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はじめに
このテキストは、スーパーマーケット業界に就職する皆さんが、最後の学生生活を送り
ながら、入社後、貴重な戦力として活躍し、仕事を通じて成長する準備を目的としたものです。
社会人として働くことは、今までとは異なった責任をおび、厳しく、辛いと感じること
も現実です。ただし、仕事こそが、将来に向けて皆さんを成長させる唯一の手段です。
その仕事をいかに充実させ、その中で自己実現し、心豊かな人生を送っていくのか。
入社前は、将来を展望し、大局的に考え、ビジョンを描ける貴重な期間でもあります。
私たちを取り巻く環境は、地球規模でダイナミックに、またスピードを増して変化し続
けています。この変化に、いかに対応していくのかが個人と会社の未来を決定づけます。
変化へ的確に対応し、方向を誤らないために、まず全体概要を基本を理解する必要があります。
そして、これから物事を判断する上で、以下の二つの視点を心掛けてください。
SA
■ 「 変即不変 」 変化の中に不変を見、不変の中に変化を見る。
変化しているように見えるが、実は根底にある基本は変わらない。
■
M
一方変化していないように見えても、実は内部では刻々と変化している。
「 鳥の目・虫の目・魚の目 」 物事を見る(観察、分析)する視点
PL
まず、鳥のように高い、広い視点からを全体的に見る。次に、虫のように、近い視点
から現実を複眼的に深く見る。常に、魚のように、時代の潮流、変化を読み取る。
E
1
1.働 く 業 界 の 理 解
自分が身をおく業界の全産業の中での位置づけ、機能を知り、どのような社会的使命を
おびているのかを認識することが、社会人となって働き、ビジョンを持って、自己成長を
遂げて行く上での出発点となります。
SA
まず、皆さんが就職する業界である「流通業界」「小売業界」について、大きな枠組み
で理解してください。
「流通業」とは、メーカー(製造業)、生産者(農業・畜産業・水産業など)が生産
M
した商品を消費者まで流通させるために必要な各種業種の総称です。広義には、運輸業、
倉庫業、卸売業、小売業が含まれ、狭義には、卸売業、小売業の二つの業種を指します。
PL
「卸売業」(商社・問屋・市場)は、メーカーから完成商品を仕入れ、あるいは産地
から生鮮商品を買い付け、小売業に商品を販売する(卸す)業種です。
E
私たちの「小売業」は、流通の最終段階で、商品を直接一般の消費者(お客様)に
販売する業種を指しています。
それぞれの業種の位置づけから生産者、メーカーを「川上」として、卸売業を「川中」
、
小売業を「川下」といった表現をする場合もあります。
また、3つの階層は「製・配・販」とも呼ばれ、情報ネットワークの発達により、こ
の3者の連携によるスピーディーで正確な情報共有により、商品の流通全体をより効率的
に最適化する取り組みも進展しています。(サプライチェーン・マネジメント)
さらに、小売業に関しては、国内各地域おける販売活動が主体ではありますが、現在は、
上記サプライチェーンが世界規模で拡大する中、販売する商品もグローバル化し、ローカル
な活動でありながら、常に世界の動きに影響される業種となっています。
グローバル + ローカル =「グローカル」という造語も生まれています。
大切なことは、小売業の大きな役割の一つとして、生活者(お客様)の代理人として、
商品を買い入れ(仕入れ)ているということです。
より良い商品を調達することに対して、小売業の真価がますます問われています。
2
商品の流れと業界
E
PL
M
SA
2.世 界 の 小 売 業
世界最大の小売業としての企業は、アメリカのウォルマートで、その売上高は年間
約40兆円になります。これは、全産業の中でも最大であり、小売企業が世界最大の売上高
を誇る企業となっているのです。このウォルマートは、グローバル企業として、世界27
ヶ国に1万店を超える店舗を展開しています。欧米の巨大小売チェーンは、積極的に海外
へ進出しており、日本へもこのウォルマート(西友を完全子会社化)、カルフール(2005
年撤退)、テスコ(2012 年撤退)、メトロ、コストコなどが進出しています。
一方、日本の大手小売企業、セブン&アイ・ホールディングス、イオンほかは、アジア
への進出を加速しています。
ただし、小売業は企業規模ではなく、それぞれ個別の店舗が地域の消費者
(お客様)にどう支持されるかというローカルな競争をしています。
その意味で、カリフールやテスコなど世界的な巨大小売チェーンは、日本に
適合できず、地域における店舗間競争に敗れ、撤退することになったのです。
3
世界の小売企業ランキング(TOP20)
順位
企 業 名
所在国
主力業態
売上高(百万ドル)
1
ウォルマート/Wal-Mart
アメリカ
スーパーセンター
418,952
2
カルフール/Carrefour
フランス
ハイパーマーケット
119,642
3
テスコ/Tesco
イギリス
ハイパーマーケット
92,171
4
メトロ/METRO
ドイツ
キャシュ&キャリー
88,931
5
クローガー/Kroger
アメリカ
スーパーマーケット
82,189
6
シュワルツ/Schwarz Unternehmens
ドイツ
ディスカウントストア
79,119
7
コスコ/Costco
アメリカ
ホールセール
76,225
8
ホームデポ/Home Dept
アメリカ
ホームセンター
67,997
9
ウォルグリーン/Walgreen
アメリカ
ドラッグ
67,420
ドイツ
ディスカウントストア
67,112
アメリカ
ディスカウントストア
65,786
ドイツ
スーパーマーケット
61,134
ドラッグ
57,345
GMS
57,055
フランス
ハイパーマーケット
55,212
ドイツ
スーパーマーケット
54,072
GMS
53,458
オーストラリア
スーパーマーケット
51,771
アルディ/Aldi
11
ターゲット/Target
12
レーベ/Rewe-Zentral
13
CVS/CVS
14
セブン&アイ/Seven & I
15
オーシャン/Auchan
16
エデカ/Edeka
17
イオン/AEON
18
ウールワース/Woolworths
19
ベスト・バイ/Best Buy
アメリカ
専門店(家電)
50,272
20
ロウズ/Low’s
アメリカ
ホームセンター
48,815
SA
10
アメリカ
日 本
M
日本
E
PL
4
3.日 本 の 小 売 業 界 と
スーパーマーケットの位置づけ
日本の小売業(商業)は、経済産業省の商業統計での分類がありますが、一般的には、
以下のように伝統的な業態として百貨店、専門店と後発でセルフサービスを導入して発展
してきた業態としてスーパーマーケット、GMS(総合量販店)、コンビニエンスストア、
ドラッグストア、ホームセンター、ディスカウントストアなどに分類します。
さらに、近年は、インターネット利用も含めて無店舗販売が急速に拡大しています。
また、製造小売(SPA)と呼ばれる小売企業自らが商品の製造から流通全てを一貫して
自社で行う専門店チェーンも躍進しています。
スーパーマーケットは、商業統計では食品スーパーと分類され、取扱商品のうち食品が
70%以上で売場面積は 250 ㎡以上、セルフサービス方式の店舗と定義されています。
スーパーマーケットは、食品を主体に日常必需品を取り扱い、地域に密着した業態であり、
SA
従って、百貨店や GMS に比べ、商圏が狭く、お客様の買物頻度が高いのが特徴と言えます。
E
PL
M
日本の小売業の主な業態
5
現在の日本の年間小売販売総額は約132兆円、そのうち食品の販売額は、約40兆円
となっています。
その食品販売額の中でスーパーマーケットのシェアは断トツの約40%を占めています。
日本の生活者の毎日の食卓を飾る食料品の販売については、スーパーマーケットこそが
No.1 業態であり、大きな役割と責任を担っていることを物語っています。
E
PL
M
SA
アメリカでフォーチュン誌が実施する調査の中で「最も働きたい企業ベスト100」の
上位10社の中に毎年、スーパーマーケット企業が2~3社がランクインしています。
アメリカにおいては、地域の生活者の暮らしに深く結びつき、そのライフスタイルをより
豊かにするスーパーマーケットの社会的意義は高く評価されており、そこに働く多くの
スーパーマーケットの従業員は、「安心・安全」で「おいしい食品」を、フレンドリーな
サービスで提供することに誇りと喜びを持って仕事をしています。
スーパーマーケットの仕事には、
やりがいと自分を成長せる夢がある。
6
日本のス―パーマーケット
Coffee break
の市場規模
知っ得!アーカイブ
食料品の消費支出
日本の世帯数=5,195万2千世帯
1 世帯当り平均2.46人
日本の世帯数=5,195万2千世帯
1 世帯当り平均2.46人
1 世帯当りの消費支出
約29万円
1 世帯当りの消費支出
約7万2千円
=
日本全体の消費支出
食品小計 59,330 円
月平均の消費支出
約15兆1千億円
×12ヶ月
+
食 13,300 円
=
SA
=
月平均の消費支出
約3.7兆円
×12ヶ月
年間の消費支出
約181兆円
=
外
年間の消費支出
約44.4兆円
PL
M
客単価と買上点数の算出
スーパーマーケットへの消費支出
スーパーマーケット扱い品の
月間消費支出額
61,614円
E
日本の世帯数=5,195万2千世帯
1 世帯当り平均2.46人
×
÷
1 世帯当りの消費支出
約6万1千円
=
30日
食品小計 59,330 円
客単価
2,053円
+
消耗雑貨 2,284 円
=
÷
=
=
月平均の消費支出
約3兆1,690億円
×12ヶ月
1品単価
200円(仮定)
1人当り買上点数
10.2個
年間の消費支出
約38兆280億円
毎日来店されて全ての商品を購入した
場合、客単価は2,053円となる。
7
スーパーマーケットに関する家計支出額の推移(月額) 単位:円
※ 家計調査年報より集計 (総理府から毎年発行)
家計調査分類
平成22年
平成10年
平成5年
5年22年
消費支出
290,244
328,186
335,246
▲13.4
スーパーマーケット小計
食料品小計
61,614
59,330
67,503
65,312
70,817
68,566
▲12.9
▲13.4
6,637
6,857
6,358
3,285
8,479
3,034
3,330
6,572
7,909
3,609
3,260
2,284
13,300
7,921
9,435
6,951
3,858
10,429
3,191
3,261
5,057
7,968
3,408
3,833
2,191
12,844
9,699
10,758
7,516
3,746
10,602
3,400
3,285
5,641
7,160
2,991
3,768
2,251
12,994
▲31.5
▲36.2
▲15.4
▲12.3
▲20.0
▲10.7
+1.3
+16.5
+10.4
+20.6
▲13.4
+1.4
+2.3
M
SA
穀類
魚介類
肉類
乳卵類
野菜・海藻
果物
油脂・調味料
菓子類
調理食品
飲料
酒類
消耗雑貨
外食
PL
4.業 態 ( フ ォ ー マ ッ ト ) と 業 種
業態という用語を使用してきましたが、小売業で使う業態とは、主に販売方法の形態に
E
よる分類を指しています。例えば、百貨店とスーパーマーケットと無店舗販売で、それぞ
れが同じ商品を販売していても、その提供方法が異なります。つまり「どのように売るか」
による分類が業態と言えます。業態は、「何を」「いつ」「どのようにして」「どれくらい
の価格で」買いたいかという、多様化する消費者のニーズやライフスタイルに対応するた
めに分化してきました。
業態に対して、業種という分類があります。
例えば、青果店、食肉店、鮮魚店、酒販店など
「何を売るか」という取り扱い商品の種類に
よる縦割りの分類を業種と呼んでいます。
単一種類の商品の販売だけでば、消費者の望む
ワンストップ・ショッピングには対応できず、
業種店は急速に減少しました。
生活者のニーズやライフスタイルは変化し続けます。
業態としてのスーパーマーケットも常に変化に
対応して、変革し続けることが求められています。
8
5.ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト の 歴 史
スーパーマーケットの第1号店は、アメリカ ニューヨーク州で1930年にマイケル・
カレンが開店した店名『キング・カレン』と言われています。前年1929年が世界大恐慌
の年であり、多くの人々が家計に苦しむ中、マイケル・カレンは、① 店舗の大型化と十分
な駐車場の確保
②
セルフサービスの導入
③ 大量陳列とダイナミックな価格政策
(低価格販売)など、従来と異なる革新的な店舗と販売政策で生活者のニーズにしっかり
と応え、大きな支持を獲得しました。その後、各大手チェーンもスーパーマーケット店舗
を展開し、急速に拡大して行きました。
さて、日本に目を向けると、アメリカの約25年後にスーパーマーケットが誕生しまし
た。1953年東京青山の「紀ノ国屋」がセルフサービスを導入し、1956年には、
福岡県北九州市に本格的なスーパーマーケット「丸和フードセンター」が開店しました。
『良い商品を、より安く、便利に』
その後、日本においても、スーパーマーケットは、
SA
提供することで消費者の味方として、日常生活を支える店舗(業態)として急速に全国に
拡大することになりました。
M
歴史的に、スーパーマーケットは、その革新性により現在ある近代小売業の源と言われ
ています。その核心は、スーパーマーケットが、消費者(お客様)の立場でより豊かな
PL
生活を実現するために生まれてきた業態であり、その後も、常に時代の変化、消費者ニーズ
に対応、進化し、今日に至っているということです。
E
スーパーマーケット先進国アメリカにおいても各社それぞれが“ For the Customers
(我が社のお客様のために) ”を最優先に掲げ、新しい価値を創造し続けているのです。
9
6.ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト の 使 命
日本国内では、少子高齢化と人口減少、安全・安心・健康に対する要求の高まりなど、
世界的には、人口の増加、新興諸国の経済発展などによる食糧資源のひっぱく、地球環境
問題の深刻化など、企業、店舗を取り巻く環境はスピードを増して変化しています。
そして、近年は、東日本大震災ほかの災害により
多くの尊い人命が失われています。
いつの時代もスーパーマーケットの基本となる使命は変わることはありませんが、社会
情勢や消費者ニーズが変化する中、より高次元で的確な対応が求められています。
第 1 番目として地域の生活者のより豊かなで健康的な生活を実現する使命です。
具体的には、お客様に安全・安心な商品を、高品質、高鮮度でリーズナブル(手ごろ)な
価格で提供することです。
毎日のお客様の食卓をより楽しく、豊かにするために、また、生活のパートナーとして
SA
“ よい商品をより安く、正しい情報で ”販売する姿勢が求めれます。
さらにお客様にとって買物が快適で便利なものになるよう努力してくことがしていただ
くことが大切です。
M
第2番目として震災で再認識された通り、どんな時でもお客様の生活を守っていくと
PL
いう地域社会の重要なライフライン(命綱=生活に必須の施設)としての使命です。
地域になくてはならない店舗であり続けることは、絶え間ない努力で実現されます。
第3番目として、地球環境問題への対応、食育の推進、四季おりおりの旬も含めた地域
E
の食文化の継承など社会貢献活動の使命です。
スーパーマーケットとして地域に密着した社会貢献が求められています。
10
7.ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト の 本 質
スーパーマーケットは、主婦が、毎日の食事の支度をするために、普段着で気軽に頻繁
に買物をする店舗がであり、パートナーとしてその期待に応えることが求められています。
店舗で優先されるのは、特別な商品の販売ではなく、生活必需品が、お客様の求める品質、
鮮度、価格で品切れなく売場に揃っていることです。特に、ワンストップ・ショッピング
(必要なすべての商品を一ヵ所で買物できること)を短時間で実現することが大切です。
E
PL
M
SA
11
8.チ ェ ー ン ス ト ア と そ の 理 論
チェーン・ストアとは、一つの本部を中心に、11店舗以上を運営する小売業やサー
ビス(外食他)の形態と定義されています。 多店舗で展開することにより、大量販売に
よる仕入れ価格の引き下げや効率化によるコストの削減を実現することができます。
チェーンストアは、アメリカで1858年に創業した A&P社(The Great Atlantic
and Pacific Tea Company)が展開した紅茶やスパイスを販売する食品店が最初だと言われ、
その後のスーパーマーケットの誕生で一気に拡大しました。
欧米で150年間以上かけて築かれてきたチェーンストア運営の原理・原則は、
チェーンストア理論として体系化され、チェーンストア・オペレーションにより実行されます。
このチェーンストア・オペレーションは、“よい商品をより安く”提供し、かつ適正利潤
をあげるための基幹となっており、各社の企業運営の基本となっています。
SA
チェーンストア・オペレーションは、商品戦略(マーチャンダイジング)を柱に、色んな
戦略で多岐に渡り体系化されていますが、その基本原則は、以下の『 3S 』であり、
スーパーマーケットの仕事のすべてに求められる考え方です。
E
PL
M
12
Coffee break
チェーンストアの種類と
基本用語-1
知っ得!アーカイブ
【 チェーンストアの種類 】
◆ 規模(出店範囲)による分類 ◆
❶ ナショナルチェーン
・・・ 全国的に展開するチェーン
❷ リージョナルチェーン ・・・ 例えば東北地方など複数の都道府県に展開するチェーン
❸ ローカルチェーン
・・・ 1~2の都道府県内に展開するチェーン
◆ 運営形態による分類 ◆
❶ レギュラーチェーン
・・・ 一つの会社で運営されるチェーン
❷ フランチャイズチェーン(FC)・・・ 本部(フランチャイザー)を中心に 複数の会社
(フランチャイジー 加盟店)で運営されるチェーン
SA
❸ ボランタリーチェーン(VC)・・・ 複数の加盟企業が参加し、運営されるチェーン
※ 小売企業が主催の場合コーペラティブチェーンと言う。
PL
M
【 基本用語ー1 】
❶ マーチャンダイジング ( MD、商品戦略 )
どんな商品を、どの客層に、どういう方法で、どこで、どうやって売るかを計画し、実践する
E
商品戦略のこと。マーケティングは、主にメーカーの立場で生産された商品を販売ための
諸活動を指し、マーチャンダイジングは、小売業が生産~流通、販売まで商品をトータルで
計画、管理する意味を持つ。特に、店舗における商品の販売のための商品の品揃え、棚割り、
価格設定、各種販売促進については、インストア・マーチャンダイジングと言っている。
❷ ドミナント戦略
ドミナントとは、「支配的な」「優勢な」という意味を持つ。 チェーンストア企業が地域を限定して
集中した店舗展開を行い、経営効率を高め、同一商圏内の競業他社に比べて市場シェアを
高めて優位に立つことをドミント戦略と言い、集中展開する地域をドミナントエリアと呼ぶ。
❸ アイテムとSKU
両方とも商品の単位であるが、企業により意味が異なる場合があるので、要確認が必要。
一般的にSKUとは、最小在庫管理単位を指し、アイテムは品目として商品の種類を指す。
つまり、SKUがよりアイテムより小さい単位と言える。
例)
【キャベツ】 アイテム
SKU
【カレー】
アイテム
SKU
= キャベツ
=キャベツ1個、キャベツ 1/2、キャベツ 1/4→(3SKU)
= グリコカレー
= ハウスバーモンドカレー 甘口、中辛、辛口(3SKU)
13
9.ショッピングセンター(SC)について
ショッピングセンター(Shopping Centre)は、複数の小売業の店舗が集まった
商業が集積した施設のことを言います。
1店舗が単独での出店(フリー・スタンディング)より、店舗が増えることにより、
消費者は、より広範なワンストップ・ショッピングが可能となり、駐車場も含めて、相乗
効果で集客力が増します。 ショッピングセンターは規模により、以下のように分類され、
それぞれ核となる店舗や商圏が異なります。
通常、スーパーマーケットの場合は、近隣型(ネイバーフッド)のショッピングセンターの
核としての出店となります。この際の近隣とは、郊外の住宅地の近隣を意味しています。
主なショッピングセンターの種類
E
PL
M
SA
その他のショッピングセンターとして、RSCよりさらに巨大なスーパーリージョナ
ルショッピングセンター(RSC)、アウトレット店が集積したアウトレットモールなど
非常に広域な商圏を対象としたものがありますが、全国的に数は限られています。
14
1.求 め ら れ る 基 本 能 力
スーパーマーケットの根幹は“よい商品をより安く”ですが、、一方では、そこに働く
従業員の経済的な安定(給与、福利厚生など)と社会的使命を果たしながら将来に向けて
企業活動を持続して行くための適正利潤の確保が求められます。
この相反する課題を克服する手段が薄利多売であり、そのためにスーパーケットは、
SA
セルフサービス、大量陳列、ダイナミックな価格政策などの新しい販売手法を採用し、
画期的な低価格と生産性の向上を実現しました。
M
スーパーマーケットは、一つひとつの商品の利益率は低くても、大量に、商品を高回転
させることによりトータルで利益額を確保しています。
PL
これは、計算された緻密な運営によって達成されます。そのための高度なシステムや
リアルタイムで活用できる各種データも整備されており、それを有効活用するためには、
論理的な能力が求められます。
とコミュニケーション力が鍵を握っています。
E
そして、お客様により快適で楽しい買物をしていただくためには、個人の感性・創造力
つまり、スーパーマーケットでの仕事には、物事を論理的に分析し、計画、実行できる
能力、お客様のニーズをつかみ、楽しさや豊かさを提供できる感性と創造力、そして小売
業として最も重要なコミュニケーション力が必要となります。
15
2.キ ャ リ ア パ ス プ ラ ン
大海原への危険な航海に先立ち絶対に欠かせないものは、海図と羅針盤でした。
キャリアパスプランとは、
社会人として働きステップアップして行くための海図と羅針盤に
あたります。
それは、仕事上でどのような経験を積み、またスキルを習得して成長していくのかを
認識し、計画することです。
下の図は、厚生労働省がスーパーマーケットの人材の能力開発の標準的な道筋について
キャリアマップとして示したものです。各レベルに到達するための道筋と習得能力の
目安が設定されています。これは、企業ごとに設定されていますので確認して下さい。
さらに具体的な必要能力(知識・技能)についても厚生労働省で職業能力評価シートで
詳細が示されています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/syokunou/07.html
E
PL
M
SA
➣ 出所 : 厚生労働省 HP
16
「キャリアマップについて」
3.必 要 な 知 識 と 技 能
必要な知識・技能を明確にした上で、段階を経て同時並行的に習得し、さまざまな
実務の経験を積みながらプロフェッショナルとして成長して行くことができます。
まず、どのような分野があるのかを以下の表で確認してください。
項
目
内
容
企業理念・会社概要・会社ルール
含む会社の組織、就業規則、服務規定、福利厚生ほか
2
仕事の基本
仕事の進め方、あいさつ、ビジネスマナー、
コミュニケーション、健康管理他
3
業界知識
概要、歴史、業態、スーパーマーケットの機能と役割
4
スーパーマーケットの基本知識
チェーンストア理論、スーパーマーケットの基本原則
(商圏、お客様、レイアウト、陳列ほか)
5
コンプライアンスと社会貢献
関係法令・諸規則の理解と遵守、社会貢献活動、地球環境
6
食の安全・安心と安全衛生
食品衛生とクレンリネス、食品表示、安全衛生ほか
7
CS(顧客満足)向上・接客
ホスピタリティ、接客の基本(用語ほか)、クレーム対応
8
計数管理とデータ活用
【基礎】
9
マーチャンダイジング
【基礎】
取扱商品の理解、各商品部門の基礎知識
10
ストアオペレーション
【基礎】
作業種類・流れとポイント、作業効率改善
11
販売促進
【基礎】
POP広告の基本と活用、販売計画の基本
12
マネジメント
【基礎】
原則、コミュニケーションとチームワーク
13
計数管理とデータ活用
予実管理、利益計画、経費管理、経営の基礎数値(財務会計)
生産性の向上策(商品、人時、スペース)、商圏分析
14
マーチャンダイジング
商品構成、棚割、仕入計画、販売計画、価格政策、在庫管理
カテゴリー・マネジメント、商品開発、商品生産性向上
15
ストアオペレーション
ローコスト・オペレーション(業務改善・作業割当・人時生産性)
売場レイアウト、経費コントロール、競合店対策
16
販売促進
月間・週別販促計画、インストア・プロモーション
カラ―・コントロール、メニュー提案、顧客戦略、
17
マネジメント
リーダーシップ、評価と教育訓練、人事労務管理、要員計画
対外折衝、
18
食事と健康、料理と栄養、食育
健康的な食事、栄養、料理方法、食育
19
高齢社会対応
高齢者の理解と対応、バリアフリー・ユニバーサルサービス
19
非常時対応 (リスク・マネジメント)
災害時対策(震災、洪水ほか)、ライフラインの確保
本
SA
基
1
階層(役職)ごとにレベルアップ
17
E
PL
M
売上・値入・ロス・荒利益・営業利益ほか主要計数と
活用データ(帳票)の確認と活用方法
4.仕 事 の 成 果 と 能 力 の 向 上
「 人生の結果・仕事の成果 = 能力 × 考え方 × 熱意 」と言われています。
能力がいかに高かろうと、考え方(どういう心構えで仕事をするか)と熱意(どうして
もこうしたいという想い)がなければ、良い結果や成果はなかなか出ません。
逆に、能力がほどほどでも考え方と熱意の高さでやり抜けば、結果・成果を出すことが
できる可能性があるということです。
特に小売業は一人ひとりのひたむきさ、熱意がお客様に伝わり結果に結びつきます。
教育訓練(人材育成・能力開発)
E
知っ得!アーカイブ
PL
M
SA
Coffee break
の3つの方法
仕事に必要な知識(ナレッジ)と技能(スキル)の習得方法
❶ OJT
オン・ザ・ジョブ・トレーニング
職場内訓練。
上司・先輩が、実際の日常の仕事を通じて、部下に必要な知識や技能を教育すること。
❷ Off-JT
オフ・ザ・ジョブ・トレーニング
職場外訓練。集合研修、講習会、セミナーなど。
職場を離れ、日常業務以外で行う教育すること。
❸ 自己啓発
セルフ・デベロップメント
通信教育や自主参加のセミナーなど。
社員が自己成長を目的に、自主的に学習すること。 18
1.ワンストップ・ショッピングの原則
スーパーマーケットの最も基本となる以下の大原則は、変わることはありません。
食料品を主体とした普段使う生活必需品を一ヶ所で買物ができる。
❷
自由に、店内を歩き、商品を手にとって選べ、便利に買物ができる。
SA
➊
ワンストップ・ショッピングについてよくある誤解は、生活に必要な商品であれば、
できるだけ多くの商品をより多種類そろえれば、お客様にとって便利な買物になるのでは
M
ないかと考えることです。主に毎日の食卓の素材を求めて来店するお客様にとって、例えば
百貨店のように衣服~貴金属まで広範な商品があっても、それは全く意味のないものと
PL
言えます。また、同じ商品(例えばマヨネーズ500g)が売場に10種類もあれば、
何を選べばよいかわからず、かえって不便となってしまいます。
つまり、スーパーマーケットのワンストップ・ショッピングとは、“購買頻度が高い(週3~4回)”
E
生活必需品を、一ヶ所で、快適・便利・短時間に買物できる状態を指しています。
これは、店舗の部門、商品構成を考えるもっとも基本となる原則です。
この観点より、商圏に合った商品構成(商品の絞り込み)と価格帯(プライス・ゾーン)
を検討し、常にズレていないかをお客様の立場でチェックしなければいけません。
19
2.セ ル フ サ ー ビ ス の 原 則
セルフサービスにより、お客様は、自由に店内を移動し、多くの商品に接し、直接
手に取ってその品質を確認した上で選び、短時間で便利な買物をすることができます。
また、店舗側も少人数で効率的に大量の商品を販売すること(ローコスト運営)ができ、
低価格と適正利益の確保を実現できます。
セルフサービスは、この2つのメリットを追求する最適なサービスであり、決して、
サービスをしないこと = ノーサービスではありません。
各社は快適なセルフサービスの実現を追求して、しのぎを削っています。
セルフサービスの原則
お客様のメリット追求
SA
➊
=
必要な商品がすぐに見つかる。(短時間で便利な買物)
M
❷ 商品を気軽に手に取って確認することができる。
商品の価格・特徴が明確にわかる。
❹
安心して(鮮度、品質)買物ができる。
❺
お客様の要望に応じ、従業員が適切に対応する。
❻
精算がスピーディーで正確
E
PL
❸
20
3.部 門 別 管 理
スーパーマーケットでは、複数の部門の合計で、何千何万という種類の商品を取り扱
っています。
店舗全体を一括してどんぶり勘定で管理をしても、どんな商品が売れて
いるのか、売れていないのか、また、どこに問題があるのか正確につかむことができません。
また、刻々と変化する状況への対応が遅れると大きなロスが発生します。
部門別管理とは、店舗ごと、部門ごとに管理する単位を細分化し、より精密な管理を
行っていく、原因分析、責任の所在を明確にする企業の最も基本的な計数管理手法です。
特に利益管理は、より緻密なコントロ―ルが求められ、売上、利益だけでなく、経費
も含めて、設定された期間ごと(日、週、月、年など)に、予算と結果(実績)の差異
を細かく管理しています。結果の数値は、店舗、部門、個人の評価要素にもなります。
部門別管理のポイント
SA
➊ スーパーマーケットの最も基本となる計数管理
M
❷ 店舗ごと、部門ごと、期間を区切って結果を分析 ⇒ 対策
PL
❸ 細分化することで原因分析し、責任の所在を明確化
❹ 緻密な利益管理(含む経費)を実現する基本データ
E
❺ 刻々と変化する状況への迅速な対応の起点
21
4.売 場 レ イ ア ウ ト の 原 則
スーパーマーケットの売場は、お客様にとっては快適で便利な買物の実現、企業側に
とっては効率的で生産性の高いものとなるよう、経験則と行動科学に基づいた以下の
原則にのっとって、計算されたレイアウトとなっています。
実際には、立地や店舗面積、形により各社でアレンジ、工夫されています。
売場レイアウトの基本原則と磁石売場
➊
ワンウェイ・コントロール ( 計画的な動線設定 )
お客様に できるだけ店内をくまなく歩いて、商品を見ていただくために、
店側の期待したお客様の動線(歩く経路)になるように、計画的に設定する。
■
計算された磁石(マグネット)の配置
■
商品の関連性(用途ほか)・陳列の連続性
■
通路幅と見通しの確保(ふさがない)
M
SA
➡
❷
立ち寄り率・買い上げ率の向上
➡
■
PL
できるだけ多くの売場で立ち止まっていただき、手に触れて購買につなげる。
POP広告の有効活用、商品の関連性(用途ほか)
E
第一磁石
➠ 主通路の主力商品の売場
・購買頻度の高い商品
・季節性の高い商品
第二磁石
➠ 売場の奥へ誘導する商品
・旬や話題性のある見せ筋商品
第三磁石
➠ 主通路から売場の中へ誘導する商品
・大量陳列されインパクトのある商品
・ゴンドラエンド
第四磁石
➠ 売場のコーナーごとの目玉商品
・新商品、お薦め商品
✹ 売場の磁石 :お客様を引き付け、売場の奥に誘導する売場、商品
22
5.商 品 陳 列 の 原 則
売場において常に “ 主役は商品 ”です。
来店したお客様に
その商品をいかに多く、見て、触れて、買っていただくかについて、
陳列の原則にもとづき、また、創意工夫して計画、実施し、効果をあげていくことが
商品陳列の核心です。
商品陳列の基本原則
➊
見やすい
➡
❷
常にお客様の立場、目線で考える。
SA
常に先に入荷した商品を先に販売する。
前進立体陳列(前出し)
商品がよく見えるようにし、またボリューム感を出す。
M
➡
プライスカード(表示価格)との一致
➡
PL
❹
・手に取りやすい
先入れ先出し
➡
❸
・選びやすい
商品一個一個に価格は表示されていないため、特に注意
E
23
■
ゴールデンゾーン(ライン)
商品棚(ゴンドラ)の中でも、一般の主婦(平均身長 157.5 ㎝)にとって、最も
見やすく、手に取りやすい位置は、ゴールデンゾーン(ライン)と呼ばれています。
通常
床から80~135cmの高さの範囲で、最も商品の販売量が増えます。
店舗として重点的に販売したい商品を陳列し、販売を促進。
床から80~135cm
前進立体陳列
PL
M
SA
■
➣ 出所 財団法人流通経済研究所
売れた結果、引っ込んで歯抜けのようになった棚の陳列商品を前に引っ張り出します。
E
商品の「補充作業」「前出し作業」の際に実施します。。
乱れた売場を手直しし、商品が良く見えるようにし、ボリューム感を演出。
お客様から
よく見えるように
後ろの商品を
前に出す
24
Coffee break
基本用語-2
知っ得!アーカイブ
❶ 商圏
/ 商勢圏
商 圏
・・・ その店舗に来店されるお客様の居住範囲。商圏の範囲は、距離でなく来店に
要する時間によって決まる。特に一次商圏を基礎商圏と呼び、通常は、来店客
の50%が居住する範囲で、SMの場合10分以内で設定する。
商勢圏
・・・ 一つのチェーンが展開している地域。個々の店舗の商圏とは異なる。
ナショナル・チェーンは全国規模、リージョナル・チェーンは特定の地方(複数県)、
ローカル・チェーンは一定の地域が商勢圏となる。
❷ 内食(ないしょく・うちしょく) / 中食(なかしょく) / 外食(がいしょく)
内 食
・・・ 家庭内で素材を料理して、食事をとること。
➡ 国内における約40%をスーパーマーケット(SM)が担っている。
SA
中 食
・・・ 家庭外で調理された食品を購入して持ち帰り、家庭の食卓で食べること。
➡ 持ち帰り弁当チェーン、SMやCVSで販売する弁当、惣菜類、宅配ビザ
外 食
・・・ レストランなど家庭外で食事をとること。
M
❸ 最寄り品 / 買い回り品
PL
最寄り品
・・・ 毎日の生活に欠かせない必需品で使用頻度、購買頻度とも高い商品
買い回り品
・・・ 耐久消費財、高額品など、購入にあたって複数の店舗を比較して購入する商品
※ スーパーマーケットは、最寄り品を主体に取り扱う業態である。
E
❹ プライスの ライン ・ ポイント ・ ゾーン ・ レンジ /
商品構成グラフ
プライス・ライン ・・・ ある商品群の売価の種類。 例えばある商品の売価が100円から225円まで
7種類あったら、プライスラインは3つとなる。
プライス・ポイント ・・・ ある商品群のプライスラインの中で、最も売れている売価。
プライス・ゾーン ・・・ ある商品群の売価の下限と上限の範囲。 商品の売価が100円から225円
まであったら、100~225円がプライス・ゾーンとなる。
プライス・レンジ ・・・ ある商品群のプライス・ゾーンの中で最も販売量が多い中心価格帯。
商品構成グラフ
・・・
商品構成グラフ
陳列量(主にフェイス数)を縦軸に、
価格を横軸にとって、価格別
の陳列量を分析するグラフ。
店舗を調査する場合、どの価格帯に
重点をおいているのかを分析する。
25
6.マーチャンダイジング(MD)の根幹
「商品こそすべて」とも言われる小売業にとって、マーチャンダイジング(MD)は、
最も重要な活動の一つです。
各社それぞれが独自のMDで他社との差別化を目指していますが、その前提となる
基本要素となる以下の7つは、優先順位は異なるものの共通するものです。
➊ 安全・安心
❷ 高鮮度・高品質
❸ おいしさ
❹ 季節感・旬
❺ 健康的
❻ 便利
❼ 値ごろ
そして、お客様にとっての商品の価値(バリューV)は、価格(プライスP)とその
商品の特質(クオリティQ・・・上記➊~❻の項目Q)の相対関係で評価されされます。
E
PL
M
SA
26
7.商品の部門構成
スーパーマーケットで取り扱う商品は、大きく食品と非食品に分かれます。
標準的な店舗で食品の売上高が全体の90%前後となっています。
さらに、食品は、生鮮食品と加工食品ほかと分かれ、青果、食肉、水産の生鮮3部門で
全体の売上の40%前後を占めています。
スーパーマーケットの標準的な部門の構成
※
各社ごとに異なりますので、必ず、確認をお願いします。
E
PL
M
SA
特に生鮮食品は、どの家庭でも毎日使うもので、購買頻度の高い商品です。そのため、
店舗の軸として、主通路の冷蔵・冷凍ケースに第一磁石として、陳列されています。
加工食品を(ドライ)グロサリーと呼ぶ場合もあります。加工商品は、主にゴンドラと
呼ばれる陳列棚に陳列されます。
商品を考える上で、大事なことは、お客様の店舗への評価は、その店舗の最も悪い部分
に左右されることです。せっかくある部門の商品が、他店に比べてとても値打ちのある
ものであっても、他の部門で鮮度や品質に問題ある商品が販売されていると、お客様の
評価は問題ある商品で決定づけられます。
また、必需品に品切れがあれば、再度他店に行って買う必要があり、とても不便な
ものとります。
お客様が満足されるワンストップショッピングは、店舗全体の総合力で
実現されます。
27
8.商品分類(体系)
商品を仕入れ~販売まで、計画的、効率的に管理する上で、部門ごとに細分化した
部門別管理が重要なことは、先に解説しました。
この部門別管理は、各社の商品分類体系にのっとって実施されます。
スーパーマーケットの標準的な商品の部門の分類は、以下のようになります。
さらに、それぞれの部門の商品も的確に管理できるよう分類されており、商品分類体系
は、まさに、スーパーマーケットを運営する上での脳神経と言えます。
現在では、POSシステムほかの高度化により、商品の最小の単位である単品で管理
されています(単品管理)
。これが、日常的に仕事で活用する数値データの基となります。
スーパーマーケットの標準的な商品分類体系
各社ごとに異なりますので、必ず、確認をお願いします。
呼
称
デパートメント( デ プ ト )
意
部門
課
味
例
青果部門、食肉部部門
PL
ディビジョン
M
SA
※
野菜、果実、精肉、加工肉
E
ライン
品群
クラス
単品の集合
レタス、りんご、切り身、ロースム
単品
SMでは販売単位
それぞれ販売時の商品名
サラダ野菜、りんご、豚肉、ハム
◆ 単 品 の定 義 も各 社 によって異 なり、アイテム、SKUなどで区 別 されます。
28
9.商品管理・加工の基本
「安全・安心」「高鮮度・高品質」「おいしい」商品を品切れなく、安定して、継続的
に提供していくために、また、商品劣化によるロスを減らすためにも、店舗では、きめ
細かな商品管理を実施しています。
特に、品質劣化が早い生鮮食品、惣菜・日配食品については、高度な鮮度管理技術が
要求されます。
そして、もっとも重要なことは、私たちが提供する食品は、
“お客様の健康と命”に直結
しているということです。、
商品管理のポイントは、その目的とシステムをよく理解し、ルールを徹底することです。
商品管理・加工のポイント
SA
➊
衛生管理
➡
P.41参照
食中毒発生は最悪の事態であり、社会的責任が大きく問われる。
鮮度・品質管理
M
❷
❸
販売・仕入・在庫管理
PL
販売商品の鮮度と品質が、スーパーマーケットの生命線
E
過剰在庫は品質劣化・商品ロスとなり、逆に品切れはチャンス(販売)
ロスとなる。限られた売場スペースでできるだけ多くの売上・利益
をあげていくために、データの有効活用が鍵を握る。
29
10.季節・旬と生活催事
店舗での、マーチャンダイジングと販売促進の柱は、季節・旬と生活催事への対応です。
この2つをうまく演出できるかどうかで、売場や商品の魅力に大きな差がつきます。
各社は、主に年間52週のカレンダーで週ごとにさまざま企画を計画し、実施しています。
『 旬 』とは、それぞれの生鮮品が最も新鮮で、おいしくなる時期であり、
収穫量も増えることにより、価格も安くなる時期を指しています。
日本ほど季節の移り変わりが鮮やかな国は他になく、そこで暮らす消費者(お客様)は、
季節感を大切にし、四季折々の旬の食品に期待を寄せています。
『生活催事』には、以下のような社会的行事があります。
生活催事は、日々の暮らしを豊かにするためのイベント(ハレの日)でもあり、それを
より充実したものにするサポートがスーパーマーケットの役割と言えます。
SA
生活催事の種類
M
※
各社ごとに表現が異なりますので、必ず確認をお願いします。
お正月、バレンタインデー、節分、クリスマス、
母の日、勤労感謝の日、防災の日 など
地域の行事・祭事・記念日
盆踊り大会、お祭り、運動会、遠足など
生活のイベント
入学、卒業、引っ越し、海水浴、レジャーなど
E
PL
全国的な行事・祭事・記念日
30
11.P O P 広 告 の 基 本
POP広告は、Point of Purchase(Advertising)の略で、
「買物をする場所の広告」と
訳されます。プライスカード、ショーカード、スポッター、のぼり、売場案内など、
店舗内外における全ての広告表示物を指します。
セルフサービスのスーパーマーケットにおいてPOP広告がなければ、売場は成り立ちません。
POP広告は、従業員に代わって『もの言わぬセールスマン』となって、お客様に商品
を説明し(価格や内容)、魅力を伝えてくれる非常に重要な役割を担っています。
POP広告の目的
➊ 商品の説明
➡
価格、特徴、産地、料理メニュー、食べ方など
SA
❷ 短時間で便利な買物の実現
➡ 探している商品をご案内
❸ お客様へのアドバイス
➡ 商品の魅力を伝え、買物の手助け
M
売場では、あくまで商品が主役ですが、せっかくよい商品を販売していも、POP広告
PL
がついてなかったり、汚れていては商品を訴求できず、またイメージダウンとなります。
そして、POP広告の内容は、常にお客様の目線で誠実でなければなりません。
E
○○乳業
低脂肪牛乳
31
Coffee break 『 世界的にもまれな日本特有の
知っ得!アーカイブ
食文化と鮮度の高い生鮮食品 』
日本では、季節の鮮やかな移り変わりと海に囲まれた縦長の国土が、多彩な食材を
産み、世界的にも最も繊細で健康的な特有の食文化を育んできました。
日本には、地域ごとに、季節ごとにそれぞれ異なる旬の生鮮食品があります。
そして、その生鮮食品を、ほぼ毎日 素材として食べ、特に、鮮度に対して敏感です。
“多彩な旬の生鮮食品”“鮮度への高い要求”という二つの側面は、日本固有のものです。
日本のスーパーマーケットは、長年つちかった高度な鮮度管理技術により、二つの高い
ハードルを克服し、地域のお客様のより豊かな暮らしのサポーターとして、また、
重要な社会インフラとしての確固たる地位を得て発展をとげてきました。
日本特有の食文化を象徴する出来事として、カリフールとテスコという世界で第2位
SA
と第3位の巨大小売チェーンの日本からの撤退があげられます。日本の最大手チェーンと
比較しても圧倒的な規模の優位性と世界的な調達力を持ちながら、日本への進出は、
失敗に終わりました。日本の食文化への対応という壁と越えられなかったのです。
❶ 消費期限 / 賞味期限
PL
M
【 基本用語 ー 3 】
← 食品衛生法・JAS法で規定された商品の期限表示
E
消費期限 ・・・ おおむね5日以内で品質劣化する生鮮品、日配品など長期保存できない食品の期限表示
賞味期限 ・・・ おおむね5日を超えてもで急速に品質劣化しない長期保存できる食品の期限表示
❷ アソートメント / ライン・ロビング / フェイシング
アソートメント
・・・ 通常は、部門または商品グループの単位での品揃え、商品構成を指す。
例えば、品揃えが深い(種類が多い)場合、ディープ・アソートメントと表現する。
ライン・ロビング ・・・ 部門数の拡大という意味。従来取り扱っていなかった部門をひとつずつ増やして
総合化すること、ただし、購買頻度が大きく異なる部門を増やしても効果は薄い。
例えばスーパーマーケットで宝石を販売していてもお客様には便利ではない。
フェイシング
・・・ 売場に並べられた同一商品の最前面の数を「フェイス数」という。例えば陳列棚で
その商品が前面に3個並べられた場合は、3フェイスと表現する。このフェイス数を
決定することをファイシングと言う。
❸ 仕越し /仕置き
← 生鮮食品の商品づくりの作業
仕越し
・・・ 前日に行う翌日に備えた商品づくりと保管。 開店時の品揃えを充足させる。
仕置き
・・・ その日のビーク時に備えて、その前に行う商品づくり保管。 チャンス・ロスを防ぐ。
32
12.計数管理 と PDCA
計数管理とは、企業の数値による管理のことです。企業活動では、カン(感覚)
、経験、
だけに頼ることはできず、客観的な数値によって、科学的な運営が行われています。
担当部門の現在の状況を、自分の感覚で「忙しいです」
「ヒマです」「ボチボチです」と
表現したらどうなるでしょうか。相手は状況を理解できず、社会人として失格です。
例えば、「今日は1時の時点で買上点数は○○○点で、売上は○○万円です」さらに、
「10時閉店時には買上点数は○○○点、売上○○万円、予算対比○○○%、昨年対比
○○○%となるよう対策を打っています」と表現すれば、上司は、客観的な状況と対策
についてのアドバイスを行うことができます。
つまり、企業内でのコミュニケーションは、数値化が鉄則であり、計数管理は円滑な
企業活動のために、組織内で状況、課題、対策などを正確に共有するルールと言えます。
日常的に使用する計数は、数学的に複雑な公式でではなく、単純なものです。
SA
大切なのは、その数値が意味する実態、影響度合いと数値の構造を理解することです。
そして、結果の確認(検証)だけでなく、数値を分析した上で先の状況を予測し、
対策を立案(仮説)、計画的な実行を継続的に繰り返していくことです。
PLAN(仮説)-DO(実行)-CHECK(検証)―ACTION(改善)という
M
マネジメント・サイクルを回して行くことが、仕事の進め方の基本となります。
E
PL
33
13.売上と利益の構造
日常的に頻繁に使用する数値は、売上と利益に関するものです。まず大きな枠組みを
理解した上で、実務で活用する計数管理の数式、手法を学習してください。
売上高は、レジ通過客数×平均客単価、さらに平均客単価は、平均一人当り買上点数×
平均1品単価に分解することができます。分解することにより、売上高を増やす対策の
方向を明確にすることができます。実務上ではさらに細分化し、それぞれに必要なデータ
を駆使して、計数管理とあわせて各種の対策を実施しています。
平均
1品単価
平均
客単価
平均
売上高
×
×
買上点数
SA
客 数
レジ通過
M
利益については、企業会計上
正式には、5種類ありますが、ここでは、理解しやす
くするために、荒利益、営業利益までとしています。
PL
売上高を100%とすると、商品を販売して出る最初の利益(荒利益高)は、その内の
18~25%程度です。さらに、人件費や販売管理費などの経費を差し引いた営業利益高は、
売上高の1~5%程度と、スーパーマーケットは薄利多売で成り立っており、計数管理
E
に基づいた精度の高い計画管理とロスを削減する商品管理の重要性がよくわかります。
営業利益高
荒利益高
(18~25%)
(1~5%)
経 費
内訳
売上高
販売費
販売即品費、消耗品費、
仕入諸掛りなど
管理費
水道光熱費、通信費、
旅費交通費、家賃など
人件費
給料、諸手当、
退職金、福利厚生費など
(100%)
商品原価
34
14.効率指標と生産性の追求
薄利多売のスーパーマーケット企業が、人件費を含めて必要経費を安定的に支払い、
企業の社会的責任と して税金を納め、将 来に向けて発展して いくための源となる
適正利潤は、効率の追求によって生み出されます。
活動した数値結果は、単に売上や利益の増減だけでなく、各種公式で加減乗除するこ
とによって、効率指標が求められ、評価と次の活動の基礎データとなります。
さまざまな側面の各種効率指標の分析によって、計画(予算)と実績の差異の原因を深く
究明することが可能となり、的確な対策を実施することで効率の追求ができるのです。
効率指標は、大きく営業レベル業経営レベルがありますが、営業レベルの効率指標
には以下のものがあり、各社ごとに売場、店舗、企業単位で目標が設定されています。
一般的な営業レベルの効率指標
*自社の効率指標と設定目標を確認してください。
SA
➊
売上高
商品回転率 (回転) = 平均在庫高
❷
交差比率
❸
売上高
坪効率 (金額) = 売場面積(坪)
➠ 売場の販売効率の指標
❹
荒利益高
売場生産性(坪当り荒 利益高)= 売場面積(坪)
➠ 売場の収益性の指標
=
M
(%)
➠ 商品の販売効率の指標
荒利益率 × 商品回転率 ➠ 商品の収益性の指標
E
PL
❺
売上高
1人当りの売上高 (金額 ) = 全従業員者数
❻
荒利益高
売場生産性(坪当り荒 利益高)= ➠ 人の収益性の指標
売場面積(坪)
❼
売上高
人時売上高 (金額) = 総労働時間
➠ 労働時間の販売効率の指標
❽
荒利益高
人時生産性 (金額) = 総労働時間
➠ 労働時間の収益性の指標
➠ 人の販売効率の指標
※ 人時 : マンアワー(MH)とも呼ばれ、従業員1人の1時間の労働時間をあらわす単位
35
Coffee break
基本用語-4
知っ得!アーカイブ
❶ 値入高(率) / 荒利益高(率)
値入高(率)
・・・ 売価を決定する時(販売前に)、予定する利益高(率)
荒利益高(率) ・・・ 販売後、実績として確定した利益高(率)
※ 通常、店舗で同じ商品を複数個販売した場合、値下げやロスの発生により荒利益高は値入高より減少する。
原価については、販売前の値入高計画時は仕入原価、販売後の荒利益高確定時は商品原価と呼び、区別する。
【 販売前 計画時 】
【 販売後 実績確定時 】
ロス高
値入高
(予定利益)
荒利益高
(確定利益)
売価
売上高
(予定)
(実績)
仕入原価
=
SA
値入高
売価 - 原価
荒利益高
M
値入高
値入率 =  100
売価
=
売上高 - 原価
荒利益高
荒利益率 =  100
売価
PL
❷ 歩留り(率)
商品原価
特に魚、肉などの部門において原料を加工(商品作りでの内臓や骨の除去など)した結果、
どれだけの商品ができたかを重量の割合であらわした比率
E
歩留り率 =
加工後の商品の重量
100
加工前の原材料の重量
❸ (実施)棚卸し
期末(月末、年度末など)に、商品在庫やその原材料などの数量及び金額を実際に数えて、
把握すること。期末の在庫を確定しなければ、正確な荒利益を求めることができない。
❹ 支持率 / PI値
支持率
… お客様がその店舗、部門に対してどれだけ支持しているかを知る指標
買上点数(店舗全体又 は部門ごと)
(買上点数)支持率 = 客数(レジ通過客数)
PI値
… お客様1000人当たりで、その商品がどれだけ買われたかを表す指標
PI値のデータを蓄積していくことにより、販売数量や金額が予測ができる。
販売数量
数量PI値  1000
レジ通過客数
36
販売金額
金額PI値  1000
レジ通過客数
❺ 値入ミックス (相乗積、マージン・ミックス)
売場では、それぞれの商品の値入率は一律で同じではなく、さまざまな要因によって異なっている。
値入率の高い商品と低い商品が混在し、最終的にトータルで部門や店舗の荒利益率が確定する。
値入ミックスは、各商品の値入率(売価決定)とその構成比を検討し、全体として目標とする
荒利益率を確保する、実務で日常的に使われる商品販売の基本となる方法。
各商品の売上構成比と値入率を掛けたもの(相乗積)の合計が全体の値入率となる。
例えば以下のA~Bの3商品を値入ミックスした結果の全体の値入率は、25.50%と計算される。
商
品
売上構成比
値入率
相乗積
A
40%
20%
8.00
B
30%
25%
7.50
C
20%
30%
6.00
合計
100%
―――
25.50%
売上構成比
×
値入率
=
合計が計画する
全体の値入率
相乗積
SA
❻ ABC(D)分析 (重点管理分析)
商品の重点管理をする分析手法。売場にある品目数の多い商品に、その売上高(又は販売数量)
の大きい順にABCDの4つに分け、重点管理する。全体の10~20%の商品(単品)で、
M
全売上高の70%~90%を占めることがわかる。全ての商品を平均的に管理するのではなく、
重要商品については、品切れ防止、利益コントロールを徹底する。また、死に筋商品を見つけ
PL
カットし、商品回転率を高くする際にも活用する。
E
売
上
累
計
品目数
❼ 財務会計 / 管理会計
財務会計
・・・ 外部に報告するための会計で、商法や税法などの諸法規に基づいて決算書類を作成する。
1年間の結果を集計し、株主、国、地方自治体に報告することが義務づけられている。
管理会計
・・・ 内部で(計数)管理に活用する会計で、特に月ごとの営業成績を店舗、部門など
細分化された単位で課題を確認し、タイムリーに対策を実施して行くための会計。
営業結果について各社のルールで帳票を作成し、現場で日常的に活用する。
37
15.挨拶と接客の基本
せっかく、高鮮度・高品質の商品を、おいしそうにさまざまな演出をした売場で訴求し
ていても、店舗で働く従業員が元気で、また、親切でなければ、その魅力は伝わりません。
スーパーマーケットは、地域のコミュニティでもあり、お客様は仕方なく買物しているの
ではなく、人とのふれあいの中で、買物を楽しみたいと考えています。クレームの最大の
原因が従業員の対応のまずさであり、対応のまずさは、第一印象が大きく影響します。
あらゆる人間関係の中で最も大切なことは、お互いに心を開きあっていることです。
挨拶は、その出発点です。社内の皆さんに対しても、お客様に対しても基本は同じです。
大切なことは、元気に 心をこめて、会釈(お客様にはおじぎ)をしながら発声することです。
元気のない口先だけのあいさつ、だらだらしたおじぎは、悪印象を与えてしまいます。
➊
SA
社内挨拶4大用語
おはようございます
E
PL
M
❷ ありがとうございます/ございました
❸ 失礼致します
❹ すみませんでした
接客 10 大基準用語
※各社で表現が異なる場合があります。
➊
いらっしゃいませ
❷
❸
❹
❺
❻
❼
❽
❾
❿
ありがとうございます/ございました
いつもお世話になっております
またどうぞお越し下さいませ
申し訳ございません
かしこまりました
恐れ入ります
失礼致します
少々お待ち下さいませ
お待たせ致しました
38
16.顧客満足度(CS)の向上
スーパーマーケットにおける、顧客満足度(Customer Satisfaction)の向上とは、
『 お客様が、より安心して快適に、楽しく買い物をしていただく 』ための取り組みです。
従来とまったく異なるやり方で、アッと思わせるような特別なことではありません。
顧客満足度は、店舗や企業の総合力で評価されます。一人、一部門だけでなく、全体で
一丸となって、お客様の立場で考え実践するチームワークによってその向上が実現します。
顧客満足度の向上によって、以下の好循環が生まれ、仕事のやりがいを実感できます。
お客様の支持率の向上
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会社の業績向上
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固定客の増加
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安定した売上、利益の実現
個人の労働条件の改善
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やりがいと仕事の充実
お客様は、『これくらいの商品やサービスはあるだろうな』と何らかの期待を抱いて来店
します。期待以上か期待通りであれば、引き続き信頼して、来店することになります。
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一方、期待を裏切られると不満を持ちます。
不満を持ったお客様の約95%は、黙ったままで、私たちが自ら気がつかないと、
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信頼を失い、お客様はいつのまにか他店へ行ってしまいます。
また、良い口コミは3人に、悪い口コミは33人に伝わると言われています。
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スーパーマーケットは、長年に渡り、小商圏の中で営業を続けていきます。
つまり限られたお客様によって成り立っている店舗にとって、お客様の信頼が最大の
財産であり、お客様を失うと、簡単に新たなお客様を増やすことはできないのです。
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商 品・サービス な どお 店の総 合評 価
期待以上
期待通り
再来店
固定化
口コミ
顧客増
いつでも
他店へ
不安定
黙って
他店へ
期待の裏切り
ファンとして
対応が良い
再来店
顧客減
固定化
クレーム
顧客減
対応が悪い
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口コミ
17.クレーム対応の基本
店舗において、クレームは日常的に必ず発生すると考えてください。
一般的に商品を購入して満足するお客様は60%で、残り40%のお客様は何らかの
不満を持っていると言われています。
また、不満を持ったお客様は、ほとんど黙ったままで、僅か5%のお客様しか口に出さ
ないという統計もあります。
もし、クレームのまったくないお店があったとしたら、お店側がクレームをクレームと
認識していないのか、いわゆるサイレント・クレーマー(不満をかかえているが、クレ
ームをいわないお客様)が多いのかのどちらかです。
クレームは、お客様のお店に対する客観的な生のご意見です。
この貴重なご意見によって、仕事の質を高めて行けるのだと考えることが必要です。
そして、最も大切なことは、クレームへの誠実対応で、お客様の満足と信頼につながれば、
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マイナスイメージがプラスとなり、お店のファン = 固定客が増えるということです。
クレーム対応の基本
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➊ まず、お詫びをする。
❷ 誠実に対応し、お客様の損失をよく理解する。
❸ お客様のお話を最後までよく聞く。
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❹ 言い訳をしない。
❺ できるだけ迅速に解決する。
❻ お客様の期待以上の対応をする。
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1 8 . 安 全 ・安 心 の基 本 1 ー 食 品 衛 生
スーパーマーケットで販売する食品は、お客様の健康を支え、命に直結しています。
従って「安全・安心」な食品の提供が何よりも優先しなければいけません。
安全・安心を確保して行く上で、食品衛生の徹底が最大のポイントとなります。
食品衛生のポイント
※ 必ず社内ルールを確認し、徹底してください。
➊ 食中毒の発生は、最悪の事態
➢ 信用の失墜
➢ 営業停止処分など
❷ 食中毒は、年間を通じて発生
➢ 清潔
冬期にもノロウィルスが多発
➢ 迅速 ➢ 冷却または加熱
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❸ 作業基本3原則
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➢ 刑事及び民事責任
➢ 整頓(Seiton) ➢ 清掃(Seisou)
➢ 健康管理
➢ 身だしなみ ➢ 衛生的な手洗い
❹ 5S 活動
➢ 整理(Seiri)
❺ 個人衛生
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❻ 清浄と殺菌
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➢ 清潔(Siketu) ➢ 習慣・躾(Syukann)
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1 9 . 安 全 ・安 心 の基 本 2 ー 食 品 表 示
食品表示は、安全な商品をより安心して買物するための、 欠くことのできない情報です。
その商品を買う、買わない、食べる、食べないは最終的にお客様が判断することですが、
正しい判断ができるような情報提供(表示)は、販売側の大きな責任です。
法律やそれに準ずるルールは非常に多くのものがあります。
ただ単に商品をお客様に提供するだけでなく、スーパーマーケットは、お客様がご自身
の判断でその商品を購入すべきか否かを決定するための正しい情報を提供する場であること
を強く認識し、生命に直結する食品を取り扱っているという責任と誇りを持ちましょう。
食品表示は、法律で規定されています。。法律を逸脱することは絶対に許されません。
※ 必ず社内ルールを確認し、徹底してください。
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20.コンプライアンス(法令遵守)
企業を経営する上での法令や各種規則などのルール、さらには社会の常識的なルール
を守ることがコンプライアンスです。 「法令遵守」と訳されますが、英語の compliance
は「要求に応じること」
「願いを受け入れること」を意味し、守るべき規範は法律に限らず、
社会通念、倫理や道徳を含むと解釈されています。
企業を取り巻く法律や規則は、民法や商法をはじめ独占禁止法、不正競争防止法、
労働法、消費 者保護法など多数あり、監督官庁の命令・指導などもあります。
さらに、販売活動や 仕入先企業への公正さ、消費者などへの情報公開、職場環境など、
多くの面で高い倫理が求められるようになっています。
企業は、こうした多岐にわたる規則・規範を従業員が遵守し、もし違反行為があった
場合には、早期に発見して是正できるマネジメント体制を作ることが求められています。
そして、最も重要なことは、常に従業員一人ひとりが問題意識を持ち、行動することです。
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コンプライアンスの3つの柱
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➊ 法令
※ 必ず社内ルールを確認し、徹底してください。
➠ 国や行政機関によって定められた法律 ・ 政令 ・ 条例
・ 通達などを含み、違反すると罰則を受けるもの
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➠ 会社内で独自に定めた規程・マニュアル・ 作業手順書
・ 社内通知など。 これに違反したからと言って、
行政機関から罰せられることはないもの
❸ 倫理
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❷ 社内規則
社是・倫理綱領・規範など具体的な罰則規定があるわけでは
なく、「考え方」を定めたもの
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21.環境保全(地球と地域)
私たちの生活する地球が有限のものであり、破壊された環境を復元することがどれだ
け大変なことかは、誰もが認識しています。このかけがいのない地球環境を将来に向け、
しっかりと守っていくこと、持続可能な社会の実現は、現代に生きる私たちのつとめです。
また、地域社会と深くかかわるスーパーマーケットにとっては、環境問題に対して、
継続的に生活を支えていく担い手としての大きな社会的責任があります。
環境問題は広範囲に渡り、関連法規も複雑ですが、大切なことは、一人ひとりが高い
意識を持って、各社で実施するさまざまな取り組みに積極的に参画することです。
スーパーマーケットの主な環境活動
(食品トレー・牛乳パック・ペットボトルなどの回収、生ごみほか)
❸ 省エネの推進
(節電・節水など使用エネルギーの削減)
❹ 消費資源の削減
(レジ袋・段ボールなどの削減、包装の簡素化、配送の効率化)
❺ 緑化活動
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➊ リサイクルの推進
❷ 廃棄物の削減
(生ごみ、紙、段ボールほか)
(植樹活動)
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➊ 容器包装リサイクル法
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主な関連法規
一般ごみの約 60%を占めるといわれる容器包装ごみ
ペットボトル、食品トレイなど)のリサイクルを推進する法律
❷ 食品リサイクル法
食品製造工程や販売時の「食品廃棄物」を減らし、リサイクルを
進めるため、生産者や販売者などに食品廃棄物の減量・
リサイクルを義務付けた法律。
❸ 省エネ法
工場や店舗ほかについての省エネ化を進め、効率的に
使用するための法律。厳しく省エネ対策が規定されている。
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22.食事と健康
健康は、バランスのよい食事で維持することができます。健康的な食生活を営む上で、
大切なのは、すべての必要な栄養素をかたよりなく摂取することです。そのためには
多様な食品を幅広く、食事に盛り込むのがポイントとなります。
すべての種類の食品を販売するスーパーマーケットは、お客様に健康的な食生活を送っ
ていただくための情報提供がことさら重要となってきます。(次頁 食育で解説)
厚生労働省の指導では、1 日に30品目程度の食品を摂取することを、健康的食生活
の目標とし、健康的な食生活を実現するため摂取する食品の組み合わせや摂取量の目安
について以下食事バランスガイドを作成し普及を推進しています。
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食品を提供する側のスーパーマーケットの担当者の役割として、食品の栄養素や健康的
な食事の仕方、料理方法について、お客様に適切な情報提供と提案ができるよう、自らが
積極的に情報を収集し、伝えていく努力が求められます。
特に自分の担当する商品については、特徴、味、食べ方も含めて、十分な商品知識を
持つことにより、自信とやりがいを持って仕事に取り組むことができます。
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23.食育とは?
食育とは、国民一人ひとりが生涯を通じて、健全な食生活の実現、食文化の継承、
健康維持ができるよう、食に関する様々な知識と判断力、習慣を身に付けるための教育
活動の取り組みを指しています。
2005 年 7 月に国民が生涯にわたって健全な心身をつちかい、豊かな人間性をはぐくむこと
ができるよう「食育」を総合的・計画的に推進することを目的に「 食育基本法 」が
施行されました。
飽食の時代と言われる今日、お客様は売場にあふれる食品の中から自由に好きなもの
を選ぶことができます。
一方では、より安全で健康的な食品を選択、判断するための情報、知識を求めています。
家庭でのより豊かな食卓を支えるスーパーマーケットにとって、食育の担い手になる
ことが社会的使命の一つと考えれられ、また、新しいライフスタイルに積極的に対応し
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ていくキーワードとして、各社がさまざまな取り組みを推進しています。
食育が重要視される主な背景
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➊ 肥満や生活習慣病の増加
➠ 食事による栄養バランスのかたより
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世界的な人口増による食料不足、海外への依存
❸ 食の安全・安心
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添加物、農薬、放射能ほかリスクの拡大
❹ 伝統的な食文化の喪失
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❷ 食料資源問題
➠ 各地の特色ある食文化の継承
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2 4 . ミール・ソリューション(食事の問題解決)
ミール・ソリューション(MS)は、直訳すると「食事の問題解決」となります。
単に食品を販売するではなく、調理時間の短縮やメニューの提案、栄養管理など
食生活全般にかかわるさまざまな問題に対応していこうという考え方
で、アメリカのスーパーマーケット業界が 1996 年に打ち出した概念です。
同じような言葉にホーム・ミール・リプレイスメント(HMR)といものがあり、こちら
は、「家庭料理の代行」の意味で、MSの中の、料理済み食品の分野を指しています。
日本でも以下のような社会やライフスタイルの変化により、家庭での食事について、
特に 調理にかける時間を短縮したい というニーズが強まっています。
■ 働く女性の増加
■ 高齢化の進展
■ 余暇の拡大
さらに、手間をかけないで、できるだけ安全で健康的、おいしい家庭料理を作りたいと
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いうニーズがあり、MSはまさにこの相反する問題を解決する、スーパーマーケットに
とって重要な戦略となっています。
➊ そのまま食べられる商品
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ミール・ソリューションに対応した商品
❷ 温めれば食べられる商品
(Ready to Eat)
惣菜など
(Ready to Heat) 電子レンジ食品など
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❸ 下ごしらえがされている商品(Ready
❹ 食材が準備された商品
to Cook) 半調理食品
(Ready to Prepare)素材のセット商品など
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Coffee break
MOT/ 真実の瞬間
知っ得!アーカイブ
Moment of Truth
お客様が来店された際、お客様とお店や従業員との間に多くの接点が生まれます。
それぞれの接点(瞬間)でお客様がどのように感じるかによって、店舗や企業に
対する評価、印象が決定づけられる、つまり、お客様と直接接触する数秒~数十秒
こそが企業経営にとって最も重要な瞬間だとする顧客満足度向上の考え方です。
その一つひとつの接点を改善することにより、お客様の満足を実現できるのです。
MOT(真実の瞬間)を世界に紹介したのは元スカンジナビア航空の社長兼
CEOのヤン・カールセンです。彼はスカンジナビア航空の経営再建の柱にこの
考えを掲げ、同社の収益向上に大きな成果を挙げました。
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ヤン・カールセンは、彼の著書「Moment of Truth」の中で「当時年間1000万人
の旅客が、それぞれ約5人のスカンジナビア航空の従業員に接し、その1回の
応対時間の平均が15秒であった。従って、1回15秒で1年間に5000万回、
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顧客の脳裏にスカンジナビア航空の印象が刻みつけられたことになる。
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その5000万回の“真実の瞬間”が、結局スカンジナビア航空の成功を左右する
のである。その瞬間こそ私たちが顧客に、スカンジナビア航空が最良の選択だった
と納得していただかなければならない機会なのだ」と述べています。
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この15秒を最大限に活かすために、カールソンは、現場のスタッフを的確に教育
訓練し、意思決定に必要は情報が得られるような環境を整備した上で、顧客1人
ひとりのさまざまな要望・問い合わせに対して迅速かつ適切な対策を講じる責任
と権限を委譲しました。
規則や規定に基づいた画一的サービスや上司の判断を仰ぐようでは、せっかくの
“真実の瞬間”を無駄にしてしまうと考えたのです。
そして、この手法がより発展し、
今日では「サービスマネジメント」
の考え方として確立されています。
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基本用語-5
❶ アイ・キャッチャー
広告用語で、お客様の基引き付け、注目や購買意欲を刺激するもののこと。
❷ アイドルタイム
暇な時間のこと。店舗ではお客様の来店の少ない時間帯のことを意味する。
❸ EDLP
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ハイ&ロー
EDLP
・・・ エブリデイ・ロー・プライスの略で、期間限定の特売などを行わず、
毎日同じ低価格で商品を販売し続ける価格政策のこと。
ハイ&ロー
・・・ EDLPに対して、特売などで価格を変動(上下)させ、集客する一般的な価格政策
❹ インストアパック(加工)/
アウトパック
インストアパック ・・・ 生鮮食品などの商品化の作業を店内で行なうこと。
アウトパック
・・・ 商品化の加工作業を店外のセンターや納入業者(ベンダー)で行なうこと。
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❺ 売れ筋
死に筋
売れ筋 ・・・ 一般的には同じ品種(ライン)の中で、特に販売量の多い品目を指す。
通常はABC(D)分析でAグループの商品を指すが、基準は各社で決定する。
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死に筋 ・・・ 商品回転率が悪く、品揃えすべきない商品のこと。基準は各社で決定する。
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❻ クリンリネス(クレンリネス)
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サニテーション
★ スー パー マー ケッ トにお ける 清掃 の基 本
・・・ 視覚的にきれいな状態。 ひかり輝くような清潔感あふれる状態を指す。
サニテーション
・・・ 衛生管理と訳されることもある。目に見えない細菌レベルまで清潔にすること。
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クリンリネス
❼ ストア・コンパリスン
単なる店舗見学とは異なり、店舗を詳細に比較・分析して、自社(自店)の経営・営業目標を
設定するための店舗調査の方法。
❽ 選別値入れ
生鮮食品において、入荷した1ケースの中で、サイズの大きいもの、小さいもの、見栄えのよい
ものなどをより分けて、値入ミックスし、安さを訴求しながら利益を高めるための販売技術。
❾ ソース・マーキング
メーカーの生産または出荷段階(ソース)で商品包装や容器の一部に商品コードを印刷すること。
店舗内で商品コードを付けることをインストア・マーキングと言う。
❿ 目玉商品
集客のために、大幅に値下げした特売品のこと。NBなど知名度の高い商品が効果的である。
値下幅や注目度の度合いにより大目、中目という使われ方をする。
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おわりに
働くとことは、決して楽しいことばかりでありません。むしろ、辛いことの方が多いか
もしれません。また、仕事は何事もすぐにうまくいくものではないと考えてください。
だからこそ、やりがいがあります。努力が必ず報われるのが、スーパーマーケットの仕事です。
その評価は、上司、会社だけでなく、毎日来店するお客様がされるのです。
このお店があって良かった、あなたがいて良かったと思われたら、それが最高の誇りです。
スーパーマーケットの仕事にどれだけの社会的使命があるかを理解いただけたでしょうか?
大きな使命と責任をたずさえて仕事ができるということは素晴らしいことです。
そして、小売業の中でも最も近代化した業態として、今後、ますます新しいことに挑戦し
ていくことになります。
国内のみならず、グローバルな大きな環境の変化の潮流は、
一方では、無限の可能性を秘めているのです。
本テキストの冒頭で、以下の2つについて触れました。
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仕事をする上で、またその中で成長し、人生を豊かに生きて行く上で大切な視点ですので、
最後に、もう一度確認しておきます。
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■ 「 変即不変 」 変化の中に不変を見、不変の中に変化を見る。
変化しているように見えるが、実は根底にある基本は変わらない。
PL
一方変化していないように見えても、実は内部では刻々と変化している。
■ 「 鳥の目・虫の目・魚の目 」 物事を見る(観察、分析)する視点
まず、鳥のように高い、広い視点からを全体的に見る。次に、虫のように、近い視点
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から現実を複眼的に深く見る。常に、魚のように、時代の潮流、変化を読み取る。
今日の仕事は
、
あなたの今日の仕事は、
タッタ一人でよい
、
この店に買いにきてよかったと
、
、
満足して下さるお客さまを
作ることです。
株 式 会 社 商 業 界 『岡 田 徹 詩 集 』よ り
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