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メンフクロウの音源定位機構のハードウェアモデル
平成 21 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号:3 メンフクロウの音源定位機構のハードウェアモデル A Study on a Hardware Model of Sound Source Localization Mechanism in Barn Owl 櫻井 翼*1 Tsubasa SAKURAI*1 渡邊 美希*2 関根 好文*1 *2 Miki WATANABE Yoshifumi SEKINE*1 *1 *1 日本大学理工学部 College of Science & Technology, Nihon University *2 *2 日本大学大学院理工学研究科 Graduate School of Science & Technology, Nihon University 1. まえがき メンフクロウは音源の場所を特定する音源定位能 力が非常に優れており,左右方向,上下方向で音源 定位を行うことができる[1].音源定位を行う際に, メンフクロウの脳内では,両耳到達時間差 (Interaural Time Difference 以下,ITD)と両耳到達音圧差 (Inter-aural Level Difference 以下,ILD)が別々の経路 で処理され,ITD は左右方向を,ILD は上下方向の 位置を定位することができる[2]. 我々はメンフクロウの音源定位機構を工学的に応 用することを目的に検討を行っている.工学的な応 用例としては,ヒューマノイドロボットが周囲の環 境を把握するための装置,及び聴覚障害者のための 補助装置が挙げられる. 本稿では,先に提案されているパルス形ハードウ ェアニューロンモデル(Pulse-type Hardware Neuron Model 以下,P-HNM)[3]を用いて,左右方向の位置 を定位できる ITD のハードウェアモデルについて 検討を行ったので報告する. 2. 本論 メンフクロウの音源定位機構 ITD を検出する経 路は,大細胞核を通り,層状核へと伝えられる.大 細胞核は遅延線として働き,層状核は位相同期した 神経発火のみに反応する性質があることから一致検 出器として働いており,時間差に応じた場所でパル スを発生する. 図 1 に,今回検討を行った ITD モデルの概略図 を示す.図中,Left input,Right input は,入力端子 を示し,パルス変換した音声信号を入力させる.ま た,○は P-HNM で構成した一致検出細胞体モデル Ci を示しており,添え字 i は,左側から順に配置し た N 個の一致検出細胞体モデルの i 番目を示す.□ は遅延線として働く P-HNM の軸索モデル AL,Ri を 示し,添え字 L,R は,Left input 側,Right input 側 を示す.更に,軸索モデルの各出力から一致検出細 胞体モデルへは,矢印で示す P-HNM のシナプスモ デルにより接続する構成とした。同図は,Left input, Right input からパルスが入力されると,それぞれの 軸索モデルを遅延しながら順次伝搬し,一致検出細 胞体モデルに逐次入力する.また,N 個配置した一 致検出細胞体モデルは,1 つのパルス入力では発火 せず,2 つのパルスが同時に入力した場合のみ発火 する.本モデルは,一致検出細胞体モデルの発火し た位置により,到達時間差を検出することができる. 図 2 に,図 1 の Left input 側の入力時間を固定し, Right input 側の入力時間を遅らせた場合の Ci の発火 位置特性を示す.図中,縦軸は一致検出細胞体モデ ル Ci の番号を示し,横軸は Left input と Right input の入力時間差を示す.今回一例として,一致検出細 -3- 胞体モデル数 N=15 の場合を示す.また,中心位置 は 8 番目の Ci であり,軸索モデル AL,R それぞれの 最大遅延時間は約 3.3[us]とした.同図は,時間差 を長くした場合,図 1 の ITD モデルの検出位置が 中心位置から右側に推移していることを示している. したがって,発火した Ci で時間差の検出ができる ことを示している. AL1 AL2 ALi ALN Left input C1 C2 Ci CN Right input ARN ARN-1 図1 ARN+1-i AR1 ITD モデルの概略図 15 14 13 Number of C i A-1 12 11 10 9 8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 Time difference [us] 図 2 発火位置特性 3. まとめ 今回,P-HNM を用いてメンフクロウの音源定位 機構 ITD のハードウェア化を行い,入力時間差を 与えた場合の発火位置特性について検討を行った. その結果,入力時間差に応じて,一致検出細胞体モ デルの位置が推移しており,発火した位置で時間差 の検出ができることを明らかにした. 今後,検出した位置による音源位置の精度に対す る検討を行うと共に,上下方向の位置を定位する ILD モデルの構築を行う予定である. 参考文献 [1] 小西正一,“メンフクロウの両耳による聴覚情報処理”, 日経サイエンス,Vol.23,No.6 pp.90-99(1993). [2] 小黒亮平,関根好文,“メンフクロウの音源定位機構の ハードウェアによるモデル化”,電気学会電子回路研 究会資料,ECT-06 pp.25-30(2006). [3] 関根好文,隅山正巳,佐伯勝敏,合原一幸,“エンハ ンスメント型 MOSFET によるΛ形ニューロンモデル”, Vol. J84-C, No. 10, pp988-994(2001). Copyright © 2010 IEICE