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機能性RNAプロジェクト - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
「機能性RNAプロジェクト」 中間評価報告書 平成19年9月 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会 平成19年9月 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事長 牧野 力 殿 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会 委員長 西村 吉雄 NEDO技術委員・技術委員会等規程第32条の規定に基づき、別添のとおり 評価結果について報告します。 目 次 はじめに 分科会委員名簿 審議経過 評価概要 研究評価委員会におけるコメント 研究評価委員会委員名簿 第1章 第2章 評 価 1.プロジェクト全体に関する評価結果 1.1 総論 1.2 各論 2.個別テーマに関する評価結果 2.1 機能性RNAの探索・解析のための バイオインフォマティクス技術の開発 2.2 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 2.3 機能性RNAの機能の解明 3.評点結果 評価対象プロジェクト 1.事業原簿 2.分科会における説明資料 参考資料1 評価の実施方法 1 2 3 4 7 8 1-1 1-1 1-6 1-14 1-14 1-20 1-25 1-31 2-1 2-2 参考資料 1-1 はじめに 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においては、被評価プロジェク ト毎に当該技術の外部の専門家、有識者等によって構成される研究評価分科会を研究 評価委員会によって設置し、同分科会にて被評価対象プロジェクトの研究評価を行い、 評価報告書案を策定の上、研究評価委員会において確定している。 本書は、「機能性RNAプロジェクト」の中間評価報告書であり、第13回研究評 価委員会において設置された「機能性RNAプロジェクト」(中間評価)研究評価分 科会において評価報告書案を策定し、第14回研究評価委員会(平成19年9月26 日)に諮り、確定されたものである。 平成19年9月 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会 1 「機能性RNAプロジェクト」 中間評価分科会委員名簿 (平成19年7月現在) 氏名 分科 会長 分科会長 代理 おおいし 大石 あいば みちお 道夫 ひろじ 饗場 弘二 なかい けん た なとり ゆきかず 中井 名取 謙太 幸和 委員 にしじま 西島 よこやま 横山 かずみ 和三 いさお 勇生 所属、肩書き かずさDNA研究所 理事長兼所長 名古屋大学 教授 大学院 理学研究科 東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 教授 生命理学専攻 機能解析イン・シリコ分野 東京工業大学 大学院 理工学研究科 コアリッションセンター機能体 特任教授 持田製薬株式会社 主事 日経BP社 編集委員 開発企画推進部 日経メディカル別冊編集 敬称略、五十音順 2 審議経過 z 第1回 分科会(平成19年7月4日) 公開セッション 1.開会、資料の確認 2.分科会の公開について 3.評価の実施方法について 4.評価報告書の構成について 5.プロジェクトの概要説明 非公開セッション 6.プロジェクトの個別テーマの詳細説明 公開セッション 7.纏め、講評 8.今後の予定、閉会 z 第14回 研究評価委員会(平成19年9月26日) 3 評価概要 1.総 論 1)総合評価 本プロジェクトは、機能性 RNA の予測技術、検出・解析技術、および生体機能と作 用機構の解明、という3つの目標を掲げ、順調に研究を進めており、全体として中間 目標はクリアしている。欧米に比べ規模で劣る国内研究としては、興味深い結果も創 出しており,後半は更なる成果が期待される。 機能性 RNA 研究は世界的大競争の状態にあり、将来のバイオ産業の新たな柱を生 み出す可能性のある技術である。基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは 到底達成できない分野であり、産学官が役割分担して本プロジェクトを実施する意義 は高い。 しかし、テーマの中には欧米においてその限界が明確となったり、逆に最終目標の ハードルが高い分野もあるので、世界の趨勢をよく見極め、テーマの絞り込み、予算 の集中、など柔軟に軌道修正を行っていく必要がある。 また、3つの研究グループ間の連携がよくみえない。個別テーマの連携は現行以上 に強化されるべきであり、積極的に3グループ間で協力関係を築いてほしい。 これまで、この種のプロジェクトは国内基礎研究の基盤構築・強化に役立ってきた が、産業界の成果利用は限られていた。本プロジェクトの成果を広く活用し国益に資 するには、民間の知恵を入れた利用促進の仕組みを本プロジェクトの遂行に併せ検討 することが望ましい。 2)今後に対する提言 3つの研究開発項目は、それぞれ中間目標をクリアしており、基礎技術の蓄積は順 調に進んでいる。最終目標達成に向けた次年度以降の研究開発の続行が強く望まれる。 しかしながら、機能性 RNA 研究は世界的大競争の状況に在るので、彼我の差、プ ロジェクトの目的などを適宜把握してより集中化を図り、場合によっては取捨選択・ 強化することが必要である。プロジェクト内部での予算配分や、共同研究先の選定な どにあたっては、あらためて「先端分野の基盤研究」への選択と集中を考えるべきで ある。 また、医療・診断分野への貢献は十分意識すべきであるが、新産業創出を過度に意 識した特許化等に振り回されることは避けるべきであろう。特許戦略は企業の責任範 疇であり、ニーズに即して企業が知的財産化できるシーズを与えることが重要である。 2.各 論 1)事業の位置付け・必要性について 機能性 RNA の研究は、RNA を利用した新しい形の医療技術、創薬、診断技術など 新規産業の創成につながる重要な基礎的、基盤的研究で、その将来性、特に実用化の 有望性からみて科学技術創造立国を具現化する上で必須のものであるが、リスクが高 4 く、民間企業が単独で取組むのは困難である。この意味で本プロジェクトは健康安心 プログラムの趣旨に合致しており、NEDOの事業として妥当と判断できる。 惜しむらくは、世界的に厳しい競争の中で、海外に比べて規模が小さく、この分野 の我が国の優位性をどこまで確立できそうか、若干心もとなく思われる。本プロジェ クトと密接な関係のあるトランスクリプトームの網羅的、定量的解析では海外が先行 し始めているので、その研究動向を十分に注視する必要がある。 機能性 RNA、トランスクリプトーム研究が即、創薬・診断事業に繋がると考える べきではないが、本技術に関する知財化の遅れは、国内の創薬・診断事業の存立を危 うくすることになりかねない。本分野の外国での知的所有権の独占化の問題は、より 選択的、独創性を重んじた方向性が必要であり、あまり目先だけの実用化を目指すべ きではない。 2)研究開発マネジメントについて 適切なプロジェクトリーダーのもと、研究開発マネジメントはおおむね適正に行わ れている。開発目標は世界をリードするに相応しいもので、中間目標はほぼ達成され ている。事業体制も妥当であり、計画の見直しも適切になされている。 一方で、最終目標からみた場合の研究開発目標と計画の妥当性にやや不安が残る。 研究期間内にどこまで達成するかについて、現実的な視点からの見直しが必要と思わ れる。テーマの一部には競争優位性を発揮できないものや、最終目標のハードルが高 い分野もあるので、本質を失うことなく、「先端分野の基盤研究」への選択と集中が 必要である。 また、個別テーマの連携は現行以上に強化されるべきであり、バイオインフォマテ ィクス活用による機能解析の加速化を実現化させる一層の取組が必要である。 3)研究開発成果について 現時点で成果を問うのは、やや時期尚早であるが、3 グループとも計画時点に比べ 進捗し具体的成果は中間目標を十分に達成している。独自性の高いテーマは世界最高 水準の成果を上げており、新たな技術領域を開拓できるもので、今後の発展が期待さ れる。有力な雑誌への論文発表など成果が公開され、特許等の取得状況も順調に見え る。 ただし、得られた成果の他の競合技術と比較した場合の優位性については具体的に 検証することが必要である。 また、従来は、一般に対する情報提供が少なかったが、研究開発の進展に伴い、今 後は、積極的に情報提供を行い、研究開発の新たな提携を検討していただきたい。 4)実用化、事業化の見通しについて 機能性RNAに関わる基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは到底達成 できない分野であり、本プロジェクトがその重要性を社会へ伝えた意義は大きく、進 捗の状況から判断して大きな波及効果も期待できる。 5 ただし、現段階では、出口を云々するよりも、より基礎的な知見の蓄積を目指して、 そこから独自な実用化の方向を探るべきであろう。先端分野であり、現行の実用化イ メージ・出口イメージで十分である。出口イメージとしての医療・診断分野への貢献 は十分意識すべきであるが、新産業創出を過度に意識した特許化等に振り回されるこ とは避けるべきであろう。特許戦略は企業の責任範疇であり、ニーズに即して企業が 知的財産化できるシーズを与えることが重要である。この種の基礎基盤構築プロジェ クトにあまり実用化や波及効果を求めるのは、かえってプロジェクトをゆがめてしま いかねない。 一方、機能性 RNA 研究の知財戦略、プロジェクト完了後の民間利用に関しては、 本プロジェクトを支える機能の一部として早期に検討されることが望ましい。実用化 に際しては、開発された技術を他の競合技術と冷静に比較して、優位性と問題点を明 確にすることが必要である。 6 研究評価委員会におけるコメント 第14回研究評価委員会(平成19年9月26日開催)に諮り、了承された。研究評 価委員からのコメントは特になし。 7 研究評価委員会 委員名簿(敬称略、五十音順) 職 位 氏 名 所属、肩書き 委員長 西村 吉雄 国立大学法人東京工業大学 委 員 伊東 弘一 早稲田大学 委 員 稲葉 陽二 日本大学 委 員 大西 優 委 員 尾形 仁士 三菱電機エンジニアリング株式会社 委 員 黒川 淳一 国立大学法人横浜国立大学大学院 工学研究院・システムの創生部門 教授 理事 監事 理工学術院総合研究所 法学部 客員教授(専任) 株式会社カネカ 教授 顧問 委 員 小林 直人 独立行政法人産業技術総合研究所 委 員 小柳 光正 国立大学法人東北大学大学院 工学研究科バイオロボティクス専攻 取締役社長 委 員 佐久間一郎 教授 国立大学法人東京大学大学院 工学系研究科精密機械工学 精密機械工学専攻 委 員 冨田 房男 放送大学 北海道学習センター 委 員 架谷 昌信 愛知工業大学 工学部機械学科 教授・総合技術研究所所長 委 員 平澤 泠 委 員 吉原 一紘 所長 教授 東京大学名誉教授 アルバック・ファイ株式会社 8 技術開発部 理事 第1章 評価 この章では、分科会の総意である評価結果を枠内に掲載している。なお、枠の 下の○、●、・が付された箇条書きは、評価委員のコメントを原文のまま、参考と して掲載したものである。 1.プロジェクト全体に関する評価結果 1.1 総論 1)総合評価 本プロジェクトは、機能性 RNA の予測技術、検出・解析技術、および生体機能 と作用機構の解明、という3つの目標を掲げ、順調に研究を進めており、全体とし て中間目標はクリアしている。欧米に比べ規模で劣る国内研究としては、興味深い 結果も創出しており,後半は更なる成果が期待される。 機能性 RNA 研究は世界的大競争の状態にあり、将来のバイオ産業の新たな柱を 生み出す可能性のある技術である。基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみ では到底達成できない分野であり、産学官が役割分担して本プロジェクトを実施す る意義は高い。 しかし、テーマの中には欧米においてその限界が明確となったり、逆に最終目標 のハードルが高い分野もあるので、世界の趨勢をよく見極め、テーマの絞り込み、 予算の集中、など柔軟に軌道修正を行っていく必要がある。 また、3つの研究グループ間の連携がよくみえない。個別テーマの連携は現行以 上に強化されるべきであり、積極的に3グループ間で協力関係を築いてほしい。 これまで、この種のプロジェクトは国内基礎研究の基盤構築・強化に役立ってき たが、産業界の成果利用は限られていた。本プロジェクトの成果を広く活用し国益 に資するには、民間の知恵を入れた利用促進の仕組みを本プロジェクトの遂行に併 せ検討することが望ましい。 <肯定的意見> ○個々のテーマについてはいくつか問題があるが、全体的にはよく課題に取り組ん でいる。又、成果も出ている。 ○本プロジェクトでは、機能性 RNA を予測する技術の開発、機能性 RNA の新た な検出・解析技術、および機能性 RNA の生体機能と作用機構の解明、という3 つの目標を掲げ、研究開発が進められている。現在の段階までの研究の進捗状況 はおおむね順調であり、全体として中間目標はクリアしている。今後、最終目標 達成に向けたさらなる進展が期待できる。 ○いま最もホットで競争も激しい研究分野において、3つのグループとも当初計画 に従って、まずは順調に研究を進めており、それなりに優れた成果を出している のは立派である。 ○機能性 RNA 研究は世界的大競争の状態にあり、欧米に比べ規模で劣る国内研究 の中では研究の方向付け、参加組織および連携・組織力の点で、本プロジェクト は応用を視野に入れた基礎研究において重要な役割を果たしている。 本プロジ ェクトの3グループとも、世界をリードする成果ないしは、興味深い結果を創出 しており、後半は更なる成果が期待される。 ○機能性RNAに関わる基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは到底達 1-1 成できない分野であり、本プロジェクト実施の意義は高く、進捗の状況から判断 して大きな波及効果も期待できる。また、先端領域として注目され国際的な競争 が激しい分野であるが、プロジェクト全体に適度の緊張感があり、産学官が役割 分担を認識しつつ良い体制で進展しているとの印象である。 ○マイクロ RNA,ノンコーディング RNA は最も注目されている領域であり、将来 のバイオ産業の新たな柱を生み出す可能性のある技術である。これらを将来産業 応用するための基盤となる技術として、バイオインフォイマティクス、ツール、 機能解析技術の開発が順調に行なわれており、このプロジェクトは、該当分野で 世界の最先端に行っていると認められる。 <問題点・改善すべき点> ●3つの研究グループ間の連携がいままでのところみえない。また、機能性 RNA に関する内外の他のグループによる研究との関係で本プロジェクトがどのよう に特徴を示すことができるかが問われている。機能性 RNA を予測する有効な技 術の開発が研究期間内に実現できるかどうかについては見通しが不明である。 ●進展の激しい分野であるので、 (すでに行っているものの)この機会にあらため て世界の趨勢をよく見極め、柔軟に軌道修正を行っていく必要があるかもしれな い。たとえば日本独自の研究は当然重要であるが、最終的にどこまでもっていく ために、どの程度のリソースを振り分けるのが妥当なのかを考えた方がよいと思 う。また、産官学の総力の結集をうたっているが、残りの期間においては、有望 そうなテーマに絞って、予算等を集中させていく必要もあるだろう。 ●本プロジェクトの多くのテーマは目標設定段階で世界をリードすることを目指 していたが、テーマの中には欧米においてその限界が明確となり、他の手法に取 って代られたものがある。計画時点で全テーマの目標が優れたものであっても、 テーマによっては 2 年も経過すれば陳腐化、乃至は時代に取り残されたテーマが 出てくることは致し方ない。特に、マイクロアレイを用いた機能性 RNA 研究は、 その再現性・精度と定量性の観点から他手法で代替され始めており、テーマの継 続について再考を要すると思われる。 ●個別テーマは概ね満足すべき成果を伴って中間評価を向かえたが、最終目標のハ ードルが高い分野もあり、今後の作業量は増加すると予想される。従って、個別 テーマの連携は現行以上に強化されるべきであり、バイオインフォマティックス 活用による機能解析の加速化を実現化させる一層の取組が必要である。 ●時期は早いかもしれないが、そろそろ具体的な産業利用を視野に入れて研究テー マ等を有機的に変えていっていただきたい。 <その他の意見> ・これまでも3グループ間で週単位の情報交換を行ってきたということだが、残り の研究期間はより一層、実質的な融合研究を進めていけば、相乗効果があると思 1-2 う。特にインフォマティクスグループは単に予測結果を実験で確認してもらうに とどまらず、積極的に実験グループと協力関係を築いてほしい。 ・これまで、この種のプロジェクトは国内基礎研究の基盤構築・強化に役立ってき たが、産業界の成果利用は限られていた。例えば、H-Inv は世界に誇れるデータ ベースだが、企業の研究者が利用するには、目的別のユーザインターフェース開 発等が有効であるが、実現に至っていない。本プロジェクトの成果を広く活用し 国益に資するには、民間の知恵を入れた利用促進の仕組みを本プロジェクトの遂 行に併せ検討することが望ましい。データベースは科学技術創造立国を具現化す る必須の基盤であり、本プロジェクト完了後の活用がプロジェクトの成否を決め るといっても過言ではない。バイオ・ライフサイエンス分野の国内研究者が、そ れぞれの視点(柔軟性と多様性)で本プロジェクトの成果物を利用できる結果と なれば、本プロジェクトは大成功と言える。 1-3 2)今後の提言 3つの研究開発項目は、それぞれ中間目標をクリアしており、基礎技術の蓄積は 順調に進んでいる。最終目標達成に向けた次年度以降の研究開発の続行が強く望ま れる。 しかしながら、機能性 RNA 研究は世界的大競争の状況に在るので、彼我の差、 プロジェクトの目的などを適宜把握してより集中化を図り、場合によっては取捨選 択・強化することが必要である。プロジェクト内部での予算配分や、共同研究先の 選定などにあたっては、あらためて「先端分野の基盤研究」への選択と集中を考え るべきである。 また、医療・診断分野への貢献は十分意識すべきであるが、新産業創出を過度に 意識した特許化等に振り回されることは避けるべきであろう。特許戦略は企業の責 任範疇であり、ニーズに即して企業が知的財産化できるシーズを与えることが重要 である。 <今後に対する提言> ・是非、続行すべきと考える。但し、より集中化を図り、成果が上がっていないも のは勿論、見かけ上、成果が上がっていてもプロジェクトの目的に合致しないも のは、思い切って整理すべきであろう。 ・3つの研究開発項目は、それぞれ中間目標をクリアしており、最終目標達成に向 けた次年度以降の研究開発の続行が強く望まれる。 ・本プロジェクトは十分継続するに値すると考える。ただし、プロジェクト内部で の予算配分や、共同研究先の選定などにあたっては、評価委員会の意見を参考に、 あらためて「選択と集中」を考えるべきかもしれない。 ・3 グループのテーマとも計画時点に比べ進展しており、関係者の努力に敬意を称 したい。しかしながら、機能性 RNA 研究は世界的大競争の状況にあり、彼我の 差を把握しながら進めないと、進展は認められるものの欧米更には中国にも見劣 りすることになりかねない。彼我の差を適宜把握し、場合によっては取捨選択・ 強化することが必要である。 ・「先端分野の基盤研究」への選択と集中が必要であり、結果としての医療・診断 分野への貢献は十分意識すべきであるが、新産業創出を過度に意識した特許化等 に振り回されることは避けるべきであろう。特許戦略は企業の責任範疇であり、 ニーズに即して企業が知的財産化できるシーズを与えることが重要である。 ・基礎技術の蓄積は順調に進んでいる。今後産業応用を視野に入れて、必要な研究 機関との連携に期待したい。 <その他の意見> ・これは政策的判断になるのかもしれないが、世界でトップレベルの業績をあげて いる研究の中には、プロジェクト全体の目標から見ると、ややテーマが遊離して 1-4 いるように思えるものもある。他方、日本として、優れた研究を支援するという 観点からすると良いのかもしれないので、NEDO としてどうするのがよいか検 討すべきなのでは。 ・特に、トランスクリプトームの網羅的定量解析については Solexa 等のシーケン シング法が急速に進んでおり、現行技術の延長線上のマイクロアレイ解析は基礎 研究では勝負にならない。 ・バイオ先端分野では我が国の人材不足は問題視すべきことであり、特に本プロジ ェクトでのバイオインフォマティクス人材育成への期待は大きい。人材育成とそ の後の活躍の場を意識した研究体制を期待する。 1-5 1.2 各論 1)事業の位置付け・必要性について 機能性 RNA の研究は、RNA を利用した新しい形の医療技術、創薬、診断技術 など新規産業の創成につながる重要な基礎的、基盤的研究で、その将来性、特に実 用化の有望性からみて科学技術創造立国を具現化する上で必須のものであるが、リ スクが高く、民間企業が単独で取組むのは困難である。この意味で本プロジェクト は健康安心プログラムの趣旨に合致しており、NEDOの事業として妥当と判断で きる。 惜しむらくは、世界的に厳しい競争の中で、海外に比べて規模が小さく、この分 野の我が国の優位性をどこまで確立できそうか、若干心もとなく思われる。本プロ ジェクトと密接な関係のあるトランスクリプトームの網羅的、定量的解析では海外 が先行し始めているので、その研究動向を十分に注視する必要がある。 機能性 RNA、トランスクリプトーム研究が即、創薬・診断事業に繋がると考え るべきではないが、本技術に関する知財化の遅れは、国内の創薬・診断事業の存立 を危うくすることになりかねない。本分野の外国での知的所有権の独占化の問題 は、より選択的、独創性を重んじた方向性が必要であり、あまり目先だけの実用化 を目指すべきではない。 <肯定的意見> ○RNA の開発、研究の将来性、特に実用化の有望性からみて、NEDO 事業として 充分妥当であると考えられる。但し、本分野での外国での知的所有権の独占化の 問題があるので、より選択的、独創性を重んじた方向性が必要である。 ○機能性 RNA の解析とその機能の制御による生体応答を理解するための研究は、 RNA を利用した新しい形の医療技術、創薬、診断技術など新規産業の創成につ ながる重要な基礎的、基盤的研究である。この意味で本プロジェクトは健康安心 プログラムの目標達成のために寄与しているといえる。また、本プロジェクトは 基礎的、基盤的であるが故に、公共性が高く、NEDOの事業として妥当と判断 できる。 ○健康安心プログラムの趣旨にはよくあった計画で、公共性も高く、NEDO の寄 与も十分正当化される。予算の費用対効果については、評者には判断が難しいが、 この分野が将来大きな利益を生む可能性は大きいと思われる。事業目的について も問題はない。 ○3 グループのテーマとも機能性 RNA 研究の基盤を成すものであり、民間企業が 単独で取組むのは困難である。この種の基盤は、科学技術創造立国を具現化する 上で必須のものであり、NEDO の企画は時機を得たものである。フルレングス cDNA、H-Inv 等は欧米に比べ優れた研究基盤であり、その優位性を活かして関 連研究が更に加速することを期待している。 ○機能性RNAに関わる基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは到底達 1-6 成できない分野であり、本プロジェクト実施の意義は高い。 ○マイクロ RNA、ノンコーディング RNA は今、最も注目されている研究領域の 一つである。しかし、実際に医薬品などへの産業応用につながるかは不明で、リ スクが高い研究であり、NEDO が支援する研究として適切な研究だと思われる。 <問題点・改善すべき点> ●基本特許が取れないような、あまり目先だけの実用化を目指すべきではない。 ●内外の他のグループによる類似の研究プロジェクトとの関係で本事業をどのよ うに位置づけるかを検討してほしい。 ●繰り返しになるが、世界的に厳しい競争の中で、これまで通りに計画を遂行して いって、果たして、この分野の我が国の優位性をどこまで確立できそうか、評者 には若干心もとなく思われる。 (あくまで印象のレベルに過ぎないが)。逆に、た とえばこれまで以上の予算を投入した場合、どの程度の効果があるかを考えると、 それもあまり期待できないような気もする。 ●惜しむらくは、欧米・中国に比べて規模が小さい点である。トランスクリプトー ムの網羅的、定量的解析では欧米・中国が先行し始めており、この状況が続くと、 トランスクリプトームはゲノムと同様の結果に陥ることが懸念される。 生体機 能を担っている最前線は、トランスクリプトームとプロテオームであることは既 に認識されており、プロテオーム研究で示した国威がトランスクリプトーム研究 にも繋がることを期待する。 ●中間評価に参考となる国際競争力の状況、国際的な市場動向、欧米政策動向につ いて資料提示、あるいは報告があればベターであった。 <その他の意見> ・機能性 RNA,トランスクリプトーム研究が即、創薬・診断事業に繋がると考える べきではない。しかしながら、ゲノム研究で経験した如く、トランスクリプトー ムもゲノムと同時に有限の資源(研究目標)であり、トランスクリプトームおよび そのコンテンツに関する知財化の遅れは、国内の創薬・診断事業の存立を危うく することになりかねない。 1-7 2)研究開発マネジメントについて 適切なプロジェクトリーダーのもと、研究開発マネジメントはおおむね適正に行 われている。開発目標は世界をリードするに相応しいもので、中間目標はほぼ達成 されている。事業体制も妥当であり、計画の見直しも適切になされている。 一方で、最終目標からみた場合の研究開発目標と計画の妥当性にやや不安が残 る。研究期間内にどこまで達成するかについて、現実的な視点からの見直しが必要 と思われる。テーマの一部には競争優位性を発揮できないものや、最終目標のハー ドルが高い分野もあるので、本質を失うことなく、 「先端分野の基盤研究」への選 択と集中が必要である。 また、個別テーマの連携は現行以上に強化されるべきであり、バイオインフォマ ティクス活用による機能解析の加速化を実現化させる一層の取組が必要である。 <肯定的意見> ○渡辺センター長はリーダーとしてきわめて適切である。 ○中間目標についてはほぼ達成されていることから、中間目標に関する限り、研究 開発目標と研究開発計画の妥当性が裏付けられたといえる。研究開発実施者の事 業体制も妥当であり、進捗状況を把握する努力は適切に行われており、計画の見 直しも適切になされている。 ○研究開発マネジメントはおおむね適正に行われている。情報技術、(独自の)技 術開発、機能解析という区分けも妥当である。 ○3グループの開発目標は世界をリードするに相応しいものである。3 グループ間 の連携も始まり、成果の創出が加速すると期待される。 ○研究開発マネジメントについては研究開発目標、研究開発計画等が十分に検討・ 協議されて運用されている。 ○現在世界的に注目されているマイクロ RNA,ノンコーディング RNA を探索し、 検出、評価し、産業への応用を目指すためにバイオインフォマティクス研究分野、 ツール研究分野、機能解析研究分野がうまく連携して研究を実施している。 <問題点・改善すべき点> ●最終目標からみた場合の研究開発目標と研究開発計画の妥当性がやや不安が残 る。特に、ゲノム配列から機能性 RNA を有効に予測する技術は難題であり、研 究期間内にどこまで達成するかについて、現実的な視点からの見直しが必要と思 われる。 ●現状が問題だというわけではないが、たとえばバイオインフォマティクスグルー プの技術力の恩恵を他のグループがどのぐらい被ることができているかなどの 点で、さらなる努力により、効果を一段と高めることができるかもしれない。 ●既に指摘した事項だが、テーマの一部には欧米更には中国に比べ見劣りするもの がある。また、一部の研究では、期待が大きいものの、機能性 RNA の機能解析 1-8 グループ内と共に、他のグループとの連携が見出し難いものもあり、テーマの推 進・連携方法について工夫が必要である。 ●研究開発実施者の事業体制も概ね妥当であるが、個別テーマの連携は現行以上に 強化されるべきであり、バイオインフォマティックス活用による機能解析の加速 化を実現化させる一層の取組が必要である。 <その他の意見> ・問題点というほどではないが、全体に設定目標があいまいで、その達成のために かける予算を正当化する根拠が薄い気がする。つまり、単に設定目標をクリアす るというだけなら、ずっと少ない予算でも可能かもしれない。 ・機能性 RNA 研究をトランスクリプトーム研究と位置付けるのであれば、欧米・ 中国との規模の差は大きい。本プロジェクトは、目標・遂行力において独自性を 発揮しているが、網羅的研究においても競争優位を確立しなければならないので あれば、体制・資金面で見直しを要する。 1-9 3)研究開発成果について 現時点で成果を問うのは、やや時期尚早であるが、3 グループとも計画時点に比 べ進捗し具体的成果は中間目標を十分に達成している。独自性の高いテーマは世界 最高水準の成果を上げており、新たな技術領域を開拓できるもので、今後の発展が 期待される。有力な雑誌への論文発表など成果が公開され、特許等の取得状況も順 調に見える。 ただし、得られた成果の他の競合技術と比較した場合の優位性については具体的 に検証することが必要である。 また、従来は、一般に対する情報提供が少なかったが、研究開発の進展に伴い、 今後は、積極的に情報提供を行い、研究開発の新たな提携を検討していただきたい。 <肯定的意見> ○現時点で成果を問うのは、やや時期尚早である。現在までのところ、3主要課題 について、1及び3については、将来性のある成果が得られている。 ○3つの研究開発項目ともに、中間目標は十分に達成している。RNA 配列の比較、 整列を高精度・超高速で行うソフトウエアの開発、RNA マススペクトロメトリー の開発、長鎖 RNA 合成法の確立、超高感度マイクロアレイ技術の開発、miRNA のノックアウトマウス作製、核内 RNA ノックダウン法の確立、piRNA の末端 形成機構と生合成経路のモデルを提唱、などは世界初あるいは世界最高水準の成 果であり、かつ汎用性が高い。多くの研究成果は、適切に論文として発表されて おり、また特許出願もなされている。研究開発項目2「機能性 RNA 解析のため の支援技術・ツールの開発」および研究開発項目3「機能性RNAの機能の解明」 については最終目標を達成できる可能性がある。 ○おおむね中間目標は達成できている。論文発表状況、特許等の取得状況も順調に 見える。最終目標達成に向けて本質的な困難は見当たらない。 ○3 グループとも計画時点に比べ進捗し具体的成果を達成している。独自性の高い テーマは世界最高水準の成果を上げており、今後の発展が期待される。 ○個別テーマは概ね満足すべき成果を伴って中間評価を向かえた。その成果は、新 たな技術領域を開拓できると期待される。論文発表を含めて適切なタイミングで 成果が公開されている。 ○研究成果はバイオインフォマティクス開発、ツール開発、機能解析とも有力な雑 誌に掲載されたり、世界最高レベルの成果を収めていると認められる。一部、テ ーマを中断したものもあるが、全般的に優秀な研究成果であるといえる。 <問題点・改善すべき点> ●得られた成果の他の競合技術と比較した場合の優位性については具体的に検証 することが必要である。研究開発項目1「機能性RNAの探索・解析のためのバ イオインフォマティックス技術の開発」については最終目標を達成できる見通し 1-10 が不明である。 ●現状は、大目標としての、バイオ分野における新たな基盤形成や、機能性 RNA 解析研究の我が国の優位性の確立という観点からすると、ややものたりないかも しれない。ただ、それをどう改善すべきかは簡単な答えがない(予算の増減でど うなるものでもなさそう)。 ●既に指摘した通り、テーマの一部には競争優位を発揮できないものがあり、再考 すべきである。 ●最終目標のハードルが高い分野もあり、今後の作業量は増加すると予想される。 本質を失うことなく、「先端分野の基盤研究」への選択と集中が必要である。 ●一般に対する情報提供が少なすぎる。研究開発の新たな提携にもつながると思わ れ、今後、積極的に行なっていただきたい。 <その他の意見> ・特許については、明細書を確認していないため、出願の意義を判断することが出 来ない。バイオ・ライフサイエンスでは一般的に、生命現象の解明に繋がるよう な本質的特許、或いはコンテンツ特許でない限り、特許出願の意義は薄い。日本 が強い組立産業型の特許出願の考え方(数で勝負し、クロスライセンスへ持込む) は、バイオ・ライフサイエンス分野では通用しない。 ・特許戦略は企業の責任範疇であり、ニーズに即して企業が知的財産化できるシー ズを与えることが重要である。 1-11 4)実用化の見通しについて 機能性RNAに関わる基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは到底達 成できない分野であり、本プロジェクトがその重要性を社会へ伝えた意義は大き く、進捗の状況から判断して大きな波及効果も期待できる。 ただし、現段階では、出口を云々するよりも、より基礎的な知見の蓄積を目指し て、そこから独自な実用化の方向を探るべきであろう。先端分野であり、現行の実 用化イメージ・出口イメージで十分である。出口イメージとしての医療・診断分野 への貢献は十分意識すべきであるが、新産業創出を過度に意識した特許化等に振り 回されることは避けるべきであろう。特許戦略は企業の責任範疇であり、ニーズに 即して企業が知的財産化できるシーズを与えることが重要である。この種の基礎基 盤構築プロジェクトにあまり実用化や波及効果を求めるのは、かえってプロジェク トをゆがめてしまいかねない。 一方、機能性 RNA 研究の知財戦略、プロジェクト完了後の民間利用に関しては、 本プロジェクトを支える機能の一部として早期に検討されることが望ましい。実用 化に際しては、開発された技術を他の競合技術と冷静に比較して、優位性と問題点 を明確にすることが必要である。 <肯定的意見> ○本課題は世界的にみて、きわめて競争が激しく、又、基本的知的所有権が外国勢 に押さえられている点が多い。又、RNA 医薬品の DDS など技術的に難しい問 題がある。現段階では、出口を云々するよりも、より基礎的な知見の蓄積を目指 して、そこから独自な実用化の方向を探るべきであろう。さもなくば、結果とし て外国勢の後塵を浴びることになりかねない。 ○研究開発項目2「機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発」について は、RNA マススペクトロメトリー、RNA 自動精製装置、長鎖 RNA 合成法、超 高感度マイクロアレイ技術など、実用化が期待できる成果が生まれており、これ らの技術が実用化された場合にはその波及効果は大きい。 研究開発項目1「機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティック ス技術の開発」および研究開発項目3「機能性RNAの機能の解明」においても、 いくつかの成果は、例えば、RNA 配列の比較、整列を高精度・超高速で行うソフ トウエア、多数の新規 miRNA の同定、miRNA のノックアウトマウス作製、核 内 RNA ノックダウン法、などは関連分野への波及効果が期待される。 ○少なくとも、開発者の目からみた場合の出口イメージは明確であると思われる。 ○国内民間企業ではこの種の研究へ取組む余裕がなく、これまでは欧米で成果が顕 在化するまで海外からの導入情報へ頼っていた。本プロジェクトが機能性 RNA 研究にいち早く取り組み、その重要性を社会へ伝えた意義は大きい。 ○先端分野であり、現行の実用化イメージ・出口イメージで十分である。もし、よ り具体的な実用化イメージが描けるならば、民間企業が集中投資している。それ 1-12 ができない分野だから、本プロジェクトの意義があるとも解釈できる。 機能性RNAに関わる基盤研究の構築・確立は我が国の民間企業のみでは到底 達成できない分野であり、本プロジェクト実施の意義は高く、進捗の状況から 判断して大きな波及効果も期待できる。 ○マイクロ RNA、ノンコーディング RNA 自体が治療薬、診断薬の標的になるか は疑問の余地があるが、もし、その時代が来た場合に十分に世界の最先端にいら れるような技術開発が十分にできている。実用化の可能性としては、研究用のツ ールは確実に生み出せるが、将来的には画期的な医薬品や診断薬の開発も可能だ と思われる。そうなれば、波及効果は相当大きなものになる。 <問題点・改善すべき点> ●実用化に際しては、開発された技術を他の競合技術と冷静に比較して、優位性と 問題点を明確にすることが必要である ●ただ、どちらかというと素人の第三者が素直に期待するような、華々しい成果や 波及効果は今のところあまり期待できないかもしれない(特に機能解析グルー プ)。 ●機能性 RNA 研究はいまだ基盤構築を要する状況にあり、創薬・診断事業等の実 用化には本プロジェクトで対応していない課題が山積している。過去のプロジェ クトでは実用化を求める余り、この種の基盤構築テーマが実用化の大義名分に振 り回されてきた。その轍を踏まないことを期待する。 ●出口イメージとしての医療・診断分野への貢献は十分意識すべきであるが、新産 業創出を過度に意識した特許化等に振り回されることは避けるべきであろう。特 許戦略は企業の責任範疇であり、ニーズに即して企業が知的財産化できるシーズ を与えることが重要である。 ●検出機器などの機器開発では臨床検体を利用するために、マイクロ RNA、ノン コーディング RNA を医薬品として開発するためにはそれぞれ、得意な技術を持 つ組織と連携することが不可欠になるだろう。 <その他の意見> ・そもそもこの種のプロジェクトにあまりがちがちに実用化や波及効果を求めるの は、かえってプロジェクトをゆがめてしまいかねないので、この点は仕方がない のではないかと思う。 ・機能性 RNA 研究の知財戦略、プロジェクト完了後の民間利用に関しては、本プ ロジェクトを支える機能の一部として早期に検討されることが望ましい。 ・バイオ先端分野では我が国の人材不足は問題視すべきことであり、特に本プロジ ェクトでのバイオインフォマティクス人材育成への期待は大きい。人材育成とそ の後の活躍の場を意識した研究体制を期待する。 1-13 2.個別テーマに関するコメント 2.1 機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 1)成果に関する評価 独自の視点により開発された新規機能性 RNA 発見アルゴリズムは高い精度、速 度を達成しており、既存技術を凌駕し、中間目標をクリアするものである。現状で は論文の質と数、共に短期間での実績として評価できる。 また、機能解析分野と有機的に連携して予測した機能性 RNA を実験で確かめる、 などの協力体制も整いつつある。今後はさらに、単なる解析ツールではなくて、新 しい機能性 RNA グループの発見につながる研究を期待したい。 一方、理論的な成果は積み上げられているが、実際への応用・実験結果のフィー ドバックなどの検証実験量が未だ十分ではないので、プロジェクト全体に対するバ イオインフォマティクス技術開発の貢献が少し不透明で、開発した予測技術の有効 性があいまいである。また、miRNA の予測は、競争の激しい分野であり、優位性 に乏しいのではないか、という印象がある。 <肯定的意見> ○浅井教授の下、着実な進歩がみられる。しかし、欲を言うと単なる解析ツールで はなくて、新しい機能性 RNA グループの発見につながる研究を期待したい。 ○RNA2次構造を考慮した配列の比較、整列を高精度・超高速で行うソフトウエア および2次構造モチーフを抽出するアルゴリズムを開発したことは、中間目標を クリアするものである。また、実際に開発したソフトウエアとアルゴリズムを用 いて、ヒトゲノムから1万個の機能性 RNA 候補を抽出したことや miRNA 予測 に関しても新手法を開発し数百個の miRNA 候補を発見したことも評価できる。 機能性RNAデータベースの構築においても積極的な取り組みが展開されてい る。 ○すでにレベルの高いジャーナルに(情報分野としては)多数の論文を発表してい て、基礎的研究成果の質は十分に裏付けられていると言える。また予測した機能 RNA を実験で確かめてもらうなどの協力体制も整いつつあるようである。 ○2 次構造を考慮した高速アライメントシステムは、既存技術を凌駕し、機能性R NAのウェット研究を支える強力な研究基盤である。 ○二次構造等を考慮して機能性 RNA 発見の速度を向上させた点は評価できるし、 中間目標には達している。現状では論文の質と数、共に短期間での実績として評 価できる。 ○独自の視点により開発された二次構造を考慮した RNA 配列の比較整列による新 規機能性 RNA 発見アルゴリズムは高い精度、速度を達成しており、評価の高い 雑誌にも多く掲載されたことは高く評価できる。また、新しいマイクロ RNA 候 補を見つけた後は、機能解析分野と有機的に連携して、研究開発を進めているこ とは高く評価できる。 1-14 <問題点・改善すべき点> ●開発した予測技術で既存の機能性 RNA がどの程度ヒットできるかが不明であり、 予測技術の有効性があいまいである。特に、予測した機能性 RNA 候補群の中に、 機能解析グループが実験的に同定した機能性 RNA がどの程度含まれているかに ついて触れられていないことは大きな問題である。 ●理論的な成果は積み上げられているが、その実際への応用・実験結果のフィード バックなどがまだまだ不十分に見える。 ●中間目標(2) の機能性 RNA の機能を予測するための情報技術を開発するという 点についての取り組みが十分でない(共通二次構造を調べる方法の開発だけでは 不十分)。たとえば、miRNA のターゲット予測にも取り組んではどうか?さら に、miRNA の予測は本プロジェクトからみても重要なテーマではあるが、すで に機能グループが大きく研究を進めており、後追いという印象がある。もちろん、 現在まだみつかっていない遺伝子をスクリーニングするのは大事だが、それには まだ研究が未成熟のように思えた。 ●ウェット研究者との交流は緒に就いたばかりであり、今後、ウェット研究への提 言が増えることを期待している。 ●検証実験量が未だ十分ではないので、プロジェクト全体に対するバイオインフォ マティックス技術開発の貢献が少し不透明である。 <その他の意見> ・機能性RNA抽出の手法、考え方の妥当性・適応性・拡張性を検証するウェット 実験を行うべきであると愚考する。 予測した機能性 RNA を、プロジェクト(グループ)内のみで絞るのではなく、他 の絞り方を適用することにより、成果は増大すると期待される。他の絞り方に ついては、プロジェクト外の力を活用するのも一考である。 1-15 2)実用化の見通しに関する評価 機能性 RNA 候補をゲノムから推測するバイオインフォマティクス技術への期待 は大きいが、これまでの研究開発がこの技術の実用化にどの程度迫っているかにつ いては判断が困難である。しかし、データベースの公開、実験グループとの連携な どの観点からすると、十分に実用的な成果が出つつあると言える。手法、予測結果 共に、機能性 RNA 研究において競争優位を確立する可能性を有している。 一方、開発したツールの世界的な認知度を高めるためには、検証実験量が未だ十 分ではないので、実験グループとの連携をかなり早い時点から意識し、機能グルー プの研究成果を十分取り込むべきである。また、開発されたツールプログラムなど を無料でアカデミックサイトに配布するなどの方策が有効であろう。 データベースは、国内の研究インフラとして民間企業の研究者へ早期に普及する 施策と、プロジェクト完了後のメンテナンスを検討すべきである。 <肯定的意見> ○たとえば開発した予測法でスクリーニングされた miRNA 遺伝子を実験で検証 したり、開発したデータベースが他のグループから利用されるという観点からす ると、十分に実用的な成果がでつつあると言える。 ○手法、予測結果共に、機能性 RNA 研究において競争優位を確立する可能性を有 している。 ○データ公開、実験グループとの連携に積極的に取組む姿勢は好印象として評価で きる。 ○20 万箇所以上の機能性 RNA 候補を発見し、マイクロアレイによる発現解析を 行なうことで機能性 RNA 候補を 1 万個強に絞ったこと、新規手法により 330 個 のマイクロ RNA 候補を発見したことは、実用化の可能性の高い技術であると評 価できる <問題点・改善すべき点> ●一方、開発したツールが世界の研究者に利用されるようになるか、あるいはこの 研究グループが世界をリードしていると見なされるようになるか、という点では まだ力不足なのではないか。研究グループの世界的な認知度を高めるためには、 開発されたツールプログラムなどを(ライセンスをつけるなどして)無料でアカ デミックサイトに配布するなどの方策が有効かもしれない。miRNA 遺伝子発見 では、機能グループの研究成果を十分取り込めているように思えない(報告書を みた限りでは)。 ●データベースの重要性については既に言及した通りであり、国内の研究インフラ として民間企業の研究者へ早期に普及する施策を検討しなければならない。 ●検証すべきマイクロアレイ等の実験量が未だ十分ではないので、実験に先立って の予想を含めた検証方策について実験グループとの連携をかなり早い時点から 1-16 意識すべきである。 <その他の意見> ・この段階では評価不可能。 ・機能性 RNA 候補をゲノムから推測するバイオインフォマティックス技術への期 待は大きいが、これまでの研究開発がこの技術の実用化にどの程度迫っているか については判断が困難である。機能性 RNA データベースの構築は実用化の立場 からもより現実性の高い課題と考えられる。 ・データベースの価値はプロジェクト完了後のメンテナンスに掛かっており、普及 と共に運営方法についてもプロジェクト期間中に検討すべきである。 1-17 3)今後に対する提言 機能性 RNA の探索・解析のための有効なバイオインフォマティクス技術の開発 は、本プロジェクトの促進の起爆剤となりうる重要な課題である。現在、まだ分か っていない機能性 RNA について、その構造上の特徴を見出すことから、更なる新 しい機能性 RNA の発見、すべての機能性 RNA の分類、整理が行われることを期 待する。現時点では、世界最高水準にあると思われるが、今後もそのポジションを 維持すべく、新たな発想で開発に取り組むことを期待する。 また、開発したソフトウエアとアルゴリズムおよびデータベースの有用性が具体 的に示されることを期待したい。そのためには、情報グループと機能解析グループ のより緊密な連携が望まれる。 一方、機能性 RNA データベース構築にはかなりの作業量が必要と思われ、デー タベースの充実をどこまで担保するのか、プロジェクト全体での認識を統一すべき である。さらに、バイオインフォマティクス分野での人材育成を期待したい。 <今後に対する提言> ・現在、まだ分かっていない機能性 RNA について、その構造上の特徴を見出すこ とから、更なる新しい機能性 RNA の発見、すべての機能性 RNA の分類、整理 が行われることを期待する。 ・機能性 RNA の探索・解析のための有効なバイオインフォマティックス技術の開 発は、本プロジェクトの促進の起爆剤となりうる重要な課題である。他の研究グ ループとのより緊密な連携を計り、開発したソフトウエアとアルゴリズムおよび データベースの有用性が具体的に示されることを期待したい。また、これらの検 証を経て、真に有効なバイオインフォマティックス技術の開発を実現していただ きたい。 ・情報グループと機能解析グループのより緊密な連携が望まれる。たとえば実験で 得られた結果をもとに、アルゴリズムを改良し、またその結果を実験で検証し、 といった総合交流が望まれるし、機能グループからの希望に基づく情報研究など も可能性を探ってほしい。 ・中間目標に比較して最終目標に向けた努力が一層要求されるが、機能性 RNA デ ータベース構築にはかなりの作業量が必要である。データベースの充実をどこま で担保するのかプロジェクト全体での認識を統一すべきである。 ・現時点では、世界最高水準にあると思われるが、今後もそのポジションを維持す べく、新たな発想によるアルゴリズムの開発にも取り組んでいただきたい。 <その他の意見> ・情報系の中の二つのグループ間の連携ももう少し促進させる努力をしたらよいと 思う。 ・バイオインフォマティクス分野では我が国の人材不足は問題視すべきことであり、 1-18 その意味でも本プロジェクトでのバイオインフォマティクス人材育成への責務 はある。人材育成とその後の活躍の場を意識したテーマ継続を期待したい。 1-19 2.2 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 1)成果に関する評価 微量 RNA を直接解析する RNA マススペクトロメトリー、質量情報のみを用い て RNA の遺伝子領域を迅速に特定する RNA マスフィンガープリント法の開発な ど、このグループの研究開発の成果は目覚ましい。「機能性 RNA を解析するツー ルのプロトタイプを作製する」という本研究開発項目の中間目標を超え、最終目標 にも迫っている。 しかしながら、ややポイントが分散しており、各テーマの有機的な連関、研究の 必然性が不明である。今後は、マイクロアレイなど従来の技術と対比した場合の問 題点も明確にした上での活用法、残された解析課題などを明確にして欲しい。 <肯定的意見> ○実用化に最も近い。着実である。 ○RNA マススペクトロメトリーを開発し、RNA 分子をサブフェムトモルレベルで 解析することに成功したことは、生体から抽出した微量機能性 RNA を高感度で 直接測定できる道を拓いた画期的な成果である。同時に、RNA マススペクトロ メトリーを用いて、piRNA の末端修飾構造の決定や miRNA の直接測定に成功 したことは特筆すべき成果である。また、RNA マスフィンガープリント法を開 発し、質量情報にのみ基づいて RNA の特定に成功したことも大きな成果である。 さらに RNA 自動精製装置の開発、長鎖 RNA 合成法の確立、超高感度(アトモ ルレベル)マイクロアレイ技術の開発など、このグループの研究開発の成果は目 覚ましい。「機能性 RNA を解析するツールのプロトタイプを作製する」という 本研究開発項目の中間目標を超え、「機能性 RNA を高感度、定量的かつ網羅的 に捉える新しい手法の確立と機能性 RNA をゲノムワイドに解析するためのツー ルを確立する」という最終目標にも迫っている。 ○特に RNA 質量分析法の開発では、世界的にみてもオリジナリティが高く、感度 もすでに当初の最終目標を達成して、加速予算を受けるなど、順調に成果をあげ ている。 ○マスを用いたトランスクリプトーム解析は、欧米のシーケンシングを用いた解析 に比べ、メチル化等の詳細情報を得られる点で競争優位を確立する可能性がある。 ○機能性 RNA 解析のための支援技術として MS 技術を駆使した高感度測定は評価 できる。マイクロアレイ解析との比較を意識しつつ MS の長所を活かした取組は 評価できる。 ○微量 RNA を直接的かつ定量的に解析できる RNA マススペクトロメトリー、 RNA の遺伝子領域を迅速に特定する RNA マスフィンガープリント法、RNA 自 動生成装置、RNA 医薬品の開発を目的とした新規化学合成技術の開発など研究 開発は順調に進んでいることが認識できる。 1-20 <問題点・改善すべき点> ●ややポイントが分散しており、各プロジェクトの有機的な連関、研究の必然性が 不明である。又、真の独自性のある研究成果がまだ見当たらない。 ●RNA マススペクトロメトリーはオリジナリティの高い技術であり、RNA 試料を 直接測定するという大きなメリットがあることは理解できるが、マイクロアレイ など従来の技術と対比した場合の問題点も明確にした上で、機能性 RNA を真に 高感度、定量的かつ網羅的に解析するという目的のために、RNA マススペクト ロメトリーをどのように活用するかを明らかにしてほしい。RNA 自動精製装置、 長鎖 RNA 合成法、超高感度マイクロアレイ技術を RNA 解析のための支援技術・ ツールとして実用化するために必要な残された解析課題を明確にしてほしい。 ●(2)-2 のテーマ(in vivo 計測)はすでに見直したということであるが、最終着 地点を見極めつつ、残りの研究期間ではさらに分室や共同研究先を絞って、より 効率を高めていってもよいのではないかと思われる。 ●マイクロアレイ法は、その再現性、精度、定量性の面で Solexa のような網羅的 シーケンシング法に比べ弱点を抱えており、技術的ブレークスルーがない限り、 トランスクリプトーム解析を遂行するには不十分と思われる。 ●たとえば、MS を用いた miRNA の直接解析あるいはダイレクトプロファイリン グでは正常組織と疾患組織の比較で探索可能な範疇は狭い。多くの場合、特にヒ ト組織では前処理に工夫と経験(ノウハウ)が必要であり、その対策が不十分との 印象である。 ●マススペクトロメトリー以外の迅速直接解析法の開発動向にも着目し、場合によ っては技術導入も検討すべき。 <その他の意見> ・なし 1-21 2)実用化の見通しに関する評価 RNA マススペクトロメトリー、RNA マスフィンガープリント法、RNA 自動精 製装置、新規化学合成技術など、実用化が期待できる成果が生まれており、これら の技術が実用化された場合にはその波及効果は大きい。本プロジェクトの中で一番 実用に近い段階にあり、特許なども適切に申請している。 なお、実用化に際しては、開発された技術を他の競合技術と冷静に比較して、優 位性と問題点を明確にし、世界を視野にいれた適切な応用分野を探索してほしい。 ただし、実用化を急ぐ余り、基盤技術確立を疎かにしてはならない。 一方、本プロジェクトは、実際に実用化されてこそ意味があるものであり、常に 最新の臨床の動向を注目して、それを研究に反映させていかなければならないこと は言うまでもない。 <肯定的意見> ○長鎖 RNA の合成技術の進歩は、実用化に近いので評価出来る。 ○RNA マススペクトロメトリー、RNA 自動精製装置、長鎖 RNA 合成法、超高感 度マイクロアレイ技術など、実用化が期待できる成果が生まれており、これらの 技術が実用化された場合にはその波及効果は大きい。 ○RNA の合成基盤技術開発をはじめ、いくつかのテーマで着実に実用化を目指し た努力が進行中である(本プロジェクトの中で一番実用に近い段階にある) 。特 許なども適切に申請している。 ○マスは、欧米で普及し始めた網羅的シーケンシング法の弱点を補強する可能性が 高く、早期の実用化が期待される。 ○往復循環クロマトグラフィーの実用化は期待したい。 ○マススペクトロメトリーを用いた測定は高感度、迅速に行なえることができるこ とから診断への応用は期待できそうだ。また、MPEX 法を用いた機能性 RNA の 高感度検出システムは本年度中に試作チップを頒布予定であり、実用化は十分に 期待できる。RNA 新規合成技術を世界最長記録の合成に成功、研究用試薬の発 売を予定しており、実用化の期待が大きい。また GMP レベルの生産も可能とい う点は将来の可能性が期待される。 <問題点・改善すべき点> ●実用化に際しては、開発された技術を他の競合技術と冷静に比較して、優位性と 問題点を明確にすることが必要である。 ●すでにいろいろ試みられているようなので、蛇足かもしれないが、新しく開発し た方法を既知の方法と比べたときの長所と短所をよく考えて、世界を視野にいれ た適切な応用分野(事業化分野)を探索してほしい。 ●実用化を急ぐ余り、ピーク同定等の基盤技術確立を疎かにしてはならない。日本 はバイオ・ライフサイエンス分野においてもハード作りに長けているが、データ 1-22 処理・利用等のシステム化では欧米の後塵を拝してきた。 ●キャピラリーLC/ナノ ESI-MS の測定感度向上を Transmission window の調整 で実現することのメリット-デメリットを考慮すべきである。 ●RNA をターゲットとしたアレイの実用化については市場ニーズを踏まえた製品 化の必要性を協議すべきである。 ●RNA の新規合成基盤技術についてはどこまでが最終目標か明確にすべきである。 ●マススペクトロメトリーをがんなどの病期の診断に利用しようとする動きはか なり行なわれている。国立がんセンターなどと連携を密にして、臨床検体を利用 するための処理方法、コスト計算、キット化の可能性を模索すべきだろう。 <その他の意見> ・なし 1-23 3)今後に対する提言 本研究開発項目については当初計画をはるかに超える成果が得られている。開発 された一連の技術の優位性を具体的に示し実用化に迫ってほしい。微量 RNA の解 析・計測あるいは精製に関わる技術開発は重要であり、使命感を持った取組を期待 する。 ただし、トランスクリプトーム解析は、マススペクトロメトリー法と他法とを融 合した取組が必要と思われる。この分野のツール開発は急速に進展しているので、 世界的動向を常に注視し、計画当時のテーマを適宜見直すことが必要である。 また、マススペクトロメトリー利用以前の問題(ヒト由来の組織入手方法、組織 保存、前処理等)がボトルネックになる可能性もあるので、以前のプロテオーム研 究でのマススペクトロメトリー利用時の問題点・克服点を十分学ぶ必要がある。 <今後に対する提言> ・この分野の進歩は著しいので、新しい流れに対応して、数年後にはあまり有用で なくなるかもしれない技術については、その世界的動向に常に注視すべきであろ う。 ・本研究開発項目については当初計画をはるかに超える成果が得られている。開発 された一連の技術の優位性を具体的に示し、実用化に迫ってほしい。また、これ らの技術を積極的に活用して研究開発項目3「機能性RNAの機能の解明」の研 究の進展に寄与してもらいたい。 ・評者には、正直言って、ここで開発された技術が将来の世界の RNA 研究や事業 でどの程度の位置を占めるようになるのかの予測は手に余る。しかし、ここは冷 静にその点を点検し、長所をいかした戦略を練ってほしい。 ・トランスクリプトーム解析は、一つの手段で総てをカバーできるほど単純ではな いため、網羅的シーケンシング法等の他の強みとマス法の強みを融合した取組が 必要と思われる。この分野のツール開発は急速に進展しており、計画当時のテー マを適宜見直すことが必要である。 ・微量 RNA の解析・計測あるいは精製に関わる技術開発は重要であり、使命感を 持った取組を期待する。一方、現 RNA の取組はプロテオーム研究開始時の MS 利用状況に類似している。5 年前のプロテオーム研究開始時では高感度 MS の充 実によって創薬への高い貢献が期待されたが、現実には期待ほどの波及効果は未 だに無い。おそらく、MS 利用以前の問題(ヒト由来の組織入手方法、組織保存、 前処理等)が十分解決されていなかったことが、その後のボトルネックになった。 プロテオーム研究での MS 利用問題点・克服点を十分学ぶ必要がある。 ・既に記述したとおり、臨床検体を評価にした研究も視野にいれるべきである。 <その他の意見> ・なし 1-24 2.3 機能性RNAの機能の解明 1)成果に関する評価 機能性RNAの機能については大半が不明であり、先ずは、機能解明のためのイ ンフラつくりが先決である。それぞれ多面的に研究を展開しており、特許取得など も積極的に行っているので、これまでの成果は今後の飛躍に期待を抱かせる。 ただし、全体として大量に得られた新規 miRNA 候補が、真に miRNA として働 いているかどうかの検証およびそれらの標的の同定は、現段階では部分的な成功に とどまっている。また、同定、取得した多数の新規の長鎖 ncRNA の機能解析をど のように行うかは、より困難な課題と思われる。これらの点についてのブレークス ルーを期待したい。 一方、互いに独立な多数の研究グループの集まりのような印象がある。プロジェ クト後半は、前半に蒔いた種の中から、良い芽をだしている研究をいくつか選択し て、実用化・事業化を目指した研究を行うべきではないか。今後は、グループ間の 情報交流から連携研究への発展など、テーマの推進・連携方法について工夫が必要 である。 この分野は競争が激しいので、各国に先駆けて、是非、世界的な新発見につなが る成果を期待したい。 <肯定的意見> ○広瀬リーダーの下での核局在性の non-coding RNA の研究は、そのオリジナリテ ィを評価したい。 ○本研究開発項目については、多くの研究グループにより精力的な研究が進められ ている。特に以下の点が高く評価できる。 1) ヒト間葉系幹細胞で29種の新規 miRNA の同定に成功し、骨芽細胞への 分化誘導抑制活性を示す5種の miRNA を同定、さらにそのうちの1つの miRNA の標的遺伝子候補を明らかにした。これらは、幹細胞の分化制御因子 としての miRNA の役割を示す画期的な成果である。 2) ヒトマスト細胞株から1300種以上の新規 miRNA 候補を実験的および 配列情報解析により取得、さらにヒト癌細胞株に対して増殖抑制活性、アポト ーシス誘導活性を示す miRNA を多数同定した。これらの成果はアレルギー疾 患や癌と miRNA の関係を研究する上での貴重な実験系を提供したと評価でき る。 3) miRNA のノックアウトマウス作製法を確立し、これを使って特定の miRNA についての欠損マウスの表現型(雌における低頻度産子)を観察した。 miRNA の個体レベルでの役割の研究に大きな展望を与える重要な成果である。 4) 癌臨床検体で発現が変動する miRNA や体細胞の初期化に関与する可能性 のある miRNA 候補などを明らかにしつつある。細胞癌化や細胞分化における miRNA の役割を理解するための今後の研究が大いに期待できる。 1-25 5) ヒト cDNA データベースから選別した長鎖 RNA の多くが組織特異的発現 パターンを示すことおよび核内に局在するという重要な発見が行った。また、 核内 RNA の優れたノックダウン系を世界で最初に開発した。これらは長鎖 ncRNA の機能解明の研究に弾みをつける重要な成果である。 6) 間葉系幹細胞の分化に伴い発現が変動する長鎖 ncRNA 複数取得した。ま た、線虫から機能性 ncRNA 候補を取得した。ヒトおよびマウスからセンス− アンチセンス RNA ペアを抽出し、正常組織と腫瘍組織で発現が変動するペア を多数発見した。これらの成果は、ncRNA の新たな機能解明研究の基盤とな ることが期待される。 7) Argonaute ファミリーであるショウジョウバエ生殖組織に特異的に存在す る Piwi, Aub, Ago3 タンパクが新規低分子 piRNA 群と結合していることを見 出し、これらの piRNA はゲノム中の可動性因子に由来し、Piwi などと結合し て生殖組織でゲノム不安定化の抑制に関与していることを明らかにした。また、 piRNA の末端形成機構と生合成経路のモデルを提唱した。これらの成果は、 piRNA の機能および生合成についての世界トップレベルの研究である。 ○miRNA の研究とそれ以外の ncRNA の研究はそれぞれ多面的に研究を展開して おり、特許取得なども積極的に行っている。徳島のグループでは世界をリードす る発見も行われている。 ○機能性 RNA の機能については大半が不明であり、先ずは、機能解明のためのイ ンフラつくりが先決であり、これまでの成果は今後の飛躍に期待を抱かせる。 ○疾患関連の miRNA 探索について幾つかの実績があることは評価したい。特に、 固体レベルでの miRNA の機能解析としてノックアウトマウスを作成して表現 型を見出した意義は高い。但し、安易に不妊治療等への応用が期待することは避 けるべきである。 ○ヒト間葉系幹細胞マスト細胞から合わせて 1300 種以上のマイクロ RNA 候補を 取得したことは将来の医薬品応用、診断への応用につながる可能性があり高く評 価できる。また骨芽細胞への分化を抑制するマイクロ RNA を同定するなど機能 解析の面でも実績を残している。さらに核内のノンコーディング RNA 分子を抑 制できる技術の開発は医薬品としての開発も期待される。 <問題点・改善すべき点> ●全体として大量に得られた新規 miRNA 候補が、真に miRNA として働いている かどうかの検証およびそれらの標的の同定は、現段階では部分的な成功にとどま っている。また、同定、取得した多数の新規の長鎖 ncRNA の機能解析をどのよ うに行うかは、より困難な課題と思われる。さらにノックダウンによる表現型が 観察された場合でも、そこからいかにして作用機構の解明に迫るかが問われてい る。これらの点についてのブレークスルーを期待したい。ヒト間葉系幹細胞にお ける miRNA や標的遺伝子候補の探索など、本研究開発項目で使用された予測シ 1-26 ステムと本プロジェクトの研究開発項目1で開発されたシステムとの比較が望 まれる。 ●機能解明研究なので、ある程度は仕方がないとは思うが、科研費の特定領域研究 のように、互いに独立な多数の研究グループの集まりのような印象がある。 NEDO としてのポリシーの問題になるが、プロジェクト後半は、前半に蒔いた 種の中から、良い芽をだしている研究をいくつか選択して、実用化・事業化を目 指した研究を行うべきではないか。現時点で、出版された論文が比較的少ないよ うに見えるのも気になる。 ●本プロジェクトのインフラがかなり充実してきたので、今後はグループ間の情報 交流から連携研究へ発展することを期待している。 徳島大学塩見先生の研究には期待されるものが多いが、機能性 RNA の機能解析 グループ内と共に、他のグループとの連携が見出し難く、テーマの推進・連携 方法について工夫が必要である。 ●再現性良く、広く応用可能な機能解析を目指すという点で、pre-miRNA の導入 方法に一考を要す。 ●核内のノンコーディング RNA 分子を抑制できる技術は核内に直接投入する方法 を用いており、将来の医薬品開発にはそのままではできない。 <その他の意見> ・この分野は競争が激しいので、各国に先駆けて、是非、世界的な新発見につなが る成果を期待したい。 1-27 2)実用化の見通しについての評価 本研究開発項目の多くの課題は、基礎的、基盤的な研究であるため、必ずしも実 用化と直接結びつけて評価できない。ただ、予想以上に多数の miRNA を取得し、 特許化するなど、実用化に向けての基盤は整いつつあり、数多くのマイクロ RNA、 ノンコーディング RNA の単離、機能解析技術の開発など医薬品、診断薬の開発に もつながりうる高い成果であると評価できる。現在のところ、実用化については未 知数であり、未知の機能をもつノンコーディング RNA の解析から、日本独自の技 術の開発と実用化に期待する。 創薬への貢献を明確化するためには、産学官連携として産が取組む姿勢が重要で あり、役割分担として産に貢献する基盤的な機能解析に注力すべきである。 また、特許出願は、機能同定が中途半端であれば特許成立の可能性は低く、知財 化を急ぐよりは、機能性 RNA の機能解明のためのウェット基盤技術強化に力を入 れるべきと思われる。特許戦略は基本としては基盤技術に絞った知的財産化に専念 すべきである。 <肯定的意見> ○現在のところ、実用化については未知数である。しかし、未知の機能をもつ(ら しい)ncRNA の解析から、日本独自の技術の開発と実用化に期待する。 ○予想以上に多数の miRNA を取得し、特許化するなど、実用化に向けての基盤は 整いつつある。 ○飛躍のための基礎技術が着実に構築されており、実用化を議論するのは時期尚早 である。 ○ノックアウトの意義、動物の生存率等には注意が必要であるが、対応するノック アウトマウスを作製できれば、疾患関連の新規 miRNA の機能解析として意義は ある。 ○数多くのマイクロ RNA、ノンコーディング RNA の単離、機能解析技術の開発 は医薬品、診断薬の開発にもつながりうる高い成果であると評価できる。 <問題点・改善すべき点> ●中間目標が主に基盤整備に向けられていたので、その意味では予定通りに研究が 進んでいるといえるかもしれないが、残り2年度でどこまで実用化できそうかと いうと、若干不安が残る(評者はその道の専門家ではないので、勘違いかもしれ ないが)。特許も実用化の可能性を強く示唆するというよりは、とりあえず幅広 く押さえようというもののように見える。 ●miRNA の特許出願を行っているが、機能同定が中途半端なまま出願したのであ れば、特許成立の可能性は低く、知財化の芽を摘むことに成りかねない。知財化 を急ぐよりは、機能性 RNA の機能解明のためのウェット基盤技術強化に力を入 れるべきと愚考する。特に、バイオインフォマティクスグループが楽しみな機能 1-28 性 RNA 候補を抽出しており、連携研究に弾みがつくことが期待される。 ●マスト細胞関連、癌関連に絞ったとしても創薬への貢献を明確化するのは大変な 作業である。産学官連携として産が取組む姿勢が重要であり、役割分担として産 に貢献する基盤的な機能解析に注力すべきである。そのためにも、本気で産が取 組める課題を整理しニーズに即した研究展開が重要である。 ●現在の技術だけでは、診断はともかく、治療薬としての開発は無理。DDS を得 意とする企業など、別の技術を持つ企業との連携が不可欠であると思われる。 <その他の意見> ・本研究開発項目の多くの課題は、基礎的、基盤的な研究であるため、必ずしも実 用化と直接結びつけて評価できない。癌臨床検体における miRNA の発現プロフ ァイルの解析などは、展開によっては、診断マーカーとして実用化できる可能性 はあるが、現段階では実用化を議論できる段階には至っていない。 1-29 3)今後に対する提言 本研究開発項目については得られた成果は、再生医療、疾患の診断、創薬、さら には医療分野以外のバイオ産業に波及効果をもたらすことが期待できるが、当面は 医薬応用を見据えた機能性 RNA プロジェクトとして先端研究を実施し、性急な実 用化にとらわれずそれぞれの研究をさらに進めていただきたい。ただし、本プロジ ェクトの成果を最大限に活用するためには、機能性 RNA に関する知財戦略と実用 化研究開発戦略を本プロジェクト推進中に企画すべきである。 世界的に激しい競争が行われている中、より積極的に支援すべきテーマであり、 期待がかかっている機能解析グループの目標に向けて、バイオインフォマティクス グループとのより積極的な協力など、実用化への戦略をあらためて練り直すことを 希望する。 <今後に対する提言> ・より積極的に支援すべき。 ・本研究開発項目については得られた成果は、再生医療、疾患の診断、創薬、さら には医療分野以外のバイオ産業に波及効果をもたらすことが期待できるが、当面 は、性急な実用化にとらわれずそれぞれの研究をさらに進めていただきたい。 ・世界的に激しい競争が行われている中、大変だろうとは思うが、実用化などの出 口では、機能解析グループに最も大きな期待がかかっているので、その目標に向 けて、戦線を整理し、実用化への戦略をあらためて練り直してはどうだろうか。 バイオインフォマティクスグループとのより積極的な協力も力になるかもしれ ない。 ・本プロジェクトの成果を最大限に活用するためには、機能性 RNA に関する知財 戦略と実用化研究開発戦略を本プロジェクト推進中に企画すべきである。また、 創薬・診断等の実用化を視野に入れた機能性 RNA 研究は本プロジェクトの後継、 或いは後継の後継と位置付けるべきであり、安易な成果創出は基盤強化、研究開 発・技術力の向上には繋がらない。 ・「機能性RNAの機能の解明」はプロジェクト内の連携が如実に成果として現れ る分野である。医薬応用への早い展開を目指すという姿勢は重要であるが、医薬 応用を見据えた機能性 RNA プロジェクトとして先端研究を実施してほしい。 ・既に記述したが、医薬品としての用途を目指し、積極的に他社と連携していただ きたい。 <その他の意見> ・特許化は重要であるが、特許戦略は基本として産の役割分担と割り切って、プロ ジェクトとしては基盤技術に絞った知的財産化に専念すべきである。また、特許 化は国際出願が大前提であり、それに値しない知的財産を特許化して特許件数を 成果とすることは避けるべきである。 1-30 3.評点結果 3.1 プロジェクト全体 3.0 1.事業の位置付け・必要性 2.研究開発マネジメント 2.2 3.研究開発成果 2.5 4.実用化の見通し 2.2 0.0 1.0 2.0 3.0 平均値 評価項目 平均値 素点(注) 1.事業の位置づけ・必要性 3.0 A A A A A A 2.研究開発マネジメント 2.2 A B B B B B 3.研究開発成果 2.5 A A B A B B 2.2 B A B B B B (注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。 4.実用化の見通し <判定基準> (1)事業の位置付け・必要性について (3)研究開発成果について ・非常に重要 ・重要 ・概ね妥当 ・妥当性がない、又は失われた ・非常によい ・よい ・概ね妥当 ・妥当とはいえない →A →B →C →D (2)研究開発マネジメントについて ・非常によい ・よい ・概ね適切 ・適切とはいえない →A →B →C →D (4)実用化の見通しについて →A →B →C →D ・明確に実現可能なプランあり ・実現可能なプランあり ・概ね実現可能なプランあり ・見通しが不明 1-31 →A →B →C →D 3.2 個別テーマ 1.機能性RNAの探索・解析のための バイオインフォマティクス技術の開発 (1)研究開発成果 (2)実用化の見通し 2.3 1.8 2.機能性RNA解析のための支援技 術・ツールの開発 (1)研究開発成果 (2)実用化の見通し 2.5 2.3 2.7 3.機能性RNAの機能の解明 (1)研究開発成果 1.5 (2)実用化の見通し 0.0 個別テーマ 1.0 平均値 平均値 2.0 3.0 素点(注) 1.機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 B A B B 1.8 B C B 2.機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 B B B (1)研究開発成果 2.3 A B (2)実用化の見通し (1)研究開発成果 2.5 B A A A B B (2)実用化の見通し 2.3 B A A B B B 2.7 A A B A B A 3.機能性RNAの機能の解明 (1)研究開発成果 (2)実用化の見通し 1.5 B C B B C C (注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。 <判定基準> (1)研究開発成果について ・非常によい ・よい ・概ね妥当 ・妥当とはいえない (2)実用化の見通しについて →A →B →C →D ・明確に実現可能なプランあり ・実現可能なプランあり ・概ね実現可能なプランあり ・見通しが不明 1-32 →A →B →C →D 第2章 評価対象プロジェクト 1.事業原簿 次ページに当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿を示す。 2-1 「機能性RNAプロジェクト」 事業原簿(公開) 担当部 新エネルギー・産業技術総合開発機構 バイオテクノロジー・医療技術開発部 ― 目次 ― 概要 プログラム基本計画 健康安心プログラム プロジェクト基本計画 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 概要 1 プログラム基本計画 1 プログラム基本計画 1 プロジェクト基本計画 1 プロジェクト用語集 ・・・・・・ 用語 1 Ⅰ. 事業の位置付け・必要性について 1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性 1.1 NEDO の関与することの意義 1.2 実施の効果(費用対効果) 2.事業の背景・目的・位置付け ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 1 1 1 1 2 Ⅱ.研究開発マネージメントについて 1.事業の目標 2.事業の計画内容 2.1 研究開発の内容 2.2 研究開発の実施体制 2.3 研究の運営管理 3.情勢変化への対応 4.評価に関する事項 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 3 3 3 3 4 5 7 9 Ⅲ.研究開発の成果について 1.事業全体の成果 2.研究開発項目毎の成果 研究開発項目① 研究開発項目② 研究開発項目③ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 10 10 14 14 28 50 Ⅳ.実用化の見通しについて ・・・・・・ 70 (別紙)論文、特許、報道、講演 1.論文 (1)査読のある原著論文 (2)総説・解説・著書 2.特許 3.報道 4.講演・学会発表 5.その他 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ 成果リスト 1 成果リスト 8 成果リスト 12 成果リスト 14 成果リスト 15 成果リスト 26 概 要 作成日 プログラム名 健康安心プログラム プロジェクト名 機能性 RNA プロジェクト 担当推進部/担当者 バイオテクノロジー・医療技術開発部/主査 平成 19 年 6 月 18 日 プロジェクト番号 山崎 P06011 晶次郎 0.事業の概要 本プロジェクトでは、バイオインフォマティクス(BI)の活用による機能性 RNA を推定する技術 の開発、機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発、及び機能性 RNA の機能を 解析することにより、本研究分野における我が国の優位性の確立を目指す。また、本プロ ジェクトにおける成果を素早く特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新産 業の創出に貢献する。 Ⅰ.事業の位置付け・必要 生体における機能性 RNA の機能を解析し、その機能の抑制や促進による生体応答を総合 性について 的に把握する基盤研究をさらに強力に進めることは、再生医療や疾患治療等の実現に資 する重要な課題であり、「健康安心プログラム」の一環として本プロジェクトを実施する。この ように基礎的・基盤的研究であるので、NEDO の関与が必要である。 Ⅱ.研究開発マネージメントについて 事業の目標 事業の計画内容 機能性 RNA 候補をゲノム上から推測する BI 技術を確立する。また、機能性 RNA を高感 度、定量的かつ網羅的に捉える新しい方法、手法の確立と、機能性 RNA をゲノムワイドに 解析するためのツールを確立する。これらのツールを活用して、機能性 RNA の機能解明に 取り組む。また、ヒト疾患に関連する機能性 RNA 及び発生・分化などをはじめ細胞機能に 重要な働きを示す数十個の機能性 RNA 候補の機能解析を行い、医薬品開発や再生医療 等に有用な基盤知見の取得や、基盤技術の構築を目指す。 主な実施事項 H17fy H18fy H19fy BI 活用による機能性 RNA の推定 支援技術・ツール開発 機能性 RNA の機能解析 調査研究 成果とりまとめ 会計・勘定 開発予算 (会計・勘定別に 事業費の実績額 を記載) (単位:百万円) 開発体制 一般会計 H17fy H18fy H19fy 総額 604 899 849 2352 604 899 849 2352 特別会計 (電多・高度化・石油の別) 総予算額 経産省担当原課 産業技術環境局研究開発課及び製造産業局生物化学産 業課 独立行政法人 産業技術総合研究所 生物情報解析研究セ ンター センター長 渡辺 公綱 プロジェクトリーダー 委託先(*委託先が管理 法人の場合は参加企業数 も記載) 社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム (参加企業:11 社): インテックW&G㈱、㈱島津製作所、 ㈱ノバスジーン、㈱DNAチップ研究所、日本新薬㈱、ヤマ サ醤油㈱、協和発酵㈱、ジェノダイブファーマ㈱、東レ㈱、㈱ 日立製作所、大塚製薬㈱ (共同実施先): 産業技術総合研究所、理化学研究所、東 京大学、北海道大学、北陸先端大、山形大学、大阪大学、 岡山大学、京都大学、千葉大学、東京工業大学、弘前大 学、徳島大学、慶應義塾大学、東海大学、みずほ情報総研 ㈱、㈱三菱総合研究所 概要 1 情勢変化への対応 Ⅲ.研究開発成果について 研究開始から約1年半が経過した、平成19年1月23日と24日の2日間にわたり、全分室・ 共同実施先に対して「研究進捗状況ヒアリング」を行い、実施体制の見直しを行った。テー マ③-1-(2)「尋常性乾癬に関わる RNA の機能解析」については、当初予定していた臨 床検体の入手ができておらず、今後の入手の目処も立たないため、平成18年度をもって本 テーマは中止することとした。この結果、ジェノダイブファーマ株式会社(分室10)と東海大 学(共同実施先)を研究実施体制から外した。また、テーマ②-2「機能性 RNA を in vivo で 計測するシステムの開発」については、標識した RNA を細胞内に取り込ませる技術の確立 に手間取り、研究が大幅に遅れてしまった。当面は、本テーマは中断することとし、計画通 り進捗しているテーマ②-3「機能性 RNA の高感度検出システムの開発」の方に研究資源 を集中することとした。その他のテーマについても、評価結果を平成19年度の予算配分に 反映させた。 一方、テーマ②-1「RNA のマススペクトロメトリー(質量分析技術)の開発」は、本プロジェ クトを支える重要なツール開発であり、世界的に見ても日本発のオリジナルな技術である。 実施計画をはるかに上回るペースで開発が進んでいることから、NEDO の「加速財源制度」 を活用し、平成19年4月にフーリエ変換型質量分析装置を導入した。本装置は、2005 年に サーモエレクトロン社が発売したもので、質量分解能が飛躍的に高い。本プロジェクトが築 き上げた優位性を確保するために、いち早く本装置を導入することとした。 本プロジェクトでは、以下の3つの研究開発項目について推進し、それぞれ目覚ましい成果 を導いた。概要は以下の通りである。 研究開発項目①「機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開 発」 ○新規機能性 RNA 発見に必要な、二次構造を考慮した RNA 配列の比較・整列について 数々の新規手法を開発し、精度、速度で世界最高性能を達成した。 ○機能性 RNA の機能予測に必要な、配列群の共通二次構造予測を高精度に行う手法と、 二次構造モチーフを配列群から抽出するグラフ理論を用いた新規アルゴリズムを開発し た。 ○ゲノム配列中からマイクロ RNA を従来法よりも精度良く抽出する手法を開発し、330 個の 新規マイクロ RNA 候補を発見した。 ○ヒトゲノム中のシンテニー領域、ヒトゲノム同士の比較から得られる相同領域等から、二 次構造を考慮した配列解析技術の適用によって 20 万箇所以上の機能性 RNA 候補を抽 出し、有望な 1 万領域以上についてマイクロアレイ発現解析を開始した。 ○新規機能性 RNA 発見のプラットホームとして、独自の情報解析結果も含めた機能性 RNA データベースを開発した。 研究開発項目②「機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発」 ○RNA マススペクトロメトリーの開発に成功し、サブフェムトモルの RNA 分子を直接解析す ることに成功した。プロジェクト最終目標値を大幅に上回る成果である。この手法を用い て、piRNA の末端修飾構造を決定した。また、miRNA の直接測定とプロファイリングに成 功した。 ○RNA マスフィンガープリント法の開発に成功し、RNA マススペクトロメトリーで得られた RNA 断片の質量情報のみを用いて、ヒトおよびマウスゲノムの表裏(6 ギガ塩基)から RNA の遺伝子領域を迅速に特定することに成功した。 ○RNA の微量解析を支援するツールとして、RNA 自動精製装置(往復循環クロマトグラ フィー)の開発に成功した。 ○RNA 医薬品の開発を目的とした新規化学合成技術(特許出願済)の開発に成功した。こ の手法により、長鎖 RNA(110 塩基)の合成に成功し、生物活性を示すことができた。高品 質かつ安価な RNA を供給するシステムが整いつつある。 ○微量なマイクロ RNA の発現解析を高感度で行うため、Photo-DEAN 法および、MPEX 法 の開発を行い、数アトモルのマイクロ RNA を定量的に解析することに成功した。 研究開発項目③「機能性 RNA の機能解析」 ○ヒト間葉系幹細胞、マスト細胞から 1500 種以上の新規 miRNA を同定し特許出願した。 幹細胞分化やマスト細胞の脱顆粒、癌細胞増殖抑制に関わる生理活性を有する miRNA とその標的 mRNA を複数個発見した。miRNA のノックアウトマウスを作製し、miRNA が脳 下垂体機能である排卵に関与することを初めて示した。 ○H-InvDB から機能性 ncRNA 候補を多面的に選別し、60種以上の組織特異的 ncRNA、 免疫抗原提示やボディーパターニング、筋萎縮調節、間葉系幹細胞分化に関わる可能性 概要 2 のある機能性 RNA 候補を複数同定した。また細胞内局在を解析し、核内に局在する ncRNA を40種以上発見した。さらに核内 RNA をノックダウンする新手法を開発し機能解 析系の整備を行った。モデル生物線虫でも核内に局在する低分子 RNA を複数発見し、遺 伝子破壊株を作製した。 ○ショウジョウバエの生殖細胞特異的 Piwi, Aub, Ago3 が一群の rasiRNA と結合しているこ とを発見した。このなかから精子形成や卵形成に重要な Stellate や Vase mRNA を制御す る rasiRNA を発見した。また rasiRNA の生合成経路のモデルを提唱し、5’末端形成機 構、3’末端のメチル化酵素を明らかにした。 ○ヒトとマウスから 3000 を超えるセンス-アンチセンス RNA ペアを抽出し、これらの発現を 解析できる新規マイクロアレイを開発した。これを用いて正常組織と腫瘍部でセンス-アン チセンスペアの比率が著しく変動するペアを 60 個以上発見した。 投稿論文 「査読付き」58件、「その他」42件 特許 Ⅳ.実用化の見通しについ て 「出願済」13件、「登録」0件、「実施」0件 (うち国際出願2件) 細胞分化誘導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持った機 能性 RNA を同定し、成果をすばやく特許化することにより、再生医療や RNA 医療、疾患診 断、疾患治療等への応用を目指す。同時に、機能性 RNA を解析する手法及びツールの開 発により、本分野における我が国の優位性の確立を目指す。 なお、解析ツールの開発においては、すでに早期の実用化が期待される成果が出てきてい る。東京大学のグループでは、RNA マスフィンガープリント法および往復循環クロマトグラ フィー法を開発し特許出願した。当面はプロジェクト内で、優位性をもって RNA の機能解析 研究を進めるが、時機をみて、国内外の企業に特許を実施許諾する予定である。DNAチッ プ研究所では、アトモル(atto mole)レベルという高い検出感度を持つマイクロアレイ技術の 開発に成功しており、プロジェクト期間内の製品化を目指している。日本新薬のグループで は、高品質の RNA を安価に化学合成する方法を確立し、今年度中に「研究用試薬」として の製造販売を開始する計画である。将来的には、RNA 医薬の GMP 製造における「グロー バルスタンダード」を目指している。 さらに、本プロジェクトの成果は、医療分野以外のバイオ産業(農林水畜産業、発酵工業、 環境分野、食品分野、など)においても、大きな波及効果をもたらすと期待される。 Ⅴ.評価に関する事項 Ⅵ.基本計画に関する事項 事前評価 中間評価以降 H19 年度中間評価実施予定 作成時期 平成 18 年 3 月作成 変更履歴 なし 概要 3 プログラム基 本 計 画 平成17・03・25産局第1号 平成17年3月31日 健康安心プログラム基本計画 1.目的 今後、世界に類を見ない少子高齢社会を迎える我が国において、国民が健康で安心して暮ら せる社会を実現するため、遺伝子やタンパク質、糖鎖、RNA等の生体分子の機能・構造・ ネットワーク解析等を行うとともに、それら研究を強力に推進するためのバイオツールやバイ オインフォマティクスの開発、成果を高度に活用するためのデータベース整備や先端技術を応 用した高度医療機器開発等を行う。これらにより、テーラーメイド医療・予防医療・再生医療 の実現や画期的な新薬の開発、健康維持・増進に係る新しい産業の創出につなげる。さらに、 医療機器、福祉機器等の開発・実用化を促進し「健康寿命の延伸」を実現する。 一方、こうした研究開発プロジェクトと平行して、ゲノム研究等の実施やその産業化に伴う 安全性及び法的・社会的・倫理的問題について研究等を行い、その成果を必要な措置に活用す ることにより、安全面・倫理面での適切な対応を図る。 2.政策的位置付け ○科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定) 科学技術の戦略的重点化のため、ライフサイエンス、情報通信、環境及びナノテクノロ ジー・材料の4分野に対して特に重点をおき、国家的・社会的課題に対応した研究開発を行う こととしている。また、異分野の融合や新たな科学技術の発展により、小規模ながらも将来著 しい発展が予想される新領域が出現した場合は、機動性をもって的確に対応することとしてい る。 ○バイオテクノロジー戦略大綱(平成14年12月BT戦略会議取りまとめ)及び産業発掘戦 略-技術革新(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月閣議 決定)に基づき平成14年12月取りまとめ) 健康・バイオテクノロジー分野における3つの戦略目標(「研究開発の圧倒的充実」、「産 業プロセスの抜本的強化」及び「国民理解の徹底的浸透」)に対応している。 ○経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(平成16年6月閣議決定) ・第1部5.「持続可能な安全・安心」の確立のうち(3)健康・介護予防の推進に該当。 ・第2部3.(1)「新産業創造戦略」の推進(7つの戦略産業分野と地域再生の産業群の育成) のうち「「新産業創造戦略」に示されたアクション・プログラムを踏まえ、我が国の将来の発 展を支える燃料電池等7つの分野(健康・福祉・機器・サービスに対応)を育成するため、研 究開発、人材育成、規制改革、環境整備等を重点的に推進する。」に該当。 ・第3部2.(3)予算配分の重点化・効率化(重点化の考え方)「活力ある社会・経済の実現に 向けた重点4分野」のうちの「人間力の向上・発揮-科学技術」に該当。また、(4)⑤「重点4 分野(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料)への更なる重点化」に 該当。 3.目標 健康で安心して暮らせる社会を実現するため、高度医療機器や高齢者等の健康で積極的な社 会参加を支援する機器等の開発、疾患関連遺伝子やタンパク質等の生体分子の機能・構造等の 解明に基づくテーラーメイド医療・予防医療・再生医療の実現に寄与する。さらに、バイオテ クノロジーの応用によって幅広い分野における産業の創出に繋げ、画期的な治療を可能とする 新薬等の開発に寄与する。これらにより、2010年までに健康で安心して暮らせる質の高い 生活を実現するとともに、「健康寿命の延伸」を実現する。また、2010年における健康安 心分野のバイオテクノロジー関連市場の市場規模16兆円の実現に寄与する。 4.研究開発内容 プログラム基本計画 1 【プロジェクト】 Ⅰ.タンパク質機能・構造解析 (1)タンパク質機能解析 ① 概要 テーラーメイド医療実現の為の画期的な創薬方法となるゲノム創薬に向けて、我が国が 競争優位を持つヒト完全長cDNAを活用した遺伝子やタンパク質の機能解析を行う。 ②技術目標及び達成時期 2004年度までに我が国が競争優位をもつヒト完全長cDNAクローン3万個及び、 その獲得のためにこれまで蓄積してきたcDNAクローンから得られるスプライシング・ バリアント(Splicing Variant)等をリソースとして可能な限りの遺伝子・タンパク質の 機能解析を目指し、タンパク質の発現基盤の整備、網羅的な発現頻度情報の取得、及び機 能解析に係る技術開発や開発技術を用いた生物情報の取得を実施する。 ③ 研究開発期間 2000年度~2002年度 ④ 中間・事後評価の実施時期 ミレニアムプロジェクトの評価・助言会議において毎年度評価を実施。 なお、本事業の成果全般については、2003年度より「タンパク質機能解析・活用プ ロジェクト(フォーカス21)」において活用されることとなるため、本事業の事後評 価は当該事業の事後評価において併せて実施。 ⑤ 実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (2)タンパク質機能解析・活用プロジェクト(フォーカス21)(運営費交付金) ①概要 タンパク質の網羅的発現、発現頻度や相互作用解析等によるタンパク質の機能解析を行 い、機能情報データ等の蓄積による知的基盤を整備する。また、網羅的発現系から産生す るヒトタンパク質の利用、発現頻度・相互作用情報及び細胞レベルでの機能等の解析シス テムの開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、我が国が競争優位をもつヒト完全長cDNAクローン3万個及び、 その獲得のためにこれまで蓄積してきたcDNAクローンから得られるスプライシング・ バリアント(Splicing Variant)1万個等をリソースとして可能な限りの遺伝子・タンパ ク質の機能解析を目指し、タンパク質の発現基盤の整備、発現頻度・相互作用情報等の取 得及びそれらに係る技術開発を実施する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (3)タンパク質発現・相互作用解析技術開発 ① 概要 生体内で実際の生命活動の基本となるタンパク質の発現や相互作用を解析するために、 我が国が有する超微細加工技術や光計測技術を活用することにより、タンパク質の発現を 一度に迅速に分離し解析できるチップ(タンパク質チップ)や細胞内のタンパク質の発現 等を高感度で検出することが可能な手法等のツール開発を行う。 ② 技術目標及び達成時期 2004年度までにタンパク質チップを開発し、それにより、生体内のタンパク質を分 類、同定することを可能とする。 プログラム基本計画 2 ③ 研究開発期間 1999年度~2002年度 ④ 中間・事後評価の実施時期 中間評価を2002年度に実施。 なお、本事業の成果全般については、2003年度より「タンパク質相互作用解析ナノ バイオチッププロジェクト(フォーカス21)」において活用されることとなるため、本 事業の事後評価は当該事業の事後評価において併せて実施。 ⑤ 実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (4)生体高分子立体構造情報解析(運営費交付金) ①概要 膜タンパク質を主たるターゲットとして、解析すべき膜タンパク質等の試料取得手法の 確立、及び電子顕微鏡、X線及びNMR(核磁気共鳴装置)を用いた構造解析技術を確立 する。併せて高精度モデリング技術、シミュレーション技術の開発を進め、高度情報技術 を用いて精緻な構造情報の解析手法を確立する。また、これらの技術等を用いて、膜タン パク質やその複合体、さらにヒト完全長cDNAクローンから得られる有用タンパク質の 構造解析を実施する。 ②技術目標及び達成時期 2006年度までに、従来構造決定が困難であった膜タンパク質に係る構造解析手法を 確立するとともに、数個の膜タンパク質及びその複合体の構造決定を実施する。 ③研究開発期間 2002年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2004年度に、事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅱ.RNA機能解析 (5)機能性RNAプロジェクト ①概要 近年の研究成果により、タンパク質の合成に関与する既知のRNAとは異なり、発生分 化等の重要な生命現象に関与する機能性RNAの存在が明らかになってきており、世界中 の注目を集めている。機能性RNAは再生医療やRNA医薬等への応用化にもつながるこ とが期待されていることから、機能性RNA解析のための新規ツールを開発し、機能解析 を行うことにより、本分野における我が国の優位性を確立する。 ②技術目標及び達成時期 2009年度までに、機能性RNAの候補となるRNAをゲノム配列上から探索するバ イオインフォマティクス技術の開発や、機能性RNAを解析するための支援機器やツール の開発を行い、機能性RNAの機能解析を行う。 ③研究開発期間 2005年度~2009年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2007年度に、事後評価を2010年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅲ.糖鎖機能・構造解析 (6) 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリー構築 ①概要 プログラム基本計画 3 生体内で作用しているタンパク質の約半数は糖鎖が結合した糖タンパク質であるとい われており、糖鎖は抗原抗体反応やガン化のメカニズムなどで重要な機能を担っている。 このタンパク質に高度で複雑な機能を付与する糖鎖の合成に必要なヒト糖鎖合成関連遺 伝子を網羅的にクローニングするとともに、機能解析を行うことによって糖鎖機能利用 技術の開発を進める上での基盤となるデータベースを構築する。 ②技術目標及び達成時期 2003年度までに約300個の糖鎖合成関連遺伝子をクローニングし、その機能解析 を行うとともに、利用技術開発に資する糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーおよびその機能 データベースを完成させる。 ③ 研究開発期間 2000年度~2002年度 ④ 事後評価の実施時期 本事業の成果全般については、「糖鎖エンジニアリングプロジェクト(フォーカス2 1)」において活用されることとなるため、本事業の事後評価は当該事業の事後評価にお いて併せて実施。 ⑤ 実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (7)糖鎖エンジニアリングプロジェクト(フォーカス21)(運営費交付金) ①概要 我が国が強みを持つ糖鎖工学分野において更なる優位性を保つため、(a)糖鎖合成関連 遺伝子の取得を着実に進め、(b)グリコクラスターを材料とする新たな機能性複合材料創 製技術等の開発を行うとともに、(c)糖鎖自動合成装置及び糖鎖構造解析システムを世界 に先駆けて実用化する。 ②技術目標及び達成時期 2003年度までに(a)糖鎖合成関連遺伝子を網羅的に取得するとともに、(b)糖鎖複合 体等を材料とする新たな機能性複合材料創製技術等の開発を行う。また、2005年度ま でに、(c)糖鎖機能の産業応用研究に必要な、糖鎖自動合成装置及び糖鎖構造解析システム を実用化する。 ③研究開発期間 2002年度~2005年度。 (a)2003年度。 (b)2003年度。 (c)2002年度~2005年度。 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2004年度((a)及び(b))、及び2006年度((c))に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅳ.遺伝子ネットワーク解析 (8)モデル細胞を用いた遺伝子機能等解析技術開発(運営費交付金) ⅰ)研究用モデル細胞の創製技術開発 ①概要 医薬品開発における安全性や薬理評価の確実性の向上等、創薬に向けた研究開発を加速 するためには、ヒト生体内における様々な反応や遺伝子の機能をより高い精度で解析する ツールの開発が重要である。そのため、人体の組織や疾病等の様々なヒトモデル細胞株を 創製するための基盤となる技術開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 2009年度までに、創薬等の研究開発に資する研究用細胞の創製技術を確立し、複数 種の研究用のヒトモデル細胞を創製する。 プログラム基本計画 4 ③研究開発期間 2005年度~2009年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2007年度に、事後評価を2010年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 ⅱ)細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発 ①概要 世界的にゲノム創薬が競争激化しているが、創薬のターゲットとなる遺伝子を絞り込み いち早く特許を押さえてしまうことが産業競争力強化のためには重要である。このために は、生体内で非常に複雑に制御されている遺伝子ネットワークシステムを高速・高感度に 解析するシステムを開発し、創薬のターゲットの効率的な絞り込みを行うことが必要であ る。具体的には、多数の細胞に同時に異なる遺伝子を高効率で導入することにより、複数 の遺伝子発現等の時系列計測を行い、得られる種々の細胞応答データから遺伝子ネット ワークを解析する細胞アレイ技術を確立し、疾患関連遺伝子等、特定の創薬ターゲットの 同定に有用な汎用性の高い解析ツールの開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 2009年度までに、細胞イベント(遺伝子発現、たんぱく質の細胞内局在性等)を測 定するための網羅的なレポーターシステムならびに測定装置を新規に開発し、得られる データから遺伝子ネットワークの解析システムを確立する。 ③研究開発期間 2005年度~2009年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2007年度に、事後評価を2010年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (9)細胞内ネットワークのダイナミズム解析技術開発(運営費交付金) ①概要 ポストゲノムシーケンス研究の時代を迎え生命活動をより深く知るために、時々刻々と 変化する細胞内での各種生体分子の時間的・空間的な挙動を解析するためのツールを開発 し、情報伝達や代謝、発生過程等のダイナミズムを解析し、細胞内ネットワークの解明を 図る。 ②技術目標及び達成時期 2006年度までに、これまで解析が不可能であった複数生体分子の時間的・空間的な 動的挙動を同時解析する手法・装置を開発するとともに、開発した計測装置を用いて細胞 内ネットワークに関する有意義なデータを取得する。 ③研究開発期間 2002年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2004年度に、事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅴ.バイオインフォマティクス (10)バイオインフォマティクス知的基盤整備 ①概要 ヒトゲノム解読の進展など、バイオ関連の情報の著しい増大を背景に、そのデータを有 効活用して新たな研究フロンティアの開拓や産業化を推進することが重要である。このた プログラム基本計画 5 め、各種データベースやソフトウェア資産を対象に、基礎研究や産業化に活かすための情 報基盤を整備する。具体的には、国内外に分散するデータベースや、ミレニアム・プロ ジェクトの成果、ヒトゲノム情報といった膨大なデータを、お互いに関連付けるアノテー ション(付加情報の追加)をした上で統合的にまとめ、産業/研究用に効果的かつ効率的 に利用することのできるような検索・解析機能等を備えた統合データベースの構築を行う。 ②技術目標及び達成時期 2004年度までに、ミレニアム・プロジェクトの成果及び国内外の主要データベース を統合的に活用できるネットワークシステムを構築する。さらに、データベース間の相互 運用性を確保するとともに、独自の付加価値情報やソフトウェア機能の充実により、容易 にゲノム配列等の基本情報からタンパク質立体構造のデータや、遺伝子発現情報、疾患を 含む遺伝子機能の情報を一括して検索・解析できるシステムを完成させる。 ③研究開発期間 2000年度~2004年度 ④中間・事後評価の実施時期 ミレニアム・ゲノム・プロジェクトの評価助言会議にて、評価を毎年度実施し、また、 中間評価を2002年度に実施。事後評価を2005年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (11)ゲノム情報統合プロジェクト ①概要 ヒトゲノム情報等、バイオテクノロジーに関連する種々の情報が世界中に膨大に存在す るが、その情報を有効に活用出来る情報基盤を整備することは、バイオ分野における産業 化を促進するために非常に重要である。平成12年度より、バイオインフォマティクス知 的基盤整備において、ヒト完全長cDNAの遺伝子配列をベースに、有用な情報を付加し たデータベースを構築。本事業では、ヒト完全長cDNA等遺伝子の機能情報、創薬等の 開発を行う上で必要となる疾患情報、並びに新たな研究成果等のデータベースへの付加を 行い、国際的に急増するバイオ情報に対応したより有用性の高い生物情報基盤を構築する。 ②技術目標及び達成時期 2007年度までに、ヒト完全長cDNA等遺伝子配列に、遺伝子機能情報や疾患との 関連情報、並びにタンパク質相互作用及び発現頻度等の有用な情報を格納した統合データ ベースを構築する。また、遺伝子機能情報や疾患との関連情報等を抽出・予測するための 技術開発を行い、膨大なバイオ情報から有用な情報を簡便に取り出すことのできる利便性 の高いデータベースを構築する。具体的には、月平均アクセス並びに月平均参照ページ数 を、2005年度から2007年度までの3年間で倍増させる(2004年度のデータを 基準とし、対前年比25パーセント程度の増加を目安とする)。また、2007年度まで に、3~4万個と言われるヒト全遺伝子をデータベースへ格納する。 ③研究開発期間 2005年度~2007年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2008年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (12)遺伝子多様性モデル解析技術開発(運営費交付金) ①概要 疾患の原因と思われる関連遺伝子を特定するには、マイクロサテライト(塩基対の反復 配列)やSNPs(1塩基多型)等の遺伝子多型情報等の解析を行うことが有効であり、 このために必要な高度の統計的手法と遺伝学の知識を融合させた分野(遺伝統計学)の技 術開発(プロトコル、アルゴリズム、ソフトウェア等)を行う。 プログラム基本計画 6 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、モデル疾患関連情報データベースを構築するとともに、各種遺伝 統計学的手法を用い、全ゲノム上から疾患関連遺伝子や薬剤感受性遺伝子を探索できる解 析システムの開発を行う。また、このデータベースや情報解析システムを用い、モデル疾 患毎に関連する疾患関連遺伝子や薬剤感受性遺伝子を同定する。 ③研究開発期間 2000年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2003年度に、事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅵ.融合領域(情報技術との融合) (13)バイオ・IT融合機器開発プロジェクト(フォーカス21) (運営費交付金) ①概要 タンパク質等の解析に用いられるタンパク質自動解析装置や遺伝子解析装置、次世代生 体情報計測機器等、超高速・高精度な機器やソフトウェアを含んだシステムを構築し、膨 大かつ複雑な生命・臨床情報を解析・活用するシステム等を開発する。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、我が国が得意とする情報・機器技術やバイオ技術を結集して、従 来型の機器のダウンサイジング、PCR(DNAの増幅手法)や電気泳動、MS(質量分 析器)の連動等による自動化、生体情報計測の無侵襲化等を達成し、画期的なバイオ研究 用機器、試薬、診断機器等を開発する。併せてそれらの機器から得られるデータ処理のた めのソフトウェア等の開発を行う。 ③研究開発期間 2002年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅶ.融合領域(ナノテクノロジーとの融合:ナノバイオテクノロジープロジェクト) (14)先進ナノバイオデバイスプロジェクト(フォーカス21)(運営費交付金) ①概要 ナノ材料の開発、ナノ微細加工技術及びナノ流動エンジニアリング技術の活用により、 少量試料・短時間・同時多項目の分析を可能にする超小型マルチセンサーや1分子DNA 計測システムなどを可能とするナノバイオデバイスを開発し、分析機器の革新的な高速化 や高感度化、低価格化等を図る。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、超小型マルチセンサーや1分子DNA計測システム等解析機器の 実用化のための、各種構成ユニットを開発する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (15)ナノ微粒子利用スクリーニングプロジェクト(フォーカス21) (運営費交付金) プログラム基本計画 7 ①概要 ナノ微粒子を用いて、莫大なタンパク質や化学物質の中から産業上有用な物質を高速・ 高度に選別する技術を開発するとともに、スクリーニング技術のロボット化や選別物質の 情報処理により、画期的な新薬開発や診断・治療等への応用につながる基盤を作る。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、磁性等の特性を有する高機能・高性能なナノ微粒子の構築技術を 開発するとともに、本微粒子を活用したスクリーニングシステムを開発する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (16)タンパク質相互作用解析ナノバイオチッププロジェクト(フォーカス21) (運営費交付金) ①概要 膜タンパク質の機能を保持したままでウイルス表面に発現する技術や、超微細加工技術 等を用いて、高速・高感度なタンパク質相互作用解析を可能とするタンパク質チップを作 製する。また、ウイルスを用いて簡便に高親和性の抗体を作製し、微量のタンパク質を高 感度に検出する抗体チップの開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、高速、高感度なタンパク質相互作用解析を可能とするため、機能 を保持した形で発現したタンパク質を用い、ナノバイオチップを作製する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (17)ナノカプセル型人工酸素運搬体製造プロジェクト(フォーカス21) (運営費交付金) ①概要 ナノテクノロジーを用いることにより、鮮度との関係で2割近くが期限切れにより処分 されている血液の有効成分を活用し、長期間保存可能で、誤った血液型の輸血や、輸血に よるウイルス感染の心配のない人工酸素運搬体(人工赤血球)の製造技術を開発する。 ②技術目標及び達成時期 2005年までに、人工酸素運搬体の製造技術を確立する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (18)微細加工技術利用細胞組織製造プロジェクト(フォーカス21)(運営費交付金) ①概要 近年、重要性の増している再生医療の実用化に向け、移植用細胞・組織を臨床現場へ安 定的に供給するため、ナノテクノロジーを活用し、ヒト幹細胞の増殖・分化過程を遺伝子 プログラム基本計画 8 レベルで人為的に制御・培養する技術及び装置等の基盤技術を確立する。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、心筋細胞を対象に、再生医療を支援するために必要な、自動大量 培養する技術及び装置等を開発する。 ③研究開発期間 2003年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (19)ナノ医療デバイス開発プロジェクト(フォーカス21)(運営費交付金) ①概要 今後、疾病ごとの遺伝子やタンパク質解析が進む中、その成果を活用するため、我が国 の強みであるナノテクノロジー等を活用した光学基盤技術を開発することにより、内視鏡 等による細胞・タンパク質レベルのがんの超早期診断を可能とする医療機器を開発する。 ②技術目標及び達成時期 2006年度までに、ナノテクノロジーを活用した光学基盤技術や、生体における光解 析技術を確立することにより、細胞やタンパク質レベルの組織診断を可能とする機器を開 発する。 ③研究開発期間 2004年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 Ⅷ.医療福祉機器関連 (20)国民の健康寿命延伸に資する医療機器等の実用化開発事業(運営費交付金) ①概要 健康寿命を延伸するために、がん・心疾患・骨折・痴呆・脳卒中に加え、新たに糖尿病 等、近年急増している疾患の予防や早期の診断・治療を可能とする医療機器等の実用化開 発を行う。 ②技術目標及び達成時期 近年急増している疾患の予防・健康管理、診断・計測、治療・再生・生体機能代行を可 能とする医療機器等の実用化段階の開発を行い、開発終了後3年以内の製品化を目指す (薬事法上の承認が必要なものについては、開発終了後3年以内に治験実施又は薬事法承 認申請を行う。) ③研究開発期間 2001年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 臨床側と密接に連携が図られる民間企業等を選定し、実施。 (21)早期診断・短期回復のための高度診断・治療システムの開発事業(運営費交付金) ①概要 近年急増している、がん・脳卒中・高血圧・糖尿病・循環器系疾患といった生活習慣病 や痴呆等の寝たきりの原因となりやすい疾病・障害について、予防や早期の診断・治療を 可能とする高度医療機器の開発を行う。 プログラム基本計画 9 ②技術目標及び達成時期 (ア)超音波利用循環器系疾患診断システム 2002年度までに、動脈硬化や心疾患等の循環器系疾患を主な対象として、対象 疾患部位の特徴に適した画像形成方式による高度な超音波診断技術を確立する。 (イ)低侵襲高度手術支援システム 2004年度までに、内視鏡やMRI、X線(DVT)等による患部への正確な術 者誘導技術とマニピュレーター技術を応用することによって、患者の負担を軽減し、 回復期間を短縮化する低侵襲高度手術支援システムを確立する。 (ウ)精密診断・標的治療システム 2005年度までに、疾病の早期発見や患者個人に最適な治療方策の選択支援を可能 とする精密診断システム、並びに最適な薬剤投与や患部に限定した治療を可能にする標 的治療システムを確立する。 ③研究開発期間 1998年度~2005年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を要素技術開発テーマごとに、事後評価を2006年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (22)身体機能代替・修復システムの開発事業(運営費交付金) ①概要 従来の医療技術では回復が期待できない失われた身体機能を、人工的に代替・修復する ことで患者の日常生活や社会復帰を支援し、生活の質の著しい改善に寄与する身体機能代 替・修復技術の開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 2005年度までに、自己修復が困難な疾患部位や病態に対して、身体臓器の機能を人 工的手段で代替する機器技術を開発する。また、2006年度までに、生体親和性の高い インプラント材料(生体内に埋め込むための材料)の性能評価技術等を確立する。 ③研究開発期間 2000年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を要素技術開発テーマごとに、事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (23)次世代DDS型悪性腫瘍治療システムの研究開発事業(運営費交付金) ①概要 小型粒子加速器とナノレベルの薬物搬送システム(DDS)の融合によって、人体内の がん細胞のみを選択的に消滅させるがん治療システムを実現する。 ②技術目標及び達成時期 2007年度までに、薬物伝達方式で、がん細胞等の病巣に集積させた抗がん剤やホウ 素等の薬剤を中性子で活性し、体内のがん細胞等の病巣を消滅させるシステムを開発する。 ③研究開発期間 2005年度~2007年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2008年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関、技術研究組合等から、最適な研究体制を構築し実施。 (24)分子イメージング機器研究開発プロジェクト(フォーカス21) プログラム基本計画 10 (運営費交付金) ①概要 細小血管の分子レベルでの代謝機能を非侵襲で可視化する細胞代謝イメージングを実現 し、代謝異常を細胞レベルで観察することにより、循環器系疾患等の早期の診断・治療を はかる。 一方、ヒトゲノム解読をうけ、がん遺伝子等の研究が行われているところであるが、こ れらの研究成果の医療への応用に不可欠な、生体細胞の分子レベルの機能変化を画像化す る非侵襲の「分子イメージング」診断機器の調査研究を行う。 ②技術目標及び達成時期 2009年度までに、ナノテクノロジーを活用した光学基盤技術等を確立することによ り、細胞やタンパク質レベルの組織診断を可能とする機器を開発する。 また、2005年度までに、悪性腫瘍の早期診断及び治療に資する「分子イメージング 機器」の可能性についての調査研究を行う。 ③研究開発期間 2005年度~2009年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2007年度に、事後評価を2010年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (25)再生医療評価研究開発事業(運営費交付金) ①概要 ヒトから細胞を採取し、これを体外で培養、必要に応じて組織に分化させ、これを患者 に移植・治療する再生医療の国内での早期実用化、産業化を目指し、患者自身の細胞の採 取・培養から組織形成・治療までの評価プロセス及び基準を開発、体系化する。 ②技術目標及び達成時期 2009年度までに、再生医療の早期実用化、産業化のための、細胞培養評価法の開発、 組織形成評価法の開発、実用化レベルでの評価基準の確立を行う。 ③研究開発期間 2005年度~2009年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2007年度に、事後評価を2010年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (26)医療機器開発ガイドライン作成事業(運営費交付金) ①概要 医療機器産業への投資、新規企業参入、研究開発の促進及び薬事法審査の円滑化にも資 する「医療機器開発ガイドライン」を産学官の連携で策定し、国内での機器開発促進の環 境整備を図る。 ②技術目標及び達成時期 2007年度までに、新しい医療機器に関して開発の段階に必要となる工学的安定性に かかわる評価基準とともに、薬事法審査での生物学的安定性評価基準と連動した「技術ガ イドライン」及び、新しい医療機器のメリットやリスクを医療経済面で評価する基準とと もに、部材メーカー等が機器の事故時に担う標準的なリスクを提示する「経済社会ガイド ライン」を作成する。 ③研究開発期間 2005年度~2007年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2008年度に実施。 プログラム基本計画 11 ⑤実施形態 関係学会・公的研究機関等からなるコンソーシアム等、最適な研究体制を構築し実施。 (27)福祉用具実用化開発推進事業(運営費交付金) ①概要 「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」(福祉用具法)に基づき、高齢 者・心身障害者及び介護者の生活の質の向上を目的として、生活支援分野、社会活動支援 分野を中心とした福祉用具の実用化開発を行う民間企業等に対し、研究開発費用の2/3 以内を補助することで、多様な福祉ニーズに対応するとともに、当該分野における新産業 の創出、成長の促進に資する。 ②技術目標及び達成時期 高齢者、障害者の生活支援、社会参加支援に資する福祉用具の実用化開発を促進するこ とにより、高齢者等の生活における負担の軽減を図り、安全で安心のできる生活を実現す る。より具体的な目標として、各々の補助対象事業終了後3年経過した時点で50パーセ ント以上を製品化する。 ③研究開発期間 1993年度~ ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を2004年度に、福祉用具法の適用終了時期の翌年度に事後評価を実施。 ⑤実施形態 民間企業等により研究開発を実施。 (28)障害者等ITバリアフリー推進のための研究開発事業(運営費交付金) ①概要 障害者等が経済・社会に積極的かつ円滑に参画できる環境整備を推進するため、障害者 等が共通に利用でき、かつ、障害者等に使いやすい利用者端末を活用した移動支援システ ムの開発及び実証実験を実施する。 ②技術目標及び達成時期 愛知万博(2005年)での国際的な実証実験を目標として利用者端末等の開発を進め る。2004年のITS世界会議、2005年の愛知万博等での実証実験結果を踏まえ、 利用者端末・システム等の改良・標準化を2006年までに検討する。 ③研究開発期間 2003年度~2006年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2007年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から、最適な研究体制を構築し実施。 (29)高齢者等社会参加支援のためのシステムの開発 ①概要 高齢者等の自立した生活の実現を支援し、また、積極的な社会参加を促すために、四肢 の機能回復を図るシステムや高齢者等の日常生活を支援するシステムなど、加齢や疾病等 によって衰えた身体機能の補助や回復を促す機器等を開発する。 ②技術目標及び達成時期 2003年度までに、訓練者の状態に沿った適切な動作訓練を安全に実施し、回復度の 評価に必要なデータ計測ができるとともに、評価結果に基づいて、医師や療法士の治療ノ ウハウに基づいた訓練メニューを提示できるシステムを確立する。また、高齢者が親しみ やすく利用しやすい日常生活支援システムを確立する。 ③研究開発期間 1999年度~2003年度 プログラム基本計画 12 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を要素技術開発テーマごとに、事後評価を2004年度に実施。 ⑤実施形態 民間企業、大学、公的研究機関等から最適な研究体制を構築し実施。 (30)健康寿命延伸に資する医療福祉機器開発のための基礎研究 ①概要 医療の低侵襲化・高度化に適用可能な新たな技術の応用可能性や再生医療など細胞レベルでの診断・ 治療に必要な要素技術についての研究を行うとともに、健康増進、疾病予防をより重視していく観点か ら、在宅で非侵襲的に検査を可能とする技術の研究など医療の日常化に資する医療機器開発のために必 要な研究を行う。 ②技術目標及び達成時期 2003年度までに、診断技術に関しては、高感度遺伝子診断技術や電気化学的遺伝子情報読み取り 技術、形態情報と細胞レベルの機能情報のリアルタイム統合表示技術、および光学的診断技術の研究等 を行う。治療技術に関しては、高機能カテーテルや体動に同期した放射線治療技術など患部局所に対す る治療技術の研究等を行い、研究開発終了後速やかにこれらの成果を機器開発につなげる 。 ③研究開発期間 1998年度~2003年度 ④中間・事後評価の実施時期 中間評価を要素技術開発テーマごとに、事後評価を2004年度に実施。 ⑤実施形態 大学の医学部・工学部等から最適な研究体制を構築し実施。 (31)エネルギー使用合理化在宅福祉システム開発 ①概要 我が国の高齢化の進展に伴い、今後、一般家庭において福祉機器等の導入により民生 エネルギー消費の増大が予想される。エネルギー使用の合理化を着実に実施するために は、エネルギーを効率的に使用する在宅福祉機器システムの開発が必要である。このた め、高齢者配慮住宅の構造特性、福祉機器の使用特性等を踏まえながら、エネルギー有 効利用型の在宅福祉機器システムの研究開発を行う。 ②技術目標及び達成時期 福祉機器の使用特性等を踏まえたエネルギー有効利用型の在宅福祉機器システムの開発 と開発期間終了後の速やかな実用化を図る。 ③研究開発期間 1999年度~2002年度 ④中間・事後評価の実施時期 事後評価を2003年度に実施。 ⑤実施形態 地方公共団体、公私立大学、社団法人、財団法人、社会福祉法人、医療法人、鉱工業技 術研究組合及び第三セクター 5.研究開発の実施に当たっての留意事項 事業の全部又は一部について独立行政法人の運営費交付金により実施されるもの(事業名に (運営費交付金)と記載したもの)は、中期目標、中期計画等に基づき、運営費交付金の総額 の範囲内で、当該独立行政法人の裁量によって実施されるものである。 【フォーカス21の成果の実用化の推進】 フォーカス21は、研究開発成果を迅速に事業に結び付け、産業競争力強化に直結させるた め、次の要件の下で実施する。 ・ 技術的革新性により競争力を強化できること。 プログラム基本計画 13 ・ 研究開発成果を新たな製品・サービスに結び付ける目途があること。 ・ 比較的短期間で新たな市場が想定され、大きな成長と経済波及効果が期待できること。 ・ 産業界も資金等の負担を行うことにより、市場化に向けた産業界の具体的な取組が示され ていること。 具体的には、成果の実用化に向けた、実施者による以下のような取組を求める。 ・ タンパク質機能解析・活用プロジェクト タンパク質の大量発現技術開発、発現頻度解析及び相互作用解析等のツール開発を同 時並行的に実施し、早期実用化を図る。 ・ 糖鎖エンジニアリングプロジェクト 糖鎖構造解析システム及び糖鎖自動合成システムの実用化のため、システム化、ユー ザーインターフェイスの開発及び標準データの蓄積等を同時並行的に実施し、早期実用 化を図る。 ・ バイオ・IT融合機器開発プロジェクト 事業費の2分の1負担により、従来型の機器のダウンサイジング、PCRや電気泳動、 MSの連動等による自動化、生体情報計測の無侵襲化等を達成し、画期的なバイオ研究 用機器、試薬、診断機器等の実用化開発を行い、併せてそれらの機器から得られるデー タ処理のためのソフトウェア等の実用化開発を行う。 ・ 先進ナノバイオデバイスプロジェクト 超小型マルチセンサーや1分子DNA計測システム等解析機器の開発を同時並行的に 実施し、早期実用化を図る。 ・ ナノ微粒子利用スクリーニングプロジェクト スクリーニング用ロボット等の開発を同時並行的に実施し、早期実用化を図る。 ・ タンパク質相互作用解析ナノバイオチッププロジェクト 高速・高感度なタンパク質相互作用解析を可能とするナノバイオチップを同時並行的 に開発し、早期実用化を図る。 ・ ナノカプセル型人工酸素運搬体製造プロジェクト 事業費の2分の1負担により、人工酸素運搬体の製造技術を確立する。また、事業終 了後、早期に人工酸素運搬体の実用レベルでの供給を図る。 ・ 微細加工技術利用細胞組織製造プロジェクト 心筋細胞を対象に、臨床応用可能なレベルまで大量に目的の細胞や組織をウイルスフ リーで安全に安定供給できる自動培養装置等を同時並行的に開発し、早期実用化を図る。 ・ ナノ医療デバイス開発プロジェクト 事業費の2分の1負担により、ナノテクノロジーを活用した光学基盤技術や、生体に おける光解析技術を確立することにより、細胞やタンパク質レベルの組織診断を可能と する機器を開発する。 ・ 分子イメージング機器研究開発プロジェクト 機器開発部分につき、事業費の3分の1負担により、人体の窓といわれる眼底を通じ、 血管及び細胞の代謝機能を分子レベルでリアルタイムに診断する機器の開発を行う。 なお、適切な時期に、実用化・市場化状況等について検証する。 6.プログラムの期間、評価等 プログラムの期間は2000年度から2006年度までとし、プログラムの中間評価を 2004年度に、事後評価を2007年度に実施するとともに、研究開発以外のものにつ いては2010年度に検証する。 また、中間評価等を踏まえ、必要に応じ基本計画の見直しを行う。 7.研究開発成果の政策上の活用 タンパク質機能解析、遺伝子多様性モデル解析などの研究開発により得られたデータ等 については、その成果をバイオインフォマティクス知的基盤整備で構築する統合データ ベースに納め、我が国の研究開発や産業化に有効に活用されていくよう情報等の提供を行 プログラム基本計画 14 う。 各プロジェクトで得られた成果のうち、標準化すべきものについては、適切な標準化活 動(国際規格(ISO/IEC)、日本工業規格(JIS)、その他国際的に認知された標準 の提案等)を実施する。具体的には、統合データベースの情報やインターネットに公開さ れている情報資源等を相互運用するために、必要なデータ形式、フォーマット等の標準化 を推進する。基準認証研究開発事業「バイオインフォマティックスに関する標準化」にお いては、テーラーメイド医療への応用が期待できるSNPs(一塩基多価)のデータベー ス間の相互利用を可能とする技術の我が国発での国際規格化が現実となっており、これを モデルとしてその他プロジェクトの標準化を加速する。また、高齢者等支援機器について は、関係省庁との緊密な連携の下、標準化等の手法による実用化及び普及の方策を検討す る。更に、適切な標準化活動の実施に資するため、バイオ分野の標準化戦略を策定する。 8.政策目標の実現に向けた環境整備 Ⅰ.安全に関する研究の推進とルール作り 1) バイオインダストリー安全対策調査(2000~2009年度) バイオテクノロジーの安全性を確保するため、これまで得られている知見を基に、安全性 関連データベースの整備、安全性評価手法の高度化に必要な事項の検討及びガイドラインの 作成を行う。 2) バイオ事業化に伴う生命倫理問題等に関する研究(2002~2006年度) バイオテクノロジーの実用化に際して、新たな技術に対する国民の理解と合意を得るため、 新たな技術の産業化に伴って発生する、我が国の社会における様々な問題を、文献の収集、 海外調査等を行うことにより研究する。さらに、研究成果等を普及啓発するためのシンポジ ウム等の開催等、社会的受容(public acceptance)を高めるための活動を支援する。 3) 個人遺伝情報の保護のためのルール整備 ゲノム研究の進展は、個人遺伝情報を用い、情報技術を駆使した幅広い医療・健康サービ スによる人々の健康や福祉の向上、さらには新しい医療・健康サービス産業の育成に重要な 役割を果たそうとしているが、その際、人権を尊重し、社会の理解と協力を得て、個人遺伝 情報の厳格な管理の下で適正に事業を実施することが不可欠である。そのため、個人遺伝情 報を安全に保護するために、研究者、事業者が遵守すべきルールを整備する。 Ⅱ.特許への取組み 一段と激化する特許戦争の中、成果実用化・効率的な研究開発を推進するため、プロジェ クト企画段階から、研究テーマ周辺の論文及び特許状況のサーベイ実施やプロジェクト実施 段階における特許出願後の事業化構想等、特許に関する戦略的取組(プロパテントアプロー チの導入)を実施する。 Ⅲ.コンソーシアム型技術開発支援 バイオベンチャーにおける研究開発ステージの実用化フェーズへのシフトに伴う資金調 達の円滑化のため、テーマ(例えば創薬)に沿ってコーディネートされたベンチャー企業 群が行う実用化試験研究を支援し、バイオベンチャーのシーズ発掘から事業化(売上計 上)までの自立的達成が可能となる支援体制の構築を図る。 Ⅳ.バイオ人材育成事業(2002年度補正~2004年度) バイオベンチャー等に対して資金提供や事業化などのサポートを行う支援人材や、ベン チャー企業等でバイオ分野の精緻な作業や試験を行う技術人材を充実させるため、スキルス タンダードやカリキュラム等を用いた効率的な人材育成手法を確立する。 Ⅴ.福祉用具情報収集・分析・提供事業(1993年度~ ) 福祉用具法に基づき、民間による福祉機器の実用化のための研究開発を促進するため、 福祉機器に関する産業技術に係る情報の収集・分析・提供事業を実施することで、当該分野 プログラム基本計画 15 における福祉機器の普及や新規産業の創出・成長の促進を図る。 Ⅵ.福祉医療関連機器普及促進(財政投融資制度) 医療・福祉関連機器の開発、生産、流通、販売等の関連する供給体制を強化するために必 要となる設備に対し、長期かつ低金利な融資制度により支援を行い、さらなる製品の高品質 化、低価格化を実現し、安定的な供給体制を確保する。 Ⅶ.薬事法審査の迅速化 医療機器の審査体制の強化による薬事法審査の迅速化の観点から、平成16年4月30日 付けで独立行政法人産業技術総合開発機構の工学系研究者を独立行政法人医薬品医療機器総 合機構へ派遣したところである。 9.改訂履歴 (1) 平成12年12月28日付けがん・心疾患等対応高度医療機器プログラム制定。 (2) 平成14年2月26日付け健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラ ム基本計画制定。 (3) 平成14年2月28日付け健康寿命延伸のための医療福祉機器高度化プログラム基本計画 制定。がん・心疾患等対応高度医療機器プログラム(平成12・12・27工総第13 号)は、廃止。 (4) 平成15年1月27日付け健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラ ム基本計画制定。健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム基本計 画(平成14・02・25産局第4号)は、廃止。 (5) 平成15年3月10日付け健康寿命延伸のための医療福祉機器高度化プログラム基本計画 制定。健康寿命延伸のための医療福祉機器高度化プログラム基本計画(平成14・02・ 05産局第2号)は、廃止。 (6) 平成16年2月3日付け制定。健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プロ グラム基本計画(平成15・01・23産局第4号)及び健康寿命延伸のための医療福祉 機器高度化プログラム基本計画(平成15・03・07産局第17号)は、本プログラム 基本計画に統合することとし、廃止。 (7) 平成17年3月31日付け制定。健康安心プログラム基本計画(平成16・02・03産 局第12号)は、廃止。 プログラム基本計画 16 プロジェクト基 本 計 画 P06011 (健康安心プログラム) 「機能性 RNA プロジェクト」基本計画 バイオテクノロジー・医療技術開発部 1. 研究開発の目的・目標・内容 (1)研究開発の目的 本プロジェクトは、すでに研究開発が着手されている遺伝子、タンパク質、糖鎖等の生体分子 の機能・構造・ネットワーク解析に加え、新たなポストゲノム研究の展開として機能性 RNA の解 析を行うとともに、それらの研究を強力に推進するためのバイオツールやバイオインフォマティ クスの開発、成果を高度に利用するためのデータベース整備や先端技術を応用した高度医療機器 開発等により、テーラーメイド医療・予防医療・再生医療等の実現や画期的な新薬の開発、医療 機器、福祉機器等の開発・実用化を促進することによって健康寿命を延伸し、今後、世界に類を 見ない少子高齢化社会を迎える我が国において、国民が健康で安心して暮らせる社会の実現を目 指すことを目的とする「健康安心プログラム」の一環として実施する。 Non-coding RNA(ncRNA:非コード RNA)は、タンパク質をコードする mRNA 以外の RNA の総称 である。細胞内に存在する全転写産物には相当量の ncRNA が存在することが推測されており、細 胞機能を理解する上でそれらの機能解析は欠くことのできない重要課題である。昨今、このよう に機能を有すると推定される ncRNA、即ち、機能性 RNA による遺伝子発現調節機構が生命の発生 や細胞の分化に重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。したがって、生体における機 能性 RNA の機能を解析し、その機能の抑制や促進による生体応答を総合的に把握する基盤研究を さらに強力に進めることは、再生医療や疾患治療等の実現に資する重要な課題である。 本プロジェクトにおいては、バイオインフォマティクスの活用による機能性 RNA を推定する技 術の開発、機能性 RNA 解析のための新たな支援技術・ツールの開発、及び機能性 RNA の機能解析 を実施する。これらを通して、その遺伝子発現調節機構を明らかにすることにより、細胞分化誘 導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持った機能性 RNA を同定し、 成果をすばやく特許化することにより、バイオ分野における新たな基盤形成を目指す。これによ り、再生医療や RNA 医療、遺伝子治療、疾患治療等、産業応用の促進、新産業の創出が期待され る。また同時に、機能性 RNA を解析する手法及びツールの開発により、機能性RNA解析研究を 飛躍的に進めることで、本分野における我が国の優位性の確立を目指す。 (2)研究開発の目標 (最終目標:平成21年度) 機能性 RNA 候補をゲノム上から推測するバイオインフォマティクス技術を確立する。また、機 能性 RNA を高感度、定量的かつ網羅的に捉える新しい方法、手法の確立と、機能性 RNA をゲノム ワイドに解析するためのツールを確立する。これらのツールを活用して、機能性 RNA の機能解明 に取り組む。また、ヒト疾患に関連する機能性 RNA 及び発生・分化などをはじめ細胞機能に重要 な働きを示す数十個の機能性 RNA 候補の機能解析を行い、医薬品開発や再生医療等に有用な基盤 知見の取得や、基盤技術の構築を目指す。 (中間目標:平成19年度) 二次構造、機能を有する RNA 配列の推測、及び機能性 RNA を解析するツールのプロトタイプを 作製する。機能性 RNA の分子機構の発現に必須の因子を同定するとともに、必要な実験系の確立 を行う。また、疾患関連等の細胞をターゲットに機能解析を行うことができる実験系を確立する。 (3)研究開発の内容 上記目標を達成するために、以下の研究開発項目について、別紙の研究開発計画に基づき研究 開発を実施する。 プロジェクト基本計画 1 ① 機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 ② 機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発 ③ 機能性 RNA の機能の解明 2.研究開発の実施方式 (1)研究開発の実施体制 本研究開発は、平成17年度に経済産業省産業技術環境局研究開発課及び製造産業局生物化 学産業課において基本計画を策定し事業を実施したが、平成18年度以降は、独立行政法人新 エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO技術開発機構」という)において委託し て実施する。「委託契約事務の取扱に関する機構達(平成15年機構達第8号)第14条 公 募によらない場合の適用基準」に基づき、NEDO技術開発機構において公募による研究開発 実施者の選定は行わない。 また、独立行政法人産業技術総合研究所生物情報解析研究センター センター長 渡辺公綱 氏を研究開発責任者(以下「プロジェクトリーダー」という)とし、その下に研究者を可能な 限り結集して効果的な研究開発を実施する。 (2)研究開発の運営管理 研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDO技術開発機構は、経済産業省及びプロ ジェクトリーダーと密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに本研究開発 の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。具体的には、必要に応じて、NEDO 技術開発機構 に設置する委員会及び技術検討会等、外部有識者の意見を運営管理に反映させる 他、四半期に1回程度プロジェクトリーダー等を通じて研究開発の進捗について報告を受ける こと等を行う。 3.研究開発の実施期間 本研究開発の期間は、平成17年度から平成21年度までの5年間とする。 4.評価に関する事項 NEDOは、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果の技術的意義 並びに将来の産業への波及効果について、外部有識者による研究開発の中間評価を平成19年 度に、事後評価を平成22年度に実施する。また、中間評価結果を踏まえ必要に応じ、プロ ジェクトの加速、縮小、中止等見通しを迅速に行う。なお、評価の時期については、当該研究 開発に係わる技術動向、政策動向や当該研究開発の推進状況等に応じて、前倒しする等、適宜 見直するものとする。 5.その他の重要事項 (1)研究開発成果の取扱い ①共通基盤技術の形成に資する成果の普及 得られた成果のうち、下記共通基盤技術に係る研究開発成果については、実施者において 普及に努めるものとする。 (a)機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術 (b)機能性 RNA 解析のための支援技術・ツール (c)機能性 RNA の機能の解明に係る技術 ②知的基盤整備事業又は標準化等との連携 得られた研究開発成果については、知的基盤整備又は標準化との連携を図るため、データ ベースへのデータの提供、標準情報(TR)制度への提案等に努めることとする。 ③知的所有権の帰属 プロジェクト基本計画 2 委託研究開発の成果に関わる知的財産権については、「独立行政法人新エネルギー・産業技術 総合開発機構新エネルギー・産業技術業務方法書」第26条の規定等に基づき、原則として、 すべて受託先に帰属させることとする。 ④成果の産業化 a) 受託者は、本研究開発から得られる研究開発成果の産業面での着実な活用を図るため、本 研究開発の終了後に実施すべき取り組みのあり方や研究開発成果の産業面での活用のビジ ネスモデルを立案するとともに、立案した取り組みのあり方とビジネスモデルについて、 研究開発の進捗等を考慮して、本研究開発期間中に必要な見直しを行う。 b) 受託者は、上記 a)で立案した取り組みとビジネスモデルを本研究開発終了後、実行に移 し、成果の産業面での活用に努めるものとする。 (2) 基本計画の変更 NEDO技術開発機構は、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、内外 の研究開発動向、政策動向、プログラム基本計画の変更、第三者の視点からの評価結果、研究 開発費の確保状況、当該研究開発の進捗状況等を総合的に勘案し、達成目標、実施期間、研究 開発体制等、基本計画の見直しを弾力的に行うものとする。 (3) 根拠法 本研究開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第15条第1項2号に 基づき実施する。 (4) 関連指針の厳守 当該プロジェクトの実施にあたっては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」 (平成13年度文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)等、研究開発関連の指針を 厳守しなければならない。また、本研究開発成果の事業化においては、「経済産業分野のうち個 人情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」(平成 16・12・24 製局第1号) を厳守しなければならない。 6.基本計画の改訂履歴 (1)平成18年3月制定。 ただし、本事業は、平成17年度に経済産業省の直轄事業として 開始され、経済産業省において基本計画が策定されている。 プロジェクト基本計画 3 (別紙)研究開発計画 研究開発項目①「機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発」 1. 研究計画の必要性 膨大な塩基配列データから、機能を持つ RNA 配列部分をすべて実験によって発見することは困 難であるため、ゲノム配列・cDNA 配列などから機能性 RNA を網羅的に発見する情報技術が必要で ある。また、配列類似性と同時に二次構造が重要な機能性 RNA の情報解析には、既存の配列相同 性解析だけでは不十分であり、機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクスの研究開発が必 要である。さらに、本プロジェクト等で得られた情報を広く一般に効果的に活用するために、そ のデータベースを構築することが必要である。 2. 研究開発の具体的内容 機能性 RNA 配列を予測するバイオインフォマティクス手法の開発を実施する。また、このよう な技術等を活用し、ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的な予測を行い、さらに機能性 RNA の データベースを構築する。 (1)機能性RNAに特化したバイオインフォマティクス技術の開発 二次構造の類似性を考慮できる RNA 配列に特化した、配列比較・検索手法を開発する。また、 RNA 配列の整列、配列群からの二次構造予測、機能推定を行う情報技術を開発する。また、機能 性 RNA をターゲットとするマイクロアレイ情報の解析技術を開発する。 (2)ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測 機能性RNAに特化したバイオインフォマティクス技術を活用し、ゲノム配列全体から機能 性 RNA を網羅的に予測する。 (3)機能性 RNA データベースの構築 機能性 RNA データを広く一般に効果的に活用するため、機能性RNAデータベースを構築す る。 3. 達成目標 (中間目標:平成19年度) ゲノム配列から機能性RNAを網羅的に検出するバイオインフォマティクス技術を確立する。機 能性RNAの機能を予測するための情報技術を開発する。 (最終目標:平成21年度) バイオインフォマティクス技術を活用して新規の機能性RNA候補を網羅的に予測し、機能性 RNAデータベースを構築する。 プロジェクト基本計画 4 研究開発項目②「機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発」 1.研究開発の必要性 現在、機能性RNAを単離、精製して in vitro 実験で解析する手法・ツールは、開発されつつ あるが、感度面と安定性において課題が残っている。特に機能性 RNA は発現が極微量でありなが ら、発生や分化などの生命現象で重要な機能を持つことが知られており、機能性 RNA の発現量や 発現変動を捉えるためには高感度なバイオツール開発が不可欠である。さらに、機能性RNA解 析を加速するため、in vitro 実験においてハイスループットに解析する手法・ツール開発が必要 である。 2. 研究開発の具体的内容 機能性 RNA をハイスループットに、網羅的に、かつ定量的に再現性をもって解析できるバイオ ツールの開発を行う。また、発生・分化・疾患等により変動する機能性RNAの発現変動を網羅 的に解析する技術の開発を行う。さらに、RNA はタンパク質と比較して更に微量であるため、測 定を極限まで高感度化をはかることで、細胞から抽出した超微量な機能性RNAを高感度で直接 測定する技術・手法を開発する。 3. 達成目標 (中間目標:平成19年度) 機能性 RNA を網羅的に、かつ定量的に再現性をもって解析できるバイオツールの開発。 (最終目標:平成21年度) 機能性 RNA をハイスループット、高感度、網羅的に解析できるバイオツールを開発する。また、 超微量な機能性RNAを高感度(サブフェムトモルオーダー)で直接測定することが可能な方法・ 手法等の開発。 プロジェクト基本計画 5 研究開発項目③「機能性RNAの機能解析」 1. 研究開発の必要性 種々の機能性RNAが、どの遺伝子を標的として、どういった機構で作用することによって発 現制御を行っているか、また、機能性RNA自身の発現・機能調節はどの様に行われているか、 等に関する知見は極めて少ないのが現状であり、これらの機能性RNAに関する発現・機能制御 機構の解明が非常に重要となっている。さらに、疾患に関連した機能性 RNA を同定、解析し、診 断マーカーとしての展開、及び疾患治療や再生医療等を目指した医薬品の開発基盤を確立するこ とも必要である。 2.研究開発の内容 ヒト疾患に関連する機能性 RNA の同定とその機能解析、機能性RNAの作用機序の解明、また 発生・分化など重要な働きを示す機能性 RNA の同定とその機能解析を行う。 (1)ヒト疾患に関連する機能性 RNA の同定とその機能解析 ヒト疾患に関連する機能性 RNA 候補を選抜し、疾患細胞株、疾患モデル動物等での評価を実 施し、疾患で変異あるいは発現変動が見られる機能性 RNA を同定する。これらの各種疾患関連 機能性 RNA に対して、in vitro、及び in vivo 系で各種解析手法を駆使して機能解析を行う。 特定された機能性 RNA については、核酸関連低分子化合物等を用いて機能性 RNA の発現・機能 を制御するための研究開発を行う。 (2)発生・分化などをはじめ細胞機能に重要な働きを示す機能性RNAの同定とその機能解析 発生・分化等におけるダイナミックな機能性RNAの発現変動解析、同定を行い、新規な機 能を有する機能性RNAの発見を目指す。さらに機能性 RNA の生体細胞内での生合成経路、局 在、結合パートナーの同定を通して、機能性 RNA の機能を解明し、その機能を人為的に制御す るシステムを構築する。 3.達成目標 (中間目標:平成19年度) 数十個〜百個程度の機能性 RNA 候補を取得する。それらの機能解析のための in vitro、及び in vivo 系で各種解析手法を確立し、有用かつ重要な機能性RNAの発見と機能解析を行う。 (最終目標:平成21年度) ヒト疾患に関連する機能性 RNA 及び発生・分化などをはじめ細胞機能に重要な働きを示す数十個の機能性 RNA 候補の機能解析を行い、医薬品開発や再生医療等に有用な基盤知見の取得や、基盤技術の構築を目指す。 プロジェクト基本計画 6 プロジェクト用語集 用語 二次構造 動的計画法 カーネル法 確率文脈自由文法 構文解析 MEA 原理 用語の解説 RNA 配列上離れた位置にある2塩基が相補的な塩基対を形成することによって 生じる RNA の構造。 直接的な計算では膨大な計算量を必要とする問題を部分問題に分割 し、再帰式による計算によって効率的に解く方法の一般的名称。DNA 配 列やアミノ酸配列の最適アラインメントを求める手法としても使われ る。文字列の類似度だけを考慮したアラインメントは、配列長の2乗 に比例したメモリと計算時間で求めることができるが、RNA 配列の二次 構造を考慮した厳密なアラインメントでは、配列長の 6 乗の計算時間 が必要とされ、解析の障害となってきた。 カーネル関数を用いた数理的手法の一般的名称。データを高次元に射影し、 非線形データ構造を線形構造に置き換えることができる。サポート・ベク タ・マシンはカーネル法を用いた機械学習的手法である。 RNA の二次構造を解析するのに有用な確率的なモデルの一種。 文章や文字列の構成要素間の文法的な関係を説明すること(parse)。構 文解析は字句解析( Lexical Analysis )とともに、プログラミング言 語などの形式言語の解析に使用される。確率文法を用いた構文解析は DNA 配列からの遺伝子領域予測、RNA の二次構造予測に用いられてい る。 アルゴリズムが予測するラベル系列が、正解のラベル系列にできるだけ一致 するような予測を行う手法。 二次構造モチーフ RNA の二次構造の特徴的な局所パターンのこと。 サポート・ベクタ・マシン 機械学習的手法の一種。近年最も強力な手法として急速に広まっている。 確率文脈自由文法 確率木文法と同様に、RNA の二次構造を解析するのに有用な確率的なモデルの 一種。 シンテニー領域 異なる種の染色体間で、遺伝子が同じ順番で配置されている領域。 隠れマルコフモデル 線形の配列パターンをモデル化するための確率モデルの一種。主に、タンパ クコーディング遺伝子発見に使われている。 複数の配列(3 本以上)を相同性に基づいて整列させたもの。遺伝子の 多重配列アライメント (マルチプルアラインメン 機能や進化の解析等に用いられる。マルチプルアラインメントを作成 するための代表的なツールとして ClustalW がある。 ト) Blastz プログラム 2本のゲノム配列の局所類似配列を検索するプログラム。 ペアワイズアラインメント In silico 2本の配列を整列すること。 コンピューターを用いての意味。分子生物学などの実験は通常は、 ウェット(wet)と呼ばれるように細胞や各種の生体分子を扱ったもので あるが、それらの実験に関連するシミュレーションなどの計算などを 指して in silico と呼ぶ。 マススペクトロメトリー法 質量分析法のこと。 RNA マスフィンガープリ RNA断片の質量数を、non-coding RNAデータベースに対して検索をかけ ント法 ることにより、RNAの配列を読むことなくRNA分子全体の配列を迅速に同 定する方法。 サブフェムトモル(fmol) モルの 10 のマイナス 16 乗のこと。分子数として約6億分子に相当する。 キャピラリLC/ナノスプ 内径0.1-0.2mmほどの細いキャピラリ管に樹脂を充填し、ク レーイオン化法 ロマトグラフィーを行うことで RNA 試料の微量分離が可能となる。溶 用語 1 ランダムプライミング リンカーライゲーション 離液を直接、高電圧を印加したスプレーヤーの先端部から噴霧するこ とで RNA 分子をイオン化する方法。エレクトロスプレーイオン化法の 一種である。 ランダムな配列を持つオリゴDNAをプライマーとして、配列未知なRNAを 鋳型にcDNAを作成する手法。 配列未知な RNA の配列を決定するために、末端に既知のオリゴ DNA や RNA を連結させること。 CID (collision-induced イオン化した分子(ここでは RNA)を質量分析装置で稀ガスと衝突させ dissociation)解析 ることによって分解し、内部配列に由来する情報を取得する方法。RNA の de novo シーケンスに用いる。 蛍光相関分光法(FCS) レンズにより絞られたレーザー光の焦点領域の蛍光強度のゆらぎから 蛍光分子の大きさと数を直接測定する方法。 核酸プローブ 検出したい RNA と特異的に結合する配列を持った核酸分子のこと。 アンチセンス遺伝子 蛋白を合成するmRNA の塩基配列(センス配列)に対して相補的な塩基 配列をもつ遺伝子こと。 光ライゲーション反応 紫外光により隣接する核酸配列を連結する方法 MPEX反応 基板上での DNA 伸長反応による高感度に検出できる反応 ハイブリダイゼーション 相補的な塩基配列をもつ DNA(RNA)同士、もしくは DNA-RNA 間で 2 量体 を形成すること。マイクロアレイ解析においては基盤上に配置された プローブに、サンプル由来の標識された cDNA もしくは cRNA を作用さ せること。 マイクロ RNA プライマー 遺伝子の発現を抑制する働きがある機能性RNAの一種 DNA を酵素的に合成する際に使われる20~30塩基対の短い DNA 断 片。 マイクロアレイ 様々な配列をもつ微量のDNAをスライドガラスやシリコン、ナイロン膜 などの基板上に整列してのせ、固定化したものの総称。 サンプルの細胞と対象の組織細胞から別々にmRNAを抽出して、このRNA を別々の蛍光色素で標識し、cDNA(mRNAと相補的な塩基配列を持つ DNA)を合成する。これらの標識化されたcDNAを混合してスライドグラ ス上にスポットして、固定化された遺伝子と結合させる操作(ハイブリ ダイゼーション)を用いて、遺伝子の発現量の比を検出する。DNAやRNA の遺伝子配列や発現量を解析することができ、生物が持つ遺伝子の僅か な違いを調べることができる。 DNA の分子生物学的性質を利用して計算する方法。 RNA は糖の隣接する2’位と3’位に水酸基を持ち、伸長反応中に2’ 位が反応しないように保護しておく必要がある。一般的には、TBD MS(t-butyldimethylsilyl)基が用いられているが、その嵩だかさ が立体障害となり固相合成の収率を低下させる。一方、DNA は2位に水 酸基がないため2位保護基が不要であり、RNA に比べて合成が容易であ り、かつ2位の立体障害が軽減されているため固相合成の収率が高 い。 核酸の固相合成法(アミダイト法)における、 P-N結合(リン原 子と窒素原子間の結合)を持つA、T(U)、C、G4種類のホスホロ アミダイト誘導体の重合体(ポリマー)の合成ユニットのこと。 DNA コンピューティング 2’位保護基 モノマー レポーターアッセイ ルシフェラーゼ(発光酵素)遺伝子をレポーターとし、1 種類の試薬で 同時発光させることで転写活性を測定すること。 用語 2 間葉系幹細胞 マスト細胞 癌細胞株 MPSS 法 アポトーシス カリオタイプ ヒト臨床腫瘍サンプル ノックアウトマウス ノックダウン 間葉系幹細胞とは、骨髄液や脂肪組織などの中に少量存在する未分化 の細胞で、筋肉、骨、 脂肪など種類の異なる複数の細胞に分化できる 能力を持ち、かつ自己複製の能力も持つ細胞のことを言う。 喘息、アトピー性皮膚炎などの即時型アレルギー反応を誘起する細胞 のこと。肥満細胞とも言う。膜表面にIgEの受容体を有し、ヒスタ ミンなどを含有する顆粒を含むことが特徴。IgEの刺激などで起こ る脱顆粒により、顆粒内のヒスタミンや化学伝達物質が放出されるこ とで、肺の気管支収縮や粘膜浮腫などのアレルギー症状が起こる。 ヒトやマウス、ラットの腫瘍組織から単離され、株化された細胞のこ と。不死化しており無限増殖能を有する、足場非依存性の増殖を示す 等の特徴を示す。 Massively Parallel Signature Sequencing の 略 で 、 メ ッ セ ン ジャーRNA に由来する配列の一部を数十万個、一度に取り出して各遺伝 子の発現量を測定する方法。 多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状 態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自 殺(プログラムされた細胞死)のこと。 染色体の核型 癌患者由来の組織及びそこから単離された DNA、RNA、タンパク質等の こと。固形癌の場合は手術時に切除した腫瘍組織とそれに付随した隣 接正常組織が利用される。血液系癌の場合には採血により取得され る。 機能抑制系の有力な方法として、マウス個体において機能を調べたい 遺伝子を完全に欠失させる手段がある。そのようにして作成された遺 伝子改変マウスのこと。遺伝子の機能解析において極めて強力な手法 であるが、手間・技術・時間が必要とされる。 RNA を導入(発現)することにより、遺伝子発現を抑制すること。 脆弱 X 症候群(fragile X 精神遅滞・巨大睾丸・染色体検査による脆弱 X 所見を主徴をする奇形 syndrome: FRA X) 症候群.原因は、X 染色体上の FMR1 遺伝子の機能不全とされる. RNAi RNA 干渉ともいう。 細胞に二本鎖 RNA を導入した場合、それと同じ配 列をもつ遺伝子の発現(タンパク質の合成)を抑制する現象のこと。 真核生物において、標的遺伝子(mRNA)を破壊(分解)することによ り遺伝子発現を制御し、ウィルスに対する防御反応と類似した現象で あり、遺伝子解析の有効な方法として、基礎研究から将来の医療分野 への応用として期待されている。 モノクローナル抗体 認識部位が単一の特異性の高い抗体のこと。 RISC センス-アンチセンス RNA 誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex)。 RNA 干渉における遺伝子の不活性化やマイクロ RNA の機能発現において 重要な役割を果たす。 通常アンチセンス遺伝子は、タンパク質をコードする遺伝子が転写さ れた鎖(センス鎖)と相補的な配列を有する(反対鎖から転写される RNA をコードするような)遺伝子を指すが、センス-アンチセンスの関 係は相対的であるため、これらを一括してセンス-アンチセンスと呼 ぶ。 用語 3 Ⅰ. 事業性の位置づけ・必要性について 1. NEDO の関与の必要性・制度への適合性 1.1 NEDOが関与することの意義 Non-coding RNA(ncRNA:非コード RNA)は、タンパク質をコードする mRNA 以外の RNA の 総称である。細胞内に存在する全転写産物には相当量の ncRNA が存在することが推測され ており、細胞機能を理解する上でそれらの機能解析は欠くことのできない重要課題である。 昨今、このように機能を有すると推定される ncRNA、即ち、機能性 RNA による遺伝子発現調 節機構が生命の発生や細胞の分化に重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。 NEDO技術開発機構では、すでに研究開発が着手されている遺伝子、タンパク質、糖 鎖等の生体分子の機能・構造・ネットワーク解析に加え、新たなポストゲノム研究の展開 として機能性 RNA の解析を行うとともに、それらの研究を強力に推進するためのバイオツ ールやバイオインフォマティクスの開発、成果を高度に利用するためのデータベース整備 や先端技術を応用した高度医療機器開発等により、テーラーメイド医療・予防医療・再生 医療等の実現や画期的な新薬の開発、医療機器、福祉機器等の開発・実用化を促進するこ とによって健康寿命を延伸し、今後、世界に類を見ない少子高齢化社会を迎える我が国に おいて、国民が健康で安心して暮らせる社会の実現を目指すことを目的とする「健康安心 プログラム」の一環として本プロジェクトを遂行した。 生体における機能性 RNA の機能を解析し、その機能の抑制や促進による生体応答を総合 的に把握する基礎的・基盤的研究を強力に進めることは、再生医療や疾患治療等の実現に 資する重要な課題である。このように本プロジェクトは基礎的・基盤的研究であるので、 NEDOの関与が必要であり、我が国の企業の研究開発事業等をサポートすることへの意 義もある。 1.2 実施効果(費用対効果) 本プロジェクトにおいては、バイオインフォマティクスの活用による機能性 RNA を推定 する技術の開発、機能性 RNA 解析のための新たな支援技術・ツールの開発、及び機能性 RNA の機能解析を実施する。これらを通して、その遺伝子発現調節機構を明らかにすることに より、細胞分化誘導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持っ た機能性 RNA を同定し、バイオ分野における新たな基盤形成を目指す。これにより、再生 医療や RNA 医療、遺伝子治療、疾患治療等、産業応用の促進、新産業の創出が期待される。 また同時に、機能性 RNA を解析する手法及びツールの開発により、機能性 RNA 解析研究を 飛躍的に進めることで、本分野における我が国の優位性の確立を目指す。さらに本プロジ ェクトにおける成果を素早く特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新 産業の創出に貢献するなど、その実施効果は大いに期待できる。 1 2. 事業の背景・目的・位置付け 近年の研究により、我々哺乳類を含む高等生物の細胞中には、従来のタンパク質をコー ドする RNA とは異なり、タンパク質をコードしていないにもかかわらず転写される non-coding RNA(ncRNA:非コード RNA)が多数存在することが明らかになった。これらは、 機能性 RNA として、発生や細胞分化の過程において重要な役割を果たしており、癌や糖尿 病などの疾患の発生にも深く関わっているものと考えられている。 本プロジェクトでは、バイオインフォマティクスの活用による機能性 RNA を推定する技 術の開発、機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発、及び機能性 RNA の機能解析 を行うことにより、本研究分野における我が国の優位性の確立を目指す。また、本プロジ ェクトにおける成果を素早く特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新 産業の創出に貢献する。 2 Ⅱ. 研究開発マネージメントについて 1. 事業の目標 1)事業全体の目標 ・最終目標(平成21年度) 機能性 RNA 候補をゲノム上から推測するバイオインフォマティクス技術を確立する。ま た、機能性 RNA を高感度、定量的かつ網羅的に捉える新しい方法、手法の確立と、機能性 RNA をゲノムワイドに解析するためのツールを確立する。これらのツールを活用して、機能 性 RNA の機能解明に取り組む。また、ヒト疾患に関連する機能性 RNA 及び発生・分化など をはじめ細胞機能に重要な働きを示す数十個の機能性 RNA 候補の機能解析を行い、医薬品 開発や再生医療等に有用な基盤知見の取得や、基盤技術の構築を目指す。 ・中間目標(平成19年度) 二次構造、機能を有する RNA 配列を推測する。機能性 RNA の分子機構の発現に必須の因 子を同定するとともに、必要な実験系の確立を行う。また、疾患関連等の細胞をターゲッ トに機能解析を行うことができる実験系を確立する。 2)目標設定の理由 三つの研究開発項目である、①機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティ クス技術の開発、②機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発、③機能性 RNA の機 能の解明、に沿った目標設定であり、実用化進展を踏まえて幅広く捉えた目標内容でもあ る。世界的にも競争の激しい分野であり、確実な基盤知見の取得、基盤技術の構築を目指 し、産業化への出口イメージをも踏まえた目標となっている。 2. 事業の計画内容 2.1 研究開発の内容 三つの研究開発項目に含まれる研究開発テーマは以下のとおりである。 研究開発項目① 「機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発」 ①-1.機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス技術の開発 ①-2.ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測 ①-3.機能性 RNA データベースの構築 研究開発項目② 「機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発」 ②-1.RNA のマススペクトロメトリー法の開発 ②-2.機能性 RNA を in vivo で計測するシステムの開発 ②-3.機能性 RNA の高感度検出システムの開発 3 ②-4.RNA の新規合成基盤技術開発と化学分子設計 研究開発項目③ 「機能性 RNA の機能解析」 ③-1.ヒト疾患に関連する機能性 RNA の迅速で高効率な同定 (1)ヒト疾患に関連する機能性 RNA の同定と機能解析 (2)尋常性乾癬に関わる RNA の機能解析 (3)機能性 RNA 解析に基づくゲノム医学研究 ③-2.機能性 RNA に関する基盤的知見の獲得とそれを基にした機能性RNA同定 (1)機能性 ncRNA の多面的選別法の確立と機能解明 (2)マイクロ RNA の作用機構の解明 (3)アンチセンス RNA の機能解析 2.2 研究開発の実施体制 本研究開発は、平成17年度に経済産業省産業技術環境局研究開発課及び製造産業局生 物化学産業課において基本計画を策定し事業を実施したが、平成18年度以降は、独立行 政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO技術開発機構」という)に おいて委託して実施した。「委託契約事務の取扱に関する機構達(平成15年機構達第8 号)第14条 公募によらない場合の適用基準」に基づき、NEDO技術開発機構におい て公募による研究開発実施者の選定は行わなかった。 また、独立行政法人産業技術総合研究所生物情報解析研究センター センター長 渡辺公 綱を研究開発責任者(以下「プロジェクトリーダー」という)とし、その下に研究者を可 能な限り結集して効果的な研究開発を実施した。 4 研究体制 (機能性RNAプロジェクト) 経済産業省 NEDO PL 渡辺 公綱 (生物情報解析研究センター長) 社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアム (JBIC) SL 浅井 潔 (東大) SL 鈴木 勉 (東大) 研究開発項目① 「機能性RNAの探索・解析のた めのバイオインフォマティクス技術の開発」 研究開発項目② 「機能性RNA解析のための支援 技術・ツールの開発」 機能性RNA解析研究委員会 SL 廣瀬 哲郎 (産総研) 「総合調査研究」 集中研② 産総研 集中研① 産総研 JBIC、産総研、インテックW&G 、 東大(浅井)、 みずほ情報総研、三菱総合研究所 集中研③ 産総研 JBIC、産総研、ノバスジーン、 DNAチップ研究所、日本新薬、ヤマサ醤油 JBIC タイム24 JBIC、産総研 阪大(岡部)、東工大(相澤) 東大本郷(鈴木)、東大柏VP(鈴木) 分室 研究開発項目④ 研究開発項目③ 「機能性RNAの機能解析」 分室7 分室4 日本新薬 島津 製作所 分室2 分室9 分室6 分室5 東大(1) (浅井) 産総研(1) (金) 三菱総合 研究所 東大(3) (陶山) 慶大(1) (榊原) 東大(2) (鈴木) 阪大 (岡部) 東工大 (相澤) 弘前大 (牛田) 徳島大 (塩見) 岡山大 (清水) 東大(4) (和田) 産総研(2) (渡辺) 大塚製薬 東レ 北陸先端大 (藤本) 北大 (金城) 分室13 分室11 DNA チップ研 ノバス ジーン みずほ 情報総研 日立 製作所 協和発酵 ヤマサ 醤油 インテック W&G 共同 実施 分室12 分室8 産総研(3) (廣瀬) 京大 (辻本、山中) 千葉大 (関) 理研 (清澤) (注)分室1、分室3、分室10は体制変更により欠番 2.3 研究の運営管理 研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDO技術開発機構は、経済産業省、プロジ ェクトリーダー(PL)である渡辺公綱、及び委託先である社団法人バイオ産業情報化コン ソーシアム(JBIC)と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに本 事業に照らして運営管理を実施した。 具体的には、渡辺公綱PLを委員長とした「機能性RNA解析研究推進委員会」を組織し、 原則月1回「サブリーダー会議」を開催した。各分室・共同実施先からは毎月「月報」を提 出してもらい、サブリーダー会議においてレビューを行った。本委員会は「お台場機能性R NAコロキウム」(研究進捗討議会)を年間に8回程度開催し、各研究開発項目間における 情報交換の場とした。「研究進捗報告会」(全体会議)を原則年1回開催し、外部委員を招 集し、プロジェクト方針についての助言を得た。さらに、平成19年1月には「研究進捗状 況ヒアリング」を2日間に渡って開催し、その結果を次年度の研究実施計画に反映させた。 それぞれの開催実績は以下の通りである。 5 慶大(2) (金井) サブリーダー会議: プロジェクトリーダー(PL)、3名のサブリーダー(SPL)および3名のJBICの プロジェクト担当者が原則毎月会合し、プロジェクトの運営について協議・決定した。 (メンバーは下表参照) 2005年度 9/9, 11/18, 12/12, 1/18, 2/1, 3/23 (6回) 2006年度 4/26, 5/24, 6/28, 7/24, 9/19, 10/25, 11/27, 12/19, 1/24, 1/29, 3/28 (11回) 2007年度 4/11, 4/18, 5/17, 6/12 氏 名 (4回) 所属・役職 渡辺 公綱 PL 産総研 生物情報解析研究センター・センター長 浅井 潔 SPL① 鈴木 勉 SPL② 東京大学大学院工学系研究科 ・准教授 廣瀬 哲郎 SPL③ 産総研 生物情報解析研究センター・チーム長 佐藤 清 委託先 JBIC・事務局長 菊池 泰弘 委託先 JBIC 研究開発本部 ・担当部長 清水 紀代 委託先 JBIC 研究開発本部 ・アシスタントマネジャー 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 ・教授 産総研 生命情報工学研究センター・センター長 月報: 各グループ(分室、共同実施先)の業務管理者または主要研究員が、翌月の5日までに、 A4版1ページに進捗状況を記載し、SPLにメールで提出した。 (秘密情報を含む場合は パスワード保護をかけるか、または郵送とした) 上記サブリーダー会議において、各S PLがお互い担当テーマの状況を紹介した。多岐にわたるプロジェクト各テーマの進捗概 要を把握するのに非常に有効であった。 お台場機能性RNAコロキウム(研究進捗討議会): 原則月1回の頻度で、集中研(お台場)において開催した。3名の研究員が研究進捗状 況を報告し、ディスカッションを行った。時により、学会参加報告会とした。毎回40名 程度の参加があり、活発な情報交換の場となった。(開催一覧参照) 研究進捗報告会(全体会議): 2005年10月3日 13:00~18:00 キックオフ・ミーティング 各グループの研究計画紹介。参加者101名。 2006年2月22日 13:00~18:00 平成17年度研究進捗報告会 各グループの研究報告。外部評価委員2名。参加者87名。 6 2007年2月23日 10:00~18:00 平成18年度研究進捗報告会 各グループの研究報告。外部評価委員4名。参加者97名。 研究進捗状況ヒアリング: 2007年1月23日および24日 (両日とも10:00~18:00) 「機能性 RNA 解析研究推進委員会」が各グループ(集中研、分室、共同実施先)の研究進 捗状況を個別にヒアリングし、評価を行なった。この評価結果に基づき、次年度(平成1 9年度)の研究実施計画(体制、予算配分)を決定した。 3. 情勢変化への対応 上述の「研究進捗状況ヒアリング」において、実施体制の見直しを行った。その中で、 テーマ③-1-(2) 「尋常性乾癬に関わる RNA の機能解析」については、当初予定してい た臨床検体の入手ができておらず、研究が大幅に遅れてしまい、今後の改善の目処も立た ないため、平成18年度をもって本テーマは中止することとした。この結果、ジェノダイ ブファーマ株式会社(分室10)と東海大学(共同実施先)を研究実施体制から外した。 また、テーマ②-2「機能性 RNA を in vivo で計測するシステムの開発」については、標 識した RNA を細胞内に取り込ませる技術の確立に手間取り、研究が大幅に遅れてしまった。 そこで、当面は、本テーマは中断することとし、計画通り進捗しているテーマ②-3「機 能性 RNA の高感度検出システムの開発」の方に研究資源を集中することとした。その他の テーマについても、評価結果を平成19年度の予算配分に反映させた。 一方、テーマ②-1「RNA のマススペクトロメトリー(質量分析技術)の開発」は、本プ ロジェクトを支える重要なツール開発であり、世界的に見ても日本発のオリジナルな技術 である。実施計画をはるかに上回るペースで開発が進んでいることから、NEDO技術開 発機構が独立行政法人に移行する際に新設された、著しい成果を挙げているプロジェクト に対して追加的な資金を投入する「加速財源制度」を活用し、平成19年4月にフーリエ 変換型質量分析装置を導入した。本装置は、2005 年にサーモエレクトロン社が発売したも ので、質量分解能が飛躍的に高く、創薬分野や精密化学分野では必要不可欠な装置として の定評を得ている。RNA 研究に応用されるのも時間の問題と思われ、本プロジェクトが築き 上げた優位性を確保するために、いち早く本装置を導入することとした。 7 お台場機能性RNAコロキウム開催一覧 第1回 2006年11月29日(火)16:30~19:00 参加者40名 金 大真 (産総研) 「RNA のバイオインフォマティクス研究の課題と展望」 堀 邦夫 (ノバスジーン) 「蛍光相関分光法による核酸分子の挙動測定」 廣瀬 哲郎 (産総研) 「mRNA 型 ncRNA の研究法についての考察」 第2回 北川 相澤 牛田 2006年12月12日(月)15:00~17:00 参加者42名 英俊 (日本新薬) 「新しい保護基 CEM を用いた RNA の化学合成法の開発」 康則 (東工大) 「ヒト間葉系幹細胞を用いた機能性 RNA 研究の展望」 千里 (弘前大) 「線虫を材料として用いた機能性 RNA 研究の利点」 第3回 浅井 村田 森川 2006年1月18日(水)13:00~15:00 参加者44名 潔 (東大) 「革新的なRNA配列情報解析技術の開発」 成範 (DNA チップ研) 「MPEX法を用いた RNA の微量検出法の構築」 實 (ジェノダイブファーマ) 「尋常性乾癬に関与する機能性 RNA」 第4回 齋藤 清澤 塩見 2006年3月23日(木)13:30~15:30 参加者41名 輪太郎 (慶応大) 「センス・アンチセンス RNA のバイオインフォマティクス」 秀孔 (理研) 「センス・アンチセンス RNA の網羅的発現解析」 美喜子 (徳島大) 「マイクロ RNA の機能発現に関与するタンパク質因子の解析」 第5回 2006年4月20日(木)13:30~16:00 参加者48名 榊原 康文 (慶応大) 「確率文法とカーネル法による RNA 配列情報解析技術の開発」 鈴木 勉 (東大) 「RNAのマススペクトロメトリー法の開発」 関 直彦 (千葉大) 「ヒト腫瘍組織を用いた機能性 RNA の発現解析」 第6回 浜田 斎藤 吉田 2006年5月29日(木)13:30~15:30 参加者47名 道昭 (みずほ情報総研) 「RNA の二次構造に着目した革新的な配列解析アルゴリズムの開発」 博英 (京大) 「機能性モチーフとその結合蛋白質を用いたリボスイッチの構築」 哲郎 (協和発酵) 「ユニークな培養細胞系からの新規マイクロ RNA のクローニングと機能解析」 第7回 2006年6月28日(水)13:00~15:00 参加者41名 金 大真 (産総研 CBRC) 「データベース関連の最近の状況について」 長尾 一生 (JBIC研究員) 「機能性 RNA を in vivo で計測するシステム及び高感度検出システムの開発」 井手上 賢 (JBIC研究員) 「H-inv 登録 Non-codingRNA 候補の細胞内局在と RNA 制御因子の作用につい て」 第8回 2006年7月19日(木)13:00~15:30 参加者41名 *学会参加報告 加藤 敬行 RNA2006 Annual Meeting of RNA Society (Seattle, 米国) 渋谷 利治 RNA2006 Annual Meeting of RNA Society (Seattle, 米国) 廣瀬 哲郎 RNA2006 Annual Meeting of RNA Society (Seattle, 米国) + 日本 RNA 学会年会 井手上 賢 IUBMB International Congress (京都) + 日本 RNA 学会年会 長尾 一生 IUBMB International Congress (京都) 相澤 康則 Cold Spring Harbor Laboratories Symposium"Regulatory RNA" (New York, 米国) +日本 RNA 学会年会 牛田 千里 Cold Spring Harbor Laboratories Symposium"Regulatory RNA" (New York, 米国) +日本 RNA 学会年会 *番外 金 大真 (産総研) 「バイオインフォマティクス・ツールの解説」 第9回 2006年9月19日(火)15:30~17:30 参加者38名 佐藤 健吾 (JBIC 研究員) 「Benasque 会議(機能性 RNA ワークショップ、スペイン)の報告」 植竹 弘一 (日本新薬) 「RNA の新規合成基盤技術開発と化学分子設計」 8 相澤 康則 (東工大) 「ヒト間葉系幹細胞(hMSC)の分化に関わる ncRNA の探索」 第10回 2006年10月23日(月)15:30~17:30 参加者26名 村田 成範 (DNA チップ研究所) 「マイクロアレイ上での酵素反応系を用いた短鎖 RNA の微量検出法の構築」 田中 正史 (ジェノダイブダーマ) 「尋常性乾癬感受性領域に発現する ncRNAs」 牛田 千里 (弘前大) 「Movement of C. elegans small ncRNAs in oogenesis, fertilization and early embryonic cell division.」 第11回 2006年11月27日(月)15:00~17:00 参加者45名 塩見 美喜子 (徳島大) 「ショウジョウバエ Aubergine と rasiRNA を介して起こる RNA silencing」 吉田 哲郎 (協和発酵) 「ヒトマスト細胞からの miRNA の単離と発現解析」 加藤 敬行 (東大) 「RNAi 活性に影響を及ぼす因子の同定と高効率 siRNA 設計法の開発」 第12回 2006年12月19日(火)15:30~17:30 参加者36名 井上 丹 (京大) 「ncRNA の機能制御システムの開発」 寺澤 和哉 (京大) 「分化に関わる miRNA の同定とその機能解析」 清澤 秀孔 (理研) 「ヒト組織、及び腫瘍組織におけるセンス-アンチセンス RNA の発現解析」 第13回 2007年4月18日(水)15:00~17:00 参加者43名 *最近の国際学会レポート 佐藤 健吾 (CBRC): BIRD 2007 加藤 敬行 (東大): キーストーンシンポジウム 櫻井 雅之 (東大): ゴードン会議 長尾 一生 (JBIRC): 生物物理学会 青木 一真 (JBIRC): RNA2006Izu 井手 上賢 (JBIRC): RNA2006Izu 第14回 2007年5月17日(木)15:30~17:30 参加者39名 木立 尚孝 (CBRC) 「RNA 配列多重アラインメントツール Murlet」 上田 宏生 (東大) 「RNA マスフィンガープリント法の開発」 佐々木 保典 (BIRC) 「ヒト機能性RNAの基盤的特性の発見」 4.評価に関する事項 NEDO技術開発機構は、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、 成果の技術的意義並びに将来の産業への波及効果について、外部有識者による研究開発の 中間評価を平成19年度に、事後評価を平成22年度に実施する。また、中間評価結果を 踏まえ必要に応じ、プロジェクトの加速、縮小、中止等見通しを迅速に行う。なお、評価 の時期については、当該研究開発に係わる技術動向、政策動向や当該研究開発の推進状況 等に応じて、前倒しする等、適宜見直するものとする。 9 Ⅲ. 研究開発の成果について 1. 事業全体の成果 生命現象が分子レベルで語られるようになって以来、生命活動のための主なゲノム情報 はタンパク質の形で機能発現すると考えられてきた。今世紀に入って、ポストゲノムの大 規模トランスクリプトーム解析が行われた結果、驚くべき事に哺乳類のゲノムの大部分は RNA の形に転写されていることが明らかになり、数万種に及ぶタンパク質をコードしていな い「ノンコーディング RNA」の存在が明らかになった。こうしてタンパク質発現の仲介者の 役割として認識されていた RNA には、独自の未知機能が存在しており、それらがゲノム→ タンパク質の流れ以外の新しい機能を担っている可能性が浮上した。この発見と前後して 「RNA 干渉」という現象が発見され、そこから派生して見出された矮小なマイクロ RNA が数 千種以上ゲノムにコードされており、タンパク質遺伝子の発現を広範に制御しているとい う新しい知見がこの数年の間に明らかになってきた。マイクロ RNA 研究は日進月歩であり、 様々な重要な生理現象、発生分化、疾患にも深く入り込んでいることから、今では基礎か ら応用研究に至る広大な研究フィールドに成長している。このように奇しくも、RNA 干渉の 発見とトランスクリプトーム解析という二つの方向から膨大な数の機能性のノンコーディ ング RNA(以下、機能性 RNA)が、まさしくポストゲノム時代の象徴として現れ、否応もな く RNA に注目が集まっている現状にある。 RNA は、細胞内を柔軟に移動することができ、時には特異的に修飾され、他のタンパク質 と複合体を形成して多彩な機能を果たすことができる。つまり機能性 RNA の独自な機能や 作用機構を解明することは、これまでゲノム上のタンパク質の配列情報、機能、構造をメ インのターゲットとして展開されてきた創薬や医療応用において、全く新しい視点からの 開発コンセプトをもたらし、機能性 RNA を利用した新しい形の医療技術、創薬、診断技術 などの新規産業の創成につながることが十分期待できる。そこで本研究開発では、RNA 医薬 産業創成を見据えた機能性 RNA の情報学的知見、解析技術開発、基盤的な生物学的知見に ついてそれぞれ強力な研究体制を組織して集中的に研究を実施してきた。機能性 RNA 研究 では、これまでの「タンパク質の読み枠」をベースにした RNA の見方を一新した常識にと らわれない法則性、ユニークな細胞内挙動、そして RNA ならではの新機能を解明する必要 があり、またそのために独自の解析技術の開発も重要となってくる。本研究開発では、1. ゲノム、cDNA 等の塩基配列情報からバイオインフォマティクスによって機能性 RNA を予測 する技術を開発・適用すること、2. 生体内に存在する微量な機能性 RNA を「もの」として とらえ、それらを高感度に検出し解析する為の独自技術を開発すること、3. それらの技術 を結集して重要な機能性 RNA の生体内機能と作用機構を解明することの特徴的な3つの研 究開発項目を設定し、相互に連携しながら研究を展開してきた。各研究開発項目とも、こ れまでに中間目標を十分クリアしており、プロジェクト後半に向けて、さらなる成果が期 10 待される。具体的には、以下のとおりである。 ① 機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 本研究開発項目では、ゲノム配列・cDNA 配列などからの情報技術を用いて機能性 RNA を 網羅的に発見し、その機能を予測するとともに、機能性 RNA データベースを構築し、実験 による計測や機能解析にも貢献する。情報技術による機能性 RNA の発見技術は未成熟なた め、機能性 RNA に特化した配列情報解析技術の開発と、新旧技術の組み合わせによる機能 性 RNA の網羅的発見を平行して実施し、既知の機能性 RNA、網羅的な機能性 RNA 発見の結果 およびその他の情報解析結果を統合した機能性 RNA データベースを構築する。中間目標(平 成 19 年度)は、1)ゲノム配列から機能性 RNA を網羅的に検出するバイオインフォマティ クス技術を確立する、2)機能性 RNA の機能を予測するための情報技術を開発する、の 2 点であり、最終目標(平成 21 年度)は、バイオインフォマティクス技術を活用して新規の 機能性 RNA 候補を網羅的に予測し、機能性 RNA データベースを構築することである。 機能性 RNA の発見のためには、配列の類似性だけでなく、その二次構造に基づいた解析を 行わなければならない。 「機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス技術の開発」で は、膨大な計算時間と記憶容量が必要であった従来手法の限界を克服するため、さまざま なアルゴリズム・ソフトウェアの開発を行った。その結果、二次構造を考慮した RNA 配列 の構造アラインメントを高精度、超高速に行うソフトウェアの開発に成功した。また、機 能性 RNA 候補の機能予測に不可欠な、共通二次構造・二次構造モチーフを抽出するアルゴ リズムを開発した。 「ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測」では、開発したアルゴリズム・ソフトウ ェアを積極的に活用し、ゲノムのシンテニー領域、ヒトゲノム内の相同領域等を中心に解 析、約20万箇所の候補領域から 1 万箇所以上の有望な機能性 RNA 候補を抽出するととも に、miRNA 予測に関する新手法を開発して 330 個の新規 miRNA 候補を発見した。また、個別 の機能解析に繋げるために、これらの機能性 RNA 候補のマイクロアレイによる発現解析を 機能解析グループと共同で開始した。 「機能性 RNA データベースの構築」では、既知の機能性 RNA に関する配列、文献、マッ ピング情報と、網羅的に予測された機能性 RNA 候補の情報を統合することにより、機能性 RNA の発見・機能予測を支援する情報基盤を提供することを目的に、UCSC ゲノムブラウザ に独自の解析結果・情報を統合した UCSC GenomeBrowser for Functional RNA と、機能性 RNA の配列情報ブラウザ fRNAdb を開発した。 ② 機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発 機能性 RNA 研究を強力に推進していくためには、新しい技術論・方法論の導入が求めら れている。本研究開発項目では、機能性 RNA を迅速かつ定量的に、そして網羅的に解析で きる支援技術・ツール開発を行う。特に、発生や分化、疾患により変動する RNA を解析す 11 るため、測定感度を極限まで高めることで、細胞から抽出した微量な機能性 RNA を直接、 測定する技術・手法を開発する。中間目標として、機能性 RNA を網羅的にかつ定量的に解 析できるバイオツールの開発を目指し、平成 21 年度の最終目標としてサブフェムトモルオ ーダーでの直接解析を掲げた。 RNA マススペクトロメトリーの開発では、生体から抽出した微量な機能性 RNA を高感度質 量分析法によって直接解析することを目指している。転写後プロセシングや修飾など、RNA が有する質的な情報を正確に読み取ることによって、RNA が関与する高次生命現象の解明や 疾患との関連性を明らかにしていくことを目的としている。これまでの研究開発によって、 高感度測定系の構築に成功し、現時点で、すでに、プロジェクトの最終目標値であったサ ブフェムトモルオーダーでの直接解析をクリアしている。この手法を駆使し、piRNA の末端 修飾構造の同定や miRNA の直接プロファイリングなど、これまでの手法では不可能であっ た解析に成功している。また、RNA マスフィンガープリント法の開発に成功し、RNA マスス ペクトロメトリーで得られた RNA 断片の質量情報のみを用いて、ヒトおよびマウスゲノム の表裏(6 ギガ塩基)から RNA の遺伝子領域を迅速に特定することに成功した。また、RNA の微量解析を支援するツールとして、RNA 自動精製装置(往復循環クロマトグラフィー)の 開発にも成功している。 RNA 医薬品の開発を目的とした RNA の新規合成基盤技術開発では、高品質かつ安価な RNA の化学合成技術を確立することに成功した。実際に、この手法により、長鎖 RNA(110 塩基) の化学合成に成功し、生物活性を確認することができた。高品質かつ安価な合成 RNA を供 給するシステムが整いつつあり、実用化と事業化に現実味を帯びてきた。 機能性 RNA の検出・同定技術の開発では、超高感度(アトモルレベル)まで高めたマイク ロアレイ技術を開発し、機能性 RNA の高精度な発現変動解析を目標としている。日本発で オリジナリティの高い Photo-DEAN 法および MPEX 法の開発に成功し、数アトモルのマイク ロ RNA を定量的に解析することに成功した。 本研究開発項目の技術開発は順調に進行しており、特に RNA マススペクトロメトリーの 開発では、世界的に見てもオリジナリティの高い成果が上がっている。今年度は加速予算 の割り当てもあり、後半に向けて更なる技術の成熟と、本技術を活用した RNA の機能解析 を積極的に行っていく予定である。 ③ 機能性 RNA の機能解析 研究開発項目③では、機能未知の ncRNA 群の中から重要な機能を果たしている機能性 RNA を取得し、その機能解明を行うことを目指す。中間目標(平成 19 年度)は、様々な側面の 解析から機能性 RNA 候補をできるだけ多く取得し、それらの実験系を整備することであり、 最終目標(平成 21 年度)は、その中から重要な機能性 RNA の機能を解明し応用研究への道 筋をつけることにある。ncRNA 群の中でも世界的な激しい競争が予想される miRNA について は、サブ項目③-1 で、参加グループの有する有用かつユニークな細胞系から効率よく機能 12 性 miRNA を単離し、それらをいち早く特許化して医療技術応用を見据えた機能解析を実施 した。一方ほとんど基盤知見がないその他の ncRNA については、サブ項目③-2 で、ncRNA の隠された新規 RNA 特性や生体機能を発見することを目指した。 ③-1 では、再生医療応用やアレルギー疾患関連の細胞から調整した低分子 RNA の大量配 列解析を行い、併せて 1300 種以上の新規 miRNA 候補を取得し特許出願した。さらにこの中 から幹細胞の分化制御活性やマスト細胞の脱顆粒制御活性をもつ機能性 miRNA とそのター ゲットの候補を同定した。また miRNA の個体レベルでの機能解析を実施するために、特定 の miRNA のノックアウトマウスを作製した。その結果、下垂体機能の不全により引き起こ される興味深い表現型を観察し、その原因となる miRNA 標的候補を同定した。この他に癌 臨床検体、iPS 細胞、培養細胞分化誘導系において発現が特徴的な miRNA の同定も行った。 これらの成果は世界的に活発な miRNA 研究分野の中でも、十分オリジナリティの高い成果 であり、これらの miRNA を用いたさらなる応用研究への展開が期待できる。 ③-2 では、データベースから選別した長鎖 ncRNA 候補を解析対象として、組織レベルと 細胞レベルでの機能部位に関する基盤情報を取得した。その結果、調べた 70%の ncRNA が 組織特異的発現パターンを示すこと、さらに mRNA とは異なり多くの ncRNA が核内に局在し ているという二つの基盤的特性を見出した。核内 ncRNA の機能解析には、近年の常套法と なっている RNA 干渉は、細胞質中の mRNA にのみ有効であるので用いる事はできない。そこ で核内 ncRNA の機能解明のために、核内 RNA の効率よいノックダウン系を世界に先駆けて 開発し、さらにノックダウン効果を解析するための機能解析系の整備を進めた。また長鎖 ncRNA のなかでも特に他の遺伝子とセンス-アンチセンスペアを形成する転写物をヒト、マ ウスから約 3000 ペア選別し、ヒトの腫瘍組織などで発現バランスが変動するペアを多数発 見した。このほかに間葉系幹細胞の分化に伴って発現変動する ncRNA を複数取得した。ま たヒトでは困難な細胞系譜に乗取った ncRNA 機能解析を行うために線虫から機能性低分子 ncRNA 候補を取得した。 miRNA 経路の中心的な因子である Argonaute のファミリーでショウジョウバエの生殖組織 で特異的な Piwi, Aub, Ago3が、新規低分子 piRNA 群と結合していることを見出した。500 種類以上の新規 piRNA を同定し、これらが主にゲノム中の可動性因子を由来にした低分子 RNA で、Piwi などと結合し、生殖組織でゲノム不安定化を抑制するために機能しているこ とが明らかになった。さらに miRNA とは全く異なる piRNA の生合成経路のモデルを提唱し、 piRNA の両末端形成機構に関する基盤を確立した。 全体的に、当初掲げていた中間目標を問題なくクリアし順調に次のステップに向け研究 が進行している。③-1 では予想以上の多数の機能性 miRNA を取得し特許化まで漕ぎ着け、 すでに順調に機能解明研究に移行している。③-2 でも長鎖 ncRNA についての基盤特性とそ れに即したオリジナルな解析系が確立され、piRNA についての全く新しい機能と生合成に関 する知見を得る事ができた。ncRNA 全般をカバーした質の高い研究が展開しており、今後さ らなる深部への ncRNA の機能解明が進むことが期待できる。 13 2. 研究開発項目ごとの成果 研究開発項目① 機能性 RNA の探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 実験による計測や機能解析の前段階として、本研究開発項目では情報技術を用いてゲノ ム配列・cDNA 配列などから機能性 RNA を網羅的に発見し、その機能を予測する。また、発 見した機能性 RNA の臓器特異的な発現をマイクロアレイによって解析し、機能解析のため の情報を提供する。さらに、既知の機能性 RNA、網羅的な機能性 RNA 発見の結果およびその 他の情報解析結果を統合した機能性 RNA データベースを構築する。 中間目標:平成19年度 ゲノム配列から機能性 RNA を網羅的に検出するバイオインフォマティクス技術を確立す る。機能性 RNA の機能を予測するための情報技術を開発する。 最終目標:平成21年度 バイオインフォマティクス技術を活用して新規の機能性 RNA 候補を網羅的に予測し、機 能性 RNA データベースを構築する。 ①-1.機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス技術の開発 集中研① 共同実施先: 産総研①、東京大学(1;浅井)、慶応義塾大学(1;榊原) みずほ情報総研 機能性 RNA には、3文字ずつ翻訳されるタンパク質コード遺伝子に見られる文字列とし ての統計的な情報は少ないため、情報技術による機能性 RNA 発見に関する既存技術は限ら れている。また、機能性 RNA においては配列の類似性だけでなく、その二次構造をみなけ れば分類や機能推定が難しいが、RNA 配列からの二次構造予測の制度には限界があり、二次 構造を考慮した配列の比較・整列技術も実用的な既存技術は存在しない。そこで、配列の 潜在的な二次構造に基づいて配列を比較・整列する技術、配列群から共通二次構造を抽出 する技術を開発し、論文発表とウェブサーバ公開を行った。 RNA 配列の潜在的な共通二次構造と配列類似性を同時に考慮しながら厳密に整列させる ためには、長さ L の配列 N 本に対して、O(L3N)の計算時間と O(L2N)の記憶容量が必要であ る(Sankoff アルゴリズム)ことが知られている。これでは、2本の配列の整列であっても、 10倍長い配列に対しては100万倍の計算時間がかかり、数百塩基程度の配列の整列に 必要なメモリが通常の計算機のメモリ量をはるかに超えてしまうため、ゲノムレベルの解 析に利用することは全く不可能である。そのため、現実的な計算時間と記憶容量で配列の 比較・整列を行うため、主に次の3種類のアプローチを用いた。 (1) Sankoff アルゴリズムの動的計画法において、整列させる範囲の限定、構造の分岐 の粒度の制限、塩基対間の距離の制限を組み合わせて高速化する方法。 14 (2) 二次構造を形成するステム領域の 5’側と 3’側の整列を独立に行い、ステムの整合 性は後処理することによって大幅に計算時間と記憶容量を節約する方法。 (3) 各配列から抽出された二次構造を考慮した特徴量の比較を、カーネル法を用いて効 率的に計算することにより、配列を直接整列させることを回避する方法。 これらの技術では、以下の既存技術、アルゴリズムが特に重要である。 ・ 任意の塩基同士が相補塩基対を形成する確率行列を計算する McCaskill アルゴリズム ・ RNA 配列の二次構造を解析するための確率文脈自由文法(SCFG) ・ 2本の配列の共通二次構造を考慮しながら配列の整列を行うためのペア確率文脈自由 文法とその構文解析アルゴリズム(Sankoff アルゴリズムに相当) ・ 期待精度最大(MEA: Maximum Expected Accuracy)原理に基づく整列 大幅に高速化、省メモリ化した近似 Sankoff アルゴリズムの実現(産総研①、東京大学) (1)のアプローチによって、200塩基程度の配列群に対する Sankoff アルゴリズム が通常の計算機で実行できるソフトウェア Murlet(http://murlet.ncrna.org)を開発し、 整列の精度で世界最高性能を達成した(Bioinformatics 誌に採録、2007)。動的計画法の領 域制限を領域の幅によって行うと、その幅を配列長の差以上に取らなければならないため、 配列群の配列長が均一でないと著しく効率が低下する。そこで、MEA 原理に基づくアライン メントを基準として動的計画法の領域を設定して効率化した。同時に二次構造モジュール の分岐箇所の粒度を制限することによっても大幅に高速化した。 図①-1-1 (DP 領域の制限。(a) MEA 原理に基づく初期アラインメント (b) 初期アラ インメント近傍に制限された DP 領域 (c) 一致確率の低い部分を削った DP 領域 (d) 制限 された分岐可能場所を点で示した ステム候補の整列による RNA の超高速整列(東京大学、産総研) (2)のアプローチによって、数千塩基の RNA 配列を二次構造を考慮して整列させる高 精度なソフトウェア SCARNA(http://scarna.ncrna.org)を開発した。2本の配列の比較・ 整列では現実的な計算時間で実行できない Sankoff アルゴリズムを除けば世界最高性能を 達成した(Bioinformatics 誌に採録、2006)。さらにアルゴリズムを配列群の多重整列に拡 張した MXSCARNA(http://mxscarna.ncrna.org)を開発し、世界最高速と最高性能を同時に 達成した(投稿中)。この手法では、MaCaskill アルゴリズムによって得られた各 RNA 配列 15 の塩基対確率行列からステム領域の候補を抽出し、その固定長の構成要素の 5’側と 3’側 を技巧的な動的計画法によって整列させる。多重整列においては配列群の塩基対確率行列 を平均化することによってロバストな共通ステム候補を抽出できることが明らかとなった。 図①-1-2 MXSCARNA による多重構造アラインメントの精度と計算速度。 (左図) SPS (Sum of Pairs Score)および MCC (Mathew’s Correlation Coefficient) による多重アラインメ ントの精度と配列相同性の関係。MXSCARNA が両方の指標で安定した精度を示している。 (右 図)配列長と計算時間の関係。二次構造を考慮したアラインメント手法では MXSCARNA が唯 一、大規模解析に適用可能であることがわかる。 配列群からの共通二次構造の抽出(みずほ情報総研、産総研、東京大学) 配列群の塩基対確率行列に基づくステム領域候補の集合から、機能性 RNA の機能に関連 した二次構造モチーフを抽出するための、グラフ理論を駆使した新規性の高い手法を考案 し 、 ソ フ ト ウ ェ ア RNAmine ( http://rnamine.ncrna.org ) を 開 発 し た ( 特 許 出 願 、 Bioinformatics 誌に採録、2006)。配列群のステム候補は全体のクラスタリングによるタク ソノミーと配列ごとのラベル付有向グラフでモデル化され、指定した条件を満たす二次構 造モチーフはすべて列挙される。この手法では、配列群の一部にのみ含まれるモチーフの 抽出も可能なため、二次構造未知の配列群の解析に適用可能である。 共通二次構造を考慮した RNA 配列群の多重アラインメントは計算量の面で困難な作業の ため、不完全な多重アラインメントからより正確な共通二次構造を抽出する技術も重要で ある。そのため、RNA 配列群の多重アラインメントから MEA 原理を活用して精度の高い共通 二次構造を抽出する手法(McCaskill-MEA)を開発した(Bioinformatics 誌に採録、2007)。 確率モデルとカーネル法による RNA の構造アラインメント(慶応大学、集中研①) (3)のアプローチによって、配列群の多重アラインメントを直接計算することなく、形 成しうる全ての二次構造を考慮に入れたカーネル関数であるステムカーネルを設計した。 16 カーネル法の代表的な手法であるサポートベクタマシンに適用し、機能性 RNA のファミリ ー分類において非常に高精度の識別を実現した(国際会議 BIRD2007 に採録、論文誌に投稿 中)。さらに、ゲノムブラウザなどから得られる複数ゲノムの多重アラインメントを入力と し、進化による塩基置換も考慮に入れたカーネル関数であるプロファイルステムカーネル を開発した(投稿準備中)。 確率文脈自由文法に基づく RNA 構造アラインメント法 PHMMTS(http://phmmts.ncrna.org) に用いる塩基置換スコア行列を条件付確率場によって推定する手法を開発した。本手法に より推定した塩基置換スコア行列を用いることによって、既存の手法のものよりも高い精 度 の RNA 構 造 ア ラ イン メ ン ト を得 ら れ る こと を 示 し た( 国 際 会 議 ISBM/ECCB2005 、 Bioinformatics 誌に採録)。 また、PHMMTS を拡張し、位置特異的スコア行列を導入したアルゴリズム PSSMTS を開発し た。与えられた共通二次構造を元に、整列されていない配列群から EM アルゴリズムを用い て位置特異的スコア行列を学習する。相同性が低い場合においても、PSSMTS は既存の手法 よりも高い精度で RNA ホモロジー検索が可能であることを示した(Journal of Mathematical Biology 誌に採録予定)。 ①-2.ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測 集中研①、分室2(インテック W&G) 共同実施先: 産総研①、東京大学(1;浅井)、三菱総合研究所 18 年度までに開発したアルゴリズムを積極的に活用し、ヒトゲノムから機能性 RNA を網 羅的に予測するパイプラインを構築した。 「シンテニー領域からの機能性 RNA の予測」では、 アルゴリズムチームの項目で開発した Scarna アルゴリズムを使ってオーソロガスな遺伝子 間領域をアライメントし、このアライメントに基づき機能性 RNA を発見する。このパイプ ラインは、相同性は低いが 2 次構造が強く保存された機能性 RNA の検出に適している。 「ヒ トゲノム同士の比較から得られるアライメントに基づく機能性 RNA の予測」ではヒトゲノ ム同士の比較により得られる相同領域から機能性 RNA を予測する。このパイプラインは、 ヒト特異的な機能性 RNA を発見できる可能性を秘めている。 「miRNA に特化した予測手法に よる機能性 RNA の予測」では、昨年度開発した隠れマルコフモデルによる miRNA の発見手 法を用いることにより、高精度に miRNA を発見することが出来る。 「共通 2 次構造モチーフ の抽出に基づく機能性 RNA の予測」では、アルゴリズムチームにより開発された RNAmine が用いられており、多数の遺伝子からなる機能性 RNA のファミリーの発見に適している。 パイプラインで予測された 20 万箇所以上の機能性 RNA 候補の中から、有望なものを後合計 11,588 領域選択し、マイクロアレイによる発現確認を実施している。マイクロアレイはコ ストパフォーマンスに優れた Agilent 社の 60mer のカスタムオリゴアレイを採用した。プ ローブ配列は Oligoarray2.0 を用いて自前で設計した。アレイ実験はヒトの主要な組織を 対象としており、発現確認に加えて組織特異的な機能性 RNA を発見することができる。 17 図①-2-1 ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測のためのパイプライン シンテニー領域からの機能性 RNA の予測 4生物種(ヒト、イヌ、マウス、ラット)のゲノムおよび遺伝子情報の比較により得ら れるオルソロガスな遺伝子間領域に対し、従来の配列相同性によるマルチプルアラインメ ントではなく、RNA2次構造を考慮したマルチプルアラインメントを適用することで、2 次 構造が強く保存されている領域を検出し、これらの 2 次構造保存領域から新規の機能性 RNA 候補の抽出を行った。 このパイプラインでは、オルソロガスな遺伝子間領域に対し、高相同性領域を特定した のち、これらの高相同性領域間を Scarna アルゴリズムによって RNA2次構造考慮のマルチ プルアラインメントを行う。Scarna アルゴリズムでは、4 生物種の配列をアラインメント する場合には、数千塩基長程度が実効上の限界であるため、オルソロガスな遺伝子間領域 全域を一度にアラインメントすることができず、高相同性領域で分割してアラインメント している。ここで得られたマルチプルアラインメントに対して RNAz を実行する。このパイ プラインにより 3,200 個の機能性 RNA 候補を得た。これらの機能性 RNA 候補に対してマイ クロアレイによる実験を進めている。 18 ゲノム情報 たんぱく質遺伝子情報等 4生物種のゲノム、たんぱく質遺伝子比較による オルソロガスな遺伝子間領域の抽出 オルソロガスな遺伝子間領域を RNA2 次構造考 慮のアラインメントアルゴリズムでマルチプル アラインメント RNA2 次構造考慮のマルチプルアラインメントに 基づくRNAz による RNA 予測 3,200 個の機能性 RNA 候補 図①-2-2 シンテニー領域からの機能性 RNA の予測 ヒトゲノム同士の比較から得られるアライメントに基づく機能性 RNA の予測 我々はヒトゲノム配列同士を比較することで得られる相同領域と、既知の機能性 RNA の アノテーションがよく一致することを見出し、ヒトゲノム同士の比較に基づく機能性 RNA 予測パイプラインを構築した。このアプローチはヒトゲノム配列だけを用いた比較ゲノム であることから、ヒト特異的な機能性 RNA 発見につながる可能性がある。 このパイプラインでは、まずヒトゲノム同士を Blastz プログラムにより比較してペアワ イズアライメントを得る。そして、このペアワイズアライメントを組み合わせることでマ ルチプルアライメントを構築する。構築したマルチプルアライメントに対して RNAz を実行 する。このパイプラインにより、216,348 箇所の機能性 RNA を予測した。予測した機能性 RNA の中から、Washietl ら(2005)の予測結果と重なるものを 4,889 個、EST データで発現が 確認されたものを 3,648 個抽出し、マイクロアレイ実験を実行中である。 さらに、Blastz のペアワイズアライメントに対して snoSeeker を実行することで 836 箇 所の snoRNA 候補を得た。この中からリピートらしい配列をのぞいた 421 個についてマイク ロアレイ実験を進めている。 19 図①-2-3 ヒトゲノム同士の比較(アライメント)に基づく機能性 RNA の予測 miRNA に特化した予測手法による機能性 RNA の予測 我々は隠れマルコフモデル(HMM)に基づく新しい miRNA 予測手法を開発した(投稿中)。 本手法では、miRNA とその周辺領域の「進化的な保存性」と「2 次構造の特徴」を、多次元 のベクトル配列で表現する。本手法では miRNA を尤度という一つの指標を使って予測する ので、従来からある miRNA 予測で用いられるような恣意的な閾値の導入による悪影響を最 小限にすることができる。我々の手法では、2 クラスの確率モデル(すなわち miRNA モデル と、非 miRNA モデル)を構築する。そして、与えられた未知データの中から miRNA モデル により似ている領域を検出することで miRNA らしい領域を発見する。長いゲノム領域から miRNA 予測するために、Viterbi decoding アルゴリズムを用いる。学習データは、進化的 保存度と2次構造的な特徴を含む多次元ベクトル列として与える。本手法をヒトゲノムに 対して実行し、330 箇所の新規 miRNA 候補を得た。これらの miRNA 候補に対してマイクロア レイによる実験を進めている。 20 図①-2-4 miRNA に特化した予測手法による機能性 RNA の予測 共通 2 次構造モチーフの抽出に基づく機能性 RNA の予測 我々は①-(1)で開発した RNA 配列群からの共通2次構造パターン抽出プログラム RNAmine を用いて、ヒトゲノムの intergenic 領域とイントロンから、配列保存度が高い 100 塩基以 上の配列を抽出し解析を行った。これらの大規模データを直接 RNAmine の入力データとす ることは現状では困難なため、クラスタリングによる前処理を行うことでクラスター単位 での解析を行った。まず、BLASTClust で作成した全てのクラスターに対して RNAmine でモ チーフ抽出を行った。RNAmine の出力結果を RNAforester でアライメントし、RNAz に入力 したときの計算結果の内、特にスコアが高かったものを RNA ファミリー候補とした。解析 の結果、構成メンバーがユニークな配列からなる 25 モチーフを抽出することに成功し、133 箇所の新規機能性 RNA 候補を得た。これらの機能性 RNA 候補に対してマイクロアレイによ る実験を進めている。 21 図①-2-5共通 2 次構造モチーフの抽出に基づく機能性 RNA の予測 ①-3.機能性 RNA データベースの構築 集中研①、分室2(インテック W&G) 共同実施先: 産総研①、東京大学(1;浅井) 機能性 RNA データベースの構築では、つぎのような機能性 RNA に関連する情報を網羅的 に収集している:既知の機能性 RNA に関する情報(配列、文献、マッピング情報等)、プロ ジェクト内部・外部の組織による網羅的予測結果。これらの情報を統合し、新規機能性 RNA の網羅的予測や、機能性 RNA 候補の機能推定を支援する情報基盤を提供することを目的と している。 現在、2つのデータベース:ゲノムブラウザ UCSC GenomeBrowser for Functional RNA と配列情報ブラウザ fRNAdb を開発した(Nucleic Acids Research 2007 Database Issue に 採録)。各データベースの詳細は表1および表2に記載した。 現在の機能性 RNA データベースの用途として、第一に挙げられるのは、機知の機能性 RNA 22 に関する情報の閲覧・検索と、本プロジェクトで予測された新規機能性 RNA 候補情報の閲 覧・検索である。図①-3-1に典型的な検索例を示す。この検索画面から、登録されて いる配列に関する様々な情報を閲覧することができるようになっている。 ①閲覧したい RNA の種類を選択する ② refresh ボ タ ン をクリックする ③配列一覧表示 ④詳細画面へ ④ゲノムブラウザへ 図①-3-1 機能性 RNA データベース fRNAdb の画面の一部。画面は、既知 RNA のなか から、マイクロ RNA 前駆体(miRNA precursor) を選択し、それらの配列一覧を表示させて いるところ。検索結果一覧画面から、個々の配列の詳細画面や、ゲノムブラウザへジャン プして、その遺伝子周辺のゲノム情報を閲覧することも可能になっている。 機能性プロジェクト内部では、機能解析グループにて新規機能性 RNA 遺伝子候補絞込み 作業で頻繁に用いられており、ツール開発グループにおいても一部利用されている。また、 機能解析グループからの要望により、個別の用途に応じた情報の作成にも対応している(産 総研廣瀬グループ、東工大相澤グループ、徳島大塩見グループ、東大グループ) 。データベ ースは 2006 年 10 月からインターネット上で公開しているが(http://www.ncrna.org/)、 23 プロジェクト外では米国、ニュージーランド、フランス、ドイツ、デンマークなどからも 多数アクセスされている。 機能性 RNA データベースは、バイオインフォマティクスグループ内での綿密な連携によ って構築されている(図①-3-2)。 図①-3-2 綿密な連携によるデータベースの構築 24 表①-3-1 ゲノム構造情報ブラウザ UCSC GenomeBrowser for Functional RNA 目的 新規機能性 RNA 遺伝子発見支援 概要 UCSC Genome Browser をベースに、機能性 RNA に特化した情報・機能を追加したも の 追加情報 表1-1 機能性 RNA に特化したトラック情報 Track RNAz folds (6) Description Secondary structure annotation of RNAz ENOR (7) ENOR (Expressed Noncoding Region) [Lifted from mm5] Erdmann (8) Erdmann noncoding RNAs NONCODE (2) Mapping information of NONCODE RNAs RNAdb (3) Mapping information of RNAdb RNAs Small RNA genes often reside close to each other forming clusters. This track represents computationally identified RNA clusters in human genome. Genomic search results with INFERNAL and covariance models generated from RFAM seeds. BLAT mapping results for RFAM full sequence dataset RNA Clusters Rfam seed folds Rfam full antisense ChenJ NAR2004 (9) Sense-antisense pairs among UCSC known genes tRNAscan-SE (10) Ultra Conserved Elements (11) Ultra Conserved Elements 17way tRNA genes predicted by tRNAscan-SE 100% conserved elements (>=200bp) in human, rat, and mouse 100% conserved elements in 17 vertebrates (longer than 50 bp) Transposon Free Region (12) Regions longer than 5Kbp or 10 Kbp containing no LINEs, SINEs and LTRs. Human Accelerated Region (20) Z-score HAR non-coding gene candidates predicted by (20) Regions with Z-score lower (lower is better) than -6 (actual track score=Z-score x 表1-2 マイクロ RNA に特化したトラック情報 Track Known miRNAs Predicted miRNAs Known targets Predicted targets 追加機能 Description miRBase known miRNAs miRNAMap and Berezikov's predicted miRNAs TarBase experimentally verified miRNA target sites RNAhybrid, PicTar, miRBase, and T-ScanS predicted miRNA ・共通 2 次構造表示機能~比較ゲノムの結果から共通 RNA2 次構造を予測した結果を 視覚的に表示する機能を加えた。 ・ユーザー認証機能~ユーザーをユーザー名とパスワードで認証し、ユーザー専用 のトラック情報を扱えるようにした。 25 表①-3-2 配列構造情報ブラウザ fRNAdb 目的 新規機能性 RNA 遺伝子発見支援 概要 ア)以下の配列情報を機能性 RNA 遺伝子候補として、データベースに登録した: (1)H-invitational 完全長 cDNA 配列情報で hypothetical short protein coding、 non-protein coding と分類されているもの (2)RNAdbから、予測 RNA 遺伝子 イ)以下の配列情報を既知 RNA 遺伝子として、データベースに登録した (1)NONCODE データベース登録配列 (2)RNAdb から、既知 RNA 遺伝子 ウ)上記の配列について、機能性 RNA に関連する配列特性30項目の指標を計算機 によって求めた。 エ)30項目の指標に基づいて、配列の検索や絞込みをするためのインターフェー スを開発した 配列特性 表2-1に30項目の配列特性を示す 26 Description 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 Length of the sequence (nt) Number of exons Number of overlapping ESTs Number of mapped positions GC Content (%) Maximum length of potential ORF (aa) Percentage of bases that is covered with repeat elements Repeat elements reside proximal up/down stream Known gene that is a potential sense/antisense of this transcript (exon overlapping Number of protein homologs (GenBank NR) Known gene that includes this transcript within its intron Known gene region that overlaps with the mapping extent of this transcript (strand not considered) Known gene that overlaps with this transcript within its intron in different strand Known gene where this transcript is possibly a part of its 3UTR Known gene where this transcript is possibly a part of its 5UTR Known gene within upstream 5kbp Known gene within downstream 5kbp Average conservation score over the mapped exonic region Maximum conservation score over the mapped exonic region Maximum conservation score within 500 base upstream from the mapped 5' Overlapping UCSC Ultra Conserved region Number of canonical splice signals in this transcript Number of poly-A signals in this transcript Number of CpG island Associated Transposon Free Region Number of RFAM known RNA motifs in this transcript Number of RNAz predictive RNA motifs in this transcript Number of EvoFold predictive RNA motifs in this transcript Maximum Z-score of RNA secondary structure over this transcript. Scores lower than -6 are significant. Higher scores are considered insignificant. Stored Number of cell lines responding to Affy probes in exon regions of this transcript (Affymetrix Transcriptome Phase 2 Tiling Array Analyses) 27 研究開発項目② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 機能性 RNA 研究を強力に推進していくためには、新しい技術論・方法論の導入が求めら れている。本研究開発項目では、機能性 RNA を迅速かつ定量的に、そして網羅的に解析で きる支援技術・ツール開発を行う。成果概要は以下のとおりである。 ②-1 RNA マススペクトロメトリー法の開発 集中研②、分室4(島津製作所) 共同実施先: 東京大学(2;鈴木) 我々は、RNA を“情報”として捉える従来型の解析方法から脱却し、RNA 分子を“もの” として捉える新しい方法論として、微量な機能性 RNA を直接的かつ定量的に解析する RNA マススペクトロメトリーの開発を行っている。この手法では、細胞及び組織より調製した 微量な RNA を直接解析することができる。電気泳動や免疫沈降法によって単離あるいは分 画した RNA を断片化し、高感度質量分析法によって解析することによって、断片の質量を 精確に測定することができるため、各断片に存在する RNA 修飾の解析や、末端構造の詳細 な解析が可能である。さらに、各 RNA 断片の分子量を正確に測定することで、シーケンス 解析をすることなく、in silico 解析によって RNA 遺伝子の配列をゲノム上から迅速に同定 すること(RNA マスフィンガープリント)も可能である。本基盤技術の開発は、RNA が関与 する高次生命現象の解明や疾患との関連性を明らかにしていくことのみならず、将来的な RNA 創薬や再生医療、あるいは RNA を分子マーカーとした新しい診断技術へと応用が期待さ れる。 キャピラリー液体クロマトグラフィー/ナノスプレー型質量分析計による RNA の高感度測定 系の構築 当初、我々はプロジェクトの最終目標 値として、数フェムトモルオーダーでの RNA の微量解析を掲げた。プロジェクト 開始前の測定感度が数ピコモルであっ たことから、測定感度を 3 桁向上させる ことを目指したものである。平成 17 年 度には、質量分析装置の測定パラメータ ーの最適化、キャピラリーナノフロー液 キャピラリーカラム (75-150 μm) 体クロマトグラフィーシステムの構築 (図1)、トラップカラムを用いたオン 図 1 キャピラリー液体クロマトグラフィー/ ライン脱塩システムの構築、溶離液と分 ナノスプレー型質量分析計 離樹脂の検討、イオン源の最適化などを 28 徹底的に行い、1-5 フェムトモルの RNA を高感度で測定することに成功しプロジェクトの最 終目標値を 1 年目にしてクリアするに至った。平成 18 年度は、更なる高感度化を目指し、 サブフェムトモルオーダーでの測定系を構築するという目標値の再設定を行った。解析シ ステムの微調整と条件設定を重点的に行ったところ、実際にサブフェムトモルの RNA を高 感度に測定することに成功した。この成果は微量な RNA を増幅や標識をすることなく、直 接的に測定することに成功したを意味し、PCR やハイブリダイゼーションに頼らない全く新 しい解析技術が誕生したと言える。実際、我々はこれらの手法を RNA の解析に活用してい る。機能未知遺伝子群から網羅的に RNA 修飾遺伝子を探索するアプローチ(リボヌクレオー ム解析)や、RNA 修飾異常に起因する疾患の研究、RNA 修飾が決定する tRNA の細胞内局在化 機構、ncRNA に含まれる RNA 修飾の同定などは RNA マススペクトロメトリーの長所を生かし た研究例である(業績参照)。特筆すべき成果として、マウス精巣に発現している Piwiinteracting RNA(piRNA)の 3’末端が、ほぼ 100%修飾されていることを世界に先駆けて発 見した(Nature Struct. Mol. Biol. 2007)ことなどが挙げられる。測定感度の向上に関し ては、プロジェクトのスケジュールを大幅に前倒して進めることができたため、後半は本 技術を活用した診断技術の開発や RNA-タンパク質のネットワーク解析に生かしていくこと を計画している。 RNA マスフィンガープリント法の開発 通常、微量な RNA の解析法としては、逆転写と PCR を組み合わせた cDNA の解析が一般的で あるが、ランダムプライミングやリンカーライゲーションの効率や PCR 増幅による cDNA の バイアスが生じるため、定量性に欠けるなどの問題点が指摘されている。さらに、末端構 造や塩基修飾など、機能性 RNA が有する質的な情報を読み取ることができないという本質 的な欠点がある。また、クローニングやシーケンスを含めると解析にかかる時間も考慮に 入れなければならない。我々が考案した RNA マスフィンガープリント(RMF)法(図 2)は、 RNA 断片の分子量情報、および CID(collision-induced dissociation)解析によって得られ た内部配列に由来するプロダクトイオンを用い、ゲノム配列から in silico で遺伝子領域 を特定する方法である。RNA 断片の分子量特性を詳細に検討した結果、個々の RNA 断片の分 子量はユニークな値を示すことが判明し、0.2 ダルトン以下の質量精度で測定すれば、個々 の RNA 断片の塩基組成を一義的に決定できることが判明した。この知見を元に、我々は、 RNA 断片の質量をクエリーとしてゲノム配列の表裏からその RNA をコードする領域を in silico で探索するアルゴリズム(Genomic RMF)を開発した(図 3)(特許出願済)。大腸菌、 酵母に加えて、ヒトとマウスの Genomic RMF を開発し、実際にマウス ncRNA の解析データ を用いて、ゲノムの表裏(6 Gbp)上から遺伝子を特定することに成功している。 29 RNP Genome Database ncRNA DB, • snoRNA DB • miRNA DB • tRNA compilation, etc RNA RNase digestion m/z 1268 625 959 2256 1420 569 MS Gp Gp Gp Gp Gp .. .. Gp .. .. RNA遺伝子の同定 末端、修飾構造の同定 RMF Peptide Peptide 4 5 Peptide Peptide 2 3 MS/MS RNAoligo 1 y8 y7 y6 y5 A U A m5C……Gp c4 c1 c2 c3 c y 232 758 356 655 464 455 568 385 758 234 885 128 図 2 RNA マスフィンガープリント法の概略 997.1266 MS 1020.151 : MS測定でのRNA断片 の分子量 分子量/組成データ 位置情報データ 972.1284 / A0U0C2G1 877.1284 / A1U1C0G1 997.1266 / A2U0C0G1 1020.151 / A1U0C2G1 : 断片のゲノム上での位置 出現頻度データ 組成のゲノム上の 出現頻度 ゲノム由来全 RNA を仮想的 に RNaseT で 1切断 877.1284 ゲノム上の組成と結び付ける 972.1284 ゲノム情報から構築した 仮想的なデータベース 予想されるRNAのフレーム長でゲノム上を走査し、スコアの高いフレーム順に順位付け フレーム cGenome フレーム 正解領域 ・ゲノム転写位置の決定 ・RNA配列の同定 図 3 Genomic RMF による RNA 遺伝子のイン・シリコ同定 30 またさらに、RNA 断片の精確な質量情報から塩基組成を求め、CID 解析によって得られた プロダクトイオンを自動的に帰属することで、塩基配列を de novo で決定するためのアル ゴリズム(CID チェッカー)(特許出願準備中)を開発した。このアルゴリズムは、RNA 修飾 部位の特定にも威力を発揮する。また、Genomic RMF と組み合わせることにより、部分的に 決定された配列情報を元に RNA 遺伝子の同定精度を飛躍的に向上させることが可能となる。 RNA マスフィンガープリント法を用いた RNP 中に含まれる RNA の同定 RNA マスフィンガープリント法は、RNA の増幅や標識をすることなく、生の RNA を直接的 に解析し、迅速に遺伝子領域を特定することができる。この手法の最大のアプリケーショ ンは、細胞内に存在する RNA-タンパク質複合体(RNP)を網羅的に解析することで、RNAタンパク質の相互作用ネットワークを明らかにすることである。機能未知な RNA 結合タン パク質を免疫沈降法で精製し、結合している RNA を迅速に同定することで、新規の RNA-タ ンパク質の相互作用を明らかにすることができる。また、これまでによく調べられている RNP を解析することで、既知の RNA 以外に未知の RNA が見つかる可能性も大いに期待できる。 また、網羅的に解析することで、RNA 結合モチーフのないタンパク質にも RNA が相互作用し ている例が見つかる可能性もある。パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)には、約 6000 遺伝子の ORF それぞれにタグ配列が融合された発現ライブラリーが整備されており、各発 現株を培養することで、特定の RNP を得ることが可能である。我々は、この戦略を評価す るために、酵母とヒト培養由来の既知の RNP を解析し、その有効性を確認した。MS 解析か ら Genomic RMF による RNA 遺伝子の特定にかかる時間はわずか 1 時間程度であり、この手 法は網羅的な RNA-タンパク質の相互作用ネットワークの解析に威力を発揮することが期待 される。RNP の精製には、後述する往復循環クロマトグラフィーを用いることにより、多検 体 RNP をハイスループットに精製し、網羅的な解析システムを構築していきたいと考えて いる。 MALDI 型質量分析計による RNA の高感度測定系の構築 MALDI 型質量分析計は、操作が簡便で測定も迅速に行えることから、複雑な混合物の中か ら、特定の分子マーカーを検出したり、全体のプロファイリングを取得する測定系に適し ている。微量な RNA を MALDI 法でイオン化し、高感度で測定するためには、RNA を高効率で イオン化するためのマトリクスの開発が不可欠であった。従来オリゴ核酸はプロトンが付 加された正イオンとして検出されてきたが、我々は、RNA が酸性分子であることの特性を生 かし、RNA を負イオンとして検出することを指標にしてマトリクスを探索した。その結果、 最適なマトリクスを見出し、数フェムトモルオーダーの RNA をイオン化することに成功し た(特許出願済、島津で製品化の予定) 。特に、MALDI 法では出にくいことが知られている、 -2 価を検出することに成功し、より高質量側での測定に活路を見出すことができた。この 31 手法を用い、マウス臓器由来のマイクロ RNA 画分を測定したところ、分子量 7000Da 付近に 個々のマイクロ RNA 由来のシグナルが多数観測された。正確な分子量と CID 解析の結果、 個々のシグナルを各 miRNA 分子に帰属することに成功した。臓器ごとに発現している miRNA のサブセットは異なるパターンを示し、マイクロアレイや cDNA クローニングで文献的に報 告されているデータとよい一致を示した。この手法は、細胞内に発現する微量なマイクロ RNA の集団を増幅や標識することなく、直接的に観測した世界で初めての例である(特許出 願済)。また、検量線を用いることで、個々の miRNA を定量的に解析することができるため、 この方法が実用化されれば、生検サンプルや摘出した臓器由来の miRNA 画分を迅速にかつ 定量的に測定することができるため具体的な診断技術として確立できる可能性が高い。 往復循環クロマトグラフィーを用いた全自動 RNA 精製装置の開発 微量な RNA 分子の単離精製は一般的に困難を極め、経験値やノウハウに左右される難易 度の高い技術である。我々は長年 RNA 研究に携わってきた経験から、細胞内に存在する微 量 RNA を単離精製する技術を開発してきた。我々が考案し実用化したチャプレットカラム クロマトグラフィー(Method Enzymol., 2007)は、複数の DNA 固相化アフィニティーカラム を直列に連結させることにより、一度の操作で複数の RNA 分子を同時に単離精製する技術 である。粗 RNA 画分を循環させることにより、従来のバッチ法と比較して操作性と RNA の 精製効率が飛躍的に向上した。また原理上、カラムに送り込む RNA 試料は無制限であるた め、存在量の少ない RNA の単離にも威力を発揮する。実際に、この手法を用いヒト胎盤由 来未分画 RNA から存在量の少ない(0.1%以下)ミトコンドリア tRNA を全種類(22 種類)、一度 に精製することに成功した。また、さらに微量な miRNA の単離精製にも成功している。し かし、この手法は連結したカラムを切り離して個別に洗浄や溶出を行う必要があり、手作 業による操作が多いのが難点である。また、カラムを直列に連結するとポンプのバックプ レッシャーが高くなり、溶液の循環が困難になるという潜在的な問題もある。我々はチャ プレットカラムクロマトグラフィーの利点と欠点を考慮し、本プロジェクトでは全自動で 多検体 RNA を精製するための装置の開発を目指している。 往復循環クロマトグラフィー(Nucleic Acids Res.,2007)(国際特許出願済)(図 4)は 全く新しい発想から生まれた多検体アフィニティークロマトグラフィーである。マルチピ ペッターが搭載された自動分注機を用い、並列に並べたアフィニティーチップで同時に吸 引、吐出、攪拌を繰り返すことで、全ての試料溶液を全てのアフィニティーチップに均一 に循環させることを基本原理としている。異なる標的分子に対する複数のアフィニティー チップ(RNA の精製には DNA 固相化樹脂)をマルチピペッターに装着することで、試料溶液 を同時に複数のアフィニティーチップに導入することが可能である。また、吸引と吐出後 に試料溶液を撹拌させることで、原理的に吸引吐出量の数十倍の試料溶液からの精製が可 能となる。またアフィニティーチップの作成が容易である点、吸着、洗浄、溶出の全工程 の自動化が可能である点が特に優れている。さらに、マルチピペッターの本数を増やすこ 32 自動分注機 吐出 吸引(結合) N回繰り返し 攪拌(均一化) 細胞からの抽出液 (核酸、タンパク質な どの混合物) 洗浄 個別に溶出 アフィニティーチップ (異なる種類のDNAプローブ、 抗体などを各担体に結合しておく) (洗浄溶液) (溶出溶液) 図4 往復循環クロマトグラフィーの基本原理 とで同時に精製する検体数の拡張が容易である点が挙げられる。すでに我々は、8 検体用自 動分注機をベースとし、DNA 固相化樹脂を詰めたチップカラムを用いることにより、全自動 RNA 精製装置の試作機を完成させている。モデルを立て往復循環クロマトグラフィーの理論 式を構築したところ、カラムに固相化したリガンド(DNA や抗体)と標的分子(RNA やタンパ ク質)とのアフィニティー(平衡定数)により、最終的な収率と充分な精製に必要な往復循 環の回数を見積もることが可能である。一度に吸引する量やチップカラムの本数などを変 化させた場合でも必要回数などの算 出が容易である。このモデルの妥当性 はすでに実験的に確かめられている。 (nt) 1000 800 600 500 本試作機を用い、パン酵母およびマウ 400 300 ス肝臓由来の ncRNA を全自動で単離 200 することに成功している(図 5)。さ らに、抗体を固定化したアフィニティ 100 ーチップを用いることにより、全自動 で多種類のタンパク質を同時に免疫 M は本装置を用いて、様々な ncRNA を単 NA tR mt 90 R1 S N 28 R1 SN R9 SN R5 SN R1 SC U6 U4 ker ar M 沈降することにも成功しており、今後 et 離解析することで、RNA の機能発現に 必要な修飾構造を決定したり、機能未 図5 知な RNA 結合タンパク質を精製し、結 33 試作機を用いた酵母 ncRNA の全自動精製 合している RNA を同定していきたいと考えている。 東京大学 TLO は、国内メーカー二社と本特許の実施契約を締結し、世界初の全自動多検 体アフィニティークロマト装置の商品化に向けた本格的な共同開発を行っている。プロジ ェクトの後半では、試作機のさらなる改良と高性能アフィニティーチップの開発を行う。 また、96 検体の分注ロボットを用いることにより、更に大量の生体高分子を一度に精製す る装置の開発を行うことを目指している。 34 ②-2 機能性RNAを in vivo で計測するシステムの開発 集中研②、分室5(ノバスジーン/オリンパス) 共同実施先: 産総研②、北海道大学(金城)、山形大学(野村) 蛍光相関分光法(FCS)は、蛍光分子のブラウン運動を測定する方法であり、共焦点 領域内の蛍光分子の分子の大きさ(溶液中での拡散時間)と濃度(分子の数)の情報を非 侵襲的に導き出す事が出来るという特徴を持つため、生きた細胞の内部を測定するのに適 した解析手法である。そこでFCSを応用して、生細胞中での機能性RNAの動的な発現 量変化や時間的に変化する動態を蛍光核酸プローブによりRNAを標識することで計測す るシステムの開発を行った。 in vitroにおける蛍光相関分光法の検証実験 蛍光核酸プローブとして、(1)プローブをRNAに直接ハイブリダイズさせた状態で測定 する方法と(2)特殊塩基を用いてRNAの存在量をタグ配列に変換して測定する方法の開発 を行った。 1)プローブをRNAに直接ハイブリダイズさせた状態で測定する方法 実際の機能性RNA候補であるHIF1α遺伝子のアンチセンス 遺伝子(Natural antisense transcript : NAT)とコード遺伝子であるHIF1αのmRNAを用いた測定系の開発を試みた。 HIF1αは低酸素状態で誘導され、 HIF1α mRNA 多くのシグナル伝達に関わってお Probe り、悪性腫瘍組織への血管新生に 関与する事で知られており、その 発現量はNATによって制御されて ΝΑΤ Probe 図 1)HIF1αとアンチセンス転写物の模式図 いることが報告されている。そこ で、まず始めに、HIF1αおよびNAT を検出するプローブの設計とRNAへの結合効率の測定を行った(図1)。HIF1αとNATにハイ ブリダイズするプローブとして、17種類を設計・合成した。この合成オリゴDNAプローブと HIF 1α プロ ーブ 10 0 90 90 80 80 70 70 結 合効 率 結 合効 率 NATプロ ーブ 10 0 60 50 40 60 50 40 30 30 20 20 10 10 0 0 NAT h ybrid NAT hybrid NAT f ree N o.5 N o. 6 N o. 1 NAT f ree No. 7 HIF cds No .7 NAT fre e N AT h ybrid N AT fre e No .1 4 No .9 No .3 HIF c ds N o. 12 HIF c ds N o. 22 H IF H IF c ds 3 'U TR No .2 9 No .1 1 HIF HI F 3' UTR 3'UTR N o.2 7 N o.2 4 H IF hybr id N o. 3 HIF hybri d N o.1 H IF hy brid No .2 図2)HIF1α、NATのRNAに対するプローブの結合効率 in vitro転写反応によって作製したHIF1α遺伝子およびNAT遺伝子RNAとのハイブリダイゼ 35 ーション効率を測定した結果、約5%~90%という幅広いハイブリゼーション効率を示した (図2)。そこで、この中で結合効率の高いプローブ選択し、後述するin vivoの解析を行 なった。 2)特殊塩基を用いてRNAの存 在量をタグ配列に変換して測 hν 366nm 定する方法 プローブ FCS測定 アダプター 変性 cvU 二つ目の方法は、特殊塩基で 拡散時間増加 あるカルボキシビニルウリジ 拡散時間 変化無し ンを用いた光ライゲーション 図3)蛍光相関分光法によるRNA検出 反応を応用してRNAの存在量の 情報をタグ配列に変換する方法である。光ライゲーション反応は、鋳型となる転写物の量 を反映して二つの隣接するオリゴDNAを非常に効率良く連結する。この反応を用いて機能性 RNAの存在量を拡散時間の変化をもとに測定する手法を開発した(図3)。この方法のメ リットとして、1)プローブ設計の自由度の向上、2)分割プローブによるS/N比の向上、 3)プローブがRNAから剥がれてもRNA量の情報が残る、等が考えられる。まず始めにモデル 配列を用いてプローブ、アダプター、鋳型となる3種類のオリゴDNAを合成し、光ライゲー 60 60 50 40 反応効率 Product % 反応効率 Pro duct % 50 Alexa488 Atto6 55 30 20 40 Alexa488 30 Atto6 55 20 10 10 0 0 1μM 1 00nM 10 nM 0 1nM 10 60 60 50 50 40 反応効率 Pro duct % 反応効率 Pro duct % Mixture concentration 反応溶液濃度 Alexa488 Atto6 55 30 20 30 Irradiation time(min) 照射時間 20 40 Lig o n ice Lig at RT 30 20 10 10 0 ×10 ×5 ×2 ×1 ×1/2 ×1/5 ×1/10 ×0 neg Temp/Prove 0 Template DNA concentratio n 鋳型濃度 1 5mer 13mer 11mer Alexa488 プローブ長 図4)反応液濃度、反応時間、鋳型濃度、プローブ長の検討結果 36 9mer ション反応を蛍光相関分光法で測定可能か検証した。その結果、反応効率が約50%前後で あり、これはキャピラリー電気泳動法による結果と矛盾せず、FCSにより反応効率測定 が可能であることを見出した。 また、1)1nM程度の低濃度でも反応が進行すること、2)どの鋳型濃度でも約50%の反応 が進行すること、3)約10分で反応が終了すること、4)低温条件ではプローブ長が9塩基 でも反応が進行すること、5)室温でも反応が進行すること、を確かめた(図4)。さらに、 RNAを鋳型にした場合の反応条件の検討を行い、アダプターオリゴDNAの濃度を10倍〜100倍 上昇させる事でDNAを鋳型に用いた場合と同様の反応効率が得られる事を見いだした。 次に、上述のHIF1αとNATのプローブの中から結合効率の良いものを5種類選抜し、カル ボキシビニルウリジンを含むプローブのセットを合成して光ライゲーション効率を測定し た。その結果、約40~60%と効率に差が見られたが、モデル配列で行ったものと同様の傾 向を示した(図5)。今後は本プローブを用いて、細胞内RNAの動態解析を行う予定であ る。 80 70 80 70 60 50 40 30 20 10 0 60 1uM 100nM 10nM 1nM 反応効率 反応効 率 溶液濃度 H12 H27 50 40 H2 N3 N6 30 20 10 0 H12 H27 H2 プローブ N3 N6 0 20 40 照射時 間 (min.) 図5)HIF1α/NATのプローブを用いた光ライゲーション反応 37 60 80 ②-3 機能性 RNA の検出・同定技術の開発 集中研②、分室5(ノバスジーン/オリンパス)、分室6(DNAチップ研究所) 共同実施先: 産総研②、東京大学(3;陶山)、北陸先端科学技術大学院大学(藤本) 超高感度(アトモルレベル)まで高めたマイクロアレイ技術を開発し、機能性 RNA の高精 度な発現変動解析を目標としている。一つ目は機能性 RNA の中でも特に短い分子であるマ イクロ RNA (miRNA) を直接アレイ上で検出するツールを開発する。もう一つは光ライゲー ションと PCR 増幅後に多種類の反応産物をアレイ上で同定する実験系を開発する。両者と も研究室レベルで詳細な発現解析ができるツールを目指しており、検出感度の向上・デー タの安定性とともに安価に多くのサンプルを解析できることを目標とする。 1)マイクロアレイ基板 S-Bio を用いた MPEX 反応による低分子機能性 RNA(特に miRNA) の高感度検出技術の開発(DNAチップ研究所) 本開発では機能性 RNA の発現解析を簡便にできるツールを開発している。機能性 RNA の 中でも 50 塩基以上の RNA 分子に関しては、既存のマイクロアレイ技術や定量的 PCR 実験等 の手法で十分解析可能なため、我々は解析が非常に難しい低分子機能性 RNA、特に miRNA を ターゲットとしてマイクロアレイ上で多くの分子を同時に解析できる実験系の開発を行っ ている。低分子 RNA では、標識効率を上げること、検出用プローブの自由度を上げて配列 特異的認識を行うこと、ハイブリダイゼーション(アニール)の効率を上げること、の大 きく3点が問題になると考えられるが、本実験法の原理では全てを簡単な実験法で解決す ることができる。上記3点をクリアする際の目標として、 1.検出限界の数値目標: 1 ~ 数 atto モルレベル 2.網羅性と配列特異性の両立(・バランス) 3.実験手法の簡便性(とそれに伴うデータの安定性) の 3 項目を挙げた。これらの項目を全て達成することができれば、先行している外国メー カーのツールに対抗することが可能になるだけでなく、マイクロアレイ実験に精通してい ない研究者に於いても通常の酵素反応等と同様に一般的な実験法として普及する可能性が 大きい。様々な高次生命現象過程を研究している研究者が、手元にあるサンプル群を使用 して様々な分子マーカーを探索する国産ツールとして、非常に大きな役割を担えるものと 考えている。 マイクロアレイ基板を用いた低分子機能性 RNA の高感度検出実験技術の構築 マイクロアレイ基板 S-Bio を用いた MPEX 反応(D 研・住友ベークライト共同開発)によ る低分子機能性 RNA(特に miRNA)の高感度検出技術の開発として2年間研究を進めてきた。 本開発では非常に短い RNA 分子を対象としており、その取り扱いを容易にするためアレイ 38 上にて直接短い RNA を反応させる実験系を採用した。アレイ表面という固相に固定化され たプライマーを用いて伸張反応を実現することにより、多種類の分子を一度に解析するこ とが可能になる。標識の取り込みはビオチン化ヌクレオチドを用いて、プローブの設計も 3’末端に取り込むようにした。長さは特異性を持たせるために後述する項目 2.の実験系 により実証しながら調整した。また全ての実験において生化学的な反応の評価をするため に、合成 RNA にて miRNA と全く同じ配列を作成して、反応液中のモル数(分子数)をコン トロールしながら解析を行った。 まず目標の項目 1.であるが、図1に示すようにほぼ全てのプローブについて 10 atto モ ルにて、バックグラウンドノイズの 100 付近より有意に高い値になった。1 atto モルで検 出できるものは 1/5 ~ 1/10 程度しかないが、それ以外のプローブでも数 atto モルまでは 検出可能であり、当初の目標を開発2年目の半ばにしてクリアすることができた。hl7i や h148b のように 1 atto モル付近でもシグナルが検出できるプローブもある反面、h100 の様 に 10 –1 atto モルで数値が変わらなくなってしまうものもあった。h100 に関しては特異性 を考慮しながら検出感度を上げるために、プローブの再設計を行う必要がある。更にハイ ブリダイゼーション促進作用のある試薬(市販品)を用いて、MPEX 反応の前に 1 段階ハイ ブリのステップを加えることで、検出限界を現在より上げられるかどうかについて検討を 試みているところである。 100000 シ asD_h100_2 グ 10000 asD_h148b_2 asD_hl7d_2 ナ ル 強 asD_h30a_3p_2 1000 asD_h26b_3 asD_h30e_3p_2 100 asD_hl7c_2 度 asD_hl7i_2 10 *asD_h141_2* 10,000 1,000 図1 検出限界の測定実験 100 10 1 atto モル/反応 結果上から 8 種類について反応に加えるモ ル数を変化させてシグナルを検出した. h141 は全ての反応に 10 femto モル加えた. 次に項目 2.の網羅性と特異性については、特異性を出すためのプローブ設計が可能かど うかが重要なため、各 miRNA に関して似たような配列を持つ組み合わせのリストを作成し、 各分子の間で非特異的なシグナルが検出されるかどうかを検証した。まず図2のプローブ h196a については、ほぼ中央に 1 塩基のみ変異のある 196b に対して、長いプローブでは特 異性が出ないが(データ非表示)、短いプローブでは特異性を持って検出できた(図2)。 10 atto モルでも蛍光強度にて 2000 程度のシグナル値が検出されたため、 検出限界も数 atto モルと問題なかった。 39 シグナル強度 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 196a: UAGGUAGUUUCAUGUUGUUGG asD_h196a_3 asD_h196b_3 10,000 1,000 100 10 1 atto モル 196b: UAGGUAGUUUCCUGUUGUUGG ターゲット (miR-196a):UAGGUAGUUUCAUGUUGUUGG 図2 プローブ鎖長による特異性と検出感度、その1 更に複雑な let-7 ファミリーに関しては図3に示す様に、長めのプローブ(図3前半) では a と c が区別できないが、短いプローブ(図3後半)では 10 倍程度のシグナル値の違 いで判別可能であった。 長めのプローブセットの特異性 シグナル強度 70000 asD_hl7a_2 60000 asD_hl7b_2 50000 asD_hl7c_2 40000 asD_hl7d_2 30000 asD_hl7e_2 20000 asD_hl7f_2 asD_hl7g_2 10000 asD_hl7i_2 0 10,000 1,000 シグナル強度 100 10 1 atto モル AGAGGUAGUAGGUUGCAUAGU 短いプローブセットの特異性 70000 asD_hl7a_3 60000 asD_hl7b_3 50000 asD_hl7c_3 40000 asD_hl7d_3 30000 asD_hl7e_3 20000 asD_hl7f_3 asD_hl7g_3 10000 asD_hl7i_3 0 let-7a: UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU let-7b: UGAGGUAGUAGGUUGUGUGGUU let-7c: UGAGGUAGUAGGUUGUAUGGUU let-7d: let-7e: UGAGGUAGGAGGUUGUAUAGU let-7f: UGAGGUAGUAGAUUGUAUAGUU let-7g: UGAGGUAGUAGUUUGUACAGU let-7i: UGAGGUAGUAGUUUGUGCUGU ターゲット(let-7a) : UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU 10,000 1,000 100 10 1 atto モル 図3 プローブ鎖長による特異性と検出感度、その2 ただし let-7 の場合には検出の特異性を出すためにプローブを短くすると検出限界が 10 atto モルを超えてしまい、数 atto モルの感度を保証するためには特異性を多少犠牲にしな ければならない。製品とする際には長短両方のプローブを搭載し、使用する研究対象によ 40 ってどちらのデータを採用するかを選んでもらうような解析上の工夫をする必要があり、 今後の課題である。 Total RNA と small RNA 分画を実サンプルとして用いた実験結果の検討 最後に項目 3.の実験操作の簡便性であるが、実際に生体サンプルを用いて反応を行なっ た(図4)。 y 軸:small RNA より検出したシグナル 使用サンプル: ヒト total RNA(市販品), Kidney, Brain, Liver よりsmall RNA分画精製、 total RNA約4 μg相当分使用。 プローブ数:53種96スポット 70000 y = 2.7x 60000 50000 40000 30000 20000 10000 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 0 Nature Methods, Oct 2004 Nature, June 2005 Genome Biol., May 2004 のデータとほぼ一致した x 軸:total RNA より検出したシグナル 図4 生体サンプルを使用してシグナル検出実験 左図は簡易カラムによる small RNA 分画を直接反応系に入れた場合のシグナル値で、各臓 器におけるシグナル強度のパターンは既報論文とほぼ一致した。右図は small RNA と total RNA を反応した場合のシグナル値の相関関係であるが、右下の 2 点(同一プローブ)を除い てほぼ相関したデータであることが分かった(右上の1点はシグナル値が飽和していたた め本来の値は不明)。相関しないプローブについては、total RNA に含まれる様々な種類の mRNA 分子、あるいはリボゾーム RNA 分子等によりシグナルが検出されていると考えられ、 設計を変更して再度検証実験を行って良く必要がある。今後対象とする miRNA の種類が増 えた際には同様の実験にて検証を行い、必要があれば再設計へと同様のステップを踏んで いくことになる。また変動が特徴的な10種類の miRNA 分子について、Taqman プローブキ ットによる検定も行い、アレイ上での MPEX 反応と定量的 PCR 実験という全く異なる実験形 において、発現変化について同じような傾向を確認することができた(図5)。 これまでの研究開発によって、当初の目標項目はモデル実験系に於いて全て達成できた。 以上の成果については、用法特許の申請に向けて準備中である。今後はこの成果を元にプ 41 ローブ数を増やして、研究者が網羅的に解析できるツールとして仕上げるために、同様の y 軸:発現比(=LOG(シグナル比,2)、ΔCt 値) 15 10 5 Array Taqman 0 -5 Brain / Kidney 図5 L_miR-141 L_miR-140 L_miR-127 L_ miR-135a L_miR-125b L_miR-124a L_miR-122a L_let-7i L_miR-103 L_let-7a B_miR-141 B_miR-140 B_miR-12 7 B_miR-1 35a B_miR-12 5b B_miR-124 a B_miR-122a B_ let-7i B_miR-103 B_let-7 a -10 アレイデータは、 Kidney の数値を基準と して、Brain, Liver の発 現比を算出した。 定量的 PCR データは、 Kidney の Ct 値を引い たΔCt 値を使用した。 (PCR にて1サイクル 2倍と仮定すると両実 験法のデータが比較可 能になる) Liver / Kidney アレイ実験と定量的 PCR (Taqman) 実験結果の比較 実験系を用いて検証作業を進めていく必要がある。現在、ヒト miRNA について特異性を考 慮してプローブ配列設計を行い、検証実験により非特異的シグナルの出るプローブを抽出 して再設計を行う作業を進行中である。その過程で、本年度中盤を目標に、プロジェクト 内部で使用できるプロトタイプの頒布を計画していおり、実際に使用してデータを出すと 同時に、実験ツールとしての問題点を洗い出し、改良を重ねていく予定である。 検出結果の可視化についての検討 上にも述べたが既存の miRNA 検出ツールが競争相手として存在するため、項目 3.の特徴 を更に生かして一般の研究者に広く受け入れられるツールを開発する必要がある。その目 的のため、可視光にて検出できる色素を利用して、レーザースキャナのような特別な機器 を必要としない実験系を開発するための予備実験を始めた。現在の実験系ではビオチン化 ヌクレオチド取り込みにより標識しているため、その後の蛍光検出の手順をストレプトア ビジン-IP と BCIP-CIP による色素沈着反応に置き換えるのみで実験することができる。通 常のマイクロアレイ基板では色素沈着がほとんど おきないが、我々の使用している S-Bio 基板では 目視できる程度の沈着が可能である。着色スポット の濃淡をデジタル画像(図6)から数値化して データを取得することが可能である。現在は ターゲット濃度に依存して色素が沈着することを 確認できた段階であり、今後検出感度や検出の 図6 色素沈着実験例(ネガ画像) ダイナミックレンジに関して検討し、色素の画像 データから発現の数値データへ変換するためのシステムを開発していく必要がある。 42 ②-3 機能性RNAの検出・同定技術の開発 2)Photo-DEAN 法による機能性RNA検出技術の検討(ノバスジーン、産総研②、東京大 3、北陸先端大) 我々は、RNAを配列既知な核酸配列(Tag配列)に変換し、その既知配列をもとに、 DNAコンピューティングによる発現 ncRNA/mRNA 同時定量法を開発することを目標に掲げ ている。定量的かつハイスループットな RNA 発現データは、機能性 RNA の機能推定にこれ までになく有益な情報を与える。 Photo-DEAN 法によるRNA検出技術の開発 プロジェクト開始時、cDNA をターゲットとしたDNAコンピューティング利用遺伝子発 現定量法(DEAN 法)のプロトタイプが、陶山によって完成しつつあった。DEAN 法は、qPCR 並みの感度・精度と、多種類(数万種類が可能であるが、実験は 600 種類まで)の cDNA サ ンプルを同時に定量できるハイスループット性を合わせ持つ。cDNA ではなく、RNA を直接 鋳型として配列変換反応を行うために、 「光ライゲーション法」という藤本が開発した日本 発の新技術を導入することとした。 これら 2 つの手法を融合した RNA 定量法を、 「photo-DEAN 法」と名付けた。 化学合成された RNA (30mer)を 10 種類用意し、 それらの混合サンプルに対して photo-DEAN 法 で定量したところ、サンプル量 10~1000 amol (amol = 10-18 mol)の範囲で再現性よく定量でき (右図)、さらに検出感度は 1 amol レベルに達 することが分かった。モデルサンプル長は 30mer で あ っ た が 、 20mer 程 度 の miRNA に photo-DEAN 法を適用する場合でも、光ライゲー ション法は酵素フリーなので条件を自由に設定 できる。したがって、短いため Tm 値が低い miRNA を photo-DEAN 法で定量する場合に、塩濃度や温度などを最適化することは容易である。 蛍光相関分光法を用いた miRNA の光ライゲーション効率の検討とその応用 miRNA のように 22mer 程度の短いRNAでは、光ライゲーションの各プローブの鎖長は 10mer 程度となり、その効率と特異性を得るための条件検討が重要となる。そこで 2-(2)に 前述した蛍光相関分光法による ligation 効率測定方法を用い、miRNA として let7a をター ゲット配列にした場合の ligation 効率を検討した。 まず蛍光相関分光法による検出感度を検討するために、蛍光標識オリゴヌクレオチドを 用い測定したところ、3分間の測定で 10 pM(30uL のサンプル容量の場合で 30 amol)まで安 定したデータを得ることができた。これは光ライゲーション条件やハイブリダイゼーショ 43 ン条件を最適化することで、現行の蛍光相関分光装置でも 30 amol 程度の検出感度が得ら れることを示している。 つぎに、合成DNA、合成RNAをターゲットとした場合、各々92.6%と 50.1%の ligation 効率であった。一方、miR-26a 配列の合成DNAまたは合成RNAをターゲットとした場合 の ligation 効率を検討したところ各々0.8%と 0.1%であり、非特異的な ligation は起こっ ていないことがわかった。 さらに、特異性を得るのが難しいことが想定される let7 ファミリーをターゲットとして 検討を行った。検証用のターゲットは合成RNAとし、40℃で光ライゲーションを行いそ の効率を検証した。その結果ターゲットRNAが let7b および let7c のときは、特異性が 得られなかった。これは、ライゲーション位置から変異塩基がある箇所までの塩基数によ るものと考えられた。しかし、後述する北陸先端大(藤本)の成果により、C の誘導体でも 可能となったため、プローブ設定領域の自由度があがり、再設計とさらなる ligation 条件 の検討による特異性の向上が見込めるだろう。 また、効率的かつ同一条件での光ライゲーションを行うため、光ライゲーション装置の 開発、導入を行った(下図)。 RNA を鋳型とした DNA 光連結法の開発 光応答性核酸を利用した DNA 鋳型上での光連結については既に報告している。光連結法 は短時間処理が可能であることや可逆的であるといった優位性があるものの、DNA を鋳型と した光連結ならば T4DNA リガーゼに代表される酵素を用いれば天然型での結合を重視し、 その他の遺伝子工学的手法との組み合わせを考慮すると酵素法が実用的である。一方、枝 分かれ核酸や末端がキャップされた核酸の調整といった酵素が出来ない領域での光遺伝子 操作法の適用は有効である。そこで、RNA を鋳型としたリガーゼは殆ど存在しないので、RNA の情報を DNA に逆に写し取る作業における RNA 上での DNA 連結は非常に難しいと考え、今 回 RNA を鋳型とした DNA 光連結を行った。カルボキシビニルウラシル(CVU)を含むオリゴ デオキシヌクレオチド(ODN)を RNA 上で 366 nm の光照射を行ったところ、ターゲット塩 基がシトシン及びチミン両方の場合で効率よく光連結が進行した。興味深いことに DNA を 鋳型とした DNA 光連結よりも反応速度が速いことが判明した。DNA を鋳型にした時及び RNA 44 を鋳型にした時、それぞれについて CD スペクトルを測定した。その結果 DNA 鋳型の時には B 型構造を有するのに対し、RNA を鋳型にした時は典型的な A 型構造をとっていることがわ かった。それぞれの構造における上下のピリミジン塩基のスタッキングの違いにより、重 なりの大きい A 型構造において 2+2 光環化反応がより促進されたと考えられる。従来、RNA 上での核酸連結は化学法しかなく、反応条件も限られたものが多かったので、本手法は機 能性 RNA 解析に極めて有用であると考えている(ChemBioChem 2006, 7(4), 598)。 光ライゲーションに適した新規光応答性塩基誘導体の開発 光応答性核酸誘導体の一つである 5-カルボキシビニル-2’-デオキシウリジン (CVU) は DNA や RNA の配列に対して特異的かつ高收率での光連結が可能であるが、二本鎖構造を形成 する際は相補鎖側の塩基にアデニンを必要とする制約があった。そこで光連結法を多様な 配列に適用する為に 5-ビニル-2’-デオキシシチジン (VC) が開発された。しかしながら、 CVU と比較して 90%以上の連結効率を得るには 5–6 倍の光照射時間 (3 時間)を要し、更にシ トシンとの連結は不可能であった。今回、新規光応答性核酸 5-カルボキシビニル-2’-デオ キシシチジン (CVC) の合成を行い 20 分間の光照射で連結体オリゴデオキシヌクレオチド (ODN) を 97%の收率で得ることに成功し、またシトシンとの連結も可能にした。光ライゲー ションの操作対象となる配列の拡張に成功したことは機能性 RNA 解析に極めて有用である と考えている(Org. Lett. 2006, 8(22), 5049) 。 45 ②-4 RNA の新規合成基盤技術開発と化学分子設計 集中研②、分室7(日本新薬)、分室8(ヤマサ醤油) 共同実施先: 産総研②、東京大学(4;和田) 近年 RNA の生命現象に対する役割が次々と明らかにされている。これに伴い、生体内で の役割を解析するツールとして純度の高い化学合成 RNA の必要性が高まっている。我々は RNA 合成法を改良し 2-cyanoethoxymethyl (CEM)基を新規保護基として開発したことを既 に報告している (Organic Letters 2005)。CEM 基の特長は従来の RNA 保護基と比べ、立体 障害が非常に少ない点にある。これは化学合成において 1 塩基づつアミダイトをつなげて いく際の収率へと反映される。また、立体障害が小さいことを利用して、従来困難であっ た修飾型核酸を化学合成することも可能となる。我々は、この新規核酸合成技術を土台と して、新たに見出された機能性 RNA の生体内での機能を検証するとともに、CEM 基の反応性 の高さを活用した修飾型核酸を創製し、将来の機能性 RNA の医薬品化に応用できる基盤技 術を開発することを目的として検討を行っている。プロジェクト前半では、原料アミダイ トの合成法、および、長鎖機能性 RNA 合成条件の検討を行い、所定の成果を得ることが出 来た。プロジェクト後半では、修飾体や長鎖合成 RNA の応用を中心とした新規機能性核酸 の合成検討を進める予定である。本技術は、プロジェクトの成果を、抗ガン剤、抗ウイル ス剤といった核酸医薬品や再生医療に応用し産業化するために不可欠の基盤技術である。 原料となるCEMアミダイト合成法の確立 新規合成法により RNA を大量に化学合成するためには、その原料となるモノマーブロッ クすなわち 2-cyanoethoxymethyl (CEM)アミダイトを大量に調製する必要がある。そこで、 これを合成する上で鍵反応となる CEM 基を導入する反応(1 から 2 への反応、以下、CEM 化 反応と記載)を検討した。この CEM 化反応以外の工程は従来の方法論と類似の条件を適用 できるため、この工程を改良することができれば、スケールアップも問題なく対応できる と考えられる(スキーム1)。 スキーム1 B = 塩基: p = 保護基 HO O B DMTrO O O B p CEM 化 TIPDS HO OH ヌクレオシド O O B p TIPDS O OH O OCEM 1 2 NC p O B O OCEM P i O N Pr 2 CEM アミダイト 既に報告した CEM アミダイト合成法(Organic Letters, 2005)における、CEM 化反応条 件では、次のような問題点があった。1)反応に用いる試薬が高価であり、発煙する程活 46 性が高く、扱いには特に注意が必要である。2)反応を超低温で制御しなくてはならない ため、スケールアップが困難である。3)ヌクレオシドの種類によっては収率が低いもの があり、異なる合成ルートでの合成が必要であった。そこでこれらの問題点を解決すべく 反応性が高く高価な試薬類を変更し、反応制御の容易な温度で反応が効率良く進行するこ とを目標として条件検討を行った。その結果、反応試薬としては、安価で反応性が低く取 り扱いが容易な化合物を使用できることを見出した。また、反応温度もより制御が容易な 条件である摂氏 0 度で、塩基の種類によらず高収率で目的とする化合物を得ることに成功 した。この結果は平成 18 年 8 月に特許出願を行った(特願 2006-210439 号)。 次に、CEM アミダイト合成のさらなる改良を目指し、合成ルートの検討を行った。従来の 方法では塩基部を保護した後に CEM 基を導入していたが、CEM 基をまず導入してから、塩基 部を保護するルートを考えた場合、利点として次のことが挙げられる。1)合成中間体の 結晶性向上により、精製が簡便化できる。2)塩基部保護基の脱離を回避できる。3)塩 基部保護基導入が簡便化できる。4)塩基部無保護のモノマーブロックの合成が可能とな る。塩基部無保護による CEM 化反応を検討した。 シチジン誘導体については、従来に比べ穏和な条件で同等の収率で目的物をえることが できた。アデノシン誘導体においても塩基部が反応しないように条件をコントロールすれ ば、従来と同等の収率で目的物を得ることができた。本反応ルートは上述のルートに比べ て効率的であり、有用性が高いと考えられる。この結果は平成 19 年 1 月に特許出願を行っ た(特願 2007-011813 号)。以上、プロジェクト前半では天然型 RNA 合成のための原料アミ ダイトの合成法確立に注力し、工業化可能である合成法をほぼ確立することが出来た。プ ロジェクトの後半では、機能性 RNA の解析ツールとして有用と考えられる修飾型 RNA 合成 に注力し、そのために必要な修飾型 RNA アミダイトの合成を行う予定である。 長鎖機能性 RNA(110-mer pre-miRNA)の化学合成 CEM 保護基の特長は従来の RNA 保護基と比べ、立体障害が非常に少ないという点にある。 これは化学合成においてアミダイトをつなげていく際の収率向上に反映されるため、CEM 保 護基は長鎖の合成においてその潜在能力を発揮する。従来の RNA 合成法では、鎖長が 30 程 度までの短鎖 RNA 合成は可能で あるが、鎖長が 50 以上の長鎖 RNA オリゴマーの合成は非常に困難 であった。今回、この CEM 基の特 徴を生かし、 これまで化学合成と しては世界で報告例がない鎖長 が 110 におよぶ長鎖機能性 RNA オリゴマーの化学合成を達成し た。合成した RNA はヒトで機能が 図 1 pre-miRNA (miR-196a)配列 配列は mirBase : Sanger Institute による 47 確認されている miR-196a の前駆体 RNA(pre-miRNA, 図 1)である。 化学合成した 110-mer pre-miRNA は精製後、HPLC (図 2)、ポリアクリルアミド電気泳動 (図 3)、キャピラリー電気泳動(データ示さず)で分析し、その純度が極めて高いことを 確認した。 0 10 20 min 図2 HPLC (陰イオン交換カラム)による分析 図.3 Polyacrylamide Gel Electrophoresis による分析 また、化学合成した 110-mer pre-miRNA を MALDI-TOF Mass にて分析した(図 4)。MALDI-TOF Mass 測定はオリゴマー分析に用いられるが、一般に鎖長が 50 以上の RNA の分析は困難であ る。そこで我々は配列特異的に RNA を切断する酵素(Maz-F:ACA サイトを特異的に切断す る酵素)を用い、その切断断片を MALDI-TOF Mass 測定し、110-mer pre-miRNA の同一性を 確認することに成功した。さらに別の方法でも構造確認するため、G 配列特異的な切断酵素 (RNaseT1)を用いて 110-mer miRNA を切断した。その切断断片を測定することで 110-mer pre-miRNA の同一性を確認できた(データ示さず)。 peak 4 (m/z: 14122) Peak 1 110-mer (m/z: 35330) peak 2 (m/z: 27339) peak 3 (m/z: 21208) 図 4 110-mer pre-miRNA 酵素消化物の TOF-Mass 解析 48 次に、miR-196a の標的配列を組み込んだルシフェラーゼを用いたレポーターアッセイ系 を構築し、化学合成した 110-mer pre-miRNA の生物活性を調べた。図 5 に示すように、110-mer pre-miRNA は標的とする遺伝子の発現を成熟型 22-mer 二本鎖 RNA と同程度に抑制した。こ の結果から我々は、化学合成した 110-mer pre-miRNA が細胞内で正常にプロセスされ、生 じた miRNA が発現を抑制したものと結論付けた。 L uc i f era s e a cti v i ty ( % of c ontrol ) 120 100 80 60 40 20 0 No RNA 図5 22m er R N A 110me r R N A 化学合成した 110-mer pre-miRNA の発 図6 現抑制効果 センス配列とアンチセンス配列をそれぞれ 標的として組み込んだ luciferase 遺伝子発現 抑制効果の比 さらに 110-mer pre-miRNA の標的とする配列の鎖選択性を調べた(図 6)。成熟型 22-mer 二本鎖 RNA は標的のセンス鎖配列、アンチセンス鎖配列に選択性を示さないのに対し、 110-mer pre-miRNA はセンス鎖配列選択的に作用し、発現を抑制することを見出した。この 結果は pre-miRNA 特異的な性質を示しており、siRNA を利用した遺伝子発現抑制においてし ばしば問題となるオフターゲット効果を回避できる可能性を示すものである。 以上まとめると、我々は、CEM 法を用いることで 110-mer pre-miRNA を高収率、高純度で 化学合成した。これは我々の知る限り、世界最長の化学合成 RNA である。長鎖 RNA の構造 を確認することは困難であるが、化学合成した 110-mer pre-miRNA を酵素分解と MALDI-TOF Mass 分析により構造確認を行った。さらに生物活性を測定し、成熟型 22-mer 二本鎖 RNA とは異なる pre-miRNA に特異的な標的鎖選択性を示すことを見出した。 これらの結果から、 我々が開発した CEM 法は鎖長が 100 を超える RNA 合成を可能とする実用性の高い方法であ り、機能性 RNA 分子を化学合成し、生理機能を解析する方法論が有効である一例を示すこ とができた。この成果は学術論文として報告した(Nucleic Acids Res., 2007)。プロジェ クト後半では、新たに見出された機能性 RNA を化学合成し、機能解析グループと共同で生 体内での機能検証を進めるとともに、長鎖 RNA の応用に関して基礎検討行いたいと考えて いる。 49 研究開発項目③ 機能性RNAの機能解析 研究開発項目③では、機能未知の ncRNA 群の中から重要な機能を果たしている機能性 RNA を取得し、その機能解明を行うことを目指す。サブ項目③-1 では、機能性 RNA としての重 要性が認識されている miRNA に焦点を絞り、医療技術応用を見据えた機能解析を実施した。 サブ項目③-2 では、ncRNA の隠された基盤的な新規 RNA 特性、生体機能を発見することを 目指した。 ③-1-(1) ヒト疾患に関連する機能性RNAの同定とその機能解析 分室9(協和発酵工業) 共同実施先: 大阪大学(岡部)、岡山大学(清水) 近年の研究により、ヒトの細胞中には、タンパク質をコードしていない RNA が多数存在 し、機能性RNAとして発生や分化等の重要な生物学的過程に関与を果たしているのみな らず、種々の疾患の発生にも深く関係していることが明らかになってきた。特に 22 塩基長 前後からなる低分子機能性 RNA であるマイクロ RNA(miRNA)は、転写後の遺伝子発現を抑制 する機能を有しており、癌をはじめとする疾患との深いつながりが急速に判明してきてい る。我々はヒトゲノムより疾患に関係する機能性 RNA を同定し、その機能解析を行い、診 断・治療へと応用することを目的として研究を進めている。現在のところ、最も応用への 展開が期待される miRNA に全精力を集中して、研究を遂行している。 間葉系幹細胞からの miRNA のクローニングと発現・機能解析(協和発酵) ヒト疾患に関連する細胞(間葉系幹細胞、マスト細胞、癌細胞など)で発現している miRNA を同定し、機能解析を実施する。新規 miRNA については物質特許、新機能を明らかにした 既知 miRNA は用途特許を出願し、疾患関連 miRNA の知財権を確保する。さらに疾患との関 係が示された miRNA については診断マーカー、創薬標的としての利用につなげていく。 疾患関連 miRNA の研究の効率的推進のための基盤整備として、まず miRNA 単離法及び発 現・機能解析系の確立を実施した。具体的には再生医療等への展開が期待されるヒト間葉 系幹細胞(hMSC)を材料に選択し、miRNA のクローニングを実施した。hMSC より作製した低 分子 RNA ライブラリより計 3584 配列を独自に構築した Small RNA 配列解析・miRNA 自動判 定システムを用いて解析した結果、総計 29 種の新規 miRNA の同定に成功、物質特許を出願 した(表1:特願 2006-238459)。 次に、hMSC の骨芽細胞及び脂肪細胞への分化に伴う発現変動を miRNA マイクロアレイと リアルタイム PCR により経時的に調べ、特徴的な発現変動を示した miRNA について前駆体 導入実験を実施した。その結果、5 種の miRNA が骨芽細胞への分化及び増殖抑制活性を有す ることを見出した。特に強活性を示した miR-Z については、独自に構築した標的予測シス テムを用いて標的遺伝子候補を 4 種選抜し、各々の siRNA を hMSC に導入した。その結果、 50 ある細胞骨格蛋白遺伝子または転写因子遺伝子の siRNA 導入により miR-Z 導入時と類似の 骨芽分化誘導の抑制が見られた。miR-Z 前駆体の導入時に両蛋白質の発現量が減少すること も、両者が miR-Z の標的であることを強く示唆する。以上の結果から miR-Z が骨芽細胞分 化を制御していると考えられ、これは hMSC の分化への miRNA 関与を示す初めての知見であ る(図1:特願 2006-295113)。さらに、持続的な miRNA 発現を目指して、レンチウィルス ベクターによる miRNA 発現系を構築した。 表1 hMSC から取得した Small RNA 1152クローン、3584タグを解析 種類 数 (%) mature miRNA 2680 74.8 hairpin miRNA 56 1.6 in silico 予測 miRNA 7 0.2 tRNA 46 1.3 pre-tRNA 111 3.1 rRNA 14 0.4 Y RNA 5 0.1 U snRNA 2 0.1 snoRNA 1 0.0 5 その他RNA 既知RNAデータベースと一致せず 高精度配列 403 0.1 既知RNAデータベースと一致 低精度配列 既知miRNAの割合が高い = 極めて良質のmiRNA ライブラリの作製に成功 新規miRNA 29個 (前駆体 44種) を同定 254 3584 mock pre-miR-X pre-miR-Z 図1 hMSC の骨芽細胞分化を抑制する miRNA (miR-Z)の発見 51 ヒトマスト細胞株由来 miRNA の単離と解析(協和発酵) 二番目の miRNA 解析対象として、アレルギー疾患等で中心的な機能を果たし創薬への展 開が期待されるマスト細胞を選択した。上記の hMSC で確立した手法を用いてヒトマスト細 胞株から small RNA のクローニングを実施、計 5442 配列について解析を行い、新規 miRNA 33 個を同定した。さらに新規 miRNA と発現情報の取得のため MPSS(Massively Parallel Signature Sequencing)法を実施した。大量配列処理に対応できるように改良した miRNA 判 定システムを用い、全 43305 種の Small RNA 配列情報を解析、新規 miRNA として 1303 個を 同定した。クローニング由来のものと合せ計 1336 種の大量新規 miRNA について物質特許を 出願した(特願 2006-339997)。また、出現頻度とマイクロアレイ解析による発現解析を実 施し、MSC とマスト細胞株では発現している miRNA は大きく違うことを見出した。 癌細胞の増殖、細胞死に関連する miRNA の探索(協和発酵) 最近、癌と miRNA の関係が注目されており、癌細胞での miRNA の発現変化が数多く報告 されているが、機能面からの解析はまだ少ない。我々は癌細胞の増殖・細胞死に関連する miRNA を探索するため、miRNA ライブラリの導入による機能スクリーニングを実施した。ヒ ト癌細胞株に対してヒト miRNA 前駆体、アンチセンス体ライブラリを導入し、種々の表現 型を観察した。その結果、強い増殖抑制活性、アポトーシス誘導活性を示す miRNA を多数 見出した。その中には癌細胞増殖抑制の報告のある miR-15, 16, let-7 等が含まれていた のに加え、今まで癌との関係の報告がない miRNA も多数含まれていた。ヒット miRNA につ いて細胞形態、標的遺伝子予測等、詳細を解析中である。 上記の 1〜3 の項目の miRNA 関連研究に関しては、間葉系幹細胞、マスト細胞、癌細胞の それぞれで応用につながる新知見を取得、特許出願も3件実施するなど、目標以上の成果 を上げている。競争が激化している miRNA 関連研究に全力を注いだため、その他の ncRNA 研究には手が回らなかったが、全体としては 100%以上の達成度と考えている。今後の展望 としては、新規取得した miRNA については現在機能解析を進めており、強力な特許の成立 を目指す。マスト細胞の機能に miRNA が重要であるという知見も得ており、今後大阪大学 とも共同で個体レベルの解析を進め、アレルギー治療薬標的としての展開も目指していく。 癌については癌細胞株で得られた発現異常や機能を、岡山大学とも共同でヒト臨床癌で検 証していく。疾患との関係が判明した miRNA の応用としては、診断マーカーへとしての活 用の他、治療薬としては miRNA やアンチセンスを核酸医薬へ展開、miRNA を標的とした低分 子化合物の探索も検討していく。また、クローニングの過程で多数見出している miRNA 以 外の低分子 RNA の解析についても、今後力を入れて進めていく予定である。 miRNA の個体レベルでの機能解析(大阪大学) miRNA が実際に動物個体レベルでの機能として個体の発生や維持にどのようにして関わ っているかは不明である。本研究では miRNA を欠損したマウスを作製し、その表現型から 52 miRNA の機能を解明することを目指す。 我々は miRNA の機能を個体レベルで明らかにするためにノックアウトマウスを作製した。 欠損させる miRNA としては精巣で発現している miRNA を選択した。マウス精巣で発現が報 告されている miRNA 数種を選んでマウス各組織での発現分布を解析、精巣と 2 週齢の脳に 選択的に発現していた miRNA(以下 miR-A とする)を選択した。miR-A のターゲッティング ベクターの構築についても新規の構築法を確立し、miR-A の前駆体をネオマイシン耐性遺伝 子と置き換えたベクターを作製 し、組換え ES 細胞を作製した(図 2A)。得られた 432 クローンをス クリーニングし、4つの組換え ES 細胞を取得、すべてのクローンで 正しい組換えが起こっているこ とを確認した(図2B)。うち正常 なカリオタイプを確認した2種 の組換え ES 細胞を C57BL/6 マウ スのブラストシストにインジェ クションし2系統のキメラマウ スを得た。それらを Cre 発現トラ ンスジェニックマウスの雌と交 配させ、ヘテロ欠損マウスを得た。 これらのマウスを交配させ、ホモ 欠損マウスを得た。ホモ欠損マウ スでは miR-A が欠損していること 図2 miRNA ノックアウトマウスの作製法と遺伝子型の確認 を確認した(図 2C, D)。 miR-A ホモ欠損マウスは雄雌ともに健康であり、欠損マウスは発生過程において異常は見 られなかった。精巣で発現していることから雄性不妊や精子形成異常などの表現型を期待 したが、それらに異常は観察されなかった。また、腎臓、肺においても強く発現している ため、これらの組織切片を作製し観察したが異常は認められず、野生型と変わらず健康に 維持することが出来ている。しかしながら、ホモ欠損マウスの雄からは野生型マウスと同 等の産子が得られたのに対し、雌のホモ欠損マウスからは、低頻度でしか産子が得られな い傾向があることがわかった。現在、協和グループが作成したシステムを用いて本 miRNA の標的候補を予測し、うち 3 種についてはレポーター実験により標的となりうることを実 験的に示した。 本研究開始時点で前例の全くなかった(2007 年に初めて発表あり)miRNA のノックアウ トマウスの作製法を確立、ホモ欠損マウスを作製し興味深い表現型を見出した(論文準備 中)という点で、当初の目標は 100%以上達成していると考える。今後は、表現型を見出し 53 た miRNA とそのファミリーの個体レベルでの解析を引き続き進める。また、本プロジェク トにおいて間葉系幹細胞、マスト細胞、癌細胞等で in vitro で新たに機能を見出した miRNA について、トランスジェニック動物やノックアウト動物の作製を実施し、個体レベルでの 解析を実施する。 ヒト癌患者における miRNA の発現・変異解析(岡山大学) miRNA の癌への関与を示す知見が急速に増えているが、それらをヒト癌の診断、治療へと 応用していくためには、多くの癌臨床検体を用いた解析が必須である。我々はインフォー ムドコンセントを取得し、臨床情報の付加された多くの癌臨床サンプルを用い、miRNA の発 現・変異・機能解析を網羅的に実施し、その結果を癌の診断や治療薬の開発に応用するこ とを目的として研究を進めている。 我々はヒト癌における miRNA の発現・機能解析のため、癌患者由来の臨床検体(切除癌、 隣接非癌部)における miRNA の発現解析を実施した。倫理委員会の承認を受け、miRNA マイ クロアレイを用いた、癌部(T)と隣接非癌部(N)での miRNA の発現比較実験を行った。頭頸 部腫瘍4例、肺癌5例、滑膜肉腫2例の検体を用いて 384 種類の miRNA の発現を比較し、 癌部で発現が増大している miRNA として 5 種を見出した。さらにより定量的な解析を目指 して miRNA の定量 PCR 系を確立、癌部と隣接非癌部での 157 種の miRNA の発現量比較を試 みた。肺癌 13 例では、腫瘍部で発現増大を示す miRNA 4種、逆に腫瘍部で発現減少を示す miRNA として5種を見出した。また、骨・軟部腫瘍 18 例からは腫瘍部で発現増大したもの として3種(14/18 例以上)、発現減少したものとして 7 種(15/18 例以上)を見出した。 以上の結果は癌種の違いにより増加、減少する miRNA は異なることを示している。 癌細胞においてプロモーターのメチル化により転写抑制された miRNA は癌抑制系に関与 すると考えられるため、8 種のヒト癌細胞株をメチル化阻害剤の 5-AzaC で処理した際に発 現が増加する miRNA をマイクロアレイで調べ、3種以上の細胞株で発現が増加する 6 種の miRNA を見出した。滑膜肉腫 3 種のみで比較すると、5 種の miRNA が共通に発現が増加して おり、うち1種について 10 倍以上のプロモーター活性増加を示す領域を同定している。 研究開始当初、臨床検体における RNA 分解の問題のため、マイクロアレイ解析に用いる ことのできる検体を集めるのが困難であるという問題があった。そのため、予定よりも少 ない数の臨床検体の評価しかできず、達成度は 80%程度と考えている。しかしながら、サ ンプル調製法や解析法の改善によりこの問題点は克服できていると考えている。今後は、 臨床腫瘍で発現変化が見出された miRNA について協和グループと共同で標的予測を行い、 二次元電気泳動を用いたプロテオーム解析等も用いて標的同定、機能解析を進めていく。 さらに、注目した miRNA についてプロモーター解析や、Pre-miRNA の臨床癌での変異の有無 についても解析を進める。それら知見を癌の診断、治療薬開発へ応用することを目指す。 54 ③-1-(3) 機能性RNA解析に基づくゲノム医学研究 分室11(東レ) 共同実施先: 京都大学(1;辻本)、京都大学(2;山中)、千葉大学(関) 本研究では、癌や発生・分化及び体 細胞の脱分化を研究対象とし、(1)高感 度マイクロアレイ技術・バイオインフ ォマティクス技術を駆使した RNA 網羅 的探索法の開発による新規機能性 RNA の網羅的探索と同定、及び、(2)ゲノム 医学・再生医学に基づく in vitro、in vivo 機能解析による新規機能性 RNA の 図1 分子メカニズム・病態メカニズムの解明を目指す(図1) 。具体的には、基盤から応用にわ たる一連の機能性 RNA 解析システムの確立も見据え、機能性 RNA 検出用マイクロアレイ技 術の開発、マイクロアレイ解析による新規機能性 RNA の探索、ES 細胞における新規 RNA の 機能解析、癌における新規 RNA の機能解析を分担・連携しながら遂行する。特に標的遺伝 子の 3’UTR に相補的に結合し翻訳阻害や mRNA の分解を引き起こすことが知られているマ イクロ RNA(図2)に特化した解析を行 う。本研究成果は、癌抑制のターゲット となる機能性 RNA、癌診断マーカーとな る機能性 RNA、並びに細胞の分化・脱分 化誘導に重要な機能性 RNA などの各種新 規 RNA の発見とその特許化を第一とする。 図2 マイクロ RNA 用マイクロアレイ開発(東レ) 東レは、マイクロ RNA を高感度、定量的、かつ網羅的に解析できるマイクロアレイ技術 を確立することを目的に、自社で開発した超高感度基板をプラットフォームとし、①プロ ーブ配列の最適化、②マイクロ RNA 調整・標識化プロトコルの最適化、③他手法との比較 実証を実施した。 これまでの成果として、成熟マイクロ RNA に対する相補的な配列を2回繰り返し、さら に 5’末端側に(T)5 を付加したオリゴ DNA をプローブとし、Ambion 社製マイクロ RNA 調整・ 標識キット、および精製カラムを組み合わせたプロトコルを開発、約 4 桁のダイナミック レンジをもつ、網羅的なマイクロ RNA 検出システムの確立を達成した。開発当初と異なり 複数の競合他社がマイクロ RNA 検出用アレイを製造・販売しているが、本システムによる マイクロ RNA のコピー数の相対倍量は定量 PCR 法と高い相関があり、かつ配列類似性の高 いマイクロ RNA を精確に測定できる等、感度面のみならず性能面においても優れているこ 55 とを確認した。 マイクロ RNA 標的遺伝子予測システムの確立とモデル細胞を用いたマイクロ RNA の解析 (京大1) マイクロ RNA の機能解析において標的遺伝子の同定は急務となっている。相補性を利用 した標的予測がなされているが、マイクロ RNA の配列が短い点と UTR との結合にミスマッ チを含む事から非常に多くの候補遺伝子が予測される問題がある。標的遺伝子の中には mRNA が分解されるものもあることから、標的遺伝子中にはマイクロ RNA と発現が負に相関 するものがあることが期待される。そこでわれわれはバイオインフォマティクス手法に基 づいて標的予測システムの構築を目指した。16 種類のヒト培養細胞で、マイクロ RNA(凡 そ 150 種類)と mRNA(凡そ 25,000 種類)の発現プロファイルをとり、マイクロ RNA と mRNA の発現の相関性と既存マイクロ RNA タ ーゲット予測プログラムとを組み合わ せた新規方法論の開発に成功した(図 3)。本手法の最大の特徴はマイクロ RNA による共通制御を受ける遺伝子を ネットワークとして捉えた点にある。 千葉大の癌のデータでも同様の解析を すでにしており、グループ内のマイク ロ RNA ターゲット推定の共通ツールと して使用していく。 図3 マイクロ RNA の機能解析を進める為に、培養細胞を用いた種々の分化モデルを用いてマ イクロ RNA の発現プロファイリング(リアルタイム PCR 法)を取得し、分化前後で発現変 動するマイクロ RNA の探索を行った(表1)。特に、血球分化では同定できたマイクロ RNA は、発現の増加が著しく、また早い段階から誘導が見られたことから、再生医学への応用 面も期待できるのではと考えている。これらのマイクロ RNA に関しては標的遺伝子の探索、 検証を開始しており、標的遺伝子を同定できたもの 表1 もある。マイクロ RNA 検出の系の立ち上げに時間が かかったが、目的とした機能解析の候補となるマイ 分化系 発現上昇が見られたmiRNA 筋分化 3種類(内一つは骨分化と共通) 骨分化 2種類(内一つは筋分化と共通) クロ RNA はすでに複数同定しており、さらなる解析 血球分化 3種類 を進めて行きたい。 上皮分化 4種類 癌に関わるマイクロ RNA の同定(千葉大) 癌抑制のターゲットとなるマイクロRNA、癌診断マーカーとなるマイクロRNAの同定を目 的とし、二種(A:10症例、B:19症例)の組織癌で癌患者の癌部および非癌部の組織およ び癌由来細胞株でのマイクロRNA(凡そ150種)の発現プロファイリング(リアルタイムPCR 56 法)を行った。A癌において癌マーカー遺伝子候補を11個、B癌において候補を27個得た。A 癌における11個のマイクロRNAの発現プロファイリングによるクラスタリング解析を一例 に示す(図4)。癌と正常組織がクラス ターをなし分離している。これらマイ 図4 クロRNAに関しては臨床検体を増やし 解析中である。癌のマーカー候補や治 療の標的となるマイクロRNAをすでに 同定でき、計画は順調に進んでいる。 次年度以降は、in vivo等の機能解析を 押し進め、最終的にはマイクロRNAを用 いた診断法・治療法の特許化を目指す。 体細胞の初期化に関わるマイクロ RNA の同定(京大2) 我々のグループでは、4つの因子をマウス繊維芽細胞に導入することにより ES 細胞様の 性質をもった細胞(iPS 細胞=induced pluripotent stem cells)を作成することに成功し た(Takahashi. K & Yamanaka. S, Cell 126: 663-676, 2006)。しかしながら、iPS 細胞に おいては、ES 細胞と類似しているものの全く同一ではないこと、遺伝子を導入した繊維芽 細胞の数に対して iPS 細胞が出現する割合が非常に低いこと(0.1%以下)、などの問題点が ある。 そこで、我々は、4因子とは別の因子を加えることでこれらの問題点が改善される可能性 を考えた。iPS細胞の樹立を可能にした4因子の同定に際しては、主にタンパク質をコード しているRNAに着目しており、全RNAの約53%をしめるnon-coding RNA (ncRNA)については検 討していなかった。我々は、ncRNAの中でも、進化上よく保存されているが、機能未知な点 の多いマイクロRNA (miRNA)に注目し、この中に、初期化に関わる因子があると考えた。そ して、体細胞からのiPS細胞誘導の系を用いて、iPS細胞の誘導率を上昇させ、よりES細胞に 近いiPS細胞を誘導するマイクロRNAを同定することを目標に研究を進めている。このような マイクロRNAを同定し、その機能を解析することが、体細胞の初期化のメカニズムの解明や ヒトiPS細胞の樹立とその臨床応用に役立つことを期待している。 まず、我々は体細胞の初期化に関わる4因子は全て ES 細胞で重要な働きを持つものであ ることから、ES 細胞や iPS 細胞で高く発現し、機能しているマイクロ RNA が体細胞の初期 化に関与する可能性があるという仮説をたてた。そして今年度は、ES 細胞、体細胞、iPS 細胞におけるマイクロ RNA の発現プロファイリングを行った。その結果、ES 細胞でのみ高 く発現する miRNA 群、ES 細胞での発現が分化した細胞での発現よりも高い miRNA 群、iPS 細胞で特異的に発現している miRNA 群を抽出することができた。今後は、体細胞の初期化 に関わる可能性のあるこれらの候補 miRNA を4因子と共に発現させ、あるいはノックダウ ンして、体細胞から iPS 細胞を誘導することにより、iPS 細胞をより ES 細胞に近づけ、iPS 57 細胞の誘導効率を上昇させる miRNA を探索し、体細胞の初期化に関わる miRNA を同定して いく予定である。 体細胞の初期化に関わるマイクロ RNA の同定には至っていないものの、発現プロファイ リングにより候補因子は絞るという点においては目標を達成できたと考えている。 58 ③-2-(1) 機能性 RNA 候補の多面的選別法の確立と機能解明 集中研③、分室12(日立ソフトウェアエンジニアリング) 共同実施先: 産総研③、東京工業大学(相澤)、弘前大学(牛田) 哺乳類のトランスクリプトーム解析によって見出された膨大な数の長鎖 mRNA 型 ncRNA は、 ゲノム中の蛋白質をコードする領域以外から転写されることから、いわば隠されていた蛋 白質情報以外のゲノム情報として、RNA による全く新しい生体機能の可能性が大いに期待さ れている。またそうした RNA の新機能は、新しい医療産業の技術開発や創薬ターゲット同 定に結びつくことが期待され、ncRNA に秘められた有用な生体機能を一つでも多く発見する ことが求められている。一方で、ncRNA については、cDNA 情報がデータベースに納められ ている状態で、それらの実質的な解析はなされていない。そこで最終的なゴールにたどり 着くために、長鎖 ncRNA に関する基盤的な知見を効率よく多面的に取得する手段として、 以下の項目の研究を行った。1. 機能性 ncRNA 候補の選別、2. ncRNA の細胞内挙動に関する 基盤的特性、3. 新規核内ノックダウン法の開発と核内 ncRNA の機能解析、4. 組織特異的 機能性 ncRNA 候補の取得、5. 幹細胞分化に関わる機能性 ncRNA 候補の取得、6. 新規低分 子 ncRNA の細胞系譜に即した機能解析の 6 項目である。 機能性 ncRNA 候補の選別(集中研③) ヒト完全長 cDNA データベース(H-InvDB)に登録されている 5498 種の mRNA 型 ncRNA 様転 写物の中には、機能性 ncRNA の探索には 利用しにくい様々なアーティファクトが 多数含まれていることが明らかになった。 そこで図1に示す通り、H-InvDB ncRNA 様転写物から配列情報などのいくつかの 選別指標に従って機能性 RNA 候補 150 種 類 を 選 別 し た ( Sasaki et al., BBRC 2007a)。選別した ncRNA は、基本的に独 立転写物であり、登録された 3’末端が 完全なこと、EST 情報が得られている事、 リピート配列を多く含まないことなどの 条件を満たしており、RNA 自身に機能が あることを示唆されるものである。これ らの選別 ncRNA を ncRNA 特有の生体機能、 作用メカニズム迫るための解析ターゲッ トとした。 59 2. ncRNA の細胞内挙動に関する基盤的特性(集中研③) 選別した ncRNA は、ORF の有無以外は mRNA 様の構造(キャップ構造、ポリ A 鎖)を保持 している。これらの機能解明を行うために、まず ORF の有無以外に ncRNA が mRNA のどのよ うに異なるのかを細胞内挙動の解 析を通して検討し、ncRNA 特有の 基盤原理を見出す事を試みた(図 2)。150 種類の選別 ncRNA の中か らモデル細胞 HeLa で発現してい る 70 種類の ncRNA の細胞内局在を、 密度勾配などによる細胞分画によ って得られた HeLa 細胞画分に対 する定量 PCR によって解析し、 mRNA とは明白に異なる ncRNA 特有 の細胞内局在パターンを検出した (詳細は別冊に記載)。しかしながら ncRNA の中でも mRNA と同様の経路に沿って細胞質に 輸送され、mRNA の品質管理経路によって迅速に分解されるものがあることが明らかになっ た。これらの ncRNA はイントロン内に別の機能性 RNA(snoRNA)をコードしており、これら は核内で snoRNA を放出した後に不必要なエキソン部を処理する為に細胞質に輸送されて品 質管理経路によって積極的に分解されているものと思われます。この時 RNA 品質管理装置 を RNA 上にリクルートする未知のメカニズムの一部を解明し関与する因子を同定した (Hirose et al., Mol Cell, 2006, Ideue et al., 投稿中) 。核内に局在する ncRNA 群は、 上記の mRNA 品質管理装置のリクルートをスキップしている可能性があり、今後の核内留置 機構の解明のための有力な解析対象となることが期待される。 新規核内ノックダウン法の開発と核内 ncRNA の機能解析(集中研③、分室12) 核内に局在している RNA を機能解析するには、目的とする RNA を特異的にノックダウン して、それによって引き起こされる表現型を解析することが有効である。近年、タンパク 質遺伝子の mRNA をターゲットにした機能解析は、RNA 干渉法を用いて一般的に実施されて いる。しかしながら細胞質現象である RNA 干渉法は、mRNA に対しては働くものの核内に局 在する RNA に対しては必ずしも有効ではない(図 3)。そこで核内 RNA を効率良くノックダ ウンするための新しい系の開発に取り組み、これまでに非常に効率よく核内 ncRNA をノッ クダウンできる方法の開発に成功した(詳細は別冊に記載)。こうした簡便かつ効率よい核 内 RNA ノックダウン法は世界初の技術である。本法により、これまでに 10 種類以上の核内 mRNA 型 ncRNA のノックダウンに成功している。また新たに、これまで解析系がない故に機 能未知のまま残されていた核内低分子 RNA(snRNA, snoRNA など)についても、本法によっ て初めてノックダウンが可能になり、これまでに 20 種類以上のノックダウンに成功した。 60 さらに核内 ncRNA のノックダウンの表現型解析系の整備を進め、遺伝子発現変動をマイク ロアレイで解析し制御下に置かれている遺伝子の同定につなげる方法を U7 snRNA のコント ロール系を用いて整備完了した。また本法が HeLa 細胞以外の4種類の細胞株でも働くこと を確認した。今後システマティッ クなノックダウンの実施によって 世界に先駆けた ncRNA 機能解明に つながることが十分期待できる (特許出願準備中)。1、2につい ては、当初掲げていた ncRNA 特有 の性質として核内局在という点を 発見し、そうした RNA を解析する 為に世界に先駆けてオリジナルな 実験系の開発にも成功した点で十 分目標としていたレベルに到達し ていると考えられる。 組織特異的機能性 ncRNA 候補の取得(集中研③、分室12) 生理活性を有する ncRNA を選別する第一の手だてとしてヒト 12 組織における発現プロフ ァイル解析を上記の 150 種類の選別 ncRNA に対して実施した。その結果、全体の約 70%が何 らかの組織特異的に発現していることが明らかになり、ncRNA の多くが特定の生理現象に関 与する機能を果たしていることが推察された(Sasaki et al., BBRC 2007a)。これらの組 織特異的 ncRNA の中から特に限定された生理現象や疾患に関わる可能性のある ncRNA を探 索し、形態形成の中心因子で様々な癌化にも関わる HoxA 遺伝子クラスター中の ncRNA 群を 61 新たに同定した(Sasaki et al., BBRC 2007b)。HoxA ncRNA は、HoxA 蛋白質遺伝子の逆鎖 にコードされ、体軸に沿った HoxA 蛋白質の位置特異的な発現に同調して発現していること から、HoxA 遺伝子の時空間的制御を先導するコントローラーの役割を果たしていることが 推測された(図 4)。このコンセプトは、HoxA 遺伝子発現を ncRNA をターゲットに制御する ことが可能なことを示唆しており、全く新しい ncRNA を用いた遺伝子発現制御系のモデル となる可能性が期待できる。この他にも重要な機能蛋白質の制御に関わる可能性のある複 数の組織特異的 ncRNA を同定した(詳細は別冊に記載)。 上記の4項目の研究では、データベース上の配列情報をスタート点として、特有の細胞 内挙動(核内局在)、組織特異的な発現パターンという2つの観点から ncRNA 機能解析のた めの基盤的知見を獲得できた。この中には既に個別解析に入っている興味深い機能性 RNA 候補も含まれており、プロジェクト開始後1年半の成果としては想定以上の知見を獲得で きたと考えられる。さらに ncRNA 特有の細胞内挙動に即した有効なノックダウン系の開発 に世界に先駆けて成功した事も特筆に値する成果である。今後このオリジナルな解析シス テムによって、選別した ncRNA を解析することで ncRNA に関する新知見にいち早く到達で きることは十分期待できる。 幹細胞分化に関わる機能性 ncRNA 候補の取得(分室12、東工大、 ) 生理活性を有する ncRNA を選別する手だ てとして、ヒト間葉系幹細胞の分化誘導系 において発現が変動する ncRNA の選別を行 った。まず出発点となった H-Inv データベ ー ス 中 に 掲 載 さ れ て い た ヒ ト mRNA 型 ncRNA 様転写物 5500 種の発現を網羅的に 解析できるマイクロアレイを作製した。こ れを用いて間葉系幹細胞が脂肪細胞や骨 芽細胞へ分化する(図5)に伴って発現が 図 5.ヒト成体幹細胞の試験管内分化系統の多様性。 著しく変動する機能性 ncRNA 候補を選別し、 最終的に更なる機能解析対象として 7 種類を単離した。これらの ncRNA と発現挙動を共に する mRNA 種を多数同定した。項目 4、5 については、重要な生理現象に直結した機能性 ncRNA 候補の取得という目標は、クリアできたと考えられる。今後の機能解析によって、これら の候補が本当に重要な機能を果たしているのかを証明できるかどうかが重要である。ただ これまでに各候補の解析に適したモデル細胞系を選択済みであり、上記のオリジナルなノ ックダウン法を駆使することによって、世界に先駆けた機能性 RNA の機能解明につながる ことが十分期待できる。 62 新規低分子ncRNAの細胞系譜に即した機能解析(弘前大) モデル生物線虫で整備されている様々なリソース、遺伝学的手法を駆使して、哺乳類で は困難な細胞系譜に即した ncRNA 機能解析を遂行することを目標にしている。まず新規低 分子 ncRNA(約 60 種)を出発点にして、in situ ハイブリダイゼーションによって細胞内 局在解析を行い、このうち 11 種類が核小体に局在化していることを見出した。またその内 6 種類の局在が卵成熟過程、初期胚発生過程で変化することも見出した。この他に組織特異 的な発現を示す ncRNA2種を発見した。次に線虫の ncRNA 機能解析系として、機能未知の核 小体局在 ncRNA1種について遺伝子破壊株を作製した。このように卵形成過程や初期発生過 程など他の生物種では解析が難しい組織での解析を、線虫を用いることによって克服でき ることが期待できる。 63 ③-2-(2)マイクロ RNA の作用機構の解明 分室13(大塚製薬) 共同実施先: 徳島大学(塩見) 機能性 RNA は特定のタンパク質因子と特異的に相互作用する事によってその機能を発揮 する。miRNA を代表とする機能性小分子 RNA は Argonaute タンパク質と結合する事によっ て機能する。本研究項目では、ショウジョウバエ及びヒトの各 Argonaute に対するモノク ローナル抗体を作成し、免疫沈降を行う事によって各 Argonaute に結合する miRNA ないし は、その他の新規機能性小分子 RNA を探索する。Argonaute と共に実際に生体内で時空間特 異的に機能している小分子 RNA の同定を行う。各 Argonaute に特異的に結合するタンパク 質の同定を行う事によって、miRNA の作用機構に携わる因子に関する知見を得る。また、 miRNA プロセシング因子(Loqs/TRBP)と複合体を形成する因子を同定する事によって、miRNA 生成機序の解析をすすめる。遺伝子発現制御のモデル系を作成し、それを駆使することに よって発現制御分子メカニズムを解明する。脆弱性 X 症候群の発症機構の解明およびそれ らの複合体因子の脳神経発達での役割と RNAi/miRNA 経路との関わりを明らかにする。 ショウジョウバエ Argonaute タンパク質に結合する小分子 RNA の同定 Argonaute は、RNAi に代表される RNA silencing(小分子 RNA を介した塩基配列特異的な 標的遺伝子の発現抑制機構)において中心的な働きを担うタンパク質である。Argonaute フ ァミリーメンバーは、PAZ ドメインと PIWI ドメインを有する事を特徴とする。ショウジョ ウバエでは、AGO1(Argonaute1)、AGO2、AGO3、Piwi(P-element induced wimpy testis)、 Aubergine(以下、Aub と略する)が Argonaute ファミリーに属する。これまでに我々は、 AGO1 は miRNA を介して標的 mRNA の翻訳抑制を行う因子である事、AGO2 は RNAi、つまり siRNA (short-interfering RNA)を介して標的 mRNA を切断(Slicing)することによって標的 mRNA の遺伝子発現を抑制する因子である事を示した。その他の3種のタンパク質に関しては本 事業を通して研究を進め、これらが関与する RNA silencing 経路を明らかにする事、また、 64 これまで知られていなかった機能性 noncoding 小分子 RNA を新たに見出す事を目指した(図 1)。 ショウジョウバエ Piwi、Aubergine、AGO3 に対するモノクローナル抗体を作製し、それ らを駆使することによって、卵巣及び精巣において各タンパク質に結合する小分子 RNA を 同定した。その結果、これら3種のタンパク質はいずれも rasiRNA(repeat-associated siRNA)あるいは piRNA(Piwi-interacting RNA)と分類される 24 から 30 塩基長の内在性 小分子 RNA と特異的に結合することが明らかになった。piRNA は、ショウジョウハエの胚、 及び精巣から同定された、ゲノム上の繰り返し配列(例えばレトロトランスポゾンやヘテ ロクロマチン領域など)を由来とする一群の小分子 RNA である。我々の研究により Piwi、 Aubergine、AGO3 は、piRNA との結合を介して標的 RNA に作用する事によって、レトロトラ ンスポゾンなどの異常な侵入からゲノムを守る機能(ゲノム品質管理機能)を持つ事が示 唆された。Piwi に関する研究成果を論文としてまとめ、Genes Dev. に発表した(Saito K, et al. Genes Dev. 2006)。 卵巣内で Piwi と Aub に結合する piRNA は、レトロトランスポゾンの antisense 鎖を由来 とする、5’末端は U であることが多い(7割以上)、など、類似点を示す。しかし、AGO3 に結合する piRNA は、レトロトランスポゾンの sense 鎖由来のものが多く、5’末端の塩基 に偏りがない、など、Piwi や Aub 結合型 piRNA とは異なる様相を示すが判った。さらに AGO3 結合型 piRNA の配列解析を進めたところ、5’末端より 10 塩基目において A をもつものが 優位であることが判明した。これらの事を総合して考えると、Aub あるいは Piwi 結合型 piRNA と AGO3 結合型 piRNA は、5’末端から 10 塩基にわたって完全に対合する形(pairing) をとりうる事が予測された。これまでに得た piRNA 配列に戻り、こういった pairing を見 出す事ができるかどうか検討したところ、Aub 結合型と AGO3 結合型との間に pair を見出す 図2 ショウジョウバエ卵巣における piRNA 生合成経路のモデル図 Aub と AGO3 は、それぞれに結合する piRNA を介して標的 mRNA を切断する事によって、それぞれに結合 する piRNA の 5’末端を形成する。 65 ことが出来た。ただし、Piwi 結合型 piRNA と AGO3 結合型 piRNA の間には見出されなかった。 In vitro において標的 RNA 切断アッセイを行ったところ、リコンビナント Aub、AGO3 両者 に標的 RNA 切断能力があることが判明した。Aub と AGO3 はお互いに結合する piRNA を介し て標的 RNA を切断することによって新規 piRNA の 5’末端を作り出す、という「piRNA biogenesis」に関するモデルが成り立った(図 2)。以上の結果は Science に論文として発 表した(Gunawardane et al. Science 2007)。 精巣内 Piwi 結合型 piRNA を解析したところ、いろいろな種類のレトロトランスポゾンや その他の繰り返し配列を由来としており、その由来や配列には大きな偏りは見られなかっ た。しかし、精巣内 Aub の場合、それに結合する 424 種の piRNA を詳細に解析した結果、 Aub は精巣内で特定の配列と強く結合していることが明らかになった。Stellate 遺伝子の 抑制遺伝子 Suppressor of Stellate〔Su(Ste)〕由来のものが 46%、X 染色体の先端に位 置する、これまでに何にも annotate されていなかった配列を由来とするもの(AT-chX) が 24% であった。興味深いことに、AT-chX piRNA は、生殖細胞形成に必須な vasa 遺伝子 と高い相補性を示すことを見出した。ショウジョウバエ精巣より免疫沈降した Aub を用い て標的 RNA 切断アッセイを行ったところ、vasa mRNA の配列を含む標的 RNA は期待通り切断 された。Aub 欠失変異体精巣での VASA タンパク質の発現量は、野生型のそれと比べ、上昇 していた。以上の結果は、Aub は精巣で AT-chX piRNA との結合を介して vasa 遺伝子の発 現を調節していることを示す。AT-chX piRNA は、本研究を通して明らかにされた新規 noncoding RNA である。以上の結果は論文としてまとめ投稿した(Nishida et al. 投稿 中)。 ショウジョウバエ生殖細胞特異的に発現する piRNA(以下 piRNA)を解析したところ、3’ 末端塩基のリボース 2’-OH においてメチル化修飾を受けている事が判明した。植物におい ては、microRNA が 3’末端においてメチル化修飾を受けている。このメチル化修飾に関わ る因子も、Arabidopsis では HEN1 である事が既に示されている。HEN1 相同体遺伝子はショ ウジョウバエでも保存されており、これが piRNA メチル化に関わる因子であると推測され た。我々はこの遺伝子に Pimet(piRNA methyltransferase)と名付けた。Pimet 欠損型シ ョウジョウバエの卵巣から Aubergine に結合する piRNA を精製し解析したところ、この変 異体 piRNA は 3’末端修飾を持たない事が明らかになった。リコンビナント Pimet を用いて 66 in vitro メチル化アッセイを行った。1 本鎖 RNA(26 塩基)を基質として 14C-SAM 存在下反 応を行ったところ、期待通りにメチル化を受けた。植物 microRNA のメチル化とショウジョ ウバエ piRNA のメチル化機構はお互い異なるといえる。以上の結果をまとめ、論文として まとめた(図 3)(Saito et al. Genes Dev in press)。今後、精巣内 AGO3 に結合する piRNA の同定から、精巣と卵巣における piRNA 生合成経路の相違点などを見出す事が出来ると考 える。 哺乳動物細胞 Argonaute 特異的抗体の作製及び機能解析 哺乳動物細胞で発現する Argonaute サブファミリーメンバーは、AGO1 から AGO4 まで4種 類であることが判っている。これまでの解析から、AGO2 にのみ標的 RNA 切断活性がある、 つまり AGO2 だけが RNAi 機構において機能しうると報告された。一方、miRNA は、4種類中 どの AGO も結合すると報告されており、よって、どの AGO も miRNA 機構において機能しう ると考えられる。しかし、これらタンパク質の機能的な違いを示すための、さらなる解析 はなされていないのが現状である。我々は、本研究において、ヒト AGO に対する特異的抗 体を作製し、これら4種のタンパク質の機能的相違を明らかにする事を目指した。 human AGO1(hAGO1)から hAGO4 に対するモノクローナル抗体に成功した。hAGO2 モノク ローナル抗体を用いて hAGO2 の生化学的な解析を進めた。HeLa 細胞より作製した hAGO2 抗 体を用いて免疫沈降を行ったところ、hAGO2 が効率よく精製されることが判った。HeLa 細 胞で強く発現する事の判っている miRNA(miR-21)と hAGO2 との結合を Northern Blotting によって解析したところ、両分子の結合が確認できた。miR-21 に完全に相補的な配列を持 つ標的 mRNA を作製し、それを用いて免疫沈降した hAGO2 と共に標的 RNA 切断反応を行った ところ、期待通り切断された。hAGO2 に標的切断活性があることが確認できた。hAGO2 抗体 を用いて HeLa 細胞の免疫染色を行ったところ、P-body(processing body)への hAGO2 の 局在を観察することが出来た。以上の結果の一部をまとめ、プロトコールとして Methods in Molecular Biology に投稿した(Miyoshi et al. Methods in Molecular Biology in press)。 hAGO3、hAGO4 抗体を用いて HeLa 細胞より免疫沈降を行ったところ、各々に結合する小分子 RNA 群を見出すまでに到った。現在、その解析を進めている。今後の研究によって種々の組 織において各 AGO に結合する異なった miRNA が同定出来ると考える。 これまでショウジョウバエにおける解析で AGO2 との相互作用が明らかになっている dFMR1 のヒトオーソログは、高頻度に精神遅滞を伴う遺伝性疾患・脆弱性 X 症候群の原因遺 伝子の一つである。そこで脆弱性 X 症候群の発症機構と RNAi/miRNA 経路との関わりについ ての解析も進めている。 これまでの研究成果では、新規 piRNA に関する機能と生合成機構について、世界に先駆 けた成果を挙げ、順調に進行したと考えられる。今後ヒトにおける Ago ファミリー因子の 機能解析を進め、さらなる新規機構と疾患との関わりを探っていく予定である。 67 ③-2-(3) アンチセンスRNAの機能解析 共同実施先: 理化学研究所(清澤)、慶應義塾大学(2;金井) 近年のゲノム・トランスクリプトーム解析の結果、多くのモデル生物において以前考え ら れ て い た よ り 遙 か に 多 く の 内 在 性 の セ ン ス - ア ン チ セ ン ス RNA (sense-antisense transcript; SAT) が存在することが明らかになった。これら RNA には非翻訳性の RNA (ncRNA) の も の が 存 在 す る ことも判明した(図1)。哺 乳動物における内在性アン チセンス RNA は 3〜4 年前の ゲノムデータによる解析以 前は、20-30 個程度が知られ ているのみであったが、現在 ではヒトやマウスにおいて 3,000-5,000 対もの SAT が情 報科学的に同定されている。 図 1.センス・アンチセンス遺伝子の概念図 SAT は細胞内では相互の転写 抑制や二本鎖 RNA を介した発現制御の可能性があるため注目されている。 我々は本プロジェクト以前に 2,500 対のマウス SAT からなるカスタムオリゴマイクロア レイを作製、発現解析を行い、(1) インフォマティクス的に同定されたセンス-アンチセン ス遺伝子対のほとんどが実際の組織、細胞で発現しており、センス鎖・アンチセンス鎖の 発現比も組織によって違いがあり、(2) センス-アンチセンス遺伝子座からは非常に複雑な 転写様式を介して多様なサイズの転写産物が産生され、(3) これらの転写産物の多くは核 内に留まり、通常の mRNA とは異なりポリ A 鎖を持たないものが多い、ということを発見し た。また、我々が同定したセンス-アンチセンス遺伝子対の約半分は coding RNA/ncRNA の 遺伝子対であった。そこで本プロジェクトでは、機能性の高い内在性のアンチセンス/ncRNA 候補の同定、及び生物学的に興味深く、特に疾患に関与する新規内在性のアンチセンス /ncRNA 同定を目指している。 ヒト・マウスにおける SAT 遺伝子及び ncRNA 遺伝子の抽出と比較解析 H-invitational、FANTOM3、NCBI RefSeq、NCBI UniGene に登録されている転写産物の配 列をゲノム上にマッピングすることにより、ヒト・マウスの SAT の抽出を行った。その結 果、ヒトで 3,524 個、マウスで 5,351 個のペアを抽出することができた。また転写産物の 配列のうち、コード領域としての配列上の特徴を持っておらず、タンパク質との相同性も 低いものを non-protein-coding RNA と考え、その抽出を行った。その結果、ヒトで 5,422 個、マウスで 4,519 個の候補を得ることができた。 これら SAT ペア、non-protein-coding 68 RNA について、ツール(OligoWiz)を用いたプローブ配列の設計を行い、またマイクロアレ イデータを得るための、Agilent 社のカスタムオリゴアレイを作成した。 ヒト・マウスで保存されている SAT および関連する特徴を抽出するため、SAT の配列構造 の比較解析を行った。その結果、全 SAT の 6.6%について保存が確認され、同時に 3’の重 なりが多いなどの特徴を抽出することができた。本成果は論文として発表済みであり (Numata et al. 2007)、現在はさらに保存された SAT の発現レベルでの比較解析を行って いる。 マイクロアレイの作製と発現解析 上記情報科学的解析に基づき、マイク ロアレイ(44k フォーマット)を作製し た。また上記情報科学的解析をしている 間、プロジェクト開始以前に解析したデ ータに基づき約 2000 対のヒト SAT 遺伝子 を搭載したマイクロアレイを作製し(11k フォーマット)、一部疾患(がん)サンプ ルを用いて先行ハイブリダイゼーション を行い、予備的データの取得を行った。 図2は、タンパク質をコードしている遺 伝 子 (coding) と ncRNA 遺 伝 子 (non-coding)がペアとなっている SAT 遺 伝子の発現比を抽出してクラスタリング した例である。この中で特にがん組織と 正常組織で coding/non-coding の比が逆 転している遺伝子ペアが存在することか ら、SAT 遺伝子発現制御が癌組織で著し く乱されていることが見て取れる。 現在、44k アレイを用いてマウスの正常 組織サンプル、ヒト正常組織及び疾患サ ンプルを用いてハイブリダイゼーション、 図2.ヒトの coding/non-coding 遺伝子ペアからなる SAT 遺伝 子ペアの癌組織と正常組織での発現解析。Coding /non-coding の発現の割合が高いものを赤、低いものを緑で 示す。癌組織と正常組織で上記割合が逆転しているものを 拡大して右に示した。 及びその結果の解析が進行中である。デ ータのビューワ化も進めている(公開予 定)。 69 Ⅳ. 実用化の見通しについて 本プロジェクトは、基礎的・基盤的研究開発としての位置づけである。新たなポストゲ ノム研究の展開として機能性 RNA の解析を行うとともに、それらの研究を強力に推進する ためのバイオツールやバイオインフォマティクスの開発、成果を高度に利用するためのデ ータベース整備や先端技術を応用した高度医療機器開発等により、テーラーメイド医療・ 予防医療・再生医療等の実現や画期的な新薬の開発、医療機器、福祉機器等の開発・実用 化を促進することを目指す。 生体における機能性 RNA の機能を解明し、その機能の抑制や促進による生体応答を総合的 に把握する基盤研究は、再生医療や疾患治療等の実現に資する重要な課題である。細胞分 化誘導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持った機能性 RNA を同定し、成果をすばやく特許化することにより、再生医療や RNA 医療、疾患診断、疾患 治療等、産業応用の促進、新産業の創出が期待される。機能性 RNA が関与する疾患メカニ ズムを解明することにより、新規な診断マーカーや創薬ターゲットを提供する。同時に、 機能性 RNA を解析する手法及びツールの開発により、本分野における我が国の優位性の確 立を目指す。 なお、解析ツールの開発においては、すでに早期の実用化が期待される成果が出てきて いる。東京大学のグループでは、RNA マスフィンガープリント法および往復循環クロマトグ ラフィー法を開発し特許出願した。当面はプロジェクト内で、優位性をもって RNA の機能 解析研究を進めるが、時機をみて、国内外の企業に特許を実施許諾する予定である。DN Aチップ研究所では、アトモル(atto mole)レベルという高い検出感度を持つマイクロア レイ技術の開発に成功しており、プロジェクト期間内の製品化を目指している。日本新薬 のグループでは、高品質の RNA を安価に化学合成する方法を確立し、今年度中に「研究用 試薬」としての製造販売を開始する計画である。将来的には、RNA 医薬の GMP 製造における 「グローバルスタンダード」を目指している。 さらに、機能性 RNA の関与する現象は生物界に広く普遍的である。本プロジェクトの成 果は、医療分野以外のバイオ産業(農林水畜産業、発酵工業、環境分野、食品分野、など) においても、大きな波及効果をもたらすと期待される。 70 (別紙) 論文、特許、報道、講演 年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 計 論文 19 27 12 58 年度別論文、特許、報道、講演の件数一覧 総説、解説、著書 特許 17 23 2 42 1 10 2 13 報道 講演 0 2 1 3 42 62 4 108 1.論文 (1)査読のある原著論文 研究開発項目① 機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 <平成17年度> 1. Kengo Sato and Yasubumi Sakakibara RNA secondary structural alignment with conditional random fields Bioinformatics, 21: ii237 - ii242., 2005 2. Hiroshi Matsui, Kengo Sato, and Yasubumi Sakakibara Pair stochastic tree adjoining grammars for aligning and predicting pseudoknot RNA structures Bioinformatics, 21: 2611 - 2617., 2005 <平成18年度> 1. Michiaki Hamada, Koji Tsuda, Taku Kudo, Taishin Kin and Kiyoshi Asai Mining frequent stem patterns from unaligned RNA sequences Bioinformatics, 15 October 2006; 22: 2480 - 2487. 2. Yasuo Tabei, Koji Tsuda, Taishin Kin, and Kiyoshi Asai SCARNA: fast and accurate structural alignment of RNA sequences by matching fixed-length stem fragments Bioinformatics, 15 July 2006; 22: 1723 - 1729. 3. Taishin Kin, Kouichirou Yamada, Goro Terai, Hiroaki Okida, Yasuhiko Yoshinari, Yukiteru Ono, Aya Kojima,Yuki Kimura, Takashi Komori and Kiyoshi Asai fRNAdb: a platform for mining/annotating functional RNA candidates from non-coding RNA sequences Nucleic. Acids Research, 35, Database .Issue, D145-D148, 2007 4. Hisanori Kiryu, Taishin Kin, and Kiyoshi Asai Robust prediction of consensus secondary structures using averaged base pairing probability matrices Bioinformatics, 23: 434 - 441., 2007 5. Sakakibara Yasubumi , Kiyoshi Asai and Kengo Sato 成果リスト 1 Stem kernels for RNA sequence analyses Proc. of the 1st International Conference on Bioinformatics Research and Development (BIRD 2007), Lecture Notes in Bioinformatics (LNBI) 4414, pp. 278-291 (Mar. 2007) <平成19年度> 1. Hisanori Kiryu, Yasuo Tabei, Taishin Kin, and Kiyoshi Asai Murlet: A practical multiple alignment tool for structural RNA sequences Bioinformatics, Advance Access published on April 25, 2007; doi: doi:10.1093/bioinformatics/btm146 研究開発項目② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 <平成17年度> 1. Nagaike, T., Suzuki, T., Katoh, T. and Ueda, T. Human mitochondrial mRNAs are stabilized with polyadenylation regulated by mitochondria-specific poly(A) polymerase and polynucleotide phosphorylase. J. Biol. Chem., 280, 19721-19727., 2005 2. Sakurai, M., Ohtsuki, T., Suzuki, T. and Watanabe, K. Unusual usage of wobble modification in mitochondrial tRNAs of the nematode Ascaris suum. FEBS Lett., 579, 2767-2772., 2005 3. Yasukawa, T., Kirino, Y., Ishii, N., Holt, I.J., Jacobs, H.T., Makifuchi, T., Fukuhara, N., Ohta, S., Suzuki, T. and Watanabe, K. Wobble modification deficiency in mutant tRNAs in patients with mitochondrial diseases FEBS Lett., 579, 2948-2952., 2005 4. Kirino, Y., Goto, Y., Campos, Y., Arenas, J. and Suzuki, T. Specific correlation between tRNA taurine-modification deficiency and clinical features of human mitochondrial disease Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 102, 7127-7132., 2005 5. Nakanishi, K., Fukai, S., Ikeuchi, Y., Soma, A., Sekine, Y., Suzuki, T. and Nureki, O. Structural basis for lysidine formation by ATP pyrophosphatase accompanied with a lysine-specific loop and a tRNA-recognition domain Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 102, 7487-7492, 2005 6. Zhang, L., Ching Ging, N., Komoda, T., Hanada, T., Suzuki, T. and Watanabe, K. Antibiotic susceptibility of mammalian mitochondrial translation FEBS Lett., 579, 6423-6427., 2005 7. Chimnaronk, S., Jeppesen, M.G., Suzuki, T., Nyborg, J. and Watanabe, K. Dual Mode Recognition of noncanonical tRNAsSer by seryl-tRNA synthetase in mammalian mitochondria EMBO J., 24, 3369–3379., 2005 成果リスト 2 8. Ote, T., Hashimoto, M., Ikeuchi, Y., Suetsugu, M., Suzuki, T., Katayama, T. and Kato, J. Involvement of the Escherichia coli folate-binding protein YgfZ in RNA modification and regulation of chromosomal replication initiation Mol Microbiol., 59, 265-275., 2005 9. Ikeuchi, Y., Soma, A., Ote, T., Kato, J., Sekine, Y. and Suzuki, T. Molecular mechanism of lysidine synthesis that determines tRNA identity and codon recognition Mol Cell., 19, 235-246., 2005 10.Numata, T., Fukai, S., Ikeuchi, Y., Suzuki, T. and Nureki, O. Structural basis for sulfur relay to RNA mediated by heterohexameric TusBCD complex Structure, 14, 357-366., 2006 11.Ikeuchi, Y., Shigi, N. Kato, J., Nishimura, A. and Suzuki, T. Mechanistic insights into sulfur-relay by multiple sulfur mediators involved in thiouridine biosynthesis at tRNA wobble positions Mol Cell., 21, 97-108., 2006 12.Shigi, N., Sakaguchi, Y., Suzuki, T. and Watanabe, K. Identification of two tRNA-thiolation genes required for cell growth at extremely high temperatures J. Biol. Chem., 281, 14296-14306., 2006 13.Kirino, Y., Yasukawa, T., Marjavaara, S.K., Jacobs, H.T., Holt, I.J., Watanabe, K. and Suzuki, T. Acquisition of the wobble modification in mitochondrial tRNALeu(CUN) bearing the G12300A mutation suppresses the MELAS molecular defect Hum Mol Genet. 15, 897-904., 2006 14.Takano, Y., Takayanagi, N., Hori, H., Ikeuchi, Y., Suzuki, T., Kimura, A. and Okuno, T. A gene involved in modifying transfer RNA is required for fungal pathogenicity and stress tolerance of Colletotrichum lagenarium. Mol Microbiol. 60, 81-92., 2006 15.Shigi, N., Suzuki, T., Terada, T., Shirouzu, M., Yokoyama, S. and Watanabe, K. Temperature-dependent biosynthesis of 2-thioribothymidine of Thermus thermophilus tRNA J. Biol. Chem., 281, 2104-2113., 2006 <平成18年度> 1. Noma, A., Kirino, Y., Ikeuchi, Y. and Suzuki, T. Biosynthesis of wybutosine, a hyper-modified nucleoside in eukaryotic phenylalanine tRNA EMBO J 25, 2142-2154., 2006 2. Takeda, H., Toyooka, T., Ikeuchi, Y., Yokobori, S., Okadome, K., Takano, F., Oshima, T., Suzuki, T., Endo, Y. and Hori, H. The substrate specificity of tRNA (m1G37) methyltransferase (TrmD) from Aquifex aeol 成果リスト 3 icus. Genes Cells, 11, 1353-1365., 2006 3. Komoda, T., Sato, N.S., Phelps, S.S., Namba, N., Joseph, S. and Suzuki, T. The A-site finger in 23S rRNA acts as a functional attenuator for translocation J. Biol. Chem., 281, 32303-32309., 2006 4. Sato, A., Watanabe, Y., Suzuki, T., Komiyama, M., Watanabe, K. and Ohtsuki, T. Identification of the residues involved in the unique serine specificity of Caenorhabditis elegans mitochondrial EF-Tu2. Biochemistry, 45, 10920-10927., 2006 5. Sato, N.S., Hirabayashi, N., Agmon, I., Yonath, A. and Suzuki, T. Comprehensive genetic selection revealed essential bases in the peptidyl-transferase center. Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 103, 15386-15391., 2006 6. Numata, T., Ikeuchi, Y., Fukai, S., Suzuki, T. and Nureki, O. Snapshots of tRNA sulfuration via an adenylated intermediate Nature, 442, 419-424., 2006 7. Guan, M.X., Yan, Q., Li, X., Bykhovskaya, Y., Gallo-Teran, J., Hajek, P., Umeda, N., Zhao, H., Garrido, G., Mengesha, E., Suzuki, T., del Castillo, I., Peters, J. L., Li, R., Qian, Y., Wang, X., Shohat, M., Estivill, X., Watanabe, K. and Fischel-Ghodsian, N. Mutation in TRMU related to mitochondrial tRNA modification modulates the phenotypic expression of the deafness-associated mitochondrial 12S rRNA mutations Am J Hum Genet., 79, 291-302., 2006 8. Hirabayashi, N., Sato, N.S. and Suzuki, T. Conserved loop sequence of helix 69 in Escherichia coli 23S rRNA is involved in A-site tRNA binding and translational fidelity J. Biol. Chem., 281, 17203-17211., 2006 9. Numata, T., Ikeuchi, Y., Fukai, S., Adachi, H., Matsumura, H., Takano, K., Murakami, S., Inoue, T., Mori, Y., Sasaki, T., Suzuki, T. and Nureki, O. Crystallization and preliminary X-ray analysis of the tRNA thiolation enzyme MnmA from Escherichia coli complexed with tRNA(Glu). Acta Crystallograph Sect F Struct Biol Cryst Commun. 62(Pt 4):368-371., 2006 10. Noma, A. and Suzuki, T. Ribonucleome analysis identified enzyme genes responsible for wybutosine synthesis. Nucleic Acids Symp Ser (Oxf), 50, 65-66., 2006 11. Kitahara, K., Sato, N. S., Namba, N., Yokota, T., Tsujimura, T. and Suzuki, T. Systematic deletion of rRNAs for investigating ribosome architecture and function. Nucleic Acids Symp Ser (Oxf), 50, 287-288., 2006 12. Miyauchi, K., Tomoya, O. and Suzuki, T. 成果リスト 4 Automated parallel isolation of multiple species of non-coding RNAs by the reciprocal circulating chromatography method Nucleic Acids Res., 35, e24, 2007 13. Katoh, T. and Suzuki, T. Specific residues at every third position of siRNA shape its efficient RNAi activity Nucleic Acids Res., 35, e27, 2007 14. Yoshimura, Y., Noguchi, Y., Sato, H. and Fujimoto, K. Template-Directed DNA Photoligation in Rapid and Selective Detection of RNA Point Mutations. ChemBioChem , 7, 598 – 601, 2006 15. Yoshimura, Y., Noguchi, Y. and Fujimoto, K. Highly sequence specific RNA terminal labeling by DNA photoligation. Org. Biomol. Chem., 5, 139, 2007 <平成19年度> 1. Ohara, T., Sakaguchi, Y., Suzuki, T., Ueda, H., Miyauchi, K. and Suzuki, T. The 3’-termini of mouse piwi-interacting RNAs are 2’-O-methylated Nat Struct Mol Biol., 14, 349-350., 2007 2. Kitahara, K., Kajiura, A., Sato, N.S. and Suzuki, T. Functional genetic selection of Helix 66 in Escherichia coli 23S rRNA identified the eukaryotic class of binding sequences for ribosomal protein L2 Nucleic Acids Res., in press., 3. Suzuki, T., Sakaguchi, Y. and Suzuki, T. Mass spectrometric analysis of 3’-terminal nucleosides in non-coding RNAs Nat Protoc., DOI: 10.1038/nprot.2007.185., 2007 4. Dunham, C.M., Selmer, M., Phelps, S.S., Suzuki, T., Joseph, S. and Ramakrishnan, V. Structures of tRNAs with an expanded anticodon loop in the decoding center of the 30S Ribosomal Subunit RNA, in press 5. Nakai, Y., Nakai, M., Lill, R., Suzuki, T. and Hayashi, H. Thio modification of yeast cytosolic tRNA is an iron-sulfur protein-dependent pathway Mol Cell Biol., 27, 2841-2847., 2007 6. Suzuki, T. and Suzuki, T. Chaplet column chromatography: isolation of a large set of individual RNAs in a single step. Methods in Enzymol., 425, 213-220., 2007 7. Suzuki, T., Ikeuchi, Y., Noma, A., Suzuki, T. and Sakaguchi, Y. Mass spectrometric identification and characterization of RNA-modifying enzymes. Methods in Enzymol., 425, 195-211., 2007 成果リスト 5 8. Shiba Y, Masuda H, Watanabe N, Ego T, Takagaki K, Ishiyama K, Ohgi T,Yano J. Chemical synthesis of a very long oligoribonucleotide with 2-cyanoethoxymethyl (CEM) as the 2'-O-protecting group: structural identification and biological activity of a synthetic 110mer precursor-microRNA candidate. Nucleic Acids Res., 35, 3287-3296., 2007 研究開発項目③ 機能性RNAの機能解析 <平成17年度> 1. Hokii, Y., Kubo, A., Ogasawara, T., Nogi, Y., Taneda, A., Arai, R., Muto, A. and Ushida, C. Twelve novel C. elegans RNA candidates isolated by two-dimensional polyacrylamide gel electrophoresis. Gene, 365: 83-87, 2006 2. Miyoshi K, Tsukumo H, Nagami T, Siomi H, and Siomi MC. Slicer function of Drosophila Argonautes and its involvement in RISC formation. Genes Dev., 19:2837-2848., 2005 <平成18年度> 1. Hirose, T., Ideue, T., Nagai, M., Hagiwara, M., Shu, MD and Steitz, JA A spliceosomal intron binding protein, IBP160, links position-dependent assembly of intron-encoded box C/D snoRNP to pre-mRNA splicing. Molecular Cell, 23: 673-684, 2006 2. Sasaki, Y.T.F., Sano, M., Kin, T., Asai, K. and Hirose, T. Coordinated expression of ncRNAs and HOX mRNAs in the human HOXA locus. Biochem Biophys Res Comm, 357: 724-730, 2007 3. Nojima, T., Hirose, T., Kimura, H. and Hagiwara, M. The interaction between cap-binding complex and RNA export factor is intronless mRNA export. J Biol Chem., 282: 15645-51, 2007. required for 4. Saito K, Nishida KM, Mori T, Kawamura Y, Miyoshi K, Nagami T, Siomi H, Siomi MC. Specific association of Piwi with rasiRNAs derived from retrotransposon and heterochromatic regions in the Drosophila genome. Genes Dev., 20: 2214-2222.,2006 5. Ishizuka A, Saito K, Siomi MC, Siomi H. In vitro precursor microRNA processing assays using Drosophila Schneider-2 cell lysate Methods in Molecular Biology, 342: MicroRNA Protocols, 277-286.,2006 6. Gunawardane LS, Saito K, Nishida KM, Miyoshi K, Kawamura Y, Nagami T, Siomi H Siomi MC. A Slicer-mediated mechanism for rasiRNA 5’ end formation in Drosophila. Science , 16:1587-1590, 2007 成果リスト 6 7. Numata K, Okada Y, Saito R, Kiyosawa H, Kanai A, Tomita M Comparative analysis of cis-encoded antisense RNAs in eukaryotes. Gene, 392:134-141, 2007 <平成19年度> 1. Sasaki, Y.T.F., Sano, M., Ideue, T., Kin, T., Asai, K. and Hirose, T. Identification and characterization of human non-coding RNAs with tissue-specific expression. Biochem Biophys Res Comm, 357: 991-996, 2007 2. Siomi H, Siomi MC. Expanding RNA physiology: microRNAs in a unicellular organism. Genes Dev., 21: 1153-1156, 2007 3. Saito, K., Sakaguchi, Y., Suzuki, T., Suzuki, T., Siomi, H. and Siomi, M.C. Pimet, the Drosophila homolog of HEN1, mediates 2’-O-methylation of Piwi-interacting RNAs at their 3’ ends Genes Dev., in press. 成果リスト 7 (2)総説、解説、著書 研究開発項目① 機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 <平成18年度> 1. 斎藤輪太郎 バイオインフォマティクスを用いた non-coding RNA 予測のさまざまな試み 機能性 non-coding RNA(クバプロ), 2006 2.榊原康文,佐藤健吾 機能性 RNA の配列解析と構造解析 人工知能学会誌, Vol.22, No.1, 54-62, 2007 研究開発項目② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 <平成17年度> 1.鈴木 勉、「RNA 修飾の世界―見過ごされている RNA の質的な情報」 生化学会誌 12 月号, Vol. 77, p1481-1496, 2005 2.北原 圭、鈴木 勉、「リボソームの立体構造と抗生物質の作用機序」 RNA 工学の最前線(監修 中村義一)シーエムシー出版, p225-237, 2005 3.鈴木 勉、廣瀬哲郎、「機能性 RNA 研究における RNA プロセシングの重要性」 実験医学 Vol. 23, p1864-1868, 2005 4.鈴木 勉、「RNA 修飾の生合成と機能」 実験医学 Vol. 23, p1881-1889, 2005 5.鴫 成実、鈴木 勉、「哺乳動物ミトコンドリアの翻訳系―ミトコンドリアゲノムの縮小によって もたらされたユニークなシステム」 蛋白質 核酸 酵素 (共立出版)(11 月増刊号)「二層膜オルガネラの遺伝学」Vol. 50, p1732-1736, 2005 6.Suzuki,T. Biosynthesis and function of tRNA wobble modifications. In Fine-tuning of RNA functions by modification and editing Topics in Curr Genetics, vol 12, Springer-Verlag, NY pg 24-69., 2005 <平成18年度> 1.鈴木 勉、鈴木健夫、上田宏生、宮内健常、坂口裕理子 マススペクトロメトリーによる ncRNA の解析 蛋白質核酸酵素(2 月号増刊:RNA と生命)(共立出版)Vol. 51, p2431-2435, 2006 2.野間章子、鈴木 勉 細胞核の世界 RNA 修飾酵素の細胞内局在と RNA 成熟化機構 蛋白質核酸酵素(11 月号増刊)(共立出版)Vol. 51, p2226-2231, 2006 成果リスト 8 3.鈴木 勉、鈴木健男、坂口裕理子 RNA マススペクトロメトリー ゲノム医学(メディカルレヴュー社), Vol. 6, 89-96, 2006 4.池内与志穂,鈴木 勉 RNA 修飾に関わる硫黄リレータンパク質群の同定」 細胞工学(4 月号)(秀潤社), Vol. 25, p400-401, 2006 研究開発項目③ 機能性RNAの機能解析 <平成17年度> 1.吉田 哲郎 miRNA と疾患との関連 BioClinica 20, 1071-1076, 2005 2.蓮輪英毅、岡部 勝 RNAi による哺乳動物個体レベルでのノックダウン 「RNA 工学の最前線 Frontier of RNA Engineering」シーエムシー出版 pp.67-76 (全 p.268 監修:中村義一、大内将司), 2005 3.廣瀬哲郎 新規ポリ A 付加装置による核内 RNA 品質管理機構 実験医学, 23(12)、p. 2153, 2005 4.廣瀬哲郎、塩見美喜子 RNA とゲノム(最近の話題):機能性 RNA の基本的な特徴と機能 ゲノム医学, 6、p. 97-101, 2006 5.九十九裕子、Lalith S. Gunawardane、塩見美喜子 RNAi の分子メカニズム 遺伝子医学 MOOK 4 号「RNA と創薬」、p. 78-83, 2005 6.三好啓太、塩見美喜子 第一章 RNA interference (RNAi)と micro RNA (miRNA):概論 RNA 工学の最前線, p. 30-40, 2005 7.春原隆史、塩見美喜子 Small RNA による遺伝子発現制御機構 化学と生物, 43(11)、p. 746-752, 2005 8.三好啓太、塩見美喜子 microRNA の作用機序:RNA の切断と翻訳抑制 Bio Clinica、20(12)、p. 24-30, 2005 9.齋藤都暁、塩見美喜子 microRNA の生理機能解明への新しいアプローチ 実験医学, 23(12)、p. 2151, 2005 成果リスト 9 10.清澤秀孔、土井貴裕 新規機能性 RNA 分子による遺伝子発現プロファイリング - マイクロ RNA とナチュラル・ア ンチセンス RNA 医学のあゆみ – 消化器疾患 state of arts, Ver.3, 245-251, 2006 11.Nelson D. and Siomi MC Chapter 56; Fragile X Syndrome. Pediatric Nutrition in Chronic Diseases and Developmental Disorders -Prevention, Assessment, and Treatment- 2nd Edition. (ed., Shirley Walberg Ekvall and Valli K. Ekvall) ISBN: 0195165640. Oxford University Press, New York., 2005 <平成18年度> 1.佐々木保典、廣瀬哲郎 snoRNA の生合成と機能に関する新知見 蛋白質核酸酵素 別冊「RNA と生命」51:2437-2442, 2006 2.井手上賢、廣瀬哲郎 RNA プロセシングを監視する核内 RNA 品質管理機構、 蛋白質核酸酵素 別冊「細胞核の世界」51:2205-2209, 2006 3.牛田千里 線虫にみる RNA 機能の多様性 (金井昭夫・河合剛太編) 機能性 non-coding RNA(クバプロ), 2006 4.西田知訓、塩見美喜子 siRNA, miRNA, そして新規低分子 RNA による RNA サイレンシングの分子機構 蛋白質核酸酵素 12 月号 増刊, 51(16), 2450-2455, 2006 5.塩見春彦、塩見美喜子 2006 年ノーベル医学生理学賞 RNAi,Fire と Mello 蛋白質核酸酵素 12 月号, 51(15), 2006 6.塩見春彦、塩見美喜子 2006 年ノーベル生理学・医学賞 RNA 干渉の二面性 現代化学, 429, 66-68, 2006 7.石塚明、塩見春彦、塩見美喜子 1 章 RNAi 基本メカニズムに関する Q&A RNAi 実験 なるほど Q&A, 16-53, 58-59, 2006 8.春原隆史、塩見美喜子、塩見春彦 小分子 RNA によるゲノム進化 科学, 76(5) , 532-536, 2006 9.渡辺雄一郎、塩見美喜子、塩見春彦 RNA サイレンシングの生物学-小さな RNA が果たす大きな役割現代化学, 421, 56-60, 2006 成果リスト 10 10.齋藤都暁、塩見美喜子 生殖細胞形成必須因子 Piwi と rasiRNA による新規 RNA サイレンシング 蛋白質核酸酵素, 52, 221-226, 2007 11.三好啓太、塩見美喜子 miRNA による翻訳抑制機構の分子メカニズム 細胞工学, 26, 560-654, 2007 12.齋藤都暁、西田知訓、塩見美喜子 ショウジョウバエ生殖細胞において特異的に起こる RNA サイレンシング 実験医学, 25, 811-817, 2007 13.塩見美喜子 概論-小分子 RNA はゲノム情報発現をどのように制御するか 実験医学, 25, 794-799, 2007 14.清澤秀孔 マウスにおける内在性アンチセンス転写産物の解析 機能性 non-coding RNA, 2006 15.清澤秀孔 non-coding RNA 医学のあゆみ , 20, 196-198, 2007 16.清澤秀孔 マウス・ナチュラルアンチセンス RNA 蛋白質核酸酵素, 52, 441-448, 2007 17.Tsuchiya, S., Okuno, Y. and Tsujimoto, G. MicroRNA: biogenetic and Functional differentiation and cancer J Pharmacol Sci, 101: 267-270, 2006 mechanisms and involvements in cell <平成19年度> 1.廣瀬哲郎 ncRNA の機能解析とヒトの疾患へのアプローチ Medical Bio 4 巻 4 号 41-44, 2007 2.Kiyosawa H Natural antisense RNA in mammals: novel characteristics revealed by genome-wide expression analysis, in Antisense Elements (Genetics) Research Focus Nova Science Publishers, Inc., New York , in press. 成果リスト 11 2.特許 <平成17年度> (1)発明者:津田宏治(産総研)、金大真(産総研)、浜田道昭(みずほ)、浅井潔(東大) 発明などの名称:RNA 配列情報処理装置 出願日:平成 18 年 2 月 27 日 出願番号:特願 2006-49694 出願人:(独)産業技術総合研究所、みずほ情報総研㈱、東京大学 <平成18年度> (1)発明者:寺井悟朗(インテック W&G)、金大真(産総研) 発明などの名称:マイクロ RNA 検出装置、方法およびプログラム 出願日:平成 18 年 12 月 13 日 出願番号:特願 2006-335470 出願人:インテック W&G㈱、産業技術総合研究所 (2)発明者:津田宏治(産総研)、金大真(産総研)、浜田道昭(みずほ)、浅井潔(東大) 発明などの名称:RNA 配列情報処理装置(PCT 出願) 出願日:平成 19 年 2 月 9 日 出願番号:PCT/JP2007/052369 出願人:産業技術総合研究所、みずほ情報総研㈱、東京大学 (3)発明者:鈴木勉(東大)、宮内健常(東大)、上田宏生(東大)、鈴木健夫(東大)、坂口裕理子 (東大) 発明などの名称:質量分析によるゲノム上で RNA 配列を同定するシステム 出願日:平成 18 年 7 月 14 日 出願番号:特願 2006-194780 出願人:東京大学 (4)発明者:鈴木勉(東大)、宮内健常(東大) 発明などの名称:往復循環クロマトグラフィーを用いた生体高分子の単離方法 出願日:平成 18 年 8 月 2 日 国際出願番号:PCT/JP2006/315271 出願人:東京大学 (5)発明者:北川英俊(日本新薬)、植竹弘一(日本新薬) 発明などの名称:核酸保護基の導入方法 出願日:平成 18 年 8 月 2 日 出願番号:特願 2006-210439 出願人:日本新薬㈱ (6)発明者:北川英俊(日本新薬)、植竹弘一(日本新薬)、山田浩平(ヤマサ醤油) 発明などの名称:リボ核酸化合物の製造方法 出願日:平成 19 年 1 月 22 日 出願番号:特願 2007-011813 出願人:日本新薬㈱、ヤマサ醤油㈱ 成果リスト 12 (7)発明者:山田陽史(協和発酵)、宮澤達也(協和発酵)、吉田哲郎(協和発酵) 発明などの名称:新規核酸 出願日:平成 18 年 9 月 4 日 出願番号:特願 2006-238459 出願人:協和醱酵工業㈱ (8)発明者:山田陽史(協和発酵)、宮澤達也(協和発酵)、吉田哲郎(協和発酵) 発明などの名称:間葉系幹細胞の増殖および/または分化制御剤 出願日:平成 18 年 10 月 31 日 出願番号:特願 2006-295113 出願人:協和醱酵工業㈱ (9)発明者:山田陽史(協和発酵)、宮澤達也(協和発酵)、吉田哲郎(協和発酵) 発明などの名称:新規核酸 出願日:平成 18 年 12 月 18 日 出願番号:特願 2006-339997 出願人:協和醱酵工業㈱ (10)発明者:妙本 陽(東レ)、秋山英雄(東レ)、奥野恭史(京大)、辻本豪三(京大)、国本 亮 (京大)、土屋創健(京大) 発明などの名称:マイクロ RNA 標的遺伝子予測装置 出願日:平成 19 年 3 月 2 日 出願番号:特願 2007-53322 出願人:東レ㈱ <平成19年度> (1)発明者:鈴木 勉(東大)、山崎雄三(島津)、瀬口武史(島津) 発明などの名称:質量分析サンプルの調製方法、リボ核酸のイオン化方法、リボ核酸の質 量分析方法、及び細胞由来の低分子リボ核酸の質量分析方法 出願日:平成 19 年 5 月 28 日 出願番号:特願 2007-140998 出願人:(株)島津製作所、東京大学 (2)発明者:清澤秀孔(理研) 発明などの名称:内在性アンチセンス RNA の発現解析システム 出願日:平成 19 年 5 月 31 日 出願番号:特願 2007-146341 出願人:(独)理化学研究所 成果リスト 13 3.報道 <平成18年度> 2006 年 11 月: BTJ ジャーナル 11 月号(日経バイオ) p2-5 リーダーインタビュー 「RNA を MS で測定 質量情報をあぶり出す」 2006 年 11 月:(オンライン):2006.11.20(冊子体)(日経バイオテク) 「協和発酵、間葉系幹細胞から新規 miRNA を 29 個同定、 骨芽細胞分化を抑制する miRNA も発見」 <平成19年度> 2007 年 5 月: 日本経済新聞:2007.5.11 「数分で解析、病気診断 –島津と東大 ノーベル賞技術もとに- 」 成果リスト 14 4.講演・学会発表 研究開発項目① 機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 <平成17年度> 1. 第7回日本 RNA 学会年会 「Spport vector machine を用いた機能性 RNA ファミリーの分類」 浜田道昭、加藤毅、津田宏治、金大真、浅井潔、2005/8/9 2. RNA/RNP を見つける会 「サポートベクトルマシンを用いた機能性 RNA ファミリーの分類」 浜田道昭、加藤毅、津田宏治、金大真、浅井潔、2005/9/10 3. The 14th International Conference on Genome Informatics ”An Alignment Algorithm by Matching Fixed-Length Stem Fragments for Comparing RNA Sequences,” 田部井靖生、津田宏治、金大真、浅井潔、2005/12/19 4. Pacific Symposium on Biocomputing 2006 ”Searching non-coding RNAs from genome using fixed-length stem fragments,” 田部井靖生、金大真、津田宏治、浅井潔、2006/1/5 <平成18年度> 1. 新しい RNA/RNP を見つける会 RNA 配列群からの頻出ステムパターンの抽出 浜田道昭, 津田宏治, 工藤拓,金大真,浅井潔 2006/9/2 2.第9回情報論的学習理論ワークショップ(IBIS 2006) 非整列 RNA 配列群からの頻出ステムパターンのマイニング 浜田道昭, 津田宏治, 工藤拓,金大真,浅井潔 2006/11/1 3.東北大学理学部数学科 情報学セミナー 非整列 RNA 配列群からの頻出ステムパターンのマイニング 浜田道昭, 津田宏治, 工藤拓,金大真,浅井潔 2006/12/1 4.The 17th International Conference on Genome Informatics (GIW2006) RNAmine: Frequent Stem Pattern Miner from RNAs Michiaki Hamada, Koji Tsuda, Taku Kudo, Taishin Kin and Kiyoshi Asai 2006/12/18-20 5.The 17th International Conference on Genome Informatics(GIW2006) fRNAdb: A Platform for Mining/Annotating Functional RNA Candidates from Non-Coding RNA Sequences Taishin Kin, Kouichirou Yamada, Goro Terai, Hiroaki Okida,Yasuhiko Yoshinari, Yukiteru Ono, Aya Kojima, Takashi Komori, Kiyoshi Asai 2006/12/21 成果リスト 15 6.1st International Conference on Bioinformatics Research and Development Stem Kernels for RNA Sequence Analyses 榊原康文,佐藤健吾 2007/3/12 研究開発項目② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 <平成17年度> 1. 第 7 回日本 RNA 学会年会 「往復循環クロマトグラフィー法による機能性 RNA の全自動単離精製」 宮内健常、大原智也、鈴木 勉、2005/8/9 2. 第 7 回日本 RNA 学会年会 ”A1555G mutation in the human 12S rRNA associated with the aminoglycoside induced and non-syndromic deafness causes the mitochondrial translation disorder” Narumi Shigi, Jun-Ichi Hayashi, Takuya Ueda, Tsutomu Suzuki、2005/8/9 3. 第 7 回日本 RNA 学会年会 ”The A site finger (H38) in the 23S rRNA works as a negative regulator of translocation” Taeko Komoda, Neuza Satomi Sato, Steven S. Phelps, Simpson Joceph, Tsutomu Suzuki、 2005/8/9 4. 第 7 回日本 RNA 学会年会 「ヒト・マウス mRNA/non-coding RNA における新規 RNA エディティング部位の網羅的探 索」 櫻井雅之、矢野孝紀、鈴木 勉、2005/8/9 5. 第 7 回日本 RNA 学会年会 ”The conserved sequence of helix 69 in the E. coli 23S rRNA is involved in the subunit association, A site tRNA binding and translational fidelity” Naomi Hirabayashi, Neuza Satomi Sato and Tsutomu Suzuki、2005/8/9 6. 第 7 回日本 RNA 学会年会 「機能性 RNA の質量分析による同定法(RNA マスフィンガープリント法)の開発」 川村泰龍、宮内健常、尾崎順子、鈴木 勉、2005/8/9 7. 第 7 回日本 RNA 学会年会 ”Systematic deletion of rRNAs for investigating basic principle of ribosome function and architectural evolution of ribonucleoprotein” Kei Kitahara, Neuza S. Sato and Tsutomu Suzuki、2005/8/9 8. 第 7 回日本 RNA 学会年会 「系統的挿入変異を用いたリボソーム RNA の分子進化と機能解析」 横山武司、北原圭、鈴木勉、2005/8/9 9. 若手研究部会 感染の成立と宿主応答の分子基盤 「ライシジン合成酵素を標的とした抗生物質の開発をめざして」 成果リスト 16 鈴木 勉、2005/10/7 10.日本生化学会 ”Novel approach for structural analysis of protein complexes using the isotope-tagging mass spectrometric footprinting” Yuriko Sakaguchi, Hitoshi Aoki, Yusuke Nozaki, Tsutomu Suzuki、2005/10/22 11.日本生化学会 「機能性 RNA の新展開」、Molecular pathogenesis of human mitochondrial diseases caused by tRNA wobble modification deficiency Yohei Kirino, Yu-ichi Goto, Yolanda Campos, Joaquin Arenas, Robert W. Taylor and Tsutomu Suzuki、2005/10/22 12.Finnland-Japan mitochondria meeting ”Molecular pathogenesis of human diseases associated with tRNA wobble modification disorder” Tsutomu Suzuki、2005/11/28 13.Helsinki University seminar ”Molecular pathogenesis of human diseases associated with tRNA wobble modification disorder” Tsutomu Suzuki、2005/11/29 14.21st International tRNA Workshop ”Identification and characterization of four new genes responsible for biosynthesis of wybutosine, a hyper-modified nucleoside in eukaryotic phenylalanine tRNA” Akiko Noma, Yohei Kirino, Yoshiho Ikeuchi and Tsutomu Suzuki、2005/12 15.21st International tRNA Workshop ”Mechanistic insights into sulfur-relay by novel sulfur mediators involved in thiouridine biosynthesis at tRNA wobble positions” Yoshiho Ikeuchi, Naoki Shigi, Jun-ichi Kato, Akiko Nishimura and Tsutomu Suzuki、 2005/12 16.21st International tRNA Workshop ”Molecular pathogenesis of human mitochondrial diseases caused by tRNA wobble modification deficiency” Yohei Kirino, Yu-ichi Goto, Yolanda Campos, Joaquin Arenas, Robert W. Taylor and Tsutomu Suzuki、2005/12 17.21st International tRNA Workshop ”Automatic parallel purification of tRNAs and non-coding RNAs by the reciprocal circulating chromatography method” Kenjyo Miyauchi, Tomoya Ohara and Tsutomu Suzuki、2005/12 18.21st International tRNA Workshop ”Molecular mechanism of lysidine synthesis that determines tRNA identity and codon recognition” 成果リスト 17 Yoshiho Ikeuchi, Akiko Soma, Yasuhiko Sekine and Tsutomu Suzuki、2005/12 19.日本分子生物学会 「アミノアシル tRNA 合成酵素による tRNA の反応速度論的識別機構」 長尾翌手可、サリンチムナロン、鈴木健夫、鈴木 勉、2005/12 20.日本分子生物学会 「マススペクトロメトリーを用いた miRNA の解析」 折戸智美、桐野陽平、蔵田真也、加藤敬行、鈴木健夫、坂口裕理子、鈴木 勉、2005/12 21.日本分子生物学会 「往復循環クロマトグラフィーによる multi-ChIP 法の開発 Multi-ChIP method using the reciprocal circulating chromatography」 大平高之、宮内健常、鈴木 勉、2005/12 22.京都大学 COE ケミカルバイオロジーミニシンポジウム一味違う化学と生命現象の接点を目 指して 「リボヌクレオーム解析を用いた RNA 修飾遺伝子の網羅的解析」 鈴木 勉、2006/3/16 <平成18年度> 1.第 6 回日本蛋白質科学会年会 リボヌクレオーム解析を用いた酵母 RNA 修飾遺伝子の網羅的探索 野間章子、鈴木 勉 2006/4/24-26 2.IUBMB 国際学会シンポジウム Mechanistic Insights into Sulfur-Relay by Novel Sulfur Mediators Involved in Thiouridine Biosynthesis at tRNA Wobble Positions. Yoshiho Ikeuchi, Naoki Shigi, Jun-ichi Kato, Akiko Nishimura, Tsutomu Suzuki 2006/6/18-23 3.IUBMB 国際学会シンポジウム Insight into the first tRNA cytidine acetyl-transferase, TmcA Sarin Chimnaronk Tetsuhiro Manita, Min Yao, Yoshiho Ikeuchi, Tsutomu Suzuki, Isao Tanaka 2006/6/18-23 4.IUBMB 国際学会シンポジウム Structural analysis of Protein complexes using the isotope-tagging mass spectrometric footprinting Yuriko Sakaguchi, Yusuke Nozaki and Tsutomu Suzuki 2006/6/18-23 5.RNA 2006:11th Annual Meetingof the RNA Society Mechanistic insights into biogenesis of RNA modifications by multiple protein components Yoshiho Ikeuchi, Akiko Noma, Kenjyo Miyauchi, Takeo Suzuki, Yuriko Sakaguchi and Tsutomu Suzuki 2006/6/20-25 6.RNA 2006:11th Annual Meeting of the RNA Society Stepwise dicing: human Dicer initially cleaves the strand bearing 3'-overhang and subsequently cuts another strand. 成果リスト 18 Shinya Kurata, Takayuki Katoh, Naoki Goshima, Nobuo Nomura and Tsutomu Suzuki 2006/6/20-25 7.第 8 回日本 RNA 学会年会 ヒト mRNA 3'UTR における A to I RNA エディティングの機能解析 矢野孝紀, 櫻井雅之, 鈴木 勉、2006/7/18-20 8.第 8 回日本 RNA 学会年会 精密質量分析計を用いた高感度 RNA 解析法の構築 鈴木健夫,坂口裕里子,上田宏生,宮内健常,鈴木 勉、2006/7/18-20 9.第 8 回日本 RNA 学会年会 RNA 修飾に関わる硫黄リレーシステムの発見と反応機構の解析 池内与志穂,沼田倫征,深井周也,鴫 直樹,加藤潤一,西村昭子,濡木 理, 鈴木 勉、2006/7/18-20 10.第 3 回 21 世紀大腸菌研究会 大腸菌 tRNA ウォブル位修飾ウリジンの側鎖構造炭素源の決定 鈴木健夫, 鈴木 勉、2006/10/3 11.AARS2006 Snapshots of tRNA sulfuration via an adenylated intermediate Tomoyuki Numata, Yoshiho Ikeuchi, Shuya Fukai, Tsutomu Suzuki, and Osamu Nureki,2006/10/1-8 12.AARS2006 Insight into the first tRNA cytidine acetyl-transferase Sarin Chimnaronk, Tetsuhiro Manita, Min Yao, Yoshiho Ikeuchi, Tsutomu Suzuki, Isao Tanaka,2006/10/1-8 13.電気泳動学会シンポジウム RNA 修飾の世界 鈴木 勉、2006/10/27 14.第 17 回フォーラム・イン・ドージン「生命活動を支える RNA プログラム」 RNA 修飾の多彩な機能と生命現象 鈴木 勉、2006/11/17 15.第 33 回核酸化学シンポジウム Ribonucleome analysis identified enzyme genes responsible for wybutosine synthesis. Akiko Noma, Tsutomu Suzuki,2006/11/20-22 16.RNA 2006 Izu “Functional RNAs and Regulatory Machinery ” Three-nucleotides periodicity in RNAi: specific residues at every third position of siRNA shapeits efficient activity Takayuki Katoh, Tsutomu Suzuki,2006/12/3-7 成果リスト 19 17.RNA 2006 Izu “Functional RNAs and Regulatory Machinery ” Automated parallel isolation of multiple species of non-coding RNAs by the “Reciprocal Circulating Chromatography (RCC)” method Tomoya hara, Kenjyo Miyauchi, Takeo Suzuki, Yuriko Sakaguchi and Tsutomu Suzuki, 2006/12/3-7 18.日本分子生物学会 2006 フォーラム RNA のチオ化修飾の動的メカニズムの構造的基盤 沼田倫征, 池内与志穂, 深井周也, 鈴木 勉,濡木 理、2006/12/6-8 19.東大 21COE-ソウル大 BK21 合同セミナー Ribonucleome analysis identified enzyme genes responsible for wybutosine synthesis. Akiko Noma, Tsutomu Suzuki,2006/12/11-12/12 20.武田薬品工業(株)つくば研究所セミナー RNA マススペクトロメトリーの開発 鈴木 勉、2006/12/22 21.Gordon Research Conference, RNA editing Characterization and tissue specificity of A-to-I RNA editing found in 3’UTR of human mRNAs Masayuki Sakurai, Takanori Yano and Tsutomu Suzuki,2007/1/14-1/19 2 2 . Keystone symposia conference: MicroRNAs and siRNAs: Biological Functions and Mechanisms Three-nucleotides periodicity in RNAi: specific residues at every third position of siRNA shape its efficient activity Takayuki Katoh, Tsutomu Suzuki,2007/1/28-2/2 23.第 44 回生物物理学会年会/ 第 5 回アジア生物物理学シンポジウム合同会議 A novel method to quantify the nucleic acid by fluorescence correlation spectroscopy coupled with template directed DNA photoligation 長尾一生、藤本健造、金城政孝、2006/11/13 24.33rd Symposium on Nucleic Acids Chemistry, 2006 A novel RNA synthetic method with a 2’-O-(2-cyanoethoxymethyl) protection group Yoshinobu Shiba, Hidetoshi Kitagawa, Yutaka Masutomi, Kouichi Ishiyama, Tadaaki Ohgi, Junichi Yano,2006/11/20 25.第25回メディシナルケミストリーシンポジウム 2-シアノエトキシメチル保護基を用いた新規な RNA 合成法 北川英俊、柴 佳伸、石山幸一、大木忠明、矢野純一、2006/11/30 研究開発項目③ 機能性RNAの機能解析 <平成17年度> 成果リスト 20 1.第24回メディシナルケミストリーシンポジウム 「ゲノム科学に基づく創薬研究」 辻本豪三、2005/11/29 2. 千里ライフサイエンスシンポジウム 「ゲノム機能科学に基づく創薬表的探索」 辻本豪三、2006/2/7 3.第2回公開シンポジウム「免疫難病・感染症等の先進医療技術」 細胞脱分化の誘導-拒絶反応と倫理的問題の多い多能性幹細胞樹立を目指して 山中伸弥、2005/12/16 4.公開シンポジウム「RNA 情報網」 Mechanistic insights into the linkage between pre-mRNA splicing and snoRNP biogenesis. 廣瀬哲郎、2005/8/8 5.Cold Spring Harbor Lab meeting「Eukaryotic mRNA processing」 The ATPase-like spliceosomal protein, X160, is a general intron-binding protein that recruits factors involved in late stages of splicing and post-splicing events 廣瀬哲郎、2005/8/26 5. 日本生化学会 「機能性 RNA 研究の新展開」 Mechanistic insights into determining the post-splicing fates of the removed intron and the ligated exon 廣瀬哲郎、2005/10/22 7.日本分子生物学会 ポストスプライシング現象を規定する核内因子 X160 の機能 廣瀬哲郎、2005/12/8 8.日本分子生物学会年会 線虫低分子RNAのカタログ化 牛田千里、2005/12/7 9.日本分子生物学会年会 線虫低分子RNAのカタログ化 牛田千里、2005/12/7 10.A-IMBN annual meting miRNA biogenesis in Drosophila 塩見美喜子、2005/10/28 11.日本分子生物学会年会 ショウジョウバエにおける RNA silencing 塩見美喜子、2005/12/8 12.日本分子生物学会年会 成果リスト 21 RNAi における Argonaute 蛋白質の Slicer としての機能 三好啓太、塩見美喜子、2005/12/8 13.Keystone Symposia 「RNAi and Related Pathways」 Biochemical characterization of RNAi and miRNA pathways in Drosophila 塩見美喜子、2006/1/28 14.日本薬理学会年会 Biochemical characterization of RNAi and miRNA pathways in Drosophila 塩見美喜子、2006/3/8 15.International Symposium on Germ Cells, Epigenetics, Reprogramming and Embryonic Stem Cells Genome-wide expression analyses revealed universal existence of natural antisense RNA at imprinted loci in mice 清澤秀孔、2005/11 16.日本分子生物学会年会 組織特異的に変化するナチュラル・センス−アンチセンス遺伝子の発現解析 清澤秀孔、2005/12 <平成18年度> 1.第 43 回今掘フォーラム Micro RNA の機能と疾患との関連 吉田 哲郎、2006/5/30 2.Keystone Symposia “MicroRNAs and siRNAs:Biological Functions and Mechanisms Micro RNAs regulate osteoblast differentiation of human mesenchymal stem cells Yoji Yamada, Tatsuya Miyazawa and Tetsuo Yoshida,2007/1/31 3.A celebration of 25 years of embryonic stem cell research in Cambridge Expression of microRNAs in ES cells and iPS cells 小柳 三千代、2006/12/18-12/19 4.BBSRC Japan Partnering Award Meeting Expression of microRNAs in ES cells and iPS cells 小柳 三千代、2006/12/21 5.11th Annual meeting of the RNA society , Seattle USA Significant role of Intron in EJC assembly in the spliceosomal C1 complex. Ideue, T., Nagai, M., Hagiwara, M., Hirose, T.,2006/6/23 6.第8回日本 RNA 学会 RNA 品質管理機構の機能抑制によるヒト mRNA 型 non-coding RNA 蓄積への影響 廣瀬哲郎、永井美智、渋谷真弓、井手上賢、横井崇秀、2006/7/19 7.第8回日本 RNA 学会 成果リスト 22 イントロン結合タンパク質 IBP160 は EJC の会合に必要である 井手上賢、永井美智、萩原正敏、廣瀬哲郎、2006/7/20 8.新しい RNA/RNP を見つける会 mRNA と ncRNA の細胞内挙動の違いについて 廣瀬哲郎、2006/9/1 9.RNA 2006 Izu Intron-mediated assembly of exon junction complex in the spliceosomal C1 complex. Ideue, T., Sasaki, YF, Hagiwara, M., Hirose, T., 2006/12/5 10.日本分子生物学会 2006 フォーラムシンポジウム ヒトの non-coding RNA 様転写物と mRNA との細胞内挙動の違いについて 廣瀬哲郎、佐々木保典、2006/12/8 11.RNA 特定サテライトミーティング 機能性ノンコーディング遺伝子を探す 相澤 康則、2006/9/12 12.The LXXI Cold Spring Harbor Sympoium Expression of C. elegans novel ncRNAs Regularoty RNAs 牛田千里、2006/6/3 13.IUBMB 国際学会シンポジウム Characterization of Cen21/CeR-2 RNA, small ncRNA localized in Caenorhabditis elegans Nucleoli 保木井悠介、牛田千里、2006/6/19 14.第8回日本 RNA 学会 C.elegans 低分子 RNA CeR-2 RNA の細胞内局在と生合成 保木井悠介、牛田千里、2006/7/19 15.新しい RNA/RNP を見つける会 C. elegans small RNAs 牛田千里、2006/9/1 16.新しい ncRNA/RNP を見つける会 ホールマウント RNA-FISH による線虫低分子 RNA の発現解析 菅原由起、牛田千里、2006/9/1 17. RNA 特定サテライトミーティング C. elegans 新規 H/ACA 型 RNA の発現解析 遠藤優子、牛田千里 、2006/9/12 18.East Asia Worm Meeting Spatio temporal distribution patterns of C. elegans small ncRNAs 保木井悠介、牛田千里、2006/11/17 成果リスト 23 19.RNA2006Izu C. elegans small-RNA catalog 牛田千里、2006/12/5 20.MBSJ Biochemical analyses of Drosophila Piwi-subfamily protein functions in germ-line development and in RNA silencing Kuniaki Saito, Kazumichi M. Nishida, Tomoko Mori, Yoshinori Kawamura, Keita Miyoshi, Tomoko Nagami, Haruhiko Siomi and Mikiko C. Siomi , 2006/5 21.IUBMB国際学会シンポジウム Distinctive roles of five Drosophila Argonautes in RNA silencing Mikiko C. Siomi, 2006/6/19 22.IUBMB 国際学会シンポジウム Functional analysis of CG31992, a Drosophila homolog of human GW182, in miRNA-mediated RNA silencing pathway Keita Miyoshi, Haruhiko Siomi, Mikiko C. Siomi, 2006/6/19 23.日本 RNA 学会年会 ショウジョウバエ生殖幹細胞自己新生因子 PIWI による RNA silencing 機構 齋藤都暁、西田知訓、森智子、河村佳紀、永海知子、三好啓太、塩見春彦、 塩見美喜子, 2006/7/19 24.第 8 回 日本 RNA 学会年会 ショウジョウバエ miRNA 機構におけるヒト GW182 ホモログ CG31992 の機能解析 三好啓太、塩見春彦、塩見美喜子, 2006/7/19 25.CAS international meeting RNA silencing mediated by Piwi, an essential factor for germline stem cell self-renewal in Drosophila. Kuniaki Saito, Kazumichi M. Nishida, Tomoko Mori, Yoshinori Kawamura, Keita Miyoshi, Tomoko Nagami, Haruhiko Siomi and Mikiko C. Siomi, 2006/10 26.KSMCB 2006 Elucidating the connection between Fragile X Syndrome and RNA silencing using Drosophila as a model Mikiko C. Siomi , 2006/10/12 27.RNA 2006 IZU RNA silencing mediated by Piwi subfamily proteins and rasiRNAs in Drosophila Mikiko C. Siomi and Haruhiko Siomi , 2006/12/4 成果リスト 24 28.日本分子生物学会2006フォーラム ショウジョウバエにおけるRNA silencingの分子メカニズム 塩見美喜子, 2006/12/8 29.日本分子生物学会 2006 フォーラム ショウジョウバエ miRNA 機構におけるヒト GW182 ホモログ CG31992 の機能解析 三好啓太、塩見春彦、塩見美喜子, 2006/12/8 30.Keystone Symposia Conference (miRNA and RNAi) Piwi Subfamily Proteinsand their Associated Small RNAs in Drosophila Germlines Mikiko C. Siomi,2007/1/30 31.Genome Informatics Workshop 2006 Computational Analysis of Global Expression Profiles in Mouse Natural Antisense Transcripts Okada Y, Numata K, Saito R, Kiyosawa H, Kanai A, Tomita M,2006/12 <平成19年度> 1.日本分子生物学会春季シンポジウム Identification and characterization of human non-coding RNAs with tissue-specific expression. 佐々木保典、2007/4/23 2.RNA2007 Expression profile and intracellular localization of putative non-coding RNAs in human cells 廣瀬哲郎、2007/5/29-6/3 3.日本分子生物学会春季シンポジウム piRNA biogenesis and modification in Drosophila 塩見美喜子、2007/4/23-24 4.2007FAOBMBシンポジウム Biogenesis of repeat-associated short interfering RNA in Drosophila 塩見美喜子、2007/5/29 成果リスト 25 5.その他 受賞実績 2006 年 12 月:(財)病態代謝研究会最優秀理事長賞、廣瀬哲郎 成果リスト 26 2.分科会における説明資料 本資料は、分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトを説明する際に 使用したものである。 2-2 1/60 公開 健康安心プログラム 「機能性RNAプロジェクト」 5.プロジェクトの概要説明資料【公開】 平成19年7月4日 事業原簿 P1 Ⅰ.事業の位置づけ・必要性について 1.NEDOの関与の必要性・制度への適合性 2/60 事業原簿 P1 3/60 事業の概要 Non-coding RNA(ncRNA:非コードRNA)は、タンパク質をコードするmRNA以外のRNAの総称 である。細胞内に存在する全転写産物には相当量のncRNAが存在することが推測されており、 細胞機能を理解する上でそれらの機能解析は欠くことのできない重要課題である。昨今、この ように機能を有すると推定されるncRNA、即ち、機能性RNAによる遺伝子発現調節機構が生命 の発生や細胞の分化に重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。 本プロジェクトでは、バイオインフォマティクス(BI)の活用による機能性RNAを推定する技術 の開発、機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発、及び機能性RNAの機能を解析 することにより、本研究分野における我が国の優位性の確立を目指す。また、本プロジェクトに おける成果を素早く特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新産業の創出に 貢献する。 事業原簿 P1 4/60 本プロジェクトへの期待 本プロジェクトにおいては、バイオインフォマティクスの活用による機能性RNAを推定する技 術の開発、機能性RNA解析のための新たな支援技術・ツールの開発、及び機能性RNAの機能 解析を実施する。これらを通して、その遺伝子発現調節機構を明らかにすることにより、細胞 分化誘導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持った機能性 RNAを同定し、バイオ分野における新たな基盤形成を目指す。これにより、再生医療やRNA医 療、遺伝子治療、疾患治療等、産業応用の促進、新産業の創出が期待される。また同時に、 機能性RNAを解析する手法及びツールの開発により、機能性RNA解析研究を飛躍的に進め ることで、本分野における我が国の優位性の確立を目指す。さらに本プロジェクトにおける成果 を素早く特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新産業の創出に貢献するな ど、その実施効果は大いに期待できる。 事業の意義 事業原簿 P1 5/60 「機能性RNAプロジェクト」は… ① 機能性RNAの探索・解析のためのバイオインフォマティクス技術の開発 ② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 ③ 機能性RNAの機能解析 生体における機能性RNAの機能を解析し、その機能の抑制や促進による生体応答を 総合的に把握する基盤研究をさらに強力に進めることは、再生医療や疾患治療等の 実現に資する重要な課題であり、このように基礎的・基盤的研究であるので、NEDO 技術開発機構の関与が必要であり、我が国の企業の研究開発事業等をサポートする ことへの意義もある。 事業原簿 P2 事業の位置づけ NEDO技術開発機構では、すでに研究開発が着手されている遺伝子、タンパク質、糖鎖等 の生体分子の機能・構造・ネットワーク解析に加え、新たなポストゲノム研究の展開として機 能性RNAの解析を行うとともに、それらの研究を強力に推進するためのバイオツールやバイ オインフォマティクスの開発、成果を高度に利用するためのデータベース整備や先端技術を 応用した高度医療機器開発等により、テーラーメイド医療・予防医療・再生医療等の実現や 画期的な新薬の開発、医療機器、福祉機器等の開発・実用化を促進することによって健康 寿命を延伸し、今後、世界に類を見ない少子高齢化社会を迎える我が国において、国民が 健康で安心して暮らせる社会の実現を目指すことを目的とする「健康安心プログラム」の一 環として本プロジェクトを実施するものである。 6/60 事業原簿 P1 7/60 健康安心プログラム 目的 今後、世界に類を見ない少子高齢社会を迎える我が国において、国民が健康で安 心して暮らせる社会を実現するため、遺伝子やタンパク質、糖鎖、RNA 等の生体分子 の機能・構造・ネットワーク解析等を行うとともに、それら研究を強力に推進するため のバイオツールやバイオインフォマティクスの開発、成果を高度に活用するための データベース整備や先端技術を応用した高度医療機器開発等を行う。 これらにより、テーラーメイド医療・予防医療・再生医療の実現や画期的な新薬の開 発、健康維持・増進に係る新しい産業の創出につなげる。 さらに、医療機器・福祉機器等の開発・実用化を促進し、「健康寿命の延伸」を実現 する。 健康安心プログラム プロジェクト 生体高分子立体構造情報解析(2002~2006年 度) 化合物等を活用した生物システム制御基盤技術 開発(2006~2010年度) タンパク質発現・相互作用解析技術開発(1999 ~2002年度) 新機能抗体創製技術開発(2006~2010年度) 細胞内ネットワークのダイナミズム解析技術開発 (2002~2006年度) モデル細胞等を用いた遺伝子機能等解析技術 開発(2002~2006年度) 機能性RNAプロジェクト(2005~2009年度) 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(2000 ~2002年度) 糖鎖エンジニアリングPJ(2002~2005年度) 糖鎖機能活用技術開発(2006~2010年度) 遺伝子多様性モデル解析技術開発(2000~ 2005年度) ○高感度な観察装置や新 たな手法 ◇企業負担による臨床研究、実用化 ○生体分子合成技術・装置 ○IT/NTと融合したバイオ ツール ○疾患モデル細胞 ○創薬等に関する知見 ○タンパク質の機能・構 造情報、疾患メカニズム 情報 ○制御化合物情報 ○スクリーニング系・装 置 ○疾患モデル細胞・動物 を利用した有効性・問題 点評価 ○産業化を加速する技術 関連施策( 他省施策 ) ■制度整備 薬事法・医師法 治験等の臨床研究環境の整備 臨床試験におけるファーマコゲノミクス利用 指針の整備 □個人遺伝情報保護ガイドラインの適切な 運用 □国民理解の増進 ~バイオテクノロジー安全対策調査 ~バイオ事業化に伴う生命倫理問題等に関 する研究 ○製造技術(低コスト化など) 特定細胞(組織幹細胞、ES細胞)を用いた 臨床研究の在り方の検討 ○大量合成技術 医療保健における適正評価 ○知的基盤 高度先進医療の運用の改善 ○ヒト完全長cDNAクローン 先進ナノバイオデバイスPJ(2003~2005年度) ○ゲノム情報統合DB ナノ微粒子利用スクリーニングPJ(2003~2005年度) ○糖鎖合成関連遺伝子ラ イブラリー タンパク質発現・相互作用解析技術開発【再掲】 タンパク質相互作用解析ナノバイオチップPJ (2003~2005年度) ○糖鎖、RNA等の機能情 報(新たな基盤) 細胞内ネットワークのタイナミズム解析技術開発【再掲】 ◇シーズをもとにしたベンチャー起業 ○バイオインフォマティクス、 シミュレーション技術(タン パク質構造等) バイオ・IT融合機器開発PJ(2002~2005年度) 個別化医療の実現のための技術融合バイオ診断 技術開発【再掲】 ◇大学・公的研究機関等における知 見の蓄積、更なる研究の加速 BT戦略会議 総合科学技術会議 海外審査との相互承認の推進 ■標準化、知的基盤整備 ○標準化(JIS・ISO等)の推進 ■関連産業の活性化(産業間連携) ○ベンチャー支援 ○特許等への戦略的な取組 BT戦略大綱 分野別推進戦略 健康維持・増進に係る 新 しい産業の創出 バイオインフォマティクス知的基盤整備(2000~ 2004年度) ゲノム情報統合プロジェクト(2005~2007年度) ○配列・構造解析機器(シー ケンサー、NMR、MS等の高機 能化、適用拡大、高感度化 など) テーラーメード医療・予防医療・ 再生医療の実現 個別化医療の実現のための技術融合バイオ診 断技術開発(2006~2010年度) ○研究ツール 国民が健康で安心して暮らせる社会の実現 タンパク質機能解析・活用PJ(2003~2005年度) 目的 画期的な新薬の開発 タンパク質機能解析技術開発(2000~2002年度) 事業原簿 P1 PJの実施による成果 8/60 9/60 事業原簿 P3 Ⅱ.研究開発マネジメントについて 事業の目標 事業原簿 P3 10/60 ① 機能性RNAの探索・解析のためのBI技術の開発 ② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 ③ 機能性RNAの機能解析 機能性RNA解析の 支援技術・ツールの開発 機能性RNAの BI技術の開発 ncRNA RNA情報解析技術 AAAA A 核小体 G E A 1 核マトリクス F B 2 3 C 4 5 機能性RNAの 機能解析 AAAA A AAAA A D 6 7 8 細胞質 核 AAAA A 事業原簿 P4 プロジェクトの実施体制 11/60 (機能性RNAプロジェクト) 経済産業省 NEDO PL 渡辺 公綱 (生物情報解析研究センター長) 社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアム (JBIC) 機能性RNA解析研究委員会 SL 浅井 潔 (東大) SL 鈴木 勉 (東大) 研究開発項目① 「機能性RNAの探索・解析のた めのバイオインフォマティクス技術の開発」 研究開発項目② 「機能性RNA解析のための支援 技術・ツールの開発」 SL 廣瀬 哲郎 (産総研) 集中研① 産総研 JBIC、産総研、インテックW&G 、 東大(浅井)、 みずほ情報総研、三菱総合研究所 集中研② 産総研 JBIC、産総研、ノバスジーン、 DNAチップ研究所、日本新薬、ヤマサ醤油 集中研③ 産総研 東大本郷(鈴木)、東大柏VP(鈴木) 阪大(岡部)、東工大(相澤) 分室 研究開発項目④ 研究開発項目③ 「機能性RNAの機能解析」 「総合調査研究」 JBIC タイム24 JBIC、産総研 分室7 分室4 日本新薬 島津 製作所 分室2 分室9 東大(1) (浅井) 産総研(1) (金) 三菱総合 研究所 東大(3) (陶山) 慶大(1) (榊原) 東大(2) (鈴木) 産総研(2) (渡辺) 大塚製薬 東レ 阪大 (岡部) 北陸先端大 (藤本) 北大 (金城) 分室13 分室11 DNA チップ研 ノバス ジーン みずほ 情報総研 日立 製作所 協和発酵 分室6 分室5 共同 実施 分室12 分室8 ヤマサ 醤油 インテック W&G 東工大 (相澤) 弘前大 (牛田) 徳島大 (塩見) 岡山大 (清水) 東大(4) (和田) 産総研(3) (廣瀬) 京大 (辻本、山中) 千葉大 (関) 理研 (清澤) 慶大(2) (金井) (注)分室1、分室3、分室10は体制変更により欠番 産官学の総力を結集 事業原簿 P4 12/60 研究開発スケジュール 17年度 18年度 ①機能性RNAの探索・解析のためのBI技術の開発 1.機能性RNAに特化したBI技術の開発 2.ゲノム配列からの機能性RNAの網羅的予測 3.機能性RNAデータベースの構築 ②機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 1.RNAのマススペクトロメトリー法の開発 2.機能性RNAをin vivoで計測するシステムの開発 3.機能性RNAの高感度検出システムの開発 4.RNAの新規合成基盤技術開発と化学分子設計 ③機能性RNAの機能解析 1.ヒト疾患に関連する機能性RNAの迅速高効率同定 (1)ヒト疾患に関連する機能性RNAの同定と機能解析 (2)尋常性乾癬に関わるRNAの機能解析 (3)機能性RNA解析に基づくゲノム医学研究 2.機能性RNAに関する基盤的知見の獲得と同定 (1)機能性ncRNAの多面的選別法の確立と機能解明 (2)マイクロRNAの作用機構の解明 (3)アンチセンスRNAの機能解析 事業原簿 P4 13/60 19年度 BI技術開発(みずほ、慶大) BI技術開発(インテック、三菱総研、) DB構築(産総研) MS法の開発(東大、島津) In vivo計測システム開発(ノバス、北大) 高感度検出システム開発(DNA研、ノバス) 新規合成法開発(日本新薬、ヤマサ) ヒト疾患関連RNA機能解析(協和、阪大、岡山大) 尋常性乾癬RNA研究(ジェノダイブ、東海大) ゲノム医学研究(京大、千葉大、東レ) ncRNA多面的選別法(日立、産総研) マイクロRNA作用機構解明(徳島大、大塚) アンチセンスRNA機能解析(理研、慶大) 研究開発委員会(成果報告&計画・内容等検討) 研究予算総額 2,352(百万円) 研究項目①514(22%) 研究項目②842(36%) 研究項目③996(42%) 604 ①140 ②191 ③273 899 ①202 ②313 ③384 849 ①172 ②338 ③339 事業原簿 P5 研究開発の運営管理 研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDO技術開発機構は、経済産業省及び プロジェクトリーダー/サブリーダー、及び委託先である研究管理法人、社団法人バイオ 産業情報化コンソーシアムと密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並 びに本研究開発の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施した。 具体的には、必要に応じて、研究開発委員会及び技術検討会等、外部有識者の意見を 運営管理に反映させる他、コロキウム開催等を通じて研究開発の進捗について報告を 受けること等を行った。 14/60 研究開発の運営管理 事業原簿 P5 全体会議:2005年10月3日 キックオフミーティング 各グループ研究進捗状況ヒアリング:2007年1月23,24日 2006年2月22日 平成17年度研究進捗状況報告会 機能性RNAコロキウム: 年8回程度開催 15/60 2007年2月23日 平成18年度研究進捗状況報告会 氏 名 所属・役職 渡辺 公綱 PL 産総研 生物情報解析研究センター・センター長 浅井 潔 SPL① 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 ・教授 産総研 生命情報工学研究センター・センター長 鈴木 勉 SPL② 東京大学大学院工学系研究科 ・准教授 廣瀬 哲郎 SPL③ 産総研 生物情報解析研究センター・チーム長 佐藤 清 委託先 JBIC・事務局長 菊池 泰弘 委託先 JBIC 研究開発本部 ・担当部長 清水 紀代 委託先 JBIC 研究開発本部 ・アシスタントマネジャー 原則毎月、上記メンバーが参集し、プロジェクトの運営に関する打ち合わせをおこなった。 (通称サブリーダー会議) 事業原簿 P7 16/60 情勢変化への対応 (実施体制の見直し) 研究開始から約1年半が経過した、平成19年1月23日と24日の2日間にわたり、全分室・共 同実施先に対して「研究進捗状況ヒアリング」を行い、実施体制の見直しを行った。 テーマ③-1-(2)「尋常性乾癬に関わるRNAの機能解析」: 当初予定していた臨床検体の入手ができておらず、研究が大幅に遅れてしまった。今後の 入手の目処も立たないため、平成18年度をもって本テーマは中止することとした。分室10と 共同実施先をH19年度研究実施体制から外した。 テーマ②-2「機能性RNAをin vivoで計測するシステムの開発」: 標識したRNAを細胞内に取り込ませる技術の確立に手間取り、研究が大幅に遅れてしまっ た。当面は、本テーマは中断することとし、計画通り進捗しているテーマ②-3「機能性RNAの 高感度検出システムの開発」の方に研究資源を集中することとした。 その他のテーマについても、評価結果を平成19年度の予算配分に反映させた。 事業原簿 P7 17/60 情勢変化への対応(加速財源の投入) RNAの質量分析技術(マススペクトロメトリー)の開発は、本プロジェクトを支える重要なツー ル開発であり、世界的に見ても日本発のオリジナルな技術である。実施計画をはるかに上 回るペースで開発が進んでいることから、NEDO技術開発機構が独立行政法人に移行する 際に新設された、著しい成果を挙げているプロジェクトに対して追加的な資金を投入する「加 速財源制度」を活用し、平成19年4月にフーリエ変換型質量分析装置を導入した。 本装置は、2005年にサーモエレクトロン社が発売したもので、質量分解能が飛躍的に高く、 創薬分野や精密化学分野では必要不可欠な装置としての定評を得ている。RNA研究に応用 されるのも時間の問題と思われ、本プロジェクトが築き上げた優位性を確保するために、い ち早く本装置を導入することとした。 事業原簿 P2 背景 Ⅰ.事業の位置づけ・必要性について 2.事業の背景・目的・位置づけ 18/60 事業原簿 P2 背景 19/60 機能性RNAによる分子生物学のパラダイムシフト DNA DNA ncRNA ncRNA ncRNA ncRNA mRNA mRNA トランスクリプトーム 2001〜2005 タンパク質 タンパク質 数万種以上のncRNAの発見 事業原簿 P2 背景 20/60 機能性RNAによる分子生物学のパラダイムシフト ? DNA DNA ncRNA ncRNA ncRNA mRNA mRNA トランスクリプトーム RNA干渉の発見 タンパク質 ncRNA 1998 miRNA ? ? タンパク質 大量のマイクロRNA の発見 2001 数万種以上のncRNAの発見 数千種以上のマイクロRNAの発見 背景 事業原簿 P2 ゲノムに潜む重要な新規機能性RNAを発掘 21/60 マイクロRNAによる広範な遺伝子制御 RNA干渉 さらなる重要な機能、新規機能の可能性 2006年ノーベル生理医学賞 外来の二本鎖RNA ウィルス応答 例: miR122 発生制御 例: lin-4 Dicerによる切断 細胞死 例: bantam インシュリン分泌 例: miR-375 RISCへの取り込み 脂質代謝 例: miR-14 癌 例: let-7, miR155 長鎖ncRNAの膨大な機能ポテンシャル 特異的なmRNAの分解 事業原簿 P2 22/60 ヒト マウス ハエ 線虫 酵母 大腸菌 生物の複雑さとncRNA領域の相関 100 ゲノム中の占有率 背景 実際はほとんどすべてが機能未知 広範な制御機能? 80 独自の新機能? % 60 ヒトらしさ 個人差 40 ファインチューニング タンパク質コード領域 タンパク質非コード領域 20 遺伝子制御技術 転写可能性のある領域 転写可能性のない領域 0 創薬ターゲット Huttenhofer et al. Trends Genet. 2005 バイオマーカー 背景 事業原簿 P2 世界の機能性RNA研究の現状 23/60 医療応用 RNA干渉 / miRNA 疾患との関連 生体内機能 大量のmiRNA RNA干渉 1998 1999 ノーベル賞 ヒト細胞 RNA干渉 反応機構、生合成機構 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 5000 4500 登録miRNA数 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 4 7 9 12 4 2004 6 10 2 2005 5 7 10 2006 2月 2007 機能性RNAプロジェクト 背景 事業原簿 P2 世界の機能性RNA研究の現状 医療応用 RNA干渉 / miRNA 疾患との関連 生体内機能 大量のmiRNA RNA干渉 1998 反応機構、生合成機構 1999 2000 ノーベル賞 ヒト細胞 RNA干渉 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2006 2007 2008 長鎖ノンコーディングRNA トランスクリプトーム 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 24/60 背景 機能性RNA研究プロジェクトの方向性 事業原簿 P2 25/60 1. RNA機能単位の新視点 mRNA: UGAAAUUUCAUGUUUAAGCCGCUCUUU・・・・・・・・UGAUUAUCC バイオインフォ マティクス ncRNA: AUUUAUUUA 2. RNAを「もの」と捉える視点 RNP複合体 修飾塩基 P OH 支援技術・ ツール開発 OH P P OH 3. RNAの機能部位に即した解析 細胞質 機能解析 核 事業原簿 P2 背景 26/60 サブリーダー:浅井 潔(東大) サブリーダー:鈴木 勉(東大) バイオインフォマティクス 支援技術・ツール開発 ヒトncRNA群 機能性RNA予測 解析技術開発 機能解析 機能解析 サブリーダー: 廣瀬 哲郎(産総研) 事業原簿 P2 背景 27/60 「RNAならでは」の研究 日本オリジナルの研究 事業原簿 P10 成果 Ⅲ.研究開発成果について 28/60 事業原簿 P14 ① バイオインフォマティクス 29/60 研究開発項目① 機能性RNAの探索・解析のためのBI技術の開発 ○新規機能性RNA発見に必要な、二次構造を考慮したRNA配列の比較・整列に ついて数々の新規手法を開発し、精度、速度で世界最高性能を達成した。 ○機能性RNAの機能予測に必要な、配列群の共通二次構造予測を高精度に行 う手法と、二次構造モチーフを配列群から抽出するグラフ理論を用いた新規ア ルゴリズムを開発した。 ○ゲノム配列中からマイクロRNAを従来法よりも精度良く抽出する手法を開発し、 330個の新規マイクロRNA候補を発見した。 ○ヒトゲノム中のシンテニー領域、ヒトゲノム同士の比較から得られる相同領域 等から、二次構造を考慮した配列解析技術の適用によって20万箇所以上の機 能性RNA候補を抽出し、有望な1万領域以上についてマイクロアレイ発現解析 を開始した。 ○新規機能性RNA発見のプラットホームとして、独自の情報解析結果も含めた 機能性RNAデータベースを開発した。 事業原簿 P14 ① バイオインフォマティクス 機能性RNAの探索・解析のためのBI技術の開発 ③機能解析 H17-H20 H19-H21 機能性RNA データベース 核内RNA ノックダウン解析 マイクロアレイ解析 ゲノム配列 機能性RNAの網羅的予測 cDNA配列 タイリングアレイ 既知ncRNA 新規機能性 RNA候補 11,588個 RNA情報解析技術 二次構造考慮の検索技術 ⇒ 既存ソフトは使えない ⇒ 世界最高性能のソフトを開発 G E F A 1 B 2 3 C 4 5 D 6 7 8 (論文誌4報、特許出願2件) 30/60 事業原簿 P14 ① バイオインフォマティクス 31/60 二次構造を考慮した機能性RNAの比較・検索 ClustalW 二次構造を考慮したアラインメント 二次構造を考慮したアライメントの 厳密な計算には莫大な時間がかかる 事業原簿 P14 ① バイオインフォマティクス 超高速なマルチプルアラインメント手法を開発 7.2時間 従来手法 1時間 17秒 1秒以下 ・6000塩基まで可能=>ゲノムレベルの網羅的解析に使用可能 32/60 事業原簿 P14 ① バイオインフォマティクス 33/60 機能性RNAの網羅的発見 • 超高速マルチプルアラインメント手法を活用 – 比較ゲノムのシンテニー領域 – ヒトゲノム内の相同領域から • 20万箇所以上の機能性RNA候補を発見 • マイクロアレイによる発現解析を実行中 – 20万個から1万個強に絞った機能性RNA候補 – 新規手法で発見した330個の新規miRNA候補 事業原簿 P22 ① バイオインフォマティクス 34/60 機能性RNAデータベースの構築 産総研+インテックW&G 産総研 H-inv RNAdb 統合化処理 パイプライン 配列情報解析 パイプライン インテックW&G マッピング処理 NONCODE 三菱総合研究所 機能性RNA データベース UCSC GenomeBrowser for Functional RNA 産総研 RNA関連 外部DB 機能性RNA データベース fRNAdb Web Interface 産総研+インテックW&G Web Interface マッピング処理 産総研+インテックW&G 独自の解析結果 インテックW&G+東大 産総研 事業原簿 P22 ① バイオインフォマティクス 35/60 ソフトウェア・DBをウェブ公開 ② ツール開発 事業原簿 P28 36/60 研究開発項目② 機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 ○RNAマススペクトロメトリーの開発に成功し、サブフェムトモルのRNA分子を直接解 析することに成功した。(piRNAの末端修飾構造を決定した。miRNAの直接測定とプ ロファイリングに成功。) ○RNAマスフィンガープリント法の開発に成功し、RNA断片の質量情報のみを用いて、 ヒトおよびマウスゲノムの表裏(6ギガ塩基)からRNAの遺伝子領域を迅速に特定す ることに成功した。 ○RNAの微量解析を支援するツールとして、RNA自動精製装置(往復循環クロマトグ ラフィー)の開発に成功した。 ○RNA医薬品の開発を目的とした新規化学合成技術の開発に成功した。この手法に より、長鎖RNA(110塩基)の合成に成功した。 ○微量なマイクロRNAの発現解析を高感度で行うため、Photo-DEAN法および、MPEX 法の開発を行い、数アトモルのマイクロRNAを定量的に解析することに成功した。 事業原簿 P28 ② ツール開発 37/60 RNAマススペクトロメトリー とは? 微量RNAを直接的かつ定量的に解析する技術である 測定は迅速であり、診断への応用が可能 質量から、末端や修飾構造などの質的情報が得られる 質量情報から、RNA遺伝子の特定が可能(RMF法) 日本独自の基盤技術である RNAサイエンスとRNAテクノロジーに貢献する 事業原簿 P28 ② ツール開発 RNAのマススペクトロメトリー法の開発 キャピラリーLC/ナノESI-MS • キャピラリーLCの最適化 • オンライン脱塩システムの確立 • 各種パラメーターの最適化 サブフェムトモルの測定感度の達成 MALDI-QIT-TOF-MS • RNAイオン化用マトリクスの開発(特許出願済) • 測定パラメーターの最適化 数フェムトモルの測定感度の達成 38/60 事業原簿 P28 ② ツール開発 39/60 サブフェムトモルオーダーでの高感度測定 120 7nt 13nt 100 Intensity,cps 16nt 10nt 50 4nt 0 13.0 15.0 17.0 19.0 21.0 23.0 25.0 27.0 RT,min 事業原簿 P28 ② ツール開発 マイクロRNAの直接解析に成功 非標識かつ非増幅の解析法として世界初 %Int. 100 26a* 90 122a* 21 80 70 122a** 29a* 60 26a 451 50 451* 22 29a 122a 122b let7a 40 30 20 10 0 6600 6800 7000 7200 Mass/Charge 7400 7600 7800 40/60 事業原簿 P28 ② ツール開発 41/60 piRNA3’末端の2’-O-メチル修飾の同定 M pNpNp…..NpNpN 100 RNase T2 100 50 40 pNpNp…..NpNpN piRNAs [M+H]+ NH2 Cm N O 112.1 HO O CH3 258.3 N OH O 257.94 pNp + Np + Np +‥ + N 30 0 LC/MS Cp Abundance at 260nm (mAU) 112.09 Relative Abundance nt Up Gp 100 150 200 250 m/z 300 350 400 Ap 200 Cm Um 150 100 U C 50 Gm Am A G 0 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 Time (min) Ohara, T.,et al. Nat Struct Mol Biol. 14, 349-350 事業原簿 P28 ② ツール開発 42/60 RNAマスフィンガープリント法(Genomic RMF) 150 Intensity, cps RNP base peak クロマトグラム スコア 100 正解領域 位置情報 順位→ 50 0 4500 4000 molecular weight 3500 ←分子量 RNA Genome Database 3000 2500 2000 公共DBリンク 正解領域 1500 1640 1740 Scan number 1840 ←ヒット数 対(数 ) 1540 溶出時間→ ←スコア 1000 1440 1940 順位→ 正解領域 スコア→ m/z RNase digestion 1268 625 959 2256 1420 569 MS Gp Gp Gp Gp RNA遺伝子の同定 末端、修飾構造の同定 .. .. Gp .. .. RMF Gp Peptide Peptide 4 5 Peptide Peptide 2 3 RNAoligo 1 MS/MS y8 y7 y6 y5 A U A m5C……Gp c1 c2 c3 c4 c y 232 758 356 655 464 455 568 385 758 234 885 128 正解領域の特定 特許出願済2006 事業原簿 P28 ② ツール開発 43/60 全自動RNA精製装置(往復循環クロマトグラフィー) A1 A2 R2 R3 R4 R5 I1 D C Q1 Q2 E I2 L1 L2 L3 L4 L5 K M fM S1 S2 (nt) 1000 800 600 500 Miyauchi et al., Nucleic Acids Res.,(2007) N S3 S5 T1 T2 T3 T4 F G1 G2 G3 H P1 P2 P3 Sec W Y V1 V2A V2B 4.5S 6S 種々のncRNAの 全自動単離精製に 成功した。 400 300 200 100 A RN tt m 0 9 R1 SN 8 2 R1 SN R9 SN R5 SN R1 SC U6 U4 er k ar M (特許出願2006) et M 試作装置の作成 事業原簿 P38 ② ツール開発 機能性RNAの高感度検出システムの開発 MPEX(Multiplex Primer Extension)法 ★ RNAの標識化が不要 ⇒ 実験操作容易かつ低コスト ⇒ 特異性・再現性・設計自由度が高い miRNA プローブDNA ★ 検出感度は数 atto モル(約106分子) ★ 1塩基の違いを識別 プローブ配列: h196a: ----ACATGAA--h196b: ----ACAGGAA--- 70000 100000 60000 シグナル強度 シグナル強度 (N)-5’末端 ラベル 10000 1000 100 バックグラウンドレベル 10 50000 40000 30000 20000 10000 0 10,000 1,000 100 10 atto モル 1 10,000 1,000 100 10 1 atto モル ・ 本年度中にプロジェクト内に試作チップを頒布予定 ・ 製品化を前倒ししてプロジェクト期間内を目指す ・ Photo-DEAN法と組合せ、感度向上を検討中 (zepto モル) 44/60 事業原簿 P46 ② ツール開発 45/60 RNAの新規合成基盤技術開発と化学分子設計 ★ 機能解析のための高純度RNAの化学合成技術を確立 新規保護基 2-cyanoethoxymethyl (CEM)を用いた合成法 ★ 原料となるCEMアミダイトの合成法の確立 工業化可能な合成法を確立 (特願2006-210439、特願2007-011813) ★ 世界最長記録(110-mer pre-miRNA)を達成 細胞に導入し、標的遺伝子の発現抑制を確認 (Nucleic Acids Res. 2007) miR-196a前駆体の配列 CEM-Phosphoramidite DMTrO NC O B protect O O O P i O N Pr2 HPLC 分析 PAGE分析 CN 0 10 20 min ③ 機能解析 事業原簿 P50 46/60 研究開発項目③ 「機能性RNAの機能解析」 ○ヒト間葉系幹細胞、マスト細胞から1300種以上の新規miRNA候補を同定した。幹細 胞分化やマスト細胞の脱顆粒、癌細胞増殖抑制に関わる生理活性を有するmiRNA とその標的mRNAを複数個発見した。miRNAのノックアウトマウスを作製し、miRNA が脳下垂体機能である排卵に関与することを初めて示した。 ○H-InvDBから機能性ncRNA候補を多面的に選別し、60種以上の組織特異的 ncRNA、免疫抗原提示やボディーパターニング、筋萎縮調節、間葉系幹細胞分化 に関わる可能性のある機能性RNA候補を複数同定した。また細胞内局在を解析し、 核内に局在するncRNAを40種以上発見した。さらに核内RNAをノックダウンする新 手法を開発し機能解析系の整備を行った。モデル生物線虫でも核内に局在する低 分子RNAを複数発見し、遺伝子破壊株を作製した。 ○ショウジョウバエの生殖細胞特異的Piwi, Aub, Ago3が一群のpiRNAと結合している ことを発見した。このなかから精子形成や卵形成に重要なStellateやVasa mRNAを 制御するpiRNAを発見した。またpiRNAの生合成経路のモデルを提唱し、5’末端 形成機構、3’末端のメチル化酵素を明らかにした。 ○ヒトとマウスから3000を超えるセンス-アンチセンスRNAペアを抽出し、これらの発 現を解析できる新規マイクロアレイを開発した。これを用いて正常組織と腫瘍部で センス-アンチセンスペアの比率が著しく変動するペアを60個以上発見した。 事業原簿 P50 ③ 機能解析 47/60 研究開発項目③ 「機能性RNAの機能解析」 0 10 miRNA (19-21 nt) piRNA (>27 nt) 102 small RNAs (70-400 nt) 103 104 (nt) mRNA-like ncRNA sense-antisense RNA (>400 nt) ③-1.ヒト疾患に関連する機能性RNAの迅速で高効率な同定 (1)ヒト疾患に関連する機能性RNAの同定と機能解析 (協和発酵、阪大、岡山大) (2)機能性RNA解析に基づくゲノム医学研究(京大、千葉大、東レ) ③-2.機能性RNAに関する基盤的知見の獲得とそれを基にした機能性RNA同定 (1)機能性ncRNAの多面的選別法の確立と機能解明(産総研、東工大、弘前大、日立製作所) (2)マイクロRNAの作用機構の解明(徳島大、大塚製薬) (3)アンチセンスRNAの機能解析(理研、慶応大) 事業原簿 P50 ③ 機能解析 ヒト間葉系幹細胞、マスト細胞からのmiRNAの単離と解析 間葉系幹細胞:再生医療の細胞ソース マスト細胞:アレルギー疾患のモデル細胞 間葉系幹細胞 miRNAの大規模配列解析・ 発現解析・機能解析系の確立 脂肪細胞 骨芽細胞 他、骨格筋細胞、軟骨細胞、etc. 併せて1300種以上の新規miRNA候補の取得(特許出願済) 48/60 事業原簿 P50 ③ 機能解析 49/60 幹細胞→骨芽分化を抑制するmiRNAの発見 pre-miRNAを導入したhMSCを骨芽分化誘導させ、 2週後にalkaline phosphatase染色にて分化した細胞を検出 mock (導入濃度20nM) pre-miR-X pre-miR-Z 特許出願済 miR-Zの発現によりhMSCの骨芽細胞への分化が抑制された 事業原簿 P59 ③ 機能解析 長鎖ncRNAの基盤的特性の発見 ヒト完全長cDNAデータベースからの機能性ncRNA候補の選別 (150種) 多数の組織特異的ncRNAの発見 (100種) ncRNA特有の細胞内局在の発見 ncRNA 発現微弱 単一組織 20% 26% 全組織 12% 少数組織 AAAAA 核小体 核マトリクス AAAAA AAAAA 核 42% 細胞質 40 35 ncRNA1 30 25 20 15 10 5 筋 肉 全 組 織 胎 盤 前 立 腺 腎 臓 精 巣 脾 臓 肺 肝 臓 心 臓 脳 胸 腺 0 核内ncRNAの機能解析系の整備 ncRNA2 AAAAA 50/60 事業原簿 P59 ③ 機能解析 51/60 核内ノンコーディングRNA機能解析系の整備 RNA干渉 mRNA 核内mRNA様ncRNA 新手法 核内低分子ncRNA (ポリAマイナス) マイクロアレイ解析 事業原簿 P64 ③ 機能解析 新規低分子piRNA群の機能と新規生合成経路 Argonauteファミリーの共通構造 PAZ miRNA経路 Drosophila Human 各タンパク質に対する モノクローナル抗体の作製 | 複合体の精製 | 複合体中の低分子RNAの同定 PIWI RNAi経路 ??? Aubに結合する small RNA = piRNA *生殖組織特異的に発現するPiwi, Aub, Ago3 に結合する約500種のpiRNAを同定した。 52/60 事業原簿 P64 ③ 機能解析 53/60 新規低分子piRNA群の機能と新規生合成経路 piRNAの機能 ‘piRNAは世代継体に必須’ piRNA ‘ゲノムの品質管理’ piRNA新規生合成経路 Slicer活性による5’形成 Pimetによる3’メチル化 (Genes & Dev, 2007) (Science, 2007) 成果別紙 miRNAはメチル化されない 事業原簿 別紙 - 論文、著書、特許、報道、講演 - 平成17年8月~平成19年5月 論文* 総説、著書 特許 報道 講演 58 42 13 3 108 * 査読有り 主な特許出願 PTC/JP2007/052369 RNA配列情報処理装置 特願2006-210439 核酸保護基の導入方法 特願2006-335470 マイクロRNA検出装置、方法 およびプログラム 特願2007-011813 リボ核酸化合物の製造方法 特願2006-194780 質量分析によるゲノム上で RNA配列を同定するシステム 特願2006-238459 新規核酸 特願2006-295113 間葉系幹細胞の増殖および/ または分化制御剤 特願2006-339997 新規核酸 PCT/JP2006/315271 往復循環クロマトグラフィーを 用いた生体高分子の単離方法 54/60 成果 事業原簿 P10 中間目標の達成度 研究開発項目 および 研究開発テーマ 目標 達成度 目標 総合達成度 情勢変化への対応 ①機能性RNAの探索・解析のためのBI技術の開発 1.機能性RNAに特化したBI技術の開発 2.ゲノム配列からの機能性RNAの網羅的予測 3.機能性RNAデータベースの構築 A A A A ②機能性RNA解析のための支援技術・ツールの開発 1.RNAのマススペクトロメトリー法の開発 2.機能性RNAをin vivoで計測するシステムの開発 3.機能性RNAの高感度検出システムの開発 4.RNAの新規合成基盤技術開発と化学分子設計 A S C B A 加速財源投入 テーマを中断 ③機能性RNAの機能解析 1.ヒト疾患に関連する機能性RNAの迅速高効率同定 (1)ヒト疾患に関連する機能性RNAの同定と機能解析 (2)尋常性乾癬に関わるRNAの機能解析 (3)機能性RNA解析に基づくゲノム医学研究 2.機能性RNAに関する基盤的知見の獲得と同定 (1)機能性ncRNAの多面的選別法の確立と機能解明 (2)マイクロRNAの作用機構の解明 (3)アンチセンスRNAの機能解析 実用化 55/60 A S D B テーマを中止 S S B 事業原簿 P70 Ⅳ.実用化の見通しについて 56/60 実用化 事業原簿 P70 57/60 実用化のイメージ 機能性RNA研究で期待される成果 例 機能性RNAによる生理現象制御(例:細胞分化制御) RNAの高感度測定技術 特定疾患での特徴的発現変動 機能性RNAの新規な作用メカニズムの解明 機能性RNA中の新規機能モチーフ RNAの効率的合成技術 RNAの簡便な精製技術 医療分野(創薬・診断) 研究支援技術 RNA医薬 低分子医薬の新規ターゲット 疾患の診断マーカー 診断技術 実用化 事業原簿 P70 実用化のイメージ 機能性RNA研究で期待される成果 例 機能性RNAによる生理現象制御(例:細胞分化制御) RNAの高感度測定技術 特定疾患での特徴的発現変動 機能性RNAの新規な作用メカニズムの解明 機能性RNA中の新規機能モチーフ 基盤的知見の獲得が最重要課題!! RNAの効率的合成技術 RNAの簡便な精製技術 医療分野(創薬・診断) 研究支援技術 RNA医薬 低分子医薬の新規ターゲット 疾患の診断マーカー 診断技術 58/60 実用化 事業原簿 P70 59/60 早期の実用化が見込まれる成果 ・ RNAマスフィンガープリント(RMF)法 [東大TLO] ・ 往復循環クロマトグラフィー [東大TLO] ⇒ まずはプロジェクト内で活用し、 時機を見て特許ライセンス (H21年度~) ・ miRNA用 高感度マイクロアレイ [DNAチップ研究所] ⇒ プロジェクトで活用後、製品化 (H21年度~) ・ 高品質で安価なRNA化学合成法 [日本新薬] ⇒ 「研究用試薬」として販売開始 (H19年度) 将来は、RNA医薬品製造の世界標準に! 実用化 事業原簿 P70 あらゆるバイオ産業に波及効果 基盤研究 解析ツール 微生物 医療分野 (創薬・診断) 動物 植物 60/60 参考資料1 評価の実施方法 本評価は、 「技術評価実施規程」(平成 15 年 10 月制定)に基づいて研究評価を 実施する。 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)における研究評価 の手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分科会を設置し、同分科会にて研 究評価を行い、評価報告書(案)を策定の上、研究評価委員会において確定している。 z 「NEDO 技術委員・技術委員会等規程」に基づき研究評価委員会を設置 z 研究評価委員会はその下に分科会を設置 国 民 評価結果公開 NEDO 理事長 評価結果の事業等への反映 推進部署 評価書報告 研究評価委員会 評価報告書(案)審議・確定 事務局 分科会A 研究評価部 分科会C 分科会B 分科会D 評価報告書(案)作成 プロジェクトの説明 参考資料 1-1 推進部署 実施者 1.評価の目的 評価の目的は「技術評価実施規程」において、 z z 業務の高度化等の自己改革を促進する。 社会に対する説明責任を履行するとともに、経済・社会ニーズを取り 込む。 z 評価結果を資源配分に反映させ、資源の重点化及び業務の効率化を促 進する。 としている。 本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥 当性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・ 評価した。 2.評価者 技術評価実施規程に基づき、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者か らなる委員会方式により評価を行う。分科会委員選定に当たっては以下の事項に配 慮して行う。 z 科学技術全般に知見のある専門家、有識者 z 当該研究開発の分野の知見を有する専門家 z 研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニー ズ関連の専門家、有識者 z 産業界の専門家、有識者 また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除 外し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与し ていない者を主体とする。 これらに基づき、分科会委員名簿にある6名を選任した。 なお、本分科会の事務局については、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合 開発機構研究評価部が担当した。 3.評価対象 平成17年度に開始された「機能性RNAプロジェクト」を評価対象とした。 なお、分科会においては、当該事業の推進部署から提出された事業原簿、プロ ジェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。 4.評価方法 分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、そ 参考資料 1-2 れを踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側 等との議論等により評価作業を進めた。 なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認めら れる場合等を除き、原則として分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形 で審議を行うこととした。 5.評価項目・評価基準 分科会においては、次に掲げる「評価項目・評価基準」で評価を行った。これは、 研究評価委員会による『各分科会における評価項目・評価基準は、被評価プロジェ クトの性格、中間・事後評価の別等に応じて、各分科会において判断すべきもので ある。 』との考え方に従い、第1回分科会において、事務局が、研究評価委員会に より示された「標準的評価項目・評価基準」 (参考資料1-7頁参照)をもとに改 訂案を提示し、承認されたものである。 プロジェクト全体に係わる評価においては、主に事業の目的、計画、運営、達成 度、成果の意義や実用化への見通し等について評価した。各個別テーマに係る評価 については、主にその目標に対する達成度等について評価した。 参考資料 1-3 評価項目・評価基準 1.事業の位置付け・必要性について (1)NEDOの事業としての妥当性 ・ 健康安心プログラムの目標達成のために寄与しているか。 ・ 民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことによ り、NEDOの関与が必要とされる事業か。 ・ 当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較に おいて十分であるか。 (2)事業目的の妥当性 ・ 内外の技術開発動向、国際競争力の状況、市場動向、政策動向、国際貢献の 可能性等から見て、事業の目的は妥当か。 2.研究開発マネジメントについて (1)研究開発目標の妥当性 ・ 内外の技術動向、市場動向等を踏まえて、戦略的な目標が設定されているか。 ・ 具体的かつ明確な開発目標を可能な限り定量的に設定しているか。 ・ 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。 (2)研究開発計画の妥当性 ・ 目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を 含む)となっているか。 ・ 目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。 ・ 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。 ・ 継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点か ら絞り込んだうえで活用が図られているか。 (3)研究開発実施者の事業体制の妥当性 ・ 適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか。 ・ 真に技術力と事業化能力を有する企業を実施者として選定しているか。 ・ 研究管理法人を経由する場合、研究管理法人が真に必要な役割を担っている か。 ・ 全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環境 が整備されているか ・ 目標達成及び効率的実施のために必要な実施者間の連携が十分に行われる 体制となっているか。 ・ 実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(ユーザー、活用・実用化の想 定者等)に対して、関与を求める体制を整えているか。 (4)情勢変化への対応等 ・ 進捗状況を常に把握し、社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機敏 かつ適切に対応しているか。 参考資料 1-4 ・ 計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の揺 らぎとなっていないか)。計画見直しを適切に実施しているか。 *基礎的・基盤的研究開発の場合 3.研究開発成果について (1)中間目標の達成度 ・ 成果は目標値をクリアしているか。 ・ 全体としての目標達成はどの程度か。 ・ 目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確に なっているか。 (2)成果の意義 ・ 成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・ 成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・ 成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・ 成果は汎用性があるか。 ・ 投入された予算に見合った成果が得られているか。 ・ 成果は、他の競合技術と比較して優位性があるか。 (3)特許等の取得 ・ 知的財産権等の取り扱い(特許や意匠登録出願、著作権や回路配置利用権の 登録、品種登録出願、営業機密の管理等)は事業戦略、または実用化計画に 沿って国内外に適切に行われているか。 (4)成果の普及 ・ 論文の発表は、研究内容を踏まえ適切に行われているか。 ・ 成果の受取手(ユーザー、活用・実用化の想定者等)に対して、適切に成果 を普及しているか。また、普及の見通しは立っているか。 ・ 一般に向けて広く情報発信をしているか。 (5)成果の最終目標の達成可能性 ・ 最終目標を達成できる見込みか。 ・ 最終目標に向け、課題とその解決の道筋が明確に示され、かつ妥当なものか。 4.実用化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・ 実用化イメージ・出口イメージが明確になっているか。 ・ 実用化イメージ・出口イメージに基づき、開発の各段階でマイルストーンを 明確にしているか。それを踏まえ、引き続き研究開発が行われる見通しは立 っているか。 参考資料 1-5 (2)波及効果 ・ 成果は関連分野への技術的波及効果等を期待できるものか。 ・ プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するな どの波及効果を生じているか。 参考資料 1-6 標準的評価項目・評価基準(中間評価) 2007.2.28 【中間評価 標準的評価項目・評価基準の位置付け(基本的考え方)】 標準的評価項目・評価基準は、第12回研究評価委員会(平成19年2月 28日付)において以下のとおり定められている。(本文中の記載例による 1・・・、2・・・、3・・・、4・・・が標準的評価項目、それぞれの項目中の(1)・・・、 (2)・・・が標準的評価基準、それぞれの基準中の・ ・・・が視点) ただし、これらの標準的評価項目・評価基準は、研究開発プロジェクトの 中間評価における標準的な評価の視点であり、各分科会における評価項目・ 評価基準は、被評価プロジェクトの性格等に応じて、各分科会において判断 すべきものである。 1.事業の位置付け・必要性について (1)NEDOの事業としての妥当性 ・ 特定の施策(プログラム)、制度の下で実施する事業の場合、当該施策・ 制度の目標達成のために寄与しているか。 ・ 民間活動のみでは改善できないものであること、又は公共性が高いことに より、NEDOの関与が必要とされる事業か。 ・ 当該事業を実施することによりもたらされる効果が、投じた予算との比較 において十分であるか。 (2)事業目的の妥当性 ・ 内外の技術開発動向、国際競争力の状況、エネルギー需給動向、市場動向、 政策動向、国際貢献の可能性等から見て、事業の目的は妥当か。 2.研究開発マネジメントについて (1)研究開発目標の妥当性 ・ 内外の技術動向、市場動向等を踏まえて、戦略的な目標が設定されている か。 ・ 具体的かつ明確な開発目標を可能な限り定量的に設定しているか。 ・ 目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。 (2)研究開発計画の妥当性 参考資料 1-7 ・ 目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分 を含む)となっているか。 ・ 目標達成に必要な要素技術を取り上げているか。 ・ 研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。 ・ 継続プロジェクトや長期プロジェクトの場合、技術蓄積を、実用化の観点 から絞り込んだうえで活用が図られているか。 (3)研究開発実施者の事業体制の妥当性 ・ 適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか。 ・ 真に技術力と事業化能力を有する企業を実施者として選定しているか。 ・ 研究管理法人を経由する場合、研究管理法人が真に必要な役割を担ってい るか。 ・ 全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環 境が整備されているか。 ・ 目標達成及び効率的実施のために必要な実施者間の連携 and/or 競争が 十分に行われる体制となっているか。 ・ 実用化シナリオに基づき、成果の受け取り手(ユーザー、活用・実用化の 想定者等)に対して、関与を求める体制を整えているか。 (4)情勢変化への対応等 ・ 進捗状況を常に把握し、社会・経済の情勢の変化及び政策・技術動向に機 敏かつ適切に対応しているか。 ・ 計画見直しの方針は一貫しているか(中途半端な計画見直しが研究方針の 揺らぎとなっていないか)。計画見直しを適切に実施しているか。 3.研究開発成果について (1)中間目標の達成度 ・ 成果は目標値をクリアしているか。 ・ 全体としての目標達成はどの程度か。 ・ 目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確 になっているか。 (2)成果の意義 ・ 成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・ 成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・ 成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・ 成果は汎用性があるか。 ・ 投入された予算に見合った成果が得られているか。 ・ 成果は、他の競合技術と比較して優位性があるか。 参考資料 1-8 (3)特許等の取得 ・ 知的財産権等の取り扱い(特許や意匠登録出願、著作権や回路配置利用権 の登録、品種登録出願、営業機密の管理等)は事業戦略、または実用化計 画に沿って国内外に適切に行われているか。 (4)成果の普及 ・ 論文の発表は、研究内容を踏まえ適切に行われているか。 ・ 成果の受取手(ユーザー、活用・実用化の想定者等)に対して、適切に成 果を普及しているか。また、普及の見通しは立っているか。 ・ 一般に向けて広く情報発信をしているか。 (5)成果の最終目標の達成可能性 ・ 最終目標を達成できる見込みか。 ・ 最終目標に向け、課題とその解決の道筋が明確に示され、かつ妥当なもの か。 4.実用化、事業化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・ 産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。 ・ 実用化に向けて課題が明確になっているか。課題解決の方針が明確になっ ているか。 (2)事業化までのシナリオ ・ コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効 果等の見通しは立っているか。 (3)波及効果 ・ 成果は関連分野への技術的波及効果及び経済的・社会的波及効果を期待で きるものか。 ・ プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進する などの波及効果を生じているか。 参考資料 1-9 ※ 基礎的・基盤的研究及び知的基盤・標準整備等の研究開発の場合は、以下の項 目・基準による。 *基礎的・基盤的研究開発の場合 3.研究開発成果について (1)中間目標の達成度 ・ 成果は目標値をクリアしているか。 ・ 全体としての目標達成はどの程度か。 ・ 目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確に なっているか。 (2)成果の意義 ・ 成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・ 成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・ 成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・ 成果は汎用性があるか。 ・ 投入された予算に見合った成果が得られているか。 ・ 成果は、他の競合技術と比較して優位性があるか。 (3)特許等の取得 ・ 知的財産権等の取り扱い(特許や意匠登録出願、著作権や回路配置利用権の 登録、品種登録出願、営業機密の管理等)は事業戦略、または実用化計画に 沿って国内外に適切に行われているか。 (4)成果の普及 ・ 論文の発表は、研究内容を踏まえ適切に行われているか。 ・ 成果の受取手(ユーザー、活用・実用化の想定者等)に対して、適切に成果 を普及しているか。また、普及の見通しは立っているか。 ・ 一般に向けて広く情報発信をしているか。 (5)成果の最終目標の達成可能性 ・ 最終目標を達成できる見込みか。 ・ 最終目標に向け、課題とその解決の道筋が明確に示され、かつ妥当なものか。 4.実用化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・ 実用化イメージ・出口イメージが明確になっているか。 ・ 実用化イメージ・出口イメージに基づき、開発の各段階でマイルストーンを 明確にしているか。それを踏まえ、引き続き研究開発が行われる見通しは立 参考資料 1-10 っているか。 (2)波及効果 ・ 成果は関連分野への技術的波及効果等を期待できるものか。 ・ プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するな どの波及効果を生じているか。 *知的基盤・標準整備等の研究開発の場合 3.研究開発成果について (1)中間目標の達成度 ・ 成果は目標値をクリアしているか。 ・ 全体としての目標達成はどの程度か。 ・ 目標未達成の場合、目標達成までの課題を把握し、課題解決の方針が明確に なっているか。 (2)成果の意義 ・ 成果は市場の拡大或いは市場の創造につながることが期待できるか。 ・ 成果は、世界初あるいは世界最高水準か。 ・ 成果は、新たな技術領域を開拓することが期待できるか。 ・ 成果は汎用性があるか。 ・ 投入された予算に見合った成果が得られているか。 ・ 成果は、公開性が確保されているか。 (3)特許等の取得 ・ 知的財産権等の取り扱い(特許や意匠登録出願、著作権や回路配置利用権の 登録、品種登録出願、営業機密の管理等)は事業戦略、または実用化計画に 沿って国内外に適切に行われているか。 (4)成果の普及 ・ 論文の発表は、研究内容を踏まえ適切に行われているか。 ・ 成果の受取手(ユーザー、活用・実用化の想定者等)に対して、適切に成果 を普及しているか。また、普及の見通しは立っているか。 ・ 一般に向けて広く情報発信をしているか。 (5)成果の最終目標の達成可能性 ・ 最終目標を達成できる見込みか。 ・ 最終目標に向け、課題とその解決の道筋が明確に示され、かつ妥当なものか。 参考資料 1-11 4.実用化の見通しについて (1)成果の実用化可能性 ・ 知的基盤、標準整備に対する公共的な需要が実際にあるか、その見込みはあ るか。 ・ 公共財として知的基盤を供給、維持するための体制は整備されているか、そ の見込みはあるか。 ・ JIS化、国際規格化等、標準整備に向けた対応は図られているか、その見 込みはあるのか。一般向け広報は積極的になされているか。 (2)波及効果 ・ 成果は関連分野への経済的・社会的波及効果等を期待できるものか。 ・ プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発や人材育成等を促進するな どの波及効果を生じているか。 参考資料 1-12 本研究評価委員会報告は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総 合開発機構(NEDO技術開発機構)研究評価部が委員会の事務局 として編集しています。 平成19年9月 NEDO技術開発機構 研究評価部 統括主幹 竹下 満 主幹 高松 秀章 担当 森本 和夫 *研究評価委員会に関する情報はNEDO技術開発機構のホームページに 掲載しています。 (http://www.nedo.go.jp/iinkai/kenkyuu/index.html) 〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番地 ミューザ川崎セントラルタワー(20F) TEL 044-520-5161 FAX 044-520-5162