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研究専攻(専門領域) 日本・アジア研究専攻 学籍 - SUCRA
埼玉大学文化科学研究科修士課程学位論文・特定課題研究成果要旨 研究専攻(専門領域) 日本・アジア研究専攻 氏名 ローマ字 尾崎 百合 学籍番号 05CS012 国籍 OZAKI YURI (留学生) 修士学位 論文名 『「 五 四 」 前 夜 の 「 迷 信 」「 科 学 」「 宗 教 」 に つ い て 』 ~ 1918 年 前 後 に お け る 科 学 と 迷 信 の 論 争 を 中 心 に ~ 特定課題研究名 提出年月日 2008 年 1 月 10 日 指導教員 体裁 言語 小谷一郎 日本語 (論文) 別冊添付資料等 キーワード 別表 日本と中国における論争のフローチャート 中国近現代文学 科学 迷信 1918 年 二頁 五四 1915 年 9 月 に 中 国 で 創 刊 さ れ た『 青 年 雑 誌 』( 後 の『 新 青 年 』)の 中 に 、発 刊 の 辞 で あ る 陳独秀の《敬告青年》という文章がある。その内容は、読者に向かって当時の中国が抱え ていた問題と、これを解決するための 6 つのスローガンを提唱したものであった。そのう ち の 最 後 の 一 つ で あ る 、「 想 像 的 で な く 、 科 学 的 で あ れ 」 と い う そ れ は 、 後 に 1918 年 を 頂 点に、 「 迷 信 」問 題 と し て 大 き な 論 議 を よ ぶ こ と と な る 。当 時 の「 迷 信 」は 、そ の 定 義 が 非 常 に 複 雑 で あ り 、従 来 の「 封 建 的 な 迷 信 」を 含 む ほ か 、新 興 の「 迷 信 」、さ ら に「 宗 教 」そ の も の を 一 括 り に し て 考 え ら れ て い た 。た と え ば「 霊 学 」を 標 榜 し 、 「 霊 魂 写 真 」な ど の 偽 物 の「 科 学 」を 主 張 し た「 上 海 霊 学 会 」は 、『 新 青 年 』の 記 者 か ら「 迷 信 」と し て 強 い 批 判 を受けていたし、 『 新 青 年 』上 で も「 儒 教 」を「 宗 教 」と 同 一 視 す る こ と で 、他 の 宗 教 す ら も 「 迷 信 」 と 見 な し て し ま う よ う に 、 当 時 の 「 迷 信 」 は ま だ 「 迷 信 」「 科 学 」「 宗 教 」 と し て未分化であった。 こ の 論 文 で は 、 1918 年 を 中 心 に 起 こ っ た ‘「 迷 信 」 を 巡 る 論 争 ’ を 考 察 す る こ と で 、 当 時 の 「 迷 信 」・「 科 学 」・「 宗 教 」 が ど の よ う な も の で あ り 、 ま た ど の よ う に 扱 わ れ て い た の か を 明 ら か に し た も の で あ る 。中 国 で 起 こ っ た「 新 し い 迷 信 」は 、以 前 か ら の 封 建 的 な「 迷 信 」 と は 違 い 、 相 手 (『 新 青 年 』 側 ) に 具 体 的 な 「 科 学 」 を 要 求 し た 。『 新 青 年 』 は こ れ に 対 し 、留 学 先 で 得 た「 科 学 」の 知 識 で 以 っ て 、「 扶 乩 」や「 霊 魂 写 真 」と い っ た 行 為 を「 全 く根拠ないもの」と非難する。また「霊魂写真」の論争に関しては、日本の心理学者や文 献 を 持 ち 出 す な ど 海 外 の 影 響 も 強 く 見 ら れ る 。こ の こ と か ら 、中 国 と 日 本 の 論 争 を 比 較 し 、 その特徴や違いも検討した。また「上海霊学会」の主要構成員の一人であった陸費逵は、 蔡 元 培 と 同 じ「 教 育 」の 立 場 か ら 、 「 精 神 修 養 」の 重 視 と い う 面 で 、そ の 思 想 に 共 通 点 を 見 ることができる。だが「霊魂」の有無という、当時の中国が抱えた「迷信」問題の大きな 課題は、二人の間に大きな隔たり生じさせた。この点においても、二人の考える「宗教」 の利点や、彼らの主張する「精神」が何を指し、どこに違いがあるのかを明らかにしてい る。 以 上 の 点 か ら 1915 年 に 提 唱 さ れ た 「 迷 信 」 と 「 科 学 」 の 問 題 が 、 1918 年 前 後 に 流 行 し た 新 興 の「 迷 信 」の 論 争 を 経 て 、 「迷信」 「科学」 「 宗 教 」の そ れ ぞ れ の 定 義 を 再 考 す る こ と と な っ た 。 そ し て あ る 程 度 の 結 果 を 得 た こ と で 、 翌 年 か ら の 「 信 仰 」 や 「 人 生 観 」、「 宗 教 」 という問題に間接的に思想の深化を促したのではないか、と本稿で結論付けている。