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J apanesecedar ( C ryptomeriajaponica )
N J a p a n e s e c e d a r (Cryptomeria japonica) 日光地区木材流通研究会 MOKURYUKEN G MOKURYUKEN R E E T I N G 私たち、日光地区木材流通研究会は、 栃木県北西部に位置する日光市と鹿沼市の林業家4名、原木市場1名、 製材業者2名、設計業者1名の計8名で活動しております。 川上から川下に至る異業種が連携して、国産材、地元の木材の需要拡大を目指し、 今後の木材のあり方、流通、地球環境など、林業・木材産業に関する 様々な問題を調査研究しているグループです。 PAGE ● 1 I n t r o d u c t i o n a n d C o n c e p t スギ への ト ﹁ への 扉 ﹂ N ビラ DOOR TO THE JAPANESE CEDAR 縄文時代から日本の生活文化を支えてきた杉は、 日光地区においても、面積で36%、材積で57%を占めるなじみ深い木です。 しかし、あまりに身近すぎて、その存在が忘れ去られようとしています。 戦後の植林活動により、今、まさに旬 (伐採適期)を迎えている杉。 この機会に身近な杉を見つめ直し、杉を活かした家造りを考えてみませんか! PAGE ● 2 日 本 を 冠 し た 木。 スギは学名を Cryptomeria japonica(クリプトメリア・ジャポニカ)と言い、 「日本」を表す単語を持つ我が国固有の有用樹種です。近年、花粉症の元凶とし て悪しき風評を聞くこともありますが、日本の風土気候に適したスギは、通直な 成長性、材質の柔らかさからくる加工のしやすさ、温かみのある感触、風合いな ど、日本人の生活に欠かすことのできない地域の素材として大きな役割を果たし てきました。日本の伝統的工法による家づくりにおいて、40年生程のスギは柱材 として多く利用されてきました。しかしながら、建築様式の遷移と、それに伴う 外国産材の台頭により、スギの需要は減少してきました。その結果、林業経営の 採算性悪化を招き、さらにそのことは、労働者の意欲の低下や高齢化を進め、 今や地域の山林の荒廃を引き起こしています。スギの人工林は、一般的に45年 ∼60 年が年間成長量のピークで、それ以降は緩やかな成長に留まると言われて の吸収源として森林への期 います。地球温暖化ガスであるCO2( 二酸化炭素) 待が高まる中、森林の成長量を高度に維持していくためには、ピークを過ぎた 森林を適正な管理のもとで、伐って、使って、また森林に戻していく活動が必要 不可欠です。このことは、資源の循環利用のメカニズムを持続的に保持していく ためにも大切な意味を持っています。栃木県においても、スギは最も身近な樹種 として古くから植林活動が行われ民有林の1/3にあたる約 7 万ha がスギの人工 林となっています。このような中、地域の森林は戦後高度成長期の熱心な植林活 動により、9齢級(40年∼45 年生) 以上のスギの人工林は面積で88%、材積で 93%を占め、まさにスギを活用する時期を迎えています。 J a PAGE ● p 3 a n e s e c e d a r ( C r y p t o m e r i a j a p o n i c a ) い ま 最 も 活 用 す べき 木。 土地利用の状況 栃木県 日光地区 その他▶9 % その他▶17% 宅地▶8% 農地▶ 住宅▶3 % 農地▶7% 森林▶55 % 20% km2 森林 栃木県 森林▶81% 日光地区 農地 3,496 55% 1,579 81% 宅地 1,255 20% 131 7% その他 511 8% 50 3% 合計 1,146 17% 181 9% 6,408 100% 1,941 100% ●…栃木県 項 目 人工林針葉樹 人工林広葉樹 天然林針葉樹 天然林広葉樹 その他 合 計 民有林林種別面積 栃木県 日光地区 その他▶3% その他▶3% 天然林広葉樹▶36 % 天然林針葉樹▶6% 天然林針葉樹▶4 % 人工林広葉樹▶0 % 人工林針葉樹▶62% 人工林広葉樹▶0 % 栃木県 ヒノキ▶19 % 項 目 人工林針葉樹 人工林広葉樹 天然林針葉樹 天然林広葉樹 その他 合 計 項 目 ス ギ ヒノキ その他 合 計 日光地区 スギ▶51% 材 積 (m3) 38,870,055 86,255 3,562,831 10,415,075 0 52,934,216 材積構成比 73.43% 0.16% 6.73% 19.68% 0.00% 100% 面 積 (ha) 47,920.07 224.25 3229.19 23,648.96 2071.54 77,094.01 面積構成比 62.16% 0.29% 4.19% 30.68% 2.69% 100% 材 積 (m3) 16,475,168 14,008 786,024 3,053,716 0 20,328,916 材積構成比 81.04% 0.07% 3.87% 15.02% 0.00% 100% 面 積 (ha) 68,789.37 44,913.59 107,246.85 220,949.81 面積構成比 31.13% 20.33% 48.54% 100% 材 積 (m3) 27,128,617 10,165,180 15,640,419 52,934,216 材積構成比 51.25% 19.20% 29.55% 100% 面 積 (ha) 28,024.87 16,772.54 32,296.6 77,094.01 面積構成比 36.35% 21.76% 41.89% 100% 材 積 (m3) 11,632,695 4,271,560 4,424,661 20,328,916 材積構成比 57.22% 21.01% 21.77% 100% ●…栃木県 民有林樹種別材積 その他▶30 % 面積構成比 54.60% 0.80% 5.76% 36.26% 2.57% 100% ●…日光地区 天然林広葉樹▶31% 人工林針葉樹▶55% 面 積 (ha) 120,643.81 1,771.14 12,735.61 80,112.91 5686.34 220,949.81 その他▶22% ●…日光地区 ヒノキ▶21% 項 目 ス ギ ヒノキ その他 合 計 スギ▶57% ※栃木県では民有林におけるスギ人工林の割合は、面積で約3割、材積で約5割を 占めており、さらに日光地区では、その割合が若干大きくなっています。 民有人工スギ林齢級別面積 (ha) 6,000 日光地区 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17以上(齢級) ●…日光地区 齢 級 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17以上 合 計 面 積 (ha) 37.31 172.73 221.93 281.12 265.88 425.52 758.87 1,157.06 1,878.51 3,580.24 5,662.43 4,938.10 3,551.39 1,322.97 941.26 758.78 2,069.09 28,023.19 面積構成比 0.13% 0.62% 0.79% 1.00% 0.95% 1.52% 2.71% 4.13% 6.70% 12.78% 20.21% 17.62% 12.67% 88.15% 4.72% 3.36% 2.71% 7.38% 100% 材 積 (m3) 0 0 14.447 37.711 52.256 104.774 217.623 379.266 654.504 1,345.045 2,297.179 2,150.128 1,668.908 658.774 488.721 397.750 1,164.936 11,632.022 材積構成比 0.00% 0.00% 0.12% 0.32% 0.45% 0.90% 1.87% 3.26% 5.63% 11.56% 19.75% 18.48% 14.35% 93.06% 5.66% 4.20% 3.42% 10.01% 100% ※齢級は林齢を5年の幅で区切ったものです。 用材として利用価値の高い9齢級(40∼50年生)以上のスギ人工林は、面積・材積ともに 約9割を占め、まさにスギを活用する時期を迎えています。 ●これらの情報は2015年1月末時点で確認できたものです。 PAGE ● 4 の ﹁やさしさ﹂ 杉は木材中の空隙量(空気の入る隙間)が多いという特性により、 優れた断熱性をもっています。空気の入る隙間は天然の調湿をしてくれる 湿度の保管庫です。毎日の何気ない生活の中でこそ実感できる、 日本の生活環境に適した「やさしい」木です。 J a PAGE ● p 5 a n e s e c e d a r ( C r y p t o m e r i a j a p o n i c a ) の ﹁おもしろさ﹂ 杉ほど日本の生活文化になじみ深い木はないでしょう。 その杢目は古来より、天井板などの化粧材に使用され、 見て楽しむ文化を創造してきました。 線香の原料としての葉や、屋根の材料としての樹皮。 知るほどに「おもしろい」木です。 PAGE ● 6 の ﹁つよさ﹂ 柔軟性と弾力性が杉の特徴です。その通直な杢目は、 住宅の柱や梁等の骨組みとして構造材に適し、赤身 (心材)は、 含まれるフェノール類の防腐・防菌効果により天然の耐久性に優れ、 柔らかいけどとても「つよい」木です。 J a PAGE ● p 7 a n e s e c e d a r ( C r y p t o m e r i a j a p o n i c a ) の ﹁したたかさ﹂ 「やさしさ」と「おもしろさ」と「つよさ」を備えた杉。 私たちの最も身近にある杉は、学名に日本を冠するとおり、 日本の気候風土に最も適し、 日本の生活に欠かすことのできない「したたか」な木なのです。 PAGE ● 8 J a p a n e s e c e d a r ( C r y p t o m e r i a j a p o n i c a ) する事が非常に容易であるばかりでなく、その強度が高い事などが理由として挙げられます。一方、 近年になり、松の入手が難しくなり、そのため、外国からの「松」主に米松が多く輸入されるよう すべての素材を杉に。 栃木県は昔から、大桁・梁に「松」を使ってきた歴史があります。それは、身近に松があり、入手 になり、現在の建築では、この米松が極めて当然のように使われるようになりました。そして、集 「梁・桁・柱」 につかう 成材などもまた梁・桁・柱材として広く使用されるようになっています。栃木県では杉を「大桁・梁」 に使う習慣が無いに等しいのが現状です。これは、上 述したような背景とともに、大桁・梁材とし ては杉の強度が不足しているのではないかという認識があるからです。一方、県外や他の地域に目 を向けると、外材や集成材に押されつつも、柱等は勿論のこと大桁や梁、筋交や間柱に至るまで一 般的に「杉」が流通している地域もあります。私たちの栃木県には多くの「杉」があります。もっ とも身近な「杉」の知識を深め使い方を認識する事が、用途の巾を大きく広げる事に繋がります。 「階段材」 につかう 最近では、大径の杉も多く入手できるため、階段材の踏み板(段板)などに必 要な幅 240mm∼300mm 程度の板材が、比較的安価に入手する事が可能です。 一般的に使用されることの多い、集成材と階段プレカットの組み合わせと比較 して、杉の無垢板及び大工さんの加工手間は、費用的にはそれほど変わりがあ りません。 「無垢の国産材の階段」という選択肢に於いて杉は、松のようにねじ れや変形を起こしにくく、桧との単価比較に於いても、大幅に安価であります。 また、程よい硬さは使うほどに木目が浮き出、風合いを増し、洋風にも和風に もあう、階段材として適した素材であるといえます。 「枠材」 につかう 現在の建築に於ける枠材と言えば 「新建材」 が主流です。無垢材の場合では、 「タモ・ 栂・スプルス」などの外材が多く流通しています。しかし、近年になり、杉の 枠材が国産材での家造りや、環境や健康を看板にした建築に多く使用されるよ うになりました。理由は、杉が無垢の外材と比べて非常に安価で入手しやすく、 また、木目がはっきりとしているため無垢材としての美観に優れていることな どが挙げられます。さらに、製材工場における乾燥方法の高度化により収縮及 び狂いの少ない板材を供給できるようになった事も大きな理由の一つです。し かし、 比較的軟らかい素材の為、 施工中の「傷」や、 製品の多くが板目であるため、 反りに注意を払い施工をする必要があります。 PAGE ● 9 家まるごと一軒分。 「床板」 につかう 杉の良さを最も実感出来るのは、 「床板」ではないでしょうか。数年前までは、 柔らかく傷が付きやすいという理由から、床板としての利用は殆どありません でした。しかし近年では、自然派・本物志向・健康住宅の追い風を受け、急速 に販売数を増やしています。杉床材は、材内に含まれる空気量が多いために優 れた断熱性を示し、夏は涼しく、冬は暖かい所が最大の特徴です。また、硬さ が程よいため、素足で歩いた時の感触がとても良いのも特徴です。傷が付きや すいという特徴もありますが、その傷も家族と共に変化・風合いを増してきた 印となります。また、建築に使用する場合には、視覚効果や、調湿効果を大い に発揮できる部材と言えます。 「内装材」 につかう 杉は、昔から「化粧材」 として多くの部位に使われてきました。理由は木目の美し さにあります。長押、廻縁、鴨居、天井板など、どれも木目を楽しむものであり、 はっきりと描かれるその木目に木の良さを実感する事が出来ます。現在、杉の化 粧材の用途として最も流通しているのは、非常に加工しやすいという特徴もあり、 羽目板等の実加工されたもので、様々な形状のものが流通しています。また、他の 材よりも、 心材 (赤身) と辺材 (白太) の色がはっきりとしており、 使い分けによって様々 な表情を見せる事も出来ます。心材(赤身) は、比較的耐久性が必要な部位に用 いられ、一方、辺材(白太) は圧迫感が少ないことなどから、比較的広くない部 屋に用いられることが多くあります。さらに源氏と平家の赤と白の戦いにちなんで、 「源平」 という呼び方で、2色の絶妙なバランスを楽しむ事もできます。 PAGE ● 10 性能 SEINOU p e r f o r m a n c e 1 杉を知って杉を活かす。知っておきたいポイント… 木材が持つ性能 杉は断熱性能に優れている 柾目取り 断熱材の性能は、 アルミニウム板180.00W/mk、花崗岩 0.93W/mk、 針葉樹合板 0.12W/mk、 スギ0.07 W/mk、 発泡ポリスチレン0.03W/mkです。これを見ると、スギの 断熱性が高いことがわかります。木材が持つ調湿機能 については、絨毯やカーペットと木質系フローリングを 比較するとダニの発生率は 5:1で木質フローリングが 少ないと言われています。木材が持つ調湿効果で高湿 木材を使うことで重要なことが4点あります。二酸化炭 素吸収の効果、省エネ効果、炭素貯蔵効果、化石燃 料抑制効果です。森林のCO2 吸収能力は、成長期の 森林が高く、間伐するとさらに高まります。化石燃料を 板目取り 環境になりません。 もとにする資材に比べ、製造時エネルギー消費量が少 心材 (赤身) 辺材 (白太) 移行材 (白線帯) 樹皮 なく環境負荷が少なくなります。木材は、二酸化炭素を 長期に貯蔵固定することができ、木造の建物内で固定 化している間に新たに植林した森で二酸化炭素の固 定を始めることができる資材です。石油、石炭の化石燃 料を木材資材に置き換えると、化石燃料の抑制になり ます。木材をエネルギーとするとCO2 を排出しますが、 そのCO2を森林が吸収することで全体的にはCO2 の増加を抑制できます。木材資源は多様な可能性を 持っています。 木 口 まさ目 板 目 スギ材は産地によって 材質に差があるのか 日光地区のスギは艶・色・木目は 美しくスギ材の平均強度も強い どの樹種でも天候、地質、生育環境、森林管理 などで個々の材料として性質は異なりますが、 産地別に分けて曲げヤング係数と曲げ 強度の 関係を調べてみると出現範囲は産地によって 多少の誤差はありますが回帰直線は殆ど一致 しています。この結果は木材を産地で区別する のではなく、機械等級区分や目視等級区分で仕 分けすることが重要と思います。 PAGE ● 11 強度 U s t r e n g t h KYODO 2 杉を知って杉を活かす。知っておきたいポイント… 木材の割れと強度関係 表面の干割は強度低下に結びつかない 心持ち材の表面の割れは、年輪に沿った向き材に対し直交する向きではおおよそ 干割部分 2:1の細胞配列になっています。材の乾燥により収縮率の違いが発生し材表面に 割れを誘発します。 乾燥材スギ心持ち正角材の材面に出る繊維に沿った干割について、力学的性能 試験結果では干割れ指数と曲げ強度、 ヤング率とも相関関係は認められていません。 繊維方向に作用する曲げ、引張り、圧縮各強度の低下要因に当たらないと考えてよ いと思います。 横架材の割れの長さの大きさについて、JAS 規格では目視等級区分構造用製材の 規格 3 級と機械等級区分構造用製材の規格の場合、貫通割れ木口は木口の長辺 の寸法の2.0 倍以下であること。貫通割れ材面材長の1/3 以下であることが材の 条件になっています。これ以上の割れが生じた場合、部材の強度の低下が考えら れます。 木材の強さの区別 目視等級区分3段階と機械等級区分6等級区分 日本農林規格 JAS の目視等級区分法と機械等級区分法で材を規定しています。 目視等級区分法は外観的に確認する方法。指標としては節、丸身、貫通割れ、 目まわり、繊維傾斜、平均年輪齢、腐朽、曲りなどを示します。甲種構造材(曲 げ引張応力を受ける材) 、乙種構造材(圧縮応力を受ける材) ごとに1∼3級の3段 階に区分します。また機械等級区分法は実物大の試験結果をもとに強度と材種指 標の関係をもとめ、ヤング係数を非破壊測定で強度を推定して等級を区分する方 法。ヤング係数3.9kN/mm2以上を6等級に区分。E50、E70などで表します。 2005年に栃木県林業センターにて、民間では第一号となる、栃木県産材 (鹿沼市 粟野産材) の杉大桁 (梁材)実物大強度破壊試験を実施いたしました。 試験調査の内容は、 AD材・KD材のヤング率・最大破壊強度、 未成熟材の分布量と 強度の関係、芯付材と芯去材の強度比較、1本の木を3m毎に玉切りした場合の 強度比較、破壊痕からの検証、等を行いました。 ●建物に加わる応力 ●燃えしろ設計 建物に加わる応力は 「鉛直方向(固定荷重と積載荷重) 」 と 「水平方向 (風圧 燃えしろ設計とは、 火災のとき燃えるだろう寸法を構造耐力上必要な断面 力と地震力) 」 の2種類に分けられます。固定荷重は建物本体の重さ、積載 に付加して安全性を確保する設計法。 燃えしろ設計できる材料は日本農 荷重は人や家具など移動する荷重や積雪荷重などが鉛直方向の荷重として 林規格 ( JAS) による構造材に限られています。大規模木造建築物の場 建物にかかります。また台風の風や地震時の揺れが水平方向の荷重として 合、集成材・LVLは25mm、製材は30mmの燃えしろ部が必要で、準耐 建物にかかります。建物が安全に建て続けるためには、鉛直方向の荷重を支 火構造建物の場合、 集成材・LVLは35mm、 製材は45mmの燃えしろ部 える柱や梁のサイズ、配置が重要であり、水平方向の荷重を支える壁に配置 が必要になります。 する筋違、 剛性壁のバランスも重要です。 PAGE ● 12 乾燥 e v a p o r a t e 3 杉を知って杉を活かす。知っておきたいポイント… なぜ乾燥が必要か? 杉(スギ)の含水率(木の中に含まれている水分の比率)は立木(伐る前の 立っている状態)の状態で40%から100%以上、特に杉は他の樹種に比 べ個体差が大きく200%から300%を超える杉もあります。 製材された直後の水分を多く含んだ「製材品」の事をGR材(グリーン材) と言います。GR材は木材中に沢山の水分を含んでいる状態なので、カ ビや腐朽菌が発生・増殖する原因となることや、乾燥が進むことで木材 中の水分の減少と共に変形や収縮を起こします。使用する用途にもより ますが、建築部材などに使用する場合は、耐久性や精度に大きく影響す る事が考えられます。 そこで必要となるのが「乾燥」です。 使用する前に、乾燥し木材中の水分量を減らすことにより、その後の変 形収縮を抑えられたり、力学的な性能(ヤング係数)などが向上します。 含水率って? 伐りたての木材 「生材」 木材そのものの重さ 「全乾重量」 1kg 含水率 100% 1kg 含水率 150% 含水率 50% 1kg 1.5kg 2.5kg 1kg 仮道管 水分 2kg 繊維飽和点 杉は仮道管(かどうかん)とよばれる「管(くだ)」が構成割合の約90%を占 めています。この仮道管の中に含まれる水分を「自由水」といいます。自由 水が全て抜けきった状態を「繊維飽和点」といいます。繊維飽和点になる と概ね含水率は30%になり、その壁の部分「細胞壁」と強く結びついた 水分「結合水」が残ります。自由水に続き、結合水が抜け始めると水分の 減少と共に細胞壁の収縮が始まります。 含まれている 0.5kg 1.5kg 自由水 平衡含水率とは? 結合水 繊維飽和点 木材は繊維飽和点以下に水分が減少すると変形収縮を起こし始めるこ とから概ね乾燥材としての分類としては含水率が25%以下のものをさし ますが乾燥の目安として建築における骨組み材の「構造材」は20%以下、 化粧材として使用する「造作材」は15%以下を大凡の目安としています。 自然大気中に放置しておくと外部空気の温湿度状態とつりあって安定します。 この時の含水率が「平衡含水率(気乾含水率) 」といいます。 水分の吸湿・放湿 木材の平衡含水率 1 5% ヒステリシス 構造材 PAGE ● 13 造作材 平衡含水率以下に人工乾燥で水分を下げた材は、 自然に乾燥した材よりも 常に低い平衡含水率になります。 これを水分のヒステリシス (履歴現象) といいます。 KANSO 乾燥の種類 人工乾燥 自然 (天然) 乾燥 KD材 Kiln-Dry AD材 Air-Dry 窯 (かま) で乾かす 空気・風で乾かす ●蒸気式乾燥 ●高周波乾燥 ●減圧乾燥 ●低温除湿乾燥 ●燻煙乾燥 など KD材 AD材 乾燥方法と用途 (蒸気式の場合) 高 温 中・低温 ハイブリッド 構造材 構造材・羽柄材・造作材 高温乾燥材について学ぼう! 高温乾燥と天然乾燥の違い 蒸気式乾燥方法 メリット 一旦ドライングセットが 形成されてしまえば… ●表面に割れが生じない ●寸法安定性が高くなる 木材が柔らかくなる 高 温 ドライングセット 軟化点70度以上で蒸煮 (通常は90度以上) 天 然 デメリット ・色:変色する ・背割などがいらない ・香:酸化する ・寸法安定性が高い ・手加工しにくい ・内部割れ 引張り応力が緩和 天 然 120度程度の熱で 表面を乾燥させる ドライングセット が形成される 木材は水分と熱を同時に作用 軟らかくなる (軟化する) 性質 ▲焦げ茶色のシミ ・色:自然色 ・香:自然香 ・表面に大きな割れ ・寸法変化が起きる ・手加工しやすい タンニン等の着色成分 「どんな家を建てるのか?」「その家に何を求めるのか?」「何を重視しているのか?」 「手刻みかプレカットか?」 「どの部材として使うのか?」 用途と建築方法によって 事が最も大切 「乾燥方法を選択する」 木材の人工乾燥技術は未だ発展途上中。 現代の建築に適した乾燥方法は何か? 天然が全てにおいて最高か? 人工乾燥は悪いのか? その特性を知って選択する事が重要。 PAGE ● 14 J a p a n e s e MOKURYUKEN c e d a r ( C r y p t o m e r i a 日光地区木材流通研究会メンバー ●大貫林業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大貫 剛久[林 業] ●神山林業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神山 和久[林 業] ● (有) 高見林業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・齋藤 正[林 業] ●Forester K.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金子 裕美[林 業] ● (株)鹿沼原木市場・・・・・・・・・・・・・・・・・・熊倉 理裕[原木市場] ● (有)田村材木店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田村 文宏[製 材 業] ● (有)西村材木店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・西村 交平[製 材 業] ● (有) モード設計事務所・・・・・・・・・・・・石川 昭男[建築設計] 日 光 地 区 木 材 流 通 研 究 会 相 談 役 /大金 重秀 日光地区木材流通研究会アドバイザー/塩田 敦史 お問い合わせは下記アドレスまで http://mokuryuken. jp j a p o n i c a )