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パシフックサプライ様の記事(Vol144)はこちらからご覧
モーリフト利用事業所からの発信 1 紀成福祉会における腰痛対策についての取り組み 社会福祉法人紀成福祉会 特別養護老人ホーム龍トピア ホームページアドレス➡http://kiseifukushikai.or.jp/index.html 理学療法士 笠原聖吾 山と緑に囲まれた和歌山県田辺市龍神村にある特別 養護老人ホーム龍トピア。 【原則、持ち上げない介護】をテーマに介護職員の大 切な身体を守ろうと真剣に腰痛対策に取り組む理学 療法士がいます。 福祉機器の積極的な導入を図り、介助技術の内部研 修・外部研修を計画的に取り入れながら、介護する側・ 介護される側にも質の高い、やさしい介護をめざして の取組みを3号連載にてご紹介いたします。 平成22年 1月 福祉用具拡充 Pacific News vol.144 の低下など、挙げはじめ るとキリがありません。 諸問題の元凶になり得 る腰痛を0にすることは 難しいですが、法人内 での腰痛発生を、 0にな るべく近づけていくのが 現時点での目標です。 そのためには、 「今までの習慣を変えること」が、必然的に現 場に求められます。もちろん大半の職員にとって、 「今までの習 慣を変える」ことは戸惑いと抵抗感に満ち溢れているでしょう し、こちらの情報発信の仕方によっては、 「今まで頑張って行っ てきた方法が否定されている」と受け止められてしまう可能性 さえあります。 「今までの習慣を変えていくこと」は、大きな挑戦 であり一筋縄ではいきません。近道などもありませんが、それで も地道に職員に説明し、納得して頂く作業を続けていく事で、 その必要性は理解して貰えると思います。歩みは一歩ずつで すが、確かに感じる変化の手応えを支えに、今後も職員教育・ 職場環境の整備に邁進して行こうと考えています。 次回はモーリフト導入後の現場の変化や、導入で浮かび 上がってきた新たな課題を、現場の声を交えながら、ありのま まにお伝えしようと考えています。 理学療法士 笠原聖吾 東京都立保健科学大学理学療法学科卒【現:首都大学東京】 急性期病院・老人保健施設勤務を経て特別養護老人ホーム龍トピア勤務。 HPにて 理学療法士の呟き 発信中 http://kiseifukushikai.or.jp/PT_Tubuyaki.html 職員教育と職場環境改善の流れ 制度 6 階でインフラを使用していけるよう、両者のタイミングにも配慮 しながら、地道な教育を重ねていきました。職員の知識と技 術も少しずつ向上し、 抱え上げ一辺倒だった移乗についても、 「ご利用者の身体機能に合わせて移乗方法を選択する」こ とが少しずつ定着し、職員の中にも、 「Aさんにスラィディング ボード使ってみたけど、上手く出来たわ」 「Bさんにも試してみ ようかな」といった、前向きな変化が芽生え始めてきました。 介護労働者設備等整備モデル奨励金の活用 このような流れの中、職員から特に要望の多かった腰痛 対策について、最新の知見を得ようと、平成22年4月、バリ アフリー2010展を訪れました。 その際にパシフィックサプライ社・モーリフト専任 武田イ ンストラクターによる「腰痛から介護者を守る移乗機器につ いて」と題したワークショップを受講しました。この講義は介 護労働者設備等整備モデル奨励金の存在を知る機会とな り、この出会いがその後の アンケート(抜粋) 活動において大きな契機とな 回答数:88名 りました。 ●腰痛について それまでの腰 痛 対 策を、 有病者…34名 「介護労働者設備等整備 (有病率=38.6%) 既往者…64名 モデル奨励金」を活用させ (既往率=72.7%) ●辛い介護動作について てもらうことで一層推進する 大多数の職員が「抱き上げ・ 事が出来ると確信し、かねて 抱え上げ」を挙げていた。 から構想を練っていた移動 ●腰 痛の存在により、約半数 の職員が介護の仕事を続け 用リフト導入計画を取りまと ていく上で不安を感じたこと め、5月の法人理事会での があった。 承認後、奨励金の申請作業 に突入。その作業の一環と して、職員対象に腰痛に関 48% 52% ■ある 42名 するアンケートを7月に実施 ■ない 46名 しました。 職員教育 腰痛対策への課題 私が現在の職場に勤務し始めた当初は、車椅子も標準 型が大勢を占めており、アームレストが跳ね上げ式・フットレ ストが着脱可能な車椅子があったとしても、その機能や活用 法すら知らない職員も珍しくありませんでした。当然、移乗動 作については抱える方法しか選択肢が無く、職員は腰痛に おびえながら、或いは腰痛を抱えながら日々の業務を遂行し ていました。介護の人材難が叫ばれる中、介護士が直面す る業務内容・特に日々繰り返される移乗動作についての負 担の軽減は急務と思われ、先ずは、ご利用者・職員双方に とって優しい職場環境づくりを目指し、充実した教育体制の 構築を心に決めました。約1年半前より法人内の内部研修 を担当させて頂くことになり ①車椅子などの福祉機器 ②スラィディングボードやロールボードを用いた移乗法 ③介護職の腰痛対策 のテーマで研修を行いました。また、研修を受けた職員が直 ちに現場で実践できるように、セミモジュール型車椅子やス ラィディングボード・ロールボードといった移乗器具を徐々に 拡充させました。 職員教育と環境整備 腰痛対策の両輪は、職員教育と環境整備です。教育だ けが先行しても介助技術や知識が使える環境が整っていな ければすぐに火が消えて しまいます。また、環 境 整備だけが先行しても、 それを使いこなすための 教育が追随しなければ、 せっかくの整備が活かさ れないことになりかねま せん。教 育が整った段 アンケートから見えた実情 2施設、計88名のアンケート結果からは、利用者を抱え 上げる移乗動作に苦労し、腰痛に怯えている職員の状況が 切々と伝わってきました。また、職員の約半数が、腰痛によっ て、今後介護の仕事を続けていく事に対し不安を持っている 事も浮き彫りになり、腰痛対策の必要性を、ますます痛感さ せられました。 モーリフト導入後のフォロー体制 昨年7月中旬に1週間モーリフトを試験導入。9月に奨励 金の申請を行い、 11月中旬より本格的なモーリフトの導入を 行っています。導入後の現場の声としては、 「 腰への負担が 少なくなった」 「ご利用者の負担が減っている」 「体力的に助 かる」という前向きな意見が多く聞かれています。 その一方で、導入後は様々な問題点も浮かび上がって きています。 「 時間がかかる」 「操作に手間取る」このような 職員の技術習熟度に関する問題については、月1回、パシ フィックサプライ社、武田専任インストラクターから、職員全 体の習熟度向上を目的とした研修を受講しています。また、 全体的な時間配分や業務内容の見直しを各施設で行い始 めています。 「床での取り回しが難しい」 「低床ベッドによっては、床走 行リフトがベッド下のフレームにあたり使用出来ない」などの 環境面での問題については、 リフトが使いやすくなるように、 施設の環境整備にも取り組んでいます。 変化の手応えを支えに… 腰痛が及ぼす悪影響は多岐に渡ります。欠勤による他職 員への負担・業務遂行効率の低下・精神的なキャパシティ 2月 3月 4月 腰痛 内部研修① 病態・予防について 5月 6月 7月 8月 9月 10月 腰痛 内部研修② 移乗・福祉用具 モーリフト 倶楽部 12月 平成23年 1月 2月 随時、職員に対し フォローアップ リフト デモ研修 職員対象 アンケート実施 バリア フリー展 11月 モーリフト リフト リフト 交流会 導入研修 1ヵ月研修 介護労働者設備等 整備モデル奨励金 申請・認可 ●スライディングボード(5枚) ●ロールボード(2枚) ●跳ね上げ式車椅子(20台) ●車椅子用クッション リフト 3ヵ月研修 平成23年3月に リフト効果判定用 アンケート再実施予定 ●ロールボード(9枚) ●モーリフトスマート150(9台) 抱え上げ作業の多い各施設の 各フロア及び浴室へ配備 Pacific News vol.144 7