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無線通信用マルチモードLSI技術

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無線通信用マルチモードLSI技術
特 集
SPECIAL REPORTS
特
集
無線通信用マルチモード LSI 技術
Multimode Wireless Communication LSI Technology
藤澤 俊雄
堀崎 耕司
畝川 康夫
■ FUJISAWA Toshio
■ HORISAKI Koji
■ UNEKAWA Yasuo
携帯機器に搭載される無線通信機能は増加傾向にあり,次々と登場する新機能に迅速に対応するとともに,コストや消費電
力に対する厳しい要求にも応えていくことが求められている。
東芝は,これら複数の無線通信機能をLSIに効率良く実装できる設計プラットフォームを開発し,IEEE(電気電子技術者協会)
規格の802.11n(無線 LAN)と802.16e(Mobile WiMAX(注1)),及び3GPP(3rd Generation Partnership Project)
の LTE(Long Term Evolution)に対しベースバンド変復調処理をリアルタイムで行えることや,製品レベルの信頼性が得られ
ることを確認した。今後は,更なる通信速度の向上や低消費電力化を進めるとともに,通信方式切替え時間の短縮などユーザ
ビリティの向上に向けた技術開発も進めていく。
Accompanying the increase in wireless communication functions of mobile terminals, both rapid responses to new functions appearing in rapid
succession and reductions in cost and power consumption are required.
A number of wireless communication large-scale integrations (LSIs)
equipped with smaller footprints for these products have been released in recent years.
With this as a background, Toshiba has developed a design platform for wireless baseband LSIs that can efficiently implement multiple wireless
communication functions, including wireless LAN standardized under the IEEE 802.11n standard, Mobile WiMAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access) standardized under IEEE 802.16e, and 3GPP-LTE (Third-Generation Partnership Project-Long Term Evolution).
We have confirmed that
this technology has the capability of processing up to 130 Mbps throughput and product-level reliability using our 90 nm complementary metal-oxide
semiconductor (CMOS) process technology.
We are continuing our efforts to further improve usability in such areas as performance, power consumption,
and switching latencies between wireless standards.
動速度を軸にプロットすると図1のようになる。
1 まえがき
右上に位置する規格は,移動中に高いデータレートで通信
情報のデジタル化と通信量の増大に伴って新しい無線通信
を行うため,より高度な信号処理を行う必要があるが,従来
規格が次々と登場しており,これらの規格をデータレートと移
は,LSIの微細化とそれに伴う性能向上により実用化が進めら
2000 年
2008 年
2015 年
:非 OFDM 方式
1,000
移動速度(km/h)
PDC
GSM
HSDPA
HSUPA
IEEE 802.11p
W-CDMA
GPRS
Mobile
WiMAX
100
PHS,高度化 PHS
:OFDM 方式
第
3G
PP
-
DVB-H
4世
:OFDM MIMO 方式
代(
LT
LT
E-
E
ad
va
nc
ed
,1
(注 2)
WiMAX
10
6m
ISDB-T
(b) 802.11a/g
IEEE 802.11
1
(注 3)
ZigBee
Bluetooth
802.11n
®
(注 4)
)
802.11ac/ad
UWB
(注 6)
WirelessHD
Transfer(注 5)
Jet
100 k
1M
10 M
100 M
PDC
:Personal Digital Cellular
GSM
:Global System for Mobile Communications
GPRS :General Packet Radio Service
W-CDMA:Wideband Code Division Multiple Access
HSDPA :High Speed Downlink Packet Access
HSUPA :High Speed Uplink Packet Access
PHS
:Personal Handy Phone System
DVB-H :Digital Video Broadcasting-Handheld
ISDB-T :Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial
UWB
:Ultra Wide Band
1G
データレート
(ビット/s)
図1.様々な無線通信規格のデータレートと移動速度 ̶ 年代が進むにつれて,実用化される通信規格は右上方向に進んでいる。
Relationship between data rate and mobility of various communication standards
(注1)
,
(注 2)
Mobile WiMAX,WiMAX は,WiMAX Forum の登録商標。
(注 3) ZigBee は,ZigBee Alliance, Inc. の登録商標。
(注 4) Bluetooth® ワードマーク及びロゴは,Bluetooth SIG, Inc. が所有
する登録商標であり,東芝は,許可を受けて使用。
東芝レビュー Vol.66 No.4(2011)
(注 5) TransferJet は,ソニー(株)の登録商標。
(注 6) WirelessHD は,SIBEAM, Inc. の商標又は登録商標。
11
れてきた。しかし,このような最先端の無線通信規格に一つの
をハードワイヤードロジックで構成し,パラメータを変更するこ
LSI で対応するためには,高周波回路は広い周波数帯域の無
とで複数規格へ対応できるようにしている。
線信号を低ひずみで処理すること,また,ベースバンド回路は
一方,MODEMは,一つの無線通信規格内に数十の処理
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や
方式があり,復調アルゴリズムによって受信性能が数倍も変わ
MIMO(Multiple Input and Multiple Output)などの複雑な
る特徴があるため,ソフトウェアの変更によって機能を再構成
信号処理を伝搬路の環境に合わせて柔軟に行うことが要求さ
できる回路を用いて実現した。これによって,多数のハードワ
れる。
イヤードロジックを横に並べる場合に比べて,LSIの実装面積
東芝は,無線通信規格ごとのベースバンド処理の違いを動
を小さくすることもできる。
的再構成可能な回路で吸収することにより,様々な無線通信
に対応できるLSIの設計プラットフォームを構築した。
ここでは,無線通信用 LSIの設計プラットフォームの構成,
そのキーデバイスである動的再構成可能なプロセッサの設計,
3 動的再構成可能な MODEM の設計
3.1 プロセッサの選択
動的再構成可能なMODEMを実現するための候補として,
及び無線 LANなどへの実装結果について述べる。
DRP(Dynamic Reconfigurable Processor)やDSP(Digital
2 無線通信用 LSI 設計プラットフォームの構成
無線通信用 LSIの設計プラットフォームは,送受信制御など
を行うMAC(Media Access Control)部と,変復調処理など
。
を行うベースバンド部で構成される(図 2)
Signal Processor)などが挙げられる。無線 LAN規格の一つで
あるIEEE 802.11aを実装した場合のそれぞれの面積と消費
電力を図3に示す。
携帯機器への搭載を考慮すると消費電力は数百mW以下,
LSIのコストを考慮すると面積はできるだけ小さいほうが望ま
MAC 部は,汎用プロセッサと複数のハードウェアエンジンを
備えており,汎用プロセッサ上で動作するソフトウェアにより,
しいことから,3 者の中では粗粒度 DRP がもっとも適している
ことがわかる。
通信データの送受信が管理される。また,ハードウェアエンジ
代表的なDRP(一部は DSP)の特徴を表1に示す。小面積
ンは,セキュリティ保護のためのAES(Advanced Encryption
で低消費電力かつリアルタイムに変復調できる性能を備え,
(注 7)
Standard)
機能などを含んでいる。
更に,効率良く様々な無線通信規格に対応していくための開
ベースバンド部は,同期処理などを行うDFE(Digital Front
発環境を重視すると,ADRES(Architecture for Dynamic
End),変復調処理などを行うMODEM(Modulation and
Reconfigurable Embedded System)がもっとも優れているこ
Demodulation),及び誤り訂正などを行うFEC(Forward
とがわかる。
Error Correction)の3ブロックで構成される。このうちDFE
当社は,2008 年にベルギーの独立研究機関 IMEC(Inter-
とFEC は,核となる演算の種類が限られているため,大部分
university Microelectronics Center)からADRES の研究開
発用ライセンスを取得し,以降,実用性の向上と更なる性能の
拡張を進めている。
ベースバンド部
MODEM
自動
利得制御
高速
フーリエ
変換
時間同期
イコライズ
自動
周波数
調整
MIMO デコード
FEC
1,800
12
デジタル/
アナログ
変換
有限
インパルス
応答フィルタ
高周波
回路制御
マッピング
インタリーブ
リード
ソロモン
符号
低密度
パリティ
検査符号
スクランブル
10
送信
・受信
制御
巡回
冗長
検査
ホスト
インタ
フェース
面積(mm2)
高周波
回路
アナログ/
デジタル
変換
ビタビ
デコード
1,600
面積
1,400
1,200
8
1,000
6
800
消費電力
600
4
400
AES
2
200
ストリーム デマッピング
0
チャネル推定
消費電力(mW)
DFE
MAC 部
ハードワイヤード
ロジック
(動的再構成不可能)
細粒度
DRP
粗粒度
DRP
DSP
0
*90 nm 世代 CMOS
(相補型金属酸化膜半導体)
プロセスで製造した場合
図 2.無線通信用 LSI の設計プラットフォームの構成 ̶ 様々な無線通信
規格に対応するために,ベースバンド部に動的再構成可能な機能を用いて
いる。
Architecture of wireless communication LSI platform
図 3.IEEE 802.11a 実装時の面積と消費電力の比較 ̶ DRP は DSP
に比べて消費電力が小さく,IEEE 802.11a(無線 LAN)のMODEM 処理
に適している。
Comparison of area and power consumption when implementing IEEE
802.11a modulator-demodulator (modem)
(注 7) 米国の標準暗号規格である共通鍵暗号方式。
12
東芝レビュー Vol.66 No.4(2011)
表1.代表的な DRP の特徴
特
集
データメモリ
Benchmarks of various dynamic reconfigurable processors (DRPs)
D-Fabrix
DAPDNA-2
DRP-1
ADRES
処理性能
△
×
カスタマイズ可
能な DSP。
100 M ビット/s
クラスの無線処
理には性能不足
○
△
×
×
コンテキスト
切替えに時間
がかかる
△
×
PE が細粒
度で面積
効率が低い
×
PE がヘテロ
ジニアスであ
り,マッピン
グ最適化に人
手を要する
○
△
△
○
○
○
◎
単一の ANSI
C ソースから
VLIW モード
/アレイモー
ド両方の実
行バイナリが
生成可能
○
命令フェッチ
命令発行
分岐制御
モード制御
グローバル
プレディケーション レジスタファイル
グローバル データレジスタファイル
CGA & VLIW
×
△
VLIW 制御部
CGA 部分
△
PE アレイと
コントローラ
が疎結合で
あり,VLIW
モード⇔アレ
イモードの切
替えに時間が
かかる
△
◎
VLIWユニッ
トと FU アレ
イが密結合し
ており,動作
モードの切替
えが高速
○
FU
FU
FU
FU
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
FU
RF
命令キャッシュ
Diamond
545CK
VLIW 部分
リアルタイム 性能スケーラ 電力・面積
性
ビリティ
効率
開発環境
コンフィグレーションメモリ
名 称
CGA:粗粒度アレイ RF:レジスタファイル
△
図 4.ADRES のアーキテクチャ ̶ FUの数は最大 64 個まで拡張できる。
Architecture for dynamic reconfigurable embedded system (ADRES)
ロックサイクルごとに異なる命令を実行でき,これが DRPと呼
△
ばれる理由になっている。
図 4では,FUが 16 個の場合の構成が描かれているが,FU
数を最大 64 個まで拡張し,演算性能を向上させることができ
◎:優秀 ○:良好 △:普通 ×:不十分 PE:要素プロセッサ ANSI:米国国家規格協会
る。各 FU は,加減算やシフト演算などの通常の論理演算に
加えて,データを四つ入力して同時に演算するSIMD(Single
3.2 ADRES のアーキテクチャ
Instruction Multiple Data)命令を実行でき,16 個のFU で構
ADRES のアーキテクチャを図 4に示す。V L I W(超長命
成したときのピーク性能は4 SIMD×16 FU×400 MHz =
25.6 GOPS(10 9 命令/s)に達する。
令語)プロセッサの下に多数のFU(演算器)が密結合された
構造をしている。ADRES 上で動くプログラムは,制御処理が
3.3 ADRES の開発環境
VLIW 部で,ループ処理が FU 部で実行される。制御処理に
ADRES を用いた LSIの開発フローを図 5 に示す。C 言語
必要な命令は命令メモリから,ループ処理に必要な命令はコ
で記述されたソースコードをコンパイルし,実行可能なコー
ンフィグレーションメモリから各 FUに供給される。各 FU はク
ドに変換する手順は通常のプロセッサと同様であるが,ここ
アーキテクチャ
XML 記述
アルゴリズム
C 記述
自動並列化コンパイラ
VHDL 生成
中間コード
C シミュレータ
SystemC
シミュレータ
命令セット メモリアクセスを
精度の性能
考慮した性能
VHDL ファイル
バイナリ
変換ツール
バイナリ
ファイル
論理合成
HDL シミュレータ
クロックサイクル
精度の性能
メモリ・セル
ライブラリ
ゲート
ネットリスト
レイアウト
LSI
HDL :ハードウェア記述言語
VHDL:Very High Speed IC HDL
(ハードウェア記述言語の一つ)
図 5.ADRES を用いた LSI の開発フロー ̶ アーキテクチャファイルからコンパイラとRTL のハードウェア記述が自動生成される。
Flow of wireless baseband LSI development using ADRES
無線通信用マルチモード LSI 技術
13
線通信規格の詳細を表 2に示す
で特徴的なのは,アーキテクチャファイルからコンパイラとRTL
(Register Transfer Level)のハードウェア記述が自動生成さ
図 6 は,各無線通信方式のベースバンド処理を表しており,
れる点である。
左側が送信処理,右側が受信処理である。ADRES に実装し
前述したように,ADRES は動作中に実行する命令を切り替
た処理を網掛けで示している。ベースバンド物理層処理の大
えるが,それに加えて,LSI 設計時にも専用命令などを追加し
部分が再構成可能になっていることがわかる。
たり,FU 間の配線のトポロジーやビット幅を変更することなど
他の無線通信用 LSIとの相互接続性については,そのLSI
ができる。例えば,追加したい命令をADRES のアーキテク
のプラットフォームと量産中の 802.11a/b/g(無線 LAN)対応
チャファイル(XML(Extensible Markup Language)形式)
ベースバンド LSIをRTLで接続し,基本的な通信ができるこ
に記述すると,コンパイラとRTL のハードウェア記述がともに
とを確認している。
自動で修正され,追加した命令が実行されるようになる。
シミュレータは,C,SystemC,及び RTL の3 種類を利用で
表 2.実装した無線通信規格の詳細
きる。例えば,設計の初期には,高速な Cシミュレータを用い
Specifications of wireless functions implemented on ADRES
てアーキテクチャへのフィードバックをすばやく行い,設計の
IEEE 802.11n
IEEE 802.16e
(無線 LAN) (Mobile WiMAX)
項 目
後期には,RTLシミュレータを用いてクロックサイクル精度で
データレート(M ビット/s)
正確な性能評価を行うことができる。
帯域幅
130
(MHz)
MIMO 方式
4 無線通信用 LSIプラットフォームへの実装結果
FFT
20
10
20
1×1
2×2(MMSE)
64
1,024
2,048
56
768
1,200
64QAM
64QAM
64QAM
4×4
4×4
4×4×3
(ポイント)
変調方式
ADRES 構成
線通信方式である無線 LAN,Mobile WiMAX,及び 3GPP-
MMSE:最小二乗誤差法 QAM:直交振幅変調
*LTE 端末をデータレートと MIMO 方式の構成で分類した区分の一つ
LTEを実装したときの機能ブロック図を図 6 に,実装した無
デスクランブル
ビタビデコード
デマッピング デマッピング
イコライズ
チャネル
推定
デランダマイズ
ビタビ・ターボデコード
デインタリーブ
ソフトコンバイン
ADRES
ビット デスクランブル
ビタビ・ターボデコード
ストリーム デマッピング
デインタリーブ
イコライズ
MIMO デコード
FFT
FFT
時間
同期
AFC AFC
D/A
D/A
FIR
FIR
FIR
FIR
+GI
+GI
A/D A/D
IFFT
IFFT
AGC+
RF 制御
シンボル デスクランブル
ADRES
マッピング マッピング
MIMO エンコード
シンボルスクランブル
インタリーブ
FEC エンコード
ビットスクランブル
ADRES
デマッピング
チャネル
推定
ADRES
3GPP-LTE
MIMO デコード
イコライズ
FFT
FFT
FIR
FIR
A/D A/D
D/A
FIR
+GI
IFFT
AFC AFC
時間同期
粗調 微調
AGC+
RF 制御
サブキャリア デランダマイズ
ADRES
サブキャリア ランダマイズ
マッピング
インタリーブ
レピティション
FEC エンコード
ランダマイズ
ADRES
IEEE 802.16e
MIMO デコード
FFT
FFT
FFT
FIR
FIR
FIR
AFC AFC AFC
A/D A/D
A/D
FIR
FIR
D/A
FIR
D/A
D/A
+GI
+GI
+GI
IFFT
IFFT
IFFT
スペーシャルマッピング
マッピング
マッピング
ストリームパース
FEC エンコード
スクランブル
インタリーブ インタリーブ
チャネル
推定
ストリーム デマッピング
受信
時間
同期
AGC+
RF 制御
デインタリーブ デインタリーブ
送信
ビームフォーマ重み
IEEE 802.11n
150
*
(カテゴリー 4)
2×2(MMSE)
サブキャリア数
前述した無線通信用 LSIのプラットフォームに,代表的な無
35
3GPP-LTE
FFT :高速フーリエ変換
IFFT:逆フーリエ変換
+GI :ガードインターバル付加
D/A :デジタル / アナログ変換
A/D :アナログ/ デジタル変換
RF :高周波回路
FIR :有限インパルス応答フィルタ
AFC:自動周波数調整
AGC:自動利得制御
図 6.無線 3 方式の実装結果 ̶ 無線 LAN,Mobile WiMAX,及び 3GPP-LTE のMODEM 処理をADRES に実装した。
Wireless functions mapped on ADRES
14
東芝レビュー Vol.66 No.4(2011)
無線通信用 LSIの設計プラットフォームを構成するハード
を動作中に切り替えられることをRTLで確認した。コンフィグ
ウェアは,ADRESを含めて全て RTLで記述されているか,も
レーションメモリの容量を最小限に抑えるために,コンフィグ
しくは RTL に自動変換できる高位言語で記述されているた
レーション情報を外部プロセッサから書き換える方法では,切
め,製造プロセスを 65 nmや40 nm へ容易に移行することが
替えに 2.2 msを要する。ただし,コンフィグレーションメモリ
でき,
更なる動作周波数の向上と,面積及び消費電力の削減を
の容量を増やし,無線 LANとWiMAXの両方のコンフィグ
図ることができる。
レーション情報を載せる場合には,わずか 4クロックサイクル
で切り替えることができる。
次に,最大動作周波数,面積,及び消費電力についても詳
5 あとがき
細評価を行うため,ADRES のレイアウト設計を行った結果を
無線通信用 LSIの設計プラットフォームを構築し,その上に
図 7に示す。データメモリが左上部に,命令キャッシュが下部
代表的な無線通信方式である無線 LAN,Mobile WiMAX,
に,16 個のFUとRF(レジスタファイル)が円周状に配置され
及び 3GPP-LTE のベースバンド物理層処理を実装した。更に
ている。
LSIのレイアウト設計を行い,リアルタイム処理に必要な動作
当社の 90 nm世代 6 層 CMOS(相補型金属酸化膜半導体)
周波数や製品レベルの信頼性が得られることを確認した。
プロセスで LSIを作製した場合に,製造プロセス,電源電圧,
今後は更に,コンパイラの改善による性能向上や,フルハー
及び温度が最悪の条件でも400 MHzまで動作できることが
ドワイヤード設計に迫るレベルまでの低消費電力化を進め,
示され,想定した性能とともに,製品レベルの信頼性が得られ
顧客にとって魅力あるマルチモード無線通信用 LSI が実現で
ることを確認した。
きるよう開発を進めていく。
藤澤 俊雄 FUJISAWA Toshio
セミコンダクター社 半導体研究開発センター メモリシステム
開発部主査。無線通信用 LSIの設計・開発に従事。
Center for Semiconductor Research & Development
・構成
・テクノロジー
・動作周波数
・ゲート規模
:4×4
(16)FU
:90 nm 世代 6 層 CMOS プロセス
:400 MHz
:ランダム 1.09 M ゲート,
メモリ
856 k ビット
:2.5 mm×2.5 mm
・チップサイズ
・消費電力
:156 mW
(IEEE 802.11a 送信時)
・動作確認済み無線通信規格 :無線 LAN
(IEEE 802.11a/n),
Mobile WiMAX
(同 802.16e)
図 7.ADRES のレイアウト ̶ 東芝の 90 nm世代 6 層 CMOSプロセス
で製造したときに,400 MHzまで動作可能である。
Layout of ADRES
無線通信用マルチモード LSI 技術
堀崎 耕司 HORISAKI Koji
セミコンダクター社 半導体研究開発センター 先端ワイヤレス・
アナログ技術開発部主務。無線通信用 LSIの設計・開発に
従事。電子情報通信学会会員。
Center for Semiconductor Research & Development
畝川 康夫 UNEKAWA Yasuo, Ph.D.
セミコンダクター社 半導体研究開発センター 先端ワイヤレス・
アナログ技術開発部長,工博。無線通信用 LSIの設計・開発
に従事。
Center for Semiconductor Research & Development
15
特
集
無線通信方式の切替えについては,無線 LANとWiMAX
Fly UP