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第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール

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第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
特集
エネルギーマネジメントに
貢献するパワー半導体
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
7th-Generation “X Series” IGBT Module
川畑 潤也 KAWABATA, Junya
百瀬 文彦 MOMOSE, Fumihiko
小野澤 勇一 ONOZAWA, Yuichi
IGBT モジュールの市場において,近年,小型化,低損失化,高信頼性化が強く求められている。これらの要求に応える
ため,第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュールを開発した。IGBT・FWD チップの大幅な損失低減および高放熱・高耐
熱・高信頼性パッケージの開発により,約 36% のフットプリント低減,約 10% の電力損失低減,長期信頼性を実現した。
また,高温動作時の特性や耐量を向上させたことで,連続動作の最大温度を従来の 150 ℃から 175 ℃に向上させた。これに
特集
エネルギーマネジメントに貢献するパワー半導体
より,出力電流の大幅な増加が可能となり,電力変換装置のさらなる小型化と高パワー密度化を実現した。
In recent years, the IGBT module market has been seeing increasing demand for compact modules with low loss and high reliability. In
order to meet these demands, we have developed the 7th-Generation“X Series”IGBT Module. By significantly reducing the loss of IGBT and
FWD chips and developing a package characterized by its high heat dissipation, high heat resistance and high reliability, we have reduced the
module’
s footprint by approximately 36 % and power loss by approximately 10% and achieved long-term reliability. Furthermore, by enhancing its withstanding and characteristics during high-temperature operation, we increased the maximum temperature for continuous operation
to 175 ℃ , from the conventional temperature of 150 ℃. These enhancements have enabled the module to significantly increase output current, and this further increase the power density and miniaturizes the size of power converters.
まえがき
近年,化石燃料の枯渇や地球温暖化防止の観点から,エ
第 7 世代チップ技術
X シ リ ー ズ IGBT モ ジ ュ ー ル で は IGBT お よ び FWD
ネルギー効率の改善と CO2 排出量の削減が求められてい
(Free Wheeling Diode)の損失を大幅に低減することで,
る。そのため,さまざまな分野にパワー半導体を用いた
低損失化とチップサイズの小型化を同時に達成した。さら
電力変換装置の適用が広がっており,その市場は急速に
には,高温動作時に懸念されるさまざまな耐量についても,
拡大している。パワー半導体としては,産業,民生,自
十分な耐量を確保することで T j=175 ℃の連続動作を実現
動車および再生可能エネルギーなどの広い分野で,IGBT
した。
(Insulated Gate Bipolar Transistor) モ ジ ュ ー ル が 主 に
用いられている。IGBT モジュールは市場に登場して以
来,多くの技術革新によって大幅な小型化や低損失化が行
⑴
2 . 1 第 7 世代 IGBT のチップ技術
IGBT の断面構造を図
に示す。第 7 世代 IGBT の基本
われてきており,これにより電力変換装置の小型化(コス
構造は,第 6 世代 IGBT と同様に表面構造はトレンチゲー
トダウン)と高効率化に貢献してきた。しかし,IGBT モ
ト構造であり,裏面にフィールドストップ(FS)層を適
ジュールの小型化はパワー密度の上昇によるチップ接合
用した薄ウェーハ IGBT を採用した。第 6 世代 IGBT と
温度 T j の上昇と,それに伴う信頼性の低下を招いてしま
比較して,ドリフト層の厚さを薄くすることでオン電圧
う。このため,今後とも IGBT モジュールの小型化を進め
(コレクタ−エミッタ間電圧)の低減を達成している。ま
るためには,IGBT と FWD のチップ特性の向上のみなら
ず,パッケージ技術の革新による放熱性と信頼性の向上が
不可欠である。
富士電機では IGBT モジュールのさらなる小型化,低
エミッタ
エミッタ
損失化,高信頼性化を実現するために,新たに第 7 世代
n+
のチップ技術およびパッケージ技術を適用した第 7 世代
p
「X シ リ ー ズ 」IGBT モ ジ ュ ー ル を 開 発 し た。X シ リ ー
ズ IGBT モジュールでは小型化のみならず,チップ特性
とパッケージの長期信頼性を向上することにより,T j が
ゲート
n−ドリフト層
n−フィールド
ストップ層
p+ コレクタ層
175 ℃での連続動作を実現した。そのため,最大で 150 ℃
連続動作であった従来の第 6 世代「V シリーズ」IGBT モ
ジュールと比較して,さらに高い出力電流での動作が可能
となった。
コレクタ
(a)第 7 世代 IGBT
(X シリーズ・2015 年)
図 1 IGBT の断面構造
富士電機技報 2015 vol.88 no.4
254(24)
コレクタ
(b)第 6 世代 IGBT
(V シリーズ・2007 年)
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
た,表面のトレンチゲート構造を微細化・最適化するこ
ターンオフ損失とオン電圧のトレードオフ特性を大幅に改
とで,導通時の p チャネルからのホールの引抜きを抑制
善した。
し,表面側のキャリア濃度を高めることで IE(Injection
Enhanced)効果を増強し,オン電圧とターンオフ損失の
トレードオフ関係を大幅に改善した。一般的に,ドリフト
2 . 2 第 7 世代 FWD のチップ技術
第 7 世代 FWD は,ドリフト層の厚みを低減することで
に示すように,ロー
層を薄くした場合はターンオフ時の電圧振動や耐圧の低下
順方向電圧を低減するとともに,図
が懸念されるが,FS 層を最適化することによって電圧振
カルライフタイムコントロールの最適化により,第 6 世代
動を抑制し,十分な耐圧を確保した。
FWD と比較してより滑らかな逆回復波形を実現した。さ
に 示 す。 第 6 世 代
第 7 世 代 IGBT の 出 力 特 性 を 図
らに,逆回復ピーク電流およびテール電流の低減によって,
に逆回復損失と順方向
IGBT の定格電流密度で比較した場合,T j=150 ℃におい
逆回復損失を大幅に低減した。図
て オ ン 電 圧 を 約 0.5 V 低 減 し て い る。 ま た,175 ℃ に お
電圧のトレードオフ特性を示す。第 6 世代 FWD と同一の
ける動作時でも,第 6 世代 IGBT の 150 ℃と比較して約
順方向電圧で比較して,約 30 % の逆回復損失低減を達成
0.45 V 低いオン電圧を実現している。
した。
また,一般的に,ドリフト層を薄くすると逆回復時に
空乏層が裏面に到達しやすくなるため,逆回復サージ電圧
IGBT のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフ特性を
と逆回復時の電圧振動が課題となる。第 7 世代 FWD では,
図
に示す。第 7 世代 IGBT は,前述のとおりオン電圧の
⑵
裏面構造を最適化することによって逆回復動作時の空乏層
大幅な低減に加えて,ドリフト層の薄化によってターンオ
の伸長を抑制し,空乏層が裏面に到達するのを防ぐことで,
フ時のテール電流を大幅に低減することで,ターンオフ損
逆回復電圧振動および逆回復サージ電圧を第 6 世代 FWD
失を 10 % 低減した。この結果,第 6 世代 IGBT と比べて,
と同等以下に抑制した。
コレクタ電流密度(A/cm2)
300
第 7 世代 IGBT
( j=150 ℃)
250
第 7 世代 IGBT
( j=175 ℃)
200
=150 ℃, CC=600 V, C=100 A,
=+15 V/-15 V
(1,200 V/100 A 定格チップ)
j
GE
150
:50 A/div
F
第 6 世代 IGBT
( j=150 ℃)
100
F
第 7 世代 FWD
0A
第 6 世代 FWD
50
GE=+15
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
V
3.5
4.0
AK
0V
:200 V/div
図 4 第 7 世代 FWD の逆回復波形
図 2 第 7 世代 IGBT の出力特性
ターンオフ損失: CC=600 V, C=100 A, GE=+15/−15 V,
コレクタ−エミッタ間電圧: C=V シリーズ定格電流密度 , GE=+15 V
140
第 7 世代 IGBT
40
20
=150 ℃ 1,200 V/100 A 定格チップ)
60
50
40
1.6
1.8
2.0
コレクタ−エミッタ間電圧(V)
図 3 第 7 世代 IGBT のトレードオフ特性
2.2
第 7 世代 FWD
30
20
10
j
1.4
第 6 世代 FWD
70
80
(
=600 V, GE=+15/−15 V, 逆回復 d /d =10 kV/µs
=V シリーズ定格電流密度 , GE=0 V
CC
F
80
第 6 世代 IGBT
100
0
1.2
逆回復損失:
順方向電圧:
逆回復損失 (µJ/A)
ターンオフ損失 (µJ/A)
120
60
:200 ns/div
AK
コレクタ−エミッタ間電圧(V)
0
1.5
(
=150 ℃ 1,200 V/100 A 定格チップ)
j
1.6
1.7
1.8
順方向電圧(V)
1.9
2.0
図 5 逆回復損失と順方向電圧のトレードオフ特性
富士電機技報 2015 vol.88 no.4
255(25)
特集
エネルギーマネジメントに貢献するパワー半導体
一般的に,IGBT のオン電圧とターンオフ損失はトレー
ドオフの関係にあることはよく知られている。第 7 世代
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
る Al2O3 絶縁基板に対して,熱抵抗を同一チップサイズで
第 7 世代パッケージ技術
約 45 % 低減した。この新 AlN 絶縁基板を,パワー密度や
IGBT モジュールの小型化を達成するためには IGBT お
とで,IGBT モジュールの小型化による温度上昇の課題を
チップ温度の上昇が特に厳しくなる製品などに適用するこ
よび FWD の小型化が必要であるが,チップの小型化,す
解決した。
なわちパワー密度の上昇は,チップ温度の上昇とそれに
よる信頼性の低下が課題となる。そのため,X シリーズ
3 . 2 ΔT j パワーサイクル耐量の向上
IGBT モジュールでは,高放熱パッケージの開発により
電力変換装置の長寿命化を実現するために,IGBT モ
チップ温度の上昇を抑制するとともに,高信頼性・高耐熱
ジュールの長期信頼性が強く求められている。特に,繰返
パッケージの開発により 175 ℃連続動作を実現した。
しの熱ストレスに対する耐量(ΔT j パワーサイクル耐量)
が重要な課題である。X シリーズ IGBT モジュールでは,
より高い出力電流での動作を実現するために,連続動作可
3 . 1 新 AlN 絶縁基板
能領域を従来の T j=150 ℃から 175 ℃に向上させた。一般
ジュールでは,チップから放熱フィンまでの熱抵抗のうち
に T j が高くなると,チップ周辺の材料の劣化が加速され
最も大きな部分を占める絶縁基板の熱抵抗を改善した。絶
ることにより,ΔT j パワーサイクル耐量が低下してしま
縁基板の材料としては,Al2O3(アルミナ)や熱伝導率の
う。ΔT j パワーサイクル耐量は,チップ上のワイヤボン
高い AlN(窒化アルミニウム)などが広く使われている。
ディング接点とチップ下はんだが最も大きな熱応力を受け
熱抵抗の改善のためには AlN 絶縁基板の適用が望ましい
ることで,製品寿命の低下に大きく影響を及ぼす。X シ
が,一般の AlN 絶縁基板ではセラミックスの板厚が厚い
リーズ IGBT モジュールでは,T j=175 ℃でも十分なΔT j
ために剛性が高く,ケース温度が上昇した場合に基板下の
パワーサイクル耐量を確保するため,ワイヤボンディング
⑷
はんだに加わる熱応力が高くなり,信頼性の低下が懸念さ
の設計を最適化し,これに加えて新たに開発した高強度の
れる。この対策として,はんだに発生する応力を低減させ
はんだを適用した。
る必要がある。そこでセラミックスの板厚を薄くすること
図
に,同一サイクル後におけるΔT j パワーサイクル
で AlN 絶縁基板の剛性を低下させ,基板下はんだに加わ
試験後のチップ下はんだの断面観察結果を示す。従来は
る熱応力を緩和させる手法を検討した。従来は,AlN 絶
んだにはクラックが観察されたが,新はんだではクラッ
縁基板を薄化すると,モジュール製品の絶縁耐量の低下,
クの発生が抑制されていることを確認した。図
顧客による実装工程でセラミックス基板に割れが発生する
パワーサイクル耐量を示す。X シリーズ IGBT モジュー
にΔT j
懸念があるため実用化できなかった。そのため,セラミッ
クス焼結条件の最適化による高強度化,基板回路パターン
設計の工夫による熱応力の分散,沿面距離の見直しによる
絶縁設計の最適化を行い,薄型化した新 AlN 絶縁基板を
⑶
開発した。
このように高放熱かつ高信頼性を実現した新 AlN 絶縁
基板を採用することで,IGBT モジュールの長期信頼性を
確保しつつ熱抵抗を大幅に低減した。図
25 µm
に,新 AlN 絶
25 µm
(a)新はんだ
(b)従来はんだ
縁基板を適用した IGBT モジュールのジャンクション−
ケース間熱抵抗を示す。現在,一般に広く適用されてい
図 7 ΔT j パワーサイクル試験後のチップ下はんだ断面
108
10
パワーサイクル耐量(cycle)
ジャンクションѸケース間熱抵抗(a.u.)
特集
エネルギーマネジメントに貢献するパワー半導体
チップの放熱性を改善するために,X シリーズ IGBT モ
Al2O3 絶縁基板
1
新 AlN 絶縁基板
0.1
同一チップサイズ
0.01
0.001
0.01
0.1
パルス幅(s)
図 6 ジャンクション−ケース間熱抵抗
富士電機技報 2015 vol.88 no.4
256(26)
1
107
X シリーズ(
=175 ℃)
jmax
106
105
V シリーズ(
jmax
累積故障率 =1 %
104
30
40
=150 ℃)
V シリーズ(
50
60
Δ (℃)
j
図 8 ΔT j パワーサイクル耐量
jmax
=175 ℃)
70
80
90 100
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
ルは,V シリーズ IGBT モジュールに対して約 2 倍の耐
図
に,環境温度とシリコーンゲルの寿命の関係を示す。
。これにより,
量を実現した(T jmax=175 ℃,ΔT j=50 ℃)
175 ℃における高耐熱シリコーンゲルの寿命は,従来シリ
T jmax=175 ℃動作においても,従来と同等以上のΔT j パ
コーンゲルに対して大幅に改善され,150 ℃における従来
ワーサイクル耐量があり長期信頼性を確保した。
シリコーンゲルの寿命と同等の寿命となった。これにより,
175 ℃の連続動作においても,従来の 150 ℃と同等の絶縁
3 . 3 高耐熱シリコーンゲル
性能を確保した。
IGBT モジュールの長期信頼性を保証する上でもう一つ
に,環境温度とシリコーンゲル弾性係数の
また,図
課題となるのが,高温動作におけるシリコーンゲルの劣化
関係を示す。従来のシリコーンゲルは−50 ℃以下で急激
である。一般にシリコーンゲルは高温になるほど硬化しや
に硬くなる特性があることに対し,高耐熱シリコーンゲル
すく,硬化したゲルはクラック(裂け)を生じる懸念があ
は低温でも弾性係数の上昇は抑えられており,低温環境下
る。このクラックによってゲルの絶縁被覆が破壊されるた
での絶縁性も改善されている。この高耐熱シリコーンゲル
め,絶縁性能が低下してしまう。そこで,175 ℃の連続動
によってさまざまな環境に対応できるようになり,IGBT
作を実現するため,新たに高耐熱のシリコーンゲルを開発
モジュールの適用範囲の拡大も期待できる。
とで高温下における硬化を抑制した。高温環境下における
IGBT モジュールの小型化
放置試験(215 ℃,2,000 時間)においても,従来シリコー
ンゲルは硬化によってクラックが発生するのに対し,高耐
第 7 世代の IGBT と FWD による大幅な損失特性の改善
熱シリコーンゲルではクラックの発生がないことを確認し
と,さらにはパッケージ技術の革新による放熱性・信頼性
た。
の大幅な向上により,X シリーズ IGBT モジュールは従
来に比べて,さらなる小型化と高パワー密度化が可能と
なった。例として,1,200 V 定格の EP2 パッケージにおい
て,V シリーズ IGBT モジュールの最大電流定格は 50 A
高耐熱シリコーンゲル
までであったが,X シリーズ IGBT モジュールでは新たに
75 A 定格が実現した。従来の V シリーズ IGBT モジュー
ルの EP3 パッケージ 75 A 定格製品からの置換えにより,
フットプリントを約 36% 低減することが可能である。
約2年
従来シリコーンゲル
X シリーズ IGBT モジュールは,小型化,高パワー密度
に,X
化だけではなく,同時に低損失化している。図
シリーズ IGBT モジュール EP2 パッケージ 75 A 定格製
150 ℃
175 ℃
シリコーンゲル寿命
10 年
品における通常運転時の電力損失と IGBT 接合温度の計
算 結 果 を 示 す。V シ リ ー ズ IGBT モ ジ ュ ー ル EP3 パ ッ
0.0018 0.0019 0.0020 0.0021 0.0022 0.0023 0.0024 0.0025
ケージ 75 A 定格製品と比較して,約 10% の電力損失の
低減と,約 10 ℃の IGBT 接合温度の低減を達成している
1/ 環境温度(K−1)
。
(f c=8 kHz)
前述のとおり,ΔT j パワーサイクル耐量の向上と,シ
図 9 環境温度とシリコーンゲルの寿命の関係
リコーンゲルの耐熱性の向上によって,X シリーズ IGBT
O
=35 A, O=50 Hz, C=4/8 kHz, cosφ=0.9,
=40 ℃,逆回復d /d =10 kV/µs
140
a
電力損失 (W)
高耐熱シリコーンゲル
115 ℃
120
69 W
100
105 ℃
80
62 W
85 ℃
60
92 ℃
j
43 W
40
80
47 W
rr
60
f
on
40
off
20
従来シリコーンゲル
20
sat
−100
−50
0
50
100
環境温度(℃)
図 1 0 環境温度とシリコーンゲル弾性係数の関係
150
IGBT接合温度 (℃)
シリコーンゲル弾性係数
DC=600 V,
変調率=1.0,
100
0
0
=4 kHz
C
C
=8 kHz
C
=4 kHz
C
=8 kHz
X シリーズ EP2(75 A) V シリーズ EP3(75 A)
図 1 1 通常運転時の電力損失と IGBT 接合温度
富士電機技報 2015 vol.88 no.4
257(27)
特集
エネルギーマネジメントに貢献するパワー半導体
した。高耐熱シリコーンゲルは,材料組成を最適化するこ
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュール
Europe 2007.
IGBT接合温度(℃)
200
175
⑵ Onozawa, Y. et al.“Development of the 1200 V FZ -
V シリーズ EP3(75 A)
X シリーズ
jop
V シリーズ
jop
X シリーズ EP2
(75 A)
Diode with Soft Recovery Characteristics by the New Local
Lifetime Control Technique”
. Proceeding of ISPSD 2008,
p.80-83.
150
DC=600 V
=50 Hz
=8
kHz
c
cosφ=0.9
変調率 =1.0
a=40 ℃
逆回復d /d =10 kV/µs
o
125
約 35% 増加
⑶ Momose, F. et al. “The New High Power Density
Package Technology for the 7th Generation IGBT Module”
,
PCIM Europe 2015.
⑷ Saito, T. et al. “New assembly technologies for
T jmax=175 ℃ continuous operation guaranty of IGBT mod-
100
35
45
55
65
インバータ出力電流(A)
75
85
図 1 2 インバータ出力電流と IGBT 接合温度
ule”
, Proceeding of PCIM Europe 2013, p.455-461.
川畑 潤也
特集
エネルギーマネジメントに貢献するパワー半導体
IGBT モ ジ ュ ー ル の 開 発 に 従 事。 現 在, 富 士 電
モジュールでは連続 175 ℃動作が可能となった。その結果,
機株式会社電子デバイス事業本部事業統括部モ
ジュール技術部。
電力変換装置において,さらなるパワー密度の向上が可能
となり,図
に示すように,V シリーズ IGBT モジュー
ル EP3 パッケージ 75 A 定格製品と比べて,約 35 % の出
力電流の増加が可能である。
百瀬 文彦
半導体パッケージの研究開発に従事。現在,富士
あとがき
電機株式会社技術開発本部電子デバイス研究所次
世代モジュール開発センターパッケージ開発部。
日本機械学会会員。
第 7 世代「X シリーズ」IGBT モジュールでは,IGBT
と FWD の大幅な損失低減と,高放熱・高信頼性パッケー
ジの開発によって,小型化,低損失化,高信頼性化を同時
に達成することができた。従来製品から第 7 世代 IGBT モ
ジュールへの置換えにより電力変換装置の小型化,コスト
ダウンが可能となるため,今後の電力変換装置のさらなる
普及や高効率化に寄与でき,世界的なエネルギー問題の解
決にも大いに貢献できる。
参考文献
⑴ Kobayashi, Y. et al.“The New IGBT-PIM with the 6th
, Proceeding of PCIM
generation V-IGBT chip technology”
富士電機技報 2015 vol.88 no.4
258(28)
小野澤 勇一
パワー半導体チップの開発に従事。現在,富士電
機株式会社電子デバイス事業本部開発統括部デバ
イス開発部。
*本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する
商標または登録商標である場合があります。
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