Tsukamoto, K., Amorphous Fosterite Particles Formed from Levitated Melts. Frontier of Crystal Growth Science, Miyagi, Japan, February 20-22, 2007 (poster). Nagashima, K., Tsukamoto, K., Yokoyama, E., Effect of the particle seeding on the nucleation of silicate melt droplets during levitation. The 15th International Conference on Crystal Growth, 1157, Utah, U.S.A., August 12-17, 2007. Nozawa, J., Tsukamoto, K., Satoh, H., Yamada, K., Nagashima, K., Colloidal Crystals Formed 4.6 Billion Years Ago. The 15th International Conference on Crystal Growth, 1043, Utah, U.S.A., August 12-17, 2007. Y. Moriuchi, Nagashima, K., Tanaka, K. K., Tsukamoto, K., Formation of amorphous forsterite particles by levitating Mg2SiO4 melt droplets. Goldschmidt 2007, A689, Cologne, Germany, August 19-24, 2007 (poster). Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tanaka, K. K., Tsukamoto, K., In-situ observation of radial pyroxene chondrule formation from levitated melts. Goldschmidt 2007, A699, Cologne, Germany, August 19-24, 2007 (poster). Nozawa, J., Tsukamoto, K., Satoh, H., Nagashima, K., Yamada, K., 3-D colloidal crystals of magnetite in the Tagish Lake carbonaceous chondrite. Goldschmidt 2007, A726, Cologne, Germany, August 19-24, 2007 (poster). Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tsukamoto, K., Nozawa, J., Tanaka, K. K., Reproduction of chondrules from levitated melts. EASTEC Symposium 2007 “Dynamic Earth –its origin and future-“, SD-P05, Miyagi, Japan, September 18-21, 2007 (poster). Nagashima, K., Moriuchi, Y., Tsukamoto, K., Tanaka, K. K., Reproduction of meteoritic silicate spherules from hypercooled levitated melts. Third International Symposium on Physical Sciences in Space, P-46, Nara, Japan, October 22-26, 2007 (poster). うえはら ひ ろ き 上原 裕樹 受入教員名: 花輪 公雄 研究グループ名:気候変動研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 19 年 12 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 (a) 高密度投下式水深水温計 (XBT) を用いた北太平洋亜熱帯循環系における海洋熱輸送量の評 価 (b) 黒潮流軸位置・流速変動に対する中規模渦の影響の考察 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 (a) 昨年度に引き続き, 北太平洋に展開されている高密度 XBT の観測資料を用い, 海洋の熱・淡水 輸送量の評価を行った. 成果を論文としてまとめ, 国際誌 Journal of Geophysical Research に受理され た (Uehara, H., et al. 2007, Estimation of heat and freshwater transports in the North Pacific using high resolution XBT data, J. Geophys. Res., in press). (b) 黒潮流軸位置・流速変動に対する中規模渦の影響の考察 昨年度に引き続き, 東京-小笠原間のフェリーに搭載された音波式流向流速計(ADCP)観測資料と衛 星海面高度計観測資料を用い, 日本南岸における黒潮流軸の位置とそこでの流速の変動と両者の関 係について調べた. また, それらの変動に対し, 黒潮再循環域を移動する中規模渦が, どのような影響 を与えるかを考察した. それらをまとめた結果を, 7 月にイタリアにて開催された国際測地学地球物理学 連合大会および 11 月に仙台にて開催された東北大学 21 世紀 COE シンポジウムにおいてポスター発表 した. 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 (a) 北太平洋における高密度 XBT 観測資料を用い, 海洋熱輸送量を評価した結果, 従来行われてき た評価方法に比べ(誤差 0.3 pW (1015 ワット) 以上), 誤差をより小さくすることが出来た(例えば, 測線 PX-37/40(サンフランシスコ-ハワイ-日本, 平均緯度 29ºN)を横切る熱輸送量は, 0.32 ± 0.11 pW と計算された). また, XBT 観測資料から淡水輸送量を評価したのは, 私の知る限り, 本 研究が初めてである. これらの成果をまとめた論文は, Journal of Geophysical Research 誌に受理 され, 現在印刷中となっている. (b) フェリー搭載の ADCP 観測資料の解析から, 黒潮流軸(最強流部分)の位置が南にシフトすると, よ り大きな流速が観測されることが分かった. このシフトは黒潮小蛇行現象に対応していた. 衛星海 面高度計資料の解析から, ADCP で得られた, 「小蛇行時により流速が大きい」という現象が, 日本 南岸全体に渡り, 生じていることが分かった. また, この現象は, 黒潮の南に存在する数百 km 程 度の中規模渦が黒潮に影響を与えたことで生ずること, 特に, 四国沖の再循環域を時計回りに移 動する高気圧性渦の役割が大きいことが分かった. この成果をまとめ, 7 月(国際測地学地球物理 学連合大会, イタリア)および 11 月(東北大学 21 世紀 COE シンポジウム, 仙台)に開催された国際 シ ン ポ ジ ウ ム に て ポ ス タ ー 発 表 を 行 っ た . ま た , 内 容 を 論 文 と し て ま と め , 10 月 に 国 際 誌 Geophysical Research Letters に投稿した. 査読の結果は, 残念ながら不受理であったが, 主な理 由の 1 つが, 規制された文字数 (4 ページ分に相当)では, 論文の内容が表現することが出来てい ないことであったので, 現在, Journal of Oceanography 誌に投稿するため, 原稿を再構成・執筆中 である. (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, K. Hanawa, and D. Roemmich, Estimation of heat and freshwater transports in the North Pacific using high resolution XBT data. Journal of Geophysical Research, in press. 査読なし論文 1. Uehara, H., T. Yasuda, and K. Hanawa, Feasibility of heat transport estimation with the high resolution XBT data. Eos Trans. AGU, 87, West. Pac. Geophys. Meet. Suppl., Abstract OS41A-0135, 2006. 2. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, and K. Hanawa, Velocity and position variations of the Kuroshio axis south of Japan influenced by mesoscale eddies in the Kuroshio recirculation region. Eos Trans. AGU, 87, Ocean Sci. Meet. Suppl., Abstract OS45G-04, 2006. 【学会講演】 国内 1. 上原裕樹, 安田珠幾, 石川一郎・花輪公雄, 数値モデルを用いた高密度 XBT 観測による熱輸送量評 価スキームの検証 (III). 2007 年春季海洋学会, 118, 東京, 2007 年 3 月. 国際 1. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, and K. Hanawa, Velocity and position variations of the Kuroshio axis south of Japan influenced by mesoscale eddies in the Kuroshio recirculation region. International Union of Geodesy and Geophysics General Assembly 2007, PS008-5, Perugia, July 2-13, 2007. 2. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, and K. Hanawa, Velocity and position variations of the Kuroshio axis south of Japan influenced by mesoscale eddies in the Kuroshio recirculation region. EASTEC symposium 2007, CC-P18, Sendai, September 18-21, 2007. い し と や しげゆき 石戸谷 重之 受入教員名:中澤 高清 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 大気中酸素濃度の高精度計測に基づく全球炭素循環の解明 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 人為起源の温室効果気体の中で気候変動への影響が最も大きい二酸化炭素(CO2)は、そのリザーバー である大気、海洋、陸上植物圏間の分配量が未だ十分な精度で求められたとは言えない状態にある。この 問題を解決し、将来の CO2 濃度予測の信頼性を高めることを目的として、大気中の酸素(O2 )濃度 (δ(O2/N2))の高精度観測を基にした CO2 循環の研究を平成 18 年度に引き続いて以下のように推進した。 ・ δ(O2/N2)と CO2 濃度の経年変化を用いて人為起源 CO2 収支とその年々変動を見積もるため、仙台市郊外、 岐阜県高山森林内サイト、国立環境研究所との共同研究による沖縄県波照間島、国立極地研究所との共 同研究による北極スバルバール諸島ニーオールスン基地および南極昭和基地における地上観測と、高度 2km から対流圏界面直下にわたる日本上空の航空機観測とを継続した。 ・ 三陸大気球観測所で 2007 年 6 月に行われた実験に参加し、高度 35km までの成層圏大気試料の採取に 成功した。三陸上空、南極昭和基地上空、および北極キルナ上空の成層圏において過去に採取した大気試 料のδ(O2/N2)、窒素と酸素の安定同位体比(δ15N、δ18O)の分析を進めるとともに、2002 年 3 月上旬に日本− スバルバール諸島間の下部成層圏において採取した大気試料のδ15N、δ18O、およびアルゴン窒素比 (δ(Ar/N2))を分析した。得られた結果について、成層圏における大気成分の重力分離(Ishidoya et al., 2006) と大気輸送との関係や、δ(O2/N2)および CO2 の安定炭素同位体比(δ13C)に対する重力分離の影響の観点 から解析し、国際誌に投稿した(Ishidoya et al., 2008a,b)。 ・国立極地研究所との共同研究によってδ(O2/N2)の高精度連続観測装置を実用化し、仙台市郊外において 1 年間の連続観測を行った。実用化した装置を昭和基地に設置し、2008 年 1 月よりδ(O2/N2)の高精度連続観 測を開始した。 【研究成果】 (2) 平成 19 年度の研究活動成果 仙台市郊外、北極ニーオールソン基地、南極昭和基地および日本上空において観測されたδ(O2/N2)とCO2 濃度の経年変化と、Marland et al. (2007)よって報告された化石燃料消費量の統計値とを用いて、1999年10 月から2007年11月の期間におけるCO2の大気残留量、陸上生物圏および海洋によるCO2吸収量を、それぞ れ4.1GtC/yr、0.6±0.5GtC/yrおよび2.7±0.5GtC/yrと見積もった。見積もられたCO2吸収量の年々変化から、 2002年夏−2003年冬にかけて発生したエルニーニョの期間において陸上植物圏が大気に対してCO2を放出 していたことが示唆された。 2002年3月上旬の北半球極渦内の高度14km以下の成層圏におけるδ15N、δ18O、およびδ(Ar/N2)は高度の 増加に伴う値の減少を示し、重力分離の効果が成層圏の最下部においても検出可能であることが示唆され た。重力分離の影響を補正した下部成層圏のδ(O2/N2) およびδ13CとCO2濃度との関係は、それらの値の対 流圏における経年変化から計算される関係と整合的であった。成層圏での重力分離の程度を表す指標とし て導入したδ値(0.5 x (δ15N of N2 + 0.5 x δ18O of O2))とΝ2Ο濃度との間には、Ν2Ο濃度によって関係が異なる 相関関係が見られ、それらの関係の変化を利用して成層圏を3つの領域に区分した。N2O>125 ppbおよび N2O<45 ppbの領域では、高度増加に伴うδ値の減少が極渦内のキルナ上空において最も大きく、極渦内で の空気塊の沈降の影響を強く反映していることが示唆された。45ppb <N2O<125 ppbの領域では他の領域に 比べて高度増加に対する重力分離の変化が小さく、鉛直方向に空気塊の混合が起きている可能性が示唆 された。 仙台市郊外におけるδ(O2/N2)の連続観測結果から得られたO2:CO2交換比より、冬期の日変化には化石燃 料消費の影響が、夏期の日変化には陸上植物活動による影響がそれぞれ支配的であることが明らかにな った。また春期のO2:CO2交換比には化石燃料消費や陸上植物活動では説明できない値が見られており、大 気−海洋間のO2フラックスによる影響が示唆された。 得られた結果の一部を2本の論文としてGeophysical Research Lettersに投稿し、共にacceptされた。国際学 会ではEASTEC symposium 2007および14th WMO/IAEA meeting of experts on carbon dioxide concentration and related tracer measurement techniquesにおいて発表を行った。国内学会では日本気象学会春期大会、日 本気象学会秋期大会で発表を行った。また第13回大気化学討論会での発表に共著者として貢献した。 (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Ishidoya, S., S. Sugawara, S. Morimoto, S. Aoki, and T. Nakazawa (2008), Gravitational separation of major atmospheric components of nitrogen and oxygen in the stratosphere, Geophys. Res. Lett., in press, doi:10.1029/2007GL030456, 2008. 2. Ishidoya, S., S. Morimoto, S. Sugawara, T. Watai, T. Machida, S. Aoki, T. Nakazawa, and T. Yamanouchi (2008), Gravitational separation suggested by O2/N2, d15N of N2, d18O of O2, Ar/N2 observed in the lowermost part of the stratosphere at northern middle and high latitudes in the early spring of 2002, Geophys. Res. Lett., in press, doi:10.1029/2007GL031526. 【学会講演】 国内 1. 2. 3. 後藤大輔、森本真司、石戸谷重之、小木昭典、青木周司、中澤高清、大気中 O2/N2 比高精度連続 観測装置の開発と大気観測への応用、第 13 回大気化学討論会、名古屋、2007 年 11 月 27−29 日 石戸谷重之、森本真司、菅原敏、渡井智則、町田敏暢、青木周司、中澤高清、山内恭、北極域航 空機観測計画(Arctic Airborne Measurement Program 2002, AAMP02)において観測された極渦 内下部成層圏における大気主要成分の重力分離、日本気象学会 2007 年度秋期大会,札幌,2007 年 10 月 14−16 日 石戸谷重之、菅原敏、森本真司、青木周司、中澤高清、成層圏において観測された大気主要成分 の重力分離、日本気象学会 2007 年度春期大会,東京,2007 年 5 月 13−16 日 国際 1. Ishidoya, S., S. Sugawara, S. Morimoto, S. Aoki and T. Nakazawa, Gravitational separation of major atmospheric components and secular trend of the O2/N2 ratio in the stratosphere, EASTEC symposium 2007 “Dynamic Earth –its origin and future-“, Sendai, Japan, September 18-21, 2007. 2. Morimoto, S., S. Ishidoya, D. Goto, A. Ogi, S. Aoki and T. Nakazawa, Development of a high precision continuous measurement system of the atmospheric O2/N2 ratio using a fuel cell oxygen analyzer, 14th WMO/IAEA meeting of experts on carbon dioxide concentration and related tracer measurement techniques, Helsinki, Finland, September 10-13, 2007. どうみつ はなこ 堂満 華子 受入教員名: 尾田 太良 研究グループ名: 流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 1)完新世の対馬海流流入にともなう日本海の現在型表層水環境の成立過程に関する研究 2)北西太平洋三陸沖 ODP Site 1150 の上部鮮新統から更新統の浮遊性有孔虫の生層序学的研究 3)ちきゅう下北沖試験掘削コアの微化石層序・酸素同位体層序学的研究 4)北西太平洋三陸沖における最終氷期最盛期以降の親潮変動に関する研究 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 本年度は,過去 100 万年間の古海洋環境データの抽出,気候変動の復元を行うための実験・解析・ 論文公表等,以下のような研究活動に従事した. 日本海南西部の海底コアから抽出された浮遊性有孔虫化石の群集解析にもとづく日本海の過去 1 万 年間の古環境変遷史を論文としてまとめるとともに,その成果の一部を国際会議で講演した.また北西 太平洋三陸沖 ODP Site 1150 の更新統から検出した浮遊性有孔虫化石の新たな基準面に関して論文 にとりまとめ,その成果の一部を国内研究集会で講演した.さらに,高知大学海洋コア総合研究センタ ーの共同利用研究として,ちきゅう下北沖試験掘削コアの底生有孔虫化石の殻の安定同位体比測定 を行い,その結果を微化石生層序・古地磁気層序の結果とあわせて国内研究集会で講演した. 北西太平洋における最終氷期以降の親潮変動に関する研究としては,鹿島沖コアに含まれる浮遊性 有孔虫の殻の加速器質量分析法にもとづく放射性炭素(AMS14C)年代を 9 層準で測定した.現在は, 鹿島沖・三陸沖両コアの浮遊性有孔虫群集データの時系列解析を行っている最中である. 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 日本海南西部の海底コアに含まれる浮遊性有孔虫化石の群集解析を行った結果,後氷期の日本海 に対馬海流が流入することによって日本海の現在型の表層水環境が成立した時期が約 6900 年前であ り,それ以前は対馬海流の勢力が弱かったために日本海南西部がリマン海流による寒冷水の影響を 被り続けたことを明らかにし,その成果を国際学術誌(Domitsu and Oda, in press; The Holocene)に公表 した. 北西太平洋三陸沖で掘削された ODP Leg 186 の Site 1150 について浮遊性有孔虫化石の生層序学的 検討を行った結果,北太平洋で適用可能な更新世の新たな年代基準面を 2 つ明らかにし,その成果は 国際誌学術誌で査読中である(Domitsu and Oda, in review; The Open Paleontology Journal). ちきゅう下北沖試験掘削コアについて古地磁気・微化石・酸素同位体層序学的検討を行った結果,同 コアが約 70 万年間の堆積年代をほぼ連続的に記録することを明らかにし,その成果の一部を国内研 究集会にて報告した. 西太平洋赤道域におけるラニーニャ期の海洋環境に対する浮遊性有孔虫の応答について,その成 果を共著者として国際学術誌に公表した(Yamasaki et al., in press; Marine Micropaleontology). 鹿島沖コアの浮遊性有孔虫殻の AMS14C 年代を 9 層準で測定した結果,同コアが最終氷期最盛期以 降の環境変化をほぼ連続的に記録し,千年スケールでの高解像度の解析が可能であることを示した. (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Domitsu, H. and Oda, M., Holocene influx of the Tsushima Current into the Japan Sea signaled by spatial and temporal changes in Neogloboquadrina incompta distribution. The Holocene, 18, 353-360, 2008. 2. Yamasaki, M., Sasaki, A., Oda, M. and Domitsu, H., Western equatorial Pacific planktic foraminiferal fluxes and assemblages during a La Niña year (1999). Mar. Micropaleontol., 66, 304-319, 2008. 3. Domitsu, H. and Oda, M., Pleistocene planktic foraminiferal events in the northwest Pacific near Japan. The Open Paleontology Journal (in review). ISI 以外の査読付き学術雑誌 1. Domitsu, H. and Oda, M., Pleistocene planktic foraminiferal events in the northwest Pacific near Japan. The Open Paleontol. Jour. (in review). 査読なし論文 1. 堂満華子,村上沙綾,曽野明洋,鹿納晴尚,鈴木紀毅,尾田太良,片山 肇,野田 篤,北海道 日高沖海域における表層堆積物中の浮遊性有孔虫群集(予察).地質調査総合センター速報 no. 39, 105−111,2007. 【学会講演】 国内 1. 2. 3. 堂満華子,下北コア研究グループ一同,下北沖 C9001C の年代モデルの予察結果.2007 年度古海 洋学シンポジウム,O26,東京大学海洋研究所,1 月 7-8 日,2008. 堂満華子,尾田太良,三陸沖 ODP Site 1150 の上部鮮新統から更新統の浮遊性有孔虫化石層序. MRC 研究発表会,プログラム番号未定,北海道大学,3 月 1-4 日,2008. 山崎 誠,佐々木亮,尾田太良,堂満華子,1999 年ラニーニャ期の西赤道太平洋での赤道湧昇と モンスーンに対する浮遊性有孔虫の応答.MRC 研究発表会,プログラム番号未定,北海道大学,3 月 1-4 日,2008. 国際 1. 2. 3. 4. 5. 6. Domitsu, H., Oda, M., Shiihara, M., Torii, M., Tsukawaki, S. and Kato, M.: Holocene surface-water evolution in the Japan Sea inferred from the spatiotemporal distribution of planktic foraminifera Neogloboquadrina incompta. 9th International Conference on Paleoceanography, Shanghai, China, September, 2007. Mori, Y., Domitsu, H., Oda, M. and Chiyonobu, S.: North Pacific paleoceanography: late Pliocene to Pleistocene planktic foraminiferal assemblages. 9th International Conference on Paleoceanography, Shanghai, China, September, 2007. Yamasaki, M., Sasaki, A., Oda, M. and Domitsu, H.: Planktic foraminiferal response to equatorial upwelling and monsoon in the western equatorial Pacific in 1999: evidence from the sediment trap experiment. 9th International Conference on Paleoceanography, Shanghai, China, September, 2007. Domitsu, H., Oda, M., Shiihara, M., Torii, M., Tsukawaki, S. and Kato, M.: The establishment of modern surface-water conditions in the Japan Sea during the Holocene. EASTEC symposium 2007: Dynamic Earth - its origin and future, Sendai, Japan, September, 2007. Mori, Y., Domitsu, H., Oda, M. and Chiyonobu, S.: Late Neogene planktic foraminiferal biostratigraphy in the central to western North Pacific. IX International Congress on Pacific Neogene Stratigraphy (9th RCPNS), Tsukuba, Japan, October, 2007. Sato, K., Oda, M., Chiyonobu, S., Kimoto, K., Domitsu, H. and Ingle, J.C.: Establishment of the western Pacific warm pool during the Pliocene based on planktic foraminiferal records. IX International Congress on Pacific Neogene Stratigraphy (9th RCPNS), Tsukuba, Japan, October, 2007. やまだ まなぶ 山田 学 受入教員名: 岡野 章一 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(太陽地球系ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的: ① 金星探査衛星搭載紫外線カメラの開発 ② 地球起源電離大気の循環の解明 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 2010 年打ち上げ予定である金星探査衛星 Planet-C ミッションは、異なる波長域での撮像を行う複 数のカメラを搭載することで、世界初の本格的惑星気象衛星として、地球の姉妹衛星とも呼ばれる金 星の大気のダイナミクスを明らかにすることを目標とする。搭載されるカメラの一つ、紫外イメージャー (Ultraviolet Imager: UVI)の開発を行いプロトフライトモデル(PFM)の完成に至った。開発の過程にお いて、a) 高エネルギーのプロトンによる CCD の性能低下をテストチャートを用いて評価する実験、b) フィルターホイール部に使用するモーターの真空環境下耐久試験、3) アウトガスコンタミによる光学 系透過率低下の実測評価試験を実施し、実機が良質なデータを取得するのに必要な性能を有すため に必要な対策を講じた。また、各カメラの制御・画像データ処理を扱うデジタルエレクトロニクス(DE)と UVI 間、および、地上系を含むミッション機器間の動作試験を行い、所定の機能を有することを確認し た。 極域電離圏イオン流出現象に関して、これまでに開発してきた経験モデルの公開に向けてのパッ ケージング化を終え、3次元での可視化コーディングの開発に着手し始めた。これは、イオン流出現象 の数値計算への取り込みを可能にし、またイオン流出現象の観測計画立案等を助けることで、地球起 源電離大気の動きを解明する研究を推進するものと考える。 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 Planet-C 搭載紫外イメージャーの開発を行い、プロトフライト品を完成させ、環境試験をクリアした。 (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Nakamura, M., Imamura, T., Ueno, M., Iwagami, N., Satoh, T., Watanabe, S., Taguchi, M., Takahashi, Y., Suzuki, M., Abe, T., Hashimoto, L. G., Sakanoi, T., Okano, S., Kasaba, Y., Yoshida, J., Yamada, M., Ishii, N., Yamada, T., Uemizu, K., Fukuhara, T. and Oyama, K., Planet-C: Venus Climate Orbiter mission of Japan, Planetary and Space Sci., 55, 1831-1842, 2007. 【学会講演】 国内 1. 2. 3. 4. 5. 山田学,渡部重十,岡野章一,山崎敦,今村剛,鈴木睦,中村正人,岩上直幹, H.U. Keller, W.J. Markiewicz, D. Titov, 「PLANET-C 搭載紫外線イメージャーの開発状況」, 第 8 回宇宙科学シン ポジウム, 宇宙科学研究本部, 2008 年 1 月. 山田学, 「電離圏から環電流へのイオン供給」, 合宿型研究集会「 GEMSIS workshop:実証型ジオ スペースモデリングに向けて」,犬山, 2007 年 12 月. 渡部重十, 山田学, 山崎敦, 今村剛, 鈴木睦, 中村正人, 上野宗孝, 岩上直幹, 佐藤康志, 小菅 勇司, 野口一秀, 江崎龍彦, 向井香織, 沼田利幸,「金星紫外カメラ(Ultraviolet Imager: UVI) の開発」, 第 51 回宇宙科学技術連合講演会, 札幌コンベンションセンター, 2007 年 10 月. 山田学, 渡部重十, 岡野章一, 山崎敦,今村剛, 鈴木睦, 中村正人, 岩上直幹, H.U.Keller, W.J.Markiewicz, D.Titov, 「金星気象衛星搭載紫外カメラの開発状況」, 地球電磁気・地球惑星 圏学会講演会, 名古屋大学野依記念学術交流館, 2007 年 9 月. 山 田 学 , 渡 部 重 十 , 岡 野 章 一 , 坂 野 井 健 , 今 村 剛 , 中 村 正 人 , 岩 上 直 幹 , H.U.Keller, W.J.Markiewicz, D.Titov,「CCD 放射線ダメージの補正手法と品質評価」, 日本地球惑星科学連合 2007 年大会, 千葉市幕張メッセ国際会議場, 2007 年 5 月. 国際 1. 2. Yamada, M., Watanabe, S., Okano, S., Yamazaki, A., Imamura, T., Suzuki, M., Nakamura, M., Iwagami, N., Develpment of the Ultraviolet Imager onboard Venus Climate Orbiter, EASTEC symposium 2007, Sendai, Japan, September, 2007. Suzuki, M., Imamura, T., Ueno, M., Yamada, M., Yamada., T., Hihara, H., Hamai, M., Ichikawa., S., Takeda, J., Senda, S., Nakamura, M., Onboard Data Processing Unit of Venus Climate Orbiter, Planet-C, AOGS 2007, Bangkok, Thailand, July 2007. おおば まさひろ 大庭 雅寛 受入教員名: 海保 邦夫(理学研究科 地学専攻) 研究グループ名:地球進化史研究グループ 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 絶滅事変期堆積物中のバイオマーカーの有機地球化学的分析による古環境変動解析 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 これまで地球上では生物の大量絶滅事変や多様性事変が幾度も起きたことが判明しているが、未 だに事変の詳しい様子について未解明のものが多い。そこで昨年度に引き続き、いくつかの事変期の 堆積物試料について有機地球化学的分析を行い、その原因や、生物や環境に与えた影響などについ て新たな知見を得ることを目指した。また近年新たに判明した有機地球化学的知見をもとに、これまで 得られた分析データを改めて見直し、追加分析やさらなる解析を行った。 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 スペイン北部アローブスにおいて採取されたセノマニアン期-チューロニアン期境界堆積岩の脂肪 族炭化水素画分からは、炭素数 14 から 35 の n-アルカンが検出されたほか、ホパノイド類が多量に検 出された。C30 ホパン及び C31 ホモホパンは、17(β)H, 21(β)H の立体異性体が卓越しており、さらに C31 ホモホパンの 22S/(22S+22R)も平均 0.13 であったことから、堆積物中の有機物は、石油成因論的に未 熟成であることが判明した。またホパン類とほぼ同量の各種ホペン類が検出された。以上の結果は、赤 道大西洋の南米ギアナ沖 Demerara Rise で掘削された ODP Leg 207 C/T 境界層コア試料の分析結果 (Forster et al., 2004)と同様の傾向を示しており、したがってコンタミの混入による影響は無いことが確 認された。 抽出物の芳香族炭化水素画分からは、アリルイソプレノイド類やジベンゾチオフェンが検出された。 こ れ ら の 存 在 量 は 、 セ ノ マ ニ ア ン 期 末 に お け る 2 種 類 の 中 層 水 浮 遊 性 有 孔 虫 Rotaripora greenhornensis 及び Rotaripora cushmani のそれぞれの最終産出層準直後において短期間顕著に増 加している傾向が見られた。アリルイソプレノイド類の大部分は、有光域で絶対嫌気的環境でしか生息 できない緑色硫黄細菌のみが生合成する色素であるイソレニエレテン由来であると考えられ、またジベ ンゾチオフェンなどの芳香族チオフェン類の生成は、堆積場の硫黄(特に硫化水素)の濃度に依存する ことから、これらの有機物が多く含まれる堆積物は、その当時、海洋無酸素化事変(OAE)が発生してい たことを示していると考えられる。以上のことから、中層水浮遊性有孔虫の絶滅が、短期間の海洋無酸 素化事変によって引き起こされた可能性があることが示唆された。さらに、Rotaripora cushmani 最終産 出層準の上層約 2 m から C/T 境界直後にかけて、これらの有機物が長期間比較的豊富に存在してい ることが明らかになった。この期間は腕足類殻の炭素同位体比の正異常も確認されており、いわゆる OAE2の期間と一致していることが示された。 (2)業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Oba, M., Nakamura, M., Fukuda, Y., Katabuchi, M., Takahashi, S., Haikawa, M. and Kaiho, K. Benzohopanes and diaromatic 8(14)-secohopanoids in the Late Permian carbonates. Submitted to Organic Geochemistry. 2. Oba, M. and Sakata, S. Archaeal polar lipids in deep marine sediments from the Nankai Trough. Submitted to Organic Geochemistry. 3. Takahashi, S., Oba, M., Kaiho, K. and Yamakita, S. Panthalassic oceanic anoxia at the end of the Early Triassic: a cause of delay in the recovery of life after the end-Permian mass extinction. Submitted to Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology. 4. Oba, M., Kaiho, K., Okabe, T. and Lamolda, M.A. Short-term anoxia coinciding with Rotalipora extinctions during Cenomanian–Turonian transition in middle-neritic eastern North Atlantic inferred from organic compounds.(平成 19 年度中に投稿) 5. Takahashi, S., Kaiho, K., Oba, M. and Kakegawa, T. Weak photic zone euxinia at the end of the Permian in pelagic Panthalassa on the evidence of marine organic carbon isotope. (平成 19 年度中に投稿) 6. Katabuchi, M., Oba, M., Kaiho, K. Lamolda, M.A. End-Cenomanian oceanic anoxia coinciding with foraminiferal extinctions as recorded by organic compounds (Menoyo, northern Spain).(平成 19 年度中に 投稿) 【学会講演】 国内 1. 高橋聡,八尾昭,山北聡,大庭雅寛,海保邦夫,犬山地域、桃太郎神社セクションより発見された Spathian-Anisian のコノドント化石.日本古生物学会 2007 年年会,CO2,大阪市立大学,6 月 29 日-7 月 1 日,2007. 2. 大庭雅寛,岡部高志,古川善博,海保邦夫,掛川武,M.A. Lamolda,スペイン北部アローブスのセ ノマニアン期/チューロニアン期境界堆積岩の有機地球化学的研究.第 25 回有機地球化学シンポジ ウム,O-20,金沢大学サテライトプラザ,7 月 26-27 日,2007. 3. 配川正隆,掛川武,大庭雅寛,カナダ・スティープロック地域に産する 30 億年前の堆積岩を用い た有機地球化学的研究.第 25 回有機地球化学シンポジウム,O-16,金沢大学サテライトプラザ,7 月 26-27 日,2007. 4. 福田良彦,大庭雅寛,海保邦夫,Z.-Q. Chen,ペルム紀末の大量絶滅時の有光域強還元海洋と土壌 流入(南中国煤山) .第 25 回有機地球化学シンポジウム,O-17,金沢大学サテライトプラザ,7 月 26-27 日,2007. 5. 高橋聡,大庭雅寛,八尾昭,山北聡,海保邦夫,犬山地域、桃太郎神社セクションより抽出された バイオマーカー.第 25 回有機地球化学シンポジウム,O-18,金沢大学サテライトプラザ,7 月 26-27 日,2007. 6. 片渕真利,大庭雅寛,海保邦夫,M.A. Lamolda,セノマニアン期末の海洋無酸素化と有孔虫絶滅の 同時性:スペイン北部メノヨのバイオマーカーからの証拠.第 25 回有機地球化学シンポジウム, O-19,金沢大学サテライトプラザ,7 月 26-27 日,2007. 国際 1. Oba, M., Okabe, T., Furukawa, Y., Kaiho, K., Kakegawa, T., Lamolda, M.A., Organic geochemical study of the Cenomanian-Turonian boundary sediments from northern Spain. The 21st Century COE (Earth Science) International Symposium: Dynamic Earth: its origin and future, OE-P04, Sendai, Japan, September 19, 2007. 2. Takahashi, S., Yamakita, S., Suzuki, N., Oba, M., Kakegawa, T., Kaiho, K., Ehiro, M., 2007, A negative carbon isotope anomaly in deep-sea Permian/Triassic boundary of the North Kitakami Belt, Japan. The 21st Century COE (Earth Science) International Symposium: Dynamic Earth: its origin and future, OE-P01, Sendai, Japan, September 19, 2007. 3. Fukuda, Y., Oba, M., Kaiho, K., Chen, Z.Q., 2007, Photic zone euxinia and soil erosion during the end-Permian biotic crisis (Meishan, South China). The 21st Century COE (Earth Science) International Symposium: Dynamic Earth: its origin and future, OE-P02, Sendai, Japan, September 19, 2007. 4. Katabuchi, M., Oba, M., Kaiho, K., Lamolda, M.A. 2007, End-Cenomanian oceanic euxinia coinciding with foraminiferal extinctions on the evidence of biomarkers (Menoyo, northern Spain). The 21st Century COE (Earth Science) International Symposium: Dynamic Earth: its origin and future, OE-P03, Sendai, Japan, September 19, 2007. すがわら だいすけ 菅原 大助 受入教員名: 箕浦 幸治 研究グループ名: 地球進化史研究グループ 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 地球科学的・津波工学的手法に基づく津波堆積現象の解明と津波の防災・予知 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 タイ南西部沿岸地域において,2004 年インド洋大津波により生じたサンゴ岩塊の堆積を対象に調査 を行った.その結果,熱帯域の潮間帯に分布するサンゴ礁起源の岩塊から,津波襲来の証拠を得られ る可能性が示された.このことに基づき,石垣島東南部沿岸に分布するサンゴ岩塊の調査を行い,歴史 津波襲来との関連を検討した.その結果,石垣島において,岩塊は津波を原因とした分布特性を示すこ とが判明した.採取した試料の年代測定から,岩塊の離水・移動が3~4千年前に複数回起こったことが 明らかとなった. インド洋大津波に関連して,タイ南西部海域において,古生物学的手法により,津波の海底に対する 影響の調査を行った.津波前・津波後にそれぞれ採取した試料に含まれる底生有孔虫の分析から,こ の海域においては津波襲来時,引き波により海底堆積物が陸側から沖側へ移動していたことが明らか になった.これは,津波(引き波)の痕跡が海底堆積層に形成される可能性を示唆している.この結果に 基づき,2008 年 3 月に同海域において柱状試料の採取を行い,インド洋における津波発生履歴の解明 を試みる予定である. 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 2007 年 7 月にイタリア・ペルージャで開催された国際測地学会(IUGG)に出席し,タイ南西部海域の 調査で得られた海底に対する津波の影響について,ポスター発表を行った.2007 年 9 月に北海道大学 で行われた日本地質学会に出席し,衝撃波によって形成される海底堆積物中の微小構造について発表 を行った.タイ南西部沿岸地域で得られたサンゴ岩塊の調査結果をまとめた論文(共著)が, Sedimentary Geology に掲載された.津波と津波堆積物研究に関するレビュー論文を掲載した単行本 Development in Sedimentology: ”Tsunamiites – their features and implication”が,Elsevier Science より発行される予定である. (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Kazuhisa Goto, Suchana A. Chavanich, Fumihiko Imamura, Passkorn Kunthasap, Takafumi Matsui, Koji Minoura, Daisuke Sugawara, Hideaki Yanagisawa, Distribution, origin and transport process of boulders deposited by the 2004 Indian Ocean tsunami at Pakarang Cape, Thailand. Sedimentary Geology, 202, 821-837, 2008. ISI 以外の査読付き学術雑誌 1. Sugawara, D., Minoura, K., Imamura, F., Takahashi, T. and Shuto, N., A Huge Sand Dome Formed by the 1854 Earthquake Tsunami in Suruga Bay, Central Japan. ISET Journal of Earthquake Technology, 42, 4, 147-158, 2005. 著書 1. Sugawara, D., Minoura, K., Imamura, F., Tsunamis and tsunami sedimentology. Development in Sedimentology: "Tsunamiites - their features and implication", Elsevier (in press). 【学会講演】 国内 1. 箕浦幸治・菅原大助・ホセイニ S.H.R.・高山和喜,隕石衝突説に基づく水中衝撃波の古海洋 学 的研究,日本地質学会第 114 年学術大会,O-186,北海道大学,2007 年 9 月 11 日 国際 1. Minoura, K., Sugawara, D., Nemoto, N.,Tsukawaki, S., Shinozaki, T., Goto, K., Imamura, F., Micropaleontological analysis of 2004 Indian Ocean Tsunami sediments recovered from the offshore of Pakarang, Thailand, International Union of Geodesy and Geophysics IUGG) XXIV General Assenbly, Perugia, Italy, July 2-13, 2007. わたなべ たかひろ 渡邊 隆広 受入教員名: 掛川 武 研究グループ名: 地球進化史研究グループ 在任期間: 平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 研究課題: チベット・シベリア地域の湖沼堆積物を用いた大陸内部における高精度環境変動解析 (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 1.放射性炭素による湖沼堆積物の高精度年代決定に関する研究 堆積物を用いて過去の環境変動を復元するためには、堆積層の形成年代を決定することが重要である。 過去 2-3 万年間の年代決定には放射性炭素年代測定が現在最も有効な手法であるが、湖沼堆積物の有機 物は様々な供給源を持つため、放射性炭素による年代測定には不確定要素が多く含まれる。そこで、チベッ ト・プマユムツォ湖においては、堆積物中から植物残査のみを分離し放射性炭素年代測定を行った。ロシア・ バイカル湖堆積物中には植物残査が極めて少ないため、全有機炭素の年代測定を高時間解像度で行い、 年代値の分布パターンから年代モデルを作成した。 2.安定同位体比および放射性同位体を指標とした生物活動・環境変動・物質循環解析 現世の湖沼集水域における物質循環・生物活動解析は、古環境変動解析を行うための重要な情報となる。 チベット・プマユムツォ湖から採取した水生植物、プランクトン、沈降粒子、表層堆積物、周辺域の土壌、陸上 植物、河川泥、湿地堆積物の放射性炭素同位体および安定炭素・窒素同位体比測定を行い、物質循環・生 物活動解析を行った。さらに湖底柱状堆積物の全有機炭素含有量および安定炭素同位体比測定を行い、 チベット高原南東部における環境変動解析を進めた。 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 1-1. 放射性炭素年代測定により、3本のプマユムツォ湖柱状堆積物試料間における対比が明確になった。 この結果を基礎情報として、これまでに報告例のない過去 2 万年間のチベット高原南東部の環境変動解析 (特に、Bøllong-Allerød 期や Younger Dryas 期の特定等)が大幅に進んでいる。 1-2. 高時間解像度でバイカル湖堆積物の放射性炭素年代測定を行ったことにより、過去の気候変動に 伴う大気中放射性炭素濃度変動との対比が初めて可能となった。この結果に基づいて確度の高い年代決 定を進めた。 2-1. プマユムツォ湖周辺(河川流入域)・湿地帯の水生植物と、湖内の水生植物の放射性・安定炭素同 位体比の間に大きな差異が認められた。湿地帯における有機物の再生産や融氷の影響が考えられる。この 結果は、堆積物中植物遺体の同位体組成について解析し、環境変動解析を進めるための基礎情報として 重要である。 以上の結果について、国際シンポジウムおよび国内学会において口頭発表を行った。上記 1-(1)の一部、 および 1-(2)については論文を執筆し国際学術雑誌に投稿した。2-(1)について現在論文を執筆中である。 (2) 業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. Watanabe, T., Nakamura, T., Nara, F.W., Kakegawa, T., Horiuchi, K., Senda, R., Oda, T., Nishimura, M., Matsumoto, G.I., Kawai, T. High-time resolution AMS 14C data sets for Lake Baikal and Lake Hovsgol sediment cores: changes in radiocarbon age and linear sedimentation rate during the last glacial-Holocene period. Quaternary International, (in press). 2. Watanabe, T., Nakamura, T., Nishimura, M., Matsunaka, T., Minami, M., Kakegawa, T., Nara, F.W., Zhu, L. Radiocarbon chronology of a sediment core from Lake Pumoyum Co in the southeastern Tibetan plateau. Verhandlungen Internationale Vereinigung fur theoretische und angewadte Limnologie, (in press). 3. Nara, F., Imai, A., Yoneda, M., Matsushige, K., Komatsu, K., Nagai, T., Shibata, Y., Watanabe, T. Seasonal variation in the source of dissolved organic carbon in a lacustrine environment, revealed by dual isotopic measurements (∆14C and δ13C). Radiocarbon, 49(2), 767-773, 2007. 査読なし論文 1. Watanabe, T., Nakamura, T., Nara, F.W., Kakegawa, T., Nishimura, M., Matsunaka, T., Zhu, L., Kawai, T. Stable carbon isotope ratios and AMS 14C dating for sediments from Lake Baikal (southern Siberia) and Lake Pumoyum Co (Tibetan plateau). Proceedings of the 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, pp 80-81, 2007. 2. Nakamura, T., Watanabe, T., Ohta, T., Fujii, T., Nishimura, M., Zhu, L. 14C analysis of terrestrial and water plants as well as inorganic carbon dissolved in Lake Pumayum Co in Tibet. Proceedings of the 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, pp 57, 2007. 3. Nara, F.W., Watanabe, T., Nakamura, T., Kawai, T. High-time resolution records of stable carbon and nitrogen isotope ratios in Lake Baikal sediment during the past 27,000 years. Proceedings of the 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, pp 122, 2007. 4. Kashiwaya, K., Ochiai, S., Sumino, G., Tsukamoto, T., Szyniszewska, A., Yamamoto, M., Sakaguchi, A., Hasebe, N., Sakai, H., Watanabe, T., Kawai, T. High- resolution environmental records of long-term lacustrine sediments in Lake Hovsgol and Lake Baikal. Proceedings of the 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, pp 9, 2007. 5. 松中哲也,西村弥亜,中村俊夫,渡邊隆広,寺井久慈,中野志穂,Zhu Liping,プマユムツォ湖柱 状堆積物に記録された,チベット高原南東部における最終氷期最寒冷期以降の気候・環境変動に関 する研究−Part II −PY409 コアに記録された年代逆転と古環境変動の考察−.2004 年日中共同チベ ット・プマユムツォ湖学術調査・研究報告書, 159-180, 2007. 6. 渡邊隆広,中村俊夫,片村文崇,志知幸治,高原 光,奈良郁子,掛川 武,河合崇欣,ロシア・バ イカル湖柱状堆積物(VER99G12 core)から抽出した花粉の 14C 年代測定.日本 BICER 協議会年報 2006 年度, pp 3-7, 2007. 7. 長谷義隆,井上源喜,米村康祐,渡邊隆広,平城兼寿,谷 幸則,馬場 健,Dondovyn Tomurhuu, Tserentsegmid Oyunchimeg,中村俊夫,河合崇欣,モンゴル,フブスグル湖湖底堆積物表層コア (HV05-2, HV05-3)の対比と花粉分析.日本 BICER 協議会年報 2006 年度, pp 32-40, 2007. 8. 渡邊隆広,中村俊夫,西村弥亜,松中哲也,掛川 武,Zhu Liping,シベリア・チベット地域の湖沼 から採取した湖底柱状堆積物の放射性炭素年代測定-2: PY104,PY409 コア試料(チベット・プマ ユムツォ湖)の年代決定.名古屋大学加速器質量分析計業績報告書(XIX), 2008, 印刷中. 【学会講演】 国内 1. 渡邊隆広,中村俊夫,西村弥亜,松中哲也,掛川 武,ZHU Liping,シベリア・チベット地域の湖沼 から採取した湖底柱状堆積物の放射性炭素年代測定 −2: PY104,PY409 コア試料(チベット・プ マユムツォ湖)の年代決定.第 20 回(2007 年度)名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジ ウム,名古屋,1 月 10-11 日,2008. 2. 松中哲也,西村弥亜,中村俊夫,渡邊隆広,寺井久慈,中野志穂,ZHU Liping,プマユムツォ湖柱 状堆積物中のバイオマーカーを用いたチベット高原南東部における気候・環境変動解析.第 20 回 (2007 年度)名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム,名古屋,1 月 10-11 日,2008 3. 中村俊夫,渡邊隆広,太田友子,藤井智康,松中哲也,西村弥亜,ZHU Liping,標高 5000m のチベ ット高原に生育する植物は低地の植物より 14C 濃度が高いのか?.第 20 回(2007 年度)名古屋大学 年代測定総合研究センターシンポジウム,名古屋,1 月 10-11 日,2008. 4. 5. 6. 7. 井上源喜,田澤知子,瀬戸浩二,渡邊隆広,中村俊夫,伊村 智,神田啓史,竹村哲雄,南極スカ ーレン大池の湖底堆積物コアによる現世における昭和基地周辺の環境変動の推定,第 30 回極域生物 シンポジウム,東京,11 月 15-16 日,2007. 渡邊隆広,中村俊夫,西村弥亜,松中哲也,掛川 武,奈良郁子,ZHU Liping,湖底堆積物の安定同 位体比および放射性炭素年代測定によるチベット南西部・プマユムツォ湖の古環境変動解析,日本 陸水学会第 72 回大会,水戸,9 月 10-13 日,2007. 松中哲也,西村弥亜,中村俊夫,渡邊隆広,寺井久慈,ZHU Liping,チベット高原南東部・プマユ ムツォ湖の堆積物に記録された気候・環境変動の解析に関する問題点,日本陸水学会第 72 回大会, 水戸,9 月 10-13 日,2007. 渡邊隆広,中村俊夫,掛川武,西村弥亜,朱立平,河合崇欣,ロシア・バイカル湖およびチベット・ プマユムツォ湖から採取した湖底柱状堆積物の 14C 年代測定,日本 BICER 協議会第 17 回シンポジウ ム,名古屋,5 月 26-27 日,2007. 国際 1. Watanabe, T., Nakamura, T., Nara, F.W., Kakegawa, T., Nishimura, M., Matsunaka, T., Zhu, L., Kawai, T., Stable carbon isotope ratios and AMS 14C dating for sediments from Lake Baikal (southern Siberia) and Lake Pumoyum Co (Tibetan plateau). 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, Irkutsk-Listvyanka, Russia, August 24-28, 2007. 2. Nakamura, T., Watanabe, T., Ohta, T., Fujii, T., Nishimura, M., Zhu, L., 14C analysis of terrestrial and water plants as well as inorganic carbon dissolved in Lake Pumayum Co in Tibet. 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, Irkutsk-Listvyanka, Russia, August 24-28, 2007. 3. Kashiwaya, K., Ochiai, S., Sumino, G., Tsukamoto, T., Szyniszewska, A., Yamamoto, M., Sakaguchi, A., Hasebe, N., Sakai, H., Watanabe, T., Kawai, T., High- resolution environmental records of long-term lacustrine sediments in Lake Hovsgol and Lake Baikal. 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, Irkutsk-Listvyanka, Russia, August 24-28, 2007. 4. Watanabe, T., Nakamura, T., Nishimura, M., Matsunaka, T., Zhu, L., Radiocarbon chronology of sediment cores from Lake Pumoyum Co, southeastern Tibetan plateau. 30th International Congress of Theoretical and Applied Limnology, RS15-0.17, Montreal, Canada, August 12-18, 2007. 5. Watanabe, T., Nakamura, T., Nara, F.W., Kakegawa, T., Nishimura, M., Matsunaka, T., Zhu, L., Kawai, T., Biological and environmental changes in Tibetan and Siberian lakes during the last 20 kyr. EASTEC Symposium 2007 Dynamic Earth: -its origin and future-, CC-P05, Sendai, Japan, September 18-21, 2007. 6. Nara, F.W., Watanabe, T., Nakamura, T., Kawai, T., High-time resolution records of stable carbon and nitrogen isotope ratios in Lake Baikal sediment during the past 27,000 years. 6th International Symposium on Terrestrial Environmental Changes in East Eurasia and Adjacent Areas, Irkutsk-Listvyanka, Russia, August 24-28, 2007. や じ ま たか ひろ 谷島 尚宏 受入教員名:長濱 裕幸 研究グループ名:固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 研究課題:地球物理現象におけるソリトン系の微分幾何学的研究 研究目的:本研究は,地球物理現象を幾何学的に表現することを目的とする.個々の複雑な地球上の 非線形現象を幾何学の立場から統一的に見直す.特に,ソリトンやカオスなどの非線形的な性質を持つ 様々な地球物理現象を微分幾何学的手法によって理解していくことを目標とする. (2) 平成 19 年度研究活動の概要・進捗状況 非線形的な地球物理現象を統一的に表現するために,平成 19 年度では前年度に引き続き、地球磁 場の逆転現象などに見られるカオス系や地震波動伝播などに見られるソリトン波を幾何学的な観点から 研究した. 地球上では、磁場の逆転をモデル化した力武系や大気中の熱対流に関するローレンツ系など、様々 な現象に対してカオス性を見出すことができる。これらの系のカオス的挙動は抽象的な相空間内の軌道 として表現される.そこで、Kosambi-Cartan-Chern による相空間上における道の幾何学(KCC 理論)を用 いて非線形力学系の研究を行った.その結果、相空間内における捩率テンソルによって、力学系の非周 期的な挙動が表わされることを示し、曲率テンソルが安定性に関係してくることを示した.これらの幾何 学量により、力武系やローレンツ系などに代表される非線形力学系を統一して理解できることを明らか にした. 地震波や津波などの非線形波動の中には、ソリトンのように形や速さが変化せず伝播していく波が存 在することが指摘されている.これまでソリトンの研究に対しては、現象ごとに異なる方程式が個別に扱 われてきている.これに対し、フィンスラー幾何学を一般化した河口空間論を用いてソリトン系の幾何学 的研究を行った。その結果、ソリトン方程式のスケール不変性に注目することにより、河口空間上で定 義される共形不変なラグランジアンから各種のソリトン方程式が導かれることを明らかにした。さらに、ソ リトン方程式の一般形であるラックス方程式の河口空間上における表現を与え、ソリトン系が統一的に 理解できることを示した. 【研究成果】 (1) 平成 19 年度の研究活動成果 今年度に得られた研究成果の一部は,国際学術雑誌で発表されている.また,これらの成果を 4 度の国 際学会及び 2 度の国内学会・シンポジウムで発表し,さまざまな議論を行った.さらに未発表の成果があ るため,現在論文として国際学術雑誌に投稿する準備を行っている. (2)業績リスト 【学術論文等】 ISI 登録誌 1. 2. Yajima, T. and Nagahama, H., Kawaguchi space, Zermelo's condition and seismic ray path. Nonlinear Anal.: Real World Appl., 8, 130-135, 2007. Yajima, T. and Nagahama, H., KCC-theory and geometry of the Rikitake system. J. Phys. A: Math. and Theor., 40, 2755-2772, 2007. ISI 以外の査読付き論文 1. 2. Yajima, T. and Nagahama, H., Physical fields, soliton systems and Kawaguchi space. An. Ştiinţ. Univ. Al. I. Cuza Iaşi. Mat. (N.S.), 53, 343-355, 2007. Yajima, T. and Nagahama, H., Nonlinear dynamical systems and KCC-theory. Acta Math. Acad. Paedagog. Nyházi. (N.S.), 2007, accepted, in press. 査読なし論文 Yajima, T. and Nagahama, H., Higher-order geometry of solitary waves in solid earth. Proceedings of EASTEC symposium 2007: Dynamic Earth -its origin and future- (Sendai, Japan, 18-21 September, 2007). Organized by The 21st Century COE Program at Tohoku University, “Advanced Science and Technology Center for the Dynamic Earth”, 135-136, 2007. 2. Yajima, T. and Nagahama, H., Soliton systems and Kawaguchi space. Abstracts of Conference on Differential Geometry. Lagrange and Hamilton Spaces. Dedicated to Acad. Prof. Dr. Radu Miron at his 80th anniversary, September 3-8, 2007, Faculty of Mathematics, Al.I.Cuza University, Iaşi, Romania, 2007. 3. Yajima, T. and Nagahama, H., Soliton systems and Zermelo condition in higher-order space, Abstracts of 10th International Conference on Differential Geometry and Its Applications. In honour of the 300th anniversary of the birth of Leonhard Euler, August 27–31, 2007, Olomouc, Czech Republic, 2007. 4. Yajima, T. and Nagahama, H., Nonlinear dynamical systems and KCC theory. Abstracts of Workshop on Finsler Geometry and its Applications, May 28 - June 2, 2007, Balatonföldvár, Hungary, 2007. 5. Yajima, T. and Nagahama, H., A geometrical approach to soliton systems in Kawaguchi space, Proceedings of the 42-th Symposium on Finsler Geometry, 2007, in press. 6. 谷島 尚宏,長濱 裕幸,地震波動伝播におけるソリトン波の高次微分幾何学.研究集会リ ソスフェアにおける短波長不均質構造の解明-地球内部構造と地震発生特性の解明に向けて- 2007 年 9 月 25-26 日 東京大学地震研究所,講演要旨,2007. 7. 谷島 尚宏,長濱 裕幸,地震波線理論の幾何学 ―フィンスラー幾何学によるアプローチ― (Finsler geometry and seismic ray paths in anisotropic medium).月刊地球 総特集 リソ スフェアにおける短波長不均質構造の解明-地震発生場の構造特性の解明に向けて-, 29, 247-251, 2007. 1. 【学会講演】 国内 1. Yajima, T. and Nagahama, H., A geometrical approach to soliton systems in Kawaguchi space. The 42-th Symposium on Finsler Geometry, Nagasaki, November 1-4, 2007. 2. 谷島 尚宏, 長濱 裕幸,地震波動伝播におけるソリトン波の高次微分幾何学. 研究集会 “リ ソスフェアにおける短波長不均質構造の解明-地球内部構造と地震発生特性の解明に向けて-”, 東京大学地震研究所,東京,9 月 25-26 日,2007. 国際 1. 2. 3. 4. Yajima T. and H. Nagahama, Higher-order geometry of solitary waves in solid earth. EASTEC symposium 2007: Dynamic Earth -its origin and future-, Organized by The 21st Century COE Program at Tohoku University, “Advanced Science and Technology Center for the Dynamic Earth”, Sendai, Japan, September 18-21, 2007. Yajima, T. and Nagahama, H., Soliton systems and Kawaguchi space. Conference on Differential Geometry. Lagrange and Hamilton Spaces, Dedicated to Acad. Prof. Dr. Radu Miron at his 80th anniversary, Faculty of Mathematics, Al.I.Cuza University, Iaşi, Romania, September 3-8, 2007. Yajima, T. and Nagahama, H., Soliton systems and Zermelo condition in higher-order space. 10th International Conference on Differential Geometry and Its Applications. In honour of the 300th anniversary of the birth of Leonhard Euler, Olomouc, Czech Republic, August 27–31, 2007. Yajima, T. and Nagahama, H., Nonlinear dynamical systems and KCC theory. Workshop on Finsler Geometry and its Applications, Balatonföldvár, Hungary, May 28 – June 2, 2007. Ⅳ. ウェブサイト運営報告 本COEで開設した以下の公式ウェブサイトの運営状況について,報告する. URL : http://www.21coe.geophys.tohoku.ac.jp/ 【運営方法】 平成 19 年度も,前年度までに引き続き,本 COE のウェブサイトを運営した. サイトの管理と記事の更新作業は,広報室の教員 1 名(木津)と COE 事務室職員 1 名(水田)の合計 2 名が分 担して行った.本 COE 関係者から随時提供される COE セミナーや研究集会の予告/報告記事,博士課程後 期大学院生に対する海外渡航支援事業の報告記事,研究者招聘や若手研究者派遣の記事,COE 研究員の 紹介や活動報告,COE 関係者のニュースなどを編集し,概ね数日以内に掲載して,関係者間の情報交換や外 部への情報発信に供した.また,COE の運営組織やメンバー表,関係機関へのリンクなども必要に応じて随時 更新し,情報の鮮度を保った. 平成 19 年 4 月から平成 20 年 2 月 20 日までの 10 ヶ月余の間に掲載した情報の件数は合計 156 件(ひと月 あたり約 15 件; ただし日本語版のみ集計)である. 本 COE 広報室室長 木津昭一(理学研究科 地球物理学専攻) Ⅴ. 新聞等で報道された研究成果 長谷川 昭 朝日新聞 2007 年 10 月 14 日 今さら聞けない 「ひずみ集中帯」 日本経済新聞 2007 年 10 月 22 日 「岩板深部の地震 水に起因可能性 東北大」 読売新聞 2007 年 12 月 16 日 「東北大 100 年 地震・噴火予知 宮城県沖 数式で解く」 読売新聞 2008 年 1 月 20 日 「宮城県沖地震 場所と規模を予測 新概念 固着域」 高橋 幸弘 河北新報 2007 年 6 月 20 日 東北大 100 年 学び極めて 「衛星打ち上げ実現へ 天文少年の夢 東北大 理学研究科講師 高橋 幸弘氏」 アサヒ・コム 2008 年 1 月 7 日 「日の丸宇宙望遠鏡、12 年にも大学連合打ち上げ目指す」 時事ドットコム 2008 年 1 月 12 日 「11 年度から毎年打ち上げ目指す=新小型科学衛星シリーズ-宇宙機構」 アサヒ・コム 2008 年 1 月 15 日 「上がれ!大学発人工衛星 東北大・香川大・東大」 佐藤 源之 日本経済新聞 2007 年 7 月 13 日 「掘削せずに地雷識別 東北大教授が開発 レーダ使い地中映す」 高知新聞 2007 年 9 月 11 日 ひと 「住民のため、少しでも役に立ちたい 地中の地雷識別装置を開発した東北大教授 佐藤源之さん」 産経新聞 2007 年 12 月 14 日 やばいぞ日本 第 5 部 再生への処方箋 10 「うんと早く地雷探せる」 今村 文彦 河北新報ニュース 2007 年 2 月 12 日 「学校を起点に防災教育 在仙3大学研究者ら仕組み構築へ」 河北新報ニュース 2007 年 3 月 12 日 「津波 DB 充実 動画、解説を多用 本紙記事も加わる」 河北新報ニュース 2007 年 12 月 9 日 「人をつなぐ防災研究へ 東北大グループが仙台でシンポ」 The Daily Jakarta Shinbun 2007 年 10 月 9 日 「土木学会と地震工学会 ブンクル沖地震を調査 防災体制徐々に成果 素早く避難の住民も」 掛川 武 海と地球の情報誌「Blue Earth」2007 年 9-10 月号 「およそ 38 億年前、生きものは存在した」 上: 朝日新聞 2007 年 10 月 14 日(長谷川 昭) 上: 日本経済新聞 2007 年 10 月 22 日(長谷川 昭) 左:読売新聞 2007 年 12 月 16 日 (長谷川 昭) 上: 読売新聞 2008 年 1 月 20 日(長谷川 昭) 下: 産経新聞 2007 年 12 月 14 日 (佐藤 源之) 上: 日本経済新聞 2007 年 7 月 13 日 (佐藤 源之) 上: The Daily Jakarta Shinbun 2007 年 10 月 9 日 (今村 文彦)