Comments
Description
Transcript
東京紛争解決グループ - ホワイト&ケース法律事務所 ホワイト&ケース
紛争解決 東京紛争解決グループ 2011年7月 特集… ■■ ■■ ■■ ■■ 「Practice Tip」 契約の一般条項を理解するために: 完全合意条項 「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について 米国における職務の範囲外の行為を理由とした従業員の差別的取扱いの制限 文書の提出: 国際仲裁の重大な特徴 「Practice Tip」契約の一般条項を理解するために 完全合意条項 連載中の「契約の一般条項を理解するために」では、今月は「完全合意条項」を取り上げま す。完全合意条項そのものの検討に加えて、最終決定版の契約締結前にレターオブインテ ントや覚書などを締結することによって起こりうる契約に関する紛争を最小限に抑え、または解 決するために完全合意条項が重要となりうる理由についても検証します。詳しくは2ページを ご覧下さい。 「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正す る法律」について ホワイト&ケースの東京紛争解決チームは、 国際仲裁、複雑な商事訴訟、政府調査につい て経験豊富な30名を超えるロイヤーの集まり です。東京のチームは、そのグローバル・ネッ トワークである北京、香港、ロンドン、ニューヨ ーク、パリ、シンガポールやその他の主要都 市の事務所から、紛争解決に高度な専門性 を有する500名を超える人材を活用し、素早く かつ効果的な対応を複数の司法権にまたが って提供することができます。世界中で紛争 やリスクを回避できる効果的な予防策のアド バイスを、迅速でコスト効率の良いソリューシ ョンを提供しています。 第177回国会において、「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法 律」が成立した。同法律は平成23年6月24日に公布され、同年7月14日にその一部が施行され た(未施行部分についての施行日は未定)。 本法律はサイバー刑法と言われることもあるが、サイバー関係の法整備のみならず、それに加え て強制執行妨害関係の罰則整備をも目的としている。したがって以下では、サイバー関係の法 整備と強制執行妨害関係の罰則整備とに分けて説明する。 サイバー関係の法整備について サイバー犯罪に国境は意味を持たない。そのため、サイバー犯罪の摘発には各国の連携が必 要となる。日本を含むG7全ての国とヨーロッパ各国は、近年、サイバー犯罪に関する条約に署 名している。法務省によれば、日本国内におけるサイバー犯罪は平成12年から平成21年の間に 約7倍に増えている。これらの状況を踏まえて、サイバー関係の国内法の整備が必要とされた。 平成17年にも、法制審議会(ハイテク犯罪関係)にて取りまとめられた内容を踏まえて国会に法 案が提出されたことがあるが、その際には様々な批判を受け法案は廃案とされた。その際の国会 審議などを踏まえてあらためて成立したのが、本法律である。 本法律での主要な改正点は以下のとおりである。 (1) 通信履歴の電磁的記録の保全要請の規定の整備 捜査機関(司法巡査を除く)は、差押え等をするため必要がある場合には、プロバイダ等に対し て、業務上記録している通信履歴(通信の送信先、送信元、通信日時など)の電磁的記録のうち 必要なものを特定し、一定期間(通常は30日以内、特に必要がある場合には延長が可能である がその場合でも合計60日以内)消去しないように書面で要請することができるようにする。 ATTORNEY ADVERTISING. Prior results do not guarantee a similar outcome. 東京 ホワイト&ケース法律事務所 ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所 (外国法共同事業) 100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館26階 03 6384 3300 シンガポール White & Case Pte. Ltd. 50 Raffles Place #30-00 Singapore Land Tower Singapore 048623 Reg. No. 200010572Z + 65 6225 6000 東京紛争解決グループ 「Practice Tip」 契約の一般条項を理解するために 完全合意条項 米国法に準拠する契約には、当該契約が その主題に関する当事者間の完全な合意 であると定める標準的な条項が含まれるこ とが多い。この条項は「完全合意」条項と称 される。通常、契約の当事者らは、最終的 に合意に至って最終的かつ統合された契 約を締結する前に、多数の同意書、覚書 又はその他の取引上の合意を締結する。 紛争が発生した場合には、そのような従前 の契約が終了し若しくは最終的な契約に よって完全に取って代わられ効力を失って いるか、又は単に変更及び補足されたに 過ぎないのかが問題となることがある。完 全合意条項の目的は、当事者に、従前の 書面又は口頭による合意のうち後の契約と 矛盾しない部分は引き続き有効で拘束力 を有しているとの主張をさせないようにする ことである。このような主張に対抗するため に、完全合意条項を援用して、後の契約に は「完全合意」が含まれており、かかる「完 全合意」は、後の契約に特定されていない 条項を含めた従前のすべての合意(書面 によるものであるか口頭によるものであるか を問わない。)を置き換え、それらに取って 代わるものであるという反論を行うことにな る。つまり、一般的には、予期しないトラブ ルや紛争を防ぐためには、契約中に完全 合意条項を設けるのが望ましいと言える。 <留意点> ■■ 保存対象には通信の内容は含まれない。 ■■ 要請は書面で行われる。 ■■ 当該電磁的記録を入手するには、別途令 状が必要。 ■■ 要請があった時点でいまだ記録されていな いものは対象にならない。 (2) いわゆるコンピュータ・ウィルスの作成・ 供用等の罪の新設 作成・提供・供用 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 取得・保管 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 アンチウィルスソフトの開発や試験などの目的 でウィルスを作成したりすることや、プログラミ ングの過程で誤ってバグを発生させてしまっ た場合などはこの罰則の対象にはならない。 他方、コンピュータ・ウィルスを作成等した場合 だけでなく、取得・保管した場合にも罰則の対 象となることには注意が必要である。 (3) 電子計算機損害等業務妨害未遂罪の 新設 (4) 記録命令付差押えの新設 プロバイダ等に、サーバコンピュータ等に保 存されている必要なデータのCD-R等への記 録を命令し、これを差押えることができるよう にする。 (5) 接続サーバ保管の自己作成データ等の 差押えの新設 差押えの対象物であるコンピュータで作成し たメールを保管しているメールサーバや、当 該コンピュータで作成した文書ファイルを保管 しているストレージサービスのサーバなどから データを差押対象のコンピュータに複写して、 当該コンピュータを差し押さえることができるよ うにする。 (6) 電磁的記録にかかる記録媒体の差押え の執行方法の整備 コンピュータの差押えに代えて、データを CD-R等に複写し、これを差押える。 この法案に対しては、一部で「コンピュータ監 視法案」などとの批判も向けられている。その ため、法務省は本法律についてのQ&Aを作 成し公表しているほか、いわゆるコンピュータ・ ウイルスに関する罪については立案担当者の 考え方も公表している。これらの情報は、同省 のホームページから入手することができる1。 既に説明したとおり、捜査機関が実際に保存 されている通信履歴の電磁的記録の取得など をするためには別途裁判所の令状を取得しな ければならない。裁判所の令状を要求するこ とにより、捜査機関が個人のプライバシーをみ だりに侵害されるおそれがないように担保され ているのである。しかし、令状が比較的容易に 発付されるような運用がなされた場合には、 「一般市民のコンピュータの使用が監視され る」おそれがあり、またプロバイダ等としてもそ のような要請があった場合には実際上通信履 歴を開示しなければならないような事態になる 可能性もある。したがって、今後は裁判所によ る令状発付がより慎重になされる必要がある。 強制執行妨害関係の罰則整備について 平成13年の司法制度改革審議会意見書は、 占有者等による不動産執行妨害への対策を 導入すべきとの意見を公表している。これに対 して、民事法上はすでに平成16年4月施行の 改正により対応がなされていた。そこで、今回 は刑事法の観点からの法整備がなされた。 本法律での主要な改正点は以下のとおりで ある。 (1) 封印等破棄罪(刑法96条)の処罰対象 の拡充及び法定刑の引き上げ 公務員が施した公示札等の損壊等だけでは なく、公示札が取り外された後に不動産を占 拠して妨害する行為など、封印等の表示にか かる命令や処分を無効にした者も処罰対象と された。 法定刑は現行の「2年以下の懲役又は20万円 以下の罰金に処する」から「3年以下の懲役若 しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを 併科する」として、懲役期間、罰金額とも引き 上げられ、かつ併科が可能となった。 1 (Q&A: http://www.moj.go.jp/content/000073740.pdf、 立案担当者の考え方:http://www.moj.go.jp/content/000076666.pdf) 2 2011年7月 (2) 強制執行妨害罪(刑法96条の2)の処罰 対象の拡充及び法定刑の引き上げ 強制執行の対象たる建物に廃棄物を搬入・ 放置することによる価格減損行為、強制執行 を妨害する目的で目的財産を他人に無償譲 渡する行為、強制執行を妨害する目的で強制 執行の申立権者に暴行・脅迫を加える行為な どが処罰対象とされた。 法定刑は現行の「2年以下の懲役又は50万円 以下の罰金に処する」から「3年以下の懲役若 しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを 併科する」として、懲役期間、罰金額とも引き 上げられ、かつ併科が可能となった。 (3) 競売等妨害罪(刑法96条の3)の処罰対 象の拡充及び法定刑の引き上げ 競売申立ての予想される物件に暴力団の代 紋を掲示するなどして、競売入札を断念させ る行為などが処罰対象とされた。 (4) 加重処罰規定の新設 (1)および(2)については報酬目的でこれを行 った場合には刑罰が加重され、「5年以下の懲 役若しくは500万円以下の罰金に処し、又は これを併科する」とされた。 法定刑は現行の「2年以下の懲役又は250万 円以下の罰金に処する」から「3年以下の懲役 若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこ れを併科する」として、懲役期間が引き上げら れ、かつ併科が可能となった。 米国における職務の範囲外の行為を理由とした従業員の差別的取扱いの制限 米国労働法は、伝統的に、職務外の行為を理 由とした労働者の差別的取扱いを広く許容し ている。これは、米国では日本と異なり、「随意 的雇用」(employment at will – いつでも無 条件に離職・解雇できるとする労働契約)が一 般的であることに基づいている。しかしながら ここ何年かの間に、連邦及び州レベルの立法 により、随意的雇用の原則が制限される範囲 が拡大している。雇用主が、保護されるべき従 業員の属性に基づき、従業員ごとに異なる取 扱いをすることは、違法な差別的取扱いとなる 可能性がある。ここでいう保護されるべき従業 員の属性とは、喫煙など自らの選択による行 為ではなく、人種、宗教、性別及び障害などと いった、本人の意思では変えることのできない 属性と密接に関連するものをいう。 さらに近年では、喫煙その他の職務の範囲外 の行為を理由とする差別的取扱いを禁止す る、いわゆる「ライフスタイル差別法」が州の立 法機関で可決されている。これは、米国にお ける労働者の差別的取扱いに対する保護の 範囲が、これまでに確立されてきた範囲よりも 拡大しつつあることを意味する。例えば、ミネ ソタ州及びイリノイ州では、喫煙などのオフィス 外での合法な行為に基づき、従業員の差別 的取扱いをすることを禁止する法律が可決 された。また、コロラド州及びノースダコタ州 では、今後、職務の範囲外のあらゆる行為 に基づく差別的取扱いを禁止することになっ た。連邦レベルでは、全米労働関係委員会 が、2011年2月に公表したコネチカット州の会 社に対する裁定において、従業員がソーシャ ル・ネットワーキング・サービスであるFacebook 上で上司について否定的な意見を述べたこと を理由として、当該従業員を解雇したことを違 法と判断し、職務外でのソーシャル・メディア の利用という特定の問題に介入した。 雇用主の観点からは、従業員の職務の範囲 外における合法的な行為のうち、喫煙、飲酒 及びリスクの高い活動への参加等の行為は、 深刻な生産性の低下及び医療費の増加をも たらす可能性がある。同様に、特にインターネ ット上で多くの人が閲覧できるような発言は、 市場における雇用主の評判を害する可能性 がある。 ライフスタイル差別法における重要な論点は、 個人の自由と、会社の経済的利益に基づく雇 用に関する決定の自由の対立にある。個人 は、業務の成果のみに基づいて判断されるこ とを望むだろうが、一方、従業員が職務の範 囲外においてまったく自由に行動できるとす れば、会社の利益及び信用を著しく損なう可 能性がある。 すなわち、米国においては依然として随意的 雇用が一般的なルールとして許容されるもの の、ライフスタイル差別法により、雇用主が職 務の範囲外の行為に基づいて雇用判断を行 うことは、もはや困難になったといえる。したが って、米国内の雇用主は、職務の範囲外の行 為に基づき、従業員に不利益な処分を行う方 針を示す前に、対象となる従業員が就業する 州においてライフスタイル差別法が施行され ているか否か、また、当該法律が職務の範囲 外の行為をどの程度保護しているかを確認す るべきである。 文書の提出: 国際仲裁の重大な特徴 国際仲裁において事実を立証するためには、 文書が非常に重要である。仲裁人は通常、 終局判断や仲裁判断に至る際にその時点で 存在する文書を主たる根拠とするからである。 文書の提出(document production)(英米法 の証拠開示(discovery)よりも範囲が狭い。) という手続は、国際仲裁実務により発達してき た。この手続により、各当事者(申立人と被申 立人)は相手方に対し、相手方が所持する文 書で紛争の解決に関連する文書を提出させる ことができる。文書の提出は国際仲裁におい て一般化しているため、両当事者はそれに備 えなければならない。「文書の提出」を使いこ なすことができれば、それは自己の主張を強 める強力なツールとなり得る。しかし、適切に 使えなければ、それは限定的な効果しか持 たず、又は逆効果となることさえあり得る。 White & Case 手続の枠組み: IBA規則 国際仲裁では、両当事者と仲裁人は文書の 提出等の手続事項について合意することがで きる。1999年のIBA国際商事仲裁証拠調規則 (以下「IBA規則」という。)は文書の提出の標 準的基準となっている。IBA規則は、英米法 の方式の証拠開示(過剰と見られることが多 い。)と、大陸法の方式(文書の提出に対し てきわめて制限的アプローチが採用されてい 3 東京紛争解決グループ る。)との間で、非常に効率的にバランスがと れた規則であり、その意味で真に国際的な規 則であるといえる。このバランスは、2010年5月 29日にIBA理事会が採択した新しいIBA規則 においても維持されている。 文書の提出の手続は通常仲裁開始時に決定 され、仲裁人と両当事者は全体的な進行予定 について合意する。新IBA規則は、仲裁廷に 対し、効率的、経済的かつ公正な証拠調べ手 続について合意するために、手続中できる限 り速やかにかつ適切な時期に当事者と協議す る義務を課しており、また、当該協議で取り扱 う事項につき限定列挙している。 文書の提出は、まず当事者が相手方に文書 の提出を要求する詳細な書面を提出した後に 行われるのが一般的である。1999年と2010年 のいずれのIBA規則においても、当該文書の 提出の要求には以下の事項を記載しなけれ ばならないと規定されている。 ■■ 当事者が入手を希望する文書の表示又は 限定かつ特定されたカテゴリーの表示 ■■ 対象文書と仲裁事件との関連性及び当該 仲裁事件の結果における重要性の記述 ■■ 文書の提出を要求した当事者が対象文書 を「所持、管理又は支配」していないこと及 び文書の提出を要求した当事者において 相手方が対象の文書を「所持、管理又は支 配」していると考える理由の記述 文書の提出の要求は、手紙、eメール、覚書、 議事録、その他の書証等、多種多様な文書 (電磁的記録又は紙媒体)を対象とすることが できる。 各当事者は、要求された文書を提出するか、 または提出に異議を申し立てるかのいずれ かを選択できる。IBA規則に基づく異議申立 事由としては、(a)仲裁事件との関連性又は重 要性の欠如、(b)適用される法令又は倫理規 則上の法的障害又は秘匿特権の存在、(c)証 拠の提出要求に応じることによる不合理な負 担、(d)合理的に示された文書の紛失又は棄 損、(e)やむを得ない業務上又は技術上の秘 密の存在、(f)やむを得ない政治的又は組織 上の特別機密(政府又は公的国際機関にお いて機密と分類された証拠を含む。)、(g)当 事者の公平または平等を考慮してやむを得 ないと判断される場合、が挙げられている。 4 異議が申し立てられた場合、仲裁廷は争点に つき裁定し、異議を認めるか、又は文書の提 出を命ずる。 実務上、書面の提出要求、異議及び仲裁判 断は、「レッドファーン・スケジュール」(著名 な英国の仲裁人のAlan Redfernにちなんだ 名称)と呼ばれる表で一括提示されることが 多い。 実務上のポイント 文書の提出は、規則、慣行、そして目標を十 分に理解して注意深く利用すれば、当事者の 主張の立証に有用な手段となり得る。以下に 実務上のポイントを挙げる。 ■■ 最初から自己の立証と文書をよく把握して いなければならない。「有利な」文書、「不利 な」文書(文書の提出において問題となる可 能性がある。)、「紛失した」文書(相手方か ら要求される可能性がある。)を把握してお かなければならない。 ■■ 「致命的な」文書の提出が遅れれば遅れ るほど、結果的に損害は大きくなる。とり わけ、仲裁廷から提出が命じられた場合 は特に損害が大きくなるだろう。多くの場 合において、このような文書は強制される 前に提出する方が望ましい。そうすること により、より好ましい「損害のコントロール (damage control)」ができ最適な状況で 文書の提出をすることができるのである。 ■■ 異議申立の正当事由がない限り、文書の 提出要求には、協力的かつ誠実に対応す べきである。そうすることで、仲裁廷からの 信頼は厚くなるだろう。 文書の提出の利点と危険性 文書の提出の主な利点は、自らの主張を補 強する文書を相手方から取得することができ る点である。このような文書を取得することは 極めて重要である。ホワイト&ケースが実際 に代理した案件から例を挙げると、建築関係 の紛争において、我々は、相手方から費用に 関する内部文書を取得できたために、相手方 の請求金額が著しくつり上げられていたことを 証明できた。また、契約交渉の一方的破棄に 関する紛争において、相手方から内部文書 である取締役会議事録を入手したところ、主 張されていたことと相反して当該取締役会が 幣所のクライアントに何ら知らせることなく、実 際には主張していたときよりも何ヶ月も前に買 収を進めない決定をしていたことが判明した。 いずれの事例においても、文書の提出は紛 争の結果に決定的影響を与えたのである。 しかしながら、文書の提出は、適切なアプロー チと理解に基づいて行なわなければ危険な場 合があり、かえって裏目に出て当事者に不利 益を与えることがある。当事者(及びその弁護 士)の文書の提出に対する理解とアプローチ は、出身法文化圏によってかなり異なることが ある。例えば、文書の提出が実際上全く行わ れない大陸法圏出身の当事者は、基本的に 文書の提出に反対する傾向がある。しかし、 このような文書の提出に対する態度が逆効 果となり、仲裁廷の反感を買うことがありうる。 つまり、正当事由のない異議申立は成功する 可能性が低いばかりか、逆に妨害的とみなさ れる可能性がある。他方、広範囲の開示を慣 例とする英米法圏出身の当事者は、要求より も多くの文書を開示してしまい、自身に不利な 文書を過度に露呈する結果となる可能性があ るのである。 文書の提出には、仲裁が始まった時点から 真摯に対応し、経験と注意と十分な準備を もって臨むべきである。適切に利用すれば、 勝訴の決定的な道具となり得る。 この記事の筆者はChristophe von Krause 及びLuka Kristovic Blazevicであり、原文 はInternational Disputes Quarterly 2010 年夏号に掲載されている。http://www. whitecase.com/idq/summer-2010-1/ 本ニュースレター掲載記事に関する ご質問等は、下記にご連絡ください。 デイビッド・ケース 東京 パートナー [email protected] マーク・グッドリッチ 東京 パートナー [email protected] ロバート・グロンディン 東京 パートナー [email protected] 荻原 雄二 東京 パートナー [email protected] ナンダクマール・ポニヤ シンガポール パートナー [email protected] whitecase.com 「ホワイト&ケースは、『高い専門性とサービ ス重視の姿勢を持ち続けており』、弁護士と英 米法のロイヤーがうまく協働している。とりわ け独禁法及び建設関連の紛争解決分野は特 筆に価する。」 Asia Pacific Legal 500 (2010年/2011年) 「国際的に結びつきが強いそのネットワークと 各分野における豊富な経験を有する」この偉 大なファームは、日本における卓越した紛争 解決の主プレーヤーたる所以。クロスボーダ ーの紛争解決案件は、チームの主力となる独 禁法、建設、国際通商、企業関連からなり、チ ームの要で」 本ニュースレターは、読者の便宜のために 提供されており、法的なアドバイスを成すも のではありません。本ニュースレターは、弊 事務所のクライアント及び関係者に一般的 な情報を提供するために作成されており、い かなる場合においても適切な法的アドバイ スなく特定の状況で用いられるべきもので はありません。なお、本ニュースレターはホワ イト&ケースのウェブサイト以外のウェブサイ トへのリンクを含むこともあります。 Chambers Asia (2010 年) ホワイト&ケースは自らのサイト以外のいか なる他のウェブサイトについても責任を負う ものではなく、また、あらゆる他のウェブサイ トについて、その情報、内容、表現、正確さを 是認するものでも、明示黙示に関わらず保 証するものでもありません。 ホワイト&ケースは、「中国及び東南アジアを カバーする国際仲裁業務において秀でている と認識されており、複雑なクロスボーダーの商 事紛争案件を多数取り扱っているチーム。」 本ニュースレターは著作権によって保護さ れており、その内容は適切なクレジットを付 与することで複写あるいは翻訳ができま す。なお、本ニュースレターの英語版もあり ます。 Chambers Asia (2009 年) アロク・レイ シンガポール パートナー [email protected] 梅島 修 東京 パートナー [email protected] ジェイク・バカーリ 東京 アソシエイト [email protected] ジョエル・グリヤー 東京 アソシエイト [email protected] ホワイト&ケースの東京事務所は「国際仲裁 について最高の水準」、「クロスボーダー紛争 案件における卓越した技術を有する」と賞賛。 Chambers Asia (2009 年) 2009年企業内弁護士及びビジネスリーダーに よるアジア全体の調査において、国際仲裁及 び紛争解決グループを有するトップクラスの 国内ローファームである。 Asian Legal Business (2009 年) 内藤 裕史 東京 アソシエイト [email protected] 大島 忠尚 東京 アソシエイト [email protected] In this publication, White & Case means the international legal practice comprising White & Case LLP, a New York State registered limited liability partnership, White & Case LLP, a limited liability partnership incorporated under English law and all other affiliated partnerships, companies and entities. AP0511002_JPN_12