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大学における学部学生の留学促進 - 独立行政法人日本学生支援機構

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大学における学部学生の留学促進 - 独立行政法人日本学生支援機構
ウェブマガジン『留学交流』2011年5月号 Vol.2
大学における学部学生の留学促進
京都大学国際交流センター准教授
河合 淳子
J u n k o K a wa i
1. 大 学 間 交 流 協 定 等 に よ る 学 部 留 学
O E C D等 の 統 計 に よ る と , 日 本 か ら 海 外 へ 送 り 出 さ れ る 学 生 の 年 間 総 数 は , 2 00 4 年 の
約 8 3, 0 00人 を ピ ー ク に 年 々 減 り ,2 0 08年 に は 約 67 , 0 00 人 に な っ て い る 。少 子 化 に 加 え ,
高等教育機会が自国である程度提供される日本において,今後海外の高等教育機関に
留学しようとする学生が大幅に自然増加するとは考えにくい。一方,日本国内の大学
等と諸外国の大学等との学生交流に関する協定等(以下,大学間協定等)に基づき,
日 本 の 大 学 か ら 海 外 へ 送 り 出 さ れ る 学 生 の 数 は 1 8, 5 70人( 20 0 4年 )か ら 2 4, 50 8 人 ( 2 0 0 8
年 )へ と 徐 々 に 増 加 し て き て い る 。こ れ ら の 統 計 が 我 々 に 示 し て い る こ と は ,日 本 の 大
学生の海外留学を推進しようとするならば,自然発生ではなく人為的に送り出す必要
があるということである。
大学間協定等を利用して留学する学生数は増加してきてはいるが,大学生全体に占
めるその割合は未だ非常に小さい。大学間交流協定等を利用して留学する学生の多く
が 学 部 学 生 で あ る こ と を 踏 ま え て 算 出 す る と , 前 述 の 20 0 8年 度 の 2 4 , 50 8人 と い う 実 績
は ,20 0 8年 度 に 日 本 国 内 の 大 学 に 在 籍 し た 学 部 学 生 総 数 の 約 1 % に 過 ぎ な い 。大 学 間 交
流協定等を利用して留学する学生には大学院生も多少含まれるので,その値を差し引
くと割合は一層低くなる
1
。 他 の 先 進 国 と 比 べ て も こ の 値 は 低 い 。 例 え ば , 1 98 7年 に
E C( ヨ ー ロ ッ パ 共 同 体 )で 開 始 さ れ た エ ラ ス ム ス 計 画 は ,加 盟 国 内 の 高 等 教 育 人 口 6 5 0
万 人 ( 当 時 ) の 10% を 交 換 留 学 さ せ る 目 標 を 掲 げ て い た 。 現 在 , ハ ー バ ー ド 大 学 で は
学 部 学 生 の 約 9% が 在 学 中 に 一 度 は 留 学 を 経 験 す る と み ら れ る
2
。
ま た , 学 生 の 留 学 先 に は 偏 り が 見 ら れ る 。 表 1は 2 00 8年 度 に 大 学 間 協 定 等 を 利 用 し
て 日 本 の 大 学 か ら 留 学 し た 学 生 の 数 , 表 2 は 協 定 締 結 件 数 の 上 位 5か 国 を 記 し た も の で
あ る 。ま ず ,派 遣 人 数 は ア メ リ カ が 6, 4 0 3人 で 26 . 1% を 占 め ,以 下 オ ー ス ト ラ リ ア ,イ
ギ リ ス ,カ ナ ダ ,中 国 と 続 く 。締 結 件 数 で は ,中 国 が 2 , 9 73 件 で 2 0 . 0% ,以 下 ア メ リ カ ,
韓 国 , イ ギ リ ス , フ ラ ン ス と な っ て い る 。 表 1, 2を 合 わ せ て み る と , 日 本 か ら 送 り 出
す学生数が協定件数を上回る相手国(アメリカ,イギリスなど)と,逆に下回る相手
国(中国)があることが分かる。後者は,学生を送り出す貴重な機会である派遣枠が
「余っている」状況であると考えられる。
改めて指摘するまでもなく,学生の海外留学を支援し,国際性豊かな人材を育成す
ることは,外国人留学生の受入れ促進・体制整備と並んで,近年,わが国の高等教育
における課題の一つとして認識されており,各高等教育機関においても様々な海外留
学促進策が展開されている
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。しかし,当の学生たちが留学や国際交流に対してどの
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ような意識を持っているかについては,未だ十分に検討されているとは言えない。国
際交流に熱心な学生だけでなく,そうでない学生も併せて,何が彼らの留学への行動
を起こさせる要因となり,何が阻害要因となるのか等について,学生自身の意識や行
動についての知見を蓄積していくことが,今後の議論の為には不可欠であろう。
本稿では,京都大学(以下,京大)国際交流センターが定期的に実施している日本
人 学 生 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト・イ ン タ ビ ュ ー 調 査
4
及 び 2010 年 に 中 国 の 浙 江 大 学 で
実 施 し た 調 査 ( 河 合 ・ 韓 ・ 孔 20 1 1, pp . 1 0- 1 2) の 結 果 を 事 例 と し て 紹 介 し な が ら , 留
学に対する学生の,特に学部学生の意識と行動を考察していくことにしたい。京都大
学の学生(以下,京大生)の状況を日本の大学生に一般化することはできないが,示
唆に富んだ一つの事例と考えられよう。
< 表 1>
< 表 2>
平 成 2 0年 度 ( 2 0 08年 度 ) 協 定 等 に 基 づ く
大学間交流協定の締結相手国
日本人学生留学状況
件 数 上 位 5か 国
(人数)
(件数)
アメリカ合衆国
6 , 4 03
2 6 . 1%
中国
2 , 9 73
2 0 . 0%
オーストラリア
2 , 8 64
1 1 . 7%
アメリカ合衆国
2 , 1 83
1 4 . 7%
イギリス
2 , 4 59
1 0 . 0%
韓国
1 , 6 59
1 1 . 2%
カナダ
2 , 3 95
9.8%
イギリス
712
4.8%
中国
2 , 1 54
8.8%
フランス
653
4.4%
韓国
1 , 7 45
7.1%
その他
6 , 6 87
4 5 . 0%
フランス
991
4.0%
合計
1 4 , 86 7
1 0 0 .0 %
ドイツ
888
3.6%
ニュージーランド
861
3.5%
タイ
498
2.0%
3 , 2 50
1 3 . 3%
2 4 , 50 8
1 0 0 .0 %
その他
合計
参照:
< 表 1> 日 本 学 生 支 援 機 構 ( JASS0)ウ ェ ブ サ イ ト
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data09_s.html#no1 (Retrieved 2011/04/01)
< 表 2> 平 成 22年 度 留 学 生 交 流 研 究 協 議 会
文部科学省配布資料
http://www.jasso.go.jp/gakusei_plan/documents/shiryou01_22ryukyo.pdf
(Retrieved 2011/04/01)
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2. 学 生 対 象 調 査 の 結 果 1: 『 積 極 層 』 の 留 学 実 現 を 阻 む 要 因
こ の 調 査 は , 京 大 国 際 交 流 セ ン タ ー で 2 00 2年 か ら 3 年 毎 に 実 施 さ れ て い る も の で あ
る 。 今 年 度 ( 2 0 11年 度 ) は 第 4回 調 査 の 実 施 年 に あ た る が , ま だ 準 備 段 階 で あ る の で ,
本 稿 で は 20 0 8年 度 に 実 施 し た 第 3回 調 査( 以 下 ,「 京 大 2 0 08年 度 調 査 」)の 結 果 を 用 い
る 。 比 較 の た め に 20 1 0年 に , 中 国 の 浙 江 大 学 の 協 力 を 得 て , 同 大 学 に お い て 同 様 の 調
査を実施した。浙江大学は京大と大学間学生交流協定を結んでおり,中国の研究重視
の総合大学である。各学部の学生数に応じてアンケート総数を配分し,学生の専攻に
よる偏りが出ないように配布した。日中ともに,ほぼ同様の方法を用いて調査を行っ
た 。回 収 の 状 況 は ,京 大 で 5 1 1部 回 収( 83 0部 配 布 ),全 学 生 の 約 2 .2 % ,浙 江 大 学 で 4 17
部 回 収 ( 43 4 部 配 布 ) , 全 学 生 の 1 . 0% で あ る 。 質 問 は , 性 別 , 年 齢 , 専 攻 , 学 年 , 外
国語能力の自己評価,世帯収入,幼児期の文化体験,過去の海外経験,留学希望の詳
細などについてである
5
。 イ ン タ ビ ュ ー は 京 大 に お い て の み 1 6名 に 対 し て 行 っ た 。
( 1) 意 外 に 多 い 『 積 極 層 』
さ て ,我 々 の 調 査 で は ,学 生 の 留 学 志 向 を 把 握 す る た め に ,『 留 学 志 向 の 三 層 』( 近
森 2 00 6 ,p .4 4)と い う 枠 組 み を 一 貫 し て 用 い て き た 。こ れ は ,「 留 学 し た い と 思 っ た こ
..
とがあるか否か」という意識だけでなく,「留学に向けて準備(情報収集)を始めて
..
い る か 否 か 」と い う 行 動 を 考 慮 し ,学 生 の 留 学 に 対 す る 志 向 を 3 つ の グ ル ー プ に 分 け る
ものである。「留学してみたいと思ったことがあり」且つ「情報収集もしている」者
を 『 積 極 層 』 ,「 留 学 し て み た い と 思 っ た こ と が あ り 」 且 つ 「 情 報 収 集 を し て い な い 」
者を『浮動層』,そして「留学してみたいと思ったことがない」者を『消極層』と名
付けている。
図 1は , 学 部 学 生 に 対 象 を 絞 り , 日 中 の 2大 学 に つ い て 三 層 の 構 成 比 を 示 し た も の で
ある。
< 図 1> : 学 部 学 生 の 『 留 学 志 向 の 三 層 』
浙 江 大 学 学 部 生
( 2010年 度 調 査 n=325)
京都大学 学部生
( 2008年 度 調 査 n=349)
浮動層,
52.7%
既に留学が決定
している, 1.7%
積極層,
18.9%
実際に留学する
か否かは未定,
17.2%
消極層,
28.4%
浮動層,
25.5%
積極層,
46.5%
消極層,
28.0%
既に留学が決定
している,
26.8%
実際に留学する
か否かは未定,
19.7%
河 合 (2011),p.81を 参 考 に し , 学 部 学 生 の み を 取 り 出 し て 作 成 し た 。
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京大と浙江大学において,留学志向の三層の構成には歴然とした差異が見られる。
差異の背景にある日本と中国の留学を取り巻く異なる社会的な状況については,別稿
( 河 合・韓・孔 2 01 1)で 論 じ て い る の で 詳 し く は 述 べ な い が ,こ こ で 強 調 し た い の は ,
中国に比べ我が国では留学を後押しする社会的条件が乏しいにもかかわらず,京大生
の 7 0% 程 度 は 「 留 学 し た い 」 と い う 気 持 ち を 持 っ た こ と が あ り ( 積 極 層 18 . 9% + 浮 動
層 5 2. 7% ) , 特 に 18 . 9% は 自 ら 情 報 を 集 め て い る 積 極 層 で あ る と い う 点 で あ る 。 厳 密
な ラ ン ダ ム サ ン プ リ ン グ を 行 っ た わ け で は な い が , こ の 2 0% 弱 の 比 率 で 積 極 層 が 存 在
す る と 考 え る と , 全 学 部 学 生 の 数 は 13 , 5 00 人 程 度 ( 調 査 実 施 当 時 ) で あ る の で , 実 数
で は 2 , 00 0~ 3 ,0 0 0人 に な る 。 そ し て 別 の 質 問 で 留 学 希 望 時 期 に つ い て 尋 ね た 際 に は ,
学 部 学 生 の 3 0% が 「 学 部 在 籍 中 に 留 学 し た い 。 」 と 答 え て い る こ と が 明 ら か に な っ て
いる
6
の で , 「 学 部 在 籍 中 に 留 学 し た い と 考 え て い る 学 部 学 生 」 は 概 算 で 60 0 ~ 9 0 0人
も 存 在 し て い る こ と に な る 。 実 際 に 学 部 学 生 の 中 で 3か 月 以 上 の 留 学 を 実 現 す る 者 は ,
そ の 1 0 %に も 満 た な い 。留 学 の 促 進 を 図 ろ う と す る な ら ば ,ま ず は こ の 積 極 層 の 大 半 が ,
学部時代の留学を実現できていない原因を探るべきであろう。
( 2) 留 学 実 現 を 阻 む 要 因 ― カ リ キ ュ ラ ム , 単 位 交 換 , 外 国 語 運 用 能 力 , 就 職 活 動
自ら情報収集を始めている積極層のほとんどが学部留学を実現できない現実。そこ
には様々な要因が関与している。
<カリキュラムとの両立の難しさと単位交換の難しさ>
学生へのインタビューにおいて多くの指摘があったのは,学部教育のカリキュラム
と 留 学 の 両 立 の 難 し さ で あ る 。4年 間 の カ リ キ ュ ラ ム の ど の タ イ ミ ン グ で 留 学 を 入 れ ら
れるかは,学生にとって慎重な検討を要することである。検討の緻密さには個人差が
あるが,検討の結果,大抵の学生は「学部での留学は難しい」との判断に至る。制度
上 は 学 部 4年 間 の う ち に 1 学 期 ~ 1年 の 留 学 を す る こ と は 可 能 で あ る 。し か し ,様 々 な 制
約を克服することの難しさ,あるいは難しいであろうという先入観により学部留学を
避けるようになっていく。
ま た , 理 系 学 生 に と っ て は , 入 学 3年 目 に は 実 験 や 実 習 が カ リ キ ュ ラ ム に 組 み 込 ま
れている場合が多く,この時点では海外に出るのは非常に困難である。単位交換制度
の利用により何とかならないかと考えるが,ある学生は次のように指摘する。「日本
の大学の研究室に配属されるのだったら,そこの下でやっている授業を受けないとい
け な い と 思 い ま す ね 。留 学 し た ら ,多 少 は ,ず れ た こ と を や る こ と に な る と 思 う の で ,
とても留学する気にはなれないです(理系学部生)。」(下線筆者)この学生が端的
に述べているように,たとえ単位交換が可能であったとしても,わざわざ,海外の大
学での類似の科目に置き換えてまで留学しようとは思う者は少ないであろう。単位交
換が整備されていなければなおさらである。
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<外国語運用能力の低さ>
外国語運用能力は,実質的に留学の実現を左右する。大学間協定等に基づく交換留
学 制 度 で 留 学 す る 場 合 ,海 外 の 受 入 れ 校 か ら T O E F L i B T 7 9 点 以 上 な ど の 基 準 点 が 示 さ れ
る。特に英語に関しては,読み書き中心の受験英語をこなして入学してきた学生がこ
うした基準点に達するには相当の学習時間を要する。
ア ン ケ ー ト 結 果 に よ る と , 英 語 圏 へ の 留 学 を 希 望 す る 者 は 2 4 5名 で あ っ た が , そ の
中 で T O EF Lを 受 験 し た 経 験 を 持 つ 者 は 26 . 9% ( 66名 ) ,こ の う ち 英 語 圏 の 多 く の 大 学・大
学 院 で 基 準 と さ れ て い る 点 数 T OE F L iB T 7 9( C BT 21 3 , PB T 55 0) 以 上 を す で に 獲 得 し て い る
者 は 1 0% 程 度( 20 名 )に 過 ぎ な か っ た( 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー 20 09 , p p. 2 49 -2 5 0)。
外国語運用能力の不足・語学力への不安は多くの者が自覚しているが,この結果から
は,不安を持ちながら具体的な準備には入っていない者の多さを感じさせる。
留 学 経 験 者 の 多 く は , 入 学 2年 目 が 留 学 に 適 当 な 時 期 で あ る と 指 摘 し て い る 。 就 職
活 動 や 先 に 述 べ た カ リ キ ュ ラ ム 上 の 制 約 か ら 比 較 的 自 由 な , 大 学 入 学 後 1~ 2年 目 が 最
も 留 学 で き る 可 能 性 が 高 い 時 期 で あ る 。2 回 生 で 1 年 間 留 学 し た 場 合 ,3 回 生 の 夏 に 帰 国
することになり,昨今早期化の弊害が指摘される就職活動にもほとんど出遅れること
はない。しかし,大きな問題は,応募時期までに外国語運用能力強化が間に合わない
こ と で あ る 。 つ ま り 2年 目 に 出 発 す る に は , 1年 目 の 秋 に 学 内 選 考 に 応 募 す る こ と に な
る が ,そ の 時 点 で 語 学 力 が 基 準 に 達 し て い な い 場 合 が 多 い 。特 に ,2 0 0 6年 以 降 は T O E F L
にスピーキングが追加され,より時間をかけて入念な準備をしなければ高いスコアを
取ることが難しくなってきている。
<就職活動の早期化・長期化>
留学と就職活動の両立の難しさについても,学生の多くが指摘する。両立を考える
と い う よ り も ,む し ろ 就 職 活 動 が 始 ま る 3回 生 で の 留 学 は 念 頭 に な い と 言 っ た 方 が よ い 。
上 記 の よ う に , 入 学 2年 目 が 留 学 に 適 当 な 時 期 と い わ れ る の も , 3回 生 に 就 職 活 動 や 実
験 が あ る た め で ,「 2 回 生 で 留 学 で き な け れ ば 学 部 留 学 は 無 理 」と イ ン タ ビ ュ ー し た ほ
ぼ全員が答えている。就職活動の早期化・長期化は,学生が留学時期を検討する際の
選択肢を確実に狭めている。また,「留学のメリットをどう評価するか」について,
就 職 に 関 し て は , 役 に 立 つ 33 . 3% , あ る 程 度 役 に 立 つ 47 .0 % で 低 め の 評 価 で あ る ( 河
合 ・ 韓 ・ 孔 20 1 1, p. 1 5) 。
3.
学 生 対 象 調 査 の 結 果 2: 『 浮 動 層 』 の 存 在 か ら み る 留 学 促 進 策
( 1) 目 立 つ 『 浮 動 層 』
前 出 の 図 1か ら 読 み 取 れ る 特 徴 と し て , も う 一 点 指 摘 し た い の は , 浮 動 層 の 大 き さ
で あ る 。 こ の よ う に 浮 動 層 が 過 半 数 を 占 め る 傾 向 は 第 1回 調 査 か ら 第 3 回 調 査 ま で , ほ
ぼ一貫している。つまり,「留学してみたいと思ったことはあるが,実際の行動はほ
とんど何もしていない」学生の多さが京大生に見られる特徴と言ってよいであろう。
中 国 の 浙 江 大 学 に お け る 浮 動 層 の 割 合 は 京 大 の 約 半 分 の 2 5. 5% で あ る 。
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繰り返しになるが,浮動層と積極層は,自ら留学に向けた「行動」を起こしている
かどうかの違いである。自ら行動を起こしている学生一人一人の具体的な動機を探る
のは困難であるが,浮動層と積極層に属する学生の特徴とその差異を明らかにするこ
とによって,浮動層が積極層に転じうる状況を整えることは可能である。積極層が増
えれば,前述した留学実現を阻む要因を自力で克服して留学を実現する者も増えてい
くことが期待できる。
学生の外国語運用能力,属性,過去の海外経験,家庭的背景など様々な要因につい
て,「積極層」「浮動層」「消極層」の学生の間に差が見られるかを検討してみた。
分 析 結 果 を 簡 潔 に ま と め た の が 表 3で あ る 。
< 表 3>
留 学 志 向 と 各 要 因 の 関 係 ( 「 京 大 20 08 年 度 調 査 ) 」 に よ る )
留学志向との親和性が高い要因
留学志向との親和性が低い要因
日常的外国語能力の自己評価(四技能)
専門的外国語能力の自己評価(話す力)
過去の留学経験
留学生からの影響の感受性
幼児期の間接的文化経験(本を読んでもらっ
た頻度)
-
専門的外国語能力の自己評価(話す力以外)
過去の旅行経験
幼児期の直接的文化経験(外国人や外国メ
ディアに触れた頻度)
留学のメリットをどう評価するか
性別
文系か理系か
出身地域
世帯収入
両親の留学経験
河 合 (2011),p84を 参 考 に , 学 部 生 の み を 対 象 に 分 析 し た 。
表 3か ら , 1 ) 外 国 語 能 力 ( 特 に 話 す 力 ) の 自 己 評 価 , 2) 過 去 の 留 学 経 験 , 3) 留 学
生 と の 相 互 作 用 か ら 受 け た 影 響 ,4)幼 児 期 文 化 体 験( 間 接 的 = 外 国 文 化 ,国 際 交 流 と
は直接の関連がないもの),が留学志向に関連することが見てとれる。つまりこれら
は,「より積極的な層への移行を促す要因」として,留学促進策を講じる際の根拠と
....
な る も の で あ る 。3)に 関 し て い え ば ,海 外 旅 行 に 行 っ た こ と が あ る か 否 か は 留 学 志 向
....
に関連しないが,何らかの留学経験(目的,滞在期間を問わない)がある者が留学に
よ り 積 極 的 な 層 に 多 い こ と が 明 ら か に な っ て い る 。ま た ,4)を 除 い た す べ て が ,大 学
の関わることができる「大学内要因」である。「大学内要因」の方が,大学の関われ
ない「大学外要因」よりも,留学志向と関連のある要因が多く,大学の取組み次第で
は海外留学促進が可能なことが示唆されている。
( 2) 学 部 留 学 の 促 進 に 向 け て
以上に示された「より積極的な層への移行を促す要因」を念頭に置きながら,学部
留学の促進に向けた方策について考えてみたい。
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<外国語運用能力の向上>
学 生 へ の イ ン タ ビ ュ ー に よ れ ば , 受 入 れ 先 の 大 学 ・大 学 院 が 示 す 語 学 力 の 基 準 点 と
いうのは,努力すれば到達できるレベルである。しかし,そのためには多大な努力と
時間を要する。そのことを認識していない学生が多い。少なくともその点を入学時か
ら学生に伝えることが必要である。そして,留学する学生を増やそうとするならば,
( a )入 学 後 の 半 年 か ら 一 年 の 間 に ,海 外 留 学 に 応 募 で き る 基 準 に 到 達 さ せ る 外 国 語 運 用
能 力 の 強 化 策 を 講 じ る か ,( b) 語 学 が 少 々 出 来 な く て も 送 り 出 せ る 状 況 を 作 る か ,と い
うことになる。
<短期留学プログラム,擬似留学プログラムの拡充>
全 体 を 通 し て 感 じ る こ と は , 学 生 は , 留 学 の 期 間 を 1年 程 度 と 想 定 し て い る こ と が
多いということである。学部留学についても同様である。実際には,半年間の留学は
可能であり,さらに短期のプログラムが登場してきている。むしろ世界では学期単位
で 動 く 留 学 生 が 増 え て い る 。1 学 期 間 と い う 期 間 が ,教 育 効 果 を 十 分 得 ら れ る 留 学 期 間
であるかどうかは別に議論が必要であるが,留学期間として半年を選択することが可
能であることを,学生に知らせることが必要であろう。
前述のように,日本の学部カリキュラムとの両立の難しさから留学をあきらめてい
る 学 生 が 多 い の で あ れ ば , 夏 休 み や 春 休 み な ど の 休 暇 期 間 に 実 施 す る 2週 間 ~ 1 か 月 程
度の渡航プログラムを開発し,提供することは効果的であろう。調査結果からは,期
間の長さによらず,過去に留学経験のある者は次の留学にも積極的であるという結果
が 出 て い る 。た と え 2 週 間 で あ っ て も ,初 回 の 留 学 を 様 々 な 形 で 提 供 す る こ と が 必 要 で
ある。
現在,東アジアの国々については,協定大学から受入れる交換留学生数が,日本か
らの派遣学生数を上回る傾向がある。このような場合,相手校のサマースクールやス
プリングスクールに日本側の学生を複数人受入れるよう依頼し,大学間協定等に基づ
く学費免除枠を設けるなどの交渉は十分可能であろう。
京都大学のような研究重視の総合大学では,大学院で欧米へ留学したいという希望
がやはり主流を占める。しかし考えてみれば,欧米の大学院では多くの東アジアの学
生たちが学んでいる。いずれ出会うであろう優秀な研究仲間と,比較的自由な学部時
代に知り合うこと,しかも相手の国に出かけて行ってアウェーで出会うことの意義は
計り知れない。このように将来へのつながりを意識した短期留学プログラムの開発が
重要である。
<外国人留学生との共学機会を充実させる>
興味深いことに,「学内の外国人留学生と知り合ったことがあるか。」という問い
に は 6 ~ 7割 の 学 生 が 留 学 生 と 知 り 合 っ た こ と が あ る と 回 答 し て い る 。 そ し て , こ の 留
学生と知り合う機会の有無そのものは,留学への積極性とほとんど関連していない。
す な わ ち ,多 く の 日 本 人 学 生 に と っ て は ,留 学 志 向 に よ ら ず 授 業 で 留 学 生 と 机 を 並 べ ,
同 じ 研 究 室 に 留 学 生 が 所 属 し て い る と い っ た 状 況 自 体 は 存 在 す る わ け で あ る 。し か し ,
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留学生との出会いを意識的に捉え,相互交流から影響を受けるか否か,そしてどのよ
う な 影 響 を 受 け る か は ,学 生 の 留 学 志 向 と 大 き く 関 連 し て い る( 河 合・野 口 20 1 0 ,p . 77 )。
留学生から影響を受けて留学に積極的になるのか,逆に元々留学に積極的だから留
学生の存在に多くの影響を受けるのか,詳しい過程は今回の調査からは不明である。
しかし,積極層では,海外留学への関心の高さが留学生から受ける影響の大きさにつ
ながり,また留学生から受ける刺激が留学や相互交流への関心を強化するといった循
環が見られる。一方,浮動層にはその循環が存在しない。留学生数が単に増加するだ
け で は ,3割 の 消 極 層 は も ち ろ ん 過 半 数 を 超 え る 浮 動 層 に 属 す る 日 本 人 学 生 と 留 学 生 と
の間に,双方向の交流を自然発生的に生むことは難しい。従って,異なる文化的背景
を持つ学生が共学することのメリットを生かし教室内で実質的な知的交流を生む仕組
みの構築,例えば文化的背景が異なる学生集団を対象とする場合に特化した授業方法
やカリキュラムの開発を進めることが必要である。
<人的資源の活用―留学経験者と希望者をつなぐ>
学部留学の実現を阻む要因については前述したが,こうした要因の影響の強弱は,
個々の学生によって異なる。文系か理系か,どのような専攻であるか,所属する研究
室の雰囲気等々によって,状況は多様である。そのような時,留学希望者と近い状況
に置かれながら,留学を実現した者の経験談は大きな説得力を持つ。事実,アンケー
トの自由記述,インタビューでは,留学経験者の話を聞きたいという意見が多い。ま
た留学経験者の側も,自分の経験を役立てたいという気持ちを持っている者が多い。
交換留学経験者の同窓会サークルが設立されるなど,自発的な動きが出てきている
が,大学としてもそうした動きを支援していくべきであろう。
4. 結 び : 学 部 留 学 の 動 機 の 喚 起 に 向 け て
留学希望先
7
や留学希望期間
8
,そ し て 留 学 の 目 的( 表 4)に つ い て ,学 部 学 生 の 回
答を検討すると,学部学生の過半数が求める留学像は,「留学先は欧米へ,留学期間
は 1年 前 後 , そ し て ,『 専 門 分 野 で の 研 究 』 か 『 語 学 力 の 向 上 』 を 目 指 し た 留 学 」 で あ
る。
< 表 4>
留学の目的(文系理系別)
ど う い う 目 的 で 留 学 し た い で す か ( 第 1の 目 的 )
学部生
専門分野での
語学力を
海外を
見聞を
異文化交流
勉 強 ・研 究
高めたい
経験したい
広げたい
合計
文系
n=99
35.4
45.5
8.1
6.1
5.1
100.0%
理系
n=151
53.0
28.5
7.3
8.6
2.6
100.0%
全体
n=250
46.0
35.2
7.6
7.6
3.6
100.0%
京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー ( 2009) ,p.106
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また,「留学のメリットをどう評価するか」については,今後の研究活動,就職,
国 際 的 視 野 ,語 学 力 ,人 的 ネ ッ ト ワ ー ク の 拡 大 ,母 国 の 国 際 交 流 へ の 貢 献 ,の 6 項 目 に
ついて尋ねたが,研究活動,国際的視野,語学力,人的ネットワークの拡大,につい
て は ,9割 以 上 が 留 学 が「 役 に 立 つ 」ま た は「 あ る 程 度 役 に 立 つ 」と 肯 定 的 に 答 え て い
る が , 就 職 に つ い て は 8割 に 止 ま り , 「 母 国 の 国 際 交 流 へ の 貢 献 」 に つ い て は 6割 程 度
で あ っ た 。 一 方 , 中 国 の 浙 江 大 学 の 学 生 は , 89 . 8% の 学 生 が 「 ( 自 分 が 留 学 す れ ば )
母 国 の 国 際 交 流 に も 役 に 立 つ 」 と 回 答 し て お り , 京 大 の 6 3. 4% と の 差 は 統 計 的 に も 有
意 で あ っ た (χ 2 =4 8. 2 8 , p < 0. 00 1 ) 。留 学 と い う も の が ,京 大 生 に と っ て は 自 分 自 身 の 興
味・関心に基づく個人のための経験としてイメージされている
9
。しかし,留学の目
的が個人的経験の範囲にとどまっている間は,「留学」という形態をとらなくても海
外へ出ていくことが可能な現代において,留学を促進することには限界がある。とは
いえ,国のため,社会のために役立つ留学をしなさいと言われても実感に乏しいであ
ろう。
ここで少し見方を変えるために,学部留学経験者へのインタビューを見てみたい。
学部留学経験者が次のように留学動機を語った。
「大学院生やポスドクになってからだと,仕事的な感じになりますよね。付き合う
人というのも,かなり限られてくると思ったんですよね。それに早いうちに行かない
と,後になればなるほど,専門分野の知識があることが前提条件になりますよね。そ
ういう状況だと,ビジネス的な付き合いになりがちかなというのがありました。ゼロ
の 状 態 で ,い ろ ん な 友 達 を 作 っ て ,自 由 に 勉 強 で き る の は 大 学 時 代 ま で と 感 じ た の で ,
早 め に 行 き た い , 学 部 時 代 に , と 思 い ま し た ( 理 系 院 生 , 学 部 留 学 経 験 者 )。 」
「友達にすごく日本語のうまい外国人がいて,日本語の授業を受けていたんです。
それを見て,すごいなと思って。よく考えたら,自分も留学して自分の専門をやるこ
とができるかもしれないと思い始めた時に,交換留学制度が目に付いたんです。それ
に,自分が日本人や日本を分かってない,むしろ,留学生の友達に日本をもう一回思
い出させてもらったみたいなところがあって。自分は日本人というアイデンティティ
があるのかと自問してみても,これまでそんなこと考えてもいなかったので。このま
ま で は い け な い と 4回 生 で 留 学 を 決 意 し ま し た( 理 系 学 部 生 ,学 部 留 学 経 験 者 )。」 1 0
(下線筆者)
前者の学生は,「いろんな友達を作って,自由に勉強できるから」学部留学を選ん
だと主張している。また,後者の学生は,専門分野での勉強・研究が可能であること
に 加 え ,様 々 な 人 と の 出 会 い や ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 見 つ め 直 す 機 会 を 得 ら れ る と 思 い ,
学部4回生での留学を決意したと述べていた。出会いがあって,人生経験が積めて,
自 己 と 日 本 を 外 か ら 見 つ め 直 し ,比 較 的 自 由 な 時 間 に 恵 ま れ ,且 つ 専 門 分 野 で の 勉 強 ・
研究も可能というところに学部留学の魅力を見出している。このように彼らの語る留
学 の 動 機 は 身 近 で あ り な が ら ,個 人 の た め だ け の 経 験 に 留 ま ら な い 意 義 を 含 ん で い る 。
そして動機を語る語彙の豊富さが感じられる。
社 会 学 者 の C .W .ミ ル ズ ( 1 91 6- 1 9 62 )は , 人 々 が 行 動 の 動 機 を 問 わ れ た 時 に 用 い る 語
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彙 ,「 動 機 の 語 彙( Vo c a bu l ar ie s o f m ot iv e )」に 注 目 し ,次 の よ う に 述 べ て い る 。「 動
機は,ある行為の原動力となる内的状態というよりは,人々が自己および他者の行為
を 解 釈 し , 説 明 す る た め に 用 い る 『 類 型 的 な 語 彙 ( Ty pi c a l v oc ab u l ar i es) 』 で あ る
( M il l s1 94 0 , 作 田 ・ 井 上 編 19 9 1 ,p . 30) 」 。 つ ま り ミ ル ズ に し た が え ば , 例 え ば 留 学
の動機を問われて説明する際,我々は自分の心の内がどうだったかというより,相手
が納得する言葉を用いて,自分の行動の動機を説明しようとするというわけである。
しかし,ミルズは,内的な原動力を否定しているわけではない。個人は,他者とのや
り取りを通して動機の語彙を学び,その語彙は「われわれの行動の構成要素」ともな
る と 述 べ て い る ( C. W . Mi l ls 19 4 0 ,田 中 訳 1 97 1 ,p .3 5 0) 。 す な わ ち , 留 学 の 動 機 を 語 る
語彙が社会の中で豊富になってくれば,個人はその語彙に触れ,身につける機会が増
し,それらを原動力とした留学という行為を行う者も増えてくるといえる。
教員の中にも学部学生時代に留学した人は少ない。少し古くなるが,京都大学が
2 0 0 2年 度 に 行 っ た 教 員 対 象 の 調 査 に よ る と ,回 答 者 2 1 0名 の 内 ,留 学 経 験 者 は 15 3 名 で ,
留 学 時 期 を 複 数 回 答 で 答 え て も ら っ た と こ ろ ,「 学 部 生 の 頃 」と の 回 答 は わ ず か 4名 で
あ っ た( 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー 20 0 6,p. 3 23 )。学 部 段 階 で の 留 学 の 動 機 を 語 れ る
人 は 少 な い と い う こ と に な る 。ま ず は , こ の 点 を 自 覚 す る 必 要 が あ る 。留 学 促 進 策 を 講
じる際には,留学者数の増加という量的な観点と共に,こうした動機の喚起への関与
を質的に検討していきたい。
注
1
2 0 0 8 年 時 点( 平 成 2 0 年 度 )の 我 が 国 の 学 部 在 籍 者 数 は 2 , 5 2 0 , 5 9 3 人 ,大 学 院 在 籍 者 数 は 2 6 2 , 6 8 6
人 で あ る ( 文 部 科 学 省 2008, p.6) 。 大 学 間 交 流 協 定 等 を 利 用 し て 留 学 す る 学 生 に つ い て , 学 部 学
生と大学院生の比率は公開されていないが,学部学生が大多数を占めると考えられる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfil
e/2009/06/17/1278417_2.pdf (Retrieved 2011/05/01)
2
渡 部 (2010)を 参 照 。 ハ ー バ ー ド 大 学 で は 2009-10年 の 1年 間 に サ マ ー ス ク ー ル や 1学 期 ~ 1年 間
の 留 学 を 経 験 し て い る 者 は 合 わ せ て 6 1 3 人 と な っ て い る 。米 国 の 大 学 か ら 留 学 す る 学 生 の 大 半 が 学
部 学 生 で あ る こ と を 考 え 合 わ せ る と , ハ ー バ ー ド 大 学 の 学 部 学 生 は 6,700人 で あ る か ら , 約 9% の
学生が留学を経験していることになる。
http://www.fas.harvard.edu/~oip/oip_stats-totals.html (Retrieved 2011/04/01)
3
例 え ば ,『 I D E 現 代 の 高 等 教 育 』2 0 1 0 年 1 2 月 号 で は ,≪ 日 本 人 学 生 の 海 外 留 学 ≫ と い う 特 集 を
組んでいる。
4
京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー ( 2 0 0 9 ) 及 び 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー ( 2 0 0 6 ) に 詳 し い 。な お ,日
本人学生という語が意味するのは,大学入学以前の学校教育期間の大半を日本で過ごし,一般入
学 試 験 を 受 け て 大 学 に 入 学 し て き た 者 を 指 し ,国 籍 を 意 味 す る も の で は な い 。該 当 す る か 否 か は ,
回答者自身の判断に任せてアンケートを実施した。
5
調 査 票 は , 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー (2009), pp.227-248に 掲 載 し て い る 。
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学 部 生 の 留 学 希 望 時 期 は ,学 部 在 籍 中 3 0 . 9 % , 大 学 卒 業 後 3 2 . 5 % , 大 学 院 進 学 後 3 6 . 6 % と な っ て い
る 。文 系 ,理 系 で 有 意 な 差 が あ り ,文 系 で は 学 部 在 籍 中 が 最 も 多 く 46.9%,理 系 で は 大 学 院 進 学 後
が 最 も 多 く 46.9%と な っ て い る (河 合 2009, p.106)。
7
学 部 学 生 の 留 学 希 望 先 は ,ア メ リ カ 6 3 . 5 % ,イ ギ リ ス 1 1 . 9 % ,オ ー ス ト ラ リ ア 5 . 3 % ,カ ナ ダ
4.9% , ド イ ツ 4.1% , フ ラ ン ス 2.0% , イ タ リ ア 1.2% , 中 国 1.2% , イ ン ド 0.8% で あ っ た 。
8
学 部 学 生 の 留 学 希 望 期 間 は , 1カ 月 9.3% , 3カ 月 12.8% , 6カ 月 17.4% , 1年 間 32.6% , 2年 間
14.3% , 3年 間 7.0% , 4年 間 2.3% , 6年 以 上 2.7% で あ っ た 。
9
こ の 点 に つ い て は 2002年 度 に 実 施 し た 第 1回 調 査 に お い て す で に 高 山 (2006)が 指 摘 し て い る
(pp.74-75)。
10
イ ン タ ビ ュ ー の 詳 し い 内 容 は 河 合 (2009), pp.110-111。
※本稿の調査の一部は,科学研究費補助金基盤研究(c)「現代大学生の留学志向に関する国際
比 較 研 究 (課 題 番 号 22530916)平 成 22 年 度 ~ 24 年 度 」 ( 代 表 河 合 淳 子 ) の 助 成 を 受 け て 行 わ れ て
いる。
【参考文献】
Mills, C. W., (1940). “ Situated Actions and Vocabularies of Motive,” American Sociological
Review, Vol.5, No.6 (December), pp.904-913, in Horowitz ed.(1963), Power, Politics, and
People: The Collected Essays of C. Weight Mills, Oxford, London & New York: Oxford University
P r e s s , 4 3 9 - 6 8 . ( 田 中 義 久 訳 ( 1 9 7 1 )「 状 況 化 さ れ た 行 為 と 動 機 の 語 彙 」 青 井 和 夫 ・ 本 間 康 平 監 訳
『 権 力 ・ 政 治 ・ 民 衆 』 み す ず 書 房 , 344-55)
IDE大 学 協 会 (2010) 『 IDE現 代 の 高 等 教 育 -日 本 人 学 生 の 海 外 留 学 』 Vol.526, 2010年 12月 号
河 合 淳 子 ( 2011) 「 大 学 生 の 海 外 留 学 に 対 す る 意 識 と 行 動 ― 京 都 大 学 と 浙 江 大 学 ( 中 国 ) の 比 較
調 査 か ら 」 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 『 教 育 と 医 学 』 第 59巻 1号 , pp.78-86
河 合 淳 子( 2 0 0 9 )「 海 外 留 学 の 動 機 と 制 度 的 制 約 ‒ 日 本 人 学 生 対 象 ア ン ケ ー ト ・ イ ン タ ビ ュ ー の 考
察 ‒ 」『 京 都 大 学 に お け る 国 際 交 流 の 現 状 と 発 展 に む け て の 問 題 提 起 ― 第 3 回 ア ン ケ ー ト 調 査 報 告
書 』 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー , pp.105-120
河 合 淳 子 ・ 韓 立 友 ・ 孔 寒 冰 ( 2011) 「 大 学 生 の 留 学 志 向 と 社 会 的 背 景 ― 日 中 比 較 を 手 が か り と し
て 」 『 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー 論 攷 』 第 1号 , pp.1-20
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/139273
河 合 淳 子 ・ 野 口 剛 ( 2010) 「 日 本 人 学 生 の 留 学 志 向 に 関 す る 実 証 的 研 究 ― 京 都 大 学 学 生 ア ン ケ ー
ト・イ ン タ ビ ュ ー 調 査 に み る「 留 学 志 向 の 三 層 構 造 」― 」
『 留 学 生 交 流・指 導 研 究 』第 1 2 号 ,p p . 6 9 - 8 1
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京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー (2009)『 京 都 大 学 に お け る 国 際 交 流 の 現 状 と 発 展 に む け て の 問 題 提 起
―第3回アンケート調査報告書』
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/79575
京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー (2006) 『 京 都 大 学 に お け る 国 際 交 流 の 現 状 と 可 能 性 ― 第 2 回 ア ン ケ ー
ト 調 査 報 告 書 』 http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/79576
近 森 高 明 (2006)「 留 学 志 向 の 三 層 と 留 学 支 援 の あ り か た ― 積 極 派 ・ 消 極 派 ・ 浮 動 層 の プ ロ フ ィ ー
ル を 手 が か り に - 」 『 京 都 大 学 に お け る 国 際 交 流 の 現 状 と 可 能 性 ― 第 2回 ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 』
京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー , pp.43- 54
作 田 啓 一 ・ 井 上 俊 編 (1991)『 命 題 コ レ ク シ ョ ン
社 会 学 』 第 8版 , 筑 摩 書 房
高 山 育 子 (2006)「 京 都 大 学 学 生 の 国 際 交 流 推 進 に 向 け て - 日 本 人 学 生 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト 調
査 に 関 す る 分 析 結 果 か ら 」『 京 都 大 学 に お け る 国 際 交 流 の 現 状 と 可 能 性 ― 第 2 回 ア ン ケ ー ト 調 査 報
告 書 』 京 都 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー , pp.55-80
文 部 科 学 省 (2008)「 調 査 結 果 の 概 要 ( 高 等 教 育 ) 」 『 学 校 基 本 調 査 ( 平 成 20年 度 ) 』
渡 部 由 紀 (2010)「 米 国 大 学 の 学 部 教 育 に お い て の 国 際 教 育 ― 国 際 教 育 の 目 的 と あ り 方 」 京 都 大 学
全 学 教 育 シ ン ポ ジ ウ ム , 2010年 9月 10日 , 報 告 資 料 ( 未 公 表 )
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