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突発異常現象調査
研 究 分 野 研 究 課 題 名 予 算 区 分 試験研究実施年度・研究期間 担 当 協 力 ・ 分 担 関 係 8 その他 (6)突発異常現象調査 県単 昭和 50 年度∼ (主)松山和弘 部 名 漁場保全部 (副)加賀新之助 <目的> 赤潮や魚介類へい死等の突発的異常現象の発生に際し、原因プランクトン種の同定等により原因究明を行 い、情報を蓄積するとともに被害の防止・軽減に努める。 <試験研究方法> 赤潮や魚介類へい死等の突発的異常現象が発生した際に適宜必要な調査を実施する。 今回報告するものについては以下の結果の項に個別に記載する。 <結果の概要・要約> 1 宮古湾における養殖マガキの赤変について (1) 端緒 平成 14 年 4 月 23 日に宮古湾産マガキに赤変が認められるとの情報とともに当該マガキ試料が当所に搬入 されたことから調査を開始した。 (2) 調査方法 色調については、搬入されたマガキの軟体部を実体顕微鏡下で観察し、変色部位を確認した。また、軟体部 に赤変が確認された試料 3 個体を水槽に収容してろ過海水(約 10℃)をかけ流し、赤変状況の変化を観察し た。さらに、赤変の確認されたマガキ試料について凍結・解凍の処理を行い、色調の変化を観察した。 搬入されたマガキ試料の胃内容物については、光学顕微鏡下で観察した。 宮古湾の海水は、平成 14 年 4 月 24 日に宮古漁協搬入の赤変が認められた養殖場所付近の海水(深度 3mと 5m)について濃縮してプランクトン相を観察した。また、湾内 4 点において表層から 5m毎に採水し、その プランクトン相についても観察した。 (3) 調査結果 持ち込まれたマガキ試料を肉眼観察したところ、生殖腺側の閉殻筋の周囲に赤変が確認された。当該試料を 実体顕微鏡下で観察すると、体表皮と消化盲嚢(中腸腺)の間の結合組織が赤色に変色し、消化盲嚢は赤色を 帯びていた。赤変試料を流水下で放置すると 2 日後から徐々に赤色が薄くなり、一週間後にはほとんど退色し て目立たない状態になった。凍結後に解凍すると、着色部位から色素が拡散して他の部位(外套膜等)にも着 色が拡がり、ドリップも赤色を呈した。 胃内容物の調査では、過去に発生した宮城県におけるマガキ赤変の原因の一つとされている Prorocentrum micans は確認されなかったが、同属の minimumu と balticum が多く存在し、繊毛虫類も多く認められた。 海水中のプランクトンを観察したところ、麻ひ性貝毒原因プランクトンである Alexandrium 属は認められ ず、下痢性貝毒原因プランクトンである Dinophysis 属も少数であった。Prorocentrum micans は認められ ず、同属の minimumu が最高で 2450cells/l、balticum が最高で 760cells/l それぞれ観察された。渦鞭毛藻の Protoperidinium spp.が 1000cells/l 程度確認され、珪藻類は総体的に少なく、羽状目珪藻が少し目立って いた。 (4) まとめ マガキの赤変現象の原因として、餌料由来の場合と生理活性低下による場合が考えられるが、今回の赤変現 象については組織の着色状況、流水下での退色状況、凍結・解凍後の色素の流出・拡散状況が過去に宮城県気 仙沼湾で発生した赤変現象についての報告とほぼ一致しており、餌料由来であったのではないかと考えられ る。 昭和 49 年∼52 年の夏から秋に気仙沼湾で発生したマガキ消化盲嚢の赤変現象について、秦らは渦鞭毛藻 Prorocentrum micans 由来のPCP(peridinin-chlorophyll-a-protein)の蓄積によるものとしている。ま た、昭和 52 年 12 月∼翌年 3 月に発生した赤変現象については P.micans 以外の渦鞭毛藻が原因であること を示唆している。 152 今回の調査で確認された minimumu や balticum が赤変の原因となるという報告はこれまでになされてい ないが、これらが P.micans と同様に PCP を含有していて今回の赤変現象の原因となった可能性は否定でき ない。 また、今回調査時の minimumu や balticum の細胞密度は極端に高い濃度ではなかったが、調査時以前に 高濃度となっていたことは考えられる。さらにマガキの胃内容物に繊毛虫類が目立っていたことから、これら が PCP を濃縮してマガキに捕食されたことで PCP がマガキに顕著に蓄積し、赤変現象にいたった可能性も ある。 このように、今回の赤変現象の原因は、餌料である Prorocentrum minimumu や balticum の PCP であ ったものと推定されるが、確定するためには再現試験等による検証が必要である。 2 唐丹湾小白浜漁港における赤潮の発生について (1) 端緒 平成 14 年 7 月 2 日、唐丹湾小白浜漁港区域内で海水が緑色に変色しているとの情報を入手し、調査を実施 した。 (2) 調査方法 当該漁港内の海水を光学顕微鏡下で観察した。 (3) 調査結果 調査した試料には無殻で淡緑色のプランクトンが数万 cells/ml 程度存在しており、これが赤潮の原因であっ た。当該プランクトンは長さ 8μ∼18μ、幅 5μ∼8μであった他、鞭毛を 2∼4 本有すること、緑色の顆粒が 3∼10 個認められること等の特徴を有していたが同定することはできなかった。 なお、本赤潮発生による漁業被害の発生はなかった。 <今後の問題点> <次年度の具体的計画> 異常現象等が発生した場合には適宜調査等を実施する。 153