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自然換気・シーリングファンを併用した 空調システムの制御手法と性能評価
2006.6.10 熱システム設計WG 自然換気・シーリングファンを併用した 空調システムの制御手法と性能評価 ㈱日建設計 設備計画室 水出 喜太郎 「計画意図」と「運用状態での性能解析」 都市部に立地する環境調和型オフィスビルとして、 機能性と快適性のクオリティを十分に確保しながら、積極的に 省エネルギー・環境負荷低減を推進することをコンセプトとする。 3つの主要テーマへの取り組み 自然エネルギーの活用 実効的な省エネ計画 計画意図の検証 計画意図の骨子 自然換気を主体に、シーリング ファンによる気流感、床吹出し 空調、の3種類を組み合わせた、 ハイブリッド空調システム シーリングファンと自然換気 を活用して、熱源と空調機を 運転しない時間をできるだけ 長くし、大幅な省エネを実現 盛夏に室温28℃設定でありな がらシーリングファンの柔らか な気流感によって「心地良さ」 を感じる快適な環境を実現 建築概要・実測概要 主 主用 用途 途 オフィス、ショールーム オフィス、ショールーム 延床面積 延床面積 7,155.65㎡ 7,155.65㎡ 建物高さ m 建物高さ GL+28.45 GL+28.45m 階 階 数 数 地下1階、地上7階、塔屋1階 地下1階、地上7階、塔屋1階 構 構 造 造 S造およびSRC造 S造およびSRC造 基準階平面 天井にシーリングファンを配置した内観 将来のテナント貸しを考慮に 入れた6分割間仕切り対応の フレキシブルな基準階オフィス 南北外壁面 自然換気取入れスリット 階段,トイレ等の機能別に 分節化したコア外観 シーリングファン(22ケ/フロア) シーリングファン 配置間隔 4.5mピッチ 分節されたコアのすき間から 自然採光する明るい廊下 基準階平面図 基準階シーリングファン配置天井伏図 採光と自然換気塔の機能を持つ階段室 ハイブリッド空調換気システム概要 ハイブリッド空調換気システム 基準階断面図 自然換気、シーリングファン、床吹 出し空調、の3種類を組み合わせた ハイブリッド空調換気システム -自然換気: 建築と一体化した換気ルート計画に よる動力を用いない自然換気 -シーリングファン: 室内に気流感を生み出して快適性を 補い、盛夏には28℃快適空調を実現 建物断面構成図 実験により決定したシーリングファン設置形状 シーリングファン折り上げボックス寸法の決定 計画意図 自然換気・シーリングファン・床吹出し空調によるハイブリッド空調 − 制御ロジックの構築 − ■3種類を組み合わせたハイブリッド空調を実施し、省エネルギー運用を実現 するために、コンセプトに即した制御ロジックを構築した。 ● 自動制御の概要 ● 自然を受容し緩やかに室内環境を維持する制御手法 ● 計画段階における空調運転モードの年間スケジュールの想定 冷房運転(4月∼11月) START 群停止 コンセプト 空調システム群発停 空調システム群発停とすることで 自然換気の可否判断からスタート し、自然換気のみで室内熱環 境を満足できない場合にはシーリ ングファンを追加する。熱源運転を 伴う空調の開始を可能な限り遅 延させるシステムとしている。 群運転時間帯 NO 外気温<18℃ シーリングファン・自然換気併用空調 制御フローチャート YES 床吹出空調停止 NO ■自然換気 外気温≦28℃ 空調モード YES NO 自然換気禁止条件 自然換禁止条件外 NO エンタルピ 室内>外気 YES NO 負荷が減って設 定室温が 24℃を 下回った場合 空調機の停止 1フロア2ゾーン 以上、同一条件か 盛夏28℃空調以外の中間期は 空調機の設定温度は23℃とし、 室内温度が満足されれば、空 調機を停止する。 YES 自然換気ダンパ閉 負荷が増えて設 定室温が 24℃ を超えた場合 モード変遷 ・外気低温(18℃以下) ・外気高温(28℃以上) ・降雨時(2mm/h以上) ・強風時(10m/s以上) ・外気多湿(70%RH以上) YES 自然換気ダンパ開 ■自然換気 + ■シーリングファン NO インテリア 室内温度≧24℃ YES NO 室内温≦(24−1)℃ YES 天井シーリングファン運転 空調モード 天井シーリングファン停止 自然換気ダンパ閉 天井シーリングファン停止 床吹出空調機停止 自然換気ダンパ閉 天井シーリングファン停止 床吹出空調機運転 空調機は 運転中か YES 床吹出空調機運転 END 負荷が減り空調 機コイルのバルブ開 度が 20%以下と なった場合 NO YES (10分間以上継続が条件) 1.床吹出空調機のみ 2.自然換気のみ 3.自然換気+シーリングファン 4.自然換気+シーリングファン+床吹出空調機 5.シーリングファン+床吹出空調機 負荷が増えて設 定室温が 26℃を 超えた場合 YES コイル弁開度 20%以上か 空調モード NO モード変遷 インテリア 室内温度≧26℃ 床吹出空調機停止 この時点での空調モード確定 (現状維持 OR モード変更) 空調機起動による 熱源初期起動か YES 熱源システムの起動 NO 熱源運転中か NO ■自然換気 + ■シーリングファン + ■床吹出し空調 空調モード YES 熱源システムの継続運転 空調モード変遷の概念 空調システムの年間運転モード 期間 外気条件 16℃以下 18℃以下 中間期 冷房運転時 4∼6月 10,11月 18℃以上 16℃以上 26℃以上 28℃以上 夏期 7∼9月 冬期 12∼3月 運転制御条件 室内温度θr θr<24℃ 室内温度θr θr<24℃ 室内温度θr 24℃≦θr<26℃ 室内温度θr 26℃ ≦θr 室内温度θr 26℃ ≦θr 室内条件 28℃,50%程度 自然 換気 シーリングファ ン 床吹出 空調 − − ○ ○ − − ○ ○ − ○ ○ ○ − ○ ○ − ○ ○ 28℃以下、 エンタルピーが 室内より小 室内条件 28℃,50%程度 ○ ○ ○ − 室内条件 22℃,40% − − ○ 表4 実測日時 実測項目 および 実測機器 2004年度環境 実測(春、夏、秋) スケジュール 実測日程および実測概要 2004年10月30日(土)∼11月7日(日) 4∼6階内外差圧(南北床下トレンチ) 差圧計:NAGANO GC62 4階室内空気温湿度 熱電対:φ0.1,T&D社 RTR-53 4階トレンチ内空気温度 熱電対:φ0.1 2.4.6階、R階、階段室温度 熱電対:φ0.1 4階廊下温度 熱電対:φ0.1 すきま調査 開口面積の採寸 トレンチ外気取入口風速(手動計測) 風速計:KANOMAX 6531 外気温度(屋上) 熱電対:φ0.1 風向風速(屋上) 3次元風速計 春期:2004年3月29日(月)∼4月3日(土) 夏期:2004年7月25日(日)∼8月2日(月) 秋期:2004年10月30日(土)∼11月7日(日) 図5 実測建物平面図および室内温湿度、内外差圧測定点 図6 空調運転モードと室内温湿度の時刻変動 図7 4階室温平面分布 運転モード:自然換気+シーリングファン(フロア全体) 図8 北側ペリメータ、インテリア垂直温度分布(2004年11月5日) 検証 ハイブリッド空調制御の確実な運用の検証 − 多様な空調モード変遷の実績 − BEMSデータによる空調システムの年間運転モード 2003年12月∼2004年11月基準階(6F)運転モード実績 表5 外気取入量、内外差圧測定による有効開口面積 図12 南側室内外差圧と外気侵入量 図13 4階平面図およびトレーサガスによる換気効率測定点 図14 ステップダウン法による換気効率測定結果 表6 測定概要と各季節換気量測定結果 自然換気・ナイトパージ時 測定日時 換気回数[回/h] 換気風量[m3/h] 平均事務室内温度[℃] 平均外気温度[℃] 内外温度差[℃] 平均階段室内温度[℃] 測定機器 測定場所 春期実測 2004年3月29日 20:34∼21:04 夏期実測 2004年8月2日 1:32∼5:18 秋期実測 2004年11月2日 23:00∼翌3:40 1.34 1.13 0.93 2207 1861 1532 23.5 30.3 25.1 14.1 27.1 18.4 9.4 3.2 6.7 16 27.8 20.9 マルチポイントサンプラ・ドーザ、マルチガスモニタ 4階事務室内、および南北階段室内 図15 4階オフィス内でのCO2濃度測定値時刻変動 図16 4階オフィスの在室人員日変動 CO2 濃度 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 図17 2005年4月 2005年5月 2005年10月 1.0 自然換気 2.0 自然換気 3.0 +シーリングファン CO2 濃度 運転モード 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 自然換気 4.0 +シーリングファン +床吹出し空調 5.0 図18 2005年4,5,10月 5階室内CO2濃度と運転モードの相関 2005年4月 2005年5月 2005年10月 1.0 自然換気 2.0 自然換気 3.0 +シーリングファン 運転モード CO2 濃度 2005年4,5,10月 4階室内CO2濃度と運転モードの相関 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 自然換気 4.0 +シーリングファン +床吹出し空調 5.0 図19 2005年4月 2005年5月 2005年10月 1.0 自然換気 2.0 自然換気 3.0 +シーリングファン 運転モード 自然換気 4.0 +シーリングファン +床吹出し空調 5.0 2005年4,5,10月 5階室内CO2濃度と運転モードの相関 図20 図21 図22 2004年秋(中間期) 快適感の申告結果 2004年11月4日 自然換気時 の環境に関する回答 2004年11月4日 シーリングファンの 効果に関する回答 検証 ハイブリッド空調による空調負荷削減効果の検証 − 実測結果を活用したシミュレーション検証 ■実測結果を活用したシミュレーションによる負荷削減効果の検証 ● 制御フローチャートと標準気象データ・室内設定条件を与えて 各空調モードを年間で再現し、冷房負荷削減効果を検証した。 ● 熱源運転を伴わないモード時の負荷は全て削減効果に計上 ● シーリングファン併用による緩和室温での負荷削減効果を計上 ● 自然換気併用モード時は、実測による春・夏・秋の平均自然換気風量 を用いて内外エンタルピー差から各時刻での負荷削減効果を計上 図23 年間再現計算による冷房負荷削減効果(基準階を対象) まとめ (1) 自然換気とシーリングファンを最大限に活用し、熱源設備と空調機の運転を伴った 空調の開始を可能な限り遅延させ、室内の熱環境を維持しながら省エネルギーを 図る制御システムを構築した。 (2) ハイブリッド空調換気時に、執務空間の室内環境が適切に維持されることを、水平 面温度分布、垂直温度分布、CO2濃度の時刻変動の実測結果によって検証した。 またBEMSによる年間の空調モード実績データ解析から、より省エネルギーな空 調運転が選択実施されたことを確認した。 (4) 換気取入れ口での内外差圧による換気量計測、ステップダウン法によるトレーサガ ス実験での換気量の把握を実施し、昼間、夜間とも1回/h∼2回/h程度の換気性 能を有することを検証した。 (5) 中間期の自然換気、シーリングファンによる空調換気時における執務者に対するア ンケート結果から85%が快適と回答し、シーリングファンによって気流感と視覚から 涼感を得ることを肯定的にとらえる回答が86%を占めるに至った。 (6) HASP/ACLDを用いた年間熱負荷シミュレーションによってハイブリッド空調換気シ ステムによる年間空調負荷削減は34%となり、そのうち、熱源と空調機の運転を伴 わない「自然換気」「自然換気+シーリングファン」の効果が20%を占めることを明 らかにした。