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浜松職業能力開発短期大学校紀要第16号
原付 3 輪ミニカーの試作
Trial Make of 3Wheels Mini Car
加藤
生産技術科
好孝、二宮
誠
[要約]
公道を走れる自動車を作りたいという「夢」への挑戦をした。ただし、車検の必要な普通自動
車ではなく、部品点数が少なく、車検がない、さらには、環境負荷の小さな「原付 3 輪ミニカー」
の試作をした。本ミニカーは生産技術科卒業生の多大な協力を得られ完成した。できる限り、リ
サイクル部品を使用し、FRP 製モノコックボディと角パイプによる溶接車体構造のシンプルで軽
量な自動車である。スクーター感覚で誰でも簡単に運転でき、維持費が原付バイク並という特徴
がある。原油高が追い風となり、ミニカーが次世代の交通手段となることを願いたい。
1.はじめに
現役中に「公道を走れる自動車を作りたい」という
願望があった。ただし車検が必要な普通自動車ではな
く部品点数が少なく車検も無い、さらに環境負荷の小
さい「ミニカー」の試作に挑戦したので報告する。
図 1 に示す原付 3 輪ミニカーは生産技術科卒業生の
協力を得て 4 年がかりで製作したものである。エンジ
ンユニット,ハンドル,フロントタイヤ,サスペンシ
ョン、電気保安部品、電気配線、座席シート、燃料タ
図 1 完成した原付 3 輪ミニカーの全景
ンク等は中古のリサイクル部品を利用した。なお、ボ
ディはデザインから始め、模型製作、3D 形状測定、
CAD/CAM による発砲ウレタンの原型製作、FRP によ
る型製作、FRP ハンドレイアップ方式による積層モノ
コックボディ製作等とフェンダー、インパネ関連部品
を含め約 2 年を費やした。構造がシンプルで軽量化に
も貢献している。基本構造として参考にしたモデルは
約 50 年前、ドイツの航空機会社であるメッサーシュミ
ットが製作した KR200 という前後二人乗り用 3 輪ス
クーターである。例えば、後輪にディファレンシャル
ギアを使用した 4 輪タイプは構造が複雑で重くなり、
製造に困難を極めるため、簡単な 3 輪タイプとした。
今後ガソリンの高騰が続けば環境負荷の小さいミニ
カーが配達や営業、近所への買い物等に利用される日
が来るものと考えられる。実際にヨーロッパ各国では
郵便配達や宅配、買い物等に小型電気ミニカーが活躍
している。また、バイクのように転倒の心配がなく手
だけの操作で運転できる。身障者の方にも安心して運
転でき、行動範囲が拡大するものと思われる。経済的
なメリットは非常に大きいものと確信する。
2.ミニカーの特長
ミニカーとは、道路交通法では「総排気量 50CC 以
下または定格出力 0.6KW 以下の原動機(電動モータ)を
有する普通自動車」である。
水色ナンバーを与えられ公道走行ができる。ところ
が道路運送車両法では「原動機付自転車」扱いとなり、
製造者は衝突実験を行う義務を負わず型式認定取得は
任意であり、完成した車両は車検の対象にならず車庫
証明取得の必要もない。原付バイクと異なる扱いは「左
右の車輪の距離(トレッド)が0.5mを超える三輪以上の
車」という条件を満たしていることである。本ミニカ
ーは、以上の条件の他、日本国内におけるミニカーの
技術基準を満たしているため、公道走行が可能となる。
道路交通法では自動車扱いとなり普通免許が必要。
速度制限 30km/h、二段階右折、ヘルメット着用義
務は除外される。ただし、高速道路や自動車専用道路
へは乗り入れ不可である。
大きさの制限
全長 2.5m×幅 1.3m×高さ 2m 未満
アルミ及び 3mm アクリル
ドア
ミニカーの登録 市町村役場で行う。
4.ボディの製作
自動車税
2,500 円/年
自賠責保険
原付と同様 17,510 円/5 年
車検
不要
空気抵抗を考慮し、ボディ前面はフロント樹脂ガラ
車庫証明
不要
ス同一曲面とした。フロントサスペンションの可動範
重量税
不要
囲やエジンユニット、ハンドル、シート、スピードメ
任意保険
バイク特約で保証される.
ータ、フレーム等の部品が取付けでき、可動した場合
にボディと干渉しないか製作前に確認した。
3.本ミニカーの主要諸元
4.1 ボディ製作の流れ
全長×全幅×全高(m)
2.5×1.3×1.2
ホイールベース(m)
1.6
① 車両デザインの決定(図 2 参照)
トレッド(m)
1.1
② スケールモデルの製作
最低地上高(m)
0.11
③ 3 次元測定器によるスケールモデルのデータ測定
車両重量(kg)
160
④ CAD/CAM による各部の干渉及び切削用面データ
乗車定員(人)
1
燃費(km/L)
30
最小回転半径(m)
3.5
エンジン型式
ホンダ AF20E 空冷
2 サイクル
の確認
⑤ マシニングセンタによる原型(発砲ウレタン)の切
削
⑥ 切削した原型を樹脂で強化する。
⑦ 原型の面だし作業(表面の仕上がり状態で製品の
できばえが決定する)
総排気量(cm3)
49
圧縮比
7.1
⑧ FRP 雌型の製作
最高出力(KW/min-1)
4.7/6500
⑨ 雌型の内側に FRP とエポキシ樹脂を積層して製
最高速度(km/h)
60
最大登坂能力(°)
18
最大トルク(N-m/min-1 )
7.15/6000
品を作る。
⑩ ボディ表面になる側にパテ塗りし,サンドペーパ
で水研ぎ研摩する。
キャブレター型式
PB80
⑪ 下塗り用プライマー塗装
始動方式
キック・セルフ式併用
⑫ 上塗り用本塗装
点火方式
CDI 式マグネット点火
潤滑方式
分離潤滑式
潤滑油容量(L)
1.2
燃料タンク容量(L)
6.0
クラッチ型式
乾式多板シュー式
変速機形式
オートマチック無段変速
タイヤサイズ
3.50-10-2PR
ブレーキ形式(前後)
機械式リーディング・トレ
ーリング
懸架装置(前)
マクファーソンストラッ
ト
懸架装置(後)
ユニット・スイング式
フレーム
鋼角パイプアンダーボー
ン方式
ボディ
FRP モノコック構造
フェンダー
FRP
図 2 ミニカーの最終デザイン
5.ドアの製作
図3 製作当初の開口部の板(○印)
図6 アルミ製ドアパネルを 3 本ローラーで曲げる
ドアは、平成 19 年度の総合制作実習においてすべて
手作りとして取り組んだ。図 3 に示すように当初の予
定では簡単な板を付けるだけにしていたが冬季や雨天
の運転が困難等、さらに安全性でも問題が生じやすい
ことから図 4 に示すアルミフレーム製の本格的なドア
の製作をすることにした。図 5 はドアフレームを開口
部に合わせ、すき間の確認をしている様子である。
図7 アルミ製ドアパネルをリベット止めする
図 4 製作中のアルミ製ドアフレーム
図8 透明アクリル樹脂をバーナーで曲面加工する
図 6 は板厚 2mm のアルミ製パネルを 3 本ローラー
で曲げている様子である。
図 7 はアルミ製ドアパネルをリベット止めしている
様子である。
図 8 は透明アクリル樹脂をバーナーで加熱し、曲面
図5 ドアフレームを開口部に合わせている様子
加工している様子である。
6.車体の概要
車体は、ボディ床下に 2 本の角パイプを配置した。
図 9 に示すフロントサスペンションは、構造が簡単
なマクファーソンストラット方式とした。図 10 に示す
エンジンユニットは車体後方部に市販のスクーターの
取り付け方法と同様にユニットスイング方式とした。
図12 浜松市内走行の様子
図9 車体床下前方(フロントサスペンション)
図13 浜松メッセ2008に出展
7.イベントへの参加
図 11 は 2008 年 2 月 11 日に浜松オート全国 SG クラ
ス選手の先導イベント走行した時の様子である。
図12は静岡文化芸術大学の羽田先生と浜松市内を走
行した時の様子である。
図10 車体床下後方(エンジンユニット)
図13 は浜松メッセ2008 に出展した時の様子である。
8.まとめ
完成後、約 5,000km の耐久走行を行ったが目立った
不具合は出ていない。手作りボディならば FRP 製が軽
量で強度的に優れる。ボディの剛性を保つためにモノ
コック構造とした。
エンジンの駆動部品とリアサスペンションを強化し、
後方に 30kg の荷物積載スペースを設け、買い物や配達
等の実用面も考慮した。尾灯、ブレーキ灯、標識灯、
ハイマウントストップランプ、車幅灯は LED とし、消
図11 浜松オートレース場での「先導車」
費電力を電球の約 1/5 とした。今後、環境に配慮し、4
サイクルエンジン化さらに電気モーターを利用したミ
ニカーにも挑戦したい。
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