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20番 33年 2月 4日

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20番 33年 2月 4日
平 成 25年 3月 26日 言 渡
横浜地方海難審判所
書 記
平成
浅
田
冨喜代
23年 横審第 30号
裁
決
モー ター ボ ー トミッカ ビユ ー スセ ン ター
被 引 カ ッター (船 名 な し)転 覆事件
受
人
審
本
檀
野
清
司
東京都杉 並 区下井草 一 丁 目 20番
籍
生 年月 日 昭和 33年 2月 4日
職
ミッカ ビユ ー スセ ン ター 船長
名
小型船舶操縦 士
操縦免許
(二 級 ,特 殊小 型船 舶操縦 士 及 び 特 定操縦免許 )
・
じ
■
0
補
し
佐
人
早
川
修
本件 につい て,当 海難審判所 は,理 事官 甲斐賢一 郎 出席 の うえ審 理 し
,
次 の とお り裁決す る。
主
文
受審人檀野清司 の小型船舶操縦 士の業務 を 2箇 月停 止 す る。
理
由
(海 難 の事実 )
1ヽ
事件発 生 の年月 日時刻及 び 場所
平成
22年 6月 18日 15時 25分
静 岡県浜名湖
2
船舶 の 要 目
-1-
船 種 船 名
カ ッタ ー (船 名 な し)
モー ター ボ ー ト
ミッカ ビユ ー スセ ン ター
船
籍
港
船舶所有 者
長
幅
深
機 関 の種類
出
力
船 舶 番 号
静 岡県
静 岡県
7.00メ
2.35メ
さ 1.01メ
全
3
静 岡県 浜松 市
ー トル
7.00メ ー トル
ー トル
2.10メ ー トル
ー トル
0。
78メ
ー トル
電気点火機 関
73キ ロ ワ ッ ト
242-15913静
岡
事実 の経過
(1)カ
ッター 訓練等
静 岡県 立三ケ 日青年 の家 (以 下 「青年 の 家」 とい う。 )は ,浜 松
市北 区三 ヶ 日町都筑 の ,浜 名湖 北岸 の湖畔 に所在 し,公 募 で選 出 さ
れ た民間企 業 が 管 理 ,運 営す る青少年教育 施設 で ,平 成
22年 4月
1日 檀 野受審人 が所長 として赴任 し,幼 児 か ら成人 まで の若者 に対
し,湖 上 と湖畔 で の 自然体験 活動 を通 した研修等 を実施 して い た と
ころ,同 年 6月
18日
午後 か ら愛知県豊橋 市 立 章南 中学校 1年 生 の
カ ッター 訓練 (以 下 「訓練」 とい う。 )を 行 うこ ととな つた。
訓練 で は ,全 長 9メ ー トル で 12本 のかい を備 えた約
30人 乗 り
のカ ッター 2隻 (以 下 「A艇 」及 び 「B艇 」 とい う。 )と
ー トル で 8本 のかい を備 えた約
20人 乗 りの カ ッター
,同
(船 名 な し)
ー
(以 下 「C艇 」 とい う。 )及 び C艇 と同型 ,同 装備 の カ ッタ
(以 下 「D艇 」 とい う。 )が 使用 され
7メ
1隻
,A艇 及 び B艇 は,所 員 艇 と
呼 ばれ ,青 年 の家 の所員 1人 が舵 取 りを担 う艇指揮 として乗船す る
ほか ,引 率 の教諭 1人 が艇長 として乗船 し,C艇 及 び D艇 は ,自 主
‐2‐
艇 と呼ばれ ,同 所員 が乗船 しない代 わ りに,同 教諭 2人 が艇 長 と艇
指揮 として乗船す る こととな つてい て,各 船 の艇指揮 が トラ ンシー
バー を携行 し,A艇 の艇指揮がキャプテ ンと呼ばれ る総指揮者 を兼
ねていた。
訓練 は,当 日の風向等 によつて ,青 年 の家 の東方 ,南 方 あるい は
南西方 の 中か ら選択 され る片道 3.5キ ロメー トル の湖 上 を,生 徒
2人 ない し 3人 で 1本 のかい を握 り,艇 長 の掛 け声 に合 わせ てかい
を漕 ぎ,休 憩時間 も含 めて , 1時 間ない し 1時 間半 かけて往復す る
もので,青 年 の家 が作成 した訓練 の手引きには,次 のいずれ かの事
項 に該 当す る場合は,出 港 を中止す る ことが規定 されてい た。
ア 暴風 ・ 強風・ 波浪・ 津波等 の警報 が発令 されて い る場合
イ
落雷 の危険 が予測 できる場合
ウ 所長 か ら出港 を中止 す るよ うに指示 された場合
また, ミッカ ビユ ースセ ンター (以 下 「ミ号」 とい う。 )は ,船
体 中央部 に操縦席 を配 し,同 席 で操作す る船外機 を備 え,同 機 両脇
のサイ ドデ ッキ上にス ター ンク リー トを有す る,最 大搭載人員
10
人 の FRP製 プ レジ ャーモー ター ボー トで,訓 練 中のかいの折損
,
乗船者 の体調不良等 の事態発 生に対す る救援活動等 に使用 されてい
た。
(2)本 件発 生に至 る経緯
訓練 当 日,遠 州灘 の南方 にあ つた梅雨前線 の北 上 に伴 い ,青 年 の
家 では,
11時 30分 頃雨 が降 り出 し, 12時 02分 静岡地方気象
台 が遠州南 に大雨・ 雷・ 強風・ 波浪・ 洪水注意報 (以 下 「注意報」
とい う。 )を 発表 し,青 年 の家 の所員 の 1人 がイ ンターネ ッ トによ
る定時 の気象情報収集 で ,注 意報 を入手 し,他 の所員 に周知す るた
め の定型用紙 にそ の 内容 を記載 して ,青 年 の家 の本館 内の壁 に貼 り
-3‐
出 し,
12時 10分 檀野受審人 に報告 した。
檀野受審人 は,注 意報 が発表 された 旨の報告 を受 け,壁 に貼 り出
された気象情報 を見 るとともに,自 らもイ ンター ネ ッ トで 同情報 を
確認 して ,夕 方か ら風が強まる予報 であることを知 り,
12時 45
分 キ ャプテ ンか ら,雨 が降 って いて 注意報 も出て い るので,早 めに
訓練 を切 り上げたい 旨の提案 を受 け,ま だ風が弱 く,浜 名湖 の湖面
に波 もな かった ことか ら,風 が強 くなる前に訓練 を終わ らせ る こと
がで きる と考 え,キ ャプテ ンの提案 を受 け入れた。
13時 30分 引率 の教諭 に注意報が発表 されてい る ことが伝 え ら
れない まま,ハ ーバ ー と呼ばれ る船だま りで訓練 が 開始 され ,生 徒
に対 しては,か いの扱 い方 な ど,艇 長 と艇 指揮 の教諭 に対 しては
,
声 の掛 け方 , トラ ンシーバー の使用方法 な どの説 明 のほか ,舵 の取
り方 として ,右 に行 きた い ときはチ ラー を左 に,左 に行 きた い とき
にはチ ラー を右 に取 るよ うに との説 明 があ つた後 ,生 徒 は,体 操着
の上 にカ ッパ ,救 命胴衣 を着用 し,靴 を履 いて,A艇 か らD艇 まで
順 に 27人 ,
29人 ,女 子生徒面野花菜 を含 む 18人 , 18人 ずつ
に分 かれ ,艇 長 ,艇 指揮 と共に各船 に乗船 した。
そ して ,乗 船 しない所員 が岸壁 で長 さ 10メ ー トルの船尾係留索
の一端 を持 ち,艇 長 の掛 け声に合 わせて生徒 がか い を漕 ぎ,艇 指揮
が舵 を取 つて,同 索 が張 るまでカ ッター が前進す ると,同 所員 が 同
索 を手繰 り寄せ て元 に戻 し,何 度 も同 じことを繰 り返 して練習 し
,
14時 35分 檀野受審人 と同所員 に見送 られ ,A艇 か ら順次ハ ーバ
ー を離岸 した。
C艇 は,船 首 0.3メ ー トル船尾 0.4メ ー トル の喫水 をもつて
,
A艇 ,B艇 に続 き,後 方 にD艇 が付 いて ,風 力 2の 東風 に向か つて
東方 に漕 ぎ出 した ところ,′ 間 もな く風 向が南 に変 わ つて風力 が 4と
‐4‐
な り,湖 面 に 自波 が立 ち始 めて ,キ ャプテ ンか ら トラ ンシー バ ー を
通 して針 路 を南方 に変 えるよ う指示 を受 けた ものめ ,4人 の 生 徒 が
船酔 い を して ,か い を漕 ぐ ことがで きな くな り,艇 指揮 が キ ャプテ
ン にそ の 旨 を報告 し,そ の場 で 漂泊 して待 つ よ うに との指示 を折 り
返 し受 けた。
一 方 ,檀 野受審人 は ,各 船 が ハ ー バ ー を出 るの を見送 っ た後 ,残
つた所員 と共 に,ハ ー バ ー 近 くの艇庫 内や そ の付近 で ,キ ャプテ ン
と各艇指揮 との トラ ンシー バ ー で の 交信 を傍 受 しなが ら待機 す る う
ち,
15時 00分 頃 キ ャプテ ンが B,C及
び D各 船 に対 し,針 路 を
南 に変 えるよ う指 示す るの を聞 き ,ハ ー バ ー にある吹 き流 しを見 て
風 向 が 南 に変 わ つた こ とを知 り,続 い て ,C艇 の艇指揮 が キ ャプテ
ンに ,生 徒 が 船酔 い を してか い を漕 ぐ こ とがで きな い こ とを報告 し
て い るの を聞 い た。
15時 05分 檀野受審人 は,
トラ ンシー バ ー を通 してキ ャプテ ン
か らC艇 を救助す るよ う要請 を受 け ,所 員 1人 (以 下 「乗組員 」 と
い う。 )を 伴 つて ,ハ ー バ ー に係 留 して あ つ た ミ号 に乗 り組 み ,船
首 0。
17メ
ー トル 船尾 0.22メ ー トル の 喫水 を もつて ,船 酔 い し
た生 徒 を 自船 に移乗 させ て連れ 帰 る予定 で ,
15時 07分 ハ ー バ ー
を発 し,こ の 頃 には風力 4の 南西風 に変 わ つて ,風 浪 も大 き くな っ
て い る 中 ,自 ら操船 に当た つて ,ハ ー バ ー の東 方
1,600メ
ート
ル の湖 上 に い る C艇 に向か つた。
15時 10分 檀野受審人 は,船 首 を南東方 に向 けて漂泊 して い る
C艇 の近 くに到着 した ものの,南 西方 か らの風浪 の波 高 が 1メ ー ト
ル とな っていて ,接 舷 して生 徒 を 自船 に移乗 させ る こ とがで きな い
こ とか ら,C艇 を曳航す る ことに 予定 を変更 し,同 船船首 の リン グ
につ な いで あ る直径 2セ ンチ メー トル 長 さ 10メ ー トル の合成繊維
-5¨
製係留索 を艇長 に投 げて も らい ,同 索 を 自船 の右舷 ス ター ン ク リー
トにつ な い であ る直径 ,長 さ共 に 同寸法 ,同 材 質 の係 留索 に結び付
け て ,長 さ約
20メ
ー トル の 曳航 索 とし,
三 ヶ 日町佐 久米 の 天神 山頂
(88メ
15時 20分 半少 し過 ぎ
ー トル )か ら 173.5度
(真
方 位 ,以 下 同 じ。 )870メ ー トル の 地点付近 で ,曳 航 の 準備 を終
えた。
この とき ,檀 野受審人 は ,C艇 に湖水 が 打 ち込 んで 船体 の左 右 ヘ
の傾斜 が大 き くなる と,同 船 の船 首 が振れ て横 引き した ときに転覆
させ るおそれ が あ つ たが , くみ出 さなけれ ばな らな い ほ どの湖水 が
滞 留す る こ とはない と思 い ,滞 留水 が増 えた な らば曳航 を中断 して
同水 を くみ 出す ことがで き るよ う,同 船 の艇 指揮 に対 し,滞 留水 の
増 加 状況 を細 か く報告す る ことな ど,C艇 の傾斜 を抑制す るため の
指導 を十分 に行 うこ とな く,横 揺れ を防 ぐた め ,風 上 に 向 か つ て 曳
航 した後 に反転 して ハ ー バ ー に戻 る こ ととし,直 ちに機 関 を極微 速
力前進 にか け,曳 航 索 を徐 々 に張 りなが ら同船 を右 回頭 させ た。
15時 21分 半檀 野受審 人 は,天 神 山頂 か ら 173.5度 870
メー トル の 地点 で ,針 路 を 235度 に定 め ,機 関 を微速力前 進 にか
け,
3.7ノ
ッ トの速力 (対 地速力 ,以 下 同 じ。 )と し,舵 輪 の 後
方 で立 っ て手動 操舵 に当た り,風 力 4の 南西風 と波 高 1メ ー トル の
南西方 か らの風浪 を左舷船 首
15度 に受 け,乗 組員 が生徒 に声 を掛
けて ,か い を舷外 に 出 したまま ,手 で握 る部分 を足 で強 く踏 み付 け
させ て い る C艇 を曳航 して進 行 した。
定針後 ,C艇 は,動 揺 が激 し く,湖 水 が舷側 を越 えて船 内に打 ち
込み ,滞 留 した湖水 に よ つ て左 舷側 に傾斜 を生 じた こ とか ら,艇 指
揮 が ミ号 に追従 して舵 を取 つ て い た ものの ,舵 を取 らな い方 が よい
ので はな いか と考 えて ,チ ラー に手 を添 えるだ け とな り,そ の後 も
-6‐
しば らくは 自然 に ミ号 に追 従 していた ところ,打 ち込 んだ湖水 が排
水 され な い まま ,左 舷側 へ の傾斜 が増す につ れ て左 舷船 首部 で 受 け
る湖水 の抵抗 が大 き くな り,船 首 が右 に振れ て 曳航 索 に よ つ て横 引
き され ,
15時 25分 天神 山頂 か ら 191度 1,100メ
地 点 にお いて ,船 首 を 265度 に向け ,
3.7ノ
ー トル の
ッ トの速力 の まま
左 舷側 に転覆 し,艇 指揮 と何人 かの生 徒 が水 中 に投 げ出 され たほか
艇長 と他 の生 徒 が船底 を湖 面 上 に 出 した 同船 の 中 に閉 じ込 め られ
,
,
,
そ の後 、面野 生 徒 と 3人 の 生 徒 を除 き, 自力 で船外 に脱 出 した。
当時 ,天 候 は雨 で 風 力 4の 南 西風 が 吹 き ,南 西方 か らの 波 高
1
メー トル の風浪 があ り,潮 候 は下 げ潮 の 末期 であ つ た。
檀野受審人 は ,乗 組員 の 「転覆す る。 」 と言 う声 を聞 い て振 り返
り,C艇 が 転覆 して い るの を認 め ,同 人 か ら消防署 に連絡 させ ,曳
航 索 を解 い て ,湖 面 に浮 い て い た艇 長 ,艇 指揮 と 8人 の生 徒 を ミ号
に 引き上 げ ,同 船 を乗組員 に操船 させ て 青年 の家 に帰 らせ た。
そ して ,檀 野受審人 は ,泳 い で C艇 に行 き,船 底 に上が っ て い た
生 徒 か ら,ま だ 同船 の 中 に生 徒 が 残 つ て い る こ とを聞 き ,直 ちに
潜 つて 船 内に 3人 の生 徒 を発 見 し,
1人 ず ら 船外 に連れ 出 した と こ
ろ,生 徒 か ら,も う 1人 が い な い こ とを聞 い た ものの ,体 力 の 限界
を感 じて 更 に潜 る こ とが で きず ,消 防署 の 救助 活 動 が 始 ま る の を
待 った。
間 もな く,檀 野受審 人 は ,消 防署 の救助 隊 が ゴム ボ ー トで到 着 し
た ので ,も う 1人 の 生 徒 の捜索 を依頼 し,続 い て到 着 した警 察署 の
小型艇 で生 徒 と一 緒 に湖 畔 に搬送 され ,生 徒 だ けを上 陸 させ て ,再
び 同船 で転覆現場 に戻 り,消 防署 の救助 隊員 か ら,捜 索 したが ,船
内に生徒 は い なか つ た との返答 を得 て ,同 現場 を離れ た。
そ の結果 ,C艇 に損 傷 はなか つ た ものの ,か い 1本 が折損 し,面
‐7‐
野 生 徒 (平 成 9年 9月
26日 生 )が 後 に船 内で発 見 され ,溺 死 と検
案 され た。
(証 拠 の標 目)
1
理事 官黒 田敏 幸 の C艇 艇指揮加藤学及 び 同船艇長 山川裕 見子 に対す
る各質 問調 書
2
檀野受審人提 出 の本件 に 関す る陳 述 書 (第 1回 及 び 第 2回 )及 び 陳
述書訂 正 書 並び に ミ号乗組員 石本 哲 也提 出 の本件 に 関す る陳述書 (第
1回 及 び 第 2回 )及 び 陳 述 書訂 正 書
日
3
ミ号 の船舶検 査手帳 ,取 扱説 明書及 び 船外機取扱説 明書各写 並び に
船体写真 4枚 及 び船舶 検 査記録調査書
4 C艇 の一 般配置 図 中央切 断図写及び船体写真 8枚
5 青年 の家 の カ ッター 訓練利 用者用資料 ,カ ッター 指導 の手 引 き (所
員用 ),平 成 21年 引継 ぎ研修 ス ケ ジュール 表 ,物 品貸付契約 書及 び
パ ンフ レ ッ ト各写
6
黒 田理 事官作成 の カ ッター 及 び モー ター ボ ー ト等 の 状況 につ い て の
,
本件発 生場所 の状況 につい て の ,及 び 青年 の家 の施設 の状況等 につい
て の各検 査 調書
7
早川補佐 人提 出 の ,「 えい航 時間 の検証」 ,「 本件 カ ッター の傾斜
モー メ ン トにつ いて 」 ,「 本件 カ ッター の傾斜試験 」 ,「 舵取 りと被
えい航船 の 軌道 につい て 」 ,「 カ ッター の復原 方法 の検証」 ,「 既 に
実施 して い る改 善策 に つ い て の経過 報告 」 ,「 海 洋 活 動安 全対 策 マ
ニ ュアル 等 」及 び 「艇 が垂 直 とな っ た状態」 とそれ ぞれ題す る書証並
び にカ ッタ ーの復原 方法 DVD及 び 岡山県渋川青年 の家顧 問鷲 見道 弘
の履 歴書写
8
面野 生 徒 の死亡届記載事項証 明書及 び 住 民票 (除 票 )
…8-
9
静 岡地方気象 台及 び気 象庁 ホニ ムペ ー ジか ら入 手 した三 ヶ 日地域気
象観 測所 の各気 象資料 ,並 び に同気 象 台 の大雨 と強風及 び 高波 に 関す
22年 6月 18日 05時 48分 発表
及 び 同第 2号 (同 日 16時 30分 発表
る静 岡県気象情報第 1号 (平 成
)
)
10
当廷 にお ける檀 野受審 人 ,証 人加藤艇指揮 ,同 キ ャプテ ン小澤安美
,
同 B艇 艇指揮井 下俊輔 ,同 D艇 艇指揮鈴木宏道及 び 同鷲見顧 間 の各供
述
(事 実認 定 の根拠 )
1
檀 野受審人 の C艇 の傾斜 を抑制す るた め の指導 につ い ては ,次 の こ
とに よ り, くみ 出 さなけれ ばな らな い ほ どの湖 水 が滞留す る こ とはな
い と思 い ,滞 留水 が増 えた な らば曳航 を中断 して 同水 を くみ 出す こ と
がで きるよ う,同 船 の艇指揮 に対 し,滞 留水 の増 加 状況 を細 か く報告
す る こ とな ど,同 船 の傾斜 を抑制す るた め の指導 を十分 に行 わなか つ
た もの と認 め る。
(1)檀 野受審人提 出 の本件 に 関す る陳述書
(第
1回 )中 ,「 曳航 につ
い ては C艇 に特 に指導 は して い な い 。 」 旨の記載及 び 同人 の 当廷 に
お ける,「 曳航 中 に滞留 水 が増 え る こ とは考 えなか っ た。」 旨の供
述
(2)加 藤艇指揮 に対す る質 問調書 中,「 曳航 され る ときの注意事項 な
どの指導 は全 くな か つ た。 」 旨の供述記載
(3)加 藤証人 の 当廷 にお ける,「 専 門家 が救助 に来 て くれ て ,何 も指
示 がな いの だか ら,そ の ままに して い れ ば よい と思 つ た。 」 旨の供
述
2
運航状況
(1)定 針 時刻 につ い ては ,定 針 ,転 覆 両地点間 の距離及 び 曳航索 の長
‐9‐
さと速力 とに よ り,転 覆 時刻 か ら求 め,
15時 21分 半 と認 める。
(2)定 針 地点 につい て は,檀 野受審人提 出 の本件 に 関す る陳述書
(第
1回 )中 ,「 低速力 で C艇 を回頭 させ て曳航 を始 めた。」 旨 の記載
並び に同人 の 当廷 にお ける,「 事故後 ,曳 航 時間 を検証 した ときに
使用 した GPSは 日本測地系 であ る。 」 旨の供述及 び えい航 時間 の
検 証 中 ,「 曳航 を開始 した地 点 を GPSで 計 測 した 。 北緯
34度
46.886分 ,東 経 137度 36.256分 で あ つた。」 旨の記載
に よ り,天 神 山頂 か ら 173.5度 870メ ー トル と認 める。
(3)定 めた針 路 につ いて は,定 針 地点 か ら転覆地点 に至 る方位 に よ り
,
235度
と認 め る。
(4)速 力 に つ い て は ,檀 野受 審 人提 出 の 本件 に 関す る陳述 書
(第 1
5,500で ,警 察官 と
ミ号 で 実況 見分 を行 つ た とき,定 針 後 の 同回転数 が 毎分 2,500
回 )中 ,「 全 速力前進 の機 関回 転 数 が 毎分
で ,速 力 が 3.7ノ ッ トであ つ た。 」 旨 の記載 に よ り,
3.7ノ ッ ト
とi認 め る。
(5)曳 航状態 につ い ては ,次 の こ とに よ り,C艇 船首 の リングにつ な
いで あ る直径 2セ ンチ メー トル 長 さ 10メ ー トル の 合成繊維製係 留
索 を, ミ号 の右舷 ス ター ン ク リー トにつ ないで あ る直径 ,長 さ共 に
同寸法 ,同 材 質 の係 留索 に結 び 付 け て ,長 さ約
20メ ー トル の曳航
索 とし,風 力 4の 南西風 と波 高 1メ ー トル の南西方 か らの風浪 を左
舷船首
ア
15度 に受 けて い た もの と認 める。
檀野受審人提 出 の本件 に 関す る陳述書 (第 1回 )中 ,「
C艇 の
近 くに到着 した とき,風 浪 の波 高 は約 1メ ー トル だ つた。 同船船
首 につ ながれ て い た ロー プ を艇長 に投 げて も らい , ミ号 の右舷 ス
ター ン ク リー トにつ ながれ て い た ロー プに結 び付 け て曳航 した。
両船 の ロー プは 同 じ もので ,共 に約
…10‐
10メ
ー トル の長 さで あ つ た。
南南西方 な い し南西方 か らの風 と風 浪 に向か つて航行 した。 」 旨
の記載
イ
檀野受審人 の 当廷 にお ける,「 曳航 に使 用 した の は係 留索 であ
る。曳航 中 ,風 力 4の 風 を左舷 船首
15度 か ら受 けてい た。 」 旨
の供述
ウ 石本乗組員 提 出 の本件 に 関す る陳述書 (第 1回 )中 ,「 曳航 を
開始 した とき の風力 は 4で ,ハ ー バ ー を発 した とき と同 じで あ つ
た。」 旨の記載
工
小 澤証人 の 当廷 にお け る,「 C艇 が 転覆 した 頃 ,風 力 は 4で あ
つた。 」 旨 の供述
オ
カ ッター 及 び モー ター ボ ー ト等 の状況 につ いての検 査 調書 中
,
「曳航 の 際 に使用 した C艇 の ロー プは ,直 径 2セ ンチメー トル の
合成繊維製 で ,船 首 リン グにつ ながれ て い た。 ミ号が曳航 の 際 に
使用 した ロー プは ,直 径 2セ ンチ メー トル の合成繊維製 で ,右 舷
ス ター ン ク リー トにつ ながれて い た。」 旨の記載
3
転覆 の状況 につ いて は ,次 の こ とに よ り,C艇 の動揺 が激 し く,湖
水 が舷側 を越 えて 船 内に打 ち込み ,左 舷側 へ の傾 斜 が増す につ れ て左
舷船首部 で 受 け る湖水 の抵抗 が大 き くな り,船 首 が右 に振れ て 曳航 索
に よつて横 引き され ,転 覆 した もの と認 め る。
(1)檀 野受審人提 出 の本件 に 関す る陳 述書
(第
1回 )中 ,「 時折振 り
返 つ て ,曳 航状態 を見て い た。 C艇 が風浪 の影 響 を受 けて ,縦 揺れ
と横揺れ が混 ざつ た動揺 を し,生 徒 の怖 が る声 が 聞 こえていた。 」
旨の記載
(2)加 藤 艇指揮 に対す る質 問調 書 中,「 曳航 が始 ま り,船 内に湖水 が
入 つて き て ,左 舷側 に傾斜 した。最初 は ミ号 に追従す るよ うに舵 を
取 つてい た の だが ,舵 を取 つ て 良 いのか 悪 いのか ,判 断 がで きな か
-11‐
っ た ので ,途 中 か ら取 らな かった。 左 舷側 の生 徒 の膝 くらいの 高 さ
まで湖水 がたま り,
20度 くらい傾斜 して船首 が右 に振れ ,そ の状
態 で横 引 き され て転覆 した。 」 旨の供述記載及 び 同調書添付 の転覆
直前 の状況 図
(3)加 藤証人 の 当廷 にお ける,「 C艇 は,上 下 ,左 右 に揺れ なが ら
,
左 舷側 に傾斜 を増 して い っ た。縁 につ かまってい な い と湖 に落 ちて
しま うほ ど動揺 して い た。舵 を取 つ て ミ号 に追 従 して も,船 内に湖
水 が入 つて きた ので ,余 計 な こ とを してい るので はな いか と考 え
,
舵 を取 るの を止 めたが , しば らくは同船 に追 従 して い た。転覆直前
,
左 舷側 か ら大量 の湖水 が船 内に入 り,突 然 ,船 首 が右 に振れ た。 」
旨の供述
(4)山 川艇長 に対す る質 問調 書 中,「 曳航 が始 ま り,遊 園地 の急流 下
りで水 に入 る ときの よ うに ,船 内に湖水 が何度 も入 つ てきた。 」 旨
の供述記載
(5)小 澤証人 の 当廷 にお ける,「 C艇 が曳航 され て ,
ミ号 に真 つす ぐ
追従 して い た ところ,C艇 の船 首 が右 に振れ た 直後 に転覆 した の を
目撃 した。 」 旨の供述
(6)鷲 見証人 の 当廷 にお け る,「 カ ッター は漕 い で い る ときの方 が舵
効 きが よい 。 曳航 され て い る ときは船首 が 引 つ 張 られ て い るので
,
舵 を取 つ て もな かなか回頭 しな い。 」 旨の供述
4
転覆 時刻 に つい ては ,檀 野受審人提 出 の本件 に 関す る陳 述書 (第 2
回 )中 ,「
15時 25分 か ら 15時 28分 の 間 に転 覆 したのではな い
か と思 う。 」 旨及 び石本乗組 員提 出 の本件 に 関す る陳述書 (第 1回 )
15時 25分 頃 に転覆 した の ではないか と思 う。 」 旨の各記載
に よ り, 15時 25分 と認 め る。
中,「
5
転覆 地点 につい ては ,檀 野受審人 の 当廷 にお け る,「 事故後 ,曳 航
12‐
時間 を検証 した ときに使用 した GPSは 日本測地系 である。 」 旨の供
述及び えい航 時 間 の検証 中,「 転覆 した地点 を GPSで 計測 した。 北
緯
34度 46.768分 ,東 経 137度 36.036分
の記載 に よ り,天 神 山頂 か ら 191度
1,100メ
であ つた。 」 旨
ー トル と認 める。
6 C艇 の転覆 時 の船首方 向 につい ては,次 の こ とに よ り, 265度 と
認 める。
(1)檀 野受審人 提 出 の本件 に 関す る陳述書
(第
2回 )中 ,「 C艇 が転
覆す る前 , ミ号 では転針 して い な い。 」 旨の記載
(2)加 藤 艇指揮 に対す る質 問調書 添付 の転覆 直前 の状況図 中,
ミ号及
び C艇 の各船 首方 向
(3)小 澤証 人 の 当廷 にお ける,「 加 藤 艇指揮 に対す る質問調書添付 の
転覆直前 の状況 図 に描 かれ て い る とお りの状態 で , ミ号が転覆 した
の を 目撃 した。 」 旨 の供 述
(4)ミ
7
号 の 定 めた針 路
転覆 時 の 速 力 に つ い て は ,檀 野受 審 人提 出 の本 件 に 関す る陳述 書
(第
1回 )中 ,「 曳航 中,増 速 も減速 も して い な い 。 」 旨の記載及 び
ミ号 の速力 に よ り,
3.7ノ ッ トと認 め る。
(原 因及 び受 審人 の行為 )
本件転覆 は ,浜 名湖 にお いて , ミ号 が ,風 と風浪 に抗 して C艇 を曳航
す る際 ,同 船 の傾斜 を抑制す るため の指導 が不 十分 で ,曳 航 中,同 船船
内に打 ち込 んだ湖水 が排水 され な い まま ,左 舷側 へ の傾斜 を増 した同船
を横 引き した こ とに よつて発 生 した もので ある。
檀野受審 人 は ,浜 名湖 にお いて ,風 と風浪 に抗 して C艇 を曳航す る場
合 ,同 船 に湖水 が 打 ち込 んで 船体 の左 右 へ の傾斜 が大 き くな る と,同 船
の船首 が振れ て横 引 き した ときに転覆 させ るおそれ が あ つ たか ら,滞 留
-13¨
水 が増 えたな らば曳航 を中断 して同水 を くみ出す ことがで きるよ う,滞
留水 の増加 状況 を細か く報告す る ことな ど,C艇 の傾斜 を抑制す るため
の指導 を十 分 に行 うべ き注意義務 があつた。 しか し,同 人は, くみ出 さ
なけれ ばな らないほ どの湖水 が滞留す る ことはない と思 い,C艇 の傾斜
を抑制す るため の指導 を十分に行わなか った職務 上の過失 によ り,同 船
船内 に打ち込んだ湖水が排水 されない まま,左 舷側 へ の傾斜 を増 して船
首 が右 に振れた C艇 を横 引き して,同 船 が転覆す る事態 を招 き,同 船 の
かいを折損 させ ,乗 船 していた生徒 1人 を溺死 させ るに至 った。
以 上の檀野受審人 の行為 に対 しては,海 難審判法第 3条 の規定 によ り
,
同法第 4条 第 1項 第 2号 を適用 して 同人 の小型船舶操縦 士の業務 を 2箇
月停 止 す る。
よっ て主文 の とお り裁決す る。
平成 25年 3月
26日
横浜地方海難審判所
審 判 長
審 判 官
供
仁
審 判 官
榎 木 園
正
審 判 官
吉
弘
-14‐
川
男
これ は 謄 本 で あ る。
平成
25年
3月
26日
横 浜 地方海難 審判所
書
記
:′
ソ
0
88
天神 山
県 市
岡 松
静 浜
1521半
カ ッ タ ー (船 名 な し
(7.00m)
ッカ ビ ユ ー ス セ ン タ T
(7.00m)
Ъ
ヾ
1525
浜 名 湖
[H22.6.18。 1525]
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