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日本企業のアセアン事業の現状と展望
日本企業のアセアン事業の現状と展望 2015年10月 株式会社日本総合研究所 総合研究部門 シニアマネジャー 坂東 達郎 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0] 講演内容 1.ASEANにおける日系現地法人の活動 1.1 日系海外現地法人の活動 1.2 日本の対ASEAN直接投資 2.ASEANの統合と産業集積 2.1 ASEANに広がる日系現地法人の製造拠点 2.2 ASEANで進む産業集積 ∼自動車産業の事例 2.3 「タイ・プラスワン」の動き 3.今後の展望 3.1 消費するASEAN 3.2 老いるASEAN ∼中所得国の罠 3.3 事業展開のあり方 1 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.ASEANにおける日系現地法人の活動 1.1 日系海外現地法人の活動 2 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.1 (1) 日系海外現地法人の活動(企業数) • 日系海外現地法人の世界全体での企業数は、2012年度に2万社を突破し、2013年度は23,927社。 • このうち、アジア(中国、ASEAN4、NIEs3、その他アジア)の企業数は15,874社で全体の66%を占める。 【図表】日系海外現地法人の企業数(左:推移、右:シェア) (社) リーマン・ショック 30000 全地域 25000 北米 20000 北米 13% その他 19% アジア 中国・香港 15000 中国本土 10000 欧州 12% 23,927社 (2013年度) ASEAN4 NIEs3 5000 NIEs3 11% 欧州 ASEAN4 17% 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 中国本土 28% (年度) (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注)ASEAN4は、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン。NIEs3は、シンガポール、台湾、韓国。 3 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.1 (2) 日系海外現地法人の活動(常時従業者数) • 日系海外現地法人の世界全体での常時従業者数は、2011年度に500万人を突破し、2013年度は552万人。 • このうち、製造業を中心としたアジアでの雇用が402万人で、世界全体の73%を占める。 【図表】日系海外現地法人の常時従業者数(左:推移、右:シェア) (万人) リーマン・ショック 600 全地域 500 北米 400 北米 12% その他 18% アジア 中国・香港 300 中国本土 200 欧州 9% 551.9万人 (2013年度) NIEs3 5% ASEAN4 中国本土 30% NIEs3 100 欧州 ASEAN4 26% 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年度) (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注)ASEAN4は、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン。NIEs3は、シンガポール、台湾、韓国。 4 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.1 (3) 日系海外現地法人の活動(売上高) • 日系海外現地法人の売上高は、リーマン・ショックの影響から回復し、2013年度は過去最高水準を記録。 • 特にアジアで売上高の伸びが著しく、2006年度以降、北米を上回る。 【図表】日系海外現地法人の売上高(左:額、右:シェア) (兆円) (%) リーマン・ショック リーマン・ショック 50 250 45 全地域 200 北米 アジア 150 中国・香港 中国本土 100 ASEAN4 NIEs3 50 欧州 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年度) 北米 40 アジア 35 30 中国・香港 25 中国本土 20 ASEAN4 15 NIEs3 10 欧州 5 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年度) (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注)ASEAN4は、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン。NIEs3は、シンガポール、台湾、韓国。 5 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.1 (4) 日系海外現地法人の活動(経常利益) • 日系海外現地法人の経常利益は、リーマン・ショックの影響から回復しつつあり、2013年度は9.9兆円となった。 • 欧米が停滞しているのに対してアジアの回復は著しく、2013年度は過去最大の5.0兆円を記録。 【図表】日系海外現地法人の経常利益(左:額、右:シェア) (%) (兆円) リーマン・ショック リーマン・ショック 60 12 全地域 10 北米 50 北米 8 アジア 中国・香港 6 アジア 40 中国・香港 中国本土 30 中国本土 4 ASEAN4 NIEs3 2 ASEAN4 20 NIEs3 10 欧州 欧州 0 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年度) 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年度) (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注)ASEAN4は、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン。NIEs3は、シンガポール、台湾、韓国。 6 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.ASEANにおける日系現地法人の活動 1.2 日本の対ASEAN直接投資 7 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.2 (1) ASEANの直接投資受入 • ASEANは高い経済成長を背景に、世界中から直接投資を受け入れ。 • リーマン・ショックの影響で2008∼09年にかけて減少したが、その後急回復。2014年の投資受入額は過去最高を記録。 【図表】ASEANの世界からの直接投資受入 (億ドル) 1400 リーマン・ショック 1200 1000 800 600 400 200 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (資料)UNCTAD 8 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.2 (2) 順調に拡大する日本の対ASEAN直接投資 • 2009年以降の日本の対ASEAN直接投資は、2012年を除き、中国への直接投資を上回る。 • 2014年の日本の対ASEAN直接投資は合計で2.1兆円。そのうち、38%がシンガポール、25%がタイへの投資。 • タイへの直接投資が2012年に激減しているのは、非製造業で大型の資本引き揚げがあったため。タイ投資委員会(BOI) の直接投資(認可ベース)では、前年比で大幅増。 【図表】日本の対外直接投資(2008∼2014年) (億円) ASEAN シンガポール タイ インドネシア マレーシア フィリピン ベトナム 中 国 EU 米 国 合 計 2008 6,518 1,122 2,093 739 618 737 1,130 6,700 23,431 44,617 132,320 2009 6,587 2,706 1,523 459 578 773 531 6,492 15,942 9,989 69,896 2010 7,711 3,319 1,983 409 906 433 636 6,284 7,146 7,968 49,388 2011 15,491 3,517 5,576 2,876 1,148 807 1,495 10,046 28,435 11,530 91,262 2012 8,586 1,283 464 3,039 1,052 584 2,049 10,759 23,134 25,609 97,782 2013 23,331 3,550 10,132 3,821 1,233 1,202 3,177 8,870 30,432 42,964 132,485 2014 21,487 8,084 5,351 4,693 968 543 1,418 6,927 20,750 44,569 120,348 (資料)日本銀行「対外・対内直接投資」 9 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 1.2 (3) タイに展開する日本の製造業 • 2014年末時点の日本の対ASEAN直接投資残高は合計で18.8兆円。 • 投資残高を国別にみると、タイが最大で6.1兆円となり、全体の約3分の1を占める。 • 分野別には、製造業が10.5兆円で、そのうち、4.0兆円がタイへの投資残高。 【図表】日本の対ASEAN直接投資残高(2014年末) 0 タイ 10,000 18,128 インドネシア 16,551 マレーシア 11,932 フィリピン 30,000 40,000 50,000 39,558 シンガポール ベトナム 20,000 9,145 8,830 その他460 642 60,000 21,926 【図表】日本の対ASEAN直接投資(製造業)の国別内訳 70,000 (億円) その他 0% フィリピン 9% 35,525 ベトナム 9% タイ 38% 11,703 マレーシア 11% 4,255 10兆4,604億円 (2014年末) 5,243 インドネシア 16% 4,546 シンガポール 17% 製造業 非製造業 (資料)日銀統計 10 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2. ASEANの統合と産業集積 2.1 ASEANに広がる日系現地法人の製造拠点 11 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (1) アジアにおける日系現地法人の活動(製造業企業の内訳) • アジアにおける日系現地法人は15,874社で中国が最多。ASEANではタイ、シンガポール、インドネシアの順に多い。 • 日本製造業のアジアへの進出数は8,110社。進出先を国別にみると、化学、機械関連でタイへの集中が顕著。インドネシ アが2位、ベトナムが3位で続く。 【図表】アジアにおける日系海外現地法人(製造業)の企業数(2013年度) (社) アジア 中国本土 ASEAN4 フィリピン マレーシア タ イ 合 計 15,874 6,595 4,009 467 731 1,944 製造業 8,110 3,879 2,331 245 406 1 ,12 6 食料品 369 190 99 6 13 54 繊 維 469 307 89 3 5 50 木材紙パ 126 72 37 1 12 15 化 学 883 349 252 18 56 11 1 石油・石炭 31 11 9 4 3 窯業・土石 216 112 43 3 15 17 鉄 鋼 238 105 83 7 9 44 非鉄金属 262 125 95 12 26 45 金属製品 472 228 131 12 21 70 はん用機械 272 139 60 6 12 28 生産用機械 566 303 137 11 14 85 業務用機械 239 110 53 13 9 20 電気機械 529 301 115 15 12 73 情報通信機械 894 392 255 51 94 74 輸送機械 1,411 577 549 53 44 29 5 その他の製造業 1,133 558 324 34 60 142 非製造業 7,764 2,716 1,678 222 325 818 (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注1)「操業中」と回答した企業を集計。 (注2)業種ごとに、ASEAN各国の中で現地法人企業数が最も多い国を緑色、第2位の国を黄色の網掛けで示した。 12 インドネシア 867 554 26 31 9 67 2 8 23 12 28 14 27 11 15 36 157 88 313 その他ASEAN シンガポール ベトナム 1,033 215 16 2 50 4 5 7 5 18 7 16 9 13 31 7 25 818 687 428 25 25 14 33 1 12 17 13 33 8 21 16 28 37 69 76 259 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (2) アジアにおける日系現地法人の活動(非製造業企業の内訳) • 非製造業のアジアへの進出数は7,764社で、国別にみると、タイとシンガポールが同数で首位。マレーシアが3位で続く。 • 業種別に見ると、卸売業が圧倒的に多く、全体の約半分を占める。次いで、サービス業、運輸業が続く。 【図表】アジアにおける日系海外現地法人(非製造業)の企業数(2013年度) (社) アジア 中国本土 ASEAN4 その他ASEAN フィリピン マレーシア タ イ インドネシア シンガポール ベトナム 15,874 6,595 4,009 467 731 1,944 867 1,033 687 7,764 2,716 1,678 222 325 818 313 818 259 農林漁業 41 13 14 3 2 4 5 1 3 鉱 業 27 3 14 10 1 1 2 2 - 建設業 307 61 140 23 33 55 29 26 21 情報通信業 563 269 103 29 15 43 16 43 40 運輸業 690 247 190 29 32 83 46 70 31 卸売業 4,143 1,426 794 67 158 437 132 433 85 小売業 449 176 78 4 20 41 13 48 9 1,080 401 207 28 35 105 39 122 54 464 120 138 29 29 49 31 73 16 製造業 8,110 3,879 2,331 245 406 1,126 554 (資料)経済産業省「海外事業活動基本調査(2013)」 (注1)「操業中」と回答した企業を集計。 (注2)業種ごとに、ASEAN各国の中で現地法人企業数が最も多い国を緑色、第2位の国を黄色の網掛けで示した。 215 428 合 計 非製造業 サービス業 その他の非製造業 13 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (3) ASEANにおける自動車の生産(日系企業以外も含む) • ASEAN先発国で、個人所得の増加などを背景に、耐久消費財の需要が拡大。 • ASEANの2014年の自動車生産は388万台。うち、約半分の188万台がタイで生産。同国は世界第12位の自動車生産国。 【図表】 ASEAN各国の自動車生産 タイ (万台) マレーシア インドネシア ベトナム フィリピン 60,220 1.6% 250 200 マレーシア 596,600 15.4% 188.0 150 ASEAN合計 3,876,850台 (2014年) 129.9 100 タイ 1,880,007 48.5% インドネシア 1,298,523 33.5% 59.5 50 ベトナム 41,500 1.1% 12.1 0 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (資料)各国自動車工業会 (資料)国際自動車工業連合会(OICA) 14 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (4) タイとインドネシアにおける自動車の販売・輸出 • タイとインドネシアがASEANの2大生産拠点で、両国合わせて域内生産全体の82%。近年は、輸出拠点としても成長。 • タイの2014年の生産と国内販売は、2012∼13年に実施された自動車購入奨励策「ファーストカーバイヤー制度」が終了 したために急減。国内販売台数で、2014年にインドネシアがタイを上回る。 【図表】 タイとインドネシアにおける自動車の国内販売及び輸出 <タ イ> (万台) <インドネシア> 150 国内販売 125 輸出 112.8 100 88.2 75 120.8 50 25 20.2 0 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (資料)国際自動車工業連合会(OICA)、各国自動車工業会 15 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (5) ASEANにおける日系主要自動車メーカーの生産能力 • 2014年のASEANの自動車生産に占める日本車(委託生産を含む)の割合は約9割。 • タイとインドネシアで生産能力の拡大が持続。ダイハツを除き、自動車メーカー各社はタイを中核拠点に位置付ける。トヨタ は、タイ、インドネシア両国で継続して生産能力を増強。 【図表】 主要メーカーの国別生産能力(2014年) タイ インドネシア マレーシア フィリピン ベトナム 188.0万台 129.9万台 59.7万台 6.0万台 4.2万台 77万 25.6万(2013年) 8.5万 3.7万 3.6万 (なし) 53万 35万 (なし) (なし) 30万 20万 10万(2013年) 1.5万 1万 29.5万 25万 約7万 (TCMAに委託) 約5万 (委託を含む) 0.65万 (TCIEに委託) 三菱自 46万 約8万 0.5万 (TCMAに委託) 3万 0.5万 スズキ 10万 20万 数千 (HAMMに委託) (なし) 0.5万 マツダ 29.5万 (うち、KD5.5万) (なし) 2万 (なし) 1万 国 (国内総生産台数) トヨタ ダイハツ/プロドゥア ホンダ 日産 国内販売シェア 第1∼3位 (2014年) 1. トヨタ 37.1% 2. いすゞ 18.2% 3. ホンダ 12.1% 1. トヨタ 33.0% 2. ダイハツ 15.3% 3. ホンダ 13.2% 1. プロドゥア 29.5% 2. プロトン 17.4% 3. ホンダ 11.6% 1. トヨタ 39.4% 2. 三菱自 18.1% 3. 現代 8.5% 1. トヨタ 2. 起亜 3. Ford 30.8% 16.8% 10.5% (資料)FOURIN(フォーイン)『ASEAN自動車産業2015』、『世界自動車統計年刊2014』、世界自動車工業会資料等を基に作成 (注)黄色網掛け部分は各社の最重要(最大生産能力)拠点国。 16 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (6) 日系電機産業(家電企業)の海外生産 • 日系家電企業の海外生産は中国とASEANに集中。特に巨大な国内市場を有する中国の割合が大きい。 • ASEAN域内では、白物家電製品の生産でタイへの集中が顕著。同国は、輸出の中核基地としても発展。 【図表】 日系電機産業(家電企業)の世界における生産 電気冷蔵庫 生産 社数 拠点数 アジア 電子レンジ 生産 社数 拠点数 6 17 4 6 4 1 5 5 1 6 3 3 3 3 1 3 1 1 3 1 韓国 中国 台湾 タイ マレーシア フィリピン インドネシア ベトナム 中近東 北米 中南米 アフリカ 1 1 1 6 1 1 1 20 6 1 5 1 5 1 1 1 1 インド 欧州 ジャー炊飯器 生産 社数 拠点数 2 1 1 18 1 7 1 6 1 1 1 1 2 1 1 総計 4 10 (資料)一般財団法人 家電製品協会『家電産業ハンドブック2014』 (注)社数は海外生産している日本の主要家電企業の数。 6 19 電気洗濯機 生産 社数 拠点数 扇風機 生産 社数 拠点数 (社数/生産拠点数) ルームエアコン 生産 社数 拠点数 4 17 6 14 8 29 4 1 4 5 1 4 2 3 1 1 2 3 1 1 4 1 3 1 1 1 6 1 3 1 1 1 8 2 6 3 2 1 11 2 6 3 2 1 1 1 4 4 2 1 1 3 2 1 8 35 1 1 4 17 1 1 19 6 14 合 計 生産 拠点数 101 1 37 6 28 5 6 8 3 7 1 5 4 4 2 117 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (7) ASEANにおける日系電機産業(家電企業)の展開 • ベトナムを除くASEAN各国で、日系電機産業の拠点数が減少傾向。特にマレーシア、フィリピン、インドネシアで顕著。 • タイに冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの生産が集中し、裾野産業も発達。 【図表】 ASEANにおける日系電機産業の展開(2000年、2014年) 電気冷蔵庫 電子レンジ ジャー炊飯器 電気洗濯機 扇風機 (生産拠点数) ルームエアコン 合 計 2000 2014 増減 2000 2014 増減 2000 2014 増減 2000 2014 増減 2000 2014 増減 2000 2014 増減 2000 2014 増減 ASEAN 17 11 ▲6 4 3 ▲1 9 8 ▲1 14 10 ▲4 10 6 ▲4 17 12 ▲5 71 50 ▲ 21 タイ 7 6 ▲1 2 3 +1 5 6 +1 5 4 ▲1 5 3 ▲2 7 6 ▲1 31 28 ▲3 マレーシア 2 0 ▲2 1 0 ▲1 1 1 − 2 0 ▲2 1 1 − 3 3 − 10 5 ▲5 フィリピン 2 1 ▲1 0 0 − 1 0 ▲1 3 2 ▲1 2 1 ▲1 3 2 ▲1 11 6 ▲5 インドネシア 5 3 ▲2 0 0 − 1 0 ▲1 3 3 − 2 1 ▲1 3 1 ▲2 14 8 ▲6 シンガポール 0 0 − 1 0 ▲1 0 0 − 0 0 − 0 0 − 1 0 ▲1 2 0 ▲2 ベトナム 1 1 − 0 0 − 1 1 − 1 1 − 0 0 − 0 0 − 3 3 − (資料)一般財団法人 家電製品協会『家電産業ハンドブック』 (注)ルームエアコンは日本冷凍空調工業会の調査。それ以外は日本電機工業会の調査。 【図表】 パナソニックのASEANにおける事業構造の変革 時期 ASEAN の状況 パナソニック の事業展開 1960年代∼ 1990年代∼ 2000年代∼ • 高関税 • 工業化政策 • • AFTA 地域貿易圏の構築 • • ASEAN+1 FTA 経済発展 • • • • ASEAN事業再編 地域内分業・最適地生産の推進 • • 設計・R&Dの現地化 マーケティングの強化 各国産業政策に沿った輸入代替型複品事業を展開 円高・貿易摩擦の激化により、単品輸出拠点を展開 (資料) 笹川平和財団主催「ASEAN経済統合の行方と日本へのインプリケーション」シンポジウム(2013年12月4日)資料を基に作成 18 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.1 (8) 自動車産業と電機産業の産業集積の特徴 • 自動車産業と電機産業は設計思想(製品アーキテクチャー)が異なり、産業集積に違い。自動車産業は典型的な摺り合 わせ型(インテグラル)(注)。電機産業は、品目によって摺り合わせ型(インテグラル)と組み合わせ型(モジュラー型)。 • 日本企業は摺り合わせ型(インテグラル)に強みを持ち、自動車や白物家電の生産に競争力を有する。一方、組み合わせ 型(モジュラー型)については、台湾企業(EMS、ODM等)や韓国企業、中国企業などが強い競争力を持つ。 (注)多様な車種を効率よく生産するためにモジュール化が徐々に進展(トヨタのTNGA、日産・ルノーのCMF、VWのMQB等)。 【図表】 自動車産業と電機産業の産業集積の比較 産 業 産業の特徴 自動車 • 資本集約的工程を中心とした生産。 • アセンブラー(組立メーカー)とサプライヤー(原材料・部品 メーカー)の間の強い階層制(ヒエラルキー)。 • ピラミッド構造を形成し、集積規模が大きく、ロックイン効 果が高い。 • 設計思想は、摺り合わせ型(インテグラル)の要素が強い。 • 製品サイクルは長い(5年程度)。 • 各国は、産業政策によって自動車産業を保護育成。 • タイやインドネシアでは、日本メーカーを中心とする外資導入によって 産業が急速に発展。裾野産業の集積も進む。 • BBC、AICO、AFTAを通じて、部品の相互補完や国際分業が進展。 • タイ、インドネシアは、2000年代半ばから輸出拠点としても成長。 • 2010年に先発6カ国で自動車の関税が撤廃。CLMVでは2018年1月に 関税撤廃の予定。 電 機 • 労働集約的工程を中心とした組立が多く、雇用人員が多 い。 • 裾野産業を含めた産業集積の規模は小さく、生産拠点の 移動に対する制約が少ない。 • 設計思想から、摺り合わせ型(インテグラル)と組み合わ せ型(モジュラー型)に二分。 • 製品サイクルが短く(半導体3カ月、家電12カ月程度)、環 境変化のスピードが極めて速い。 • 各国で1960年代頃から輸入代替工業化政策により産業育成。その後、 AFTAの実現に伴い、域内分業と生産拠点再配置が進展。 • 日系メーカーの多くがタイへの重点化を推進。マレーシアはタイに次い で裾野産業が発達。ベトナムでは、ハノイ近郊に電機電子産業が集積 しつつあり、中国華南地域との分業体制の可能性。 • エアコン、冷蔵庫、洗濯機などのアナログ系製品は摺り合わせ型の要 素が強く、一定の集積を形成。一方、液晶TVやPCなどのデジタル系製 品は組み合わせ型の要素が強く、大半が中国で生産。 ASEANにおける発展の経緯、生産分業の状況 (資料) 「現代ASEAN経済論(文眞堂2015年9月)」等を基に作成 19 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.ASEANの統合と産業集積 2.2 ASEANで進む産業集積 ∼自動車産業の事例 20 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.2 (1) タイ、インドネシアで進む産業集積(1) • 自動車産業が発達したタイは産業集積の裾野が広く、現地での原材料・部品調達率が50%を超え、ASEANで最も高い。 • 自国内とASEAN域内の調達率の合計をみると、タイが84.2%、インドネシアが75.5%、マレーシアが74.6%と高い。 【図表】日系進出企業(製造業)の原材料・部品調達先(2014年) 0% 10% 20% タイ 30% 40% 50% 60% 54.8 インドネシア 70% 80% 90% 29.4 43.1 3.8 32.4 10.3 100% 12.0 14.2 現地 シンガポール 41.1 マレーシア 40.7 ベトナム 35.1 28.4 8.9 12.8 33.9 33.2 フィリピン カンボジア 30.6 10.8 43.9 38.5 11.4 ASEAN 14.0 日本 20.9 8.8 17.3 15.5 その他 18.9 35.3 (資料)JETRO「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年) 21 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.2 (2) ASEAN主要国の自動車産業の構造 • タイは「アジアのデトロイト」を標榜し、域内最大の自動車産業ピラミッドを構築。現地調達率は、ピックアップトラックが80∼ 90%、乗用車が30∼70%。第3次自動車産業マスタープラン(2012∼16年)でサプライチェーンを重点育成。 • インドネシアでは、近年の自動車生産の拡大に伴って、国内部品産業の成長が加速。自動車輸出もスタート。 • ベトナムでは、2018年1月に自動車と自動車部品の関税が撤廃される予定。完成車・部品の輸入増の影響が懸念。 【図表】各国の自動車部品産業 ︻主要品目︼ <タイ> <インドネシア> <マレーシア> <ベトナム> 完成車メーカー 4輪:16社 2輪:7社 完成車メーカー 4輪:20社 完成車メーカー 4輪:11社 2輪:9社 完成車メーカー 4輪:15社 2輪:5社 Tier 1:690社 (25万人) (2010年) Tier 1:約550社 (22万人) (2014年) 210社超 (2013年) Tier 2∼3:約1,700社 (17.5万人) Tier 2∼3:約1,000社 (18万人) 約550社 (うち、Tier 1:200社超) (2015年) ディーゼルエンジン(1tピックアップ用)、 ガソリンエンジン、エンジン部品(鋳造 等)、燃料噴射システム、車体プレス部 品、内外装プラスチック部品、足回り部 品、電装品、金型等 ガソリンエンジン、エンジン部品(鋳・鍛 造)、電装品(モーター等)、車体プレス部 品、アルミホイル、小物プレス部品、サス ペンション部品等 電子制御ユニット(ECU)、電子部品、電 装品、カーオーディオ、樹脂成型部品等 ワイヤハーネス、コネクター、バッテリー、 アンテナ、縫製品(シートカバー、エア バッグクッション)等 (資料)FOURIN(フォーイン)『ASEAN自動車産業2015』等を基に作成 22 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.2 (3) 事例研究①「ASEANにおけるトヨタの取り組み」 • トヨタの基本的な考えは現地に根ざした活動を行うこと。特にアジアを「第二の母国」と位置付け、拠点化を推進。 • ASEANで1960年代から輸出と現地生産を推進。現地生産は、タイで1964年、フィリピンで1976年、インドネシアで1977 年、マレーシアで1982年に開始。2004年にスタートしたIMVプロジェクトでは、タイをグローバル供給拠点として位置付け。 【図表】 トヨタ自動車の連結車両生産台数及び販売台数 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 <販売台数> <生産台数> (万台) (万台) 96.1 192.4 193.9 94.7 102.1 134.4 144.1 その他 アジア 欧州 北米 日本 2008 09 10 11 12 13 14 (会計年度) 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 その他 95.6 90.5 97.9 125.5 132.7 168.4 160.9 アジア 欧州 北米 日本 2008 09 10 11 12 13 14 (会計年度) (資料)トヨタ自動車『アニュアルレポート』2012、2014年を基に作成 (注)アジア:インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ベトナム、台湾、韓国、ブルネイ。 (注2)ダイハツ・日野ブランド車を含む。 【図表】 トヨタ自動車のASEANとの関わりと取り組み 時期 「創世記」 1970∼1990年 取り組み • 自動車産業のインフラ整備とサプライ ヤーの発掘・育成 • 1976年にフィリピンに「タマラオ」、1977年 にインドネシアに「キジャン」を導入 「育成期」 1990∼2000年 • • AFTAが徐々に実現し、域内水平分業体 制の確立で裾野産業を育成 規模拡大や量産効果による工場投資の 効率化が実現 「発展期」 2000∼2010年 • • 1997年の通貨危機を乗り越え、グロー バル体制へ 現地調達率を引き上げるとともに、通 貨安を生かして、輸出体制を確立。 (資料)トヨタ自動車『アニュアルレポート』2012年を基に作成 23 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.2 (4) 事例研究②「デンソーのASEAN域内での生産・供給体制」 • デンソーのアジア事業は、ASEANとインドを中心に31拠点を展開し、合計で3万6千人を雇用。 • 1970年代以降、①各国対応・多品目生産、②域内の相互補完・集中生産、③広域アジアでの相互補完へと展開。 【図表】デンソーのASEAN生産・供給 <インドネシア(4)> デンソーのアジア事業の概要・戦略 集中生産:コンプレッサー、プラグ/ コイル/O2センサー、ホーン、小型 モーター等 1.拠点数: 31(統括3、生産24、販売4) 国内向生産:HVAC、ラジエー ター、エアクリーナ ・ASEAN(22)、インド(7)、中東(1)、オースト ラリア(1) (注)日中韓は含まない。 2.従業員数: 36,180名(2015年3月) <タイ(8)> <インド(7)> 集中生産:エバポレーター、オル タネータ/スターター、オイルフィ ルター、燃料ポンプモジュール、 コモンレールシステム、ガソリン インジェクター、リレー/リレーフ ラッシャー 国内向生産: ・HVAC、コンデンサー、ラジエー ター、エアクリーナ ASEAN <マレーシア(2)> 集中生産:電動パワステ ECU、エンジンECU、ワイ パーアーム/ブレード <シンガポール(1)> 国内向生産:HVAC、コン デンサー、ラジエーター ASEANの地域統括 ・ASEAN(29,220)、インド(6,530)、オーストラ リア(400)、中東(30) 3.製品の特性に応じた立地 ①かさばる製品は顧客に隣接して生産 ②小型で高機能の製品は集中して生産 4.AECの発展(大アジアにおける3大拠点) ①インド(内需対応、低コスト調達、持ち帰り) ②インドネシア(内需対応、現地調達) ③メコン圏(内需対応、CLMVのタイ支援) 5.競争力強化へ向けて (資料)FOURIN(フォーイン)『ASEAN自動 車産業2015』等を基に作成 (注)国名の後の括弧内の数字は拠点数。 <ベトナム(2)> <フィリピン(2)> 集中生産:EGRバルブ、 APM(アクセルペダルモ ジュール) 集中生産:メーター 国内向生産:HVAC、エア クリーナ、燃料ポンプモ ジュール 24 ①玉突き戦略(新・新興国(CLM)の活用によ る競争力強化) ②深層現地化戦略(現地製品仕様、設備の 現地調達、材料の現地調達) (資料)ASEANセンター『陸のASEANセミナー・デン ソーのメコン戦略(2015年6月22日)』等を基に作成 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.ASEANの統合と産業集積 2.3 「タイ・プラスワン」の動き 25 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (1) 逼迫するタイの労働市場 • タイで労働需給が逼迫。失業率が低下し、賃金の上昇が持続。 • 労働力人口が頭打ちとなる中、順調に推移してきたタイの経済成長にも翳り。 【図表】タイの失業率と平均賃金(月額) (バーツ) 13,258 14000 (%) 3.5 12000 3 10000 2.5 8000 2 平均賃金(左軸) 6000 1.5 失業率(右軸) 4000 1 2000 0.5 0 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (資料)タイ中央銀行、NSO 26 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (2) 「タイ・プラスワン」としてのメコン地域 • タイの賃金上昇・労働力不足を受けて、メコン地域の近隣諸国に労働集約的な工程を移転する動きが本格化。 • タイと国境を接するカンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)の賃金水準はタイの約2∼3割。 【図表】タイと近隣諸国のワーカー(一般工職)の年間実負担額(注)(2014年) 0 2,000 4,000 6,000 タイ 8,000 (ドル) 7,120 ミャンマー 2,062 カンボジア 1,887 ラオス 1,718 ︻ 参 考︼ インドネシア 4,481 フィリピン 4,012 ベトナム 2,989 (資料)ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年度調査)」 (注)基本給、諸手当、社会保障、残業代、ボーナス等を含む。 27 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (3) CLMへの進出の動き • 「タイ・プラスワン」とは、タイの生産拠点のうち主として労働集約的な工程を労働コストの低い近隣諸国へ移管すること。 • 近年、安価な労働力を求め、タイから国境を越えて、カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)への進出が増加。 • 一方、「チャイナ・プラスワン」とは、中国向け投資のリスク回避を目的に、中国以外の国に中国同様の投資を行うこと。 【図表】進出先としてのタイの有望理由と課題(2014年) 有望理由 1位 現地マーケットの今後の成長性 【図表】 CLMへの進出事例 国 課 題 治安・社会情勢が不安 カンボジア 2位 現地マーケットの現状規模 3位 産業集積がある 4位 安価な労働力 組み立てメーカーへの供給拠点として 5位 第三国輸出拠点として 現地のインフラが整備されている 分 野 企 業 輸送機器 住友電装、矢崎総業、GSエレテック、デンソー、 ミドリテクノパーク、スズキ、ヤマハ発動機 電 機 ミネベア、アスレ電器、マルニクス、大和音響、 泉電子、日本電産、東京パーツ、プリンテ その他 味の素、アートネーチャー、明光堂、ミカサ、日 本精密 輸送機器 矢崎総業、トヨタ紡織、旭テック 精密機器 ニコン その他 マニー 輸送機器 デンソー 電機 フォスター電機 その他 マニー、ハニーズ、ユニ・チャーム、ワコール 労働コストの上昇 他社との厳しい競争 ラオス 管理職クラスの人材確保が困難 技術系人材の確保が困難 (資料)JBIC「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2014年度)」 ミャンマー (資料)現地調査、東洋経済新報社「海外進出企業総覧(2015年)」、他 (注)製造業が中心(縫製業を除く)。 28 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (4) 国境を越えて広がるサプライチェーン(フラグメンテーション理論) 【図表】タイ・CLM間における分業体制「タイ・プラスワン」のイメージ 業 種 • 自動車部品等の機械部品・電気機器が中心 • 皮革・縫製業などの軽工業は対象外(分業の必要がない) 業 態 • 最終製品メーカーに部品を供給するTier1メーカーが中心 工 程 • CLMで行う工程は、労働集約的な組立工程 • タイから輸入した材料・部品をCLMで組み立て、タイで最終製品化・販売するモデルが注目される 製 造 タイ 調 達 工程A 工程C (組立) 工程B 製 造 CLM 陸路で輸送 工程D 販 売 陸路で輸送 工程C (組立) (資料)花井衣理「タイを中心としたサプライ・チェーンの変化の現状と展望」2013年11月 29 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (5) カンボジアの事例「自動車部品製造業」 • タイ・カンボジア国境近くのコッコンに立地する自動車部品(ワイヤハーネス)製造業の事例。 • カンボジア工場はタイの子工場として位置づけ、タイ・カンボジア全体で製品に応じた最適な製造・流通経路を選択。 調 達 製 造 自社工場 タイ 部材調達 仕掛品製造 完成品製造 顧客 タイから間接業務 (人事・総務等)を 支援 タイで一括調達 カンボ ジア 販 売 自社工場 積み替えなしで輸送 (国境から20km内) 【福利厚生の充実】 ・工員を対象とした種々教育 ・食事提供 完成品製造 30 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (6) メコン圏で進む道路整備(GMS構想) • アジア開発銀行(ADB)が主導し、1992年に大メコン経済圏構想(GMS構想)がスタート。 • メコン地域6カ国(ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ラオス、中国(雲南省、広西壮族自治区))による広域開発。 【図表】大メコン経済圏構想(GMS構想) 昆明 GMS構想の現状と課題 南寧 • GMS構想のもと、各国・地域間のインフラ整備により新たな経済 圏を形成。 広州 南北回廊 広州港 ハノイ ハイフォン港 ビエンチャン ヤンゴン モーラ ミャイン バンコク ダウェー レムチャバン港 東西回廊 ドンハ • 日本の支援により、2015年4月にネアックルン橋(つばさ橋)が開 通。バンコク∼プノンペン∼ホーチミン間の陸路輸送が短縮化。 • 3つの主要回廊はすべてタイ国内を通過。周辺国へのアクセス向 上により、メコン地域における分業体制が進展。 • 国境における荷物積み換えの免除、トラックの相互乗り入れ、通 関制度の円滑化など、ソフト面の整備が今後の課題。 ダナン 南部回廊 仕向先 プノンペン ネアックルン (注1) ホーチミン カイメップ・ チーバイ港 バンコクからの所要日数 海上輸送 陸上輸送 プノンペン 約9日 2日 ホーチミン 約5日 3日 ハノイ 約10日 2∼4日 (資料)各種公開情報を基に日本総合研究所作成 (注1)南部回廊において唯一未完であったネアックルン橋(つばさ橋)が2015年4月に開通し、輸送時間が最大1、2時間程度短縮された。 31 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 2.3 (7) 期待される通関手続きの簡素化(日本企業のAECへの期待) • AEC実施項目の中で「通関手続きの簡素化」が、製造業から最も期待されている。 • 具体的には、通関申告書の統一、輸出入のシングルウインドウ化(輸出入両国の共同通関検査)などが含まれている。 【図表】 AEC実施項目で期待する項目(上位10項目、複数回答) 回答項目 全体(%) 上位3カ国(ASEANのみ、%) 1. 通関手続きの簡素化 (通関申告書の統一、輸出入のシングルウインドウ化) 63.9 インドネシア(73.4) ラオス(72.7) ベトナム(69.6) 2. 税制面での二重課税防止、源泉徴収税率のバラつきの是正 32.0 ミャンマー(50.0) ベトナム(41.8) フィリピン(39.5) 3. CLMVでの輸入関税の撤廃 29.6 カンボジア(69.2) タイ(41.4) ミャンマー(41.3) 4. 原産地規制などに係る解釈・運用の統一化 28.2 インドネシア(35.6) カンボジア(30.8) ベトナム(30.4) 5. 熟練労働者の移動の自由化 24.7 マレーシア(32.9) タイ(30.8) ミャンマー(30.4) 6. 非関税障壁(ライセンス要件、強制規格等)の削減 23.3 インドネシア(33.0) シンガポール(32.0) ミャンマー(26.1) 7. ASEAN共通の基準・認証・表示制度の導入 20.9 ミャンマー(30.4) シンガポール(26.2) インドネシア(22.7) 8. 域内の公平な競争環境の整備 18.5 ミャンマー(26.1) インドネシア(20.6) シンガポール(20.1) 9. 資本移動の規制緩和 17.6 ミャンマー(28.3) シンガポール(23.0) インドネシア(19.0) 10. サービス業の出資規制緩和(ASEAN企業は最低70%以上に) 16.0 ラオス(27.3) ミャンマー(19.6) タイ(19.5) (資料) ASEAN事務局、経済産業省資料を基に日本総合研究所作成 (資料) ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年度調査)」 32 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.今後の展望 3.1 消費するASEAN 33 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.1 (1) ASEAN、中国、インドの経済指標(2014年) • ASEAN10カ国は、合わせて人口6億2,000万人、名目GDP2兆4,700億ドル。 • 近年は年率5%前後で順調に発展。高い経済成長を背景に、ASEAN先発国で個人所得が上昇。 シンガポール マレーシア タ イ インドネシア フィリピン ブルネイ 先発ASEAN6カ国 ベトナム カンボジア ラオス ミャンマー 後発ASEAN4カ国 ASEAN合計 中 国 インド 人口 名目GDP 名目GDP/人 (100万人) (億ドル) (ドル) 5.5 3,081 56,319 30.3 3,269 10,804 68.7 3,738 5,445 251.5 8,886 3,534 99.4 2,849 2,865 0.4 151 36,607 455.8 21,974 4,821 90.6 1,860 2,053 15.3 166 1,081 6.9 117 1,693 51.4 628 1221 164.2 2,771 1,688 620.0 24,745 3,991 1,367.8 103,804 7,589 1,259.7 20,495 1,627 GDP成長率(%) 2012 2013 2014 3.4 4.4 2.9 5.6 4.7 6.0 6.5 2.9 0.7 6.0 5.6 5.0 6.8 7.2 6.1 0.9 ▲ 1.8 ▲ 0.7 − − − 5.2 5.4 6.0 7.3 7.4 6.0 7.9 8.0 7.4 7.3 8.3 7.7 − − − 5.8 5.1 4.5 7.8 7.8 7.4 5.1 6.9 7.2 (資料)ADB、RBI、AIMO、IMF 34 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.1 (2) ASEANで拡大する消費市場 • ASEAN各国の1人当たりGDPをみると、最も大きいマレーシアでは1万ドルを突破。人口の約9割が富裕層・中間層。 • タイでも1人当たりGDPが拡大を続け、富裕・中間層のシェアは2014年の67%から2020年に72%まで上昇する見通し。 【図表】マレーシアの1人当たり名目GDP額 【図表】タイの1人当たり名目GDP額 (ドル) (ドル) 12000 10,804 6000 10000 5000 8000 4000 6000 3000 4000 2000 2000 1000 0 5,445 0 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) 2004 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年) (資料)IMF「World Economic Outlook」 35 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.1 (3) ASEANで拡大する富裕層・中間層 【図表】マレーシアの可処分所得別家計人口 【図表】タイの可処分所得別家計人口 (万人) (万人) 3,500 7,000 3,000 2,500 6,000 746 1,359 富裕層 42% 2,000 1,500 500 0 812 中間層 52% 283 2014年 606 198 3,426 3,413 中間層 67% 2,000 1,000 2,234 1,947 2014年 2019年 0 2020年 5,000米ドル/年未満 1,242 3,000 1,080 1,000 富裕層 5% 5,000 4,000 1,167 377 240 952 5,000米ドル/年以上∼15,000米ドル/年未満 15,000米ドル/年以上∼35,000米ドル/年未満 35,000米ドル/年以上 (資料)Euromonitor International (注1)富裕層/中間層/低所得層の定義は、経済産業省「平成25年版通商白書」に基づく。 (注2)世帯可処分所得別の家計人口は各所得層の家計比率×人口で算出。 36 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.1 (4) ASEAN主要国における自動車の国内販売台数 • 富裕層・中間層の拡大に伴って、ASEAN先発国で自動車や大型家電製品などの耐久消費財の需要が増大。 • マレーシアでは、世帯当たりの自動車普及率は既に6割を超える。タイではマイカーブームが到来し、市場は急拡大。ただし、 2014年は新車購買に関する補助金制度が終了したため、前年比で減少。 【図表】自動車の国内販売台数 タイ フィリピン (万台) マレーシア ベトナム 【図表】自動車の保有率(台/1,000人) インドネシア (台/1000人) 160 400 140 350 120.8 120 2005年 2013年 300 250 100 88.2 80 66.6 60 200 150 100 40 26.9 13.4 20 0 50 0 2005 06 07 08 (出所)国際自動車工業連合会(OICA) 09 10 11 12 13 14 (年) タイ マレーシア インドネシア フィリピン ベトナム (資料)FOURIN(フォーイン)『ASEAN自動車産業2015』等を基に作成 37 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.今後の展望 3.2 老いるASEAN ∼中所得国の罠 38 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.2 (1) ASEAN主要国の人口は今世紀半ばに減少へ • 2005∼10年の合計特殊出生率は、タイ1.49、マレーシア2.07、インドネシア2.50、フィリピン3.27、ベトナム1.89(国連)。 • ASEAN主要国(注1)の人口は今世紀半ばにピークを迎え、減少へ向かう見通し。 【図表】 ASEAN5カ国の生産年齢人口比率(注2) 【図表】 ASEAN5カ国の人口 ASEAN5カ国の人口推移 (100万人) (%) 75 800 700 70 600 500 65 400 60 300 200 55 100 50 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 (年) 0 1950 1970 1990 2010 2030 2050 2070 2090 (年) (資料)国際連合 (注1)タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム。 (注2)総人口に占める生産年齢人口(15∼64歳)の割合。 (注)ASEAN5カ国は、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム (出所)UN, World Population Prospects: The 2012 Revision 39 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.2 (2) ASEANの人口ボーナス期 • ASEAN各国では、少子高齢化の影響で生産年齢人口比率(総人口に占める15∼64歳の人口)の伸びが急速に鈍化。 • 一部の国で人口ボーナス期(生産年齢比率が上昇)が終わり、人口オーナス期(従属人口比率が上昇)に突入。 • タイの人口ボーナス期は2013年に終わり、人口オーナス期へ移行。人口も2023年頃にピークを迎える見通し。 【図表】 ASEAN主要国の生産年齢人口比率 【図表】生産年齢人口比率のボトム年とピーク年 (%) 75 シンガポール 1965 2011 70 タイ 65 マレーシア 60 インドネシア 55 フィリピン 50 1970 1980 1990 2000 ASEAN5(注) マレーシア フィリピン 2010 2020 (資料)国際連合 (注)タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム。 2030 タイ インドネシア ベトナム 2040 2050 1970 1965 2019 1972 2026 1965 ベトナム (年) 2013 1950 2049 1969 1970 2014 1990 2010 2030 2050 (年) (資料)ASEANセンター『ASEAN2025年の展望と課題(2014年12月3日)』を基に作成 40 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.2 (3) 中所得国の罠に直面するタイとマレーシア • 「中所得国の罠(中進国の罠)」とは低所得国と高所得国の中間に位置する中所得国が直面する課題。ASEAN主要国は 中所得国へ移行しつつあるが、高齢化問題などの影響で、高所得国になる前に壁にぶつかる恐れ。 • 「要素投入型成長路線の限界」とほぼ同義であり、労働生産性が伸びない限り、その国の成長率は低下する。特に高齢化 が進んでいる国においては、労働力の質の向上と技術革新が不可欠。( 末廣昭[2014]『新興アジア経済論』 他) 【図表】ASEAN主要国の高・中所得国への移行時期 【図表】タイの人口ピラミッド(2012年) 国 1人当たりGDP (ドル、2014年) 所得階層別 分類 当該所得階層に 仲間入りした年 シンガポール 56,319 高所得国 1981年 マレーシア 10,804 上位中所得国 1979∼86年、 1991年 タイ 5,445 上位中所得国 2010年 20-24歳 インドネシア 3,534 下位中所得国 1979年 10-14歳 フィリピン 2,865 下位中所得国 1962年以前 ベトナム 2,053 下位中所得国 2008年 80歳以上 70-74歳 60-64歳 50-54歳 40-44歳 生産年齢人口 (15∼64歳) 30-34歳 男性 女性 0-4歳 3,000 (資料)国際連合 2,000 1,000 0 1,000 2,000 3,000 (千人) (資料)末廣昭[2014]『新興アジア経済論』、IMF/WEO等を基に作成 41 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.2 (4) ASEAN各国の産業政策や外資誘致政策 • ASEAN主要国は、中所得国の罠を回避すべく、国内産業構造の高度化や競争力強化などの産業政策を打ち出す。 • また、各国で外資誘致を国家戦略に位置付け、投資優遇措置、インフラ整備、工業団地整備などを推進。タイやマレーシ アでは、労働集約型産業への直接投資を抑制。 【図表】 ASEAN各国における産業政策と外資誘致政策 国 産業政策の例 (各国の自動車産業政策のうち代表的なもの等) 外資誘致政策の例 タイ <自動車産業マスタープラン(2012∼16年)>(2012年12月発表) • Vision 2021「タイを、高付加価値を創造する強靭なサプライチェーンを伴った、 環境性能に優れた自動車のグローバル生産拠点とする」 • ①開発、②人材、③企業、④インフラ、⑤政策の5分野の強化・改善。 • 2015∼18年技術ロードマップ:R&Dハブ化とエレクトロニクス分野の強化。 <新投資奨励法(2015年1月施行)> • タイ国内産業の高度化に貢献する産業及び事業内容に 限って投資優遇策恩典を供与。 • ①高付加価値7分野、②地方産業クラスター(サプライ チェーン強化)、③地域統括会社、などが対象。 インドネシア <低価格グリーンカー促進プログラム(LCGC)政策>(2013年9月発表) • LCGC(Low Cost Green Car)適合車に対する奢侈税が全額免除。 • LCGC車の要件は、①排気量が980∼1200cc(ガソリン車の場合)、②燃費 20km/L以上、③最少半径4.6m以下、④セダン・ステーションワゴンでないこと、 ⑤定員10人以下、⑥二輪駆動、⑦価格9,500万ルピア以下(条件あり)等。 <新投資法(2007年)> • 11年12月、優遇措置の対象が38分野から129分野へ増加し たが、近隣諸国と比べて、投資優遇制度は不十分。 • 11年8月、①基礎金属、②石油精製・化学、③機械、④再生 エネルギー、⑤通信機器への投資にタックスホリデー供与。 マレーシア <国家自動車政策(NAP2014)>(2014年1月発表) • ①競争力強化と持続的発展、②EEVの地域ハブ拠点、③持続可能な高付加価 値事業の促進、④車両・部品の輸出促進、⑤国内自動車バリューチェーンへの ブミプトラ企業の参画促進、⑥顧客利益の保護(安全、高品質、低価格の製品) • 2020年生産目標:乗用車125万台(輸出25万)、商用車10万台、二輪車80万台。 <工業調整法(1975年)、投資促進法(1986年)他> • 製造業については、一部を除き100%外資が認められる。さ まざまな法令で税制上の優遇策が供与。 • 一方、ブミプトラ政策の見直しが遅れており、サービス分野 や政府調達市場への外資参入障壁は高まっている。 ベトナム <2035年を見据えた2025年までの自動車産業マスタープラン>(2014年7月発表) • ①自動車産業を国の重要産業とする、②生産技術の世界水準への引き上げ、 ③域内輸出の強化、④部品輸出の拡大、⑤交通インフラの整備。 • 2020年の目標:自動車生産台数22.8万台、国産車販売比率67%。 • 裾野産業:2020年までに国産車向け部品の現地調達率を35%に引き上げる。 <改正投資法(2015年7月施行)> • 優遇措置として、①特定業種13分野、②特定6地域、③特 定企業が定められた。特定分野は、ハイテク製品のR&D、 新素材・新エネルギー、電子製品・自動車生産など。 • ハイテク企業、科学技術企業、科学技術組織にも恩典。 (資料)FOURIN(フォーイン)『ASEAN自動車産業2015』等を基に作成 42 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.2 (5) 事例研究「タイの新しい投資奨励戦略」 • タイ政府は、ゾーン制による優遇措置(労働集約型産業の誘致)を見直した新投資優遇措置を2015年1月から施行。 • 国内産業の高度化に貢献する産業及び事業内容に限って恩典を与える方針に転換。 【図表】「②地域に基づく優遇措置」の対象地域 【図表】新たな投資優遇措置の概要 ■南部地区4地点 投資奨励法に基づく優遇措置 ●SEZ5地点 ①業種に対する優遇措置 • タイの国益に資する事業として、特定7分野にお ける付加価値の高い業種が対象。 • 法人所得税、機械輸入税、原材料輸入税を減免。 。 ムクダハン ②地域に基づく優遇措置 • 地方産業のクラスター形成を奨励するため、南 部と国境付近の特定地域に優遇措置を付与。 • 従来のゾーン制は廃止。 ③機能に基づく優遇措置 • 国外への投資をしやすい環境を整えることを目 的 に 、 国 際 統 括 本 部 ( IHQ: International Headquarters ) や 国 際 貿 易 拠 点 ( ITC: International Trading Centers)の制度を整備。 (出所)タイ投資委員会(BOI) (注1)投資奨励法に基づく優遇措置は、2015年1月に大幅に見直され、優遇措置の与えられる業種が削減さ れ、立地場所に基づく優遇措置が廃止。 (注2)BOIによって与えられる優遇措置の他に、タイ工業団地公社(IEAT)による優遇措置等がある。 43 ターク サケオ トラート サトゥン パッタニー ソンクラー ヤラー ナラチワート Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.今後の展望 3.3 事業展開のあり方 44 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.3 (1) ASEANにおける日本企業の事業機会 • 2015年末にAECが発足すれば、域内人口6.2億人(2014年)、域内GDP2兆4,700億ドル(同)の巨大経済圏が誕生。連 結性の強化が進み、製造拠点や販売・物流の拠点として更なる発展の可能性。 • 日本企業はASEAN先発国や中国で自動車や電機産業における堅固な生産分業ネットワークを構築。今後、ASEANと中 国との経済連携が強まれば、日本、中国、ASEAN、CLMVの関係は一段と強化される見通し。 • ASEANへ進出した日本製造業の多くが、今後1∼2年の間に事業規模の拡大を目指している。一方、従業員の賃金上昇 などの経営上の問題に直面している。 【図表】日本製造業企業の今後1∼2年の方向性(ASEAN) 【図表】ASEAN主要国の経営上の問題点(上位5項目) (%) 国 拡大 現状維持 縮小 第3国・地域へ 移転・撤退 タイ 60.9 36.5 2.0 0.6 マレーシア 46.2 45.9 7.9 0 0.4 インドネシア 67.3 31.0 1.3 フィリピン 58.7 38.4 2.2 0.7 ベトナム 66.1 32.4 1.3 0.2 カンボジア 79.5 20.5 0 0 ラオス 46.2 53.9 0 0 ミャンマー 64.7 33.3 0 2.0 タイ 順 インドネシア ベトナム 問題点 (%) 問題点 (%) 問題点 (%) 1 従業員の賃金 上昇 70.2 従業員の賃金 上昇 83.8 従業員の賃金 上昇 74.4 2 品質管理の難 しさ 52.0 現地通貨の対 ドル為替レート の変動 63.3 原材料・部品 の現地調達の 難しさ 70.3 3 従業員の質 50.4 通関に時間を 要する 62.7 通関等諸手続 きが煩雑 61.1 4 競合相手の台 頭(コスト面で 競合) 47.8 原材料・部品の 現地調達の難 しさ 61.1 品質管理の難 しさ 50.2 5 主要販売市場 の低迷(消費 低迷) 42.5 通関等諸手続 きが煩雑 58.9 従業員の質 49.0 (資料) ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年度調査)」 45 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.3 (2) 拡大する経済統合の動き ∼AECからRCEPへ 【図表】 RCEP (ASEAN+6) 東アジア地域包括的経済連携 (RCEP) ASEAN+3 韓国 中国 ASEAN+3 ASEAN+6 ASEAN+日・中・韓 ASEAN+日・中・韓 インド・豪州・NZ 日本 インド NZ 日本の提案で民間研究開始 原産地規則、関税品目表、税関手続、経済協力の作業部会を開催 RCEP 2011年11月 RCEP 豪州 2007年6月∼ 中国の提案で民間研究開始 2010年4月∼ 統合 AFTA ASEAN+6 2005年4月∼ ASEAN+3、ASEAN+6を踏まえ、ASEAN首脳はASEANとFTAを締結して いるパートナー諸国とのRCEP設立プロセス開始について合意 ASEAN+日・中・韓 インド・豪州・NZ 2015年2月 第7回交渉開催 (資料)外務省資料を基に作成 ステイタス 参加国・ 地域数 人口 (億人) 名目GDP (兆ドル) 欧州連合(EU) 発効済 28 5.1 17.4 ASEAN自由貿易地域 (AFTA) 発効済 10 6.2 2.4 環太平洋パートナー シップ協定 (TPP) 大筋合意 (4カ国で発効) 12 8.0 27.8 東アジア地域包括的経 済連携(RCEP) 交渉中 16 34.4 21.3 アジア太平洋自由貿易 圏構(FTAAP) 構想段階 21 28.1 42.8 40 GDP(兆ドル) 人口(億人) 34.4 35 30 25 20 21.3 19.9 17.4 15 10 5.1 4.7 5 6.2 2.4 0 欧州(EU) 北米(NAFTA) アジア(ASEAN) アジア(RCEP) (資料)JCIF「世界の経済圏(2015年3月現在)」 (注1)世界名目GDPはIMFが公表している189カ国の名目GDPの合計値、(注2)2014年のデータを使用。一部IMFによる推計値を含む。 46 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] 3.3 (3) 投資先としてのASEANの機会と事業展開の方向性 • ASEAN主要国で「中所得国の罠」の兆候。人件費の急上昇は輸出競争力を弱め、各国の経済発展を阻害する可能性。 • 産業構造の高度化や技術革新などを通じた労働生産性の引き上げが必要だが、各国に残された時間は少ない。 【ASEANの事業環境の変化】 • ASEANの経済連携はAEC、ASEAN+3、RCEP、FTAAPへと拡大を続ける。 • 経済圏が拡大する中で国境を越えたサプライチェーンが構築されている。 • これまでの生産に加えて、消費が今後のASEAN経済を牽引する見込み。 【ASEAN主要国(タイ等)における事業展開の方向性】 • 高度な産業集積を有し、周辺国との分業体制(サプ ライチェーン)を構築することで、事業を拡大。 • 人件費の上昇が継続し、人材確保はさらに深刻化。 労働生産性の向上や産業の高度化が喫緊の課題。 • 生産品目の転換:高付加価値生産、多品種・少量生 産型製造業の推進等。 • • • • • 【ASEAN新興国(CLM等)における事業展開の方向性】 • タイ・プラスワン企業は、タイ拠点を積極的に利用 (人材教育、技術指導、資材調達、生産管理等)。 • 現状の労働集約的な生産は、急速な賃金上昇や労 働力不足によって早晩行き詰まる可能性。 • 賃金上昇に見合う高度な工程を担わせる、生産性 を向上させる、といった能力向上の実現が重要。 【事業展開を進めるうえでの取り組み】 労働力をいかに確保するか。 労働生産性をいかに引き上げるか。 消費市場(中・高所得層がターゲット)をいかに開拓するか。 新規事業(インフラ市場等)をいかに開拓するか。 部品・原材料などの現地調達率をいかに引き上げるか。 47 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0] ご清聴ありがとうございました 48 Copyright (C) 2015 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved. [tv1.0]