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日本で高レベル放射性廃棄物の最終処 分はできない

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日本で高レベル放射性廃棄物の最終処 分はできない
出典:「日経ビジネスオンライン」 2012年9月14日
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田坂:高レベル放射性廃棄物や使用済み燃料の地層処分の問題は、実は、私の学位論文の
テーマでもあり、私自身、その専門家でもあるのですが、今年 1 月に上梓した著書『官邸から
見た原発事故の真実』(光文社新書)において、現在の科学では、この地層処分という方式の
「十万年の安全性」を証明することは不可能であることを述べました。
そして、この学術会議の報告書と同じタイミングで上梓した新著(文末参照)では、この「最
終処分」(final disposal)ができないときの代替策として「最終貯蔵」(terminal storage)を検討す
べきことを述べています。この「最終貯蔵」という概念は、学術会議の「暫定保管」と同様の概
念でもありますが、今回のインタビューでは、なぜ、この「最終貯蔵」という方式が必要なのか、
そのことをもう少し深く論じてみたいと思います。
――それは、ぜひ伺いたいと思いますが、そもそも、この「高レベル放射性廃棄物の最終処
分」の問題は、「脱原発依存の政策」を進めても、必ず直面する問題ですね?
田坂:その通りです。この問題は、「脱原発依存」に向うとしても必ず直面する、深刻な問題で
す。
ただ、正確に言えば、「脱原発依存」に向かい、使用済み燃料の再処理を行わないという政
策に向かう場合には、「高レベル放射性廃棄物」ではなく「使用済み燃料」をどのように最終
処分するかが問題となります。「高レベル放射性廃棄物」に換算して二万四千本に相当する
「使用済み燃料」を直接処分するという問題です。
ただし、この「高レベル放射性廃棄物」という言葉は、しばしば、「使用済み燃料」を含む広義
の意味で使われることもありますので、報告書などを読むときは留意する必要があります。
突如、出現した「高レベル放射性廃棄物」
――しかし、従来の政府の計画では、「高レベル放射性廃棄物の最終処分」の問題は、30 年
から 50 年の長期貯蔵の後にやってくる、数十年先の問題ですね? これは、時間をかけて
解決していけばよい問題ではないのでしょうか?
田坂:たしかに、「高レベル放射性廃棄物の最終処分」についての従来の政府の計画は、そ
の通りであり、本来は、時間をかけて解決していけばよい問題でした。
しかし実は、その状況が根本から変わったのです。
――なぜでしょうか?
田坂:昨年 3 月 11 日、突如、「高レベル放射性廃棄物」が、目の前に出現したからです。
それは、メルトダウンを起こした福島第一の三つの原子炉です。
この三つの原子炉の中では、核燃料と高レベル放射性廃棄物が溶融を起こし、原子炉圧力
容器を突き抜け、格納容器の底部と融合してしまっているのです。すなわち、事故を起こした
福島原発とは、それ自身が「高レベル放射性廃棄物」なのです。
しかも、すでに述べたように、これらの高レベル放射性廃棄物は、再処理工場から出てくる
ものとは異なり、その形状も、組成も、性質も、放射能量も不明であり、全く品質管理が行わ
れていない高レベル放射性廃棄物なのです。
その意味で、福島原発事故は、極めて厄介な高レベル放射性廃棄物を、突如、我々の目の
前に出現させたのであり、その結果、3 月 11 日以前は「未来の問題」であった高レベル放射
性廃棄物の最終処分の問題を、突然、「現在の問題」にしてしまったのです。
従って、これから、福島原発の廃炉の問題が話題になるたびに、多くの国民とメディアは、
「その高レベル放射性廃棄物を、どこに貯蔵し、いつ、どこで、どのように最終処分するの
か?」を政府に問うようになるでしょう。政府はそのことを覚悟しておくべきです。
不可能になった「地層処分計画」
――しかし、政府の計画では、高レベル放射性廃棄物は、国内に最終処分地を見つけ、地
層処分をするという計画ではないのでしょうか?
田坂:そうです。しかし、福島原発事故によって、日本の地層処分計画は、極めて大きな壁に
突き当たりました。
なぜなら、この事故によって、国内に最終処分地を見つけることが、極めて難しくなったから
です。
その最大の理由は、福島原発事故によって、原子力施設と放射能汚染に対する不安と懸
念が、多くの国民の中に広がってしまったからです。
もちろん、原子力施設に対する不安や懸念は、福島原発の事故以前からもありました。しか
し、事故以前においては、「環境の放射能汚染」ということは、現実に大規模な汚染が起こっ
ていなかったため、多くの人々にとって、「仮想の問題」だったのです。しかし、それが、事故
の後は、極めて明確な「現実の問題」になってしまいました。
そして、その結果、原子力施設についての社会心理的な拒否反応が、事故以前に比べ、比
較にならないほど厳しいものになってしまったのです。
――たしかに、社会心理的な拒否反応は、極めて強くなりましたね。
田坂:そのことを象徴するのが、広域での「がれき処理」の問題です。この「がれき」は、放射
能汚染という意味では、ほとんど問題にならないものなのですが、それでも、全国に「放射能
汚染している可能性がある廃棄物の持ち込みは拒否する」という社会心理が広がっていま
す。
こうした現象は、かねてから、社会心理学の分野では、「NIMBY 心理」、すなわち、「Not in
My Backyard(私の家の裏庭には捨てないでくれ)心理」と呼ばれてきましたが、いま、それが
極めて厳しい形で、政府や行政に突き付けられているのです。
それでも、「がれき処理」の問題は、政府からの強い要請もあり、多くの自治体が前向きに
検討してくれましたが、例えば、除染作業の結果発生する東京ドーム 23 杯分と言われる「汚
染土」や、福島原発での汚染水処理の結果出てくる「高濃度放射性廃棄物」は、今後、どこに
貯蔵し、どのような方法で、どこに最終処分するかが、深刻な問題になっていくでしょう。
私は、かつて、青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物最終処分施設の設計と安全審査
に携わったことがありますが、あの比較的軽微な汚染の廃棄物でさえ、長年にわたって徹底
的な安全性試験を行い、膨大な安全評価計算を行い、ようやく審査を通過し、地元の了解を
得て操業に漕ぎ着けたのです。
その厳しい現実を考えるならば、「高濃度放射性廃棄物」や「高レベル放射性廃棄物」を、ど
こに中間貯蔵するのか、どこに最終処分するのか、その貯蔵・処分の施設を、どの地域が受
け入れてくれるのかは、極めて難しい問題となって、今後、政府の前に立ちはだかるでしょう。
証明できない「十万年の安全」
――しかし、高レベル放射性廃棄物の地層処分は、その安全性が、それほど説明しにくいも
のなのでしょうか? 地下深くに埋めてしまえば、安全な気もしますが?
田坂:高レベル放射性廃棄物や使用済み燃料の最終処分の難しさは、「数万年から十万年」
という極めて長い期間、人間環境から隔離する必要があるという点です。
正確に言えば、高レベル放射性廃棄物の場合は、これを「地層処分」によって地下深くに埋
めたとき、それが元のウラン鉱石の毒性と同じレベルにまで減衰するのに、「数万年」が必要
であり、使用済み燃料の場合は、「十万年」が必要になるのです。
私は、米国の国立研究所で働いていた時代に、米国の使用済み燃料の地層処分計画であ
る「ユッカ・マウンテン・プロジェクト」に専門家として参画していましたが、この地層処分の安
全評価の最も難しいところは、「十万年の未来」の安全性を、現在の科学では証明できないと
いう点です。
――しかし、何億年も安定だった地下深くの岩盤中に埋めてしまえば、地下水も少なく、ほと
んど動かないので、廃棄物からの放射能が地表に漏れ出てくる可能性は、極めて低いという
考えもあると思うのですが?
田坂:もちろん、高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、本来、何億年も安定した岩
盤を選び、地下水の速度の極めて遅い場所を選んで埋設します。そして、十万年の間に、地
下水によって放射能が運ばれるプロセスをコンピュータでシミュレーションして、例えば「三千
年後の地表での公衆の被曝線量はこの程度です」と示すことはできるのですが、では、その
予測が「正しい」ということを科学的に証明せよと問われると、答える方法が無いのです。特に、
日本のように火山活動や地殻変動の激しい国での地層処分は、「未来に何が起こるか」を予
測することは、非常に難しいのです。
従って、こうしたコンピュータ・シミュレーションによる安全評価の結果は、最後は、その予測
結果を、国民が信じるか、信じないかという話になってしまうのです。
そして、この「地下水によって放射能が地表に運ばれる」というシナリオは、「地下水移行シ
ナリオ」と呼ばれるものですが、実は、安全評価上、極めて評価が難しいもう一つのシナリオ
があるのです。
最も安全評価が難しい「人間侵入シナリオ」
――それは、どのようなシナリオでしょうか?
田坂:「人間侵入シナリオ」と呼ばれるものです。
すなわち、未来において、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物を地層処分した場所に、
偶発的に、もしくは意図的に、人間が侵入し、放射能を地上に拡散してしまうというシナリオで
す。
――「人間侵入シナリオ」ですか?
では、「偶発的」というのはどのようなシナリオでしょうか?
田坂:未来において、この場所に使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物が地層処分された
という記録が失われてしまい、資源探査や地下開発の目的で、未来の人類がその地層処分
場に侵入してしまうというシナリオです。
――それを防ぐために、「この場所には危険物が埋められています」というメッセージを書い
た標識など置いておくという方法は、有効ではないのでしょうか?
田坂:その方法も、かなり真剣に検討されてきました。しかし、この問題は、これまでの人類の
歴史、数千年を超えた未来の話なのです。その未来において、記録を保管すべき国家がどの
ような状況になっているのか、また、その社会でどのような言語が使われているかも分からな
いのです。そこに、本質的な難しさがあるのです。
高レベル廃棄物を「資源」と考える未来の人類
――では、「意図的に」というのは、どのようなシナリオでしょうか? そもそも、それほど危険
な廃棄物の処分場に、意図的に侵入する人間がいるのでしょうか?
田坂:そうした人間が現れる可能性は、あります。
埋められた放射性廃棄物を、「資源」と考える人間です。
――「資源」ですか…。
田坂:そうです。
なぜなら、実は、使用済み燃料は、貴重な「資源」を含んでいるからです。
過去の研究の試算によれば、使用済み燃料一本当たり、数千万円相当の「白金族元素」や
「希土類元素」などの有価資源を含んでいると言われます。もちろん、原子炉から取り出した
ばかりの使用済み燃料は、近づくと即死するほど放射能が強いため、高度な技術を使って再
処理をしないかぎり、一般の人間がその資源を回収することはできませんが、使用済み燃料
の放射能は、千年以上経つと、かなり減衰しますので、使用済み燃料に近づくことが容易に
なってしまうのです。
実は、過去の世界の地層処分安全評価研究において、最も悩ましいシナリオと考えられた
のが、この有価資源を求めて意図的に地層処分場に人間が入ってくる「人間侵入シナリオ」
なのです。
実際、歴史を振り返れば、ピラミッドなど、財宝が安置された場所は、厳重な防御にもかか
わらず、必ずと言ってよいほど、盗賊に侵入され、財宝が盗み出されています。
「科学的証明」ではなく「社会的受容」の問題
――なるほど…。それは難しい問題ですね…。
田坂:難しい問題です。そして、もう一度申し上げますが、この地層処分の問題は、突き詰め
ていくと、「こうしたシナリオが起こらないということを、科学者が証明できるかどうか」という「科
学的な論証」の問題ではないのです。
なぜなら、どれほど厳密な科学的議論をしても、数千年から十万年もの未来において、何が
起こるかは、誰も分からないからです。そして、それを証明する方法は無いからです。
従って、この問題の本質は、「こうしたシナリオが起こらないという説明を、国民が受け容れ
るかどうか」という「社会的な受容」の問題なのです。
――「社会的受容」とは?
田坂:分かりやすく言えば、「国民が政府を信頼し、政府の示す安全評価の結果を信じ、政府
のプロジェクト計画を受け容れること」です。
それゆえ、この高レベル放射性廃棄物の地層処分を実現するためには、まず、その大前提
として、「政府に対する国民の信頼」が、極めて重要なのです。
――とはいえ、高レベル放射性廃棄物の地層処分は、それによる一般公衆の被曝が起こる
としても、数百年以上先である可能性が高いのですね?
田坂:その通りです。しかし、実はそこに、この問題の最も難しい本質があるのです。
意識の成熟が求められる「世代間倫理」の問題
なぜなら、この問題は、「世代間倫理の問題」だからです。
言葉を換えれば、この問題は、「現在の世代のエネルギー利用のために、未来の世代に負
担とリスクを残すことを、どう考えるか」という問題であり、もし我々の世代が、無責任に「どう
せ、我々の世代に被害が生じるわけではない」と考えてしまうならば、実に容易に、未来の世
代に対して「負担」と「リスク」を押し付けることができるからです。
それは、まさに地球温暖化の問題と同様、「世代間倫理の問題」を我々に突きつけてくるの
です。そして、我々の世代が、「世代エゴ」に陥らない「成熟した意識」を持っているか否かを、
深く問うてくるのです。
――たしかに、そうですね。
では、その「世代エゴ」に陥らないためにも、この高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題
を「未来の世代」に先送りせず、「我々の世代」だけで解決する方法は無いのでしょうか?
「地層処分」以外に、良い方法は無いのでしょうか?
田坂:実は、「地層処分」以外の方法についても、過去数十年間、世界中の原子力研究機関
が検討してきました。現時点でも、可能性のある方法として、二つの方法が議論されていま
す。
「地層処分」以外の二つの方法
――どのような方法でしょうか?
田坂:一つが「宇宙処分」と呼ばれる方法であり、高レベル放射性廃棄物を、宇宙の彼方に打
ち出してしまう方法や、太陽に打ち込んでしまう方法です。
この方法については、1970 年代から 1980 年代まで、かなり真剣に検討されましたが、現時
点では「コストがかなり高い」という理由で、現実的な選択肢とはされていません。また、1986
年のスペースシャトルの爆発事故によって、「宇宙への発射時の爆発リスクが無視できない」
ということも、大きな理由となっています。
――もう一つの方法は?
田坂:「消滅処理」と呼ばれる方法です。
これは、分かりやすく言えば、特別に設計された原子炉の中で、高レベル放射性廃棄物中
の「長寿命・重元素」の放射性核種であるプルトニウムやネプツニウムなどを「核分裂」させ、
「短寿命・軽元素」の放射性核種へと「核変換」させるという方法です。
しかし、この方法も、宇宙処分と同様に、「コストが高い」という理由で、現時点では現実的な
選択肢になっていません。
また、この「核変換」については、特殊な原子炉で燃やしても、むしろテクネチウムのような
「長寿命・軽元素」の放射性核種を増やしてしまうだけで、最終的な解決策にならないとの学
術的な指摘もされています。
――では、どうすれば良いのでしょうか?
我々の世代」だけで解決する有効な方法がまだ見つかっておらず、地層処分などの方法は、
「未来の世代」に負担を残す方法であるならば、では、現実に存在している使用済み燃料と
高レベル放射性廃棄物の「最終処分」を、どうすれば良いのでしょうか?
この問題は、「脱原発依存」に向かうとしても、必ず解決しなければならない問題なのです
ね?
田坂:その通りです。たしかに、この問題は、「脱原発依存」に向かうとしても、必ず解決策を
見つけなければならない問題であり、容易には答えが見つからない、極めて難しい問題で
す。
しかし、現実的な選択肢として考えるならば、私は、当面、「最終貯蔵」という方法を採るしか
ないと思います。
未来の世代に選択権を残す「最終貯蔵」
――「最終貯蔵」とは、「最終処分」とは違う方法なのですか?
田坂:違う方法です。
では、「処分」と「貯蔵」の本質的な違いは、何か。
それは、「回収可能性」です。
「処分」とは、英語では「disposal」ですが、「人間の管理から外す」ということが、本来の定義
です。これに対して、「貯蔵」とは、英語では「storage」ですが、「人間の管理下に置き続ける」
ことを意味しています。そして、この二つの行為の本質的な違いは、「回収可能」(retrievable)
か、どうかです。
すなわち、従来の高レベル放射性廃棄物の地層処分の考え方は、この「最終処分」(final
disposal)であり、人間の管理から外し、将来の人類に、これを回収する可能性を残さないとい
う考えです。
これに対して、私が提案する「最終貯蔵」(terminal storage)は、長期にわたって、高レベル
放射性廃棄物を人間の管理の下に置き、将来の人類が、これを回収する可能性を残すもの
です。そして、将来の人類が、この高レベル放射性廃棄物を安全に最終処分する「新たな技
術」を開発したときに備えるのが、この「最終貯蔵」という方法です。
――その「最終貯蔵」を行うのは、地上に貯蔵施設を建設して行うのでしょうか?
田坂:これも二つの方法があります。
一つは、「地上」に最終貯蔵施設を建設する方式です。ただし、この方式は、「目に見える場
所に貯蔵して人間の管理下に置く」という意味では、明確で安心感のある方式ですが、戦争
やテロ、航空機の衝突や隕石の落下などによって、施設が破壊されるというリスクがありま
す。
従って、もう一つの方式は、戦争やテロ、航空機の衝突や隕石の落下などによる影響を受
けにくい「地下」に最終貯蔵施設を建設するという方式です。この方式は、「地層処分」の方式
に似ていますが、長期にわたって回収可能性を技術的に担保するという点で、新たな技術開
発が必要になる方式です。
「最終処分施設」ではなく「最終貯蔵施設」を
――その「最終貯蔵」の方式ならば、日本国内でも建設場所が見つかるでしょうか?
田坂:それは、分かりません。
通常の放射性廃棄物の「暫定貯蔵」(interim storage)でさえ、施設の設置を忌避する地域
住民の方々の気持ちを考えれば、容易ではないでしょう。しかし、「将来のことを考えず、ただ
捨ててしまう」という「地層処分」に比べれば、住民と国民の理解と納得を得られる可能性は
あるでしょう。ただ、そのときも、鍵となるのは、やはり「政府に対する国民の信頼」です。
――もし、国内に「最終貯蔵施設」を建設することができないときには、どのような方策がある
でしょうか?
田坂:その場合には、「暫定貯蔵」(interim storage)が「長期貯蔵」(long term storage)になっ
てしまうのですが、日本国内に最終貯蔵施設の建設場所が見つけられない場合には、一つ
の方法として、世界各国の協力の下に、「国際的な最終貯蔵センター」を設置するという方法
が考えられます。
――それは、何年か前にメディアでも注目された、モンゴルで高レベル放射性廃棄物や使用
済み燃料を、集中的に最終処分する計画ですね?
田坂:それがモンゴルであるかどうかは、現時点で論ずるべきではないでしょう。
そもそも、その計画については、モンゴル国内でも大きな反対運動が起こったと聞いていま
すので、軽々に論じるべきことではないと思います。
ただ、一般論で申し上げるならば、この高レベル放射性廃棄物の最終処分や最終貯蔵の問
題は、実は、「一国」の枠を超えた問題なのです。
なぜなら、この問題は、数万年から十万年もの未来に至る問題であり、その未来において
は、国家や国境の概念が大きく変わっている可能性があるからです。現在のところ、この問題
は、「各国ごとの取り組み」に任されていますが、その本質は、「一国」の問題ではなく、「世界
全体」の問題に他ならないのです。
従って、この高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題については、「有害廃棄物を他国に
持ち込まない」や「国境を越えて有害廃棄物を移動させない」というバーゼル条約の精神とは、
全く違った次元の問題として扱う必要があるでしょう。
しかし、いずれにしても、この問題は、未来の世代への負担を最小化し、未来の世代の選択
権を尊重するという観点から、解決策を定めていくべきと思います。
(次回に続く)
9 月 14 日に田坂広志氏の新著
『田坂教授、教えてください。これから原発は、どうなるのですか?』
が発売されました。
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