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レポートはこちら - Morgan Stanley
2016 年 5 月
グローバル債券市場レポート
本書はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグローバル債券運用部門が作成したレポートを邦訳したものです。また、2016 年 4 月現在の
筆者の見通しおよび見解に基づくものであり、市場および経済状況の変化により必ずしも実現されるとは限りません。また、特に断りのない限り時点は
2016 年 4 月末現在です。
忍耐を説く中央銀行
1.アウトルック




我々は 3 月に初めて世界に対する中央銀行の反応関数が変化しつつあるとの仮説を示し
たが、4 月はこの仮説が改めて裏付けられる形になった。今や中央銀行はマイナス金利政
策と距離を置きつつある。独国債と日本国債の利回り低下を引き起こしたのは、中央銀行
の利下げ期待が引き起こしたタームプレミアムの低下だった。中央銀行が金利を一段のマイ
ナス圏に押し下げない限り、これらの国債の利回りは上昇する公算が大きく、米国債利回り
も歩調を合わせて上昇する可能性がある。
新興国全般では、2016 年から 2017 年にかけてブラジルとロシアからのネガティブな影響が
弱まるにつれ、経済成長が緩やかに回復すると予想している。中国については、中期的に
は成長減速が続くだろうが、足元では小幅な回復が見込まれる。財政刺激策、預金準備率
(RRR)の引き下げ、利下げをはじめとする一層大胆な政策対応が、この牽引役となろう。人
民元を対通貨バスケットで管理する態勢に徐々にシフトすることにより、中国が G20 の議長
国となっている今年一杯、人民元の急落リスクは抑制されよう。
全体として、クレジット市場が魅力的な投資機会を示しているとの見解は変わらず、こうした
状況から恩恵を享受すべく、ポートフォリオのポジションを構築している。スプレッドはある程
度縮小したが、全般的なマクロ的背景を踏まえれば、バリュエーションは依然魅力的な水準
にある。総体的に、引き続きクレジット・リスクをオーバーウェイトし、エクスポージャーの焦点
を、バリュエーションが魅力的な水準にある金融部門の劣後債に置く。さらに、米クレジット市
場に軸足を傾ける。米クレジット市場は卓越した妙味を提供し、今後数カ月にわたり力強い
超過リターンをもたらす可能性がある。
現在のキャリーがわずかなものに過ぎないことを踏まえるならば、上下いずれの方向であれ
金利が大幅に変動した場合には、ダウンサイド・リスクの方が非対称的に大きいとみられる。
このため、現時点ではクレジット関連モーゲージ証券のリターン・プロフィールのほうが、リスク
調整後ベースでより妙味があろう。2015 年末から 2016 年初めにかけてのスプレッドのワイド
化を勘案すると、尚更そのように言える。欧州では、2015 年に英国と欧州周縁国でスプレッ
ドが拡大したことが、2016 年に魅力的な投資機会を提供しているとみている。
1
アウト ル ック
金利および為替見通し
新興国市場見通し
クレジット市場見通し
証券化商品市場見通し
2
市場サマリー
先進国債券市場
新興国債券市場
1)米ドル建て新興国債券
2)現地通貨建て新興国債券
3)新興国社債
社債市場
証券化商品市場
1
グローバル債券市場レポート
4 月を通じて市場関係者は、リスクオン・センチメントがいつ
2016 年 5 月
けで、リスクフリー資産の大幅なアンダーパフォーマンスを引
まで続くかとの疑問を投げかけた。英国の EU 離脱(「Brexit」) き起こす恐れがある。このため、デュレーションリスクの増幅
を問う国民投票など数カ国で選挙が控えていることに加え、中
が予想される。中央銀行の反応関数がシフトし始めれば、尚更
国経済をめぐる不安も根強く残るなか、現在の金融市場の上昇
そのように言える。
は脆弱だとも映る。だが、リスクがより大きいのはリスクフリ
ー資産だ。我々は 3 月に初めて世界に対する中央銀行の反応関
数が変化しつつあるとの仮説を示し、4 月にはこの仮説が改め
て裏付けられる形になった。中央銀行はマイナス金利政策と距
離を置きつつある。ここまでのリスクフリー資産のアウトパフ
ォーマンスを牽引したのは、このマイナス金利政策だった。
だが、仮に利回りが上昇に転じても、経済状況が改善を続ける
なら、スプレッド商品は恩恵を享受することもあり得る。ECB
による社債買い入れは、米国および欧州の投資適格スプレッド
の下支えとなるはずだ。年初来、新興国市場は最も高いパフォ
ーマンスを記録した資産クラスの一角を占めた。米ドル安とコ
モディティ市場の安定を追い風に、新興国市場は今後も好パフ
市場は中央銀行が大胆な行動を起こすと期待していたが、4 月
ォーマンスが見込めよう。人民元が引き続き対通貨バスケット
に鮮明になったのは、中央銀行が手詰まりになっていることを
で下落すると想定すれば、対ドルでの切り下げ圧力は和らぐ。
示す 2 つの顕著な出来事だった。つまり FRB と日銀が積極的
中国は当面、経済の安定を維持できるだけの力を持っていると
な動きを見せなかったことだ。4 月の連邦公開市場委員会
考えられるため、現在のラリーにはまだ続伸余地があろう。
(FOMC)で、FRB は金利を据え置くことを決定した。より重
要なのは、最近の金融情勢の緩和と世界のリスク見通しの改善
を踏まえるならば、よりタカ派的なスタンスを取ることも可能
だったはずなのに、FRB はグローバル・リスクに焦点を置き、
3 月に送ったハト派的メッセージを堅持する選択を下したこと
投資家は強力な金融政策が導入されて資産価格を後押しすると
期待しているが、中央銀行はここにきて、慎重で忍耐強くある
べきだと訴えている。中央銀行のこうしたスタンスの変化を考
慮し、今やリスクフリー金利のリスクが最も高いと判断してい
る。
だ。声明からうかがえるように、FRB は引き続きグローバル・
リスクを、政策判断の一部と捉えるものと予想される。FRB は
これまで通り利上げに慎重に臨むとみられるため、6 月に利上
げが実施される公算は小さい。
金利および為替見通し
世界経済の相対的な低迷と金融情勢の引き締まりを勘案すれば、
一層注目を集めたのは、日銀が大胆な政策を打ち出せなかった
FRB はあらゆる手段を用いて、金利がハト派的な利上げの道筋
ことだ。重要なコアインフレ指標(エネルギーと食品を除く
をたどるよう誘導すると思われる。このことは、市場が積極的
CPI)を含むインフレの落ち着きにもかかわらず、日銀は 4 月
に米短期債の再評価を進めた場合には、実際の利上げの道筋が
に金利を据え置いた。この直近の日銀の行動も、中央銀行の反
失望を呼びかねないことを示唆している。長期債はグローバ
応関数の変化を物語る、さらなる証左だと受け止められる。3
ル・リスク・プレミアムにかかわるテクニカル要因を大きく織
月以降、欧州中央銀行(ECB)や日銀を中心に、中央銀行はマ
り込んでいるもようだが、そうした要因が反転すれば、利回り
イナス金利のコストをより重視し、緩和経路を信用緩和などそ
は押し上げられる。これらの動向と市場の現状に照らして、米
の他の政策にシフトし始めている。中央銀行は暗黙裡に一部の
国のデュレーションを引き続き小幅アンダーウェイトとする。
金融政策に限界があることを認識するに伴い、一層の信用・金
さらに、インフレ連動債(TIPS)を通じた現在の市場のインフ
融緩和に軸足を移すと予想され、このことがリスクフリー金利
レ予想は、インフレ上昇の可能性を過小評価していると考えら
の価格にインプリケーションを与えることになりそうだ。
れるため、インフレ連動債をオーバーウェイトとする。
事実、中央銀行が通貨切り下げ競争と一段の利下げに終止符を
ECB による継続的な資産買い入れにより、ユーロ周縁国の実質
打つなら、現在のリスクフリー資産の利回りは低すぎる。独国
金利は引き続き低下に向かうとみる。ECB の目的は、インフレ
債と日本国債の利回り低下を引き起こしたのは、中央銀行の利
期待を上向かせるべく、必要な金融および経済のリバランスを
下げ期待に牽引されたタームプレミアムの低下だった。ターム
実現することにある。以上の観点から、イタリアとスペインの
プレミアムが正常化すれば、これらの国債の利回りは上昇する
インフレ連動債をこれまで通りオーバーウェイトとし、ユーロ
公算が大きく、米国債利回りも足並みを揃えて上昇する可能性
圏のデュレーションを引き続き基本的にニュートラルとする。
がある。結局のところ、米国債市場は今や米国内のリスク・セ
ンチメントよりも、世界のリスク・センチメントに敏感になっ
ている。先進国の直接利回りが極端な水準に低下していること
を踏まえるならば、タームプレミアムがわずかに正常化するだ
オーストラリアとニュージーランドは、中国関連コモディティ
の低迷を主因とする景気減速と成長鈍化への配慮から、金融緩
和を維持すると考える。乳製品価格の低下を受けて、ニュージ
2
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
ーランド国債は市場をアウトパフォームする可能性がある。同
が続こうが、足元では小幅な回復が見込まれる。財政刺激策、
国国債はオーバーウェイトを維持する。
預金準備率の引き下げ、利下げなどの一層大胆な政策対応がそ
新興国資産は、大幅な下落を経て投資価値が上昇し始めている。
中国経済の成長への依存度の高い他の多くの新興国とは対照的
に、メキシコは米国経済が回復すれば、ファンダメンタルズの
改善が見込まれる。このため、新興国の中ではメキシコ国債を
より強気にみている。中欧の債券も依然魅力的だが、最近のア
ウトパフォーマンスに鑑み、他の市場へのポジションのシフト
を検討することも考えられる。ブラジルおよび南アフリカに対
し、戦術的にポジティブなスタンスを取る。背景には利回りが
高いことと、政治的混乱に改善の兆しが見えることがある。
の牽引役となろう。米ドルの下落は人民元にとって好都合で、
中国当局は一息つける。当局は対米ドル相場の安定を維持しつ
つ、対通貨バスケットで人民元を切り下げることが可能となり、
外貨準備高の減少ペースを減速させることができるからだ。運
用チームは、2016 年の中国の「公式な」成長率は 6.5%に減速
するとみている。「実際の」経済成長率は 5.5%近辺にとどま
ろう。人民元を対通貨バスケットで管理する態勢に徐々にシフ
トすることにより、中国が G20 の議長国となっている今年一杯、
元急落リスクは抑制されよう。
通貨ポジションについては、FRB がドル高阻止を望んでいるこ
とから、足元で米ドルは軟調に推移するとみている。ただし下
期には、FRB が利上げを再開するに伴い、ドルは堅調に推移す
る可能性がある。ノルウェー・クローネ、インドネシア・ルピ
ー、メキシコ・ペソなど、割安感の出ている通貨にエクスポー
ジャーを追加する。
クレジット市場見通し
4 月を通じて全産業でスプレッドがタイト化したが、中でもコ
モディティ敏感セクター、とりわけエネルギーおよび金属が大
幅にアウトパフォームした。原油、鉄鉱石、銅、およびその他
のコモディティが 2 月から 3 月にかけて力強いパフォーマンス
を記録した。4 月もこの流れを引き継ぐ形で続伸するに伴い、
新興国市場見通し
価格が底入れしたとの確信が強まり、全般的なセンチメントの
改善を後押しした。エネルギーおよび金属のスプレッドは他の
年初、金融市場は波乱含みのスタートを切ったが、最近の回復
セクターと比較して依然極めてワイドなままだが、2016 年初来、
とエネルギー価格の安定、ドル高シナリオの後退、中国のハー
最も高いパフォーマンスを記録している。このため、一部の高
ドランディング懸念の落ち着きを踏まえ、慎重ながらも楽観的
ベータ銘柄はもはや年初のように極端な割安感はない。
なスタンスに転じる。先進諸国が緩和的な金融政策を採るとみ
られることと、中国経済の失速懸念の後退が、2016 年第 2 四半
期から第 3 四半期にかけて、引き続き資産価格を突き動かす原
動力となる公算が大きい。
全体として、クレジット市場が魅力的な投資機会を示している
との見解は変わらない。こうした状況から恩恵を享受すべく、
ポートフォリオのポジションを構築している。スプレッドはあ
る程度縮小したものの、全般的なマクロ的背景を踏まえれば、
FRB のよりハト派的な反応関数は、年内の追加利上げが 1 度か
バリュエーションは依然魅力的な水準にある。引き続きクレジ
2 度にとどまることを示唆しており、リスク資産の追い風とな
ット・リスクをオーバーウェイトし、エクスポージャーの焦点
ろう。新興国資産は 2016 年にこの程度の追加利上げが行われ
をバリュエーションが魅力的な水準にある金融部門の劣後債に
ることには対処できよう。しかしながら、タカ派的なサプライ
置く。さらに、卓越した妙味を提供し、今後数カ月にわたり力
ズに対しては依然脆弱であろう。そうした政策サプライズが、
強い超過リターンをもたらす可能性がある米国のクレジット市
米国や世界経済の成長見通しの上振れではなく、切迫するイン
場に軸足を傾ける。
フレ懸念の高まりを反映する場合には、とりわけそのように言
えそうだ。しかしながら世界全体としてみれば、インフレ環境
は相対的に良好との考えは変わらない。エネルギー価格の上押
証券化商品市場見通し
し圧力が低水準にとどまると思われる中では、尚更である。原
油価格が底入れし、2016 年下期には緩やかに回復するとの我々
の予想が正しければ、コモディティ価格の下落に端を発するデ
フレ圧力は、和らぎ始めるはずである。
金利は概ねボックス圏で推移するとみているが、エージェンシ
ーMBS はアンダーウェイトを継続する。エージェンシーMBS
は年初来、好パフォーマンスを記録しているだけでなく、過去
数年で見ても堅調に推移している――金利ボラティリティが相
全般的には、2016 年から 2017 年にかけてブラジルとロシアの
ネガティブな影響が弱まるにつれ、新興国の成長は緩やかに回
復すると予想している。中国については、中期的には成長減速
対的に低かったことがその背景である。にもかかわらず、とい
うよりも正確にはそのために、MBS には割高感が出ていると
みられる。現在のキャリーがわずかなものに過ぎないことに照
3
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
らせば、上下いずれの方向であれ、金利が大幅に変動した時の
して、オーバーウェイト幅は管理可能な水準にとどめる。これ
ダウンサイド・リスクは、非対称的に大きいとみられる。加え
は、ボラティリティが高まっていることと、同セクターには時
て、現在はクレジット関連モーゲージ証券のリターン・プロフ
価への値洗いリスクがあることを考慮しての判断だ。
ィールのほうが、リスク調整後ベースでより妙味がある。2015
年末から 2016 年初めにかけてのスプレッドのワイド化を考え
ると、尚更そのように言える。足元ではエージェンシーMBS
は引き続き堅調なパフォーマンスが期待できようが、クレジッ
ト関連 MBS との比較では、エージェンシーMBS は妙味に乏し
い。
欧州では、2015 年に英国と欧州周縁国でスプレッドが拡大して
おり、このことが 2016 年に魅力的な投資機会を提供するとみ
ている。ECB は長期にわたり金利を低位に据え置き、さらなる
景気刺激策を導入する方針を改めて強調した。イングランド銀
行(BoE)も、2016 年の利上げ計画を先送りする意向を固めた
と受け止められる。欧州の不動産市場は依然、金融危機からの
我々の見解では、非エージェンシーMBS は、依然として相対
回復途上にある。特に、不動産価格が今でもピークを大幅に下
的に安定性が高く、魅力的な債券クラスの 1 つである。魅力的
回る水準にとどまっている欧州周縁国については、なおその感
なキャリー、ファンダメンタルズの改善、ネット・ベースでの
が強い。ECB の刺激策は、不動産価格上昇を後押しすると期待
供給減少を背景に、非エージェンシーMBS セクターのオーバ
される。原油価格の下落も、大半の欧州市場にとって下支え要
ーウェイトを維持する。非エージェンシーMBS のスプレッド
因となるはずだ。借り手が住宅ローンを組む余裕が拡大するこ
は、米国債利回りに対して投資適格級で 200-300bps 超、非投
とも、プラスに働く。ファンダメンタルズの改善とスプレッド
資適格級で 300-350bps に達している(損失調整後)。米国経
の拡大を踏まえて、引き続き欧州の住宅ローン債権担保証券
済が堅調で、住宅ローン金利が依然として低く、住宅取得能力
(RMBS)と CMBS 市場を選好する。
が過去平均を上回っている状況などから判断し、住宅市場の見
図表 1:資産別 年初来リターン(%)
通しは引き続き明るいとみている。供給面では、2016 年に非エ
ージェンシーMBS の残高は 600 億-700 億米ドル減少すると予
ブレント原油
想される。また新規発行額は 300 億-400 億米ドル前後にとど
金
まる見通しである。
商業用不動産ローン担保証券(CMBS)については、慎重なが
らもオーバーウェイトとしている。商業用不動産のファンダメ
ンタルズは米国経済の堅調さと足並みを揃えて改善を続けると
みられ、CMBS も好パフォーマンスが期待される。だが、最近、
スプレッドのボラティリティが高まっていることや、今後、新
規オリジネーションや発行がなお増加する見通しであることに
29.1
21.9
13.9
JPM現地通貨建てEM国債
12.4
円(対米ドル)
7.6
銅
BofA ML米国ハイイールド
7.3
JPM米ドル建てEM国債
7.2
ユーロ(対米ドル)
5.5
バークレイズ米国投資適格社債
5.4
5.0
米国10年国債
4.1
ドイツ10年国債
英国10年国債
3.7
照らせば、需給ダイナミクスに幾分の懸念が残る。さらに、
日本10年国債
3.6
2015 年から 2016 年にかけてオリジネーションされた CMBS に
BofA ML欧州ハイイールド(コンストレインド)
3.6
ついては、ここ数年にわたる不動産価格の高騰が懸念要因とな
S&P/LSTA レバレッジド・ローン
3.5
る。こうした状況に照らし、新発案件よりも、発行後時間が経
スペイン10年国債
3.1
バークレイズ欧州投資適格社債
2.7
過している CMBS を選好する。後者は直近の不動産価格上昇の
MSCI新興国株式
2.7
恩恵を享受できるのに対し、前者は組み入れ物件のバリュエー
BofA ML米国モーゲージ・マスター
2.1
ションが幾分高くなっている可能性があることによる。より直
S&P500
1.7
MSCI先進国株式
1.5
近に発行された CMBS については、資本ストラクチャーの上方
GSCIソフト・コモディティ
1.3
を選好する。最近のスプレッドのワイド化に伴い、魅力的なス
イタリア10年国債
1.1
プレッドを引き続き受け取れると同時に、一層の構造的信用補
ユーロ・ストックス(米ドル)
完の恩恵を享受できるとみられるためである。2016 年には
CMBS 市場のボラティリティは高止まりすると思われるが、そ
れにもかかわらず、CMBS は魅力的な利回りを提供すると同時
に、市場ファンダメンタルズの改善からメリットを受けるとの
考えは変わらない。以上により、CMBS のオーバーウェイトを
-0.9
-5.6
米ドル指数
-6.3
ユーロ・ストックス(ユーロ)
日経225
-11.7
-20
-10
0
10
20
30
40
上記は米ドル・ベース。出所:トムソン・ロイター、データストリーム
堅持する。但し、ポートフォリオのリスクプロフィールを考慮
4
グローバル債券市場レポート
2.市場サマリー
4 月は米国、英国、欧州すべてで債券利回りが上昇した。FRB
がハト派的な利上げの道筋を追求するなか、米ドルは主要通貨
に対して続落した。
4 月に米 10 年債利回りは 6bps 上昇、2 年債-10 年債のイール
ドカーブは横ばいだった。ユーロ圏の債券利回りも上昇した。
独 10 年債利回りは 12bps 上昇した一方、独 2 年債利回りは依然
マイナス圏にあるとはいえ、横ばいだった。アイルランド、イ
タリア、スペインの 10 年債利回りは 16-27bps 上昇した。ポル
トガルの 10 年債利回りは 22bps 上昇、これに対し、ギリシャの
10 年債利回りは 1bp 低下した。日本の 10 年債利回りは 5bps 上
昇した。
2016 年 5 月
サス予想の 51.5 をともに上回った。2016 年第 1 四半期のユー
ロ圏 GDP 成長率は前期比 0.6%となり、コンセンサス予想の
0.4%を凌いだ。4 月のユーロ圏インフレ率は-0.2%となり、3
月の 0%から低下した。
英国では、イングランド銀行(BoE)が賛成 9、反対 0 で金融
政策の維持を決定した。金融政策は全般的には中立的となって
いる。金融政策決定会合(MPC)は国民投票にまつわる不透明
感から、今後数カ月間、経済指標にはリスクがあると改めて言
及した。仮に弱い指標が出ても、MPC は通常以上にその先を
見越すと思われる。だが、国民投票で「離脱」の判断が下され
れば、見通しは大幅に変化しよう。経済指標については、3 月
の総合 CPI は 0.5%となり、2 月の 0.3%、コンセンサスの 0.4%
をともに上回った。2 月の失業率(3 カ月平均)は 5.1%と横ば
4 月は米ドルは幅広い通貨に対して下落した。ユーロは対米ド
いだった。第 1 四半期の GDP 成長率は前期比 0.4%となり、コ
ルで 0.6%上昇、英ポンドは 1.7%上昇した。日本円は 5.7%上昇
ンセンサスと一致した。3 月の英国の製造業 PMI は、2 月の
し、当月に最も高いパフォーマンスを記録した。原油(ブレン
50.8 から 51.0 に上昇したが、コンセンサス予想の 51.2 には届か
ト)価格は 40 米ドルから 48 米ドルに回復した。原油の値上が
なかった。
りを受けて、4 月にカナダ、ロシア、ノルウェーはいずれも
3%近く上昇し、対米ドルで最も大幅な値上がりを見せた通貨
の一角を占めた。
日本では、日銀(BOJ)が 7 対 2 で現行政策の維持を決定した。
一段の利下げに踏み切らなかったことで、市場の失望を呼んだ。
黒田東彦日銀総裁は、4 月の金融政策決定会合でさらなる緩和
策の導入が検討されたものの、既存の刺激策の効果を見極める
先進国債券市場
米国では、4 月の FOMC で金利据え置きが決定された。声明の
中で、委員会はインフレ指標とともに世界経済と金融市場の動
向に引き続き注視すると述べた。経済指標については、3 月の
非農業部門雇用者数は、予想の 20 万 5,000 人増加を上回り、21
万 5,000 人増加した。2 月の数値も 24 万 2,000 人から 24 万
5,000 人に上方修正された。失業率は 5.0%とじり高となり、コ
ンセンサスの 4.9%を上回った。時間当たりの平均賃金は 2.3%
増加した。ISM(サプライマネジメント協会)発表の 3 月の製
造業指数は 51.8 に上昇、コンセンサス予想の 51.0 を凌いだ。
ためには時間が必要との認識を示した。日銀は輸出と消費の見
通し悪化を踏まえて、成長率予測を下方修正した。加えて、
2%のインフレ率達成の時期を、従来の 2017 年上期から 2017 年
中に先送りした。日銀は熊本地震の被災地の復旧・復興に向け
た資金需要に応えるため、被災地の金融機関に対し総額 3,000
億円の資金供給を無利息で実施することを決めた。経済指標で
は、4 月の製造業 PMI は 48.2 となり、3 月の 49.1 から低下した。
4 月の全国コア CPI(食品とエネルギーを除く)は 0.7%にとど
まって 3 月の水準から低下し、コンセンサスの 0.8%を下振れ
した。
第 1 四半期の GDP 成長率は前期比 0.5%にとどまり、コンセン
サス予想の 0.7%を下回った。3 月の総合 CPI は 0.9%、コア CPI
は 2.2%だった。
ユーロ圏では、4 月の政策理事会で ECB は政策を据え置くと決
定した。記者会見で、マリオ・ドラギ ECB 総裁は 3 月に発表
された信用緩和策が効果を発揮するまでには、時間がかかるこ
とを強調した。ECB はさらに、社債買い入れ計画の詳細を明ら
かにした。買い入れ対象となるのは、ユーロ圏に本拠を置く非
金融法人が発行する社債で、少なくとも格付け機関 1 社から投
資適格格付けを得ているものである。当該社債は最終的な親会
社がユーロ圏外の企業であっても良い。経済指標を見ると、4
月のユーロ圏製造業 PMI は 51.7 となり、3 月の 51.6、コンセン
5
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
図表 2:主要国の国債利回り
新興国債券市場
2年債
利回り
( %)
当月
変化
( b ps)
5年債
利回り
( %)
当月
変化
( b ps)
10年債
利回り
( %)
当月
変化
( b ps)
オーストラリア
1.86
-4
2.06
-4
2.52
3
を切り、新興国資産が 3 カ月連続で上昇を続けるための舞台が
ベルギー
-0.45
0
-0.28
5
0.51
16
整った。ドル安、中央銀行による政策の後押し、コモディティ
カナダ
0.69
15
0.88
20
1.51
29
デンマーク
-0.35
-1
0.01
6
0.53
9
フランス
-0.44
4
-0.20
11
0.49
15
ドイツ
-0.49
0
-0.33
4
0.15
12
FRB はその声明の中で、世界情勢を踏まえて、一段の利上げを
アイルランド
-0.33
-2
0.02
1
0.97
24
急がないとのメッセージを送った。FRB が緩和的な政策スタン
イタリア
-0.02
-2
0.28
11
1.22
27
スを採っているという認識に加えて、新興国数カ国の中央銀行
日本
-0.24
-5
-0.20
-1
-0.08
-5
が金利を引き下げたことが追い風となった。一部の新興国は経
オランダ
-0.48
1
-0.34
2
0.36
15
済成長のテコ入れを図るとともに、インフレ低下を食い止める
ニュージーランド
2.08
12
2.25
-2
2.85
-8
べく利下げに動いた。4 月にはエネルギー価格が続伸、原油価
ノルウェー
0.41
-45
0.40
-102
1.21
29
格が 4.5%、石炭価格が 2%超それぞれ値上がりした。注目され
ポルトガル
0.58
11
1.84
8
2.94
22
スペイン
0.00
-6
0.34
24
1.44
16
スウェーデン
-0.60
4
-0.06
6
0.63
10
スイス
-0.81
5
-0.69
9
-0.24
10
英国
0.53
9
0.98
14
1.60
18
米国
0.78
6
1.29
9
1.83
6
国
新興国国債市場は 4 月も続伸して好調な第 2 四半期のスタート
価格の回復に加えて、投資資金が改めて流入したことが、新興
国債券資産の力強いパフォーマンスを牽引した。
た OPEC と非加盟国のドーハ(カタール)での協議において、
予想に反し増産凍結で合意できなかったにもかかわらず、エネ
ルギー価格が値上がりしたことが注目される。引き続きリスク
資産に対する投資意欲が高まるなか、米 10 年債利回りは約
6bps 上昇して 1.83%となった。米ドルは対新興国通貨で 1%超
下落した。
出所:Bloomberg
4 月はラテンアメリカを中心に引き続き政治情勢がリターンを
図表 3:対米ドルでの月次為替変化
牽引した。この結果、国によってパフォーマンスはまちまちと
(プラス:上昇、マイナス:下落)
なった。ブラジルではジルマ・ルセフ大統領に対する弾劾請求
日本
が下院を通過し、上院に送られた。上院では 5 月半ばにも弾劾
5.7
コロンビア
裁判の開始請求が可決される見通しで、可決されれば、ルセフ
5.3
ブラジル
4.6
南アフリカ
大統領は最低 180 日間の職務停止に追い込まれる。弾劾手続き
3.8
カナダ
の開始とともにルセフ支持派によるデモが繰り広げられており、
3.6
ロシア
ルセフ氏自身、大統領の職にとどまるべく戦いを続けている。
3.3
ノルウェー
政治的・経済的な試練に直面しているにもかかわらず、4 月を
2.7
英国
通じてブラジルの資産は好調に推移した。この背景には、弾劾
1.7
ハンガリー
1.2
手続きは同国にポジティブな変化をもたらすとの期待を投資家
チリ
1.1
が表明したことがある。一方、ペルーの資産も堅調なパフォー
スウェーデン
1.1
ニュージーランド
1.0
マンスを記録した。大統領選挙の第 1 回投票で、市場寄りの候
ユーロ
0.6
補者が残ったことが好感された。市場寄りの候補者の 1 人、ケ
メキシコ
0.6
イコ・フジモリ氏は第 1 回投票で首位に立ったが、当選に必要
インドネシア
0.5
な過半数を握るには至らなかった。もう 1 人の市場寄りの候補
韓国
0.4
者、ペドロ・パブロ・クチンスキ氏は第 2 位となって決選投票
シンガポール
0.3
スイス
0.2
オーストラリア
-0.7
マレーシア
-0.8
ポーランド
に勝ち進み、第 3 位となったポピュリスト色の強いベロニカ・
メンドサ候補を退けた。メキシコでは中央銀行が GDP(約 220
億ドル)の 2%に相当する利益を計上したと発表。メキシコ・
ペソの下落が最大の要因。この利益は一時的な性格のものであ
-2.4
-4
-2
0
2
4
月次変化率(%)
出所:Bloomberg
6
8
るため、中央銀行は現在の支出を賄うための使用はできないこ
ととした。利益は約 59 億ドルの国債の買戻しに向けられる。
メキシコ政府はまた、国営石油会社 PEMEX を支援すべく、総
6
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
額 51 億ドルの資金注入を行うとともに、売上税率を引き下げ
フリカ、ロシア、トルコ、インドネシアなどの高ベータ国が市
ると発表した。ドミニカ共和国では、5 月 15 日に実施される大
場全体をアウトパフォームした。ペルーも同様にアウトパフォ
統領選挙に関し、世論調査は現職大統領のダニロ・メディナ氏
ームした。他方、ポーランド、フィリピン、ルーマニア、マレ
が 2 位のルイス・アビナデル氏に大差で勝利することを示唆す
ーシア、タイ、ハンガリーが最も出遅れた。国内債券市場の低
るものとなった。この結果からすれば、第 1 回投票で決着がつ
迷が最大の足枷となった。
き、決選投票は不要となるものと思われる。メディナ氏はマク
ロ経済の安定と財務規律を重んじる市場寄りの政策を採り続け
3)新興国社債
ると、投資家はみている。
新興国社債の 4 月のリターンは、JP モルガン CEMBI ブロー
中央銀行の動きとしては、シンガポール金融通貨庁(MAS)が
ド・ディバーシファイド・インデックスで 1.73%となった。4
緩和策を発表して市場を驚かせた。MAS は自国通貨高への誘
月を通じて高利回りで質の低い社債が投資適格社債をアウトパ
導方針について従来の「0.5%引き上げ」から「現状維持」に変
フォームした。地域別では、アフリカ(南アフリカ)、ラテン
更し、金融政策を中立に緩めた(シンガポールは政策金利の代
アメリカ(アルゼンチン、ジャマイカ、ブラジル)、欧州(ウ
わりに為替政策を誘導目標にしている)。この発表を受けてシ
クライナ、ロシア)の社債が新興国社債全体をアウトパフォー
ンガポール・ドル(SGD)は下落、一時的にアジア通貨全体の
ムした。アジア(中国、韓国、シンガポール)および中東(イ
下落を誘った。今回の動きの背景には、MAS がコアインフレ、 スラエル、クウェート)の社債は出遅れた。
成長率、労働市場の中期見通しを下方修正したことがある。イ
ンド準備銀行はレポ金利を 25bps 引き下げて 6.50%とし、銀行
図表 4:新興国国債のスプレッド変化
米ドル建て
債券
スプレッド
(bps)
当月変化
(bps)
現地通貨
建て債券
利回り
(%)
当月変化
(bps)
ブラジル
401
-25
12.1
-134
物貸出金利を予想通り 50bps 引き下げた。アルゼンチンは国際
コロンビア
278
-17
7.9
1
債券市場に復帰、史上最高となる 165 億ドルの資金調達に成功
ハンガリー
209
-3
2.4
29
した。資金は 2001 年のデフォルトの際に債務再編に応じなか
インドネシア
275
-24
7.7
-23
ったホールドアウト債権者との和解と、93 億ドルの赤字ファイ
マレーシア
216
8
3.8
4
メキシコ
286
-22
5.9
-12
ペルー
198
-28
6.2
-59
フィリピン
93
-14
4.8
-9
ポーランド
122
-8
2.4
17
ロシア
254
-33
8.8
-15
南アフリカ
359
-17
9.3
-15
コモディティおよびエネルギー価格の動向、中国の為替政策と
トルコ
281
-13
9.0
-67
いった主要テーマが引き続き明るい背景となって、リスク資産
ベネズエラ
2858
-250
–
–
システムに一段の流動性を供給すると述べた。ハンガリー中央
銀行(NBH)は基準金利および翌日物貸出金利をそれぞれ
国
1.05%と 1.3%に引き下げた。トルコ中央銀行もムラト・チェテ
ィンカヤ氏の総裁就任後初の金融政策委員会(MPC)で、翌日
ナンスの穴埋めに向けられる。
1)米ドル建て新興国債券
4月の米ドル建て新興国国債・準国債市場のリターンは JP モ
ルガン EMBI グローバル・インデックスで 1.91%となり、年初
来のパフォーマンスは 7.23%に達した。4 月は FRB の金利政策、
を牽引した。ベネズエラ、アンゴラ、ガボン、エクアドルなど
出所:JP モルガン
のエネルギー輸出国が、市場全体をアウトパフォームした。マ
レーシア、象牙海岸、中国、スロバキア、ハンガリーは出遅れ
た。
社債市場
2)現地通貨建て新興国債券
2 月に始まったリスクオン・センチメントが 4 月も継続した。
4 月に現地通貨建て新興国国債は JP モルガン GBI-EM グロー
リスク資産は全般的に値上がりした。グローバル・ベースで株
バル・ディバーシファイド・インデックスで 2.57%上昇した。
式が 1.38%上昇し、クレジット・スプレッドが縮小、コモディ
新興国通貨は対米ドルで 1.19%上昇、新興国債券のリターンは
ティ価格が反発した。WTI 原油は 19.8%上昇して 45.92 ドルで 4
現地通貨建てで 1.39%となった。ブラジル、コロンビア、南ア
月を終えた。ブレント原油、銅、およびその他のコモディティ
7
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
も同様に値上がりした。グローバル投資適格社債は引き続き力
ーMBS の追い風となり、デュレーションが等しい米国債をア
強いパフォーマンスを記録、スプレッドは 15bps タイト化した。 ウトパフォームした。バークレイズ米国 MBS インデックスは
米ドル建て投資適格社債のスプレッドは 17bps タイト化し、ユ
4 月に 0.17%上昇、年初来 4 月末までのリターンは 2.14%となっ
ーロ建て社債をアウトパフォームした。ユーロ建て社債は 9bps
た。カレントクーポン物(新発物)エージェンシーMBS の対
のスプレッド縮小にとどまった。両インデックスともに、スプ
米国債スプレッド(線形補完後)は 2bps タイト化して 102bps
レッドは年初の水準よりもタイトになっている。ハイイールド
となった。30 年物住宅ローン金利は 24bps 低下して 3.63%とな
市場も上昇に参加し、米ハイイールド債のスプレッドは 78bps
った。FRB は引き続きエージェンシーMBS ポートフォリオか
タイト化した。欧州ハイイールド債のスプレッドも 44bps タイ
らの償還金を再投資し、同ポートフォリオの規模を約 1.75 兆ド
ト化した。
ルに維持した。
非エージェンシーMBS は 4 月にアウトパフォームした。4 月に
図表 5:社債セクター別スプレッド変化
米ド ル
ス プレッド
水準
(bps)
インデックス水準
スプレッドは 25bps 前後タイト化した結果、年初来ではわずか
(bps)
ユーロ
ス プレッド
水準
(bps)
(bps)
146
-17
122
-9
住宅価格が前月比 0.2%値上がりし、2015 年の水準から 5.4%上
産業(素材)
205
-37
144
-25
昇した。全米住宅価格は 2012 年の底から 38%値上がりした。
産業(資本財)
106
-8
92
-8
とはいえ、2006 年のピーク水準は未だ 11%下回っている。3 月
産業(消費財[市況]))
125
-16
112
-9
の中古住宅販売は低迷した 2 月の水準から 5.1%増加、前年同
産業(消費財[非市況])
113
-10
93
-4
月の水準を 1.5%上回った。家計所得(中央値)に対する住宅
産業(エネルギー)
232
-51
121
-8
取得コスト(中央値)を算出した全米不動産協会(NAR)の住
産業(テクノロジー)
122
-12
85
-5
宅取得能力指数によれば、住宅の購入しやすさ(アフォーダビ
産業(運輸)
132
-20
99
-6
産業(通信)
165
-20
125
-6
産業(その他産業)
122
-14
154
-10
公益(電力)
140
-10
121
-8
公益(ガス)
158
-11
108
-5
公益(その他公益)
165
+3
100
-8
金融(銀行)
133
-12
120
-8
金融(証券)
166
-14
126
-10
金融(金融会社)
165
-12
89
-14
金融(保険)
161
-13
252
-28
4 月に CMBS のスプレッドは再び縮小し、2016 年初頭のスプレ
金融(REIT)
175
-16
139
-9
ッドの拡大をほぼ巻き戻した格好になった。AAA 格 CMBS の
金融(その他金融)
241
+130
157
-15
スプレッドは 4 月におよそ 10bps 縮小、年初来では 15bps ほど
セ クター
当月
変化
当月
変化
出所:バークレイズ
25-50bps ワイドな水準となった。基本的に、米住宅市場およ
びモーゲージ市場の状況は依然として明るい。2 月には、全米
リティ)は、過去 20 年間の平均をほぼ 10%上回っている。住
宅ローンのパフォーマンスも依然堅調である。3 月の新規デフ
ォルト発生率は小幅低下して年率 0.77%にとどまり、2 月の
0.84%、2015 年 3 月の 0.92%をともに下回った。失業率が低く、
経済がゆるやかな改善に向かっており、住宅価格がおよそ 10
年前の住宅ローン危機からなお回復途上にある今、モーゲージ
関連クレジットのパフォーマンスは引き続き安定もしくは改善
が期待できよう。
タイト化した。BBB 格スプレッドは 4 月に横ばいとなり、年初
来では引き続き 170bps 程度ワイドな水準にある。年初 4 カ月間
証券化商品市場
の CMBS の新規発行額は 200 億ドル近辺となり、引き続き予想
を下回る水準にとどまった。年初、我々は 1000 億ユーロ超の
4 月にはエージェンシーMBS が続伸した。モーゲージ債のクレ
ジット・スプレッドは小幅タイト化したが、2015 年末の水準と
比べれば、依然概ねワイドな水準にとどまっている。4 月には
米国債利回りが幾分上昇したが、エージェンシーMBS にとっ
て最適なレンジ内にある。エージェンシーMBS のデュレーシ
ョン延長リスクはさほど大幅に上昇しておらず、期限前償還リ
スクもさしたる脅威とはなっていないようである。エージェン
シーMBS の対米国債スプレッドの大半はこのオプショナリテ
ィに起因していることから、現在の金利の安定がエージェンシ
CMBS が今年満期を迎えて借り換えの必要があることから、
2016 年の発行額はおよそ 1,000 億-1,200 億米ドルに達すると予
想していたが、この予想を 600 億-800 億ユーロに再度引き下
げる。最近の CMBS 市場の改善にもかかわらず、全体としてみ
ればスプレッドは依然大幅にワイドな水準にとどまっており、
この結果、商業用モーゲージの証券化が減少している。基本的
に、CMBS のパフォーマンスは引き続き健全だ。3 月に商業用
不動産価格は 0.4%値下がりした。だが第 1 四半期では依然
0.6%、過去 12 カ月間では 8.1%の値上がりとなった。商業用不
8
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
動産価格は過去 3 年にわたり年間 10%近い上昇を記録、今や
2007 年 8 月のピークを 24%上回っている。2016 年初めのホテ
ルの客室稼働率は依然高止まりした。同稼働率は 2015 年初頭
の水準をほぼ維持し、引き続き過去 15 年あまりで最も高い水
準となっている。全米のオフィス空室率は 2016 年第 1 四半期
にやや上昇したものの、引き続き 8 年ぶりの低水準となってい
る。複数世帯用住宅の空室率も引き続き低水準にとどまってお
り、産業用スペースに対する需要も依然旺盛だ。価格の変動性
が高まっていることや、需給ダイナミクスは引き続き懸念され
るが、CMBS 市場のファンダメンタルズは安定しているように
見受けられる。
ECB が金利を低水準に据え置くとともに、資産購入プログラム
の拡大に改めて取り組むことを確認したことに後押しされ、3
月に欧州の ABS スプレッドはタイト化した。スプレッドは 4
月に 5-20bps タイト化したが、それでも英国の RMBS を筆頭
に、年初来ではなお大幅にワイド化したままだ。3 月の ECB に
よる欧州 ABS の買い入れ額は 4 億ユーロに減少した。現在、
ECB による欧州 ABS の保有残高は 190 億ユーロとなった。4 月
に欧州の ABS 発行額は大幅に増加し、合計で 150 億ユーロ近
辺に達した。牽引役となったのが 61 億ポンドに上るレガシー
英国住宅ローンの証券化案件で、2016 年初来の新発債の発行額
は合計 293 億ユーロとなり、2015 年 4 月までの 252 億ユーロの
発行ペースを上回った。
9
グローバル債券市場レポート
2016 年 5 月
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CRC1511052 Exp. 05/30/2017
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