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資料8 守島基博委員 資料(PDF形式:56KB)
資料8 90年代からの人材マネジメント の変化と今後の方向性 一橋大学 守島 基博 1 人材マネジメントに関する認識 • 人材マネジメントは、 1)個別企業が、必要な人材を確保し、活 用していくことに関わる一連の活動 • 2)それが企業の競争力や業績に影響を 与える • 3)さらに、それによって、働く人の幸せや、 人生における目標の達成度合い(自己実 現の程度)が影響をうける。 2 90年代から日本の人材マネジメ ントは変化の時期に入っている 1. 戦後における日本の人材マネジメントの3つの 時代 ①戦後直ぐ∼1960年代初頭まで: 内部労働市場の発達と年功主義の時代 ②1960年代∼1990年代初頭まで 日経連による能力主義の時代 ③1990年代∼現在 「成果主義」導入を代表とするこれまでのモデ ルからの変化 ④これから 新しいモデルはできるのか? 3 90年代における変化 バブル経済の崩壊によるショックにより、 1. 長期雇用についての考え方の変化と、非正規 雇用の増大 2. 正社員に関する人件費コントロールを目指した 評価・処遇制度の導入(いわゆる、成果主義) 3. 人材の調達と活用における外部労働市場の利 用 4 成果主義の導入 成果主義評価・処遇制度の導入年 度数 導入年 欠損値 合計 ∼1990 1991-1992 1993-1994 1995-1996 1997-1998 1999-2000 2001-2002 2003-2004 合計 システム欠損値 39 7 15 28 57 159 186 177 668 546 1214 資料:労働政策研究・研修機構(2005) パーセント 3.2 .6 1.2 2.3 4.7 13.1 15.3 14.6 55.0 45.0 100.0 有効パーセント 5.8 1.0 2.2 4.2 8.5 23.8 27.8 26.5 100.0 累積パーセント 5.8 6.9 9.1 13.3 21.9 45.7 73.5 100.0 5 変化を引き起こした要因 1. 人件費の削減・変動費化へのプレッシャー 2. 労働人口の高齢化 -労働人口の高齢化は、当然人権費を増大させる -わが国では、年齢の高い人材をマネージするの が不得手 3. 90年代に進んだ一連の企業改革との連動 ガバナンス構造 ビジネスモデル 組織モデルの変化:フラット化、自律化 6 仕事の成果や結果により処遇や評価に差をつける 90 86.2 85.9 85 83.9 80 77.8 77.2 74.7 75 73.6 73 72.6 71.1 70 65 60 55 50 なし あり 執行役員制の導入 なし あり 株主価値の重視 なし あり 製品やサービスの価格削減 なし あり 競合企業との差別化 なし あり 社内組織のフラット化 7 非正規社員、外部人材などの活用 74 72.6 72 70.9 70 68.3 67.8 68 66 63.9 64 62 64.2 62.8 61.2 61.1 60.8 60 58 56 54 なし あり 執行役員制の導入 なし あり 株主価値の重視 なし あり なし あり 製品やサービスの価格削減 競合企業との差別化 なし あり 社内組織のフラット化 8 部課長など管理職の中途採用 55 49.6 50 46.2 45 44.4 44.3 42.3 41.9 40.9 40 39.5 38.9 37.2 35 30 なし あり 執行役員制の導入 なし あり 株主価値の重視 なし あり 製品やサービスの価格削減 なし あり 競合企業との差別化 なし あり 社内組織のフラット化 9 直近で見えてきた流れ 1. 迷走する成果主義 働く人からの反発 経営者の疑問 2. 人材ポートフォリオの考え方 3. 選抜された人材への傾斜投資 「選抜型リーダー育成プログラム」 4. キャリア意識の多様化を受け入れるための施 策の充実 ファミリーフレンドリー、両立支援施策、カフェ テリアプラン、その他 10 人材ポートフォリオ 図表 人材の価値と希少性の高さによる分類 高い 第四象限 人材確保の方法:提携による共有 人材確保の方法:内部で育成 雇用における関係性:協力、協同 雇用における関係性:組織への一体化 人 必要な人事施策:他社との提携 材 の 希 少 第三象限 性 低い 第一象限 必要な人事施策:組織へのコミットメント を高める工夫 第二象限 人材確保の方法:契約 人材確保の方法:社外からの獲得 雇用における関係性:取引 雇用における関係性:互恵、共生 必要な人事施策:契約の履行 低い 必要な人事施策:外部市場からの調達 人材の価値 高い (資料)Lepak, D.P. and Snell, S.A. (1999), The human resource architecture: Toward a theory of human capital allocation and development. Academy of Management Review, 24 (1), 31-50.より作図。 11 人材ポートフォリオ、具体的には 見習正社員 (若手) ェッ ナ ル ョ … 正基 社幹 員職 プ ル C ロ 非 フ 材専正 門社 等派員 シ 遣 人I アウトソーシン ナ グ・ワーカー (補助職)… パートタイマー、派 遣社員等 、 ョ 正 社 員シ 経営人材 、 ェッ プ ロ フ 資料:山田(2005) 12 成果主義は、企業と働く人にイ ンパクトがあったのか。 1. 賃金の柔軟性 1 .5 特別給与 所定外給与 所定内給与 一般労働者賃金 (%) 1 .0 0 .5 0 .0 ▲ 0 .5 ▲ 1 .0 ▲ 1 .5 ▲ 2 .0 1998 99 2000 2001 2002 2003 2004 2 0 0 5 (年 ) (資料)厚生労働省「毎月勤労統計調査 」 ( 注 ) 暦 年 確 報 の 伸 び 率 か ら 各 年 の 数 字 を 算 定 して 分 析 。2 0 0 5 年 は 1 - 7 月 。 資料:山田(2005) 13 成果主義導入と課長レベルの賃金格差 制度上の格差(指数) 実際の格差(指数) 60 57.12 55 50 49.96 46.03 45 42.15 40 38.86 37.86 37.57 42.74 39.44 36.43 36.42 35 33.93 31.77 30 31.71 31.11 30.32 26.17 25 20.32 20 ∼1990 91-92 93-94 95-96 87-98 99-2000 01-02 03-04 導入なし 成果主義の導入年 14 働く人のモチベーションへの 影響 丁寧な研究の結果は、やや悲観的 1)玄田・上林・篠崎(2001)、大竹・唐渡(2003)など 主効果はなし。補完的施策の必要性を指摘 補完的施策:働き方の変化(裁量範囲の増大、仕事分担の明確化)、 能力育成の機会、評価に関する情報公開 2)大竹・唐渡など:「勝ち組」従業員のモチベーションだけを上げる 3)大竹・唐渡、中嶋・松繁・梅崎(2004)など:本当に成果主義なのか? 1515 大竹・唐渡:成果主義の認識は、賃金が上半分の従業員のみ 中嶋・松繁・梅崎(2004) :査定の縮小→賃金格差の縮小 4)守島(1999):目標管理が同時に導入されないと、モチベーションを下 げる 15 その他のインパクト • 企業業績への成果主義のインパクト 研究なし。 • 雇用構造の変化のインパクト 研究はあまりない。 16 これからの課題 企業の競争力の向上と、働く人の自己実現のすり 合わせ 1. 成果主義の落としどころ、特に長期雇用との関 連で 2. 2つの「2007年問題」 3. 少子化:女性活用の視点で 企業の出来ることと出来ないこと 4. 働き方の多様化へのさらなる対応 ワークライフバランス 5. 非正規労働者の人材育成 17 正社員に関して、 2) 1) 成果主義 と長期雇用 成果主義& 長期雇用 =39.9% 成果主義& 長期なし =18.3% 成果なし& 長期雇用 =29.9% 成果なし& 長期なし =12.0% 1)できるだけ多くの従業員に長期安定雇用を提供していきたい 2)評価や処遇において、成果を重視するような成果主義を導入している 資料:労働政策研究・研修機構(2005) 18 少子化とワークライフバランス • 企業の人材マネジメントにとって、少子化は与件 である。 →そのための長期的な労働力対策 • 企業の人事施策で、少子化を止めることはでき ない →企業ができるのは女性の積極的活用で、企業 の競争力を高めること。ダイバーシティの議論 • 女性人材活用のための、育てることへの支援 • また、こうした議論は、少子化対策というより、 ワークライフバランスという視点で考えていくべき →仕事の場の外での自己実現・生活 →男女を問わず 19 非正規雇用について • わが国企業の人材マネジメントのなかに、非正規雇 用は、しっかりと位置づけられている。 • コスト面から見て、正規と非正規の分離は、企業に とって、大きなプラス • したがって、この分離はこれからも残すべき • ただ、同じ人間が、能力がある、意思もあるのに、非 正規に留まらなくてはならないのは問題。 • 非正規から、正規へのブリッジが必要 →人材育成 →企業の採用の仕組み 20 人材育成型の社会へ 1. 2. 3. 4. 5. 成果主義を定着させるために 働く人の自立化と労働市場の流動化のために 企業戦略の変化に対応するために 女性、高齢者活用のために 企業内労働市場の外にいる人への支援のた めに 働く意欲を高める人材育成 21 職場のモラール、人材育成、成果主義:回帰分析 説明変数 業績給・成果給の導 入 個人業績と連動する 部分の拡大 目標管理 従業員全体の能力向上 を目的とした教育訓練 一部の従業員を対象とし た選抜的な教育訓練 CCDP な ど に よ る 従業員のキャリア開発 定数 分析方法 職場のモラー ル 社員間での競争 意識が高まった 0.030 (0.025) 0.363** (0.173) 0.054** (0.025) 0.472*** (0.179) 0.077 (0.157) 0.060** (0.025) 0.428** (0.184) 0.006 (0.159) 0.079** (0.023) 0.036 (0.166) 0.377** (0.149) 0.041* (0.025) 0.264 (0.168) 0.353** (0.151) 0.042 (0.025) -0.184 (0.272) 0.190 (0.241) 2.066 (0.118) -2.467*** (0.842) -1.226* (0.739) 重回帰分析 ロジスティック 回帰 ロジスティック 回帰 サンプル数 1089 R2乗とPseudoR2乗 0.097 1089 0.085 従業員の仕事へ の意欲が高まっ た 0.082 (0.157) 1091 0.057 注) 1)分析は線形重回帰分析とロジスティック回帰による。()内は標準誤差、***p<.01, **.01<p<.05, *.05<p<.10. 2 ) コ ン ト ロ ー ル 変 数 に つ い て は 本 文 を 参 照 。 詳 し い 結 果 は 、 著 者 に 連 絡 を 取 る こ と で 取 得22 できる。 資料:労働政策研究・研修機構(2005)