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Peter Fulde (マックスプランク複雑系物理学研究所 名誉教授 (ドイツ
来賓挨拶 ドイツの科学界における マックス・プランク協会 ピーター・フルデ マックス・プランク複雑系物理学研究所 名誉所長(ドイツ) Peter Fulde 浦項工科大学アジア太平洋理論物理研究センター 理事(韓国) ドイツにおける科学へのサポートは非常によく組織されている。大学は、教育 制度にも責任のある連邦州から資金提供を受けており、行われる多くの研究は連 邦州と連邦政府によって設立された四つの機関によって強化されている。基礎研 究を行うマックス・プランク協会、応用研究を行うフラウンホーファー協会、加速器のような大型装置を擁 するセンターによって組織されるヘルムホルツ協会、ドイツ合併以降、主に旧ドイツ科学院の施設の併合に よって急成長を遂げたライプニッツ協会があり、これはマックス・プランク協会とフラウンホーファー協会 の中間に位置づけられる。連邦州と連邦政府による四つの機関のための予算は全く異なる。ヘルムホルツ協 会は 90%が連邦政府予算である が、マックス・プランク協会と ライプニッツ協会は連邦州と連 邦政府から、それぞれ 50%ずつ 受けている。フラウンホーファー 協会に関しては、予算の 50%を 産業界との契約から得ている。 また、PTB(ドイツにおいて 標準単位や計量の規制など特定 の法的義務を担う、米国の NIST (アメリカ国立標準技術研究所) に相当する機関)のように連邦 政府単独の資金提供によって運 営されるものがある。 マックス・プランク協会の使命は、様々な研究分野の最先端で革新的・学際的研究を推進することである。 マックス・プランクが「知は応用されるべきである」と語ったように、その成果によって経済及び人類の知 見の充実に寄与することを目指している。 マックス・プランク協会の運営の特徴は: −世界中の傑出した科学者を採用する。研究におけるテーマ選択や手法においては彼らの自主性を重んじる。 −柔軟で活発な研究ユニットを運営するために、安定的・長期的な公的資金を得る。 −国際的な科学諮問機関により、研究の水準を厳しく管理する。 −別事業体であるマックス・プランク・イノベーションを介して技術移転を支援する。 −学際的、国際的研究を遂行する。 マックス・プランク協会の国際的姿勢は、以下の点に顕著に表れている。 169,000 人のスタッフのうち、16.4%は国外出身者である(数字は 2011 年 1 月現在) 。研究系のスタッフ に限れば、その割合は 33.1%、全研究所長では 29.8%を占める。4,600 人の若手研究者と客員研究者では、 50%が国外出身者であり、博士研究員となるとその数は 88.6% にものぼる。また、博士課程の学生の約 50% が外国からの留学生である。 マックス・プランク協会の“サイエンティフィック・メンバー”である 273 人の研究所長は、以下の三つ の研究組織に属している。①化学・物理学・工学部門(50%) 、②生物学・医学部門(40%) 、③人間科学 6 基礎科学ノート Vol.20 No.1 July 2012 には応用生物学、ゲノム研究、構造生物学、神経科学、生体撮像がある。③には生態学・環境学に続いて教 養学、法学、社会行動科学が含まれる。 ドイツ国内全ての連邦州がマックス・プランク協会に費用を投じているため、ドイツ全土に 82 のマックス・ 来賓挨拶 部門(10%)。①の代表的な研究分野としては、天文学、物理学、化学、数学、材料科学、地球科学が、② プランク研究施設が存在する。これらの施設では特に博士課程の学生の教育に力を入れている。62 の国際 マックス・プランク研究学院が地元大学との提携によって設立され、2,700 人の博士課程の学生に質の高い 教育を行っており、ドイツの研究基盤の国際化にむけて効果的なシステムとなっている。 昨年、マックス・プランク協会は交流と協力を通じてさらなる国際化戦略を展開した。手法は様々だが、 最も端的な例はマックス・プランク・パートナー・グループ制度である。国内外ともにパートナーの年齢は 40 歳以下と定められており、年間最大 20,000 ユーロの援助を 5 年間に渡って受けることができる。 協力体制の要となるのはマックス・プランク・センターである。優れた研究計画に基づき、それぞれのテー マに少なくとも一つのマックス・プランク研究所と国際的高水準の研究機関が参画する。予算は双方が出し 合い、存続期間は 5 年間だが延長も可能である。研究の質は学術的諮問委員会によって担保される。二つの マックス・プランク・パートナー研究所と、いくつかのマックス・プランク研究所が国外、主にヨーロッパ に存在し、最近ではフロリダに唯一ヨーロッパ以外のマックス・プランク研究所が設立された。そこでは生 物化学の研究が行われている。 基礎研究を遂行するマックス・プランク協会の方針は、多数の目覚ましい成果をもたらした。1948 年以来、 32 のノーベル賞を含む国際的な受賞の数々がそれを証明している。その実績は多くの実践的な成果をもた らしている。年間80 ∼ 100の特許申請が行われ、 年間15,000,000ユーロの特許収入がある。1990年以降、マッ クス・プランク協会によって 86 の企業が始動しており、そのうち 7 つが上場している。携わった従業員数 は 2,300 人にのぼる。 マックス・プランク協会と日本の科学界との協力関係は長年にわたっている。両国のために、今後もこの 関係をさらに強化、発展させていきたい。 謝辞:本情報の公開にあたっては、マックス・プランク協会本部の協力を得た。 基礎科学ノート Vol.20 No.1 July 2012 7