...

開催結果報告書 - 公益社団法人 企業情報化協会

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

開催結果報告書 - 公益社団法人 企業情報化協会
『経営と IT の融合を目指して』
平成 25 年 2 月 7 日(木)・8 日(金) 開催
開催結果報告書
2013 年 3 月
目次
Ⅰ.開催プログラム .................................................................... 1
Ⅱ.企画委員 ........................................................................... 11
Ⅲ.後援・協賛企業 ................................................................... 13
Ⅳ.個別シンポジウム発表の概要 ................................................ 14
1.クラウドコンピューティングシンポジウム・ビッグデータビジネス活用シンポジウム
2.スマートデバイス活用シンポジウム/平成 23 年度 IT 賞受賞記念講演
Ⅴ. アンケート集計結果 ............................................................. 33
Ⅵ. 平成 24 年度 IT 賞受賞企業記念写真 .................................. 38
Ⅰ.開催プログラム
1.概要
名
会
会
主
称
期
場
催
:
:
:
:
第 28 回 IT 戦略総合大会 - 統一テーマ『経営と IT の融合を目指して -
2013 年 2 月 7 日(木)・8 日(金)
東京コンファレンスセンター品川(東京都港区港南 1-9-36 アレア品川)
社団法人企業情報化協会
2.第一日目:2013 年 2 月 7 日(木) オープニングセッション
10:00 主催者代表挨拶:
社団法人企業情報化協会 会長
東京ガス株式会社 顧問 前田 忠
昭
10:10 基調講演 1 : 「日産のグローバル戦略」
↓
日産自動車株式会社 最高執行責任者
11:00
11:10
志賀 俊之
特別講演 : 「生きがい、やりがい、自己実現 ~目標達成の為に~」
↓
社団法人日本女子プロゴルフ協会 会長
12:00
小林 浩美
昼食休憩
13:10 基調講演 2 : 「クロネコヤマトの満足創造経営 ~事業を支える IT の活用と進化~」
↓
ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長
14:00
木川 眞
14:10 平成 24 年度 IT賞受賞企業記念講演
↓
IT 総合賞:「日本生命における新統合システムの開発とその成果」
16:55
日本生命保険相互会社/ニッセイ情報テクノロジー株式会社
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 執行役員 木下 雅裕
IT 総合賞:「JT におけるプライベートクラウドによるインフラ共通基盤の構築」
日本たばこ産業株式会社 IT 部長 引地 久之
IT 総合賞:「日立製作所における連結経営の強化と情報共有プロジェクトの推進」
株式会社日立製作所 IT 統括本部 統括本部長 大澤 隆男
IT マネジメント賞:
「三井住友フィナンシャルグループにおける戦略的 IT ガバナンスの実現に向けた取組み」
株式会社三井住友銀行 執行役員 システム統括部長 谷崎 勝教
(続く)
1
17:10 平成 24 年度 IT賞 表彰式典
↓
受賞者
17:50 IT 総合賞 :
日本生命保険相互会社 取締役専務執行役員 黒田 正実
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 代表取締役社長 和田 俊介
IT 総合賞 :
日本たばこ産業株式会社 代表取締役社長 新貝 康司
IT 総合賞 :
株式会社日立製作所 執行役社長 中西 宏明
IT マネジメント賞 :
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
株式会社三井住友銀行 取締役 専務執行役員 渕崎 正弘
IT ビジネス賞 :
NTT コミュニケーションズ株式会社 取締役 第二営業本部長 荒木 和彦
ITビジネス賞 :
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂 信也
IT 特別賞(IT 推進部門賞) :
東京海上日動システムズ株式会社 代表取締役社長 横塚 裕志
IT 特別賞(IT フロンティア賞) :
クオリカ株式会社 代表取締役社長 西田 光志
IT 特別賞(IT フロンティア賞) :
全日本空輸株式会社 上席執行役員 幸重 孝典
IT 特別賞(IT フロンティア賞) :
株式会社野村総合研究所 代表取締役 専務執行役員 石坂 慶一
IT 賞創設 30 回記念賞 :
小島プレス工業株式会社
代表取締役社長 小島 洋一郎
IT 奨励賞(ベンダーマネジメント賞) :
株式会社シーエーシー 代表取締役社長 酒匂 明彦
IT 奨励賞(ベンダーマネジメント賞) :
KVH 株式会社 最高執行責任者 日置 健二
【講評】 IT 賞審査委員会委員長 慶應義塾大学名誉教授 斎藤 信男
17:55 情報交歓会 (受賞記念パーティー・懇親会)
↓
19:00
ご挨拶:第 28 回 IT 戦略総合大会企画委員会委員長
日本電信電話株式会社 代表取締役副社長 宇治 則孝
乾杯:第 28 回 IT 戦略総合大会企画委員会委員長
東京ガス株式会社 常務執行役員 渡辺 尚生
(敬称略)
2
2. 第二日目:2013 年 2 月 8 日(金) シンポジウム・セミナー
スマートデバイスビジネス活用シンポジウム
IT 賞受賞記念講演
クラウドコンピューティングシンポジウム
9:30
~
10:20
「富士フィルムにおけるプライベートクラウド基 IT フロンティア賞
「キャビンアテンダントの iPad 活用による業務改革」
盤」
全日本空輸株式会社
富士フィルムコンピューターシステム株式会社
業務プロセス改革室 開発推進部 主席部員
システム事業部 IT インフラ部 部長 柴田 英 林 剛史
樹
10:30
~
11:20
「持たない IT の時代に!」
IT マネジメント賞
「ICT を活用した「働き方改革」の取組み
株式会社 JTB イノベーターズ
NTT コミュニケーションズ株式会社
代表取締役常務 北上 真一
取締役 第二営業本部長 荒本 和彦
11:30
~
12:20
「社内 ICT におけるクラウド利用事例」
IT 特別賞(IT フロンティア賞)
「最新 ICT 技術を活用した次世代オフィスの構築と
ワークスタイル変革」」
NTT コムウェア株式会社
クオリカ株式会社
サービス事業本部 サービスプロバイダ部
常務執行役員 技術部長
SmartCloud-BU BU 長 今里 亘
兼 クラウドサービス事業部長 会田 雄一
IT 賞受賞記念講演
ビッグデータビジネス活用シンポジウム
13:30
~
14:20
「ビッグデータの活用で、クルマと人と社会をつ IT 特別賞(IT フロンティア賞)
なぐ、新しい価値の創造へのチャレンジ」
「データセンターサービスの実行責任と説明責任の
強化」
本田技研工業株式会社
グローバルテレマティクス部 役員待遇参事・部
長
今井 武
14:30
~
15:20
「ビッグデータの活用で広がる未来」
株式会社 NTT データ
第三法人事業本部
メディア・エンターテインメント事業部
メディア統括部長 時吉 誠
15:30
~
16:20
株式会社野村総合研究所
IT サービスマネジメント推進部長
徳地 隆弘
IT 奨励賞(ベンダーマネジメント賞)
「シーエーシーにおける IT 環境の変化に対応する
共通開発基盤の構築」
株式会社シーエーシー
生産品質強化本部 生産技術部長
鈴木 貴博
「ビッグデータ時代の情報プラットフォームビジ IT 特別賞(IT 推進部門賞)
ネス」
「未知なるアイデア創造の場」
株式会社シグマクシス
プリンシパル
松尾 公大
3
東京海上日動システムズ株式会社
経営企画部(計画推進担当)
倉内 麻子
16:30
~
17:20
IT ビジネス賞
「GDO における次の10年を戦うための IT 基盤再構
築プロジェクト」
「ソーシャルインテリジェンス」
日本ヒューレット・パッカード株式会社
ストラテジックエンタープライズサービス事業本
部
エグゼクティブコンサルタント
内藤 剛
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
システム革新本部本部長
渡邉 信之
(副題略)
スマートデバイスソリューションセミナー
9:30
~
10:20
「ユーザ部門のためのスマートデバイス開発/運
用講座」
株式会社ジェーエムエーシステムズ
マーケティングマネージャー
岸 直之
IT 総合ソリューションセミナー
クラウドソリューションセミナー
10:30
~
11:20
11:30
~
12:20
「AWS で構築するプライベートクラウド事例のご 「次世代型リサーチ技術の普及に伴う IT ソリューショ
紹介」
ンの現状と課題」
株式会社シーエーシー
株式会社日本能率協会総合研究所
グローバル営業第二本部
観光マーケティング研究所 副所長
サービスプロデューサー 竹田 陽一郎
岡 冬彦
「スマタブを利用した心地よいモノとは」
「最適な IT 戦略・構想立案」
株式会社 NTT ドコモ
法人事業部 法人ビジネス戦略部長
松木 彰
関電システムソリューションズ株式会社
コンサルティングセンター 部長
上畑 昌浩
休憩時間
13:30
~
14:20
「企業向けクラウドとスマートデバイスに最適な 「受注生産型企業における顧客管理(CRM)と経営
VAiOS クラウドサービス」
との連動」
株式会社アイネット
営業企画部 係長
三井造船システム技研株式会社
神野 由紀子
ビジネスソリューション事業部
経営企画部
第一ビジネスシステム部
頼成 匡
山口 絵里香
ビッグデータソリューションセミナー
14:30
~
15:20
15:30
~
16:20
「クラウドによるビッグデータ活用の加速」
「e ラーニングライブラリを活用した企業内教育のご
紹介」
株式会社インターネットイニシアティブ
ソリューション本部
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
アプリケーションソリューション部 部長 e-ラーニング事業本部 システム開発推進部 主任
山口 新二
本間 秀一
「OSS を活用した企業アプリケーションのモダ 「日本の製造業の厳しい状況において、IT が事業
ナイズ化のヒント」
に貢献するにはいかにあるべきか」
レッドハット株式会社
JBoss 事業本部 部長
岡下 浩明
4
株式会社日本能率協会コンサルティング
IT 事業センター センター長
シニアコンサルタント 松本 賢治
16:30
~
17:20
「クラウドで ICT 戦略の革新を!」
NTTコミュニケーションズ株式会社
クラウドサービス部
担当部長
中山 幹公
(敬称略)
5
 オープニングセッション
主催者挨拶
社団法人企業情報化協会 会長
東京ガス株式会社 顧問 前田 忠昭氏
基調講演1
「日産のグローバル戦略」
日産自動車株式会社
最高執行責任者 志賀 俊之氏
特別講演
基調講演2
「生きがい、やりがい、自己実現~目標達成の為 「クロネコヤマトの満足創造経営~事業を支えるIT
に~」
の活用と進化~」
社団法人日本女子プロゴルフ協会
会長 小林 浩美氏
ヤマトホールディングス株式会社
代表取締役社長 木川 眞氏
6
IT 総合賞
「日本生命における新統合システムの開発と
IT 総合賞
「JTにおけるプライベートクラウドによる
その成果」
日本生命保険相互会社/ニッセイ情報テクノロジー
株式会社
ニッセイ情報テクノロジー株式会社
執行役員 木下 雅裕氏
インフラ共通基盤の構築」
日本たばこ産業株式会社
IT 部長 引地 久之氏
IT総合賞
「日立製作所における連結経営の強化と情報共有プ
ITマネジメント賞
「三井住友フィナンシャルグループにおける
ロジェクトの推進」
株式会社日立製作所
IT統括本部 統括本部長 大澤 隆男氏
戦略的ITガバナンスの実現に向けた取り組
み」
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
株式会社三井住友銀行
執行役員システム統括部長 谷崎 勝教氏
7
 平成 24 年度IT賞受賞企業表彰式典
・ 受賞代表者、審査委員長
・ 各社の答礼
日本生命保険相互会社
ニッセイ情報テクノロジー株式会社
日本たばこ産業株式会社
株式会社日立製作所
株式会社三井住友フィナンシャル・
株式会社NTTコミュニケーションズ
グループ
8
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 東京海上日動システムズ株式会
クオリカ株式会社
社
全日本空輸株式会社
株式会社野村総合研究所
株式会社シーエーシー
KVH株式会社
9
小島プレス工業株式会社
 情報交歓会
挨拶
日本電信電話株式会社 顧問 宇治 則孝氏
乾杯発声
味の素株式会社 取締役 常務執行役員 五十嵐 弘司氏
10
Ⅱ.企画委員
大会委員長
前田 忠昭
社団法人企業情報化協会会長
東京ガス株式会社 顧問
大会企画委員会 委員長
宇治 則孝
日本電信電話株式会社 顧問
大会企画委員会 副委員長
五十嵐 弘司 味の素株式会社 取締役常務執行役員
大会企画委員会 委員
斎藤 信男
慶應義塾大学 名誉教授
中塚 正人
株式会社 IHI エスキューブ 顧問
永野 修治
千代田システムテクノロジーズ株式会社 代表取締役副社長
知久 龍人
アサヒホールディングス株式会社 IT部門 ゼネラルマネージャー
古川
上原
松本
開發
昌幸
宏
光吉
寛
NRIシステムテクノ株式会社 常務取締役管理本部長
EMC ジャパン株式会社 マーケティング本部長
株式会社インターネットイニシアティブ 執行役員 マーケティング本部長
エーザイ株式会社 事業戦略部統合戦略室 ICT マネジメント担当課長
芦沢 秀明
磯﨑 洋一
NEC ソフト株式会社 業務サービス統括部 部長
NKSJ システムズ株式会社 運用管理本部
運用第一グループ 兼 運用企画グループ 部長
NTTコミュニケーションズ株式会社 第二営業本部 インダストリ営業部門長
株式会社NTTデータ エンタープライズ IT サービス事業推進部
高橋 守和
矢吹 義明
鈴木 泰久
グループ事業推進室 部長
株式会社NTTドコモ 執行役員 法人事業部 副事業部長
NTT コムウェア株式会社 取締役 ビジネスクリエーション部 部長
株式会社岡村製作所 企画本部 情報システム部 部長
平沼
大原
村上
大熊
佐原
雄一郎
泉
豊
眞次郎
浩治
沖電気工業株式会社 情報システム事業部 事業部長
株式会社オービックビジネスコンサルタント 取締役 営業本部 広報室長
オリックス株式会社 国内営業統括本部 マトリクス推進部 担当部長
カシオ計算機株式会社 業務開発部長
カブドットコム証券株式会社 理事 ビジネス・ディベロップメント担当
下村
細谷
香月
篠田
匡
善仁
裕司
敏幸
関西電力株式会社 経営改革・IT 本部 IT 企画部長
キヤノン株式会社 情報通信システム本部 情報通信システム企画部
九州旅客鉄道株式会社 総合企画本部 IT 推進室 室長
協和発酵キリン株式会社 情報システム部長
恩田 充
岸 正之
辨崎 勝弘
兼子 邦彦
グローリー株式会社 経営管理本部 情報システム部
小島プレス工業株式会社 技術企画部 参事
11
部長
部長
児玉 浩一
沓内 修
中内 伸二
株式会社シーエーシー 経営管理部 広報IRグループ長
株式会社ジェーエムエーシステムズ 営業管理部 参与
四国電力株式会社 情報通信部 部長
安田
幸重
山田
嶋田
橋本
株式会社 JR 西日本ITソリューションズ 代表取締役社長
全日本空輸株式会社 上席執行役員 業務プロセス改革室長
大和証券株式会社 システム企画部 担当部長
株式会社中央コンピュータシステム 常務取締役
中外製薬株式会社 IT統轄部門 情報システム部長
洋
孝典
芳也
博明
久
佐藤 昌志
伊藤 和雄
牧野 司
久保田 宏明
電気事業連合会 情報通信部長
電源開発株式会社 総務部 IT 推進室長 兼 総括マネージャー(IT技術)
東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部調査企画グループ 次長
東京ガス株式会社 IT活用推進部長 執行役員
北村
児島
小栗
能丸
宮西
修
邦昌
常義
実
真司
東芝情報機器株式会社 イノベーション推進室 室長
西日本旅客鉄道株式会社 IT 本部長 執行役員
日揮情報システム株式会社 取締役 産業ソリューション事業部長
日産自動車株式会社 グローバル情報システム本部 部長
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 品質・生産管理部長
桜本
飯田
引地
小竹
利幸
耕造
久之
毅志
日本オラクル株式会社 アプリケーション事業統括本部
株式会社日本総合研究所 取締役 専務執行役員
日本たばこ産業株式会社 IT 部 IT 部長
日本電気株式会社 経営システム本部長
布田
本田
橋本
伊藤
安男
光広
一彦
かつら
株式会社日本能率協会マネジメントセンター 常務取締役
日本ヒューレット・パッカード株式会社 コーポレートコミュニケーション本部
株式会社日本旅行 情報システム部長
日本マイクロソフト株式会社 エンタープライズマーケティング本部
業務執行役員 本部長
檀原
柴田
西野
依田
可一
英樹
克彦
賢治
株式会社日立製作所 情報・通信システム社 経営戦略室 渉外部 部長代理
富士フイルムコンピューターシステム株式会社 システム事業部 IT インフラ部 部長
北陸電力株式会社 支配人 情報通信部長
本田技研工業株式会社 グローバル IT 戦略管理室 室長
宮田
伍賀
河村
木村
田口
隆司
孝昌
芳彦
良彦
潤
みずほ情報総研株式会社 執行役員
三井造船システム技研株式会社 顧問
三菱商事株式会社 執行役員 ビジネスサービス部門 CEO補佐
三菱マテリアル株式会社 システム企画部 部長
株式会社インプレスビジネスメディア 取締役 IT Leaders 編集局 局長
小佐野 豪績
土居 章展
担当ディレクター
本部長
ヤマトホールディングス株式会社 執行役員
株式会社菱化システム 取締役 常務執行役員
(敬称略・会社・団体名 50 音順)
12
Ⅲ.協賛企業
株式会社アイネット
株式会社インターネットイニシアティブ
NTT コミュニケーションズ株式会社
NTT コムウェア株式会社
株式会社 NTT データ
株式会社 NTT ドコモ
関電システムソリューションズ株式会社
株式会社シーエーシー
株式会社ジェーエムエーシステムズ
株式会社 JIPM ソリューション
株式会社JMAホールディングス
一般社団法人日本能率協会
株式会社日本能率協会コンサルティング
株式会社日本能率協会総合研究所
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
日本ヒューレット・パッカード株式会社
三井造船システム技研株式会社
レッドハット株式会社
(50 音順)
13
Ⅳ.個別シンポジウム発表の概要
1.クラウドコンピューティングシンポジウム/ビッグデータビジネス活用シンポジウム
コーディネーター : NEC ビッグローブ株式会社 西村 俊郎
(1) 「富士フィルムにおけるプライベートクラウド基盤」
富士フィルムコンピューターシステム株式会社
システム事業部 IT インフラ部 部長 柴田 英樹氏
富士フィルムコンピューターシステム㈱によるプライベートクラウド基盤構築の先進的取組みの説明で
ある。
富士フィルムコンピューターシステム㈱は、富士フィルムグループ(連結会社数:約270社)のITシェ
アード会社であり、グループの情報戦略の策定・推進を担当している(除く一部会社)。
富士フィルムグループの2014年3月期に向けた中期経営計画における重点経営戦略としてグロー
バル展開とM&Aの加速化がある。
中期経営計画に対応したグローバルIT戦略の推進においては、グローバル各地域本社へのIT機能
の集中とグループ本社のIT機能との融合が重要となり、プロセス及びIT基盤の標準化・共通化・統合化
と全社統合DWHの構築に取り組んだ。
また、経営環境の変化への迅速な対応を可能とし、かつ継続的コストダウンを実現するために、200
8年より仮想化に取組み始め、更にプライベートクラウド基盤の構築・整備を継続的に図ってきた。
これにより、ITコストの年間数億円以上のコストセーブに加え、ビジネスに貢献する新サービスの導入
の迅速化を実現し、経営環境への柔軟な対応を可能とした。
現在はサービスレベルに対応して構成を大きく3つに分類し、パターン化されたリソースのメニューか
らの選択を可能とし、利用者の利便性の向上を図っている。
更にメニューの充実、自動プロビジョニング、利用部門によるセルフサービス化に取り組んでいる。
また利用部門に対しては、外部のクラウドベンダとのベンチマーキングを基に、外部に負けない費用で
提供出来るようにコストダウンに励んでいる。
プライベートクラウド活用の効果には、システム投資の最適化、新サービス導入のスピードアップ、経
営環境への柔軟な対応等があるが、そのためにはサービス&運用管理が一層重要となってくる。
このために、サービスレベルの管理項目を15に分類し、各項目を評価し、透視化と継続的改善を行
っている。またITILに基づくサービス&運用のマネージメント力の強化にも努めている。
プライベートクラウド基盤の強化に向けて、リソースのメニュー化の強化、自動プロビジョニング、利用
部門のセルフサービスの機能強化を図っていく予定であるが、そのためには構成管理の強化と障害時
の復旧の迅速化に取り組む必要がある。
また、パブリッククラウドの発展・成熟度を見極めながら、ガバナンス/セキュリティ/価格/既存シス
テムとの連携/カスタマイズ性の観点から、プライベートクラウドとパブリッククラウドの適切な使い分けを
検討していく予定である。
14
次に取り組むべき課題として、業務プロセス、アプリケーションからインフラに至るシステム全体の効率
化がある。
更に、今後はIT部門の役割を変化させていく必要があり、業務変革と高度化のパートナー、そして新
規ビジネス価値創造のパートナーとしての役割をも担っていきたいと考えている。
(2) 「持たないITの時代に!」
株式会社JTBビジネスイノベーターズ
代表取締役常務 北上 真一氏
今後、企業のIT所有戦略自体に変革が起こり、最終的にはITの自社保有は、全体の10%で充足さ
れるといったパラダイムシフトに関する説明である。説明の内容は、下記3つのテーマから構成される。
1.JTBの仮想化とクラウドの活用と実例
2.(クラウド型)DCを持っている企業の戦略
3.なぜ持たないITか?-仮想化からクラウドへの進化の中で、今後のICT戦略は?-
1.JTBの仮想化とクラウドの活用と実例
2006年6月より次世代インフラ基盤の検討を開始した。
目指したのは、ネットワーク/マシン(サーバ)/ストレージ/IOデバイス(データサーバー)の4つの仮
想化の取り込みであり、それぞれ大きな効果を得ることが出来た。
ネットワークの仮想化においては、バーチャルネットワークの冗長化と可用性の向上を図ることにより、ネ
ットワークの移行を20秒以内に達成可能とした。
サーバの仮想化を推進することにより、CPUの平均利用率を9%以下から20~25%に上げ、 サーバ
コストの削減を達成した。
ストレージの仮想化によりシン・プロビジョニングを実現することが出来た。
データサーバーの本番系から待機系への移行時間は、10数分から60秒以内に短縮した。
このような定量的な効果に加え、障害の30%を占めるハード障害に対して、SE対応作業を日中に行え
るようになったため、SEの負荷が減少し、SEがより前向きな自動化の推進に着手でき、人財面での効
用がより大きかった。
これらの次世代のインフラ基盤(=クラウド)の構築を、2009年1月には完了させることが出来た。
現在は、J-Cloud のコンセプトのもとで、グループ全体のサーバ統合プロジェクトを推し進めている。
また、いち早くパブリッククラウドサービスである Windows Azure の利用を開始した。
パブリッククラウドには、短時間かつ低コストで開発と運用が実現可能及びシステムの運用管理が必要
ない等の効果がある。
パブリッククラウドを有効活用するためには、ITのSWOT分析を行い、付加価値を創造するITは何か、
何を持たないか、そしてハイブリッド型での利用システムをどのようにマッピングするか等のシステムの
“仕分け”が重要となる。
2.(クラウド型)DCを持っている企業の戦略
15
DC構築のキィワードは省エネであり、省電力型のサーバ導入もさることながら、空調の設計が重要とな
る。
吸入される冷気と温かくなった排気をどう分離、コントロールするかが省エネに直結する。
コールドアイルキャッピングやブランクパネルの設置は、大きな省エネ効果を得ることが出来た。
これらの施策により、グリーン・グリッド・データセンター・アワード2011において、JT B情報システムは
最終優秀賞を受賞した。
今後は、企業間同士で施設を最適利用し、Win-Win の関係を築きあげることが重要となる。
3.なぜ持たないITか?-仮想化からクラウドへの進化の中で、今後のICT戦略は?-
今後は、人口減少により日本経済は将来シュリンクし、市場が大きく変化していく中で、(システム投資
+保守・運用費)の変動費化が重要となっていくが、クラウドによりそれが実現可能となる。使う分を予測
して払う時代から、使った分だけを払う時代へとパラダイムシフトが起きる。
クラウドの進化の過程で、企業は自社のICT戦略の見直しを迫られることになる。
どんなITを持つことが自社のビジネスに重要か、自社のコアのビジネスモデルにおけるICTとは何かを
追求し、経営陣も含め理解することが必要となる。
企業のIT所有戦略自体の変革が進行する中で、最終的にはITの自社保有は全体の10%であれば充
足できるようになるだろう。
ただし、持たないITにおいては、IT人財の育成法が重要である。
IT人財には、スマホやタブレットでの開発経験やリーンスタートアップ型の開発経験を積ませた上で、上
流工程へのシフト、即ち業務フローの分析力・理解力及びマーケッティング力の向上が必要とされる。
(3) 「社内ICTにおけるクラウド利用事例」
NTTコムウェア株式会社
サービス事業本部サービスプロバイダ部 SmartCloudBU BU 長 今里 亘氏
NTTコムウェア㈱における、様々な社内サービスをクラウドで実現した成果と、その成果を通して培った
技術力とノウハウを集約し、事業化した“おもてなしクラウド”の説明である。
ソフトウェア開発の生産性、品質の向上及びセキュリティの向上のためには、開発ツールの統合化とデ
スクトップ端末のシンクライアント化(=仮想デスクトップ)が重要である。
そのため、開発環境の統合化とクラウド開発基盤を構築し、プロジェクトごとに、開発用仮想デスクトップ、
開発用サーバ/ストレージを自由に選択させ、いつでも、すぐに利用できる開発環境の提供を2008年
度より本格的に開始した。
クラウド開発基盤と仮想デスクトップ端末の提供は、プロジェクトの状況により大幅に変化する開発者の
人数に対して、柔軟かつ迅速に対応することが可能になった。
開発環境は、利用者の要求から5日で提供するまでに短縮化が図られ、利用者は開発環境の構築の
手間からも解放された。
また仮想デスクトップ端末+開発ネットワークにより、オフショア先や協力会社ビルも含め、いつでもどこ
でもセキュアに開発出来る環境を実現した。
2012年度において、全開発PJの80%が導入し、コスト削減、品質向上及び生産性向上に多いに貢献
16
している。
また仮想デスクトップの利用者は全国で8,500名にも達した。
開発環境のクラウド基盤化と並行して、サイロ型であった40の社内システムに対して、ハードウェア、OS、
ミドルウェアの統合・標準化を図り、ハードウェアのロケーションを集約し、社内システムの共通基盤化、
クラウド化を実現した。
この共通基盤化、クラウド化により、社内システムのトータルコストを20%削減することが出来た。
社内における共通基盤化、クラウド化で培った技術力、ノウハウを集約し、共通基盤のIaaS化、認証/課
金及びグループウェア等のPaaS化、メール、イメージベース及び安否確認等のSaaS化を実現し、201
0年度より商用サービスを開始した。
2012年度においては、これらのサービスを単品とせず、オールインワンで全体最適化されたシステム
“おもてなしクラウド”として提供できるようになった。
更に、これらのクラウドサービスとオンプレミスのお客様とを連携させたSI型のサポートも可能とした。
NTTコムウェアのクラウドサービスの強みは、グレードの高いグリーンなデータセンタ、高品質なインタ
ーネット回線、Sierとして培ったノウハウと技術力及びNTTを支えてきた運用力にあると考えている。
“おもてなしクラウド”のコンセプトは、クラウドに付随してコンサル、SI、クラウド、ITO、BPOを含めた多
様な業務をワンストップで提供することにある。
それに加え、一歩先に向けた取り組みとして、パブリッククラウド連携、仮想NW、排熱式データセンタ等
による付加価値の向上にも励んでいる。
(4) ビッグデータの活用でクルマと人と社会をつなぐ新しい価値創造へのチャレンジ」
本田技研工業株式会社
グローバルテレマティクス部 役員待遇参事 今井 武氏
テレマティクスにより収集されるビッグデータが、クルマ社会にどのような進化をもたらし、日本
の社会にいかに貢献できるかの説明である。
テレマティクス(Telematics)とは、テレコミュニケーション(Telecommunication=通信)とインフォマテ
ィクス(Informatics=情報工学)から作られた造語で、移動体通信システムを利用した自動車や輸送
車両へのサービスの総称である。
ホンダは、テレマティクスとして1981年に世界初のカーナビの装備を始め、1998年にインターネット対
応ナビ、2002年に双方向通信型インターナビと次々と進化させ、今では3G通信対応やスマホ向けの
サービスを行い、より良いサービス(=LINC)を目指している。
サービスとしては、交通情報/渋滞予測から始まり、豪雨予測、地域安全情報、地震情報、グーグルサ
ーチ等がある。
ホンダのテレマティクスの会員数は、2012年末に171万人に達しており、今や双方向のライブ情報サ
ービス・ネットワークとして、会員同士での交通情報の共有や、様々な情報を基にしたVICSにはない最
適ルートの提供等をサービスしている。
17
更に、インターナビの全てのお客様に通信機の標準整備と通信費の無料化を行い、常時接続を可能と
し(=リンクアップフリー)、利便性の向上を図っている。
双方向の常時接続を可能としたことで、走行中の車から集まってくる膨大なデータ、いわゆるビッグデー
タを分析することが可能となり、社会生活に様々な貢献が出来るようになった。
ホンダは、車両データの収集によって得られる急ブレーキ発生情報をビッグデータとして収集、分析す
ることにより、危険な場所を割り出し、自治体とともに安全な交通社会への実現に取り組んでいる。
ホンダは、2004年に発生した新潟中越地震や2007年に発生した新潟沖の地震から、走行中の車から
収集される情報を活用した“通行実績マップ”の提供が、災害地での通行止めの道路と迂回路を知る上
で、非常に重要であることが分かった。
この経験をもとに、大震災発生時の被災者支援の取り組みの強化を図ってきた。
2011年3月11日に発生した東日本大震災においては、震度5弱以上のエリアにいたクルマから、イン
ターナビを介して家族に向けてメールとクルマの位置を通知し、家族に安否を知らせる仕組みが利用さ
れた。
翌日の3月12日に、震災後の通行実績マップをインターナビに配信し、3月14日には、グーグルマップ
の利用により、通行実績と地図とのマッピングが可能となり、被災者の避難と救援に大いに役に立つこと
が出来、CSR(Corporate Social Responsibility)の典型として高く評価された。
更に災害対応の新たな取り組みとして、ホンダを含めた協賛8社により横断的なビッグデータ・プロジェ
クトを立ち上げ、より価値のあるサービスの検討を開始した。
一例としては、実際に被災したクルマがどのように避難したかの情報を分析し、今後の避難誘導に役立
てることがある。
18
(5) 「ビッグデータの活用で広がる未来~Twitter データの活用事例を通して~」
株式会社NTTデータ
第三法人事業本部
メディア・エンターテインメント事業部 メディア統括部長 時吉 誠氏
既に身近となり、今後ますます重要となるビッグデータをビジネスで活用するための視点やステッ
プに関する説明である。
2012年、ロンドンオリンピックにおいて、1秒間に13,000のツイートが発生し、フェイスブック上では毎
日8億4500万人が話題にあげ、米国大統領選挙ではビッグデータの活用が勝敗に大きく関与した。
ビッグデータは既に身近となり、データ量は今後更に加速度的に増加する(2年ごとに倍増)2012年か
ら2020年までに、情報量は14倍になるが、ストレージ価格が10分の1になるため、情報の蓄積量は爆
発的に増加する。
このように情報が、ただ同然に活用できるようになると、これまでの常識は通用しない使い方が発生する
こととなる。
無価値と思われたデータが価値あるものに変わる可能性があり、キュレーション(意味解釈)が重要にな
る。
このような変化の中で、従来に比べ膨大/高頻度/多様化という特徴を持つのがビッグデータであり、固定
/移動と構造化/非構造化のマトリックス表で分類することが出来る。
最近は移動性に注目が集まる中、一般企業は、固定・構造化データの活用に始まり、次にソーシャルメ
ディアに代表される移動・非構造化データの活用に注目することになる。
ビッグデータのいくつかの活用事例を紹介すると、
・ソーシャルメディアを通じて、企業リスクの早期発見に繋げるリスクモニタリング
・ツイート数の変化によるプロモーション効果測定(事例:日本生命)
・企業ブランディング(事例:自然を愛する潜在顧客に対するパタゴニアのブランドアピール)
・高い顧客ロイヤリティ構築のためのアクティブサポート(事例:ナイキ)
・ツイート発信者、ツイート数の分析による売上予測(事例:米国における映画の興行成績予測)
・市場予測(事例:好評/不評のツイート内容と株価との相関分析研究)
等をあげることが出来、先進的企業は、実験・実践を通して、データの活用方法を学び始めている。
これから注目を集めるビッグデータの活用の方法として、企業内に存在する社内データ(固定・構造化
データ)とソーシャルデータ(移動・非構造化データ)を活用することが重要となってくる。
即ち、固定・構造化データと移動・非構造化データを掛け合わせて活用することだ。
異種データを組み合わせることで、新たな知見を得る可能性が高まる。
例えば、消費者行動の事実(=固定・構造化の社内データ)と理由(=移動・非構造化のソーシャ
ルデータ)が分かれば、より的確に予測が出来るようになる。
例えば、流通マーケットにおいては、Twitter ID と顧客・会員 ID を紐づけることにより、より精緻な消
費者プロファイルを作ることが出来る。
19
更に位置連動とPUSH型コミュニケーションの組み込みによる適切なお知らせの発信により、タイムリィ
な集客効果を上げることが可能となるだろう。
2012年にNTTデータは、日本初の米 Twitter 社とツイートデータ提供の契約を締結し、全てのツイー
トデータを企業顧客に提供することが可能となるので、ご活用いただきたい。
(6) 「ビッグデータ時代の情報プラットフォームビジネス」
株式会社シグマクシス
戦略サービス/情報通信メディア産業 プリンシパル 松尾 公大氏
プラットフォームビジネスの最近の潮流と、ビッグデータを活用した新しいマーケティングモデルに関
する説明である。
この発表におけるプラットフォームビジネスとは、マーケティング機能を対象とし、多数の企業とエンド
ユーザが共通基盤を活用することで、両者に価値を提供するものである。
インターネットを中心とするテクノロジーの進展は、スマホを代表とするプラットフォームへのアクセスへ
の多様化を向上させ、位置情報等のリアルなデータの活用を可能とし、プラットフォームビジネスは進化
し続け、多機能化してきている。
(マーケティング)プラットフォームの多機能化とは、データ収集・蓄積・クレンジング、マーケティング
分析及びマーケティングのアウトソーシングを可能としたことである。
企業顧客は、自身の成熟度とニーズに応じて、プラットフォームサービス提供者(=プラットフォーマ
ー)から異なるサービスを受けることが可能となった。
しかしながら、マーケティングプラットフォーマーが成長し、集中度が高まると、企業顧客は自由度を
失っていくこととなる。従って、企業顧客は、自らプラットフォーマーを志向すべきある。
プラットフォーマーを目指すためには、共同事業者を獲得し、身の丈に合わせクローズ型で開始し、
段階的に発展させるのが良いだろう。クローズ型から発展させることにより、ビッグカンパニーでなくとも
プラットフォーマーになることは可能であり、多くの事例が生まれてきている。
プラットフォーマーを目指す方法として、米国ベンチャーから発展したグーグル、ツイッター、フェイス
ブックのようにまずは情報を収集し、その後に収集したビッグデータをどのようにマーケティングに活用
するかといったアプローチも必要になるだろう。収集されたビッグデータをマーケティングビジネスに結
び付け、マネタイズしていくためには、ストラテジスト/システムインテグレータ/マーケッター/アナリス
ト/コミュニケータといった人財とアグリゲータが必要となる。
これからのプラットフォームビジネスにおいては、デジタル(=オンライン)・リアル(=オフライン)融合
によるマーケティングモデルが活性化していく。すなわち、プラットフォーマーは、店舗とのアライアンス
を進展させ、O2O(Online to Offline)ビジネスの確立を目指すことになる。
このモデルを追求する上では、非構造化情報を含めた動的なリアルタイム情報(ex.位置情報)を収
集(=ビッグデータ)し、真のニーズに対応することが重要となる。また顧客の位置情報とインセンティブ
を上手く活用することにより、店舗の対面販促の促進や買物での楽しさやお得感を醸成出来るようにな
るだろう。
20
シグマクシスは、このようなマーケッティングプラットフォームビジネスを構築する上で、もっとも重要な
アグリゲータ機能を担い、マネタイズに貢献することが出来る。
(7) 「ソーシャルインテリジェンス
~欧米の先進事例から見えてくるソーシャルメディアをビジネスに活かすヒント~」
日本ヒューレット・パッカード株式会社
ストラテジックエンタープライズサービス事業本部 エクゼクティブコンサルタント 内藤 剛氏
ソーシャルメディアを活用することにより、いかに企業がインテリジェンスを高めていくべきかの説明であ
る。
欧米においては、企業がソーシャルメディアを活用することは、もはや当たり前の時代となった。
インターネット上の炎上防止といったモニタリングフェーズの日本の企業に対して、欧米の企業は、ソー
シャルメディアをすでにブランド向上に活用し、顧客とのコミュニケーションを顧客満足の向上や製品サ
ービスの強化に繋げている。
更にブランディング、CS(=顧客満足)及び製品強化を統合化したソーシャルメディアの活用法を実施
し、インテリジェンスを高めエンパワメントに貢献しようとしている。
欧米企業では、ソーシャルメディアの活用のために、専任チームや横断的バーチャルチームに加え、全
社で取組むマインドを醸成しており、一般社員向けの利用ガイドの整備を行っている。
例えば、ヒューレット・パッカード(HP)社においては、ソーシャルメディア活用ケース集を作成、配布し、
全社員のマインド向上に努めている。
欧米企業のソーシャルメディアの活用事例をいくつか紹介する。
・HP社では、プリンターの有効活用方法であるモバイル機器からの簡単印刷機能“ePrint”のアピール
のために、YouTube とツイッター&フェイスブックを連動させたライブイベントを開催した。
成功要因は、派手なイベントの裏で事前の Viral(ウイルスの)Campaign としての論理的かつ 緻密
なプロセス設計とイベント後の最適なオペレーション及びエンゲージメントを実行したことにある。
すなわち、リスニング/モニタリング→分析→広報・宣伝→マーケッティングと言った一連の流れにおけ
る、実行すべきタスクを事前に定義したのだ。
・欧州にある自動車会社においては、社内システムデータと複数のソーシャルメディアサイトからの情報
を収集し、自然言語処理機能と自動意味づけ(ネガティブ OR ポジティブ)機能を持った社内システムを
構築し、欠陥情報を早期把握出来るようにしている。
いわゆる、守りのブランディングと言えるだろう。
成功要因は、その他キャティゴリィとして埋もれやすい欠陥情報だけを上手くクラスタリングし、リスクのス
コア化とクライシス対策チームによる評価を定常化したことにある。
・米国最大のモータスポーツ統括団体であるNASCARは、ソーシャルメディアを活用して、開催したイ
ベントに関する話題の傾向分析を行い、盛り上げの演出に反映している。
NASCARは、非構造化データやリッチメディアの活用のために、HP社のソーシャルインテリジェンスリ
ファレンスアーキテクチャを利用している。
また米国大統領選挙において、オバマ陣営は一か所にビッグデータを集約し、このビッグデータをHP
21
社の超高速DWHを利用してタイムリィに分析することで、短期決戦の対策判断を実行した。
このように、ソーシャルメディアの活用では、分析結果をアクションに結びつけるエンゲージメントが重要
になる。
エンゲージメントでは、各ファンクションをつなげる全体最適の考え方が必要であり、もはやITの課題で
はなく、ビジネス戦略・プロセス・組織の変革の課題と捉えるべきである。
22
2.スマートデバイスビジネス活用シンポジウム/IT 賞受賞記念講演
コーディネーター :立教大学 佐々木宏
(1) IT 特別賞(IT フロンティア賞)
キャビンアテンダントの iPad 活用による業務改革
全日本空輸株式会社
業務プロセス改革室 開発推進部
主席部員 林 剛史氏、CA 山本直子氏
本事例は、CA やパイロットの業務に iPAD を導入し、劇的なコスト削減を実現したものである。
当社を取り巻く環境は、LCC の参入、原油高など厳しい状況にあるが、2015 年までに国際線発着枠
の15%増加が見込まれるなど新たな事業機会もあり、国際線を軸に海外展開を積極的に推進しようとし
ている。旅客業務を支える CA は大幅増加が見込まれず、現有人員の最大活用で効率化を進めようと
している。
そこで重要になるのが、業務の生産性向上とマルチスキルの獲得、国際線資格の CA の早期育成で
ある。現在の CA の業務を見直してみると、これまで重いマニュアルの運搬、搭乗前のマニュアルチェッ
ク、マニュアルの大幅改定のためのメンテナンス作業、スキル向上のための訓練などに大きい負担があ
ることがわかった。
そこで、それらを解決するための業務改革に着手した。システム選定に際しては、①既存のものを使
う、②業務に適したデバイスを選定する、③トライアルによる確実な運用の 3 点が挙げられる。③につい
ては、まず 700 名の CA にトライアルさせた後、5,300 名に拡大する方式を取った。
デバイスの選定では、①使い勝手がいいこと、②バッテリーが持つこと(フライトの最長時間は14.5H)、
③高いセキュリティ、④アプリケーションの拡張性(航空業界向けアプリなど)から評価した。その結果、
短期的に導入でき、効果が最も大きいと考えられた iPAD に決定された(iPAD 6,000 台を導入)。
iPAD の接続については、ソフトバンクテレコムのサービスをそのまま使うこととした。
その結果、1 ヶ月で運用にこぎつけ、4 億円のコスト削減を実現した。他の成果では、他機種(航空機)
業務への対応、習熟の早期化(モックアップ、ムービー学習)、訓練期間の短縮(集合訓練、座学の電
子化、業務の間のムービー学習など)、課題の共有(機内でのレポート作成など)が挙げられる。
山本 CA の話では、iPAD の動画を活用した視覚と聴覚によるムービー学習訓練、業務中の空き時
間でのレポート作成などで効率化が実現できていることの説明があった。
今後は、さらに OMOTENASHI のための挑戦を続けていきたい。パーソナルサービスとして、お客
様の嗜好に基づく提案サービス、タイムリーなサービスの提供が重要で、そのために、業務機会の拡大、
コミュニケーションの活性化、情報共有によるスピードアップなどに情報を活用していきたい。
23
最後に、iPAD はツールであって目的化しないことが重要で、Think Big, Start Small, Keep it
Simple, Be through, Enjoy this journey という言葉が紹介された。
(2) IT マネジメント賞
ICT を活用した「働き方改革」の取り組み
~タブレットの導入と BYOD(BringYourOwnDevice)の推進~
NTT コミュニケーションズ株式会社
取締役 第二営業本部長 荒本 和彦氏
(鈴木武人氏、上野優氏、大宅左恵氏)
「働き方改革」とは、社員がコスト意識を常に持って、(場所や時間によらず)効率的・自律的に働き生
産性の高い働き方をすることへ変化させていくことを指す。当社は、BYOD を「働き方改革」ツールとし
て位置づけ、システム構築、運用のさまざまな苦労を乗り越えて、全社的な展開に成功している。本発
表では、まず荒本氏より全体の報告があり、続いてセキュリティのポリシーメーカーとして中心的役割を
果たした鈴木氏、システム構築運用の管理職の上野氏より各担当内容について詳しいプレゼンが行わ
れた。
この取り組みの目的は、「働き方改革」を実現するため、BYOD の考えを取り入れ WLB の実現を図
ることにあった。そのために取り組んだ内容は次の 3 点である。その一つ目は、効果的、効率的な営業
活動を行うためにオフィスに戻らずに業務ができる環境を構築しタブレット端末を 2,000 台導入したこと
である。これにより残業時間の短縮や、営業における訪問件数の増加など目に見える効果を実現するこ
とができた。二つ目は、タブレット端末を 2,000 台導入により効果の高い営業活動を展開することである。
クラウド上の仮想 PC を活用することにより、客先で PC やタブレットを用いたすばやいプレゼンができ、
さらにコンテンツ(300 コンテンツ)を充実させることで、訴求力のある提案活動を実現することができた。
三つ目はコスト削減と利便性の向上のため、私用端末 3,600 台を対象にした BYOD を導入したことで
ある。セキュリティリスクを軽減しつつリスクに適切に対応するために、情報セキュリティ規程や運用ルー
ルの制定を行い、これを成功させることができた。
本取り組みの成功ポイントとして挙げられる点として、第1に全社展開(部門横断的な組織)と運用ル
ールの徹底が挙げられる。人事部が事務局となり、関連する組織を横断し、ICT 環境を整備する「シス
テムワーキング」と、活用状況や効果測定を行う「セールスワーキング」を立ち上げ、それぞれのワーキン
グが連携して取り組みを実行した。HR 部、総務部、システム部、営業部などの複数組織を跨いだ体制
により、短期間での導入に成功した。第 2 に挙げられるのは、社内教育と人材育成である。各組織でモ
バイル・リーダーを選出し、トライアルユーザとして検証後、組織内の推進役として位置づけ、利用開始
後は改善活動の中心的役割を担った。第 3 番目に挙げられるのは(技術)環境に対する理解である。関
連 IT 技術の進展とコスト削減を組み合わせ、社内での理解を得ることができた。本取り組みの成果とし
て、営業訪問時の隙間時間などを効率的に活用できるようになり、業務提案件数13%向上、顧客訪問
件数15%増加、残業時間の低減、通信コスト75%減などの劇的な効果を実現することができた。
24
このシステムを支えるセキュリティ・ポリシーもまた重要である。セキュリティ・ポリシーは「守るべきもの
は情報、情報は会社の管理下で取り扱う」という理念が貫かれている。当社は、2000 年に PC 持ち出し
禁止、2006 年 USB の使用制限、2007 年に BCP 対応、2011 年個人スマホなどの BYOD 対応など
を順次行ってきた。大きな流れは、デジタル機器の社外持ち出し不可から個人使用を認める(BYOD)
という方向の転換がある。機種変更の対応、スマートデバイス紛失の際には、デバイスの遠隔ロックとデ
ータ削除(ワイプ)などの措置を取り入れている。ただし、セキュリティ・ソフトのアップデートなどは企業側
から勝手に変更できないなど、デジタル機器を会社がどこまで管理できるかという問題にも直面してい
る。
セキュリティ確保の一方で、BYOD には個人と会社の費用負担問題、個人プライバシーの保全、強
制データ削除(初期化)による個人情報の保護などの問題がある。現在は、企業の携帯番号ではなく仮
想番号(050番号)を課金の分離や、会社では位置情報を見ないなどの制約を設けている。
(3) IT 特別賞(IT フロンティア賞)
最新 ICT 技術を活用した次世代オフィスの構築と
ワークスタイル変革
常務執行役員
~これからは Thin オフィス!~
クオリカ株式会社
技術部長 兼 クラウドサービス事業部長 会田 雄一氏
当社は、コマツから 30 年前に独立した SI 企業で、質実剛健な文化をもっている。2011 年に本社を
移転し、その際に従来と異なる次世代オフィスのコンセプトを実現することに成功した。第1期、第 2 期の
継続的な取り組みを経て、単にオフィスの構築にとどまらず、斬新的なワークスタイルの変革に成功して
いる。
オフィスの生産性を向上させるにはどうすればよいか。具体的には、売上を向上させるか費用を削減
するかのいずれかを行えばよい。この取り組みは、迅速なコミュニケーションや従業員コラボレーションを
促進するオフィス環境の提供、東日本大震災などをきっかけにした BCP の取り組み、PC のセキュリティ
や内部統制、PCのTCO削減、ペーパーレス、電力使用量削減によるECOの実現など、単なるオフィス
の移転に止まらず、生産性の高いオフィスの構築と、ワークスタイルの変革という重要な意味を持ってい
る。そこで、基本方針として、BCP対策に限定しない、PCに関わる諸課題を解決する機会とする、ワー
クスタイルを変革する機会とするという3点を定めた。
(1)第1期計画:2011 年 5 月:第1期計画(BCP:事業継続性確保)策定、着手
第1期の取り組みは、VDT(Visual Display Infrastructure)と BYOD(Bring Your Own Device)
の実現の 2 点に要約される。まず、VDT は社内の PC すべてを仮想化する取り組みである。VDI は、B
CP、セキュリティ、内部統制、PCのTCO削減、ECO、どの観点から評価しても、従来の方法より優れて
いる。技術的には、SSL-VPN&証明書を活用して、どこからでもセキュアにVDIにアクセスできる環
25
境を構築している。次に、BYODは、VDIにアクセスする端末として個人使用の機器を認め、この方式
ではほぼ全社員がPC等を個人所有している現状から、コストがかからず、直ぐに利用できるというメリッ
トがあった。
ワ ークスタイル変革は、ボトムアップ主導で進めることが成功のポイントである。最新の ICT を利用す
ること、意欲のある社員にトライアンドエラーの機会を提供すること、トップダウンで無理やり現場に押し
付けないことが重要だと認識し、個人所有機器を社内システムの端末として活用すること、最新のコラボ
レーションツールである(GoogleApps)を全社で活用するなど、利用者になじみやすい環境の構築に
留意した。
(2)第 2 期計画:2011 年 8 月開始、12 月の本社移転
第 2 期の取り組みは、オフィスの次世代化が中心で、省工数、省エネ、PCレス、データレス、ペーパ
ーレスを実現化する「Thin オフィス」を計画した。具体的には、最新のUC(UnifiedCommunication)
ツールの全社導入、高精細かつ大画面のVDI端末の全座席、全会議室等への配置を行った。
以上の取り組みにより、PCのVDI移行が完了した社員は 720 名(+常駐パートナー250 名)、
SSL-VPN&証明書&BYOD による社外アクセスを行っている社員 680 名(残り 40 名は自宅では PC
を使わない)、個人スマホによる GoogleApps 同期利用者 270 名にのぼり、Thinオフィスの活用につい
てはめざましい成果を上げることができた。また、社外からのVDI接続回数実績として、自宅や社外から
の接続は平日で 200~500 回/日、休日でも 100~250 回/日に達し、活発に活用されていることを把
握している。コストダウンの点では、紙の消費量とプリンタの使用、VDI端末の消費電力量、PC 関連の
管理費用(外部委託など)の大幅削減に成功している。
本取り組みを通して、営業ワークスタイル/サービススタイルの変化として、経営幹部の意思決定の
変化(iPAD)、在宅勤務の促進(育児、介護)、次世代オフィスの提案による社会的な評価(100 社以上
の見学者)を実感した。新しいICT技術に率先して取り組み、新しいモデルを提案することが当社の社
会的な役割であることを再認識する機会となった。
26
(4) IT 特別賞(IT フロンティア賞)
「データセンターサービスの実行責任と説明責任の強化」
株式会社野村総合研究所
IT サービスマネジメント推進部長 徳地 隆弘氏
大規模システム障害、大規模災害などのリスク回避のため、データセンターサービスを請け負う SI 業
者には高い実行責任と説明責任が求められている。とくに、当社では、事業比率がコンサル10%、IT ソ
リューション40%に比べ、運用サービスが50%と、システム運用に関わる比率が最も大きく、上記2つの
責任を果たすことは必要不可欠と認識されていた。そこで、更なる事業拡大に向けて、データセンター
を新設するとともに、先進的なマネジメント・システムを構築することになった。
当社の考えるデータセンターサービスの実行責任と説明責任と、それに対する取り組み、その成果に
ついて要約すると、以下のようなものになるる。
(1)実行責任
実行責任とは、顧客に対し、合意したサービスレベルを継続的に提供することを目標にする。そのた
めの方策(具体的目標)は、ISO20000 認証を取得し、顧客とサービスレベルを合意するところに置いた。
その理由は、ISO20000 が IT サービスマネジメントのベストプラクティスである ITIL を基にしており、
ISO20000 に適合したマネジメントを行うことが実行責任を果たす上で有効であると判断したからである。
当社では、2009 年 4 月に ISO20000 認証取得後、毎年更新審査を受け認証を継続している。その結
果、トラブル年平均 42%削減、生産性年平均 24%向上の成果を達成した。また、見える化、標準化、
自動化が進み仕事のやり方が劇的に変化するという副次的効果ももたらした。
(2)説明責任
説明責任とは、顧客に対し、受託業務の内部統制が有効であることを保証することを目標にする。そ
のための方策(具体的目標)は、SSAE16 保証報告書を取得し、顧客に提出するところに置いた。その
背景として、当社は自社による内部監査のみならず)権威ある第三者による保証が不可欠だとの認識に
立ち、米国で先行導入される SSAE16 保証報告書を他社に先駆けて取得することに目標を置いた。
2008 年度より SSAE16 保証報告書の取得に関する勉強会を始め、2010 年に内部統制を整備後、
2011 年度から適用を開始した。すでに、顧客企業 10 数社に SSAE16 報告書を提出している。こうした
報告を行っているのは、国内では当社を含め、数社に限られる。なお、当社が発行した報告書は、実際
にお客様の監査で依拠されるなど、当社の信頼を裏付ける成果をもたらしている。
最も重要なことは、上記2つは別々に存在するものではなく、これらを連携させ、有効性や効率性をよ
り向上させていくことにある。たとえば、ISO20000のプロセスに SSAE16 保証報告書に必要な統制内
容をマッピングする、内部監査の体制を統合し統合監査を実施するなどが、それに該当する。また、場
当たり的な対応ではなく、経営者が中長期の方針を明確化し、それに沿って年度計画を推進していく、
そうした継続的取り組みが重要である。さらに、内部推進を確実にするための人材育成も必要になる。
当社では、多くの者が ITILManager/Expert、ITILFundation、CISA、CIA、システム監査技術者、
IT サービスマネージャーなどの外部資格を取得するなどして、従業員のスキル向上が全社的に展開さ
27
れている。
本取り組みを通じて、(一般には地味な職種であるといわれる)システム運用業務に光が当てられ、従
業員のモチベーションアップを図れたことは、極めて重要なものであったと考える。
(5) IT 奨励賞(ベンダーマネジメント賞)
シーエーシーにおける IT 環境の変化に対応する共通開発基盤の構築
株式会社シーエーシー
生産品質強化本部 生産技術部長 鈴木 貴博氏
当社は、1966 年に設立された日本で最初の独立系ソフトウェア専門会社である。現在は日本有数のシ
ステム・インテグレーターとして事業を展開している。現在は、金融業界や製薬業界の研究開発業務受
託(BTO)や BPO などの業務受託も展開している。システムインテグレーション事業では、労働集約的
になりやすい下流工程の自動化を実現する「共通開発基盤(AZAREA)」を開発し、データ構造からの
ソースコード生成機能により、生産性、品質、カスタマイズ性を、高いレベルで実現することに成功して
いる。これにより、数分で Web サイトの入力画面の制作ができるなど、極めて高い効率性の実現と高品
質のソフトウェア開発が可能になった。
当社が認識する、IT 業界を取り巻く経営環境の変化は 4 点である。
① マルチデバイスの普及
② クラウド化の波
③ 大量データ処理
④従来型(労働集約型)SI の限界と最新技術への対応の遅れ
とくに、システム基盤の変化として、(システム資産の)所有化から利用へというトレンドの変化は極めて
重要である。クラウド化とともに、モバイルデバイス、SNS の利用拡大に伴うビッグデータ処理への対応
も急がれる。しかしながら、Hadoop などのビッグデータ処理技術を実装していく際の技術的難易度は
高く、その敷居を下げるものが必要である。こうした技術は、個々の技術対応では追いつかない。従来
の労働集約的な開発から脱却する必要がある。そこで、当社は経営戦略に基づいた中期計画の一環と
して「知識集約型への変貌」を掲げている。組織としての技術集約と新技術対応、労働集約型から技術
サービス型への変革、それにより高生産性と高品質を実現していく。そのために開発したものが「共通
開 発 基 盤 ( AZAREA ) 」 で あ る 。 AZAREA は 、 Web オ ン ラ イ ン ア プ リ ケ ー シ ョ ン 開 発 基 盤
「AZAREA-Online」と、並列分散処理開発基盤である「AZAREA-Cluster」から構成されている。
(1)AZAREA-Gene
SOA 構成による拡張性と段階的成長を可能としたアーキテクチャを持つ。また、データ構造からのソ
ースコード生成機能により、生産性、品質、カスタマイズ性を、高いレベルで実現している。これにより、
プロジェクトから下流工程の実装部分を切り離し、プロジェクト非依存型で開発を進めることができるとい
う大きなメリットを享受することができる。これにより、技術者は単調で労働集約的なコード生成作業から
28
解放され、より上流の設計部分、頭脳労働に従事することができるようになる。
(2)AZAREA-Cluster
Hadoop を利用しながら、それを意識しないアプリケーション開発を実現し、クラウドおよび分散処理技
術の活用のハードルを下げる開発基盤である。これにより、ビッグデータのトレンドとともに出現してきた
Hadoop という新しい技術を意識することなく、これを利用することができるようになる。
組織対応としては、当社のアーキテクト部隊を、AZAREA 専門の推進組織である「生産技術部」として
再編成するとともに、生産品質を確立、強化する実行組織として、「生産品質強化本部」を設立した。こ
のことにより、新しい技術の組織獲得と習熟を集約することができ、「知識集約化と、労働集約からの脱
皮」「技術資産を全社資産として活用する」「技術者に依存しない高い生産性を実現する」といった課題
を解決することができる。
(6) IT 特別賞(IT 推進部門賞)
未知なるアイデア創造の場
東京海上日動システムズ株式会社
経営企画部 (計画推進担当) 倉内 麻子氏
本取り組みは、スウェーデンで始まった「フューチャーセンター」の考えを導入し、未知なるアイデア創
造の場を作り上げた事例である。フューチャーセンターとは、「直感やアイデア発想によって相互作用を
起こし、新しい価値を生み出していく」場である。この方法は、未来志向で、論理ではなく五感、左脳で
はなく右脳で創造力を発揮するところに特徴があり、メンバーがひとつの場所(フューチャーセンター)
に集められ(チェックイン)、チームでのいくつかのゲームを行い(アイスブレーク)、本題の問題を次の 4
つのグランドルールの下でディスカションを行うことになる。
①ふだん着ている服を脱ぐ
②肯定的な振る舞いをする
③間違いを恐れない
④全員参加
フューチャーセンターの考え方により、日常的に「IT企業の強みである論理的、推論的な考えだけで
は生み出しにくい未来の不確実性に対して、新しい価値を創造するために、固定概念やバイアスを取り
払い、直感やアイデア発想を最大限に活用していくこと」ができるようになる。
当社のフューチャーセンターでは、「フューチャーセンター」のコンセプトに「ダイアログ」と「デザイン思
考」という2つを組み合わせて新たなる価値を創造することにしている。ダイアログとは対話のことで、複
数者が同じ場に集まり、創造的な対話を通じて価値を生み出す方法である。デザイン思考とは、テーマ
の内容を観察してモデル化するステップで、「観察」「モデル化」「プロトタイプ」のプロセスを踏む
2009 年当時、日本企業ではフューチャーセンターの導入事例が殆どなく、自ら「Place:対話しやすい
実空間」「Theme:対話のテーマとして論理的に解きにくいテーマ」「Director:適切な運営者のアサイ
ン」「Facilitator:対話のプロセスデザインと進行役を務める」「Methodology:対話プロセスの手法」の
29
5 つの要素を重要ポイントと定め、この企画を立ち上げと開催を実施してきた。現在は、ほぼ週1~2 回の
ペースでフューチャーセンターの開催を行っている。
(1) 事例1:運用部門の業務改善
古い運用プロセスをシンプルにして、品質とスピードを向上させるにはどうすればいいかについて、
フューチャーセンターを活用した。
(2) 事例2:社員で全社を考える
ワールドカフェスタイルで、5 年後の自社のあるべき姿をディスカションした。そこでは、自社の強み
を明らかにし、企業コンセプトにどう生かすかを考え、どういうイメージをゴールとするかについてのオ
ブジェを作成した。この成果は、役員会議にかけられ、経営目標にも反映された。また、社員の連帯
感を生む契機にもなった。
(3) 事例3:新商品へのチャレンジ
新しい保険商品のアイデアを開発するために、フューチャーセンターを利用した。その際はそもそも
「新しい」とは何かについてのディスカションから始まり、デザイン思考を活用したステップが活用され
た。
日本で、現時点でフューチャーセンターのコンセプトを利用している企業は、当社のほか富士ゼロック
スなどに限定されている。日常業務を離れてリフレッシュできる、クリエイティブな思考に慣れる、フュー
チャーセンターの導入は組織に柔軟性をもたらす可能性があり、単なる費用対効果の側面だけではな
く、そうした意味においても有効なのではないかと、感じた。
30
(7)IT ビジネス賞
GDO における次の 10 年を戦うための IT 基盤再構築プロジェクト
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
システム革新本部本部長 渡邉 信之氏
当社に取り組みは、Web 系企業として自社の業務インフラの全面改訂を行い、競争力溢れる事業基
盤の構築に成功したところに特徴がある。
今回改訂したシステムは、G10 プロジェクトと命名され、3 回目の更新でようやく実現に成功したもので
ある。当初は大手ベンダーとの交渉段階(RFP)でうまくいかず、断りを入れた。2006 年システム改新プ
ロジェクトでは、インドのオフショア開発を目指したが、これもうまくいかなかった。2008 年に「SQL インジ
ェクション」の攻撃を受け、セキュリティの問題が浮き彫りになった。そうした経緯を経て、実施したのが今
回の IT 基盤再構築プロジェクトである。
このプロジェクト開始時に認識されていた IT 基盤の問題として、①設立当時(10 年前)から殆ど進化し
ていなかった、②10 年間の改修に次ぐ改修で、複雑なスパゲッティ状態のシステムで、一部システムの
入替は困難であった、③ビジョン実現には、根本的なレベルでのシステム再構築が必要で、総入れ替
えする必要性があるなどがあった。10 年後の経営ビジョンであるイノベーションとグローバル化を進める
ために、3つの主要事業(「GDO トライシクルモデル」というビジネスモデルで、ゴルフ場予約、E コマー
ス、メディアビジネスの 3 つの事業がお互いのビジネスに相乗効果をもたらし成長するモデル)のワンス
トップ化、柔軟性と拡張性の確保、安定性とセキュアな IT 基盤が求められた。
当社では、個別の要求事項に合わせたカスタム仕様のシステムでは無く、パッケージソフトに業務を合
わせる基本コンセプトを掲げた。属人的なオペレーションから脱却し、シンプルかつ業界標準的なオペ
レーションに変化させ、より一層の効率化とプロセス再設計を行うことを基本とした。また、各サブシステ
ム間での情報通信として EAI ツールを活用し、情報の可視化とリスクポイントの可視化を高めた。さらに
マルチベンダ、マルチパッケージ、マルチ言語という柔軟なシステム構成を実現し、他サービス、他社と
の連携に柔軟な基盤を構築する事ができた。
開発期間は、2010 年 1 月から 2011 年 7 月で、ピーク時は 200 人の要員が稼働した。マルチベンダ
での開発成功の要件として、次が挙げられる。
① PMO:
クライアント主幹で早期に設置すること、事務局ではなく、推進役であること、PJ間コンフリクトの調
停役として機能すること。
② PO/PM:
システム部主導では無く、事業部門主導で行うこと、各事業部の責任者がPOとなり、コミットメント
強化すること
③ ステアリングコミッティ:
ステアリングコミッティを設置し適切なタイミングでの開催、経営陣のプロジェクト参画意識を向上さ
せること
31
④ コミュケーションのルール化、デジタル化:
課題管理(BackLog)、インシデント管理(Redmine)、IF定義書
⑤ 「地図」となる精緻なグランドデザインの早期構築:
各プロジェクト(サブシステム)間連携の明確化、概念図では無く、IFレベル、機能レベルまでの設
計、全社システム化構想段階での構築
⑥ 要件定義の粒度:
より精緻に要件定義を行い、ベンダーとの「なんとなく要件」を徹底的に排除すること、プロジェクト
間で共通する要件は関係者を全員集めて要件定義を実施すること、新業務フローのウォークスル
ー実施すること。システム設計では、「なんとなく」要件を徹底的に排除した結果、設計フェーズ以
降コスト・スケジュールに影響を及ぼすような仕様変更はゼロ件であった。
ベンダーに対する教訓として、大きな SIer は開発フェーズを過ぎて保守フェーズに入るとコミットが低く
なることが挙げられる。また、広がりすぎたサービスの保守も課題であり、現在は保守作業をベトナムに
オフショアしようとしている。
32
Ⅴ. アンケート集計結果
1. 来場者数
2日間、延べ約 1100 名
2. 一日目
(1) IT 総合戦略大会の全体的な印象
全体的な印象
どちらとも
いえない
2%
非常に評価
33%
評価できる
65%
評価できない
0%
全く評価できない
0%
(2) プログラムの構成について
プログラム構成
どちらとも
いえない
2%
大満足である
30%
満足である
68%
不満である
0%
大変不満である
0%
33
(3) 現在貴社にとって解決すべき問題と思われるもの
解決すべき問題
職場環境の整備
(ストレスマネジメン
トなど)
その他
1%
6%
経営戦略に
おける見える化
情報部門の
人材教育
18%
18%
スマートデバイスの
ビジネス活用
10%
ITを活用した
新しいビジネスの
展開
クラウドなどを
活用した情報
部門の再構築
または活性化
10%
SNS活用による社
内コミュニケーショ
ン活性化
16%
5%
SNS活用による
BigDataの利活用
13%
ビジネス活性化
3%
(4) 参加者分類
業種
電力・ガス・石油
6%
その他製造
4%
サービス
2%
化学・医薬
(メーカー・商社)
6%
食品・飲料
(メーカー・商社)
SI
43%
通信
10%
2%
放送・出版・マスコミ
0%
電気・電子機器(メーカー・
商社)
金融
4%
官公庁・団体・
学校・研究機関
0%
4%
コンサルタント
その他
2%
6%
アウトソーサー・
人材派遣・人材紹介
6%
ソリューション
ベンダー
6%
エンジニアリング
建設
0%
通信販売
0%
職種
その他
6%
営業・
マーケティング
24%
情報システム
54%
経営企画・管理
16%
購買
0%
34
役職
社員・職員
2%
課長
19%
経営者・役員
25%
部長・次長
54%
その他
0%
係長・主任
0%
(5) IT 協会に期待するもの
協会活動に期待するもの
最近のITトレンド
やITサービスに
関する情報提供
24%
会員同士の
交流の活発化
21%
時流・時事に
適した研究会・
セミナーの開催
35%
IT人材教育や
経営革新に関す
るアドバイス
20%
その他
0%
35
3. 二日目
(1) プログラムの構成について
プログラム構成について
どちらとも
いえない
20%
大変満足である
40%
大変不満である
0%
満足である
40%
不満である
0%
(2) 参加者分類
放送・出版・
マスコミ
業種
その他
0%
化学・医薬
(メーカー・商社)
電力・ガス・石油
20%
0%
0%
エンジニアリング・
建設
0%
サービス
その他製造
通信販売
0%
0%
官公庁・団体・
学校・研究機関
SI
20%
0%
0%
食品・飲料
(メーカー・商社)
0%
電気・電子機器
(メーカー・商社)
通信
20%
金融
20%
ソリューション
ベンダー
20%
アウトソーサー・人
材派遣・人材紹介
0%
コンサルタント
0%
0%
36
職種
その他
20%
経営企画・管理
0%
購買
0%
情報システム
80%
営業・
マーケティング
0%
役職
その他
20%
社員・職員
20%
部長・次長
60%
経営者・役員
0%
係長・主任
0%
課長
0%
(3) IT 協会に期待するもの
協会活動に期待するもの
最近のITトレンド
やITサービスに
関する情報提供
50%
その他
0%
会員同士の
交流の活性化
12%
IT人材育成や経
営改革に関する
アドバイス
13%
時流・時事に適し
た研究会・セミ
ナーの開催
25%
37
Ⅵ. 平成 24 年度IT賞受賞企業
1/3
IT 総合賞
日本生命相互会社/ニッセイ情報テクノロジー株式会社
IT 総合賞
日本たばこ産業株式会社
IT 総合賞
株式会社日立製作所
IT マネジメント賞
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
38
2/3
IT マネジメント賞
NTT コミュニケーションズ株式会社
IT ビジネス賞
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
IT特別賞(IT推進部門賞)
株式会社東京海上日動システムズ
IT特別賞(ITフロンティア賞)
クオリカ株式会社
IT特別賞(ITフロンティア賞)
IT特別賞(ITフロンティア賞)
全日本空輸株式会社
株式会社野村総合研究所
39
3/3
IT賞創設 30 回記念賞
小島プレス工業株式会社
IT 奨励賞(ベンダーマネジメント賞)
株式会社シーエーシー
IT奨励賞(ベンダーマネジメント賞)
KVH 株式会社
40
第 28 回 IT 戦略総合大会は無事に終了いたしました。
ご協力いただいた関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
次回、第 29 回大会は今大会を凌ぐスケールで開催すべく鋭意準備に励む所存でおります。
今後ともご支援宜しくお願いいたします。
社団法人企業情報化協会
第 28 回 IT 戦略総合大会
ITMC2013
~経営と IT の融合を目指して~
開催結果報告書
(禁無断転載)
発行日 2013 年 3 月
編集・発行 社団法人企業情報化協会
〒105-0011 東京都港区芝公園 3-1-22
日本能率協会ビル
TEL:03-3434-6677 / FAX:03-3459-1704
www.jiit.or.jp
41
Fly UP